(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0016】
1.本実施形態の手法
まず本実施形態の手法について説明する。近年、自動フォーカス制御(オートフォーカス、AF)が可能な内視鏡装置が用いられている。自動フォーカス制御を行うことで、ピント合わせに関するユーザ(ドクター)の負担を軽減することが可能になる。
【0017】
しかし、自動フォーカス制御を行ったとしても、ユーザの望む画像を取得できないケースがある。例えば、自動フォーカス制御としてコントラストAFを用いるのであれば、全体的に高周波成分(エッジ成分等)が少ない画像しか得られないとコントラスト値の正確な算出が難しい。また、コントラスト値の算出等が適切に行われたとしても、ユーザの関心領域とコントラスト値等の算出領域とが異なれば、関心領域以外にピントがあってしまう。さらに関心領域が近点と遠点に複数存在する場合等では、被写界深度の幅が狭い以上、すべての関心領域に対してピントをあわせることはどうやっても困難である。
【0018】
つまり、自動フォーカス制御と手動フォーカス制御の切り替えは必須と考えられる。そこで問題となるのはユーザの操作負担の増大である。ユーザが撮像した画像を見て、ピントが所望の被写体に合っていないと判断した場合、何らかの操作を行う。自動フォーカス制御を行わない内視鏡装置であれば、合焦物体位置(合焦状態にある物体の位置。詳細は後述)の移動を考えればよいが、自動フォーカス制御が可能であれば自動フォーカス制御と手動フォーカス制御の切り替えまで考慮する必要が生じる。
【0019】
例えば、現在が自動フォーカス制御であれば、今の状態は自動フォーカス制御が良好に動作しないと考え、手動フォーカス制御に切り替える。それに対して、現在が手動フォーカス制御であれば、自動フォーカス制御に切り替えてAFを試みるか、手動フォーカス制御のまま合焦物体位置を切り替えるかの判断を行う必要がある。基本的には自動フォーカス制御を試すはずであるが、すでに自動フォーカス制御を試し、その結果失敗していた場合等では手動フォーカス制御のまま合焦物体位置を切り替えることになる。つまり、ユーザは自動フォーカス制御を用いているか手動フォーカス制御を用いているかを認識したうえで、それらの操作履歴を記憶すること等を迫られることになり、負担の増加が著しい。
【0020】
これに対して、特許文献3のようにシステムによる自動的な切り替え手法も提案されているが、その切り替えは充分であると言えない。ピント合わせのユーザ負担軽減のためには、自動フォーカス制御が手動フォーカス制御に比べて優位であることは上述したが、特許文献3の手法では自動フォーカス制御が良好に動作するのに手動フォーカス制御を継続するケースが充分に考えられ、結果として自動フォーカス制御を最大限活用するためにはユーザの操作による切り替えが必要となる。さらに言えば、自動フォーカス制御と手動フォーカス制御の間の切り替えと、手動時の合焦物体位置の移動とは別個の処理であることから、それぞれは異なる操作により実現されるものとされており、操作が煩雑であった。
【0021】
そこで本出願人は、フォーカス制御の自動的な切り替えと、ユーザによる切り替え、さらに合焦物体位置の移動を適切に組み合わせることで、ユーザの負担を軽減するフォーカス制御を実現する手法を提案する。
【0022】
具体的には、自動フォーカス制御時にユーザによる所与の操作(狭義には1回の操作。詳細は後述)が行われたら、手動フォーカス制御へ切り替わるとともに、合焦物体位置の移動が行われる。そして、手動フォーカス制御時には当該所与の操作と同じ操作により、合焦物体位置の移動が行われる。そして、手動フォーカス制御時にシーン変化の検出等の条件を満たした場合には、システムにより自動フォーカス制御への切り替えが行われる。
【0023】
以上の手法を用いることで、フォーカス制御に関してユーザに要求される操作は1種類のみとなる。そして、その操作を1回行えば、合焦物体位置の移動が行われるとともに、必要に応じて手動フォーカス制御への切り替えが行われる。つまり、ユーザは現在の制御が自動フォーカス制御であるか手動フォーカス制御であるかを考慮する必要はなく、ピントが所望の被写体に合っていないと判断したら、前記所与の操作を行えばよい。自動フォーカス制御か手動フォーカス制御か、及びそれらの履歴等を考慮する必要がないためユーザの負担を軽くすることができる。また、操作部の構成を簡略化することができ、このこともユーザ負担の軽減につながる。
【0024】
また、手動フォーカス制御時にシーン変化の検出等が行われた場合には自動フォーカス制御に復帰する。シーン(撮像対象である被写体等)が変化したのであるから、変化前に自動フォーカス制御が良好に動作していなかったとしても、変化後には良好に動作する可能性はある。つまり、シーン変化後に自動フォーカス制御が良好に動作するか否かは不明であるが、積極的に自動フォーカス制御に移行しようとする制御となる。これにより、自動フォーカス制御が行われる可能性が高まり、ピント合わせのユーザ負担軽減が図れる。なお、シーン変化後に自動フォーカス制御が良好に動作しなかったとしても、ピントが合わなかった時に上述した所与の操作を行えばよいだけであり、その点は負担の増大につながるものではない。
【0025】
以下、第1の実施形態及び第2の実施形態について説明する。2つの実施形態は基本的な構成は同様であるが、第1の実施形態は、自動フォーカス制御手法がコントラストAFであり、手動フォーカス制御から自動フォーカス制御への切り替わりの条件としてシーン変化が用いられる。それに対して、第2の実施形態は、自動フォーカス制御手法が位相差AFであり、手動フォーカス制御から自動フォーカス制御への切り替わりの条件としてシーン変化に加えて経過時間も考慮する。ただし、自動フォーカス制御手法と、自動フォーカス制御への切り替わりの条件との組み合わせは任意である。
【0026】
2.第1の実施形態
図1に、本実施形態の内視鏡装置の構成例を示す。
図1に示したように、内視鏡装置のスコープ100は、生体内に挿入される先端部101と、先端部101のアングル操作やフォーカス制御を行う操作部102を有する。
【0027】
図2(A)は、先端部101の詳細な構成例であり、先端部101内にあるレンズ系103、CCD104を介して撮影された映像信号が出力される。また、レンズ系103はフォーカス調整が可能であり、フォーカス調整を行うためのステッピングモータなどのレンズ駆動部105が設置されている。さらに、レンズ系103の近傍には照明光を射出するための照明レンズ系106が設置されている。
【0028】
図2(B)は、操作部102の詳細な構成例であり、先端部101のアングル操作を行うアングル操作部107、送気、送水を制御するための送気・送水スイッチ108、フォーカスの制御を行うためのフォーカススイッチ109が配置されている。
【0029】
また、本実施形態の内視鏡装置は、スコープ100の他、
図1に示した各部を含む。ただし、内視鏡装置は
図1の構成に限定されず、これらの一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。CCD104からの映像信号は、Gain110にて増幅され、A/D変換部111にてデジタル信号へ変換される。A/D変換部111からの映像信号は、バッファ112を介してWB部113、測光評価部114、信号処理部116へ転送される。WB部113はGain110へ接続され、測光評価部114は照明光源115及びGain110へ接続されている。照明光源115からの照明光は、光ファイバーを経由してスコープ100の先端部101に設けられた照明レンズ系106に導かれ、対象となる被写体に照射される。信号処理部116は、出力部117、シーン変化検出部118、自動フォーカス部119へ接続されている。シーン変化検出部118は切り替え制御部120へ接続され、切り替え制御部120は自動フォーカス部119及び手動フォーカス部121へ接続されている。自動フォーカス部119及び手動フォーカス部121は、レンズ駆動部105と双方向に接続されている。なお、
図1に示したように、内視鏡装置はフォーカス制御部130を含み、当該フォーカス制御部130が自動フォーカス部119と、手動フォーカス部121を含む構成であってもよい。
【0030】
マイクロコンピュータなどの制御部122は、CCD104、アングル操作部107、送気・送水スイッチ108、フォーカススイッチ109、Gain110、A/D変換部111、WB部113、測光評価部114、信号処理部116、出力部117、シーン変化検出部118、自動フォーカス部119、切り替え制御部120、手動フォーカス部121と双方向に接続されている。また、電源スイッチや撮影時の各種モードの切り替えなどの設定を行うためのインターフェースを備えた外部I/F部123も制御部122に双方向に接続されている。
【0031】
次に、
図1、
図2(A)及び
図2(B)を用いて、処理の流れを説明する。外部I/F部123を介して電源の起動、撮影条件の設定がなされる。レンズ系103、CCD104を介して撮影された映像信号はアナログ信号として所定時間間隔で連続的に出力される。本実施形態例においては上記所定時間間隔として1/60秒を想定する。また、CCD104としてはbayer型原色フィルタを前面に配置した単板CCDを想定する。さらに、本実施形態例においては照明光源115としてはキセノン光源を想定する。
【0032】
撮影された上記アナログ信号はGain110にて所定量増幅され、A/D変換部111にてデジタル信号へ変換されてバッファ112へ転送される。バッファ112は、1枚の映像信号を記録可能で、撮影にともない上書きされることになる。バッファ112内の映像信号は、制御部122の制御に基づき、所定の時間間隔で間欠的にWB部113及び測光評価部114へ転送される。WB部113では所定レベルの信号を色フィルタに対応する色信号ごとに積算することで、ホワイトバランス係数を算出する。上記ホワイトバランス係数をGain110へ転送し、色信号ごとに異なるゲインを乗算させることでホワイトバランスを行わせる。測光評価部114では、適正露光となるようGain110の増幅率や照明光源115の光量などを制御する。
【0033】
一方、信号処理部116は、制御部122の制御に基づき、単板状態の映像信号を読み込み、公知の補間処理、階調処理などを行う。処理後の映像信号は出力部117へ転送される。出力部117は例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示部であってもよく、その場合信号処理部116から転送された映像信号(撮像画像)を順次表示することになる。なお、出力部117はハードディスクやメモリーカードなどの記録媒体に順次記録保存する形態も可能である。
【0034】
また、信号処理部116からの処理後の映像信号はシーン変化検出部118及び自動フォーカス部119へも転送される。シーン変化検出部118は、制御部122の制御に基づき、信号処理部116からの処理後の映像信号を所定時間間隔(本実施形態例においては1/60秒間隔)で読み込み、連続する映像信号間の変化量を算出する。変化量としては、例えば輝度信号間の差の絶対値の総和などを用いる。上記変化量が所定の閾値を上回った場合にシーン変化が検出されたと判断する。シーン変化の検出結果は、切り替え制御部120へ転送される。
【0035】
切り替え制御部120は、制御部122を介してのフォーカススイッチ109からの制御信号及びシーン変化検出部118からのシーン変化の検出結果に基づき、フォーカス制御部130で行われるフォーカス制御の切り替えを行う。具体的には、自動フォーカス部119及び手動フォーカス部121の起動及び停止を制御する。自動フォーカス部119及び手動フォーカス部121は、相互に排他的に動作するよう制御がなされる。自動フォーカス部119及び手動フォーカス部121は、レンズ駆動部105を駆動させるための駆動信号を発生させ、レンズ系103のフォーカス調整を行う。
【0036】
図3(A)は、本実施形態例における合焦物体位置と被写界深度範囲に関する説明図である。内視鏡におけるパンフォーカスの範囲としては、一般に5〜70mm程度が要求される。本実施形態例では、パンフォーカスの範囲をカバーするために二段階の切換が必要とされる二焦点切換の撮像系を想定する。この場合、自動フォーカス部119及び手動フォーカス部121から発生される駆動信号は、近点側の0と遠点側の1のいずれかを指定するものとなる。パンフォーカスの範囲をカバーするため合焦物体位置の段階数は、撮像系の撮像素子、絞り、光学系などの条件により異なる。
図3(B)は、パンフォーカスの範囲をカバーするために四段階の切換が必要とされる四焦点切換の例を示す。この場合、自動フォーカス部119及び手動フォーカス部121から発生される駆動信号は、0〜3のいずれかを指定するものとなる。
【0037】
図4に、切り替え制御部120で行われる切り替え制御(フォーカス制御部130における制御を、自動フォーカス制御と手動フォーカス制御との間で切り替える制御)及びフォーカス制御部130でのフォーカス制御に関するフローチャートを示す。本実施形態では、切り替え制御は電源がオンの間は常に行われることを想定しているため、
図4の処理の開始は電源投入時となる。また、処理の終了は電源のオフに相当するが、これは現在どのステップを処理しているかにかかわらず、任意のタイミングで行われうるため
図4には不図示である。ただし、本実施形態の切り替え制御は、電源のオンからオフまでの期間において常に行われる必要はなく、電源がオンでありながら切り替え制御が行われない期間があることを妨げるものではない。
【0038】
図4の処理が開始されると、まず外部I/F部123を介して電源が起動され、制御部122は内視鏡装置の起動に関する信号を切り替え制御部120へ転送する。切り替え制御部120は、手動フォーカス部121における移動量Iを設定する(S11)。ここで、移動量Iは合焦物体位置の変化量を表すものである。なお合焦物体位置とは、光学系をある状態にした場合に合焦状態となる物体の位置を表す。本実施形態では光学系の状態はフォーカスレンズの位置により決定されるため、合焦物体位置はフォーカスレンズの位置と対応関係を持つことになる。合焦物体位置の連続的な制御が可能であれば、移動量Iは合焦物体位置の変化量そのもの(例えばImmの移動)であってもよい。ただし、本実施形態では
図3(A)、
図3(B)のように離散的なN焦点切り替えを想定しているため、移動量Iは各合焦物体位置(或いはフォーカスレンズ位置)に連続的に割り振られたIDの変化を表すものであってもよい。例えば、移動量I=1に設定すれば、手動フォーカス部ではフォーカス制御として、隣り合う合焦物体位置への移動が行われることになる。なお移動量Iは固定的に設定してもよいし、外部I/F部123を介して使用者が任意に設定してもよい。
【0039】
その後、切り替え制御部120は自動フォーカス部119を起動させる制御信号を出力する。すなわち、内視鏡装置の起動時には自動フォーカス部119が動作している状態になる(S12)。使用者は、自動フォーカス制御が良好に機能している限り、この状態を維持する。一方、関心領域が近点と遠点に複数存在する場合や一つの関心領域が近点から遠点まで広範囲に存在する場合など自動フォーカス制御では希望する位置にフォーカスが合わせられないシーンも発生する。この場合、使用者は操作部102にあるフォーカススイッチ109を押すことが想定されるため、フォーカススイッチ109が押下されたか否かの判定を行う(S13)。本実施形態例では、フォーカススイッチ109として1段切り替えスイッチを想定する。
【0040】
フォーカススイッチ109が押された場合(S13でYesの場合)には、対応する制御信号が、制御部122を介して切り替え制御部120へ転送される。切り替え制御部120は、制御部122からフォーカススイッチ109が押されたことを意味する制御信号を受け取ると、自動フォーカス部119を停止させ手動フォーカス部121を起動させる(S14)。さらに、切り替え制御部120は手動フォーカス部121へ合焦物体位置を移動量Iに対応するだけ移動させるよう制御信号を出力する。
【0041】
手動フォーカス部121は、合焦物体位置を移動量Iに対応するだけ移動させる(S15)。本実施形態例では
図3(A)に示される二焦点切換の撮像系、及び移動量I=1を想定している。手動フォーカス部121は、現時点の合焦物体位置(或いは対応するフォーカスレンズ位置)が近点側(ID=0)の場合は、0+移動量I=1となるため、ID=1を満たす遠点側へ合焦物体位置を移動させる。一方、現時点の合焦物体位置が遠点側(ID=1)の場合は1+移動量I=2となり、想定される合焦物体位置の段階数を超えることになる。このような場合、移動量Iの符号を反転させ、I=−1とする。このようにすることで、現時点の合焦物体位置が遠点側(ID=1)の場合は1+移動量I=0となり近点側へ移動させることになる。移動後の合焦物体位置が0を下回る場合も同様に移動量Iの符号を反転させればよい。
【0042】
自動フォーカス制御で希望する位置にフォーカスが合わせられない場合にフォーカススイッチ109が押されるので、合焦物体位置を別の位置へ移動させることで使用者が希望する位置にフォーカスが合うことになる。また、このシーンでは自動フォーカス制御が良好に機能しないシーンと判断されるので、合焦物体位置の移動だけ行い、自動フォーカス制御を継続したのでは使用者にとって望ましい制御とならない。よって、S13においてフォーカススイッチ109が押下されたのであれば、合焦物体位置の移動(S15)と、手動フォーカス制御への切り替え(S14)の両方が行われることになる。
【0043】
また、S14で手動フォーカス制御へ切り替えられ、その制御が継続中であっても、使用者は別の合焦物体位置へ移動させたいと思った場合は再度フォーカススイッチ109を押すことが想定される。よって、フォーカススイッチが押下されたか否かの判定を行い(S16)、フォーカススイッチ109が押された場合には、手動フォーカス制御にて合焦物体位置を移動量Iだけ移動させる(S15)。押されない場合は、手動フォーカス制御にて現状の合焦物体位置を維持する。
【0044】
S16でのフォーカススイッチ109の判定とともに、手動フォーカス制御の実行時にはシーン変化が検出されたか否かの判定を行う(S17)。使用者が現在のシーンの観察、診断が終了し別のシーンへ移動すると、シーン変化検出部118がこのようなシーン変化を検出し、切り替え制御部120へ検出結果を転送されS17での判定結果がYesとなる。切り替え制御部120は、シーン変化検出部118からシーン変化の検出に関する制御信号が転送されると、S12に戻り手動フォーカス部121を停止させ自動フォーカス部119を起動させる。シーン変化が検出されない場合(S17でNoの場合)は、手動フォーカス制御にて現状の合焦物体位置を維持する。
【0045】
次に、
図5を用いて自動フォーカス部119の詳細な構成の一例を示す。自動フォーカス部119は、領域分割部200、領域選択部201、コントラスト算出部202、コントラスト判断部203、駆動信号発生部204からなる。信号処理部116は、領域分割部200、領域選択部201を介してコントラスト算出部202へ接続している。コントラスト算出部202は、コントラスト判断部203を介して駆動信号発生部204へ接続している。駆動信号発生部204は、レンズ駆動部105と双方向に接続されている。切り替え制御部120は、駆動信号発生部204へ接続している。制御部122は、領域分割部200、領域選択部201、コントラスト算出部202、コントラスト判断部203、駆動信号発生部204と双方向に接続されている。
【0046】
本実施形態例における自動フォーカス部119は、例えば特許文献1で開示されている領域分割とコントラスト方式を使用している。信号処理部116からの映像信号(撮像画像)は、制御部122の制御に基づき、領域分割部200へ転送される。領域分割部200は、制御部122の制御に基づき、転送された映像信号を所定サイズのブロック領域に分割し、領域選択部201へ転送する。
【0047】
領域選択部201は、制御部122の制御に基づき、転送された各ブロック領域に関する輝度分布に基づきフォーカスを合わせるべきブロック領域を選択し、コントラスト算出部202へ転送する。コントラスト算出部202は、制御部122の制御に基づき、転送されたブロック領域に関するコントラスト値を算出し、コントラスト判断部203へ転送する。
【0048】
コントラスト判断部203は、制御部122の制御に基づき、転送されたコントラスト値と所定の閾値を比較する。転送されたコントラスト値が閾値より低い場合は合焦していないと判断し、高い場合は合焦していると判断する。合焦していないと判断された場合のみ、駆動信号発生部204へ駆動信号を出力するよう制御信号を転送する。駆動信号発生部204は、制御部122の制御に基づき、切り替え制御部120及びコントラスト判断部203からの制御信号を確認する。切り替え制御部120から自動フォーカス部119を起動させる制御信号が出力されており、かつコントラスト判断部203から制御信号が出力された場合に、駆動信号発生部204はレンズ駆動部105へ合焦物体位置を移動させるための駆動信号を転送する。本実施形態例では
図3(A)に示される二焦点切換の撮像系を想定しているため、現在の合焦物体位置と異なる合焦物体位置へ移動する駆動信号を出力することになる。なお、現在の合焦物体位置はレンズ駆動部105から位置信号として常時転送されている。
【0049】
上記の説明においては領域分割とコントラスト方式による自動フォーカス制御の構成例を示したが、このような構成に限定される必要はない。例えば、位相差方式など任意の自動フォーカス制御の構成が適用可能である。
【0050】
次に、
図6を用いて手動フォーカス部121の詳細な構成の一例を示す。手動フォーカス部121は、移動量設定部300、移動量反転部301、駆動信号発生部302からなる。移動量設定部300は移動量反転部301へ接続され、移動量反転部301は駆動信号発生部302へ接続されている。移動量反転部301及び駆動信号発生部302は、レンズ駆動部105と双方向に接続されている。切り替え制御部120は、駆動信号発生部302へ接続している。制御部122は、移動量設定部300、移動量反転部301、駆動信号発生部302と双方向に接続されている。
【0051】
移動量設定部300は、切り替え制御部120から内視鏡装置の起動に関する信号を受信した場合に光学系の合焦物体位置を移動させる移動量Iを設定する。なお、本実施形態例においては移動量I=1を設定する。なお、移動量Iは固定的に設定してもよいし、外部I/F部123を介して使用者が任意に設定してもよい。設定された移動量Iは移動量反転部301へ転送される。
【0052】
移動量反転部301は、制御部122の制御に基づき、合焦物体位置を現在の位置から移動量Iに相当する量だけ移動させた場合に、設定可能な範囲を超えるかの判定を行い、超えると判定された場合には移動量Iの符号を反転させる。具体的には、現状の合焦物体位置を表すIDに移動量Iを加算して、想定される合焦物体位置の段階数を逸脱する場合に移動量Iの符号を反転させればよい。本実施形態例では
図3(A)に示される二焦点切換の撮像系を想定しているため、0を下回る場合、1を上回る場合に符号を反転させる。なお、現在の合焦物体位置はレンズ駆動部105から位置信号として常時転送されている。上記の処理がなされた移動量Iは、駆動信号発生部302へ転送される。
【0053】
駆動信号発生部302は、制御部122を介してのフォーカススイッチ109からの制御信号、または切り替え制御部120からの手動フォーカス部121を起動させる制御信号を確認する。どちらかの制御信号が確認された場合、駆動信号発生部302は移動量反転部301からの移動量Iだけレンズ駆動部105へ合焦物体位置を移動させるための駆動信号を転送する。
【0054】
上記構成により通常は自動フォーカス制御を行いつつ、自動フォーカス制御では希望する位置にフォーカスが合わせられない場合に、1段の切り替えスイッチの操作のみで手動フォーカス制御に切り替わり希望する位置にフォーカスが合わせられる内視鏡装置を提供できる。そして、本実施形態の内視鏡装置は、手動フォーカス制御が行われている際にシーン変化が生じた場合には、使用者からの指示を受けることなく、自動フォーカス制御に切り替わることができる。これにより、使用者は自動フォーカス制御と手動フォーカス制御の切り替えを意識することなく、1段の切り替えスイッチの操作のみで合焦物体位置の調整を行うことができ、操作性の良い内視鏡装置を提供できる。
【0055】
3.第2の実施形態
図7に、本実施形態の内視鏡装置の構成例を示す。また、スコープ100に含まれる操作部102の詳細な構成例を
図8に示す。
図8に示したように本実施形態の操作部102は、
図1に示した第1の実施形態における1段切り替えスイッチのフォーカススイッチ109が2段切り替えスイッチのフォーカススイッチ400へ変更された構成となっている。また、
図7に示したようにコントラスト方式の自動フォーカス部119が位相差方式の自動フォーカス部401へ変更されている。また、新たに経過時間測定部402が追加された構成となっている。基本構成は第1の実施の形態例と同等であり、同一の構成には同一の名称と番号を割り当てている。以下、異なる部分のみを説明する。
【0056】
図8は、本実施形態の操作部102の詳細図であり、先端部101のアングル操作を行うアングル操作部107、送気、送水を制御するための送気・送水スイッチ108、フォーカスの制御を行うためのフォーカススイッチ400が配置されている。
【0057】
また、
図7に示したように信号処理部116は、出力部117、シーン変化検出部118、自動フォーカス部401へ接続されている。自動フォーカス部401は、レンズ駆動部105と双方向に接続されており、さらに経過時間測定部402へも接続されている。経過時間測定部402は、切り替え制御部120へ接続されている。制御部122は、フォーカススイッチ400、自動フォーカス部401、経過時間測定部402と双方向に接続されている
【0058】
次に
図7、
図8を用いて本実施形態の処理の流れについて説明する。基本的に第1の実施の形態例と同等であり、異なる部分のみ説明する。
【0059】
切り替え制御部120は、制御部122を介して取得したフォーカススイッチ400からの制御信号、シーン変化検出部118から取得したシーン変化の検出結果、及び経過時間測定部402から取得した経過時間に基づいて、自動フォーカス部401及び手動フォーカス部121の起動及び停止を制御する。自動フォーカス部401は、レンズ駆動部105を駆動させるための駆動信号を発生させ、レンズ系103のフォーカス調整を行う。これと共に、切り替え制御部120により自動フォーカス部401が起動されると、起動されている間は経過時間測定部402へ自身が起動中である信号を転送する。経過時間測定部402は、自動フォーカス部401が起動されている間は時間の計測を行わず、自動フォーカス部401が停止され、起動中である信号が途絶えると時間の計測を開始する。そして、経過時間測定部402は、計測された時間を常時切り替え制御部120へ転送し続ける。なお、自動フォーカス部401が起動されると、計測された時間は0に初期化されるものとする。また、本実施形態例では、
図3(B)に示されるように、パンフォーカスの範囲をカバーするために四段階の切換が必要とされる四焦点切換の撮像系を想定する。
【0060】
図9は、切り替え制御部120で行われる切り替え制御及びフォーカス制御部130でのフォーカス制御に関するフローチャートを示す。
【0061】
S21、S22については
図4のS11、S12と同様であるため詳細な説明は省略する。次に、使用者により操作部102にあるフォーカススイッチ400が操作されたか否かの判定を行う(S23)。ただし
図4のS13とは異なり、本実施形態例ではフォーカススイッチ400として2段切り替えスイッチを想定している。フォーカススイッチ400は、手前に引くと近点側へ、反対側へ押すと遠点側へ移動する二種類の制御信号を発生する。制御信号は制御部122を介して切り替え制御部120へ転送される。
【0062】
切り替え制御部120は、制御部122からフォーカススイッチ400が操作されたことを意味する制御信号を受け取ると、自動フォーカス部401を停止させ手動フォーカス部121を起動させる(S24)。さらに、切り替え制御部120は手動フォーカス部121へ合焦物体位置を移動量Iまたは−Iに相当するだけ移動させる制御信号を出力する。
【0063】
手動フォーカス部121は、切り替え制御部120からの制御に基づき合焦物体位置を移動量Iまたは−Iだけ移動させる(S25)。本実施形態例では
図3(B)に示される四焦点切換の撮像系を用いた上で、移動量Iを1とすることを想定している。フォーカススイッチ400が手前に引かれた場合は近点側へ移動するため、移動量は−Iとなる。一方、フォーカススイッチ400が反対側へ押された場合は遠点側へ移動するため、移動量はIとなる。移動後の合焦物体位置が想定される合焦物体位置の段階数3を上回る場合、または0を下回る場合は移動量Iの符号を反転させる。ただし、この場合には使用者が遠点(近点)への移動を目的として行った操作により、逆方向である近点(遠点)への移動が行われることになる。このような挙動は使用者を混乱させる可能性もあるため、場合によっては移動量Iの符号反転は行わなくてもよい。
【0064】
また、S24で手動フォーカス制御へ切り替えられ、その制御が継続中であっても、使用者は別の合焦物体位置へ移動させたいと思った場合は再度フォーカススイッチ400を操作することが想定される。よって、フォーカススイッチが操作されたか否かの判定を行い(S26)、フォーカススイッチ400が操作された場合には、合焦物体位置を移動量Iまたは−Iだけ移動させる(S25)。操作されない場合は、手動フォーカス制御にて現状の合焦物体位置を維持する。
【0065】
S26でのフォーカススイッチ400の判定とともに、手動フォーカス制御の実行時にはシーン変化が検出されたか否か、及び所定時間が経過したか否かの判定を行う(S27)。使用者が現在のシーンの観察、診断が終了し別のシーンへ移動すると、シーン変化検出部118がこのようなシーン変化を検出し切り替え制御部120へ検出結果を転送する。また、経過時間測定部402は自動フォーカス部401が停止してからの経過時間を切り替え制御部120へ転送する。切り替え制御部120は、シーン変化検出部118からシーン変化の検出に関する制御信号が転送され、かつ自動フォーカス部401が停止してからの経過時間が所定時間を上回ったかを判定し(S27)、Yesの場合には、S22に戻り手動フォーカス部121を停止させ自動フォーカス部401を起動させる。また、S27でNoの場合には、手動フォーカス制御にて現状の合焦物体位置を維持する。
【0066】
次に、
図10を用いて自動フォーカス部401の詳細な構成の一例を示す。自動フォーカス部401は、画素選択部500、位相差検出部501、駆動信号発生部502からなる。信号処理部116は、画素選択部500を介して位相差検出部501へ接続している。位相差検出部501は、駆動信号発生部502へ接続している。駆動信号発生部502は、レンズ駆動部105と双方向に接続されている。また、駆動信号発生部502は経過時間測定部402へ接続している。切り替え制御部120は、駆動信号発生部502へ接続している。制御部122は、画素選択部500、位相差検出部501、駆動信号発生部502と双方向に接続されている。
【0067】
本実施形態例における自動フォーカス部401は、例えば特許文献2で開示されている撮像素子内に位相差検出用の画素を設けた位相差方式を使用している。信号処理部116からの映像信号は、制御部122の制御に基づき、画素選択部500へ転送される。画素選択部500は、制御部122の制御に基づき、撮像素子内ある位相差検出用の画素を選択し、位相差検出部501へ転送する。位相差検出部501は、制御部122の制御に基づき、転送された位相差検出用の画素から位相差情報を検出し、フォーカスを合わせるための移動量及びその方向(正負の符号)を求める。移動量が0でない場合、駆動信号発生部502へ移動量及びその方向を含め、駆動信号を出力するよう制御信号を転送する。現在、フォーカスが合っており移動量が0となる場合には制御信号は転送されない。駆動信号発生部502は、制御部122の制御に基づき、切り替え制御部120及び位相差検出部501からの制御信号を確認する。切り替え制御部120から自動フォーカス部401を起動させる制御信号が出力されており、駆動信号発生部502から制御信号が出力された場合に、駆動信号発生部502はレンズ駆動部105へ合焦物体位置を移動させるための駆動信号を転送する。
【0068】
上記構成により通常は自動フォーカス制御を行いつつ、自動フォーカス制御では希望する位置にフォーカスが合わせられない場合に、2段の切り替えスイッチの操作のみで手動フォーカス制御に切り替わり希望する位置にフォーカスが合わせられる内視鏡装置を提供できる。そして、本実施形態の内視鏡装置は、手動フォーカス制御の開始から所定時間が経過し、かつシーン変化が生じた場合には、使用者からの指示を受けることなく、自動フォーカス制御に切り替わることができる。使用者は自動フォーカス制御と手動フォーカス制御の切り替えを意識することなく、2段の切り替えスイッチの操作のみで合焦物体位置の調整を行うことができ、操作性の良い内視鏡装置を提供できる。さらに、瞬間的に発生するハレーションなどにより、短時間で自動フォーカス制御に切り替わることがなくなり、安定性の高いフォーカス制御を行う内視鏡装置を提供できる。
【0069】
4.本実施形態の手法
以上の本実施形態では、内視鏡装置は
図1に示したように、光学系(
図2(A)のレンズ系103等)の制御を行なって合焦物体位置を制御するフォーカス制御部130と、フォーカス制御部130での制御を、自動フォーカスと手動フォーカスとの間で切替える切り替え制御部120と、ユーザからの操作を受け付ける操作部102と、を含む。そして、フォーカス制御部130で自動フォーカスが行われている期間において操作部102が操作を受け付けた場合には、切り替え制御部120はフォーカス制御部130での制御を手動フォーカスに切り替え、フォーカス制御部130は合焦物体位置を操作受付時とは異なる位置に移動させる。
【0070】
ここで、フォーカス制御部130は合焦物体位置の制御を行うが、合焦物体位置と光学系の状態(特にレンズの位置)とは対応関係を持つことに鑑みれば、具体的にはレンズの位置を制御することが想定される。なお、レンズの位置制御はレンズ駆動部105に対して制御信号を出力すること等で行う。
図1に示したように、フォーカス制御部130は自動フォーカス部119と、手動フォーカス部121を含むが、これらはどちらか一方が動作し、他方は停止するように排他的な制御が行われる。つまり、切り替え制御部120による切り替え制御は、自動フォーカス部119と手動フォーカス部121のうち、現在動作中のものを停止し、他方を起動する制御が基本となる。
【0071】
また、操作部102が操作を受け付けることで、切り替え制御部120による自動フォーカスから手動フォーカスへの切り替えと、フォーカス制御部130による合焦物体位置の移動の両方が行われることになるが、この際に操作部102が受け付ける操作は、切り替え制御部120用の操作と、フォーカス制御部130用の操作とに分けられることを要しない。つまり本実施形態では、第1の操作により切り替え制御部120による自動フォーカスから手動フォーカスへの切り替えが行われ、第1の操作とは異なる第2の操作によりフォーカス制御部130による合焦物体位置の移動が行われるのではなく、所与の操作を行うと上述の2つの処理が両方共行われることになる。
【0072】
そして、この2つの処理は複数回の操作の結果として行われてもよいが、1回の操作により行われてもよい。ここで1回の操作とは、ユーザにとって1種類と見なせる単位の操作のことであり、例えばボタンの1回の押下や、レバーを1回押し倒す操作、或いはダイヤルを1回回す(回転量は任意)操作であってもよい。ただし、マウスのダブルクリックのように、複数回の押下をもって1つの処理が行われるのであれば、そのような操作も本実施形態の1回の操作に含まれる。つまり、処理系においてそれ以上分解して解釈しない操作は、本実施形態における1回の操作と考えてよい。例えば、上述のダブルクリックは、ユーザの動作としては2回のマウスボタンの押下であるが、処理系(例えばPC)は「2回のシングルクリック」とは解釈せず、「1回のダブルクリック」と解釈しており、結果としてもダブルクリックに相当する処理が行われるのみとなる。ただし、ユーザの利便性を考えれば1回の操作が複雑になることは好ましくないため、当該1回の操作の開始から終了までの時間や、操作対象となるボタン等の個数に制限を加えてもよい。
【0073】
これにより、ユーザにとって簡単な操作により、フォーカスの効果的な制御が可能になる。従来の内視鏡装置では、ユーザは自動フォーカスが行われているか、手動フォーカスが行われているかを認識した上で、明示的に指示を行う(例えば操作部102を操作する)ことでフォーカス制御を切り替えていた。そして、手動フォーカスに切り替えた後にも、切り替え操作とは別に合焦物体位置の選択操作を行う必要があった。しかし、自動フォーカス動作中に手動フォーカスへの切り替えが望まれる場合とは、自動フォーカスが効果的に機能していないケースであることが想定されるため、合焦物体位置と、関心領域に対応する被写体の位置とがマッチしていない可能性が高い。よって、本実施形態では自動から手動への切り替えと、合焦物体位置の移動とで対応する操作を切り分けないものとした。そのため、操作部102の構成を簡略化することができ、ユーザの操作もシンプルなものとすることが可能になる。
【0074】
また、切り替え制御部120において、フォーカス制御部130での制御が自動フォーカスから手動フォーカスに切り替えられた後に、さらに操作部102が操作を受け付けた場合には、フォーカス制御部130は合焦物体位置を操作受付時とは異なる位置へ移動させてもよい。
【0075】
ここで、操作部102が受け付ける操作とは、自動から手動への切り替えと、合焦物体位置の移動との両方を行う上述した操作と同一のものが想定される。
【0076】
これにより、手動フォーカス移行後の操作受付により、合焦物体位置を現在の位置とは異なる位置に移動させることが可能となる。よって、上述の2つの処理を行う操作と、手動移行後の合焦物体位置の移動処理を行う操作とを切り分ける必要がない。そのため、操作部102の構成を簡略化することができ、ユーザの操作もシンプルなものとすることが可能になる。
【0077】
また、内視鏡装置は
図1に示したように、撮像された映像信号に基づいてシーン変化を検出するシーン変化検出部118を含んでもよい。そして、切り替え制御部120により自動フォーカスから手動フォーカスへ切り替えられた後に、シーン変化が検出された場合には、切り替え制御部120は、フォーカス制御部130での制御を手動フォーカスから自動フォーカスへと切り替える。
【0078】
ここで、シーンの変化とは種々のものが考えられる。例えば、生体内における撮像対象の部位の変化も広義にはシーン変化に含まれる。撮像している部位が胃から小腸へ、或いは小腸から大腸へ変化した場合にシーンが変化したとしてもよい。また大腸を横行結腸と下行結腸とに細分化するように、細かく部位を設定してもよい。この場合、シーン変化は映像信号の色味に基づいて行われることが考えられる。
【0079】
また、同一の部位であっても撮像対象である被写体が変化したことを持ってシーン変化と捉えてもよい。この場合には、動きベクトルや輝度、色味の変化等からシーンを検出する。
【0080】
また、撮像対象である被写体が同一であっても、当該被写体と撮像部(先端部101)との相対的は位置関係が変化した場合にシーン変化としてもよい。相対的な位置関係とは、撮像部と被写体との相対距離であってもよいし、被写体を壁面と捉えた場合の当該壁面と撮像部の光軸とのなす角度であってもよい。つまり、接近しているか否か或いは正対しているか否かをもってシーン変化の有無を考える。この場合には輝度変化等からシーン変化を検出することが考えられる。
【0081】
これにより、手動フォーカスに切り替わった場合であっても、シーン変化が検出された場合には自動フォーカスに復帰することが可能になる。手動フォーカスに切り替わるケースとは上述したように自動フォーカスが効果的に機能していない可能性が高い。具体的には、撮像部から見て近い位置(手前側)にも遠い位置(奥側)にも関心領域が存在する場合等である。しかし、シーン変化とは上述したように、部位や被写体、相対的な位置関係等が変化した場合に検出されるものであるから、シーン変化が検出された際には関心領域の奥行き方向での分布も変化していることが想定される。つまり、シーンが変化したことにより、自動フォーカスが効果的な状況に変わっている可能性があるため、自動フォーカスに切り替え、効果的か否か試行する。もちろん、変化後も自動フォーカスが効果的でないこともありえるが、手動フォーカスに比べて自動フォーカスの方がユーザにとって利便性が高いことを考慮すれば、積極的に自動フォーカスに切り替えることに意味がある。さらに言えば、自動フォーカスに切り替えた結果の合焦物体位置に不満があったとしても、上述した容易な操作により手動フォーカスへ切り替えればよいため、特に問題はない。
【0082】
また、操作部102は
図2(B)に示したように、1段切り替えスイッチ(フォーカススイッチ109)を有してもよい。1段切り替えスイッチは、ユーザによる1回の操作でオンオフされるスイッチである。
【0083】
これにより、1段切り替えスイッチの1回の操作というシンプルな操作により、上述の制御を行うことが可能になる。特に
図3(A)に示した二焦点切り替えにおいて有効である。
【0084】
また、操作部102は
図8に示したように、2段切り替えスイッチ(フォーカススイッチ400)を有してもよい。2段切り替えスイッチは、ユーザによる1回の操作により、定常位置から第1の位置への移動、又は定常位置から第2の位置への移動のいずれか一方が行われるスイッチである。そして、フォーカス制御部130は、2段切り替えスイッチが第1の位置へ移動された場合には、合焦物体位置を第1の合焦物体位置へ移動させる。また、2段切り替えスイッチが第2の位置へ移動された場合には、合焦物体位置を第2の合焦物体位置へ移動させる。
【0085】
ここで、第1の位置とは定常位置とは異なる位置であり、第2の位置とは定常位置とも第1の位置とも異なる位置である。また、第1の合焦物体位置と第2の合焦物体位置とは、操作受付時の合焦物体位置とは異なる位置であり、一方は操作受付時の合焦物体位置よりも遠点側の位置であり、他方は近点側の位置である。
【0086】
これにより、1回の操作により合焦物体位置の移動方向を指定することができる。特に
図3(B)の四焦点切り替えのように、設定可能な合焦物体位置の数が多い場合に有効となる。
【0087】
また、以上の本実施形態では、内視鏡装置は
図1に示したように、フォーカス制御部130と、切り替え制御部120と、操作部102と、シーン変化検出部118とを含む。そして、切り替え制御部120はフォーカス制御部130で自動フォーカスが行われている場合において、操作部が操作を受け付けた場合には手動フォーカスに切り替える。また、切り替え制御部120はフォーカス制御部130で手動フォーカスが行われている場合において、シーン変化検出部118でシーン変化が検出された場合には自動フォーカスに切り替える。
【0088】
これにより、自動フォーカスと手動フォーカスの切り替えを容易にすることが可能になる。ユーザにとっては、自動フォーカスがうまくいっていないと思ったときに操作部102を操作(狭義には上述したようなシンプルな「1回の操作」)を行うだけで、自動フォーカスと手動フォーカスを切り替えることができる。シーン変化により自動フォーカスへ復帰するため、可能な限りユーザ負担の少ない自動フォーカスを動作させ、自動フォーカスが効果的に機能していないときにはユーザの操作を受けて手動フォーカスに切り替わることになる。
【0089】
また、内視鏡装置は
図7に示したように、切り替え制御部120によってフォーカス制御が手動フォーカスに切り替えられてからの経過時間を測定する経過時間測定部402を含んでもよい。そして、切り替え制御部120は手動フォーカスが行われている場合において、シーン変化が検出され、且つ、経過時間が所与の閾値より大きい場合には、フォーカス制御部130での制御を自動フォーカスに切り替える。
【0090】
これにより、手動フォーカスから自動フォーカスへの復帰条件として、シーン変化だけでなく経過時間を考慮することが可能になる。シーン変化として被写体の変化や、被写体と撮像部の相対位置関係の変化を用いた場合には、ユーザが観察対象の変更を意図していない場合にもシーン変化が起こってしまう可能性がある。例えば、手ぶれによる撮像部の振動等が要因として考えられる。この場合、ユーザによる診断等が継続することが想定されるため、一時的にシーン変化が起こったとしても、すぐに自動フォーカスが良好に動作しない状況に戻るはずである。つまり、このようなケースでの自動フォーカスへの復帰は好ましくないため、シーン変化以外にも復帰条件を設けることが望ましい。ここで経過時間を用いているのは、手動フォーカスへの切り替え後、すぐに診断等を終了する(つまりユーザが意図的にシーンを変化させる)ケースが考えにくいという理由による。手動フォーカスへ切り替えたのは現在のフォーカス状態に不満があるからであり、不満を感じるのは診断や観察の対象となる関心領域が撮像画像中に存在することに他ならないと考えられるためである。
【0091】
また、切り替え制御部120は、内視鏡装置の起動時に、フォーカス制御部130での制御を自動フォーカスに設定してもよい。
【0092】
これにより、自動フォーカスを優先することが可能になる。自動フォーカスは手動フォーカスに比べユーザの負担を軽減できることから、積極的に自動フォーカスを用いることに利点がある。
【0093】
また、フォーカス制御部130は、撮像画像からコントラスト値を算出するコントラスト算出部202と、算出されたコントラスト値に基づいて、光学系を駆動させる駆動信号を出力する駆動信号発生部204を含んでもよい。具体的にはフォーカス制御部130は
図5に示した自動フォーカス部119を含み、自動フォーカス部119が上述の各部を含む。
【0094】
或いは、フォーカス制御部130は、撮像画像から位相差情報を検出する位相差検出部501と、検出された位相差情報に基づいて、光学系を駆動させる駆動信号を出力する駆動信号発生部502を含んでもよい。具体的にはフォーカス制御部130は
図10に示した自動フォーカス部401を含み、自動フォーカス部401が上述の各部を含む。
【0095】
どちらの場合にも、フォーカス制御部130は上記の駆動信号に基づいて自動フォーカスを行う。
【0096】
これにより、自動フォーカスの手法としてコントラストAFを用いることも可能になるし、位相差AFを用いることも可能になる。なお、第1の実施形態において経過時間測定部402を含まない構成とコントラストAFの組み合わせを記載し、第2の実施形態において経過時間測定部402を含む構成と位相差AFの組み合わせを記載したが、経過時間測定部402の有無とAF手法の組み合わせは任意である。また、離散的なN焦点切り替えにおけるNの値とAF手法との組み合わせも任意である。
【0097】
また、フォーカス制御部130は、離散的に設定された第1〜第N(Nは2以上の整数)の合焦物体位置のうち、いずれか1つを選択する制御を行ってもよい。
【0098】
これにより、離散的なフォーカス制御が可能となる。選択可能な合焦物体位置の数が限定されるため、簡単な操作によりフォーカス制御を行うことができ、ユーザの操作負担を軽減することができる。
【0099】
また、光学系から第i(1≦i≦N−1)の合焦物体位置までの距離に比べて、光学系から第i+1の合焦物体位置までの距離が大きい場合を考える。具体的には
図3(A)、
図3(B)に示したように、各合焦物体位置(或いは対応するレンズ位置)に対して、近点側から1刻みにIDが振られることになる。この際、フォーカス制御部130は操作部102が操作を受け付けた場合の、合焦物体位置の変動量を表す移動量情報を設定する移動量設定部300を含んでもよい。具体的には
図6に示したように手動フォーカス部121が移動量設定部300を含む。そして、フォーカス制御部130は移動量情報としてk(kは0ではない整数)を指定する情報が設定された場合には、操作部102が受け付けた操作に応じて、合焦物体位置を第iの合焦物体位置から、第i+kの合焦物体位置に変更する。
【0100】
これにより、移動量を設定した上で、設定した移動量に基づいて離散的なフォーカス制御を行うことが可能になる。
【0101】
また、移動量設定部300はi+k<1又はi+k>Nの一方が成り立つ場合には、移動量情報として−kを指定する情報を設定してもよい。そして、フォーカス制御部130は操作部102が受け付けた操作に応じて、合焦物体位置を第iの合焦物体位置から、第i−kの合焦物体位置に変更する。
【0102】
これにより、設定可能な合焦物体位置の最大値又は最小値付近(最遠点付近又は最近点付近)においても適切な合焦物体位置の移動が可能になる。最遠点(最近点)よりも遠点(近点)側への移動が指示されるようなケースでも、移動量情報の値を反転することで、移動先を設定可能な範囲に限定することができ、適切な制御が可能になる。
【0103】
また、移動量設定部300は、移動量情報kとして、1または−1を指定する情報を設定してもよい。
【0104】
これにより、合焦物体位置を隣接する位置へ移動させることができるため、小刻みな制御が可能になる。
【0105】
また、移動量設定部300は、移動量情報kを外部からの入力に基づき設定してもよい。
【0106】
これにより、ユーザや、内視鏡装置以外の他のシステム等から移動量情報kを設定することが可能になる。
【0107】
また、フォーカス制御部130で自動フォーカス部が行われている場合に、操作部102が操作を受け付けたことにより、切り替え制御部120において手動フォーカスに切り替える制御が行われた場合には、フォーカス制御部130は、合焦物体位置を第iの合焦物体位置から、第i+kの合焦物体位置に変更してもよい。
【0108】
これにより、操作部102に対する操作により、手動フォーカスへの切り替えと、合焦物体位置の移動(具体的には移動量情報kに対応するだけの移動)の両方を行うことが可能になる。利点等については上述したとおりであるため詳細な説明は省略する。
【0109】
また、上記の内視鏡装置における操作部102は、1段切り替えスイッチ(フォーカススイッチ109)を有してもよい。或いは、2段切り替えスイッチ(フォーカススイッチ400)を有してもよい。各スイッチについては上述したとおりである。
【0110】
そして2段切り替えスイッチを有する場合には、フォーカス制御部130は、2段切り替えスイッチが第1の位置へ移動された場合には、合焦物体位置に対して移動量情報kに対応する変化を与える制御を行い、2段切り替えスイッチが第2の位置へ移動された場合には、合焦物体位置に対して移動量情報kの符号を判定させた−kに対応する変化を与える制御を行う。これは、遠点側への移動と近点側への移動をスイッチの操作方向に応じて変化させる制御について、移動量情報を用いて説明したものであり、実質的には上述したとおりであるため詳細な説明は省略する。
【0111】
また、以上の本実施形態は、合焦物体位置の制御が可能な光学系を有する内視鏡装置の操作をユーザから受け付ける操作受付部と、操作に応じた操作信号を出力する出力部と、を含む内視鏡装置用操作装置にも適用できる。出力部は、操作受付部に対するユーザの操作により、自動フォーカスから手動フォーカスへの切り替えを指示する操作信号を出力するとともに、合焦物体位置の操作受付時とは異なる位置への移動を指示する操作信号を出力する。ここで、操作受付部が受け付ける操作は上述した「1回の操作」であってもよい。
【0112】
ここで、内視鏡装置用操作装置とは例えば
図2(B)の操作部102に相当し、操作受付部はフォーカススイッチ109(或いは
図8の操作部102におけるフォーカススイッチ400)に相当する。出力部は
図2(B)等には不図示であるが、内視鏡装置の処理を行うブロックへ操作信号を出力するものであり、例えば
図1の制御部122に操作信号を出力してもよい。
【0113】
これにより、自動フォーカスから手動フォーカスへの切り替えと、合焦物体位置の移動とを受け付けるにあたって、操作受付部としては1つの機構(スイッチ等)を設ければよく、構成を簡略化することが可能になる。
【0114】
また、操作受付部は、自動フォーカスから手動フォーカスへの切り替え、及び合焦物体位置の移動との両方を行う第1の操作と、手動フォーカスへ切り替えた後における合焦物体位置の移動を行う第2の操作との両方を受け付けてもよい。そして、操作受付部は1段切り替えスイッチであって、当該1段切り替えスイッチの操作により第1の操作及び第2の操作を受け付けてもよい。
【0115】
これにより、
図2(B)に示したような1段切り替えスイッチにより、第1の操作及び第2の操作の両方を行うことができ、シンプルな構成による効果的なフォーカス制御が可能となる。
【0116】
また、自動フォーカスから手動フォーカスへの切り替え、及び光学系から合焦物体位置までの距離を増加させる変更の両方を行う第3の操作と、自動フォーカスから手動フォーカスへの切り替え、及び光学系から合焦物体位置までの距離を減少させる変更の両方を行う第4の操作とを考えた場合に、操作受付部は第3の操作と第4の操作の両方を受け付けてもよい。
【0117】
また、手動フォーカスへ切り替えた後における、光学系から前記合焦物体位置までの距離を増加させる変更を行う第5の操作と、手動フォーカスへ切り替えた後における、光学系から前記合焦物体位置までの距離を減少させる変更を行う第6の操作を考えた場合に、操作受付部は第3の操作と第4の操作に加えて、第5の操作と第6の操作を受け付けてもよい。
【0118】
そして、操作受付部は2段切り替えスイッチであって、当該2段切り替えスイッチの操作により第3〜第6の操作を受け付けてもよい。
【0119】
これにより、
図8に示したような2段切り替えスイッチにより、第3〜第6の操作及び第2の操作の両方を行うことができ、シンプルな構成による効果的なフォーカス制御が可能となる。
【0120】
以上、本発明を適用した2つの実施の形態1〜2及びその変形例について説明したが、本発明は、各実施の形態1〜2やその変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階では、発明の要旨を逸脱しない範囲内で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記した各実施の形態1〜2や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明を形成することができる。例えば、各実施の形態1〜2や変形例に記載した全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態や変形例で説明した構成要素を適宜組み合わせてもよい。また、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。このように、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能である。