特許第5988597号(P5988597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988597
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】ボールジョイント
(51)【国際特許分類】
   F16C 11/06 20060101AFI20160825BHJP
【FI】
   F16C11/06 R
   F16C11/06 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-12987(P2012-12987)
(22)【出願日】2012年1月25日
(65)【公開番号】特開2013-151976(P2013-151976A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2015年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198271
【氏名又は名称】株式会社ソミック石川
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】水谷 雅之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 靖博
(72)【発明者】
【氏名】曽布川 真宜
【審査官】 佐々木 訓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−085409(JP,A)
【文献】 特開2004−316771(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/123135(WO,A1)
【文献】 実開平02−120209(JP,U)
【文献】 特開平08−152018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 11/00 −11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボール部を備えたボール側部材と、
前記ボール部を受けるボール受け部、このボール受け部に連通し前記ボール側部材の一部が露出する第1の開口、前記ボール受け部に連通し前記第1の開口と異なる第2の開口、及び前記ボール受け部の前記第2の開口側に設けられ前記ボール側部材側からの入力荷重を受ける荷重受け部を備え、中子である前記ボール部を有する鋳造品であるボール受け側部材と、
このボール受け側部材に対してこのボール受け側部材をかしめることなく圧入により固定されて前記ボール部材側からの入力荷重を受けない位置で前記第2の開口を閉塞する閉塞部材と
を具備したことを特徴とするボールジョイント。
【請求項2】
ボール部とボール受け部との間に位置し、前記ボール部を回動可能に保持してこのボール部とともに鋳造品であるボール受け側部材の中をなす樹脂製のベアリングシート
を具備したことを特徴とする請求項1記載のボールジョイント。
【請求項3】
荷重受け部は、ボール受け部と第2の開口とが連通する位置から内方へと突出する突起である
ことを特徴とする請求項1または2記載のボールジョイント。
【請求項4】
閉塞部材は、少なくともボール受け側部材側と接触する部分が弾性体により覆われている
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載のボールジョイント。
【請求項5】
閉塞部材は、第2の開口の内部に圧入されてボール受け側部材に固定されている
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一記載のボールジョイント。
【請求項6】
閉塞部材は、第2の開口の外部に圧入されてボール受け側部材に固定されている
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一記載のボールジョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボール部を中子として成形されたボール受け側部材を備えたボールジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車などの車両の懸架装置、あるいは操舵装置などに用いるボールジョイントは、ボール部およびこのボール部に対して突出する軸部であるスタッド部を有するボール側部材であるボールスタッドと、ボール受け部である内室を有するボール受け側部材であるハウジングと、ボール部と内室との間に位置しボール部を回動可能に保持する合成樹脂製のベアリングシートであるボールシートとを備えている。
【0003】
そして、このようなボールジョイントの製造方法において、製造性の向上を目的として、ボール部となる球状体の外周側に別体のボールシートを装着した中間体を型内に配置し、例えばアルミニウム合金などの溶湯を型内に流し込んでハウジングをダイカスト鋳造する方法が知られている。このような製造方法の場合、ボール部を固定する台座が鋳造型に必要となるので、この台座に対応する箇所でハウジングに開口部が形成されることを避けることができない。そのため、外部からの異物の侵入を防止するために開口部を閉塞部材であるプラグによって覆う構成とする必要がある(例えば、特許文献1ないし3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3059356号公報(第3−4頁、図4)
【特許文献2】国際公開第2008/123135号パンフレット(第7頁、図1)
【特許文献3】特許第4737862号公報(第6−8頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような構成の場合、プラグにも荷重(ボール部側から入力される荷重)が加わる構造となっているので、プラグをハウジングに対して一定以上の強度で固定しなければならない。そのため、プラグをハウジングに対してかしめ固定しているので、かしめ工程の分、工程が長くなり、製造コストが増加するという問題がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、ボール部を中子としてボール受け側部材を製造する際の製造コストを抑制できるボールジョイントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載のボールジョイントは、ボール部を備えたボール側部材と、前記ボール部を受けるボール受け部、このボール受け部に連通し前記ボール側部材の一部が露出する第1の開口、前記ボール受け部に連通し前記第1の開口と異なる第2の開口、及び前記ボール受け部の前記第2の開口側に設けられ前記ボール側部材側からの入力荷重を受ける荷重受け部を備え、中子である前記ボール部を有する鋳造品であるボール受け側部材と、このボール受け側部材に対してこのボール受け側部材をかしめることなく圧入により固定されて前記ボール部材側からの入力荷重を受けない位置で前記第2の開口を閉塞する閉塞部材とを具備したものである。
【0008】
請求項2記載のボールジョイントは、請求項1記載のボールジョイントにおいて、ボール部とボール受け部との間に位置し、前記ボール部を回動可能に保持してこのボール部とともに鋳造品であるボール受け側部材の中をなす樹脂製のベアリングシートを具備したものである。
【0009】
請求項3記載のボールジョイントは、請求項1または2記載のボールジョイントにおいて、荷重受け部は、ボール受け部と第2の開口とが連通する位置から内方へと突出する突起であるものである。
【0010】
請求項4記載のボールジョイントは、請求項1ないし3いずれか一記載のボールジョイントにおいて、閉塞部材は、少なくともボール受け側部材側と接触する部分が弾性体により覆われているものである。
【0011】
請求項5記載のボールジョイントは、請求項1ないし4いずれか一記載のボールジョイントにおいて、閉塞部材は、第2の開口の内部に圧入されてボール受け側部材に固定されているものである。
【0012】
請求項6記載のボールジョイントは、請求項1ないし4いずれか一記載のボールジョイントにおいて、閉塞部材は、第2の開口の外部に圧入されてボール受け側部材に固定されているものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載のボールジョイントによれば、ボール側部材側からの入力荷重をボール受け側部材のボール受け部の第2の開口側に設けた荷重受け部によって受け、ボール側部材側からの入力荷重が加わらない位置で閉塞部材により第2の開口を閉塞するので、閉塞部材をボール受け側部材に対してかしめることなく圧入により固定することが可能となり、例えば閉塞部材をかしめ固定などによりボール受け側部材に固定する場合と比較して製造工数を抑制でき、ボール部を中子として鋳造品であるボール受け側部材を製造する際の製造コストを抑制できる。
【0014】
請求項2記載のボールジョイントによれば、請求項1記載のボールジョイントの効果に加えて、ボール部とボール受け部との間に、ボール部を回動可能に保持してこのボール部とともに鋳造品であるボール受け側部材中子をなす樹脂製のベアリングシートを備えることで、ボール部の回動性をより高めることができるとともに、ベアリングシートの種類などを選択することで、ボール部の回動特性をより容易に設定できる。
【0015】
請求項3記載のボールジョイントによれば、請求項1または2記載のボールジョイントの効果に加えて、荷重受け部を、ボール受け部と第2の開口とが連通する位置から内方へと突出する突起とすることで、簡単な構成でボール側部材側からの入力荷重を確実に受けることができる。
【0016】
請求項4記載のボールジョイントによれば、請求項1ないし3いずれか一記載のボールジョイントの効果に加えて、閉塞部材の少なくともボール受け側部材側に接触する部分を弾性体により覆うことで、閉塞部材をボール受け側部材に対してより圧入しやすくなるとともに、第2の開口をより確実に閉塞できる。
【0017】
請求項5記載のボールジョイントによれば、請求項1ないし4いずれか一記載のボールジョイントの効果に加えて、閉塞部材を第2の開口の内部に圧入してボール受け側部材に固定することで、閉塞部材を小型化でき、ボールジョイントの大きさ、重量、及び製造コストなどをより低減できる。
【0018】
請求項6記載のボールジョイントによれば、請求項1ないし4いずれか一記載のボールジョイントの効果に加えて、閉塞部材を第2の開口の外部に圧入してボール受け側部材に固定することで、閉塞部材が第2の開口より大きくなり、閉塞部材とボール受け側部材とにより囲まれる空間を大きく取ることができるので、この空間部に例えば潤滑剤などをより多く収容できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施の形態のボールジョイントを示す断面図である。
図2】同上ボールジョイントの製造方法のボール部に対してベアリングシートを取り付ける工程を示す説明図である。
図3】同上ボールジョイントの製造方法のボール受け側部材を成形する工程を示す説明図である。
図4】同上ボールジョイントの製造方法のボール部にスタッド部を溶接する工程を示す説明図である。
図5】同上ボールジョイントの製造方法のボール受け側部材に閉塞部材を圧入する工程を示す説明図である。
図6】本発明の第2の実施の形態のボールジョイントの製造方法のボール受け側部材に閉塞部材を圧入する工程を示す説明図である。
図7】本発明の第3の実施の形態のボールジョイントの一部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第1の実施の形態の構成を、図面を参照して説明する。
【0021】
図1において、11はボールジョイントであり、このボールジョイント11は、例えば自動車などの車両の懸架装置、あるいは操舵装置などに用いられるものである。そして、このボールジョイント11は、ボール側部材である金属製などのボールスタッド15と、ボール受け側部材である金属製などのハウジング16と、このハウジング16に固定された別体の閉塞部材であるプラグ17と、ハウジング16とボールスタッド15との間に介在される合成樹脂製などのベアリングシートであるボールシート18と、ボールスタッド15とハウジング16との間に亘って配置される防塵部材であるダストカバー19とを備えている。なお、以下に示す上下方向とは、図1の上下方向をいうものとする。
【0022】
ボールスタッド15は、略球状の球頭部であるボール部21と、このボール部21から突出する例えば金属製などの上下方向長手状の丸軸状の軸部であるスタッド部22とを有し、このスタッド部22の長手方向中間の外周側に一体に外方に向って突出して鍔部23が形成されている。また、スタッド部22の上端側の外周面には接続部であるねじ溝24が形成され、このねじ溝24に対して図示しないナットが螺合されることにより被固定体(図示せず)が鍔部23とナットとの間で挟持固定され、ボールジョイントが被固定体と接続されるように構成されている。
【0023】
また、ハウジング16は、ソケットとも呼ばれるもので、ボールシート18を介してボール部21を保持するボール受け部である内室26と、内室26に連通する第1及び第2の開口27,28と、内室26の第1の開口27側、すなわちこの内室26と第1の開口27とが連通する位置に突出する第1の支持部としての第1の突起29と、内室26の第2の開口28側、すなわちこの内室26と第2の開口28とが連通する位置に突出する第2の支持部としての荷重受け部である第2の突起30とを一体に有している。さらに、このハウジング16の第1の開口27側の外周には、ダストカバー19の下端側が嵌着される溝状のカバー溝である段部31が形成されている。そして、このハウジング16は、ボール部21及びボールシート18を中子にして、例えばアルミニウムなどの金属によりダイカスト成形されている。
【0024】
内室26は、ボール部21を保持したボールシート18が嵌着される部分、すなわちボール部21を受ける部分である。この内室26は、第1の突起29により形成される上端側が、ハウジング16(ボールスタッド15)の軸方向に対して交差(直交)する方向に沿う第1の支持面としての上側支持面34となっており、第2の突起30により形成される下端側が、ハウジング16(ボールスタッド15)の軸方向に対して交差(直交)する方向に沿う第2の支持面としての下側支持面35となっており、これら支持面34,35間が、ハウジング16(ボールスタッド15)と同軸で、ボールシート18の外周面を受ける円筒面状の保持面36となっている。
【0025】
上側支持面34は、ボールシート18の一端部である上端部と当接する(ボールシート18の上端部を規制する)位置となっている。
【0026】
また、下側支持面35は、ボールシート18の他端部である下端部と当接する(ボールシート18の下端部を規制する)位置となっている。
【0027】
さらに、保持面36の下端側は、第2の突起30の先端側へと徐々に縮径するように傾斜した傾斜部38となっている。
【0028】
また、第1の開口27は、ハウジング16と同軸に位置し、内室26側である第1の突起29から外側である上側へと徐々に拡開状となっている。さらに、この第1の開口27には、ボールスタッド15のスタッド部22が挿通され、ボール部21の上側とスタッド部22とが露出している。
【0029】
また、第2の開口28は、ハウジング16と同軸に位置し、内室26側である第2の突起30から外側である下側は、段差状に拡開した段差開口部39となっている。この段差開口部39は、ハウジング16の下端部と連通する平面視で円形状の凹部(空間部)であり、例えば内室26と同程度の径寸法を有している。また、この段差開口部39の径寸法は、軸方向全体に亘って略一定に形成されている。したがって、第2の開口28は、第2の突起30の位置(内室26と連通する位置)で最も径寸法が小さくなっている。
【0030】
また、第1の突起29は、ボール部21の赤道Xよりも一端側である上端側に位置し、ボールシート18の上部を軸方向に支持して抜け止めするものであり、内方、すなわちハウジング16(ボールスタッド15)の中心軸側に向けて(中心軸と交差(直交)する方向に向けて)突出している。
【0031】
また、第2の突起30は、ボール部21の赤道Xよりも他端側である下端側に位置し、ボールシート18の下部を軸方向に支持して抜け止めするとともに、ボールシート18を介してボールスタッド15(ボール部21)側からの入力荷重を受けるものであり、内方、すなわちハウジング16(ボールスタッド15)の中心軸側に向けて(中心軸と交差(直交)する方向に向けて)突出している。この第2の突起30の先端側は、第1の突起29の先端側よりも中心軸側へと突出し、ボール部21の赤道Xでの外径位置(仮想線L)よりもボールスタッド15の中心軸側へと延出している。したがって、第2の開口28は、ボール部21の外径寸法よりも小さい径寸法を有している。
【0032】
また、プラグ17は、第2の開口28を覆って閉塞するものであり、円形板状の閉塞部41と、この閉塞部41の外周縁全体からこの閉塞部41の厚さ方向(上下方向)にリブ状に突出する円筒状の圧入部42とを一体に有する、皿状に形成されている。さらに、このプラグ17は、図示しないが、例えば金属製の基材の周囲をエラストマ、あるいはゴムなどの軟質で弾性を有する(合成)樹脂(シール部材)、すなわち弾性体により鋳ぐるむ(インサート成形する)構成、すなわち基材全体が弾性体などの(合成)樹脂により覆われた構成となっており、特に圧入部42が径方向(中心軸に向かう方向)に弾性変形可能である。そして、このプラグ17は、圧入部42が第2の開口28の内部、すなわち段差開口部39に圧入されることによって、この圧入部42の外周面が段差開口部39の内周面に圧接保持されてハウジング16に対して固定され、この固定状態で閉塞部41が第2の開口28を覆う(閉塞する)ようになっている。さらに、プラグ17とボール部21とボールシート18とにより囲まれた空間が、図示しない潤滑剤であるグリースを収容する潤滑剤収容部であるグリース溜まり空間43となっている。
【0033】
また、ボールシート18は、例えば全体がポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、あるいは繊維強化されたポリイミド(PI)などの合成樹脂にて上下面開口状の略円筒状に一体成形されている。すなわち、このボールシート18は、開口径寸法がボール部21の外径寸法より小さい略円形状の(第1及び第2の)端面開口44,45を軸方向両端部である上下端部に有している。
【0034】
そして、ボールシート18の内部には、端面開口44,45と連通する保持面である摺接面46が形成されており、この摺接面46がボール部21の外周面を回動可能に保持している。したがって、ボールシート18が、ボールスタッド15のボール部21とともにハウジング16の内室26内に収容配設され、ボール部21が、ボールシート18を介して内室26内にて回動可能に保持されている。
【0035】
また、ボールシート18は、ボール部21の赤道Xを含む略2/3程度の球面(外周面)を摺接面46により覆っている。
【0036】
また、ダストカバー19は、ダストシールやブーツなどとも呼ばれるもので、例えば全体が軟質ゴム或いは軟質合成樹脂などにて形成されている。このダストカバー19は、軸方向一端部である上端部が鍔部23の外周側に嵌着され、軸方向他端部である下端部がハウジング16の段部31の外周側に嵌着されている。さらに、このダストカバー19の下端部は、略円形環状の環状部材であるクリップ51にて段部31に対して固定されている。そして、ダストカバー19とボールスタッド15とボールシート18とにより囲まれた空間が、グリースを収容する潤滑剤収容部であるグリース溜まり空間52となっている。
【0037】
次に、上記第1の実施の形態のボールジョイント11の製造方法を説明する。
【0038】
まず、図2に示すように、予め合成樹脂の射出成形などにより別体成形した樹脂ライナであるボールシート18をボール部21のうちこのボール部21の赤道Xを含む部分の外周側に赤道Xを覆うように装着することにより、ボール部21の外周側がボールシート18にて覆われた中間体56を得る(装着工程)。この際、例えばボール部21を端面開口44からボールシート18内にこのボールシート18の上端部を若干弾性変形させながら挿入して組み込む。
【0039】
次いで、図3に示すように、中間体56を中子とするダイカスト鋳造により、中間体56のボールシート18の外周面全体を覆いかつボール部21と非接触なハウジング16(図1)を成形する(成形工程)。
【0040】
すなわち、第2の開口28に対応する形状つまり第2の開口28(図1)を形成する形状をなす台座部61を有する所定形状の型62内に中間体56をセットした後、その型62内に高温の溶湯である溶融材料(例えばアルミニウムなどの軽金属材料、あるいはその合金など)を中間体56のボールシート18の外周側の空間部であるキャビティ63に流れ込むように圧入供給し、その後、凝固させてハウジング16(図1)を成形する。
【0041】
ここで、型62は、例えば上下2分割の金型で、上側の第1型部材62aと下側の第2型部材62bとにより構成されている。そして、これら両型部材62a,62bが組み合わされた状態で、キャビティ63に対応する位置にて型62の内部にハウジング16が形成される。
【0042】
また、両型部材62a,62bは、組み合わされた状態で中間体56を上下から挟持する挟持面64,65を有している。さらに、下側の第2型部材62bに台座部61が突設されている。
【0043】
そして、型62内に中間体56がインサートされて両挟持面64,65にて挟持された状態で、高温の溶融材料(溶融金属)がゲート(図示せず)から型62内に圧入供給されると、その溶融材料は、型62内においてボールシート18の周囲のキャビティ63に流れる。
【0044】
なお、溶融材料は、ボールシート18を形成する合成樹脂材料の融点より高いが、ボールシート18は所望の耐熱性を有し、溶融材料から熱を受けて使用不可能なレベルまで気化消耗することはない。
【0045】
そして、所定量の溶融材料の供給後、その溶融材料が凝固して、図4に示すように、ボールシート18により保持されたボール部21を内部に備えた所定形状のハウジング16が成形される。なお、段部31(図1)に関しては、ハウジング16を型62内から取り出した後、上部外周側を切削加工して形成する。
【0046】
その後、図4に示すように、ボール部21にスタッド部22を、例えばプロジェクション溶接、あるいは摩擦攪拌溶接などの溶接法などを用いて溶接することでボールスタッド15(図1)を得る(溶接工程)。さらに、図5に示すように、プラグ17の圧入部42を第2の開口28の段差開口部39に圧入し、圧入部42の先端部を第2の突起30の下側へと圧接してプラグ17をハウジング16に固定し、プラグ17によって第2の開口28を閉塞する(圧入工程)。これら溶接工程と圧入工程との順序は任意に設定できる。
【0047】
そして、図1に示すように、ハウジング16の段部31とボールスタッド15のスタッド部22の鍔部23との間にダストカバー19などを固着して(固着工程)、ボールジョイント11を得る。
【0048】
上述したように、上記第1の実施の形態によれば、ボールスタッド15側からの入力荷重をハウジング16の内室26の第2の開口28側に設けた第2の突起30によって受けることで、ボールスタッド15側からの入力荷重がプラグ17に加わらなくなる。したがって、このプラグ17のハウジング16に対する固定強度を必要以上に大きくせずに済み、プラグ17をハウジング16に対して圧入により固定することが可能となる。この結果、例えばプラグをかしめ固定などによりハウジングに固定する場合(プラグの配置工程及びかしめ工程の2工程が必要)と比較して、プラグ17の圧入工程のみでプラグ17をハウジング16に固定できるので、製造工数を抑制(短縮)でき、ボール部21を中子としてハウジング16を製造する際の製造コストを抑制できる。
【0049】
しかも、ハウジング16として、かしめ固定に適さないアルミニウムなどの延び性の小さい材料などを適宜選択して用いることが可能になるので、より一層の軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0050】
また、ボール部21と内室26との間に、ボール部21を回動可能に保持してこのボール部21とともにハウジング16を成形する際の中子となる(合成)樹脂製のボールシート18を備えることで、ボール部21の回動性をより高めることができるとともに、ボールシート18の種類などを選択することで、ボール部21の回動特性をより容易に設定できる。
【0051】
さらに、ボールスタッド15側からの入力荷重を受ける荷重受け部を、内室26と第2の開口28とが連通する位置から内方へと突出する突起である第2の突起30とすることで、簡単な構成でボールスタッド15側からの入力荷重を確実に受けることができるとともに、第2の突起30の突出量や厚みなどを設定することで、耐荷重性を容易に設定できる。
【0052】
そして、プラグ17の少なくともハウジング16側に接触する部分を弾性体により覆うことで、プラグ17をハウジング16に対して圧入する際に、プラグ17が弾性的に変形しやすくなり、圧入がより容易になるとともに、圧入された弾性体によって隙間をより確実に閉塞できるので、プラグ17によって第2の開口28をより確実に閉塞できる。
【0053】
しかも、プラグ17は、基材を弾性体により鋳ぐるんで成形(インサート成形)するので、容易に成形できる。
【0054】
また、プラグ17を第2の開口28の内部に圧入してハウジング16に固定することで、プラグ17を小型化でき、ボールジョイント11の大きさ、重量、及び製造コストなどをより低減できる。
【0055】
なお、上記第1の実施の形態において、プラグ17は、図6に示す第2の実施の形態のように、第2の開口28の外部に圧入してもよい。この場合には、段差開口部39に代えて、段差部68を第2の開口28の外側にてハウジング16の外周などに形成することにより、圧入部42の先端部(上端部)を段差部68に圧接し、圧入部42の内周面がハウジング16の下端側の外周面に保持されるように構成できる。そして、本実施の形態では、プラグ17の大きさが第2の開口28よりも大きくなるので、プラグ17とボール部21とボールシート18とにより囲まれた空間であるグリース溜まり空間43をより大きく取ることができるので、このグリース溜まり空間43にグリースをより多く収容できる。
【0056】
また、上記各実施の形態において、図7に示す第3の実施の形態のように、保持面36が傾斜部38を備えず、ハウジング16(ボールスタッド15)の軸方向に対して平行、すなわち第2の突起30に対して略垂直となっている構成としてもよい。
【0057】
さらに、上記各実施の形態において、ハウジング16は、亜鉛、マグネシウム、あるいは樹脂など、アルミニウム以外の任意の素材を用いることができる。
【0058】
また、プラグ17は、金属製の基材を弾性体(シール部材)により鋳ぐるむ(インサート成形する)構成の他にも、例えば硬質(合成)樹脂製の基材を弾性体などの軟質(合成樹脂)樹脂(シール部材)で覆った構成などでもよく、基材を覆う弾性体も、基材の全体を覆うものでもよいし、基材の一部(少なくともハウジング16と接触する部分)を覆うものでもよい。
【0059】
そして、プラグ17は、金属(プレス板)によって形成してもよい。
【符号の説明】
【0060】
11 ボールジョイント
15 ボール側部材であるボールスタッド
16 ボール受け側部材であるハウジング
17 閉塞部材であるプラグ
18 ベアリングシートであるボールシート
21 ボール部
26 ボール受け部である内室
27 第1の開口
28 第2の開口
30 荷重受け部である第2の突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7