【実施例1】
【0023】
図1は、本実施例に係る顕微鏡の構成を示した図である。
図2A及び
図2Bは、
図1に示される顕微鏡に備えられた結像レンズ側の光学ユニットのフィルタブロック切替機構を示した図である。なお、
図2Aは、対物レンズの光軸と直交する断面における断面図であり、
図2Bは、
図2Aに示されるAA断面における断面図である。
【0024】
図1に例示される顕微鏡100は、対物レンズ7と結像レンズ8の間に複数の光学ユニット(光学ユニット10、光学ユニット20)を備えた倒立顕微鏡である。
【0025】
対物レンズ7側の光学ユニット10は、ランプハウス1内の刺激用光源1aから出射されたUV(ultraviolet)域の刺激光を投光管2内のレンズ群3を介して対物レンズ7の光軸に導入するための光学ユニットである。光学ユニット10に導入された刺激光は、対物レンズ7を介して標本を刺激する。
【0026】
光学ユニット10は、複数のフィルタブロックが装着可能で対物レンズ7の光軸上にその複数のフィルタブロックのうちの一のフィルタブロックを選択的に配置する切替機構19と、切替機構19に装着された複数のフィルタを含んでいる。なお、
図1では、切替機構19に装着された複数のフィルタのうち、光軸上に配置されたフィルタブロック11のみが図示されている。
【0027】
フィルタブロック11(第1のフィルタブロック)は、UV域の刺激光を反射させて標本からの蛍光を透過させるダイクロイックミラー11aと、励起フィルタ11bと、励起フィルタ11bと同じサイズの吸収フィルタ11cを含んでいる。
【0028】
励起フィルタ11bと吸収フィルタ11cの両光学フィルタのサイズは、光学フィルタの一般的なサイズであり、例えば、外径が25mmで有効径(第1の有効径)D1が22mmである。ダイクロイックミラー11aのサイズは、ダイクロイックミラーの一般的なサイズであり、例えば、(短辺×長辺×厚さ)=(26mm×36mm×1mm)である。ダイクロイックミラー11aから励起フィルタ11bまでの距離S1とダイクロイックミラー11aから吸収フィルタ11cまでの距離S2とはほぼ同じであり、それぞれ、例えば、18mm程度、15mm程度である。対物レンズ7の胴付き面から対物レンズ7の光軸とダイクロイックミラー11aとの交点までの距離L1は、例えば70mmであり、胴付き面と交点の間には図示してないがレボルバやレボルバの上下機構がある。
【0029】
結像レンズ8側の光学ユニット20は、ランプハウス4内の励起用光源4aから出射された励起光を投光管5内のレンズ群6を介して対物レンズ7の光軸に導入するための光学ユニットである。光学ユニット20に導入された励起光は、対物レンズ7を介して標本全体に照射される。
【0030】
光学ユニット20は、複数のフィルタブロックが装着可能で対物レンズ7の光軸上にその複数のフィルタブロックのうちの一つのフィルタブロックを選択的に配置する切替機構29と、切替機構29に装着された複数のフィルタブロックを含んでいる。なお、
図1では、切替機構29に装着された複数のフィルタのうち、光軸上に配置されたフィルタブロック21のみが図示されている。
【0031】
より詳細には、光学ユニット20では、
図2A及び
図2Bに例示されるように、複数のフィルタブロック(フィルタブロック21、フィルタブロック22、フィルタブロック23、フィルタブロック24、フィルタブロック25、フィルタブロック26、フィルタブロック27、フィルタブロック28)がターレット式の切替機構29に同心円状に配列された状態で装着されている。
【0032】
フィルタブロック21(第2のフィルタブロック)は、励起光を反射させて標本からの蛍光を透過させるダイクロイックミラー21aと、励起フィルタ21bと、励起フィルタ21bと同じサイズの吸収フィルタ21cと、ダイクロイックミラー21aの角度調整する機構を含んでいる。角度調整する機構としては、ダイクロイックミラーとフィルタブロック枠の間に薄い箔をはさむ方法でもいいし、フィルタブロック21に形成されたダイクロイックミラー当て付け面を複数のネジで抑えてつけている
図2Aに示すようなネジ部21dを調整することでダイクロイックミラーの反射面の角度を調整するような機構でもいい。なお、図中ではネジをダイクロイックミラーに直接あてつけて反射面の角度を調整しているが、ダイクロイックミラー当て付け面をネジで角度調整し、ダイクロイックミラーの反射面の角度を間接的に調整してもよい。
【0033】
励起フィルタ21bと吸収フィルタ21cの両光学フィルタのサイズは、フィルタブロック11に含まれる光学フィルタのサイズよりも大きく、例えば、外径が30mmで有効径(第2の有効径)D2が28mmである。ダイクロイックミラー21aのサイズは、フィルタブロック11に含まれるダイクロイックミラー11aのサイズよりも大きく、例えば、(短辺×長辺×厚さ)=(30mm×42mm×1mm)である。ダイクロイックミラー21aから励起フィルタ21bまでの距離S1は18mmであり、ダイクロイックミラー21aから吸収フィルタ21cまでの距離S2は15mmである。対物レンズ7の胴付き面から対物レンズ7の光軸とダイクロイックミラー21aとの交点までの距離L2は、例えば、140mmであり、対物レンズ7の胴付き面から結像レンズ8までの距離L3は、例えば、190mmである。
【0034】
フィルタブロック22、フィルタブロック23、フィルタブロック24も、それぞれダイクロイックミラーと励起フィルタと吸収フィルタを含み、各フィルタブロックのダイクロイックミラー、励起フィルタ、吸収フィルタのサイズは、フィルタブロック21のダイクロイックミラー、励起フィルタ、吸収フィルタのサイズと同様である。
【0035】
フィルタブロック25(第3のフィルタブロック)は、励起光を反射させて標本からの蛍光を透過させるダイクロイックミラー25aと、励起フィルタ25bと、励起フィルタ25bと同じサイズの吸収フィルタ25cを含んでいる。
【0036】
励起フィルタ25bと吸収フィルタ25cの両光学フィルタのサイズは、フィルタブロック11に含まれる光学フィルタのサイズと同じであり、例えば、外径が25mmで有効径(第1の有効径)D1が22mmである。ダイクロイックミラー25aのサイズは、フィルタブロック11に含まれるダイクロイックミラー11aのサイズと同じであり、例えば、(短辺×長辺×厚さ)=(26mm×36mm×1mm)である。
【0037】
フィルタブロック26、フィルタブロック27、フィルタブロック28も、それぞれダイクロイックミラーと励起フィルタと吸収フィルタとを含み、各フィルタブロックのダイクロイックミラー、励起フィルタ、吸収フィルタのサイズは、フィルタブロック25のダイクロイックミラー、励起フィルタ、吸収フィルタのサイズと同様である。
【0038】
即ち、切替機構29は、光学フィルタの有効径が異なる2種類のフィルタブロック(第2のフィルタブロック、第3のフィルタブロック)を装着することができるように構成されている。
【0039】
なお、光学フィルタの有効径が異なる2種類のフィルタブロックでは、幅などは異なるが取り付け部が共通化され、
図1に示されるように、光軸の位置が一致するよう構成されている。このため、2種類のフィルタブロックには互換性があり、相互に交換することができる。従って、
図2Aでは、2種類のフィルタブロックがそれぞれ4つずつ切替機構29に装着された例が示されているが、2種類のフィルタブロック間の割合は任意に変更することが可能である。例えば、切替機構29には、光学フィルタの有効径が大きなフィルタブロックを8つ装着してもよく、光学フィルタの有効径が小さなフィルタブロックを8つ装着してもよい。即ち、フィルタブロックの種類によらず、切替機構29の最大装着数は8つである。
なお、2種類のフィルタブロックのサイズを同じにし、光学フィルタの有効形のみ異なる構成としてもよい。
【0040】
以上のように構成された顕微鏡100では、結像レンズ8側の光学ユニット20に含まれるフィルタブロック21内の光学フィルタの有効径が、対物レンズ7側の光学ユニット10に含まれるフィルタブロック11内の光学フィルタの有効径よりも大きくなるように構成されている。また、フィルタブロック21内のダイクロイックミラー21aのサイズもフィルタブロック11内のダイクロイックミラー11aのサイズよりも大きくなるように構成されている。これにより、対物レンズ7から遠い結像レンズ8側のフィルタブロック21における軸外光のケラレの発生が抑制されて、周辺光量の低下が軽減される。従って、顕微鏡100によれば、複数の光学ユニットにより実現される多様な機能を備えた上で、広い観察視野を確保することができる。
【0041】
また、顕微鏡100では、光学フィルタの有効径が異なる2種類のフィルタブロックのサイズをほぼ同じにし、且つ、取り付け部の寸法を共通にすることで、2種類のフィルタブロックの互換性が確保されている。これにより、光学フィルタの有効径が異なる2種類のフィルタブロックを相互に交換して装着することが可能であり、任意の種類のフィルタブロックを必要な数だけで装着することができる。一般的なサイズの光学フィルタを含むフィルタブロックに比べてより大きなサイズの光学フィルタを含むフィルタブロックは高価であること、ユーザはすでに一般的なサイズの光学フィルタを含むフィルタブロックを保有している可能性が高いことを考慮すると、光学フィルタの有効径が異なるフィルタブロックを並存させて必要な場合にのみ大きなサイズの光学フィルタを含むフィルタブロックを使用することができる構成は、ユーザにとってコスト面で大きなメリットとなり得る。
【0042】
なお、フィルタブロック21における軸外光のケラレの発生をより効率的に抑制し、且つ、一般的なサイズの光学フィルタを含むフィルタブロック11と大きなサイズの光学フィルタを含むフィルタブロック21との互換性を確保するためには、顕微鏡100は、以下の条件式(1)を満たすことが望ましく、さらに、条件式(2)を満たすことがより望ましい。
1.1≦D2/D1≦1.5 ・・・(1)
12<f×(D2−D1)/(L2−L1)<31 ・・・(2)
【0043】
ここで、D1は、対物レンズ7側の光学ユニット10に含まれるフィルタブロック11内の光学フィルタの有効径であり、D2は、結像レンズ8側の光学ユニット20に含まれるフィルタブロック21内の光学フィルタの有効径である。fは、結像レンズ8の焦点距離であり、L1は対物レンズ7の胴付面から対物レンズ7の光軸とダイクロイックミラー11aとの交点までの距離であり、L2は対物レンズ7の胴付面から対物レンズ7の光軸とダイクロイックミラー21aとの交点までの距離である。
【0044】
条件式(1)は、フィルタブロック11に含まれる光学フィルタとフィルタブロック21に含まれる光学フィルタの有効径の比を規定した式である。条件式(1)の下限を下回ると、フィルタブロック21における軸外光のケラレを抑制する効果がほとんど得られない。一方、条件式(1)の上限を上回ると、フィルタブロック11に含まれる光学フィルタの有効径がフィルタブロック21に含まれる光学フィルタの有効径に対して大きくなりすぎてフィルタブロック11とフィルタブロック21をほぼ同じサイズとすることが困難になる。
【0045】
条件式(2)は、フィルタブロック11とフィルタブロック21との間の間隔を考慮して光学フィルタの有効径を規定した式である。条件式(2)の下限を下回ると視野数18以上の顕微鏡においてフィルタブロック21における軸外光のケラレを十分に抑制することが難しい。一方、条件式(2)の上限を上回ると、フィルタブロック11に含まれる光学フィルタの有効径がフィルタブロック21に含まれる光学フィルタの有効径に対して大きくなりすぎてフィルタブロック11とフィルタブロック21をほぼ同じサイズとすることが困難になる。
【0046】
図1に例示される顕微鏡100の場合、有効径D1=22mm、有効径D2=28mmであり、D2/D1=1.27であるので、条件式(1)を満たしている。また、距離L1=70mm、距離L2=140mm、焦点距離f=180mmであり、f×(D2−D1)/(L2−L1)=15.4であるので、条件式(2)を満たしている。
【0047】
また、一般的なサイズのダイクロイックミラー11aを含むフィルタブロック11と大きなサイズのダイクロイックミラー21aを含むフィルタブロック21との互換性を確保するためには、ダイクロイックミラー21aの形状は、四隅が面取りされた八角形形状であることが望ましい。
【0048】
図3は、フィルタブロック21に含まれるダイクロイックミラーの形状を示す図である。
図4は、フィルタブロック21に含まれるダイクロイックミラーの他の形状を示す図である。
図3に示されるように、ダイクロイックミラー21aの形状を四隅が面取りされた八角形形状とすることで、ダイクロイックミラー11aに比べて大きなダイクロイックミラー21aを、ダイクロイックミラー11aを含むフィルタブロック11とほぼ同じサイズのフィルタブロック21に収納することができる。これにより、光学フィルタの有効径が異なる2種類のフィルタブロックのサイズをほぼ同じにすることができる。
【0049】
なお、ダイクロイックミラー21aは光軸に対して45度傾けて配置されるため、ダイクロイックミラー21aに入射する光束の範囲LRは楕円形状となる。このため、面取りされる領域(以降、面取り部と記す)が光束の範囲LRと重ならない範囲で面取り部をできるだけ大きくするためには、ダイクロイックミラー21aの四隅を楕円の短軸方向と平行なダイクロイックミラー21aの短辺に対して大きな面取り角度で面取りすることが望ましい。具体的には、短辺に対して面取り角度は55度以上80度以下であることが望ましい。従って、
図3では、四隅が短辺に対して75度の面取り角度で面取りされたダイクロイックミラー21aが例示されているが、フィルタブロック21は、ダイクロイックミラー21aの代わりに、
図4に例示される四隅が短辺に対して60度の面取り角度で面取りされたダイクロイックミラー31aを含んでもよい。
【0050】
さらに、面取り角度が上記の条件を満たしている場合であっても、面取り部の大きさが大きくなるとは限らない。このため、ダイクロイックミラー21aは、上記の面取り角度の条件に加えて、以下の条件式(3)を満たすことが望ましい。
0.3≦2×C/S≦0.7 ・・・(3)
【0051】
ここで、Sは、フィルタブロック21に含まれるダイクロイックミラー21aの面取り前の短辺の長さ(つまり、ダイクロイックミラー21aの短軸方向の長さ)とし、Cは、フィルタブロック21に含まれるダイクロイックミラー21aの四隅に形成される各面取り部の短辺方向の長さである。
【0052】
条件式(3)は、面取り前の短辺の長さに対する面取り部の短辺方向の長さの比を規定した式である。即ち、下限値0.3は、面取り前の短辺の3割が面取りされた状態を示し、上限値0.7は、面取り前の短辺の7割が面取りされた状態を示している。
【0053】
条件式(3)の下限を下回ると、面取り部が小さすぎるため、フィルタブロック21内にダイクロイックミラー21aを収納することが難しくなる。一方、条件式(3)の上限を上回ると、面取り部が大きくなりすぎて、面取り部と光束の範囲LRが一部で重なってしまう。その結果、入射光の一部がダイクロイックミラー21aに入射することなく通過してしまう。
【0054】
図3に例示されるダイクロイックミラー21aの場合、短辺の長さSは30mm、面取り部の短辺方向の長さCは5mmであり、2×C/S=0.33となるため、条件式(3)を満たしている。また、
図4に例示されるダイクロイックミラー31aの場合、短辺の長さSは30mm、面取り部の短辺方向の長さCは9mmであり、2×C/S=0.6となるため、条件式(3)を満たしている。
【0055】
また、
図5Aに示すように、光学フィルタのサイズが従来に比べて大きいことから、フィルタブロック21はダイクロイックミラー21aから漏れ出た励起光(以降、漏れ光と記す)がフィルタブロック21内で反射して検出光路へ入射しやすい構成となっている。このため、
図5Bに示すように、フィルタブロック21は、ダイクロイックミラー21aの代わりに、基板の両面に干渉膜がコーティングされたダイクロイックミラー41aを含むことが望ましい。両面に干渉膜がコーティングされたダイクロイックミラー41aを用いることで、漏れ光の光量を抑えることができる。
【0056】
また、
図1に示すように、結像レンズ8側の光学ユニット20に含まれるフィルタブロック21には、ダイクロイックミラー21aを回転させて光軸に対する角度を調整する手段が設けられていることが望ましい。たとえば、ダイクロイックミラー面をネジ部21dで押して角度を変えられるような機構である。ダイクロイックミラー21aはダイクロイックミラー11aに比べて対物レンズ7からの距離が長いため、角度誤差による照射位置の変動が大きい。このため、ダイクロイックミラー21aは光軸に対する角度を高い精度で設定する必要がある。顕微鏡100では、ダイクロイックミラーの角度調整機構が設けられていることでダイクロイックミラー21aの角度を適宜調整することができる。なお、ダイクロイックミラーの角度を調整するための機構は、光学ユニット20内の他のフィルタブロックにも同様に設けられていることが望ましい。
【0057】
以下、
図6、
図7A、
図7Bを参照しながら、本実施例に係る顕微鏡100の光学ユニット20内で、有効径が大きい光学フィルタを含むフィルタブロック21を光軸上に配置した場合と有効径が小さい光学フィルタを含むフィルタブロック25を配置した場合での、撮像素子9に入射する検出光の光量の違いについて説明する。
図6は、本実施例に係る顕微鏡の対物レンズから結像レンズまでの光学系の断面図である。
図6に示される光学系のレンズデータは、以下のとおりである。
s r d nd vd
IMG INF 148.3305
1 INF 8.7111
2 -40.6619 3.0298 1.64450 40.82
3 50.7100 6.0238 1.83400 37.16
4 -84.3099 0.6973
5 102.8477 3.4742 1.80610 40.92
6 37.5679 7.7321 1.48749 70.23
7 -68.7541 35.0000
8 INF 15.0000
9 INF 55.0000
10 INF 15.0000
11 INF 70.0000
12 INF -3.9523
13 16.8356 3.0324 1.49700 81.54
14 INF 0.1300
15 12.7726 3.2167 1.49700 81.54
16 19.9601 2.7687 1.48749 70.23
17 6.3912 5.6402
18 -8.2650 1.2763 1.55836 54.01
19 9.8106 3.6739 1.43875 94.93
20 -10.2087 6.5068
21 INF 4.5781 1.43875 94.93
22 -11.8739 1.1100
23 35.6271 4.0793 1.56907 71.30
24 -83.9358 0.2125
25 9.2112 2.7505 1.49700 81.54
26 -55.2737 6.0670 1.67300 38.15
27 10.0179 3.8000
28 INF 0.1700 1.52100 56.02
OBJ INF
【0058】
ここで、sは面番号を、rは曲率半径(mm)を、dは面間隔(mm)を、ndはd線に対する屈折率を、vdはアッベ数を示す。なお、IMGは像面を、OBJは標本面を示している。また、面番号s2から面番号s7までは結像レンズ8のレンズ面を、面番号s13から面番号s27までは対物レンズ7のレンズ面を示している。面番号s8は光学ユニット20内の吸収フィルタの位置を、面番号s9は光学ユニット20内のダイクロイックミラーと光軸との交点の位置を示している。面番号s10は光学ユニット10内の吸収フィルタ11cの位置を、面番号s11は光学ユニット10内のダイクロイックミラー11aと光軸との交点の位置を示している。面番号s12は対物レンズ7の胴付き面を、面番号s27はカバーガラスの対物レンズ7側の面を示している。
【0059】
図7Aは、光学ユニット10内でフィルタブロック11を光軸上に配置し、光学ユニット20内でフィルタブロック25を光軸上に配置した場合に、標本面が均一に発光したときの像面における照度分布を示した図である。
図7Bは、光学ユニット10内でフィルタブロック11を光軸上に配置し、光学ユニット20内でフィルタブロック21を光軸上に配置した場合に、標本面が均一に発光したときの像面における照度分布を示した図である。
【0060】
図7Aに示されるように、対物レンズ7側の光学ユニット10と結像レンズ8側の光学ユニット20で同じ大きさの光学フィルタを用いた場合には、視野数22すなわち像高11の視野周辺部分は中心部分に対して56パーセント程度の光量しか検出することができない。これに対して、
図7Bに示されるように、対物レンズ7側の光学ユニット10と結像レンズ8側の光学ユニット20で異なる大きさの光学フィルタを用いた場合には、視野数22の視野周辺部分は中心部分に対して84パーセント程度の光量を検出することができる。
【0061】
このように、対物レンズ7側の光学ユニット10と結像レンズ8側の光学ユニット20で異なる大きさの光学フィルタを用いることで、軸外光のケラレの発生を大幅に抑制して周辺光量の不足を改善することができる。その結果、広い観察視野を確保することが可能となる。
【実施例2】
【0062】
図8は、本実施例に係る顕微鏡の構成を示した図である。
図8に例示される顕微鏡101は、
図1に例示される実施例1に係る顕微鏡100と同様に、対物レンズ7と結像レンズ8の間に複数の光学ユニット(光学ユニット10、光学ユニット20)を備えた倒立顕微鏡である。
【0063】
顕微鏡101は、ランプハウス4と投光管5の代わりに結像レンズ51と撮像素子52が設けられている点と、ランプハウス1と投光管2の代わりにランプハウス4と投光管5が設けられている点が、顕微鏡100と異なっている。その他の構成は、顕微鏡100と同様であるので、同一の符号を付して説明を省略する。
【0064】
対物レンズ7側の光学ユニット10は、ランプハウス4内の励起用光源4aから出射された励起光を投光管5内のレンズ群6を介して対物レンズ7の光軸に導入するための光学ユニットである。光学ユニット10に導入された励起光は、対物レンズ7を介して標本全体に照射され、例えば、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET:Fluorescence Resonance Energy Transfer)現象を引き起こす。
【0065】
結像レンズ8側の光学ユニット20は、FRET現象により生じる2波長の蛍光を分離して、一方の波長の蛍光を撮像素子9へ、他方の波長の蛍光を撮像素子52へ導くための光学ユニットである。このため、顕微鏡101では、フィルタブロック21に含まれる励起フィルタ21bは、検出対象である蛍光のみを透過させる吸収フィルタとして機能する。
【0066】
本実施例に係る顕微鏡101でも、実施例に係る顕微鏡100と同様に、フィルタブロック21内の光学フィルタの有効径がフィルタブロック11内の光学フィルタの有効径よりも大きいため、対物レンズ7から遠い結像レンズ8側のフィルタブロック21における軸外光のケラレの発生が抑制されて、周辺光量の低下が軽減される。従って、顕微鏡101によっても、複数の光学ユニットにより実現される多様な機能を備えた上で、広い観察視野を確保することが可能であり、実施例1に係る顕微鏡100と同様の効果を得ることができる。
【0067】
なお、実施例1及び実施例2では、顕微鏡の具体的な構成を示して説明したが、顕微鏡の構成は、実施例1に係る顕微鏡100や実施例2に係る顕微鏡101の構成に限られず、種々の変形が可能である。
【0068】
図1及び
図8では、対物レンズ7と結像レンズ8との間に、光学ユニットが2つ備えられた顕微鏡が例示されているが、光学ユニットの数は2つに限られない。光学ユニットの数は2つ以上であればよく、例えば、さらにAF用光学ユニットなどを設けてもよい。
【0069】
また、
図1及び
図8では、倒立顕微鏡が例示されているが、本実施例に係る発明の適用範囲は倒立顕微鏡に限られない。対物レンズ7と結像レンズ8の間に複数の光学ユニットを備えた顕微鏡であれば、正立顕微鏡にも同様に適用することができる。
【0070】
また、
図1及び
図8では、ランプハウスが投光管に直接接続された構成が例示されているが、ランプハウスと投光管の間に光ファイバを設けて、顕微鏡本体への熱の伝導を抑えるように構成してもよい。また、光源についても、ランプ光源に限られず、レーザー光源など任意の光源を用いてもよい。
【0071】
また、
図2A及び
図2Bでは、フィルタブロックを切り替える切替機構として、ターレット式の切替機構29を例示したが、切替機構はターレット式の切替機構に限られず、例えば、複数のフィルタブロックが装着されたスライド式の切替機構であってもよい。
【0072】
また、
図2Aでは、フィルタブロックを8つ装着可能な切替機構29を例示したが、切替機構は複数のフィルタブロックを装着できればよく、より好ましく6個以上のフィルタブロックを装着できればよい。なお、従来は、フィルタブロックが一般的なサイズより大きいダイクロイックミラー(以降、XLミラーと記す)を含む場合には、フィルタブロック自体も大きくなることから、通常サイズのフィルタブロックとXLミラーを含むフィルタブロックで切替機構に装着できる最大装着数が異なっていた。しかし、本発明の各実施例に係る顕微鏡では、ダイクロイックミラーのサイズによらずフィルタブロックのサイズをほぼ同じにすることで、切替機構にダイクロイックミラーのサイズによらず同数のフィルタブロックを装着することができる。
また、光学ユニット10、光学ユニット20は、顕微鏡本体に対して着脱可能に構成されていてもよい。
また、光学ユニット10及び光学ユニット20を、必要に応じて適宜追加し、または、1つを取り外しても、顕微鏡として使用することができる。
また、複数の光学ユニットでは、切替機構の構成が共通化されているため、切替機構に装着されるフィルタブロックが適宜交換できる。また、光学ユニットに装着する投光管や観察光学系等は着脱可能に構成されている。光学ユニットでは、投光管や観察光学系を複数の光学ユニットに装着した位置、投光管や観察光学系の種類に合わせて、フィルタブロックが選択されるものとしてもよい。