(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガス流通路が内部に形成された筒状のガス栓本体に、閉じ位置と開き位置との間で前記ガス栓本体の軸方向に移動自在なスライド弁と、前記ガス流通路のガス流通方向で前記スライド弁よりも上流側に配置された過流出防止弁とが備えられているガス栓であって、
前記過流出防止弁は、受圧部にてガスの流動圧を受けることで、下流側に設けられる下流側部材の被嵌合部から離間してガスの流通を許容する初期位置から、前記下流側部材の前記被嵌合部に嵌合される状態でガスの流通を阻止する作動位置へ移動自在に構成され、
前記下流側部材には、上流側から下流側へのガス流動を許容する開口が設けられ、前記開口の上流側内周面に前記被嵌合部が設けられ、
前記過流出防止弁には、前記被嵌合部に嵌合可能な嵌合部が設けられ、
前記下流側部材は、前記スライド弁の閉じ位置と開き位置との間での移動に伴って、上流側から下流側へ移動自在に構成されており、
前記過流出防止弁を前記ガス流通路の軸心方向で下流側から上流側へ付勢する付勢手段が設けられ、
前記付勢手段は、その付勢力が、前記下流側部材の前記被嵌合部に前記過流出防止弁の前記嵌合部が嵌合している状態で、前記下流側部材の上流側から下流側への移動に伴って、前記被嵌合部と前記嵌合部との嵌合による摩擦力より大きくなる状態で設けられているガス栓。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係るガス栓の実施形態を図面に基づいて説明する。
<第1実施形態>
この第1実施形態のガス栓は、
図1及び
図2に示すように、ガス流通路1が内部に形成された円筒状のガス栓本体2を備えており、そのガス栓本体2にガス接続具100を装着することでガス流通路1でのガス流通によりガス接続具100に接続されたガス器具へのガス供給を行い、ガス栓本体2からガス接続具100を取り外すことでガス流通路1でのガス流通を停止してガス器具へのガス供給を停止する、所謂ガスコンセントとして構成されている。
図1は、ガス接続具100をガス栓本体2から取り外している状態(ガス流通はスライド弁Gにより停止されている状態)を示しており、
図2は、ガス接続具100をガス栓本体2に装着している状態(ガス流通はスライド弁Gにより停止されている状態)を示している。
【0024】
ガス栓本体2には、ガス流通路1を開閉自在なスライド弁Gと、ガス流通路1でのガス流量が一定以上の過流量となった場合に作動状態となってガス流通を阻止する過流出防止機構Hとを備えて構成されている。
【0025】
ガス流通路1は、その流路断面を円形状とし、ガス栓本体2の軸心に沿う方向(
図1及び
図2で矢印Xに沿う方向)に沿う直線状に設けられており、ガス栓本体2の軸心に沿う方向とガス流通路1のガス流通方向が同一方向となっている。ガス流通路1は、流路径が変更された複数の流路部位1a〜1fから構成されており、ガス流通方向の上流側(
図1及び
図2で矢印xの先端側)から順に、過流出防止弁H2及び過流出防止弁H2に対する弁座を有する下流側部材H3等から成る過流出防止機構H、スライド弁Gが備えられている。
複数の流路部位としては、ガス流通方向の上流側から順に、第1流路部位1a、第2流路部位1b、第3流路部位1c、第4流路部位1d、第5流路部位1e、及び第6流路部位1fが備えられている。第1流路部位1aは、ガス流入口(図示省略)に連通されており、第2流路部位1bは、第1流路部位1aよりも流路径が小さく構成されており、第3流路部位1cは、第2流路部位1bよりも流路径が小さく構成されている。第2流路部位1b及び第3流路部位1cには、過流出防止弁H2が配設されている。第4流路部位1dは、第3流路部位1cよりも流路径が大きく構成されており、第3流路部位1c及び第4流路部位1dに、過流出防止機構Hの過流出防止弁H2が嵌合する下流側部材H3が配設されている。第5流路部位1eは、第4流路部位1dと略同程度の流路径に構成されており、第6流路部位1fは、上流側よりも下流側の方が流路径を小さくする傾斜状に形成されており、ガス栓本体2の先端部に形成されたガス流出口3に連通されている。
尚、ガス栓本体2は、第4流路部位1dと第5流路部位1eとの間で、分離可能に構成されている。
これにより、例えば、比較的流路径の狭い第6流路部位1f及び第5流路部位1eを取り外した状態として、ガス栓本体2の内部の過流出防止機構Hの調整等を行うことができる。
【0026】
スライド弁Gは、ガス流通路1における第5流路部位1eを閉弁自在な第1弁体G1と、ガス流通路1における第6流路部位1fを閉弁自在な第2弁体G2とを備えている。
第1弁体G1は、第5流路部位1eと第4流路部位1dとに亘ってガス栓本体2の軸方向に沿って移動自在に設けられている。第1弁体G1の上流側の部位の外径が第5流路部位1eの流路径と同一となっており、第1弁体G1が着座する弁座部が第5流路部位1eの内壁に設けられたシール部材G1aにて構成されている。第1弁体G1は、第5流路部位1eに移動した場合に第5流路部位1eを閉じる閉じ位置(
図1に示す位置)に位置し、第4流路部位1dに移動した場合にガス流通を許容する開き位置(
図2に示す位置)に位置する。第1弁体G1は、第1付勢部材F1によって閉じ位置に復帰するように付勢されており、ガス接続具100がガス栓本体2から取り外されている場合には、閉じ位置に位置して第5流路部位1eを閉弁している。
【0027】
第2弁体G2は、第5流路部位1eと第6流路部位1fとに亘ってガス栓本体2の軸方向に沿って移動自在に設けられている。第2弁体G2の下流側端部部位の外径が第6流路部位1fの傾斜部位の流路径と同一となっており、第2弁体G2が着座する弁座部が第6流路部位1fの傾斜部位にて構成されている。第2弁体G2は、第6流路部位1fに移動した場合に第6流路部位1fを閉じる閉じ位置(
図2に示す位置)に位置し、第5流路部位1eに移動した場合にガス流通を許容する開き位置(
図1に示す位置)に位置する。第2弁体G2は、第2付勢部材F2によって閉じ位置に復帰するように付勢されており、ガス接続具100がガス栓本体2から取り外されている場合には、閉じ位置に位置して第6流路部位1fを閉弁している。
このようにして、スライド弁Gを構成する第1弁体G1と第2弁体G2の両者は、ガス栓本体2の軸方向に沿って閉じ位置と開き位置との間で移動自在で、ガス流通路1を閉じる閉じ位置に復帰するように付勢されている。
【0028】
ガス栓本体2に対して装着及び取り外し自在なガス接続具100について説明する。このガス接続具100は、既に公知の構成であるので、詳細な説明は省略して簡単に説明する。
ガス接続具100は、第1コイルバネ101により前方側(
図1及び
図2で矢印Xの先端側)に付勢される突出部材102と、ロック用ボール103と、ロック用ボール103の位置を径方向の内側から規制するとともに、ガス栓本体2の先端部に当接して押圧されて引退する内径部材104と、ガス栓本体2に装着される際にスライド弁Gを押圧する棒状の押圧部105とを備えている。
【0029】
ガス接続具100をガス栓本体2に装着する場合には、
図2に示すように、ガス栓本体2の先端部が内径部材104に当接して内径部材104を第2コイルバネ106の付勢力に抗して引退させる。内径部材104の引退によりロック用ボール103が径方向の内側に移動して、ガス栓本体2に形成された嵌込溝2aにロック用ボール103が嵌り込んで、突出部材102が第1コイルバネ101の付勢力により前方側(
図2で矢印Xの先端側)に突出する。このように、ガス接続具100のロック用ボール103がガス栓本体2の嵌込溝2aに嵌り込むことで、ガス接続具100がガス栓本体2に外嵌装着される。ガス接続具100がガス栓本体2に装着される際に、ガス接続具100の押圧部105にてスライド弁Gが押圧される。この押圧部105によるスライド弁Gに対する押圧によって、第1弁体G1と第2弁体G2の両者が、ガス栓本体2の軸方向に沿ってガス流通路1の上流側(
図2で矢印Xの先端側)に移動して、閉じ位置から開き位置に移動することになり、ガス流通路1が開弁されてガス器具へのガス供給が行われる。
【0030】
ガス接続具100をガス栓本体2から取り外す場合には、突出部材102を第1コイルバネ101の付勢力に抗して押込操作することで、嵌込溝2aへのロック用ボール103の嵌り込みが解除されるので、ガス接続具100をガス栓本体2から取り外すことができる。そして、ガス接続具100をガス栓本体2から取り外すと、スライド弁Gに対する押圧部105による押圧が解除され、第1弁体G1と第2弁体G2の両者が、付勢部材F1,F2の付勢力によって、ガス栓本体2の軸方向に沿ってガス流通路1の下流側(
図2で矢印Xの基端側)に移動して、開き位置から閉じ位置に復帰されてガス流通路1が閉弁される。
【0031】
〔過流出防止機構〕
本願のガス栓は、ガス流通路1でのガス流量が一定以上となり外部へ流出する過流出を防止する過流量防止機構が設けられている。以下、その構成について説明する。
過流出防止機構Hは、
図3に示すように、第2流路部位1b及び第3流路部位1cに設けられており、内部にガスを流通する流路が形成された筒状部材H1と、第4流路部位1d及び第3流路部位1cに設けられる下流側部材H3とを備えている。
筒状部材H1の内部には、ガス流通を許容する初期位置(
図3(a)(b)に示す位置)とガス流通を阻止する作動位置(
図3(c)に示す位置)とにガス栓本体2の軸心方向に移動自在な過流出防止弁H2と、過流出防止弁H2をガス栓本体2の軸方向に移動自在に支持する支持部材H4が設けられている。
【0032】
過流出防止弁H2は、ガス圧を受ける上流側の受圧部H2aと、ガス流通路1の軸心方向(
図3で矢印Xに沿う方向)に延びる軸部H2bとを備えており、当該軸部H2bが、上記支持部材H4に軸心方向で移動自在に外嵌支持されている。
過流出防止弁H2は、作動位置よりも上流側にある初期位置に復帰付勢されており、当接部材H5によって初期位置に位置保持されている。そして、過流出防止弁H2は、ガス流通が一定以上の過流量となると、当該ガス流動のガス圧を受圧部H2aにて受けることにより、初期位置(
図3(a)(b)に示す位置)から作動位置(
図3(c)に示す位置)に移動自在に構成されている。
過流出防止弁H2には、下流側(
図3で矢印Xの基端側)に膨出する膨出形状を有すると共に、下流側部材H3の被嵌合部H3cに嵌合する嵌合部H2cが設けられている。
尚、当該第1実施形態にあっては、
図3に示す断面視において、半円形状の部材をその凹部側を上流側に向けて受圧部H2aとして構成すると共に、凸部側を下流側に向けて嵌合部H2cとして構成している。
【0033】
下流側部材H3は、その下流側にて第1弁体G1と一体的に構成されており、スライド弁Gとしての第1弁体G1の開き位置と閉じ位置との間での移動に伴って、上流側と下流側との間を移動自在に構成されている。さらに、下流側部材H3は、その上流側にガス流通を許容する開口H3bが設けられると共に、当該開口H3bの上流側内周面に過流出防止弁H2の嵌合部H2cに嵌合する被嵌合部H3cが設けられている。当該被嵌合部H3cが過流出防止弁H2の弁座となる。
下流側部材H3は、スライド弁Gが閉じ位置から開き位置に移動して、上流側の嵌合可能位置(
図3(c)に示す位置)に移動しているときに、一定以上のガス流量が発生すると、その被嵌合部H3cに過流出防止弁H2の嵌合部H2cを嵌合させる。これにより、ガスの過流出が防止されることとなる。当該嵌合状態にあっては、たとえ上流側のガス圧が低下しても、機械的操作を受けない限り、過流出防止弁H2は、初期位置に復帰することはない。
ここで、過流出防止弁H2を上流側へ付勢する第1付勢部材F1は、その付勢力が、下流側部材H3の上流側から下流側への移動に伴って、被嵌合部H3cと嵌合部H2cとの嵌合による摩擦力より大きくなるように設けられている。このため、下流側部材H3は、その被嵌合部H3cに過流出防止弁H2の嵌合部H2cが嵌合している状態において、スライド弁Gが開き位置から閉じ位置に移動すると、上流側の嵌合可能位置(
図3(c)に示す位置)から下流側の嵌合解除位置(
図3(a)に示す位置)への移動に伴って、被嵌合部H3cに対する嵌合部H2cの嵌合が解除される。
つまり、過流出防止弁H2は、第1付勢部材F1の付勢力による機械的操作を受けることにより、作動位置(
図3(c)に示す位置)から初期位置(
図3(a)に示す位置)へ復帰することとなる。
結果、過流出防止弁H2が初期位置へ移動して、過流出を防止する作動状態が解除される。
【0034】
次に、
図3に基づいて、スライド弁G、過流出防止機構Hの働きについて、説明する。
図3(a)は、ガス接続具100をガス栓本体2から取り外している状態を示している。この状態ではガスは流出しない。
図3(b)は、ガス接続具100をガス栓本体2に装着した状態を示している。この状態でガスの流通及び供給が可能となる。
図3(c)は、ガス接続具100をガス栓本体2に装着しているときに、過流出防止弁H2が初期位置から作動位置に移動した状態を示している。この状態で、過流出が防止される。
【0035】
図3(a)に示すように、ガス接続具100をガス栓本体2から取り外している場合には、スライド弁Gが閉じ位置に位置しており、ガス流通路1がスライド弁Gにて閉弁されている。このとき、下流側部材H3は下流側の嵌合解除位置に位置すると共に、過流出防止弁H2は、第3付勢部材F3にて上流側へ付勢され当接部材H5に当接して、初期位置に位置している。
【0036】
図3(b)に示すように、ガス接続具100がガス栓本体2へ装着されると、ガス接続具100の押圧部105がスライド弁Gをガス流通路1の上流側に押圧して、スライド弁Gが閉じ位置から開き位置へ移動してガス流通路1を開弁させる。このとき、スライド弁Gの移動に伴って、下流側部材H3が、上流側の嵌合可能位置まで移動する。
【0037】
図3(c)に示すように、ガス流量が一定以上の過流量となると、そのガス流量の流動圧により、過流出防止弁H2が初期位置から作動位置まで移動すると共に、その嵌合部H2cが下流側部材H3の被嵌合部H3cに嵌合し、ガスの過流出が防止される。
【0038】
図3(d)に示すように、過流出防止弁H2が作動している状態(
図3(d)に示す状態)で、ガス接続具100をガス栓本体2から取り外す操作を行うと、ガス接続具100の押圧部105によるスライド弁Gに対する上流側への押圧が解除されて、第1付勢部材F1及び第2付勢部材F2の付勢力によってスライド弁Gがガス栓本体2の軸心方向に沿って開き位置から閉じ位置に移動する。
このとき、スライド弁Gの移動に伴って、下流側部材H3が上流側の嵌合可能位置から嵌合解除位置(
図3(d)及び
図3(a)に示す位置)へ移動して、下流側部材H3の被嵌合部H3cと過流出防止弁H2の嵌合部H2cとの嵌合が解除される。これにより、過流出防止弁H2が、第3付勢部材F3にて上流側へ付勢されて、操作位置から初期位置へ復帰する。
【0039】
<第2実施形態>
これまで説明してきた実施の形態では、本発明に係るガス栓を、ガス栓本体2に対するガス接続具100の装着及び取り外しに伴ってスライド弁Gを閉じ位置と開き位置との間で移動させてガス器具へのガスの供給と停止との切り替えを行う所謂ガスコンセントとして構成したが、以下に、本発明に係るガス栓を、操作部に対する手動操作に伴ってスライド弁を閉じ位置と開き位置との間で移動させてガス器具へのガスの供給と停止との切り替えを行う、所謂ツマミ付きガス栓として構成した実施形態について、
図5〜
図11に基づいて説明する。尚、これまで説明してきた実施形態と同様の構成については、説明を割愛する場合がある。
【0040】
本実施形態のつまみ付きガス栓として構成されたガス栓は、
図5及び
図6に示すように、弁収容部5と、当該弁収容部5に対して夫々が開口するガス流入路1A及びガス流出路1Bが、内部に形成されたガス栓本体2と、弁収容部5に収容され、ガス流入路1Aとガス流出路1Bとの間の開閉を行う弁機構部Aと、操作部11に対する操作に伴って弁機構部Aを開閉させる操作機構部Bとを備えている。
以下、ガス栓本体2、弁機構部A、及び操作機構部Bの詳細構成について、順次説明する。
【0041】
〔ガス栓本体〕
ガス流入路1A及びガス流出路1Bの夫々は、互いの軸線X、Yを直角に交差する状態でガス栓本体2の内部に配置された円形断面を有する流路である。具体的には、ガス流入路1Aの軸線Xを上下方向に配置すると共に、ガス流出路1Bの軸線Yを横向きに配置することで、本実施形態のガス栓は所謂L型のガス栓として構成されている。このように構成されたL型のガス栓は、下から上に向けてガス栓本体2に流入したガスgを横向きに吐出して、側方に配置されたガス機器(図示せず)等に供給する。尚、本実施形態においてガス栓を上記L型のガス栓として構成するのではなく、例えば、ガス流出路1Bを斜め下向きに設けるなど、ガス流入路1Aとガス流出路1Bとの交差角度は適宜改変可能である。
また、弁収容部5は、ガス流入路1Aの上方延長上にガス栓本体2の内部に形成された円形断面を有する空間であり、弁収容部5の下方にはガス流入路1Aが開口し、弁収容部5の側方にはガス流出路1Bが開口することになる。
【0042】
〔弁機構部〕
ガス流入路1A及びガス流出路1Bの何れか一方の特定ガス流通路をガス流入路1Aとし、同特定ガス流通路の軸線である特定軸線をガス流入路1Aの軸線Xとすると、弁機構部Aは、当該特定ガス流通路であるガス流入路1Aの弁収容部5に対する開口部1Aaに形成された弁座部6と、同特定軸線である軸線Xに沿ってスライドして弁座部6に対して着座して当該開口部1Aaを閉塞する閉じ位置(
図5に示す位置)と、軸線Xに沿ってスライドして弁座部6に対して離間して当該開口部1Aaを開放する開き位置(
図7に示す位置)との間で変位するスライド弁G'とを有して構成されている。
即ち、スライド弁G'は、上下方向に配置されたガス流入路1Aの軸線Xに沿って、上下方向にスライドする。そして、そのスライド範囲の上端位置が、スライド弁G'が弁座部6に着座して開口部1Aaを閉塞する閉じ位置であり、同範囲の下端位置が、スライド弁G'が弁座部6に対して離間して当該開口部1Aaを開放する開き位置となる。よって、本実施形態において、開き位置側とは下方側を示し、閉じ位置側とは上方側を示すことになる。
ここで、
図8及び
図9にはスライド弁G'が閉じ位置にある状態が示されており、
図5及び
図7にはスライド弁G'が開き位置にある状態が示されている。
【0043】
〔操作機構部〕
操作機構部Bは、操作者による操作部11に対する下向きの押圧操作をスライド弁G'に伝達させて当該スライド弁G'と共にスライド可能なスライド部Cと、スライド部Cを軸線Xに沿って開き位置側から閉じ位置側に向かう上向きに付勢する軸線付勢手段Dと、スライド部Cのスライドをガイドするガイド部20とからなる。
操作部11は、ガス流入路1Aの軸線Xと同軸上に配置されガス栓本体2の上部を覆う逆カップ状の操作ボタン10の上底部の上面として設けられている。
また、操作ボタン10は、軸線Xに沿って上下方向にスライド可能に設けられており、更に操作ボタン10の上底部の下面とガス栓本体2の上面との間には、ガス栓本体2に対し操作ボタン10を上向きに付勢するコイルバネ13が介挿されている。
尚、このコイルバネ13は、巻線部分が隣接間において互いに離間している通常のコイルバネが利用されており、軸線Xに沿って圧縮力を受けることで同軸線Xに沿って膨張力を発生する。
【0044】
スライド部Cは、軸線X周りに回転自在に設けられたガイドピン18と、当該ガイドピン18を軸線X周りの方向に付勢する回転付勢手段Eとを有して構成されている。
ガイドピン18は、軸線Xと同軸上に配置され当該軸線Xに沿ってスライド可能な円柱状の軸部材17の外表面において、軸部材17の円形断面の径外方向に向けて突出形成されている。
一方、回転付勢手段Eは、操作ボタン10における上底部の下面に一端部が固定され、上記軸部材17の上面に他端部が固定されて、ガス流入路1Aの軸線Xと同軸上に配置されたねじりコイルバネ15で構成されている。
尚、このねじりコイルバネ15は、巻線部分が隣接間において互いに密着しているコイルバネであり、ある回転方向にねじりモーメントを受けることで当該回転方向とは逆の回転方向(
図5における右方向)に反発力を発生する。更に、かかるねじりコイルバネ15は、巻線部分が隣接間において互いに密着していることで、一端側から受けた操作部11の軸線Xに沿った下方向の押圧力を、他端側の軸部材17に伝達することができる。
ねじりコイルバネ15の両端部には、突起部16が設けられており、突起部16を含む巻線部分が、操作ボタン10における上底部の下面に形成された溝部12、及び軸部材17の上面に形成された溝部19に嵌め込まれることで、ねじりコイルバネ15の両端が操作ボタン10及び軸部材17に固定されている。
【0045】
軸線付勢手段Dは、巻線部分が隣接間において互いに離間している通常のコイルバネ24からなり、軸線Xに沿って圧縮力を受けることで同軸線Xに沿って膨張力を発生する。
このコイルバネ24は、スライド弁G'の下面と、弁収容部5の下方に設けられた筒状部材H1の上面との間に軸線Xに沿って圧縮状態で介挿されており、筒状部材H1の上面に対してスライド弁G'を上向きに付勢する形態で、スライド弁G'とスライド部Cとを軸線Xに沿って開き位置側から閉じ位置側に向かう上向きに付勢する。
【0046】
ガイド部20は、ガイドピン18が挿入されて当該ガイドピン18の軸線X上のスライド及び軸線X周りの回転を誘導するガイド溝22を外表面に形成した筒状部材21で構成されている。
更に、このガイド溝22には、操作部11に押圧力を付加してスライド弁G'を閉じ位置から開き位置まで変位させるときにガイドピン18をねじりコイルバネ15の付勢力に抗して回転させる回転誘導部22a、22bと、続いて当該押圧力を抜いたときにスライド弁G'を開き位置に維持する状態でコイルバネ24及びねじりコイルバネ15により付勢されるガイドピン18が係止する係止部22cとが形成されている。
そして、このような構成により、本実施形態のガス栓は、詳細については後述するが、操作部11に対する一の押圧操作により開栓動作が行われ、それに続く操作部11に対する一の押圧操作により閉栓動作が行われる所謂プッシュプッシュ式の開閉動作を実現している。
【0047】
図10(a)に示すように、このガイド溝22において、回転誘導部22a、22bの開き位置側の端部が、ねじりコイルバネ15の軸線X周りの付勢力に抗する回転方向において係止部22cより回転奥側(例えば
図10(a)において左側)に位置する。回転誘導部22a、22bの開き位置側の端部から係止部22cにかけて、ガイド溝22がコイルバネ24の軸線Xに沿った付勢方向側(即ち上方側)に膨出してなる膨出部22dが形成されている。
よって、ガイドピン18が、その膨出部22dを介して、回転誘導部22a、22bの開き位置側の端部から係止部22cに向けてガイド溝22の上辺に沿って直接的に移動可能となり、係止部22cに適切に係止されるようになる。尚、この膨出部22dの形状等は適宜変更可能であり、また、膨出部22dを省略して、開き位置側回転誘導部22bの途中に上方に切れ込む係止部22cを形成し、開き位置側の端部にガイドピン18がある状態で操作部11に付加する押圧力f11を取り除いたときに、ガイドピン18が開き位置側回転誘導部22bを若干逆行しその途中にある係止部22cに係止されるように構成しても構わない。
【0048】
この回転誘導部22a、22bは、軸線X周りの方向において係止部22cよりも開き位置側に配置された開き位置側回転誘導部22bと係止部22cよりも閉じ位置側に配置された閉じ位置側回転誘導部22aとからなる。
更に、ガス流入路1Aの軸線Xの直交面をSとすると、開き位置側回転誘導部22bにおける直交面Sに対するガイド溝22のリード角αbが、閉じ位置側回転誘導部22aの同リード角αaよりも小さく設定されている。
即ち、開栓動作において、操作部11に押圧力が付加され回転誘導部22a、22bに沿って誘導されるガイドピン18は、閉じ位置側から係止部22cが形成された位置までの間は閉じ位置側回転誘導部22aに沿って変位し、その係止部22cが形成された位置からそれよりも回転奥側に形成された開き位置側の端部までの間は開き位置側回転誘導部22bに沿って変位することになる。
そして、開き位置側回転誘導部22bのリード角αbが、閉じ位置側回転誘導部22aのリード角αaよりも小さいので、ねじりコイルバネ15の付勢力に抗してガイドピン18を開き位置側回転誘導部22bに沿って変位させるために必要な操作部11に対する押圧力は、閉じ位置側回転誘導部22aに沿って変位させるときよりも大きくなる。
以下、ガイド溝22の詳細構成について、本実施形態のガス栓の開閉動作時におけるガイド溝22におけるガイドピン18の遷移状態とあわせて、
図10及び
図11等に基づいて説明する。尚、
図10及び
図11において、ガイド溝22は、筒状部材21の外周面を平面に展開したときの状態で示されている。
【0049】
〔開栓動作時〕
先ず、本実施形態のガス栓の開栓動作時のガイド溝22におけるガイドピン18の位置の遷移状態について、
図10等に基づいて説明する。
スライド弁G'が閉じ位置にあって閉栓しているとき(
図5参照)には、ガイドピン18は、
図10(a)に示すように、ガイド溝22において回転誘導部22aの閉じ位置側の端部(
図10(a)において右上端部)に位置している。
次に、操作部11に押圧力f11を付加し、その押圧力f11がスライド部Cに伝達されると、スライド部Cに設けられたガイドピン18は、
図10(b)に示すように、ガイド溝22において閉じ位置側回転誘導部22aと開き位置側回転誘導部22bとの境界部に移動する。
この移動の際に、ガイドピン18は、コイルバネ24による軸線Xに沿った開き位置側から閉じ位置側へ向かう上向きの付勢力fdに抗して閉じ位置側から開き位置側へ向かう下向きに変位すると共に、ねじりコイルバネ15による軸線X周りの方向への付勢力feに抗して回転することになる。
即ち、閉じ位置側回転誘導部22aと開き位置側回転誘導部22bとの境界部に位置するガイドピン18には、
図10(b)において、上向きの付勢力fdと右向きの付勢力feとが付加された状態となっている。
【0050】
更に、操作部11に比較的大きい押圧力f11を付加すると、ガイドピン18は、
図10(c)に示すように、ガイド溝22において開き位置側回転誘導部22bの回転奥側(
図10(c)の左側)の端部に移動し、それに伴ってスライド弁G'は開き位置(
図7参照)に変位する。
この移動の際においても、ガイドピン18は、コイルバネ24による上向きの付勢力fdとねじりコイルバネ15による右向きの付勢力feに抗して左下方向に移動することになり、移動後のガイドピン18には、上向きの付勢力fdと右向きの付勢力feとが付加された状態となっている。
尚、これら付勢力fd、feは、ガイドピン18の左下方向への変位量が増加するに伴って増加するが、説明を簡単にするためにそれらの符号は同じものを使用する。
【0051】
次に、上記のように操作部11に対して付加していた押圧力f11を取り除くと、
図10(d)に示すように、コイルバネ24による上向きの付勢力fdとねじりコイルバネ15による右向きの付勢力feによって、ガイドピン18は、膨出部22dに沿って右上方向にある係止部22cに当接する位置まで移動する。
そして、係止部22cのガイドピン18が当接する壁面の角度が、付勢力fd、feの合力が付加されているガイドピン18が回転誘導部22a、22b側に変位することを防止する角度に設定されているので、当該ガイドピン18の位置は係止部22cに係止された状態で保たれることになり、結果、
図7に示すように、スライド弁G'が開き位置で維持されて、開栓動作が完了する。
【0052】
〔閉栓動作時〕
次に、本実施形態のガス栓の閉栓動作時のガイド溝22におけるガイドピン18の位置の遷移状態について、
図11等に基づいて説明する。
スライド弁G'が開き位置にあって開栓しているとき(
図8参照)には、ガイドピン18は、
図11(a)に示すように、係止部22cに係止される位置にある。
次に、操作部11に比較的小さな押圧力f11'を付加し、その押圧力f11'がスライド部Cに伝達されると、スライド部Cに設けられたガイドピン18は、
図11(b)に示すように、付勢力fd、feに抗して左下向きに若干変位することで、係止部22cにおける係止が解除された位置に変位する。
この際に、操作部11に付加される押圧力f11'は、上述した開栓動作時に付加した押圧力f11よりも小さなものとなっているため、ガイドピン18は、例えば開き位置側回転誘導部22bに沿って開き位置側に変位することはない。
更に、開き位置側回転誘導部22bのリード角αbが閉じ位置側回転誘導部22aのリード角αaよりも小さく、ねじりコイルバネ15の付勢力feに抗してガイドピン18を開き位置側回転誘導部22bに沿って開き位置側へ変位させるためには比較的大きな押圧力が必要となるので、その押圧力よりも小さな押圧力f11'で操作部11を押圧した場合には、ガイドピン18が開き位置側回転誘導部22bに沿って回転奥側に変位することはない。
【0053】
次に、上記のように操作部11に対し付加されていた押圧力f11'を取り除くと、
図11(c)に示すように、コイルバネ24による上向きの付勢力fdとねじりコイルバネ15による右向きの付勢力feによって、ガイドピン18は、閉じ位置側回転誘導部22aに沿って右上方向に移動し、結果、
図5に示すように、それに伴ってスライド弁G'が開き位置から閉じ位置まで変位して、閉栓動作が完了する。
尚、本実施形態では、ガイド溝22の回転誘導部を閉じ位置側回転誘導部22aと開き位置側回転誘導部22bとで構成したが、当該回転誘導部を一様のもので構成しても構わない。また、回転誘導部22a、22bのリード角αa、αbについては、一様のものとせずに、例えば閉じ位置側から開き位置側にかけて徐々に減少させるなど、適宜改変可能である。
【0054】
〔過流出防止機構〕
本実施形態のガス栓は、一定以上の流量のガスgが流れると当該ガス供給を遮断するために、
図5に示すように、特定ガス流通路としてのガス流入路1Aには、過流出防止弁H2を備えた過流出防止機構Hとスライド弁G’とが設けられている。尚、本実施形態のスライド弁G’は、第1実施形態の第1弁体G1と形状が異なるものの、本質的な働きは同じである。以下、過流出防止機構Hの働きを、
図5〜9に基づいて説明する。
過流出防止弁H2は、
図8に示すように、スライド弁G’が開き位置にあって下流側部材H3が上流側の嵌合可能位置にあるときに、その受圧部H2aにて、一定以上のガス流量による受動圧を受けると、初期位置(
図8に示す位置)から作動位置(
図9に示す位置)に移動する。これにより、過流出防止弁H2の嵌合部H2cが下流側部材H3の被嵌合部H3cに嵌合して、ガスの過流出が阻止される。当該嵌合状態にあっては、たとえ上流側のガス圧が低下しても、機械的操作を受けない限り、過流出防止弁H2は、初期位置に復帰することはない。
この状態で、操作機構部Bが操作されて、スライド弁G’が開き位置から閉じ位置へ移動(
図9から
図5へ移動)する過程において、下流側部材H3が上流側の嵌合可能位置から嵌合解除位置に移動することとなり、当該移動に伴って、過流出防止弁H2を上流側へ付勢(上述の機械的操作に相当)する第1付勢部材F1の付勢力が、被嵌合部H3cと嵌合部H2cとの嵌合に伴う摩擦力よりも大きくなり、過流出防止弁H2が初期位置から作動位置へ復帰する形態で、過流出防止が解除される。
【0055】
<別実施形態>
(1)上記実施形態においては、第1弁体G1の上流側に下流側部材H3を連結する構成を示したが、第1弁体G1に下流側部材H3の機能を持たせるように構成しても構わない。
【0056】
(2)上記第1実施形態では、複数の流路部位における中心軸を同一として、ガス流通路1を一直線状に設けているが、例えば、
図4に示すように、ガス流通路1の上流側部位における中心軸とガス流通路1の下流側部位における中心軸とを流路径方向にずらした直線状のガス流通路1を形成することもできる。このように、ガス流通路1をガス栓本体2の軸方向に沿う直線状に設けるとは、上記第1実施形態の如く、一直線とするものに限らず、
図4に示すように、流路径方向にずらしたものも含まれるものとする。
【0057】
(3)上記第2実施形態では、スライド弁Gの外面がガス流通路1の内面に着座してガス流通路1を閉止する例を示したが、例えば、ガス流通路1の内面にシール部材を設け、当該シール部材にスライド弁Gが着座する形態で、ガス流通路1を閉止するようにしても構わない。
【0058】
(4)上記実施形態では、下流側部材H3は、その下流側にて第1弁体G1と一体的に構成されている例を示したが、下流側部材H3と第1弁体G1とは別体に構成しても構わない。この場合、下流側部材H3の下流側を第1弁体G1と連結し、第1弁体G1の閉じ位置と開き位置との間の移動に伴って、上流側と下流側との間で移動するように構成することが好ましい。