特許第5988690号(P5988690)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988690
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】分光センサ
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/36 20060101AFI20160825BHJP
   G01J 3/26 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   G01J3/36
   G01J3/26
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-114341(P2012-114341)
(22)【出願日】2012年5月18日
(65)【公開番号】特開2013-242179(P2013-242179A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124291
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】柴山 勝己
(72)【発明者】
【氏名】笠原 隆
【審査官】 塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05784507(US,A)
【文献】 特開昭53−039784(JP,A)
【文献】 特開昭58−195127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00−3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティ層並びに前記キャビティ層を介して対向する第1及び第2のミラー層が設けられた第1の領域を有し、前記第1の領域において前記第1のミラー層側から前記第2のミラー層側に入射位置に応じて決定された波長の光を透過させる干渉フィルタ部と、
前記第1の領域を透過した光が入射する受光面を有し、前記受光面に入射した光を検出する光検出基板と、
前記キャビティ層から前記第1及び前記第2のミラー層の少なくとも一方に至っており、前記受光面と交差する所定の方向から見た場合に前記第1の領域を光学的に分離するセパレータと、を備え
前記干渉フィルタ部は、前記所定の方向から見た場合に前記第1の領域を環状に包囲する第2の領域を更に有し、
前記キャビティ層は、前記第1及び前記第2の領域に渡って、連続して形成されている、分光センサ。
【請求項2】
前記セパレータは、前記キャビティ層から少なくとも前記第2のミラー層に至っている、請求項1記載の分光センサ。
【請求項3】
前記セパレータは、前記キャビティ層から前記第1及び前記第2のミラー層の両方に至っている、請求項2記載の分光センサ。
【請求項4】
前記干渉フィルタ部と前記光検出基板との間に配置され、前記干渉フィルタ部から前記光検出基板に進行する光を透過させる第1のカップリング層を更に備え、
前記セパレータは、前記第2のミラー層を介して前記第1のカップリング層に至っている、請求項1〜3のいずれか一項記載の分光センサ。
【請求項5】
前記干渉フィルタ部に入射する光を透過させる光透過基板と、
前記光透過基板と前記干渉フィルタ部との間に配置され、前記光透過基板から前記干渉フィルタ部に進行する光を透過させる第2のカップリング層と、を更に備え、
前記セパレータは、前記第1のミラー層を介して前記第2のカップリング層に至っている、請求項1〜4のいずれか一項記載の分光センサ。
【請求項6】
前記キャビティ層と前記第2のカップリング層とは、同一の材料からなる、請求項5記載の分光センサ。
【請求項7】
前記第1のミラー層と前記第2のミラー層との間の前記所定の方向における距離は、変化しており、
前記セパレータの前記受光面側の端部と前記受光面との間の前記所定の方向における距離は、一定となっており、
前記セパレータの前記受光面と反対側の端部と前記受光面との間の前記所定の方向における距離は、一定となっている、請求項1〜6のいずれか一項記載の分光センサ。
【請求項8】
前記セパレータは、前記所定の方向から見た場合に前記受光面を横切るように延在している、請求項1〜7のいずれか一項記載の分光センサ。
【請求項9】
前記干渉フィルタ部と前記光検出基板との間に配置され、前記受光面に入射する光の反射を防止する反射防止膜を更に備える、請求項1〜8のいずれか一項記載の分光センサ。
【請求項10】
前記光検出基板の前記干渉フィルタ部側の表面には、前記受光面に入射する光の反射を防止する反射防止処理が施されている、請求項1〜8のいずれか一項記載の分光センサ。
【請求項11】
前記所定の方向は、前記受光面に垂直な方向である、請求項1〜10のいずれか一項記載の分光センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の分光センサとして、所定の波長範囲の光を入射位置に応じて選択的に透過させる光学フィルタ部と、光学フィルタ部を透過した光を検出する光検出基板と、を備えるものが知られている。例えば、特許文献1に記載された分光センサにおいては、光学フィルタ部と光検出基板との間、或いは光学フィルタ部に対する光の入射側に、FOP(Fiber Optic Plate)が配置されている。また、特許文献2に記載された分光センサにおいては、光学フィルタ部と光検出基板との間に、光の入射角を制限する角度制限フィルタが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−129908号公報
【特許文献2】特開2011−203247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された分光センサのうち、光学フィルタ部と光検出基板との間にFOPが配置された分光センサや、特許文献2に記載された分光センサでは、光学フィルタ部と光検出基板との間の領域における光のクロストークの抑制が図られている。また、特許文献1に記載された分光センサのうち、光学フィルタ部に対する光の入射側にFOPが配置された分光センサでは、光学フィルタ部に入射する光の入射角を制限することで、光学フィルタ部における光のクロストークの抑制が図られている。しかしながら、これらの分光センサにあっては、光学フィルタ部における光のクロストークの抑制が十分ではなく、その結果、光検出基板の受光面の所定の位置で検出される光の波長範囲が広くなったり迷光成分が多くなったりするなど、フィルタ特性が劣化する場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、フィルタ特性の向上を図ることができる分光センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の分光センサは、キャビティ層並びにキャビティ層を介して対向する第1及び第2のミラー層を有し、所定の波長範囲の光を第1のミラー層側から第2のミラー層側に入射位置に応じて選択的に透過させる干渉フィルタ部と、干渉フィルタ部を透過した光が入射する受光面を有し、受光面に入射した光を検出する光検出基板と、キャビティ層から第1及び第2のミラー層の少なくとも一方に至っており、受光面と交差する所定の方向から見た場合に干渉フィルタ部を光学的に分離するセパレータと、を備える。
【0007】
この分光センサでは、受光面と交差する所定の方向から見た場合に干渉フィルタ部がセパレータによって光学的に分離されており、そのセパレータがキャビティ層から第1及び第2のミラー層の少なくとも一方に至っている。これにより、例えば、干渉フィルタ部に入射する光の入射角を制限するための構成をセパレータとは別に採用しなくても、キャビティ層において、受光面に平行な方向への光の伝播が抑制されるので、干渉フィルタ部における光のクロストークの抑制を十分に図ることができる。しかも、セパレータによって、光検出基板の受光面に入射する光の入射角が制限されるので、干渉フィルタ部の入射位置に対応する受光面の所定の位置に光を精度良く入射させることができる。よって、この分光センサによれば、フィルタ特性の向上を図ることが可能となる。
【0008】
ここで、セパレータは、キャビティ層から少なくとも第2のミラー層に至っていてもよい。この構成によれば、第2のミラー層と光検出基板の受光面との間での光の多重反射及び干渉に起因する迷光の発生を抑制することができ、フィルタ特性の更なる向上を図ることが可能となる。
【0009】
更に、セパレータは、キャビティ層から第1及び第2のミラー層の両方に至っていてもよい。この構成によれば、第2のミラー層と光検出基板の受光面との間での光の多重反射及び干渉に起因する迷光の発生を抑制することができることに加え、キャビティ層がセパレータによって確実に分離されることになるので、干渉フィルタ部における光のクロストークの抑制をより十分に図ることができる。
【0010】
また、分光センサは、干渉フィルタ部と光検出基板との間に配置され、干渉フィルタ部から光検出基板に進行する光を透過させる第1のカップリング層を更に備え、セパレータは、第2のミラー層を介して第1のカップリング層に至っていてもよい。この構成によれば、第2のミラー層と光検出基板の受光面との間での光の多重反射及び干渉に起因する迷光の発生を抑制することができることに加え、セパレータによって、光検出基板の受光面に入射する光の入射角がより一層制限されることになるので、干渉フィルタ部の入射位置に対応する受光面の所定の位置に光をより精度良く入射させることができる。
【0011】
また、分光センサは、干渉フィルタ部に入射する光を透過させる光透過基板と、光透過基板と干渉フィルタ部との間に配置され、光透過基板から干渉フィルタ部に進行する光を透過させる第2のカップリング層と、を更に備え、セパレータは、第1のミラー層を介して第2のカップリング層に至っていてもよい。この構成によれば、セパレータによって、干渉フィルタ部に入射する光の入射角が制限されることになるので、干渉フィルタ部における光のクロストークの抑制をより十分に図ることができる。
【0012】
このとき、キャビティ層と第2のカップリング層とは、同一の材料からなってもよい。この構成によれば、キャビティ層と第2のカップリング層との積層工程を容易に実現することができる。また、セパレータを例えばドライエッチングにより設ける場合には、エッチングガス等の条件を同一にすることができるため、形状精度の高いセパレータを実現することができる。また、屈折率が同一であることから安定したフィルタ特性を得ることも可能となる。更に、光の入射角を制限するためのセパレータのコリメート特性の均一化を図ることができる。なお、同一とは、完全に同一の場合だけでなく、製造誤差等の範囲内で略同一の場合を含む意味である。
【0013】
また、第1のミラー層と第2のミラー層との間の所定の方向における距離は、変化しており、セパレータの受光面側の端部と受光面との間の所定の方向における距離は、一定となっており、セパレータの受光面と反対側の端部と受光面との間の所定の方向における距離は、一定となっていてもよい。この構成によれば、光の入射角を制限するためのセパレータのコリメート特性の均一化を図ることができる。なお、一定とは、完全に一定の場合だけでなく、製造誤差等の範囲内で略一定の場合を含む意味である。
【0014】
また、セパレータは、所定の方向から見た場合に受光面を横切るように延在していてもよい。この構成によれば、受光面の全領域において、適切に分光された光(すなわち、波長範囲が狭く且つ迷光成分が少ない光)を検出することができる。
【0015】
また、分光センサは、干渉フィルタ部と光検出基板との間に配置され、受光面に入射する光の反射を防止する反射防止膜を更に備えてもよい。或いは、光検出基板の干渉フィルタ部側の表面には、受光面に入射する光の反射を防止する反射防止処理が施されていてもよい。これらの構成によれば、第2のミラー層と光検出基板の受光面との間での光の多重反射及び干渉に起因する迷光の発生を抑制することができ、フィルタ特性の更なる向上を図ることが可能となる。
【0016】
また、所定の方向は、受光面に垂直な方向であってもよい。この構成によれば、分光センサの構造を単純化することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、フィルタ特性の向上を図ることができる分光センサを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施形態の分光センサの縦断面図である。
図2図1のII−II線に沿っての一部断面図である。
図3図1の分光センサのパッド部の周辺部分の拡大縦断面図である。
図4図1の分光センサの干渉フィルタ部の中央部分の拡大縦断面図である。
図5図1の分光センサにおける受光部の画素とセパレータとの関係を示す図である。
図6図1の分光センサの製造方法を説明するための縦断面図である。
図7図1の分光センサの製造方法を説明するための縦断面図である。
図8図1の分光センサの製造方法を説明するための縦断面図である。
図9図1の分光センサの製造方法を説明するための縦断面図である。
図10図1の分光センサの製造方法を説明するための縦断面図である。
図11図1の分光センサの製造方法を説明するための縦断面図である。
図12図1の分光センサの変形例の縦断面図である。
図13図1の分光センサの変形例の縦断面図である。
図14】本発明の第2の実施形態の分光センサの縦断面図である。
図15図14の分光センサの変形例の縦断面図である。
図16】分光センサに820nm、860nm、900nm、940nm、980nmの輝線を照射した際の光の波長と分光センサから出力される信号強度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1の実施形態]
【0020】
図1に示されるように、第1の実施形態の分光センサ1Aは、干渉フィルタ部20Aと、光検出基板30Aと、干渉フィルタ部20A及び光検出基板30Aを収容するパッケージ2と、を備えている。パッケージ2は、樹脂等により直方体箱状に形成されており、高さ方向における一方の側(干渉フィルタ部20A及び光検出基板30Aに対する光の入射側)に開口している。なお、以下の説明では、パッケージ2の長さ方向をX軸方向とし、パッケージ2の幅方向をY軸方向とし、パッケージ2の高さ方向をZ軸方向とする。
【0021】
光検出基板30Aは、パッケージ2内において底壁2a上に固定されている。干渉フィルタ部20Aは、第1のカップリング層3を介して光検出基板30A上に接合されている。第1のカップリング層3は、干渉フィルタ部20Aと光検出基板30Aとの間において、干渉フィルタ部20Aから光検出基板30Aに進行する光を透過させる。干渉フィルタ部20A上には、保護膜5が形成されている。一例として、第1のカップリング層3は、原料ガスとしてTEOS(Tetraethyl Orthosilicate,Tetraethoxysilane)を用いた成膜処理によって形成されたシリコン酸化膜であり、その厚さは数十nm〜数十μm程度である。また、保護膜5はSiO等からなり、その厚さは数十nm〜数十μm程度である。
【0022】
光検出基板30Aは、X軸方向を長手方向とし且つZ軸方向を厚さ方向とする矩形板状の半導体基板31を有する半導体受光素子である。半導体基板31において一方の側の表面31aを含む部分には、受光部32が形成されている。受光部32は、Y軸方向に延在するライン状のフォトダイオードがX軸方向に沿って一次元に配列されたフォトダイオードアレイである。受光部32は、干渉フィルタ部20Aを透過した光が入射する受光面32aを有しており、光検出基板30Aは、受光面32aに入射した光を検出するように構成されている。一例として、半導体基板31の厚さは数十μm〜数百μm程度である。また、受光部32のX軸方向の長さは百μm〜数十mm程度であり、受光部32のY軸方向の幅は数μm〜数十mm程度である。なお、光検出基板30Aは、他の半導体受光素子(C−MOSイメージセンサ、CCDイメージセンサ、赤外線イメージセンサ等)であってもよい。
【0023】
半導体基板31の表面31aには、受光部32に対して電気信号を入出力するための配線33のパッド部33aが形成されている。更に、半導体基板31の表面31aには、受光部32及び配線33を覆うように反射防止膜34が形成されており、反射防止膜34上には、干渉フィルタ部20A側の表面がCMP(Chemical Mechanical Polishing)により平坦化された平坦化層35が形成されている。反射防止膜34は、干渉フィルタ部20Aと光検出基板30Aとの間において、受光面32aに入射する光の反射を防止する。一例として、反射防止膜34は、Al、TiO、Ta、SiO、SiN、MgF等からなる単層膜或いは積層膜であり、その厚さは数十nm〜数十μm程度である。また、平坦化層35はSiO等からなり、その厚さは数十nm〜数十μm程度である。
【0024】
干渉フィルタ部20Aは、キャビティ層21並びにキャビティ層21を介して対向する第1及び第2のミラー層22,23を有している。干渉フィルタ部20Aは、所定の波長範囲の光を第1のミラー層22側から第2のミラー層23側に入射位置に応じて選択的に透過させるLVF(Linear Variable Filter)である。一例として、キャビティ層21は、シリコンの熱酸化処理によって形成されたシリコン酸化膜(SiO膜)であり、その厚さは数十nm〜数十μm程度である。また、各ミラー層22,23は、Si、Ge、SiN、SiO、TiO、Ta、Nb、Al、MgF等の誘電体多層膜からなるDBR(Distributed Bragg Reflector)層であり、その厚さは数十nm〜数十μm程度である。
【0025】
図1及び図2に示されるように、干渉フィルタ部20Aは、第1のフィルタ領域24及び第2のフィルタ領域25を有している。第1のフィルタ領域24は、Z軸方向(受光面32aに垂直な方向)から見た場合に、光検出基板30Aの受光面32aに対応している。つまり、第1のフィルタ領域24及び受光面32aは、Z軸方向から見た場合にそれらの一方が他方を含む(X軸方向の長さ及びY軸方向の幅の少なくとも一方が互いに等しい場合を含む)ように形成されている。第2のフィルタ領域25は、Z軸方向から見た場合に、第1のフィルタ領域24を環状(ここでは、矩形環状)に包囲している。
【0026】
図1に示されるように、第1のフィルタ領域24におけるキャビティ層21の表面21aは、XY平面に平行となっている。一方、第1のフィルタ領域24におけるキャビティ層21の裏面21bは、X軸方向における裏面21bの一端21cがX軸方向における裏面21bの他端21dよりも受光面32aを含む平面(例えば、半導体基板31の表面31a)に近付くように、XY平面に対して傾斜している。一例として、第1のフィルタ領域24におけるキャビティ層21の厚さは、X軸方向における一方の側に向かって数十nm〜数μm程度の範囲で漸増している。
【0027】
第2のフィルタ領域25におけるキャビティ層21の表面21a及び裏面21bは、XY平面に平行となっている。受光面32aを含む平面から第2のフィルタ領域25におけるキャビティ層21の表面21aまでのZ軸方向における距離(以下、単に「距離」といった場合には「Z軸方向における距離」を意味する)は、受光面32aを含む平面から第1のフィルタ領域24におけるキャビティ層21の表面21aまでの距離と等しくなっている。一方、受光面32aを含む平面から第2のフィルタ領域25におけるキャビティ層21の裏面21bまでの距離は、受光面32aを含む平面から第1のフィルタ領域24におけるキャビティ層21の裏面21bの他端21dまでの距離と等しくなっている。
【0028】
以上のように、キャビティ層21は、第1のフィルタ領域24及び第2のフィルタ領域25に渡って、連続して形成されている。そして、第1のフィルタ領域24及び第2のフィルタ領域25におけるキャビティ層21の表面21aは、面一となっている。一方、第1のフィルタ領域24におけるキャビティ層21の裏面21bと、第2のフィルタ領域25におけるキャビティ層21の裏面21bとの間には、一端21cで最大となり且つ他端21dで最小(ここでは、0)となる高さを有する段差が形成されている。なお、他端21dでのキャビティ層21の厚さは500nm程度である。
【0029】
また、第1のミラー層22は、第1のフィルタ領域24及び第2のフィルタ領域25に渡って、キャビティ層21の表面21aに連続して形成されている。一方、第2のミラー層23は、第1のフィルタ領域24及び第2のフィルタ領域25に渡って、キャビティ層21の裏面21b及び段差の縦面(蹴上げ面)に連続して形成されている。そして、第1のフィルタ領域24においては、第1のミラー層22と第2のミラー層23との間の距離が変化している。また、第2のフィルタ領域25においては、第1のミラー層22と第2のミラー層23との間の距離が一定となっている。
【0030】
図1及び図2に示されるように、光検出基板30Aが有する配線33のパッド部33aは、Z軸方向から見た場合に第2のフィルタ領域25に含まれるように、半導体基板31の表面31aに複数形成れている。より具体的には、パッド部33aは、X軸方向における表面31aの両端領域のそれぞれにおいて、Y軸方向に沿って複数並設されている。図1及び図3に示されるように、第2のフィルタ領域25には、パッド部33aを外部に露出させるための貫通孔6がパッド部33aごとに複数形成されている。各貫通孔6は、反射防止膜34、平坦化層35、第1のカップリング層3、第2のフィルタ領域25(すなわち、キャビティ層21並びに第1及び第2のミラー層22,23)及び保護膜5をZ軸方向に沿って貫通し、パッド部33aの一部(全部であってもよい)を外部に露出させている。なお、図1図3とでは縦横比が異なっているが、これは、図1において各層の厚さを強調しているためであり、図1よりも図3のほうが実際の縦横比に近いものとなっている。
【0031】
各パッド部33aには、貫通孔6を介してワイヤ7が接続されている。一例として、ワイヤ7は、Auからなり、その一端のボール部7aが超音波振動を与えられながらパッド部33aの表面に熱圧着されたものである。貫通孔6の内面とボール部7aとの間には、ボール部7aの接触によって第2のフィルタ領域25等にダメージが与えられるのを防止するために、隙間が設けられている。ワイヤ7の他端は、パッケージ2の底壁2aを介して、底壁2aの外面に設けられた実装用のパッド部8に接続されている。
【0032】
図1及び図4に示されるように、干渉フィルタ部20Aには、Y軸方向に延在するセパレータ15がX軸方向に沿って一次元に配列されている。セパレータ15は、光吸収性、光反射性或いは遮光性を有しており、Z軸方向から見た場合に干渉フィルタ部20Aの第1のフィルタ領域24を光学的に分離している。一例として、セパレータ15は、W、Al、Cu、Si、光吸収性樹脂等からなる。また、各セパレータ15のX軸方向における幅は数μm〜数十μm程度であり、各セパレータ15のZ軸方向における高さは1μm〜数百μm程度であり、各セパレータ15の断面(ZX平面に平行な断面)のアスペクト比は1〜数百程度である。
【0033】
各セパレータ15は、Z軸方向から見た場合に光検出基板30Aの受光面32aを横切るように延在している。このように受光面32aを横切るように延在していれば、各セパレータ15は、分光センサ1Aの側面に至っていてもよいし、分光センサ1Aの側面に至っていなくてもよい。各セパレータ15は、キャビティ層21から第1のミラー層22を介して保護膜5の表面5aに至っている。その一方で、各セパレータ15は、キャビティ層21から第2のミラー層23及び第1のカップリング層3を介して平坦化層35の途中に至っている。そして、各セパレータ15の受光面32aと反対側の端部15aと受光面32aとの間の距離は一定となっている。同様に、各セパレータ15の受光面32a側の端部15bと受光面32aとの間の距離は一定となっている。なお、各セパレータ15の端部15bは、反射防止膜34の裏面34bと受光面32aとの界面に位置していてもよい。
【0034】
以上のように構成された分光センサ1Aでは、パッケージ2の開口を介してパッケージ2内に光が入射すると、当該光は、保護膜5を透過して干渉フィルタ部20Aの第1のフィルタ領域24に入射し、所定の波長範囲の光が入射位置に応じて選択的に透過させられる。そして、第1のフィルタ領域24を透過した光は、第1のカップリング層3、平坦化層35及び反射防止膜34を透過して、光検出基板30Aの受光面32aに入射する。このとき、光検出基板30Aの受光部32の各チャネルに入射する光の波長は、入射位置でのキャビティ層21の厚さ、並びに第1及び第2のミラー層22,23の材料及び厚さによって、一意に決定される。これにより、光検出基板30Aでは、受光部32のチャネルごとに異なる波長の光が検出される。
【0035】
以上説明したように、分光センサ1Aでは、Z軸方向から見た場合に干渉フィルタ部20Aの第1フィルタ領域24がセパレータ15によって光学的に分離されており、セパレータ15がキャビティ層21から第1及び第2のミラー層22,23の両方に至っている。これにより、例えば、干渉フィルタ部20Aに入射する光の入射角を制限するための構成をセパレータ15とは別に採用しなくても、キャビティ層21においてX軸方向への光の伝播が抑制されるので、干渉フィルタ部20Aにおける光のクロストークの抑制を十分に図ることができる。更に、セパレータ15が第2のミラー層23に至っているので、第2のミラー層23と光検出基板30Aの受光面32aとの間での光の多重反射及び干渉に起因する迷光の発生を抑制することができる。しかも、セパレータ15によって、光検出基板30Aの受光面32aに入射する光の入射角が制限されるので、干渉フィルタ部20Aの入射位置に対応する受光面32aの所定の位置に光を精度良く入射させることができる。よって、分光センサ1Aによれば、フィルタ特性の向上を図ることが可能となる。
【0036】
また、分光センサ1Aでは、例えば、干渉フィルタ部20Aに入射する光の入射角を制限するための構成をセパレータ15とは別に採用した場合以上に、キャビティ層21においてX軸方向への光の伝播が抑制される。従って、干渉フィルタ部20Aに入射する光の入射角を制限するための構成をセパレータ15とは別に採用することが不要となり、分光センサ1Aの薄型化及び低コスト化を図ることができる。
【0037】
また、セパレータ15は、第2のミラー層23を介して第1のカップリング層3に至っている(分光センサ1Aでは、光検出基板30Aの受光面32a上に至っている)。これにより、第2のミラー層23と受光面32aとの間での光の多重反射及び干渉に起因する迷光の発生を抑制することができることに加え、セパレータ15によって、受光面32aに入射する光の入射角がより一層制限されることになるので、干渉フィルタ部20Aの入射位置に対応する受光面32aの所定の位置に光をより精度良く入射させることができる。
【0038】
また、第1のミラー層22と第2のミラー層23との間の距離が変化しているのに対し、セパレータ15の端部15aと光検出基板30Aの受光面32aとの間の距離、及びセパレータ15の端部15bと光検出基板30Aの受光面32aとの間の距離のそれぞれは、一定となっている。これにより、光の入射角を制限するためのセパレータ15のコリメート特性の均一化を図ることができる。
【0039】
また、セパレータ15は、Z軸方向から見た場合に光検出基板30Aの受光面32aを横切るように延在している。これにより、受光面32aの全領域において、適切に分光された光(すなわち、波長範囲が狭く且つ迷光成分が少ない光)を検出することができる。
【0040】
また、干渉フィルタ部20Aと光検出基板30Aとの間には、光検出基板30Aの受光面32aに入射する光の反射を防止する反射防止膜34が配置されている。この構成も、第2のミラー層23と受光面32aとの間での光の多重反射及び干渉に起因する迷光の発生の抑制、延いてはフィルタ特性の向上に寄与している。
【0041】
ここで、セパレータ15による光の入射角の制限について説明する。図4に示されるように、隣り合うセパレータ15,15間の距離をdとし、セパレータ15の高さをhとすると、隣り合うセパレータ15,15間を通過し得る光の入射角θ(ZX平面内での入射角)の最大値は、下記式(1)で表される。これにより、許容し得る入射角θの最大値に応じて、セパレータ15のアスペクト比等を設定することができる。
θ=90°−tan−1(h/d)=tan−1(d/h)・・・(1)
【0042】
なお、セパレータ15は、図5の(a)に示されるように、光検出基板30Aの受光部32において隣り合う画素37,37間の領域に対応するように形成されていてもよいし、図5の(b)に示されるように、当該領域に加え、各画素37に少なくとも一つが対応するように形成されていてもよい。図5の(a)の場合には、受光部32での受光感度が低下するのを抑制することができる。一方、図5の(b)の場合には、隣り合うセパレータ15,15間の距離が小さくなるため、セパレータ15の高さを小さくしても、隣り合うセパレータ15,15間を通過し得る光の入射角の最大値が大きくなるのを抑制することができる(上記式(1)参照)。
【0043】
次に、上述した分光センサ1Aの製造方法について説明する。なお、以下の各工程は、分光センサ1Aに対応する部材が複数形成されたウェハを用いて実施してもよく、その場合には、最後に分光センサ1Aごとにウェハをダイシングし、干渉フィルタ部20Aが接合された光検出基板30Aに個片化する。
【0044】
まず、図6の(a)に示されるように、シリコン基板50の一方の主面50a及び他方の主面50bに熱酸化処理を施すことにより、シリコンからなるハンドル基板51の一方の主面51a及び他方の主面51bにシリコン酸化膜52を形成し、ハンドル基板51の一方の主面51a又は他方の主面51bに形成されたシリコン酸化膜52を表面層53とする。ここでは、ハンドル基板51の一方の主面51aに形成されたシリコン酸化膜52を表面層53とする。
【0045】
続いて、図6の(b)に示されるように、表面層53上にレジスト層54を塗布し、図7の(a)に示されるように、キャビティ層21をエッチングにより形成するためにレジスト層54をパターニングする。続いて、図7の(b)に示されるように、レジスト層54をマスクとして、ハンドル基板51上に設けられた表面層53をエッチング(エッチバック)することにより、キャビティ層21を形成する。
【0046】
続いて、図8の(a)に示されるように、キャビティ層21上に第2のミラー層23を形成する。第2のミラー層23を形成するに際しては、イオンプレーティング法、蒸着法、スパッタ法等により成膜する。また、必要に応じて、ホトエッチ及びリフトオフ、或いはエッチングによるパターニングを行う。続いて、図8の(b)に示されるように、第2のミラー層23を覆うようにシリコン酸化膜を形成し、その表面をCMPにより平坦化して第1のカップリング層3を形成する。
【0047】
続いて、図9の(a)に示されるように、光検出基板30Aの平坦化層35の表面に第1のカップリング層3の表面をダイレクトボンディング(表面活性化接合等)する。続いて、図9の(b)に示されるように、研削、研磨、エッチング等を施すことにより、シリコン酸化膜52及びハンドル基板51を除去する。
【0048】
続いて、図10の(a)に示されるように、ハンドル基板51が除去されることにより露出したキャビティ層21上に、第2のミラー層23と同様の方法で第1のミラー層22を形成する。これにより、第1のミラー層22と第2のミラー層23とがキャビティ層21を介して対向し、干渉フィルタ部20Aが形成される。続いて、図10の(b)に示されるように、第1のミラー層22上に保護膜5を形成する。
【0049】
続いて、図11の(a)に示されるように、光検出基板30Aのパッド部33aに対応する部分及びセパレータ15を形成すべき部分にエッチングを施すことにより、貫通孔6及びスリット16を形成する。このとき、保護膜5の表面もエッチングされるが、それを想定して保護膜5の厚さを設定することで、第1のミラー層22等がエッチングによりダメージを受けるのを防止することができる。
【0050】
続いて、図11の(b)に示されるように、光吸収性、光反射性或いは遮光性の材料をスリット16内に充填してセパレータ15を形成し、必要に応じて保護膜5の表面及びセパレータ15の端部をCMPにより平坦化する。なお、光吸収性、光反射性或いは遮光性の材料をスリット16の内面にコートすることにより、セパレータ15を形成してもよい。
【0051】
続いて、図1に示されるように、干渉フィルタ部20Aが接合された光検出基板30Aをパッケージ2の底壁に2aに固定する。続いて、貫通孔6を介してワイヤ7の一端をパッド部33aに接続すると共に、パッケージ2の底壁2aを介してワイヤ7の他端をパッド部8に接続し、分光センサ1Aを得る。
【0052】
なお、第1の実施形態の分光センサ1Aにおいて、図12に示されるように、パッケージ2の開口に光透過基板11が取り付けられていてもよい。一例として、光透過基板11はガラス等からなり、その厚さは数百μm〜数mm程度である。また、光透過基板11の表面11a又は裏面11bの少なくとも一方に光学フィルタ層4が形成されていてもよい。一例として、光学フィルタ層4は誘電体多層膜や有機カラーフィルタ(カラーレジスト)であり、その厚さは数十nm〜数十μm程度である。更に、光透過基板11の材料として、所定の波長範囲の光を透過させる色ガラスやフィルタガラスが用いられてもよい。
【0053】
また、図13に示されるように、光学フィルタ層4が形成された光透過基板11が、光学樹脂材17によって保護膜5上に接合されていてもよい。更に、光検出基板30A及び干渉フィルタ部20Aとパッケージ2の側壁の内面との間に、光吸収性の樹脂材12が充填されていてもよい。この構成によれば、第1のフィルタ領域24内にノイズ光が進入するのをより確実に防止することができる。また、分光センサ1Aの全ての形態において、保護膜5は形成されていなくてもよい。
【0054】
なお、パッケージ2は、側壁を備えないものであってもよく、例えばPC基板等の上に光検出基板30Aを実装し、光透過樹脂等を用いてトランスファーモールドにより封止したSMD(Surface Mount Device)パッケージの形態であってもよい。
[第2の実施形態]
【0055】
図14に示されるように、第2の実施形態の分光センサ1Bは、CSP(Chip Size Package)として構成されている点で、SMDとして構成された第1の実施形態の分光センサ1Aと主に相違している。以下、第1の実施形態の分光センサ1Aとの相違点を中心に、第2の実施形態の分光センサ1Bについて説明する。
【0056】
分光センサ1Bにおいて、光検出基板30Bの受光部32は、半導体基板31において表面31aを含む部分に形成されている。半導体基板31には、受光部32に対して電気信号を入出力するための配線33として、表面配線33b、貫通配線33c及び裏面配線33dが形成されており、裏面配線33dには、表面実装用のバンプ電極36が設けられている。
【0057】
分光センサ1Bにおいて、干渉フィルタ部20Bは、第1のカップリング層3を介して、光検出基板30Bの反射防止膜34上に形成されている。干渉フィルタ部20Bは、キャビティ層21並びにキャビティ層21を介して対向する第1及び第2の第1のミラー層22,23を有している。干渉フィルタ部20Bは、所定の波長範囲の光を第1のミラー層22側から第2のミラー層23側に入射位置に応じて選択的に透過させるLVFである。
【0058】
干渉フィルタ部20Bは、第1のフィルタ領域24及び第2のフィルタ領域25を有している。第1のフィルタ領域24は、Z軸方向から見た場合に、光検出基板30Bの受光面32aに対応している。第2のフィルタ領域25は、Z軸方向から見た場合に、第1のフィルタ領域24を環状に包囲している。
【0059】
第1のフィルタ領域24におけるキャビティ層21の表面21aは、X軸方向における表面21aの一端21eがX軸方向における表面21aの他端21fよりも受光面32aを含む平面から離れるように、XY平面に対して傾斜している。一方、第1のフィルタ領域24におけるキャビティ層21の裏面21bは、XY平面に平行となっている。
【0060】
第2のフィルタ領域25におけるキャビティ層21の表面21a及び裏面21bは、XY平面に平行となっている。受光面32aを含む平面から第2のフィルタ領域25におけるキャビティ層21の表面21aまでの距離は、受光面32aを含む平面から第1のフィルタ領域24におけるキャビティ層21の表面21aの他端21fまでの距離と等しくなっている。一方、受光面32aを含む平面から第2のフィルタ領域25におけるキャビティ層21の裏面21bまでの距離は、受光面32aを含む平面から第1のフィルタ領域24におけるキャビティ層21の裏面21bまでの距離と等しくなっている。
【0061】
以上のように、キャビティ層21は、第1のフィルタ領域24及び第2のフィルタ領域25に渡って、連続して形成されている。そして、第1のフィルタ領域24におけるキャビティ層21の表面21aと、第2のフィルタ領域25におけるキャビティ層21の表面21aとの間には、一端21eで最大となり且つ他端21fで最小(ここでは、0)となる高さを有する段差が形成されている。一方、第1のフィルタ領域24及び第2のフィルタ領域25におけるキャビティ層21の裏面21bは、面一となっている。
【0062】
また、第1のミラー層22は、第1のフィルタ領域24及び第2のフィルタ領域25に渡って、キャビティ層21の表面21a及び段差の縦面に連続して形成されている。一方、第2のミラー層23は、第1のフィルタ領域24及び第2のフィルタ領域25に渡って、キャビティ層21の裏面21bに連続して形成されている。そして、第1のフィルタ領域24においては、第1のミラー層22と第2のミラー層23との間の距離が変化している。また、第2のフィルタ領域25においては、第1のミラー層22と第2のミラー層23との間の距離が一定となっている。
【0063】
分光センサ1Bにおいて、干渉フィルタ部20B上には、裏面11bに光学フィルタ層4が形成された光透過基板11が、第2のカップリング層9を介して接合されている。光透過基板11は、干渉フィルタ部20Bに入射する光を透過させる。第2のカップリング層9は、光透過基板11と干渉フィルタ部20Bとの間において、光透過基板11から干渉フィルタ部20Bに進行する光を透過させる。第2のカップリング層9は、キャビティ層21と同一の材料からなる。一例として、第2のカップリング層9は、原料ガスとしてTEOSを用いた成膜処理によって形成されたシリコン酸化膜であり、その厚さは数十nm〜数十μm程度である。
【0064】
分光センサ1Bにおいて、各セパレータ15は、キャビティ層21から第1のミラー層22を介して第2のカップリング層9内に至っている。その一方で、各セパレータ15は、キャビティ層21から第2のミラー層23を介して第1のカップリング層3の裏面(受光面32a側の表面)(すなわち、反射防止膜34上)に至っている。そして、各セパレータ15の端部15aと受光面32aとの間の距離は一定となっている。同様に、各セパレータ15の端部15bと受光面32aとの間の距離は一定となっている。
【0065】
以上のように構成された分光センサ1Bでは、光透過基板11に光が入射すると、光透過基板11を透過した光のうち干渉フィルタ部20Bの第1のフィルタ領域24に入射させるべき所定の波長範囲の光のみが、光学フィルタ層4によって透過させられる。光学フィルタ層4を透過した光は、第2のカップリング層9を透過して第1のフィルタ領域24に入射し、所定の波長範囲の光が入射位置に応じて選択的に透過させられる。そして、第1のフィルタ領域24を透過した光は、第1のカップリング層3及び反射防止膜34を透過して、光検出基板30Bの受光面32aに入射する。このとき、光検出基板30Bの受光部32の各チャネルに入射する光の波長は、入射位置でのキャビティ層21の厚さ、並びに第1及び第2のミラー層22,23の材料及び厚さによって、一意に決定される。これにより、光検出基板30Bでは、受光部32のチャネルごとに異なる波長の光が検出される。
【0066】
以上説明したように、分光センサ1Bでは、Z軸方向から見た場合に干渉フィルタ部20Bの第1フィルタ領域24がセパレータ15によって光学的に分離されており、セパレータ15がキャビティ層21から第1及び第2のミラー層22,23の両方に至っている。よって、分光センサ1Bによれば、上述した分光センサ1Aと同様に、フィルタ特性の向上を図ることが可能となる。
【0067】
また、分光センサ1Bでは、光透過基板11と干渉フィルタ部20Bとの間に配置された第2のカップリング層9に、セパレータ15が第1のミラー層22を介して至っている。これにより、セパレータ15によって、干渉フィルタ部20Bに入射する光の入射角が制限されることになるので、干渉フィルタ部20Bにおける光のクロストークの抑制をより十分に図ることができる。また、干渉フィルタ部20Bに入射する光の入射角が制限されると、干渉フィルタ部20Bを通過する光がコリメート光に近づくため、干渉フィルタ部20Bの透過特性をよりシャープにすることが可能となる。
【0068】
また、分光センサ1Bでは、キャビティ層21と第2のカップリング層9とが同一の材料からなっている。これにより、キャビティ層21と第2のカップリング層9との積層工程を容易に実現することができる。また、セパレータ15を例えばドライエッチングにより設ける場合には、エッチングガス等の条件を同一にとすることができるため、形状精度の高いセパレータ15を実現することができる。また、屈折率が同一であることから安定したフィルタ特性を得ることも可能となる。更に、光の入射角を制限するためのセパレータ15のコリメート特性の均一化を図ることができる。
【0069】
なお、第2の実施形態の分光センサ1Bにおいて、図15に示されるように、裏面入射型の光検出基板30Cを用いてもよい。裏面入射型の光検出基板30Cでは、受光部32は、半導体基板31において裏面31bを含む部分に形成されており、受光部32における受光面32aと反対側の表面は、遮光されている。受光部32に対して電気信号を入出力するための配線33としては、裏面配線33eが形成されており、裏面配線33eには、表面実装用のバンプ電極36が設けられている。このように、裏面入射型の光検出基板30Cを用いれば、貫通電極等が不要となるので、分光センサ1Bの低コスト化を図ることができる。
【0070】
最後に、第1及び第2の実施形態の分光センサ1A,1Bの効果について、図16を参照して説明する。図16は、分光センサに820nm、860nm、900nm、940nm、980nmの輝線を照射した際の光の波長と分光センサから出力される信号強度との関係を示すグラフであり、(a)は、第1及び第2の実施形態の分光センサ1A,1Bのもの、(b)は、第1及び第2の実施形態の分光センサ1A,1Bからセパレータ15を除いた分光センサ(以下、「セパレータなしの分光センサ」という)のものである。図16の(a)及び(b)に示されるように、第1及び第2の実施形態の分光センサ1A,1Bでは、セパレータなしの分光センサに比べ、分光された光の波長範囲が狭くなっている。これは、セパレータ15によって干渉フィルタ部20A,20Bにおける光のクロストークが抑制されて、狭帯域のフィルタ透過特性が実現されているためである。また、第1及び第2の実施形態の分光センサ1A,1Bでは、セパレータなしの分光センサに比べ、迷光成分が少なくなっている。これは、セパレータ15によって干渉フィルタ部20A,20Bにおける光のクロストークが抑制されていることに加え、第2のミラー層23と光検出基板30A,30Bの受光面32aとの間での光の多重反射及び干渉に起因する迷光の発生が抑制されているためである。
【0071】
以上、本発明の第1及び第2の実施形態について説明したが、本発明は、上述した第1及び第2の実施形態に限定されるものではない。例えば、分光センサの各構成部材の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を適用することができる。その一例として、キャビティ層の材料は、TiO、Ta、SiN、Si、Ge、Al、光透過性樹脂からなる材料等であってもよい。第1及び第2のミラー層の材料は、Al、Au、Ag等からなる厚さ数nm〜数μmの金属膜であってもよい。第1及び第2のカップリング層の材料は、光透過性樹脂等であってもよい。また、分光センサの各構成部材の寸法も一例である。また、本発明及び本実施形態において、「一定」とは、完全に一定の場合だけでなく、製造誤差等の範囲内で略一定の場合を含む意味である。「同一」、「平行」、「垂直」、「等しい」、「面一」等についても同様である。
【0072】
また、干渉フィルタ部の第1のフィルタ領域において、キャビティ層の厚さは、二次元的に変化(X軸方向だけでなくY軸方向においても変化)していてもよいし、或いはステップ状に変化していてもよい。また、光検出基板は、一次元センサに限定されず、二次元センサであってもよい。また、セパレータによる干渉フィルタ部の光学的な分離は、Z軸方向から見た場合に二次元的なものであってもよい。例えば、セパレータがY軸方向だけでなくX軸方向にも延在し、セパレータが全体として格子状になっていてもよい。
【0073】
また、セパレータは、光検出基板の受光面と交差する所定の方向から見た場合に干渉フィルタ部を光学的に分離していればよい。ただし、受光面に垂直な方向から見た場合に干渉フィルタ部を光学的に分離するセパレータを採用すれば、分光センサの構造を単純化することができる。また、セパレータは、キャビティ層から第1及び第2のミラー層の両方に至るものに限定されない。すなわち、セパレータは、キャビティ層から第1及び第2のミラー層の少なくとも一方に至っていればよい。この場合にも、干渉フィルタ部における光のクロストークの抑制を十分に図ることができると共に、干渉フィルタ部の入射位置に対応する光検出基板の受光面の所定の位置に光を精度良く入射させることができ、フィルタ特性の向上を図ることが可能となる。ただし、セパレータがキャビティ層から少なくとも第2のミラー層に至っていれば、第2のミラー層と光検出基板の受光面との間での光の多重反射及び干渉に起因する迷光の発生を抑制することができ、フィルタ特性の更なる向上を図ることが可能となる。
【0074】
なお、セパレータは、受光面に垂直な方向において、キャビティ層の少なくとも一部を分離していればよい。また、第1のミラー層に至るセパレータは、受光面に垂直な方向において、第1のミラー層の少なくとも一部を分離していればよい。同様に、第2のミラー層に至るセパレータは、受光面に垂直な方向において、第2のミラー層の少なくとも一部を分離していればよい。
【0075】
また、反射防止膜に代えて、光検出基板の干渉フィルタ部側の表面に、受光面に入射する光の反射を防止する反射防止処理が施されていてもよい。反射防止処理の一例としては、ブラックシリコン加工等の粗面化処理やナノピラー構造がある。この場合にも、第2のミラー層と光検出基板の受光面との間での光の多重反射及び干渉に起因する迷光の発生を抑制することができ、フィルタ特性の更なる向上を図ることが可能となる。
【0076】
また、干渉フィルタ部は、第1のフィルタ領域を複数有していてもよい。この場合、第2のフィルタ領域は、一つの第1のフィルタ領域ごとに当該一つの第1のフィルタ領域を包囲するように形成されていてもよいし、或いは複数の第1のフィルタ領域ごとに当該複数の第1のフィルタ領域を包囲するように形成されていてもよい。
【0077】
また、光検出基板と干渉フィルタ部との接合に、光学樹脂材による接合や分光センサの外縁部における接合を適用してもよい。光学樹脂材による接合においては、光学樹脂材の材料として、エポキシ系、アクリル系、シリコーン系の有機材料、或いは有機無機からなるハイブリッド材料等の光学樹脂を用いることができる。また、分光センサの外縁部における接合においては、スペーサによってギャップを保持しつつ、低融点ガラスや半田等によって接合することができる。この場合、接合部に包囲された領域はエアギャップとしてもよいし、或いは当該領域に光学樹脂材を充填してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1A,1B…分光センサ、3…第1のカップリング層、9…第2のカップリング層、11…光透過基板、15…セパレータ、15a,15b…端部、20A,20B…干渉フィルタ部、21…キャビティ層、22…第1のミラー層、23…第2のミラー層、30A,30B,30C…光検出基板、32a…受光面、34…反射防止膜。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16