(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表面シート、防漏シート及び両シート間に配された吸収体を具備し、長手方向の両側部に立体ギャザーが配されており、前記吸収体が、下層吸収性コアと該下層吸収性コアの肌当接面側に積層された上層吸収性コアとを有する吸収性物品であって、
前記下層吸収性コアは、吸収性物品の長手方向の中間領域に幅狭部を有し、該幅狭部の前後に該幅狭部より幅が広い前方幅広部及び後方幅広部を有しており、前方幅広部及び後方幅広部は、前記上層吸収性コアの両側縁の位置より幅方向外方に延出したフラップ部を有しており、
前記立体ギャザーは、立体ギャザー形成材と、該立体ギャザー形成材に接合された第1弾性体及び第2弾性体とを有し、前記立体ギャザー形成材は、吸収性物品の長手方向の側部に固定された一側縁を有しており、
前記立体ギャザーは、該立体ギャザーの長手方向に沿う自由端の近傍に、前記第1弾性体が伸長状態で配されており、吸収性物品の長手方向の端部領域のそれぞれにおいては、該自由端が、前記立体ギャザー形成材の前記一側縁より幅方向内方に位置するように伏倒した状態で、該自由端の近傍が、前記表面シートにおける前記上層吸収性コア上に位置する部分に固定されており、
前記立体ギャザーは、前記第1弾性体の配置位置から幅方向外方に離間した位置に、前記第2弾性体が、前方幅広部のフラップ部上から後方幅広部のフラップ部上に亘るように配されている、吸収性物品。
前記上層吸収性コアと前記下層吸収性コアとが重なっている部分の剛性が、該下層吸収性コアの前記フラップ部の剛性の1.5倍以上である、請求項1〜4の何れか1項に記載の吸収性物品。
前記下層吸収性コア及び前記上層吸収性コアの少なくとも一方に、吸収性物品の長手方向の中央線に沿って延びる貫通孔が形成されている、請求項1〜7の何れか1項に記載の吸収性物品。
前記下層吸収性コア及び前記上層吸収性コアの少なくとも一方における、吸収性物品の長手方向の中央線を挟む両側それぞれに、吸収性物品の長手方向に延びる貫通孔が、該吸収性コアの側縁との間に間隔を設けて形成されている、請求項1〜7の何れか1項に記載の吸収性物品。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を、その好ましい実施態様に基づき図面を参照しながら説明する。
本発明の一実施形態である尿とりパッド1(以下、パッド1ともいう)は、
図1及び
図2に示すように、液透過性の表面シート2と、液不透過性又は液難透過性(撥水性を含む概念)の防漏シート3と、表面シート2と防漏シート3との間に配された吸収体4とを具備する。
【0016】
尿とりパッド1は、
図1に示すように、長手方向Xの中央部に、着用時に着用者の股間部に配される中間領域Cを有し、該中間領域Cの前後に前端部領域A及び後端部領域Bを有している。
尿とりパッド1又は他の吸収性物品に関し、長手方向Xは、吸収性物品の着用時に、着用者の前後方向と一致する方向であり、幅方向Yは、該長手方向Xに直交する方向である。なお、尿とりパッド1又は他の吸収性物品の長手方向に関し、着用者の腹側に配される側を「前」又は「前側」、着用者の背側に配される側を「後」又は「後側」ともいう。「肌当接面」又は「肌当接面側」とは、吸収性物品又はその構成部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側に配される面又はその面側を意味する。「非肌当接面」又は「非肌当接面側」とは、吸収性物品又はその構成部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側に配される面又はその
面側を意味する。
【0017】
本実施形態の尿とりパッド1は、長手方向Xに延びる中央線CLを挟んで左右両側の構造が対称の構造を有しており、また、幅方向Yに延びる中央線(II−II線)を挟んで前後の構造が対称の構造を有している。そのため、尿とりパッド1は、着用時に、前端部領域A及び後端部領域Bのいずれを腹側に配しても良い。即ち、前端部領域A及び後端部領域Bは、任意に選択した一方が、着用者の腹側に配され、他方が、着用者の背側に配される。
但し、前後対称の構造としない場合や前後対称の構造とした場合の何れにおいても、前端部領域A及び後端部領域Bの何れかに、マークを付ける等して、前端部領域Aを着用者の腹側、後端部領域Bを着用者の背側に配されるように誘導しても良い。前端部領域A及び後端部領域Bは、例えば尿とりパッド1等を、その長手方向の全長を4等分して4領域に区分したときに両端に位置する領域である。
【0018】
本実施形態の尿とりパッド1について、更に具体的に説明する。尿とりパッド1は、
図1に示すように、平面視において縦長の矩形状を有し、長手方向Xに沿う互いに平行な一対の側縁11,11と、幅方向Yに沿う互いに平行な前端縁12及び後端縁13とを有している。
【0019】
表面シート2及び防漏シート3は、何れも、パッド1の長手方向Xに長い矩形状を有し、吸収体4の長手方向の端縁より延出した部分を有している。そして、それらの延出部分が公知の方法により互いに接合されている。他方、表面シート2の幅は、尿とりパッド1の幅とほぼ同一又はやや狭く、該表面シート2の側部に、後述する立体ギャザー形成材51が接合されている。
防漏シート3は、尿とりパッド1の幅より広い幅を有している。防漏シート3は、
図2〜4に示すように、防漏シート3の両側部3Sが、パッド1の肌当接面側に巻き上げられている。巻き上げられた両側部3Sの内面側に、立体ギャザー形成材51が接合されている。立体ギャザー形成材51は、
図2に示すように、表面シート2の両側部に接合された部位5cとは異なる部位5dが、防漏シート3に接合されている。
【0020】
吸収体4は、
図1〜4に示すように、下層吸収性コア41と該下層吸収性コア41の肌当接面側に積層された上層吸収性コア42とを有している。また、吸収体4は、図示しないコアラップシートを有している。コアラップシートは、1枚で、下層吸収性コア41と上層吸収性コア42を一体的に被覆することができる。また、コアラップシートは、1枚が上層吸収性コア42の肌当接面側を被覆し、別の1枚が下層吸収性コア41の非肌当接面側を被覆していてもよい。コアラップシートは、コアの形成材料の漏出を防止するものであり、各種公知のものを用いることができ、例えば、ティッシュペーパのような薄紙や透水性の不織布等が好ましく用いられる。コアラップシートとして用いる不織布としては、例えば、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)不織布等が挙げられる。
【0021】
下層吸収性コア41は、尿とりパッド1の長手方向Xと同一の方向に長い矩形状を有し、パッド1の中間領域Cに、幅狭部41cを有する。また、幅狭部41cの前後に、幅狭部41cより幅が広い前方幅広部41a及び後方幅広部41bを有している。幅狭部41cの「幅狭」は、その前後の前方幅広部41a及び後方幅広部41bとの比較において相対的に幅が狭いことを意味する。本実施形態における下層吸収性コア41においては、幅狭部41cは、互いに平行な一対の側縁411,411を有しており、前方幅広部41aも、互いに平行な一対の側縁412,412を有し、後方幅広部41bも、互いに平行な一対の側縁413,413を有している。また、前方幅広部41aは、一対の側縁412,412と幅狭部41cの互いに平行な一対の側縁411,411との間を繋ぐ、長手方向中央線CLに対して傾斜した側縁を有している。後方幅広部41bも、一対の側縁413,413と幅狭部41cの互いに平行な一対の側縁411,411との間を繋ぐ、長手方向中央線CLに対して傾斜した側縁を有している。なお、互いに平行な一対の側縁間を、直線状の傾斜した側縁で繋ぐのに代えて曲線状の側縁で繋いでも良い。
【0022】
上層吸収性コア42は、尿とりパッド1の長手方向Xと同一の方向に長い矩形状を有し、前端部領域Aから後端部領域Cに亘って幅が一定である。より具体的には、
図1及び
図2に示すように、上層吸収性コア42は、下層吸収性コア41の幅狭部41cの幅と同程度かやや狭い幅を有し、長手方向Xの全長に亘って幅が一定である。上層吸収性コア42の互いに平行な一対の側縁421は、下層吸収性コア41における、一対の側縁411,411、一対の側縁412,412及び一対の側縁413,413と同様に、平面状に延ばした状態の尿とりパッド1の長手方向と平行に延びている。
下層吸収性コア41及び上層吸収性コア42は、それぞれの4隅部が、円弧状にカットされていても良いし、斜めの直線でカットされていても良い。
【0023】
吸収体4においては、このような形状の下層吸収性コア41と上層吸収性コア42とが積層されている。そのため、前方幅広部41aは、パッド1の左右両側に、上層吸収性コアの両側縁421の位置より幅方向外方に延出した前方フラップ部41dを有している。また、後方幅広部41bも、パッド1の左右両側に、上層吸収性コアの両側縁421の位置より幅方向外方に延出した後方フラップ部41eを有している。
【0024】
本実施形態の尿とりパッド1の長手方向の両側部には、前述した立体ギャザー形成材51の一側縁5bが固定されている。立体ギャザー形成材51は、パッド1の長手方向に延びる帯状の形状を有している。
図2に示すように、立体ギャザー形成材51の、一側縁5bの他側縁側を、長手方向に沿って折り返し、立体ギャザー5の自由端5aが形成されている。自由端5aの近傍に、第1弾性体52が伸長状態で配され、伸縮性が付与されている。立体ギャザー5は、第1弾性体52及び後述する第2弾性体53の収縮力によって、幅方向の自由端5a側が、表面シート2等から離間して着用者の肌側に向かって立ち上がる。
【0025】
そして、その立体ギャザー5は、パッド1の長手方向の端部領域A,Bのそれぞれにおいては、
図4に示すように、前記自由端5aが立体ギャザー形成材51の一側縁5bより幅方向内方に位置するように伏倒した状態で、該自由端5aの近傍に、上層吸収性コア42上に固定されている部分P1がある。より詳細には、
図4に示すように、表面シート2における上層吸収性コア42上に位置する部分において、立体ギャザー5の自由端5aの近傍に、公知の接合手段により固定されている部分P1がある。
図1及び
図4中に、立体ギャザー5の自由端5aの近傍と、表面シート2とが接合されている範囲P1を示した。立体ギャザー5の自由端5aの近傍とは、自由端5aの位置を含めて該自由端5aから幅方向外方に10mm以内、好ましくは5mm以内の範囲である。また、立体ギャザー5における、上層吸収性コア42上に固定される部分(自由端5aの近傍)P1は、第1弾性体52の延長線上に位置する部分であることが好ましい。また、第1弾性体52は、固定部分P1内に存在していても良いし、存在していなくても良い。
【0026】
なお、本実施形態のパッド1における、立体ギャザー5の自由端5aは、パッド1の長手方向において、上層吸収性コア42の全長に亘っており、より具体的には、パッド1の全長に亘っている。即ち、立体ギャザー5の自由端5aは、立体ギャザー5が起立する部分の端と、立体ギャザーがその下に位置する部材に固定されて起立しない部分の端も含む概念であり、上層吸収性コア上に固定される、立体ギャザー5の自由端5aの近傍は、第1弾性体52の長手方向の端部より外方に位置する自由端5aの近傍であっても良い。
【0027】
また、本実施形態の尿とりパッド1における立体ギャザー5には、展開状態で、又は、
図2〜
図4に示すように尿とりパッドを自然に収縮させた状態で、第1弾性体52の配置位置から幅方向Y外方に離間した位置に、第2弾性体53が固定されている。また、立体ギャザー5は、尿とりパッド1を
図1に示すように平面状に延ばした展開状態で、平面視したときに、第2弾性体53は、前方幅広部41aのフラップ部41d上から後方幅広部41bのフラップ部41e上に亘るように配されている。また、第2弾性体53は、前方幅広部41aのフラップ部41d上に位置する部分と後方幅広部41bのフラップ部41e上に位置する部分との間に、何れの吸収性コア41,42上にも位置しない部分を有している。
また、立体ギャザー5は、パッド1の長手方向の端部領域A,Bのそれぞれにおいては、
図4に示すように、前記自由端5aが一側縁5bより幅方向内方に位置するように伏倒した状態で、下層吸収性コア41上に固定されている。この固定部分をP2とし、
図1及び
図4中に示した。固定部分P2において、表面シート2における下層吸収コア41に位置する部分と、立体ギャザー5とは、公知の接合手段により固定されている。立体ギャザー5における、固定部分P2は、第2弾性体53の延長線上に位置する部分であることが好ましい。また、第2弾性体53は、固定部分P2内に存在していても良いし、存在していなくても良い。
【0028】
立体ギャザー5を、上層吸収性コア42上、好ましくは上層吸収性コア42上に位置する表面シート2上に固定する好ましい固定手段ないし接合手段としては、ホットメルト型の接着剤や、ヒートシール、超音波シール、高周波シール等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。立体ギャザー形成材51における、固定部分P2を、フラップ部41d,41e上に固定する手段も同様である。なお、本実施形態における、第1弾性体52及び第2弾性体53は、何れも、立体ギャザー形成材51を折り曲げて形成した2層構造部分の2層間に、接着剤を介して長手方向Xに伸長させた状態で固定されている。接着剤を塗布した立体ギャザー形成材51間に弾性体を挟んでも良いが、弾性体の固定方法は、糸ゴムの糸にコームガンでホットメルトを塗布し、該ホットメルトを介してシートに接合する方法が、接着剤の塗布量を抑えることが出来、染み出しを抑えることができるので好ましい。
【0029】
本実施形態の尿とりパッド1は、好ましくは、従来の尿とりパッドと同様に、パンツ型使い捨ておむつ、展開型使い捨ておむつ、吸収体を有しないおむつカバー等のアウターの肌当接面側に配置して、該アウターと共に着用される。
そして、本実施形態の尿とりパッド1によれば、吸収体が長手方向に過度に縮むことによる、アウターへの位置決め性の悪化といった取り扱い性の低下や装着感の悪化といった不都合を回避できる。また、高さの高い防漏壁を形成でき、優れた漏れ防止性が得られる。
例えば、本実施形態の尿とりパッド1によれば、前方幅広部41a及び後方幅広部41bそれぞれのフラップ部41d,41eが、上層吸収性コアの側端縁421に沿って折れ曲がり易い。そのため、第1弾性体52が収縮して、立体ギャザー5が立ち上がる際に、
図5に示すように、フラップ部41d,41eが、上層吸収性コアの側端縁421に沿って折れ曲がって起立する。また、下層吸収性コア41が幅狭部41cを有することによって、フラップ部41d,41eは、幅狭部41cに近づくにつれて起立角度が漸増する。そして、幅狭部41cの両側に、立体ギャザー5及びこれによって引っ張り上げられた表面シート2や防漏シート3からなる高さの高い防漏壁が形成される。
しかも、第1弾性体52が配された立体ギャザー5の自由端5aの近傍は、下層吸収性コア41と重ね合わされた上層吸収性コア42上に固定されている。下層吸収性コア41と上層吸収性コア42とが積層された部分は、パッド1の幅方向中央部に長手方向に延びて存在し、フラップ部41d,41eより剛性が高い。そのため、製品装着時に、吸収体の縮みにより尿とりパッド1全体が長手方向に収縮し、股下部分における位置のズレや弛みといった不都合が防止される。また、製品の幅が立体ギャザーの応力によって縮むといった不都合を生じることも防止される。また、第2弾性体53によって、フラップ部41d,41eを立ち上げることができると共に、股下部分に高さが高い防漏壁が形成されると共に伸縮によるフィット性をアップすることができる。
【0030】
本実施形態の尿とりパッド1は、このような効果が一層確実に奏されるようにする観点から下記の構成を有することが好ましい。
上層吸収性コア42の幅W2は、幅狭部41cにおける下層吸収性コア41の幅W1より狭いことが好ましく、該幅W1の70%以上96%以下がより好ましい。また、上層吸収性コア42の幅W2は、前方又は後方幅広部41a,41bにおける下層吸収性コア41の幅W3の、50%以上75%以下であることが好ましい。換言すれば、前方又は後方幅広部41a,41bにおける、前方又は後方フラップ部41d,41eが上層吸収性コア42の側縁421の位置より幅方向Yの外方に延出する長さW4は、前方又は後方幅広部41a,41bの全幅W5の25%以下、特に20%以下であることが好ましく、10%以上、特に12.5%以上であることが好ましい。また、上層吸収性コア42は、下層吸収性コアの長手方向Xの端縁を超えて同方向の外方に延出する部分を有することが好ましい。
【0031】
また、本実施形態の尿とりパッド1においては、防漏シート3の両側部が肌当接面側に巻き上げられており、
図1から
図4に示すように、平面状に拡げた展開状態の尿とりパッド1において、第2弾性体53が、巻き上げられた防漏シート3の側縁3eから幅方向Yの内方に離間した位置に配されている。
これにより、股下部の防漏壁は、立体ギャザーの自由端5aから下層吸収体の股下部における側縁411までの間のより広い幅で形成されると共に防漏シート3によって起立部分の防水性を高めることができる。また、第2弾性体53の伸縮力を適宜調節することにより、防漏シート3の接着による伸縮性の低化の影響や、吸収体の剛性による伸縮性の低下の影響を抑えることが出来る。このため、股下部の防水性と伸縮の範囲が高く、フィット性が上がり股モレを防止することができる。
【0032】
また、上層吸収性コア及び下層吸収性コアは、それぞれ、パルプ繊維等の親水性繊維の集合体、またはこれに吸水性ポリマーの粒子を保持させてなるもの等を用いることができる。このような吸収性コアは、例えば、各吸収性コアに対応する形状の凹部を周面に有する積繊ドラムに、パルプシートを粉砕して形成した粉砕パルプ及び吸水性ポリマーの粒子を飛散状態で供給し、該凹部に吸引して堆積させた後、該凹部から離型し、必要に応じて加圧圧縮して得られる。
上層吸収性コア及び下層吸収性コアは、親水性繊維と吸水性ポリマーとの混合系であることが好ましい。また、上層吸収性コア及び下層吸収性コアは、それぞれの坪量が、100g/m
2以上、特に150g/m
2以上であることが好ましく、500g/m
2以下、特に400g/m
2以下であることが好ましい。
上層吸収性コアと下層吸収性コアとで、坪量が同じであっても異なっていても良い。
【0033】
また、本実施形態の尿とりパッド1においては、
図3及び
図4に示すように、下層吸収性コア41の前方幅広部41a及び後方幅広部41bにおける、上層吸収性コアの側縁421と重なる位置に、エンボス溝からなる補助可撓軸43が長手方向Xに延びて形成されている。
これにより、下層吸収性コアのフラップ部の起立性が向上し、尿とりパッド1の両側部に、一層確実に高さの高い防漏壁が形成される。側縁421と重なる位置とは、側縁421からの距離が10mm以内の範囲を含む意味である。
図示しないが、本実施形態においては、前方幅広部41a及び後方幅広部41bの略全長に亘ってエンボス溝が連続的に形成されている。これに代えて、前方幅広部41a及び後方幅広部41bの何れか一方のみに補助可撓軸43を形成してもよいし、前方幅広部41a及び後方幅広部41bに間欠的に複数のエンボスによる凹部を形成して補助可撓軸43とすることもできる。また、補助可撓軸43として、下層吸収性コアを貫通する溝、下層吸収性コアを貫通しない溝や圧搾溝、下層吸収性コアの厚みを薄くし、又は坪量を低くした部分等を設けてもよい。補助可撓軸43が形成される位置としては、側縁421からの距離が、10mm以内が好ましく、より好ましくは5mm以内である。
【0034】
また、本実施形態の尿とりパッド1及び他の実施形態において、上層吸収性コアと下層吸収性コアとが重なっている部分の剛性は、該下層吸収性コアのフラップ部の剛性の1.5倍以上であることが好ましく、より好ましくは2.0倍以上であり、上限に関しては、4倍以下であることが好ましく、より好ましくは3倍以下である。
上層吸収性コアと下層吸収性コアとが重なっている部分の剛性と下層吸収性コアのフラップ部の剛性は、製品構成を出来るだけ維持しながら測定することが下層吸収性コアのフラップ部の起立性を評価する上で重要である。
つまり、両部位の剛性の測定方法は、以下の通りである。
先ず製品を展開し広げた状態で肌面側の立体ギャザーの弾性体を切り取る。次に、製品を長手方向の長さ50mmで切り出す。
上層吸収性コアと下層吸収性コアとが重なっている部分の剛性は、切り出された評価用サンプルの製品幅方向の中央部で、幅方向の曲げ剛性をハンドロメーターで測定する。ただし、評価用サンプルの折り曲げ部の吸収体に溝やスリット等がある場合は、その部分を外して測定することが好ましい。
一方、下層吸収性コアのフラップ部の剛性は、上層吸収体の側部411の境界部の位置で製品の幅方向の曲げ剛性を測定する。
評価用サンプルの製品長手方向の長さ(例えば上記の50mm)は、評価に使用する製品のサイズに左右されるため適宜変更しても良い。上層吸収性コアと下層吸収性コアとが重なっている部分と下層吸収性コアのフラップ部の剛性の測定は、上記の方法で簡単に測定することが出来る。曲げ剛性の測定機は、ハンドロメーターに変えてテーバーテスター、KES曲げ試験機等によっても測定することが出来る。
あるいは、各々の部位の吸収性コアとコアラップシートのみを含む状態で評価用サンプルを調整し、製品の幅方向に対応する方向に対しての曲げ剛性をハンドロメーターやテーバーテスター、KES曲げ試験機等を用いて測定することも出来る。
【0035】
また、本実施形態の尿とりパッド1においては、
図2〜4に示すように、上層吸収性コア42の肌当接面側に、上層吸収性コア42の幅と同一の幅を有する形状安定化シート40が配されている。形状安定化シート40は、一方の前方端部領域Aから他方の端部領域Bに亘って、上層吸収性コア42と同じ幅を有している。
形状安定化シート40は、上層吸収性コアと下層吸収性コアとが重なっている部分の剛性を維持すると共に、湿潤時の液戻りを低減するものである。例えば、液透過性を有し、熱可塑性繊維からなる不織布製のシート、エアレイド不織布、ケミカルボンド不織布、あるいは熱可塑性の開孔フィルム等が好ましく用いられる。形状安定化シート40は、曲げ剛性は表面シート2より高く、嵩密度が小さいものがより好ましく用いられる。形状安定化シート40の坪量は、20〜50g/m
2、好ましくは24〜45g/m
2である。
なお、上層吸収性コア42の幅と形状安定化シート40の幅とが同一である場合には、形状安定化シート40の側縁が上層吸収性コアの側縁421よりも、幅方向Yの内方に20mm以内に位置する場合の他、幅方向Yの外方に10mm以内に位置する場合も含まれる。
なお、本実施形態の尿とりパッド1においては、上層吸収性コア42の肌当接面側であり、且つ図示しないコアラップシートの肌当接面側に、形状安定化シート40を配したが、上層吸収性コア42と下層吸収性コア41との間に、形状安定化シート40を配しても、同様の効果が得られる。
【0036】
表面シート2、防漏シート3及び立体ギャザー5の形成材料としては、当該技術分野において従来用いられてきたものと同様のものを特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート2としては、液透過性を有する単層又は多層の不織布や、開孔フィルムを用いることができ、エアスルー不織布又はスパンボンド不織布である親水性不織布が好ましい。
立体ギャザーに用いる第1弾性体及び第2弾性体の形成素材としては、例えば、スチレン−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、天然ゴム、EVA、伸縮性ポリオレフィン、ポリウレタン等を挙げることができる。弾性体の形態としては、断面が矩形、正方形、円形、楕円形又は多角形状等の糸状(糸ゴム等)、若しくは紐状(平ゴム等)のもの、又はマルチフィラメントタイプの糸状のもの等を好ましく用いることができる。糸状の弾性体の繊度は、伸張力と伸度の関係から、400dtex以上であることが好ましく、上限に関しては1240dtex以下であることが好ましく、さらに好ましくは800dtex以下である。
立体ギャザー形成材51としては、例えば、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド積層不織布(SMS不織布)やスパンボンド−メルトブローン−メルトブローン−スパンボンド不織布(SMMS不織布)等の耐水性の高い撥水性の不織布や、スパンボンド不織布や、スパンボンド不織布等の不織布と透湿性又は非透湿性の樹脂フィルムとの積層体等を用いることができる。
防漏シート3としては、合成樹脂製の液難透過性フィルムや、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド積層不織布(SMS不織布)等の耐水圧が高い撥水性の不織布を用いることができる。防漏シート3が液難透過性である場合、該防漏シートは水蒸気透過性を有していてもよい。防漏性及び通気性の観点から、防漏シート3は、水蒸気透過性を有する合成樹脂製の液難透過性フィルムが好ましい。また、巻き上げられた両側部3Sと着用者の肌が密着せず、通気性を改善する観点から、液難透過性フィルムと外層不織布とが、ホットメルト等の接着剤によって一体化された複合シートが好ましい。
【0037】
また、本実施形態の尿とりパッド1及び他の実施形態の吸収性物品においても、
図2〜
図4に示すように、防漏シート3が、透湿性フィルムと該透湿性フィルムより幅の広い外層不織布とが一体化された複合シートからなることが好ましい。外層不織布としては、スパンボンド(S)不織布や、SMS不織布、スパンボンド−メルトブローン−メルトブローン−スパンボンド積層不織布(SMMS不織布)等を用いることができる。不織布の構成繊維としては、芯鞘型複合繊維やサイドバイサイド型の複合繊維等を用いることもできる。外層不織布の坪量は、8〜20g/m2であることが好ましい。
【0038】
また、
図6に示すように、防漏シート3が、透湿性フィルム
(透湿性の樹脂フィルム)31と該透湿性フィルムより幅の広い外層不織布32とが一体化された複合シートからなり、巻き上げられた防漏シートの両側部3Sの樹脂フィルム
31の側縁31sから延出した外層不織布32eに、第3弾性体55が固定されていることも好ましい。第3弾性体55を配することにより、外層不織布32eが第3の伸縮ギャザーとなり、立体ギャザーの側面より上方に立ち上がる第2の立体ギャザーを構成することができる。外層不織布32と立体ギャザーの固定は、樹脂フィルム
31の側縁31sまでとすることで、第3弾性体55の伸縮性の自由度を上げることができる。これによって装着時のフィット性をさらにあげることができる。
【0039】
また、
図7に示すように、防漏シート3が、透湿性フィルム
(透湿性の樹脂フィルム)31と該透湿性フィルムより幅の広い外層不織布32とが一体化された複合シートからなり、巻き上げられた防漏シートの両側部3Sの樹脂フィルム
31の側縁31sから延出した外層不織布32eが、該樹脂フィルム31の内面側に折り返されていることも好ましい。内面側に折り返す部分の長さは、15mm以上が好ましく、20mm以上がより好ましく、上限は特にないが例えば40mm以下である。
樹脂フィルム
31の側縁31sを、外層不織布32で覆うことにより、樹脂フィルム
31や複合シートのエッジが丸まり膨らみによって柔らかくなり、着用者の肌の傷つきを防止することが出来る。
【0040】
また、下層吸収性コア41及び上層吸収性コア42の少なくとも一方に、吸収性物品の長手方向の中央線CLに沿って延びる貫通孔44を形成することも、尿が溝方向に沿って拡散し、股下部分の吸収性をアップすると共に、着用者が歩行する時に感じる違和感を低減することができ着用感が向上する点から好ましい。
図6には、下層吸収性コア41及び上層吸収性コア42の両者に貫通孔44を互いに重なるように設けた例を示したが、下層吸収性コア41及び上層吸収性コア42の何れか一方のみに、そのような貫通孔44を形成することもできる。
【0041】
また、下層吸収性コア41及び上層吸収性コア42の少なくとも一方における、吸収性物品の長手方向の中央線CLを挟む両側それぞれに、吸収性物品の長手方向に延びる貫通孔46,46を、該吸収性コアの側縁との間に間隔を設けて形成することも、吸収性コア4がそれらの貫通孔46に沿って変形し、溝の外側に位置する部分が起立して股間部にフィットし易い状態となりやすいため、好ましい。
図7には、下層吸収性コア41及び上層吸収性コア42の両者に位置が重なるように貫通孔46を設けた例を示したが、下層吸収性コア41及び上層吸収性コア42の何れか一方のみに、そのような貫通孔46を形成することもできる。
【0042】
図1〜
図4に示した上記の尿とりパッド1は、
図1及び
図4に示すように、端部領域A,Bにおける防漏シート3側の面に、粘着剤又は機械的面ファスナーのオス部材からなるズレ止め部6が形成されている。ズレ止め部6は、アウター上に載置したときに、尿とりパッド1とアウターとの間の位置ズレが生じないようにするものである。ズレ止め部6は、尿とりパッド1の長手方向の1箇所に設けてもよいし、長手方向の相互に離間した2箇所以上に設けることも好ましい。ズレ止め部6として、機械的面ファスナーのオス部材を設ける場合、オス部材の吸収性物品長手方向Xの長さは、アウターの破れを防止する観点から、15mm以下が好ましく、13mm以下がより好ましく、更に好ましくは10mm以下である。
【0043】
また,ズレ止め部6を有する尿とりパッド1を、幅方向に沿う中央線に沿って、肌当接面側どうしが対向するように2つ折りし、その2つ折り状態の尿とりパッド1を多数積層して包装袋7に圧縮充填する場合、該包装袋7には、
図8に示すように、ズレ止め部6と対向する面に、パッドを取り出すための開口部が形成されるように開封用のミシン目71が形成することが、ズレ止め部6が、隣接する尿とりパッド1のアウターと係合して複数枚のパッドが同時に引き出されないようにする観点から好ましい。
【0044】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は、上記の各実施形態に制限されず、種々の変更可能である。
【0045】
例えば、
図1に示す例では、立体ギャザー5の自由端5aの近傍を固定した部分P1と、第2弾性体53又はその延長線上を固定した部分P2とが離間している。しかし、立体ギャザー5の幅方向Yにおける両部分P1,P2間が連続して、その下に位置する表面シート2に接合されていても良い。また、固定部分P1と、固定部分P2の、尿とりパッド1の長手方向Xの寸法及び幅方向Yの寸法は、
図1に示すように同じであっても良いし、異なっていても良い。例えば、固定部分P2の長さを、固定部分P1の長さよりも短くしても良い。また、固定部分P2の幅を、固定部分P1の幅より広くしても良い。
【0046】
また、本発明の吸収性物品は、尿とりパッドに限られず、軽失禁パッドやパンツ型紙おむつ、テープ型紙おむつ等であっても良い。
【0047】
また、上述した一の実施形態における説明省略部分及び一の実施形態のみが有する要件は、それぞれ他の実施形態に適宜適用することができ、また、各実施形態における要件は、適宜、実施形態間で相互に置換可能である。
【0048】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の形態を開示する。
<1>表面シート、防漏シート及び両シート間に配された吸収体を具備し、長手方向の両側部に立体ギャザーが配されており、前記吸収体が、下層吸収性コアと該下層吸収性コアの肌当接面側に積層された上層吸収性コアとを有する吸収性物品であって、
下層吸収性コアは、吸収性物品の長手方向の中間領域に幅狭部を有し、該幅狭部の前後に該幅狭部より幅が広い前方幅広部及び後方幅広部を有しており、前方幅広部及び後方幅広部は、前記上層吸収性コアの両側縁の位置より幅方向外方に延出したフラップ部を有しており、
前記立体ギャザーは、該立体ギャザーの長手方向に沿う自由端の近傍に、第1弾性体が伸長状態で配されており、吸収性物品の長手方向の端部領域においては、該自由端の近傍が前記上層吸収性コア上に固定されており、
前記立体ギャザーは、前記第1弾性体の配置位置から幅方向外方に離間した位置に、第2弾性体が、前方幅広部のフラップ部上から後方幅広部のフラップ部上に亘るように配されている、吸収性物品。
【0049】
<2>前記第1弾性体及び前記第2弾性体の少なくとも一方が、前記弾性体に接着剤が塗布され、該接着剤を介して前記立体ギャザー形成材に接着されている、<1>に記載の吸収性物品。
<3>前記上層吸収性コアの幅は、前記幅狭部における前記下層吸収性コアの幅より狭い、<1>から<2>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<4>前記上層吸収性コアの幅は、前記幅狭部における前記下層吸収性コアの幅の、70%以上であり、96%以下である、<1>から<3>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<5>前記上層吸収性コアは、前記下層吸収性コアの長手方向の端縁を超えて、長手方向の外方に延出する部分を有する、<1>から<4>のいずれか1に記載の吸収性物品。
【0050】
<6>前記防漏シートの両側部が肌当接面側に巻き上げられており、第2弾性体が、吸収性物品の展開状態において、巻き上げられた防漏シートの側縁と上層吸収性コアの両側縁との間に位置している、<1>から<5>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<7>前記下層吸収性コアの前方幅広部又は後方幅広部における前記上層吸収性コアの側縁と重なる位置に補助可撓軸が形成されている、<1>から<6>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<8>前記上層吸収性コアの肌当接面側又は非肌当接面側に、該上層吸収性の幅と同一の幅を有する形状安定化シートが配されている、<1>から<7>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<9>前記上層吸収性コアの肌当接面側及び非肌当接面側に、該上層吸収性の幅と同一の幅を有する形状安定化シートが配されている、<1>から<7>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<10>前記上層吸収性コアと前記下層吸収性コアとが重なっている部分の剛性が、該下層吸収性コアの前記フラップ部の剛性の1.5倍以上である、<1>から<9>のいずれか1に記載の吸収性物品。
【0051】
<11>前記防漏シートが、透湿性を有する液難透過性フィルムである、<1>から<10>のいずれか1に記載の尿とりパッド。
<12>前記防漏シートが、透湿性フィルムと該透湿性フィルムより幅の広い外層不織布とが一体化された複合シートからなり、樹脂フィルムの側縁から延出した外層不織布に、第3弾性体が固定されている、<1>から<10>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<13>前記防漏シートが、透湿性フィルムと該透湿性フィルムより幅の広い外層不織布とが一体化された複合シートからなり、樹脂フィルムの側縁から延出した外層不織布が、該樹脂フィルムの内面側に折り返されている、<12>に記載の吸収性物品。
<14>前記下層吸収性コア及び前記上層吸収性コアの少なくとも一方に、吸収性物品の長手方向の中央線に沿って延びる貫通孔が形成されている、<1>から<13>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<15>前記下層吸収性コア及び前記上層吸収性コアの少なくとも一方における、吸収性物品の長手方向の中央線を挟む両側それぞれに、吸収性物品の長手方向に延びる貫通孔が、該吸収性コアの側縁との間に間隔を設けて形成されている、<1>から<13>のいずれか1に記載の吸収性物品。
【0052】
<16>
前記下層吸収性コア及び前記上層吸収性コアの両方に、前記貫通孔が形成されている、<14>から<15>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<17>前記下層吸収性コアの貫通孔及び前記上層吸収性コアの貫通孔が、互いに重なるように設けられた、<16>に記載の吸収性物品。
<18>前記吸収性物品が、パンツ型使い捨ておむつ、展開型使い捨ておむつ、及び、吸収体を有しないおむつカバーのいずれか1の肌当接面側に配置して用いる尿とりパッドである、<1>から<17>のいずれか1に記載の尿とりパッド。
<19>前記尿とりパッドは、少なくとも一方の長手方向の端部領域であり、前記防漏シートの非肌当接面側に、ズレ止め部が形成されている、<18>に記載の尿とりパッド。
<20>前記ズレ止め部が機械的面ファスナーであり、前記ファスナーの長手方向長さは、好ましくは15mm以下、より好ましくは13mm以下、更に好ましくは10mm以下である、<19>に記載の尿とりパッド。
【0053】
<21>
前記の<19>から<20>の1に記載の前記尿とりパッドを、幅方向に沿う中央線に沿って、肌当接面側どうしが対向するように2つ折りし、その2つ折り状態の前記尿とりパッドを多数積層して包装袋に圧縮充填した、包装体。
<22>前記包装袋には、前記ズレ止め部と対向する面に、パッドを取り出すための開口部が形成される、<21>に記載の包装体。