【実施例】
【0035】
本発明の射出成形用金型を射出成形に用いることによって、ノズル先端部の温度低下を抑え、かつ、ゲートカット部の温度上昇を抑えることが可能であることを、以下の実験によって確認した。
【0036】
射出成形用金型1としては、
図1に示す射出成形用金型1のように、スプルーブッシュ20に第1の溝31と第2の溝32と第3の溝33の3つが形成されているもの(実施例1)と、第1の溝31のみが形成されているもの(実施例2)とを用いた。また、比較例として、空隙部が形成されていないものを用いた。実施例1、実施例2、比較例のいずれにおいても、スプルーブッシュ20の材質としては熱伝導率が15.8W/m・K(20℃の場合)のPSL鋼(SUS630改良品)を用いた。取付板111とホルダー112としてはS50材(SC材)、キャビティ金型部12とコア金型部(図示しない)としてはSC材またはSUS系材を用いた。取付板111、ホルダー112、キャビティ金型部12としては、
図1に示すものを用いた。
【0037】
(実施例1)
図1と
図2に示すように、第1の溝31と第2の溝32と第3の溝33の3つの溝を、切削加工によってスプルーブッシュ20の外周面に形成した。ゲート側のスプルーブッシュ20の端部の径D
1は35mm、第3の溝33が形成されている位置決め用の凸部42の径D
2は40mm、第1の溝31と第3の溝33の位置における径D
3は37mm、ノズル2側のスプルーブッシュ20の端部の径D
4は40mm、第2の溝32の位置における径D
5は47mm、第2の溝32が形成されている位置決め用の凸部41の径D
6は50mmであった。
【0038】
また、ノズル2側のスプルーブッシュ20の端部から第1の溝31までの距離L
1は8mm、第1の溝31のスプルーブッシュ20の軸方向に沿った幅L
2は34.3mm、第1の溝31から第2の溝32までの距離L
3は8mm、第2の溝32のスプルーブッシュ20の軸方向に沿った幅L
4は6.5mm、第2の溝32のゲート側の端部から、第2の溝32が形成されている凸部41のゲート側の端部までの距離L
5は5.5mm、第2の溝32が形成されている凸部41のゲート側の端部から第3の溝33までの距離L
6は10mm、第3の溝33の幅L
7は10mm、第3の溝33のゲート側の端部から、第3の溝33が形成されている凸部42のゲート側の端部までの距離L
8は20mm、第3の溝33が形成されている凸部42のゲート側の端部からスプルーブッシュ20のゲート側の端部までの距離L
9は75.5mmであった。スプルーブッシュ20の軸方向の全長は、177.8mmであった。
【0039】
第1の溝31と第2の溝32と第3の溝33におけるスプルーブッシュ20の外周面の表面積は、スプルーブッシュ20の外周面の全表面積の約30%であった。すなわち、空隙部は、スプルーブッシュ20の外周面の全表面積の約30%を占める領域に設けられていた。
【0040】
このように構成されたスプルーブッシュ20を配設した射出成形用金型1を用いて、樹脂成形を行った。ノズル先端部2aにおける溶融樹脂の温度は約200℃であった。ノズル側開口22におけるスプルーブッシュ20の温度は56.5℃、ゲート側開口23におけるスプルーブッシュ20の温度は34.0℃であった。
【0041】
射出成形によって成形体を41個、製造したところ、すべての成形体において、コールドスラグが発生していないことが確認された。また、すべての成形体において、ゲートカットが良好であった。
【0042】
(実施例2)
射出成形用金型1のスプルーブッシュ20のみを
図3に示す形態のスプルーブッシュ20aに変更した。
図3に示すように、第1の溝31のみを、スプルーブッシュの外周面を切削加工して形成した。ノズル2側のスプルーブッシュ20の端部から第1の溝31までの距離L
1’は13mm、第1の溝31のスプルーブッシュ20の軸方向に沿った幅L
2’は29.3mmであった。また、第1の溝31のゲート側の端部に隣接する位置決め用の凸部41の幅L
10は20mmであり、この凸部41のゲート側に隣接する凸部42の幅L
11は40mmであった。その他の
図1,2(実施例1)と同じ記号で示される径と距離、幅は、実施例1と同様であった。
【0043】
第1の溝31におけるスプルーブッシュ20aの外周面の表面積は、スプルーブッシュ20aの外周面の全表面積の約17%であった。すなわち、空隙部は、スプルーブッシュ20aの外周面の全表面積の約17%を占める領域に設けられていた。
【0044】
このように構成されたスプルーブッシュ20aが配設された射出成形用金型1を用いて、樹脂成形を行った。ノズル先端部2aにおける溶融樹脂の温度は約200℃であった。ノズル側開口22におけるスプルーブッシュ20aの温度は37.5℃、ゲート側開口23におけるスプルーブッシュ20aの温度は28.1℃であった。
【0045】
射出成形によって成形体を41個、製造したところ、すべての成形体において、ゲートカットが良好であった。また、コールドスラグは、いくつかの成形体において観察されたものの、コールドスラグの発生が観察されない成形体のものの方が多かった。
【0046】
(比較例)
射出成形用金型1のスプルーブッシュ20のみを
図4に示す形態のスプルーブッシュ20bに変更した。
図4に示すように、スプルーブッシュの外周面には切削加工せず、溝を形成しなかった。すなわち、スプルーブッシュ20bの外周表面は、全領域において、金型本体部10と接触していた。
【0047】
スプルーブッシュ20bのノズル2側の端部から、ノズル2側の位置決め用の凸部41までの距離L
12は42.3mmであった。その他の
図1,2(実施例1)または
図3(実施例2)と同じ記号で示される径と距離、幅は、実施例1または実施例2と同様であった。
【0048】
このように構成されたスプレーブッシュ20bを配設した射出成形用金型1を用いて、樹脂成形を行った。ノズル先端部2aにおける溶融樹脂の温度は約200℃であった。ノズル側開口22におけるスプルーブッシュ20bの温度は32.4℃、ゲート側開口23におけるスプルーブッシュ20bの温度は24.7℃であった。
【0049】
射出成形によって成形体を41個、製造したところ、ほとんどすべての成形体において、ゲートカット時には、スプルー21からの樹脂の抜けが悪く、樹脂がスプルー21内とノズル2内に残存し、ほとんどすべての成形体においてコールドスラグが観察された。
【0050】
以上の結果から、実施例1と実施例2のように、スプルーブッシュ20,20aの外周面上において、保持金型部11内に配設される部分に空隙部を形成することによって、ノズル側開口22における温度低下を防ぐことができることがわかった。同時に、ゲート側開口23における温度の上昇を抑えることができていた。実施例1と実施例2では、比較例と比べるとゲート側開口23における温度が高ったものの、良好なゲートカットが可能であった。また、実施例1,2と比較例とのゲート側開口23における温度差は、ノズル2側における温度差よりも小さく、温度上昇を抑えられていることがわかる。
【0051】
以上のように、この発明に従った射出成形用金型においては、空隙部は、スプルーブッシュの外周面の全表面積の50%未満を占める領域に設けられていることが好ましい。
【0052】
このようにすることにより、スプルーブッシュの全体において温度低下が抑えられてゲートカット時にゲート側開口付近の樹脂が硬化しなくなることを防ぐことができる。
【0053】
また、この発明に従った射出成形用金型においては、空隙部は、スプルーブッシュの外周面の全表面積の10%以上を占める領域に設けられていることが好ましい。
【0054】
このようにすることにより、実施例2では、スプルーブッシュの切削加工を最小限にして、ある程度の効果を得ることができた。
【0055】
また、この発明に従った射出成形用金型においては、空隙部は、スプルーブッシュの外周面の全表面積の20%以上を占める領域に設けられていることが好ましい。
【0056】
このようにすることにより、実施例1においてはコールドスラグをほぼ完全になくすことができ、ゲートカットも良好であった。
【0057】
以上に開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変形を含むものである。