特許第5988788号(P5988788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988788
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】射出成形用金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/27 20060101AFI20160825BHJP
【FI】
   B29C45/27
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-199229(P2012-199229)
(22)【出願日】2012年9月11日
(65)【公開番号】特開2014-54736(P2014-54736A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年5月25日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100060368
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 迪夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 久幸
(72)【発明者】
【氏名】黒飛 浩史
【審査官】 田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−241377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型本体部と、
前記金型本体部の内部に配設されてノズル側開口とゲート側開口とを有するスプルーブッシュとを備える射出成形用金型であって、
前記金型本体部は、前記スプルーブッシュのノズル側開口側において前記スプルーブッシュを保持するための保持金型部と、前記保持金型部よりも前記ゲート側開口側に配置されるキャビティ金型部とを含み、
前記保持金型部と前記スプルーブッシュの外周面との間には空隙部が設けられ、
前記スプルーブッシュの外周面は、前記キャビティ金型部と前記保持金型部との境界面から前記スプルーブッシュのゲート側開口端までの全面が前記キャビティ金型部と接触している、射出成形用金型。
【請求項2】
前記空隙部は、前記スプルーブッシュの外周面の全表面積の50%未満を占める領域に設けられている、請求項1に記載の射出成型用金型。
【請求項3】
前記空隙部は、前記スプルーブッシュの外周面の全表面積の10%以上を占める領域に設けられている、請求項2に記載の射出成形用金型。
【請求項4】
前記空隙部は、前記スプルーブッシュの外周面の全表面積の20%以上を占める領域に設けられている、請求項2に記載の射出成形用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には射出成形用金型に関し、特定的には、スプルーブッシュを備えた射出成形用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂の射出成形においては、金型本体とは別個に形成されたスプルーブッシュを備えた射出成形用金型が用いられることがある。熱可塑性樹脂の射出成形では、高温にされたノズル内からスプルーブッシュ内に溶融樹脂が導入され、溶融状態に保たれた樹脂がスプルーブッシュから成形金型(キャビティ)に注入される。キャビティは比較的低温に保たれているため、キャビティに取り付けられるスプルーブッシュも低温になりやすい。そのため成形時に、スプルーブッシュ内や、スプルーブッシュに熱を取られたノズル内で溶融樹脂が硬化することがある。
【0003】
スプルーブッシュ内やノズル内で溶融樹脂が硬化すると、成形体を金型から取り外すときに、硬化した樹脂がノズル内に残存することがある。ノズル内に残存した樹脂は、次に溶融樹脂をノズルから注入するときに、新たに注入される溶融樹脂とともに成形体に入り込み、成形体の外観を不良にすることがある。
【0004】
そこで、射出成形用金型では、スプルーブッシュを精密な構造に構成したり、温度調整可能であるように構成したりすることによって、スプルーブッシュ内やノズル内で溶融樹脂が硬化することを防ぐことが提案されている。また、スプルーブッシュ自体の構成を複雑にすることなく、スプルーブッシュと、樹脂をスプルーブッシュ内に導入するためのノズルまたは金型本体とを熱的に隔離することも提案されている。
【0005】
例えば、特開平11−99537号公報(特許文献1)には、スプルーブッシュとノズルの先端部材との間に断熱材を設けた射出成形機の断熱ノズルが記載されている。
【0006】
また、特開2000−317993号公報(特許文献2)には、スプルーブッシュの外側と金型との間において、スプルーブッシュの外周に複数の凹凸を設けてスプルーブッシュの外側と金型との間に空隙部を設け、かつ、材料流入側の凹凸部又は空隙部に断熱部を設けて冷却媒体の流路を小さくすることにより、冷却媒体を空隙部に効率的に流通させる射出成形用金型が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−99537号公報
【特許文献2】特開2000−317993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の断熱ノズルでは、スプルーブッシュとノズル本体とを熱的に隔離するため断熱材を設けるために、断熱材だけでなく、断熱材をスプルーブッシュとノズル本体との間に固定するために、ノズル押えの構造を工夫したり、ボルト等の部材が必要になったりする。
【0009】
一方、特許文献2に記載の射出成形用金型では、空隙部は冷媒を効率よく流通させるためのものであるから、スプルーブッシュのノズル側からゲート側までの全範囲に亘って空隙部が形成されている。ところが、スプルーブッシュの外周面の全体に亘って断熱されていると、スプルーブッシュのゲート側においても樹脂が溶融状態に保たれてしまい、成形終了時に良好なゲートカットをすることができなくなる。
【0010】
そこで、この発明の目的は、簡単な構成で、ノズル先端部の温度低下を抑え、かつ、ゲートカット部の温度上昇を抑えることが可能な、スプルーブッシュを備えた射出成形用金型を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に従った射出成形用金型は、金型本体部とスプルーブッシュとを備える。スプルーブッシュは、ノズル側開口とゲート側開口とを有し、金型本体部の内部に配設される。金型本体部は、スプルーブッシュのノズル側開口側においてスプルーブッシュを保持するための保持金型部と、保持金型部よりもゲート側開口側に配置されるキャビティ金型部とを含む。保持金型部とスプルーブッシュの外周面との間には空隙部が設けられており、一方、キャビティ金型部とスプルーブッシュの外周面とは全面が接触している。
【0012】
この発明に従った射出成形用金型においては、空隙部は、スプルーブッシュの外周面の全表面積の50%未満を占める領域に設けられていることが好ましい。
【0013】
この発明に従った射出成形用金型においては、空隙部は、スプルーブッシュの外周面の全表面積の10%以上を占める領域に設けられていることが好ましい。
【0014】
この発明に従った射出成形用金型においては、空隙部は、スプルーブッシュの外周面の全表面積の20%以上を占める領域に設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、この発明によれば、簡単な構成で、ノズル先端部の温度低下を抑え、かつ、ゲートカット部の温度上昇を抑えることが可能な、スプルーブッシュを備えた射出成形用金型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一つの実施形態の射出成形用金型を用いた射出成形システムの全体を概略的に示す断面図である。
図2】本発明の実施例1の射出成形用金型に用いたスプルーブッシュの全体を概略的に示す断面図である。
図3】本発明の実施例2の射出成形用金型に用いたスプルーブッシュの全体を概略的に示す断面図である。
図4】比較例の射出成形用金型に用いたスプルーブッシュの全体を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1に示すように、本発明の一つの実施形態の射出成形用金型1を用いた射出成形システムは、主に、射出成形用金型1と、射出成形用金型1内に溶融状態の樹脂を導入するためのノズル2とから構成されている。
【0019】
射出成形用金型1は、金型本体部10と、スプルーブッシュ20と、冷媒管(図示しない)等から構成されている。金型本体部10は、別個に形成された取付板111と、ホルダー112と、キャビティ金型部12とから構成されている。取付板111とホルダー112とは保持金型部11の一例である。
【0020】
スプルーブッシュ20は、金型本体部10とは別個に形成されている。スプルーブッシュ20の内部にはスプルー21が形成されており、スプルー21はノズル側開口22とゲート側開口23とによって外部と連通している。スプルーブッシュ20の外周面上には、凸部41と凸部42と、溝が形成されている。凸部41,42は、位置決めと、スプルーブッシュ20のがたつきを防ぐためのものである。この実施形態においては、溝としては、第1の溝31、第2の溝32、第3の溝33が形成されている。これらの溝は、例えば、スプルーブッシュ20の外周面を、軸周りの全周において切削加工して形成される。第1の溝31は、スプルーブッシュ20の外周面において、取付板111内に配設される部分に形成されており、3つの溝のうち最もノズル側開口22に近い側に形成されている。第2の溝32と第3の溝33とは、スプルーブッシュ20の外周面においてホルダー112内に配設される部分に形成されている。スプルーブッシュ20の外周面においてキャビティ金型部12の内部に配設される部分には溝が形成されていない。
【0021】
第1の溝31と第2の溝32と第3の溝33が形成されている位置においては、スプルーブッシュ20の外周面と取付板111またはホルダー112との間に空隙部が形成されている。すなわち、第1の溝31と第2の溝32と第3の溝33においては、スプルーブッシュ20の外周面と金型本体部10とが接触していない。スプルーブッシュ20の外周面においてキャビティ金型部12の内部に配設される部分では、スプルーブッシュ20の外周面と金型本体部10とが接触している。
【0022】
ノズル2は、ロケートリング4を介して、ノズル2の中心がスプルーブッシュ20の軸に合うよう位置決めされている。ノズル2にはヒータ3が取り付けられている。スプルーブッシュ20に接触するノズル先端部2aにはヒータが配置されていない。
【0023】
以上のように構成される射出成形システムにおいては、溶融樹脂はノズル2を通って、ノズル先端部2aからスプルーブッシュ20内に導入され、スプルーブッシュ20のゲート側開口23からキャビティ金型部12のキャビティ内に注入されて、成形される。成形時には、ノズル先端部2a内とスプルーブッシュ20のスプルー21内には溶融樹脂が残存している。
【0024】
成形が終了すると、型開きを行い、取り出し機が成形体を取り出して移動させる。この取り出し機は、カッターを備えており、移動後の成形体をスプルー21から切り離す。
【0025】
成形時、スプルー21内の溶融樹脂の熱は、スプルーブッシュ20を介して取付板111、ホルダー112、キャビティ金型部12に伝導される。取付板111内においては、スプルーブッシュ20に第1の溝31が形成されており、スプルーブッシュ20と取付板111との間に空隙部がある。また、ホルダー112内においては、スプルーブッシュ20に第2の溝32と第3の溝33とが形成されており、スプルーブッシュ20とホルダー112との間に空隙部がある。空隙部の部分ではスプルーブッシュ20から低温の取付板111またはホルダー112に熱が伝導しにくく、断熱効果がある。このようにすることにより、スプルーブッシュ20と金型本体部10との間に空隙部が設けられていない場合と比較して、スプルー21内の溶融樹脂と、スプルーブッシュ20において取付板111またはホルダー112内に配設される部分の温度低下を抑えることができる。また、ノズル2に近い側のスプルーブッシュ20の温度低下を抑えることができるので、スプルーブッシュ20に接触するノズル先端部2aの温度低下をも抑えることができる。
【0026】
スプルー21内の溶融樹脂と、スプルーブッシュ20において取付板111またはホルダー112内に配設される部分と、ヒータ3が配置されていないノズル先端部2aとの温度低下を抑えることによって、成形体を射出成形用金型1から引き出したときに、スプルーブッシュ20内とノズル2内の溶融樹脂も成形体に引っ張られてスプルーブッシュ20のゲート側開口23から引き出される。こうして、次の成形の開始時(次ショット時)には、前回の成形時にノズル2内に残存していた樹脂が新たにスプルーブッシュ20内に供給される樹脂とともにキャビティ内に注入されてコールドスラグが発生することを防ぐことができる。
【0027】
一方、スプルーブッシュ20においてキャビティ金型部12内に配設される部分には溝が形成されておらず、スプルーブッシュ20の外周面はキャビティ金型部12と接触している。そのため、スプルーブッシュ20においてゲート側開口23に近い側においては、スプルーブッシュ20から、低温のキャビティ金型部12に熱が伝導しやすい。
【0028】
このようにすることにより、ゲート側開口23(ゲートカット部)の温度上昇を抑え、ゲートカット時にゲート側開口23の樹脂を硬化させ、ゲートカットしやすいようにすることができる。
【0029】
なお、この実施形態においては、空隙部はスプルーブッシュの外周面を切削加工して溝を形成することによって形成されているが、空隙部は、金型本体部の内面を切削加工して形成されてもよいし、金型本体部とスプルーブッシュとの間にスペーサーを設けて形成されてもよい。
【0030】
なお、上述のように、凸部41,42は、位置決めと、スプルーブッシュ20のがたつきを防ぐためのものである。スプルーブッシュ20のがたつきを防ぐという意味で、例えば、凸部41の全体を削って溝32を設けることは好ましくない。
【0031】
以上のように、射出成形用金型1は、金型本体部10とスプルーブッシュ20とを備える。スプルーブッシュ20は、ノズル側開口22とゲート側開口23とを有し、金型本体部10の内部に配設される。金型本体部10は、スプルーブッシュ20のノズル側開口22側においてスプルーブッシュ20を保持するための保持金型部11と、保持金型部11よりもゲート側開口23側に配置されるキャビティ金型部12とを含む。保持金型部11とスプルーブッシュ20の外周面との間には空隙部が設けられており、一方、キャビティ金型部12とスプルーブッシュ20の外周面とは全面が接触している。
【0032】
スプルーブッシュ20のノズル側開口22に近い側に、別個に形成された断熱材を配置することなく、単に空隙部を形成するだけで、ノズル先端部2aと、スプルーブッシュ20においてノズル側開口22に近い側との温度低下を抑えることができる。その結果、ノズル2内とスプルー21内においてノズル側開口22に近い側の樹脂の硬化を防止することができる。
【0033】
空隙部は、例えばスプルーブッシュ20の外周面を切削加工して形成することができる単純な構造である。断熱材を追加する場合と比較して、スプルーブッシュ20または金型本体部10に大きな改造を施す必要がない。また、スプルーブッシュ20を温めるために、温度調節機などの機器を使用する必要もない。
【0034】
このように、本発明によれば、簡単な構成で、ノズル先端部2aの温度低下を抑え、かつ、ゲートカット部の温度上昇を抑えることが可能な、スプルーブッシュ20を備えた射出成形用金型1を提供することができる。
【実施例】
【0035】
本発明の射出成形用金型を射出成形に用いることによって、ノズル先端部の温度低下を抑え、かつ、ゲートカット部の温度上昇を抑えることが可能であることを、以下の実験によって確認した。
【0036】
射出成形用金型1としては、図1に示す射出成形用金型1のように、スプルーブッシュ20に第1の溝31と第2の溝32と第3の溝33の3つが形成されているもの(実施例1)と、第1の溝31のみが形成されているもの(実施例2)とを用いた。また、比較例として、空隙部が形成されていないものを用いた。実施例1、実施例2、比較例のいずれにおいても、スプルーブッシュ20の材質としては熱伝導率が15.8W/m・K(20℃の場合)のPSL鋼(SUS630改良品)を用いた。取付板111とホルダー112としてはS50材(SC材)、キャビティ金型部12とコア金型部(図示しない)としてはSC材またはSUS系材を用いた。取付板111、ホルダー112、キャビティ金型部12としては、図1に示すものを用いた。
【0037】
(実施例1)
図1図2に示すように、第1の溝31と第2の溝32と第3の溝33の3つの溝を、切削加工によってスプルーブッシュ20の外周面に形成した。ゲート側のスプルーブッシュ20の端部の径Dは35mm、第3の溝33が形成されている位置決め用の凸部42の径Dは40mm、第1の溝31と第3の溝33の位置における径Dは37mm、ノズル2側のスプルーブッシュ20の端部の径Dは40mm、第2の溝32の位置における径Dは47mm、第2の溝32が形成されている位置決め用の凸部41の径Dは50mmであった。
【0038】
また、ノズル2側のスプルーブッシュ20の端部から第1の溝31までの距離Lは8mm、第1の溝31のスプルーブッシュ20の軸方向に沿った幅Lは34.3mm、第1の溝31から第2の溝32までの距離Lは8mm、第2の溝32のスプルーブッシュ20の軸方向に沿った幅Lは6.5mm、第2の溝32のゲート側の端部から、第2の溝32が形成されている凸部41のゲート側の端部までの距離Lは5.5mm、第2の溝32が形成されている凸部41のゲート側の端部から第3の溝33までの距離Lは10mm、第3の溝33の幅Lは10mm、第3の溝33のゲート側の端部から、第3の溝33が形成されている凸部42のゲート側の端部までの距離Lは20mm、第3の溝33が形成されている凸部42のゲート側の端部からスプルーブッシュ20のゲート側の端部までの距離Lは75.5mmであった。スプルーブッシュ20の軸方向の全長は、177.8mmであった。
【0039】
第1の溝31と第2の溝32と第3の溝33におけるスプルーブッシュ20の外周面の表面積は、スプルーブッシュ20の外周面の全表面積の約30%であった。すなわち、空隙部は、スプルーブッシュ20の外周面の全表面積の約30%を占める領域に設けられていた。
【0040】
このように構成されたスプルーブッシュ20を配設した射出成形用金型1を用いて、樹脂成形を行った。ノズル先端部2aにおける溶融樹脂の温度は約200℃であった。ノズル側開口22におけるスプルーブッシュ20の温度は56.5℃、ゲート側開口23におけるスプルーブッシュ20の温度は34.0℃であった。
【0041】
射出成形によって成形体を41個、製造したところ、すべての成形体において、コールドスラグが発生していないことが確認された。また、すべての成形体において、ゲートカットが良好であった。
【0042】
(実施例2)
射出成形用金型1のスプルーブッシュ20のみを図3に示す形態のスプルーブッシュ20aに変更した。図3に示すように、第1の溝31のみを、スプルーブッシュの外周面を切削加工して形成した。ノズル2側のスプルーブッシュ20の端部から第1の溝31までの距離L1’は13mm、第1の溝31のスプルーブッシュ20の軸方向に沿った幅L2’は29.3mmであった。また、第1の溝31のゲート側の端部に隣接する位置決め用の凸部41の幅L10は20mmであり、この凸部41のゲート側に隣接する凸部42の幅L11は40mmであった。その他の図1,2(実施例1)と同じ記号で示される径と距離、幅は、実施例1と同様であった。
【0043】
第1の溝31におけるスプルーブッシュ20aの外周面の表面積は、スプルーブッシュ20aの外周面の全表面積の約17%であった。すなわち、空隙部は、スプルーブッシュ20aの外周面の全表面積の約17%を占める領域に設けられていた。
【0044】
このように構成されたスプルーブッシュ20aが配設された射出成形用金型1を用いて、樹脂成形を行った。ノズル先端部2aにおける溶融樹脂の温度は約200℃であった。ノズル側開口22におけるスプルーブッシュ20aの温度は37.5℃、ゲート側開口23におけるスプルーブッシュ20aの温度は28.1℃であった。
【0045】
射出成形によって成形体を41個、製造したところ、すべての成形体において、ゲートカットが良好であった。また、コールドスラグは、いくつかの成形体において観察されたものの、コールドスラグの発生が観察されない成形体のものの方が多かった。
【0046】
(比較例)
射出成形用金型1のスプルーブッシュ20のみを図4に示す形態のスプルーブッシュ20bに変更した。図4に示すように、スプルーブッシュの外周面には切削加工せず、溝を形成しなかった。すなわち、スプルーブッシュ20bの外周表面は、全領域において、金型本体部10と接触していた。
【0047】
スプルーブッシュ20bのノズル2側の端部から、ノズル2側の位置決め用の凸部41までの距離L12は42.3mmであった。その他の図1,2(実施例1)または図3(実施例2)と同じ記号で示される径と距離、幅は、実施例1または実施例2と同様であった。
【0048】
このように構成されたスプレーブッシュ20bを配設した射出成形用金型1を用いて、樹脂成形を行った。ノズル先端部2aにおける溶融樹脂の温度は約200℃であった。ノズル側開口22におけるスプルーブッシュ20bの温度は32.4℃、ゲート側開口23におけるスプルーブッシュ20bの温度は24.7℃であった。
【0049】
射出成形によって成形体を41個、製造したところ、ほとんどすべての成形体において、ゲートカット時には、スプルー21からの樹脂の抜けが悪く、樹脂がスプルー21内とノズル2内に残存し、ほとんどすべての成形体においてコールドスラグが観察された。
【0050】
以上の結果から、実施例1と実施例2のように、スプルーブッシュ20,20aの外周面上において、保持金型部11内に配設される部分に空隙部を形成することによって、ノズル側開口22における温度低下を防ぐことができることがわかった。同時に、ゲート側開口23における温度の上昇を抑えることができていた。実施例1と実施例2では、比較例と比べるとゲート側開口23における温度が高ったものの、良好なゲートカットが可能であった。また、実施例1,2と比較例とのゲート側開口23における温度差は、ノズル2側における温度差よりも小さく、温度上昇を抑えられていることがわかる。
【0051】
以上のように、この発明に従った射出成形用金型においては、空隙部は、スプルーブッシュの外周面の全表面積の50%未満を占める領域に設けられていることが好ましい。
【0052】
このようにすることにより、スプルーブッシュの全体において温度低下が抑えられてゲートカット時にゲート側開口付近の樹脂が硬化しなくなることを防ぐことができる。
【0053】
また、この発明に従った射出成形用金型においては、空隙部は、スプルーブッシュの外周面の全表面積の10%以上を占める領域に設けられていることが好ましい。
【0054】
このようにすることにより、実施例2では、スプルーブッシュの切削加工を最小限にして、ある程度の効果を得ることができた。
【0055】
また、この発明に従った射出成形用金型においては、空隙部は、スプルーブッシュの外周面の全表面積の20%以上を占める領域に設けられていることが好ましい。
【0056】
このようにすることにより、実施例1においてはコールドスラグをほぼ完全になくすことができ、ゲートカットも良好であった。
【0057】
以上に開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変形を含むものである。
【符号の説明】
【0058】
1:射出成形用金型、10:金型本体部、11:保持金型部、12:キャビティ金型部、20,20a:スプルーブッシュ、22:ノズル側開口、23:ゲート側開口、31:第1の溝、32:第2の溝、33:第3の溝。
図1
図2
図3
図4