特許第5988821号(P5988821)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988821
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】オイル回転衝撃力発生装置
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/02 20060101AFI20160825BHJP
【FI】
   B25B21/02 J
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-229975(P2012-229975)
(22)【出願日】2012年10月17日
(65)【公開番号】特開2014-79856(P2014-79856A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】肥高 俊明
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−297846(JP,A)
【文献】 特開2009−297847(JP,A)
【文献】 特開2003−39341(JP,A)
【文献】 特開2004−130465(JP,A)
【文献】 特開平11−90849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 21/02
B25B 23/145
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面、外周面、前側端面及び後側端面を有する筒状部材と、該筒状部材の前端を閉じる後側端面を有する前方端壁部材と、該筒状部材の後端を閉じる前側端面を有する後方端壁部材とを有し、オイルを密封した筒状回転駆動部材であって、該筒状部材の長手方向軸線を中心に回転駆動される筒状回転駆動部材と、
該筒状回転駆動部材内に該長手方向軸線に沿って延びるように設定され、該筒状回転駆動部材に対して回転可能に設定された被駆動回転部材であって、該長手方向軸線に沿って前方端壁部材を前方に貫通するように延びる出力軸を有する被駆動回転部材と、
該被駆動回転部材によって半径方向で変位可能に支持され半径方向外向きに付勢されて該筒状回転駆動部材が回転駆動されるときに、該筒状部材の内周面と周方向で相対的に摺動する少なくとも1つの仕切り部材と、
を備え、
該筒状部材の内周面は、該筒状回転駆動部材が回転駆動されることにより該オイルを、該筒状部材と該被駆動回転部材との間に形成されるオイル収納室内で該筒状回転駆動部材の回転方向に駆動し、該仕切り部材の該回転方向後方側にあるオイルが該仕切り部材と該筒状部材の該内周面との間を通り該回転方向前方側に流れるのを可能にし且つ該筒状回転駆動部材が該被駆動回転部材に対して相対的に一回転する間に少なくとも一回、該仕切り部材と共に該仕切り部材の該回転方向後方側から回転方向前方側へのオイルの流れを阻止する形状とされており、該オイルの流れの阻止によって該仕切り部材に対して該回転方向での衝撃力を与え、それにより該被駆動回転部材の該出力軸に該衝撃力を与えるようにしたオイル回転衝撃力発生装置であって、
該前方端壁部材は、
該出力軸を該長手方向軸線に沿って通すための軸孔と、
該出力軸の外周面に密封係合されるシールリングを収納する環状のシールリング収納凹部と、
該シールリング収納凹部と該オイル収納室との間でそれらから離れた位置に形成された圧力調整室と、
該オイルの流れが阻止されるときの該オイル収納室における該仕切り部材の該回転方向後方側の後方室部分と該回転方向前方側の前方室部分とをそれぞれ該圧力調整室に連通する第1及び第2絞り流路と、
を有することを特徴とするオイル回転衝撃力発生装置。
【請求項2】
該前方端壁部材が、該圧力調整室と該圧力調整室と該シールリング収納凹部とを連通して該シールリング収納凹部内の圧力を抑制するための圧力調整路を有することを特徴とする請求項1に記載のオイル回転衝撃力発生装置。
【請求項3】
該前方端壁部材が、
該後側端面を有する前方端壁部材後部と、
該前方端壁部材後部の前に配置され該前方端壁部材後部に組み合わされて、該前方端壁部材後部との間に該圧力調整室及び該圧力調整路を形成する前方端壁部材前部と、
を有する、請求項1に記載のオイル回転衝撃力発生装置。
【請求項4】
該軸孔が、該前方端壁部材前部及び該前方端壁部材後部を該長手軸線方向で貫通して形成され、
該シールリング収納凹部が、組み合わされた該前方端壁部材前部と該前方端壁部材後部との間に形成されている、請求項1に記載のオイル回転衝撃力発生装置。
【請求項5】
該後方端壁部材に密封係合されている周縁部分を有するダイアフラムを有し、
該後方端壁部材は、該ダイアラムと共にアキュミュレータ室を画定し、該アキュミュレータ室は該後方端壁部材の該前側端面に開口する開口を有し、
該筒状部材が、該内周面と該外周面との間を該前側端面から該後側端面まで貫通する軸方向通路を有し、該軸方向通路の該前方端壁部材の該後側端面と接する当該軸方向通路の前端部分は前記圧力調整室に連通される軸方向開口を有し、該軸方向通路の該後方端壁部材の該前側端面と接する後端部分は、該アキュミュレータ室の該開口と連通する軸方向開口を有する請求項1乃至4のいずれか一項に記載のオイル回転衝撃力発生装置。
【請求項6】
該被駆動回転部材が、当該直径方向で相互に反対方向外向きに付勢される2つの該仕切り部材を有し、更に、該直径方向に対して直交する他の1つの直径方向で当該被駆動回転部材の外周面において該長手方向で延びるように設けられた一対の細長いシール部を有し、該シール部は、該オイルの流れの阻止がなされるときには、該筒状部材の該内周面と該長手方向軸線の方向で密封係合して、該オイル収納室を該2つの仕切り部材と共に該オイル収納室を4つの室部分に分離し、且つ、該オイルの流れの阻止をされないときには、該オイル収納室における当該シール部に対する該回転方向での前方側及び後方側の間でのオイルの流れを許容するようにされおり、
該筒状部材の該内周面は、該仕切り部材と共に該回転方向後方側から回転方向前方側へのオイルの流れを阻止する形状が、当該内周面の直径方向で対向する位置に設けられ、該オイルの流れの阻止が、該筒状回転駆動部材が該被駆動回転部材に対して相対的に一回転される間に2回生じるようにされ、
該前方端壁部材が、
該オイルの流れの阻止がなされるときに、該仕切り部材のそれぞれと、該回転方向において各仕切り部材の後方側にある該シール部のそれぞれとの間に形成される2つ後方室部分にそれぞれ連通される、2つの該第1絞り流路と、
該オイルの流れの阻止が生じるときに、該仕切り部材のそれぞれと、該回転方向において各仕切り部材の前方側にある該シール部のそれぞれとの間に形成される2つの前方室部分にそれぞれ連通される、2つの該第2絞り流路とを有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のオイル回転衝撃力発生装置。
【請求項7】
該筒状回転駆動部材が該被駆動回転部材に対して相対的に一回転する間に2回生じる第1及び第2の該オイルの流れの阻止のうちの第1のオイルの流れの阻止が生じたときに、対をなす該前方室部分と該後方室部分とを相互に連通することにより該衝撃力の発生を阻止し、第2のオイルの流れの阻止が生じたときには、対をなす該前方室部分と該後方室部分との連通を阻止して該衝撃力を生じるようにする衝撃阻止通路が該被駆動回転部材及び後方端壁部材を通して設けられている請求項6に記載のオイル回転衝撃力発生装置。
【請求項8】
該衝撃阻止通路が、一方の該仕切り部材の該回転方向における該前方側及び後方側において該後方端壁部材の該前側端面に面する該被駆動回転部材の後部端面内に設けられ、該一方の仕切り部材の前後に生じる該前方室部分及び該後方室部分にそれぞれ連通している一対の第1通路部分と、該後部端面に面する該後方端壁部材の該前側端面内に設けられた一対の第2通路部分とを有し、該第1のオイルの流れの阻止が生じたときに各第1通路部分が対応する各第2通路部分と連通して前記一方の仕切り部材に対する該前方室部分と該後方室部分を、それぞれ、他方の仕切り部材の前後に生じる該後方室部分と該前方室部分と連通し、該第2のオイルの流れの阻止が生じたときには各第1通路部分と第2通路部分とが連通されないようにされている請求項7に記載のオイル回転衝撃力発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間欠的な回転トルク(回転衝撃力)を発生してボルト締め等を行うためのオイル回転衝撃力発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オイル回転衝撃力発生装置は、通常、回転モータの出力シャフトに同軸状に連結されて回転駆動される筒状回転駆動部材と、該筒状回転駆動部材内に密封されるオイルと、該筒状回転駆動部材内に同軸状に回転可能に設定されたシャフト状の被駆動回転部材と、該被駆動回転部材に対して半径方向で変位可能に取り付けられ、回転する筒状回転駆動部材の内周面に摺動係合される仕切り部材とを有する。この装置では、筒状回転駆動部材が回転駆動されることにより、その中に密封されているオイルに筒状回転駆動部材の回転に伴う周方向での動きを生じさせるとともに、仕切り部材が、筒状回転駆動部材の一回転に対して少なくとも一回、該筒状回転駆動部材の内周面に密封係合することによりオイルの動きを瞬間的に止め、これにより当該仕切り部材に衝撃力を加え、該仕切り部材を支持している被駆動回転部材に高い回転トルクをかけ、筒状回転駆動部材から前方外部に同軸状に延びる被駆動回転部材の出力軸を介してボルト等の締結具に回転トルクを加えるようになっている。(特許文献1〜14参照)
【0003】
しかし、上述した衝撃力発生時には、回転駆動されるオイルが仕切り部材によって瞬時に停止されるようになっているために、オイルには数十メガパスカルといった極めて過大な高圧の圧力が発生する。このため、当該オイル回転衝撃力発生装置に損傷を生じやすい。例えば、高圧とされたオイルが出力軸表面と軸孔の内周面との隙間を介してOリング等のシールリングを収納しているシールリング収納凹部に入り、シールリングを出力軸表面に押圧することになるので当該シールリングの摩耗を早めることになる。
【0004】
特許文献1には、衝撃発生時における高圧室と低圧室とを連通する孔を筒状回転駆動部材のライナーに設け、該孔内に設けたバルブを調整して正転時と逆転時における衝撃力を調整することができるようにした装置が開示されている。この装置では、高圧室を低圧室に連通しているので上述のような過大な圧力の発生は抑えることが可能である。しかし、一定以上の衝撃力を発生させるためには高圧室で発生する圧力はかなり大きなものとしなければならず、上述したシールリングの摩耗等の問題は残されている。特許文献2、11乃至14には、このようなシールリングの摩耗を解消するための発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公昭57-39169号
【特許文献2】特開昭62-218075号
【特許文献3】実開昭63-27267号
【特許文献4】特開昭63−74575号
【特許文献5】特開昭63−185583号
【特許文献6】特公平5-67388号
【特許文献7】特開平8−276379号
【特許文献8】特開平11−90849号
【特許文献9】特開2002−254338号
【特許文献10】特開2004−249423号
【特許文献11】特開2005-271143号
【特許文献12】特開2009-297846号
【特許文献13】特開2009-297847号
【特許文献14】特開2012-76165号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような点に鑑み、衝撃力発生時の高圧室における圧力を過剰になるのを防止するための手段を備えたオイル回転衝撃力発生装置を提供する。更に、本発明は、シールリング摩耗防止をより効率的効果的に行うことができるようにしたオイル回転衝撃力発生装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、
内周面、外周面、前側端面及び後側端面を有する筒状部材と、該筒状部材の前端を閉じる後側端面を有する前方端壁部材と、該筒状部材の後端を閉じる前側端面を有する後方端壁部材とを有し、オイルを密封した筒状回転駆動部材であって、該筒状部材の長手方向軸線を中心に回転駆動される筒状回転駆動部材と、
該筒状回転駆動部材内に該長手方向軸線に沿って延びるように設定され、該筒状回転駆動部材に対して回転可能に設定された被駆動回転部材であって、該長手方向軸線に沿って前方端壁部材を前方に貫通して延びる出力軸を有する被駆動回転部材と、
該被駆動回転部材によって半径方向で変位可能に支持され半径方向外向きに付勢されて該筒状回転駆動部材が回転駆動されるときに、該筒状回転駆動部材と共に回転駆動されて該筒状部材の内周面と周方向で相対的に摺動する少なくとも1つの仕切り部材と、
を備え、
該筒状部材の内周面は、該筒状回転駆動部材が回転駆動されることにより該オイルを、該筒状部材と該被駆動回転部材との間に形成されるオイル収納室内で該筒状回転駆動部材の回転方向に駆動し、該仕切り部材の該回転方向後方側にあるオイルが該仕切り部材と該筒状部材の該内周面との間を通り該回転方向前方側に流れるのを可能にし且つ該筒状回転駆動部材が該被駆動回転部材に対して相対的に一回転する間に少なくとも一回、該仕切り部材と共に該仕切り部材の該回転方向後方側から回転方向前方側へのオイルの流れを阻止する形状とされており、該オイルの流れの阻止によって該仕切り部材に対して該回転方向での衝撃力を与え、それにより該被駆動回転部材の該出力軸に該衝撃力を与えるようにしたオイル回転衝撃力発生装置であって、
該前方端壁部材には、
該出力軸を該長手方向軸線に沿って通すための軸孔と、
該出力軸の外周面に密封係合されるシールリングを収納する環状のシールリング収納凹部と、
該シールリング収納凹部と該オイル収納室との間でそれらから離れた位置に形成された圧力調整室と、
該オイルの流れが阻止されるときの該オイル収納室における該仕切り部材の該回転方向後方側の後方室部分と該回転方向前方側の前方室部分とをそれぞれ該圧力調整室に連通する第1及び第2絞り流路と
が設けられているオイル回転衝撃力発生装置を提供する。
【0008】
このオイル回転衝撃力発生装置では、高圧室は、絞り流路を介して低圧室が連通されている圧力調整室に絞り流路を介して連通されているので、当該高圧室内に生じる力を、そのような圧力調整室が設けられていない場合に較べて適宜な低い値に抑えることができ、シールリング等へ過大な圧力がかかるのを防止することが可能となる。この装置では、ネジの締め付けや締め戻しのために必要とされる衝撃力は、筒状回転駆動部材12へ駆動力を加えるモータの回転トルクを適宜調整することにより得られるようにすることを企図している。
【0009】
該前方端壁部材は、該圧力調整室と該シールリング収納凹部とを連通して該シールリング収納凹部内の圧力を抑制するための圧力調整路を有するようにすることができる。
【0010】
該前方端壁部材は、
該後側端面を有する前方端壁部材後部と、
該前方端壁部材後部の前に配置され該前方端壁部材後部に組み合わされて、該前方端壁部材後部との間に該圧力調整室及び該圧力調整路を形成する前方端壁部材前部と、
を有するようにすることができる。
【0011】
また、該軸孔が、該前方端壁部材前部及び該前方端壁部材後部を該長手軸線方向で貫通して形成され、該シールリング収納凹部が、組み合わされた該前方端壁部材前部と該前方端壁部材後部との間に形成るようにすることができる。
【0012】
上記の本発明に係るオイル回転衝撃力発生装置では、より具体的には、
該後方端壁部材に密封係合されている周縁部分を有するダイアフラムを有し、
該後方端壁部材は、該ダイアラムと共にアキュミュレータ室を画定し、該アキュミュレータ室は該後方端壁部材の該前側端面に開口する開口を有し、
該筒状部材が、該内周面と該外周面との間を該前側端面から該後側端面まで該長手方向軸線方向に貫通する軸方向通路を有し、該軸方向通路の該前方端壁部材の該後側端面と接する前端部分は前記圧力調整室に連通される軸方向開口を有し、該軸方向通路の該後方端壁部材の該前側端面と接する後端部分は、該アキュミュレータ室の該開口と連通する軸方向開口と有するようにすることができる。
【0013】
より具体的には、
該被駆動回転部材が、当該直径方向で相互に反対方向外向きに付勢される2つの該仕切り部材を有し、更に、該直径方向に対して直交する他の1つの直径方向で当該被駆動回転部材の外周面において該長手方向で延びるように設けられた一対の細長いシール部を有し、該シール部は、該オイルの流れの阻止がなされるときには、該筒状部材の該内周面と該長手方向軸線方向で密封係合して、該オイル収納室を該2つの仕切り部材と共に該オイル収納室を4つの室部分に分離し、且つ、該オイルの流れの阻止をされないときには、該オイル収納室における当該シール部に対する該回転方向での前方側及び後方側の間でのオイルの流れを許容するようにされおり、
該筒状部材の内周面は、該仕切り部材と共に該回転方向後方側から回転方向前方側へのオイルの流れを阻止する形状が、当該内周面の直径方向で対向する位置に設けられ、該オイルの流れの阻止が、該筒状回転駆動部材が一回転される間に2回生じるようにされ、
該前方端壁部材が、
該オイルの流れの阻止がなされるときに、該仕切り部材のそれぞれと、該回転方向において各仕切り部材の後方側にある該シール部のそれぞれとの間に形成される2つの後方室部分にそれぞれ連通される、2つの該第1絞り流路と、
該オイルの流れの阻止が生じるときに、該仕切り部材のそれぞれと、該回転方向において各仕切り部材の前方側にある該シール部のそれぞれとの間に形成される2つの前方室部分にそれぞれ連通される、2つの該第2絞り流路とを有するようにすることができる。
【0014】
この場合、筒状回転駆動部材の一回転につき2回の衝撃力が生じるようにすることが可能となる。オイルの流れの阻止がされるときに生じる各仕切り部材の回転方向後方側及び前方側にそれぞれ生じる高圧室と低圧室が前記2つのき第1絞り流路及び2つの該第2絞り流路により圧力調整室に連通されており、前述の如く、シールリングに過大な圧力が係るのを阻止し、且つ、異常に高い衝撃力の発生を抑えることができる。
【0015】
この場合、
該筒状回転駆動部材が一回転する間に2回生じる第1及び第2オイル流れ阻止のうちの第1のオイル流れ阻止が生じたときに、対をなす該前方室部分と該後方室部分とを相互に連通することにより該衝撃力の発生を阻止し、第2のオイル流れ阻止が生じたときには、対をなす該前方室部分と該後方室部分との連通を阻止して該衝撃力を生じるようにする衝撃阻止通路が該被駆動回転部材及び後方端壁部材を通して設けるようにすることができる。
【0016】
オイルの流れの阻止を一回とすることにより、筒状回転駆動部材の回転駆動トルクを大きくすることなく、そのとき生じる衝撃力を大きいものとすることが出来る。
【0017】
具体的には、
該衝撃阻止通路が、一方の該仕切り部材の該回転方向における該前方側及び後方側において該後方端壁部材の前側端面に面する該被駆動回転部材の後部端面内に設けられ、該一方の仕切り部材に対する該前方室部分及び該後方室部分にそれぞれ連通している一対の第1通路部分と、該後部端面に面する該後方端壁部材の該前側端面内に設けられた一対の第2通路部分とを有し、該第1のオイルの流れの阻止が生じたときに各第1通路部分が対応する各第2通路部分と連通して前記一方の仕切り部材に対する該前方室部分と該後方室部分を、それぞれ、他方の仕切り部材に対する該後方室部分と該前方室部分と連通し、該第2のオイルの流れの阻止が生じたときには各第1通路部分と第2通路部分とが連通されないようにすることができる。
【0018】
以下、本発明を添付図面に示した実施形態に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】本発明に係るオイル回転衝撃力発生装置の縦断面図であり、回転衝撃力発生時の状態を示す。
図1B図1Aの1B−1B線断面図である。
図1C図1Bの1C−1C線断面図である。
図1D図1Aの1D−1D線断面図である。
図2A】本発明に係るオイル回転衝撃力発生装置の縦断面図であり、筒状部材が図1Bに示す状態から45°時計方向に回転した状態を示す。
図2B図2Aの2B−2B線断面図である。
図3A】本発明に係るオイル回転衝撃力発生装置の縦断面図であり、筒状部材が図2Bに示す状態から更に45°時計方向に回転した状態を示す。
図3B図3Aの3B−3B線断面図である。
図4A】本発明に係るオイル回転衝撃力発生装置の縦断面図であり、筒状部材が図3Bに示す状態から更に45°時計方向に回転した状態を示す。
図4B図4Aの4B−4B線断面図である。
図5】被駆動回転部材と後方端部材の斜視図である。
図6】仕切り部材、仕切り部材を支持する支持部材、及び支持部材を半径方向外側に付勢するコイルバネの分解斜視図である。
図7】ライナーを後方斜め上から見た斜視図である。
図8図1Aのオイル回転衝撃力発生装置を備える締結具回転装置の一部切欠き側面図である。
図9図8の締結具回転装置の前端面図であり、オイル回転衝撃力発生装置の出力軸及び冷却フィンを想像線で示してある。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るオイル回転衝撃力発生装置10は、(図1Aにおいて当該オイル回転衝撃力発生装置10の右側に設定される)図示しない回転モータによって長手方向軸線Xの周りで回転駆動される筒状回転駆動部材12と、筒状回転駆動部材12内に該長手方向軸線Xに沿って延び、筒状回転駆動部材12に対して回転可能に設定された被駆動回転部材14と、被駆動回転部材14に半径方向で変位可能に保持され、半径方向外向きにバネ付勢されて筒状回転駆動部材12が回転駆動されるときに、筒状回転駆動部材12の内周面12−1に対して周方向で相対的に摺動する2つの仕切り部材16を有する。
【0021】
以下に詳述するように、筒状回転駆動部材12の内周面12−1は、該筒状回転駆動部材12が回転することに伴い、該筒状回転駆動部材12内に密封したオイルを回転方向に駆動し、仕切り部材16の回転方向後方側にあるオイルが仕切り部材16と内周面12−1との間を通り回転方向前方側に流れるのを可能にし、且つ、筒状回転駆動部材12が、被駆動回転部材14に対して相対的に一回転する間に少なくとも一回、最も半径方向外側に変位した仕切り部材16と共に、仕切り部材16の回転方向後方側から回転方向前方側へのオイルの流れを阻止する形状とされており、このオイルの流れの阻止によって仕切り部材16に対して回転方向での衝撃力を与え、それにより仕切り部材16を保持している被駆動回転部材14に衝撃力(間欠的な回転モーメント)を与えるようになっている。被駆動回転部材14は、筒状回転駆動部材12の外部前方に延出する出力軸14−1を備え、該出力軸14-1の先端は周知のように締結具(ボルトやナット)に係合するようにされており、上記衝撃力によって、これらボルトやナットを締め付けたり緩めたりするようにされている。
【0022】
筒状回転駆動部材12は、具体的には、円筒状のライナー12A−1と該ライナー12A−1の外周に固定された円筒状支持部材12A−2とからなる筒状部材12Aと、該筒状部材12Aに取り付けられた前方端壁部材12B及び後方端壁部材12Cとを有する。図示の例では、前方端壁部材12Bは、ライナー12A−1の前側端面に当接される前方端壁部材後部12B−1と、該前方端壁部材後部12B−1の前外側に同軸状に取り付けられた前方端壁部材前部12B−2とを有し、被駆動回転部材14の出力軸14−1を前方に通すための軸孔12B−3を有する。後方端壁部材12Cはライナー12A−1の後側端面に当接されて円筒状支持部材12A−2の内周面に係合して固定されている。前方端壁部材12Bの前方端壁部材後部12B−1と後方端壁部材12Cとは、それぞれ、ライナー12A−1の前端開口及び後端開口とを密封して、ライナー12A−1内にオイルを密封するようにしている。
【0023】
筒状回転駆動部材12は、更に、後方端壁部材12Cの後側端面12C−1に接するようにして取り付けられたダイアフラム12Dと、該ダイアフラム12Dの後部外側で、筒状部材12Aの円筒状支持部材12A−2の内周面に係合して固定され、前述した図示しない回転モータの出力シャフトと連結されるシャフト受入部12E−1を形成するソケット部材12Eとを有する。
【0024】
被駆動回転部材14は、その小径とされた後端部分14−2が後方端壁部材12Cの前側端面12C−2に設けられた軸受け凹部12C−3内に回転自在に支持され、出力軸14−1が前方端壁部材12Bの軸孔12B−3を貫通して前方に延び、回転自在に支持されている。図示の例では、軸孔12B−3の周りに該軸孔12B−3に開口する環状のシールリング収納凹部12B−4が、前方端壁部材後部12B−1と前方端壁部材前部12B−2とによって画定されており、シールリング(図示の例ではOリング)20が該シールリング収納凹部12B−4内に収納されて前方端壁部材12Bと出力軸14−1との間を密封している。
【0025】
より具体的には、被駆動回転部材14は、ライナー12A−1内において前方端壁部材12B及び後方端壁部材12Cの間に設定される仕切り部材16を半径方向で変位可能に保持するための仕切り部材保持部14−5を有し、該仕切り部材保持部14−5は、後端部分14−2及び出力軸14−1の直径よりも大きな直径とされ、1つの直径方向(図1図1B等に示す例では垂直方向に延びる直径方向)Dに沿って前述のバネ孔14−3及び仕切り部材収納溝14−4が形成されている。各仕切り部材を収納する仕切り部材収納溝14−4は、それぞれ、仕切り部材保持部14−5の外表面の直径方向で反対側にある部分から一定深さまで延びており、バネ孔14−3はそれら2つの仕切り部材収納溝14−4の間に延びるように設けられている。図5に示すように、仕切り部材保持部14−5の外周面には、当該仕切り部材保持部14−5の両端部分(前端部分及び後端部分)14−8を除く中間部分に各仕切り部材収納溝14−4の両側においてそれぞれ略45°の角度をなす面取り部分14−6が形成され、該外周面には合計4つの面取り部分14−6が形成されている。仕切り部材収納溝14−4から周方向で前後に90°のところで相互に収斂する隣接する面取り部分14−6は上述の直径方向Dに平行な接続平面14−7(図1B図5)により接続されており、該接続平面の幅方向中央には、上記両端部分14−8間に延びる封止用突条部(細長いシール部)14−9が設けられている。この封止用突条部14−9の先端は、両端部分14−8の外周面と面一とされている。図5から分かるように、仕切り部材収納溝14−4は、当該仕切り部材保持部14−5の外周面から略中心近くまでの深さとされ、仕切り部材保持部14−5の中央部に長手軸線方向に延びる略円筒状の筒状中心部14−11を残すようにされており、バネ孔14−3は長手軸線X方向において相互に間隔を開けて当該長軸線X方向に直交するように設けられている。前述した後端部分14−2は、筒状中心部14−11の延長部分の態様で形成されている。
【0026】
2つの仕切り部材16は、ライナー12A−1の内周面によって画定される筒状部材12の内周面12−1と、前方端壁部材12Bの後側端面12B−5及び後方端壁部材12Cの前側端面12C−2とによって画定されたオイル収納室12F内において被駆動回転部材14に直径方向で対向するように支持されている。オイル回転衝撃力発生装置における仕切り部材は、通常は、被駆動回転部材の外周面に直径方向で対向するように設けられる半径方向溝(仕切り部材収納溝)に半径方向で摺動可能に設けられるブレード(平板)状のものとされ、コイルバネによりそれぞれ半径方向外向きに付勢されるが、本発明に係る図示の実施形態おいては、後述するように、本発明におけるオイル回転衝撃力発生装置における冷却機能の冷却効率を上げるために、図1A図1B図6に示すように、直径方向に延びる一対のコイルバネ16−1の両端部に係合支持された一対の平板状の支持部材16−2の半径方向外側平面16−3上に支持された前記長手方向軸線Xに平行に延びる円柱状の部材とされている。支持部材16−2は、仕切り部材収納溝14−4内に収納されており、円柱状の仕切り部材16は、該支持部材16−2に支持されて半径方向外向きに押圧されて、筒状部材の内周面12−1に係合するようにされている。図1A図1B図4A図4Bは、円柱状の仕切り部材16が最も半径方向外側の位置に変位された状態を示し図3A及び図3Bは、仕切り部材16が最も半径方向内側の位置に変位された状態を示す。図示のように、図3A及び図3Bの状態では、仕切り部材16が完全に仕切り部材収納溝14−4内に収納されている。図6に示すように、支持部材16−2の半径方向内側平面16−4には、コイルバネ16−1の端部に挿入される一対のバネ係合突起16−5が設けられており、それら突起の間には、姿勢保持用突起16−6が設けられている。姿勢保持用突起16−6は、横断面が長円形で、その横断面の長辺に沿った側面16−7が支持部材16−2の側面16−8と面一とされ、仕切り部材収納溝14−4の側面14−17(図1B)に略接するようにされて、支持部材16−2が仕切り部材収納溝14−4内を半径方向で変位するときに、該仕切り部材収納溝14−4の側面14−17と摺動して、前記長手方向軸線Xに平行な姿勢を保持するようになっている。
【0027】
前述の通り、通常の仕切り部材は、ブレード(平板状)とされ、仕切り部材収納溝内を半径方向に変位するようになされ、衝撃発生時には、前述した特許文献でそのようなブレード状の仕切り部材を備えた装置において示されるように半径方向で最も外側に変位して仕切り部材収納溝から外側に出た仕切り部材が、当該仕切り部材に掛かる衝撃力(又は、高圧室の圧力)により低圧室の方に傾く状態とされる。仕切り部材をこのように傾くようにするのは、当該仕切り部材が仕切り部材収納溝から真っ直ぐな状態で外側に出る状態にすると、高圧室の圧力が該仕切り部材の先端面に掛かるために、仕切り部材収納溝内に落ちてしまうからであり、上述のように傾斜させることは必須の条件とされる。従って、仕切り部材をそのように傾斜させるようにするためには、ブレード状の仕切り部材の幅を仕切り部材収納溝の幅よりもかなり小さくすることが必要となる。本発明においては、上述のように、仕切り部材16を円柱状として、これを平板状の支持部材16−2に載せて仕切り部材収納溝14−4内を半径方向に変位するようにしている。図1Bに示すような衝撃発生時に、半径方向で最も外側に変位された円柱状の仕切り部材16は、高圧室12F−1の圧力により仕切り部材収納溝14−4の低圧室12F−2側の縁と第2の突条部分12A−5に係合して、高圧室12F−1と低圧室12F−2との間を仕切るが、このとき高圧室12F−1の圧力は、円柱状の仕切り部材16の支持部材16−2に近い外周面部分にも掛かるために、従来のブレード状にした仕切り部材におけるように、仕切り部材収納溝内に落ちてしまうことがない。従って、仕切り部材収納溝14−4内を半径方向で変位する支持部材16−2は、その幅を、仕切り部材収納溝14−4とほぼ同じにすることができ、これにより当該支持部材16−2の仕切り部材収納溝14−4内での半径方向の動きにより、後述する冷却機能のために必要とされる、オイルに対するポンプ効果を奏するようにすることが可能となる。
【0028】
筒状部材12の内周面12−1を画定するライナー12A−1の内周面は、図1Aの1B−1B線断面図である図1Bに示す断面輪郭を有する。すなわち、全体としては略一定の壁厚tを有する筒状の部材とされ、ライナー12A−1の内周面の直径方向で対向する位置に長手方向軸線Xに平行に延びる一対の第1の突条部分12A−3と、この第1の突条部分12A−3から90°離れた位置に長手方向軸線Xに平行に延びる一対の第2の突条部分12A−5とを有する。上述の通り、ライナー12A−1は全体としては略一定の壁厚tを有しているが、図示の例では、第1の突条部分12A−3の根本部分から第2の突条部分12A−5に向かうに従って次第に僅かに小さくなるようにされている。第1の突条部分12A−3の半径方向で最も内側の部分は、上述した被駆動回転部材14の断面円形の両端部分14−8の外周面に接し、相対的に周方向で摺動可能とされている。ライナー12A−1の両端部分12A−4は、それらの間の上述したような肉厚tよりは大きい肉厚t1とされており、この肉厚t1は、具体的には、第1の突条部分12A−3の位置の最も大きな肉厚の部分から、その周方向前後で90°離れて、上述の第2の突条部分12A−5と同じ肉厚とされた部分まで次第に肉厚が小さくようにされており、長手軸線X方向でみた当該両端部分12A−4の形状(図1B)は楕円形となるようにされている。
【0029】
図1B図2B図3B図4Bは、以上のような基本的構成を有する本願発明に係るオイル回転衝撃力発生装置10において、筒状回転駆動部材12を回転駆動することにより被駆動回転部材14に回転衝撃力を生じさせるメカニズムを示している。先ず、筒状回転駆動部材12が図1Bの状態から時計方向に回されるものとする。図1Bでは、ライナー12A−1の左右にある第1の突条部分12A−3が被駆動回転部材14の左右にある封止用突条部14−9と係合し、ライナー12A−1の上下にある第2の突条部分12A−5が上下にある円柱状の仕切り部材16に係合してオイル収納室12Fを4つの室に分割している。筒状回転駆動部材12が45°回転して図2Bの状態を通り図3Bに至るまでは、ライナー12A−1の第1の突条部分12A−3がオイル収納室12F内のオイルを時計方向に駆動する。このとき仕切り部材16は、ライナー12A−1の内周面に対してはその両端部分12A−4においてだけ摺動係合しており、該両端部分12A−4の間の肉厚tの薄い中間部分12A−6(図2A)ではライナー12A−1の内周面との間に隙間gがあり、時計方向に駆動されるオイルはこの隙間gを通して仕切り部材16の回転方向後側から回転方向前側に動かされる。筒状回転駆動部材12が更に45°回転した図3Bに示す状態では、第1の突条部分12A−3が円柱状の仕切り部材16と係合して該仕切り部材16を仕切り部材収納溝14−4内に押し込みながら時計方向に回転してオイルを駆動し、更に45°回転した(図2Bと実質的に同じ)状態を通って、更に45°回転すると(図4B)、第1の突条部分12A−3によって時計方向に駆動されていたオイルは、第2の突条部分12A−5と係合する位置まで半径方向外側に変位された仕切り部材16によってその流れが阻止され、これにより当該仕切り部材に大きな回転モーメントが衝撃力としてかけられ、該衝撃力が被駆動回転部材14にかけられる。このとき、ライナー12A−1の第1の突条部分12A−3は被駆動回転部材14の封止用突条部14−9と係合し、オイル収納室12Fは4つの室に分割される。このときの、第1突条部分12A−3の回転方向前方の室が高圧室12F−1となり、回転方向後方の部分が低圧室12F−2となる。
【0030】
このような衝撃力発生のメカニズムによれば、筒状回転駆動部材12が被駆動回転部材14に対して相対的に1回転するうちに衝撃力は2回発生することになる。しかし、本発明に係る図示の実施形態においては、以下に述べるように、筒状回転駆動部材12の一回転につき1回の衝撃力が発生されるようにして、衝撃力を大きなものとするようにされている。
【0031】
図5は、被駆動回転部材14の仕切り部材保持部14−5の斜視図と、該仕切り部材保持部14−5の後側端面14−10に隣接して設定される後方端壁部材12Cの斜視図を示しており、後方端壁部材12Cは、仕切り部材保持部14−5の後側端面14−10に隣接する前側端面12C−2が見えるような向きの斜視図とされている。上述のように、仕切り部材保持部14−5の両端部分(前端部分及び後端部分)14−8は横断面が円形とされているが、後側端面14−10には、図5で見て上側の仕切り部材収納溝14−4の両側の位置に該仕切り部材収納溝14−4に対して平行に延びる一対の第1通路部分14−12が形成されている。これら第1通路部分14−12は、仕切り部材保持部14−5の後端部分14−8の外周面に開口して、後側端面14−10から後方に突出する後端部分14−2の両側部分まで延びている。これに対応して後方端壁部材12Cの前側端面12C−2には軸受け凹部12C−3の両側において相互に平行とされた溝形状の第2通路部分12C−4が設けられている。後方端壁部材12Cは筒状回転駆動部材12を構成しており、該筒状回転駆動部材12と共に被駆動回転部材14に対して相対的に回転される。各第2通路部分12C−4は、筒状回転駆動部材12の一回転毎に図5に示す如き位置関係となり、図5に一点鎖線で示すように、対応する第1通路部分14−12と部分的に連通されるようになっている。具体的には、上述の衝撃力が生じ得る図1B及び図4Bの一方、例えば、図4Bにおいて、そのような連通が生じるように設定され、これにより、図4Bの状態では、上側に位置する高圧室12F−1及び低圧室12F−2が、それらの下側に位置する低圧室12F−2及び高圧室12F−1とそれぞれ連通されるようになっており、これにより上述の衝撃力が生じないようにされている。図示の実施形態では、仕切り部材保持部14−5の後端部分14−8の図5で見て、第1通路部分14−12の下方に、該第1通路部分にそれぞれ対応する通気凹部14−13が形成され、該通気凹部14−13に上記第2通気通路13C−4が連通して、第1通路部分14−12、第2通路部分12C−4、そして、通気凹部14−13を介して、上述の如き高圧室12F−1と低圧室12F−2との連通がなされるようにしている。これら第1通路部分14−12及び第2通路部分12C−4、若しくは、それらと通気凹部14−13とが、上述の如く、衝撃力が発生するのを阻止するために高圧室12F−1と低圧室12F−2とを連通する衝撃阻止通路を形成している。
【0032】
更に、本発明に係るオイル回転衝撃力発生装置10においては、上述のように従来のオイル回転衝撃力発生装置において問題となっていた、被駆動回転部材14の出力軸14−1の周りに設定されるシールリング20の摩耗を低減するようにされている。すなわち、前方端壁部材12Bは、軸孔14−1の周りに環状に形成された圧力調整室12B−6と、該圧力調整室12B−6をオイル収納室12Fに連通する第1及び第2絞り流路12B−7、12B−8(図1B図1C)と、圧力調整室12B−6をシールリング収納凹部12B−4に連通する圧力調整路12B−10とを有する。第1及び第2絞り流路12B−7、12B−8は、図1Bに示すように、それぞれ、前方端壁部材12Bの後端面12B−5に開口してオイル収納室12Fに連通した開口12B−7(1)、12B−8(1)を有しており、これら開口12B−7(1)、12B−8(1)は、円柱状の仕切り部材16によりオイルの流れが阻止されて高圧室12F−1及び低圧室12F−2(図1A図1B)が生じるときに、それぞれ高圧室12F−1及び低圧室12F−2に連通する位置とされており、仕切り部材16が開口12B−7(1)、12B−8(1)を通過するとき以外は、オイル収納室12Fに連通されている。
このようにすることにより、圧力調整室12B−6は、オイル室12F内での仕切り部材によるオイルの流れの阻止がされない状態では、高圧状態ではないオイル室12Fと連通されており、また、仕切り部材によりオイルの流れが阻止されて高圧室12F−1が発生する状況にあっても、第1絞り流路12B−7はその流路制限のために高圧室12F−1の圧力がそのまま掛けられることは無く、しかも第2絞り流路12B−8によって低圧室12F−2に連通されているので、当該圧力調整室12B−6は、圧力室12F−1内の圧力に較べてかなり低い圧力に抑えられる。
このためシールリング20は、前述の従来のオイル回転衝撃力発生装置におけるように、高圧室12F−1に発生する極めて高いオイル圧力に曝されることはなく、上述した従来のオイル回転衝撃力発生装置において生じるシールリングの摩耗の問題を解消することが可能となる。
【0033】
本発明に係るオイル回転衝撃力発生装置10においては、第1及び第2絞り流路12B−7,12B−8の絞りを適宜設定して、高圧室12F内に生じるオイルの圧力を調整すると共に、モータが筒状回転駆動部材12にかける回転トルクを調節することにより衝撃力の大きさを所要の大きさにすることができるようにしている。
【0034】
図示の例では、前方端壁部材12Bが、前方端壁部材後部12B−1と前方端壁部材前部12B−2とを備え、これら前方端壁部材後部12B−1と前方端壁部材前部12B−2とを円筒状支持部材12A−2の前端部分12A−2(1)を介して組み合わせることにより、それらの間に上述のシールリング収納室12B−4、圧力調整室12B−6、及び、圧力調整路12B−10が形成されるようになされている。
【0035】
後方端壁部材12Cは、その後側端面12C−1に密封係合されている周縁部分12D−3を有するダイアフラム12Dを有し、後方端壁部材12Cは、ダイアラム12Dと共にアキュミュレータ室12D−1を形成するようにされている。これに対し、ライナー12A−1は、その内周面と外周面との間をその前側端面から該後側端面まで長手方向軸線X方向に貫通する軸方向通路12A−7(図3A図3B)を有し、軸方向通路12A−7の前方端壁部材12Bの後側端面12B−5と接する前端部分は前記圧力調整室12B−6に連通される軸方向開口12A−8(図3A)を有し、軸方向通路12A−7の後方端壁部材12Cの前側端面12C−2と接する後端部分は、アキュミュレータ室12D−1の開口12D−2(図3A)と連通する軸方向開口12A−9と、該筒状部材の内周面12−1に開口した半径方向開口12A−10とを有するようにされている。被駆動回転部材14の仕切り部材保持部14−5の後端部分14−8の円周面は、図1A図1Bに示すオイルの流れの阻止がなされて衝撃力が生じるときは、該半径方向開口12A−10を閉止する。このとき生じる高圧室12F−1の圧力が、圧力調整室12B−6及びアキュミュレータ室12D−1に掛かるのを防ぐためである。図示の例では、図7に示すように、ライナー12Aの後側端部12A−4には、各軸方向通路12A−7に連通し、半径方向内向き及び軸線方向後向きに開口する切り欠き12A−11が設けられ、該切り欠き12A−11及び軸方向開口12A−9が該切り欠き12A−11によって形成されている。
【0036】
このような構成とすることにより、前述の圧力調整室12B−6はアキュミュレータ室12D−1と常に連通され、該アキュミュレータ室12D−1はダイアフラム12Dを介して大気圧と接しているので、当該圧力調整室12B−6内の圧力は、上述の極めて大きい圧力が生じる高圧室12F−1に較べて、更に低い圧力に維持することが可能になり、シールリングの摩耗の問題を更に改善することが可能となる。
【0037】
本発明に係るオイル回転衝撃力発生装置10を備える締結具回転装置1においては、更に、オイル冷却のための次のような構成がとられている。すなわち、被駆動回転部材14には、被駆動回転部材14内を長手方向軸線Xの方向に沿って延びて、仕切り部材収納溝14−4に連通されている軸線方向冷却路14−14と、該軸線方向冷却路14−14の前端部分から半径方向外側に延びる半径方向冷却路14−15と、各仕切り部材収納溝14−4から前方に延びるように出力軸14−1の外表面に設けられた軸線方向冷却溝14−16が設けられており、該軸線方向冷却路14−14と連通されている。該軸線方向冷却路14−14,半径方向冷却路14−15及び軸線方向冷却溝14−16は、図1A及び図4Aに示す状態、すなわち、仕切り部材16が半径方向で最も外側に変位する筒状回転駆動部材12の回転位置(図1A図4A)以外の状態(図2A図3A)に示す状態になったときに、前方端壁部材12Bの圧力調整室12B−6に連通するようにされている。前述の通り、圧力調整室12B−6はライナー12A−1内を軸線方向に延びる軸方向通路12A−7と連通されており、該軸方向通路12A−7の後端部は軸方向開口12A−9を介してアキュムレータ室12D−1に常時連通され、且つ、半径方向開口12A−10を介して、仕切り部材16が半径方向で最も外側に変位したとき以外は、オイル収納室12Fに連通するようにされている。
【0038】
従って、仕切り部材16が半径方向で最も外側に位置して上述の衝撃力が生じ得る状態になるとき以外は、圧力調整室12B−6は、軸線方向冷却路14−14、半径方向冷却路14−15及び軸線方向冷却溝14−16(これらが上述の「第1冷却路」を構成)によって仕切り部材収納溝14−4の半径方向内側部分と連通され、また、軸方向通路12A−7(第2冷却路)によってオイル収納室12Fに連通されている。
【0039】
仕切り部材16及びその支持部材16−2は、筒状回転駆動部材12の回転に伴い仕切り部材収納溝14−4内を半径方向で変位する。このため、仕切り部材16の変位に伴って、仕切り部材収納溝14−4及びオイル収納室12F内のオイルは、支持部材16−2のポンプ作用により、圧力調整室12B−6に対して流入流出される。圧力調整室12B−6は、オイル収納室12Fよりも前方外側にある前方端壁部材12B内にあるため、該圧力調整室12Fに対して流入流出されるオイルはオイル収納室12Fにおけるよりも効率的に冷却される。すなわち、圧力調整室12B−6は冷却用室としても機能しており、従って、この場合、軸線方向冷却路14−14、半径方向冷却路14−15及び軸線方向冷却溝14−16は第1の冷却路として機能し、軸方向通路12A−7は第2の冷却路として機能する。
【0040】
本発明に係るオイル回転衝撃力発生装置10では、この冷却効率を更に向上するために、前方端壁部材12Bにその前方に延びる複数の冷却フィン12B−9が設けられている。図示の例では、この冷却フィン12B−9は、長手方向軸線Xに平行に延びる細長い板状の部材で、長手方向軸線Xの周りで相互に等間隔あけて設けられており、従って、筒状回転駆動部材12の回転と共に空気を半径方向外側に動かすようになっている。図8及び図9に示すように、冷却フィン12B−9によるこの空気の流れを効率的に生じるように、締結具回転装置1のハウジング3は、その前端壁4に出力軸14−1をハウジング3の前方外側に延出させるための軸開口5及びハウジング3内に空気を取り入れるための空気取り入れ開口6を備え、また前端壁4の周縁からオイル回転衝撃力発生装置10の周りを後方に延びる筒状周壁7には空気排出開口8を備えている。このような構成とすることにより、前方端壁部材12Bの周りには円滑な空気流が生じ、冷却フィン12B−9及び前方端壁部材12Bは効率的に冷却され、その結果、オイルの冷却効果をより効率的なものとすることが出来る。
【0041】
以上、本発明の実施形態につきのべたが、本発明はこれに限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、冷却フィンの形状は、冷却効率を考慮して種々の形状とすることが可能である。
【符号の説明】
【0042】
締結具回転装置1
ハウジング3
前端壁4
軸開口5
空気取り入れ開口6
筒状周壁7
空気排出開口8
オイル衝撃力発生装置10
長手方向軸線X
筒状回転駆動部材12
筒状回転駆動部材12の内周面12−1
筒状部材12A
円筒状のライナー12A−1
円筒状支持部材12A−2
前端部分12A−2(1)
第1の突条部分12A−3
両端部分12A−4
第2の突条部分12A−5
中間部分12A−6
軸方向通路(第2冷却路)12A−7
軸方向開口12A−8
軸方向開口12A−9
半径方向開口12A−10
前方端壁部材12B
前方端壁部材後部12B−1
前方端壁部材前部12B−2
軸孔12B−3
シールリング収納凹部12B−4
前方端壁部材12Bの後端面12B−5
圧力調整室12B−6
第1絞り流路12B−7
第2絞り流路12B−8
開口12B−7(1)、12B−8(1)
冷却フィン12B−9
圧力調整路12B−10
後方端壁部材12C
後側端面12C−1
前側端面12C−2
軸受け凹部12C−3
第2通路部分12C−4(衝撃阻止通路)
ダイアフラム12D
アキュミュレータ室12D−1
開口12D−2
ソケット部材12E
シャフト受入部12E−1
オイル収納室12F
高圧室12F−1
低圧室12F−2
被駆動回転部材14
出力軸14−1
後端部分14−2
バネ孔14−3
仕切り部材収納溝14−4
仕切り部材保持部14−5
面取り部分14−6
接続平面14−7
両端部分(前端部分、後端部分)14−8
封止用突条部(細長いシール部)14−9
後側端面14−10
筒状中心部14−11
第1通路部分14−12(衝撃阻止通路)
通気凹部14−13(衝撃阻止通路)
軸線方向冷却路14−14(第1冷却路)
半径方向冷却路14−15(第1冷却路)
軸線方向冷却溝14−16
仕切り部材16
コイルバネ16−1
支持部材16−2
半径方向外側面16−3
半径方向内側平面16−4
バネ係合突起16−5
補強突起16−6
シールリング20
仕切り部材保持部の中間部分の厚みt
仕切り部材保持部の両端部分の厚みt1
長手軸線X
隙間g
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9