特許第5988822号(P5988822)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988822
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 19/03 20060101AFI20160825BHJP
【FI】
   F16L19/03
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-231615(P2012-231615)
(22)【出願日】2012年10月19日
(65)【公開番号】特開2014-84886(P2014-84886A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2014年7月22日
【審判番号】不服2015-14172(P2015-14172/J1)
【審判請求日】2015年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】岡部 庸之
(72)【発明者】
【氏名】守谷 修司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健一
(72)【発明者】
【氏名】中田 知宏
(72)【発明者】
【氏名】篠原 努
(72)【発明者】
【氏名】山路 道雄
【合議体】
【審判長】 和田 雄二
【審判官】 出口 昌哉
【審判官】 氏原 康宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−338574(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/120788(WO,A1)
【文献】 特開2010−96329(JP,A)
【文献】 特開2003−322127(JP,A)
【文献】 特開平10−19092(JP,A)
【文献】 特開2007−46678(JP,A)
【文献】 特開平11−280967(JP,A)
【文献】 特開平7−54165(JP,A)
【文献】 特開2003−74766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 19/02 - 19/04
F16J 15/08
C23C 18/48 - 18/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに連通する流体通路を有している第1および第2の継手部材と、両継手部材の突き合わせ部をシールするシール手段と、継手部材同士を結合するナットとを備えている管継手において、
ナット内面に、Co−Pの合金皮膜が設けられ、合金皮膜表面に、フッ素コーティングが施されていることを特徴とする管継手。
【請求項2】
シール手段は、ガスケットと、ガスケットを保持するとともに、両継手部材の突き合わせ端面に設けられたリテーナ収納凹所にそれぞれ嵌められるリテーナとを備えており、各継手部材のリテーナ収納凹所内の外周面が、突き合わせ端面側の大径外周面部とこれよりも軸方向反対側の小径外周面部とからなり、リテーナは、リテーナ収納凹所の小径外周面部の径に略等しい外径を有する円筒状リテーナ本体と、リテーナ本体に一体に形成された環状突出部と、環状突出部の外周面に開口する環状溝とを有しており、リテーナの環状溝に、リテーナを継手部材に保持させるための弾性リングが嵌め入れられており、ナットが締め付けられた状態で、各リテーナ収納凹所の外周壁を形成している各継手部材の外周部の端面同士が密着させられていることを特徴とする請求項1の管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
管継手として、従来、互いに連通する流体通路を有している第1および第2の継手部材と、両継手部材の突き合わせ端面間に介在させられる円環状ガスケット(シール手段を構成する1部材)と、継手部材同士を結合するナットとを備えているものが知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、ナットとして、締付けの際のかじり、焼付きを防止する目的で、ナットの内面に、銀メッキを施すことが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−74766号公報
【特許文献2】特開平07−54165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の内面に銀メッキが施されているナットを使用した管継手によると、着脱を繰り返すことに伴って、銀メッキが擦れて微粒子状となり、配管内に侵入する恐れがあるという問題があった。
【0006】
この発明の目的は、着脱を繰り返しても、締付トルクが従来と大きく変化しない状態で、微粒子を生じることがない管継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による管継手は、互いに連通する流体通路を有している第1および第2の継手部材と、両継手部材の突き合わせ部をシールするシール手段と、継手部材同士を結合するナットとを備えている管継手において、ナット内面に、Co−Pの合金皮膜が設けられ、合金皮膜表面に、フッ素コーティングが施されていることを特徴とするものである。
【0008】
Co−Pの合金皮膜が設けられたナットは、銀メッキされたナットに比べて、締め付け角度に対する締め付けトルクの大きさが同等でかつ着脱回数が増加した場合の締め付けトルクの大きさが同等であり、しかも、かじりに強く、微粒子を生じない点で優れている。したがって、この発明の管継手によると、微粒子を生じることがなく、微粒子が配管内に侵入するという問題を解消することができる。
【0009】
ナット本体の材料は、適宜なステンレス鋼(例えばSUS316)とされる。
【0010】
Co−Pの合金皮膜は、例えば、無電解メッキにより形成することができ、これに代えて、真空蒸着法またはスパッタリング法などを用いて真空成膜することでも形成することができる。Co−Pの合金皮膜の厚みは、0.1〜10μmとされる。P(リン)の含有率は、例えば6%(3〜10%)とされる。Co−Pの合金皮膜は、ビッカース硬度が500以上(例えば550)とされ、銀メッキのビッカース硬度80前後の数倍であることで、耐摩耗性で有利となる。
【0011】
合金皮膜表面に、フッ素コーティングが施されていることが好ましい。フッ素コーティングは、フッ素を含有するポリマー類をコーティングしたものであってもよく、重合させていないフルオロ基含有化合物をコーティングしたものであってもよい。フッ素コーティングは、共重合体皮膜であることが好ましい。フッ素共重合体皮膜は、例えば、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンと反応性シリコーンオイルと水酸基含有ビニルエーテルと不飽和カルボン酸を含むフッ素共重合体からなるものとされる。フッ素樹脂の具体例としては、PTFE、FEP、PFAおよびETFEなどを使用することができる。フッ素樹脂のコーティングの厚みは、例えば10nm〜1μmとされる。好ましくは、10nm〜100nmとされる。
【0012】
継手部材同士を結合するねじ手段は、種々の構成が可能であり、例えば、第1および第2の継手部材のいずれか一方におねじ部が形成され、継手部材のおねじ部にねじ合わされたナットによって、両継手部材が結合されてもよく、第1および第2の継手部材がいずれもおねじ部が形成されていないスリーブとされ、別部材とされたおねじ部材とナットとによって、両継手部材が結合されてもよい。
【0013】
シール手段は、ガスケットと、ガスケットを保持するとともに、両継手部材の突き合わせ端面に設けられたリテーナ収納凹所にそれぞれ嵌められるリテーナとを備えており、各継手部材のリテーナ収納凹所内の外周面が、突き合わせ端面側の大径外周面部とこれよりも軸方向反対側の小径外周面部とからなり、リテーナは、リテーナ収納凹所の小径外周面部の径に略等しい外径を有する円筒状リテーナ本体と、リテーナ本体に一体に形成された環状突出部と、環状突出部の外周面に開口する環状溝とを有しており、リテーナの環状溝に、リテーナを継手部材に保持させるための弾性リングが嵌め入れられていることが好ましい。
【0014】
このようにすると、外部からの微粒子の侵入に対し、リテーナ収納凹所の小径外周面部とリテーナ本体との嵌め合わせによってこの侵入が防止される。したがって、上記ナットを使用した管継手との組合せにより、より一層、外部からの微粒子が流体通路内に入ることが防止され、高い清浄度を維持することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明の管継手によると、ナット内面にCo−Pの合金皮膜が設けられているので、微粒子を生じることがなく、微粒子が配管内に侵入するという問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、この発明による管継手の第1実施形態を示す縦断面図である。
図2図2は、図1のナットの詳細を示す縦断面図である。
図3図3は、ナットの一部の拡大縦断面図である。
図4図4は、この発明による管継手の第2実施形態を示す縦断面図である。
図5図5は、この発明による管継手の第3実施形態を示す縦断面図である。
図6図6は、この発明による管継手の実施形態の締付け性能を従来のものと比較して示すグラフである。
図7図7は、この発明による管継手の実施形態の着脱性能を従来のものと比較して示すグラフである。
図8図8は、この発明による管継手の実施形態に対応する1比較例と従来のものとを比較して示すグラフであり、(a)は締付け性能を、(b)は着脱性能をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。以下の説明において、上下は、図の上下をいうものとする。
【0018】
図1から図3までは、この発明による管継手の第1実施形態を示している。
【0019】
管継手(1)は、互いに連通する流体通路(2a)(3a)を有している第1管状継手部材(2)および第2管状継手部材(3)と、第1管状継手部材(2)の右端面と第2管状継手部材(3)の左端面との間に介在させられる円環状ガスケット(4)と、円環状ガスケット(4)を保持しかつ第1管状継手部材(2)に保持されるリテーナ(5)とを備えており、第2継手部材(3)側から第1継手部材(2)にねじはめられたナット(6)により、第2継手部材(3)が第1継手部材(2)に固定されている。
【0020】
リテーナ(5)はステンレス鋼板で一体的に形成されたもので、円環部(11)と、円環部(11)右端に内方突出状に設けられた3つの爪からなりガスケット(4)の外周面を保持するガスケット保持部(12)と、第1管状継手部材(2)の右端面に係合するようになされた継手部材保持部(13)とよりなる。
【0021】
ナット(6)は、SUS316製とされている。図2および図3に示すように、ナット(6)には、内面処理層(30)が設けられており、内面処理層(30)は、ナット(6)内面に設けられたCo(コバルト)−P(リン)の合金皮膜(31)と、合金皮膜(31)表面に設けられたフッ素コーティング(32)とからなる。
【0022】
Co−Pの合金皮膜(31)の厚みは、5μmとされており、フッ素樹脂のコーティング(32)の厚みは、50nmとされている。
【0023】
Co−Pの合金皮膜(31)におけるP(リン)の含有率は、約10%とされている。Co−Pの合金皮膜(31)は、ビッカース硬度Hvが550で、ロックウェル硬度HRCが52.3で、静摩擦係数が0.254で、動摩擦係数が0.148である。
【0024】
ナット(6)の右端部には内向きフランジ(15)が形成されており、このフランジ(15)の部分が第2継手部材(3)の周囲にはめられている。ナット(6)の左端部の内周にはめねじ(16)が形成されており、これが第1継手部材(2)の右側に形成されたおねじ(17)にねじはめられている。第2継手部材(3)の左端部外周には外向きフランジ(18)が形成されており、これとナット(6)の内向きフランジ(15)との間に共回り防止用のスラスト玉軸受(19)が介在させられている。スラスト玉軸受(19)に代えて、スラストワッシャとすることもできる。
【0025】
ガスケット(4)はニッケル合金製で、必要に応じて銀メッキが施される。ガスケット(4)の材質として、オーステナイト系ステンレス鋼、銅またはアルミニウム合金などが適宜採用される。ガスケット(4)の左端部外周には、リテーナ(5)のガスケット保持部(12)と係合する外向きフランジよりなる抜止め部(20)が設けられている。したがってガスケット(4)をリテーナ(5)に対して強く押し付けた場合でもガスケット(4)がリテーナ(5)の右側から脱落することがなく、ガスケット(4)をリテーナ(5)に保持させたりリテーナ(5)を継手部材(2)(3)に保持させたりする作業がやりやすい。
【0026】
各継手部材(2)(3)の突合わせ端面の内周部には、ガスケット押え用環状突起(21)(22)がそれぞれ形成され、同外周部には、締過ぎ防止用環状突起(23)(24) がそれぞれ形成されている。ガスケット(4)、リテーナ(5)、ガスケット押え用環状突起(21)(22)および締過ぎ防止用環状突起(23)(24)によってシール手段が形成されている。
【0027】
ガスケット押え用環状突起(21)(22)の高さは、適正な締付けを行ったさいのガスケット(4)に対する各継手部材(2)(3)の軸方向(左右方向)への移動量よりも若干小さくなされている。
【0028】
各締過ぎ防止用環状突起(23)(24)は、ガスケット押え用環状突起(21)(22)よりも突出させられており、適正な締付けを行ったさいに、リテーナ(5)をその両面から押圧するようになされている。各締過ぎ防止用環状突起(23)(24)は組立て前の各継手部材(2)(3)のガスケット押え用環状突起(21)(22)を保護しており、これにより、シール性に重要な影響を及ぼすガスケット押え用環状突起(21)(22)が傷付くことが防止されている。
【0029】
上記の管継手(1)は、第2継手部材(3)側から第1継手部材(2)にねじはめられたナット(6)を手で締め付けた状態では、両ガスケット押え用環状突起(21)(22)先端だけがガスケット(4)をその両面から押圧している。この状態から、ナット(6)を例えば1/6回転させて適正な締付けを行うと、第1継手部材(2)のガスケット押え用環状突起(21)および第2継手部材(3)のガスケット押え用環状突起(22)がガスケット(4)をその両面から強く押圧し、ガスケット(4)の両面に凹みが生じて流体密の連結が果たされる。同時に、各継手部材(2)(3)端面のガスケット押え用環状突起(21)(22)の無い部分もガスケット(4)をその両面から押圧し、ガスケット(4)は、両継手部材(2)(3)の端面全面で保持される。したがって、ガスケット押え用環状突起(21)(22)のみがガスケット(4)を強く押すことによるガスケット(4)の曲げおよびねじれが防止される。
【0030】
上記実施形態で使用されているナット(6)と従来の銀メッキが施されているナットとの比較を図6および図7に示す。図6および図7において、実施例1は、ナット(6)内面にCo(コバルト)−P(リン)の合金皮膜(31)だけが設けられたもの、実施例2は、合金皮膜(31)表面にさらにフッ素コーティング(32)が設けられたものである。
【0031】
比較のための評価項目としては、着脱性能の確保のために、締付け角度に対する締付けトルクの大きさ(図6)と、着脱回数が増加した場合の締付けトルクの大きさ(図7)とを設定した。締付けトルク大は、摩擦抵抗が大きいことを示している。ナット(6)を締め付ける際には、摩擦は低い方が高い締付け力(推力)が得られることから、締付けトルクは小さい方が好ましい。着脱回数が増加した場合の締付けトルクの大きさについては、着脱回数の増加に伴う締付けトルクの増加量が小さい方が好ましい。
【0032】
図6および図7から、Co−Pからなる合金皮膜(31)とすることで、銀メッキを施したナットとほぼ同等の性能が得られることが分かる。さらに、Co−Pからなる合金皮膜(31)にフッ素コーティング(32)を施すことで、より一層銀メッキを施したものに近い性能が得られることが分かる。
【0033】
銀に代わる素材として、ニッケルがよく知られているが、ニッケル−Pを使用した比較例(Ni−P+フッ素コーティング)では、図8に示すように、銀メッキと同等のものを得ることができなかった。
【0034】
Co−Pからなる合金皮膜(31)は、かじりに強く、微粒子を生じない点で、銀メッキに比べて優れている。内面にCo−Pの合金皮膜(31)が設けられている(好ましくは、合金皮膜(31)の表面にさらにフッ素コーティング(32)が設けられている)ナット(6)を使用することで、銀メッキが施されているナットが有している管継手用ナットとして優れた性能(締付けトルクが小さいことおよび着脱を繰り返した際の締付けトルクの増加が小さいこと)を確保した上で、銀メッキが有している問題点(着脱を繰り返すことに伴って、銀メッキが擦れて微粒子状となり、配管内に侵入する恐れがあるという問題)を解消することができる。また、銀メッキと同じ膜厚とした場合、Co−Pからなる合金皮膜(31)は、耐摩耗性にも優れている。
【0035】
なお、ナット以外の管継手の構成については、特に限定されるものではなく、公知の種々の管継手において、ナットを上記ナット(6)に置き換えることで、着脱性能が向上した管継手を得ることができる。図4は、この発明による管継手の第2実施形態を示している。
【0036】
管継手(41)は、互いに連通する流体通路(42a)(43a)を有している第1管状継手部材(42)および第2管状継手部材(43)と、第1管状継手部材(42)の右端面と第2管状継手部材(43)の左端面との間に介在させられる円環状ガスケット(44)と、共回り防止用のスラスト玉軸受(45)とを備えており、第2継手部材(43)側から第1継手部材(42)にねじはめられたナット(6)により、第2継手部材(43)が第1継手部材(42)に固定されている。ガスケット(44)は、断面が方形とされ、各継手部材(42)(43)の突合わせ端面の径方向のほぼ中央部には、ガスケット押え用環状突起(46)(47)がそれぞれ形成されている。この実施形態では、ガスケット(44)およびガスケット押え用環状突起(46)(47)によってシール手段が形成されている。
【0037】
ナット以外の管継手の構成については、また、例えば、シール手段として、ガスケット(4)(44)に代えてフェルールを使用した管継手においても、ナットを上記ナット(6)に置き換えることで、着脱性能が向上した管継手を得ることができる。
【0038】
図5は、この発明による管継手の第3実施形態を示している。この実施形態の管継手(51)は、互いに連通する流体通路(52a)(53a)を有している第1および第2の継手部材(52)(53)と、環状ガスケット(54)と、ガスケット(54)を保持する環状リテーナ(55)と、リテーナ(55)外周に嵌められた弾性リング(56)とを備えている。
【0039】
各継手部材(52)(53)の突き合わせ端面には、環状リテーナ収納凹所(57)(58)が設けられている。各リテーナ収納凹所(57)(58)内の外周面は、突き合わせ端面側の大径外周面部(57a)(58a)と、これよりも軸方向内側の小径外周面部(57b)(58b)とからなる。各継手部材(52)(53)のリテーナ収納凹所(57)(58)を合わせた部分にリテーナ(55)が嵌められている。
【0040】
この実施形態では、ガスケット(54)、リテーナ(55)、弾性リング(56)およびリテーナ収納凹所(57)(58)によって、シール手段が形成されている。
【0041】
ガスケット(54)は、塑性変形することでシール性を奏するもので、大径部(61)と、大径部(61)と内径が同じで外径が小さい小径部(62)とからなる。
【0042】
リテーナ(55)は、リテーナ収納凹所(57)(58)の小径外周面部(57b)(58b)の径に略等しい外径を有する円筒状リテーナ本体(63)と、リテーナ本体(63)に一体に形成されかつリテーナ収納凹所(57)(58)の大径外周面部(57a)(58a)の外径よりも若干小さい環状突出部(64)と、環状突出部(64)の外周面に開口する環状溝(65)とを有している。
【0043】
ガスケット(54)は、例えば、ニッケル合金製、ステンレス鋼製などとされ、リテーナ(55)は、例えば、ステンレス鋼製とされる。
【0044】
リテーナ本体(63)は、ガスケット(54)の大径部(61)の外径に対応する内径を有する薄肉部(63a)と、ガスケット(54)の小径部(62)の外径に対応する内径を有する厚肉部(63b)とからなる。
【0045】
ガスケット(54)は、その大径部(61)がリテーナ本体(63)の薄肉部(63a)内径に、その小径部(62)がリテーナ本体(63)の厚肉部(63b)内径にそれぞれ嵌め入れられている。リテーナ本体(63)の薄肉部(63a)の内周面と厚肉部(63b)の内周面との境界部分は、ガスケット(54)の軸方向一方(図5の左方)への移動を阻止する段差面(63c)とされている。
【0046】
リテーナ(55)の環状溝(65)は、略U字状に形成されており、この環状溝(65)に弾性リング(56)が嵌め入れられている。弾性リング(56)は、断面円形の金属製線材がC状に形成されたスナップリングと称されているもので、径方向の弾性を有している。弾性リング(56)としては、スナップリングに限定されるものではなく、Oリングなどの弾性を有する種々のリング状部材を使用することができる。
【0047】
弾性リング(56)は、フリーの状態で、その外径がリテーナ(55)の環状突出部(64)の径よりもわずかに大きいものとされている。環状溝(65)の深さは、弾性リング(56)が径方向内方に押し込まれた場合にその全体を収容できる大きさとされている。
【0048】
環状溝(65)は、リテーナ本体(63)の中央部に配置されるのではなく、中央よりもいずれか一方(図示した例では左)の端に寄ったように形成され、これにより、弾性リング(56)は、いずれか一方の継手部材(図示した例では第1継手部材)(52)とリテーナ(55)との間で挟持される。
【0049】
第3実施形態の管継手(51)は、リテーナ(55)に着脱可能にガスケット(54)を保持させ、さらに、弾性リング(56)をリテーナ(55)に着脱可能に嵌め合わせた組立て状態として使用される。リテーナ(55)は、第1および第2の継手部材(52)(53)のどちらでも保持でき、継手部材(52)(53)の突き合わせ端面形状を区別せずに組み立てることができる。
【0050】
第3実施形態の管継手(51)によると、リテーナ収納凹所(57)(58)の小径外周面部(57b)(58b)の径に等しい外径を有するリテーナ本体(63)とリテーナ収納凹所(57)(58)の小径外周面部(57b)(58b)との嵌め合わせにより、外部からの微粒子の侵入が防止され、外部からの微粒子が流体通路(52a)(53a)内に入ることが防止されるので、高い清浄度を維持することができる。
【0051】
図5は、適正に締め付けられた後の状態を示しており、ガスケット(54)が変形することで高いシール性が得られている。この状態では、各リテーナ収納凹所(57)(58)の外周壁を形成している各継手部材(52)(53)の外周部(52b)(53b)の端面同士が密着させられており、外部からの微粒子の侵入が防止されている。また、各継手部材(52)(53)の外周部(52b)(53b)の端面同士が密着することによって、継手部材(52)(53)を締め付けていった際の手応えが変化することから、各継手部材(52)(53)の外周部(52b)(53b)は、締付け過ぎ防止の機能も奏している。
【0052】
図5に示す構成とCo−Pの合金皮膜(31)およびフッ素コーティング(32)が施されたナット(6)とが組み合わされることで、より一層高い清浄度を得ることができる。
【符号の説明】
【0053】
(1):管継手、(2)(3):継手部材、(2a)(3a):流体通路、(6):ナット、(31)Co−P合金皮膜、(32)フッ素コーティング、(54):ガスケット、(55):リテーナ、(56):弾性リング、(57)(58):リテーナ収納凹所、(57a)(58a):大径外周面部、(57b)(58b):小径外周面部、(63):リテーナ本体、(64):環状突出部、(65):環状溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8