(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記圧縮機は、圧縮機構部と、電動機と、前記圧縮機構部から吐出された冷媒が流入する第1の空間と、前記電動機が位置する第2の空間と、前記第1の空間と前記第2の空間とを区画するカバーと、を有し、
前記サイクル流路は前記第1の空間に接続され、
前記第1のバイパス流路及び前記第2のバイパス流路は前記第2の空間に接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態の冷凍サイクル装置は、吐出されたガスと機油、又は、機油のみを冷却器で冷やして圧縮機に戻し、圧縮機の温度を低下させることを主な特徴とする。本実施形態の冷凍サイクル装置は、冷蔵庫、冷凍機、ヒートポンプ式給湯機、空気調和機等に適用することができる。以下では、この冷凍サイクル装置を空気調和機に適用することを想定して本実施形態について適宜図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る冷凍サイクル装置の構成説明図である。
図1に示すように、本実施形態に係る冷凍サイクル装置A1は、圧縮機1、油分離器25、第1の開閉弁21、室外熱交換器18、減圧装置19(膨張弁)及び室内熱交換器20が順次に接続されて冷媒のサイクル流路を構成している。
【0015】
さらに、冷凍サイクル装置A1は、油分離器25と圧縮機1とを接続する第1のバイパス流路35と、圧縮機1と凝縮器とを接続する第2のバイパス流路36を備える。なお、
図1に示すとおり、第2のバイパス流路36は四方弁40を介して圧縮機1と凝縮器とを接続している。
【0016】
本実施形態では、冷媒としてR32を使用することを想定し、機油(潤滑油)としてR32に対して良好な相溶性を示すポリオールエステル系油を使用することを想定している。
【0017】
冷房運転時は、冷凍サイクル装置A1が、リモコンにより冷房運転の指令を受けると、制御手段26により第2の開閉弁22を開けて、第1の開閉弁21を閉じ、油分離器25から直接冷媒が室外熱交換器18(凝縮器)に流入する流路を遮断し、冷媒を油分離器25から圧縮機1に戻るようにする。
【0018】
圧縮機1で圧縮された高温高圧の冷媒(ホットガス)と機油は、圧縮機1の第1の吐出管2eを介して油分離器25に流入する。ここで、第1の開閉弁21が閉じているので、油分離器25では冷媒と機油は分離せず、両方とも冷却器15に流れる。冷却器15で冷媒と機油は冷やされ、第1のバイパス流路35を通って圧縮機1に戻る。
【0019】
圧縮機1に戻った冷媒と機油は圧縮機1の内部で分離し、冷媒は第2の吐出管2fから吐出し、機油は圧縮機1の下部に溜まる。吐出管2fから吐出した冷媒は第2の開閉弁22を通って室外熱交換器18(凝縮器)に流入し、空気との熱交換により放熱して凝縮する。その後、冷媒は、減圧装置19に供給され、減圧装置19を通過する際に等エンタルピ膨張し、低温低圧でガス冷媒と液冷媒とが混在した気液二相流となる。この気液二相流となった冷媒は、室内熱交換器20(蒸発器)へ流入する。
【0020】
室内熱交換器20(蒸発器)での液冷媒は、図示しない冷媒管及びこれらに取り付けられたフィンを通じて空気からの吸熱作用によりガス冷媒に気化する。つまり、液冷媒が気化する際に室内熱交換器20(蒸発器)が周囲の空気を冷却することで冷凍サイクル装置A1は、冷房機能を発揮する。次いで、室内熱交換器20(蒸発器)を出た冷媒は、四方弁40を介して圧縮機1の吸込管2dに吸入される。そして、冷媒は、圧縮機1で高温高圧に圧縮されると共に、再び圧縮機1の第1の吐出管2eから吐出されてサイクル流路を循環する。
【0021】
暖房運転時は、冷凍サイクルA1がリモコンにより暖房運転の指令を受けると、制御手段26により第2の開閉弁22を閉じて、第1の開閉弁21を開き、油分離器25で機油と分離した冷媒を室内熱交換器20(凝縮器)に流入するようにする。
【0022】
圧縮機1で圧縮された高温高圧の冷媒(ホットガス)は、圧縮機1の第1の吐出管2eから油分離器25に流入する。ここで、油分離器25で冷媒と機油とが分離し、機油は冷却器15に流れる。冷却器15で冷やされた機油は第1のバイパス流路35を介して圧縮機1に戻される。一方、冷媒は室内熱交換器20(凝縮器)に流入し、空気との熱交換により放熱して凝縮する。その後、冷媒は、減圧装置19に供給され、減圧装置19を通過する際に等エンタルピ膨張し、低温低圧でガス冷媒と液冷媒とが混在した気液二相流となる。この気液二相流となった冷媒は、室外熱交換器18(蒸発器)へ流入する。室外熱交換器18(蒸発器)の後は、冷房運転で説明した通りである。
【0023】
次に、圧縮機1について説明する。
図2は、冷凍サイクル装置を構成する圧縮機の縦断面図である。
図3は、
図2の圧縮機における圧縮機構部の拡大断面図である。
図2に示すように、本実施形態での圧縮機1は、高圧チャンバ方式の密閉型スクロール圧縮機で構成され、広範囲にわたる運転条件の下で使用される。
【0024】
圧縮機1は、旋回スクロール6及び固定スクロール5からなる圧縮機構部3と、圧縮機構部3を駆動する電動機4と、圧縮機構部3と電動機4を収納する密閉容器2を備えている。密閉容器2内の上部には圧縮機構部3が、下部には電動機4が配置されている。そして、密閉容器2の底部には機油が貯留されている。
【0025】
密閉容器2は、円筒状のケース2aに蓋チャンバ2bと底チャンバ2cが上下に溶接されて構成されている。蓋チャンバ2bには吸込管2dと第1の吐出管2eが設けられている。第1の吐出管2eは固定スクロール5の吐出口5eに接続されている。第1の吐出管2eは固定スクロール5に固定されており、吐出口5eから流出した冷媒は密閉容器2内を循環せずに、第1の吐出管2eを通って圧縮機1の外部に流出する。
【0026】
ケース2aの側面には第2の吐出管2fと戻り管2gが設けられている。圧縮機構部3は、固定スクロール5と、旋回スクロール6と、固定スクロール5にボルト等の締結具で締結されて旋回スクロール6を支持するフレーム9と、を備えて構成されている。
【0027】
固定スクロール5には、相対向して旋回スクロール6が旋回自在に配置されており、両者によって、吸込室10と圧縮室11が形成されている。
【0028】
フレーム9は、その外周側が溶接によって密閉容器2の内壁面に固定されており、クランク軸7を回転自在に支持する主軸受9aを備えている。旋回スクロール6の下面側に、クランク軸7の偏心部7bが連結されている。
【0029】
旋回スクロール6の下面側とフレーム9の間には、オルダムリング12が配置されており、オルダムリング12は旋回スクロール6の下面側に形成された溝とフレーム9に形成された溝に装着されている。オルダムリング12は、旋回スクロール6を自転することなく、クランク軸7の偏心部7bの偏心回転を受けて公転運動をさせる働きをする。
【0030】
電動機4は、ステータ4a及びロータ4bを備えている。ステータ4aは密閉容器2に圧入、溶接等により固定されている。ロータ4bはステータ4a内に回転可能に配置されている。ロータ4bにはクランク軸7が固定されている。
【0031】
クランク軸7は、主軸7aと偏心部7bとを備えて構成されており、フレーム9に設けた主軸受9aと下軸受17とで支持されている。偏心部7bはクランク軸7の主軸7aに対して偏心して一体に形成されており、旋回スクロール6の背面に設けた旋回軸受6aに嵌合されている。クランク軸7は電動機4によって駆動され、偏心部7bは主軸7aに対して偏心回転運動し、旋回スクロール6を旋回運動させるようになっている。また、クランク軸7は、主軸受9a、下軸受17及び旋回軸受6aへ機油を導く給油通路7cが設けられ、電動機4側の軸端に機油を吸い上げて給油通路7cに導く給油管7dが装着されている。
【0032】
ガス冷媒は、電動機4で駆動されるクランク軸7を介して旋回スクロール6が旋回運動すると、吸込管2dから旋回スクロール6及び固定スクロール5により形成される圧縮室11に導かれる。そして、ガス冷媒は、旋回スクロール6と固定スクロール5との間で中心方向に移動するに従って容積を縮小して圧縮される。圧縮されたガス冷媒は固定スクロール5の略中央に設けられた吐出口5eから吐出管2eを通って、外部へと流出していく。
【0033】
次に、本実施形態に係る冷凍サイクル装置A1の作用効果について説明する。冷凍サイクル装置A1に冷媒として使用されるR32の断熱指数は、空気調和機の冷媒として広く使用されているR410Aの断熱指数よりも大きい。
【0034】
図4は、R32及びR410Aの圧力比に対する理論吐出ガス温度の関係を示すグラフである。
図4に示すように、吸込圧力と吐出圧力との圧力比が高くなるほど吐出ガス温度は上昇する。そして、R32の吐出ガス温度は、R410Aよりも高い。よって、R32を冷媒として使用する冷凍サイクル装置A1は、R410Aを冷媒として使用するものよりも、圧縮機1の吐出ガス温度が高くなる。したがって、密閉容器内が吐出ガスで充満する高圧チャンバ方式で、R32を冷媒として使用すると、圧縮機1の電動機4における樹脂部品等の劣化が進行し易い。これに対して、本実施形態に係る冷凍サイクル装置A1では、吐出された冷媒および機油を冷却して圧縮機1に戻して圧縮機1の温度を低下させる構成となっている。
【0035】
更に詳しく説明すると、冷房運転では、
図1に示す圧縮機1の第1の吐出管2eから吐出される高温高圧の冷媒は、油分離器25に流入し、冷媒とともに吐出された機油と冷却器15を通過し圧縮機1に戻される。この際、圧縮機1に戻された冷媒と機油は冷却器15によって冷やされており、この冷媒と機油が流入するので、圧縮機1の温度が低下する。
【0036】
暖房運転では、
図1に示す圧縮機1の第1の吐出管2eから吐出される高温高圧の冷媒は、油分離器25に流入し、ここで、冷媒は、ともに吐出された機油と分離され、機油は冷却器15を通過し圧縮機1に戻される。圧縮機1に戻される機油の量は冷媒流量の約1重量%と少なく、圧縮機1の冷却効果は小さいが、暖房運転時の圧縮機1の周囲温度は冬期の外気温度であり、圧縮機1は外気によって冷却され温度が低下する。一方、油分離器25で機油と分離された冷媒は直接
室内熱交換器20(凝縮器
)へ流入するので、高温の冷媒ガスを
室内熱交換器20(凝縮器
)に供給でき暖房能力が低下することがない。特に、R32のような吐出ガス温度が高くなる性質を持つ冷媒では、現在広く使用されているR410Aよりも暖房能力が向上する。
【0037】
次に、背圧室14の圧力調整機構である背圧制御弁16について説明する。
図3に示すように、固定スクロール5には、ばね収納穴5fが形成されている。また、ばね収納穴5fの背圧室14側に貫通穴5gが形成されている。また、ばね収納穴5fと圧縮室11とは連通穴5bを介して連通している。ばね収納穴5fには貫通穴5gを塞ぐように弁体16cが、ばね16dによって押付けられている。ばね16dはシール部材16eに取り付けられている。そして、シール部材16eは、ばね収納穴5fと密閉容器2内を区画するように固定スクロール5に圧入されている。
【0038】
次に、背圧制御弁16の動作について説明する。
図2に示すように、密閉容器2の底部に位置する油溜り13に溜められた機油は密閉容器2と背圧室14の圧力差により給油管7dと給油通路7cを通って各軸受部に給油される。主軸受9aと旋回軸受6aに給油された機油は背圧室14に入り、ここで機油に溶け込んでいた冷媒が発泡し、背圧室14の圧力を上昇させる。
【0039】
図3に示すように、背圧室14とばね収納穴5fの圧力差がばね16dの押付力より勝ると弁体16cが開く。これにより、背圧室14内の機油は連通穴5bから溝5aを通って圧縮室11に供給され、冷媒とともに吐出口5eから吐き出される。背圧室14の圧力は、おおよそ吸込圧力に所定の値(ばね16dのばね力によって決まる一定値)を加えた程度の値となる。
【0040】
一般に、機油に溶け込む冷媒溶解量は、吐出ガス温度が上昇すると減少する。
図5は、ポリオールエステル系機油に対するR32の冷媒溶解量比と吐出ガス温度との関係を示すグラフである。なお、
図5中、縦軸の冷媒溶解量比は、吐出ガス温度86℃における冷媒溶解量を「1」とした比率を表している。
【0041】
図5に示すように、吐出ガス温度が上昇すると、ポリオールエステル系の機油に対するR32の溶解量(冷媒溶解量比)が減少する。機油に溶け込む冷媒の量が不足すると、機油に溶け込んでいた冷媒の発泡によって圧力を維持する背圧室14の圧力は低下する傾向にある。
【0042】
これに対して、本実施形態では、冷却器15によって機油の温度が低下するので、背圧室14の圧力の低下を抑制することができる。つまり、本実施形態に係る冷凍サイクル装置A1によれば、圧縮機1の吸込圧と背圧とのバランスを良好にし、固定スクロール5に対する旋回スクロール6の押圧力を適度に維持することができる。
【0043】
次に、圧縮機1に用いられる電動機の効率について説明する。
図6は、圧縮機の温度に対する電動機効率の関係を示すグラフである。
図6に示すように、圧縮機1の温度が低下すると、電動機効率が向上する。したがって、本実施形態に係る冷凍サイクル装置A1によれば、圧縮機1の温度が低下するので、電動機効率を向上させることができる。また、吸気加熱損失が低減するので、圧縮機1への入力を低減することができる。
【0044】
図7は、
図2の圧縮機においてリリース弁を設けた時の圧縮機構部の構成を示した図である。スクロール圧縮機は吸込圧力と吐出圧力の圧力比(吐出圧力/吸込圧力)が低い時に、吐出口5eから吐き出される前に冷媒をリリース弁23から吐出することが多い。
図7では、固定スクロール5の上部にカバー37を設けられ、カバー37は密閉容器2を第1の空間38と第2の空間39に区画している。第1の空間38は、第1の吐出管2e、リリース弁23と連通しており、リリース弁23から吐き出された冷媒が密閉容器2内に流入することなく、第1の吐出管2eから吐出できるようになっている。
【0045】
なお、第2の空間39には電動機4が配置されていればよく、カバー37の代わりに固定スクロール5によって、密閉容器2を第1の空間38と第2の空間39に区画してもよい。
【0046】
図8は、
図2の圧縮機において密閉容器に環状壁を設けた時の第1の構成である。フレーム9の下部に円筒形状の環状壁24を設けており、第2の空間39を内側空間24aと、内側空間24aの外側に位置する外側空間24bと、に区画している。
【0047】
第1のバイパス流路35に接続される戻り管2gは環状壁24の内側空間24aに開口しており、第2のバイパス流路36に接続される第2の吐出管2fは環状壁24の外側空間24bに開口している。
【0048】
戻り管2gから流入した冷媒と機油は、ステータ4aとロータ4bの隙間を通って圧縮機1の下部に導かれ、機油は返油され、密度の低い冷媒のみ図示しないステータ4aの外周溝から環状壁24の外側空間24bに流入し、第2の吐出管2fから吐き出される。また、環状壁24によって、ロータ4bの回転によって飛散した機油が直接第2の吐出管2fから流出することがない。従って、密閉容器2での油分離性能を向上させることができる。
【0049】
図9は、
図2の圧縮機において密閉容器に環状壁を設けた時の第2の構成である。第1のバイパス流路35に接続される戻り管2gを電動機4と油溜り13との間に設け、戻り管2gから流入した機油が油溜り13に返油される。一方、第2のバイパス流路36に接続される第2の吐出管2fは圧縮機1と電動機4の間に接続される。そのため、密度の低い冷媒のみ電動機4の隙間を通って、第2のバイパス流路36に接続される第2の吐出管2fから吐き出されるので、密閉容器での油分離性能を向上させることができる。
【0050】
次に、本実施形態をロータリ圧縮機に適用する場合について説明する。
図10は、本実施形態に係る冷凍サイクル装置の構成説明図である。
【0051】
図10の冷凍サイクル装置A
2にはロータリ圧縮機を搭載している。ロータリ圧縮機の密閉容器2にも第1の吐出管2e、第2の吐出管2fおよび戻り管2gを設けることができ、スクロール圧縮機以外の圧縮機でも実現可能である。
【0052】
以上説明した通り、本発明の冷凍サイクル装置は、圧縮機1、油分離器25、第1の開閉弁21、凝縮器、減圧装置19及び蒸発器を順次配管で接続し、冷媒としてR32が循環するサイクル流路と、油分離器25と圧縮機1とを配管で接続する第1のバイパス流路35と、第1のバイパス流路35に設けられた冷却器15と、圧縮機1と凝縮器とを配管で接続する第2のバイパス流路36と、第2のバイパス流路36に設けられた第2の開閉弁22と、第1の開閉弁21と第2の開閉弁22のいずれか一方を開き、他方を閉じる制御手段26と、を備える。
【0053】
また、本発明の冷凍サイクル装置は、冷房運転の時は、第1の開閉弁21を閉じ、且つ、第2の開閉弁22を開き、暖房運転の時は、第1の開閉弁21を開き、且つ、第2の開閉弁22を閉じる。
【0054】
また、本発明の冷凍サイクル装置は、圧縮機1は、圧縮機構部3と、電動機4と、圧縮機構部3から吐出された冷媒が流入する第1の空間38と、電動機4が位置する第2の空間39と、第1の空間38と第2の空間39とを区画するカバー37と、を有し、サイクル流路は第1の空間38に接続され、第1のバイパス流路35及び第2のバイパス流路36は第2の空間39に接続される。
【0055】
また、本発明の冷凍サイクル装置は、圧縮機1は、第2の空間39を内側空間24aと、内側空間24aの外側に位置する外側空間24bと、に区画する環状壁24と、を有し、第1のバイパス流路35は内側空間24aに接続され、第2のバイパス流路36は外側空間24bに接続される。
【0056】
また、本発明の冷凍サイクル装置は、圧縮機1は、底部に油溜り13を有し、第1のバイパス流路35は電動機4と油溜り13の間に接続され、第2のバイパス流路36は電動機4と圧縮機構部3の間に接続される。