(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電熱変換素子の表裏をなす第3の主面と第4の主面とのうち、前記伝熱板と対向する面を前記第3の主面とするときに、前記第1のリード線は、前記延在部の前記第3の主面側に配置されている、請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の治療用処置装置。
前記電熱変換素子の表裏をなす第3の主面と第4の主面とのうち、前記伝熱板と対向する面を前記第3の主面とするときに、前記電気抵抗パターンは、前記電熱変換素子の前記第3の主面に設けられており、
前記伝熱板と前記電熱変換素子との間に配置され、前記電気抵抗パターンと前記伝熱板との熱的な結合を担う接着シートをさらに具備する、
請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の治療用処置装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係る治療用処置装置は、生体組織の治療に用いるための装置である。この治療用処置装置は、生体組織に高周波エネルギと熱エネルギとを作用させる。治療用処置装置300の外観の概略を
図1に示す。この図に示されるように、治療用処置装置300は、エネルギ処置具310と、制御装置370と、フットスイッチ380とを備えている。
【0010】
エネルギ処置具310は、例えば腹壁を貫通させて処置を行うための、リニアタイプの外科治療用処置具である。エネルギ処置具310は、ハンドル350と、ハンドル350に取り付けられたシャフト340と、シャフト340の先端に設けられた保持部320とを有する。保持部320は、開閉可能であり、処置対象である生体組織を把持して、生体組織の凝固、切開等の処置を行う処置部である。以降説明のため、保持部320側を先端側と称し、ハンドル350側を基端側と称する。ハンドル350は、保持部320を操作するための複数の操作ノブ352を備えている。また、ハンドル350には、そのエネルギ処置具310に係る固有値等を記憶する図示しない不揮発性のメモリが備えられている。なお、ここで示したエネルギ処置具310の形状は、もちろん一例であり、同様の機能を有していれば、他の形状でもよい。例えば、鉗子のような形状をしていてもよいし、シャフトが湾曲していてもよい。
【0011】
ハンドル350は、ケーブル360を介して制御装置370に接続されている。ここで、ケーブル360と制御装置370とは、コネクタ365によって接続されており、この接続は着脱自在となっている。すなわち、治療用処置装置300は、処置毎にエネルギ処置具310を交換することができるように構成されている。制御装置370には、フットスイッチ380が接続されている。足で操作するフットスイッチ380は、手で操作するスイッチやその他のスイッチに置き換えてもよい。フットスイッチ380のペダルを術者が操作することにより、制御装置370からエネルギ処置具310へのエネルギの供給のON/OFFが切り換えられる。
【0012】
保持部320及びシャフト340の構造の一例を
図2に示す。
図2(A)は保持部320が閉じた状態を示し、
図2(B)は保持部320が開いた状態を示す。シャフト340は、筒体342とシース343とを備えている。筒体342は、その基端部でハンドル350に固定されている。シース343は、筒体342の外周に、筒体342の軸方向に沿って摺動可能に配設されている。
【0013】
筒体342の先端部には、保持部320が配設されている。保持部320は、第1の保持部材322と、第2の保持部材324とを備えている。第1の保持部材322の基部は、シャフト340の筒体342の先端部に固定されている。一方、第2の保持部材324の基部は、シャフト340の筒体342の先端部に、支持ピン346によって、回動可能に支持されている。したがって、第2の保持部材324は、支持ピン346の軸回りに回動し、第1の保持部材322に対して開いたり閉じたりする。
【0014】
保持部320が閉じた状態では、第1の保持部材322の基部と、第2の保持部材324の基部とを合わせた断面形状は、円形となる。第2の保持部材324は、第1の保持部材322に対して開くように、例えば板バネなどの弾性部材347により付勢されている。シース343を、筒体342に対して先端側にスライドさせ、シース343によって第1の保持部材322の基部及び第2の保持部材324の基部を覆うと、
図2(A)に示すように、弾性部材347の付勢力に抗して、第1の保持部材322及び第2の保持部材324は閉じる。一方、シース343を筒体342の基端側にスライドさせると、
図2(B)に示すように、弾性部材347の付勢力によって第1の保持部材322に対して第2の保持部材324は開く。
【0015】
筒体342には、後述する第1の高周波電極110に接続された第1の高周波電極用通電ライン162と、第2の高周波電極210に接続された第2の高周波電極用通電ライン262とが挿通されている。また、筒体342には、第1の高周波電極110に配置された後述する発熱部材である電熱変換素子140に接続された一対の第1のヒータ用通電ライン164と、第2の高周波電極210に配置された電熱変換素子230に接続された一対の第2のヒータ用通電ライン264とが挿通されている。
【0016】
筒体342の内部には、その基端側で操作ノブ352の一つと接続した駆動ロッド344が、筒体342の軸方向に沿って移動可能に設置されている。駆動ロッド344の先端側には、先端側に刃が形成された薄板状のカッタ345が設置されている。操作ノブ352を操作すると、駆動ロッド344を介してカッタ345は、筒体342の軸方向に沿って移動させられる。カッタ345が先端側に移動するとき、カッタ345は、保持部320に形成された後述する第1のカッタ案内溝332及び第2のカッタ案内溝334内に収まる。
【0017】
第1の保持部材322の構成の概略を
図3に示す。この図に示されるように、第1の保持部材322には、前記したカッタ345を案内するための第1のカッタ案内溝332が形成されている。第1の保持部材322には、例えば銅の薄板を含む第1の高周波電極110が設けられている。この第1の高周波電極110は、その一方の主面(以降、第1の主面と称する)で生体組織と接触するように構成されている。第1の高周波電極110は、第1のカッタ案内溝332を有するので、その平面形状は、
図3(A)に示されるように、U字形状となっている。第1の高周波電極110には、後に詳述するようにして第1の高周波電極用通電ライン162が電気的に接続されている。第1の高周波電極110は、この第1の高周波電極用通電ライン162及びケーブル360を介して制御装置370に接続されている。また、第1の高周波電極110の生体組織と接触しない第2の主面には、後に詳述するように、電熱変換素子140及びカバー部材150が配置されている。このようにして、第1の高周波電極110、電熱変換素子140及びカバー部材150等からなる第1の電極部100が形成されている。第1の電極部100は、第1の保持部材本体326に埋め込まれて固定されている。なお、第1の電極部100の構成例を後にさらに詳述する。
【0018】
図2に示されるように、第2の保持部材324は、第1の保持部材322と対称をなす形状をしており、第1の保持部材322と同様の構造を有する。すなわち、第2の保持部材324には、第1のカッタ案内溝332と対向する位置に、第2のカッタ案内溝334が形成されている。また、第2の保持部材324には、第1の高周波電極110と対向する位置に、第2の高周波電極210が設けられている。この第2の高周波電極210は、その一方の主面で生体組織と接触するように構成されている。第2の高周波電極210は、第2の高周波電極用通電ライン262及びケーブル360を介して制御装置370に接続されている。
【0019】
また、第2の高周波電極210の生体組織と接触しない面には、電熱変換素子230及びカバー部材250が配置されている。このようにして、第2の高周波電極210、電熱変換素子230及びカバー部材250等からなる第2の電極部200が形成されている。第2の電極部200は、第2の保持部材本体328に埋め込まれて固定されている。
【0020】
第1の電極部100について詳述する。なお、第2の電極部200は、第1の電極部100と同様の構造を有するので、第2の電極部200についての説明は省略する。第1の電極部100の分解斜視図を
図4に示す。この図に示すように、第1の電極部100は、第1の高周波電極110と、高熱伝導耐熱接着シート130と、電熱変換素子140と、カバー部材150とを有する。これら第1の高周波電極110、高熱伝導耐熱接着シート130、及び電熱変換素子140は、第1のカッタ案内溝332を形成するようにU字形状をしている。カバー部材150は、第1のカッタ案内溝332を形成するように、溝を有する形状をしている。
【0021】
第1の高周波電極110について
図5及び
図6を参照して説明する。
図5は、第1の高周波電極110の斜視図であり、
図6は、第1の高周波電極110の基端部分の拡大斜視図である。第1の高周波電極110は、上述の通り例えば銅製である。第1の高周波電極110は、生体組織と接触し得る電極底部111を含む。電極底部111の厚さは、例えば0.5mm程度である。電極底部111の周縁部には、基端部を除き、側壁部112が設けられている。この側壁部112は、電極底部111と垂直にカバー部材150側に形成されている。第1の高周波電極110の基端部には、側壁部112から第1の高周波電極110の中心軸方向に突出した固定部114が設けられている。第1の高周波電極110の先端部には、側壁部112から突出した凸部115が設けられている。
【0022】
第1の高周波電極110は、例えば切削加工によって形成され得る。また、電極底部111及び側壁部112が形成された後に、別途形成された固定部114が側壁部112に付加されてもよい。この場合、電極底部111及び側壁部112は曲げ加工によっても形成され得る。
【0023】
電熱変換素子140の平面図を
図7に示す。この図に示すように、電熱変換素子140は、例えばポリイミドの基板142を含む。この基板142の形状は、概して第1の高周波電極110の電極底部111の形状に一致し、長さが電極底部111よりもやや長い。
図7では、第1の電極部100が組み立てられた際に電極底部111の基端側の端部に相当する位置が、2点破線で示されている。電極底部111から突出する部分を延在部143と称することにする。
【0024】
基板142の延在部143以外の大部分の領域には、例えばステンレス(SUS)のパターンによって、電気抵抗パターン144が形成されている。基板142の延在部143を含む端部には、電気抵抗パターン144の両端に接続された第1のリード接続部146がそれぞれSUSパターンによって形成されている。一対の第1のリード接続部146に電圧が印加されることで、電気抵抗パターン144は発熱する。このように、電熱変換素子140は、シートヒータとして機能する。なお、電熱変換素子140の厚さは例えば100μm程度である。
【0025】
基板142の電気抵抗パターン144が形成されている主面と反対側の主面には、後述の
図11に示されるように、第2のリード接続部148が形成されている。第2のリード接続部148は、第1の高周波電極110の固定部114と接触するように構成されている。第2のリード接続部148と固定部114とが接触することで、第2のリード接続部148を介して第1の高周波電極110に電圧が印加され得る。
【0026】
第1の高周波電極110の電極底部111と電熱変換素子140とは、高熱伝導耐熱接着シート130によって接着されている。ここで、電熱変換素子140は、電気抵抗パターン144が形成されている面を第1の高周波電極110側に向けて接着されている。高熱伝導耐熱接着シート130は、熱伝導率が高く、かつ、高温に耐え、接着性を有するシートである。高熱伝導耐熱接着シート130は、例えばエポキシ樹脂に、アルミナや窒化アルミ等といった熱伝導率の高いセラミックが混合されることで形成されている。高熱伝導耐熱接着シート130は、高い接着性能と、良好な熱伝導性と、電気絶縁性とを有している。高熱伝導耐熱接着シート130の厚さは、例えば50μm程度である。
【0027】
高熱伝導耐熱接着シート130は、電極底部111とほぼ同様の形状をしている。ただし、高熱伝導耐熱接着シート130は、第1の高周波電極110の電極底部111よりもやや長い。高熱伝導耐熱接着シート130が電極底部111よりも長いことで、第1の高周波電極110と第1のリード接続部146との間の電気的絶縁性が確保されるようになっている。
【0028】
カバー部材150は、耐熱性を有する樹脂製である。カバー部材150は、第1の高周波電極110に対応する形状をしている。カバー部材150の厚さは、例えば0.3mm程度である。
図4に示されるように、カバー部材150の先端部分には、切欠き部152が設けられている。この切欠き部152は、第1の高周波電極110の凸部115と掛合する。また、カバー部材150の基端側には、凸部154が設けられている。この凸部154は、第1の高周波電極110の固定部114と掛合する。このように、第1の高周波電極110とカバー部材150とは、第1の高周波電極110の凸部115及び固定部114と、カバー部材150の切欠き部152及び凸部154との掛合により接合される。このように、第1の高周波電極110とカバー部材150とがシンプルな構造で接合されることで、製造コスト等を抑えることができる。なお、カバー部材には、第1のカッタ案内溝332を形成するように、内壁156が設けられ、第1の高周波電極110の側壁部112を覆うように外壁157が設けられている。
【0029】
なお、第1の電極部100の構成において、第1の高周波電極110の厚さが他の部材と比較して比較的厚い。これは、第1の高周波電極110の熱伝導性を高めることで、生体組織が第1の高周波電極110に部分的に接触する場合でも、第1の高周波電極110の温度を均一にするためである。このことは、本実施形態に係るエネルギ処置具310によって、生体組織を吻合・接合する場合における温度制御において重要である。
【0030】
第1の高周波電極110について、
図8乃至
図10を参照してさらに説明する。
図8は第1の高周波電極110の上面図であり、
図9は第1の高周波電極110の側面図であり、
図10は側壁部112の内側から見た第1の高周波電極110の拡大側面図である。
図8に示されるように、固定部114の先端側の端面と電極底部111の基端側の端面とは、同一平面に配置されている。なお、固定部114は、電極底部111の基端側の端部に設けられていればよいので、例えば、固定部114の先端側の端面が電極底部111の基端側の端面よりも基端側に配置されてもよい。すなわち、上面から見たときに、電極底部111と固定部114との間に隙間が存在してもよい。また、例えば、固定部114の先端側の端面が電極底部111の基端側の端面よりも先端側に配置されてもよい。すなわち、上面から見たときに、電極底部111と固定部114とが重なり合うように配置されていてもよい。
【0031】
図8に示されるように、第1のカッタ案内溝332を形成する切り込み125を挟んで片側について注目すると、固定部114の幅W1は、第1の高周波電極110の幅W2の半分よりも広いことが好ましい。すなわち、W1>W2/2であることが好ましい。これは後述のとおり、固定部114で電熱変換素子140を十分に抑えられるようにするためである。固定部114の幅W1は、電熱変換素子140の硬さなどに応じて適宜変更され得る。
【0032】
また、
図9に示されるように、固定部114の電極底部111側には、凹部122が設けられている。この凹部122は、上述のカバー部材150の凸部154と掛合する。
【0033】
図10に示されるように、電極底部111の主面のうち、生体組織と接する側の面を第1の主面123とし、側壁部112が形成されている側の面を第2の主面124と称することにする。固定部114の電極底部111側の面と第2の主面124との間の間隙126の高さH1は、高熱伝導耐熱接着シート130と電熱変換素子140とを重ね合わせた厚さとほぼ一致する。間隙126の高さは、例えば150μm程度である。
【0034】
電極底部111の第2の主面には、高熱伝導耐熱接着シート130によって電熱変換素子140が貼り合わされている。ここで、電熱変換素子140は、
図4に示されるように、電気抵抗パターン144が形成されている面を電極底部111の方に向けて配置される。電熱変換素子140の基端側は、電極底部111と固定部114との間の間隙126に挿入される。
【0035】
第1の高周波電極110に電熱変換素子140が配置されたときの斜視図を
図11及び
図12に示す。これら図に示されるように、電熱変換素子140の延在部143は、第1の高周波電極110の基端側から突出する。
図11に示されるように、延在部143に設けられた第2のリード接続部148は、第1の高周波電極110の固定部114と接触する。第2のリード接続部148と固定部114とは、導電性ペースト129によって固定され、これらの間の電気的導通が確実にされている。なお、導電性ペースト129による接続に代えて、例えば溶接やハンダ付けなどによる接続が用いられてもよい。
図12に示されるように、高熱伝導耐熱接着シート130は、電極底部111から突出し、第1の高周波電極110と第1のリード接続部146との絶縁を確実にしている。
【0036】
電熱変換素子140が貼り合わされた第1の高周波電極110には、
図13に示されるように、カバー部材150が嵌め合される。このようにして、第1の電極部100は形成される。
【0037】
図14に示されるように、第2のリード接続部148には、第1の高周波電極用通電ライン162が、例えばハンダにより接続される。第1の高周波電極用通電ライン162から第2のリード接続部148を介して第1の高周波電極110に高周波電圧が印加されることで、第1の高周波電極110は、保持部320で把持された生体組織に高周波電流を印加する。第1のリード接続部146には、第1のヒータ用通電ライン164が例えばハンダにより接続される。第1のヒータ用通電ライン164から第1のリード接続部146を介して電気抵抗パターン144に電圧が印加されることで、電気抵抗パターン144は発熱し、この熱は第1の高周波電極110を介して生体組織に伝えられる。
【0038】
第2のリード接続部148と第1の高周波電極用通電ライン162とが接続され、第1のリード接続部146と第1のヒータ用通電ライン164とが接続されたら、これらの接続部には、図示しない例えばシリコーン樹脂からなる封止剤が塗布されることが好ましい。
【0039】
電熱変換素子140の電気抵抗パターン144は、電熱変換素子140の基板142よりも第1の高周波電極110側に、第1の高周波電極110との間に高熱伝導耐熱接着シート130を介して配置されている。したがって、電気抵抗パターン144は、第1の高周波電極110と、高熱伝導耐熱接着シート130を介して熱的に結合されている。電気抵抗パターン144と第1の高周波電極110との間には、高熱伝導耐熱接着シート130のみしか存在しないので、電気抵抗パターン144で発生した熱は、効率よく第1の高周波電極110に伝達される。
【0040】
電熱変換素子140で生じた熱を効率よく第1の高周波電極110へ伝えるために、カバー部材150及びその周囲の第1の保持部材本体326は、第1の高周波電極110や高熱伝導耐熱接着シート130の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有することが好ましい。カバー部材150及び第1の保持部材本体326の熱伝導率が低いことで、電熱変換素子140で生じた熱の損失は小さくなる。
【0041】
以上、第1の電極部100について説明したが、第2の電極部200も第1の電極部100と同様である。
【0042】
次に本実施形態に係る治療用処置装置300の動作を説明する。術者は、予め制御装置370の入力部を操作して、治療用処置装置300の出力条件、例えば、高周波エネルギ出力の設定電力、熱エネルギ出力の目標温度や加熱時間等を設定しておく。治療用処置装置300は、それぞれの値が個別に設定されるようになっていてもよいし、術式に応じた設定値のセットが選択されるようになっていてもよい。
【0043】
エネルギ処置具310の保持部320及びシャフト340は、例えば、腹壁を通して腹腔内に挿入される。術者は、操作ノブ352を操作して保持部320を開閉させ、第1の保持部材322と第2の保持部材324とによって処置対象の生体組織を把持する。このとき、第1の保持部材322に設けられた第1の高周波電極110と第2の保持部材324に設けられた第2の高周波電極210との両方の第1の主面に、処置対象の生体組織が接触する。
【0044】
術者は、保持部320によって処置対象の生体組織を把持したら、フットスイッチ380を操作する。フットスイッチ380がONに切り換えられると、制御装置370から、ケーブル360内を通る第1の高周波電極用通電ライン162を介して第1の高周波電極110及び第2の高周波電極210に、予め設定した電力の高周波電力が供給される。供給される電力は、例えば、20W〜80W程度である。その結果、生体組織は発熱し、組織が焼灼される。この焼灼により、当該組織は変性し、凝固する。
【0045】
次に制御装置370は、高周波エネルギの出力を停止した後、第1の高周波電極110の温度が目標温度になるように、電熱変換素子140に電力が供給される。ここで、目標温度は、例えば200℃である。このとき電流は、制御装置370から、ケーブル360及び第1のヒータ用通電ライン164を介して、電熱変換素子140の電気抵抗パターン144を流れる。電気抵抗パターン144は、電流によって発熱する。電気抵抗パターン144で発生した熱は、高熱伝導耐熱接着シート130を介して、第1の高周波電極110に伝わる。その結果、第1の高周波電極110の温度は上昇する。
【0046】
同様に、第2の高周波電極210の温度が目標温度になるように、電熱変換素子230に電力が供給される。制御装置370から、ケーブル360及び第2のヒータ用通電ライン264を介して、第2の電極部200の電熱変換素子230に電力が供給され、第2の高周波電極210の温度は上昇する。
【0047】
これらの熱によって第1の高周波電極110又は第2の高周波電極210と接触している生体組織は更に焼灼され、更に凝固する。加熱によって生体組織が凝固したら、熱エネルギの出力を停止する。最後に術者は、操作ノブ352を操作してカッタ345を移動させ、生体組織を切断する。以上によって生体組織の処置が完了する。
【0048】
このように、例えば第1の高周波電極110及び第2の高周波電極210は、表裏をなす第1の主面と第2の主面とのうち前記第1の主面において前記生体組織に接触してこの生体組織に熱を伝えるように構成された伝熱板として機能する。例えば電熱変換素子140は、前記伝熱板の前記第2の主面側に設けられ、前記伝熱板から延出する延在部を有し、電圧が印加されることで発熱する電気抵抗パターンと前記電気抵抗パターンに接続しており前記延在部に設けられた第1のリード接続部とが形成されている電熱変換素子として機能する。例えば固定部114は、前記伝熱板の前記電熱変換素子が延出している側の端部に設けられ、前記伝熱板との間に前記電熱変換素子を挟持する固定部として機能する。例えば第1のヒータ用通電ライン164は、前記延在部において前記第1のリード接続部と電気的に接続して、前記電気抵抗パターンに電力を供給する第1のリード線として機能する。例えば第2のリード接続部148は、前記電熱変換素子の表裏をなす第3の主面と第4の主面とのうち、前記伝熱板と対向する面を前記第3の主面とするときに、前記延在部の前記第4の主面に前記固定部と接触するように形成された第2のリード接続部として機能する。例えば第1の高周波電極用通電ライン162は、前記延在部において前記第2のリード接続部と電気的に接続して、前記伝熱板に高周波電圧を印加するように構成された第2のリード線として機能する。
【0049】
本実施形態に係る第1の電極部100において、第1のリード接続部146及び第2のリード接続部148が形成された電熱変換素子140が、第1の高周波電極110及びカバー部材150から突出して設けられている。また、第1のリード接続部146が基板142の第1の高周波電極110側に配置されている。ここで、第1の高周波電極110は、第1の電極部100の構成の中では比較的厚みがある。
図14に示されるように、第1のヒータ用通電ライン164は、第1のリード接続部146に電熱変換素子140から延在するように接続されている。このことから、本実施形態によれば、第1のヒータ用通電ライン164が第1の電極部100の厚さに寄与せず、第1の電極部100の薄型化(低背化)が実現される。同様に、第2のリード接続部148が基板142のカバー部材150側に配置されている。ここで、カバー部材150は、第1の電極部100の構成の中では比較的厚みがある。
図14に示されるように、第1の高周波電極用通電ライン162は、第2のリード接続部148に電熱変換素子140から延在するように接続されている。このことから、本実施形態によれば、第1の高周波電極用通電ライン162が第1の電極部100の厚さに寄与せず、第1の電極部100の薄型化(低背化)が実現される。
【0050】
本実施形態では、電熱変換素子140は、第1の高周波電極110の電極底部111と固定部114との間の間隙126に挿入される。電熱変換素子140の延在部143には、延在部143と垂直な方向に力が加わる。固定部114によって抑えられていることにより、電熱変換素子140が電極底部111から剥離することが防止される。
【0051】
仮に、固定部114が存在しない場合、電熱変換素子140は、高熱伝導耐熱接着シート130の接着力のみによって第1の高周波電極110に固定されることになる。このとき、第1の高周波電極110の構造や高熱伝導耐熱接着シート130の接着性能の限界によって、電熱変換素子140が第1の高周波電極110から剥離するおそれがある。このような剥離が生じると、電熱変換素子140による加熱において第1の高周波電極110が均一に加熱されないおそれがある。本実施形態では、固定部114が存在することで、上述のような第1の高周波電極110と電熱変換素子140との剥離が防止され、加熱時に温度が不均一になることが防止され得る。
【0052】
また、本実施形態では、第1の高周波電極用通電ライン162は、直接第1の高周波電極110に接続されず、第2のリード接続部148及び固定部114を介して第1の高周波電極110に接続されている。したがって、第1の高周波電極110から第1の高周波電極用通電ライン162への熱流を抑えることができる。その結果、第1の高周波電極用通電ライン162との接続部における第1の高周波電極110の温度低下を抑えることができ、生体組織の加熱における熱効率が良くなる。
【0053】
[第2の実施形態]
第2の実施形態について説明する。ここでは、第1の実施形態との相違点について説明し、同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。本実施形態では、第1の実施形態における第1の高周波電極110及び第2の高周波電極210の形状が異なる。
【0054】
本実施形態に係る第1の高周波電極110の形状を
図15に示す。
図15に示されるように、本実施形態に係る第1の高周波電極110は、第1の実施形態において第1のカッタ案内溝332を形成する切り込み125を挟んで対称に2つ形成されている固定部114が連結した連結固定部116を備える。連結固定部116には、カッタ345が通過するための溝117が形成されている。
【0055】
その他の構成は第1の実施形態と同様である。本実施形態によっても第1の実施形態の場合と同様に機能し、同様の効果が得られる。
【0056】
また、第1の高周波電極110の形状は、
図16に示されるように、第1の実施形態に係る第1の高周波電極110の側壁部112が設けられておらず、代わりに切り込み125の周縁に内壁118が設けられ、この内壁118に爪部119が設けられてもよい。また、第1の高周波電極110は、第1の高周波電極110の外周に設けられた側壁部112と内壁118との両方を有してもよい。これらの場合、カバー部材150の形状が第1の実施形態の場合と異なり適宜変更され得る。
【0057】
その他の構成は第1の実施形態と同様である。本実施形態によっても第1の実施形態の場合と同様に機能し、同様の効果が得られる。