(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988886
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】地球の自転力を利用する発電装置
(51)【国際特許分類】
F03G 7/00 20060101AFI20160825BHJP
F03G 3/08 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
F03G7/00 Z
F03G3/08 A
F03G3/08 D
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-20399(P2013-20399)
(22)【出願日】2013年2月5日
(65)【公開番号】特開2014-152622(P2014-152622A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】392011585
【氏名又は名称】入江 紀之
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100117097
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 充浩
(72)【発明者】
【氏名】入江 紀之
【審査官】
稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】
特表平8−503768(JP,A)
【文献】
特開2010−136601(JP,A)
【文献】
特開昭59−163508(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0298430(US,A1)
【文献】
米国特許第3266325(US,A)
【文献】
米国特許第2441157(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0183951(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03G 7/00
F03G 3/00
H02K 53/00
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライホイール軸回りに回転駆動されるフライホイールと、
前記フライホイール軸に垂直で水平方向に延びる内部ジンバル軸回りに回転自在に設けられるとともに、前記フライホイール軸を軸支する内部ジンバルと、
鉛直方向に延びる外部ジンバル軸回りに回動可能に設けられるとともに、前記内部ジンバル軸を軸支する外部ジンバルと、
地球の自転から伝達される回転トルクを左右交互に回転方向を変換しながら前記外部ジンバル軸に伝達する回転方向変換機構と、
を備え、
前記回転方向変換機構は、前記内部ジンバルが一定方向に継続回転するようなタイミングで前記外部ジンバルの回転方向を左右交互に変換するよう構成されており、
前記内部ジンバルの回転により発電機を駆動する地球の自転力を利用する発電装置。
【請求項2】
前記回転方向変換機構は、地球の自転から伝達される回転トルクの伝達方向を前記内部ジンバル軸の回転により左右交互に変換して前記外部ジンバル軸に伝達する請求項1に記載の地球の自転力を利用する発電装置。
【請求項3】
地球の自転から伝達される回転速度を増速して前記回転方向変換機構へ伝達する増速機構を備える請求項1又は請求項2に記載の地球の自転力を利用する発電装置。
【請求項4】
前記回転速度変換機構は、前記外部ジンバル軸へ伝達する回転トルクを制限するトルクリミッターを備えている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の地球の自転力を利用する発電装置。
【請求項5】
地球に対し固定されるとともに前記外部ジンバル軸の上下端のいずれか一端側部を軸支する外枠と、
前記外部ジンバル軸の上下端の他端側部を軸支するとともに前記外枠に対し相対回転可能に前記外枠に枢支される他側回動軸受部と、
前記外部シンバル軸と同軸芯上において前記他側回動軸受部に軸支され地球の自転を受けて前記回転方向変換機構を駆動する回転方向変換機構駆動ギアと
を備え、
前記回転方向変換機構は、左回転伝達部及び右回転伝達部を有し、
前記右回転伝達部は、前記外部ジンバル軸に対する遍心位置において前記他側回動軸受部に軸支される右転軸、前記回転方向変換機構駆動ギアの左回転を右回転に変換しつつ前記右転軸に伝達する右転ギア、及び前記右転軸の右回転を受けて前記外部ジンバル軸を左回転させる右転駆動ギアを含み、
前記左回転伝達部は、前記外部ジンバル軸に対する遍心位置において前記他側回動軸受部に軸支される左転軸、前記回転方向変換機構駆動ギアの左回転を受けて前記左転軸に伝達する左転ギア、及び前記左転軸の左回転を受けて前記外部ジンバル軸を右回転させる左転駆動ギアを含み、
前記右転ギア及び前記左転ギアが、前記回転方向変換機構駆動ギアの地球と同じ向きの回転を受けて前記回転方向変換機構駆動ギアの回りを遊星状に地球と同じ向きに回動しようとすることにより前記他側回動軸受部が地球と同じ向きに連れ回りしようとするのを前記内部ジンバル軸の回転に連動して前記他側回動軸受部を地球と逆向きに回転させることにより前記他側回動軸受部の連れ回りを防止する連れ回り防止機構を備える請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の地球の自転力を利用する発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地球の自転エネルギーを電気エネルギーに変換する発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、地球の自転と歳差運動を行う回転体との回転差を電気エネルギーとして取り出す発電装置の研究に取り組んでおり、これまでに特許文献1においてかかる装置を提案している。歳差運動を行う回転体は、回転体の回転軸が歳差運動の軸に平行になると歳差運動を停止してしまうため、特許文献1で提案した装置は、歳差運動を行う回転体に継続して歳差運動を行わせるために、地球の自転による回転トルクの一部を利用して歳差運動を後押しすることで回転体の回転軸を可及的に水平に保つための機構を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−90754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の装置では、回転体の回転軸を水平に維持する機構が複雑なため、必然的に各部の摩擦が増大して発電効率が落ちるという課題が有った。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、回転体の回転軸を水平に維持する機構の不要な地球の自転エネルギーを利用した発電装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた発明は、フライホイール軸回りに回転駆動されるフライホイールと、前記フライホイール軸に垂直で水平方向に延びる内部ジンバル軸回りに回動自在に設けられるとともに、前記フライホイール軸を軸支する内部ジンバルと、鉛直方向に延びる外部ジンバル軸回りに回転可能に設けられるとともに、前記内部ジンバル軸を軸支する外部ジンバルと、地球の自転から伝達される回転トルクを左右交互に回転方向を変換しながら前記外部ジンバル軸に伝達する回転方向変換機構と、を備え、前記回転方向変換機構は、前記内部ジンバルが一定方向に継続回転するようなタイミングで前記外部ジンバルの回転方向を左右交互に変換するよう構成されており、前記内部ジンバルの回転により発電機を駆動する地球の自転力を利用する発電装置である。
【0006】
かかる構成においてフライホイールを鉛直方向に対して傾けた状態(例えば水平にした状態)では、フライホイールは、地球の重力を受けて外部ジンバル軸回りに歳差運動を行おうとする。ここで、地球の回転トルクを外部ジンバルに伝達して、この歳差運動を後押しするように、又は妨げるように強制的に外部ジンバルを回転させると、外部ジンバルに伝達された回転トルクの反作用によりフライホイール軸が内部ジンバル軸と共に回動しようとする。この回動はフライホイール軸が外部ジンバル軸に平行になると、フライホイールがいわゆるロック状態になって停止しようとする。本発明ではこの回動が停止しないよう、内部ジンバル軸が、外部ジンバル軸とフライホイール軸が平行になる位置を超えるまで回動させ、内部ジンバル軸の回転が停止する前に回転方向変更機構により外部ジンバルに加える回転トルクの向きを変更するように構成されているため、内部ジンバルは続けて同方向に回転を続けることができる。このように、フライホイールが内部ジンバル軸回りに回転することを抑制してフライホイール軸に歳差運動を継続させるのではなく、フライホイールを積極的に内部ジンバル軸回りに回転させて、この回転により発電機を駆動して発電を行うため、フライホイール軸が回転することを抑制する機構が不要になり、当該機構による摩擦を低減して効率よく発電を行うことができる。
【0007】
本発明の地球の自転力を利用する発電装置は、前記回転方向変換機構が、地球の自転から伝達される回転トルクの伝達方向を前記内部ジンバル軸の回転により左右交互に変換して前記外部ジンバル軸に伝達することが好ましい。こうすることで、内部ジンバルの回転速度に応じて正確に外部ジンバル軸に加える回転トルクの向きを変更することができる。
【0008】
本発明の地球の自転力を利用する発電装置は、地球の自転から伝達される回転速度を増速して前記回転方向変換機構へ伝達する増速機構を備えることが好ましい。こうすることで、外部ジンバルの回転速度を増大させ、ひいては、内部ジンバルの回転速度を増大させることができるため、発電効率を高めることができる。
【0009】
前記回転速度変換機構は、前記外部ジンバル軸へ伝達する回転トルクを制限するトルクリミッターを備えていることが好ましい。こうすることで、外部ジンバル軸と回転方向変換機構の間で伝達される回転トルクが過大な場合に過剰なトルクを逃がして周辺の部材の破損を抑制することができる。
【0010】
本発明の地球の自転力を利用する発電装置は、地球に対し固定されるとともに前記外部ジンバル軸の上下端のいずれか一端側部を軸支する外枠と、前記外部ジンバル軸の上下端の他端側部を軸支するとともに前記外枠に対し相対回転可能に前記外枠に枢支される他側回動軸受部と、前記外部シンバル軸と同軸芯上において前記他側回動軸受部に軸支され地球の自転を受けて前記回転方向変換機構を駆動する回転方向変換機構駆動ギアとを備え、
前記回転方向変換機構は、左回転伝達部及び右回転伝達部を有し、前記右回転伝達部は、前記外部ジンバル軸に対する遍心位置において前記他側回動軸受部に軸支される右転軸、前記回転方向変換機構駆動ギアの左回転を右回転に変換しつつ前記右転軸に伝達する右転ギア、及び前記右転軸の右回転を受けて前記外部ジンバル軸を左回転させる右転駆動ギアを含み、前記左回転伝達部は、前記外部ジンバル軸に対する遍心位置において前記他側回動軸受部に軸支される左転軸、前記回転方向変換機構駆動ギアの左回転を受けて前記左転軸に伝達する左転ギア、及び前記左転軸の左回転を受けて前記外部ジンバル軸を右回転させる左転駆動ギアを含み、前記右転ギア及び前記左転ギアが、前記回転方向変換機構駆動ギアの地球と同じ向きの回転を受けて前記回転方向変換機構駆動ギアの回りを遊星状に地球と同じ向きに回動しようとすることにより、前記他側回動軸受部が地球と同じ向きに連れ回りしようとするのを前記内部ジンバル軸の回転に連動して前記他側回動軸受部を地球と逆向きに回転させることにより前記他側回動軸受部の連れ回りを防止する連れ回り防止機構を備えることが好ましい。このように連れ回り防止機構を設けて他側回動軸受部の連れ回りを防止することにより、地球の自転をより効率よく外部ジンバルに伝達することが可能となるため、地球の自転をより効率よく利用して発電を行うことができる。
【0011】
ここで、各部の右及び左の回転は、地球上にある地球と共に回転する視点ではなく、地球から独立した宇宙空間内の定点からの視点により見た場合を表すものとする。また、「地球と同じ向きに」とは、装置が北半球にある場合は左回りを示し、装置が南半球側に有る場合は右回りを示すものとし、「地球と逆向きに」とは、装置が北半球にある場合は右回りを示し、装置が南半球側に有る場合は左回りを示すものとする。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明の地球の自転力を利用する発電装置によれば、地球の自転から取り出したエネルギーを効率よく電気エネルギーに変換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る地球の自転力を利用する発電装置において、内部ジンバル軸が水平方向を向いた状態の正面視断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る地球の自転力を利用する発電装置において、内部ジンバル軸が鉛直方向を向いた状態の正面視断面図である。
【
図3】回転方向変換機構の右回転ギア、左回転ギア及び外部ジンバル軸の回転方向を示した説明図である。
【
図4】内部ジンバルの回転についての説明図である。
【
図5】内部ジンバルが
図4の場合と逆に回転する場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、適宜図面を参照しながら本発明の実施形態について詳述する。
図1及び
図2は、本発明の一の実施の形態に係る地球の自転を利用する発電装置1を示している。発電装置1は、フライホイール2と、内部ジンバル3と、外部ジンバル4と、回転方向変換機構5と発電機13とを主に備える他、連れ回り防止機構6と増速機構7と外枠8と下側回動軸受部(他側回動軸受部)9とを備えている。尚、以下の実施形態においては、発電装置1は、北半球に設置されているものとする。
【0015】
フライホイール2は、
図1に示すように、円板状をなし、フライホイール軸21回りに回転駆動可能に設けられている。フライホイール軸21は、内部ジンバル3に軸支され、内部ジンバル3に設けられたフライホイール駆動モータ11により回転駆動されるよう構成されている。フライホイール駆動モータ11は、発電機13で発電した電力の一部を使用して駆動される。
【0016】
内部ジンバル3は、
図2に示すように、扁平の矩形の枠型をなし、一対の対辺(
図2の左右の辺)の中央から水平方向に延びる内部ジンバル軸31回りに回転自在に設けられている。内部ジンバル軸31は、外部ジンバル4に軸支されるとともに、フライホイール軸21に垂直方向に延びるよう設けられており、内部ジンバル軸31が回転するとフライホイール軸21が内部ジンバル軸31の軸芯回りにプロペラ状に回転するよう設けられている。そして、この内部ジンバル軸31に発電機13が増速機12を介して連結されており、内部ジンバル軸31の回転を電気エネルギーに変換するよう構成されている。
【0017】
外部ジンバル4は、
図1及び
図2に示すように矩形の枠型をなし、一対の対辺(
図1及び
図2の左右の対辺)で内部ジンバル軸31を軸支するとともに、他の一対の対辺(
図1では上下一対の対辺)4a,4bから鉛直方向に延びる外部ジンバル軸41回りに回動自在に設けられている。外部ジンバル軸41は、外部ジンバル4の上辺4aから上方へ延びる上側軸(特許請求の範囲における一端側部)41aと、外部ジンバル4の下辺4bから下方へ延びる下側軸(特許請求の範囲における他端側部)41bとを有している。上側軸41aは、外枠8の上辺8aに軸支され、下側軸41bは、外枠8に対し、鉛直軸回りに相対回動可能に設けられる下側回動軸受部9により軸支されている。下側軸41bには、
図1に示すように、外周にスプラインが設けられ、後述する回転方向変換機構5の摺動ギア53が環装されている。
【0018】
回転方向変換機構5は、後述する増速機構7から伝達された(平面視)左回転を左回転のまま摺動ギア53へ伝達する左回転伝達部51と、増速機構7から伝達された回転を(平面視で)右回転にして摺動ギア53へ伝達する右回転伝達部52と、外部ジンバル軸41の下側軸41bに環装され増速機構7と外部ジンバル軸41との連結を左回転伝達部51と右回転伝達部52とで交互に変換する摺動ギア53と、内部ジンバル軸31に外嵌される切替カム54と、切替カム54に連動して上下に往復運動を行う摺動ロッド55と、摺動ロッド55の往復運動を摺動ギア53に伝達する切替レバー56とを有している。
【0019】
左回転伝達部51は、右転ギア51aで増速機構7の左回転伝達部駆動ギア(回転方向変換機構駆動ギア)72eから伝達された地球の自転の左回転を右回転として受けとり、右転軸51bを介して右転駆動ギア51cから摺動ギア53に右回転を左回転にして伝達するよう構成されている。
【0020】
右回転伝達部52は、反転ギア52dで増速機構7の右回転伝達部駆動ギア(回転方向変換機構駆動ギア)72dから伝達された地球の自転の左回転を右回転にして受けとり、これを左転ギア52aに伝達することで左回転にして、左転軸52bを介して左転駆動ギア52cから摺動ギア53に右回転にして伝達するよう構成されている。
【0021】
そして、切替カム54は、右転駆動ギア51c又は左転駆動ギア52cと摺動ギア53との連結を、フライホイール軸21と外部ジンバル軸41とが平行になる直前(例えば
図1の状態から約80度回転した状態)で、かつ慣性によりフライホイール2及び内部ジンバル3が、フライホイール軸21と外部ジンバル軸41とが平行になる位置をやや超えてから(例えば
図1の状態から約100度回転した状態)止まるようなタイミングで解除するとともに、フライホイール2及び内部ジンバル3が、そのまま内部ジンバル軸31回りに継続して回転するタイミングで、再び右転駆動ギア51c又は左転駆動ギア52cと摺動ギア53とを連結するよう構成されている。
ここで、内部ジンバル軸31の回転速度を安定させるために、外部ジンバル軸41の左右の回転速度は同じであることが好ましく、このため、左回転伝達部駆動ギア72eと右転ギア51bのギア比と、右回転伝達部駆動ギア72dと左転ギア52bのギア比とを異なった値に設定してもよい。
【0022】
また、右転駆動ギア51c及び左転駆動ギア52cには、摺動ギア53との間でやりとりする過剰なトルクを放散するためのトルクリミッター51e,52eがそれぞれ設けられている。
【0023】
増速機構7は、地球に対して固定された外枠8に固定されており、地球の自転と共に回転する左転主軸71と、左転主軸71の回転を増速する3つの遊星歯車72a,72b,72cと、右回転伝達部駆動ギア72d及び左回転伝達部駆動ギア72eとを有している。遊星歯車は公知の構造を有しているため、構造の説明は省略する。
【0024】
下側回動軸受部9は、
図1及び
図2に示すように、径の異なる上下2段の円筒形のケース状をなし、上側の円筒部の蓋部分9aで外部ジンバル軸41の下側軸41bと、左回転伝達部51の右転軸51bと、右回転伝達部52の左転軸52bとを軸支するとともに、下側回動軸受部9は、下側固定軸受部10に回動可能に枢支されている。下側回動軸受部9の上側の円筒9b内には、右回転伝達部駆動ギア72d、左回転伝達部駆動ギア72e、右転ギア51a、左転ギア52a及び反転ギア52dが収容されており、下側の円筒9c内には、増速機構7が収容されている。
【0025】
連れ回り防止機構6は、
図1及び
図2に示すように、内部ジンバル軸31に外嵌されるプーリ6aと、プーリ6aの回転をベルト6b、プーリ6c及びウォームギア6dを介して水平な内部ジンバル軸31軸の回転を鉛直方向の軸回りの回転に変換して連れ回り防止ギア6eに伝達し、連れ回り防止ギア6eを下側回動軸受部9の蓋部分9aの外周に設けられた軸受部側ギア9dと噛み合わせることにより、下側回動軸受部9の連れ回り(
図3に2点鎖線で示した矢印の向きと逆向きの回転)を抑制するよう構成されている。また、ここで、下側回動軸受部9を、地球回転に対して逆(
図3に示した2点鎖線で示した矢印の向き)に回転させるよう連れ回り防止ギア6eと軸受部側ギア9aとのギア比や、連れ回り防止ギア6eの回転数を設定することで、右回転伝達部52と左回転伝達部51の増速効果が得られるようにしてもよい。
【0026】
次に、発電装置1により発電が行われる仕組みについて説明する。
まず、フライホイール2をフライホイール駆動モータ11により
図4(a)に示す向きに回転駆動させる。この状態で地球の自転が外枠8に伝達されると(地球の自転と共に外枠8が回転すると)、外枠8の回転が増速機構7の左転主軸71から3段の遊星歯車からなる増速歯車72a,72b,72cに伝達されて増速されたのち左回転伝達部駆動ギア72eから左回転伝達部51の右転ギア51aに伝達される。右転ギア51aは、左回転伝達部駆動ギア72eの(平面視)左回転を右回転にして受け取り、右転軸51b及び右転駆動ギア51cを介して摺動ギア53に回転を伝達する。摺動ギア53は、右転駆動ギア51cの右回転を左回転として受け取り、外部ジンバル4を左回転させる。
【0027】
外部ジンバル4が左回転を開始すると、フライホイール2は、内部ジンバル3とともに内部ジンバル軸31回りに、
図4(b)に示した矢印の向きに回転する。ここで、仮に、外部ジンバル4をそのまま左へ回転させ続けた場合には、フライホイールはいわゆるロック状態となってフライホイール軸と外部ジンバル軸が平行になった状態で静止する。しかし、発電装置1では、フライホイール2及び内部ジンバル3は、慣性により、
図4(a)の位置からやや90度を超えて回転し、フライホイール2及び内部ジンバル3が停止してしまう前に、外部ジンバル4の回転方向が切り替わることで、フライホイール2及び内部ジンバル3がそのまま回転を継続する。
【0028】
即ち、フライホイール2及び内部ジンバル軸3が、
図4(a)の状態から90度回転するやや手前の地点で(例えば、約80度回転した時点で)、内部ジンバル軸31に設けられた切替カム54により摺動ロッド55が上方へ摺動して切替レバー56が摺動ギア53を押し下げる。摺動ギア53が押し下げられると、摺動ギア53は右転駆動ギア51cとの噛み合いが外れ、フライホイール2及び内部ジンバル3は、慣性により
図4(a)の状態から90度を超えて(例えば、約100度まで)回転する。そして、フライホイール2及び内部ジンバル3が回転の勢いを失う前に、左転駆動ギア52cと噛み合う。すると、右回転伝達部駆動ギア72dから反転ギア52d及び左転軸52bを介して左転駆動ギア52cに伝達された左回転が摺動ギア53に右回転として伝達され、外部ジンバル4を右回転させる。こうして、外部ジンバル4の回転方向が左回転から右回転に変わると、フライホイール2及び内部ジンバル3は、
図4(d)に示すように、
図4(a)から(c)の回転と同方向へ回転する。
【0029】
このあと、
図4(c)に示した状態から、さらにフライホイール2及び内部ジンバル3が180度回転して(g)に示したように再びフライホイール軸21が外部ジンバル軸41に平行になると、フライホイール2及び内部ジンバル3は、回転を中止しようとする。ここで、フライホイール2及び内部ジンバル3が、上記の摺動ギア53の摺動と同様のタイミングで、切替カム54、摺動ロッド55及び切替レバー56を作用させて摺動ギア53を上側へ摺動させ左転駆動ギア52cから切り離して右転摺動ギア51cと連結し、外部ジンバルを左回転させる。すると、フライホイール2及び内部ジンバル3は、
図4(h)に示したように、
図4(a)から(g)に示した方向と同方向に回転を続ける。
【0030】
以下同様にして外部ジンバル4の回転方向を繰り返し反転させることで、フライホイール2及び内部ジンバル3を同方向に継続して回転させ、内部ジンバル軸31に連結した発電機13により発電を行う。右転駆動ギア51c又は左転駆動ギア52cと摺動ギア53の間のトルクが過大となった際には、トルクリミッター51e及び52eにより過剰なトルクが放散される。
【0031】
右回転伝達部駆動ギア72d又は左回転伝達部駆動ギア72eが右転ギア51a又は反転ギア52dを駆動しようとすると、下側回動軸受部9は、
図3に二点鎖線の矢印で示したように、右回転伝達部駆動ギア72d又は左回転伝達部駆動ギア72eと同じ(平面視で)左回りに連れ回りしようとする。下側回動軸受部9が左回りに連れ回りすると、右転駆動ギア51c、及び左転駆動ギア52cから摺動ギア53にトルクが伝達されなくなるため、これを防止する必要がある。発電装置1では、内部ジンバル軸31の回転が、プーリ6a、ベルト6b、プーリ6c及びウォームギア6dを介して連れ回り防止ギア6eに伝達され、連れ回り防止ギア6eが左回りに回転して軸受側ギア9dを介して下側回動軸受部9に右回りのトルクを加えて、下側回動軸受部9の連れ回りが防止される。さらに、下側回動軸受部9の左回転を抑制するだけでなく、下側回動軸受部9を地球回転に対して逆の右に回転させるよう、連れ回り機構内部のギア比等を設定した場合には、左回転伝達部51と右回転伝達部52の増速効果を得ることができる。
【0032】
尚、
図5に示すように、右回転伝達部52により、フライホイール2が
図4と同じ方向に回転した状態で、まず外部ジンバル4が右回転から開始した場合には、フライホイール2及び内部ジンバル3は
図4と逆方向に回転することとなる。すると、連れ回り防止機構の連れ回り防止ギア6eが平面視で右回転するため下側回動軸受部9の連れ回りを抑えることができなくなる。従って、
図1に示した発電装置1では、外部ジンバル4は、まず左回転から開始する必要がある。
【0033】
発電機13により得られた電力の一部は、フライホイール駆動モータ11を駆動するために用いられる。
【0034】
本発明の地球の自転を利用した発電装置は、上記の実施形態に限られず、例えば、回転方向変換機構駆動ギアを1個にして、この1個のギアにより、左回転伝達機構と右回転伝達機構の両方を駆動させるようにしてもよい。増速機は遊星歯車に限らず、公知の増速機を適宜用いることができる。回転方向変換機構は、内部ジンバル軸に連動して回転方向を変換するものに限らず、例えば、接点スイッチやカメラ等で外部シンバルが反転した位置を感知しながら電子制御により摺動ギアを上下させるようにしてもよく、適宜その他の公知の方法を用いて摺動ギアを上下させてもよい。また、連れ回り防止ギアが下側回動軸受と逆回転するように構成されていれば、外部ジンバルを左右どちらの回転から開始するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 発電装置
2 フライホイール
21 フライホイール軸
3 内部ジンバル
31 内部ジンバル軸
4 外部ジンバル
41 外部ジンバル軸
41a 上側軸(一端側部)
41b 下側軸(他端側部)
5 回転方向変換機構
51 左回転伝達部
51a 右転軸
51b 右転ギア
51c 右転伝達ギア
51e トルクリミッター
52 右回転伝達部
52a 左転軸
52b 左転ギア
52c 左転伝達ギア
52e トルクリミッター
6 連れ回り防止機構
7 増速機構
72d 左回転伝達部駆動ギア(回転方向変換機構駆動ギア)
72e 右回転伝達部駆動ギア(回転方向変換機構駆動ギア)
8 外枠
9 下側回動軸受部(他側回動軸受部)
13 発電機