特許第5988891号(P5988891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988891
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】変速機用潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20160825BHJP
   C10M 101/02 20060101ALN20160825BHJP
   C10M 105/34 20060101ALN20160825BHJP
   C10M 137/02 20060101ALN20160825BHJP
   C10M 139/00 20060101ALN20160825BHJP
   C10M 135/20 20060101ALN20160825BHJP
   C10M 135/36 20060101ALN20160825BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20160825BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20160825BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20160825BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20160825BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20160825BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20160825BHJP
【FI】
   C10M169/04
   !C10M101/02
   !C10M105/34
   !C10M137/02
   !C10M139/00 A
   !C10M135/20
   !C10M135/36
   C10N20:00 A
   C10N20:02
   C10N30:00 Z
   C10N30:02
   C10N30:06
   C10N40:04
【請求項の数】2
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-29695(P2013-29695)
(22)【出願日】2013年2月19日
(65)【公開番号】特開2014-159496(P2014-159496A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2015年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】JXエネルギー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103285
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 順之
(72)【発明者】
【氏名】中尾 元
(72)【発明者】
【氏名】小松原 仁
(72)【発明者】
【氏名】石川 和典
(72)【発明者】
【氏名】山田 克人
【審査官】 ▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/125551(WO,A1)
【文献】 特開2010−037421(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/074414(WO,A1)
【文献】 日本潤滑学会編,潤滑ハンドブック,株式会社 養賢堂,1975年 6月 1日,第3版,344-347頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M,C10N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)100℃における動粘度が1.5mm/s以上3.5mm/s以下、流動点が−25℃以下、粘度指数が105以上、%Cが85以上、%Cが2以上15以下、%Cが3以下である鉱油系基油を基油組成物全量基準で50〜97質量%および(B)100℃における動粘度が2〜10mm/sのモノエステル系基油を基油組成物全量基準で3〜10質量%含有してなる潤滑油基油に、(C)亜リン酸エステルを組成物中のリン分がリン原子換算で250〜350質量ppm、および(D)ホウ素化無灰分散剤を、ホウ素原子換算で潤滑油組成物全量を基準として30〜120質量ppm含有し、かつ組成物中ホウ素原子質量%のリン原子質量%に対する比率(B/P)が0.07〜0.42であり、組成物の100℃における動粘度が2.5〜4.0mm/sであることを特徴とする変速機用潤滑油組成物。
【請求項2】
さらに(E)ポリサルファイド及び/又はチアジアゾールを含有することを特徴とする請求項1に記載の変速機用潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物に関し、詳しくは、優れた粘度温度特性による省燃費性、かつ低粘度にもかかわらず優れた金属疲労防止性、耐摩耗・耐焼付性を有する潤滑油組成物、特に自動変速機及び/又は無段変速機に好適な変速機用潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から自動変速機や手動変速機及び内燃機関に使用される潤滑油には、熱酸化安定性、耐摩耗性、疲労防止性等の各種耐久性向上や省燃費性向上のための粘度温度特性の向上、低温粘度低減、低温流動性の向上等の低温粘度特性の向上が要求されており、このような性能を向上させるために、基油に適宜、酸化防止剤、清浄分散剤、摩耗防止剤、摩擦調整剤、シール膨潤剤、粘度指数向上剤、消泡剤、着色剤等の各種添加剤が配合された潤滑油が使用されている。
【0003】
最近の変速機・エンジンには省燃費化や軽量小型化や高出力化が望まれており、さらに変速機においては組み合わされるエンジンの高出力化に伴い、動力伝達能力の向上が追求されている。そのため、これらに使用される潤滑油には、製品粘度や基油粘度を低減したうえで、高い潤滑性能を維持し、ベアリング、歯車等の表面における摩耗・疲労等を防止する性能および耐焼付き性が要求される。一般的には、省燃費性を向上するためには、基油粘度を低減し、粘度指数向上剤を増量することにより、粘度温度特性を向上させる手法が取られるが、基油粘度の低減により、疲労防止性は悪化するため、省燃費性と摩耗防止性・耐焼付性や疲労防止性をより高いレベルで両立できる潤滑油の開発が熱望されている。
【0004】
こうした中、省燃費性や低温粘度特性と疲労防止性を両立させるために、低温性能の良い基油を用いることや、高粘度の基油を併用すること、さらにリン系極圧剤及び硫黄系極圧剤などを適量添加することが知られている(例えば特許文献1〜3)。
しかしながら、上記手法だけでは粘度温度特性および低温性能と疲労防止性、耐焼付き性の両立が十分に図れておらず、これらの性能を両立させつつその他の諸性能についても問題ない性能を有する潤滑油組成物の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−262979号公報
【特許文献2】特開平11−286696号公報
【特許文献3】特表2003−514099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に鑑み、優れた省燃費性能を有するとともに、疲労防止性や耐摩耗・耐焼付性に優れた潤滑油組成物、特に自動変速機及び/又は無段変速機に好適な変速機用潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の潤滑油基油に特定の添加剤を含有する潤滑油組成物が省燃費性能及び耐摩耗・耐焼付性に優れ、金属疲労寿命を改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(A)100℃における動粘度が1.5mm/s以上3.5mm/s以下、流動点が−25℃以下、粘度指数が105以上、%Cが85以上、%Cが2以上15以下、%Cが3以下である鉱油系基油を基油組成物全量基準で50〜97質量%および(B)100℃における動粘度が2〜10mm/sのモノエステル系基油を基油組成物全量基準で3〜10質量%含有してなる潤滑油基油に、(C)亜リン酸エステルを組成物中のリン分がリン原子換算で250〜350質量ppm、および(D)ホウ素化無灰分散剤を、ホウ素原子換算で潤滑油組成物全量を基準として30〜120質量ppm含有し、かつ組成物中ホウ素原子質量%のリン原子質量%に対する比率(B/P)が0.07〜0.42であり、組成物の100℃における動粘度が2.5〜4.0mm/sであることを特徴とする変速機用潤滑油組成物である。
【0009】
また、本発明は、さらに(E)ポリサルファイド及び/又はチアジアゾールを含有することを特徴とする前記記載の変速機用潤滑油組成物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の変速機用潤滑油組成物は、優れた粘度温度特性及び耐摩耗・耐焼付性を有するとともに、金属疲労防止性に優れる。従って、自動車、建設機械、農業機械等の自動変速機及び/又は無段変速機に特に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明について詳述する。
【0012】
本発明の変速機用潤滑油組成物(以下、本発明の潤滑油組成物ともいう。)における(A)成分は、100℃における動粘度が1.5mm/s以上3.5mm/s以下の鉱油系基油である。
(A)成分の100℃における動粘度は、好ましく2mm/s以上であり、より好ましくは2.5mm/s以上、さらに好ましくは2.7mm/s以上である。また、好ましくは3.3mm/s以下であり、より好ましくは3.1mm/s以下である。
(A)成分の100℃における動粘度が3.5mm/sを超える場合は、粘度温度特性及び低温粘度特性が悪化し、1.5mm/s未満の場合は、潤滑箇所での油膜形成が不十分となるため金属疲労防止性、耐熱性に劣り、また潤滑油基油の蒸発損失が大きくなるため、それぞれ好ましくない。
【0013】
また、本発明において用いられる鉱油系基油(A)の粘度指数は105以上であり、好ましくは110以上であり、さらに好ましくは120以上であり、最も好ましくは125以上である。また好ましくは160以下であり、より好ましくは150以下であり、さらに好ましくは140以下であり、特に好ましくは135以下であり、最も好ましくは130以下である。粘度指数が110より低いと、省燃費性を発揮できる粘度温度特性が得られない。また160を超えると、基油中にノルマルパラフィンが増加するため、低温時の粘度が急激に上昇し、潤滑油としての機能を失うことになる。
【0014】
(A)成分の流動点は−25℃以下であり、好ましくは−27.5℃以下であり、より好ましくは−30℃以下であり、さらに好ましくは−35℃以下、もっとも好ましくは−40℃以下である。また、その下限については特に制限はないが、低すぎると粘度指数が低下することと、脱ろう工程における経済性の点から、好ましくは−50℃以上である。(A)成分の流動点を−25℃以下とすることで、低温粘度特性に優れた潤滑油組成物を得ることができる。また−50℃より低くすると十分な粘度指数が得られない。
なお、脱ろう工程としては溶剤脱ろう、接触脱ろうのいずれの工程を適用してもよいが、低温粘度特性をより改善できる点で接触脱ろう工程であることが特に好ましい。
【0015】
また、(A)成分の%Cは85以上であることが好ましく、熱・酸化安定性と粘度温度特性をより高めることができる点で90以上であることが好ましい。
【0016】
また、(A)成分の%Cは3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1以下であることがさらに好ましい。%Cが3を超えると熱・酸化安定性が低下する。
【0017】
また、(A)成分の%Cは、好ましくは15以下であり、さらに好ましくは10以下である。また2以上であることが好ましく、金属疲労寿命をより高めることができる点で、より好ましくは3以上、さらに好ましくは5以上、特に好ましくは7以上である。
【0018】
また、本発明の潤滑油基油の引火点は、175℃以上であることが好ましく、より好ましくは180℃以上、さらに好ましくは185℃以上、特に好ましくは190℃以上である。引火点が175℃未満の場合は、高温使用における安全性に問題を生ずるおそれがある。
なお、本発明でいう引火点とは、JIS K 2265(開放式引火点)に準拠して測定された引火点を意味する。
【0019】
(A)成分のアニリン点については特に制限はないが、低温粘度特性と疲労寿命に優れる潤滑油組成物を得ることができる点で90℃以上であることが好ましく、より好ましくは95℃以上、さらに好ましくは100℃以上であり、特に好ましくは103℃以上である。また、その上限については特に制限はなく、本発明の1つの態様として130℃を超えてもよいが、添加剤やスラッジの溶解性により優れ、シール材への適合性により優れる点で好ましくは130℃以下であり、より好ましくは120℃以下であり、さらに好ましくは110℃以下である。
【0020】
(A)成分の硫黄分については特に制限はないが、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以下、最も好ましくは実質的に含まれないことが望ましい。
(A)成分の窒素分については特に制限はないが、熱・酸化安定性により優れる組成物を得ることができる点で、好ましくは5質量ppm以下であり、より好ましくは3質量ppm以下、最も好ましくは実質的に含まれないことが望ましい。
なお、本発明でいう硫黄分及び窒素分の含有量とは、ASTM D4951に準拠して測定される値を意味する。
【0021】
(A)成分は、上記性状を有する限りにおいてその製造法に特に制限はないが、具体的には、以下に示す基油(1)〜(8)を原料とし、この原料油及び/又はこの原料油から回収された潤滑油留分を、所定の精製方法によって精製し、潤滑油留分を回収することによって得られる基油を挙げることができる。
(1)パラフィン基系原油及び/又は混合基系原油の常圧蒸留による留出油
(2)パラフィン基系原油及び/又は混合基系原油の常圧蒸留残渣油の減圧蒸留による留出油(WVGO)
(3)潤滑油脱ろう工程により得られるワックス(スラックワックス等)及び/又はガストゥリキッド(GTL)プロセス等により得られる合成ワックス(フィッシャートロプシュワックス、GTLワックス等)
(4)基油(1)〜(3)から選ばれる1種又は2種以上の混合油及び/又は当該混合油のマイルドハイドロクラッキング処理油
(5)基油(1)〜(4)から選ばれる2種以上の混合油
(6)基油(1)、(2)、(3)、(4)又は(5)の脱れき油
(7)基油(6)のハイドロクラッキング処理油
(8)基油(1)〜(7)から選ばれる2種以上の混合油
【0022】
なお、上記所定の精製方法としては、水素化分解、水素化仕上げなどの水素化精製;フルフラール溶剤抽出などの溶剤精製;溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう;酸性白土や活性白土などによる白土精製;硫酸洗浄、苛性ソーダ洗浄などの薬品(酸又はアルカリ)洗浄などが好ましい。本発明では、これらの精製方法のうちの1種を単独で行ってもよく、2種以上を組み合わせて行ってもよい。また、2種以上の精製方法を組み合わせる場合、その順序は特に制限されず、適宜選定することができる。
【0023】
更に、本発明にかかる潤滑油基油としては、上記基油(1)〜(8)から選ばれる基油又は当該基油から回収された潤滑油留分について所定の処理を行うことにより得られる下記基油(9)又は(10)が特に好ましい。
【0024】
(9)上記基油(1)〜(8)から選ばれる基油又は当該基油から回収された潤滑油留分を水素化分解し、その生成物又はその生成物から蒸留等により回収される潤滑油留分について溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行い、または当該脱ろう処理をした後に蒸留することによって得られる水素化分解鉱油
(10)上記基油(1)〜(8)から選ばれる基油又は当該基油から回収された潤滑油留分を水素化異性化し、その生成物又はその生成物から蒸留等により回収される潤滑油留分について溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行い、または、当該脱ろう処理をしたあとに蒸留することによって得られる水素化異性化鉱油
【0025】
上記(9)又は(10)の潤滑油基油を得るに際して、脱ろう工程としては、熱・酸化安定性と低温粘度特性をより高めることができ、潤滑油組成物の疲労防止性能をより高めることができる点で、接触脱ろう工程を含むことが特に好ましい。
また、上記(9)又は(10)の潤滑油基油を得るに際して、必要に応じて溶剤精製処理及び/又は水素化仕上げ処理工程を更に設けてもよい。
【0026】
また、接触脱ろう(触媒脱ろう)の場合は、水素化分解・異性化生成油を、適当な脱ろう触媒の存在下、流動点を下げるのに有効な条件で水素と反応させる。接触脱ろうでは、分解/異性化生成物中の高沸点物質の一部を低沸点物質へと転化させ、その低沸点物質をより重い基油留分から分離し、基油留分を分留し、2種以上の潤滑油基油を得る。低沸点物質の分離は、目的の潤滑油基油を得る前に、あるいは分留中に行うことができる。
【0027】
(A)成分は、1種の鉱油のみであっても、また2種以上の鉱油の混合物であってもよいが、蒸発性を抑えるため、また、引火点の低下を抑えるため、1種類であることが好ましい。
本発明において、基油組成物中の(A)成分の含有量は50〜97質量%であり、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。基油組成物中の(A)成分の含有量が50質量%未満の場合は、金属疲労防止性および耐熱性が劣る。
【0028】
本発明の潤滑油組成物は、潤滑油基油として(A)成分に加えて、(B)成分として100℃における動粘度が2〜10mm/sのモノエステル系基油を含有する。
【0029】
(B)成分の100℃における動粘度は2〜10mm/sであることが必要であり、好ましくは2.5mm/s以上である。また、その上限値は、好ましくは8mm/s以下であり、より好ましくは6mm/s以下であり、さらに好ましくは5mm/s以下であり、特に好ましくは4mm/s以下であり、最も好ましくは3mm/s以下である。(B)成分の100℃動粘度が10mm/sを超える場合は、粘度温度特性及び低温粘度特性が悪化するため好ましくない。一方、100℃動粘度が2mm/s未満の場合は、潤滑箇所での油膜形成が不十分であるため金属疲労防止性、耐荷重性に劣り、また潤滑油基油の蒸発損失が大きくなるため、それぞれ好ましくない。
【0030】
(B)成分の粘度指数については特に制限はないが、その下限値は100以上であることが好ましく、より好ましくは120以上であり、さらに好ましくは140以上であり、さらにより好ましくは160以上であり、特に好ましくは170以上であり、最も好ましくは180以上である。また、本発明の1つの態様として220以上でもよいが、(A)成分との溶解性に優れる点で好ましくは220以下、より好ましくは210以下、さらに好ましくは200以下、特に好ましくは190以下である。(B)成分の粘度指数を100以上とすることで粘度温度特性及び低温粘度特性に優れた潤滑油組成物を得ることができる。
【0031】
(B)成分のモノエステル系基油は1価アルコールと1塩基酸のエステルからなる基油である。
【0032】
1価アルコールとしては、通常炭素数1〜24、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜8のものが用いられ、このようなアルコールとしては直鎖のものでも分枝のものでもよく、また飽和のものであっても不飽和のものであってもよい。炭素数1〜24のアルコールとしては、具体的には例えば、メタノール、エタノール、直鎖状または分枝状のプロパノール、直鎖状または分枝状のブタノール、直鎖状または分枝状のペンタノール、直鎖状または分枝状のヘキサノール、直鎖状または分枝状のヘプタノール、直鎖状または分枝状のオクタノール、直鎖状または分枝状のノナノール、直鎖状または分枝状のデカノール、直鎖状または分枝状のウンデカノール、直鎖状または分枝状のドデカノール、直鎖状または分枝状のトリデカノール、直鎖状または分枝状のテトラデカノール、直鎖状または分枝状のペンタデカノール、直鎖状または分枝状のヘキサデカノール、直鎖状または分枝状のヘプタデカノール、直鎖状または分枝状のオクタデカノール、直鎖状または分枝状のノナデカノール、直鎖状または分枝状のイコサノール、直鎖状または分枝状のヘンイコサノール、直鎖状または分枝状のトリコサノール、直鎖状または分枝状のテトラコサノールおよびこれらの混合物等が挙げられる。
【0033】
1塩基酸としては、通常炭素数2〜24の脂肪酸が用いられ、その脂肪酸は直鎖のものでも分枝のものでもよく、また飽和のものでも不飽和のものでもよい。具体的には、例えば、酢酸、プロピオン酸、直鎖状または分枝状のブタン酸、直鎖状または分枝状のペンタン酸、直鎖状または分枝状のヘキサン酸、直鎖状または分枝状のヘプタン酸、直鎖状または分枝状のオクタン酸、直鎖状または分枝状のノナン酸、直鎖状または分枝状のデカン酸、直鎖状または分枝状のウンデカン酸、直鎖状または分枝状のドデカン酸、直鎖状または分枝状のトリデカン酸、直鎖状または分枝状のテトラデカン酸、直鎖状または分枝状のペンタデカン酸、直鎖状または分枝状のヘキサデカン酸、直鎖状または分枝状のヘプタデカン酸、直鎖状または分枝状のオクタデカン酸、直鎖状または分枝状のノナデカン酸、直鎖状または分枝状のイコサン酸、直鎖状または分枝状のヘンイコサン酸、直鎖状または分枝状のドコサン酸、直鎖状または分枝状のトリコサン酸、直鎖状または分枝状のテトラコサン酸等の飽和脂肪酸、アクリル酸、直鎖状または分枝状のブテン酸、直鎖状または分枝状のペンテン酸、直鎖状または分枝状のヘキセン酸、直鎖状または分枝状のヘプテン酸、直鎖状または分枝状のオクテン酸、直鎖状または分枝状のノネン酸、直鎖状または分枝状のデセン酸、直鎖状または分枝状のウンデセン酸、直鎖状または分枝状のドデセン酸、直鎖状または分枝状のトリデセン酸、直鎖状または分枝状のテトラデセン酸、直鎖状または分枝状のペンタデセン酸、直鎖状または分枝状のヘキサデセン酸、直鎖状または分枝状のヘプタデセン酸、直鎖状または分枝状のオクタデセン酸、直鎖状または分枝状のノナデセン酸、直鎖状または分枝状のイコセン酸、直鎖状または分枝状のヘンイコセン酸、直鎖状または分枝状のドコセン酸、直鎖状または分枝状のトリコセン酸、直鎖状または分枝状のテトラコセン酸等の不飽和脂肪酸、およびこれらの混合物等が挙げられる。これらの中でも、潤滑性および取扱性がより高められる点から、特に炭素数3〜20の飽和脂肪酸、炭素数3〜22の不飽和脂肪酸およびこれらの混合物が好ましく、炭素数4〜18の飽和脂肪酸、炭素数4〜18の不飽和脂肪酸およびこれらの混合物がより好ましく、酸化安定性の点からは、炭素数4〜18の飽和脂肪酸が最も好ましい。
【0034】
本発明に用いられる(B)成分であるモノエステル系基油は上記したエステル化合物1種類のみから構成されるものであってもよいし、また2種以上の混合物から構成されるものであってもよい。
【0035】
(B)成分の密度については特に制限はないが、0.80g/cm以上であることが好ましく、より好ましく0.82g/cm以上であり、さらに好ましくは0.84g/cm以上であり、特に好ましくは0.85g/cm以上であり、最も好ましくは0.86g/cm以上である。また、その上限については特に制限はなく、本発明の1つの態様として1.0g/cm以上でもよいが、(A)成分との溶解性に優れる点で好ましくは1.0g/cm以下であり、より好ましくは0.95g/cm以下であり、さらに好ましくは0.92g/cm以下であり、特に好ましくは0.90g/cm以下である。(B)成分の密度を0.80g/cm以上とすることで、粘度温度特性及び低温性能と摩耗防止性や疲労防止性を高いレベルで両立することができる。(B)成分の密度が0.80g/cm未満の場合は、潤滑箇所での油膜形成が不十分であるため金属疲労防止性、耐荷重性に劣り好ましくない。
【0036】
(B)成分の酸価については、その上限値に特に制限はないが、5mgKOH以下であることが好ましく、より好ましくは3mgKOH以下、さらに好ましくは2mgKOH以下、特に好ましくは1.5mgKOH以下、最も好ましくは1.0mgKOH以下である。また、本発明の1つの様態として0.2mgKOH以下でもよいが、製造における経済性の点で好ましくは0.2mgKOH以上、より好ましくは0.5mgKOH以上である。(B)成分の酸価を5mgKOH以下とすることで酸化安定性に優れた潤滑油組成物を得ることができる。
【0037】
本発明の潤滑油組成物における(B)成分の含有量は、潤滑油基油全量基準で、3〜10質量%であることが必要であり、好ましくは4質量%以上、7質量%以下である。(B)成分の含有量を10質量%以下とすることで、酸化安定性と金属疲労防止性を向上することができる。なお、(B)成分の含有量が3質量%未満の場合には、必要とする粘度温度特性、低温粘度特性および疲労防止性が得られないおそれがある。
【0038】
本発明の潤滑油組成物は、(A)成分および(B)成分を主成分として含有する限りにおいて、通常の潤滑油に使用される鉱油系基油および/または合成系基油((A)成分および(B)成分を除く)を(A)成分および(B)成分とともに使用することができる。
鉱油系基油としては、(A)成分以外の鉱油系基油が挙げられる。また合成系基油としては、具体的には、ポリブテン又はその水素化物;1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、1−ドデセンオリゴマー等のポリ−α−オレフィン又はその水素化物;アルキルナフタレン、アルキルベンゼンの芳香族系合成油又はこれらの混合物等が例示できる。
なかでも1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、1−ドデセンオリゴマー等のポリ−α−オレフィン又はその水素化物が好ましい。
本発明において、潤滑油基油として、(A)成分および(B)成分以外の他の基油を混合する場合の他の基油の含有量は、潤滑油基油全量基準で、0〜47質量%であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下であり、最も好ましくは0質量%である。
【0039】
本発明において用いられる潤滑油基油は、前記(A)成分および(B)成分からなる混合基油、あるいは、前記(A)成分および(B)成分の混合基油に、さらに前記鉱油系基油および/または合成系基油を含有する基油であるが、(A)成分および(B)成分からなる混合基油の40℃における動粘度は、18mm/s以下であることが好ましく、より好ましくは16mm/s以下、さらに好ましくは14mm/s以下、特に好ましくは12mm/s以下、最も好ましくは10mm/s以下である。また、混合基油の40℃における動粘度は、好ましくは3mm/s以上、より好ましくは5mm/s以上、さらに好ましくは7mm/s以上、特に好ましくは8mm/s以上に調整してなることが好ましい。
なお、本発明の潤滑油基油が、前記(A)成分および(B)成分の混合基油に、さらに他の鉱油系基油および/または合成系基油を含有する基油である場合においても、その潤滑油基油の40℃における動粘度は18mm/s以下であることが好ましい。
【0040】
また、前記(A)成分および(B)成分からなる混合基油の100℃における動粘度については特に制限はないが、3.5mm/s以下であることが好ましく、より好ましくは3.2mm/s以下、さらに好ましくは3.0mm/s以下、特に好ましくは2.9mm/s以下、最も好ましくは2.8mm/s以下である。また、混合基油の100℃における動粘度は、好ましくは2mm/s以上、より好ましくは2.2mm/s以上、さらに好ましくは2.3mm/s以上、特に好ましくは2.5mm/s以上に調整してなることが好ましい。また、混合基油の粘度指数を好ましくは100以上、より好ましくは105以上、さらに好ましくは110以上、特に好ましくは115以上、最も好ましくは120以上とすることが望ましい。
【0041】
本発明の潤滑油組成物における(C)成分は亜リン酸エスエルである。
(C)成分の亜リン酸エスエルとしては、(C1)硫黄を含有しない亜リン酸エスエル、および/または(C2)硫黄を含有する亜リン酸エスエルが挙げられる。
【0042】
(C1)硫黄を含有しない亜リン酸エスエルは一般式P(OR)で示され、具体的には、亜リン酸モノエステル類、亜リン酸ジエステル類、亜リン酸トリエステル類が挙げられる。ここで、Rは水素又は炭素数2〜30、好ましくは3〜20の炭化水素であり、Rの少なくとも一つは炭化水素である。
【0043】
炭素数2〜30の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、及びアリールアルキル基を挙げることができる。
【0044】
アルキル基としては、具体的には、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ドデシル基などを挙げることができる。またシクロアルキル基としては、例えばシクロヘキシル基を挙げることができる。
【0045】
アルケニル基としては、具体的には、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよく、また二重結合の位置も任意である)を挙げることができる。
【0046】
アリール基としては、具体的には、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を挙げることができる。
アリールアルキル基としては、具体的には、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基等の炭素数7〜12のアリールアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)を挙げることができる。
【0047】
(C1)成分の好ましい化合物の例としては、具体的には、モノプロピルホスファイト、モノブチルホスファイト、モノペンチルホスファイト、モノヘキシルホスファイト、モノペプチルホスファイト、モノオクチルホスファイト等の亜リン酸モノアルキルエステル(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);モノフェニルホスファイト、モノクレジルホスファイト等の亜リン酸モノ(アルキル)アリールエステル; ジプロピルホスファイト、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジペプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト等の亜リン酸ジアルキルエステル(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト等の亜リン酸ジ(アルキル)アリールエステル;トリプロピルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリペプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト等の亜リン酸トリアルキルエステル(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト等の亜リン酸トリ(アルキル)アリールエステル;及びこれらの混合物等が例示できる。
これらの中でもジアルキルホスファイトが好ましく、特にジブチルホスファイトが好ましい。
【0048】
(C2)硫黄を含有する亜リン酸エスエルとしては、下記一般式(1)に示されるチオ亜リン酸モノエステル類、チオ亜リン酸ジエステル類、チオ亜リン酸トリエステル類が挙げられる。
【0049】
【化1】
【0050】
式(1)において、X、X及びXは、それぞれ個別に酸素原子又は硫黄原子を示し、少なくとも一つが硫黄原子であり、すべて硫黄原子であることが好ましい。また、R、R及びRは、それぞれ個別に水素原子又は炭素数2〜30、好ましくは3〜20の炭化水素基を示す。炭化水素基は硫黄を含んでいても良い。R、R及びRは、少なくとも一つが水素原子であることが好ましい。R、R及びRが炭化水素基である場合、炭素数4〜8のアルキル基であることが好ましく、特に主鎖に硫黄を含むアルキル基であることが好ましい。これにより耐摩耗性と金属疲労耐久性の向上を図ることができる。また、R〜Rが炭化水素基である場合、各々異なる炭素数であることが好ましい。この炭素数の平均が上述の範囲であることが好ましい。これにより耐摩耗性と金属疲労耐久性の向上を図ることができる。
なお、炭素数2〜30の炭化水素基としては、先に(C1)成分においてRで示したものと同じものが挙げられる。
【0051】
(C2)成分の好ましい化合物の例としては、具体的には、トリプロピルトリチオホスファイト、トリブチルトリチオホスファイト、トリペンチルトリチオホスファイト、トリヘキシルトリチオホスファイト、トリペプチルトリチオホスファイト、トリオクチルトリチオホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト等の亜リン酸トリアルキルエステル(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);トリフェニルトリチオホスファイト、トリクレジルトリチオホスファイト等の亜リン酸トリ(アルキル)アリールエステル;及びこれらの混合物等などが挙げられる。
【0052】
本発明の潤滑油組成物における(C)成分の含有量は、優れた極圧性や疲労寿命を付与するために、潤滑油組成物全量基準で、リン元素として250質量ppm以上であり、好ましくは270質量ppm以上である。また350質量ppm以下であり、好ましくは320質量ppm以下であり、特に好ましくは310質量ppm以下である。リン元素として250質量ppm未満の場合は、極圧性や疲労寿命に対して効果がなく、350質量ppmを超える場合は、酸化安定性やナイロン材などの樹脂材の耐久性が悪化し、また疲労寿命にも悪影響を与えるため、それぞれ好ましくない。
【0053】
本発明の潤滑油組成物における(D)成分はホウ素化無灰分散剤である。
ホウ素化無灰分散剤としては、炭素数40〜400の直鎖若しくは分枝状のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有する含窒素化合物又はその誘導体、あるいはアルケニルコハク酸イミドのホウ素化品等が挙げられる。これらの中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上を配合することができる。
(D)成分としては、潤滑油に通常用いられるホウ素化した任意の無灰分散剤を用いることができるが、清浄性に優れるところから、ホウ素化コハク酸イミドであることが好ましい。
【0054】
アルケニルコハク酸イミドが有するアルキル基又はアルケニル基の炭素数は、好ましくは40〜400、より好ましくは60〜350である。アルキル基又はアルケニル基の炭素数が40未満の場合は化合物の潤滑油基油に対する溶解性が低下する傾向にあり、一方、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が400を超える場合は、潤滑油組成物の低温流動性が悪化する傾向にある。このアルキル基又はアルケニル基は、直鎖状でも分枝状でもよいが、好ましいものとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン等のオレフィンのオリゴマーやエチレンとプロピレンのコオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基あるいは分枝状アルケニル基等が挙げられる。
【0055】
特に好ましくは1−ブテンやイソブチレン等の重合体のアルキル基もしくはアルケニル基をもつコハク酸イミドが好ましい。アルキル基もしくはアルケニル基の分子量は1000以上が好ましく、さらに1500以上が好ましい。また3000以下が好ましい。1000未満では湿式クラッチの摩擦特性が悪化する懸念があり、3000を超えると組成物の低温粘度が悪化するために好ましくない。
【0056】
本発明に係る変速機用潤滑油組成物は、モノタイプ又はビスタイプのコハク酸イミドのいずれか一方を含有してもよく、あるいは双方を含有してもよい。
【0057】
コハク酸イミドの製造方法は特に制限されないが、例えば炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を有する化合物を無水マレイン酸と100〜200℃で反応させて得たアルキルコハク酸又はアルケニルコハク酸をポリアミンと反応させることにより得ることができる。ポリアミンとしては、具体的には、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミン等が例示できる。
【0058】
本発明の潤滑油組成物においては、疲労寿命と極圧性を向上させる面からホウ素化コハク酸イミド成分に基づくホウ素分がホウ素原子換算で潤滑油組成物全量を基準として30質量ppm以上、120質量ppm以下であることが必要である。好ましくは35質量ppm以上である。また好ましくは100質量%ppm以下であり、さらに好ましくは75質量ppm以下であり、最も好ましくは60質量ppm以下である。30質量ppm未満では効果が不十分であり、120質量ppmを超えるとむしろ性能が低下する可能性がある。
【0059】
また、コハク酸イミドのホウ素分のホウ素原子換算質量%の、組成物中のリン系添加剤に基づくリン分のリン原子換算質量%に対する比(ホウ素原子換算質量%/リン原子換算質量%の比率(B/P))が0.07〜0.42であることが必要である。好ましくは0.09以上であり、さらに好ましくは0.12以上である。また、好ましくは0.35以下であり、さらに好ましくは0.25以下であり、最も好ましく0.2以下である。B/P比が0.07未満では疲労寿命と効果が不十分となり、また0.42を超えると疲労寿命と極圧性をバランスよく向上させることが困難である。
【0060】
また、本発明は、さらに(E)成分として、ポリサルファイド及び/又はチアジアゾールを含有することが好ましい。
【0061】
ポリサルファイドとしては、硫化油脂類、硫化オレフィン類、ジヒドロカルビルポリスルフィド類などが挙げられる。
【0062】
硫化油脂としては、例えば、硫化ラード、硫化なたね油、硫化ひまし油、硫化大豆油、硫化米ぬか油などの油;硫化オレイン酸などの二硫化脂肪酸;及び硫化オレイン酸メチルなどの硫化エステルを挙げることができる。
【0063】
硫化オレフィンとしては、例えば下記一般式(2)で示される化合物を挙げることができる。
−S−R (2)
一般式(2)において、Rは炭素数2〜15のアルケニル基、Rは炭素数2〜15のアルキル基またはアルケニル基を示し、xは1〜8の整数を示す。xは2以上が好ましく、4以上が特に好ましい。
この化合物は炭素数2〜15のオレフィンまたはその2〜4量体を硫黄、塩化硫黄等の硫化剤と反応させることによって得ることができる。
オレフィンとしては、例えば、プロピレン、イソブテン、ジイソブテンなどが好ましく用いられる。
【0064】
ジヒドロカルビルポリスルフィドは、下記一般式(3)で示される化合物である。
−S−R (3)
一般式(3)において、R及びRは、それぞれ個別に、炭素数1〜20のアルキル基(シクロアルキル基も含む)、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアリールアルキル基又はアルキルアリール基を示し、それらは互いに同一であっても異なっていてもよく、yは2〜8の整数を示す。
【0065】
上記R及びRの例としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ドデシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基、及びフェネチル基などを挙げることができる。
【0066】
ジヒドロカルビルポリスルフィドの例の好ましいものとしては、具体的には、ジベンジルポリスルフィド、ジ−tert−ノニルポリスルフィド、ジドデシルポリスルフィド、ジ−tert−ブチルポリスルフィド、ジオクチルポリスルフィド、ジフェニルポリスルフィド、及びジシクロヘキシルポリスルフィドなどが挙げられる。
【0067】
(E)成分のポリサルファイドとしては、最も好ましくは硫化オレフィン類であり、さらに好ましくは、一般式(2)で示されるxが4〜8のものである。
【0068】
また本発明における(E)成分としてはチアジアゾールが好ましい。チアジアゾールである限り、特に構造は限定されないが、例えば、下記一般式(4)で示される1,3,4−チアジアゾール化合物、一般式(5)で示される1,2,4−チアジアゾール化合物及び一般式(6)で示される1,4,5−チアジアゾール化合物を挙げることができる。
【0069】
【化2】
【0070】
一般式(4)〜(6)において、R、R、R、R、R及びRは各々同一でも異なっていてもよく、それぞれ個別に、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表し、g、h、i、j、k、及びlはそれぞれ個別に、0〜8の整数を表す。上記炭素数1〜30の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、及びアリールアルキル基を挙げることができる。
【0071】
また、本発明の潤滑油組成物は、優れた粘度温度特性及び低温性能、疲労防止性や耐焼付き性を損なわない限りにおいて、必要に応じて各種添加剤を含有することができる。かかる添加剤としては、特に制限されず、潤滑油の分野で従来使用される任意の添加剤を配合することができる。かかる潤滑油添加剤としては、具体的には、粘度指数向上剤、金属系清浄剤、無灰分散剤、酸化防止剤、極圧剤、摩耗防止剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤などが挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
本発明の潤滑油組成物は、粘度指数向上剤を実質的に含まない。粘度指数向上剤を実質的に含まないとは、全く含まないか、あるいは含まれたとしても、粘度指数向上剤としての効果を期待して通常配合される量(2〜10質量%)に比べてきわめて少量であることの意味である。具体的には、その含有量は、組成物全量基準で1.0質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは0.5質量%以下であり、全く含まないことが最も好ましい。粘度指数向上剤の含有量が1.0重量%を超える場合は、剪断による使用中の粘度低下が懸念されること、また省燃費性を最大に発揮する潤滑油としての最低粘度に保つ上で好ましくない。
【0073】
ここでいう粘度指数向上剤としては、例えば、非分散型、あるいは分散型の粘度指数向上剤が挙げられる。非分散型粘度指数向上剤としては、具体的には、炭素数1〜30のアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレート、炭素数2〜20のオレフィン、スチレン、メチルスチレン、無水マレイン酸エステル、無水マレイン酸アミド等から選ばれる1 種又は2 種以上のモノマーの単独あるいは共重合体あるいはそれらの水素化物等が例示できる。
【0074】
分散型粘度指数向上剤としては、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ジエチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、2−メチル−5−ビニルピリジン、モルホリノメチルメタクリレート、モルホリノエチルメタクリレート、及びN−ビニルピロリドン等から選ばれる1種又は2 種以上のモノマーの単独あるいは共重合体又はそれらの水素化物に酸素含有基を導入したものと、非分散型粘度指数向上剤のモノマー成分との共重合体、或いはその水素化物等が例示できる。
【0075】
金属系清浄剤としては、スルホネート系清浄剤、サリチレート系清浄剤およびフェネート系清浄剤等が挙げられ、アルカリ金属またはアルカリ土類金属との正塩、塩基性塩、過塩基性塩のいずれをも配合することができる。使用に際してはこれらの中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上を配合することができる。
【0076】
酸化防止剤としては、フェノール系、アミン系等の無灰酸化防止剤、銅系、モリブデン系等の金属系酸化防止剤が挙げられる。
【0077】
摩擦調整剤としては、脂肪酸エステル系、脂肪族アミン系、脂肪酸アミド系等の無灰摩擦調整剤、モリブデンジチオカーバメート、モリブデンジチオホスフェート等の金属系摩擦調整剤等が挙げられる。
【0078】
本発明の潤滑油組成物は、粘度指数向上剤と同様に、流動点降下剤を実質的に含まないことが好ましい。流動点降下剤を実質的に含まないとは、全く含まないか、あるいは含まれたとしても、流動点降下剤としての効果を期待して通常配合される量(0.01〜3質量%)に比べてきわめて少量であることの意味である。具体的には、その含有量は、組成物全量基準で0.005質量%以下であり、更に好ましくは0.001質量%以下であり、全く含まないことが好ましい。流動点降下剤の含有量が0.005重量%を超える場合は、剪断による使用中の粘度低下が懸念されること、また省燃費性を最大に発揮する潤滑油としての最低粘度に保つ上で好ましくない。
【0079】
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、イミダゾール系化合物等が挙げられる。
【0080】
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、又は多価アルコールエステル等が挙げられる。
【0081】
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、又はポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0082】
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、又はβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
【0083】
消泡剤としては、例えば、25℃における動粘度が0.1〜100mm/s未満のシリコーンオイル、アルケニルコハク酸誘導体、ポリヒドロキシ脂肪族アルコールと長鎖脂肪酸のエステル、メチルサリチレートとo−ヒドロキシベンジルアルコール等が挙げられる。
【0084】
これらの添加剤を本発明の潤滑油組成物に含有させる場合には、その含有量は組成物全量基準で、それぞれ0.1〜20質量%が好ましい。
【0085】
本発明の潤滑油組成物の100℃における動粘度は2.5〜4.0mm/sであることが必要であり、好ましくは2.7mm/s以上、3.3mm/s以下である。
100℃における動粘度が2.5mm/s未満の場合には潤滑部位の油膜保持性および蒸発性に問題を生ずるおそれがあり、100℃における動粘度が4.0mm/sを超える場合には省燃費性が不足するおそれがある。
【0086】
本発明の潤滑油組成物の粘度指数については特に制限はないが、省燃費性の観点から好ましくは120以上であり、より好ましくは140以上である。
【0087】
本発明の潤滑油組成物の−40℃におけるブルックフィールド(BF)粘度は、好ましくは15000mPa・s以下であり、より好ましくは10000mPa・s以下、さらに好ましくは8000mPa・s以下、特に好ましくは5000mPa・s以下、最も好ましくは4000mPa・s以下である。15000mPa・sを超えると、始動時の粘性抵抗が高く、省燃費性が低下する。
ここで言うブルックフィールド粘度とは、ASTM D2983により測定される値である。
【0088】
本発明の潤滑油組成物は、優れた摩耗防止性及び疲労防止性を有し、かつ優れた低温流動性を有する潤滑油組成物であり、自動変速機油及び/又は無段変速機油として特に好適である。
また、本発明の潤滑油組成物は、上記以外の変速機油としての性能にも優れており、自動車、建設機械、農業機械等の自動変速機用あるいは手動変速機用、ディファレンシャルギヤ用の潤滑油としても好適に用いられる。その他、摩耗防止性、疲労防止性及び低温粘度特性が要求される潤滑油、例えば、工業用ギヤ油、二輪車、四輪車等の自動車用、発電用、舶用等のガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスエンジン用の潤滑油、タービン油、圧縮機油等にも好適に使用することができる。
【実施例】
【0089】
以下、本発明の内容を実施例および比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0090】
(実施例1〜8および比較例1〜12)
表1に示すように、本発明の潤滑油組成物(実施例1〜8)、比較用の潤滑油組成物(比較例1〜12)をそれぞれ調製した。得られた組成物について、動粘度、粘度指数、低温粘度特性、疲労防止性、四球耐焼付性を測定し、その結果を同じく表1に併記した。
【0091】
(1)低温粘度特性
ASTM D2983に準拠し、各潤滑油組成物の−40℃におけるBF粘度を測定した。本試験においては、BF粘度の値が小さいものほど低温流動性に優れていることを意味する。
(2)疲労防止性
転がり疲労試験機を用いて、以下の試験条件でピッチング発生寿命を評価した。寿命は10%累積破損確率で示した。
転がり疲労試験機では、試験片はスラストボールベアリング(NSKスラスト玉軸受51305、ボールは3球を使用)を使用した。試験条件は、面圧:5.9GPa、回転数:1500rpm、油温:120℃である。
(3)高速四球耐熱性
ASTM D2596に準拠し、高速四球試験機を用い、各潤滑油組成物の1800回転における最大非焼付き荷重(LNSL)を測定した。本試験においては、最大非焼付き荷重が大きいほど耐熱性に優れていることを意味する。
【0092】
表1の結果から明らかな通り、本発明にかかる実施例1〜5の潤滑油組成物は、粘度温度特性、低温粘度特性、疲労防止性及び耐焼付に優れていることがわかる。
【0093】
【表1】