(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1には、砥石内の気孔の含有率を径方向で変化させる具体的な方法は開示されていない。砥石に気孔を含有させる方法としては、例えば、成形前の原料の粉体(砥粒)に発泡剤を混入する方法が考えられるが、このような方法により気孔の含有率を径方向で変化させることは非常に困難であり、製造工程が複雑になってしまう。このため、加工面における磨耗量が均一な砥石の実用化は未だなされていない。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、加工面における磨耗量が従来よりも均一な砥石及び砥石の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る砥石は、平面状又は曲面状をなす載置面を有する台座と、樹脂に研磨材を分散させた第1の複合材により形成され、前記載置面内の輪帯状をなす領域に載置された少なくとも1つの第1の成形体を含む第1の研磨部と、樹脂に研磨材を分散させた第2の複合材であって、前記樹脂の含有率が前記第1の複合材における前記樹脂の含有率よりも低い第2の複合材により形成され、前記載置面の前記領域の内周側に載置された少なくとも1つの第2の成形体を含む第2の研磨部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記砥石において、前記第1の研磨部と前記第2の研磨部とは、互いに隙間を空けて設けられていることを特徴とする。
【0010】
上記砥石において、前記第1の成形体は筒状をなし、前記第2の成形体は柱状又は筒状をなし、前記第1の成形体と同軸状に載置されていることを特徴とする。
【0011】
上記砥石において、前記第1及び第2の成形体の中心軸と直交する面において、前記第1の成形体の厚みは、前記第2の成形体の半径又は厚みとは異なることを特徴とする。
【0012】
上記砥石において、前記第1の成形体の厚みは、前記第2の成形体の半径又は厚みよりも大きいことを特徴とする。
【0013】
上記砥石において、前記第1及び/又は第2の研磨部は、互いに同軸状に載置された複数の第1及び/又は第2の成形体を含むことを特徴とする。
【0014】
上記砥石は、前記第1及び第2の成形体を含み、互いに同軸状に載置された複数の成形体を備え、前記複数の成形体のうち、互いに隣り合う任意の2つの成形体間の距離は、該2つの成形体の内周側において互いに隣り合う別の任意の2つの成形体間の距離よりも短いことを特徴とする。
【0015】
上記砥石において、前記第1の研磨部は、各々が柱状に成形され、前記領域に離散的に載置された複数の第1の成形体を含み、前記第2の研磨部は、柱状に成形された少なくとも1つの第2の成形体を含むことを特徴とする。
【0016】
上記砥石において、前記複数の第1の成形体の各々の前記柱状の高さ方向と直交する面の大きさは、前記少なくとも1つの第2の成形体の前記大きさとは異なることを特徴とする。
【0017】
上記砥石において、前記複数の第1の成形体の各々の前記大きさは、前記少なくとも1つの第2の成形体の前記大きさよりも大きいことを特徴とする。
【0018】
上記砥石において、前記第2の研磨部は、各々が柱状に成形された複数の第2の成形体を含み、前記第1の研磨部において互いに隣り合う2つの第1の成形体間の距離は、前記第2の研磨部において互いに隣り合う2つの第2の成形体間の距離よりも短いことを特徴とする。
【0019】
本発明に係る砥石の製造方法は、樹脂に研磨材を分散させた第1の複合材からなる少なくとも1つの第1の成形体を作製する第1成形体作製工程と、樹脂に研磨材を分散させた第2の複合材であって、前記樹脂の含有率が前記第1の複合材における前記樹脂の含有率よりも低い第2の複合材からなる少なくとも1つの第2の成形体を作製する第2成形体作製工程と、平面状又は曲面状をなす載置面を有する台座に対し、前記載置面内の輪帯状をなす領域に前記少なくとも1つの第1の成形体を載置し、前記領域の内周側に前記少なくとも1つの第2の成形体を載置する成形体載置工程と、前記少なくとも1つの第1及び第2の成形体の前記載置面との当接面と反対側の端面を研削又は研磨することにより、研磨対象物を研磨可能な加工面を形成する加工面形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0020】
上記砥石の製造方法において、第1成形体作製工程は、筒状をなす前記第1の成形体を作製し、第2成形体作製工程は、柱状又は筒状をなす前記第2の成形体を作製し、前記成形体載置工程は、前記少なくとも1つの第1及び第2の成形体を同軸状に載置することを特徴とする。
【0021】
上記砥石の製造方法において、第1成形体作製工程は、柱状をなす前記第1の成形体を複数作製し、第2成形体作製工程は、柱状をなす前記第2の成形体を少なくとも1つ作製し、前記成形体載置工程は、前記領域に複数の前記第1の成形体を離散的に載置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、成形体における樹脂含有率を変化させることにより、成形体の磨耗し易さを容易に制御することができる。また、内周側の第1の研磨部に対して周速が速い外周側の第2の研磨部を、樹脂含有率が第1の成形体よりも高く、相対的に磨耗し難い第2の成形体によって構成するので、磨耗量が従来よりも均一な砥石を容易に製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、これらの実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、各図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。図面は模式的なものであり、各部の寸法の関係や比率は、現実と異なることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれる。
【0025】
(実施の形態1)
図1Aは、本発明の実施の形態1に係る砥石を示す上面図である。また、
図1Bは、
図1AのA−A断面図である。
図1A及び
図1Bに示すように、実施の形態1に係る砥石1は、台座10と、該台座10に載置された複数(例えば3つ)の成形体11〜13とを備える。
【0026】
台座10は、平面状の載置面10aを有する円盤状の金属部材である。成形体11〜13は、内径及び外径が互いに異なる円筒状をなし、載置面10aの中心軸Oを中心とする輪帯状の領域に同軸状に載置され、固定されている。なお、中心に載置される成形体11については、円柱状としても良い。各成形体11〜13は、レンズ等の研磨対象物と当接して研磨する研磨部を構成する。
【0027】
成形体11〜13の端面11a、12a、13aは、凹球面の一部をなす加工面1aとなっている。このような砥石1は、例えばレンズ等の光学素子の研削又は研磨加工の際に、加工面1aを研磨対象物(ワーク)の被加工面に当接させ、中心軸Oを回転軸として回転させて用いられる。
【0028】
各成形体11〜13は、樹脂に研磨材(砥粒)を分散させた複合材によって形成されている。研磨材としては、例えば、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化クロム、ダイヤモンド等が挙げられ、砥石1の用途に応じて適宜選択される。一方、樹脂としては、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられ、必要に応じて、シラン、チタンのカップリング剤、フッ化炭素、二硫化モリブデン、フッ化エチレン、強化樹脂等が添加される。
【0029】
成形体11〜13の間では、複合材(樹脂+研磨材)における樹脂の含有率が互いに異なっている。以下、複合材における樹脂の含有率のことを樹脂含有率といい、成形体11、12、13の樹脂含有率をそれぞれR
11、R
12、R
13とする。樹脂含有率は、体積%又は質量%で表される。
【0030】
より詳細には、成形体11、12、13の樹脂含有率は外周側に載置されるものほど高く、R
11<R
12<R
13となっている。なお、
図1Aにおいては、樹脂含有率の違いをパターンの違いで示しており、樹脂含有率が高いほど(即ち研磨材の含有率が低いほど)ドットの密度を小さくしている。
【0031】
言い換えると、中心軸Oに近い成形体11は、研磨材同士を結着する樹脂が少ないため、相対的に軟らかい。これに対して、中心軸Oから遠い成形体13においては、研磨材同士を結着する樹脂が多いため相対的に硬く、成形体11と比較して磨耗し難い。なお、成形体12の硬さ及び磨耗し易さは、成形体11と成形体13との中間である。
【0032】
ここで、砥石1を回転させてワークを研削又は研磨する過程において、成形体11の載置領域10−1における周速、即ちワークに対する砥石1の速度は相対的に遅く、成形体12の載置領域10−2における該速度は相対的に速く、成形体13の載置領域10−3における該速度は相対的にさらに速い。このため、周速の速い載置領域10−3に載置された成形体13の方が、単位時間当たりにワークと擦られる距離が長い。
【0033】
従って、上述したように、周速が速い外周側の領域ほど成形体を硬くして、磨耗し難いようにしておくことにより、砥石1を回転させて使用する際に、周速が互いに異なる載置領域10−1〜10−3の間で、端面11a、12a、13aの磨耗量を均一にすることができる。それにより、加工面1aの変形を抑制し、ワークに対する加工精度を維持することが可能となる。
【0034】
次に、砥石1の製造方法について説明する。
図2は、砥石1の製造方法を示すフローチャートである。
まず、工程S1において、研磨材が樹脂によって結着された複合粉体を、樹脂含有率を変えて複数種類作製する。
図3は、複合粉体の作製工程の詳細を示すフローチャートである。
【0035】
工程S11において、粉末又はフレーク状の樹脂材料を溶媒に溶解させることにより、樹脂溶液を調製する。樹脂材料としては、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂等が用いられ、必要に応じて、シラン、チタンのカップリング剤、フッ化炭素、二硫化モリブデン、フッ化エチレン、強化樹脂等が添加される。また、溶媒としては、NMP系、モノグライム、ジグライム、ブチルラクトン、トルエン、アセトン、トリクレン等の有機溶剤が使用される。この際、所定量の溶媒に溶解させる樹脂の量を調節することにより、複合粉体の樹脂含有率を制御することができる。
【0036】
続く工程S12において、粉体状の研磨材(砥粒)を上記樹脂溶液に混合して攪拌することにより、研磨材泥(スラリー)を作製する。研磨材としては、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化クロム、ダイヤモンド等が使用される。なお、工程S11において溶媒に対する樹脂の量を調節する代わりに、工程S12において、所定量の樹脂溶液に対する研磨材の量を調節することにより、樹脂含有率を制御しても良い。
【0037】
続く工程S13において、研磨材泥を薄く引き伸ばし、溶媒を揮発させて乾燥させる。それにより、樹脂及び研磨材からなるシート状の複合材を作製する。
【0038】
続く工程S14において、シート状の複合材を粉砕してフレーク状にし、さらに、ミキサー、ボールミル、乳鉢等を用いて、粉体状になるまで粉砕する。それにより、複合粉体が得られる。
【0039】
図4A及び
図4Bは、工程S1により作製された複合粉体を示す模式図である。
図4A及び
図4Bに示すように、各複合粉体111、112は、研磨材101が樹脂100によって結着された構造を有する。このうち、複合粉体111は、複合粉体112よりも樹脂100の含有率が高く、研磨材101の含有率が低くなっている。本実施の形態1においては、このように樹脂含有率が互いに異なる複合粉体を3種類作製する。
【0040】
図5は、樹脂と研磨材との配合比率の例を示す表である。樹脂含有率が互いに異なる複合粉体を作製する場合、
図5に例示する配合比率で樹脂及び研磨材を配合すれば良い。例えば、比重が6.5g/cm
3の研磨材と、比重が1.5g/cm
3の樹脂を用いる場合、両者を50体積%ずつ(即ち、研磨材が81質量%、樹脂が19質量%)配合することで、相対的に硬い砥石用の複合粉体となる。また、研磨材を70体積%(91質量%)、樹脂を30体積%(9質量%)配合することで、相対的に軟らかい砥石用の複合粉体となる。さらに、研磨材を60体積%(87質量%)、樹脂を40体積%(13質量%)配合することで、これらの中間の硬さの砥石用の複合粉体となる。
【0041】
なお、工程S14において複合材を粉砕すると、研磨材が樹脂によって結着された複合粉体の他に、樹脂のみ又は研磨材のみの粉体も生成されるが、これらは分粒しても良いし、分粒しなくても良い。後者の場合、厳密には、複合粉体に樹脂のみ又は研磨材のみの粉体が混合された状態となるが、後の工程(工程S2以降)において複合粉体と同様に用いることができる。また、いずれの場合であっても、粉体全体における樹脂の配合比率は同程度となる。
【0042】
続く工程S2において、工程S1において作製した複合粉体を圧縮成形した圧粉体を作製する。
図6A〜
図6Cは、圧粉体の作製工程を示す模式図である。
まず、
図6Aに示すように、粉体成形用の型121に複合粉体111を配置する。型121は、
図1Aに示す成形体13を作製するための型であり、成形体13に対応する内径及び外径の円筒状をなすキャビティ122が内部に設けられている。
【0043】
この型121のキャビティ122に、粉体噴射ノズル123等を用いて、樹脂含有率が相対的に高い複合粉体111を充填する。
続いて、
図6Bに示すように、型121の開口から上パンチ124を挿入し、
図6Cに示すように、複合粉体111に荷重をかけて圧縮成形を行う。それにより、複合粉体111からなる圧粉体133が得られる。
【0044】
同様にして、成形体11、12に対応する粉体成形用の型を用いて、樹脂含有率が中程度の複合粉体(例えば
図5の中段参照)、及び、樹脂含有率が相対的に低い複合粉体(例えば
図5の下段参照)からなる円筒状の圧粉体を作製する。
【0045】
ここで、各圧粉体の内径及び外径(言い換えると、型のサイズ)は、成形体11〜13の内径及び外径に応じ、後述する加熱工程における縮み等を考慮して決定する。一方、各圧粉体の高さについては、加工面1a(
図1B参照)の曲率に応じて決定すると良い。例えば、加工面1aを凹面とする場合には、内周側に載置される(即ち、樹脂含有率が低い)圧粉体ほど背が低くなるように高さを決定すると、後述する加工面1aの形成工程における加工量(研削量又は研磨量)を抑えることができるので好ましい。
【0046】
続く工程S3において、
図7に示すように、工程S2において作製した3種類の圧粉体131〜133を加熱装置134内に配置し、加熱処理を行う。それにより、複合粉体に含まれる樹脂同士を溶着させ、圧粉体131〜133を硬化させる。その結果、サイズ及び樹脂含有率が互いに異なる円筒状の3種類の成形体が得られる。なお、加熱温度や加熱時間等の処理条件については、樹脂の種類等に応じて適宜設定すれば良い。
【0047】
続く工程S4において、
図8に示すように、工程S3において作製した3種類の成形体141〜143を、台座10の載置面10a上に同軸状に載置し、ワックス等の接着剤を用いて固定する。
【0048】
続く工程S5において、成形体141〜143の端面を研削又は研磨することにより、加工面1a(
図1B参照)を形成する。この際、例えば
図9に示すように、ダイヤモンドカップホイール150等を用いた研削を行っても良い。或いは、
図10に示すように、ラップ皿160及びスラリー(図示せず)を用いたラップ研磨を行っても良い。成形体141〜143の端面に所望の球面形状をなす加工面1aが形成されると、
図1A及び
図1Bに示す砥石1が完成する。
【0049】
以上説明したように、実施の形態1によれば、載置面10aの内周側から外周側に向かうほど、成形体11〜13の樹脂含有率を高くするので、砥石1を用いてワークを研磨する際に、加工面1aにおける磨耗量を均一にすることができる。それにより、加工面1aの変形を抑制し、ワークに対する加工精度を維持することが可能となる。
【0050】
また、実施の形態1によれば、樹脂含有率が互いに異なる成形体141〜143を予め作製し、これらの成形体141〜143を所定の載置領域10−1〜10−3にそれぞれ載置して加工面1aを形成するので、成形体の樹脂含有率を載置領域ごとに容易に制御することができる。従って、加工面1aにおける磨耗量が均一な砥石1を簡単な工程で製造することが可能となる。
【0051】
また、実施の形態1によれば、各成形体143の高さを、加工面1aの形状(曲率)に応じて決定しておくことにより、加工面1aの形成工程における加工量を最小限に抑えることができる。従って、高さが揃った成形体に対して球面を創成する場合と比較して、加工面1aの形成工程に要する時間を短縮し、樹脂及び研磨材等の材料の無駄を省くことが可能となる。
【0052】
なお、上記実施の形態1においては、研磨材が樹脂によって結着された複合粉体を用いたが、樹脂及び研磨材を含む粉体であれば、上記複合粉体に限らず用いることができる。例えば、複合粉体に樹脂粉体を混合した混合粉体を用いても良い。この場合、混合する樹脂粉体の量を調整することにより、混合粉体における樹脂の配合比率を容易に制御することができる。また、樹脂含有率が互いに異なる複数種類(例えば2種類)の複合粉体を用意し、これらの複合粉体をさらに混合することにより、混合粉体における樹脂の配合比率を制御しても良い。
【0053】
また、上記実施の形態1においては、成形体11〜13を、間隔を空けて載置しているが、これらの成形体を隙間なく載置しても良い。
【0054】
(変形例1−1)
次に、本発明の実施の形態1の変形例1−1について説明する。
図11Aは、変形例1−1に係る砥石を示す上面図であり、
図11Bは、
図11AのB−B断面図である。
図11A及び
図11Bに示すように、変形例1−1に係る砥石2は、台座10と、互いに異なる樹脂含有率を有する複数(例えば3つ)の成形体21〜23を備える。
【0055】
成形体21〜23は、各々が円筒状をなし、内周側から外周側に向かって樹脂含有率が高くなるように、台座10の載置面10a上に同軸状に載置されている。なお、中心に載置される成形体21については、円柱状としても良い。各成形体21〜23は、レンズ等の研磨対象物と当接して研磨する研磨部を構成する。また、成形体21〜23の端面21a、22a、23aは、凹球面の一部をなす加工面2aとなっている。
【0056】
このような砥石2においては、成形体21〜23の輪帯の幅d
21〜d
23(中心軸Oと直交する面における成形体21〜23の厚み、成形体21を円柱状とする場合には半径)を互いに変化させても良い。具体的には、中心軸Oを回転軸として砥石2を回転させたときに周速が遅い内周側に対し、外周側の成形体の幅が大きくなるように、幅d
21〜d
23を決定する。それにより、砥石2を用いてワークを加工する際に、内周側と外周側とにおいて成形体21〜23の端面21a、22a、23aの磨耗量を均一にすることができる。その結果、加工面2aの変形を抑制し、ワークに対する加工精度を維持することが可能となる。
【0057】
(変形例1−2)
次に、本発明の実施の形態1の変形例1−2について説明する。
図12Aは、変形例1−2に係る砥石を示す上面図であり、
図12Bは、
図12AのC−C断面図である。
図12A及び
図12Bに示すように、変形例1−2に係る砥石3は、台座10と、樹脂含有率が互いに異なる複数の(例えば3つ)成形体31〜33とを備える。
【0058】
成形体31〜33は、各々が円筒状をなし、内周側から外周側に向かって樹脂含有率が高くなるように、台座10の載置面10a上に同軸状に載置されている。なお、中心に載置される成形体31については、円柱状としても良い。各成形体31〜33は、レンズ等の研磨対象物と当接して研磨する研磨部を構成する。また、成形体31〜33の端面31a、32a、33aは、凹球面の一部をなす加工面3aとなっている。
【0059】
このような砥石3においては、成形体31〜33の間の距離(間隔)d
34、d
35を互いに変化させても良い。具体的には、中心軸Oを回転軸として砥石3を回転させたときに周速が遅い内周側において間隔d
34を広くし、周速が速い外周側において間隔d
35を狭くする。それにより、加工面3aにおける成形体の密度が外周側ほど高くなるので、砥石3を用いてワークを加工する際に、端面31a、32a、33aの磨耗量を均一にすることができる。その結果、加工面3aの変形を抑制し、ワークに対する加工精度を維持することが可能となる。
【0060】
(変形例1−3)
次に、本発明の実施の形態1の変形例1−3について説明する。
図13Aは、変形例1−3に係る砥石を示す上面図であり、
図13Bは、
図13AのD−D断面図である。
図13A及び
図13Bに示すように、変形例1−3に係る砥石4は、台座10と、該台座10の載置面10a上に載置された複数の成形体11A、12A、12B、13A〜13Cを備える。成形体11Aと、成形体12A、12Bと、成形体13A〜13Cとの間では樹脂含有率が互いに異なっている。
【0061】
載置面10aの内周側の載置領域10−1には、樹脂含有率が最も低い成形体11Aが載置されている。その外周の載置領域10−2には、樹脂含有率が成形体11Aよりも高く、互いに内径及び外径が異なる複数(例えば2つ)の成形体12A、12Bが、成形体11Aと同軸状に載置されている。さらに、載置領域10−2の外周の載置領域10−3には、樹脂含有率が成形体12A、12Bよりも高く、互いに内径及び外径が異なる複数(例えば3つ)の成形体13A〜13Cが、成形体11Aと同軸状に載置されている。これらの成形体11A、成形体12A及び12B、成形体13A〜13Cは、載置領域ごとに、レンズ等の研磨対象物と当接して研磨する研磨部を構成する。
【0062】
このように、各載置領域10−1〜10−3に対し、載置領域ごとに設定された樹脂含有率を有する成形体を複数載置しても良い。特に、周速が速い外周側の載置領域10−3ほど、載置する成形体13A〜13Cの数を増やすことで、各成形体13A〜13Cの磨耗を抑制することができる。その結果、砥石3を用いてワークを加工する際に、内周側と外周側とで端面の磨耗量を均一にすることができる。
【0063】
なお、
図13A及び
図13Bにおいては、各成形体11A、12A、12B、13A〜13Cの輪帯の幅や隣接する成形体間の間隔を均等にしているが、変形例1−1又は1−2と同様に、輪帯の幅や間隔を変化させても良い。
【0064】
(変形例1−4)
上記実施の形態1及び変形例1−1〜1−3においては、各成形体の形状を円柱状又は円筒状としたが、各成形体の形状は、互いに中心軸を一致させて載置面10a上に載置することができれば、これらの形状に限定されない。例えば、中心軸と直交する面における断面が三角形、四角形、五角形、六角形といった多角形状をなす中空の柱状(筒状)や、円筒の一部を高さ方向に沿って切り欠いた柱状(断面がC字をなす柱状)であっても良い。また、載置面10aの中心部に載置される成形体については、三角柱、四角柱、五角柱、六角柱といった多角柱状としても良いし、円柱の一部を切り欠いた柱状としても良い。
【0065】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
図14Aは、本発明の実施の形態2に係る砥石を示す上面図であり、
図14Bは、
図14AのE−E断面図である。
図14A及び
図14Bに示すように、実施の形態2に係る砥石5は、台座50と、該台座50に載置された複数の成形体51〜53を備える。
【0066】
台座50は、曲面状の載置面50aを有する金属部材である。実施の形態2においては、載置面50aを凹球面状としている。
図14Aに示すように、載置面50aには、上面から見た場合に円形状をなす載置領域50−1と、その外周の輪帯状をなす載置領域50−2、50−3とが同軸状に設けられており、これらの載置領域50−1〜50−3には、成形体51、52、53がそれぞれ、1つ以上載置されている。これらの成形体51〜53は、載置領域ごとに、レンズ等の研磨対象物と当接して研磨する研磨部を構成する。また、成形体51〜53の端面51a、52a、53aは、凹球面の一部をなす加工面5aとなっている。
【0067】
各成形体51〜53は円柱状をなす、所謂砥石ペレットであり、実施の形態1における成形体11〜13と同様、樹脂に研磨材(砥粒)を分散させた複合材により形成されている。成形体51〜53の間では樹脂含有率が互いに異なっており、成形体51、52、53の樹脂含有率をそれぞれR
51、R
52、R
53とすると、R
51<R
52<R
53となっている。なお、
図14Aにおいては、樹脂含有率の違いをパターンの違いで示しており、樹脂含有率が高いほど(即ち研磨材の含有率が低いほど)ドットの密度を小さくしている。
【0068】
載置面50aの内周側の載置領域50−1には、樹脂含有率が最も低い成形体51が載置されている。その外周の載置領域50−2には、樹脂含有率が成形体51よりも高い複数の成形体52が離散的に載置されている。さらに外周の載置領域50−3には、樹脂含有率が成形体52よりも高い複数の成形体53が離散的に載置されている。
【0069】
このように、中心軸Oから載置領域までの距離が長くなるほど、当該載置領域に載置される成形体の樹脂含有率を高くすることにより、砥石5を回転させて使用する際に、載置領域50−1と、該載置領域50−1に対して周速が速い載置領域50−2と、周速がさらに速い載置領域50−3とにおいて、端面51a、52a、53aの磨耗量を均一にすることができる。それにより、加工面5aの変形を抑制し、ワークに対する加工精度を維持することが可能となる。
【0070】
次に、砥石5の製造方法について説明する。なお、砥石5の製造方法の全体の流れは
図2に示すものと同様であり、各工程の詳細が実施の形態1とは異なっている。なお、工程S1は、実施の形態1と共通である。
【0071】
工程S2において、工程S1において作製した複合粉体を圧縮成形した圧粉体を作製する。
図15A〜
図15Cは、圧粉体の作製工程を示す模式図である。
まず、
図15Aに示すように、粉体成形用の型201に複合粉体202を配置する。型201は、
図14Aに示す成形体51〜53を作製するための型であり、成形体51〜53に対応する径の円柱状をなすキャビティ203が内部に設けられている。
【0072】
続いて、
図15Bに示すように、型201の開口から上パンチ204を挿入し、
図15Cに示すように、複合粉体202に荷重をかけることにより、圧縮成形を行う。それにより、複合粉体202からなる圧粉体が得られる。
本工程S2においては、このようにして、樹脂含有率が互いに異なる3種類の圧粉体を作製する。
【0073】
続く工程S3において、
図16に示すように、工程S2において作製した3種類の圧粉体211〜213を加熱装置214内に配置し、加熱処理を行うことにより硬化させる。それにより、樹脂含有率が互いに異なる円柱状の3種類の成形体が得られる。
【0074】
続く工程S4において、
図17に示すように、工程S3において作製した3種類の成形体221〜223を、台座50の載置面50a内の載置領域50−1〜50−3にそれぞれ載置し、ワックス等の接着剤を用いて固定する。
【0075】
さらに、工程S5において、成形体221〜223の端面を研削又は研磨することにより、加工面5a(
図14B参照)を形成する。この際、例えば
図18に示すように、ダイヤモンドカップホイール230等を用いた研削を行っても良い。或いは、
図19に示すように、ラップ皿240及びスラリー(図示せず)を用いたラップ研磨を行っても良い。成形体221〜223の端面に所望の球面形状をなす加工面5aが形成されると、
図14A及び
図14Bに示す砥石5が完成する。
【0076】
以上説明したように、実施の形態2によれば、樹脂含有率が相対的に低い成形体51、52を内周側に載置し、樹脂含有率が相対的に高い成形体52、53を外周側に載置するので、載置領域50−1〜50−3ごとに成形体51〜53の樹脂含有率を簡単に制御することができ、加工面5aにおける磨耗量が均一な砥石5を容易に実用化することができる。
【0077】
また、実施の形態2によれば、曲面状をなす載置面50a上に円柱状の成形体221〜223(
図17参照)を載置し、該成形体221〜223を研削又は研磨することにより、端面51a、52a、53a(
図14B参照)を形成するので、各成形体221〜223に対する加工量(研削量又は研磨量)を最小限に抑えることができる。従って、加工面5aの形成工程に要する時間を短縮し、且つ材料の無駄を省くことが可能となる。
【0078】
なお、上記実施の形態1においては、隣り合う成形体の間で間隔が空くように複数の成形体を載置したが、これらの成形体を互いに接するように、密に載置しても良い。
【0079】
(変形例2−1)
次に、本発明の実施の形態2の変形例2−1について説明する。
図20Aは、変形例2−1に係る砥石を示す上面図であり、
図20Bは、
図20AのF−F断面図である。
図20A及び
図20Bに示すように、変形例2−1に係る砥石6は、台座50と、該台座50の載置面50a上に載置された複数の成形体61〜63を備える。
【0080】
各成形体61〜63は、円柱状をなす所謂砥石ペレットであり、互いに異なる樹脂含有率を有すると共に、互いに異なる径を有している。そして、載置面50aの内周側の載置領域60−1には、樹脂含有率が最も低く、径が最も小さい複数の成形体61が載置されている。また、その外周の輪帯状をなす載置領域60−2には、成形体61よりも樹脂含有率が高く、且つ径が大きい複数の成形体62が離散的に載置されている。さらに、その外周の輪帯状をなす載置領域60−3には、成形体62よりも樹脂含有率が高く、且つ径が大きい複数の成形体63が離散的に載置されている。これらの成形体61〜63は、載置領域ごとに、レンズ等の研磨対象物と当接して研磨する研磨部を構成する。また、成形体61〜63の端面61a、62a、63aは、凹球面の一部をなす加工面6aとなっている。
【0081】
このように成形体61〜63を載置することにより、砥石6を用いてワークを加工する際に、内周側に載置される成形体61、62と、外周側に載置される成形体62、63とで、端面61a、62a、63aの磨耗量を均一にすることができる。その結果、加工面6aの変形を抑制し、ワークに対する加工精度を維持することが可能となる。
【0082】
(変形例2−2)
次に、本発明の実施の形態2の変形例2−2について説明する。
図21Aは、変形例2−2に係る砥石を示す上面図であり、
図21Bは、
図21AのG−G断面図である。
図21A及び
図21Bに示すように、変形例2−2に係る砥石7は、台座50と、該台座50の載置面50a上に載置された複数の成形体71〜73を備える。
【0083】
成形体71〜73は、互いに径が等しい円柱状をなす、所謂砥石ペレットであり、互いに異なる樹脂含有率を有している。そして、載置面50aの内周側の載置領域70−1には、樹脂含有率が最も低い成形体71が載置されている。また、その外周の輪帯状をなす載置領域70−2には、成形体71よりも樹脂含有率が高い複数の成形体72が離散的に載置されている。さらに、その外周の輪帯状をなす載置領域70−3には、成形体72よりも樹脂含有率が高い複数の成形体73が、成形体72よりも配置間隔を密にして(隣接する成形体間の距離を短くして)載置されている。これらの成形体71〜73は、載置領域ごとに、レンズ等の研磨対象物と当接して研磨する研磨部を構成する。また、成形体71〜73の端面71a、72a、73aは、凹球面の一部をなす加工面7aとなっている。
【0084】
このように成形体71〜73を載置することにより、砥石7を用いてワークを加工する際に、内周側に載置される成形体72と、外周側に載置される成形体73とで、端面72a、73aの磨耗量を均一にすることができる。その結果、加工面7aの変形を抑制し、ワークに対する加工精度を維持することが可能となる。
【0085】
(変形例2−3)
上記実施の形態2並びに変形例2−1及び2−2においては、各載置領域(例えば、
図14Aに示す載置領域50−1〜50−3)に成形体を1周にわたって載置した。しかしながら、1つの載置領域に複数の成形体を2周以上にわたって載置しても良い。
【0086】
(変形例2−4)
上記実施の形態2及び変形例2−1〜2−3において用いられる各成形体の形状は、円柱状に限定されない。例えば、三角柱、四角柱、五角柱、六角柱といった多角柱状としても良いし、円柱の一部を切り欠いた柱状としても良い。
【0087】
(変形例3)
上記実施の形態1、2及びこれらの変形例1−1〜2−4においては、砥石の加工面を凹球面状としたが、加工面の形状は、回転対称形状であれば凹球面状に限定されない。例えば、凸球面状や非球面状であっても良いし、平面状であっても良い。