【実施例】
【0020】
次に、本発明の実施例に係るハンズフリー通話システムについて説明する。
図1は、本実施例のハンズフリー通話システムの概要を示す図である。同図に示すように、本実施例のハンズフリー通話システム10は、車載電子装置100と、当該車載電子装置100に接続手段300を介して接続されたスマートフォン200とを備える。ここでは、携帯端末としてスマートフォンが用いられる例を示すが、上記したように携帯端末はスマートフォン以外の端末であってもよい。
【0021】
車載電子装置100は、オーディオ機能やビデオ機能などを搭載し、画像データや音声データを出力するための表示部110、スピーカ120を備える。車載電子装置100はさらには、マイクロフォン130を含み、マイクロフォン130は、ユーザーからの指示を受け取るときの音声入力手段、あるいはハンズフリー通話の際の音声入力手段として機能する。典型的なスマートフォン200は、公衆電話回線網210を利用した通常の電話機能と、インターネット等のネットワーク通信220を利用した電話機能とを備えている。ネットワーク通信220は、インターネット、イントラネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)などを含み、ネットワーク通信220による電話は、例えば、インターネットプロトコルによるデータ通信により行われる。IP電話のアプリケーションは、図示しないサーバーなどからスマートフォン200にダウンロードされ、取り込むことが可能である。
【0022】
車載電子装置100は、接続手段300によってスマートフォン200に接続される。接続手段300は、その接続方法を特に限定されるものではないが、例えば、Bluetooth、LAN、WiFi、USBなどによって両者を接続することができる。接続手段300は、車載電子装置100とスマートフォン200の間でデータや制御信号の双方向通信を行うものであることができる。また、接続手段300は、後述するように、スマートフォン200と車載電子装置100間で、ハンズフリー通話を可能にするBT HFTのプロファイルによる接続を含む。
【0023】
図2は、車載電子装置100の一構成例を示すブロック図である。車載電子装置100は、CD、DVD、ブルーレイディスク、ハードディスク装置などに格納されたオーディオデータやビデオデータを再生するマルチメディア再生部140、デジタルテレビ放送、AM/FMラジオ放送などを受信するテレビ/ラジオ受信部142、自車位置周辺の道路地図を表示したり、目的地までの誘導経路を案内するナビゲーション部144、外部のネットワーク等とデータ通信を行うことを可能にする通信部146、スマートフォン200やその他の電子機器等との間の接続手段300による接続を確立する接続部148、プログラムやデータ等を記憶する記憶部150、音声や画像等を出力する出力部152、ユーザー操作や音声等を入力する入力部154、マイクロコントローラやマイクロプロセッサ等を含みプログラムを実行することで各部を制御する制御部160を含んで構成される。なお、ここに示される構成は例示であり、車載電子装置100は、このような構成に限定されるものではない。
【0024】
接続部148は、スマートフォン200との間でBT HFTプロファイルによる接続を可能にする。また、接続部148は、BT HFTプロファイル以外にも、BTのオーディオプロファイル、USBケーブル、WiFi等の接続も可能にする。
【0025】
制御部160は、車載電子装置の各部の機能を制御するが、ここでは、その中の1つであるハンズフリー通話制御を詳細に説明する。
図3は、ハンズフリー通話制御を実行するための機能的な構成を示す図である。同図に示すように、ハンズフリー通話制御170は、BT HFTのプロファイルによってスマートフォン200との接続を行うBT HFT接続部172、スマートフォン200への着信を検出する着信検出部174、着信があった電話種別を判定する電話種別判定部176、着信があったことをユーザーに通知する着信通知部178、BTのHFTのプロファイルを切断するBT HFT切断部180、スマートフォン200に対してスマートフォン自身のハンズフリー機能(例えば、スピーカフォン)を有効にすることを要求する制御信号を送信するHFT有効要求部182を備えている。これらの詳細については、後述する。
【0026】
図4に、ハンズフリー通話に用いられるスマートフォン200の一構成例を示す。スマートフォン200は、典型的に、ユーザーからの入力を受け取る入力部230、公衆電話回線網210やネットワーク通信220を介しての通信を可能にする通信部234、ディスプレイの表示を制御する表示制御部234、スピーカからの音声出力を制御する音声出力部236、車載電子装置100等の電子機器との間で接続手段300による接続を確立する接続部238、マイクロコントローラやマイクロプロセッサ等を含みプログラムを実行することで各部を制御する制御部240、IP電話のアプリケーションなどのソフトウエアやプログラム等を格納するプログラムメモリ242、および種々のデータを格納するデータメモリ244を備えている。
【0027】
接続部238は、車載電子装置100との間でBT HFTのプロファイルによる接続を可能にする。さらに接続部238は、BT HFTプロファイル以外にも、BT オーディオプロファイル、USBケーブル、WiFi等による接続も可能にする。
【0028】
次に、本実施例のハンズフリー通話の動作を
図5のフローチャートを参照して説明する。先ず、スマートフォン200が車内に持ち込まれると、車載電子装置100のBT HFT接続部172(
図3を参照)は、接続手段300を介してスマートフォン200とBT HFTのプロファイルによる接続を確立する(S100)。BT HFTのプロファイルは、車載電子装置100とスマートフォン200によってハンズフリー通話を実行するための1つの手段である。BT HFT接続以外にも、車載電子装置100およびスマートフォン200は、接続手段300を介して、必要な接続、例えば、BTオーディオプロファイル、USB接続などを確立することができる。
【0029】
スマートフォン200が車載電子装置100にBT HFT接続された状態で、スマートフォン200に着信があると(S102)、着信を知らせる信号がスマートフォン200から車載電子装置100に接続手段300を介して送信される。着信を知らせる信号は、例えば、BT HFTを介してスマートフォン200から送信された着信音を示す音声信号であることができる。但し、これ以外にも、スマートフォン200から車載電子装置100に対して着信を知らせる信号が送信されるようにしてもよい。
【0030】
車載電子装置100の着信検出部174は、着信を知らせる信号が受信されると、着信があったことを検出し(S104)、電話種別判定部176は、検出された着信が、公衆電話回線網を利用した通常の電話か、あるいはネットワーク回線を利用したIP電話かを判定する(S106、S108)。この判定は、スマートフォン200からの着信を知らせる信号に基づき行われ、例えば、着信を知らせる信号が着信音声である場合には、当該音声信号を構成するデータフォーマットやデータ種別などから判定する。また、スマートフォン200から、通常の電話かIP電話かを識別する識別信号が車載電子装置100へ送信される場合には、当該識別信号に基づき電話種別を判定する。
【0031】
着信通知部176は、着信検出部174の着信検出に応答して、着信があったことを示す着信音をスピーカ120から出力させるとともに、電話種別判定部176の判定結果に基づき、通常電話用着信通知またはIP電話用着信通知を車載電子装置100の表示部110に表示させる(S110、S112)。なお、着信通知は、通常、割り込み信号として取り扱われるため、例えば、車載電子装置100がナビゲーションやオーディオ再生などを動作させている場合には、そこに着信通知が割り込まれる。
【0032】
図6(A)は、通常電話の着信があったときの通常電話用着信通知を説明する図である。同図に示すように、スマートフォン200に着信があったことに応答して、車載電子装置100のスピーカ120から呼出音が出力され、表示部110には、着信通知画面400が表示される。着信表示画面400には、例えば、発信者の電話番号、アドレス帳などから特定された名前などが示される。さらに、電話接続の拒否を指示するための拒否ボタン410と、電話に応答することを指示するための応答ボタン420とが表示される。ユーザーが応答ボタン420をタッチ入力した場合には、その入力信号が接続手段300を介してスマートフォン200へ送信され、BT HFTによるハンズフリー通話が開始される(S114)。ユーザーが拒否ボタン410をタッチ入力した場合には、その入力信号が接続手段300を介してスマートフォン200へ送信され、スマートフォン200によって回線が切断される(S116)。
【0033】
なお、
図6(A)に示す例は、スマートフォン200の表示画面が車載電子装置100の表示部110にそのまま表示される、いわゆるミラーリンクを示している。ミラーリンクでは、車載電子装置100は、あたかもスマートフォン200の遠隔用の入出力装置として機能する。このため、車載電子装置100は、着信通知画面400を用意する必要はない。他方、車載電子装置100がミラーリンク以外の態様でスマートフォン200に接続されている場合には、車載電子装置100側で着信通知画面400が予め用意され、着信通知部178によって着信通知画面400が独自に表示される。
【0034】
着信がIP電話によるものと判定された場合にも、着信通知部178は、IP電話用着信通知を実行し、呼出音を音声出力するとともに、表示部110に着信通知画面を表示させる(S118)。
図6(B)は、IP電話の着信時の着信通知画面の表示例である。着信通知画面500には、発信者やその電話番号等の情報が示される。さらに着信通知画面500には、電話接続の拒否を指示するための拒否ボタン510と、スマートフォン200のハンズフリー機能を有効にすることを指示するためのハンズフリー要求ボタン520とが含まれる。もし、ユーザーが着信電話に応答する場合には、ハンズフリー要求ボタン520を押下することになる。さらに着信通知画面500には、着信があったIP電話のアプリケーションを識別するためのアイコン530が表示されるようにしてもよい。
【0035】
ハンズフリー要求ボタン520が入力されると(S120)、BT HFT切断部180(
図3を参照)は、この入力に応答して、スマートフォン200との間で接続されていたBT HFTのプロファイルを切断し(S122)、HFT有効要求部182は、スマートフォン本体のハンズフリー機能(例えば、スマートフォン内蔵のスピーカを利用する機能)を有効にするための制御信号をスマートフォン200へ送信する。なお、BT HFTの切断、およびハンズフリー機能を有効にするための制御信号の送信の順序は、逆であってもよい。スマートフォン200は、この制御信号に応答して、IP電話に接続する処理をし、かつ相手先からの音声信号をスマートフォン200のスピーカから出力させ、運転者の音声をスマートフォン200の内蔵マイクから入力させ、ハンズフリー通話を開始する(S126)。
【0036】
なお、
図6(B)に示す着信通知画面500は、一例であり、必ずしもこのような表示に限定されるものではない。例えば、ハンズフリー要求ボタン520の表示態様等は任意であり、要は、ユーザーにとって、スマートフォン200のハンズフリー通話を有効にすること、あるいはスマートフォン200のハンズフリー通話への切替をすること等が認識できるものであればよい。また、
図6(B)の着信通知画面500では、
図6(A)の着信通知画面400で表示された応答ボタン400を、グレイアウトもしくは消去しているが、これは、ユーザーに、BT HFTによるハンズフリー通話を利用することを防止する、または積極的に利用することを勧めないようにするためである。
【0037】
さらに上記したように、車載電子装置100がミラーリンクとしてスマートフォン200に接続される場合には、着信通知画面500の画像データ等は、スマートフォン200によって用意される。ミラーリンクでない場合には、車載電子装置100が着信通知画面500の画像データ等を予め用意し、IP電話の着信時に、着信通知部178が着信通知画面500の画像データを読み出し、表示させる。
【0038】
このように本実施例のハンズフリー通話システムによれば、車載電子装置がスマートフォンとBT HFT接続されているときに、IP電話の着信があった場合には、BT HFT接続を自動的に切断し、スマートフォン本体のハンズフリー機能を利用させるようにしたので、BT HFTによるIP電話のアプリケーションやスマートフォンのOSに起因する通話障害を回避することができる。同時、車載電子装置によってスマートフォン本体のハンズフリー機能を自動的に有効にすることで、スマートフォンによる通話が可能になるため、従来のように、路肩に車を止める等、通話時のユーザーの煩雑さを軽減することができる。
【0039】
なお、IP電話に応答した場合、BT HFT接続が切断されてしまうため、これを自動的に復帰させることが望ましい。例えば、車載電子装置100は、BT HFT接続が切断されている場合には、一定の時間間隔で、スマートフォン200に対しBT HFTの再接続を行うようにしてもよい。あるいは車載電子装置100は、スマートフォン200におけるIP電話が終了したか否かを監視するための監視用プログラムを搭載し、BT HFT接続が切断された場合には、監視用プログラムを実行し、IP電話の終了を検出し、その終了が検出されたことに応答して、BT HFT接続部172によるBT HFT接続を行うようにしてもよい。
【0040】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。第1の実施例では、IP電話の着信があったと判定された場合には、IP電話のアプリケーションの種別に関わらず自動的にBT HFT接続を切断し、かつスマートフォン本体のハンズフリー通話機能を有効にさせるようにしたが、第2の実施例では、ユーザーの過去のIP電話に関する操作履歴情報に基づきIP電話のアプリケーションの種別に応じた着信通知画面を表示する。
【0041】
市場には、数多くのIP電話のアプリケーションが出回っている。このため、スマートフォン200にも複数のIP電話のアプリケーションが搭載されることがある。この場合、IP電話のアプリケーションによってBT HFTに対応しているものと、非対応のものが混在する。ユーザーにとって、経験則上あるいは取得した情報により、特定のIP電話のアプリケーションがBT HFTに対応していることを知っている場合があり、このような場合、ユーザーは、スマートフォン本体のハンズフリー通話機能を利用しないし、また、利用することは得策ではない。
【0042】
図7は、第2の実施例による、IP電話の着信があったときの着信表示画面の表示例である。第2の実施例の着信表示画面600は、
図6(A)および
図6(B)の着信表示画面を組み合わせた態様を備えている。すなわち、着信表示画面600には、拒否ボタン410、応答ボタン420、BT HFT接続を切断しスマートフォン本体のHFTを有効にすることを要求する要求ボタン520とが含まれる。IP電話の着信があったとき、ユーザーが応答ボタン420を選択した場合には、通常の電話の着信があったときと同様に、BT HFTによるハンズフリー通話が開始される。ユーザーがスマートフォン本体のハンズフリー通話機能を有効にする要求ボタン520を選択した場合には、BT HFTが切断され、かつスマートフォン本体のハンズフリー通話機能を有効にする信号がスマートフォン200へ送信される。このように、着信表示画面600は、応答ボタン400または要求ボタン520の双方を表示し、IP電話に応答する際に、車載電子装置またはスマートフォンのハンズフリー通話機能を利用するかの最終的な判断はユーザーに委ねられる。
【0043】
図8は、第2の実施例によるハンズフリー通話制御の機能的な構成を示すブロック図である。図中、
図3の構成と同一のものについては同一参照番号を付し、その説明を省略する。IP電話識別部184は、スマートフォン200に搭載されているIP電話のアプリケーションのうち、着信があったIP電話のアプリケーションを識別する。例えば、IP電話の着信があったとき、IP電話識別部184は、着信を知らせる信号のデータ構造を解読することによりIP電話のアプリケーションを識別したり、あるいはスマートフォン200から送信されるIP電話のアプリケーションを識別する識別情報に基づきIP電話のアプリケーションを識別する。
【0044】
操作情報記憶部186は、着信があったIP電話のアプリケーション毎に、ユーザーが応答ボタン400または要求ボタン520のいずれを選択したかを記録し、カウントする。例えば、
図9に示すように、スマートフォン200に、A〜Nの複数のIP電話のアプリケーションが搭載されていた場合に、ユーザーが着信に応答するときに選択した応答ボタンまたは要求ボタンの操作履歴回数が蓄積される。ここには、時間情報は含まれていないが、好ましくは、現在時刻から一定期間内の操作履歴情報が蓄積され、一定期間よりも古い操作履歴情報は削除される。
【0045】
BT HFT対応判定部188は、操作情報記憶部186に記憶された操作履歴情報に基づき、着信のあったIP電話のアプリケーションがBT HFTに対応しているか否かを判定する。例えば、応答ボタンの選択回数が、要求ボタンの選択回数よりも多い場合には、IP電話のアプリケーションがBT HFTに対応していると判定する。その反対の関係であれば、BT HFTに非対応と判定する。また、IP電話のアプリケーションが直近にバージョンアップされた場合には、そのバージョンアップによりBT HFTに対応可能になったことが考えられる。従って、操作履歴の回数による判定ではなく、直近の操作履歴が、応答ボタンを選択している場合には、BT HFTに対応していると判定するようにしてもよい。さらに、ユーザーがBT HFTに対応していると誤って応答ボタンを選択することがある。この場合には、応答ボタンの選択が、要求ボタンの選択よりも過去になるので、この時間関係があれば、操作履歴回数の判定によらず、BT HFTに非対応と判定してもよい。
【0046】
着信通知部178は、BT HFT対応判定部188の判定結果に基づき、着信通知画面を選択する。すなわち、着信のあったIP電話のアプリケーションがBT HFTに対応していると判定された場合には、要求ボタンの表示は不要になるので、
図6(A)に示すような通常の電話のときと同様の着信通知画面400を表示する。他方、BT HFTに非対応であると判定された場合には、
図7に示すようなIP電話用の着信通知画面500を表示する。
【0047】
このように本実施例によれば、ユーザーの操作履歴情報を参照し、着信通知画面の表示に学習効果を持たせることで、ユーザーは、BT HFTに対応しているIP電話のアプリケーションであれば、通常の電話のときと同様に、車載電子装置を利用したハンズフリー通話を行うことができ、BT HFTに非対応のIP電話のアプリケーションのときにのみスマートフォン本体のハンズフリー通話機能を利用することができる。
【0048】
本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形・変更が可能である。