(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の混練機と、前記混練機のそれぞれに冷媒を供給して冷却を行う複数の分岐流路と、前記複数の分岐流路を流通することで加熱された冷媒を合流させ、合流した冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された冷媒を凝縮させながら放熱させ、且つ放熱された熱を蓄熱する蓄熱器と、前記蓄熱器から熱を取り出す蓄熱取出部と、前記蓄熱器で蓄熱に用いられた冷媒の圧力を下げる減圧弁と、前記減圧弁で減圧された冷媒を前記複数の分岐流路に再び分岐させて供給する循環流路と、を備えた廃熱利用装置を用いて混練機の廃熱を利用するに際しては、
前記複数の分岐流路の入側と出側において、前記複数の混練機の運転状況に応じて冷媒の分岐先を切り替えることを特徴とする混練機の廃熱利用方法。
【背景技術】
【0002】
従来より、ゴムなどのプラスチック材料を混練する混練機には、連続式の混練機とバッチ式の混練機とが知られている。連続式の混練機は、ホッパなどの供給部からペレットなどの材料を連続的に供給しつつ混練を行うものであり、混練を絶え間なく連続して行うものである。これに対して、バッチ式の混練機は、材料の投入〜混練〜材料の取出までの一連の手順を繰り返し行いつつ混練を行うものであり、混練と停止とを交互に行うものである。一例を挙げれば、このバッチ式の混練機では、実際に混練する時間に対して、材料の投入や取出にかかる時間が何倍にもなる場合があり、トータルの運転時間に対して実際の混練時間が占める割合が小さいことも珍しくない。
【0003】
ところで、近年は、産業機器の分野においてもさまざまな面で省エネルギが必要であるとされており、混練機で材料を混練した際に発生する廃熱を利用したいというニーズがある。
例えば、特許文献1には、ゴム混練機において、チャンバ内に収容された2本のロータで、ゴムなどの高粘度の材料を混練するバッチ式(密閉式)の混練機が開示されている。この特許文献1の混練機は、チャンバの周囲を覆うように冷却水を通水可能なジャケットを備えており、ジャケットに冷却水を通水することでチャンバやロータを介して混練中の材料の温度を制御することが可能となっている。
【0004】
この特許文献1の冷却機構は、あくまでも混練中の材料を冷却するためのものであり、ジャケット内の冷却水に放熱された熱エネルギを再利用するものではない。
一方、特許文献2には、押出機から水中に押し出された合成樹脂を、水中切断ユニット(ペレタイザ)で水中で粒状に切断する際に、水中に放熱される高温廃熱を熱源として発電などの用途に再利用する方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、混練機で発生する廃熱を利用するに当たり、特許文献2のような連続式の混練機では混練が絶え間なく連続して行われるため、この混練機を熱源とした場合には安定して熱エネルギを回収して利用することが可能となる。
しかし、バッチ式の混練機のように混練と停止とが交互に繰り返される混練機から発生する熱を熱源とする場合は、発熱も間歇的にしか行われない。つまり、バッチ式の混練機の場合には、熱源から発生する熱量が安定せず、冷媒(冷却水)の温度が運転状況に応じて大きく変動する。その結果、廃熱を温水で利用しようとすれば温水の温度が変動したり、廃熱を発電に利用しようとすれば発電効率が非常に低くなったりして、廃熱を有効に利用することが非常に困難になる。
【0007】
つまり、バッチ式の混練機のように熱の発生が間歇的にしか行われない混練機に対しては、発生する廃熱を平均化(安定化)させる何らかの手段を設けることが必要不可欠となる。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、熱の発生が安定して行われない混練機に対しても、廃熱を利用する際には安定して熱エネルギを取り出すことができ、混練機で発生する廃熱を効率良く利用することができる混練機の廃熱利用装置及び廃熱利用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の混練機の廃熱利用装置は以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の混練機の廃熱利用装置は、複数の混練機と、前記混練機のそれぞれに冷媒を供給して冷却を行う複数の分岐流路と、前記複数の分岐流路を流通することで加熱された冷媒を合流させ、合流した冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された冷媒を凝縮させながら放熱させ、且つ放熱された熱を蓄熱する蓄熱器と、前記蓄熱器から熱を取り出す蓄熱取出部と、前記蓄熱器で蓄熱に用いられた冷媒の圧力を下げる減圧弁と、前記減圧弁で減圧された冷媒を前記複数の分岐流路に再び分岐させて供給する循環流路と、を備えていて、前記複数の分岐流路には、前記複数の混練機の運転状況に応じて冷媒の分岐先を切り替える切替部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
なお、好ましくは、前記圧縮機の上流側を流れる冷媒と、前記蓄熱器の下流側を流れる冷媒とを熱交換する熱交換器を有するとよい。
なお、好ましくは、前記切替部は、混練機の分岐流路の入側と出側とにそれぞれ切替弁を備えており、前記2つの切替弁を、複数の混練機の運転状況に応じて切り替えるように構成されているとよい。
【0010】
なお、好ましくは、前記蓄熱器は、他の蓄熱器と交換可能とされているとよい。
一方、本発明の混練機の廃熱利用方法は、複数の混練機と、前記混練機のそれぞれに冷媒を供給して冷却を行う複数の分岐流路と、前記複数の分岐流路を流通することで加熱された冷媒を合流させ、合流した冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された冷媒を凝縮させながら放熱させ、且つ放熱された熱を蓄熱する蓄熱器と、前記蓄熱器から熱を取り出す蓄熱取出部と、前記蓄熱器で蓄熱に用いられた冷媒の圧力を下げる減圧弁と、前記減圧弁で減圧された冷媒を前記複数の分岐流路に再び分岐させて供給する循環流路と、を備えた廃熱利用装置を用いて混練機の廃熱を利用するに際しては、前記複数の分岐流路間で、前記複数の混練機の運転状況に応じて冷媒の分岐先を切り替えることを特徴とするものである。
また、本発明の混練機の廃熱利用装置の最も好ましい形態は、複数の混練機と、前記混練機のそれぞれに冷媒を供給して冷却を行う複数の分岐流路と、前記複数の分岐流路を流通することで加熱された冷媒を合流させ、合流した冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された冷媒を凝縮させながら放熱させ、且つ放熱された熱を蓄熱する蓄熱器と、前記蓄熱器から熱を取り出す蓄熱取出部と、前記蓄熱器で蓄熱に用いられた冷媒の圧力を下げる減圧弁と、前記減圧弁で減圧された冷媒を前記複数の分岐流路に再び分岐させて供給する循環流路と、を備えていて、前記複数の分岐流路には、前記複数の混練機の運転状況に応じて冷媒の分岐先を切り替える切替部が設けられており、前記切替部は、混練機の分岐流路の入側と出側とにそれぞれ切替弁を備えており、前記2つの切替弁を、複数の混練機の運転状況に応じて切り替えるように構成されていることを特徴とする。
また、本発明の混練機の廃熱利用方法の最も好ましい形態は、複数の混練機と、前記混練機のそれぞれに冷媒を供給して冷却を行う複数の分岐流路と、前記複数の分岐流路を流通することで加熱された冷媒を合流させ、合流した冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された冷媒を凝縮させながら放熱させ、且つ放熱された熱を蓄熱する蓄熱器と、前記蓄熱器から熱を取り出す蓄熱取出部と、前記蓄熱器で蓄熱に用いられた冷媒の圧力を下げる減圧弁と、前記減圧弁で減圧された冷媒を前記複数の分岐流路に再び分岐させて供給する循環流路と、を備えた廃熱利用装置を用いて混練機の廃熱を利用するに際しては、前記複数の分岐流路間で、前記複数の混練機の入側と出側において、運転状況に応じて冷媒の分岐先を切り替えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の混練機の廃熱利用装置及び廃熱利用方法によれば、熱の発生が安定して行われない混練機に対しても、廃熱を利用する際には安定して熱エネルギを取り出すことができ、混練機で発生する廃熱を効率良く利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下、本発明の混練機1の廃熱利用装置2、及びこの混練機1の廃熱利用方法の実施形態を、図面に基づき詳しく説明する。
図1は、第1実施形態の廃熱利用装置2を模式的に示したものである。
図1に示すように、第1実施形態の廃熱利用装置2は、複数の混練機1と、これらの混練機1のそれぞれに冷媒を供給して冷却を行う複数の分岐流路3とを備えている。また、この廃熱利用装置2は、これら複数の分岐流路3を流通することで加熱された冷媒を合流させ、合流した冷媒を圧縮する圧縮機4と、圧縮機4で圧縮された冷媒を凝縮させながら放熱させ、且つ放熱された熱を蓄熱する蓄熱器5とを有している。さらに、廃熱利用装置2には、蓄熱器5から熱を取り出す蓄熱取出部6と、蓄熱器5で蓄熱に用いられた冷媒の圧力を下げる減圧弁7と、減圧弁7で減圧された冷媒を前記複数の分岐流路3に再び分岐させて供給する循環流路8と、が設けられている。
【0014】
次に、廃熱利用装置2を構成する混練機1、分岐流路3、圧縮機4、蓄熱器5、蓄熱取出部6、減圧弁7、及び循環流路8について説明する。
本発明の廃熱利用装置2に用いられる混練機1は、合成樹脂の材料を混練する設備であり、材料の混練時に熱を発生するものである。この混練機1には、材料を混練する「混練機」だけでなく混練した材料を押し出す「押出機」も含まれている。また、混練機1は、図示は省略するが、内部が空洞とされたチャンバと、このチャンバ内に収容されてチャンバ内に供給された材料を混練するロータとを有している。このロータとチャンバとは非常に小さな間隔をあけて配備されており、バレルに対してロータを回転させると、バレル内に供給された材料に大きなせん断力が加えられて材料が混練される。
【0015】
このとき、混練機1では、ロータとチャンバとの間に大きな摩擦力が発生し、また材料に大きなせん断力が加えられて、混練機1の内部で大きな発熱が起こる。本発明の廃熱利用装置2は、このようにして混練機1の内部で発生した大きな発熱を廃熱として混練機1の外側に取り出して再利用する構成とされている。
なお、本発明の廃熱利用装置2は、バッチ式の混練機1や押出機のように発熱が間歇的に発生するような混練設備に特に好ましく設けられる。このようなバッチ式の混練機1では、材料の供給及び取出と、材料の混練とが交互に繰り返し行われるので、混練時の発熱が間歇的にしか行われず、熱源としての安定性がない。このような発熱が連続して行われない熱源に対しては通常は廃熱利用が困難となることが多いが、本発明の廃熱利用装置2のように回収された熱エネルギを蓄熱できる構成であれば、廃熱の利用は十分に可能となる。
【0016】
また、本発明の廃熱利用装置2が設けられる混練設備が、上述したバッチ式でなく、連続式の混練機1や押出機の場合であっても、小ロットの材料を続けて混練する場合には、材料の供給・取出と、混練とが短時間で繰り返し行われる場合があり、発生する熱が不連続となることもある。このような場合にも、本発明の廃熱利用装置2は好適に用いられる。
【0017】
なお、以降では、上述したようなバッチ式の混練機1が3基設けられた混練設備に取り付けられて、これらの混練機1から発生する熱エネルギを廃熱として利用するものを例に挙げて、本発明の廃熱利用装置2を説明する。
上述した複数の混練機1のそれぞれには、分岐流路3が設けられている。この分岐流路3は、
図2の(4)→(1)に示すように、混練機1の内部に液体の冷媒を流通させて、混練機1の内部で発生した熱エネルギを用いて冷媒を気化させることにより、冷媒の気化熱を利用して混練機1の内部の熱エネルギを回収するものである。分岐流路3は、混練機1の周囲に配設された配管から構成されており、混練機1の内部に冷媒を流通できるようになっている。具体的には、分岐流路3は、混練機1を構成するバレルの内部やロータの内部を巡回するように設けられており、混練機1の内部に液体の冷媒を送り込んで冷媒を気化させることにより熱エネルギを確実に回収する構成となっている。
【0018】
これら複数の分岐流路3は、混練機1の上流側において1本の循環流路8から複数に分岐し、それぞれの混練機1に1経路ずつ配設されるようになっている。本実施形態の混練設備では、3基の混練機1に対応して分岐流路3も3経路設けられており、それぞれの混練機1で発生した熱エネルギを個別に回収できるようになっている。これら複数の分岐流路3は、混練機1の下流側において再び1本の循環流路8に合流しており、循環流路8では個々の分岐流路3を流通してきた冷媒が1つに集約されて流れるようになっている。
【0019】
なお、これら複数の分岐流路3に分岐する位置、及び複数の分岐流路3が合流する位置には、本発明の特徴である切替部が設けられている。この切替部については、後ほど詳しく述べる。
循環流路8は、上述した複数の分岐流路3の出側から、圧縮機4、蓄熱器5、減圧弁7を通って、複数の分岐流路3の入側までを結ぶものであり、上述した複数の分岐流路3と組み合わせられることで冷媒を循環させつつ何回にも亘って混練機1と蓄熱器5との間を巡回させる流路を形成可能とされている。循環流路8の途中には、冷媒の流通方向に沿って、上流側から圧縮機4、蓄熱器5、減圧弁7が設けられており、上述した複数の分岐流路3で気化した冷媒を、減圧弁7で減圧して液体の冷媒に戻し、液体の冷媒を複数の分岐流路3に再び分岐させて供給できるようになっている。
【0020】
なお、上述した分岐流路3や循環流路8を流通する冷媒には、潜熱が大きく、低温で揮発する有機化合物を好ましくは用いられる。このような冷媒には例えばR245ca(1、1、2、2、3-ペンタフルオロプロパン)のような代替フロンなどを用いることができる。
圧縮機4は、
図2の(1)→(2)に示すように、複数の分岐流路3を流通することで熱エネルギを回収した気体の冷媒を圧縮して、冷媒の温度を蓄熱器5で十分に熱交換可能な温度にまで上昇させるものである。このような圧縮機4には、スクリュ式、遠心式、あるいは往復式などのコンプレッサを用いることができる。圧縮機4で圧縮された冷媒は、循環流路8を通って蓄熱器5に流通される。
【0021】
蓄熱器5は、循環流路8を流通する冷媒の熱エネルギを蓄熱するものである。具体的には、この蓄熱器5は、
図2の(2)→(3)に示すように、冷媒を凝縮させることで放熱された熱エネルギを蓄熱材に蓄熱する構成となっていて、蓄熱器5の内部には熱エネルギを蓄熱可能な蓄熱材が収容されている。蓄熱材には、例えばパラフィンやエリスリトールのように、固体から液体に相変化する際の潜熱を利用して蓄熱を行うものを用いることができる。また、蓄熱材には、多孔質の陶磁器やレンガなどのように熱容量が大きな材料を用いて、この熱容量が大きな材料に直接熱エネルギを蓄えるものを用いても良い。この蓄熱器5に蓄熱された熱エネルギは、循環流路8とは別の系統を通って蓄熱器5に熱媒を送る蓄熱取出部6を用いて取り出すことができ、取り出された廃熱を温水として利用したり発電に利用したりすることが可能となっている。
【0022】
蓄熱取出部6は、蓄熱器5に熱媒を供給する供給配管13と、この供給配管13に沿って熱媒を蓄熱器5に圧送するポンプ14と、を有している。つまり、蓄熱取出部6は、蓄熱器5の蓄熱材に供給配管13を経由して熱媒を送り、送られた熱媒を気化させるなどして蓄熱器5に蓄えられた熱エネルギを熱媒側に移動させることにより、蓄熱された熱を熱媒と共に蓄熱器5の外部に取り出して、取り出した熱エネルギを廃熱として利用できるようになっている。
【0023】
一方、蓄熱器5で熱エネルギが回収された冷媒は、循環流路8に沿って減圧弁7に送られる。
減圧弁7は、
図2の(3)→(4)に示すように、冷媒を減圧させるものであり、減圧された冷媒は、分岐流路3を通じてそれぞれの混練機1に送られ、再び混練機1で発生した熱エネルギの回収に用いられる。
【0024】
ところで、本発明の廃熱利用装置2は、上述した複数の分岐流路3に、複数の混練機1の運転状況に応じて冷媒の分岐先を切り替える切替部を有しており、この切替部を備えることが本発明の廃熱利用装置2の特徴となっている。具体的には、この切替部は、混練機1の分岐流路3の入側と出側とにそれぞれ切替弁15を備えており、これら2つの切替弁15を複数の混練機1の運転状況に応じて切り替えるように構成されている。
【0025】
次に、本発明の廃熱利用装置2の特徴である切替部について詳しく説明する。
切替部は、それぞれの分岐流路3を流れる冷媒の温度を計測する温度計測部16と、この温度計測部16で計測された冷媒の温度に基づいて、この温度計測部16が設けられた分岐流路3における冷媒の流通を制御する制御部17と、この制御部17からの指令に基づいて冷媒の流通を個別に流通又は遮断可能な切替弁15とを有している。
【0026】
温度計測部16は、それぞれの混練機1を通って流れる冷媒の温度を、混練機1よりも下流側で計測する温度センサである。この温度計測部16で計測される冷媒の温度は、混練機1が混練を行っている場合には混練機1で発生する熱により加熱されて高温となり、また混練機1が材料の供給や取り出しなどで停止している場合には加熱されないので低温となる。つまり、温度計測部16で計測される冷媒の温度が高温であるか低温であるかで、それぞれの分岐流路3が配設された混練機1の運転状態を把握することが可能となる。
【0027】
制御部17は、それぞれの分岐流路3に設けられた温度計測部16で計測された温度に応じて、各分岐流路3に設けられた切替弁15を切り替える構成とされている。具体的には、制御部17には、過去の計測データなどに基づき混練機1で混練が行われていることを判断可能な温度が閾値として予め入力されている。そして、制御部17では、温度計測部16で計測された温度が予め入力された閾値に対して「閾値以上」とされる場合、言い換えればこの温度計測部16が設けられた分岐流路3の混練機1が混練を行っていると判断できる場合は、切替弁15に「開」の指令を送る。また、制御部17では、温度計測部16で計測された温度が予め入力された閾値に対して「閾値未満」とされる場合、言い換えればこの温度計測部16が設けられた分岐流路3の混練機1の運転が停止中であると判断できる場合は、切替弁15に「閉」の指令を送る。
【0028】
このような制御部17を採用すれば、蓄熱器5に送られる冷媒はすべて混練機1で加熱されたものとなり、それぞれの分岐流路3から循環流路8に合流する冷媒の温度が必要以上に低くなることが抑制され、圧縮機4や蓄熱器5に一定以上の温度の冷媒を安定して供給することが可能となる。言い換えれば、圧縮機4に送られる冷媒の温度が低くなり過ぎることがないので、蓄熱器5で冷媒から熱エネルギを安定して取り出すことが可能となる。
【0029】
切替弁15は、複数に分岐した分岐流路3のそれぞれに対して、冷媒の流通を遮断可能なものである。このような切替弁15には、制御部17からの指令などにより電磁式の弁体を個別に開閉可能な電磁式の遮断弁を複数の流路のそれぞれに備え、これらの遮断弁により複数の流路の中から特定の流路だけを択一的に遮断可能なものなどを用いることができる。
【0030】
また、切替弁15は、混練機1の入側の分岐流路3だけでなく出側の分岐流路3にも設けられるのが好ましい。このように切替弁15を出側の分岐流路3にも設けておけば、運転停止中の混練機1に配設された分岐流路3にある低温の冷媒が、分岐流路3同士の合流位置から圧縮機4や蓄熱器5側に流れ込むことがなくなり、蓄熱器5において冷媒から熱エネルギをさらに安定して取り出すことが可能となる。
【0031】
次に、上述した第1実施形態の廃熱利用装置2を用いて廃熱を回収して利用する方法、言い換えれば本発明の廃熱利用方法を
図3を用いて説明する。
本発明の混練機1の廃熱利用方法は、上述した第1実施形態の廃熱利用装置2を用いて廃熱を回収するに際して、複数の分岐流路3間で、複数の混練機1の運転状況に応じて冷媒の分岐先を切り替えることを特徴としている。言い換えれば、本発明の廃熱利用方法は、複数の混練機1のうち、混練が行われている混練機1を通る分岐流路3のみから冷媒を圧縮機4や蓄熱器5に送ることで、蓄熱器5で蓄熱に用いられる冷媒の温度を安定化させるものであるということもできる。
【0032】
つまり、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、3基の混練機1に対して、それぞれの分岐流路3を通じて冷媒が供給されている廃熱利用装置2を用いて、廃熱を回収する場合を考える。
循環流路8を流れてきた冷媒は切替部に設けられた上流側の切替弁15で分岐されて各分岐流路3に沿って混練機1に供給され、混練機1の周囲を巡回しつつ流れることで熱交換され、気化(蒸発)される。
【0033】
例えば、ゴムの製造ラインのような製造現場では、3基の混練機1があっても、そのうち1基は混練停止中となっていることが多い。このような場合でも、切替部では、分岐流路3を流れる冷媒の温度を温度計測部16で計測し、温度計測部16で計測された冷媒の温度が所定の温度(閾値)より低い場合は、この分岐流路3が配設された混練機1で混練が行われていないと判断して、切替弁15を「閉」にする。また、残りの2基の混練機1を流れる分岐流路3で、温度計測部16で計測された冷媒の温度が所定の温度以上である場合は、この分岐流路3が配設された混練機1で混練が行われていると判断して、切替弁15を「開」にする。
【0034】
このようにすれば、混練停止中の分岐流路3の冷媒は循環流路8に流れ込まず、混練中の混練機1を通る分岐流路3を流通する冷媒だけが循環流路8に流れ込み、冷媒の温度を所定の温度以上として、圧縮機4で冷媒の圧縮を行ったり、蓄熱器5で安定して熱エネルギを回収したりすることが可能となる。
次に、上述のようにして各混練機1で熱エネルギを回収した気体の冷媒は圧縮機4で圧縮されて高温になる。そして、圧縮機4において圧縮されて高温となった冷媒は蓄熱器5に送られ、蓄熱器5で凝縮される。この蓄熱器5での凝縮の際に冷媒が潜熱に相当する熱エネルギを放熱し、放熱された熱エネルギが蓄熱器5に蓄熱される。具体的には、蓄熱器5では、蓄熱材が相変化するなどして熱を蓄えられるようになっており、相変化などを利用して冷媒から放熱された熱エネルギを蓄熱できるようになっている。
【0035】
一方、蓄熱器5で凝縮されて液体に戻った冷媒は減圧弁7に送られて、減圧弁7でさらに減圧されて再び混練機1に送られて熱回収に利用される。
上述した第1実施形態の廃熱利用装置2であれば、複数の混練機1が複数の分岐流路3に分かれて並列に接続されているため、複数の混練機1のうち一部の混練機1が停止状態となっている場合であっても、蓄熱器5に送られる冷媒の温度を複数の分岐流路3の中で全体として安定させることが可能となる。
【0036】
例えば、
図1に記載した数値は、500kWの発熱がある混練機1を3基並列に備えた混練設備に設けられた廃熱利用装置2において、0.1MPaで25℃の代替フロン(R245ca)を冷媒として用いて混練機1で発生する廃熱を回収した場合のものである。この例では、圧縮機4で冷媒を圧縮する際に228kWのエネルギが必要となるが、間歇運転をする3基の混練機1からでも694kWの熱エネルギが蓄熱器5に廃熱として回収されている。このことから本発明の廃熱利用装置2を用いれば、蓄熱器5に安定して熱エネルギを蓄熱することが可能になると判断される。
【0037】
つまり、複数の分岐流路3のうち、停止状態となっている混練機1を通る分岐流路3を通る冷媒の流通を切替部の切替弁15が遮断し、運転状態の混練機1を通る分岐流路3を通る冷媒の流通だけが許容される。そのため、蓄熱器5に供給される冷媒はいずれも混練機1で熱エネルギを回収して高温となったものだけとなり、蓄熱器5に供給される冷媒の温度を十分に蓄熱が可能な温度に維持することが可能となる。それゆえ、第1実施形態の廃熱利用装置2では、複数の混練機1で不連続的(間歇的)に発生した熱エネルギを用いても、蓄熱器5に安定して熱エネルギを蓄熱することが可能となる。
【0038】
また、第1実施形態の廃熱利用装置2では、分岐流路3で蒸発した比較的低温の冷媒(冷媒ガス)を圧縮して高温にし、次に蓄熱器5で冷媒を凝縮させて放熱させ、放熱された熱を蓄熱器5の蓄熱材に蓄えるようになっている。つまり、第1実施形態の廃熱利用装置2では、放熱された熱エネルギが蓄熱材に一旦蓄熱されてから廃熱利用に用いられるので、廃熱の発生状態によらず廃熱の利用量を平均化することができ、廃熱を安定して利用することが可能となる。
【0039】
さらに、第1実施形態の廃熱利用装置2では、
図3(a)に示されるように混練機1で発生する熱エネルギを一時的に蓄熱器5に蓄熱し、
図3(b)に示されるように廃熱を利用するときにだけ蓄熱取出部6を用いて蓄熱された熱エネルギを取り出す構成とされている。このように蓄熱器5に蓄熱された熱エネルギを必要に応じて取り出して利用する廃熱利用装置2を用いれば、混練機1での熱エネルギの発生状態の影響を受けることなく蓄熱器5から常に安定した熱エネルギを取り出すことが可能となる。それゆえ、第1実施形態の廃熱利用装置2では、廃熱を利用する際には、温度などが安定した温水を利用したり、安定した発電効率で発電することが可能となり、廃熱の再利用する際の利便性を高めることが可能となる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の廃熱利用装置2について説明する。
【0040】
図4に示すように、第2実施形態の廃熱利用装置2は、圧縮機4の上流側を流れる冷媒と、蓄熱器5の下流側を流れる冷媒とを熱交換する熱交換器18を有する構成を採用している。
すなわち、第2実施形態の廃熱利用装置2では、複数の分岐流路3が合流する切替弁15から圧縮機4に向かう循環流路8を流れる冷媒(気体の冷媒)を2次側に供給し、蓄熱器5から減圧弁7に向かう循環流路8を流れる冷媒を1次側に供給し、両冷媒間で熱交換を行う構成となっている。
【0041】
つまり、圧縮機4を流通した気体の冷媒は、圧縮機4で圧縮されて高温となっている。それゆえ、蓄熱器5で蓄熱に用いられた後でも、比較的大きな熱エネルギを余っている場合がある。この余っている熱エネルギは、減圧弁7で膨張される際に失われるので、この失われる熱エネルギを回収すれば、蓄熱器5での熱エネルギの回収効率をさらに高くすることが可能となる。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態の廃熱利用装置2について説明する。
【0042】
図5に示すように、第3実施形態の廃熱利用装置2は、上述した蓄熱器5が他の蓄熱器19と交換可能とされている、言い換えれば上述した循環流路8に設けられる蓄熱器5との間に熱交換が可能な別の蓄熱器19(以降、第2の蓄熱器19という)が蓄熱取出部6に設けられたものである。この第2の蓄熱器19としては例えばカートリッジ式の蓄熱器などのように持ち運び可能な蓄熱器を用いることができる。
【0043】
このような第2の蓄熱器19を用いて混練機1で発生する熱エネルギを持ち運びできるようにすれば、混練機1とは場所的に離れた位置にある設備や施設でも廃熱を利用できるようになり、さらに廃熱の利用範囲を広げることが可能となる。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。