(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の装置は、被検体内における医療器具のおおまかな位置しか把握できないため、心臓の血管の治療には適していない。すなわち、狭窄部位にガイドワイヤを貫通させる際には、細い血管内においてガイドワイヤを押し引きしたり回転させたりする必要があり、一層正確な操作が要求される。特許文献1の装置では、ガイドワイヤの先端と血管との詳細な位置関係を把握することができないため、ガイドワイヤを心臓の血管内において正確に操作することが難しい。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、血管内における医療器具の先端部の詳細な位置を把握しながら医療器具を正確に操作することができる内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、生体内の組織を透過する信号光を出力する光源装置と、血管内に挿入され、前記光源装置から供給された前記信号光を出射する出射窓を先端に有する細長い医療器具と、前記生体内に挿入され、前記生体を撮影して光学画像を取得する撮像部および前記出射窓から出射された前記信号光を検出する検出部を有する内視鏡と、前記撮影部によって撮影された前記光学画像に、前記検出部によって検出された信号光の位置を示すマーカを合成した合成画像を生成する画像処理部とを備える内視鏡システムを提供する。
【0007】
本発明によれば、血管内に挿入された医療器具の先端部が光学画像の視野に含まれる位置に内視鏡を配置した状態で、光源装置から医療器具に信号光が供給されると、照射窓から出射された信号光が血管の外側に位置する検出部によって検出され、信号光の検出位置にマーカが付された合成画像が画像処理部によって生成される。これにより、操作者は、合成画像において高倍率で鮮明に撮影されている血管の光学像とマーカとから、血管内における医療器具の先端部の詳細な位置を把握しながら、医療器具を正確に操作することができる。
【0008】
上記発明においては、前記光源装置が、近赤外光または赤外光を前記信号光として出力してもよい。
このようにすることで、近赤外光または赤外光は組織に対して高い透過率を有するので、血管内の出射窓から血管外の検出部まで到達する信号光の光量を増大し、信号光を高い感度で検出することができる。
【0009】
また、上記発明においては、前記光源装置が、前記生体の色とは異なる色の可視光を前記信号光として出力してもよい。
このようにすることで、色の違いに基づいて信号光を生体とは容易に区別して検出することができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記撮像部が、前記出射窓から前記信号光が出射されているときと、前記出射窓から前記信号光が出射されていないときとに前記光学画像を取得し、前記画像処理部が、前記撮像素子によって取得された2つの前記光学画像の差分が所定の閾値以上である領域を示す前記マーカを作成してもよい。
このようにすることで、撮像部が検出部を兼ねた構成において、撮像部によって生体および信号光を同時に撮影することができる。また、光学画像から信号光を精度良く抽出し、マーカを正確な位置に付すことができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記内視鏡が、前記生体に照明光を照射する照明部を備え、前記撮像部は、前記照明部によって前記照明光が前記生体に照射されていない状態で、前記2つの光学画像を取得してもよい。
このようにすることで、信号光が撮像部によって高感度かつ高SN比で検出されるので、光学画像から信号光を精度良く抽出することができる。
【0012】
上記発明においては、前記医療器具が、その内部に長手方向に沿って配置され先端に前記出射窓を有する導光部材を備えていてもよい。
このようにすることで、医療器具の基端から先端まで簡易な構成で信号光を伝達することができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記医療器具が、側面に長手方向に配列された複数の前記出射窓をさらに有していてもよい。
このようにすることで、複数の出射窓から出射された信号光は、ガイドワイヤの形状に沿って配列されるので、合成画像における複数のマーカの配列から血管内におけるガイドワイヤの形状を特定することができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記医療器具が、側面に周方向に配列された複数の前記出射窓をさらに有していてもよい。
このようにすることで、内視鏡に対する医療器具の周方向の向きに依らずに、信号光を検出部によって常に検出することができる。
【0015】
また、上記発明においては、前記医療器具は、前記信号光が透過可能な透光部を長手方向の複数の位置に有し、前記導光部材が、前記医療器具の長手方向に移動可能に設けられていてもよい。
このようにすることで、導光部材の先端を医療器具の長手方向に移動させることによって、検出部によって検出される信号光の位置が、医療器具の長手方向に沿って移動する。これにより、合成画像におけるマーカの移動軌跡から血管内におけるガイドワイヤの形状を特定することができる。
【0016】
また、上記発明においては、前記検出部および前記撮影部が、前記生体からの光を撮影する共通の撮像素子を備えていてもよい。
このようにすることで、光学画像と信号光との位置の対応付けが容易になり、合成画像の生成処理を簡易にすることができる。
【0017】
また、上記発明においては、前記生体の心電信号を検出する心電信号検出部を備え、前記検出部および前記撮像部が、前記心電信号検出部によって検出された心電信号の周期の同一の位相において、前記信号光の検出および前記光学画像の取得を行ってもよい。
このようにすることで、医療器具を心臓の血管内に挿入し、内視鏡によって心臓を観察する場合に、心臓が拍動している状態であっても、検出部および撮像部に対して心臓が同一の位置関係にあるときに、信号光の検出および光学画像の取得を行うことができる。
【0018】
また、上記発明においては、前記検出部によって検出された信号光の強度の上昇を報知する報知手段を備えていてもよい。
このようにすることで、医療器具の先端と血管壁との距離が近くなる程、検出部によって検出される信号光の強度が高くなる。したがって、医療器具の先端が血管壁に接触している場合などに、操作者は、報知手段による報知に基づいてその旨を迅速に認識することができる。
【0019】
また、上記発明においては、前記医療器具が、ガイドワイヤ、カテーテルまたは血管内視鏡であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、血管内における医療器具の先端部の詳細な位置を把握しながら医療器具を正確に操作することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1の実施形態)
以下に、本発明の第1の実施形態に係る内視鏡システム100について
図1から
図6を参照して説明する。
本実施形態に係る内視鏡システム100は、
図1に示されるように、光ファイバ(導光部材)2を内部に有するガイドワイヤ(医療器具)1と、光ファイバ2に光を供給する光源装置3と、内視鏡装置4とを備えている。
【0023】
ガイドワイヤ1は、十分に細い外径と可撓性とを有しており、心臓の血管に挿入可能である。光ファイバ2は、筒状のガイドワイヤ1の内部に長手方向に沿って配置されている。光ファイバ2の先端2aは、
図2に示されるように、ガイドワイヤ1の先端1aからわずかに突出しており、光ファイバ2の先端(出射窓)2aから出射された信号光がガイドワイヤ1の先端部近傍へ拡散することによって、ガイドワイヤ1の先端部が光るようになっている。なお、光ファイバ2の先端2aをガイドワイヤ1の先端1aから突出させずに、拡散用のレンズ等をガイドワイヤの先端1aに設けてもよい。
光源装置3は、血管壁や脂肪などの組織を透過する波長を有する信号光を出力し、光ファイバ2の基端に供給する。
【0024】
内視鏡装置4は、内視鏡5と、該内視鏡5に白色観察可能な照明光を供給する照明装置6と、光源装置3、内視鏡5および照明装置6に接続されたビデオプロセッサ7と、該ビデオプロセッサ7から出力された画像を表示するモニタ8とを備えている。
内視鏡5は、細長い挿入部10と、該挿入部10の基端側に設けられた操作部11とを備えている。
【0025】
挿入部10は、十分に細い外径と可撓性とを有しており、心臓と該心臓を包む心膜との間の空間(心膜腔)に挿入可能である。挿入部10の先端部には、
図3に示されるように、照明光学系(照明部)12と撮像素子(検出部、撮像部)13とが設けられている。照明光学系12は、照明装置6から供給された照明光を生体に照射する。撮像素子13は、生体の表面において反射された照明光と、ガイドワイヤ1の先端部で光る信号光とを撮影し、得られた画像情報をビデオプロセッサ7に送信する。
【0026】
操作部11は、後述する合成画像G4の取得を指示する撮影スイッチ14を備え、撮影スイッチ14が押下されたときに合成画像生成信号をビデオプロセッサ7に出力する。
【0027】
ビデオプロセッサ7は、撮像素子13によって取得された画像情報から画像を生成する画像処理部15と、光源装置3、照明装置6、撮像素子13および画像処理部15を制御する制御部16とを備えている。
制御部16は、通常動作において、照明装置6から内視鏡5に照明光を供給させた状態で撮像素子13に撮影させ、該撮像素子13から受け取った画像情報を画像処理部15に送る。画像処理部15は、制御部16から受け取った画像情報から、生体の白色光画像である内視鏡画像(光学画像)を生成してモニタ8に出力する処理を連続して繰り返す。これにより、モニタ8には、生体の内視鏡画像のリアルタイムの動画が表示される。
【0028】
また、制御部16は、内視鏡5から合成画像生成信号を受け取ったときに、ガイドワイヤ1の先端部の位置を示すマーカMを内視鏡画像に付した合成画像G4を生成する合成画像撮影動作を実行させる。
【0029】
この合成画像撮影動作について
図4および
図5を参照して説明する。
制御部16は、撮影スイッチ14が押下されて合成画像撮影信号を受け取ると、まず、
図4に示されるように、照明装置6から内視鏡5への照明光の供給を停止させた状態で、撮像素子に2回続けて撮影させる。ただし、1回目は、光源装置3から光ファイバ2へ信号光Lが供給されていない状態で、2回目は、光源装置3から光ファイバ2へ信号光Lが供給されている状態で、撮影を実行させる。これにより、
図5(a)に示されるように、全体にわたって暗い第1のフレーム画像G1と、
図5(b)に示されるように、ガイドワイヤ1の先端部に対応する、信号光Lの照射領域のみが明るい第2のフレーム画像G2とが、画像処理部15において生成される。
図5(a)〜(d)の画像G1〜G4は、ガイドワイヤ1が挿入されている血管Aを撮影したものである。
【0030】
次に、制御部16は、照明装置6から内視鏡5へ照明光を供給させた状態で、撮像素子13に撮影させる。これにより、
図5(c)に示されるように、生体の白色光画像である第3のフレーム画像が、画像処理部15において生成される。
【0031】
画像処理部15は、第2のフレーム画像G2から第1のフレーム画像G1を減算し、得られた階調値の差分が所定の閾値以上である領域を抽出する。これにより、第2のフレーム画像G2から信号光Lが抽出される。画像処理部15は、抽出された信号光Lの位置を示すマーカMを作成し、作成されたマーカMを第3のフレーム画像G3に合成することにより、
図5(d)に示されるように、合成画像G4を生成する。なお、
図5(d)においては、マーカMとして、信号光Lの抽出領域を囲む円が示されているが、マーカMの種類はこれに限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0032】
次に、このように構成された内視鏡システム100の作用について、心臓Bの血管Aの狭窄部位を治療する場合を例に挙げて説明する。
本実施形態に係る内視鏡システム100を用いて心臓Bの血管Aの狭窄部位を治療するには、まず、操作者は、モニタ8に表示されている内視鏡画像を観察しながら内視鏡5の挿入部10を経皮的に心膜腔内に挿入し、
図6に示されるように、狭窄部位が観察される位置に挿入部10の先端を位置決めする。次に、操作者は、ガイドワイヤ1を、例えば、大腿動脈または大腿静脈から大動脈を経由して、冠状動脈のような心臓Bの血管Aに挿入し、X線透視画像によってガイドワイヤの位置を確認しながら狭窄部位までガイドワイヤ1を導入する。
【0033】
操作者は、狭窄部位近傍において、血管A内におけるガイドワイヤ1の先端の位置を確認したいときに、撮影スイッチ14を押下する。これにより、内視鏡システム100は、通常動作を中断して合成画像取得動作を実行し、合成画像G4をモニタ8に表示する。このときに、血管A内に位置するガイドワイヤ1の先端部で光る信号光Lは、組織を透過して心臓Bの外側まで伝搬し、撮像素子13によって検出され、合成画像G4においてマーカMによって示される。
【0034】
ここで、合成画像取得動作において、信号光Lの出射および検出の両方が、生体外からの外来光および照明光が存在しない暗い心膜腔内において行われる。したがって、血管A内で光っている信号光Lは、撮像素子13によって、高い感度でかつ高いSN比で検出され、第2のフレーム画像G2から高い精度で抽出される。
【0035】
操作者は、モニタ8に表示された合成画像G4のマーカMの位置から、血管A内におけるガイドワイヤ1の先端部の位置を認識することができる。操作者は、血管Aの狭窄部位にガイドワイヤ1を貫通させ、次いで、ステントまたはバルーンをガイドワイヤ1に沿って狭窄部位まで挿入して拡張させることにより、狭窄部位を治療することができる。
【0036】
このように、本実施形態によれば、血管A内に位置するガイドワイヤ1の先端部の位置が、血管Aが高倍率で鮮明に撮影されている合成画像G4においてマーカMによって示されている。したがって、操作者は、合成画像G4に含まれる血管AのうちマーカMが付された位置を注意深く観察しながらガイドワイヤ1を操作することにより、例えば、ガイドワイヤ1の先端が血管壁に強く接触して血管壁が盛り上がる様子などを鮮明に観察することができる。これにより、ガイドワイヤ1の先端部と血管Aとの位置関係を正確に把握しながらガイドワイヤ1を適切に操作することができるという利点がある。
【0037】
なお、本実施形態においては、合成画像G4を連続的に生成して合成画像G4の動画をモニタ8に表示することとしたが、これに代えて、合成画像G4を1回だけ生成して静止画としてモニタ8に表示してもよい。
この場合、内視鏡システム100は、心電信号を取得する心電信号検出部(図示略)をさらに備え、制御部16が、心電信号に基づいて第1〜第3のフレーム画像G1〜G3の取得のタイミングを決定してもよい。
【0038】
心臓Bの周期的な拍動によって、撮像素子13による心臓Bの撮影範囲は変動する。そこで、制御部16は、心電信号の変動周期の同一の位相で、撮像素子13に第1〜第3のフレーム画像G1〜G3の撮影を実行させる。これにより、全てのフレーム画像G1〜G3の視野が同一となる。このようにすることで、より正確な位置にマーカMが付された合成画像G4を生成することができる。
【0039】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る内視鏡システムについて
図7および
図8を参照して説明する。本実施形態においては、第1の実施形態と異なる点について主に説明し、第1の実施形態と共通する構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態に係る内視鏡システムは、光源装置3が、照明光とは異なる波長帯域の信号光Lを光ファイバ2に供給する点、および、合成画像撮影動作において、第1の実施形態と異なっている。
【0040】
光源装置3は、赤外から近赤外の波長を有する信号光Lを光ファイバ2に供給する。したがって、内視鏡5の撮像素子13は、赤外から近赤外の波長帯域に対して感度を有するものが用いられる。赤外から近赤外の光は、組織に対して高い透過率を有するので、血管壁や脂肪などに影響されずに高い効率で血管Aの内部から心臓Bの外部まで伝搬し、撮像素子13によって高い感度で検出される。
【0041】
合成画像撮影動作において、制御部16は、
図7に示されるように、照明装置6から内視鏡5への照明光を供給し続けた状態で、撮像素子に2回続けて撮影させる。ただし、1回目は、光源装置3から光ファイバ2へ信号光Lが供給されていない状態で、2回目は、光源装置3から光ファイバ2へ信号光Lが供給されている状態で、撮影を実行させる。これにより、
図8(a)に示されるように、生体の白色光画像である第1のフレーム画像G1’と、
図8(b)に示されるように、ガイドワイヤ1の先端部に対応する、信号光Lの照射領域が周囲よりも高い階調値を有する第2のフレーム画像G2’とが、画像処理部15において生成される。
【0042】
画像処理部15は、第2のフレーム画像G2’から第1のフレーム画像G1’を減算し、得られた階調値の差分が所定の閾値以上である領域を抽出する。これにより、第2のフレーム画像G2’から信号光Lが抽出される。画像処理部15は、抽出された信号光Lの位置を示すマーカMを作成し、作成されたマーカMを第1のフレーム画像G1’に合成することにより、
図8(c)に示されるように、合成画像G4を生成する。
【0043】
このように構成された本実施形態に係る内視鏡システムによれば、第1の実施形態の効果に加えて、照明光および信号光Lの両方を同時に生体に照射したとしても、信号光Lを照明光とは区別して容易に検出することができる。したがって、照明光のオンオフを繰り返す必要がないので制御を容易にすることができるという利点がある。
【0044】
なお、本実施形態においては、信号光Lとして赤外から近赤外の光を用いることとしたが、これに代えて、心臓Bとは異なる色の可視光を信号光Lとして用いてもよい。例えば、心臓Bは、赤色および黄色を多く含むので、信号光Lとして緑色または青色の光を用いてもよい。このようにすることで、第2のフレーム画像G2’において心臓Bとは異なる色を有する信号光Lを、第2のフレーム画像G2’から容易に抽出することができる。
【0045】
また、信号光Lとして、撮像素子13が特に高い感度を示す波長の光を用いてもよい。このようにすることで、信号光Lは、第2のフレーム画像G2’においてより高い階調値を有するようになるので、第2のフレーム画像G2’から容易に抽出することができる。
【0046】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る内視鏡システムについて
図9から
図12を参照して説明する。本実施形態においては、第1および第2の実施形態と異なる点について主に説明し、第1および第2の実施形態と共通する構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態に係る内視鏡システムは、
図9に示されるように、ガイドワイヤ1’が、長手方向に配列された複数の出射窓1bを側面に有している点において、第1および第2の実施形態と異なっている。
【0047】
ガイドワイヤ1’は、側面の複数の出射窓1bと光ファイバ2の先端2aとから同時に信号光Lを出射する。このようなガイドワイヤ1を用いた場合、合成画像撮影動作において、
図10(b)に示されるように、血管Aに沿って複数の信号光Lが並ぶ第2のフレーム画像G2が生成される。
画像処理部15は、第1および第2の実施形態と同様の処理によって第2のフレーム画像G2内の複数の信号光Lを抽出し、
図10(c)に示されるように、抽出した各信号光Lの位置を示す複数のマーカMを作成して合成画像G4に表示する。このときに、ガイドワイヤ1の先端部で光る信号光Lと、側面の出射窓1bにおいて光る信号光Lとが、別々の色を有することにより、互いに区別可能になっていてもよい。
【0048】
このように構成された本実施形態に係る内視鏡システムによれば、第1の実施形態の効果に加えて、一列に並ぶマーカMの配列から、血管A内におけるガイドワイヤ1の走行経路を特定することができるという利点がある。また、操作者は、血管A内におけるガイドワイヤ1の形状を特定することができるので、ガイドワイヤ1の形状と血管Aの形状とを比較することによって、ガイドワイヤ1の側面が血管壁に対して強く接触していないか否かを確認することができる。
【0049】
なお、本実施形態においては、ガイドワイヤ1’の側面に設けられた複数の出射窓1bが、
図11に示されるように、ガイドワイヤ1’の周方向の異なる位置に、好ましくは螺旋状に配列されていてもよい。
このようにすることで、血管内におけるガイドワイヤ1’の周方向の向きに依らずに、いずれかの出射窓1bから出射された信号光Lを常に撮像素子13によって撮影することができる。
【0050】
さらに、出射窓1bが螺旋状に配列されている場合には、ガイドワイヤ1’を血管A内で周方向に回転させたときに、
図12(a)〜
図12(c)に示されるように、信号光LおよびマーカMがガイドワイヤ1’の回転方向に移動し、この移動から、ガイドワイヤ1’の周方向の向きを特定することができる。したがって、先端部に曲がり癖の付いたガイドワイヤ1’を用いる場合、血管Aが複数に分岐している位置において、ガイドワイヤ1’の先端を所望の方向へ容易に誘導することができ、さらに正確にガイドワイヤ1’を操作することができる。
【0051】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る内視鏡システムについて
図13を参照して説明する。本実施形態においては、第1から第3の実施形態と異なる点について主に説明し、第1から第3の実施形態と共通する構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態に係る内視鏡システムは、
図13に示されるように、光ファイバ2が、ガイドワイヤ1”内において長手方向に移動可能に設けられている点において、第1から第3の実施形態と異なっている。
【0052】
ガイドワイヤ1”は、長手方向の複数の位置に、信号光Lを透過可能な透光部を有している。透光部は、信号光Lに対して透明な材料から構成されたガイドワイヤ1”本体から構成されている。あるいは、ガイドワイヤ1”は、細径のワイヤが螺旋状に巻かれてなり、長手方向に隣接するワイヤ同士の隙間から透光部が構成されていてもよい。
【0053】
このように構成された本実施形態に係る内視鏡システムによれば、操作者が、ガイドワイヤ1”内において光ファイバ2を長手方向に移動させたときに、合成画像G4においてマーカMの位置がガイドワイヤ1”の形状に沿って移動する。したがって、第1の実施形態の効果に加えて、信号光Lの強度が高い光ファイバ2の先端2aを移動することができるので、血管Aの形状をさらに正確に把握することができるという利点がある。
【0054】
なお、第1から第4の実施形態においては、合成画像撮影動作中において、未加工の内視鏡画像に代えて合成画像G4をモニタ8に表示することとしたが、これに代えて、
図14に示されるように、未加工の内視鏡画像G5と並列して合成画像G4を表示してもよい。
このようにすることで、操作者は、未加工の内視鏡画像G5によって、マーカMによって妨げられることなく血管Aを観察することができる。
【0055】
この場合、合成画像G4を、静止画または繰り返し再生される短い期間の動画として、表示してもよい。
心臓Bの拍動によって、心臓Bと挿入部10の先端との相対位置が変動するため、内視鏡画像の視野も変動し、注目している領域が内視鏡画像の視野から外れることもある。このときに、操作者は、合成画像G4を参照することによって、注目している領域を常に確認することができる。
【0056】
また、第1から第4の実施形態においては、画像処理部15において抽出された信号光Lの強度の上昇を報知する報知手段をさらに備えていてもよい。例えば、画像処理部15が、生成するマーカMの態様を信号光Lの階調値に応じて変化させてもよい。
【0057】
ガイドワイヤ1,1’,1”の先端が血管壁に接近している程、撮像素子13によって検出される信号光Lの強度は高くなる。また、ガイドワイヤ1の先端が血管壁を押圧して血管壁が局所的に薄くなっている場合、撮像素子13によって検出される信号光Lの強度はさらに高くなる。このような状況を、操作者は、合成画像G4のマーカMの態様の変化から迅速に認識し、ガイドワイヤ1,1’,1”をさらに的確に操作することができる。
【0058】
また、第1から第4の実施形態においては、医療器具の一例としてガイワイヤ1,1’,1”について説明したが、各実施形態において説明した構成は、カテーテルや血管内視鏡など、血管内に挿入して使用される他の医療器具にも適用可能である。