特許第5988911号(P5988911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988911
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】インバータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20160825BHJP
【FI】
   H02M7/48 F
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-91666(P2013-91666)
(22)【出願日】2013年4月24日
(65)【公開番号】特開2014-217140(P2014-217140A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2015年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】中村 将之
【審査官】 栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−010686(JP,A)
【文献】 特開2009−038885(JP,A)
【文献】 特開平09−233701(JP,A)
【文献】 特開平10−084675(JP,A)
【文献】 特開2013−055747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42−7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流フィルタを介して三相交流を出力するインバータを制御するインバータ制御装置において、
前記交流フィルタの出力電圧値を検出する手段と、
前記交流フィルタの出力電圧値を三相二相変換した後、前記三相交流の基本周波数で回転座標変換した変換電圧値を生成する手段と、
前記変換電圧値及び出力電圧基準値の電圧誤差値を算出する手段と、
前記電圧誤差値に制御ゲインの乗算を行って、第1のゲイン調整値及び第2のゲイン調整値を算出する手段と、
前記第1のゲイン調整値を、前記基本周波数の6倍の周波数で回転座標変換した第1の値、及び前記第2のゲイン調整値を前記基本周波数の−6倍の周波数で回転座標変換した第2の値を生成する手段と、
前記第1の値を積分した第1の積分値、及び前記第2の値を積分した第2の積分値を算出する手段と、
前記第1の積分値を前記基本周波数の6倍の周波数で回転座標逆変換した第1の逆変換値、及び前記第2の積分値を前記基本周波数の−6倍の周波数で回転座標逆変換した第2の逆変換値を生成する手段と、
前記変換電圧値を前記電圧誤差値が小さくなるようにフィードバック制御した値、前記第1の逆変換値、及び前記第2の逆変換値を加算して電圧指示値を算出する手段と、
前記電圧指示値を前記基本周波数で回転座標逆変換した後、二相三相変換した値を出力電圧指令値として前記インバータに出力する手段と、
を備えることを特徴とするインバータ制御装置。
【請求項2】
さらに、前記交流フィルタのコンデンサに流れる電流値を検出する電流検出手段と、
前記交流フィルタのコンデンサに流れる電流値を三相二相変換した後、前記基本周波数で回転座標変換した変換電流値を生成する手段と、
前記変換電流値及び電流基準値の電流差分値を算出する手段と、
前記電流差分値に制御ゲインの乗算を行って、第3のゲイン調整値、第4のゲイン調整値、及び第5のゲイン調整値を算出する手段と、
前記第3のゲイン調整値を前記基本周波数の6倍の周波数で回転座標変換した第3の値、及び前記第4のゲイン調整値を前記基本周波数の−6倍の周波数で回転座標変換した第4の値を生成する手段と、
前記第3の値を積分した第3の積分値、及び前記第4の値を積分した第4の積分値を算出する手段と、
前記第3の積分値を前記基本周波数の6倍の周波数で回転座標逆変換した第3の逆変換値、及び前記第4の積分値を前記基本周波数の−6倍の周波数で回転座標逆変換した第4の逆変換値を生成する手段と、
前記第3の逆変換値、前記第4の逆変換値、及び前記第5のゲイン調整値の和を、前記電圧指示値に加算する手段と、
を備えることを特徴とする、請求項1に記載のインバータ制御装置。
【請求項3】
前記交流フィルタのコンデンサに流れる電流値に代えて、前記交流フィルタの入力電流値と前記交流フィルタの出力電流値との差を用いることを特徴とする、請求項2に記載のインバータ制御装置。
【請求項4】
前記交流フィルタのコンデンサに流れる電流値に代えて、前記交流フィルタの入力電流値を用いることを特徴とする、請求項2に記載のインバータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相交流電圧を出力するインバータを制御するインバータ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、PWMインバータを制御し、三相交流電圧を出力させるインバータ制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。インバータ制御装置は、一般的にインバータの出力電圧を変動の少ない安定した電圧とすることが要求される。
【0003】
図2は従来のインバータ制御装置の構成を示す図である。図2に示すインバータ制御装置2によるインバータ10の制御について説明する。インバータ制御装置2は、三相二相変換部102にて、電圧検出部101により検出される位相差120°の三相交流を位相差90°の二相交流に三相二相変換し、基本波回転座標変換部103にて、座標系を相回転とあわせて回転させることで二相交流の電圧値を直流的な値に変換する。
【0004】
そして、基本波回転座標変換部103により回転座標変換された出力電圧値と電圧基準値生成部104が出力する電圧基準値との誤差値を減算部105により求め、その誤差値を比例積分制御部106にて比例積分制御(PI制御)する。そして、比例積分制御部106が出力する値と電圧基準値生成部104が出力する電圧基準値との和を加算部113により求め、基本波回転座標逆変換部114にて二相交流の直流的な電圧値から元の交流的な値に変換し、二相三相変換部115にて二相交流から三相交流に変換する。そして、二相三相変換部115から出力されるインバータ電圧指令値により、インバータ10を制御する。インバータ10の出力電圧は交流フィルタ20を介して直流負荷30に出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−009642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような従来のインバータ制御装置が、整流器を有する直流負荷に接続された場合、インバータの電圧指令値が正弦波であっても、整流器を有する直流負荷の非線形性により負荷電流の歪みが発生するため出力電圧に高調波が生じ、並列に繋がれた他の負荷に悪影響を及ぼすという問題があった。
【0007】
また、一般的に用いられている出力電圧の座標変換と比例積分制御による電圧制御方法では、積分要素では全く高調波電圧を低減することはできず、比例要素では制御ゲインを高くすることである程度の高調波を低減できるが、交流フィルタによる位相遅れがあり、制御ゲインを高くすると高調波に対して不安定となる。そのため、使用できる負荷容量を制限するなどの対策が必要であり、高調波成分が大きい場合、負荷の直前にフィルタ回路を挿入する、あるいは通常の負荷の電源とは別に整流器を有する負荷のために電源を用意するなどの対策が必要となるという問題があった。
【0008】
また、従来のインバータ制御装置では、PWM制御のデッドタイムにインバータ部のスイッチング素子と並列に接続されたダイオードを通して電流が流れることで、電流の向きによって異なる電圧が出力され、出力電圧が歪み、小さくなるという問題があった。
【0009】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、整流器を有する直流負荷に接続された場合に生じる高調波電圧及びデッドタイムに起因する電圧歪みを、他の周波数の高調波に影響を与えずに低減し、高調波が少なく高品位であり、かつ部品点数の削減による回路の小型化及び低コスト化が可能なインバータ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係るインバータ制御装置は、交流フィルタを介して三相交流を出力するインバータを制御するインバータ制御装置において、前記交流フィルタの出力電圧値を検出する手段と、前記交流フィルタの出力電圧値を三相二相変換した後、前記三相交流の基本周波数で回転座標変換した変換電圧値を生成する手段と、前記変換電圧値及び出力電圧基準値の電圧誤差値を算出する手段と、前記電圧誤差値に制御ゲインの乗算を行って、第1のゲイン調整値及び第2のゲイン調整値を算出する手段と、前記第1のゲイン調整値を、前記基本周波数の6倍の周波数で回転座標変換した第1の値、及び前記第2のゲイン調整値を前記基本周波数の−6倍の周波数で回転座標変換した第2の値を生成する手段と、前記第1の値を積分した第1の積分値、及び前記第2の値を積分した第2の積分値を算出する手段と、前記第1の積分値を前記基本周波数の6倍の周波数で回転座標逆変換した第1の逆変換値、及び前記第2の積分値を前記基本周波数の−6倍の周波数で回転座標逆変換した第2の逆変換値を生成する手段と、前記変換電圧値を前記電圧誤差値が小さくなるようにフィードバック制御した値、前記第1の逆変換値、及び前記第2の逆変換値を加算して電圧指示値を算出する手段と、前記電圧指示値を前記基本周波数で回転座標逆変換した後、二相三相変換した値を出力電圧指令値として前記インバータに出力する手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るインバータ制御装置において、さらに、前記交流フィルタのコンデンサに流れる電流値を検出する電流検出手段と、前記交流フィルタのコンデンサに流れる電流値を三相二相変換した後、前記基本周波数で回転座標変換した変換電流値を生成する手段と、前記変換電流値及び電流基準値の電流差分値を算出する手段と、前記電流差分値に制御ゲインの乗算を行って、第3のゲイン調整値、第4のゲイン調整値、及び第5のゲイン調整値を算出する手段と、前記第3のゲイン調整値を前記基本周波数の6倍の周波数で回転座標変換した第3の値、及び前記第4のゲイン調整値を前記基本周波数の−6倍の周波数で回転座標変換した第4の値を生成する手段と、前記第3の値を積分した第3の積分値、及び前記第4の値を積分した第4の積分値を算出する手段と、前記第3の積分値を前記基本周波数の6倍の周波数で回転座標逆変換した第3の逆変換値、及び前記第4の積分値を前記基本周波数の−6倍の周波数で回転座標逆変換した第4の逆変換値を生成する手段と、前記第3の逆変換値、前記第4の逆変換値、及び前記第5のゲイン調整値の和を、前記電圧指示値に加算する手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るインバータ制御装置において、前記交流フィルタのコンデンサに流れる電流値に代えて、前記交流フィルタの入力電流値と前記交流フィルタの出力電流値との差を用いることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るインバータ制御装置において、前記交流フィルタのコンデンサに流れる電流値に代えて、前記交流フィルタの入力電流値を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、整流器を有する直流負荷を接続した場合に発生する高調波成分を低減することができる。そのため、整流器を有する直流負荷の容量の制約を緩和することができる。
【0015】
また、本発明によれば、整流器を有する直流負荷の入力側に従来設けられていたフィルタを省略できるため、部品点数の削減により回路の小型化及び低コスト化を実現することができる。
【0016】
また、本発明によれば、整流器を有する直流負荷と、高調波の少ない交流電源を必要とする交流負荷とを共通のインバータで使用することができる。
【0017】
また、本発明によれば、インバータ装置のデッドタイムに起因する電圧歪みを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るインバータ制御装置の構成を示すブロック図である。
図2】従来の座標変換と比例積分制御によるインバータ制御装置の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係るインバータ制御装置を使用した際の、三相交流の電圧基準値、インバータの出力電圧、及び交流フィルタの出力電圧を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係るインバータ制御装置を使用した際の、交流フィルタの出力電圧を三相二相変換した電圧のリサージュ波形を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係るインバータ制御装置を使用した際の、交流フィルタの出力電圧を三相二相変換及び回転座標変換した電圧を示す図である。
図6】従来のインバータ制御装置を使用した際の、三相交流の電圧基準値、インバータの出力電圧、及び交流フィルタの出力電圧を示す図である。
図7】従来のインバータ制御装置を使用した際の、交流フィルタの出力電圧を三相二相変換した電圧のリサージュ波形を示す図である。
図8】従来のインバータ制御装置を使用した際の、交流フィルタの出力電圧を三相二相変換及び回転座標変換した電圧を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明によるインバータ制御装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係るインバータ制御装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、インバータ制御装置1は、電圧検出部101と、三相二相変換部102(102−1及び102−2)と、基本波回転座標変換部103(103−1及び103−2)と、電圧基準値生成部104と、減算部105(105−1及び105−2)と、比例積分制御部106と、ゲイン乗算部107(107−1乃至107−5)と、6倍周波回転座標変換部108(108−1及び108−2)と、−6倍周波回転座標変換部109(109−1及び109−2)と、積分部110(110−1乃至110−4)と、6倍周波回転座標逆変換部111(111−1及び111−2)と、−6倍周波回転座標逆変換部112(112−1及び112−2)と、加算部113(113−1乃至113−6)と、基本波回転座標逆変換部114と、二相三相変換部115と、電流基準値生成部116とを備える。
【0021】
インバータ制御装置1は、交流フィルタ20を介して三相交流電圧を出力するインバータ10を制御する。
【0022】
電圧検出部101は、交流フィルタ20から出力される出力電圧値(交流フィルタ出力電圧値)aを検出する。
【0023】
三相二相変換部102−1は、電圧検出部101により検出された交流フィルタ出力電圧値aに対して三相二相変換を行い、位相差120°の三相交流を位相差90°の二相交流に変換する。
【0024】
基本波回転座標変換部103−1は、三相二相変換部102−1により三相二相変換された交流フィルタ出力電圧値に対して、三相交流の基本周波数(50Hz又は60Hz)で回転座標変換(d−q変換)を行い、二相交流の電圧値を直流的な値に変換する。この回転座標変換により、交流フィルタ20から出力される三相交流の基本波成分は直流化される。交流フィルタ20から出力される三相交流に、基本波の−5倍の周波数の高調波と、基本波の7倍の周波数の高調波が含まれる場合、回転座標変換後の電圧には、基本波の±6倍の周波数の高調波が含まれることとなる。ここで、負の周波数とは、正の周波数に対して周波数ベクトルの回転方向が逆となる周波数のことをいう。
【0025】
減算部105−1は、基本波回転座標変換部103−1により座標変換された交流フィルタ出力電圧値、及び電圧基準値生成部104により生成された出力電圧基準値を減算し、電圧誤差値を求める。
【0026】
比例積分制御部106は、減算部105−1により算出された電圧誤差値を比例積分制御(PI制御)する。なお、本実施形態ではPI制御を行っているが、電圧誤差値を小さくするようにフィードバック制御を行うものであればよく、例えばP制御やPID制御であってもよい。
【0027】
加算部113−1は、比例積分制御部106の出力値と、電圧基準値生成部104により生成された出力電圧基準値とを加算する。つまり、加算部113−1の出力値は、基本波回転座標変換部103−1の出力値を減算部105−1により算出される電圧誤差値が小さくなるようにフィードバック制御した値となる。
【0028】
ゲイン乗算部107−1及び107−2は、減算部105−1により算出された電圧誤差値に制御ゲインを乗算して振幅を調整する。
【0029】
6倍周波回転座標変換部108−1は、ゲイン乗算部107−1により振幅調整された値を、三相交流の基本周波数の6倍の周波数で回転座標変換し、基本波の6倍の周波数の高調波を直流化する。なお、この処理は、交流フィルタ20から出力される三相交流に対しては、三相交流の基本周波数の7倍の周波数で回転座標変換し、基本波の7倍の周波数の高調波を直流化することに相当する。
【0030】
−6倍周波回転座標変換部109−1は、ゲイン乗算部107−2により振幅調整された値を、三相交流の基本周波数の−6倍の周波数で回転座標変換し、基本波の−6倍の周波数の高調波を直流化する。なお、この処理は、交流フィルタ20から出力される三相交流に対しては、三相交流の基本周波数の−5倍の周波数で回転座標変換し、基本波の−5倍の周波数の高調波を直流化することに相当する。
【0031】
積分部110−1は、6倍周波回転座標変換部108−1により回転座標変換された値を積分した積分値を算出する。積分部110−2は、−6倍周波回転座標変換部109−1により回転座標変換された値を積分した積分値を算出する。
【0032】
6倍周波回転座標逆変換部111−1は、積分部110−1により積分された積分値を、三相交流の基本周波数の6倍となる周波数で回転座標逆変換する。−6倍周波回転座標逆変換部112−1は、積分部110−2により積分された積分値を、三相交流の基本周波数の−6倍となる周波数で回転座標逆変換する。
【0033】
加算部113−2は、6倍周波回転座標逆変換部111−1の出力値、及び−6倍周波回転座標逆変換部112−1の出力値を加算する。加算部113−3は、加算部113−1の出力値、及び加算部113−2の出力値を加算して、電圧指示値cとする。
【0034】
交流フィルタ20として、コイルとコンデンサからなるLCフィルタが一般的に用いられる。交流フィルタ20は電流検出部21を備える。電流検出部21は、交流フィルタ20のコンデンサに流れる電流の値(交流フィルタコンデンサ電流値)bを検出する。
【0035】
本実施形態では、以下に説明するように交流フィルタコンデンサ電流値bを用いて制御するが、交流フィルタコンデンサ電流値bの代わりに、交流フィルタ20の入力電流値と交流フィルタ20の出力電流値との差を用いてもよい。また、交流フィルタコンデンサ電流値bの代わりに、交流フィルタ20の入力電流値を用いてもよい。
【0036】
三相二相変換部102−2は、電流検出部21により検出された交流フィルタコンデンサ電流値bに対して三相二相変換を行い、位相差120°の三相交流を位相差90°の二相交流に変換する。
【0037】
基本波回転座標変換部103−2は、三相二相変換部102−2により三相二相変換された交流フィルタコンデンサ電流値に対して、三相交流の基本周波数で回転座標変換(d−q変換)を行い、二相交流の電流値を直流的な値に変換する。
【0038】
減算部105−2は、基本波回転座標変換部103−2により座標変換された交流フィルタコンデンサ電流値と、電流基準値生成部116により生成された出力電流基準値とを減算し、電流誤差値を求める。
【0039】
ゲイン乗算部107−3乃至107−5は、減算部105−2により算出された電流誤差値に制御ゲインを乗算して振幅を調整する。
【0040】
6倍周波回転座標変換部108−2は、ゲイン乗算部107−3により振幅調整された値を、三相交流の基本周波数の6倍となる周波数で回転座標変換する。−6倍周波回転座標変換部109−2は、ゲイン乗算部107−4により振幅調整された値を、三相交流の基本周波数の−6倍となる周波数で回転座標変換する。
【0041】
積分部110−3は、6倍周波回転座標変換部108−2により回転座標変換された値を積分した積分値を算出する。積分部110−3及び110−4は、−6倍周波回転座標変換部109−2により回転座標変換された値を積分した積分値を算出する。
【0042】
6倍周波回転座標逆変換部111−2は、積分部110−3により積分された積分値を、三相交流の基本周波数の6倍となる周波数で回転座標逆変換する。−6倍周波回転座標逆変換部112−2は、積分部110−4により積分された積分値を、三相交流の基本周波数の−6倍となる周波数で回転座標逆変換する。
【0043】
加算部113−4は、6倍周波回転座標逆変換部111−2の出力値、及び−6倍周波回転座標逆変換部112−2の出力値を加算する。加算部113−5は、加算部113−4の出力値、及びゲイン乗算部107−5の出力値を加算し、電流値演算結果dを求める。加算部113−6は、加算部113−3により算出された電圧指示値c、及び加算部113−5により算出された電流値演算結果dを加算する。
【0044】
基本波回転座標逆変換部114は、加算部113−6により算出された値に対して、三相交流の基本周波数で回転座標逆変換(q−d変換)を行い、直流的な値を二相交流に変換する。
【0045】
二相三相変換部115は、基本波回転座標逆変換部114により回転座標逆変換された値に対して二相三相変換を行い、位相差90°の二相交流を位相差120°の三相交流に変換する。そして、この値をインバータ10の出力電圧指令値とし、インバータ10の出力電圧の制御を行う。
【0046】
このように、インバータ制御装置1は、交流フィルタ出力電圧値aを用いて以下のように制御する。三相二相変換部102−1にて、交流フィルタ出力電圧値aを三相二相変換し、基本波回転座標変換部103−1にて、三相交流の基本周波数で回転座標変換した変換電圧値を生成し、減算部105−1にて、変換電圧値及び出力電圧基準値の電圧誤差値を算出する。そして、ゲイン乗算部107−1及び107−2にて、電圧誤差値に制御ゲインを乗算して前記第1のゲイン調整値及び前記第2のゲイン調整値を算出し、6倍周波回転座標変換部108−1にて、第1のゲイン調整値を三相交流の基本周波数の6倍の周波数で回転座標変換した第1の値を生成し、−6倍周波回転座標変換部109−1にて第2のゲイン調整値を三相交流の基本周波数の−6倍の周波数で回転座標変換した第2の値を生成し、積分部110−1及び110−2にて、前記第1の値を積分した第1の積分値、及び前記第2の値を積分した第2の積分値を算出し、6倍周波回転座標逆変換部111−1にて、前記第1の積分値を前記6倍の周波数で回転座標逆変換した第1の逆変換値を生成し、−6倍周波回転座標逆変換部112−1にて、前記第2の積分値を前記−6倍の周波数で回転座標逆変換した第2の逆変換値を生成する。そして、加算部113−1乃至113−3にて、前記変換電圧値を前記電圧誤差値が小さくなるようにフィードバック制御(例えば、PI制御)した値、前記第1の逆変換値、及び前記第2の逆変換値を加算して電圧指示値cを算出し、基本波回転座標逆変換部114にて、電圧指示値cを三相交流の基本周波数で回転座標逆変換し、二相三相変換部115にて、二相三相変換した値を出力電圧指令値としてインバータ10に出力する。
【0047】
このような構成にしたことにより、本発明によれば、整流器を有する直流負荷30を接続した場合に発生する高調波成分を低減することができる。そのため、整流器を有する直流負荷30の容量の制約を緩和できるとともに、整流器を有する直流負荷30の入力側に従来設けられていたフィルタを省略し、部品点数の削減により回路の小型化及び低コスト化を実現することができる。また、整流器を有する直流負荷30と、高調波の少ない交流電源を必要とする交流負荷とを共通のインバータで使用することができるようになる。さらに、インバータ10のデッドタイムに起因する電圧歪みを低減することができる。
【0048】
また、インバータ制御装置1は、さらに交流フィルタコンデンサ電流値bを用いて以下のように制御してもよい。三相二相変換部102−2にて、交流フィルタコンデンサ電流値bを三相二相変換し、基本波回転座標変換部103−2にて、三相二相変換された電流値を三相交流の基本周波数で回転座標変換して変換電流値を生成し、減算部105−2にて、前記変換電流値及び電流基準値の電流差分値を算出する。そして、ゲイン乗算部107−3乃至107−5にて、前記電流差分値に制御ゲインの乗算を行って、第3のゲイン調整値、第4のゲイン調整値、及び第5のゲイン調整値を算出し、6倍周波回転座標変換部108−2にて、前記第3のゲイン調整値を三相交流の基本周波数の6倍の周波数で回転座標変換した第3の値を生成し、−6倍周波回転座標変換部109−2にて前記第4のゲイン調整値を三相交流の基本周波数の−6倍の周波数で回転座標変換した第4の値を生成し、積分部110−3及び110−4にて、前記第3の値を積分した第3の積分値、及び前記第4の値を積分した第4の積分値を算出し、6倍周波回転座標逆変換部111−2にて、前記第3の積分値を前記6倍の周波数で回転座標逆変換した第3の逆変換値を生成し、−6倍周波回転座標逆変換部112−2にて、前記第4の積分値を前記−6倍の周波数で回転座標逆変換した第4の逆変換値を生成する。そして、加算部113−4乃至113−6にて、前記第3の逆変換値、前記第4の逆変換値、及び前記第5のゲイン調整値の和を、前記電圧指示値cに加算する。このような構成にすることで、さらに整流器を有する直流負荷に接続された場合に生じる高調波電圧及びデッドタイムに起因する電圧歪みを低減するこができる。
【0049】
図1に示した本発明の一実施形態に係るインバータ制御装置1のシミュレーション波形を図3から図5に示す。図3は、インバータ制御装置1を使用した際の、三相交流の電圧基準値、インバータ10の出力電圧、及び交流フィルタ20の出力電圧を示す図である。ここで、Vuref,Vvref,Vwrefは、電圧基準値から求められる歪みの無い正弦波である。Vucom,Vvcom,Vwcomは、制御演算の結果であるインバータ10の出力電圧である。Vcu,Vcv,Vcwは、交流フィルタ20の出力電圧である。
【0050】
図4は、交流フィルタ20の出力電圧を三相二相変換した電圧のリサージュ波形を示す図である。ここで、Va,Vbは、上記のVcu,Vcv,Vcwを三相二相変換した電圧であり、Vaをx軸としVbをy軸としている。なお、電圧基準値から求められる歪みの無い正弦波を三相二相変換し、リサージュ波形を描画した場合、真円となる。
【0051】
図5は、交流フィルタ20の出力電圧を三相二相変換して得られた二相交流を回転座標変換(d−q変換)した波形を示す図である。ここで、Vd,Vqは、上記のVa,Vbを回転座標変換した電圧である。なお、電圧基準値から求められる歪みの無い正弦波を三相二相変換して得られた二相交流を回転座標変換した波形を描画した場合、Vd,Vqは、脈動の少ない略直線となる
【0052】
次に、図2に示した従来のインバータ制御装置2のシミュレーション波形を図6から図8に示す。図6は、インバータ制御装置2を使用した際の、三相交流の電圧基準値、インバータ10の出力電圧、及び交流フィルタ20の出力電圧を示す図である。ここで、Vuref,Vvref,Vwrefは、電圧基準値から求められる歪みの無い正弦波である。Vucom’,Vvcom’,Vwcom’は、制御演算の結果であるインバータ10の出力電圧である。Vcu’,Vcv’,Vcw’は、交流フィルタ20の出力電圧である。
【0053】
図7は、交流フィルタ20の出力電圧を三相二相変換した電圧のリサージュ波形を示す図である。ここで、Va’,Vb’は、上記のVcu’,Vcv’,Vcw’を三相二相変換した電圧であり、Va’をx軸としVb’をy軸としている。
【0054】
図8は、交流フィルタ20の出力電圧を三相二相変換して得られた二相交流を回転座標変換(d−q変換)した波形を示す図である。ここで、Vd’,Vq’は、上記のVa’,Vb’を回転座標変換した電圧である。
【0055】
図3から図5に示した本発明の一実施形態に係るインバータ制御装置1の波形と、図6から図8に示した従来のインバータ制御装置2の波形との比較からも明らかなように、本発明によれば、整流器を有する直流負荷30を接続した場合に発生する高調波成分を低減することができる。なお、図示したシミュレーション波形では、デッドタイムに起因する電圧歪みを加えていないが、本発明により高調波成分を低減させることにより、デッドタイムに起因する電圧歪みも低減することができる。
【0056】
上述の実施形態は、代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、図1に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明により、整流器を有する直流負荷に接続された場合に生じる高調波電圧、及びデッドタイムに起因する電圧歪みを低減することができ、高調波の少ない高品位な電源の提供と、回路の小型化や部品点数の削減による低コスト化が実現できるので、インバータを制御する任意の用途に有用である。
【符号の説明】
【0058】
1 インバータ制御装置
10 インバータ
20 交流フィルタ
21 電流検出部
30 直流負荷
101 電圧検出部
102 三相二相変換部
103 基本波回転座標変換部
104 電圧基準値生成部
105 減算部
106 比例積分制御部
107 ゲイン乗算部
108 6倍周波回転座標変換部
109 −6倍周波回転座標変換部
110 積分部
111 6倍周波回転座標逆変換部
112 −6倍周波回転座標逆変換部
113 加算部
114 基本波回転座標逆変換部
115 二相三相変換部
116 電流基準値生成部
図1
図2
図4
図5
図7
図8
図3
図6