【課題を解決するための手段】
【0009】
第1態様の一実施態様の場合、細胞培養装置に関する。この装置は、細胞付着および液体培地分配を目的とした複数の担体(carriers)からなる。これら担体を積層し、液体培地の流れに対して隣接担体間にレベルを画定する。各レベルが、担体中の一つかそれ以上の開放スペースにより流体連絡するため、液体培地が一つのレベルから隣接レベルに流動できる。第1レベルと、第1レベルに隣接する第2レベルとの間の一つかそれ以上の開放スペースは相互に重ならない。
【0010】
本発明の第1態様の一つの実施態様は、細胞が付着する面であって、液体培地を分配できる面を備えたプレートまたは膜としての担体積層体からなる細胞培養バイオリアクターに関する。これら担体が液体培地の流れに対して隣接面間にレベルを画定し、各レベルが各表面内の一つかそれ以上の開放スペースにより相互接続するため、液体培地が一つのレベルから隣接レベルに流動できる。第2担体に垂直投影した場合、第1担体の一つかそれ以上の開放スペースは、隣接する第2担体の一つかそれ以上の開放スペースとは重ならない。換言すれば、第1担体の第1開放スペースを第2担体の第2開放スペースに垂直投影して見た場合、一つのレベルの両側にある第1担体および第2担体の第1開放スペースは、相互に横方向か回転方向に変位する。隣接担体間に画定されたレベルは、各担体の側縁部で気密封止するのが好ましい。このように構成すると、液体培地が担体内の開放スペースを利用して、一つのレベルから隣接レベルに強制移動する。
【0011】
担体積層体の上部担体および/または下部担体は、隣接レベルに対しては共通ではないが、にもかかわらず本発明の第1態様の任意の実施態様がもつ任意の特徴を発揮することができる。例えば、これら担体は内部に複数の開放スペースをもつため、液体培地が上部担体または下部担体を横断して流れる(即ち担体積層体に出入りする)。下部担体の場合の隣接担体は、下部担体の上に位置し、上部担体の場合の隣接担体は、上部担体の下に位置する。上部または下部担体以外のその他の任意の担体の場合、隣接担体は、下か上にある担体である。隣接担体は、駆動手段によって駆動される流れ方向にあるのが好ましい(最も好ましいのは、上にあることである)。
【0012】
一つの実施態様では、担体の少なくとも一つは独立した一つの固形担体(例えば、プレートまたは膜)によって与えることができ、この場合一つかそれ以上のスペースは、固形担体の開口である。担体はプレートまたは膜によって与えるのが好ましい。プレートまたは膜は非多孔質でもよく、あるいは(孔径が0.05mm未満の)多孔質でもよく、従って担体材料を通過する流れが、孔ではなく開口スペース(例えば円形開口)を通る流れによって支配される。なお、剛性をもつプレートが好ましい。場合にもよるが、担体は、相互接続開放スペースから少なくとも離間した領域で非多孔質であってもよい。
【0013】
あるいは、担体材料を通る流れが孔を通る流れではなく、開口を通る流れによって支配される限り、マクロな孔を使用することは可能である。例えば、不透過性の布地を利用できる。また、剛性をもつポリスチレンプレートなどのプラスチック材料を利用することも可能である。
【0014】
一つの実施態様では、担体の少なくとも一つは、一つかそれ以上の開放スペースによって横方向に分離した一組の固形担体(例えばプレートおよび/または膜)によって与えることができる。一組の固形担体が一つかそれ以上の開放スペースによって横方向に分離している場合、固形担体は(各担体が主方向に対して垂直である限り)すべて同じ面内にあればよく、あるいは(各担体が主方向に対して非垂直的な方向にある限り)すべて同じ円錐面または角錐面部分のいずれかであればよい。開放スペースは、隣接レベル間の流体相互接続部として作用する。一つの実施態様では、各担体において開放スペースによってカバーされる全表面積と固形担体によってカバーされる全面積との比は1%〜20%、好ましく1%〜15%、より好ましくは1%〜10%であればよい。この全表面積によって表わされる担体面積部分をできるだけ小さくして、細胞を担持するために利用できる表面をできるたけ大きく取ることが好ましい。なお、すぐれた酸素添加およびすぐれた栄養補給を担保するために十分高く、また十分均質な液体培地の流れの場合、担体面積のこの部分が十分に大きいことが必要である。本発明の実施態様の場合、細胞担体面積要件および酸素添加/栄養補給要件の2つを満足する。
【0015】
一つの実施態様の場合、開放スペースの長さ/幅比であるアスペクト比は、1〜4、好ましく1〜2であればよい。
【0016】
一つの実施態様の場合、開放スペースは円形であればよい。
【0017】
一つの実施態様の場合、開放スペースの形状とは無関係に、開放スペースの幅は0.05mm以上、0.1mm以上、0.2mm以上、0.5mm以上、2mm以下、1mm以下、0.5mm以下であればよい。細胞への液体培地の通過を許すためには、0.05mmの幅が好ましい。
【0018】
一つの実施態様の場合、開放スペースの大きさおよび形状とは無関係に、層状担体の単位面積当たりの開放スペースの個数については、流体相互接続のために全開放スペースによってカバーされる面積と細胞付着のための固形担体の表面積との比が好ましく20%以下、より好ましくは15%以下、最も好ましくは10%以下になるように設定するのが好ましい。なお、下限は好ましくは1%以上である。
【0019】
一つの実施態様の場合、層状担体(laminar carrier)の単位面積当たりの開放スペースの個数は、これら層状担体の全表面において一定であればよい。開放スペース(孔)の密度でいえば、例えば、0.001〜100開放スペース/平方ミリメートル、0.03〜60開放スペース/平方ミリメートル、あるいは0.1〜10開放スペース/平方ミリメートルであればよい。
【0020】
一つの実施態様の場合、第1層状担体に複数の開放スペースが存在し、これら開放スペースのそれぞれは、直径が第1層状担体の直径の10分の1以下、好ましくは50分の1以下、より好ましくは100分の1以下、最適には1,000分の1以下の円形孔として層状担体(例えばプレートまたは膜)に存在する。この実施態様の場合、開放スペースの個数は例えば開放スペース2個〜4×10
7個、10個〜10
7個、100個〜10
6個、1,000個〜10
5個、あるいは5,000個〜20,000個であればよい。開放スペースの個数はもちろん層状担体の大きさに大きく依存するものである。この実施態様の場合、層状担体当たりの開放スペースの個数は25以上、好ましくは50以上、より好ましく少なくとも100以上、最適には少なくとも1,000以上が好適である。また、開放スペースの直径は好ましく0.05mm〜2mm、より好ましくは0.1mm〜1mm、さらに好ましくは0.2mm〜0.5mmである。この範囲にある限り、細胞が通過する。
【0021】
別な実施態様の場合、開放スペースの形状は溝形である。担体当たりの溝形開放スペースの個数は好ましくは1〜30、より好ましくは2〜20、さらに好ましくは4〜25、さらに好ましくは8〜20、最適には12〜18(例えば16)である。担体当たりの溝形開放スペースがn個存在する場合、2つの隣接担体の開放スペースは、相互に1/2n回転だけ回転変位する。
【0022】
溝幅は、好ましくは0.05mm〜2mm、より好ましくは0.05mm〜0.5mm、さらに好ましくは0.05mm〜0.1mmであり、この範囲にある限り細胞が通過できる。溝が中心から層状担体の縁部に向かって広がっている場合には、溝のより大きな部分は0.05mm〜1mm、より好ましくは0.05mm〜0.5mm、さらに好ましくは0.05mm〜0.1mmである。
【0023】
一つの実施態様の場合、開放スペースの形状に関係なく、開放スペースの最少の大きさは0.05mm、好ましくは0.1mm、より好ましくは0.5mm、最適には1mmである。
【0024】
一つの実施態様の場合、開放スペースは、直径が0.05mm、好ましく0.1mm、より好ましくは0.5mm、最適には1mmの球状物体が通過できる形状および寸法をもつ。
【0025】
好ましくは、このような溝形開放スペースは、プレートまたは膜の主面(円形担体の半径の主要部分)の中心と周囲縁部との間の主要部分全体に広がる。
図15(担体は、開放スペースによって横方向に分離されている一組の固形担体からなる)について説明すると、図示の実施態様の場合、溝形開放スペースは担体の中心と周囲縁部との間の全体に広がる。溝は、液体培地を担体の実質的にすべての点に均等に分配するさい効率がよく、その分有利である。円形孔の場合、性質が不連続なため、液体の流れの分配の均質性はあまりよくない。いくつかの実施態様の場合、溝形開放スペースは、さらに小さく分割して一連の溝形トレンチにしてもよく、担体の剛性が強くなる。
【0026】
例えば、リッジも溝によって分離された担体を架橋する形か、あるいは溝によって分離された同じ担体の部分として存在することが可能である。このような架橋リッジ(bridging ridges)は、担体の剛性を強くするため、装置の剛性も全体として強くなる。このような架橋リッジの場合、開放スペースに侵入しないことが好ましい。さらに、本発明のバイオリアクターの構成では、細胞の収穫を妨害しないことが好ましい。本発明の一実施態様では、開放スペースが培地と細胞の流れに適正化するように設計を行う。換言すると、これら開放スペースは収穫時にも利用でき、単なる循環作用だけのものではない。
【0027】
一つの実施態様では、開放スペースの最少寸法は0.05mm、好ましくは0.1mm、より好ましくは0.5mm、最適には1mmである。この範囲にある限り、細胞を損傷することなく細胞を通すことができる。
【0028】
一つの実施態様では、開放スペースのうち少なくとも一つがより広く、担体の幾何学的中心から半径方向距離が長くなる。これは、特に溝の場合に有利であり、担体全面の流量の均一化に役立つ。
【0029】
一つの実施態様では、担体内の開放スペースは、中心の周りで回転対称的に配列することが可能である。これは、個別レベルでの培地の分配が比較的均質化するため、有利に作用する。さらに、担体の形状が円形の場合には、積層体においてあるレベルが回転しても、担体の縁部が積層体からはみ出すことがないため、担体の積層が単純化する。ただし、楕円形や矩形担体などの他の形状の担体については該当しないが、本発明はこのような他の形状を排除するものではない。
【0030】
いくつかの実施態様の場合、(担体中の開放スペースによってカバーされる表面を含む)担体の表面積は50平方センチメートル〜1平方メートル、好ましくは75平方センチメートル〜0.8平方メートルであればよい。
【0031】
例えば、担体が円形の実施態様では、直径は10〜100cmであればよい。
【0032】
担体厚については、できるだけ小さな容積により多数の担体を存在させるために、できるだけ薄いほうが好ましい。例えば、担体厚は0.4〜2mmまたは0.6〜1mmに設定できる。
【0033】
一つの実施態様では、担体の少なくとも一つにおいて開放スペースによってカバーされる全表面積拡大速度は、担体の幾何学的中心に対する半径方向距離が長くなるにつれて速くなる。これは、担体の幾何学的中心に近い細胞および担体の幾何学的中心からより遠い位置にある細胞によって生じる流量差が小さくなるため、有利である。このため、最適化が生じ、担体の幾何学的中心からあらゆる距離において流量が実質的に等しくなる。開放スペースが所定の表面積をもち、そして開放スペースの全表面積が中心に対する半径方向距離が長くなるにつれて大きくなるように設計および/または分配するのが好ましい。このため、バイオリアクター全体の流量の均質性が向上する。なお、この大きな全表面積は、一つの開放スペースの幅を広げることによって実現可能である。これに代えて、あるいはこれに加えて、開放スペースの個数を増やしてもよい。表面積の拡大は連続的でもよく、あるいは不連続的、例えば段階的でもよい。バイオリアクターが好ましい円筒形の場合には、全表面積の拡大は、開放スペースの位置または位相に関係がない。バイオリアクターが別な形状の場合、例えば主方向に垂直な断面が楕円形または矩形の場合、表面積の拡大は、中心から離れる異なる方向で異なってくる。
【0034】
一つの実施態様では、プレートまたは膜の少なくとも一つにおいて開放スペースによってカバーされる全表面積の拡大速度は、担体の幾何学的中心に対する半径方向距離が長くなるに従って速くなるため、担体の幾何学的中心からのあらゆる距離において流量が実質的に等しくなる。
【0035】
すべての実施態様において、第1担体の一つかそれ以上の開放スペースは、隣接する第2担体に垂直に投影したときに、この第2担体の一つかそれ以上の開放スペースに重なることはない。これは、液体培地が隣接レベル間において直線状に移動することがなく、隣接レベル(例えば隣接する上レベル)に到達できる前に、液体培地の少なくとも一部が一つのレベル内で横方向に流動するため、有利である。液体培地の全体の流れは主方向にそう流れであるが(例えば、液体は全体として担体積層体(stack of carriers)の底部から積層体(stack)の上部に移動するが)、液体培地は、隣接レベル(例えば垂直に)を横断して流れるよりもあるレベル内で(例えば横方向に)流れる時間のほうが長い。このため、液体培地がある担体の各表面の全領域に到達でき、従ってバイオリアクター内のあらゆる場所において流れが実質的に同じになる。
【0036】
換言すれば、第1担体の第1開放スペースを第2担体に垂直に投影してみたときに、一つのレベルの両側にある第1および第2担体の第1開放スペースは、相互に回転変位または横変位する。このような回転変位または横変位があると、一組の開放スペースがいくつかのレベルに広がる柱状チャネルを形成する恐れがなくなる。一つの実施例では、第1担体の少なくとも一つの開放スペースに下角度と上角度との間において第1位相を設ける。なお、この位相はレベルの中心の周りの位相または配向として定義できる。そして第2担体の開放スペースに下角度と上角度との間において第2位相を設ける。なお、第1位相はこの第2位相には重ならない。
【0037】
本発明の第1態様の一つの実施態様は、細胞が付着し、液体培地を分配する層状担体積層体(a stack of laminar carriers)からなる細胞培養バイオリアクターに関する。これら層状担体は主方向に積層され、この積層体内の各対の隣接層状担体(adjacent laminar carriers)は相互に平均距離分離され、これら隣接層状担体間に液体培地が流れるレベルが画定される。前記隣接レベルは、これら隣接レベルに共通な層状担体において複数の開放スペースによって相互に流体接続するため、前記隣接レベル間に前記液体培地が流れる。ある一つの層状担体の前記開放スペースの幅は、前記層状担体を隣接する層状担体から分離する平均距離よりも少なくとも5倍小さく、好ましくは少なくとも10倍小さく、そしてその幅は少なくとも0.05mmである。驚くべきことに、開放スペースの幅が、平均距離よりも少なくとも5倍小さく、好ましくは少なくとも10倍小さい場合、第1層状担体の開放スペースが、第2層状担体の開放スペースに垂直投影したときに、これに重なる時でさえ、液体培地が隣接レベル間で直線状に移動せず、液体培地の少なくとも一部が、あるレベル内で横方向に流れてから、隣接レベル(例えば隣接の上レベル)に到達することが認められた。液体培地の全体の流れは主方向にそう流れであるが(例えば、液体は全体として層状担体積層体の底部から層状担体積層体の上部に移動するが)、液体培地は、隣接レベル(例えば垂直に)を横断して流れるよりもあるレベル内で(例えば横方向に)流れる時間のほうが長い。このため、液体培地がある担体の各表面の全領域に到達でき、従ってバイオリアクター内のあらゆる場所において流れが実質的に同じになる。
【0038】
層状担体の前記開放スペースが、前記層状担体を隣接する層状担体から分離する平均距離よりも少なくとも5倍小さく、好ましくは少なくとも10倍小さく、そしてその幅は少なくとも0.05mmである一つの実施態様では、これら開放スペースの(長/幅比である)アスペクト比は1〜4、好ましくは1〜2であればよい。
【0039】
層状担体の前記開放スペースが、前記層状担体を隣接する層状担体から分離する平均距離よりも少なくとも5倍小さく、好ましくは少なくとも10倍小さく、そしてその幅は少なくとも0.05mmである一つの実施態様では、これら開放スペースは円形であればよい。
【0040】
層状担体の前記開放スペースが、前記層状担体を隣接する層状担体から分離する平均距離よりも少なくとも5倍小さく、好ましくは少なくとも10倍小さく、そしてその幅は少なくとも0.05mmである一つの実施態様では、これら開放スペースの形状とは関係なく、開放スペース幅は0.05mm以上、0.1mm以上、0.2mm以上、0.5mm以上、2mm以下、1mm以下、0.5mm以下であればよい。細胞の通過性からみて下限は0.05mm以上が好ましい。
【0041】
一つの実施態様の場合、層状担体の前記開放スペースが、前記層状担体を隣接する層状担体から分離する平均距離よりも少なくとも5倍小さく、好ましくは少なくとも10倍小さく、そしてその幅は少なくとも0.05mmである。
【0042】
なお、留意しなければならない点は、隣接レベルに対しては共通ではないが、にもかかわらず、前記積層体の上部および/または下部層状担体は、本発明の任意の実施態様がもつ特徴を備えることができる点である。例えば、これら層状担体は、内部に複数の開放スペースを備えることができるため、前記液体培地が前記上部または下部層状担体を横断して流れる(即ち担体積層体に出入りする)が、この場合層状担体の前記開放スペースは、前記層状担体を隣接する層状担体から分離する平均距離よりも少なくとも5倍小さく、好ましくは少なくとも10倍小さく、そしてその幅は少なくとも0.05mmである。下部担体の場合の隣接担体は、下部担体の上に位置し、上部担体の場合の隣接担体は、上部担体の下に位置する。上部または下部層状担体以外のその他の任意の担体の場合、隣接層状担体は、下か上にある担体である。隣接担体は、駆動手段によって駆動される流れ方向にあるのが好ましく、また上にある層状担体であることが好ましい。
【0043】
担体の積層体内で、層状担体は相互に平行であることが好ましく、この場合平均距離は固定された距離である。
【0044】
2つの層状担体間の平均距離または固定距離は好ましくは0.5〜10mm、より好ましくは1〜5mm、さらに好ましくは1〜3mm、それよりも好ましくは1.2〜2mmである。本発明の作用効果は、(細胞に対して)このような小さなレベル間距離を実現できることである。静的な細胞培養装置の場合、このようにレベル間距離が小さいと、細胞の上のスペースが十分でないため、細胞の十分な酸素添加が起きないと考えられる。また、スペース幅が前記平均距離の少なくとも5倍小さい、好ましくは少なくとも10倍小さい複数の開放スペースが層状担体に存在すると、液体培地が層状担体の積層体の下部から上部に移動するために必要な時間を短くし、同時に細胞に作用する流量を小さくすることによってこのような小さなレベル間距離を利用できることになる。
【0045】
さらに別な実施態様の場合、開放スペースの最少寸法は、2つの担体間の距離の10分の1、好ましくは少なくとも5分の1である。
【0046】
層状担体の前記開放スペースが、前記層状担体を隣接する層状担体から分離する平均距離よりも少なくとも5倍小さく、好ましくは少なくとも10倍小さく、そしてその幅が少なくとも0.05mmであるさらに別な実施態様の場合、開放スペースの最少寸法は、2つの層状担体間の距離の10分の1、好ましくは少なくとも5分の1である。
【0047】
さらに別な実施態様の場合、担体の少なくとも一部の少なくとも一つの側縁部に少なくとも一つのリッジを設ける。第1および第2の隣接担体のリッジが、側縁部において担体間の相互距離を設定する。この構成は構造的な安定性をもつ。リッジは、側縁部の第1(例えば上部)側および/または第2(例えば下部)側まで延長する。リッジは、側縁部にそって連続的であればよい。あるいは、リッジをブロック形状に構成し、スペースによって相互分離してもよい。隣接する担体のブロック形状リッジは、このようなスペースに延入することが可能であるため、相互に固定された位置を設定することができる。換言すれば、各担体の縁部にプレートを位置決めする雌/雄ノッチ(切り欠き)が存在することになる。また、リッジは縁部から外側に向かって突出していてもよい。
【0048】
一つの実施態様の場合、隣接する担体間に画定されるレベルは、担体の側縁部で閉じておく。このように担体の側縁部を閉じると、バイオリアクターの側部外面が画定されることになる。一つの実施態様では、柱状チャネルの側壁を画定する機械的接続によって積層を行う。これら機械的接続を行うと、積層体内の各担体の配向が固定されることになるが、別な場合には各担体を独立して回転できる余地が残る。本発明では、柱状チャネルを含む担体積層体を例えば成型方法によって一体物として製造すること、および/または積層体部分を固定するために接着剤または機械的手段(ネジなど)を使用することを排除するものではないことは明らかである。担体を個別に製造することには、積層体がモジュラー式になるため、対象用途および必要条件に応じて大小を加減できる作用効果がある。
【0049】
レベルを閉じるためにリッジを使用することが好ましい。ポリマー材料を用いてリッジ(例えば、縁部から外側に突き出るリッジ)を接続することによって、レベルを閉じることができる。このようなポリマーには接着剤、樹脂などがある。液体またはシート状剤としてポリマー材料を使用することができ、例えば乾燥処理、架橋処理などの処理を行うことも可能であり、あるいは溶融処理してから、放冷し、固化することも可能である。あるいは、例えばインサート成形またはトランスファー成形によって目的の形状にポリマー材料を成形することも可能である。
【0050】
担体積層体は、5〜500レベル数を画定する5〜500の担体から構成することができる。2つの隣接する担体が一つのレベルを画定するため、レベル数は通常担体個数−1である。なお、積層体の上部担体も細胞培養に使用できる点を考えると、担体の個数はレベル数に等しくなる。
【0051】
一つのバイオリアクター内のレベル数および/または担体数は、例えば、5〜500の範囲、好ましくは80〜200の範囲、より好ましくは130〜180の範囲にある。
【0052】
すべての担体が同じ構造であるのが好ましい。即ち、寸法が同じ、配向が同じ、開放スペース/担体比が同じ、そして開放スペースが同じ形状および同じ寸法であることが好ましく、各レベルでの流量が同じになる。また、前記の平均または固定距離が、層状担体の積層体内の各対の層状担体について同じであるのが好ましい。同様に、各レベルでの流量が同じになる。バイオリアクター内のあらゆる場所で培養条件が同じになることを担保するためには、本質的ではないが、(あるレベル内および/またはレベル間)の流量がこのように等しくなることが望ましい。
【0053】
各担体間の分配を比較的一定にし、そして主な流れ方向を横方向にすると、細胞が担体に付着することができ、二次元培養に基づく細胞成長がすぐれたものになる。担体中の開放スペースは、孔または溝の形を取る開口として具体化するのが好適である。
【0054】
本発明の好適な実施態様では、積層体の各担体は、少なくとも2つの開放スペースを有する。このような場合、本発明のバイオリアクターは直列および並列の2つで結合した複数の流体相互接続部からなると考えることができる。ある一つのレベルの有効な部分であるこの流体接続部の直列/並列結合の組み合わせは、流体接続の直列結合または並列結合単独の場合よりもすぐれたものになることがわかった。流体接続が単に直列結合の場合には、一つのレベルでの単なる横方向の接続に過ぎない。特に、第1レベルでは液体培地が第1開口から離れた第2開口に流れてから、次の第2レベルに戻るなどの流動経路を取ると考えられる。積層体の各担体が少なくとも2つの開放スペースを有する場合には、同じ循環時間を保った状態で、担体当たりただ一つの開放スペースが存在する場合よりも流量は小さくできる。このため、せん断応力を小さくできるか、あるいは循環時間を短くできる。担体当たりの開放スペース数が1のみでは、せん断応力を制限する流量(例えば、2mm/s以下)でも循環時間は非常に長くなり、例えば数時間になることが当たり前である。
【0055】
プレート当たりの開放スペース数が一つのみで有用な実施態様は、例えば、外部循環システムを使用し、積層体内の交代担体が交互に一つの中心開放スペースと一つの周辺開放スペースを有する実施態様である。この実施態様における担体は、2種類が交互に使用されている。例えば、第1種類の担体は、その縁部を外部壁に付着することによって所定の場所に保持され、そして中心開放スペースを有する。この例では、第2種類の担体は、中心軸に付着されることによって所定の場所に保持され、そして積層体を閉じる壁に到達しないことによって2つの隣接するレベルを相互に流体接続する開放スペースを確保する。この中心軸が、担体の積層体に対して同心でかつ内部にある流体チャネル(例えば、中空管)であることはもちろんである。この中空管が、担体の積層体から離れた流体チャネルを形成し、この流体チャネルが、担体積層体の第1端部の第1担体と担体積層体の第2端部の第2担体との間に流体接続を形成するとともに、液体培地の循環システムになる。
【0056】
あるいは、流体接続部を単に並列結合する場合には、一つの流体接続部は他の流体接続部よりも短くなる傾向がある。このため、圧力低下がバイオリアクター内で不均一になり、システム内部に流量差が発生する。このような大きな流量差は望ましくない。というのは、乱流および/または不均一流が発生し、細胞および細胞成長がダメージを簡単に受けることになるからである。さらに、バイオリアクターの一部の流体接続部における流量が低下する場合もある。この結果、例えばデッドゾーン(混合が劣化するゾーン)が発生し、バイオリアクター全体にわたって細胞成長に差が生じる。最悪のシナリオでは、ある一部の流体接続部での細胞培養が十分に行われず、目的とする質の最終培養物が得られなくなることが考えられる。
【0057】
さらに、流体接続部を直列/並列結合すると、流体接続部(例えば、開放スペースまたは開口)が単独で詰まっても、ほぼすべての流れが止まることはない。
【0058】
一つの実施態様では、バイオリアクターに第1側および反対側の第2側(例えば上下部)を設け、そして本発明の第1態様の任意の実施態様において説明した担体積層体は、例えば、主方向に第1側(例えば、バイオリアクターの下部)から第2側(例えば、バイオリアクターの上部)に積層され、細胞を培養しかつ培地が流れる隣接担体間にレベルを画定する担体積層体を有する。なお、当業者ならば、バイオリアクターの第2側(例えば上部)を閉じ、ベストな物理的条件を維持することが好ましいことを理解できるはずである。本発明の実施態様では、バイオリアクターの上部および/または下部に入り口および/または出口を設けることができ(例えばガス出入口)、および/または各種の計測機器(probes)(例えば、温度計、pH計、溶存O
2計、溶存CO
2計、バイオマス計測計やその他の計測計)を設けることができる。また、上部および/または下部の少なくとも一部を透明化すると、顕微鏡により観測することができる。例えば、第1側および/または第2側に光学的に透明な窓を設けることができる。
【0059】
一つの実施態様では、バイオリアクターは、液体培地のパラメーター(とりわけ温度、pH、O
2濃度、CO
2濃度、培地中の細胞密度(バイオマス)などの物理的、化学的または生物学的パラメーター)を測定する少なくとも一つの計測機器を備えることができる。さらに、バイオリアクターは計測機器に接続された制御素子を備えてもよく、計測機器から制御素子によって受け取られた入力の機能パラメーターを変更することができる。実施態様にもよるが、バイオリアクターはさらに、パラメーターを変更してもよい。実施態様において、該手段は制御素子に接続される。とりわけ加熱手段、冷却手段、ガス搬送手段や駆動手段などの各種手段を制御素子に接続する。
【0060】
別な実施態様では、バイオリアクターにさらに、培地を主方向に循環するポンプや培地循環手段(例えばインペラー)を設ける。とりわけ通気性、伝熱性、制御性が向上する作用効果がある。さらに、本発明では、培地が収穫時にも循環できるように流体循環を実行できる。
【0061】
このように、本発明は、ふさわしい培地が流動し、かつ収穫を行える細胞培養の二次元的な構造体を提供するものである。
【0062】
この代わりに、あるいはこれに加えて、細胞および培地の不均一な分配(なお、これは開放スペース幅を2つの層状担体間の距離よりも少なくとも5倍小さくするか、あるいは隣接層状担体間に開放スペースを重ならないようにすることによって抑制できる)をもたらす、いくつかのレベルにわたる培地の完全な垂直流れを発生する恐れは、流体の相互接続部の形状および/または能動的な流れ刺激作用によって抑制することができる。後者の能動的な流れ刺激作用については、よく知られているように、循環手段(例えば機械的インペラーなどのインペラー、好まくは磁気インペラー)によって得るのが好適である。このインペラーの場合、層状担体積層体の上にある上部キャビティ内でこれに隣接して設けるか、あるいは(層状担体積層体の下にある)バイオリアクターの下部にある下部キャビティ内でこれに隣接して設けるのが好適である。あるいは、第1インペラーを下部キャビティ内に配置し、そして第2インペラーを上部キャビティに配置すると、上下を逆にしてバイオリアクターを操作できる。これらインペラーを位置決めするベアリングを下部および/または上部キャビティ内に設けるのが好適である。また、インペラーは流体チャネル内に存在さてもよい。例えば、中央の同心カラムに存在させると、第1層状担体と第2層状担体との間に流体接続を作り出すとともに、液体培地の循環システムを形成する。これは、特に下部キャビティが存在しない場合に有利である。
【0063】
本発明の一つの実施態様の場合、バイオリアクターはさらに、担体積層体のそれぞれ第1端部および第2端部に隣接して上部ゾーンおよび下部ゾーンを相互にかつ中央の流体チャネルと流体連絡した状態で有することも可能である。
【0064】
本発明の一つの実施態様では、バイオリアクターはさらに、上部ゾーンおよび/または下部ゾーンに対して入り口ポート/出口ポートを有していてもよい。
【0065】
本発明の一つの実施態様の場合、少なくとも一つの入り口ポートを下部ゾーンに存在させ、そして少なくとも一つの出口ポートを上部ゾーンに存在させ、ポンプなどの外部循環手段をこれら入り口ポートと出口ポートとの間に結合してもよい。
【0066】
さらに別な実施態様に言及すると、担体の少なくとも一部は、主方向に対して垂直ではない角度を有する方向に配向し、そして少なくとも一つの開放スペースを有する部分をもつ。このためには、中心軸を通る横断面視で担体を曲線状にすればよい。例えば、担体を円錐形に構成すればよく、あるいは角錐状に構成すればよい。実質的にすべての担体が同じか相似的な形状および配向をもつのが好適であるが、必ずしもこの限りではない。例えば、第1担体を、縁部がバイオリアクターの中心よりも第1側に近い、曲線状(例えば、円錐形または角錐形)に構成し、その一方で第2担体を曲線状にするとともに、縁部をバイオリアクターの中心よりも第2側部に接近(換言すれば、配向が逆向きである)させてもよい。さらに、第1担体を平坦構成にし、第2担体を別な形状(例えば、円錐形)に構成することも可能である。さらに、第1担体および第2担体を曲線形状に構成し、配向を同じにするが、第1担体の曲率を第2担体とは異なる曲率にしてもよい。このような実施態様の場合、レベルが高さにおいて異なるため、収穫を向上するために有利に作用する。さらに、積層体をさらに小さい第1積層体および第2積層体に分割し、これら積層体の間に流体および/または培地に対する入り口ポートおよび/または出口ポートを存在させてもよい。この場合には、これらポートを異なる高さのレベルに結合するのが好適である。
【0067】
さらに別な一つの実施態様の場合、バイオリアクター内の物理的条件は、過不足なくモニター/制御することができる。これは、幹細胞/一時細胞がきわめて脆いため、有利に作用する。温度、バイオマス、pH、O
2濃度、CO
2濃度や機械的衝撃などの物理条件が少しでも変動すると、幹細胞の損傷が生じることがある。本発明のバイオリアクターの場合、担体積層体の上部で、担体積層体に隣接して上部キャビティを設けるのが好適である。センサーを少なくとも上部キャビティに存在させてもよい。
【0068】
センサーをバイオリアクター内部に存在させてもよい。これに代えて、あるいはこれに加えて、外部循環システムを使用するさいにはこのシステムの組成および物理的条件については、例えばバイオリアクターの出口ポートと培地貯蔵タンクとの間においてモニターすることができる。あるいは、別なセンサー体を設けてもよい。測定すべき条件例には、培地のpH、温度、バイオマス、酸素含量およびCO
2含量、生物学的材料の量および/または実効流量がある。本発明のバイオリアクターは、担体積層体とは別に少なくとも一つの流体チャネルから構成し、第1側から第2側まで実質的に延長する流体接続を形成し、これとともに培地の内部循環システムを構築するのが好ましい。培地の内部循環システムは、外部循環システムよりも設置面積が小さい。さらに、外部構成部材数が外部循環システムよりも少なく、使用者側からみて使用しやすい。換言すると、一つの実施態様の場合、バイオリアクターはさらに担体積層体とは別な少なくとも一つの流体チャネルで構成し、担体積層体の第1端部の第1担体と担体積層体の第2端部の第2担体との間に流体接続を形成し、これとともに液体培地の循環システムを構築する。バイオリアクターの中心軸に位置する柱状チャネルとして流体チャネルを具体化するのが好ましい。一つの実施態様の場合、流体チャネルを担体積層体に対して同心構成するともとに、担体積層体の内部または外部に設けることができる。例えば、流体チャネルは、担体積層体の内部にある中心カラムとして構成することができる。
【0069】
柱状チャネルについては、下部キャビティと上部キャビティとの間に設けるのが好適である。下部キャビティおよび/または上部キャビティとの間にインペラーを存在させてもよい。インペラーの回転軸は、中心軸を兼ねるのが好ましい。上述したように、例えば下部キャビティが存在しない場合には、インペラーは柱状チャネル内に配置できる。この場合、少なくとも一部のポートを存在させて、柱状チャネルを(好ましくは積層体の最下部レベルからなる)少なくとも一つのレベルと相互接続する必要がある。なお、下部キャビティは、一つかそれ以上の開口、即ち培地に対するアクセスポートを有する壁によって柱状チャネルから分離することができる。このように分離すると、柱状チャネル内の流れがバイオリアクターのレベル内より激しく流動する。即ち、細胞の混合が適正化するとともに、細胞の流れも適正化する。このような柱状チャネルとバイオリアクターの個々のレベルとの間にポートが存在していてもよいが、好ましくは存在しないほうがよい。ところが、上述したように、下部キャビティが存在せず、また循環手段またはポンプが柱状チャネル内のインペラーの場合、ポートは存在するのが好ましい。柱状チャネルにこのようなポートを設けない方が好適であるが、管などの手段を設けて培養成分を柱状チャネル内の培地に供給してもよい。このような培養成分の実例は、空気、酸素およびCO
2などのガス状成分だけでなく、pHを補正する酸または塩基、あるいは培養培地、あるいは他の栄養素または添加剤である。前記手段は管として具体化することができるが、固体成分としての培養成分を添加する手段として具体化してもよい。ガス調節および/またはガス交換および/または(酸素濃度または二酸化炭素濃度などの)ガスの制御および調節を行う管として前記手段を具体化する場合には、気泡を作り出す単純な管として具体化でき、あるいは閉じた多孔質シリコン管として具体化できる(この場合、気泡は発生せず、発泡もない)。この場合、柱状チャネルは相当な撹拌作用をもつか、あるいは少なくとも回転動作を行う。この結果として、酸素などの培養成分が培地に溶解し、培地を細胞が成長するレベルに設定する前に、混合が適正化する。さらに、気泡が発生しても、個々のレベルに供給される前に、気泡が培地から出ていく。気泡がレベルに侵入すると、細胞が損傷する恐れがあるため、これは望ましくない。
【0070】
培養成分を培地に与えるこのような手段は他の場所(たとえば、上部キャビティ内)に設置することも可能であり、またガス交換フィルターを設けることも可能である。
【0071】
さらに別な実施態様の場合、レベルは構造化した固定床からなり、キャビティの大きさは、膨張作用を受ける細胞のサイズに合わせる。さらに、収穫は、バイオリアクターを振動させることなく実施することができる。振動操作には、幹細胞や一次細胞の培養時に成長細胞が損傷する傾向が出てくる問題がある。
【0072】
一つの実施態様の場合、バイオリアクターの担体は親水性である。このためには、表面処理を行えばよい。表面処理は、細胞培養に有利に作用する。基本的に、親水性化は、物理的処理(例えば、真空または大気プラズマ処理)によって、あるいは化学的処理(例えば、親水性シランによる官能性化)によって行うのが好適である。より精巧な他の処理(例えば物理的官能性化、化学的官能性化など)も実行可能である。
【0073】
収穫は、(例えば、トリプシンなどの)酵素反応によって行えばよい。付着するためには、担体表面に固定点を存在させておけばよいが、平滑な表面が好ましい。
【0074】
一つの実施態様の本発明バイオリアクターの場合、レベル内の培地の線状速度が2mm/s以下(例えば1mm/s)になるように設定すればよく、あるいは培地の循環時間が60分以下(例えば30分)になるように設定すればよい。これは、適正なレベル幅、適正な開放スペース密度、適正なインペラーまたはポンプ速度、適正な開放スペース形状および位置を選択することによって実現できる。
【0075】
本発明バイオリアクターの場合、さらに、培地の線状速度を収穫工程で10mm/s〜20mm/sの範囲まで高速化してもよい。これによって、細胞の担体からの乖離が容易になる。
【0076】
本発明実施態様によるバイオリアクターは、動物細胞(例えば哺乳類動物細胞、昆虫細胞、魚類細胞、植物細胞など)、好ましくはヒト細胞を含むか含まない(ただし含むほうが好ましい)動物細胞の培養に使用するのが最適である。本発明実施態様によるバイオリアクターは、一次細胞および/または幹細胞の培養に使用できるが、これら以外の細胞の培養またはウィルス、バクテリアなどの他の生物学的物質の培養を排除するものではない。
【0077】
本発明の第2態様は、細胞の培養方法に関する。第2態様の一つの実施態様は、以下のステップからなる。
液体培地の(pH、温度、O
2濃度、CO
2濃度などの)パラメーターの値を検出するステップ、および
このパラメーターの値が所定の値未満または以上である間、循環手段またはポンプの作動によって前記液体培地をバイオリアクター内に循環させるステップ。
【0078】
本発明の第2態様の一つの具体的な実施態様は、以下のステップからなる培養方法に関する。
液体培地の(例えばO
2濃度)パラメーターの値を検出するステップ、および
このパラメーターの値が所定の値未満である間、循環手段またはポンプの作動によって前記液体培地をバイオリアクター内に循環させるステップ。
【0079】
本発明の第2態様のさらに別な実施態様の培養方法は、本発明の第1態様の任意の実施態様に従って細胞をバイオリアクター内で成長させた後に以下の収穫ステップを行う。
液体(培養)培地の出口を開けることによってバイオリアクターから液体培地を取り出し、バイオリアクター内を空にするステップ、
放出剤(例えばトリプシン)からなる別な液体培地を導入するステップ、
循環手段またはポンプの作動によってバイオリアクター内にこの別な液体培地を循環させるステップ、および
バイオリアクター内を空にすることによって成長した細胞を収穫するステップ。
【0080】
本発明の第2態様のさらに別な実施態様の方法は、以下のステップからなる。
本発明の第1態様の任意の実施態様によるバイオリアクターに細胞を有する第1液体培地を導入するステップ、
循環手段またはポンプを作動して、第1液体培地をバイオリアクター内で循環させるステップ、
循環手段またはポンプの作動を停止して、バイオリアクターの担体の第1側に細胞を沈着させるステップ、および
適宜行うステップであって、バイオリアクターから液体培地を取り出し、バイオリアクターに細胞を有する第2液体培地を導入し、循環手段またはポンプを作動して、バイオリアクター内で第1液体培地を循環させ、循環手段またはポンプの作動を停止し、バイオリアクターの上下を逆にし、そしてバイオリアクターの担体の第2側に細胞を沈着させるステップ。
【0081】
本発明の第2態様のさらに別な実施態様の方法は、前記ステップを組み合わせて実施する方法である。例えば、以下のステップからなる方法である。
本発明の第1態様の任意の実施態様によるバイオリアクターに細胞を有する第1液体培地を導入するステップ、
循環手段またはポンプを作動して、第1液体培地をバイオリアクター内で循環させるステップ、
循環手段またはポンプの作動を停止して、バイオリアクターの担体の第1側に細胞を沈着させるステップ、および
適宜行うステップであって、バイオリアクターから液体培地を取り出し、バイオリアクターに細胞を有する第2液体培地を導入し、循環手段またはポンプを作動して、バイオリアクター内で第1液体培地を循環させ、循環手段またはポンプの作動を停止し、バイオリアクターの上下を逆にし、そしてバイオリアクターの担体の第2側に細胞を沈着させるステップ、
液体培地のパラメーター(例えば酸素濃度)の値を検出するステップ、
このパラメーターの値が所定の値未満である間、循環手段またはポンプの作動によって前記液体培地をバイオリアクター内に循環させるステップ、
細胞成長後、液体(培養)培地の出口を開けることによってバイオリアクターから液体培地を取り出し、バイオリアクター内を空にするステップ、
放出剤(例えばトリプシン)からなる別な液体培地を導入するステップ、
循環手段またはポンプの作動によってバイオリアクター内にこの別な液体培地を循環させるステップ、および
バイオリアクター内を空にすることによって成長した細胞を収穫するステップ。
【0082】
本発明の別な態様は、多重積層した担体を有する細胞成長をモニターする装置および方法に関する。第2担体の上に位置する第1担体は、細胞の成長を阻止する領域または部分を有することができる。この領域または部分を下にある担体の成長領域に整合させる(is aligned with)と、観察線(line of sight)を外部からバイオリアクターに維持でき、かつ第1担体を介して成長領域に維持できる。
【0083】
本発明のさらに別な態様は、バイオリアクター内で細胞を培養する担体に関する。この担体の表面は、細胞が付着する領域と細胞付着を阻止する領域を有する。細胞付着を阻止する表面は、一つの透明材料に対応させるか、あるいは疎水性化しておけばよい。
【0084】
細胞を培養するバイオリアクターは、第1担体および第2担体を有することができ、それぞれは流体培地を導入する少なくとも一つの入り口を有する。第1担体は細胞が付着する第1部分を有し、そして第2担体は細胞の付着を阻止する第2部分を有する。第2担体の第2部分から、従って、第1および第2担体がアライメントしたときに、第1担体の第1部分を見ることができる。
【0085】
第1部分および第2部分は、担体上の表面からなるのが好ましいが、開口を形成してもよい。第2部分は、第2担体と第1担体との間に光学的に透明な材料を有することができる。担体を受け取る単独のハウジングを設けてもよく、あるいは担体を積層可能なトレーまたはキューブで構成してもよい。
【0086】
細胞が付着する第1部分および細胞付着を阻止する第3部分であって、使用時に第2担体の第2部分に対してアライメントする第3担体を設けてもよい。
【0087】
本発明のさらに別な態様は、細胞培養バイオリアクターに関する。このバイオリアクターは、担体の積層体を有する。第2担体の上に位置する第1担体は、細胞付着を阻止する領域を有する。第1担体の細胞付着作用のない領域から、第1担体を介して第2担体の細胞成長領域を見ることができる。
【0088】
細胞培養バイオリアクターは、N個の担体からなる積層体からなる。担体N−1は、細胞付着を阻止する少なくとも一つの領域を有する。担体N−1のこの領域から、担体N−1を介して担体N上の細胞成長領域を見ることができる。担体N−2は、細胞付着を阻止する少なくとも2つの領域を有するのが好ましく、第1阻止領域から、担体N−1上の第1細胞成長領域を見ることができ、そして担体N−1の阻止領域を通る観察線を利用して、第2阻止領域から、担体N上の第2細胞成長領域を見ることができる。
【0089】
別な見方をすると、細胞培養バイオリアクターは、N個の担体からなる積層体からなる。担体N−Mは、細胞付着を阻止する少なくともM個の領域を有する。担体N−Mのこれら領域から、担体N−Mを介して担体N上の細胞成長領域を見ることができる。
【0090】
本発明は、また、N個の担体の積層体からなり、外部の有利な点から担体N−1の表面上の細胞成長領域までの光学的に透明な観察線を有するバイオリアクターに関する。好ましくは、透明な材質の支柱が光学的に透明な観察線を形成する。
【0091】
別な見方をすると、担体の積層体からなるバイオリアクターは、光学的に透明な固形物質が隣接担体間のスペースに位置するものである。
【0092】
本発明のさらに別な態様は、担体の垂直積層体からなり、担体それぞれが流体培地を受け取る入り口を有し、この入り口ではなく、隣接する担体を介して一つの担体上の成長領域を見ることができる。
【0093】
本発明のさらに別な態様は、担体からなる積層体からなる細胞培養バイオリアクターに関する。これら担体は、液体培地がバイオリアクターの入り口から出口に流れる、隣接担体間にレベルを画定するように積層する。隣接するレベルは、2つかそれ以上の開放スペースによって相互に流体接続するため、液体培地が一つのレベルから隣接するレベルに流れる。第1担体が形成する開放スペースのうち少なくとも一つは、第2の担体である隣接担体によって形成される開放スペースに少なくとも部分的に重なり、第3担体上の成長領域を見ることができる実質的に邪魔にならない光学的経路を画定する。さらに、これら担体が、主方向にそって投影したときに、第2レベルと隣接する第3レベルとの間の一つかそれ以上の開放スペースに重ならない第1レベルと隣接する第2レベルとの間に一つかそれ以上の開放スペースを有するのが好ましい。
【0094】
また、本発明は、少なくとも3つの担体からなる積層体からなる細胞培養バイオリアクターに関する。第1担体が細胞付着作用のない少なくとも3つの開放スペースを画定し、第1担体上の少なくとも一つの開放スペースが第2担体上の少なくとも一つの開放スペースにアラインメントするため、第3担体上の細胞成長領域を見ることができる。第2担体が少なくとも2つの開放スペースを有することが好ましい。
【0095】
添付図面を参照して、本発明のバイオリアクターをさらに詳細に説明する。