特許第5988970号(P5988970)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5988970インテグリンCD11b/CD18を調節するための化合物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988970
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】インテグリンCD11b/CD18を調節するための化合物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/426 20060101AFI20160825BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160825BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20160825BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20160825BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20160825BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20160825BHJP
   A61P 19/04 20060101ALI20160825BHJP
   C07D 417/06 20060101ALN20160825BHJP
【FI】
   A61K31/426
   A61P43/00 105
   A61P13/12
   A61P3/10
   A61P9/00
   A61P37/00
   A61P19/04
   !C07D417/06
【請求項の数】8
【全頁数】77
(21)【出願番号】特願2013-518390(P2013-518390)
(86)(22)【出願日】2011年5月2日
(65)【公表番号】特表2013-536162(P2013-536162A)
(43)【公表日】2013年9月19日
(86)【国際出願番号】US2011034753
(87)【国際公開番号】WO2012005800
(87)【国際公開日】20120112
【審査請求日】2014年5月1日
(31)【優先権主張番号】61/362,363
(32)【優先日】2010年7月8日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513004917
【氏名又は名称】アダール ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ADHAERE PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106448
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 伸介
(72)【発明者】
【氏名】ヴィネ グプタ
【審査官】 吉田 佳代子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0002526(US,A1)
【文献】 特表2008−511594(JP,A)
【文献】 BIOOR.MED.CHEM.,2009年,VOL.19,P.6902-6906
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
β2インテグリンの活性と関連する状態を治療するための医薬を製造するための化合物の使用であって、該化合物は、
式:
【化7】
又はその医薬として許容される塩であり
記治療は、β2インテグリンの活性化を含み、そして、
前記β2インテグリンの活性と関連する状態は、慢性腎疾患、血管損傷と関連する新生内膜肥厚、糖尿病、ループス、及び腹膜炎からなる群から選択される、前記使用。
【請求項2】
前記化合物は、
【化10】
又はその医薬として許容される塩である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記化合物は、
【化11】
又はその医薬として許容される塩である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記化合物は、
【化13】
又はその医薬として許容される塩である、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
β2インテグリンの活性と関連する状態を治療するための医薬を製造するための化合物の使用であって、該化合物は、
式:
【化7】
又はその医薬として許容される塩であり、
前記治療は、β2インテグリンの活性化を含み、そして、
前記β2インテグリンの活性と関連する状態は、白血球β2インテグリンによる腫瘍浸潤と関連する、前記使用。
【請求項6】
前記化合物は、
【化10】
又はその医薬として許容される塩である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記化合物は、
【化11】
又はその医薬として許容される塩である、請求項5に記載の使用。
【請求項8】
前記化合物は、
【化13】
又はその医薬として許容される塩である、請求項5に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な薬剤によるインテグリンCD11b/CD18の活性化に関する。本発明は、さらに、炎症性疾患を治療することに関する。
【背景技術】
【0002】
インテグリンは、細胞接着、遊走及びシグナル伝達を媒介する非共有結合型α/βヘテロ二量体受容体である。そのリガンドとともに、インテグリンは、発生、ホメオスタシス、炎症及び免疫を含む多くの過程において、並びに癌浸潤及び心血管疾患等の病理学的状態において中心的な役割を果たす。白血球の遊走及び動員は、損傷及び感染に対するその正常な免疫応答にとって、並びに様々な炎症性障害及び自己免疫障害において不可欠である[1]。白血球機能は、高度に発現されるインテグリンCD11b/CD18(Mac−1、CR3、及びαMβ2としても知られる)を含む、β2インテグリンによって調節される[2]。CD11b/CD18は、特に、補体断片iC3b、フィブリノーゲン、及びICAM−1をリガンドとして認識する。CD11b/CD18は、多くの炎症性疾患及び自己免疫疾患、例えば虚血−再灌流傷害(急性腎不全及びアテローム性動脈硬化を含む)、組織傷害、卒中、血管損傷に応答した新生内膜肥厚、並びに炎症過程の消散に関係があるとされている[3−7]。
【0003】
白血球β2インテグリンは、腫瘍浸潤を調節する。損傷又は感染に応答して、白血球は、それらが免疫クリアランスに関与する組織に動員される[2]。腫瘍は、また、炎症性サイトカインを分泌して、CD11b+骨髄細胞を動員し、血管新生を促進する[8]。共通のβ−サブユニット(β2、CD18)を有するが、異なるα−サブユニット(CD11a、CD11b、CD11c、及びCD11d[9])を有するα/βヘテロ二量体インテグリン受容体のサブファミリーであるβ2インテグリンは、白血球特異的受容体である[10]。白血球における2つの主要なβ2インテグリンのうちの1つであるインテグリンCD11b/CD18は、白血球のその様々なリガンド(数は30個を超える)への結合を媒介し、かつ炎症を起こした組織への白血球の遊走及び動員を媒介する[1,11]。癌治療中に、放射線照射された腫瘍は、多数の特定の白血球、腫瘍血管系を回復させ、腫瘍の再増殖及び再発を可能にするマトリックスメタロプロテイナーゼ−9(MMP−9)を発現する骨髄由来CD11b+骨髄細胞を動員する[12]。最近の研究は、CD11bアンタゴニスト(抗CD11b抗体)による処理が、マウスにおけるCD11b+骨髄細胞浸潤及び放射線に対する腫瘍応答の増強を低下させることを示した[12]。
【0004】
炎症性白血球は、抗GBM腎炎を促進する。マウスにおける実験的抗GBM腎炎は、急速進行性糸球体腎炎のモデルであり、タンパク尿、白血球浸潤、及び糸球体半月体形成を特徴とする[13,14]。白血球は、抗GBM腎炎の発病において重要な役割を果たしており、その数は、半月体形成性糸球体のパーセンテージと相関する。CD11b−/−動物は、タンパク尿を示さず、腎機能の強い保護を示し[15]、このインテグリンを標的とする薬剤が、この疾患を治療する潜在能力を有することを示している。
【0005】
細胞接着を増加させ、遊走を調節することに加えて、CD11b/CD18活性化は、活性酸素種の産生及び骨髄細胞におけるいくつかの炎症促進性遺伝子及び抗炎症性遺伝子の調節を含む、いくつかの細胞内シグナル伝達事象を媒介する[16−21]。インテグリン活性化及びリガンド結合は、細胞表面でのそのクラスタリングを生じさせ、PI3−K/Akt及びMAPK/ERK1/2経路の活性化を含む外側から内側へのシグナル伝達を開始し[17,22]、それにより大部分の細胞におけるアンカレッジ依存的な生存促進性シグナルを模倣する。CD11b/CD18のライゲーション及びクラスタリングは、また、他の受容体(例えば、Toll様受容体(TLR)及びサイトカイン受容体インターロイキン−1受容体(IL−1R)及びTNFR)による細胞内シグナル伝達を相乗的に促進し、両方とも、NF−κB依存的な炎症促進性サイトカイン(例えば;IL−1β、IL−6、TNF−α)の発現及び他の因子(例えば;組織因子)の放出を誘導する。CD11b/CD18欠損は、TLR4によって誘発される炎症促進性サイトカインの産生を増強し、これは、CD11b/CD18が、保護的役割を有することができ、白血球の炎症促進性経路を負に調節し得ることを示唆する(1−3)。
【0006】
したがって、様々な炎症状態の治療のための治療剤としてのCD11b/CD18の機能を調節する薬剤のかなりの潜在的な可能性がある。CD11b/CD18は、通常、循環白血球内及び多くの他の細胞内で構成的に不活性な立体構造で発現されているが、細胞接着、遊走及び炎症の部位での細胞の蓄積を媒介するように速やかに活性化される[23]。CD11b/CD18は、ミクログリア、肝細胞、並びにT細胞及びB細胞のサブタイプを含む、他の細胞型及び組織でも発現されている。実際、抗体及びリガンド模倣体(抗接着療法)によるCD11b/CD18及びそのリガンドの遮断[24−26]、並びにCD11b又はCD18の遺伝子除去は、多くの実験モデルにおいてインビボで炎症応答の重症度を低下させる[27,28]。しかし、そのような遮断薬は、ヒトの炎症性疾患/自己免疫疾患を治療するのにほとんど成功しておらず[28,29]、その理由はおそらく、抗体によるCD11b/CD18の完全な遮断が、CD11b/CD18の大量の移動可能な細胞内プールの利用可能性のために困難であること[30,31]、又は遮断薬による白血球動員の抑制が、活性型インテグリン受容体の90%超の占有を必要とすること[32]である。抗インテグリンβ2抗体は、予想外の副作用も示している[33]。さらに、活性化剤による処置から予想される、ごく一部のネイティブなインテグリン受容体のインビボでの一過性の活性化が、生理的に関連のある状況で何らかの顕著な生物学的効果を有するかどうかについては、未解決のままである。
【0007】
そのため、インテグリンCD11a/CD18、CD11b/CD18及びCD11c/CD18を含むβ2インテグリンのリガンド結合及び機能を選択的に調節する、抗体、タンパク質、ペプチド、化学的化合物及び小分子等の新規の薬剤が必要とされる。さらに、インテグリン上のリガンド結合部位ではなく、CD11b/CD18中のイソロイシンのための疎水性部位(hydrophobic site−for−isoleucine)(SILEN)ポケット等のアロステリック調節部位を標的とするか又はそれに結合することによって、インテグリンを活性化する薬剤(アゴニスト)が必要とされる。したがって、インテグリンのリガンド結合機能を遮断しないインテグリン活性剤が必要とされる。さらに、インテグリン媒介性の細胞接着及び細胞機能を増強又は促進する薬剤及び方法が極めて望ましい。しかし、そのようなアゴニスト、特にCD11b/CD18を含むβ2インテグリンを選択的に標的とするか、又はそれを選択的に活性化するようなアゴニストの同定に向けた進展は遅く、ほんの数例しか発見が報告されてない[34,35]。
【0008】
本発明は、CD11b/CD18、また、細胞の遊走、動員、及び他の生物学的機能を含む、細胞(例えば、白血球、ミクログリア、肝細胞及びリンパ球)の機能を調節するための戦略として、インテグリンCD11b/CD18の遮断ではなく、その活性化を伴う新規の手法を記載している。そのような生物学的機能には、サイトカイン等のエフェクター分子の生成が含まれる。インビボで容易に送達され、様々な哺乳動物での使用のために容易に最適化され得る、小分子等の様々な作用物質であれば、インテグリンを活性化するための最も優れた手法となるであろうという戦略を立てた。ここでは、限定するものではないが、炎症性疾患が新規の小分子によるCD11b/CD18の活性化によって軽減され得ることが示されている。これは、インテグリン活性化が、限定するものではないが、種々の炎症性及び自己免疫性の疾患及び状態を治療するための、新規の、有用な、薬理学的に標的とすることができる方法であることを示している。本発明は、インテグリン及びインテグリン発現細胞の生物学的機能を調節するための、現在文献中で実践されている抗接着戦略に代わるものとしての、新規の戦略を記載している。生物製剤、抗体、抗体断片、タンパク質、脂質、オリゴヌクレオチド、及び化学的化合物等の多くの異なる種類の薬剤が、インテグリンを活性化することができる。
【0009】
CD11b/CD18を含む、β2インテグリンを調節する有用なアゴニスト及び組成物の重要な要件は、それらが、細胞、組織、及び動物の生存に悪影響を及ぼさないことである。そのようなアゴニスト、組成物、及び方法を記載することが本発明の目的である。さらに、本発明のアゴニスト及び方法による処置から予想される、ごく一部のネイティブな受容体のインビボでの一過性の活性化が、生理的に関連のあるモデル系において生物学的効果を有することを示すことが本発明の目的である。さらに、本発明は、他の関連する利点を提供する。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、有効量のβ2インテグリンアゴニスト及び医薬として許容される担体を含むβ2インテグリンアゴニストの医薬製剤を提供する。
【0011】
本発明は、β2インテグリンをβ2インテグリンアゴニストと相互作用させることによって、β2インテグリンを活性化する方法を提供する。
【0012】
本発明はまた、有効量のβ2インテグリンアゴニストを投与し、β2インテグリンを活性化することによって、患者を治療する方法を提供する。
【0013】
本発明は、β2インテグリンアゴニストを炎症を有する患者に投与し、β2インテグリンを活性化し、炎症を軽減することによって、炎症を治療する方法を提供する。
【0014】
本発明はさらに、β2インテグリンアゴニストを患者に投与し、β2インテグリンを活性化することによって、腎虚血−再灌流(I/R)傷害を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0015】
本発明は、ステント等の装置を挿入する前にβ2インテグリンアゴニストを投与し、β2インテグリンを活性化することによって、患者の再狭窄を低減させる方法を提供する。
【0016】
本発明は、β2インテグリンアゴニストをコーティングしたステント等の装置を投与し、β2インテグリンを活性化することによって、患者の再狭窄を低減させる方法を提供する。
【0017】
本発明はまた、β2インテグリンの活性を調節するβ2インテグリン内の部位を特定し、結合ポケットの正確な三次元構造を決定し、この結合ポケットと相互作用することができる小分子を同定することによって、β2インテグリンの小分子モジュレーターの同定のためのアッセイを行なう方法を提供する。
【0018】
本発明は、β2インテグリンアゴニストを投与し、β2インテグリンアゴニストのβ2インテグリンへの結合を検出し、疾患の存在を確認することによって、患者の疾患を検出する方法を提供する。
【0019】
本発明はまた、有効量のβ2インテグリンアゴニストを投与し、β2インテグリンを活性化することによって、患者の全般的な健康を改善する方法を提供する。
【0020】
本発明の他の利点は、添付の図面と関連させて検討するときに、以下の詳細な説明を参照することによって、より良く理解されるようになるので、容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1A−1Iは、ロイカドヘリンがCD11b/CD18依存的な細胞接着を増加させることを示す。図1Aは、LA1、LA2、LA3及びLA−Cの化学構造を示し;図1B〜1Eは、増加量のLA1、LA2、LA3、及びLA−Cの存在下で固相化Fgに接着しているインプットのK562 CD11b/CD18細胞(黒塗りの丸)及びK562細胞(白塗りの丸)のパーセンテージを示す用量応答曲線を示し;図1Fは、ブロッキング抗体IB4及び44aの非存在下又は存在下での、LA1〜3によって誘導されるK562 CD11b/CD18のFgへの接着を示すヒストグラムを示し、また、生理的Ca2+及びMg2+イオン(Con)の存在下での、並びに既知のアゴニストMn2+があるときの接着の参照レベルも示し(示したデータは平均+SEMである);図1Gは、基本レベルの接着(Con)と比較したときの、LA1〜3の非存在下(DMSO)又はLA1〜3の存在下での、WT(CD11b+/+)及びCD11b−/−好中球の固相化Fgへの接着を示すヒストグラムを示し(示したデータは、平均+SEMである);図1Hは、ブロッキング抗体(IB4、44a)の非存在下又は存在下での、LA1〜3によって誘導されるK562 E320A細胞の固相化Fgへの結合を示すヒストグラムを示し、また、Ca2+及びMg2+イオン(Con)、並びにMn2+があるときのK562 E320A接着の参照レベルも示し(示したデータは、平均+SEMである);図1Iは、LA1及びLA2の非存在下(DMSO)又はLA1及びLA2の存在下での、組換えGST−αA−ドメインコンストラクトの固相化Fgへの結合を示すヒストグラムを示し、また、タンパク質の非存在下で(−)、又はGSTコンストラクトのみ(GST)を用いて得られたバックグラウンドシグナルを示す(示したデータは、平均+SEMである)。
【0022】
図2図2A−2Iは、ロイカドヘリンが細胞遊走に影響を及ぼすことを示す。図2A.fMLP勾配に応答した、化合物LA1、LA2、及びLA3の非存在下(DMSO)又は化合物LA1、LA2、及びLA3の存在下での、Zigmondチャンバー内での遊走するWT好中球の解析を示す軌跡プロット(4回以上の独立した実験/条件からの>50細胞/条件)。タイムラプスビデオ顕微鏡観察による様々な時点での代表的な細胞画像も示されている。スケールバーは25ミクロンを表し;図2B〜2Eは、平均変位(2B)、平均速度(2C)、方向持続(2D)、及び平均変位二乗プロット(2E)の定量的解析が、細胞運動性に対するロイカドヘリンの効果を示すことを示す。線は、平均+SEMを示す。***p<0.0001;2Fは、fMLPに応答した、LA1、LA2、及びLA3の非存在下(DMSO)又はLA1、LA2、及びLA3の存在下での、化学遊走するWT好中球におけるCD11b局在の蛍光画像を示す。CD11b(緑)及びF−アクチン(赤)について染色された遊走好中球の代表的な共焦点及び位相差画像が示されている。スケールバーは5ミクロンを表し;図2G〜2Iは、HUVEC層を横断するTHP−1細胞の経内皮遊走を示す。2G.LA1の非存在下(DMSO)又はLA1の存在下で、ケモカインMCP−1勾配に応答して、TNFaで刺激されたHUVEC層(赤)を横断して経内皮遊走するTHP−1細胞(緑)を示す代表的な共焦点画像(10×)。図2HはHUVECに接着したTHP−1の定量を示すヒストグラムである。図2Iは経内皮遊走したTHP−1細胞の定量を示すヒストグラムであ。示したデータは、平均+SEMである。***p<0.0001
【0023】
図3図3A−3Lは、ロイカドヘリンがインビボで炎症性白血球動員を減少させ、インビボで器官機能を保持することを示す。図3A〜3Bは、様々な処置群(チオグリコレートのみ、又はビヒクル(C)、LA1、LA2、もしくはLA3の投与後のチオグリコレート注射)に由来する、チオグリコレートの腹腔内注射4時間後のWTマウス(A)又はCD11b−/−マウス(B)の腹水中の好中球の総数を示す棒グラフである。生理食塩水注射を対照として用いた(n=4〜9匹/群)。示したデータは、平均+SEMである。p<0.05、**p<0.001、***p<0.0001、ns=有意ではない(一元ANOVA)。図3CはLA1の非存在下(塗りつぶされた黒の四角)又はLA1の存在下(塗りつぶされていない赤の丸)での、チオグリコレート注射から4時間、12時間、及び24時間後のWT動物の腹水中の好中球の数を示すグラフである。チオグリコレート注射の非存在下での腹膜好中球も示されている(塗りつぶされていない黒の四角)。**p<0.001、***p<0.0001、ns=有意ではない。図3Dはチオグリコレート誘導性炎症を有さない(−チオ)又はチオグリコレート誘導性炎症を有する(+チオ)WTマウス(n=3/群)のDMSO又はLA1処置の4時間後の様々な器官で検出された好中球の比を示す棒グラフである。BMは骨髄を示し;LIは肝臓を示し;SPは脾臓を示し;LUは肺を示し;Hは心臓を示し;AMは腹筋を示し;Pは膵臓を示し;BOは腸を示し;Kは腎臓を示す。示したデータは、平均+SDである。図3E〜Fはビヒクル(DMSO)又はLA1で処置したラットのバルーン障害の21日後の動脈の代表的な顕微鏡写真である。矢印は、新生内膜肥厚(neoinitmal thikening)を示す。図3G〜HはDMSO又はLA1で処置したラットのバルーン障害の3日後の代表的な動脈の顕微鏡写真である。矢印は、CD68マクロファージを示す。図IはDMSO又はLA1で処置したラットの損傷動脈の形態計測解析によって決定された新生内膜対中膜比を示す棒グラフ(n=7〜9匹/群)である。示したデータは、平均+SEMである。p<0.05。図JはDMSO又はLA1で処置したラットの(損傷3日後の)損傷動脈におけるマクロファージ浸潤の定量を示す棒グラフ(n=12匹/群)である。示したデータは、平均+SEMである。***p<0.0001。図3K〜LはアゴニストLA1がアンタゴニストM1/70よりも良好に腎臓損傷を改善することを示すグラフである。図3Kは様々な時点での未処置マウス(生理食塩水)、アンタゴニスト処置マウス(M1/70)、及びLA1処置マウスにおける糸球体好中球の数を示すグラフ(n=3〜4匹/群、0dの時点(この場合、n=2)を除く)である。示したデータは、平均+SEMである。p<0.05。図3Kは様々な時点での未処置マウス(生理食塩水)、アンタゴニスト処置マウス(M1/70)、及びLA1処置マウスにおける測定されたタンパク尿をプロットしたグラフ(n=3〜8匹/群、0dの時点(この場合、n=2)を除く)である。示したデータは、平均+SEMである。p<0.05。
【0024】
図4図4A−4Fは、炎症性好中球動員の遮断がロイカドヘリンの除去によって覆られ得ることを示す。図4Aは、ゼブラフィッシュ尾びれ損傷モデルを示し;図4B〜4Cは、損傷のない(4B)及び損傷のある(4C)3dpf幼生の尾の顕微鏡写真(左)及び蛍光画像(右)であり、ビヒクル(DMSO)、LA1、及びLA2で処置したゼブラフィッシュの代表的な画像は、尾での好中球(緑)蓄積を示し;図4Dは、ビヒクル(対照)、LA1、及びLA2で処置したゼブラフィッシュ幼生の尾びれ損傷部位付近の好中球の数の定量を示す棒グラフである(1群当たりn=12〜16匹のゼブラフィッシュ幼生)。示したデータは、平均+SEMである。***p<0.0001(一元ANOVA);図4Eは、化合物LA1及びLA2の除去4時間後の尾での好中球(緑)蓄積を示す幼生の尾の代表的な顕微鏡写真(左)及び蛍光画像(右)を示し;図4Fは、LA1及びLA2の除去4時間後の尾びれ損傷部位付近の好中球の数の定量を示す棒グラフである(1群当たりn=8〜12匹の幼生)。示したデータは、平均+SEMである。ns=有意ではない(一元ANOVA)。
【0025】
図5図5は、ロイカドヘリンが表面CD11b/CD18発現に影響を及ぼさないことを示す。mAb IB4及び44a(黒)並びにアイソタイプIgG2a対照mAb(灰色)を用いた、生きたK562 CD11b/CD18の表面でのCD11b/CD18発現のレベルを示すFACS解析。示したデータは、少なくとも3回の独立した実験を代表するものである。
【0026】
図6図6は、ロイカドヘリンがCD11b/CD18を内部プールから動員せず、ヒト好中球での表面CD11b/CD18発現に影響を及ぼさないことを示す。mAb IB4(黒)及びアイソタイプIgG2a対照mAb(灰色)を用いた、生きたヒト好中球の表面でのCD11b/CD18発現のレベルを示すFACS解析。好中球を、ビヒクル(DMSO)、PMA、LPS、又はロイカドヘリンLA1〜3の存在下で抗体とともにインキュベートし、方法の節に記載されているように解析した。示したデータは、2〜3回の独立した実験を代表するものである。それは、LPS及びPMAによる好中球活性化が、予想されるCD11b/CD18の表面発現の増加をもたらすが、ロイカドヘリン処置は、CD11b/CD18表面発現の増加を全くもたらさないことを示している。
【0027】
図7図7A−7Cは、ロイカドヘリンが真のアゴニストであり、アゴニストMn2+イオンの存在下で細胞接着を阻害しないことを示す。図7A〜CはアゴニストMn2+イオン(1mM)の存在下及び増加量のLA1(A)、LA2(B)、及びLA3(C)の存在下で固相化Fgに接着しているインプットK562 CD11b/CD18細胞のパーセンテージを示す用量応答曲線である。示したデータは、3個の独立したウェルの平均+SEMであり、少なくとも2回の独立した実験を代表するものである。
【0028】
図8図8A−8Cは、ロイカドヘリン依存的なCD11b/CD18活性化がリガンドタイプに非依存的であることを示す。図8A〜Cは、ロイカドヘリンが、用量依存的な様式で、CD11b/CD18のiC3bへの結合を増加させる。増加量のLA1(A)、LA2(B)、及びLA3(C)の存在下で固相化iC3bに接着しているインプットK562 CD11b/CD18細胞のパーセンテージを示す用量応答曲線である。示したデータは、6個の独立したウェルの平均+SEMであり、少なくとも3回の独立した実験を代表するものである。
【0029】
図9図9は、ロイカドヘリン依存的なCD11b/CD18活性化がリガンドタイプに非依存的であることを示す。ロイカドヘリンは、CD11b/CD18のICAM−1への結合を増加させる。バッファーのみ(各1mMのCa2+及びMg2+イオンを含む)又はロイカドヘリンLA1、LA2、もしくはLA3の存在下で固相化ICAM−1に接着するK562 CD11b/CD18細胞の相対的な結合(インプット細胞のパーセンテージとして表されている)を示すヒストグラム。示したデータは、6〜9個の独立したウェルの平均+SEMであり、少なくとも3回の独立した実験を代表するものである。***p<0.0001
【0030】
図10図10A−10Cは、ロイカドヘリン依存的なCD11b/CD18活性化が細胞型に非依存的であることを示す。図10A〜Cは、ロイカドヘリンが、用量依存的な様式で、THP−1細胞のFgへの結合を増加させる。増加量のLA1(A)、LA2(B)、及びLA3(C)の存在下で固相化Fgに接着しているインプットTHP−1細胞のパーセンテージを示す用量応答曲線。示したデータは、6個の独立したウェルの平均+SEMであり、少なくとも3回の独立した実験を代表するものである。
【0031】
図11図11は、ロイカドヘリンがK562細胞によるiC3bオプソニン化RBCの結合を増加させることを示す。EDTA(10mM)、対照(各1mMのCa2+及びMg2+イオン)、活性化Mn2+イオン(1mM)、又はロイカドヘリンLA1〜3の存在下でのiC3bオプソニン化ヒツジ赤血球(RBC)(EiC3b)のCD11b/CD18発現K562細胞への相対的な結合を示し、ロゼットを示す全細胞のパーセンテージとして表されているヒストグラム。各々のヒストグラムは、代表的な実験(実施された3回のうちの1回)の三連測定の平均+SEMを表す。***p<0.0001。CD11b/CD18は既知の貪食受容体でもあるので、これらの結果は、LA1〜3がCD11b/CD18の貪食機能も上方調節することを示している。
【0032】
図12図12A−12Eは、CD11b A−ドメインの活性化感受性領域内でのLA1〜3の結合のコンピュータモデルを示す模式図である。図12A及び12Cは、活性化感受性F−α7領域内でのLA1(緑の棒モデル)及びLA2(青の棒モデル)のドッキングを示す、その開いた立体構造のαA−ドメイン(赤銅色のリボン)のモデルを示す。MIDAS部位の金属イオンは、灰色の球として示され;図12Eは、活性化感受性F−α7領域内でのLA3(黄色の棒モデル)のドッキングを示す、その開いた立体構造のαA−ドメイン(青のリボン)のモデルを示す。LA3様化合物(12E)を用いた研究と一致して、ロイカドヘリンLA1及びLA2は、その最も疎水性の部分が、ヘリックスα7とヘリックスα1とF鎖の間の疎水性ポケットと相互作用するように配向していることが分かり、結合ポケットを形成する疎水性残基(強調されている)は、α7のLeu305、Ile308、及びLeu312、α1のPhe156、V160、Leu164、F鎖のTyr267、Ile269、並びにIle236、Val238、Ile135、Phe137、Phe171を含む他の疎水性ポケット残基を含み、ロイカドヘリン化合物の親水性カルボン酸部分は、疎水性ポケットとは離れた方向を向き、Lys166及び/又はLys168とのイオン相互作用を形成する可能性があり;図12Bは、ドッキングした構造(12A)からのαA−ドメイン(赤銅色のリボン)の活性化感受性F−α7領域の拡大図を示す。この2つの図は互いに90°回転したものであり、活性化感受性疎水性領域の相互作用している残基は、赤銅色の棒として示され、標識され、破線は、LA1とαA−ドメインの間の潜在的な水素結合相互作用を強調しており;図12Dは、ドッキングした構造(12B)からのαA−ドメイン(赤銅色のリボン)の活性化感受性F−α7領域の拡大図を示す。2つの図は互いに90°回転したものであり、活性化感受性疎水性領域の相互作用している残基は、赤銅色の棒として示され、標識され、破線は、LA2とαA−ドメインの間の潜在的な水素結合相互作用を強調している。
【0033】
図13図13は、ロイカドヘリンが生きたK562細胞上の全長インテグリンCD11b/CD18を活性化することを示す。アゴニストLA1の非存在下(Ca、Mg、濃灰色のヒストグラム)又はアゴニストLA1の存在下(赤のヒストグラム)又はMn2+イオンの存在下(青ヒストグラム)での活性化感受性抗体mAb 24と細胞表面に発現したCD11b/CD18との反応性を示すFACS解析。CD11b/CD18表面発現のレベルを、LA1の非存在下(Ca、Mg)及びLA1の存在下(黒のヒストグラム)で、mAb IB4を用いて解析した。これは、全CD11b/CD18表面発現に差がないことを示している。アイソタイプ対照mAb(薄灰色)による結合も示されている。示したデータは、少なくとも3回の独立した実験を代表するものである。データは、LA1の存在下でのCD11b/CD18とのmAb24反応性の、構成的活性型CD11b/CD18で以前に観察されたレベルへの明らかな増加を示している。
【0034】
図14図14は、ロイカドヘリンが、IMB−10と比べて、CD11b/CD18に対するより大きい親和性を示すことを示す。LA1については4mM及びIMB−10については>50mMのEC50値で、増加量のLA1及びIMB−10(4)の存在下で固相化Fgに接着しているインプットK562 CD11b/CD18細胞のパーセンテージを示す用量応答曲線。示したデータは、6個の独立したウェルの平均+SEMであり、少なくとも3回の独立した実験を代表するものである。
【0035】
図15図15A−15Eは、ロイカドヘリンがインビトロで3Dゲル中の好中球遊走に影響を及ぼさないことを示す。図15Aは、ロイカドヘリンLA1の非存在下(DMSO)又はロイカドヘリンLA1の存在下で3Dコラーゲンゲル中のfMLP勾配に向かって遊走するWTB6好中球を撮影した様々な一連のタイムラプス静止画像である。各々の動画からの45分間にわたる40個の個々の細胞の遊走トラックも提示されている。図15B〜Eでは、各条件に由来する少なくとも40個の好中球の定量解析も示され、これは、45分間の記録期間での全細胞変位(B)、遊走速度(C)、及び蛇行(meandring)指数(D)の有意差を示さない。また、時間平方根に対する変位平方のプロット(E)は、両方の条件下での有向性細胞遊走を示している。
【0036】
図16図16A−16Dは、ロイカドヘリンがインビトロで細胞傷害性を示さないことを示す。K562 CD11b/CD18細胞を、増加量のLA1(16A)、LA2(16B)、LA3(16C)、及びLA−C(16D)の存在下、37℃でインキュベートし、生細胞の数を24時間後に測定した。示したデータは、三連で実施されたアッセイの平均+SEMであり、少なくとも2回の独立した実験を代表するものである。
【0037】
図17図17A−17Cは、ロイカドヘリンがインビトロで好中球細胞傷害性を示さないことを示す。WT B6好中球を、増加量のLA1(A)、LA2(B)、及びLA3(C)の存在下、37℃でインキュベートし、生細胞の数を、4時間の全インキュベーションの後、MTS試薬を用いて測定した。示したデータは、三連で実施されたアッセイの平均+SEMであり、少なくとも2回の独立した実験を代表するものである。結果は、これらの化合物が、50μMもの濃度で初代好中球に対して毒性がないことを明白に示している。
【0038】
図18図18A−18Bは、ロイカドヘリンがインテグリンクラスタリング及び外側から内側へのシグナル伝達を誘導しないことを示す、K562 CD11b/CD18細胞表面でのCD11bクラスタリングの蛍光画像を示す。インテグリン活性化及びリガンド結合は、細胞表面でのインテグリンのクラスタリングを生じさせ、外側から内側へのシグナル伝達を引き起こす(5,6)。LA1〜3はCD11b/CD18に結合して、それを活性化するので、そのような結合だけでインテグリン媒介性の外側から内側へのシグナル伝達が誘発され、それにより細胞にとってリガンドがインテグリンに結合した状態とよく似た状況が生じ、これが白血球の寿命及び機能に対して深刻な結果をもたらし得ると考えられる。検討するために、本発明者らは、共焦点顕微鏡法を、細胞表面でのCD11b/CD18クラスタリングのイメージングに用いた(5)。図18A〜Bでは、細胞懸濁液を、リガンドFgの非存在下(A)又はリガンドFgの存在下(B)で、DMSO、LA1、LA2、又はLA3とともにインキュベートした。CD11bについて染色した細胞(緑)の代表的な蛍光画像及びDIC画像が示されている。ImageJで解析した、選択された細胞のCD11b蛍光強度の3D表示も示されている。スケールバーは20mmを表す。細胞は、リガンドの非存在下での検出可能なCD11b/CD18マクロクラスタリングを示さなかったが(A、DMSO)、外部からFgを添加したときに、高度のクラスタリングを示した(B、DMSO)。同様に、LA1〜3による処理は、外部からFgを添加したときにのみインテグリンマクロクラスタリングを示し、これは、LA1〜3がインテグリンリガンド模倣体(mimics)でないことを示唆している。
【0039】
図19図19は、ロイカドヘリンがCD11b/CD18媒介性の外側から内側へのシグナル伝達を誘導しないことを示す。インテグリン活性化及びリガンド結合は、p38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ/細胞外シグナル調節キナーゼ(MAPK/ERK)経路の活性化を含む、外側から内側へのシグナル伝達も引き起こし(5,6)、それにより、大部分の細胞でアンカレッジ依存的な生存促進性シグナルを模倣する(7)。さらに、それは、炎症促進性NF−kBシグナル伝達を増強する際に、炎症刺激と相乗作用する(8〜10)。さらに、既知のCD11b/CD18アゴニストMn2+(11)並びに活性化mAb(12)及びそのリガンド(5)は、ERK1/2リン酸化を誘導するが、突然変異体の構成的活性型インテグリンを発現するノックイン動物由来の細胞は誘導しない(13)。LA1〜3の効果を調べるために、本発明者らは、LA1〜3で処理した細胞でERK1/2リン酸化を解析した。K562 CD11b/CD18細胞を、DMSO(対照)、LA1、LA2、LA3、又はリガンドFgとともにインキュベートし、その後、1D SDS−PAGE、次いで、リン酸化ERK1/2(pERK)、全ERK1/2、及びGAPDHについてのウェスタンブロットにより、細胞ライセートを解析した。それは、LA1〜3処理がリガンドFg又はホルボールエステルPMAによる処理とは対照的に(14)、ERK1/2リン酸化(pERK)を誘導しなかったことを示している。それゆえ、本発明者らは、ロイカドヘリンが、いずれの場合にも、基礎レベルを超えるリガンドの非存在下又は存在下で、ERKリン酸化を引き起こす外側から内側へのシグナル伝達を誘導しないという結論を下している。
【0040】
図20図20A−20Bは、対照化合物(LA−C)がWTラットでのバルーン障害による新生内膜肥厚に対していかなる影響も及ぼさないことを示す。図9Aは、対照化合物LA−Cで処置した動物由来のバルーン障害21日後のラット動脈の代表的な顕微鏡写真である。矢印は、動脈における新生内膜肥厚を示し;図9Bは、DMSO及びLA−Cで処置した動物由来の損傷ラット動脈の形態計測解析によって測定された新生内膜対中膜比を示す棒グラフである(1群当たりn=7〜9匹の動物)。示したデータは、平均+SEMである。ns=有意ではない(一元ANOVA)。
【0041】
図21図21A−21Dは、ロイカドヘリンLA3がラットにおけるバルーン障害後の新生内膜肥厚を有意に低下させることを示す。図21Aはビヒクル(DMSO)又はLA3で処置した動物由来のバルーン障害21日後のラット動脈の代表的な顕微鏡写真である。矢印は、新生内膜肥厚を示す。図21BはDMSO又はLA3で処置したラット由来のバルーン障害3日後の代表的な動脈の顕微鏡写真である。矢印は、CD68マクロファージを示す。図21CはDMSO又はLA3で処置したラット由来の損傷動脈の形態計測解析によって測定された新生内膜対中膜比を示す棒グラフである(1群当たりn=7〜9匹の動物)。示したデータは、平均+SEMである。**p<0.001。D.DMSO又はLA3で処置したラット由来の損傷動脈(損傷3日後)におけるマクロファージ浸潤の定量を示す棒グラフ(1群当たりn=12)。示したデータは、平均+SEMである。***p<0.0001
【0042】
図22図22A−22Dは、ロイカドヘリンLA2が損傷組織への好中球動員も妨げ、この炎症性好中球動員の遮断がLA2除去によって覆され得ることを示す。図22A〜BではLA2で処置したゼブラフィッシュ由来の損傷のない(A)及び(B)損傷のある3dpf幼生の尾の代表的な顕微鏡写真(左)及び蛍光画像(右)は、DMSOで処置したゼブラフィッシュと比べて、尾での好中球(緑)蓄積の減少を示す(図4A〜B、本文)。図22CはLA2の除去4時間後の尾での好中球(緑)蓄積を示す幼生の尾の代表的な顕微鏡写真(左)及び蛍光画像(右)。D.ビヒクル(対照)、及びLA2で処置したゼブラフィッシュ幼生の尾びれ損傷部位付近の好中球の数、並びにLA2の除去4時間後の尾びれ損傷部位付近の好中球の数の定量を示す棒グラフ(1群当たりn=12〜16匹のゼブラフィッシュ幼生)である。示したデータは、平均+SEMである。***p<0.0001、ns=有意ではない。
【0043】
図23図23は、ロイカドヘリン処置がゼブラフィッシュ幼生における好中球細胞数の損失をもたらさないことを示す。3dpfゼブラフィッシュ幼生全体の代表的な蛍光画像(上)及び損傷を受けた魚の尾の顕微鏡写真(下)は、各ゼブラフィッシュ幼生における好中球(緑)を示す(1群当たりn=12〜16匹のゼブラフィッシュ幼生)。LA1及びLA2で処置したゼブラフィッシュは、化合物の自家蛍光のために、蛍光画像中でわずかにより高い緑色のバックグラウンドを示す。
【0044】
図24図24は、CD11b A−ドメインの活性化感受性領域内の様々なロイカドヘリンの結合についてのコンピュータモデルによる2D投射を示す模式図を示す。ロイカドヘリン化合物の親水性カルボン酸部分は、疎水性ポケットとは離れた方向を向き、Lys166及び/又はLys168とのイオン相互作用を形成する可能性がある。
【0045】
図25図25A−25Bは、外側から内側へのシグナル伝達の解析を示す。K562 CD11b/CD18細胞を、DMSO、LA1、LA2、LA3、又はリガンドFgとともにインキュベートし、その後、細胞ライセートを、リン酸化ERK1/2(pERK)、全ERK1/2(12A)、及びリン酸化AKT(pAKT)、全AKT、並びにGAPDH(12B)について解析した。
【0046】
図26図26A−26Dは、LA1の非存在下及び存在下でのLPS(10ng/mL)による刺激時のWT B6マクロファージ及び好中球による炎症促進性因子の分泌を示すヒストグラムである。
【0047】
図27図27は、基底状態(対照)での、及びLA1の非存在下(灰色)又はLA1の存在下(赤線)、TNFaで活性化したときの、ヒト好中球におけるROSのレベルを示すグラフである。
【0048】
図28図28は、MyD88の解析を示す。ヒトTHP−1細胞を、規定量の時間、LPS、LPS及びLA1、又はLA1のみとともにインキュベートし、その後、細胞ライセートを、1D−SDS PAGE、次いで、MyD88及びGAPDHについてのウェスタンブロットで解析した。
【0049】
図29図29は、CD11b/CD18アゴニストLA1の非存在下又は存在下でのCLPによるWTマウスの生存を示す生存曲線を示す。
【0050】
図30図30は、進行性抗GBM腎炎の開始8日後のビヒクル処置動物(対照)及びロイカドヘリン処置動物の血清suPARレベルを示すヒストグラムである。
【0051】
図31図31は、虚血を誘導する30分前にDMSO、LA1、又はLA2で処置したWTマウスの腎機能を示すグラフである。再灌流の24時間後にsCr測定を実施した。***p<0.0001(n=5匹のマウス/群)
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明は一般に、ロイカドヘリンと称される化学的化合物を含む、様々な薬剤、及びβ2インテグリン、特に、CD11b/CD18を活性化するための方法に関する。言い換えれば、本発明の薬剤は、アンタゴニストではなく、β2インテグリンのアゴニストとして作用する。このアゴニスト及び方法は、疾患の中でも特に、炎症性疾患及び自己免疫疾患を治療するのに有用である。
【0053】
定義
【0054】
「薬剤」という用語は、化学的化合物、ペプチド、タンパク質、抗体、抗体断片、脂質、核酸又はポリマーを指す。
【0055】
「アルコキシ」という用語は、それに結合した酸素を有するアルキル基を指す。代表的なアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert−ブトキシ等が挙げられる。
【0056】
「アルコキシアルキル」という用語は、アルコキシ基で置換されたアルキル基を指し、一般式アルキル−O−アルキルによって表すことができる。
【0057】
「アルキル」という用語は、直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、及びシクロアルキル置換アルキル基を含む、飽和脂肪族基の基を指す。好ましい実施形態では、直鎖又は分枝鎖アルキルは、その骨格中に30個以下(例えば、直鎖の場合は−C30、分枝鎖の場合は−C30)、より好ましくは20個以下の炭素原子を有する。
【0058】
さらに、本明細書、実施例、及び特許請求の範囲を通して用いられる「アルキル」という用語は、非置換アルキル基と置換アルキル基の両方を含むことが意図され、そのうちの後者は、炭化水素骨格の1個以上の炭素上の水素を置換する置換基を有するアルキル部分を指し、これには、ハロアルキル基、例えば、トリフルオロメチル及び2,2,2−トリフルオロエチル等が含まれる。
【0059】
アシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、又はアルコキシ等の化学部分に関連して用いられるときの「Cx−y」という用語は、x〜y個の炭素を鎖中に含む基を含むことを意味する。C0アルキルは、基が末端位置にある場合には水素を示し、内部の場合には結合を示す。1−6アルキル基は、例えば1〜6個の炭素原子を鎖中に含む。
【0060】
「アミン」及び「アミノ」という用語は、当技術分野で認識されており、非置換アミンと置換アミンの両方、及びそれらの塩、例えば、以下によって表すことができる部分を指す。
【化1】
【0061】
式中、、R10及び10’は、各々独立に、水素もしくはヒドロカルビル基を表すか、又は及び10は、それらが結合しているN原子と一緒になって、4〜8個の原子を環構造中に有する複素環を完成させる。
【0062】
本明細書で用いられる「アミノアルキル」という用語は、アミノ基で置換されたアルキル基を指す。
【0063】
本明細書で用いられる「アラルキル」という用語は、アリール基で置換されたアルキル基を指す。
【0064】
本明細書で用いられる「アリール」という用語は、環の各原子が炭素である置換又は非置換単環芳香族基を含む。好ましくは、環は、5〜7員環、より好ましくは、6員環である。「アリール」という用語はまた、2個以上の炭素が2個の隣接する環に共通する2個以上の環式環を有する多環式環系を含み、ここで、これらの環の少なくとも1つは芳香族であり、例えば、他の環式環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び/又はヘテロシクリルであることができる。アリール基としては、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、フェノール、アニリン等が挙げられる。
【0065】
本明細書で用いられる「炭素環」、「カルボシクリル」及び「炭素環式」という用語は、環の各原子が炭素である非芳香族飽和又は不飽和環を指す。好ましくは、炭素環は、3〜10個の原子、より好ましくは5〜7個の原子を含む。
【0066】
本明細書で用いられる「カルボシクロアルキル」という用語は、炭素環基で置換されたアルキル基を指す。
【0067】
本明細書で用いられる「エーテル」という用語は、酸素を介して別のヒドロカルビル基に連結されたヒドロカルビル基を指す。したがって、ヒドロカルビル基のエーテル置換基は、ヒドロカルビル−O−であることができる。エーテルは、対称又は非対称であることができる。エーテルの例としては、複素環−O−複素環及びアリール−O−複素環が挙げられるが、これらに限定されない。エーテルは、一般式アルキル−O−アルキルによって表すことができる「アルコキシアルキル」基を含む。
【0068】
本明細書で用いられる「ハロ」及び「ハロゲン」という用語は、ハロゲンを意味し、クロロ、フルオロ、ブロモ、及びヨードを含む。
【0069】
本明細書で用いられる「ヘテロアラルキル」という用語は、ヘタリール基で置換されたアルキル基を指す。
【0070】
「ヘテロアリール」という用語は、その環構造が、少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは1〜4個のヘテロ原子、より好ましくは1又は2個のヘテロ原子を含む、置換又は非置換芳香族単環構造、好ましくは5〜7員環、より好ましくは5〜6員環を指す。「ヘテロアリール」という用語はまた、2個以上の炭素が2個の隣接する環に共通する2個以上の環式環を有する多環式環構造を含み、ここで、これらの環の少なくとも1つは複素環式芳香族であり、例えば、他の環式環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び/又はヘテロシクリルであることができる。ヘテロアリール基としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、及びピリミジン等が挙げられる。
【0071】
本明細書で用いられる「ヘテロ原子」という用語は、炭素又は水素以外の任意の元素の原子を意味する。好ましいヘテロ原子は、窒素、酸素、及び硫黄である。
【0072】
本明細書で用いられる「ヘテロシクリルアルキル」という用語は、複素環基で置換されたアルキル基を指す。
【0073】
「ヘテロシクリル」、「複素環」及び「複素環式」という用語は、その環構造が、少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは1〜4個のヘテロ原子、より好ましくは1又は2個のヘテロ原子を含む、置換又は非置換非芳香環構造、好ましくは3〜10員環、より好ましくは3〜7員環を指す。「ヘテロシクリル」及び「複素環式」という用語はまた、2個以上の炭素が2個の隣接する環に共通する2個以上の環式環を有する多環式環構造を含み、ここで、これらの環の少なくとも1つは複素環式であり、例えば、他の環式環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び/又はヘテロシクリルであることができる。ヘテロシクリル基としては、例えば、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリン、ラクトン、ラクタム等が挙げられる。
【0074】
本明細書で用いられる「ヒドロキシアルキル」という用語は、ヒドロキシ基で置換されたアルキル基を指す。
【0075】
本明細書で用いられる「ロイカドヘリン」という用語は、コアフラニルチアゾリジノン、フラニルイミダゾリジノン、フラニルオキサゾリジノン、又はフラニルイソオキサゾリジノンモチーフを特徴とする本明細書に記載のβ2インテグリンのアゴニスト化合物を指す。
【0076】
アシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、又はアルコキシ等の化学部分に関連して用いられるときの「低級」という用語は、置換基中に10個以下の原子、好ましくは6個以下の原子が存在する基を含むことを意味する。「低級アルキル」は、例えば、10個以下、好ましくは6個以下の炭素原子を含むアルキル基を指す。特定の実施形態では、本明細書で定義されるアシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、又はアルコキシ置換基は、それらが、単独で現れるものであれ、ヒドロキシアルキル及びアラルキル(この場合、例えば、アルキル置換基中の炭素原子を数えるとき、アリール基内の原子は数えない)という記述中にあるように、他の置換基との組合せで現れるものであれ、それぞれ、低級アシル、低級アシルオキシ、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、又は低級アルコキシである。
【0077】
「ポリシクリル」、「多環」及び「多環式」という用語は、2個以上の原子が2個の隣接する環に共通する2個以上の環(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール及び/又はヘテロシクリル)を指し、例えば、これらの環は「縮合環」である。多環の環の各々は、置換又は非置換であることができる。特定の実施形態では、多環の各々の環は、環中に3〜10個、好ましくは5〜7個の原子を含む。
【0078】
「置換された」という用語は、骨格の1個以上の炭素上の水素に代わる置換基を有する部分を指す。「置換」又は「で置換された」は、そのような置換が置換原子及び置換基の許容される原子価と一致し、かつ置換が、例えば、再配置、環化、脱離等によって自発的に変化しない、安定な化合物を生じさせるという絶対的条件を含むことが理解されるであろう。本明細書で用いられる場合、「置換された」という用語は、有機化合物の全ての許容可能な置換基を含むことが企図される。広範な態様では、許容可能な置換基としては、有機化合物の非環式及び環式、分枝状及び非分枝状、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族の置換基が挙げられる。許容可能な置換基は、適切な有機化合物の場合は、1個以上であることができ、同じもの又異なるものであることができる。本発明のために、窒素等のヘテロ原子は、水素置換基、及び/又はヘテロ原子の原子価を満たす本明細書に記載の有機化合物の任意の許容可能な置換基を有することができる。置換基としては、本明細書に記載の任意の置換基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(例えば、カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、又はアシル)、チオカルボニル(例えば、チオエステル、チオアセテート、又はチオホルメート)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、又は芳香族もしくは複素環式芳香族部分を挙げることができる。炭化水素鎖上で置換された部分を、それ自体、必要に応じて置換することができることが当業者に理解されるであろう。
【0079】
本明細書で用いられる「チオアルキル」という用語は、チオール基で置換されたアルキル基を指す。
【0080】
本明細書で用いられる「細胞(a cell)」という用語は、複数の細胞を含む。細胞への化合物の投与は、インビボ、エクスビボ、及びインビトロでの投与を含む。
【0081】
機能又は活性、例えば、癌細胞増殖を「阻害する」又は「抑制する」又は「低下させる」ことは、関心対象の条件もしくはパラメータを除く他の同じ条件と比較したとき、又は別の条件と比較したときに、この機能又は活性を低下させることである。
【0082】
本明細書で用いられる「調節する」という用語は、機能又は活性(例えば、細胞増殖)の阻害又は抑制、及び機能又は活性の増強を含む。
【0083】
「医薬として許容される」という語句は、当技術分野で認識されている。特定の実施形態では、この用語は、組成物、賦形剤、アジュバント、ポリマー、及び他の材料、並びに/又は健全な医学的判断の範囲内において、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、又は他の問題もしくは合併症を伴わずに人間及び動物の組織と接触させて用いるのに好適である、妥当な利益/リスク比に見合った、剤形を含む。
【0084】
本明細書で用いられる「医薬として許容される担体」という語句は、医薬として許容される材料、組成物、又はビヒクル、例えば、医薬用途又は治療用途の薬物を製剤化するのに有用な液体又は固体のフィラー、希釈剤、賦形剤、溶媒、又はカプセル化材料を意味する。各々の担体は、製剤の他の成分と適合し、かつ患者にとって有害でないという意味において、「許容される」ものでなければならない。
【0085】
医薬として許容される担体の役割を果たすことができる材料のいくつかの例としては、(1)糖、例えばラクトース、グルコース及びスクロース;(2)デンプン、例えばトウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン;(3)セルロース及びその誘導体、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース及びセルロースアセテート;(4)粉末化トラガカント;(5)モルト;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)賦形剤、例えば、ココアバター及び座薬用ワックス;(9)油、例えば、ピーナツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油;(10)グリコール、例えば、プロピレングリコール;(11)ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコール;(12)エステル、例えば、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンフリー水;(17)等張生理食塩水;(18)リンガー溶液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝溶液;並びに(21)医薬製剤中で利用される他の非毒性の適合性物質が挙げられる。
【0086】
「医薬として許容される塩」という用語は、患者の治療に好適であるか又は患者の治療と適合する酸付加塩又は塩基付加塩を意味する。
【0087】
本明細書で用いられる「医薬として許容される酸付加塩」という用語は、式I又はIIによって表される任意の塩基化合物の任意の非毒性の有機塩又は無機塩を意味する。好適な塩を形成する実例となる無機酸としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、及びリン酸、並びにオルトリン酸水素ナトリウム及び硫酸水素カリウム等の金属塩が挙げられる。好適な塩を形成する実例となる有機酸としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸、及びトリカルボン酸、例えば、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、安息香酸、フェニル酢酸、ケイ皮酸、及びサリチル酸、並びにp−トルエンスルホン酸及びメタンスルホン酸等のスルホン酸が挙げられる。一酸塩又は二酸塩のいずれかを形成することができ、そのような塩は、水和した形態、溶媒和した形態、又は実質的に無水の形態のいずれかで存在することができる。一般に、式I又はIIの化合物の酸付加塩は、水及び様々な親水性有機溶媒中で、より溶解性であり、通常、その遊離塩基の形態と比較して、より高い融点を示す。適切な塩の選択は、当業者に公知である。他の医薬として許容されない塩、例えば、シュウ酸塩は、例えば、実験的使用のための式I又はIIの化合物の単離において、又はその後の医薬として許容される酸付加塩への変換のために使用することができる。
【0088】
本明細書で用いられる「医薬として許容される塩基付加塩」という用語は、式IもしくはII又はその中間体のいずれかによって表される任意の酸性化合物の任意の非毒性の有機又は無機塩基付加塩を意味する。好適な塩を形成する実例となる無機塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、又は水酸化バリウムが挙げられる。好適な塩を形成する実例となる有機塩基としては、脂肪族、脂環式、もしくは芳香族有機アミン、例えば、メチルアミン、トリメチルアミン、及びピコリン、又はアンモニアが挙げられる。適切な塩の選択は、当業者に公知である。
【0089】
「予防する」という用語は、当技術分野で認識されており、局所再発(例えば、疼痛)等の状態、癌等の疾患、心不全等の複合性症候群、又は任意の他の医学的状態との関連で用いられるとき、当技術分野で十分に理解されており、かつ組成物を投与されていない対象と比べて、対象の医学的状態の症状の頻度を低下させるか、又は該症状の開始を遅延させる組成物の投与を含む。したがって、癌の予防は、例えば、治療されていない対照集団と比べて、予防的治療を受けている患者集団における検出可能な癌性増殖の数を低下させること、並びに/又は治療されていない対照集団と比べて、例えば、統計的に及び/もしくは臨床的に有意な量だけ、治療された集団における検出可能な癌性増殖の出現を遅延させることを含む。感染の予防は、例えば、治療されていない対照集団と比べて、治療された集団における感染の診断の数を低下させること、及び/又は治療されていない対照集団と比べて、治療された集団における感染の症状の開始を遅延させることを含む。疼痛の予防は、例えば、治療されていない対照集団と比べて、治療された集団の対象によって経験される疼痛の感覚の程度を軽減するか、又は代わりに、該疼痛の感覚を遅延させることを含む。神経学的障害の予防は、例えば、治療されていない対照集団と比べて、治療された集団の対象によって経験される神経学的症状の程度を軽減するか、又は代わりに該症状を遅延させることを含む。
【0090】
本明細書で用いられる「溶媒和物」という用語は、好適な溶媒の分子が結晶格子に組み込まれている、式IもしくはIIの化合物、又は式IもしくはIIの化合物の医薬として許容される塩を意味する。好適な溶媒は、投与される投薬量で生理的に許容し得る。好適な溶媒の例は、エタノール、水等である。水が溶媒である場合、分子は、「水和物」と呼ばれる。
【0091】
本明細書で用いられるように、及び当技術分野で十分に理解されているように、「治療」は、臨床結果を含む、有益な又は望ましい結果を得るための手法である。有益な又は望ましい臨床結果としては、検出可能なものであれ、検出不可能なものであれ、1以上の症状又は状態の軽減又は改善、疾患の程度の軽減、疾患の状態の安定化(すなわち、非悪化)、疾患の拡大の予防、疾患進行の遅延又は緩徐化、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解(部分寛解又は完全寛解を問わない)を挙げることができるが、これらに限定されない。「治療」は、治療を受けていない場合の予想される生存と比べた、生存の延長を意味することもできる。
【0092】
本発明の一態様は、式(I)の化合物に関する。
【化2】
【0093】
式中、
【0094】
Aは存在しないか、又はアルキル及びアルケニルから選択され;
【0095】
Bは存在しないか、又はアルキル、アルケニル、O、S、及びNから選択され;
【0096】
Nは、窒素及びCから選択され;
【0097】
X及びYは、独立に、O及びSから選択され;
【0098】
Zは、C、O、S、及びNから選択され;
【0099】
U、V、及びWは、独立に、CR4、O、S、及びNから選択され;
【0100】
及びは、独立に、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、チオアルキル、アリール、アラルキル、カルボキシアリール、アルコキシアルキル、アルコキシアリール、アルコキシカルボニルアリール、アミノアリール、アミドアリール、ハロアリール、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アルコキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、スルホネート、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、スルホン、アルキルスルホン、アリールスルホン、スルホキシド、アルキルスルホキシド、アリールスルホキシド、アルキルスルホンアミド、アリールスルホンアミド、スルホンアミド、ピペリジニル、モルホリニル、ピロリジニル、フェニル、ピリジル、ピリミジニル、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、トリアゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、インドリル、ナフチル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、ベンジル、ベンゾフリル、ジベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ピリドイミダゾリル、ピリミドイミダゾリル、ピリドピラゾリル、ピラゾロピリミジニル、並びに1〜6個の独立した置換基で任意に置換されているそのいずれかから選択され;
【0101】
は、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、チオアルキル、アルコキシアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、ヘテロシクリル、及びヘテロシクリルアルキルから選択され;かつ
【0102】
は存在しないか、又は水素及びアルキルから選択される。
【0103】
特定の実施形態では、ZはSである。
【0104】
特定の実施形態では、X及びYはOである。特定の他の実施形態では、X及びYはSである。特定の他の実施形態では、XはSであり、YはOである。特定の他の実施形態では、X及びYはOであり、ZはSである。特定の他の実施形態では、X、Y、及びZは、Sである。特定の他の実施形態では、X及びZはSであり、YはOである。
【0105】
特定の実施形態では、UはOであり、V及びWはCである。特定のそのような実施形態では、は水素である。特定の他の実施形態では、UはSであり、V及びWはCである。特定のそのような実施形態では、は水素である。特定の他の実施形態では、UはCであり、VはNであり、WはOである。特定のそのような実施形態では、は水素である。特定の他の実施形態では、UはCであり、VはOであり、WはNである。特定のそのような実施形態では、は水素である。
【0106】
特定の実施形態では、Bはアルキルであり、Aは存在しない。特定のそのような実施形態では、は、アルコキシカルボニル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、ヘテロシクリル、及びアルコキシカルボニルから選択される。特定の実施形態では、Bはメチレンであり、Aは存在しない。特定のそのような実施形態では、は、アルコキシカルボニル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、ヘテロシクリル、及びアルコキシカルボニルから選択される。特定のそのような実施形態では、Bはメチレンであり、Aは存在しない。
【0107】
特定の実施形態では、Aがアルキルであり、かつBが存在しない場合、はアルコキシカルボニルである。
【0108】
特定の実施形態では、AとBは両方とも存在しない。特定のそのような実施形態では、は、アルコキシカルボニル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、ヘテロシクリル、及びアルコキシカルボニルから選択される。
【0109】
特定の実施形態では、置換基は、1〜6個の独立した置換基でさらに置換されている。
【0110】
特定の実施形態では、は、フラン、フェニル、ベンジル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピロリジン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオピラン、ピペリジン、ピペラジン、及びモルホリンから選択される。特定の実施形態では、は、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、及びピロリジン、好ましくは、テトラヒドロフランから選択される。
【0111】
特定の実施形態では、はフェニル、好ましくは置換フェニルである。特定のそのような実施形態では、は、1〜5回、好ましくは1〜3回、より好ましくは1又は2回置換されたフェニルである。特定のそのような実施形態では、は、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、チオール、アミノ、アルコキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、チオアルキル、及びアルキルから、より好ましくはアルキル及びハロゲンから、例えば、メチル、フルオロ、及びクロロから独立に選択される1又は2個、好ましくは1個の置換基で置換されたフェニルである。
【0112】
特定の実施形態では、は、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、チオアルキル、アルコキシアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、ヘテロシクリル、及びヘテロシクリルアルキルから選択される。
【0113】
特定の実施形態では、は、アルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、チオアルキル、アルコキシアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、ヘテロシクリル、及びヘテロシクリルアルキルから選択される。特定の実施形態では、は水素であり、は、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、ヘテロシクリル、及びヘテロシクリルアルキル、好ましくはアリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、及びヘテロシクリルから選択される。
【0114】
特定の実施形態では、は、ピロール、フラン、ピリミジン、オキサゾール、イソオキサゾール、及びチオフェンから選択されるヘテロアリール、好ましくはフランである。特定の実施形態では、は、1〜3回、好ましくは1〜2回、より好ましくは1回置換されたフランである。特定のそのような実施形態では、は、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、ヘテロシクリル、及びヘテロシクリルアルキル、好ましくはアリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、及びヘテロシクリルから選択される置換基で1回置換されたフランである。特定の実施形態では、は、それ自体、任意に、アルキル、カルボキシル、アルコキシカルボニル、及びハロゲンで、好ましくは1〜2回置換されているアリール基で1回置換されたフラン、例えば、クロロフェニル、ジクロロフェニル、カルボキシフェニルである。
【0115】
特定の実施形態では、はアリール、好ましくはフェニルである。特定のそのような実施形態では、は、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、チオール、アミノ、アルコキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、チオアルキル、及びアルキルから独立に選択される1又は2個、好ましくは2個の置換基で置換されたフェニルである。特定のそのような実施形態では、は、ハロゲン、好ましくはブロモで1回置換されたフェニルである。
【0116】
本発明の一態様は、式(II)の化合物に関する。
【化3】
【0117】
式中、
【0118】
Aは存在しないか、又はアルキル及びアルケニルから選択され;
【0119】
Bは存在しないか、又はアルキル、アルケニル、O、S、及びNから選択され;
【0120】
Nは、窒素及びCから選択され;
【0121】
X及びYは、独立に、O及びSから選択され;
【0122】
Zは、C、O、S、及びNから選択され;
【0123】
U、V、及びWは、独立に、C、O、S、及びNから選択され;
【0124】
及びは、独立に、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、チオアルキル、アリール、アラルキル、カルボキシアリール、アルコキシアルキル、アルコキシアリール、アルコキシカルボニルアリール、アミノアリール、アミドアリール、ハロアリール、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アルコキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、スルホネート、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、スルホン、アルキルスルホン、アリールスルホン、スルホキシド、アルキルスルホキシド、アリールスルホキシド、アルキルスルホンアミド、アリールスルホンアミド、スルホンアミド、ピペリジニル、モルホリニル、ピロリジニル、フェニル、ピリジル、ピリミジニル、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、トリアゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、インドリル、ナフチル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、ベンジル、ベンゾフリル、ジベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ピリドイミダゾリル、ピリミドイミダゾリル、ピリドピラゾリル、ピラゾロピリミジニル、並びに1〜6個の独立した置換基で任意に置換されているそのいずれかから選択され;
【0125】
は、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、チオアルキル、アルコキシアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、ヘテロシクリル、及びヘテロシクリルアルキルから選択され;かつ
【0126】
は存在しないか、又は水素及びアルキルから選択される。
【0127】
特定の実施形態では、ZはSである。
【0128】
特定の実施形態では、X及びYはOである。特定の他の実施形態では、X及びYはSである。特定の他の実施形態では、XはSであり、YはOである。特定の他の実施形態では、X及びYはOであり、ZはSである。特定の他の実施形態では、X、Y、及びZは、Sである。特定の他の実施形態では、X及びZはSであり、YはOである。
【0129】
特定の実施形態では、UはOであり、V及びWはCである。特定のそのような実施形態では、は水素である。特定の他の実施形態では、UはSであり、V及びWはCである。特定のそのような実施形態では、は水素である。特定の他の実施形態では、UはCであり、VはNであり、WはOである。特定のそのような実施形態では、は水素である。特定の他の実施形態では、UはCであり、VはOであり、WはNである。特定のそのような実施形態では、は水素である。
【0130】
特定の実施形態では、Bはアルキルであり、Aは存在しない。特定のそのような実施形態では、は、アルコキシカルボニル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、ヘテロシクリル、及びアルコキシカルボニルから選択される。特定の実施形態では、Bはメチレンであり、Aは存在しない。特定のそのような実施形態では、は、アルコキシカルボニル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、ヘテロシクリル、及びアルコキシカルボニルから選択される。特定のそのような実施形態では、Bはメチレンであり、Aは存在しない。
【0131】
特定の実施形態では、Aがアルキルであり、かつBが存在しない場合、はアルコキシカルボニルである。
【0132】
特定の実施形態では、AとBは両方とも存在しない。特定のそのような実施形態では、は、アルコキシカルボニル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、ヘテロシクリル、及びアルコキシカルボニルから選択される。
【0133】
特定の実施形態では、置換基は、1〜6個の独立した置換基でさらに置換されている。
【0134】
特定の実施形態では、は、フラン、フェニル、ベンジル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピロリジン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオピラン、ピペリジン、ピペラジン、及びモルホリンから選択される。特定の実施形態では、は、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、及びピロリジン、好ましくは、テトラヒドロフランから選択される。
【0135】
特定の実施形態では、はフェニル、好ましくは置換フェニルである。特定のそのような実施形態では、は、1〜5回、好ましくは1〜3回、より好ましくは1又は2回置換されたフェニルである。特定のそのような実施形態では、は、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、チオール、アミノ、アルコキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、チオアルキル、及びアルキルから、より好ましくはアルキル及びハロゲンから、例えば、メチル、フルオロ、及びクロロから独立に選択される1又は2個、好ましくは1個の置換基で置換されたフェニルである。
【0136】
特定の実施形態では、は、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、チオアルキル、アルコキシアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、ヘテロシクリル、及びヘテロシクリルアルキルから選択される。
【0137】
特定の実施形態では、は、アルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、チオアルキル、アルコキシアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、ヘテロシクリル、及びヘテロシクリルアルキルから選択される。特定の実施形態では、は水素であり、は、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、ヘテロシクリル、及びヘテロシクリルアルキル、好ましくはアリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、及びヘテロシクリルから選択される。
【0138】
特定の実施形態では、は、ピロール、フラン、ピリミジン、オキサゾール、イソオキサゾール、及びチオフェンから選択されるヘテロアリール、好ましくはフランである。特定の実施形態では、は、1〜3回、好ましくは1〜2回、より好ましくは1回置換されたフランである。特定のそのような実施形態では、は、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、ヘテロシクリル、及びヘテロシクリルアルキル、好ましくはアリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、及びヘテロシクリルから選択される置換基で1回置換されたフランである。特定の実施形態では、は、それ自体、任意に、アルキル、カルボキシル、アルコキシカルボニル、及びハロゲンで、好ましくは1〜2回置換されているアリール基で1回置換されたフラン、例えば、クロロフェニル、ジクロロフェニル、カルボキシフェニルである。
【0139】
特定の実施形態では、はアリール、好ましくはフェニルである。特定のそのような実施形態では、は、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、チオール、アミノ、アルコキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、チオアルキル、及びアルキルから独立に選択される1又は2個、好ましくは2個の置換基で置換されたフェニルである。特定のそのような実施形態では、は、ハロゲン、好ましくはブロモで1回置換されたフェニルである。
【0140】
特定の実施形態では、式IIの化合物は、以下から選択される。
【化4】
【0141】
特定の実施形態では、以下の化合物から選択される式IIの化合物は、あまり好ましくない。
【化5】


【0142】
本発明の一態様は、式(III)の化合物に関する。
【化6】
【0143】
式中、
【0144】
Aは存在しないか、又はアルキル及びアルケニルから選択され;
【0145】
Bは存在しないか、又はアルキル、アルケニル、O、S、及びNから選択され;
【0146】
Nは、窒素及びCから選択され;
【0147】
X及びYは、独立に、O及びSから選択され;
【0148】
Zは、C、O、S、及びNR4から選択され;
【0149】
U、V、及びWは、独立に、C、O、S、及びNから選択され;
【0150】
は、アリール環の位置1〜6(複数可)に存在する1〜6個の独立した置換基であり;
【0151】
及びは、独立に、アシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、チオアルキル、アリール、アラルキル、カルボキシアリール、アルコキシアルキル、アルコキシアリール、アルコキシカルボニルアリール、アミノアリール、アミドアリール、ハロアリール、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アルコキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、スルホネート、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、スルホン、アルキルスルホン、アリールスルホン、スルホキシド、アルキルスルホキシド、アリールスルホキシド、アルキルスルホンアミド、アリールスルホンアミド、スルホンアミド、ピペリジニル、モルホリニル、ピロリジニル、フェニル、ピリジル、ピリミジニル、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、トリアゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、インドリル、ナフチル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、ベンジル、ベンゾフリル、ジベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ピリドイミダゾリル、ピリミドイミダゾリル、ピリドピラゾリル、ピラゾロピリミジニル、並びに1〜6個の独立した置換基で任意に置換されているそのいずれかから選択され;
【0152】
は、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、チオアルキル、アルコキシアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、ヘテロシクリル、及びヘテロシクリルアルキルから選択され;かつ
【0153】
は存在しないか、又は水素及びアルキルから選択される。
【0154】
特定の実施形態では、ZはSである。
【0155】
特定の実施形態では、X及びYはOである。特定の他の実施形態では、X及びYはSである。特定の他の実施形態では、XはSであり、YはOである。特定の他の実施形態では、X及びYはOであり、ZはSである。特定の他の実施形態では、X、Y、及びZは、Sである。特定の他の実施形態では、X及びZはSであり、YはOである。
【0156】
特定の実施形態では、UはNであり、V及びWはCである。特定のそのような実施形態では、は水素である。特定の他の実施形態では、VはNであり、U及びWはCである。特定のそのような実施形態では、は水素である。特定の他の実施形態では、WはNであり、V及びVはCである。特定のそのような実施形態では、は水素である。
【0157】
特定の実施形態では、Bはアルキルであり、Aは存在しない。特定のそのような実施形態では、は、アルコキシカルボニル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、ヘテロシクリル、及びアルコキシカルボニルから選択される。特定の実施形態では、Bはメチレンであり、Aは存在しない。特定のそのような実施形態では、は、アルコキシカルボニル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、ヘテロシクリル、及びアルコキシカルボニルから選択される。特定のそのような実施形態では、Bはメチレンであり、Aは存在しない。
【0158】
特定の実施形態では、Aがアルキルであり、かつBが存在しない場合、はアルコキシカルボニルである。
【0159】
特定の実施形態では、AとBは両方とも存在しない。特定のそのような実施形態では、は、アルコキシカルボニル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、ヘテロシクリル、及びアルコキシカルボニルから選択される。
【0160】
特定の実施形態では、置換基は、1〜6個の独立した置換基でさらに置換されている。
【0161】
特定の実施形態では、は、フラン、フェニル、ベンジル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピロリジン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオピラン、ピペリジン、ピペラジン、及びモルホリンから選択される。特定の実施形態では、は、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、及びピロリジン、好ましくは、テトラヒドロフランから選択される。
【0162】
特定の実施形態では、はフェニル、好ましくは置換フェニルである。特定のそのような実施形態では、は、1〜5回、好ましくは1〜3回、より好ましくは1又は2回置換されたフェニルである。特定のそのような実施形態では、は、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、チオール、アミノ、アルコキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、チオアルキル、及びアルキルから、より好ましくはアルキル及びハロゲンから、例えば、メチル、フルオロ、及びクロロから独立に選択される1又は2個、好ましくは1個の置換基で置換されたフェニルである。
【0163】
特定の実施形態では、は、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、チオアルキル、アルコキシアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、ヘテロシクリル、及びヘテロシクリルアルキルから選択される。
【0164】
特定の実施形態では、は、アルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、チオアルキル、アルコキシアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、ヘテロシクリル、及びヘテロシクリルアルキルから選択される。特定の実施形態では、は水素であり、は、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、ヘテロシクリル、及びヘテロシクリルアルキル、好ましくはアリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、及びヘテロシクリルから選択される。
【0165】
特定の実施形態では、は、ピロール、フラン、ピリミジン、オキサゾール、イソオキサゾール、及びチオフェンから選択されるヘテロアリール、好ましくはフランである。特定の実施形態では、は、1〜3回、好ましくは1〜2回、より好ましくは1回置換されたフランである。特定のそのような実施形態では、は、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、カルボシクリル、カルボシクリルアルキル、ヘテロシクリル、及びヘテロシクリルアルキル、好ましくはアリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、及びヘテロシクリルから選択される置換基で1回置換されたフランである。特定の実施形態では、は、それ自体、任意に、アルキル、カルボキシル、アルコキシカルボニル、及びハロゲンで、好ましくは1〜2回置換されているアリール基で1回置換されたフラン、例えば、クロロフェニル、ジクロロフェニル、カルボキシフェニルである。
【0166】
特定の実施形態では、はアリール、好ましくはフェニルである。特定のそのような実施形態では、は、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、チオール、アミノ、アルコキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、チオアルキル、及びアルキルから独立に選択される1又は2個、好ましくは2個の置換基で置換されたフェニルである。特定のそのような実施形態では、は、ハロゲン、好ましくはブロモで1回置換されたフェニルである。
【0167】
本発明の化合物は、化合物が、分子のもう一方の末端と比較したときに、分子の一方の末端で、例えば、図示したような上部末端(チアゾリジン環のN置換側)又は下部末端(チアゾリジン環の置換フラニル側)でより極性を持つように、固有の末端間極性(end−to−end polarity)を有することができる。或いは、極性のある2つの末端を有する化合物を避けることができる。
【0168】
本発明の化合物は、純粋な又は実質的に純粋な単一配置、例えば、Z配置にあることができる。
【0169】
本発明のβ2インテグリンアゴニスト化合物は、好ましくは、CD11b/CD18のαA−ドメイン中の結合ポケット(binding pocket)を占める。本発明の化合物は、図12A〜12E及び図24に記載されているのと同様の様式でαA−ドメイン中の結合ポケットを占める。より具体的には、本化合物は、下の実施例1に記載されているように、インテグリンの残基L312、I308、L305(α7ヘリックス)、L164、V160、F156(α1ヘリックス)、及びY267、I269、I236、V238、I236、I135(中心βシート)によって裏打ちされた(lined)疎水性ポケットと相互作用することができる。本発明の化合物は、αA−ドメインのアミノ酸の極性のある残基又は側鎖と相互作用することができる。例えば、本化合物のより極性のある末端は、αA−ドメインの残基リジン166又はリジン168と相互作用することができる。極性のある末端が溶媒により曝露されるように、本発明の化合物のより極性のない末端は、αA−ドメイン中の結合部位の疎水性ポケットを占めることができ、より極性のある末端は、αA−ドメイン中の結合部位のポケットを占めることができる。
【0170】
本発明のある化合物は、特定の幾何形態又は立体異性形態で存在することができる。本発明は、本発明の範囲内に含まれるような、シス−及びトランス異性体、R−及びS−エナンチオマー、ジアステレオマー、(d)−異性体、(l)−異性体、それらのラセミ混合物、及びそれらの他の混合物を含む、全てのそのような化合物を包含する。さらなる不斉炭素原子が、アルキル基等の置換基中に存在することができる。全てのそのような異性体、及びその混合物が本発明に含まれることが意図される。
【0171】
例えば、本発明の化合物の特定のエナンチオマーが望ましい場合、それを、不斉合成によるか、又はキラル補助基による誘導体化によって調製することができ、その場合、得られるジアステレオマー混合物を分離し、補助基を切断して、純粋な所望のエナンチオマーを提供する。或いは、分子が、アミノ等の塩基性官能基、又はカルボキシル等の酸性官能基を含有する場合、光学活性のある適切な酸又は塩基を用いて、ジアステレオマー塩を形成させ、その後、このように形成されたジアステレオマーを当技術分野で周知の分別結晶又はクロマトグラフィー手段によって分割し、その後、純粋なエナンチオマーを回収することができる。
【0172】
本発明のアゴニストはまた、例えば、その構造内へのもしくは14もしくは放射性ハロゲン、例えば125の組込みによって放射性標識で標識することができるか、又はリンカーを援用して、アゴニスト構造体をビオチンもしくはフルオロフォアと連結させることによって標識で標識することができる。
【0173】
本発明の一態様は、アゴニストとしての非遮断性、活性化抗インテグリン抗体又はその断片に関する。そのような抗体の非限定的な例としては、抗CD11b抗体 M18/2(4,5)、抗CD11b抗体ED7、抗CD118抗体ED8(6)、抗CD11b抗体VIM12(7)、抗CD11a抗体CBR LFA1/2(8)、抗CD11a抗体NKI−L16(9)、抗CD18抗体KIM185(10)、抗CD18抗体KIM127(11)、抗CD18抗体24(12)、抗CD18抗体NG2B12(6)、抗CD18抗体MEM48(13)が挙げられる。さらに、そのような抗体又はその断片は、様々な動物で使用するために修飾することができ、例えば、当技術分野で周知であるように、ヒト化抗体を作製することができる。
【0174】
上記のアゴニストを医薬製剤中に含めることができる。本化合物は、その誘導体、医薬として許容されるその塩、又はその水和物を含むことができる。好ましくは、医薬製剤は、活性化合物1〜30とともに、許容される希釈剤、担体、賦形剤、又はアジュバントを含む。
【0175】
医薬製剤は、疾患を調節又は治療する他の活性化合物又は活性剤をさらに含むことができる。これらの他の活性化合物又は活性剤は、本発明のアゴニストと相乗的に作用することができる。したがって、他の化合物/薬剤と本発明のアゴニストの両方を、個々に使用する場合よりも低い用量で投与することができる。これにより、より高い用量で使用する場合に有害である可能性がある多くの既知の薬物を、患者にとって安全であると同時に、より低い用量で効果的に使用することが可能になる。
【0176】
例えば、本発明のアゴニストを、TNF−α遮断薬、例えば、限定するものではないが、ENBREL(登録商標)(エタネルセプト、Amgen)、REMICADE(登録商標)(インフリキシマブ、Centocor Ortho Biotech,Inc.)、又はHUMIRA(アダリムマブ、Abbott Laboratories)と組み合わせて使用することができる。エタネルセプトの投与量は、1週間に1回25〜50mgであることができ、インフリキシマブの投与量は、2〜8週間に1回、3mg/kgであることができ、アダリムマブの投与量は、2週間に1回、40mgであることができ、また、本発明の化合物と組み合わせて低減させることができる。
【0177】
本発明のアゴニストは、抗炎症薬、例えば、限定するものではないが、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)、例えば、サリチレート(アスピリン)、酢酸誘導体(インドメタシン)、プロピオン酸誘導体(イブプロフェンもしくはナプロキセン)、又はCoxII阻害剤、例えば、セレコキシブ(Celebrex(登録商標))もしくはロフェコキシブ(Vioxx(登録商標))と組み合わせて使用することができる。投与量は、通常、抗炎症薬の場合、1日当たり10〜3200mgであり、これを、本発明のアゴニストと組み合わせて低減させることができる。
【0178】
本発明のアゴニストは、抗癌化合物、例えば、限定するものではないが、シクロ(RGDfV)ペプチドのシレンジタイドと組み合わせて使用することができる。投与量は、通常、120〜2400mg/mであることができ、これを、本発明の化合物と組み合わせて低減させることができる。
【0179】
本発明のアゴニストは、拒絶反応抑制剤、例えば、限定するものではないが、タクロリムス、サイクロスポリン、及び様々なステロイドと組み合わせて使用することができる。タクロリムスの投与量は、1日当たり0.25mg〜1mgであることができ、これを、本発明のアゴニストと組み合わせて低減させることができる。サイクロスポリンの投与量は、1日当たり1〜12mg/kgであり、これを、本発明のアゴニストと組み合わせて低減させることができる。
【0180】
本発明のアゴニストは、抗凝固薬、例えば、限定するものではないが、ワルファリン(COUMADIN(登録商標)、Bristol−Myers Squibb)、ヘパリン、アスピリン、チクロピジン(TICLID(登録商標)、Roche Pharmaceuticals,Inc.)、クロピドグレル(PLAVIX(登録商標)、Bristol−Myers Squibb/Sanofi Pharmaceuticals)、ジピリダモール(PERSANTINE(登録商標)、Boehringer Ingelheim Pharmaceuticals,Inc.)、及び糖タンパク質IIb/IIIa受容体アゴニストと組み合わせて使用することができる。ワルファリンの投与量は、例えば、1日当たり1〜10mgであることができ、アスピリンは、1日1回、50〜6000mgであることができ、チクロピジンは、1日2回、250mgであることができ、クロピドグレルは、1日1回、75〜300mgであることができ、ジピリダモールは、1日4回、75〜100mgであることができ、これらを、本発明のアゴニストと組み合わせて低減させることができる。
【0181】
本発明のアゴニストは、ステロイド、例えば、限定するものではないが、トブラマイシン、デキサメタゾン、ネオマイシン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、及びエリスロマイシンと組み合わせて使用することができる。デキサメタゾンの投与量は、1日1回、0.75〜9mgであることができ、ネオマイシンの投与量は、1日1回、3〜12gであることができ、プレドニゾンの投与量は、1日1回、5〜60mgであることができ、エリスロマイシンの投与量は、1日1回、30mg〜4gであることができ、これらを、本発明のアゴニストと組み合わせて低減させることができる。
【0182】
本発明のアゴニストは、スフィンゴシン−1−ホスフェート受容体モジュレーター、例えば、フィンゴリモド(GILENYA(商標)、Novartis Pharmaceuticals Corporation)と組み合わせて使用することができる。投与量は、1日1回、0.25mg〜5mgであることができ、これを、本発明のアゴニストと組み合わせて低減させることができる。
【0183】
本発明のアゴニストは、さらに、薬剤溶出装置媒体(drug−eluting stent media)と組み合わせて使用することができる。そのような装置としては、ステント及びカテーテルが挙げられる。本発明はまた、ステント又はカテーテル等の装置の挿入による患者の損傷を軽減する方法を提供する。より具体的には、アゴニストを、患者への装置の挿入前に、挿入中に、及び挿入後に投与することができる。下の実施例1に記載されているように、アゴニストは、装置による血管損傷の部位での白血球の蓄積を低下させ、新生内膜肥厚を減少させるように作用する。従来技術の方法は、β2インテグリンアンタゴニストでのみ、そのような結果を提供した。したがって、アゴニストによってもこの機能が提供されることは予想外である。
【0184】
本発明のアゴニストはさらに、ステント及びカテーテル等の医療装置のコーティングとして使用することができる。本発明はまた、β2インテグリンアゴニストをコーティングした装置を患者に投与することによって、患者の損傷を軽減する方法を提供する。
【0185】
本発明のアゴニストは、さらに、患者の狭窄を低減させるために使用することができる。本発明はまた、β2インテグリンアゴニストを患者に投与することによって、患者の狭窄を低減させる方法を提供する。
【0186】
本発明のアゴニストは、さらに、患者の血管アクセスの開通性を改善するために使用することができる。本発明はまた、β2インテグリンアゴニストを患者に投与することによって、患者の血管アクセスの開通性を改善する方法を提供する。
【0187】
本発明のアゴニストは、さらに、患者の動静脈フィステル(AVF)及び動静脈グラフト(AVG)の狭窄を低減させるために使用することができる。本発明はまた、β2インテグリンアゴニストを患者に投与することによって、患者の動静脈フィステル(AVF)及び動静脈グラフト(AVG)の狭窄を低減させる方法を提供する。
【0188】
最も一般的には、本発明は、β2インテグリンとアゴニスト、好ましくは、本明細書に記載の化合物のうちの1つと相互作用させることによって、β2インテグリンを活性化する方法を提供する。従来技術の方法は、100パーセントのインテグリン受容体が活性化変異体を含む、細胞内での突然変異体受容体の発現を介したβ2インテグリン活性化を提供するだけであった。したがって、全ての野生型受容体のごく一部にしか結合しないアゴニストによってもこの機能が提供されることは予想外である。
【0189】
また、本発明は、β2インテグリンアゴニスト、好ましくは、本明細書に記載のアゴニストのうちの1つを投与し、β2インテグリンを活性化することによって、患者を治療する方法を提供する。活性化は、β2インテグリンの過剰活性化と考えることもできる。
【0190】
β2インテグリンアゴニストは、さらに、下記のような他のβ2インテグリンと比べて、CD11b/CD18に選択的であることができる。或いは、β2インテグリンアゴニストは、任意の所望のβ2インテグリン(単数又は複数)を活性化することができる。
【0191】
本発明のアゴニストが、β2インテグリン、特にインテグリンCD11b/CD18の活性化に関して提供する多くの異なる機能がある。本発明のアゴニストは、β2インテグリンの機能を調節することができる。この調節は、β2インテグリンの立体構造(conformation)若しくは細胞内又は細胞膜上でのβ2インテグリンの組織化、例えば、それ自体又は他のタンパク質及び物質との二量体化又は多量体化に関するものであることができる。本発明のアゴニストは、β2インテグリンを調節することによって、細胞の機能を調節することができる。アゴニストは、細胞接着を増加させ、炎症を起こした組織への細胞動員を低下させることができる。細胞接着力の増加は、細胞の側方移動(細胞走化性を含む)を低下させることができる。アゴニスト処理による細胞接着力の増加は、細胞の経内皮遊走(TEM)を低下させることができる。本明細書に記載の組成物及び方法は、白血球動員に影響を及ぼす。これらの組成物及び方法は、例えば、白血球の遅いローリング及び炎症を起こした内皮への接着力を増加させることによって、これを達成することができ、それは、ブロッキング抗体を用いて覆すことができる。言い換えれば、細胞接着の増加によって細胞がより粘着性になり、そのため、それらは、血管の外側に移動して、組織、例えば、損傷又は炎症を起こした組織に侵入することができない。これは、実際の遮断の代わりに、β2インテグリンの活性化によるβ2インテグリン媒介性機能の機能的遮断である。従来技術の方法は、β2インテグリンアンタゴニストでのみ、そのような結果を提供した。したがって、アゴニストによってもこの機能が提供されることは予想外である。
【0192】
本発明のアゴニストは、インビトロ及びインビボでβ2インテグリンを調節することによって、細胞の他の機能を調節することができる。例えば、アゴニストは、細胞によって分泌される化学的因子のレベルを低下させる。そのような因子としては、限定するものではないが、炎症因子、例えば、とりわけ、TNF−α、IL−1β、IL−6、IFN−γ、可溶性uPAR、及びマイクロ粒子が挙げられる。本明細書に記載のアゴニスト及び方法は、β2インテグリン発現細胞による分泌因子のレベルを低下させる。本明細書に記載のアゴニスト及び方法は、それ自体はβ2インテグリンを発現しないが、白血球又はミクログリア等のβ2インテグリン発現細胞と相互作用する、血管内皮細胞等の細胞による分泌因子のレベルを低下させる。本明細書に記載の組成物及び方法は、分泌因子のレベルを増加させる。そのような因子としては、抗炎症因子、例えば、とりわけIL−10が挙げられる。
【0193】
本明細書に記載の組成物及び方法は、細胞内のシグナル伝達経路を修飾することもできる。アゴニストは、β2インテグリン発現細胞(とりわけ、白血球を含む)の細胞内シグナル伝達経路を修飾することができる。そのような経路としては、限定するものではないが、とりわけ、NF−kB経路、AKT経路、MAPK経路、Toll様受容体シグナル伝達経路、サイトカイン受容体シグナル伝達経路が挙げられる。本発明の化合物及び方法は、β2インテグリンを活性化し、それにより、細胞内の他のシグナル伝達経路と相乗作用するか又は拮抗する細胞内シグナル伝達が誘導される。本明細書に記載の組成物及び方法は、β2−インテグリン発現細胞と相互作用する細胞内のシグナル伝達経路を修飾する。そのような細胞としては、とりわけ、他の白血球サブセット、リンパ球、内皮細胞、星状細胞、及び海馬細胞が挙げられる。本明細書に記載の組成物及び方法は、β2−インテグリン発現細胞(例えば、とりわけ、白血球、リンパ球、内皮細胞)によって分泌される因子と相互作用する細胞内のシグナル伝達経路を修飾する。
【0194】
本発明のアゴニストは、β2インテグリン、特にインテグリンCD11b/CD18のそのリガンドへの、インビトロ又はインビボのいずれかでの結合も増加させる。これらのリガンドは、ICAM−1、ICAM−2、ICAM−3、iC3b、フィブリノーゲン、第X因子、フィブリン、uPAR、又はGP Ibαであることができる。アゴニストとタンパク質との結合は、通常、タンパク質の天然のリガンドの結合と関連する少なくとも1つの機能を調節する。そのような機能としては、血管内皮表面での白血球等の細胞のローリング、細胞と血管内皮との結合、血管内皮上での細胞のクローリング、血管内皮を通した細胞の転位、細胞の血管内膜組織への浸潤、細胞からの1以上の可溶性因子の放出、細胞からの走化性因子の放出、細胞からの成長因子の放出、細胞結合に関連する組織からの走化性因子の放出、細胞結合に関連する組織からの成長因子の放出、細胞結合に関連する組織からの1以上の可溶性因子の放出、循環中の1以上の可溶性因子のレベルの変化、及び1以上の非可溶性因子のレベルの変化が挙げられる。可溶性因子としては、サイトカイン、例えば、限定するものではないが、炎症促進性サイトカイン、抗炎症サイトカイン、IL−1β、IL−6、及びIL−10、TNF−α、又はIFN−γが挙げられる。アゴニストによって影響を受ける細胞としては、限定するものではないが、白血球、肝細胞、ミクログリア、特定のT細胞及びB細胞、幹細胞、多能性細胞、並びに白血病細胞等の細胞が挙げられる。
【0195】
アゴニストは、突然変異体形態のβ2インテグリンを発現する細胞の機能欠損を矯正又は軽減することもできる。例えば、CD11bの突然変異は、ループス及びループス腎炎と関連付けられている。本発明のアゴニストは、突然変異体形態のβ2インテグリンを担持する細胞、生物体、及び動物の機能欠損を軽減又は克服することができる。
【0196】
本発明のアゴニストは、インビトロ及びインビボで、生物学的機能、例えば、限定するものではないが、遺伝子発現、エピジェネティックプロファイル、タンパク質発現、タンパク質レベル、タンパク質修飾、翻訳後修飾、及びシグナル伝達をより全般的に調節することもできる。好ましくは、本発明のアゴニストは、白血球、ミクログリア、及び幹細胞の生物学的機能を調節する。或いは、本発明のアゴニストは、他の細胞又は組織の生物学的機能を調節することができる。
【0197】
本発明のアゴニストは、インビトロ及びインビボで、他の生物学的機能、例えば、幹細胞の分化、多能性細胞の分化、培養中又は長期保存中の細胞の維持、細胞の移動、例えば、白血球の骨髄から循環中への移動又は内皮前駆細胞の炎症もしくは損傷部位への移動、及び特定の細胞のそのニッチへの保持の増加、例えば、骨髄中の白血病細胞の増加を調節することもできる。
【0198】
治療又は予防することができる、β2インテグリンの活性と関連する多くの疾患又は状態があり、それには、例えば、炎症(急性及び慢性炎症を含むが、これらに限定されない)、炎症性皮膚疾患、免疫関連障害、自己免疫疾患、火傷、免疫不全、後天性免疫不全症候群(AIDS)、ミエロペルオキシダーゼ欠損、ウィスコット・アルドリッチ症候群、慢性腎疾患、慢性肉芽腫性疾患、高IgM症候群、白血球接着不全、鉄分不足、セディアック−東症候群、重症複合免疫不全、糖尿病、肥満、高血圧、HIV、創傷治癒、リモデリング、瘢痕化、線維化、幹細胞療法、悪液質、脳脊髄炎、多発性硬化症、アルツハイマー病、乾癬、ループス、関節リウマチ、免疫関連障害、放射線障害、移植、細胞移植、細胞輸血、臓器移植、臓器保存、細胞保存、喘息、過敏性腸疾患、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、大腸炎、腸疾患、癌、白血病、虚血−再灌流傷害、卒中、血管損傷と関連する新生内膜肥厚、水疱性類天疱瘡、新生児閉塞性腎症、家族性高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化、脂質異常症、大動脈動脈瘤、動脈炎、脳動脈閉塞を含む血管閉塞、冠状動脈バイパス手術の合併症、慢性自己免疫性心筋炎及びウイルス性心筋炎を含む心筋炎、慢性心不全(CHF)を含む心不全、心不全の悪液質、心筋梗塞、狭窄、心臓手術後の再狭窄、無症候性心筋虚血、左室補助装置の移植後合併症、血栓性静脈炎、川崎血管炎を含む血管炎、巨細胞性動脈炎、ウェゲナー肉芽腫、外傷性頭部損傷、虚血後の再灌流傷害、虚血後の脳の炎症、心筋梗塞後の虚血−再灌流傷害、脳マラリア、並びに心血管疾患があるが、これらに限定されない。これらの疾患は、医薬製剤中の本発明のアゴニストを患者に投与することによって、治療又は予防することができる。アゴニストは、上記のような様々な機能を果たして、患者の疾患を治療することができる。
【0199】
患者の治療は、β2インテグリンの活性化を検出することによって確認することができる。これは、患者から試料を採取し、生物学的試料中の白血球の表面でのβ2インテグリン発現のレベル又はそのような細胞上の活性化β2インテグリンのレベルの検出等のアッセイを行なうことによって達成することができる。患者の治療を確認するための別の手法は、通常、該疾患と関連する患者の他の既知のマーカーのレベル、例えば、血液試料中のIL−6のレベル、又は患者の疾患症状を評価することである。
【0200】
炎症を治療する具体的な方法では、本明細書に記載のβ2インテグリンアゴニストを、炎症を有する患者に投与して、β2インテグリンを活性化し、炎症を軽減することができる。1つの作用機序では、アゴニストは、下の実施例1に記載されるように、Aktをリン酸化することによって、白血球における炎症促進性サイトカイン発現、例えば、IL−6を抑制することができる。さらに、アゴニストは、炎症の減少をもたらす好中球及びマクロファージによる可溶性因子の分泌を減少させることができる。アゴニストは、炎症部位付近での好中球接着力を増加させ、そして好中球運動性を減少させることによって、好中球動員を遅延させることもできる。また、アゴニストが活性化されたCD11b/CD18は、白血球接着を増加させ、それにより、白血球のクローリング及び経内皮遊走が減少し、その結果、炎症/損傷を起こした組織への動員が低下する。CD11b活性化は、炎症促進性シグナル及び経路に対するネガティブフィードバックループを提供する細胞内シグナル伝達を誘導する。さらに、CD11b/CD18を活性化するいくつかの活性化抗体が文献中に存在するが、そのような「抗体」は理想的でない場合がある。本発明は、そのような活性化抗体が、細胞内でインテグリンクラスタリング又は他の有害なシグナル伝達経路を誘導するのではなく、代わりに、ロイカドヘリンによって誘導されるものと同様の経路を誘導するように、それらを本発明のアゴニストとして使用するために修飾する必要があることを提供する。
【0201】
本発明はまた、β2インテグリンアゴニストを患者に投与し、β2インテグリンを活性化することによって、腎虚血−再灌流(I/R)傷害を治療及び/又は予防する方法を提供する。腎臓I/R傷害は、腎移植、大手術、外傷、敗血症性ショック、及び出血性ショックの後の急性腎不全の主な原因である。β2インテグリンアゴニストは、手術前に投与することができる。或いは、アゴニストは、腎移植、大手術、外傷、敗血症性ショック、及び出血性ショックの後に投与することができる。アゴニストを投与することによって、sCrレベルが顕著に低下し、腎臓保護効果がもたらされる。
【0202】
本発明はまた、β2インテグリン、特に、CD11b/CD18の小分子モジュレーターの同定のためのアッセイを行なう方法を提供する。より具体的には、β2インテグリンの活性を調節する部位及びドメインを、β2インテグリン中に、特に、インテグリンCD11b/CD18中に、インテグリンCD11c/CD18中に、インテグリンCD11d/CD18中に、又はインテグリンCD11a/CD18中に同定することができ、かつ結合ポケットの正確な三次元構造を決定することができ、これを用いて、より選択的かつ/又は強力なバインダーを得ることができる。例えば、CD11b/CD18と結合アゴニストとの複合体を調製し、例えば、x線結晶学、核磁気共鳴、又は他の好適な手段で解析して、このアゴニストと相互作用するCD11b/CD18の結合部位を同定することができる。本アッセイは、細胞接着を阻害又は増強するアゴニストを同定するための細胞接着に基づくハイスループットスクリーニングアッセイであることもできる。例えば、小分子アゴニスト候補のライブラリーを特定のβ2インテグリンに対してスクリーニングすることができる。接着していない細胞は、アッセイプレートをひっくり返して重力によって除去することができる。この工程は、アッセイプレートを洗浄する代わりに実施される。細胞核を染色し、その後、イメージングして接着細胞の数を定量することができ、その後、アゴニストを同定することができる。本アッセイは、インビトロ又はインビボアッセイであることができる。
【0203】
コンピュータに基づくモデリングアルゴリズムを用いて、β2インテグリン、特に、CD11b/CD18に結合するアゴニストの構造及び立体構造を解析し、結合の成功に寄与する構造的特徴を同定することができる。そのような情報を、CD11b/CD18又はその結合ポケットの構造又は立体構造、例えば、x線結晶学又は核磁気共鳴等の解析技術を用いるCD11b/CD18の解析によって得られる構造情報に関する情報と併せて解析し、結合するアゴニストとそれらが相互作用する結合ポケットとの相互作用を解析することができる。そのような解析を用いて、アゴニストと相互作用するCD11b/CD18の部分を予測し、所望の結合活性と相関する構造的特徴を有するアゴニストを試験アゴニストのライブラリーから選択するか、又は本明細書に記載されているようなアッセイを用いてインビボもしくはインビトロで試験するために、CD11b/CD18との結合を示すことが予想される構造を設計することができる。
【0204】
コンピュータに基づくモデリングアルゴリズムを用いて、本発明の化学的化合物アゴニストの構造的特徴を用いて、β2インテグリン、特に、CD11b/CD18に結合する新規のアゴニストを同定することもできる。スキャフォールドホッピング法、原子置換法、残基置換法、及び/又は分子置換法を用いることができる。この情報を、CD11b/CD18又はその結合ポケットの構造又は立体構造、例えば、x線結晶学又は核磁気共鳴等の解析技術を用いるCD11b/CD18の解析によって得られる構造情報に関する情報と併せて解析し、結合するアゴニストとそれらが相互作用する結合ポケットとの相互作用を解析することができる。そのような解析を用いて、アゴニストと相互作用するCD11b/CD18の部分を予測し、所望の結合活性と相関する構造的特徴を有するアゴニストを試験アゴニストのライブラリーから選択するか、又は本明細書に記載されているようなアッセイを用いてインビボもしくはインビトロで試験するために、CD11b/CD18との結合を示すことが予想される構造を設計することができる。
【0205】
本明細書に記載されるようなβ2インテグリンアゴニストを投与し、β2インテグリンアゴニストのβ2インテグリンへの結合を検出し、疾患の存在を確認することによって、患者の状態又は疾患を検出又は診断する方法を提供する。好ましくは、β2インテグリンは、CD11b/CD18である。言い換えれば、結合が存在する場合、患者は、上記のような疾患を有する。例えば、疾患は、炎症性疾患又は自己免疫疾患であることができ、アゴニストのCD11b/CD18への結合を検出することによって、患者がそれらの疾患を有することを確認することができる。また、患者の状態又は疾患を検出又は診断するために、本発明のアゴニストを患者から得られた生物学的試料に投与することができる。投与されるアゴニストは、簡便な検出を可能にするようなやり方で、誘導体化するか、タグ化するか、ポリマー化するか、カプセル化するか、又は封入することができる。アゴニストは、リンカーを用いて、トレーサー、放射性標識、又は蛍光タグでタグ化することができる。アゴニストは、磁気共鳴イメージング(MRI)及び当技術分野で公知の他のそのような診断技術を用いて検出することができる。別の検出方法は以下の通りであることができる。血液又は血漿等の生物学的試料を患者から採取することができ、例えば、β2インテグリンアゴニストのβ2インテグリンへの結合を検出するか、又は試料中の他のマーカー(例えば、IL−6レベル)を測定するための、アッセイを行なうことができる。
【0206】
本発明はまた、有効量のβ2インテグリンアゴニストを投与し、β2インテグリンを活性化することによって、患者の全般的な健康を改善する方法を提供する。言い換えれば、本発明のアゴニストは、上記のような多くの異なる疾患を治療するので、このアゴニストを投与することによって、患者の健康状態(health)及び健康(wellness)が改善する。
【0207】
本発明のアゴニストを含む組成物は、有効量の活性物質が医薬として許容されるビヒクルとの混合物中で組み合わされるように、対象に投与することができる医薬として許容される組成物の調製のための公知の方法によって調製することができる。好適なビヒクルは、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,USA 1985)に記載されている。これに基づいて、組成物は、限定されるものではないが、1以上の医薬として許容されるビヒクル又は希釈剤と関連した、かつ好適なpHを有し、生理液と等張な緩衝溶液中に含まれる、物質の溶液を含む。
【0208】
本発明のアゴニストは、遊離塩基の形態で、塩、溶媒和物の形態で、及び水和物として用いることができる。全ての形態が本発明の範囲内である。酸付加塩が形成され、使用のためのより好都合な形態を提供することができ;実際、塩形態の使用は、本質的に塩基形態の使用に等しい。酸付加塩を調製するために用いることができる酸は、好ましくは、遊離塩基と組み合わせたときに、医薬として許容される塩、すなわち、そのアニオンが、塩の薬学的用量で動物にとって非毒性である塩を生じさせ、その結果、遊離塩基に固有の有益な特性がアニオンに起因する副作用によって損なわれない酸を含む。塩基性アゴニストの医薬として許容される塩が好ましいが、たとえ、特定の塩それ自体が、例えば、塩が、精製及び同定のみを目的として形成される場合、又はそれが、医薬として許容される塩をイオン交換手順で調製する際の中間体として用いられる場合のように、中間産物としてのみ望ましいとしても、全ての酸付加塩が遊離塩基形態の供給源として有用である。
【0209】
本発明の範囲内の医薬として許容される塩としては、以下の酸に由来するものが挙げられる;鉱酸、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、及びスルファミン酸;及び有機酸、例えば、酢酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、マロン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、pトルエンスルホン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、キナ酸等。
【0210】
本発明の方法に従って、記載されたアゴニスト又はその塩もしくは溶媒和物を、当業者によって理解されるように、選択された投与経路に応じて種々の形態で患者に投与することができる。本発明の組成物は、経口的に又は非経口的に投与することができる。非経口投与としては、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、経上皮、鼻腔内、肺内、髄腔内、経直腸、及び局所の投与様式が挙げられる。非経口投与は、選択された期間にわたる連続注入であることができる。
【0211】
本発明のアゴニスト又はその塩もしくは溶媒和物は、例えば、不活性希釈剤とともにもしく同化可能な食用担体(carder)とともに経口投与することができるか、又はそれは、ハードシェルゼラチンカプセルもしくはソフトシェルゼラチンカプセルに封入することができるか、又はそれは、圧縮して錠剤にすることができるか、又はそれは、食事の食物とともに直接取り込むことができる。経口治療投与のために、本発明のアゴニストは、賦形剤とともに組み込み、摂取可能な錠剤、口腔錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハース等の形態で用いることができる。
【0212】
本発明のアゴニストは、非経口的に又は腹腔内に投与することもできる。遊離塩基又は薬理学的に許容される塩もしくは溶媒和物としての本発明のアゴニストの溶液は、ヒドロキシプロピルセルロース等の界面活性剤と好適に組み合わせた水の中で調製することができる。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、DMSO、及びアルコールを含む又はアルコールを含まないそれらの混合物中、並びに油中で調製することもできる。通常の保存及び使用条件下では、これらの調製物は、微生物の成長を防止する防腐剤を含む。当業者であれば、好適な製剤の調製の仕方を知っているであろう。好適な製剤の選択及び調製のための従来の手順及び成分は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1990−第18版)、及び1999年に刊行された米国薬局方:国民医薬品集(USP 24 NF19)に記載されている。
【0213】
注射使用に好適な医薬形態としては、滅菌水溶液又は分散液、及び滅菌注射溶液又は分散液の即時調製用の滅菌粉末が挙げられる。全ての場合において、形態は滅菌性でなければならず、また、容易な注射可能性が存在する程度に流動性でなければならない。
【0214】
本発明のアゴニストは、単独で又は上記のような医薬として許容される担体と組み合わせて動物に投与することができ、その割合は、アゴニストの溶解度及び化学的性質、選ばれる投与経路、並びに標準的な薬学的慣習によって決定される。
【0215】
本発明のアゴニスト及び/又は組成物の投薬量は、アゴニストの薬力学的特性、投与様式、レシピエントの年齢、健康状態、及び体重、症状の性質及び程度、治療の頻度及びもしあれば、併用療法の種類、並びに治療されるべき動物におけるアゴニストのクリアランス速度等の多くの因子によって様々であり得る。当業者は、上記の因子に基づいて、適切な投薬量を決定することができる。本発明のアゴニストは、最初は、好適な投薬量で投与することができ、これは、臨床的応答に応じて、適宜調整することができる。
【0216】
本発明をさらに、以下の実験実施例を参照して詳細に記載する。これらの実施例は、単に説明目的で提供されるのであって、特に明記しない限り、限定を意図するものではない。したがって、本発明は、決して、以下の実施例に限定されるものとみなされるべきではなく、むしろ、本明細書で提供される教示の結果として明確になるありとあらゆる変化形を包含するものとみなされるべきである。
【実施例】
【0217】
実施例1
【0218】
合成の材料及び方法
【0219】
本発明のアゴニストは、例えばAdvanced Organic Chemistry.March,第4版,John Wiley and Sons,New York,NY,1992;Advanced Organic Chemistry,Carey and Sundberg,A巻及びB巻,第3版,Plenum Press,Inc.,New York,NY,1990;Protective groups in Organic Synthesis,Green and Wuts,第2版,John Wiley and Sons,New York,NY,1991;Comprehensive Organic Transformations,Larock,VCH Publishers,Inc.,New York,NY,1988、及びこれらの文献に引用されている参考文献に記載されるような当業者に公知の技術を用いて容易に合成できる。本発明に記載のアゴニストの出発材料は、Aldrich Chemical Co.(Milwaukee,WI);Sigma Chemical Co.(St.Louis,MO);Lancaster Synthesis(Windham,N.H.);Ryan Scientific(Columbia,S.C.);Canbridge(Cornwall,UK);Matrix Scientific(Columbia,S.C.);Arcos,(Pittsburgh,PA)、及びTrans World Chemicals(Rockville,MD)等の市販供給源から容易に入手可能である化学的前駆体の標準的な合成変換を用いて調製することができる。
【0220】
試薬及び抗体。抗CD11bモノクローナル抗体(mAb)44a(IgG2a)[37]及びヘテロ二量体特異的抗CD18 mAb IB4(IgG2a)[38,39]は、ATCC製であった。mAb 24(IgG1)[40]は、Abcam製であり、アイソタイプ対照抗体MOPC−21(IgG1)及びMOPC−173(IgG2a)、FITCコンジュゲートmAb A85−1(ラット抗マウスIgG1)、R19−15(ラット抗マウスIgG2a)、及びFITCコンジュゲートヤギ抗マウス免疫グロブリンは、BD Pharmingen(San Diego,CA)製であった。ラット抗マウスGR1−FITC及びMac−1−PEは、BD Pharmingen(San Diego,CA)製であった。ヒトフィブリノーゲン(プラスミノーゲン、フォン・ヴィレブランド因子、及びフィブロネクチン除去型)は、EnzymeResearch Laboratories(SouthBend,IN)製であり、ウシ血清アルブミン(BSA)は、Sigma(St.Louis,MI)製であり、組換えヒトICAM1−Fcは、R&D Systems(Minneapolis,MN)製であり、iC3bは、Calbiochem(San Diego,CA)製であった。384ウェルプレートは、市販供給源からのもの(Nalgene(Rochester,NY)製のMaxiSorp、Corning(Corning,NY)製のHighbind)であった。無脂肪乳は、BioRad(Hercules,CA)から入手した。細胞定量試薬MTSは、Promega(Madison,WI)製であり、ATPLiteは、PerkinElmer(Boston,MA)製であった。PCR試薬、並びに制限酵素及び修飾酵素は、New England Biolabs Inc.(Beverly,MA)から入手した。グルタチオンビーズは、Sigma(St.Louis,MI)から購入した。細胞培養試薬は全て、Invitrogen Corp.(San Diego,CA)及びMediatech(Manassas,VA)製であった。胎仔ウシ血清は、Atlanta Biologicals,Inc(Lawrenceville,GA)から購入した。G418抗生物質は、Invivogen(San Diego,CA)から購入した。
【0221】
マウス。C57BL/6J(B6)野生型及びB6 CD11b−/−(Jax 3991)[41]マウスは、The Jackson Laboratory(Bar Harbour,ME)から購入した。野生型フィッシャー344ラットは、Harlan Laboratories(Indianapolis,IN)から購入した。動物の世話及び処置は、University of Miami Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)によって承認され、施設のガイドラインに従って実施された。
【0222】
細胞株。野生型インテグリンCD11b/CD18を安定にトランスフェクトしたK562細胞(ATCC)(K562 CD11b/CD18)は、以前に記載されている[42,43]。突然変異体CD11bE320Aは、以前に記載されている[44]。突然変異体インテグリンCD11bE320A/CD18を安定にトランスフェクトしたK562細胞(K562 E320A)は、文献プロトコルに従って作製された[42,43]。細胞株は全て、10%非働化胎仔ウシ血清、50IU/mlのペニシリン及びストレプトマイシン、並びに0.5mg/mlのG418が補充されたイスコフの改変ダルベッコ培地(IMDM)中で維持された。
【0223】
K562細胞接着アッセイ。固相化リガンドを用いる細胞接着アッセイを以前に記載されている通りに実施した[42]。全て異なるK562細胞株(K562、K562 CD11b/CD18、及びK562 E320A)を用いるアッセイを同一のやり方で実施した。簡潔に述べると、384ウェルHighbindマイクロタイタープレートを、各1mMのCa2+及びMg2+イオンを含むリン酸緩衝生理食塩水、pH7.4(PBS++)中の30μLのリガンド溶液で、4℃で一晩コーティングした。リガンドFgを5〜15mg/mLの濃度で、iC3bを1〜5mg/mLの濃度でコーティングした。ヘテロ二量体特異的mAb IB4(腹水)を1:100希釈でコーティングした。その後、ウェルを1%ゼラチンを含むTBSでブロッキングする好中球アッセイを除き、ウェル中の非特異的部位を、Tris緩衝生理食塩水(TBS)、pH7.4中の1%無脂肪乳とともに室温で1時間インキュベートすることによってブロッキングした。次に、ウェルをTBSで3回洗浄した。K562細胞をアッセイバッファー(各1mMのCa2+及びMg2+イオンを含むTBS(TBS++))に懸濁し、リガンドをコーティングしたウェルに移した(30,000細胞/ウェル)。ロイカドヘリンファミリーの小分子アゴニストのストック溶液は、アゴニストを2〜10mMの濃度でDMSOに溶解させることによって調製した。アッセイ中のDMSOの最終濃度は、約1%であった。K562細胞を、増加濃度のロイカドヘリンの存在下、37℃で30分間インキュベートした。接着していない細胞を除去するために、アッセイプレートをゆっくりとひっくり返し、ひっくり返した位置に室温で30分間保った。接着し続けている細胞をホルムアルデヒドを用いて固定し、以前に記載されているように、イメージング顕微鏡法を用いて定量した[42]。ブロッキングアッセイのために、細胞をmAb 44a及びIB4とともにRTで30分間インキュベートし、その後、それらをアッセイウェルに添加した。3〜6個の複製ウェル中でアッセイを実施した。報告されたデータは、少なくとも3回の独立した実験のうちの1回からのものである。100,000を超える小分子のライブラリーを用いて新規アゴニストを同定するハイスループットスクリーニング(HTS)アッセイを以前に記載されているように実施した[42,45]。
【0224】
好中球接着アッセイ。8〜10週齢のWT及びCD11b−/−B6マウス由来の好中球を、文献プロトコルに従って、チオグリコレートで刺激した腹膜から単離した[46]。細胞を無血清培地(IMDM)に懸濁し、リガンドをコーティングしたウェルの中で、ロイカドヘリンとともに、37℃で10分間インキュベートした。次に、接着していない細胞を除去するために、アッセイプレートをゆっくりとひっくり返し、ひっくり返した位置に室温で30分間保った。接着し続けている細胞を、以前に記載されているように、イメージング顕微鏡法を用いて定量した[42,47]。アッセイを三連ウェルで実施した。報告されたデータは、少なくとも3回の独立した実験のうちの1回からのものである。
【0225】
走化性アッセイ及びタイムラプスビデオ顕微鏡観察。2D表面での好中球走化性を、記載されているように[48,49]、Zigmondチャンバー(Neuro Probe)を用いて、酸洗浄されたガラス又はFgコーティングされたガラスカバースリップ上で実施した。ロイカドヘリン(15mM)の非存在下又は存在下、10mMの細菌ペプチドホルミル−メチオニル−ロイシル−フェニルアラニン(fMLP、Sigma)の勾配中で細胞遊走を生じさせた。細胞遊走を、Nikon Eclipse 90i倒立顕微鏡を用いて、30秒毎の間隔で25分間記録した。PLAN APO 20X微分干渉コントラスト(DIC)顕微鏡対物レンズを用いてNikon DSカメラで画像を取得し、Nikon Imagingソフトウェアに取り込んだ。ImageJ用のIbidiの走化性及び遊走ツールプラグインを用いる手動の細胞トラッキングとともに、ImageJソフトウェア(NIH,USA)を用いて、10μmを超えて移動していた運動性集団について、好中球遊走の解析を行なった[48]。遊走速度及び全変位(起点からの距離)も解析した。少なくとも3回の独立した実験から1条件当たり少なくとも50個の細胞を用いて、定量を行なった。
【0226】
免疫蛍光。遊走好中球におけるインテグリンCD11b/CD18及びF−アクチンの局在を調べるために、細胞(10)を、ガラスカバースリップ上で、ロイカドヘリン(15mM)の非存在下又は存在下、無血清培地(RPMI 1640)中の10μMのfMLPで、37℃で15分間刺激した。細胞を固定し、0.1%のTriton X−100で透過処理し、抗マウスCD11b抗体(クローンM/170、BD Biosciences)、次いで、ヤギ抗ラットAlexa488(Invitrogen)及びローダミン標識ファロイジン(Invitrogen)で染色した。zシリーズの蛍光画像を、Leica TCS SP5共焦点顕微鏡及びHCX PL APO 63x/1.4 NA対物レンズで、並びにLeica LAS−AFソフトウェアを用いて記録した。z−シリーズをLeica LAS−AFソフトウェア一式で解析した。提示された画像は、基底細胞側から頂端細胞側への15枚の共焦点切片のz−スタック投影(スタックz−間隔、0.29μm)に由来するものである。提示された画像は、少なくとも2回の独立した実験からの条件1つ毎に解析された少なくとも20個の細胞を代表するものである。
【0227】
細胞表面でのCD11b/CD18のクラスタリングを調べるために、K562 CD11b/CD18細胞(10)を無血清培地(IMDM)に懸濁し、ロイカドヘリン(15mM)の非存在下又は存在下、記載されているように[50]、リガンドFg(100mg)あり又はなしで、37℃で3時間インキュベートした。細胞を懸濁液中で固定し、抗CD11b/CD18 mAb IB4、次いで、ヤギ抗マウスAlexa488(SIGMA)で染色した。蛍光画像を、LAS−AFソフトウェアにより駆動されるDCF360FXカメラを用いて、Leica DMI16000デコンボリューション顕微鏡及びHCX PL APO 63x/1.3 NA対物レンズで、Leica LAS−AFソフトウェアを用いて記録した。CD11b/CD18クラスターをImageJで解析し、蛍光強度の三次元表示もImageJで作成した。提示された画像は、少なくとも3回の独立した実験からの条件1つ毎に解析された少なくとも20個の細胞を代表するものである。
【0228】
組換えCD11b A−ドメイン(αA−ドメイン)の精製。組換えヒトαA−ドメインを公表されているプロトコルに従って構築し、精製した[51]。簡潔に述べると、残基Gly111からGly321に及ぶタンパク質断片(321WT)を、フォワードプライマー5’−ggttccgcgtggatccgagaacctgtactttcaaggaggatccaacctacggcag−3’(配列番号:1)及びリバースプライマー5’−gaattcccggggatccaccctcgatcgcaaagat−3’(配列番号:2)を用いて、かつ製造業者のプロトコルに従って、Infusionクローニングキット(Clontech,Mountain View,CA)を用いて、ベクターpGEX−2TのBamHI部位にクローニングし、発現させることによって、その不活性型立体構造のαA−ドメインを作製した。フォワードプライマー5’−ggttccgcgtggatccgagaacctgtactttcaaggaggttttcaggaatgt−3’(配列番号:3)及びリバースプライマー5’−atatccccgggattaaccctcgatcgcaaagcccttctc−3’(配列番号:4)を用いて、Ile316をGlyに置換する(I316G[52])ことによって、その活性型立体構造のαA−ドメインを作製した。挿入物をBamHI及びSmaIで消化し、BamHI及びSmaIで同様に消化したpGEX−2Tベクターに連結した。全てのコンストラクトを直接的なDNAシークエンシングで確認した。全ての組換えタンパク質をグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質として大腸菌(Escherichia coli)で発現させ、製造業者の指示に従って、親和性クロマトグラフィー(グルタチオン−ビーズ、Sigma)で精製した。精製タンパク質調製物を、20mm Tris−HCl、pH7.5、150mM NaCl(Tris緩衝生理食塩水)に対して透析し、その後、Amicon−10カラム(Millipore)を用いて濃縮し、−80℃で保存した。純度を1D SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動解析で確認した。
【0229】
αA−ドメインリガンド結合アッセイ。Maxisorp 96ウェルプレートを10mM PBS、pH7.4中のFg(1μg/ウェル)で一晩コーティングし、PBS中の1%ウシ血清アルブミンでブロッキングした。精製した、GSTタグ化αA−ドメイン(5mg/mL溶液の50mL/ウェル)の固相化Fgへの結合を、室温で1時間、TBSアッセイバッファー(0.1%BSA、1mM Mg2+、1mM Ca2+、及び0.05%Tween 20を含むTBS)中で行なった。未結合のαA−ドメインを、アッセイウェルをTBS++で2回洗浄することによって除去した。その後、結合したタンパク質の量を、西洋ワサビペルオキシダーゼ(GE,Piscataway,NJ)(1:2000希釈)にコンジュゲートされた抗GST抗体とともに1時間インキュベートすることによって決定した。未結合の抗GST−HRPを、アッセイウェルをTBS++で2回洗浄することによって除去した。結合したタンパク質の検出を、製造業者のプロトコルに従って、TMB基質キット(Vector Labs,Burlingame,CA)を用いて行なった。吸光度を、Spectromax M5分光光度計(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)を用いて読み取った。アッセイを三連ウェルで行なった。示したデータは、少なくとも3回の独立した実験のうちの1回からのものである。
【0230】
フローサイトメトリー。インテグリンCD11b/CD18の細胞表面発現についてのK562細胞のフローサイトメトリー解析を、公表されているプロトコルを用いて行なった[53,54]。簡潔に述べると、細胞をアッセイバッファー(各1mMのCa2+及びMg2+イオンを含むTBS(TBS++)、並びに0.1%BSA)に懸濁した。細胞(5×10)を、100ml TBS++中の15mMロイカドヘリンの非存在下又は存在下、一次mAb(1:100希釈のIB4又は44a腹水)とともに37℃で30分間インキュベートした。その後、細胞をアッセイバッファーで3回洗浄し、ヤギ抗マウス−APC(1mg/ml、Invitrogen)とともに4℃で20分間インキュベートした。細胞をアッセイバッファーで2回洗浄し、FACSCaliberフローサイトメーター(BD Biosciences,CA)を用いて解析し、少なくとも10,000事象をカウントした。CellQuestソフトウェア(BD Biosciences)を用いてデータを解析した。アッセイを三連で行なった。示したデータは、少なくとも3回の独立した実験のうちの1回からのものである。
【0231】
細胞生存率アッセイ。細胞生存率アッセイを記載されているように実施した。簡潔に述べると、K562 CD11b/CD18細胞(10,000/ウェル)を96ウェルプレート(Corning,Corning,NY)中、増加量の表示されたアゴニストとともに24時間インキュベートした。24時間後の生細胞の数を、製造業者のプロトコル(Promega,Madison,WI)に従ってMTS試薬を用い、かつアッセイプレートの読取りにSpectramax M5分光光度計(Molecular Devices)を用いることによって決定した。示したデータは、少なくとも2回の独立した実験を代表するものである。
【0232】
ウェスタンブロット。K562 CD11b/CD18細胞を、無血清培地中、LA1、LA2、LA3(15mM)又はFG(200mg)とともに、37℃で1時間インキュベートした。細胞ライセートを10%SDS−PAGEゲル上で泳動し、確立されたプロトコルを用いて、PVDF膜(ThermoScientific,Waltham,MA)に転写した。膜を1:1000希釈の抗ホスホERK1/2抗体(Thr202/Tyr204、Cell Signaling,Danvers,MA)でプロービングし、再ブロット用の弱いストリッピング溶液(Millipore,Billerica,MA)でストリッピングし、まず、抗ERK1/2抗体(Cell Signal)で、次に、抗GAPDH抗体(Cell Signaling)で再プロービングし、製造業者のプロトコル(ThermoScientific,Waltham,MA)に従って発色させた。提示したデータは、少なくとも3回の独立した実験を代表するものである。
【0233】
血球数。様々なマウス由来の全末梢血白血球数を、標準的なアッセイを用いてマウス病理検査コアで定量した。
【0234】
インビボ腹膜炎モデル。チオグリコレート誘導性腹膜炎を、8〜10週齢のWTB6及びCD11b−/−B6マウスを用いて、以前に記載されているように実施した[46]。ロイカドヘリンアゴニストを腹腔内(i.p.)チオグリコレート(3%)注射の30分前に投与した。LA1及びLA2(200mLの20mM生理食塩水溶液)を静脈内(i.v.)投与した。LA3をi.p.投与した(1mLの20mM生理食塩水溶液)。腹膜への好中球動員を評価するために、チオグリコレート注射4時間後に、マウスに麻酔をかけ、腹腔洗浄液を回収し、記載されているように、GR−1及びMac−1染色について二重陽性の細胞を用いて、移入してきた好中球の数を定量した[55]。
【0235】
ラットにおけるバルーン誘導性動脈損傷。手術は全て、イソフルラン麻酔(Baxter,IL,USA)下で行なわれた。特注の血管造影キット(Boston Scientific,Scimed)に適合させた2F Fogartyカテーテル(Baxter Corp.,Irvine,CA,USA)を用いて、右腸骨動脈のバルーン損傷を負わせた[56]。腹部大動脈での大動脈切開を行なって、2F Fogarty塞栓除去カテーテルを右腸骨動脈のレベルにまで挿入した。バルーンを1.5〜1.6気圧まで膨張させ、動脈切開部位まで3回引き戻した。大動脈切除を8.0縫合糸で修復した。腹腔を結節縫合パターンを用いて平面で閉じた。損傷の3〜30日後に動脈標本を回収し、4%ホルマリン−PBS(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)中で5分間固定し、組織検査及び免疫染色によって解析した。
【0236】
組織検査及び免疫染色。エラスチカ・ワンギーソン染色を組織化学的解析に用いて、新生内膜形成を評価した。NIH ImageJを用いて盲検様式で形態学的解析を行なった。組織中のマクロファージの検出のための抗ラットCD68(1:50、AbD Serotec)による免疫染色である。
【0237】
ゼブラフィッシュ尾びれの損傷アッセイ。トランスジェニックTg(mpx::eGFP)[57]を標準的なプロトコルに従って維持した[58]。受精後(dpf)3日の幼生の尾びれ損傷を記載されているように行なった[57]。4.2%トリカイン(tricane)を含むE3への浸漬によって幼生に麻酔をかけ、承認されたプロトコルに従って滅菌顕微解剖用メスを用いて尾を完全に切断し、示された時点の間、回復させた。ゼブラフィッシュ幼生(3dpf)を記載されているようにアゴニストで処理した(Ref)。簡潔に述べると、幼生をアゴニストのE3溶液に浸漬させることによって、小分子アゴニストを投与した。DMSOの最終濃度は、1%未満で維持した。炎症応答の評価のために、損傷を受けた幼生を損傷4時間後に解析した。洗浄後アッセイのために、損傷を受けていない幼生をE3中のアゴニストとともに4〜8時間インキュベートし、洗浄してE3に入れ、損傷を与えた。Volocityを用いて、Leica DMI6000B顕微鏡及びHamamatsu Orca−3CCDカメラを用いて、幼生を解析した。488nmのレーザーを用いて励起を行ない、Volocityを用いて画像を解析した。炎症部位での蛍光好中球の数を盲検様式で目視によりカウントした。
【0238】
統計解析。2以上の群を比較する場合、事後解析を伴う一元ANOVAを用いて、データを比較した。0.05未満のp値を有意とみなした。
【0239】
コンピュータモデリング。αA−ドメインの活性型の、開いた立体構造へのロイカドヘリンの結合をモデリングするために、コンピュータによる一連の研究を以下のように行なった。まず、開いた(活性型の)立体構造のαA−ドメインのモデルを作成した。その閉じた(不活性型の)立体構造と開いた(活性型の、リガンド結合可能な)立体構造の両方のαAの高分解能三次元構造は、PDBから入手可能である[59,60]。しかし、αA中のα7ヘリックス(これは、CD11b中のイソロイシンの受入口として知られる疎水性ポケット(SILEN)[60]又はCD11a中のIDAS[61]の一部を生成させ、αA活性化によって最も大きい立体構造変化を示す[62〜64])は、閉じた形態のαAの三次元構造[59]と比較して、開いた形態の三次元構造[60]において3残基短い。αAアゴニストは、この領域11中で結合すると予測されているので、α7ヘリックスを、αA−ドメインの高分解能構造[60]において、閉じた(不活性型)形態のαA[59]のドメイン由来の3つの追加の残基だけ手作業で延長させた。このモデルを水素結合最適化及び制約付き最小化によって洗練した。
【0240】
考えられるリガンド結合様式を特定するために、Schrodingerソフトウェア一式に実装されている誘導適合ドッキング(IFD)手順を以前に記載されているように適用した[36]。MM GB/SAを用いて、αA孔に順位を付け;このアプローチを用いて、疎水性溶媒露出表面積条件に関して補強された一般化ボルン溶媒和モデル(GBSA)を用いて、アゴニストのαAに対する結合の自由エネルギーを推定した。その後、最適化されたαA構造を、標準電位を用いるアゴニスト再ドッキングに用いた[65]。数回のIFDの実行を行ない、それらにより、大部分のアゴニストについての高得点の形状が得られた[36]。その後、IFD後の最適化された受容体構造を用いて、Schrodinger Glide及びSP得点化関数を用いて、新規のアゴニストをドッキングさせた。次に、そのZ配置のアゴニストについての最も得点が高い形状を分子動態シミュレーションでさらに最適化した。分子動態シミュレーションは、分子動態実行の作成(production molecular dynamics run)前にいくつかの最小化及びシミュレーション工程がある多工程プロトコルとして行なわれる。300K及び325K(NPT ensemble)でDEShaw Research製の分子動態パッケージDesmond[66]を用いて、IBM E−サーバー1350クラスター(36ノードの8Xeon 2.3GHZコア及び12GBのメモリ)上でSPC水モデル(受容体周辺の10Åの立方体)を用いて、シミュレーションを行なった。最終的なシミュレーション時間は12nsであり、この間、報告された形状は安定なままであった。図12A〜12Eは、LA1、LA2、及びLA3の形状を示す。
【0241】
結果
【0242】
インテグリンアゴニストは、アンタゴニストに優るいくつかの利点を有する。ここ数年にわたるアンタゴニストを用いた研究によって、それらが準最適であることが示されている。第一に、アンタゴニストで白血球動員を抑制することは、通常、高レベルのブロッキング抗体をインビボで必要とする、活性型インテグリン受容体の90%超の占有を必要とする[32]ことが示されている。第二に、細胞表面に発現されたCD11b/CD18の完全な遮断は、CD11b/CD18の大量の移動可能な細胞内プールの利用可能性のために、抗体を用いても難しい[30,31]。第三に、リガンド模倣性の好中球阻害因子(NIF)[67]及び組換えαA−ドメイン[68]等の、いくつかの他のアンタゴニストは、動物モデルで効果的であったが、そのサイズの大きさ及び免疫原性のために、治療剤としてのその使用は避けられる。組換えNIF(UK−279276)は、臨床試験で失敗に終わった。同様に、抗CD11b/CD18抗体又はCD11b/CD18リガンドのいずれかに由来するペプチドは、おそらくは、溶液中でのその不適切な立体構造又はCD11b/CD18上のリガンド結合領域と比べたその小さいサイズのために、インビトロでリガンド結合を遮断するのにそれほど有効ではない[69]。最後に、多くのアンタゴニスト性抗体(例えば、rhuMAb CD18、抗CD18 LeukArrest(Hu23F2G)、及び抗ICAM1 mAb Enlimomab(R6.5))は、いくつかの臨床試験で炎症性疾患/自己免疫疾患を治療するのに失敗し[28,29]、また、β2インテグリン遮断薬は予期しない副作用も示し、市場から回収されなければならなかった[33]。
【0243】
CD11b/CD18アゴニストの同定のためのアッセイ:現在、CD11b/CD18の小分子アゴニストは利用可能ではなく、その理由は、主に:a)必要量のCD11b/CD18を哺乳動物細胞から得ることが難しいため、及び吸着したタンパク質の大部分がプラスチック表面への吸着によってその天然の立体構造を保持しないために、マイクロタイタープレートに吸着した精製CD11b/CD18に依存する現在のスクリーニングアッセイがハイスループットスクリーニング(HTS)キャンペーンに耐えられないこと、並びにb)そのようなアッセイが、細胞表面に発現したCD11b/CD18のその生理的リガンドに対する低い結合親和性のせいで自動化するのが難しいために、CD11b/CD18についての最適化された細胞ベースのアッセイは、現在、文献が不足していることである。出願人は最近、CD11b/CD18に対する小分子のライブラリーをスクリーニングするための新規の細胞接着ベースのHTSアッセイを記載した[42]。このアッセイは、固相化フィブリノーゲン(Fg)を、哺乳動物K562細胞上に安定に発現されるCD11b/CD18のリガンドとして用いる。この考えをHTSでの使用に適合させる際に直面する主な問題は、接着していない細胞を除去するためにどれだけ穏やかにプレートのウェルを洗浄しても、自動洗浄工程では、接着細胞のウェルからの大幅かつ不均一な剥離が生じるという事実であった。これにより、アッセイの大きなばらつきが生じた。驚くことに、自動プレート洗浄機を用いるよりもむしろ、アッセイプレートを単にひっくり返して、接着していない細胞を重力で穏やかに除去することによって、ばらつきがなくなり、頑健でかつ再現性のあるスクリーニングアッセイになることが分かった。その後、DAPI染色した細胞核の自動イメージングを用いて、接着細胞を定量した。新たに開発された384ウェルプレートベースのアッセイは、迅速で、費用がかからず、HTSの許容されるZ’値(>0.5)を一貫して生じ、かつHTS環境で実行しやすい。
【0244】
新規のCD11b/CD18アゴニスト−ロイカドヘリンの発見。自家開発した細胞ベースのハイスループットスクリーニング(HTS)アッセイを用いて[42]、K562 CD11b/CD18細胞に対するアゴニストについて、100,000を超える分子の化学的ライブラリーをスクリーニングした。独特な戦略として、細胞接着を阻害するアゴニストではなく、細胞接着を増加させる(アゴニスト)アゴニストに的を絞った。K562 CD11b/CD18のその生理的リガンドのフィブリノーゲン(Fg)への接着を増加させる(アゴニスト)コアフラニルチアゾリジノンモチーフを含有する一連のアゴニストが同定された[42,45]。K562 CD11b/CD18細胞は、アッセイバッファー(各1mMの生理的イオンCa2+及びMg2+を含むTris緩衝生理食塩水(TBS++))だけの中でインキュベートしたとき、固相化フィブリノーゲン(Fg)への結合をほとんど示さなかった。驚くことに、ヒットの大きなサブセットは、中心の5員2,4−ジ−オキソ−チアゾリジン[42]及び2,4−ジ−オキソ−チアゾリジンモチーフ含有アゴニスト[45]をヒットとして含むことが分かった。2,4−ジ−オキソ−チアゾリジンモチーフ含有アゴニストによるαA−ドメインのターゲッティングは、精製組換えαA−ドメインを用いる結合アッセイを用いて確認され、その場合、これらのアゴニストは、αA−ドメインの固相化Fgへの結合を増加させた[70]。さらに、CD11b/CD18を発現していない細胞は、感知できるほどの結合を示さず、また、CD11b/CD18発現細胞の結合は、既知の遮断モノクローナル抗体(mAb)44a[37](抗CD11b)及びIB4[38,39](抗CD18)で遮断することができたので、結合は選択的であった。
【0245】
中心コアに対する様々な置換の構造−活性関係(SAR)を調べ[36]、ロイカドヘリンと命名されているいくつかのアゴニストを同定した。これには、ロイカドヘリン−1(LA1)、ロイカドヘリン−2(LA2)、及びロイカドヘリン−3(LA3)が含まれ、これらは、それぞれ、4μM、12μM、及び14μMのEC50(接着の50%増加を表す有効濃度)値で、Fgに対するCD11b/CD18依存的細胞接着を増加させた(図1A〜1D)。いくつかの他のアゴニストは、同様のレベルの活性を提供した。構造的に関連する化合物のロイカドヘリン−対照(LA−C)も同定され、これは、CD11b/CD18依存的細胞接着に対していかなる影響も及ぼさなかった(図1A及び1E)。CD11b/CD18を発現していない細胞は、有意な結合を示さなかった(図1B〜1E)。基底状態ではLFA−1媒介性接着を増加させるが、活性化状態ではそれを阻害する、最近記載されたLFA−1のインバースアゴニストとは異なり(Yang,W.,C.V.Carman,M.Kim,A.Salas,M.Shimaoka,and T.A.Springer.2006.A small molecule agonist of an integlin,alpha L beta 2.J Biol Chem)、LA1〜3は、アゴニストMn2+の存在下で細胞接着を阻害せず(図7A〜7C)、それらが真のアゴニストであることを示した。既知のアゴニストMn2+及びLA1〜3によって誘導されるCD11b/CD18発現細胞の接着の増加は、抗CD11b/CD18モノクローナル抗体(mAb)IB4及び44aによって阻止され(図1F)、これらの化合物が、CD11b/CD18依存的細胞接着を媒介することがさらに確認された。好中球は、CD11b/CD18の大量の移動可能な細胞内プールを含み、これは、不活性型形態から活性型形態へのCD11b/CD18の立体構造スイッチに加えて、好中球が細胞外マトリックスに接着するのを助ける。LA1〜3による細胞接着の増加の理由としてCD11b/CD18表面発現の上方調節を除外するために、K562 CD11b/CD18細胞(図5)及び好中球(図6)でのその表面発現を測定し、LA1〜3による増加は見られなかった。LA1〜3は、CD11b/CD18リガンドiC3b(図8A〜C)及びICAM−1(図9)に対する細胞接着も増加させたので、LA1〜3によるCD11b/CD18依存的細胞接着の増加は、リガンドの種類に非依存的であった。ヒト単球THP−1細胞もロイカドヘリンによって誘導される同様の細胞接着の増加を示し、ロイカドヘリンの効果が細胞型に非依存的であることが示された(図10A〜10C)。LA1〜3は野生型(WT)好中球の固相化Fgへの結合も増加させたが、CD11b−/−好中球の固相化Fgへの結合を増加させず(3)(図1G)、これらの化合物が、CD11b/CD18を標的とすることがさらに示された。ロイカドヘリンがCD11b/CD18媒介性貪食にも影響を及ぼすかどうかを明らかにするために、K562 CD11b/CD18細胞を、iC3bオプソニン化RBC(EiC3b)とともにインキュベートした。LA1〜3は、EiC3bの捕捉及びロゼッティングを有意に増加させることが分かり、これらのアゴニストは、CD11b/CD18媒介性貪食機能を上方調節することもできることが示された(図11)。これにより、CD11b/CD18活性化が抗炎症性であるかどうか、及びインテグリンの小分子アゴニストが、インビボでインテグリンを活性化し、他のインテグリンの活性化突然変異体がノックインされた動物によって予測されるような結果をもたらすことができるかどうかについての試験が初めて可能になる。
【0246】
また、いくつかの類似体のコンピュータによる検討を行なった。その低親和性及びその高親和性の立体構造のαA−ドメインの高分解能三次元構造を用いたコンピュータによるドッキング研究[59,60,62]は、LA1〜3が、活性化感受性α7−ヘリックス領域付近で、αA−ドメインの開いた、高親和性立体構造に優先的に結合し、その高親和性立体構造のαA−ドメインをアロステリックに安定化することを示した[36](図12A〜12E)。
【0247】
式(II)の特定のアゴニストについて、フラン環(R3置換基)のC−5位での置換が、アゴニスト効力に対して最も大きい効果を有することが分かった(例えば、化合物1〜30)[36]。平面フラニル環とのパイ共役を破壊する非芳香族又は非共役置換基は、非常に不利であった。特定の配向では、平面芳香環が好ましく、非置換フェニル環も、フェニル環のオルト位又はパラ位の脂肪族基と比べて好ましかった。チアゾリジン環のN−3位の置換基については、(エチルからメチルへの)置換エステルの長さの短縮、及び脂肪族鎖長の短縮が極めて不利であった。同様に、脂肪族鎖とフェニル環との置換は不利であった。長鎖の嵩高い残基もN−3位では不利であった。しかし、メチレン置換された小さい芳香族環を含有する化合物は、LA3と同様のレベルまで結合した。逆に、R3におけるN−3位のベンジルと、電子求引性が高くかつ嵩高いパラ−置換芳香族化合物との共置換は、極めて不利であった。特定の化合物は、固相化Fgへの結合[70]及びCD11a/CD18と比べたインテグリンCD11b/CD18に対する高い選択性を増加させることによって、精製組換えαA−ドメインに対する選択的結合も示した。
【0248】
さらにこれらの化合物を評価するために、Schrodinger QikPropプログラムを用いて、様々な物理化学的記述子を計算した。そのシリーズ(化合物1〜14)中で最も望ましい化合物は、予測された良好なCaco−2細胞透過性及びヒト経口吸収を有する。それらの中で、LA1〜3は、わずかにより良好なclogP及び予測されたより良好な溶解性を有し、かつそれらの中で最も高いリガンド効率(BEI=14)を有する[71]。
【0249】
次に、αA−ドメイン中のこの小分子サブセットの潜在的結合ポケットについての洞察を得るために、コンピュータによるドッキング実験を行なった。その閉じた(不活性型の)立体構造と開いた(活性型の、リガンド結合可能な)立体構造の両方のCD11b A−ドメインの高分解能三次元構造がPDBから入手可能である[59,60,62]。しかし、αA中のα7ヘリックス(これは、CD11b中のイソロイシンの受入口として知られる疎水性ポケット(SILEN)[60]又はCD11a中のIDAS[61]の一部を生成させ、かつαA活性化によって最も大きい立体構造変化を示す[62〜64])は、閉じた形態のαAの三次元構造[59,62]と比較して、開いた形態の三次元構造[59,60]において3残基短い。新たに発見されたアゴニストは、この領域中で結合し、αAのこの立体構造を安定化すると予測されているので、α7ヘリックスを、CD11b A−ドメインの高分解能構造[59,60]において、閉じた形態の構造由来の3つの追加の残基だけ手作業で延長させ、次いで、Maestroタンパク質調製設備(Schrodinger Inc,Portland)に実装されているような水素結合最適化及び制約付き(Impref)最小化を行なうことによって、CD11b A−ドメインの開いた(活性型の、リガンド結合可能な)立体構造のモデルを構築した。
【0250】
アゴニスト結合によって安定化されるように見える、活性化によるα7ヘリックスの立体構造の再ポジショニングは、アゴニストが、ヘリックスα7とヘリックスα1と中心βシートの間の領域中で結合することを示している[11,62]。これは、以前の報告によっても示されている[11]。それゆえ、αA−ドメインの上記の最適化された構造を、開いた立体構造において利用し、化合物ドッキングを引き起こした。アポ構造では、この活性化感受性α7ヘリックス領域には、ポケットを裏打ちする多くの疎水性残基が空間的に密集していた。Schrodingerソフトウェア一式に実装されている誘導適合ドッキング手順を適用した。この手順では、あり得る孔の組合せを生成させる軟化ポテンシャルによる初期ドッキングに続いて、受容体最適化及びリガンド再ドッキングが行なわれる[65]。このプロトコルによって、2,4−ジ−オキソ−チアゾリジンコア及びその類似体のカルボニル酸素がSer133及びThr169によって固定されている、例えば、LA3の疎水性2,4−ジクロロフェニル部分が疎水性ポケット中で相互作用している、LA1〜3の高得点の形状(Z配置)が得られた。高温での安定な6ns全原子の明示的溶媒分子動態シミュレーション(DEShaw Research製のDesmondを用いる)[66]では、α7ヘリックスは、ごくわずかにしか適応しない。誘導適合ドッキング受容体を用いて、Schrodinger Glide Program[72]を用いて、さらなる構造をドッキングさせた。その後、受容体の柔軟性によって相対的な結合自由エネルギーのより正確な推定が得られるのを可能にするMM−GB/SA法[73]を用いて、得られた孔を再得点化した。最良の化合物に関する結果として得られた結合仮説を図12A〜12E及び図24に示す。予想されたように、疎水性フェニルフラニル部分(チアゾリジン環上のC5−置換基)は、残基L312、I308、L305(α7ヘリックス)、L164、V160、F156(α1ヘリックス)、及びY267、I269、I236、V238、I236、I135(中心βシート)によって裏打ちされた疎水性ポケットに埋没している。この構造モデルによって、(LA1〜3と構造的に関連する)化合物LA−Cが不活性である理由も説明される。というのは、この結合様式では、LA−Cの中心チアゾリジン環のN−3位にあるエチルカルボキシレート部分のαC炭素が、Ser133、Thr169、及びAsp132と近接し(2.5Å未満)、これにより、密接な嵌合が生じ、いくつかの化合物中に存在するが、LA1〜3には存在しない、αCのより大きなメチル基が許容されないからである。一般に、最も類似した化合物について、立体的により要求の多い化合物のより低い活性は、(少なくとも部分的には)受容体及び/又はリガンドの歪みの増加に起因し得ることが分かった。
【0251】
SAR及び結合仮説は、1つの疎水性相互作用が重要であることを示している。2つの極性末端を有する化合物は一般に、不活性であることが分かっている。疎水性ポケットにおける相互作用は、立体的要求及び全体的な分子サイズに対して極めて感受性が高いように思われる。例えば、より小さい酢酸エチルN−3置換基の場合、より大きいフェニルフラニル置換基及びより小さいフェニルフラニル置換基が許容されるが(とはいえ、最も小さいものが最も活性がある)、より大きいN−3置換基を有する構造の場合、非置換フェニルフラニルにしか活性がない。したがって、コンピュータによるドッキング研究は、インテグリンCD11b/CD18のこれらの新規のアロステリックアゴニストの結合についての妥当な仮説を示している。さらに、様々な誘導適合ドッキング研究において、他の形状が得られた。例えば、1つのモデルは、化合物が、その長い、縦軸に沿って「素速く動く」ことを示した。しかし、全ての場合において、疎水性部分は、図12A〜12Eに記載及び図示されている同じ領域中で相互作用する。
【0252】
次に、極めて相同なインテグリンCD11a/CD18(LFA−1としても知られる)と比べた、インテグリンCD11b/CD18に対する化合物の選択性を明らかにした。野生型インテグリンCD11a/CD18を安定にトランスフェクトしたK562細胞(K562 CD11a/CD18)を作製した。次に、固相化された、インテグリンCD11a/CD18の生理的リガンドのICAM−1に対する細胞接着を増加させるLA3の能力を測定した。それは、CD11a/CD18と比べて、インテグリンCD11b/CD18に対する2倍高い選択性を示し、K562 CD11b/CD18細胞について13.6±5μMのEC50値であった。これは、これらのアッセイにおいて両方のインテグリンに対する等しい結合を示した、以前に記載された化合物と対照的である[35]。
【0253】
CD11b/CD18中のリガンド結合αA(又はαI)ドメイン[35,36,42]に結合すると予測されるLA1〜3の結合部位を同定するために、突然変異体インテグリンCD11bE320A/CD18を安定に発現するK562細胞(K562 E320A)を作製した。CD11b A−ドメイン(αA−ドメイン)中の活性化感受性α7−ヘリックスの後ろのリンカー中の高度に保存された残基E320は、CD18 vWFA−ドメイン(βA−又はI−ドメイン)の内在性リガンドとして働く[44]。E320A突然変異は、CD11b/CD18によるアゴニストMn2+−イオン媒介性リガンド結合の増加を消失させる。しかし、さらなる活性化突然変異による高親和性立体構造のαAの安定化は、この欠点を克服し、E320A突然変異体でのリガンド結合を誘導する[63]。(Mn2+ではなく)LA1、LA2、及びLA3は、K562 E320AのFgへの結合を選択的に増加させ(図1H)、これらの化合物も高親和性立体構造のαA−ドメインに結合し、それを安定化することを示している。確認するために、精製組換えαA[70]を用い、予想されたように[35,42]、LA1及びLA2が、構成的活性化突然変異(I316G)を含む突然変異体αA−ドメインの場合に認められる結合レベル[52]まで、WT αAの固相化リガンドへの結合を増加させることが分かった(図1I)。これは、ロイカドヘリン結合が、その開いた、高親和性立体構造のαAを安定化することを示している。
【0254】
フローサイトメトリー解析は、LA1の存在下での、活性化感受性mAb24のK562 CD11b/CD18細胞への結合の増加を示し、LA1が生細胞で発現された全長インテグリンを活性化することを裏付けた(図13)。Bjorklundらは、CD11b/CD18 aAも標的とするCD11b/CD18アゴニスト(IMB−10)を記載した。本発明者らは、本発明者らの細胞ベースの接着アッセイを用いて、LA1及びIMB−10のCD11b/CD18に対する相対的親和性を比較し、LA1が、おそらくは、そのより回転が制約されたフラニル−チアゾリジノン中心スキャフォールドのために、より高い親和性を示すことを見出した(図14)。
【0255】
2D表面での白血球走化性は、インテグリン媒介性の連続的な接着及び脱接着工程を伴う[74]。構成的活性型インテグリン突然変異体を発現する細胞は、インテグリンをリガンド結合状態に留めることによって、接着の増加及び走化性勾配における細胞遊走の劇的な低下を示した[75,76]。ロイカドヘリンによる細胞接着の増加が細胞遊走に影響を及ぼすかどうかを検討するために、ケモカインペプチドホルミル−Met−Leu−Phe(fMLP)[49]の勾配に応答して化学遊走するマウス好中球を用いた。生細胞イメージングは、生理的バッファー中での好中球の円滑な遊走を示した(図2A)。しかし、LA1、LA2、又はLA3による処理は、これらの細胞の側方遊走及び遊走速度の有意な減少をもたらす(図2A〜2C)。LA1〜3で処理した細胞は、ケモカイン方向への若干の移動を示したが、それらは、方向持続の低下(図2D)及び平均二乗変位の低下(MSD、図2E)を示し、対照(DMSO)細胞のより方向性のある運動性と比較して、制約された運動性を示した。ロイカドヘリンの非存在下で化学遊走する好中球とは異なり(この場合、好中球は、典型的な扁平な先端及び短くて細い尾を示す)、LA1〜3の存在下で遊走する細胞は、伸張した尾肢を示し、活性化インテグリン突然変異で見られるような、細胞遊走の減少の背後にある重要なメカニズムとしての、細胞脱接着の欠損を示した[55,77]。検討するために、共焦点顕微鏡法を用い、それにより、LA1〜3で処理した細胞の伸張した尾肢におけるクラスター化したCD11b/CD18が示され(図2F)、尾肢におけるインテグリン−基質相互作用の解除の失敗が、欠陥のある遊走の一因であることが示された。ロイカドヘリン処理は、3Dコラーゲンゲル中での好中球遊走の変化を示さず(図15A〜15E)、3Dでの白血球遊走がインテグリン非依存的であるという最近の知見を裏付けた。しかし、ロイカドヘリンは、HUVEC層への細胞接着を増加させることによって、インビトロでのTHP−1細胞によるTNFa活性化HUVEC層を介した経内皮遊走(TEM)の効率を低下させた(図2G〜I)。まとめると、これらのデータは、ロイカドヘリンが細胞接着力を増加させ、その側方運動性を低下させ、それによりTEMに影響を及ぼすことを示している。
【0256】
インテグリン活性化及びリガンド結合は、細胞表面でのインテグリンのクラスタリングを生じさせ、p38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ/細胞外シグナル調節キナーゼ(MAPK/ERK1/2)経路の活性化を含む、外側から内側へのシグナル伝達を引き起こし[17,22]、それにより、大部分の細胞でのアンカレッジ依存的な生存促進性シグナルを模倣する[50]。LA1〜3は、CD11b/CD18に結合し、それを活性化するので、そのような結合だけで、インテグリン媒介性の外側から内側へのシグナル伝達が誘発され、それにより、細胞にとってリガンドがインテグリンに結合した状態とよく似た状況が生じ、これが、白血球の寿命及び機能に対して深刻な結果をもたらし得ると考えられる。検討するために、共焦点顕微鏡法を用いて、細胞表面でのCD11b/CD18クラスタリングをイメージングした[17]。細胞は、リガンドの非存在下で、検出可能なCD11b/CD18マクロクラスタリングを示さなかったが(図18A、DMSO)、外部からFgを添加したときに、高度のクラスタリングを示した(図18B、DMSO)。同様に、LA1〜3による処理は、外部からFgを添加したときにのみインテグリンマクロクラスタリングを示し(図18A〜18B)、これは、LA1〜3がインテグリンリガンド模倣体でないことを示唆している。さらに、既知のCD11b/CD18アゴニストMn2+[78]並びに活性化mAb[79]及びそのリガンド[17]は、ERK1/2リン酸化を誘導するので、ERK1/2リン酸化を細胞で検討し、LA1〜3処理が、リガンドFg(図19)又はホルボールエステルPMA(図示せず)とのインキュベーションとは対照的に、ERK1/2リン酸化(pERK、図19)を誘導しないことが分かった。したがって、ロイカドヘリンが、リガンドを模倣せず、また、細胞において外側から内側へのシグナル伝達を誘導しないという結論を下すことができる。
【0257】
驚くことに、LA1〜3処理は、DMSOのみによる処理と比較したとき、リガンドFgの場合と同様の、強力なAktリン酸化を引き起こした(図示せず)。pAktは、炎症促進性サイトカインの炎症シグナル(例えば、LPS)依存的な発現を抑制することが知られているので、これは、ロイカドヘリンが白血球における炎症促進性サイトカイン発現を抑制することもできることを示している。
【0258】
ロイカドヘリンは、好中球及びマクロファージによる可溶性因子の分泌を減少させる。白血球による炎症促進性サイトカインの分泌に対するロイカドヘリン処理の効果を検討するための実験において、WTマウスのマクロファージ及び好中球を、2つの異なる濃度のアゴニストLA1の非存在下又は存在下、LPSで刺激し、細胞上清中の炎症促進性サイトカインのレベルを測定した。LPS処理は、刺激していない細胞と比較して、両方の細胞型でサイトカイン分泌を有意に増加させ(図示せず)、また、LA1の添加は、上清中のそれを有意に減少させ、これにより、ロイカドヘリンによるCD11b/CD18活性化が抗炎症効果を有し得ることが示された
【0259】
インビボでの炎症応答に対するLA1〜3の効果を明らかにするために、マウスでの急性チオグリコレート誘導性腹膜炎による好中球動員に対するその効果をモニタリングした[41]。LA1〜3は、50μMもの濃度で、K562細胞(図16A〜16D)に対しても、マウス好中球に対してもインビトロでの細胞傷害性を示さなかった(図17A〜17C)。チオグリコレートの腹腔内注射は、生理食塩水のみと比較して、腹膜への好中球の有意な蓄積をもたらした(p<0.01)(図3A)。ビヒクルのみの投与と比較して、チオグリコレート注射30分前のLA1の投与は、好中球蓄積を有意に低下させ(40%、p<0.05)、LA2はそれを65%低下させ(p<0.0001)、LA3はそれを55%低下させた(p<0.05)。ロイカドヘリンで処置したマウスの循環中での白血球の測定は、ビヒクル処置動物と比較して、その細胞数の低下を示さなかった(表1)。
【表1】

【0260】
これは、ロイカドヘリンが、インビボで白血球細胞傷害性を引き起こさないことを示し、それゆえ、白血球細胞傷害性は、ロイカドヘリン処置動物で遊走好中球の低下が観察された理由から除外される。LA1〜3投与が、以前に公表されたように[41]、WTと比較して好中球蓄積の増加を示す、CD11b−/−マウスの腹膜内の動員された好中球の数を有意に低下させるものではないことも分かった(図3B)。これはさらに、LA1〜3が、インビボでインテグリンCD11b/CD18を選択的に標的とすることを示している。
【0261】
TGC誘導性腹膜炎では、腹膜好中球の数が、ビヒクル処置動物で4時間後に増加し、12時間後にピークに達し、その後、減少することが分かった(図3C)。LA1処置動物では、好中球蓄積は、4時間で有意に低下し、12時間後に低下した状態のままであった。同程度の数の腹膜好中球が両方の動物群で24時間後に観察され、ロイカドヘリンが好中球動員を有意に遅延させることが示された。
【0262】
ロイカドヘリン処置が、任意の特定の器官における好中球の隔離を引き起こすかどうかを明らかにするために、TGC誘導性腹膜炎動物由来の組織の組織学検査を用いた。好中球の隔離はロイカドヘリン処置動物で見出されず(図3D)、ロイカドヘリンが、マウスの任意の特定の器官における好中球の隔離を引き起こさないこと、並びにロイカドヘリンの効果が、実際、その炎症部位付近での好中球接着力の増加及び好中球運動性の減少によって部分的に媒介されることが確認された。
【0263】
白血球動員は、経皮的冠動脈形成術(PTCA)後の新生内膜肥厚及び再狭窄よりも前に起こる[3]。機械的血管損傷部位での内皮細胞内層の露出は、フィブリン及び血小板の沈着を引き起こし、その場合、血小板細胞表面受容体GP Ibαと白血球の表面に発現したインテグリンCD11b/CD18の間の選択的結合によって、白血球の動員が媒介される[80]。実際、機械的血管損傷の実験モデルでは、抗体によって媒介されるCD11b/CD18遮断又はCD11b/CD18の不在(CD11b−/−)は、血管形成術又はステント移植後の内膜肥厚を減少させる[25]。この損傷に対するインビボでの薬理学的活性化CD11b/CD18の効果を調べるために、アゴニストをラットの動脈バルーン障害モデルで試験した[56]。ロイカドヘリンLA1、LA3、又はビヒクル(DMSO)を損傷の30分前にフィッシャー系の雄ラットに投与し、1日おきに3週間、注射し続けた。LA2は、おそらくは、ラットαAとヒトαAの結合ポケットの違い(わずか約70%の相同性[68])のために、効果を示さなかった。LA1処置動物及びLA3処置動物の損傷動脈は、ビヒクル処置動物(0.23±0.01の比)と比較して、有意に低下した新生内膜肥厚(それぞれ、0.16±0.02及び0.14±0.01の新生内膜対中膜比、p<0.05)を生じさせた(図3E〜3J及び図21A〜21D)。対照化合物LA−Cは、効果を示さなかった(図20A〜20B)。ロイカドヘリン処置が、血管リモデリングよりも前に起こる白血球蓄積の低下をもたらすかどうかを明らかにするために、マクロファージ特異的抗CD68抗体を用いて、損傷3日後の動脈の免疫組織化学的解析を行なった。ビヒクル対照(42.2±6.7)と比べて、LA1処置動物及びLA3処置動物の動脈の中膜マクロファージの数の有意な低下(それぞれ、17.7±3.1及び6.9±1.3、p<0.01)が観察された(図3E〜3J及び図21A〜21D)。まとめると、これらの結果は、ロイカドヘリン処置が、血管損傷部位での白血球の蓄積の低下、及びその後の新生内膜肥厚の減少をもたらすことを示している。
【0264】
驚くことに、以下の実験を用いて、インテグリンアゴニスト(ロイカドヘリン)が、炎症性損傷の治療において、インテグリンアンタゴニストに優る治療的利益を有することが分かった。腎疾患の確立されたマウスモデルである、抗糸球体基底膜(抗GBM)腎炎を用いて、十分に特徴付けられているCD11b/CD18アンタゴニスト(抗CD11b抗体M1/70)とLA1の直接の比較を行なった。このモデルは、アルブミンを含む、尿タンパク質の損失を媒介する好中球浸潤を特徴とする。この疾患におけるCD11bの重要な役割と一致して、CD11b−/−マウス及び抗CD11b mAb処置ラットは、白血球浸潤の減少及びタンパク尿からの保護を示した。この場合、マウスにおける疾患の誘導は、3日目での好中球の最大流入及び最大タンパク尿をもたらした(図3K〜3L)。M1/70は、好中球流入を有意に減少させ、かつタンパク尿を低下させた。しかし、LA1は、処置マウスにおける浸潤好中球の数とタンパク尿の両方の有意なかつ最大限の減少をもたらし、アンタゴニストに優るアゴニストの明白な治療的利益を示した。
【0265】
生きた動物における白血球蓄積に対するロイカドヘリン処置の効果を可視化するために、骨髄特異的ペルオキシダーゼ遺伝子(mpx)プロモーター下でGFPを発現するトランスジェニックTg(mpx::eGFP)ゼブラフィッシュを用いて、白血球動員のライブイメージング用に好中球を特異的に蛍光タグ化した[57]。受精後(dpf)3日のゼブラフィッシュ幼生の尾びれ切断は、組織損傷部位への迅速かつ強力な好中球動員(図4A〜4C及び図22A〜22D)を引き起こす[57]。損傷を受けていない幼生へのLA1及びLA2の投与は、観察可能な効果を示さなかった(図4B及び22B)。しかし、LA1とLA2は両方とも、ビヒクルのみによる処理(34.6±4.5)と比較して、損傷4時間後のゼブラフィッシュ尾びれでの好中球蓄積を有意に低下させた(それぞれ、15.6±1.7及び13.3±2.1、p<0.0001)。損傷を受けた全ゼブラフィッシュ幼生の蛍光イメージングは、ロイカドヘリン処置動物及び未処置動物における好中球の総数に差がないことを示し(図23)、これは、ロイカドヘリンによって媒介される損傷部位での好中球蓄積の低下が、好中球細胞数の全体的な減少によるものではないことを示し、ロイカドヘリンがインビボで細胞傷害性を引き起こさないことを示すマウスでの実験結果をさらに裏付けた(表1)。最後に、ロイカドヘリン処置のインビボ効果が可逆的であるかどうかを明らかにするために、LA1及びLA2を、損傷を受けていないゼブラフィッシュに4〜8時間投与し、ゼブラフィッシュをすすぎ、尾びれ損傷を誘導し、洗浄4時間後に、好中球蓄積を定量した。化合物の除去は、処置を受けていないゼブラフィッシュ幼生で見られるのと同様のレベルの、損傷を受けた尾びれでの好中球蓄積を引き起こすことが分かった。まとめると、これらのデータは、ロイカドヘリンが組織損傷部位での好中球蓄積を下方調節すること、及びそのインビボ効果が、これらの化合物の除去によって覆され得ることを示している。
【0266】
さらに、ロイカドヘリン処置は、混合リンパ球反応(MLR)におけるT細胞増殖の低下をもたらし、様々な炎症性疾患及び自己免疫疾患の治療におけるさらなる用途を示した。
【0267】
ロイカドヘリンは、インビトロで好中球接着を増加させ、2D走化性を減少させる。ロイカドヘリンが、インビボで好中球に対する同様の効果を有するかどうかを明らかにするために、マウス精巣挙筋に対して生体顕微鏡検査を用い、ロイカドヘリンが、後毛細血管細静脈における好中球接着を増加させ、そのローリング速度を低下させることが分かり(図示せず)、これらのアゴニストがインビボでも同様に作用することが示された。より重要なことに、遮断抗CD11b mAb M1/70が、ロイカドヘリンの効果を覆すことが分かり、ロイカドヘリンの効果が、CD11b/CD18のその受容体活性化作用(agonism)を介するものであることが裏付けられた。
【0268】
インテグリン活性化は、15年以上前に初めて、炎症白血球による組織浸潤を調節するための潜在的な治療戦略として提案された[81]。ここでは、CD11b/CD18アゴニストが、白血球動員及び炎症性損傷を調節することができることが示されている。ロイカドヘリンによって活性化されたCD11b/CD18は、白血球接着を増加させ、それにより、白血球のクローリング及び経内皮遊走が減少し、その結果、炎症/損傷を起こした組織への動員が低下する[82]。ここに提示したデータは、インテグリン特異的小分子によって媒介される血管系での白血球接着の増加が、白血球浸潤及び炎症を低下させ、種々の炎症性疾患及び自己免疫疾患を治療するための薬理学的にターゲッティング可能な有効な方法となり得ることを示している。
【0269】
実施例2
【0270】
第一に、腎損傷時の初期の非免疫性損傷は、炎症及び組織損傷を引き起こす自然免疫応答を引き起こす(43)。損傷した組織から放出される内在性リガンドは、Toll様受容体(TLR)、例えば、Toll様受容体4(TLR4)を利用するため、腎臓細胞及び白血球に対するTLR4活性化によって、腎損傷がさらに悪化する。CD11b/CD18は、細胞接着の増加及び遊走の調節に加えて、白血球におけるTLR4媒介性の炎症促進性シグナル伝達を調節し(44〜46)、これは、CD11b/CD18が白血球活性化及び炎症の調節において多くの役割を有することを示している。第二に、CD11b/CD18活性化は、活性酸素種(ROS)の産生を含む、いくつかの細胞内シグナル伝達事象、並びに骨髄細胞におけるいくつかの炎症促進性遺伝子及び抗炎症性遺伝子の調節も媒介する(47〜52)。CD11b/CD18活性化及びリガンド結合は、PI3−K/Akt及びMAPK/ERK1/2経路の活性化を含む、外側から内側へのシグナル伝達を引き起こし(48,53)、それにより、アンカレッジ依存的な生存促進性シグナルを模倣する。CD11b/CD18のライゲーション及びクラスタリングはまた、炎症促進性サイトカイン(例えば;IL1b、IL6、TNF−α)及び他の因子(例えば;マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP))のNF−kB依存的発現を相乗的に促進する。しかし、CD11b/CD18欠損は、TLR4によって誘発される炎症促進性サイトカインの産生を増強し、これは、CD11b/CD18活性化が保護的であることができ、また、白血球の炎症促進性経路を負に調節することができることを示している(54〜56)。ロイカドヘリンは、インビボでCD11b/CD18を活性化し、白血球動員を低下させる新規の化合物である。ここでは、ロイカドヘリンによって媒介されるCD11b/CD18の活性化がTLR4及びTNFRによって媒介される白血球活性化及び炎症促進性分子の生成を低下させるという仮説が立てられ、CD11b/CD18活性化が白血球の炎症促進性経路を負に調節することができることが証明されている。CD11b/CD18の活性化が、細胞内アダプターMyD88の分解を増加させ、NF−kB経路を抑制し、それにより、白血球によって生成される炎症促進性サイトカイン、ケモカイン、ROS、及びMMPのレベルを低下させることによって、白血球の炎症促進性応答を制限するという仮説も立てられている。第三に、白血球は、FSGSと関連する因子である循環suPARの供給源であるので、白血球が、非炎症性糸球体症において役割を果たしており、また、そのような白血球活性化は、ロイカドヘリンで低下させることもできるという仮説が立てられている。
【0271】
データ
【0272】
1.1 ロイカドヘリンは、pAKTを増加させるが、インテグリンリガンドを模倣しない。インテグリン活性化が、インテグリンのライゲーション及びクラスタリングと比べて、TLR及びサイトカイン受容体シグナル伝達と示差的に相乗作用するかどうかは明らかでない。活性化型(Mn2+イオンによるかもしくは活性化mAbを用いて活性化されたもの)又はリガンド結合型(48)のCD11b/CD18は、好中球表面にクラスターとして存在することが示されている(48)。ロイカドヘリンによる活性化が結合力の増加をもたらすかどうかは依然として不明である。さらに、CD11b/CD18アゴニストMn2+イオン及び活性化mAbは、CD11b/CD18リガンドFgがそうであるように(48)、pERK1/2及びpAktを誘導し(57,58)、それにより、生存促進性及び炎症促進性シグナル伝達を誘導することが知られている。同様に、活性化mAbのCD11b/CD18への結合は、外側から内側へのシグナル伝達を誘導し、リガンド結合状態を模倣するのに十分であり(57,58)、外因性薬剤による活性型インテグリン立体構造の安定化が、有害な免疫学的効果を有し得ることを示している(58)。新たに発見されたCD11b/CD18アゴニストがどのようにして細胞内事象を調節するのかは不明であった。
【0273】
したがって、そのような細胞内シグナル伝達事象に対するロイカドヘリンによるインテグリン活性化の効果を調べた。LA1〜3で処理したCD11b/CD18+細胞は、DMSOで処理した細胞と同様に、pERK1/2を示さないことが分かった(図25A)。しかし、リガンドFgとのインキュベーションは、ホルボールエステルPMAによる処理で示されるような(図示せず)、これらの細胞内での予想された明確なpERKの増加を示した。驚くことに、LA1〜3処理は、DMSOのみによる処理と比較して、強力なAktリン酸化を生じさせた(図25B)。pAktは、炎症促進性サイトカインの炎症シグナル(例えば、LPS)依存的な発現を抑制することが知られているので、これは、ロイカドヘリンが白血球での炎症促進性サイトカイン発現も抑制し得ることを示している。アゴニスト媒介性のインテグリン活性化が結合力も変化させるかどうかを検討するために、免疫蛍光顕微鏡法をイメージングに用い、細胞表面でのインテグリンクラスタリングを解析した(48)。リガンドの非存在下では、細胞は、LA1、LA2、及びLA3の非存在下(DMSO)又はLA1、LA2、及びLA3の存在下(32)での、CD11b/CD18の検出可能なマクロクラスタリングを示さず、これにより、アゴニスト結合だけでは、インテグリンクラスタリングが誘導されないことが示された。予想された通り、外部からのリガンドFgの添加は、両方の条件での顕著なクラスタリングを生じさせた。
【0274】
1.2 ロイカドヘリンは炎症促進性因子の分泌を減少させる。白血球による炎症促進性因子の分泌に対するロイカドヘリン処置の効果を検討する概念実証実験において、WTマウスの好中球又はマクロファージを、アゴニストLA1の非存在下又は存在下、LPSで刺激し、様々な因子のレベルを細胞培養上清中で測定した。図26A〜26Dは、LPS処置が、刺激していない細胞と比較して、IL−6、TNF−α、及びMCP−1のレベルを有意に増加させたこと、並びにLA1の添加が、上清中の3つ全ての因子のレベルを有意に減少させたことを示している。同様に、LA1は、TNF−α活性化ヒト好中球における活性酸素種(ROS)のレベルを減少させた(図27)。これらのデータは、ロイカドヘリンによるCD11b/CD18活性化が、白血球における炎症促進性シグナル伝達を抑制し、抗炎症効果を有することができることを示している。
【0275】
1.3 ロイカドヘリンはMyD88分解を加速する。TLR4媒介性シグナル伝達は、アダプタータンパク質MyD88の関与を必要とし(43)、MyD88−/−マウスは、IRI後の腎損傷から保護される。TLR4活性化は、アダプタータンパク質MyD88の結合及び安定化をもたらし、これにより、下流のキナーゼが動員され、Nf−kB媒介性の炎症促進性シグナル伝達を引き起こす。その後、TLR4シグナル伝達が、CD11b/CD18の内在性の活性化によるネガティブフィードバックループを誘導し、これにより、Sykが活性化されて、MyD88をリン酸化し、それにユビキチン媒介性分解のためのタグを付ける。これは、CD11b/CD18アゴニストが、MyD88の分解の加速をもたらし、それにより、TLR4媒介性の炎症促進性シグナル伝達経路のより速い鈍化を誘導することを示している。予備実験を行ない、ヒト単球THP−1細胞におけるMyD88のレベルを測定することによって、この仮説を検証した。TLR4アゴニストのLPSが、少なくとも4時間は安定である強力なMyD88シグナルを産生することが分かった(図28)。しかし、LA1による細胞の同時処理は、はるかにより早いMyD88の分解を生じさせる。実際、(LPSの非存在下の)LA1のみとの細胞のインキュベーションは、2時間未満のうちにMyD88の完全分解を生じさせ、CD11b/CD18の活性化が、白血球におけるMyD88依存的な細胞内シグナル伝達を下方調節することができることを示した。
【0276】
1.4 ロイカドヘリンは、マウスを敗血症から保護する。敗血症は、感染に対する重度の炎症応答と特徴とし、その合併症は、急性腎損傷を含む多臓器不全を引き起こし、致死的であることもある(59)。ロイカドヘリンを介するCD11b/CD18活性化が、TLR4媒介性の細胞内シグナル伝達を劇的に低下させることを考慮して、これらの化合物が、MyD88−/−動物で観察されるように、WTマウスでTLR4誘導性敗血症も低下させるのかどうかということが疑問に思われた。盲腸結紮及び穿刺(CLP)による敗血症の誘導(59)の後、未処置マウスの20%は24時間以内に死亡し(図29)、また、それらの全てが、72時間以内に死亡したのに対し、LA1処置マウスの80%は36時間生存し、また、それらの40%が最終的に生き残り、これにより、CD11b/CD18アゴニストが、TLR4媒介性炎症をインビボで低下させることができることが強く示された。これらの動物のより完全な解析は現在進行中である。
【0277】
1.5 白血球を標的とする新規の小分子による血清中の循環suPARレベルの減少。白血球は、細胞内プールに大量のuPARを保持し、活性化によって、uPARの表面発現を増加させるだけでなく、suPARを循環中に放出する(22)。suPARの産生におけるその中心的な役割を考慮すると、白血球は、血清中のsuPARレベルを低下させるための有望な標的細胞である。ロイカドヘリン処置は、抗GBM腎炎のマウスモデルにおいて、循環suPARレベルを有意に低下させ、腎機能を保持することが分かり(図30)、これらの化合物が、白血球依存的な循環疾患因子を緩和するための薬剤として治療的に意義があり得ることが示された。
【0278】
1.6 ロイカドヘリンは、24時間で腎臓IRIを低下させた。IRIによって誘導されるWTマウスの腎機能の変化におけるロイカドヘリンの使用を評価するために、概念実証実験を行なった。B6雄マウス(8〜12週齢)に麻酔をかけ、加温パッドの上で保持し、それらを一定の37℃の温度に保持した。次に、腹部を切開し、腎茎を、非外傷性血管クランプで30分間、両側性に閉塞させ、その後、クランプを取り除き、外科的切開を閉じた。同一ではあるが、クランプを適用しない手順でシャム手術を行なった。血清クレアチニンレベルを測定することによって、腎臓IR損傷を虚血24時間後に評価した(図31)。尾切開からのマウス血清を、手製のキット(Stanbio Laboratory)を用いるsCr(及びBUNレベル(図示せず))の解析に用いた。IR損傷の30分前のロイカドヘリンLA1及びLA2の投与は、ビヒクルDMSOで処置した動物と比較して、sCrレベルの有意な低下を示し、これらの化合物に腎臓保護効果があることを示した。
【0279】
本明細書の全体を通じて、米国特許を含む、様々な刊行物が、著者及び年号及び特許番号によって参照されている。これらの刊行物の完全な引用が以下に列挙されている。これらの刊行物及び特許のその全体としての開示は、本発明が関連する技術の水準をより完全に記載するために、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0280】
本発明は、例示的な形で記載されているが、使用されている術語は、限定ではなく説明の言葉の性質を帯びていることが意図されることが理解されるべきである。
【0281】
上記の教示に照らして、本発明の多数の修正及び変形が可能であることが明白である。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲内で、具体的に記載されている以外のものを実施することができることが理解されるべきである。

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【配列表】
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