(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
印刷媒体が搬送される媒体搬送路と、インクリボンを加熱して前記媒体搬送路で搬送される前記印刷媒体に前記インクリボンに塗布されたインクを転写し印刷する印刷用サーマルヘッドと、前記印刷用サーマルヘッドに前記インクリボンを供給するためのリボン供給部と、前記印刷用サーマルヘッドに供給された前記インクリボンを巻き取るためのリボン巻取部と、前記リボン供給部から前記リボン巻取部へ向かう前記インクリボンの送り方向において前記印刷用サーマルヘッドと前記リボン巻取部との間に配置され前記印刷用サーマルヘッドでインクが転写された後の前記インクリボンを加熱する消去用サーマルヘッドと、前記消去用サーマルヘッドに対向配置され前記消去用サーマルヘッドで加熱された前記インクリボンのインクが転写される被転写ローラと、前記被転写ローラを保持するローラ保持部と、前記印刷用サーマルヘッドに対向配置される対向部材と、前記印刷用サーマルヘッドが前記対向部材へ近づく方向および前記対向部材から離れる方向へ前記印刷用サーマルヘッドを移動させるヘッド移動機構とを備え、
前記被転写ローラは、前記ローラ保持部に対して着脱可能となっており、
前記ヘッド移動機構は、前記印刷用サーマルヘッドの移動と連動させて、前記消去用サーマルヘッドが前記被転写ローラへ近づく方向および前記被転写ローラから離れる方向へ前記消去用サーマルヘッドを移動させるとともに、前記印刷用サーマルヘッドが前記対向部材から離れるとともに前記消去用サーマルヘッドが前記被転写ローラから離れる第1ポジションと、前記印刷用サーマルヘッドが前記対向部材に近づくとともに前記消去用サーマルヘッドが前記被転写ローラに近づく第2ポジションと、前記印刷用サーマルヘッドが前記対向部材から離れるとともに前記消去用サーマルヘッドが前記被転写ローラに近づく第3ポジションとの3つのポジションへ前記印刷用サーマルヘッドおよび前記消去用サーマルヘッドを移動させることを特徴とする印刷装置。
前記ローラ保持部は、前記被転写ローラの軸方向の一端に係合し前記被転写ローラと一緒に回転する第1係合部と、前記被転写ローラの軸方向の他端に係合し前記被転写ローラと一緒に回転するとともに前記被転写ローラの軸方向へ移動可能な第2係合部と、前記第2係合部を前記被転写ローラに向かって付勢する係合部付勢部材とを備え、
前記被転写ローラは、前記係合部付勢部材の付勢力で前記ローラ保持部に保持され、
前記係合部付勢部材の付勢力に抗して前記第2係合部を移動させると、前記ローラ保持部からの前記被転写ローラの取外しが可能になることを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
前記インクリボンのインクが転写されて外径が大きくなる前記被転写ローラの外径が所定の大きさ以上となったことを検知するための検知機構を備えることを特徴とする請求項1または2記載の印刷装置。
前記被転写ローラが前記消去用サーマルヘッドに近づく方向および前記消去用サーマルヘッドから離れる方向へ前記ローラ保持部を移動可能に保持する第2ローラ保持部と、前記消去用サーマルヘッドに前記被転写ローラが近づく方向へ前記ローラ保持部を付勢する保持部付勢部材とを備え、
前記検知機構は、前記ローラ保持部の移動に伴って回動するレバー部材と、前記レバー部材の動きを検知するセンサとを備えることを特徴とする請求項3記載の印刷装置。
前記被転写ローラは、ゴム製の芯材と、前記印刷媒体と同じ材料で形成され前記芯材の外周面を覆うチューブ状の外被部材とを備えることを特徴とする請求項6記載の印刷装置。
前記リボン巻取部の巻芯および前記被転写ローラを回転させるための駆動用モータと、前記駆動用モータの動力を前記巻芯および前記被転写ローラへ伝達するための動力伝達機構とを備え、
前記巻芯で巻き取られる前記インクリボンの移動速度は、前記被転写ローラで送られる前記インクリボンの移動速度よりも速くなっており、
前記動力伝達機構は、前記巻芯による前記インクリボンの巻取トルクを制限するトルクリミッタと、前記巻芯が前記インクリボンを巻き取る方向へ前記被転写ローラを空回りさせるワンウェイクラッチとを備えることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の印刷装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の印刷装置では、消去用のサーマルヘッドで加熱されたインクリボンのインクが被転写ローラに転写されるため、被転写ローラの表面は、次第にインクで汚れる。被転写ローラの表面がインクで汚れると、消去用のサーマルヘッドで加熱されたインクリボンのインクが被転写ローラに転写されにくくなる。インクリボンのインクが被転写ローラに転写されにくくなると、被転写材に印刷された画像と同じ形のインクの剥離跡が使用済みのインクリボンに残るおそれがあり、その結果、被転写材に印刷された画像が取得されるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、消去用サーマルヘッドで加熱されたインクリボンのインクが転写される被転写ローラを備える印刷装置において、印刷媒体に印刷された被印刷画像と同じ形のインクの剥離跡が使用済みのインクリボンに残るのを防止することが可能な印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の印刷装置は、印刷媒体が搬送される媒体搬送路と、インクリボンを加熱して媒体搬送路で搬送される印刷媒体にインクリボンに塗布されたインクを転写し印刷する印刷用サーマルヘッドと、印刷用サーマルヘッドにインクリボンを供給するためのリボン供給部と、印刷用サーマルヘッドに供給されたインクリボンを巻き取るためのリボン巻取部と、リボン供給部からリボン巻取部へ向かうインクリボンの送り方向において印刷用サーマルヘッドとリボン巻取部との間に配置され印刷用サーマルヘッドでインクが転写された後のインクリボンを加熱する消去用サーマルヘッドと、消去用サーマルヘッドに対向配置され消去用サーマルヘッドで加熱されたインクリボンのインクが転写される被転写ローラと、被転写ローラを保持するローラ保持部と
、印刷用サーマルヘッドに対向配置される対向部材と、印刷用サーマルヘッドが対向部材へ近づく方向および対向部材から離れる方向へ印刷用サーマルヘッドを移動させるヘッド移動機構とを備え、被転写ローラは、ローラ保持部に対して着脱可能となって
おり、ヘッド移動機構は、印刷用サーマルヘッドの移動と連動させて、消去用サーマルヘッドが被転写ローラへ近づく方向および被転写ローラから離れる方向へ消去用サーマルヘッドを移動させるとともに、印刷用サーマルヘッドが対向部材から離れるとともに消去用サーマルヘッドが被転写ローラから離れる第1ポジションと、印刷用サーマルヘッドが対向部材に近づくとともに消去用サーマルヘッドが被転写ローラに近づく第2ポジションと、印刷用サーマルヘッドが対向部材から離れるとともに消去用サーマルヘッドが被転写ローラに近づく第3ポジションとの3つのポジションへ印刷用サーマルヘッドおよび消去用サーマルヘッドを移動させることを特徴とする。
【0009】
本発明の印刷装置では、被転写ローラを保持するローラ保持部に対して被転写ローラが着脱可能になっており、被転写ローラを交換することが可能になっている。そのため、本発明では、消去用サーマルヘッドで加熱されたインクリボンのインクが転写されなくなるほど被転写ローラの表面がインクで汚れる前に、被転写ローラを交換することで、消去用サーマルヘッドで加熱されたインクリボンのインクが被転写ローラに転写されないといった事態を回避することが可能になる。その結果、本発明では、印刷媒体に印刷された被印刷画像と同じ形のインクの剥離跡が使用済みのインクリボンに残るのを防止することが可能になる。また、本発明では、被転写ローラを交換すれば、消去用サーマルヘッドで加熱されたインクリボンのインクが被転写ローラに転写されないといった事態を回避することが可能になるため、印刷装置の保守が容易になる。
また、本発明では、印刷装置は、印刷用サーマルヘッドに対向配置される対向部材と、印刷用サーマルヘッドが対向部材へ近づく方向および対向部材から離れる方向へ印刷用サーマルヘッドを移動させるヘッド移動機構とを備え、ヘッド移動機構は、印刷用サーマルヘッドの移動と連動させて、消去用サーマルヘッドが被転写ローラへ近づく方向および被転写ローラから離れる方向へ消去用サーマルヘッドを移動させるため、印刷用サーマルヘッドでインクが転写された後のインクリボンを消去用サーマルヘッドによって確実に加熱して、印刷用サーマルヘッドでインクが転写された後のインクリボンのインクを被転写ローラに確実に転写させることが可能になる。さらに、本発明では、ヘッド移動機構は、印刷用サーマルヘッドが対向部材から離れるとともに消去用サーマルヘッドが被転写ローラから離れる第1ポジションと、印刷用サーマルヘッドが対向部材に近づくとともに消去用サーマルヘッドが被転写ローラに近づく第2ポジションと、印刷用サーマルヘッドが対向部材から離れるとともに消去用サーマルヘッドが被転写ローラに近づく第3ポジションとの3つのポジションへ印刷用サーマルヘッドおよび消去用サーマルヘッドを移動させるため、印刷用サーマルヘッドで印刷媒体に印刷を行っていないときでも、消去用サーマルヘッドを用いて、インクリボンのインクを被転写ローラに転写させることが可能になる。
【0010】
本発明において、ローラ保持部は、被転写ローラの軸方向の一端に係合し被転写ローラと一緒に回転する第1係合部と、被転写ローラの軸方向の他端に係合し被転写ローラと一緒に回転するとともに被転写ローラの軸方向へ移動可能な第2係合部と、第2係合部を被転写ローラに向かって付勢する係合部付勢部材とを備え、被転写ローラは、係合部付勢部材の付勢力でローラ保持部に保持され、係合部付勢部材の付勢力に抗して第2係合部を移動させると、ローラ保持部からの被転写ローラの取外しが可能になることが好ましい。このように構成すると、被転写ローラの軸方向へ第2係合部を移動させれば、被転写ローラを交換することが可能になる。したがって、比較的容易に被転写ローラを交換することが可能になる。
【0011】
本発明において、印刷装置は、インクリボンのインクが転写されて外径が大きくなる被転写ローラの外径が所定の大きさ以上となったことを検知するための検知機構を備えることが好ましい。このように構成すると、検知機構での検知結果に基づいて、消去用サーマルヘッドで加熱されたインクリボンのインクが転写されなくなるほど被転写ローラの表面がインクで汚れる前に、被転写ローラを確実に交換することが可能になる。したがって、消去用サーマルヘッドで加熱されたインクリボンのインクが被転写ローラに転写されないといった事態を確実に回避することが可能になる。
【0012】
本発明において、印刷装置は、たとえば、被転写ローラが消去用サーマルヘッドに近づく方向および消去用サーマルヘッドから離れる方向へローラ保持部を移動可能に保持する第2ローラ保持部と、消去用サーマルヘッドに被転写ローラが近づく方向へローラ保持部を付勢する保持部付勢部材とを備え、検知機構は、ローラ保持部の移動に伴って回動するレバー部材と、レバー部材の動きを検知するセンサとを備えている。
【0013】
この場合には、第2ローラ保持部は、レバー部材を回動可能に保持する固定軸を備え、レバー部材は、ローラ保持部に係合する保持部係合部と、センサによって検知される被検知部とを備え、レバー部材の回動中心となる固定軸から被検知部までの距離は、固定軸から保持部係合部までの距離よりも長くなっていることが好ましい。インクリボンのインクが転写されることで変化する被転写ローラの外径の変化量はわずかであるが、このように構成すると、被転写ローラの外径の変化をセンサで精度良く検知することが可能になる。
【0014】
本発明において、被転写ローラの少なくとも外周面は、印刷媒体と同じ材料で形成されていることが好ましい。一般に、インクリボンのインクには、印刷媒体に転写されやすいものが使用されるため、このように構成すると、消去用サーマルヘッドで加熱されたインクリボンのインクが被転写ローラに転写されやすくなる。
【0015】
本発明において、被転写ローラは、ゴム製の芯材と、印刷媒体と同じ材料で形成され芯材の外周面を覆うチューブ状の外被部材とを備えることが好ましい。このように構成すると、ゴムで形成される芯材の弾性を利用して、インクリボンのより広い範囲に外被部材を押し当てることが可能になる。したがって、消去用サーマルヘッドで加熱されたインクリボンのより広い範囲のインクを被転写ローラに転写させることが可能になり、その結果、印刷媒体に印刷された被印刷画像と同じ形のインクの剥離跡が使用済みのインクリボンに残るのを効果的に防止することが可能になる。また、このように構成すると、インクが転写された外被部材を交換すれば、被転写ローラを再利用することが可能になる。したがって、印刷装置のランニングコストを低減することが可能になる。
【0018】
本発明において、印刷装置は、リボン巻取部の巻芯および被転写ローラを回転させるための駆動用モータと、駆動用モータの動力を巻芯および被転写ローラへ伝達するための動力伝達機構とを備え、巻芯で巻き取られるインクリボンの移動速度は、被転写ローラで送られるインクリボンの移動速度よりも速くなっており、動力伝達機構は、巻芯によるインクリボンの巻取トルクを制限するトルクリミッタと、巻芯がインクリボンを巻き取る方向へ被転写ローラを空回りさせるワンウェイクラッチとを備えることが好ましい。
【0019】
このように構成すると、巻芯で巻き取られるインクリボンの移動速度が、被転写ローラで送られるインクリボンの移動速度よりも速くなっているため、巻芯と被転写ローラとの間でインクリボンが弛むのを防止することが可能になる。また、巻芯がインクリボンを巻き取る方向へ被転写ローラを空回りさせるワンウェイクラッチを動力伝達機構が備えているため、巻芯で巻き取られるインクリボンの移動速度が、被転写ローラで送られるインクリボンの移動速度より速くなっていても、駆動用モータの負荷を低減させることが可能になる。
【0020】
また、動力伝達機構が、巻芯によるインクリボンの巻取トルクを制限するトルクリミッタを備えているため、たとえば、被転写ローラにインクリボンが貼り付いて、巻芯によるインクリボンの巻取トルクが大きくなっても、巻芯と被転写ローラとの間でインクリボンがちぎれるのを防止することが可能になる。また、トルクリミッタが作用して、巻芯で巻き取られるインクリボンの移動速度が遅くなると、被転写ローラに駆動用モータの動力が伝達されて被転写ローラが巻芯に向かってインクリボンを送るため、被転写ローラにインクリボンが貼り付いたとしても、被転写ローラへのインクリボンの貼り付きを解消することが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明では、消去用サーマルヘッドで加熱されたインクリボンのインクが転写される被転写ローラを備える印刷装置において、印刷媒体に印刷された被印刷画像と同じ形のインクの剥離跡が使用済みのインクリボンに残るのを防止することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
(印刷装置の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる印刷装置1の内部構成を側面から説明するための図である。
【0025】
本形態の印刷装置1は、印刷媒体であるカード2に対して文字、記号および図形等の被印刷画像を印刷するための装置である。具体的には、印刷装置1は、帯状のフィルムにインクが塗布されて形成されたインクリボン3を使い、加熱によってインクリボン3のインクをカード2に転写して印刷する熱転写方式の印刷装置である。この印刷装置1は、たとえば、カード発行装置等の上位装置に搭載されて使用される。なお、インクリボン3に塗布されるインクには各種のインクがあり、また、インクの色も特に限定されない。また、本形態のインクリボン3は、単色(たとえば、黒色)の印刷のみが可能なものであるが、インクリボン3は、複数色の印刷が可能なものであっても良い。
【0026】
印刷装置1の内部には、カード2が搬送される媒体搬送路としてのカード搬送路4が形成されている。カード搬送路4は、
図1の左右方向で印刷装置1を貫通するように、かつ、直線状に形成されている。印刷装置1は、カード搬送路4でカード2を搬送するカード搬送機構5と、インクリボン3を加熱してカード2にインクを転写し印刷する印刷用サーマルヘッド6(以下、「サーマルヘッド6」とする。)と、インクリボン3の供給および巻取を行うインクリボンカートリッジ8(以下、「カートリッジ8」とする。)と、後述のリボン供給部21からリボン巻取部22に向かってインクリボン3を送るリボン送り機構9と、印刷前のカード2の表面に付着した塵埃等を除去するクリーニングローラ10とを備えている。サーマルヘッド6等は、筺体12の内部に収容されている。
【0027】
本形態のカード2は、たとえば、厚さが0.7〜0.8mm程度のポリ塩化ビニール製のカードであり、略長方形状に形成されている。このカード2の表面には、たとえば、磁気データが記録される磁気ストライプが形成されている。なお、カード2の内部に、ICチップや通信用のアンテナが内蔵されても良い。
【0028】
以下の説明では、互いに直交する3方向のそれぞれをX方向、Y方向およびZ方向とする。また、X方向を「前後方向」、Y方向を「左右方向」、Z方向を「上下方向」とし、X1方向側を「前」側、X2方向側を「後(後ろ)」側、Z1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。また、
図6に示すように、Y1方向側(
図1の紙面奥側)を「右」側、Y2方向側(
図1の紙面手前側)を「左」側とする。本形態では、略長方形状に形成されるカード2の長手方向が前後方向(X方向)と略一致するように、かつ、カード2の厚み方向が上下方向(Z方向)と略一致するように、カード2は、カード搬送機構5によって、前から後ろに向かって搬送される。
【0029】
カード搬送機構5は、カード2に当接してカード2を搬送する複数のカード搬送ローラ13と、いくつかのカード搬送ローラ13に対向配置されるパッドローラ14とを備えている。カード搬送ローラ13は、下側からカード搬送路4に臨むように配置されている。複数のカード搬送ローラ13は、プーリやタイミングベルト等から構成される動力伝達機構(図示省略)を介してカード搬送用モータ15に連結されている。パッドローラ14は、上側からカード搬送ローラ13に対向しており、カード搬送ローラ13に向かって付勢されている。
【0030】
サーマルヘッド6は、印刷装置1の前後方向の略中心に、かつ、カード搬送路4の上側に配置されている。サーマルヘッド6の下方には、対向部材としてのプラテンローラ17が配置されている。プラテンローラ17は、カード2への印刷時に、カード2を介してサーマルヘッド6と対向する。また、プラテンローラ17は、カード搬送ローラ13とカード搬送用モータ15とを連結する動力伝達機構を介してカード搬送用モータ15に連結されており、カード搬送ローラ13と一緒に回転する。
【0031】
サーマルヘッド6は、サーマルヘッド6がプラテンローラ17に近づく方向およびプラテンローラ17から離れる方向へサーマルヘッド6を移動させるヘッド移動機構18に連結されている。カード2およびインクリボン3は、上下方向において、サーマルヘッド6とプラテンローラ17との間を通過する。また、サーマルヘッド6は、ヘッド移動機構18から伝達される動力によって、カード搬送路4に対して(具体的には、プラテンローラ17に対して)上下動する。このサーマルヘッド6は、インクリボン3を介してカード2の上面に所定の当接力で当接して、カード搬送路4で搬送されるカード2の上面に印刷を行う。ヘッド移動機構18の具体的な構成については後述する。
【0032】
カートリッジ8は、サーマルヘッド6に向かってインクリボン3を供給するためのリボン供給部21と、サーマルヘッド6に供給され印刷が終了した後の使用済みのインクリボン3を巻き取るためのリボン巻取部22とを備えている。このカートリッジ8は、カード搬送路4の上方に配置され、筺体12に着脱可能となっている。また、リボン供給部21は、サーマルヘッド6よりも前側に配置され、リボン巻取部22は、サーマルヘッド6よりも後ろ側に配置されている。なお、リボン巻取部22は、リボン送り機構9に連結されている。リボン巻取部22とリボン送り機構9との連結部分の詳細については後述する。
【0033】
また、カートリッジ8は、左右方向を軸方向として配置される複数の軸23と、複数の軸23を介して連結される一対のフレームを備えている。リボン供給部21およびリボン巻取部22は、一対のフレーム間に支持されている。インクリボン3は、軸23、および、左右方向を軸方向として後述の第2筺体30に固定される軸24によって、リボン供給部21からサーマルヘッド6まで案内されるとともに、サーマルヘッド6からリボン巻取部22まで案内されている。具体的には、インクリボン3は、リボン供給部21からサーマルヘッド6に向かって略斜め後ろ下方向へ案内されるとともに、サーマルヘッド6からリボン巻取部22に向かって略斜め後ろ上方へ案内されている。また、インクリボン3は、インクの塗布面がカード2に対向し、反対側の面がサーマルヘッド6に対向するように配置されている。
【0034】
リボン送り機構9は、インクリボン3に当接してインクリボン3を搬送するリボン送りローラ25と、リボン送りローラ25に対向配置されるパッドローラ26とを備えている。また、リボン送り機構9は、リボン送りローラ25が連結されるリボン送り用モータ27と、リボン送り用モータ27の動力をリボン送りローラ25等に伝達するための動力伝達機構28(
図12参照)とを備えている。リボン送りローラ25は、サーマルヘッド6の斜め後ろ上側に配置されており、サーマルヘッド6とリボン巻取部22との間に配置されている。パッドローラ26は、略後ろ側からリボン送りローラ25に対向しており、リボン送りローラ25に向かって付勢されている。リボン送り機構9のより具体的な構成については後述する。
【0035】
クリーニングローラ10は、印刷装置1の前端側に配置されている。このクリーニングローラ10は、複数のカード搬送ローラ13のうちの一番前側に配置されるカード搬送ローラ13に上側から対向しており、このカード搬送ローラ13に向かって付勢されている。クリーニングローラ10は、サーマルヘッド6で印刷が行われる前のカード2の上面のクリーニングを行う。
【0036】
筺体12は、上側に配置される第1筺体29と、下側に配置される第2筺体30とから構成されている。第1筺体29の前端側は、左右方向を軸方向として配置される軸31に回動可能に保持されており、第1筺体29は、軸31を中心に第2筺体30に対して、
図1に示す状態から
図1の時計回りの方向(時計方向)へ回動可能となっている。第2筺体30に対して第1筺体29が時計方向へ回動すると、筺体12からカートリッジ8を取り出すことが可能になる。
【0037】
また、本形態の印刷装置1は、サーマルヘッド6でインクが転写された後のインクリボン3を加熱する消去用サーマルヘッド35(以下、「サーマルヘッド35」とする。)と、サーマルヘッド35で加熱されたインクリボン3のインクが転写される被転写ローラ36と、インクリボン3のインクが転写されて外径が大きくなる被転写ローラ36の外径が所定の大きさ以上となったことを検知するための検知機構37とを備えている。サーマルヘッド35、被転写ローラ36、検知機構37およびこれらの周辺部分の詳細な構成については後述する。
【0038】
(消去用サーマルヘッドの周辺部分の構成、および、ヘッド移動機構の構成)
図2は、
図1に示す消去用サーマルヘッド35およびその周辺部分の斜視図である。
図3は、
図2に示す消去用サーマルヘッド35およびその周辺部分を他の方向から示す斜視図である。
図4は、
図1に示すヘッド移動機構18の構成を説明するための図である。
図5は、
図1に示すヘッド移動機構18の動作を説明するための図であり、(A)は印刷用サーマルヘッド6および消去用サーマルヘッド35が第2ポジションにある状態を示す図、(B)は印刷用サーマルヘッド6および消去用サーマルヘッド35が第3ポジションにある状態を示す図である。
【0039】
サーマルヘッド35は、リボン供給部21からリボン巻取部22へ向かうインクリボン3の送り方向において、サーマルヘッド6とリボン巻取部22との間に配置されている。すなわち、サーマルヘッド35は、サーマルヘッド6の斜め後ろ上側に配置されている。このサーマルヘッド35は、ヘッドホルダ38に取り付けられている。ヘッドホルダ38は、サーマルヘッド35が被転写ローラ36に近づく方向および被転写ローラ36から離れる方向へ移動可能となるように第1筺体29に保持されている。具体的には、ヘッドホルダ38は、斜め前上方向および斜め後ろ下方向へ移動可能となるように第1筺体29に保持されている。
【0040】
ヘッドホルダ38には、その移動方向へヘッドホルダ38を案内するためのガイド軸39、40が固定されている。ガイド軸39、40は、ヘッドホルダ38の左右方向の両端から突出するようにヘッドホルダ38に固定されている。このガイド軸39、40は、第1筺体29に形成されるガイド溝29aに係合している。ヘッドホルダ38の前上端側に固定されるガイド軸40には、2個のローラ41が取り付けられている。2個のローラ41は、ガイド軸40に回転可能に保持されている。また、ヘッドホルダ38は、図示を省略する付勢部材によって、サーマルヘッド35が被転写ローラ36から離れる方向(すなわち、斜め前上方向)へ付勢されている。
【0041】
ヘッド移動機構18は、サーマルヘッド6を保持するヘッドホルダ42と、ヘッドホルダ42と一緒にサーマルヘッド6を上下動させるためのヘッド駆動用モータ43と、ヘッド駆動用モータ43の動力をヘッドホルダ42に伝達するための動力伝達機構44とを備えている。動力伝達機構44は、ヘッドホルダ42の上端側に当接する偏心カム45を備えている。サーマルヘッド6は、ヘッドホルダ42の下端側に固定されている。ヘッドホルダ42は、図示を省略する付勢部材によって、サーマルヘッド6がプラテンローラ17から離れる方向(すなわち、上方向)へ付勢されている。ヘッドホルダ42の後面には、サーマルヘッド35を移動させるためのカム46が固定されている。上述のように、ヘッドホルダ38は、斜め前上方向へ付勢されており、カム46のカム面となるカム46の後面には、ヘッドホルダ38に保持されるローラ41が当接している。
【0042】
本形態では、ヘッド駆動用モータ43が回転すると、偏心カム45が回転して、ヘッドホルダ42が上下動するとともに、カム46のカム面に沿ってローラ41が回転して、ヘッドホルダ38が移動する。すなわち、ヘッド移動機構18は、プラテンローラ17へ近づく方向およびプラテンローラ17から離れる方向へ移動するサーマルヘッド6の移動と連動させて、サーマルヘッド35が被転写ローラ36へ近づく方向および被転写ローラ36から離れる方向へサーマルヘッド35を移動させる。
【0043】
具体的には、ヘッド移動機構18は、サーマルヘッド6がプラテンローラ17から離れるとともにサーマルヘッド35が被転写ローラ36から離れる第1ポジション(
図4参照)と、サーマルヘッド
6がプラテンローラ17に近づくとともにサーマルヘッド35が被転写ローラ36に近づく第2ポジション(
図5(A)参照)と、サーマルヘッド6がプラテンローラ17から離れるとともにサーマルヘッド35が被転写ローラ36に近づく第3ポジション(
図5(B)参照)との3つのポジションへサーマルヘッド6、35を移動させる。
【0044】
印刷装置1が待機状態にあるときには、サーマルヘッド6、35は第1ポジションにあり、このときには、カード2への印刷および被転写ローラ36へのインクの転写ができない状態となっている。サーマルヘッド6、35が第2ポジションにあるときには、カード2への印刷および被転写ローラ36へのインクの転写が可能な状態となっており、サーマルヘッド6を加熱すれば、カード2への印刷が行われ、サーマルヘッド35を加熱すれば、被転写ローラ36へのインクの転写(具体的には、被転写ローラ36を構成する後述の外被部材50へのインクの転写)が行われる。サーマルヘッド6、35が第3ポジションにあるときには、カード2への印刷はできないが被転写ローラ36へのインクの転写が可能な状態となっており、サーマルヘッド35を加熱すれば、被転写ローラ36へのインクの転写が行われる。
【0045】
(被転写ローラおよび被転写ローラの周辺部分の構成)
図6は、
図1に示す印刷装置1から第1筺体29および第1筺体29に取り付けられている構成を取り除いた状態の斜視図である。
図7は、
図6に示す状態から被転写ローラ36を取り外した状態の
図6のE部の拡大斜視図である。
図8は、
図6に示す状態から被転写ローラ36を取り外した状態の
図6のE部を他の方向から示す拡大斜視図である。
図9は、
図8に示す被転写ローラ36およびその周辺部分の構成を説明するための平面図である。
【0046】
被転写ローラ36は、
図9に示すように、回転軸48と、回転軸48の外周面に固定される円筒状の芯材49と、芯材49の外周面を覆い被転写ローラ36の外周面を構成する外被部材50とによって構成されている。回転軸48は、鋼棒等の金属材料で形成されている。回転軸48の少なくとも両端側は、中空状に形成されている。また、回転軸48の両端には、キー溝48aが形成されている。芯材49は、弾力性を有する弾性部材で形成されている。具体的には、芯材49は、ウレタンゴム等のゴムで形成されている。芯材49の幅(軸方向の幅)は、サーマルヘッド35の左右方向の幅(Y方向の幅)と同じか若干、広くなっている。
【0047】
外被部材50は、カード2と同じ材料で形成されている。すなわち、外被部材50は、ポリ塩化ビニールで形成されている。より具体的には、外被部材50は、軟質のポリ塩化ビニールで形成されている。また、外被部材50は、透明なポリ塩化ビニールで形成されている。外被部材50の幅(軸方向の幅)は、芯材49の幅よりも広くなっている。また、外被部材50の幅は、回転軸48の長さ(軸方向の長さ)よりも短くなっており、回転軸48の両端側は、外被部材50よりも突出している。外被部材50は、たとえば、チューブ状に形成された熱収縮チューブであり、外被部材50の内周側に芯材49が挿入された状態で外被部材50に熱が加えられると、外被部材50が収縮して芯材49に固定される。
【0048】
被転写ローラ36は、サーマルヘッド35に対向配置されている。具体的には、被転写ローラ36は、斜め後ろ下側からサーマルヘッド35に対向配置されている。この被転写ローラ36は、その軸方向と左右方向とが略一致するようにローラ保持部51に保持されている。また、被転写ローラ36は、ローラ保持部51に着脱可能となっている。
【0049】
ローラ保持部51は、回転軸48の左端に係合し被転写ローラ36と一緒に回転する第1係合部52と、回転軸48の右端に係合し被転写ローラ36と一緒に回転する第2係合部53と、第2係合部53を被転写ローラ36に向かって付勢する(すなわち、左右方向の内側に向かって付勢する)係合部付勢部材としての圧縮コイルバネ54(
図9参照)とを備えている。また、ローラ保持部51は、圧縮コイルバネ54を保持するバネホルダ55と、第1係合部52を回転可能に保持するとともにバネホルダ55を保持するホルダ56とを備えている。
【0050】
第1係合部52は、左右方向を軸方向としてホルダ56に回転可能に保持される回転軸60と、回転軸60の右端側に固定されるキー61とを備えている。回転軸60の外周面には、リボン送り機構9の動力伝達機構28を構成する後述のプーリ84が固定されており、第1係合部52は、リボン送り機構9に連結されている。キー61は、回転軸48のキー溝48aに係合可能となっている。
【0051】
第2係合部53は、左右方向を軸方向としてバネホルダ55に保持される回転軸62と、回転軸62の外周面に固定される円板状のフランジ63とを備えている。バネホルダ55は、略有底円筒状に形成されており、その底部が右側に配置されるようにホルダ56に固定されている。回転軸62の右端側部分は、バネホルダ55の内周側に挿入されている。回転軸62は、バネホルダ55に対して回転可能、かつ、左右方向へ移動可能となるように、バネホルダ55の内周面およびバネホルダ55の底部に保持されている。
【0052】
圧縮コイルバネ54は、バネホルダ55の内周側に配置されている。また、圧縮コイルバネ54の内周側には、回転軸62の右端側部分が挿通されている。圧縮コイルバネ54の左端は、回転軸62に当接し、圧縮コイルバネ54の右端は、バネホルダ55の底部に当接しており、回転軸62は、圧縮コイルバネ54の付勢力によって左側へ付勢されている。回転軸62の左端側には、径方向の外側へ広がる円板状の鍔部62aが形成されている。
【0053】
被転写ローラ36は、回転軸48の左端側の内周面に回転軸60の右端側が挿入されるとともに、キー61が回転軸48の左端に形成されるキー溝48aに係合し、かつ、回転軸48の右端側の内周面に回転軸62の左端側が挿入されるとともに、圧縮コイルバネ54によって付勢される回転軸62の鍔部62aが回転軸48の右端に当接することで、ローラ保持部51に保持されている。すなわち、被転写ローラ36は、圧縮コイルバネ54の付勢力によってローラ保持部51に保持されている。また、圧縮コイルバネ54の付勢力に抗して回転軸62を右側へ移動させると、ローラ保持部51からの被転写ローラ36の取外しが可能になる。
【0054】
ホルダ56は、斜め前上方および斜め後ろ下方に向かって移動可能となるように第2筺体30に保持されている。具体的には、ホルダ56は、被転写ローラ36がサーマルヘッド35に近づく方向およびサーマルヘッド35から離れる方向へ移動可能となるように第2筺体30に保持されている。また、ホルダ56は、第2筺体30の左側面部30aと右側面部30bとの間に配置されている。ホルダ56は、第1ホルダ64と第2ホルダ65とが図示を省略するネジ等によって一体化されて形成されている。
【0055】
第1ホルダ64には、回転軸60を回転可能に保持する軸保持部64aが形成されている。第2ホルダ65には、バネホルダ55が固定されるホルダ固定部65aが形成されている。軸保持部64aおよびホルダ固定部65aは、Z方向とX方向とから構成されるZX平面に略平行に配置されている。回転軸60は、左右方向において軸保持部64aよりも左側へ突出するように軸保持部64aに保持され、バネホルダ55は、左右方向においてホルダ固定部65aよりも右側へ突出するようにホルダ固定部65aに固定されている。ホルダ56には、
図9に示すように、左右方向を軸方向として配置されるガイド軸66が取り付けられている。ガイド軸66の両端側部分は、軸保持部64aおよびホルダ固定部65aよりも左右方向の外側に突出している。
【0056】
左側面部30aには、回転軸60の左端側部分およびガイド軸66の左端側部分が係合するガイド溝30cが形成されている。右側面部30bには、バネホルダ55の右端側部分およびガイド軸66の右端側部分が係合するガイド溝30dが形成されている。ホルダ56は、回転軸60、バネホルダ55、ガイド軸66およびガイド溝30c、30dに案内されて、斜め前上方および斜め後ろ下方に向かって移動可能となっている。すなわち、ローラ保持部51は、ガイド溝30c、30dに案内されて斜め前上方および斜め後ろ下方に向かって移動可能となっている。本形態の左側面部30aおよび右側面部30bは、被転写ローラ36がサーマルヘッド35に近づく方向およびサーマルヘッド35から離れる方向へローラ保持部51を移動可能に保持する第2ローラ保持部である。
【0057】
また、ホルダ56は、ホルダ56の斜め後ろ下側に配置される2個の圧縮コイルバネ67によって、斜め前上方に付勢されている。具体的には、ホルダ56は、2個の圧縮コイルバネ67によって、被転写ローラ36がサーマルヘッド35に近づく方向へ付勢されている。すなわち、被転写ローラ36は、圧縮コイルバネ67によって、ローラ保持部51とともにサーマルヘッド35に向かって付勢されている。本形態の圧縮コイルバネ67は、サーマルヘッド35に被転写ローラ36が近づく方向へローラ保持部51を付勢する保持部付勢部材である。
【0058】
(検知機構の構成)
図10、
図11は、
図1に示す検知機構37の構成および動作を説明するための側面図である。
【0059】
検知機構37は、ローラ保持部51の移動に伴って回動するレバー部材71と、レバー部材71の動きを検知するセンサ72とを備えている。センサ72は、互いに対向配置される発光素子および受光素子(図示省略)を備える光学式のセンサである。センサ72は、ローラ保持部51の斜め後ろ下側に配置されている。また、センサ72は、基板73に実装されている。基板73は、ブラケット74を介して、第2筺体30の右側面部30bに固定されている。なお、センサ72は、接点スイッチ等を備える機械式のマイクロスイッチ等であっても良い。
【0060】
レバー部材71は、平板状に形成されており、右側面部30bに固定される固定軸75に回動可能に保持されている。このレバー部材71は、
図10に示すように、第1レバー部71aと、第1レバー部71aの一端側にその一端側が繋がる第2レバー部71bと、第2レバー部71bの他端側にその一端側が繋がる第3レバー部71cと、第3レバー部71cの他端側にその一端側が繋がる第4レバー部71dとによって構成されている。第1レバー部71aと第2レバー部71bとは互いに略直角をなすように繋がり、第2レバー部71bと第3レバー部71cとは互いに略直角をなすように繋がり、第3レバー部71cと第4レバー部71dとは互いに略直角をなすように繋がっている。第1レバー部71aと第3レバー部71cとは、第2レバー部71bに対して同方向へ伸びている。第2レバー部71bと第4レバー部71dとは、第3レバー部71cに対して互いに逆方向へ伸びている。
【0061】
第1レバー部71aと第2レバー部71bとの境界には、固定軸75が係合する丸孔状の貫通孔71eが形成されている。第1レバー部71aには、ガイド軸66の右端側部分が係合する長孔状の貫通孔71fが形成されている。ガイド軸66が斜め前上方および斜め後ろ下方に向かって移動すると(すなわち、ローラ保持部51が斜め前上方および斜め後ろ下方に向かって移動すると)、レバー部材71は、固定軸75を中心に回動する。本形態では、第1レバー部71aの貫通孔71fが形成された部分は、ローラ保持部51に係合する保持部係合部となっている。
【0062】
第4レバー部71dは、センサ72の発光素子と受光素子との間を遮ることが可能な位置に配置されている。この第4レバー部71dは、固定軸75を中心にレバー部材71が回動すると、センサ72の発光素子と受光素子との間から外れる位置と、センサ72の発光素子と受光素子との間を遮る位置との間で移動する。本形態の第4レバー部71dは、センサ72によって検知される被検知部となっている。固定軸75の中心から第4レバー部71dまでの距離は、固定軸75の中心から第1レバー部71aの貫通孔71fが形成された部分までの距離よりも長くなっている。
【0063】
上述のように、被転写ローラ36は、圧縮コイルバネ67によってサーマルヘッド35に向かって付勢されており、サーマルヘッド35が被転写ローラ36に近づく方向へ移動しているときには、被転写ローラ36は、インクリボン3を介してサーマルヘッド35に接触している。本形態では、被転写ローラ36へのインクリボン3のインクの転写量が少なくて、被転写ローラ36の外径が所定の大きさよりも小さい場合には、
図10に示すように、第4レバー部71dは、センサ72の発光素子と受光素子との間を遮っていない。
【0064】
被転写ローラ36にインクが転写されると、圧縮コイルバネ67の付勢力に抗してローラ保持部51がサーマルヘッド35から離れる方向へ移動する。本形態では、被転写ローラ36へのインクの転写量が多くなり、
図11の破線で示すように、被転写ローラ36の外径が所定の大きさ以上になると、第4レバー部71dがセンサ72の発光素子と受光素子との間を遮る。すなわち、本形態では、第4レバー部71dによってセンサ72の発光素子と受光素子との間が遮られることで、被転写ローラ36の外径が所定の大きさ以上になったことが検知される。
【0065】
(リボン送り機構の構成)
図12は、
図1に示すリボン送り機構9の構成を説明するための側面図である。
【0066】
上述のように、リボン送り機構9は、リボン送りローラ25とパッドローラ26とリボン送り用モータ27と動力伝達機構28とを備えている。動力伝達機構28は、リボン送り用モータ27の出力軸に固定されるプーリ78と、第2筺体30の左側面部30aと右側面部30bとに回転可能に支持される回転軸79と、回転軸79に固定されるプーリ80とを備えている。プーリ78とプーリ80との間には、ベルト81が架け渡されている。回転軸79には、プーリ80よりもピッチ径の小さなプーリ82および歯車83が取り付けられている。
【0067】
ローラ保持部51を構成する回転軸60には、プーリ84が固定されている。軸保持部64aに回転可能に保持されるプーリ85と、プーリ82、84にはベルト86が架け渡されている。プーリ85は、ベルト86の張力を調整する機能を果たしている。リボン送りローラ25が固定される回転軸87には、歯車88が固定されている。歯車88は、歯車列89を介して歯車83に連結されている。リボン巻取部22においてインクリボン3が巻回される巻芯91には、歯車92が取り付けられている。歯車92は、歯車83に係合しており、歯車83に連結されている。
【0068】
リボン送り用モータ27は、一方向へ回転するようになっている。リボン送り用モータ27が一方向へ回転すると、巻芯91はインクリボン3を巻き取る方向へ回転する。すなわち、リボン送り用モータ27が一方向へ回転すると、巻芯91は
図12の時計回りの方向(時計方向)へ回転する。また、リボン送り用モータ27が一方向へ回転すると、リボン送りローラ25と、回転軸60に係合する被転写ローラ36とがリボン巻取部22に向かってインクリボン3を送る方向へ回転する。すなわち、リボン送り用モータ27が一方向へ回転すると、リボン送りローラ25は、時計方向へ回転し、被転写ローラ36は、
図12の反時計回りの方向(反時計方向)へ回転する。
【0069】
このように、動力伝達機構28は、リボン送り用モータ27の動力を、リボン送りローラ25のみならず、巻芯91および被転写ローラ36へ伝達する機能を果たしている。なお、本形態のリボン送り用モータ27は、巻芯91および被転写ローラ36を回転させるための駆動用モータである。
【0070】
また、動力伝達機構28は、巻芯91によるインクリボン3の巻取トルクを制限するトルクリミッタ93を備えている。トルクリミッタ93は、リボン送り用モータ27と巻芯91との間の動力の伝達経路において、巻芯91と歯車92との間に配置されている。また、本形態では、プーリ84に対して回転軸60を反時計方向へ空回りさせるワンウェイクラッチがプーリ84に内蔵されている。すなわち、プーリ84に対して反時計方向へ被転写ローラ36を空回りさせる(巻芯91がインクリボン3を巻き取る方向へ被転写ローラ36を空回りさせる)ワンウェイクラッチがプーリ84に内蔵されている。
【0071】
本形態では、巻芯91で巻き取られるインクリボン3の移動速度が被転写ローラ36で送られるインクリボン3の移動速度よりも速くなるように動力伝達機構28が構成されている。そのため、通常、リボン送り用モータ27が一方向へ回転すると、プーリ84に内蔵されるワンウェイクラッチの作用によって、リボン送り用モータ27の動力は、被転写ローラ36に伝達されずに、被転写ローラ36は空回りする。一方、たとえば、被転写ローラ36にインクリボン3が貼り付いて、巻芯91によるインクリボン3の巻取トルクが大きくなると、トルクリミッタ93が作用して、巻芯91で巻き取られるインクリボン3の移動速度が遅くなる。巻芯91で巻き取られるインクリボン3の移動速度が遅くなると、リボン送り用モータ27の動力が被転写ローラ36に伝達されるため、被転写ローラ36は、リボン送り用モータ27の動力によって回転する。
【0072】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、ローラ保持部51に対して被転写ローラ36が着脱可能になっており、被転写ローラ36を交換することが可能になっている。そのため、本形態では、サーマルヘッド35で加熱されたインクリボン3のインクが転写されなくなるほど被転写ローラ36の表面がインクで汚れる前に、被転写ローラ36を交換することで、サーマルヘッド35で加熱されたインクリボン3のインクが被転写ローラ36に転写されないといった事態を回避することが可能になる。その結果、本形態は、カード2に印刷された被印刷画像と同じ形のインクの剥離跡が使用済みのインクリボン3に残るのを防止することが可能になる。
【0073】
特に本形態では、被転写ローラ36の外径が所定の大きさ以上となったことを検知するための検知機構37が設けられているため、検知機構37での検知結果に基づいて、サーマルヘッド35で加熱されたインクリボン3のインクが転写されなくなるほど被転写ローラ36の表面がインクで汚れる前に、被転写ローラ36を確実に交換することが可能になる。したがって、本形態では、サーマルヘッド35で加熱されたインクリボン3のインクが被転写ローラ36に転写されないといった事態を確実に回避することが可能になる。
【0074】
また、本形態では、被転写ローラ36の外周面を構成する外被部材50は、カード2と同じ材料で形成されている。一般に、インクリボン3のインクには、カード2に転写されやすいものが使用されるため、本形態では、サーマルヘッド35で加熱されたインクリボン3のインクが被転写ローラ36に転写されやすくなる。また、本形態では、外被部材50がゴム製の芯材49に巻かれているため、芯材49の弾性を利用して、左右方向の全域においてインクリボン3に外被部材50を押し当てることが可能になる。したがって、サーマルヘッド35で加熱されたインクリボン3のインクの全体を被転写ローラ36に転写させることが可能になり、その結果、カード2に印刷された被印刷画像と同じ形のインクの剥離跡が使用済みのインクリボン3に残るのを効果的に防止することが可能になる。
【0075】
また、本形態では、被転写ローラ36を交換すれば、サーマルヘッド35で加熱されたインクリボン3のインクが被転写ローラ36に転写されないといった事態を回避することが可能になるため、印刷装置1の保守が容易になる。特に本形態では、圧縮コイルバネ54の付勢力によって被転写ローラ36がローラ保持部51に保持されており、圧縮コイルバネ54の付勢力に抗して回転軸62を右側へ移動させると、ローラ保持部51からの被転写ローラ36の取外しが可能になるため、比較的容易に被転写ローラ36を交換することが可能になる。したがって、印刷装置1の保守がより容易になる。
【0076】
本形態では、被転写ローラ36は、芯材49の外周面を覆う外被部材50を備えている。そのため、本形態では、インクが転写された外被部材50を交換すれば、被転写ローラ36を再利用することが可能になる。したがって、本形態では、印刷装置1のランニングコストを低減することが可能になる。
【0077】
本形態では、センサ72で検知される第4レバー部71dから固定軸75の中心までの距離は、ローラ保持部51に係合する第1レバー部71aの貫通孔71fが形成された部分から固定軸75の中心までの距離よりも長くなっている。そのため、インクリボン3のインクが転写されることで変化する被転写ローラ36の外径の変化量がわずかであっても(たとえば、0.5mm程度であっても)、被転写ローラ36の外径の変化をセンサ72で精度良く検知することが可能になる。
【0078】
本形態では、ヘッド移動機構18は、サーマルヘッド6がプラテンローラ17から離れるとともにサーマルヘッド35が被転写ローラ36から離れる第1ポジションと、サーマルヘッド
6がプラテンローラ17に近づくとともにサーマルヘッド35が被転写ローラ36に近づく第2ポジションと、サーマルヘッド6がプラテンローラ17から離れるとともにサーマルヘッド35が被転写ローラ36に近づく第3ポジションとの3つのポジションへサーマルヘッド6、35を移動させる。すなわち、本形態では、サーマルヘッド6がプラテンローラ17に近づいてカード2への印刷が可能なときには、サーマルヘッド35が被転写ローラ36に近づいて被転写ローラ36へのインクの転写が可能になっている。そのため、本形態では、サーマルヘッド6でインクが転写された後のインクリボン3をサーマルヘッド35によって確実に加熱して、サーマルヘッド6でインクが転写された後のインクリボン3のインクを被転写ローラ36に確実に転写させることが可能になる。
【0079】
また、本形態では、ヘッド移動機構18は、サーマルヘッド6がプラテンローラ17から離れるとともにサーマルヘッド35が被転写ローラ36に近づく第3ポジションへサーマルヘッド6、35を移動させることができるため、サーマルヘッド6でカード2に印刷を行っていないときでも、サーマルヘッド35を用いて、インクリボン3のインクを被転写ローラ36に転写させることが可能になる。
【0080】
本形態では、巻芯91で巻き取られるインクリボン3の移動速度が被転写ローラ36で送られるインクリボン3の移動速度よりも速くなるように動力伝達機構28が構成されている。そのため、本形態では、巻芯91と被転写ローラ36との間でインクリボン3が弛むのを防止することが可能になる。また、本形態では、巻芯91がインクリボン3を巻き取る方向へ被転写ローラ36を空回りさせるワンウェイクラッチがプーリ84に内蔵されているため、巻芯91で巻き取られるインクリボン3の移動速度が被転写ローラ36で送られるインクリボン3の移動速度よりも速くなっていても、リボン送り用モータ27の負荷を低減させることが可能になる。
【0081】
本形態では、動力伝達機構28は、巻芯91によるインクリボン3の巻取トルクを制限するトルクリミッタ93を備えている。そのため、本形態では、たとえば、被転写ローラ36にインクリボン3が貼り付いて、巻芯91によるインクリボン3の巻取トルクが大きくなっても、巻芯91と被転写ローラ36との間でインクリボン3がちぎれるのを防止することが可能になる。また、本形態では、トルクリミッタ93が作用して、巻芯91で巻き取られるインクリボン3の移動速度が遅くなると、リボン送り用モータ27の動力が被転写ローラ36に伝達されて被転写ローラ36が巻芯91に向かってインクリボン3を送るため、被転写ローラ36にインクリボン3が貼り付いたとしても、被転写ローラ36へのインクリボン3の貼り付きを解消することが可能になる。
【0082】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0083】
上述した形態では、被転写ローラ36は、回転軸48と芯材49と外被部材50とによって構成されている。この他にもたとえば、被転写ローラ36は、回転軸48と芯材49とによって構成されても良い。この場合には、芯材49は、カード2と同じ材料(すなわち、ポリ塩化ビニール)で形成されることが好ましい。また、上述した形態では、外被部材50は、カード2と同じ材料で形成されているが、インクリボン3のインクが転写されるのであれば、外被部材50は、カード2と異なる材料で形成されても良い。
【0084】
上述した形態では、カード2は、厚さが0.7〜0.8mm程度のポリ塩化ビニール製のカードであるが、カード2は、厚さが0.18〜0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カードであっても良いし、所定の厚さの紙カード等であっても良い。この場合には、たとえば、外被部材50は、カード2と同じ材料で形成されることが好ましい。また、上述した形態では、印刷装置1で印刷される印刷媒体は、カード2であるが、印刷装置1で印刷される印刷媒体は、印刷用紙等のカード2以外のものであっても良い。
【0085】
上述した形態では、ヘッド移動機構18は、第1ポジションと第2ポジションと第3ポジションとの3つのポジションへサーマルヘッド6、35を移動させている。この他にもたとえば、ヘッド移動機構18は、第1ポジションと第2ポジションとの2つのポジションへサーマルヘッド6、35を移動させても良い。また、上述した形態では、ヘッド移動機構18がサーマルヘッド35を移動させているが、サーマルヘッド35を移動させるための構成を別途設けても良い。
【0086】
上述した形態では、第2係合部53は、圧縮コイルバネ54によって被転写ローラ36に向かって付勢されている。この他にもたとえば、板バネ等の他のバネ部材やゴム等の弾性部材によって、第2係合部53が被転写ローラ36に向かって付勢されても良い。また、上述した形態では、ホルダ56は、圧縮コイルバネ67によって、被転写ローラ36がサーマルヘッド35に近づく方向へ付勢されているが、ホルダ56は、板バネ等の他のバネ部材やゴム等の弾性部材によって、被転写ローラ36がサーマルヘッド35に近づく方向へ付勢されても良い。