特許第5988975号(P5988975)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5988975新規性のある細孔サイズ特性を有する複合濾過補助剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988975
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】新規性のある細孔サイズ特性を有する複合濾過補助剤
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/28 20060101AFI20160825BHJP
   B01J 20/14 20060101ALI20160825BHJP
   B01J 20/12 20060101ALI20160825BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20160825BHJP
   C12C 7/16 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   B01J20/28 Z
   B01J20/14
   B01J20/12 A
   B01J20/12 C
   B01J20/10 A
   C12C7/16
【請求項の数】25
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-524830(P2013-524830)
(86)(22)【出願日】2010年9月16日
(65)【公表番号】特表2013-537484(P2013-537484A)
(43)【公表日】2013年10月3日
(86)【国際出願番号】US2010049036
(87)【国際公開番号】WO2012023952
(87)【国際公開日】20120223
【審査請求日】2013年4月4日
(31)【優先権主張番号】61/374,832
(32)【優先日】2010年8月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】313009947
【氏名又は名称】アイメリーズ フィルトレーション ミネラルズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100128657
【弁理士】
【氏名又は名称】三山 勝巳
(74)【代理人】
【識別番号】100160967
【弁理士】
【氏名又は名称】▲濱▼口 岳久
(74)【代理人】
【識別番号】100170601
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 孝
(72)【発明者】
【氏名】ル,ジー
(72)【発明者】
【氏名】ハート,ジャロッド,アール.
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−265693(JP,A)
【文献】 特公昭47−031342(JP,B1)
【文献】 特開平07−047266(JP,A)
【文献】 特開平10−118638(JP,A)
【文献】 特開平08−332377(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0261041(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00−20/34
C12C 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合濾過補助材料であって、
少なくとも1つの濾過構成要素および少なくとも1つの吸着構成要素を含み、
0.1ミクロンから0.5ミクロンまでの範囲内の平均細孔サイズ、および50から1000ミリダルシーまでの範囲内の透過率を有し、
前記少なくとも1つの濾過構成要素は、ダイアトマイト、天然ダイアトマイト、か焼ダイアトマイトまたはフラックスか焼ダイアトマイト、或いはパーライトであり、
前記少なくとも1つの吸着構成要素は、沈降シリカであることを特徴とする複合濾過補助材料。
【請求項2】
複合濾過補助材料であって、
少なくとも1つの濾過構成要素および少なくとも1つの吸着構成要素を含み、
0.1ミクロンから0.5ミクロンまでの範囲内の平均細孔サイズ、および10から100m/gまでの範囲内の総細孔面積を有し、
前記少なくとも1つの濾過構成要素は、ダイアトマイト、天然ダイアトマイト、か焼ダイアトマイトまたはフラックスか焼ダイアトマイト、或いはパーライトであり、
前記少なくとも1つの吸着構成要素は、沈降シリカであることを特徴とする複合濾過補助材料。
【請求項3】
複合濾過補助材料であって、
少なくとも1つの濾過構成要素および少なくとも1つの吸着構成要素を含み、
少なくとも200の細孔サイズ比を有し、
前記少なくとも1つの濾過構成要素は、ダイアトマイト、天然ダイアトマイト、か焼ダイアトマイトまたはフラックスか焼ダイアトマイト、或いはパーライトであり、
前記少なくとも1つの吸着構成要素は、沈降シリカであることを特徴とする複合濾過補助材料。
【請求項4】
少なくとも400の細孔サイズ比をさらに有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の複合濾過補助材料。
【請求項5】
少なくとも500の細孔サイズ比をさらに有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の複合濾過補助材料。
【請求項6】
200から2000までの細孔サイズ比をさらに有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の複合濾過補助材料。
【請求項7】
200から1000までの細孔サイズ比をさらに有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の複合濾過補助材料。
【請求項8】
50ミリダルシーから800ミリダルシーまでの範囲内の透過率を有する請求項1乃至7のいずれか1項に記載の複合濾過補助材料。
【請求項9】
150ミリダルシーから400ミリダルシーまでの範囲内の透過率を有する請求項1乃至7のいずれか1項に記載の複合濾過補助材料。
【請求項10】
30から200m/gまでの範囲内のBET表面積をさらに有する請求項1乃至9のいずれか1項に記載の複合濾過補助材料。
【請求項11】
50から110m/gまでの範囲内のBET表面積をさらに有する請求項1乃至9のいずれか1項に記載の複合濾過補助材料。
【請求項12】
5ミクロンから40ミクロンまでの範囲内のメジアン粒度を有する請求項1乃至11のいずれか1項に記載の複合濾過補助材料。
【請求項13】
1ミクロンから10ミクロンまでの範囲内のメジアン細孔径(容積面積)を有する請求項1乃至12のいずれか1項に記載の複合濾過補助材料。
【請求項14】
3ミクロンから6ミクロンまでの範囲内のメジアン細孔径(容積面積)を有する請求項1乃至12のいずれか1項に記載の複合濾過補助材料。
【請求項15】
1nmから50nmまでの範囲内のメジアン細孔径(面積)を有する請求項1乃至14のいずれか1項に記載の複合濾過補助材料。
【請求項16】
1nmから10nmまでの範囲内のメジアン細孔径(面積)を有する請求項1乃至15のいずれか1項に記載の複合濾過補助材料。
【請求項17】
10から100m/gまでの範囲内の総細孔面積を有する請求項1乃至16のいずれか1項に記載の複合濾過補助材料。
【請求項18】
20から80m/gまでの範囲内の総細孔面積を有する請求項1乃至16のいずれか1項に記載の複合濾過補助材料。
【請求項19】
25から65m/gまでの範囲内の総細孔面積を有する請求項1乃至16のいずれか1項に記載の複合濾過補助材料。
【請求項20】
30から50m/gまでの範囲内の総細孔面積を有する請求項1乃至16のいずれか1項に記載の複合濾過補助材料。
【請求項21】
70%から80%までの範囲内の空隙率を有する請求項1乃至20のいずれか1項に記載の複合濾過補助材料。
【請求項22】
前記少なくとも1つの吸着構成要素は、前記複合濾過補助剤の5質量%から40質量%までの範囲内の量を含む請求項1乃至21のいずれか1項に記載の複合濾過補助材料。
【請求項23】
前記少なくとも1つの吸着構成要素は、前記複合濾過補助剤の10質量%から30質量%までの範囲内の量を含む請求項1乃至22のいずれか1項に記載の複合濾過補助材料。
【請求項24】
前記複合濾過補助剤は、ビールの混濁防止に使用される請求項1乃至23のいずれか1項に記載の複合濾過補助材料。
【請求項25】
前記少なくとも1つの吸着構成要素は、前記複合濾過補助剤の15質量%から40質量%までの範囲内の量を含み、
前記少なくとも1つの濾過構成要素は、前記複合濾過補助剤の50質量%から85質量%までの範囲内の量を含む請求項1乃至21又は24のいずれか1項に記載の複合濾過補助材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張と参照による組込み
本PCT国際出願は、主題が参照により本明細書に組み込まれている、2010年8月18日に出願した米国仮出願第61/374,832号の優先権の権利および利益を本明細書により主張するものである。
【0002】
本明細書では、新規性のある細孔サイズ特性を有する複合濾過補助材(composite filter−aid material)、ならびに流体から粒子および/または構成物質を濾過し、取り除くためにそのような複合濾過補助材を使用するプロセス、システム、および方法を開示する。一実施形態では、複合濾過補助材は、少なくとも1つの吸収性構成要素と少なくとも1つの濾過構成要素を含む。別の実施形態では、複合濾過補助材は、吸収能力を持つ表面を備える。
【背景技術】
【0003】
多くの濾過用途において、濾過装置は、隔壁などのフィルター・エレメント、および濾過補助材の両方からなる。フィルター・エレメントは、濾過補助材を支持することができるような任意の形状のもの、例えば、十分に目の細かい織りのプラスチック布もしくは金属布で覆われた円筒状管またはウエハー状構造物とすることができる。フィルター・エレメントは、特定のサイズの材料物質を濾過装置に通すことができるフィルター・エレメント孔隙を有する多孔質構造とすることができる。濾過補助材は、例えば、無機粉体または有機性繊維材料とすることができる、1つまたは複数の濾過構成要素を備えることができる。このような濾過補助材は、濾過性能を高めるためにフィルター・エレメントと組み合わせて使用することができる。多くの場合、濾過補助材で使用するための濾過構成要素は、ダイアトマイト、パーライト、およびセルロースなどの物質からなる。濾過の分野を示す一例において、濾過補助材は、「プリコーティング」と称されるプロセスにおける隔壁に最初に施されうる。プリコーティングは、一般に、水と濾過補助材とのスラリーを混合することと、そのスラリーを、隔壁を通って流れる流れの中に導入することを伴う。このプロセスでは、濾過補助材の約1.5mmから約3.0mmなどの薄い層を最終的に隔壁上に堆積し、それにより濾過装置を形成することができる。
【0004】
流体を濾過しているときに、流体中のさまざまな不溶性粒子が濾過補助材に捕捉される。濾過補助材と取り除くべき粒子および/または構成物質の複合した層が隔壁の表面上に蓄積する。これらの複合した層は、「濾過ケーキ」と称される。濾過ケーキ上に堆積する粒子および/または構成物質がどんどん増えると、濾過ケーキは破片物質で飽和してしまい、流体はもはや隔壁を通過することができなくなる。そのような問題に対処するため、「ボディフィーディング」と称されるプロセスが使用されることが多い。ボディフィーディングは、流体が濾過ケーキに到達する前に濾過すべき流体中に追加の濾過補助材を導入するプロセスである。濾過補助材は、未濾過流体の経路を辿り、最終的に濾過ケーキに到達する。濾過ケーキに到達した後、追加された濾過補助材が、プリコーティング・プロセスのときに濾過補助材と隔壁に結合されるのと全く同様にケーキも結合する。濾過補助材の追加の層により、濾過ケーキは膨張し、厚くなって、加わった破片物質を取り込むケーキの能力を高める。濾過補助剤は、典型的には、濾過ケーキ内の開放構造を保持する開放多孔質構造を有し、それにより、濾過ケーキの継続的透過性を確実なものとする。
【0005】
上で述べたように、流体濾過の分野では、粒子分離の多くの方法が、例えば、ダイアトマイト、発泡パーライト、天然ガラス、およびセルロース材料から選択された材料を多孔質濾過構成要素として使用する。これらの材料は、濾過プロセスにおける粒子の効果的な物理的取り込みに特に適していると思われる複雑な多孔質構造を有する。これらの複雑な多孔質構造は何もない空間のネットワークを形成し、その結果、浮力で浮かべる濾材粒子が発生する可能性があり、これらの粒子はこれらの粒子が懸濁されている流体の密度に類似する見かけ密度を有する。流体の透明度を改善する場合に、多孔質濾過構成要素を使用することが一般的慣例である。多孔質濾過構成要素は、流体から望ましくない粒子または粒子状物質などの構成物質を取り除くために使用されることが多い。しかし、物理的取り込みにより粒子状物質を取り除く作業に十分適しているが、これらの多孔質濾過構成要素は、吸着プロセスによって流体から粒子状物質を取り除く作業には十分適していない場合があり、したがって、しばしば、吸着構成要素と組み合わせて使用される。
【0006】
ダイアトマイト、パーライト、もみ殻灰、およびセルロースは、粒子分離に使用されうる濾過構成要素材料のいくつかの例である。ダイアトマイトは、珪藻土とも呼ばれ、珪藻のケイ酸質被殻の形態で生物起源シリカ中に豊富に存在する堆積物、顕微鏡でしか見えない多様な単細胞藻類である。これらの被殻は、地質時代の長い期間を通して、また熱作用を受けてその微細構造の大半を保持する十分な耐久性を有している。ダイアトマイト生成物は、主にシリカからなる本質的に複雑な多孔質構造を有する。パーライトは、処理後熱で膨張しうる天然に産出する火山ガラスである。パーライトの構造は、ダイアトマイトほどには複雑でなく、したがって、パーライトは、高い固形物負荷を有する液体から粗い微粒子を分離するのにより適していると思われる。最後に、セルロース濾過構成要素材料は、一般に、硬材および/または軟材の亜硫酸または硫酸処理によって生産される。パーライトのように、セルロース濾過構成要素材料は、ダイアトマイト濾過構成要素材料に比べて複雑度の低い構造を有するものとしてよい。
【0007】
本明細書で使用されているような「濁度」とは、流体の曇りまたは濁りのことであり、濁りは、流体中に懸濁されている個々の粒子によって引き起こされうる。流体を濁らせうる物質として、例えば、粘土、沈泥、有機物、無機物、微生物が挙げられる。濁度は、テストされる液柱を通して光のビームを放射するネフェロ分析濁度計と称される計測器を使用することによって測定されうる。液柱の同じ側に位置決めされた検出器が、流体によって反射される光の量を測定する。比較的多数の懸濁粒子を含む流体では、比較的少数の粒子を含む流体に比べて反射する光の量が多い。このようにして測定される濁りは、ネフェロメ濁度単位(「NTU」)で定量化されうる。濁度は、重量法を介して測定することもできる。
【0008】
典型的には、濾過構成要素として使用される多孔質媒体の透過性とその濁度除去能力との間には、濾過補助技術に関するトレードオフの関係が存在する。濾過構成要素は、広範な透過性定格にわたるグレードのものが生産される。濾過構成要素の透過性が減少すると、濾過補助材が小さな粒子を取り除く能力は増大しうるが、多くの場合、濾過補助材を通る流量の低下と引き換えである。逆に、濾過構成要素の透過性が高まると、濾過補助材が粒子を濾過する能力は減少しうるので、その結果、濾過補助材を通る流量は増大する。これが生じる範囲は、流体から取り除かれる懸濁粒子の種類および粒度分布に依存する。
【0009】
本明細書で使用されるような「湿潤密度」とは、材料の多孔性の指標である。例えば、湿潤密度は、濾過プロセスで粒子状物質を取り込むために利用可能な空隙容量を反映し、したがって、湿潤密度は、濾過効率を決定するために使用することができる。空隙百分率は、式
空隙率=100*[1−(湿潤密度/真密度)]
で表すことができる。
【0010】
そこで、濾過構成要素の湿潤密度が低ければ、結果として、生成物の空隙率は大きくなり、したがって、真密度を比較的一定に保った場合におそらく濾過効率が高まるであろう。通常の濾過構成要素に対する典型的な湿潤密度は、少なくとも約12lb/ftから約30lb/ftまでの範囲またはそれ以上とすることができる。
【0011】
本明細書で使用されているような「吸着」とは、周囲流体相からの分子が固体の表面に付着する傾向のことである。これと「吸収」という用語とを混同すべきでなく、「吸収」は、固体の表面に付着するのとは反対に周囲の流体からの分子が固体中に散乱するときに結果として生じる。
【0012】
所望の吸着能を達成し、したがって、商用利用のために実用性があるように、吸着構成要素は、比較的大きな表面積を有するものとしてよく、これは微細多孔質構造を意味しうる。いくつかの実施形態では、多孔質吸着構成要素は、その未反応粉末形態では、最大数百m/gまでの範囲内の表面積を有することができる。
【0013】
物理的吸着分子の比表面積を計算する一技法は、ブルナウアー−エメット−テラー(「BET」)理論を含む。BET理論を特定の吸着構成要素に適用することで、「BET表面積」と称される、材料比表面積の尺度が得られる。一般的に言うと、実用的な吸着構成要素のBET表面積は、その未反応粉末形態では、約50から約1200m/gまでの範囲内としてよい。本明細書で使用されているような「表面積」は、BET表面積を指す。
【0014】
濾過構成要素が異なるBET表面積および/または異なる総細孔面積を有する場合、結果として、吸着能および濾過速度が異なる可能性がある。典型的には、BETが低く、および/または総細孔面積が小さい濾過補助剤は、吸着能が低く、濾過速度が速くなる傾向を有する。か焼(calcined)珪藻土濾過補助剤ならびに膨張したフライス加工パーライト濾過補助剤が、最低限の吸着機能を有する濾過補助剤として一般的に使用されているが、それは、表面積が小さく、典型的には<10m/gだからである。シリカゲルなどの吸着構成要素は、一般的に、BET表面積または総細孔面積が大きいが、その濾過速度は、一般的に、粒度分布がかなり細かく、および/または濾過補助剤の空隙が不足しているため、遅い。微粒子は、濾過の際に細孔をふさぎ、表面積が大きいことによって、流れに対してより大きな抗力が生じ、その結果、濾過速度が著しく低下する可能性がある。
【0015】
細孔径分布を記述する一技法では、加えられたアイソスタティック圧力の下で水銀圧入を使用する。この方法では、排出粉体は、閉鎖容器内の液体水銀に囲まれ、圧力は、徐々に高められる。低圧力では、水銀は、液体水銀の表面張力が高いため粉体試料中に圧入しない。圧力が高まるにつれ、水銀は試料中に押し込められるが、最初に、最大の空間内に圧入し、水銀表面の曲率は最低となる。圧力がさらに高まると、水銀はより狭い空間内に無理矢理圧入される。最終的に、すべての空隙が水銀で充満する。こうして、総空隙容量と圧力とのプロットを作成することができる。したがって、この方法では、総細孔容積だけでなく、細孔サイズの分布も区別することができる。水銀圧入多孔度測定では、粒子内空隙率と粒子間空隙率とを区別することができず、したがって、プロットを解釈するために粒度と形状についてある程度の知識が必要になる場合があることに留意されたい。さらに、ある種の細孔形状(小さなアクセス口を持つ大きな細孔、いわゆるインクつぼ細孔など)は、誤解させるくらい高い圧力で満たされる可能性があり、したがって実際、この方法は、このような真細孔サイズ分布の推定を行うものであり、直接的な測定を行うものではない。細孔の分布が推定された後、細孔の形状を仮定して(球状が通常仮定される)、細孔サイズに基づき表面積の推定を計算することが可能である。メジアン細孔サイズ推定値も、体積または面積に基づき計算されうる。メジアン細孔サイズ(容積)は、累計容積グラフで第50百分位の細孔サイズであるが、メジアン細孔サイズ(面積)は、累計面積グラフで第50百分位である。平均細孔サイズ(直径)は、総細孔容積と総細孔面積との比の4倍である(4V/A)。
【0016】
吸着構成要素を使用する一方法では、吸着構成要素を、吸着すべき粒子および/または構成物質を含む流体と接触させ、それらの粒子および/または構成物質を取り除くことによって流体を浄化し、および/またはそれらの粒子および/または構成物質を分離させてそれらを精製する。次いで、いくつかの実施形態では、吸着された粒子または構成物質を含む吸着構成要素は、例えば、従来の濾過プロセスによって、流体から分離される。
【0017】
慣例的な吸着方法の例示的な一例は、ビールの「混濁防止」のプロセスに見ることができる。特別に処理しない限り、冷やしたビールは化学反応を受け、その結果、不溶性粒子を生成しうることが現在では知られている。その化学反応において、冷えた状態で濁り活性タンパク質および/またはポリフェノールの間に水素結合が形成しうる。次いで、反応したタンパク質および/またはポリフェノールは大きな粒子に成長し、これがビールが濁ることになる原因であり、「寒冷混濁」とも称される状態である。寒冷混濁は、消費者にとっても、ビール醸造者にとっても望ましくないものであると思われる。濁りは、ビールが室温以下に冷やされたときに最も顕著になりうる。粒子がタンパク質である場合など、いくつかの場合において、温度が上昇すると、タンパク質をまとめる水素結合が壊されることがある。
【0018】
混濁防止は、ビール中に寒冷混濁を生じさせる粒子を取り除くために少なくとも1つの吸着構成要素および/または少なくとも1つの濾過構成要素を使用するプロセスを含むことができる。混濁防止の一形態は、1つのステップで、パッケージングの前にシリカゲルなどの固体吸着構成要素をビールに加えることを伴う。粒子および/または構成物質は、加えられた吸着剤構成要素に結合し、次いで、第2のステップで、吸着剤構成要素は続いてビールから濾過され、次いで保管、販売、および/または消費のためにパッケージングされる。
【0019】
吸着ステップと濾過ステップの両方を実行する濾過プロセスは、吸着構成要素を濾過する難しさがあるため効率が低くなる可能性がある。例えば、吸着構成要素は、多孔質濾過補助材の空隙空間を占有しうる。その占有によって濾過補助材の透過性が低減され、全体的に濾過流量が低下しうるか、または費用を追加して、追加するか、もしくは濾過補助材を増やす必要が生じる場合があり、また結果として濾過器筐体内の利用可能な容積の消費が速くなる可能性もある。
【0020】
混濁防止の従来のプロセスを改良する試みがすでになされている。初期の頃の試みでは、吸着構成要素と濾過構成要素との単純混合体を形成し、濾過ステップと吸着ステップとを1つのステップに組合せ、そうすることで、吸着構成要素を濾過する必要性をなくした。「単純混合体」という用語は、本明細書では、少なくとも1つの吸着構成要素および少なくとも1つの濾過構成要素を含む組成物を記述するために使用され、これら2つの構成要素は、化学的結合、熱的焼結、または同時沈降を受けない。単純混合体は、これらの構成要素が、パッケージングおよび出荷で受けることが多い物理的損傷のせいで分離に曝される可能性があるためいくぶん役に立たないことがある。さらに、吸着構成要素の粒子形状特性は、これらの粒子が濾過ケーキの継続的透過性を保証することによって濾過構成要素粒子が行う仕方では濾過を補助しないことを意味しうる。そのため、吸着構成要素の粒子は、濾過ケーキ内の貴重な空隙空間を占有し、そうして、透過性を低下させるか、または透過性を維持するためにより多くの濾過構成要素が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許第6,712,974号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
一態様では、複合濾過補助剤は、少なくとも1つの濾過構成要素および少なくとも1つの吸着構成要素を含むことができ、複合濾過補助剤は、約0.1ミクロンから約0.5ミクロンまでの範囲内の平均細孔径(4V/A)、および約50から約1000ミリダルシーまでの範囲内の透過率を有する。
【0023】
別の態様では、複合濾過補助剤は、少なくとも1つの濾過構成要素および少なくとも1つの吸着構成要素を含み、複合濾過補助剤は、約0.1ミクロンから約0.5ミクロンまでの範囲内の平均細孔径(4V/A)、および約10から約100m/gまでの範囲内の総細孔面積を有する。
【0024】
さらに別の態様では、複合濾過補助剤は、少なくとも1つの濾過構成要素および少なくとも1つの吸着構成要素を含むことができ、複合濾過補助剤は、少なくとも約200の細孔径比を有する。例えば、複合濾過補助剤は、少なくとも約400または少なくとも約500の細孔サイズ比を有することができる。別の態様では、複合濾過補助剤は、約200から約2000まで、または約200から約1000までの範囲内の細孔サイズ比を有することができる。
【0025】
さらに別の態様では、複合濾過補助材は、約0.1ミクロンから約0.3ミクロンまでの範囲内の平均細孔径(4V/A)をさらに有する。
【0026】
さらに別の態様では、複合濾過補助材は、約25から約65m/g、約30から約50m/g、または約30から約40m/gなどの、約20から約80m/gまでの範囲内の総細孔面積をさらに有する。
【0027】
別の態様では、複合濾過補助材は、約50から約110m/gなどの、約30から約200m/gまでの範囲内のBET表面積をさらに有する。
【0028】
さらに別の態様では、複合濾過補助材は、約5ミクロンから約40ミクロンまでの範囲内のメジアン粒度をさらに有する。
【0029】
別の態様では、複合濾過補助材は、約50ミリダルシーから約1000ミリダルシー、約100ミリダルシーから約500ミリダルシー、または約125ミリダルシーから約400ミリダルシーなどの、約50ミリダルシーから約5000ミリダルシーまでの範囲内の透過率を有する。
【0030】
さらに別の態様では、複合濾過補助材は、約3ミクロンから約6ミクロンなどの、約1ミクロンから約10ミクロンまでの範囲内のメジアン細孔径(容積)を有する。
【0031】
別の態様では、複合濾過補助材は、約1nmから約10nmなどの、約1nmから約50nmまでの範囲内のメジアン細孔径(面積)を有する。
【0032】
別の態様では、複合濾過補助材は、例えば、約70%から約80%までの範囲内などの、約70%から約95%までの範囲内の空隙率を有する。
【0033】
別の態様では、複合濾過補助材は、ダイアトマイトを含むことができる。いくつかの態様では、ダイアトマイトは、天然ダイアトマイトを含むものとしてよい。他の態様では、ダイアトマイトは、か焼ダイアトマイト、フラックスか焼ダイアトマイト、またはフラッシュか焼ダイアトマイトを含むものとしてよい。他の態様では、複合濾過補助材は、パーライトを含むことができる。さらに他の態様では、複合濾過補助材は、沈降シリカを含むことができる。
【0034】
さらに別の態様では、少なくとも1つの吸着構成要素は、その複合濾過補助剤の約10質量%から約30質量%などの、その複合濾過補助剤の約5質量%から約40質量%までの範囲内の複合濾過補助剤を含む。
【0035】
別の態様では、複合濾過補助剤は、ビールの混濁防止に使用されうる。
【0036】
別の態様では、複合濾過補助剤は、液体から溶解性金属の除去または吸着に使用されうる。
【0037】
さらに別の態様では、複合濾過補助剤は、少なくとも1つの濾過構成要素および少なくとも1つの吸着構成要素を含み、約50ミリダルシーから約1000ミリダルシーまでの範囲内の透過率、約30から約200m/gまでの範囲内のBET表面積、および少なくとも約200のメジアン細孔径(容積)対メジアン細孔径(面積)の比を有する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】典型的なダイアトマイト濾過補助剤と対比した例示的な複合濾過補助剤の細孔サイズ分布を示す図である。
図2】ダイアトマイト濾過補助剤(Celite 3Z(登録商標))とダイアトマイト・ベースの複合濾過補助剤とのブレンドと接触させたビールの寒冷混濁データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
A.例示的な複合濾過補助剤
本発明は、新規性のある細孔サイズ特性を有する複合濾過補助剤を実現することができる。本明細書で使用されているような「複合濾過補助剤」という用語は、少なくとも1つの濾過補助構成要素およびこの要素に緊密に結合された少なくとも1つの吸着構成要素を備える材料を単に意味するだけである。複合濾過補助剤は、構成物質濾過または吸着構成要素単独のいずれかと著しく異なる特性を有することがある。
【0040】
本明細書で開示されている複合濾過補助材は、少なくとも1つの吸着構成要素および少なくとも1つの濾過構成要素を含むことができ、それぞれの構成要素は流体を通すことができる細孔を有する。いくつかの実施形態では、「細孔サイズ比」として表すことができる細孔サイズ特性の有利な組み合わせを有する複合濾過補助剤である。
【0041】
空隙率特性は、当業者に知られているか、またはこれ以降発見される適切な測定技術によって測定されるものとしてよい。空隙率の測定例として、限定はしないが、細孔容積、平均細孔径、メジアン細孔径、および総細孔面積の測定が挙げられる。いくつかの実施形態では、細孔容積は、Micromeritics Instrument Corporation社(米国ジョージア州ノークロス所在)のAutoPore IV 9500シリーズ水銀ポロシメーターで測定され、この測定器は、約130度に設定された接触角を使用して、0.006から600μmまでの範囲内の細孔径、および約0psiから約33000psiまでの範囲内の圧力を測定することができる。
【0042】
本明細書で定義されているような「細孔サイズ比」という用語は、Micromeritics AutoPore IVポロシメーターを使用して測定したときの細孔直径(容積)と細孔直径(面積)との比を単に指すだけである。メジアン細孔径(容積、V50)は、総圧入容積の50%で計算されたメジアン細孔径であり、メジアン細孔径(面積、A50)は、総細孔面積の50%で計算されたメジアン細孔径であり、これらは、Micromeritics AutoPore IVポロシメーターによって報告されたとおりの値である。
【0043】
本明細書で使用されているような「BET表面積」は、ブルナウアー−エメット−テラー(「BET」)理論に従って物理的吸着分子の比表面積を計算する技法を指す。BET表面積は、当業者に知られているか、またはこれ以降発見される適切な測定技術によって測定されるものとしてよい。いくつかの実施形態では、BET表面積は、Micromeritics Instrument Corporation社(米国ジョージア州ノークロス所在)の、窒素を吸着ガスとして使用する、Gemini III 2375 Surface Area Analyzerにより測定される。
【0044】
いくつかの実施形態では、複合濾過補助剤の細孔サイズ比は、例えば、250より大きい、300より大きい、350より大きい、400より大きい、450より大きい、500より大きい、550より大きい、600より大きい、650より大きい、さらには700よりも大きい値など、200より大きい値を有することができる。他の実施形態では、複合濾過補助剤の細孔サイズ比は、例えば、約200から約1000までの範囲、または約200から約800までの範囲などの、約200から約2000までの範囲内の値である。さらに他の実施形態では、複合濾過補助剤の細孔サイズ比は、例えば、約300から約1000までの範囲、約400から約1000までの範囲、約500から約1000までの範囲、約600から1000までの範囲、または約700から1000までの範囲などの、約200から約1000までの範囲内の値である。
【0045】
理論によって拘束されるものではないが、より高い細孔サイズ比を有する濾過補助剤は、いくつかの用途において改善された特性を示すと仮定される。例えば、複合濾過補助材の高いメジアン細孔径(容積)は、濾過構成要素のメジアン細孔径(容積)に相関しているように見え、微粒子保持能力およびより高い透過性を高めるのに役立ちうる。その一方で、複合濾過補助材のメジアン細孔径(面積)は、吸着構成要素のメジアン細孔径(面積)およびその吸着特性に相関しているように見え、これにより、寒冷混濁を引き起こしうるタンパク質を都合よく取り除くことができる。したがって、少なくともいくつかの実施形態による複合濾過補助剤は、飲料濾過用途で使用されたときに濾過構成要素と吸着構成要素の両方の細孔サイズ特性の有利な組み合わせが得られるように考えられた細孔サイズ比を有する。
【0046】
いくつかの実施形態では、複合濾過補助材は、約4ミクロンより大きい値などの、約3.5ミクロンより大きいメジアン細孔径(容積)を有する。他の実施形態では、複合濾過補助材は、約3ミクロンから約6ミクロン、約4ミクロンから約6ミクロン、または約4ミクロンから約5ミクロンなどの、約1ミクロンから約10ミクロンまでの範囲内のメジアン細孔径(容積)を有する。
【0047】
いくつかの実施形態では、複合濾過補助材は、例えば、約50nm未満、または約10nm未満などの、約100nm未満のメジアン細孔径(面積)を有することができる。他の実施形態では、複合濾過補助材は、例えば、約1nmから約10nm、または約5nmから約10nmなどの、約1nmから約50nmまでの範囲内のメジアン細孔径(面積)を有することができる。
【0048】
さらに他の実施形態では、複合濾過補助材は、例えば、約20から約80m/g、約25から約65m/g、約30から約50m/g、または約30から約40m/gなどの、約10から約100m/gまでの範囲内の総細孔面積を有することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、複合濾過補助材は、少なくとも1つの濾過構成要素の表面上の原位置に沈降した少なくとも1つの吸着構成要素を含む。複合濾過補助材を支えるためにフィルター・エレメントが使用されうる。いくつかの実施形態では、フィルター・エレメントは、流体の流れが通ることができるフィルター・エレメントの空隙を含む。少なくとも1つの複合濾過補助剤を含む濾過補助材は、少なくとも1つの吸着構成要素および少なくとも1つの濾過構成要素の多孔質構造の両方の吸着特性を保持し、これにより、少なくとも1つの複合濾過補助剤を含む濾過補助材の有用性を高めることができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの吸着構成要素が、少なくとも1つの濾過構成要素の表面上の原位置に沈降する。その結果、単純な混合体は、懸濁後に分離しうるが(例えば、流体、搬送、または輸送中に)、少なくとも1つの複合濾過補助剤を含む濾過補助材は、その構成要素の吸着性と濾過特性の両方を補助することができる。少なくとも1つの吸着構成要素が少なくとも1つの濾過構成要素上の原位置に沈降するプロセスは、熱的に焼結されるか、または化学的に結合された複合物に比べて優れた吸着性および濾過特性も有することができるが、それは、原位置への沈降プロセスが、少なくとも1つの複合濾過補助剤を含む濾過補助材を形成することができ、吸着構成要素は、濾過構成要素上に均等に分布し、したがって、吸着に対してより広い表面積を示すからである。表面積が広ければ広いほど、少なくとも1つの複合濾過補助剤を含む濾過補助材はより多くの粒子および/または構成物質を吸着することができ、その結果、濾過された流体の濁度レベルを低くすることができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの濾過構成要素のBET表面積は、約2m/gより広い。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの濾過構成要素のBET表面積は、約2m/gから約10m/gまでの範囲内である。
【0052】
他の実施形態では、少なくとも1つの吸着構成要素のBET表面積は、約2m/gより広い。別の実施形態では、少なくとも1つの吸着構成要素のBET表面積は、約10m/gより広い。さらに他の実施形態では、少なくとも1つの吸着構成要素のBET表面積は、約25m/gより広い。さらなる実施形態において、BET表面積は、約50m/gより広い。さらに他の実施形態では、少なくとも1つの吸着構成要素のBET表面積は、約85m/gより広い。さらなる実施形態において、少なくとも1つの吸着構成要素のBET表面積は、約125m/gより広い。他の実施形態では、少なくとも1つの吸着構成要素のBET表面積は、約250m/gより広い。さらなる実施形態において、少なくとも1つの吸着構成要素のBET表面積は、約30m/gから約200m/gまでの範囲内である。さらに他の実施形態では、少なくとも1つの吸着構成要素のBET表面積は、約50m/gから約100m/gまでの範囲内である。
【0053】
いくつかの実施形態では、複合濾過補助材のBET表面積は、約10m/gより大きいか、または約25m/gより大きいか、または約50m/gより大きい。さらなる実施形態では、複合濾過補助材のBET表面積は、例えば、約50から約110m/gまでの範囲、または約50から約75m/gまでの範囲などの、約30から約200m/gまでの範囲内である。
【0054】
少なくとも1つの吸着構成要素のBET表面積を広くすることで、少なくとも1つの複合濾過補助剤を含む濾過補助材は流体の濁りに関わる粒子および/または構成物質の数を減らすことができる。少なくとも1つの複合濾過補助剤を含む濾過補助材は、未濾過流体から粒子および/または構成物質を取り込むことができ、その結果、濾過された流体に含まれる粒子および/または構成物質が少なくなる。さらに、本明細書で開示されている少なくとも1つの複合濾過補助剤を含む濾過補助材を通して濾過された流体の濁度は、少なくとも1つの吸着構成要素と少なくとも1つの濾過構成要素との単純混合体を通して濾過された流体の濁度よりも小さくなる可能性があり、その単純混合体中の吸着構成要素と濾過構成要素との割合は、本明細書で開示されている少なくとも1つの複合濾過補助剤を含む濾過補助材の吸着構成要素と濾過構成要素との割合に類似しているか、またはそれよりもずっと大きい。さらに、本明細書で開示されている少なくとも1つの複合濾過補助剤を含む濾過補助材を通して濾過された流体の濁度は、吸着構成要素と濾過構成要素の熱的に焼結された、または化学的に結合された複合材料を通して濾過された流体の濁度よりも小さくなる可能性があり、熱的に焼結された、または化学的に結合された複合材料中の吸着構成要素と濾過構成要素との割合は、本明細書で開示されている少なくとも1つの複合濾過補助剤を含む濾過補助材の吸着構成要素と濾過構成要素との割合に類似しているか、またはそれよりもずっと大きい。
【0055】
本明細書で開示されている少なくとも1つの複合濾過補助剤を含む濾過補助材は、透過性に直接的に関係する、広範な流量をもたらすように処理されうる。透過性は、ダルシーまたはミリダルシー(「md」)の単位で報告することができる。1ダルシーは、1センチポアズの粘度を有する1cmの流体が1atm(つまり、101.325kPa)の差圧の下において1秒で1cmの面積を通過することができる厚さ1cmの濾材を通る透過率に対応する。透過率を決定するには、水中の濾過補助材の懸濁から隔壁上に濾過ケーキを形成するように設計された装置を使用し、次いで、指定された量の水が断面積が知られている濾過ケーキの測定された厚さ分を通って流れるのに要する時間を測定する。ダイアトマイトおよびパーライト製品などの、精密濾過に適した多くの濾材が市販されており、これらの製品は約0.05ダルシーから10ダルシー超までなど、約0.001ダルシーから30ダルシー超までの範囲内の広範な透過率に対応する。砂などの、粗濾過用の濾過補助材は、少なくとも約1000ダルシーなどのより大きな透過率を有することができる。
【0056】
特定の濾過プロセスに対する濾過透過率の選択は、一部は、特定の用途向けに要求される流量および流体の清澄度に依存する。多くの場合において、流体補助材を通る流体の流れは、濾過構成要素の多孔性に密接に関係するものとしてよい。濾過構成要素の与えられたファミリー内で、透過率の低いものは、濾過プロセスにおいてより小さな粒子が保持されうるためより高い清澄度をもたらすことができるより小さな細孔を有することができるが、それに対して、透過率が高いものは、より大きな流体流量をもたらすことができるより大きな細孔を有しうるが、通常は、それと対になる低い透過率のものによって取り除かれるものと同程度に小さい粒子を取り除く能力と引き換えとなる。
【0057】
吸着構成要素は、当業者に知られているか、またはこれ以降発見される適当な吸着体から選択することができる。いくつかの実施形態では、吸着体は、シリカの形態をとるものとしてよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの吸着構成要素をシリカの多様な形態のものから選択することができる。例えば、シリカゲルは、砂として天然に存在しうる、二酸化ケイ素(SiO)の形態をとる。しかし、一般的には、砂は典型的には結晶で、無孔性であるが、シリカゲルは、非晶質であり、多孔性である場合もある。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの吸着構成要素は、沈降シリカであってよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの吸着構成要素は、コロイド状シリカであってよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの吸着構成要素は、フュームド・シリカであってよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの吸着構成要素は、シリカ・フュームであってよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの吸着構成要素は、珪酸塩から選択される。好適な珪酸塩の非限定的な例として、アルミノケイ酸塩、ケイ酸カルシウム、およびケイ酸マグネシウムが挙げられる。さらに他の実施形態では、少なくとも1つの吸着構成要素は、アルミナから選択される。いくつかの実施形態では、アルミナ吸着構成要素は、アルミノケイ酸塩である。いくつかの実施形態では、アルミナ吸着構成要素は、多孔質アルミナである。
【0058】
本明細書で開示されている少なくとも1つの濾過可能な複合吸着体を含む濾過補助材の準備に際して使用するのに適している濾過構成要素は、さまざまな細孔サイズを有することができる。一実施形態では、濾過構成要素の細孔サイズは、比較的大きな細孔サイズであり、例えば、平均細孔径は、例えば、約2から約10ミクロンなどの、約1から約10ミクロンまでであり、したがって、これは、粒子を取り込むのに特に最適であり、そのため、粒子および/または構成物質の除去によって機械的濾過および/または清澄が可能になる。他の実施形態では、濾過構成要素の細孔サイズは、比較的小さい細孔サイズであり、例えば、平均細孔径は約2ミクロンである。
【0059】
本明細書で開示されている濾過可能な複合吸着体の準備に際して使用するのに適している濾過構成要素は、さまざまな表面積を有することができる。いくつかの実施形態では、濾過構成要素は、比較的広い表面積を有することができる。いくつかの実施形態では、濾過構成要素は、比較的小さな表面積を有することができる。
【0060】
理論によって拘束されるものではないが、広い表面積を有する濾過構成要素を使用すると、その上に形成されうる吸着構成要素のコーティング、例えば、沈降シリカの厚さを減らすことが可能になると思われる。
【0061】
吸着体コーティングの厚さを減らすと、取り除くべき粒子および/または構成物質の吸着のための部位を増やせると考えられる。いくつかの実施形態では、濾過構成要素の表面積は、少なくとも約1m/gである。いくつかの実施形態では、表面積は、少なくとも約3m/gである。いくつかの実施形態では、表面積は、少なくとも約15m/gである。いくつかの実施形態では、表面積は、少なくとも約30m/gである。いくつかの実施形態では、表面積は、少なくとも約50m/gである。いくつかの実施形態では、表面積は、約1m/gから約100m/gまでの範囲内である。いくつかの実施形態では、表面積は、約500m/g未満である。
【0062】
追加の態様では、本明細書で開示されている少なくとも1つの複合濾過補助剤を含む濾過補助材は、さまざまな湿潤密度をも示しうる。例えば、少なくとも1つの複合濾過補助剤を含む濾過補助材は、約10から約25lb/ftまでの範囲内の湿潤密度を有することができる。濾過プロセスに物質を受け入れるために湿潤密度は吸着構成要素の空隙容量を反映しているので、より低い湿潤密度は、吸着構成要素が高い空隙容量を有し、流体中のより多くの粒子および/または構成物質を吸着することができることを示しうる。
【0063】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの濾過構成要素および/または少なくとも1つの追加の濾過構成要素は、ダイアトマイト(生物起源シリカ)を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの濾過構成要素は、パーライト(天然ガラス)を含む。いくつかの実施形態では、濾過構成要素は、限定はしないが、ダイアトマイト、もみ殻灰、および海綿骨針を含む、生物起源シリカから選択される。いくつかの実施形態では、濾過構成要素は、浮力で浮かべるガラスから選択される。浮力で浮かべるガラスの一例は、限定はしないが、軽石、発泡軽石、火山灰、発泡黒曜石、発泡火山塵、および砂を含む、天然ガラスである。いくつかの実施形態では、濾過構成要素は、合成ガラスから選択される。合成ガラスの例として、限定はしないが、ガラス繊維、制御多孔性ガラス、および泡ガラスが挙げられる。いくつかの実施形態では、濾過構成要素は、浮力で浮かべるポリマーから選択される。浮力で浮かべるポリマーとして、限定はしないが、繊維状ポリマー(ナイロン繊維およびポリエステル繊維など)、および粉体ポリマー(ポリ塩化ビニル−アクリル共重合体粉体)が挙げられる。いくつかの実施形態では、濾過構成要素は、セルロースから選択される。少なくとも1つの濾過要素および少なくとも1つの追加の濾過要素(使用される場合)は、同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、濾過構成要素は同じである。いくつかの実施形態では、濾過構成要素は異なる。
【0064】
本明細書で使用されているような「生物起源シリカ」という用語は、生命体によって産生されるか、またはもたらされるシリカを指す。生物起源シリカの一例は、ダイアトマイトであり、これは、珪藻のケイ酸質被殻(つまり、外殻または骨格)の形態で生物起源シリカ中に豊富に存在する堆積物である、珪藻土(珪藻土「diatomaceous earth」は「kieselguhr」とも称される)から得られる。珪藻は、珪藻綱の顕微鏡でしか見えない多様な単細胞藻類であり、生きている珪藻中では半分に分かれていてピル・ボックスとそっくりに組み合わさって1つになる変化に富む複雑な構造の凝ったケイ酸質骨格(つまり、被殻)を有する。被殻の形態は、種同士の間で大きく異なり、分類学的分類の基盤として用いられ、少なくとも2,000の別種が知られている。それぞれの弁の表面は、被殻の複雑な微細構造を備え、個別の種に特徴的な設計を与える一連の開口部によって特徴付けられる。典型的な被殻のサイズは、約0.75μmから約1,000μmまでの範囲内とすることができる。一実施形態では、サイズは、約10μmから約150μmまでの範囲内である。これらの被殻は、化学平衡を維持する状態に保存されたときに地質時代の長い期間を通してその多孔質の複雑な構造の大半を事実上無変化に保持するうえで十分な耐久性を有している。生物起源シリカの他の供給源が知られており、多くの植物、動物、および微生物が固有の特性を持つシリカの集中的供給源となっている。例えば、もみ殻は十分なシリカを含むみ、そのケイ酸質残留物、「もみ殻灰」としてよく知られている生成物、を得るために商業的に灰にされる。ある種の海綿も、シリカの集中的な供給源であり、残物は通常針状骨として地質学的堆積物中に存在する。
【0065】
本明細書で使用されているような「天然ガラス」という用語は、ケイ酸質マグマまたは溶岩の急冷によって形成される、火山ガラスと一般に称される、天然ガラスを指す。例えば、パーライト、軽石、火山灰、黒曜石、およびピッチストーンを含む、いくつかの種類の天然ガラスが知られている。加工前のパーライトは、灰色から緑までの色を有し、球面亀裂が豊富に存在していて小さな真珠様の塊に砕けうる。軽石は、軽量のガラス状多孔質岩である。黒曜石は暗色で、ガラス光沢を持ち、特徴的な貝殻状断口を備えうる。ピッチストーンは、蝋状の樹脂状光沢を有し、褐色、緑色、または灰色である。パーライトおよび軽石などの火山ガラスは、塊状鉱床中に存在し、広範な商業用途に用いられる。固められた形態をとったときには凝灰岩と称されることの多い、火山塵は、ガラス状形態をとりうる小さな粒子または断片を含む。本明細書で使用されているように、天然ガラスという用語は、火山塵も包含する。
【0066】
天然ガラスは、流紋岩と化学的に同等であるものとしてよい。粗面岩、石英安山岩、安山岩、ラタイト、および玄武岩と化学的に同等である天然ガラスも知られているが、あまり一般的でないと言える。黒曜石という用語は、一般的に、シリカを豊富に含む多くの種類の天然ガラスに用いられる。黒曜石ガラスは、その珪酸含量に従っていくつかのサブカテゴリに分類することができるが、流紋岩黒曜石(典型的には約73質量%のSiOを含む)が最も一般的である。
【0067】
パーライトは、例えば、約72から約75%までのSiO、約12から約14%までのAl、約0.5から約2%までのFe、約3から約5%までのNaO、約4から約5%までのKO、約0.4から約1.5%までのCaO(質量による)、および少量の他の金属元素を含むものとしてよい水和天然ガラスである。パーライトは、化学的に結合された水のより高い含有量(約2から約5質量%)、ガラス真珠光沢の存在、および特徴的な同心状またはアーチ形のタマネギの皮に似た(つまり、真珠岩)破砕により他の天然ガラスから区別することができる。
【0068】
パーライト生成物は、フライス削りと熱膨張によって作製することができ、高空隙率、低かさ密度、および化学的不活性などの固有の物理的特性を有することができる。
【0069】
軽石は、メソ細孔構造(例えば、最大約1mmまでのサイズの細孔もしくは気孔を持つ)によって特徴付けられる天然ガラスである。軽石は多孔質であるため、非常に低い見かけ密度を有し、多くの場合、水の表面に浮かばせることができる。大半の市販の軽石は、約60質量%から約70質量%までのSiOを含む。軽石は、スライス削りと分類によって処理され、生成物は、軽量凝集体として、さらには研磨剤、吸着剤、および充填剤としても使用されうる。未発泡軽石および熱膨張軽石も、濾過構成要素として使用することができ、場合によっては、火山塵も使用できる。
【0070】
本明細書で開示されている、少なくとも1つの吸着構成要素および少なくとも1つの複合濾過補助剤を含む濾過補助材の少なくとも1つの濾過構成要素、さらには少なくとも1つの追加の濾過構成要素の適切な選択は、意図された特定の用途によって決定されうる。例えば、高い清澄度を要求するが、低い流量を許容する濾過プロセスでは、低透過率の少なくとも1つの複合濾過補助剤を含む濾過補助材を使用することができるが、その一方で、高い流量を要求するが、高い清澄度を必要としない濾過プロセスでは、高透過率の少なくとも1つの複合濾過補助剤を含む濾過補助材を使用することができる。同様の論法が、少なくとも1つの吸着構成要素の選択に適用され、また他の材料と併せて使用する場合、もしくは生成物を含む混合体を作製するときに少なくとも1つの複合濾過補助剤にも適用される。
【0071】
いくつかの実施形態では、シリカは、生物起源シリカである、ダイアトマイト上に原位置で沈降されうる。その結果得られる複合材は、沈降シリカ吸着剤から得られる、吸着能力、例えば、ビールの混濁防止能力とダイアトマイト濾過構成要素の濾過特性の両方を有する。いくつかの実施形態では、その結果得られる沈降シリカ/ダイアトマイト複合濾過補助剤が、少なくとも1つの追加の濾過構成要素とさらに混合されうる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加の濾過構成要素は、ダイアトマイトを含むこともできる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加の濾過構成要素は、ダイアトマイトと異なる濾過構成要素を含むことができる。
【0072】
B.例示的な複合濾過補助剤を作製するための例示的な方法
酸化ナトリウム(NaO)およびシリカ(SiO)を含むいくつかの化合物のうちのどれか1つを指すために、ここではケイ酸ナトリウムが使用される。このような組み合わせとして、例えば、オルトケイ酸ナトリウム(NaSiO)、メタケイ酸ナトリウム(NaSiO)、および二ケイ酸ナトリウム(NaSi)が挙げられる。いくつかの実施形態では、ケイ酸ナトリウムは、ダイアトマイト・ベースのケイ酸ナトリウムである。いくつかの実施形態では、ケイ酸ナトリウムは、全体として、または一部だけ、少なくとも1つのケイ酸アンモニウムおよび/またはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、およびセシウムのケイ酸などの少なくとも1つのアルカリ金属のケイ酸塩の代わりに使用される。SiO/NaO比が約3.2:1であり、濃度が20%であるケイ酸ナトリウムを、例えば、World Minerals Inc.社から購入することができる。SiO/NaO比が約3:1であり、濃度が34.6%であるケイ酸ナトリウムを、例えば、PQ Corp.社から購入することができる。
【0073】
すでに知られているか、またはこれ以降発見される好適な濾過構成要素のうちから選択された、濾過構成要素を水と混合して、自由に流れる懸濁液を形成することができる。いくつかの実施形態では、濾過構成要素は、World Minerals,Inc.社が製造する、市販の濾過構成要素であるCelite Standard Super Cel(登録商標)とすることができる。いくつかの実施形態では、濾過構成要素は、Celite 3Z(登録商標)、Celite 577(登録商標)、Celite 289(登録商標)、Celite 512(登録商標)、Celite Filter−Cel(登録商標)、およびCelite Hyflo Super−Cel(登録商標)を含む群から選択された市販の濾過構成要素とすることができ、これらはすべてWorld Minerals,Inc.社によって製造されている。
【0074】
次いで、ケイ酸ナトリウム溶液を濾過構成要素懸濁液に加えて、pHを高くする。ケイ酸ナトリウムと濾過構成要素との質量比は、例えば、約1:3とすることができるが、どのような比でもかまわない。
【0075】
次いで、酸、またはその塩をスラリーに、シリカゲルの沈降に適したpH範囲までそのスラリーの酸度を高める(つまり、pHを下げる)のに十分な量だけ加えることができる。好適な酸を選択することができ、そのような選択は当業者のノウハウの範囲内にある。いくつかの実施形態では、酸は、硫酸とすることができる。他の実施形態では、酸は、リン酸とすることができる。さらに他の実施形態では、酸は、塩酸とすることができる。さらに他の実施形態では、酸は、硝酸とすることができる。さらに他の実施形態では、酸は、酢酸とすることができる。
【0076】
pHが下がるのに合わせて、ゲル化が生じるまでスラリーを定期的に攪拌する。これは、溶液の酸度とスラリー中のケイ酸ナトリウム濃度によって約25から約60分を要する可能性がある。次いで、スラリーを濾過する。水を懸濁液に加えて濾過を助ける。その結果得られるケーキを水で洗うことができる。次いで、ケーキを乾燥させて、ケーキ中の過剰な流体を蒸発させる。例えば、ケーキは、約110℃から約200℃までの範囲の温度で乾燥させることができる。
【0077】
加えられるケイ酸ナトリウムの量は、複合濾過補助剤および/または最終的な濾過補助材における細孔サイズ分布を制御するように選択されうる。シリカゲルのパーセンテージを高くすることは、一般的には、濾過補助材が吸着剤として働く能力を高める働きをするが、一般的には、濾過材として働く能力を低下させる働きをする。逆に、シリカゲルのパーセンテージを低くすることは、一般的には、濾過補助材が吸着剤として働く能力を低下させる働きをし、濾過材として働く能力を高める働きをする。
【0078】
したがって、複合濾過補助剤中の吸着構成要素の量は、全複合濾過補助剤の約0超から約100質量%までの範囲の量を含みうる。いくつかの実施形態では、吸着構成要素は、全複合濾過補助剤の約5質量%を超える量を含みうる。他の実施形態では、吸着構成要素は、全複合濾過補助剤の約15質量%を超える量を含みうる。他の実施形態では、吸着構成要素は、全複合濾過補助剤の約25質量%を超える量を含みうる。他の実施形態では、吸着構成要素は、全複合濾過補助剤の約40質量%より少ない量を含みうる。他の実施形態では、吸着構成要素は、全複合濾過補助剤の約50質量%より少ない量を含みうる。他の実施形態では、吸着構成要素は、全複合濾過補助剤の約5質量%から約40質量%までの範囲内の量を含みうる。他の実施形態では、吸着構成要素は、全複合濾過補助剤の約15質量%から25質量%までの範囲内の量を含みうる。
【0079】
複合濾過補助剤中の濾過構成要素の量は、全複合濾過補助剤の約0超から約100質量%までの範囲の量を含みうる。いくつかの実施形態では、濾過構成要素は、全複合濾過補助剤の約25質量%を超える量を含みうる。他の実施形態では、濾過構成要素は、全複合濾過補助剤の約50質量%を超える量を含みうる。他の実施形態では、濾過構成要素は、全複合濾過補助剤の約70質量%を超える量を含みうる。他の実施形態では、濾過構成要素は、全複合濾過補助剤の約80質量%より少ない量を含みうる。他の実施形態では、濾過構成要素は、全複合濾過補助剤の約90質量%より少ない量を含みうる。他の実施形態では、濾過構成要素は、全複合濾過補助剤の約60質量%から約95質量%までの範囲内の量を含みうる。他の実施形態では、濾過構成要素は、全複合濾過補助剤の約75質量%から約85質量%までの範囲内の量を含みうる。
【0080】
いくつかの実施形態では、吸着構成要素は、全複合濾過補助剤の約5質量%から約40質量%までの範囲内の量を含み、濾過構成要素は、全複合濾過補助剤の約60質量%から約95質量%までの範囲内の量を含みうる。他の実施形態では、吸着構成要素は、全複合濾過補助剤の約15質量%から約25質量%までの範囲内の量を含み、濾過構成要素は、全複合濾過補助剤の約75質量%から約85質量%までの範囲内の量を含みうる。さらなる実施形態において、複合濾過補助剤は、質量について、濾過構成要素よりも多い量の吸着構成要素を含む。
【0081】
濾過可能な複合吸着剤の形成後に、濾過可能な複合吸着剤を少なくとも1つの追加の濾過構成要素と混合することができる。少なくとも1つの追加の濾過構成要素は、すでに知られているか、またはこれ以降発見される任意の好適な濾過構成要素から選択することができ、また濾過可能な複合吸着剤中の少なくとも1つの濾過構成要素と同じであるか、または異なるかのいずれかとしてよい。いくつかの実施形態では、追加の濾過構成要素は、World Minerals,Inc.社が製造する、市販の濾過構成要素であるCelite Standard Super−Cel(登録商標)である。他の実施形態では、追加の濾過構成要素は、World Minerals Inc.社が製造する、市販の濾過構成要素であるCelite 3Z(登録商標)である。他の実施形態では、追加の濾過構成要素は、World Minerals,Inc.社が製造する、市販の濾過構成要素であるCelite Hyflo Super−Cel(登録商標)である。さらなる実施形態において、追加の濾過構成要素は、World Minerals,Inc.社が製造する、市販の濾過構成要素であるCelite 512(登録商標)である。さらなる実施形態において、濾過構成要素は、World Minerals,Inc.社が製造する、市販の濾過構成要素であるCelite 512Z(登録商標)である。さらに他の実施形態では、追加の濾過構成要素は、World Minerals,Inc.社が製造する、市販の濾過構成要素であるCelite 289(登録商標)である。さらなる実施形態では、追加の濾過構成要素は、World Minerals,Inc.社が製造する、市販の濾過構成要素であるFilter−Cel(登録商標)である。
【0082】
少なくとも1つの複合濾過補助剤を含む濾過補助材が少なくとも1つの追加の濾過構成要素をさらに含む実施形態では、追加の濾過構成要素は、濾過補助材の全重量の約0%超から約100%までの範囲内の量を含みうる。いくつかの実施形態では、追加の濾過構成要素は、全濾過補助材の約5質量%を超える量を含みうる。他の実施形態では、追加の濾過構成要素は、全濾過補助材の約30質量%を超える量を含みうる。さらなる実施形態において、追加の濾過構成要素は、全濾過補助材の約50質量%を超える量を含みうる。さらに他の実施形態では、追加の濾過構成要素は、全濾過補助材の約65質量%を超える量を含みうる。さらなる実施形態において、追加の濾過構成要素は、全濾過補助材の約80質量%を超える量を含みうる。
【0083】
少なくとも1つの複合濾過補助剤を含む濾過補助材が少なくとも1つの追加の濾過構成要素をさらに含む実施形態では、複合濾過補助剤は、濾過補助材の全重量の約0%超から約100%までの範囲内の量を含みうる。いくつかの実施形態では、複合濾過補助剤は、全濾過補助材の約5質量%を超える量を含みうる。他の実施形態では、複合濾過補助剤は、全濾過補助材の約30質量%を超える量を含みうる。さらなる実施形態において、複合濾過補助剤は、全濾過補助材の約50質量%を超える量を含みうる。さらに他の実施形態では、複合濾過補助剤は、全濾過補助材の約65質量%を超える量を含みうる。さらなる実施形態において、複合濾過補助剤は、全濾過補助材の約80質量%を超える量を含みうる。
【0084】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加の濾過構成要素は、全複合濾過補助材の約60質量%から約70質量%までの範囲内の量を含み、濾過可能な複合吸着剤は、全濾過補助材の約30質量%から約40質量%までの範囲内の量を含みうる。少なくとも1つの濾過可能な複合吸着剤を含む濾過補助材の特定の特性を、例えば、少なくとも1つの特性(例えば、溶解度および/または表面特性)を増強し、および/または専用用途の新しい製品を作り出すために少なくとも1つの濾過可能な複合吸着剤を含む初期濾過補助材が形成された後に材料のさらなる物理的または化学的反応によって修正することができる。そのようなさらなる修正の例は、Palmらの米国特許第6,712,974号に開示されているような、例えば、水和、酸洗い、表面処理、および有機誘導体化を含む。
【0085】
C.複合濾過補助剤を使用する例示的な方法
本明細書で説明されている少なくとも1つの複合濾過補助剤を含む濾過補助材は、現在入手可能な吸着剤と同じ用途の多くで使用することができるが、例えば、高い透過性、低い遠心分離湿潤密度、および固有の形状の粒子(例えば、繊維)、さらには改善された効率、および/または経済性などの付加的特性をもたらしうる。
【0086】
少なくとも1つの複合濾過補助剤およびその任意選択のさらなる修正を含む濾過補助材は、多孔質濾材の場合と似た方法で濾過用途において使用されうる。少なくとも1つの複合濾過補助剤を含む濾過補助材を、清澄度を改善し、濾過プロセスにおける流量を高めるために隔壁に付けるか、または直接流体に加えることができる。関連する特定の分離に応じて、少なくとも1つの複合濾過補助剤を含む濾過補助材を、プリコーティング、ボディフィーディング、またはその両方で使用することができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、吸着および濾過を行う方法は、(i)少なくとも1つの複合濾過補助剤を含む濾過補助材を用意することと、(ii)複合濾過補助剤でフィルター・エレメントをプリコーティングすることと、(iii)少なくとも1つの複合濾過補助剤を含む濾過補助材を、流体から取り除くべき粒子および/または構成物質を含む流体中に懸濁させ、複合濾過補助剤をフィルター・エレメント上に担持することができることとを含む。
【0088】
他の実施形態では、吸着および濾過を行う方法は、(i)複合濾過補助剤を用意することと、(ii)複合濾過補助剤を少なくとも第2の濾過構成要素とさらに混合して、濾過補助材を形成することと、(iii)濾過補助材でフィルター・エレメントをプリコーティングすることと、(iv)濾過補助材を流体から取り除くべき粒子および/または構成物質を含む流体中に懸濁させ、濾過補助材をフィルター・エレメント上に担持することができることとを含む。
【0089】
寒冷混濁の一因となる、例えば、タンパク質などの、粒子および/または構成物質の吸着を高めるか、または最大にするために、本明細書で開示されているいくつかの実施形態は、プリコーディングとボディフィーディングの組み合わせを含む。
【0090】
他の実施形態では、吸着および濾過を行う方法は、望ましくない吸着されるべき粒子または構成物質を含む流体を、隔壁上で支えられる剛体形状の形態の少なくとも1つの複合濾過補助剤を含む濾過補助材に通すステップを含む。
【0091】
少なくとも1つの複合濾過補助剤を含む濾過補助材は、整形、成形、焼結、または他の形成方法により、吸着特性を有する透過性シート、板、円板、多面体、または他の形成形状にすることができる。次いで、流体を、少なくとも1つの複合濾過補助剤を含む濾過補助材に通して、濾過と吸着の両方を達成することができる。
【0092】
本明細書で開示されている少なくとも1つの複合濾過補助剤を含む濾過補助材を他の媒体(例えば、異なる多孔質濾過構成要素材料)と併せて使用し、濾過用途で使用するための濾過補助材を形成し、および/または濾過プロセスをさらに修正することができる。例えば、複合濾過補助剤と、例えば、ダイアトマイト、発泡パーライト、火山灰、天然ガラス、セルロース、活性炭、粘土、または他の材料との混合体は、有用な追加の濾過構成要素であるものとしてよい。ときには、これらのブレンドは、凝ったものであり、ブレンドを、支持材もしくは基材として使用することができるシート、パッド、カートリッジ、またはモノリシックもしくは凝集媒体に形成することができる。
【0093】
本明細書で開示されている少なくとも1つの複合濾過補助剤を含む濾過補助材は、濾過以外の用途にも役立ちうるが、それは、吸着媒体または濾材が、従来の吸着もしくは濾過に明示的に必ずしも依存しない用途でも有用でありうるからである。例えば、シリカゲル、ヒュームド・シリカ、中性粘土、アルカリ粘土、ゼオライト、触媒、ポリマー、およびアルカリ土類ケイ酸塩水和物などの物質は、充填剤として使用することができ、生物起源シリカ、天然ガラス、発泡パーライト、軽石、発泡軽石、火山灰、発泡黒曜石、発泡火山塵、浮力で浮かべるガラス、浮力で浮かべるポリマー、およびセルロースも充填剤として使用することができる。
【0094】
これまでに述べたような本発明の実施形態の他の多くの修正および変更は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく行うことができる。例以外で、または別に指定されている場合、本明細書および請求項で使用されている、成分、反応条件などの量を表現するすべての数字は、すべての場合において「約」(about)という言い回しで修飾されていると理解されたい。したがって、そうでないことが記載されていない限り、以下の明細および付属の請求項に記載されている数値パラメータは概算であり、本発明において取得されるべき所望の特性によって変化することがありうる。少なくとも、また請求項の範囲に均等論を適用することを制限しようとする試みとしてではなく、それぞれの数値パラメータを、有効数字の数およびまた通常の丸め方法に照らして解釈すべきである。
【0095】
広い範囲を規定している数値範囲およびパラメータが近似値であるにも関わらず、特定の実施例において述べられている数値は、可能な限り正確に報告されている。しかし、数値はどれも、各試験測定において求められた標準偏差から必ず結果として生じる特定の誤差を本質的に含む。
【0096】
本明細書で使用されている見出しは、読者の便宜のために設けられており、本明細書で説明されている発明の範囲を制限することを意図していない。非限定的な例示により、本開示のいくつかの実施形態の具体例を以下に示す。
実施例
【0097】
本明細書で開示されているような少なくとも1つの複合濾過補助剤を含む濾過補助材、さらにはそれらを作製するための方法を、制限するためではなく例示するために用意された、以下の実施例で説明する。
【実施例1】
【0098】
Celite(登録商標)3Z、ケイ酸ナトリウム、および硫酸を使用して、複合濾過補助剤を作製した。Celite(登録商標)3Z、80gを水800gに加えた。次に、濃度38%のケイ酸ナトリウム溶液70gを一定の攪拌を行いながら混合物に加えた。次いで、硫酸(98%)を加えて、pHを8.5に調整する。pHが約8.5に達したところで、ゲル化反応が発生し、混合物が厚くなった。酸の添加を続け、30分間攪拌すると、スラリーが薄くなり、pHは8.0に達した。次いで、ブフナー漏斗を使用して懸濁液を濾過した。次いで、濾過ケーキを約1Lの水で再度スラリー状にし、再び濾過し、次いで、再びスラリー状にし、再び濾過して、反応副産物(例えば、塩)を取り除いた。最後に、ケーキを、110℃の温度で3時間加熱して乾燥させた。
【0099】
表1は、上で説明されている例示的なプロセスによって製造される複合濾過補助剤の多孔度測定情報をまとめたものである。対照は、3つのダイアトマイト・ベースの濾過補助剤、Celite C3Z、Celite SSC(両方ともWorld Minerals,Inc.社から入手可能)、Celatom FP3(Eagle Picher Corp.社から入手可能)、およびLucilite(登録商標)L10、Lucilite(登録商標)XLC(両方ともINEOS Silicas Ltd.社から入手可能)、およびBritesorb(登録商標)D300(PQ Corporation社から入手可能)を含む3つのシリカゲル生成物を含む。
【0100】
以下の表1は、シリカゲルおよび通常のか焼ダイアトマイト濾過補助剤と比較した、ダイアトマイト・ベースの複合濾過補助剤の5つの異なるバッチに対する多孔度測定結果およびBET表面積を示している。表1に示されているように、試料A〜Eの例示的な複合濾過補助材は、沈降シリカまたはダイアトマイト・ベースの対照の間の範囲内の平均細孔径(4V/A)、総細孔面積、およびBET表面積を示している。対照的に、試料A〜Eの例示的な複合濾過補助材のメジアン細孔サイズ(容積)は、ダイアトマイトの対照試料のメジアン細孔サイズ(容積)により相関しているように見え、試料A〜Eの複合濾過補助材のメジアン細孔サイズ(面積)は、沈降シリカの対照試料のメジアン細孔サイズ(面積)により相関しているように見える。
【0101】
2つのメジアン細孔径推定の推定方法の間の違いに対する考えられる一つの説明は、複合濾過補助剤が多様な細孔サイズ分布を有する可能性があるというものである。容積平均細孔径が推定された場合、複合物は、ダイアトマイト・ベースの濾過補助剤に対する通常のサイズ範囲の細孔を示す。しかし、面積平均直径が計算される場合、結果は、通常のダイアトマイト濾過補助剤について見られる値よりもかなり低く、沈降シリカについては標準値よりなおいっそう低い。これらの直径の比は、この新規性のある複合濾過補助剤に固有であるより大きな細孔の大きな容積に加えて多数の非常に細かい細孔の存在を示す指標とみなせる。
【0102】
図1は、典型的なダイアトマイト濾過補助剤と対比した例示的な複合濾過補助剤の細孔サイズ分布を示している。微細孔(10nm以下のサイズ)は、水銀圧入多孔度測定法を使用して測定したときに、複合濾過補助剤中にはっきり認められる。
【表1】
【実施例2】
【0103】
ビール醸造所における試用により有益な量を以下のようにして準備した。清浄水12,500ガロンを、上部閉鎖攪拌槽に入れた。Celite Super−Cel(登録商標)、10,500lbsを加えて、よく混合されたスラリーを作った。次いで、ケイ酸ナトリウム795ガロン(38%の純度)を加えた。次いで、94%の純硫酸約83ガロンを加えて、pHを8.0に調整した。次いで、スラリーを3回濾過して、反応副産物を取り除いた。
この例で生成されたダイアトマイト・ベースの複合濾過補助剤の有効性を示すために、材料をビールと接触させ、次いで熱エージングを行い、ビールを冷やして、残っている濁り前駆体を強制的に沈降させる必要がある。未濾過のラガー300mlを10分間、通常のダイアトマイト・ベースの濾過補助剤1.8gと接触させ、次いで、ブフナーを用いて濾過し、濾過補助剤を含むすべての懸濁物を取り除いた。この実験を繰り返して、通常のダイアトマイト・ベースの濾過補助剤(Celite 3Z(登録商標))を上で生成したダイアトマイト・ベースの複合濾過補助剤で徐々に置き換えた。それぞれの場合に生産されたビール試料をボトルに詰めて、40℃で5日間放置し、次いで、24時間0℃の冷蔵庫に入れておいてから、ネフェロ分析濁度計(Hach Company社(米国コロラド州所在)によって生産されているmodel 2100N)を使用して濁度を測定した。以下の表2は、ダイアトマイト濾過補助剤(Celite 3Z(登録商標))とダイアトマイト・ベースの複合濾過補助剤とのブレンドと接触させたビールの寒冷混濁データを示している。濁度はダイアトマイト・ベースの複合濾過補助剤の用量を増やすと減少し、用量が約3g/Lを超えてもほとんどメリットはないことがわかる。図2は、ダイアトマイト濾過補助剤(Celite 3Z(登録商標))とダイアトマイト・ベースの複合濾過補助剤とのブレンドと接触させたビールの寒冷混濁データを示している。
【表2】
図1
図2