(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988976
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】タービンケーシングにシールドを取り付けるための方法およびこの方法を実行するための取り付けアセンブリ
(51)【国際特許分類】
F01D 25/28 20060101AFI20160825BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20160825BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20160825BHJP
F01D 25/04 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
F01D25/28 A
F02C7/00 E
F01D25/00 U
F01D25/04
【請求項の数】11
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-525340(P2013-525340)
(86)(22)【出願日】2011年8月23日
(65)【公表番号】特表2013-536366(P2013-536366A)
(43)【公表日】2013年9月19日
(86)【国際出願番号】FR2011051946
(87)【国際公開番号】WO2012025690
(87)【国際公開日】20120301
【審査請求日】2014年8月5日
(31)【優先権主張番号】1056795
(32)【優先日】2010年8月26日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】501107994
【氏名又は名称】ターボメカ
【氏名又は名称原語表記】TURBOMECA
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サオール,ジヤン−リユツク・ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ジヨレギベリー,カロル
(72)【発明者】
【氏名】カソー−ビツク,ジヤン−モーリス
(72)【発明者】
【氏名】デスキユーブ,オリビエ・ピエール
【審査官】
齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−138864(JP,A)
【文献】
特開昭60−053603(JP,A)
【文献】
特開2009−203956(JP,A)
【文献】
特開平05−187261(JP,A)
【文献】
特開2006−316749(JP,A)
【文献】
実開平02−085802(JP,U)
【文献】
特開平11−200813(JP,A)
【文献】
特開2011−157968(JP,A)
【文献】
特開2006−002773(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0202876(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0232932(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/00−36
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン(10)のエンジン構造(30)のケーシング(20)の上にシールド(15)を保持する取り付け方法であって、
振動性の位置決めと熱機械的な負荷のもとでの機械的強度とをもたらすことを可能にするシールド(15)とケーシング(20)との間の可撓な結合を実現するために、シールドおよびケーシングの湾曲に沿って離間したシールド(15)およびケーシング(20)の各地点(82、92)の間で周方向に配置される接続具(70)によって、シールド(15)をケーシング(20)の外周に位置し、接続具(70)の一方の側が、地点(82)の1つでケーシング(20)に対して該ケーシング(20)の接線方向に接続され、接続具(70)の他方の側が、他の地点(92)でシールド(15)に対して湾曲してなだらかに接続されることを特徴とする、前記取り付け方法。
【請求項2】
接続具(70)のサイズが、接続具に加わる熱機械的な負荷に従って決定されている、請求項1に記載の取り付け方法。
【請求項3】
熱機械的な変化に起因する作動力を最小化するように、接続具(70)の数が決定され、接続具が分配されている、請求項1または2に記載の取り付け方法。
【請求項4】
タービン(10)のエンジン構造(30)の、シールド(15)およびケーシング(20)のアセンブリであって、
振動性の位置決めと熱機械的な負荷のもとでの機械的強度とをもたらすことを可能にするシールド(15)とケーシング(20)との間の可撓な結合を実現するために、シールドおよびケーシングの湾曲に沿って離間したシールド(15)およびケーシング(20)の各地点(82、92)の間で周方向に配置される接続具(70)によって、シールド(15)はケーシング(20)の外周に位置しており、
接続具(70)の一方の側が、地点(82)の1つでケーシング(20)に対して該ケーシング(20)の接線方向に接続され、接続具(70)の他方の側が、他の地点(92)でシールド(15)に対して湾曲してなだらかに接続されており、
前記アセンブリが、
固定部を有する接続ラグ(70)を備えており、固定部の一方が、1つの地点(82)でケーシング(20)に接続するためのものであり、固定部の他方が、他の地点(92)でシールド(15)に接続するためのものであり、これらの固定部は、接続が、ラグ(70)とシールド(15)またはケーシング(20)との間で前記地点(92、82)に対して実質的に接線方向であり、かつラグ(70)が接線方向に垂直な方向に可撓性をもたらすように、シールド(15)およびケーシング(20)の湾曲に沿って離れていることを特徴とする、前記アセンブリ。
【請求項5】
接続具(70)のサイズが、接続具に加わる熱機械的な負荷に従って決定されている、請求項4に記載のアセンブリ。
【請求項6】
熱機械的な変化に起因する作動力を最小化するように、接続具(70)の数が決定され、接続具が分配されている、請求項4または5に記載のアセンブリ。
【請求項7】
振動を減衰させるように構成されたばね板(60、62)が、シールド(15)とケーシング(20)との間にリングの構成で設けられている、請求項4から6のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項8】
ばね板(60、62)が、軸方向に分割されている、請求項7に記載のアセンブリ。
【請求項9】
シールド(15)上の少なくとも1つの地点(92)およびケーシング(20)上の少なくとも1つの地点(82)が、ラグ(70)ごとに設けられている、請求項4から8のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項10】
ケーシング(20)へのラグ(70)の固定が、ケーシング(20)の外皮(91)に溶接されたボス(90)に位置するねじ(82)によって実現され、ねじ(82)が、シールド(15)に形成された開口(84)にて移動するように構成された頭部(80)を有している、請求項4から9のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項11】
シールド(15)へのラグ(70)の固定が、シールド(15)を貫通するリベット(92)によって実現されている、請求項4から10のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン構造、具体的には、航空機に搭載されたタービンまたは陸上の産業用タービンのタービンケーシングへのシールド取り付け方法、ならびにそのような方法を実行するための取り付けアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
さらに具体的には、本発明の分野は、特に、航空機のターボエンジンなどの動力タービンのためのエンジンの保護である。エンジン構造は、エンジン構造またはケーシングから脱落する可能性がある部品または構成要素を閉じ込めるための保護シールドの存在を必要とする。特に、フリータービンのシールドによって、過速度で「羽根の抜け出し(blade−shedding)」型である場合、フリータービンのすべての羽根の保持がもたらされる。実際、羽根は、所与のしきい値のもとでのエンジンの動作能力を保証し、そのようなしきい値を超えるディスクの完全性を保証するために、所与の速度範囲にて破損するように作られる。
【0003】
そのようなシールドが、通常は、エンジンケーシングおよび隣接の部品の構造へ組み込まれる。それは、堅固な部分に限られ得る。シールドが、多数の組み立てフランジまたは同等物によってケーシングへと取り付けられる。
【0004】
しかしながら、そのようなシールドフランジの寿命が、強く制限される可能性がある。特には、フランジと隣接の部品との間の熱慣性および剛性の相違が、過渡的な状態、すなわち出力の上昇または低下における部品の挙動に影響を及ぼす。
【0005】
別の構造によれば、温かい空気において動作する内部シールドが、2つのケーシングの間に取り付けられる。しかしながら、そのような環境は、シールドの保持能力を制限するかもしれず、結果としてさらなる厚さが必要になる。また、外ケーシングの存在が、無視し得ない追加の質量につながる。
【0006】
そのような構造においては、作動力がエンジン構造へと直接伝達される。そのような伝達が、締結具からの次第の脱離につながる可能性があり、飛行の安全性を損なうシールドの振動につながる可能性もある。
【0007】
さらに、ねじを向いたペグによる中心合わせによって高い地点に配置されたねじによって固定されるシールドも存在する。そのような取り付けは、正確かつ繊細な調節がされることを必要とする。さらに、ペグの寿命が、振動の伝達、ならびに「フレッチング」、せん断、などといった他の現象に関して、規則性はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の技術の欠点を克服することを目的とし、特にはエンジン構造の部品の機械的な挙動へと作用するシールドの熱慣性を取り除くことを目的とする。また、シールドの丈夫さを損なうことなく取り付けを単純化しつつ、シールドの質量を最小にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのようにするために、本発明は、エンジン構造へと伝達される作動力を制限する可溶部を実現可能にする可撓シールド締結具を提供する。
【0010】
より正確には、本発明の目的は、タービンのエンジン構造のケーシングへのシールド取り付け方法であって、振動性の位置決め
と熱機械的な負荷のもとでの充分な機械的強度
とをもたらすことを可能にするシールドおよびケーシングの地点の
間で可撓な結合をするために、前記地点間のシールドおよびケーシングの曲率に従って充分に離間した前記地点の間の接線接続によってシールドを
ケーシングに結合させることからなる取り付け方法を提供することにある。したがって、航空機用タービンの場合には、振動性の位置決めおよび機械的強度が、航空機の操縦の際にも得られる。
【0011】
そのような状況においては、シールドがケーシングに充分に近く、後者が破片または排出された部品のかけらの保持に好都合な貢献をもたらすと思われる。外シールドが、部品がきわめて薄い厚さで保持されることを保証するために、充分に低温にとどまる。
【0012】
したがって、そのような構造は、熱機械的な疲労に曝される可能性があるケーシング下のエンジン構造の部品に関してシールドの熱的および機械的な絶縁を可能にする。さらに、生成される可撓性が、シールドとケーシングとの間の調節装置をなくすことを可能にする。
【0013】
特定の実施の形態によれば、
振動の減衰が、シールドとケーシングとの間の結合に関連して、さらに起き、
接続具のサイズが、接続部に加わる熱機械的な負荷に従って決定され、
熱機械的な変化に起因する作動力を最小化することによって、エンジンが被る負荷の事例、および、特には低い励起周波数の範囲におけるシールド/ケーシングアセンブリの振動性の位置決めに関して取り付けの寿命を最適化するように、接続具の数が決定され、接続具が分配される。
【0014】
上述の方法を実行するために、さらに本発明は、タービンのエンジン構造のシールド/ケーシングアセンブリであって、ケーシングおよびシールドのための固定点を有するケーシングとシールドとの間の接続ラグを備えるシールド/ケーシングアセンブリに関する。そのようなアセンブリにおいて、固定点が、接続が固定点へと片側のラグと反対側のシールドまたはケーシングとの間で実質的に接線方向であり、かつラグが所定の可撓性の程度を有するよう、シールドおよびケーシングの曲率に従って充分に離れている。
【0015】
特定の実施の形態によれば、
振動を減衰させるように構成されたばね板が、シールドとケーシングとの間のリングの構成に設けられ、
シールド上の少なくとも1つの固定点およびケーシング上の少なくとも1つの固定点が、ラグごとに設けられ、
ケーシングへのラグの固定が、ケーシングの外皮に溶接された補強ボスに位置するねじによって実現され、ねじが、シールドに形成された開口にて移動するように構成された頭部を有し、
シールドへのラグの固定が、シールドを横切るリベットによって実現され、
取り付けアセンブリが、サイズに合わせた数の接続ラグを備え、ラグは、ケーシングとシールドとの間にリングの構成にて規則的に分配され、各々のラグが、ねじによってケーシングへと取り付けられ、リベットによってシールドへと取り付けられている。
【0016】
本発明の他の特徴および利点が、添付の図面を参照しつつ以下の典型的な実施の形態の詳細な説明を検討することで、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明による取り付けアセンブリを備えるフリータービンの長手軸に沿った部分の半断面図である。
【
図2】本発明による取り付けアセンブリの1つのラグの位置を明確に示している先の図の平面II−IIによる一部分の図である。
【
図3】本発明による取り付けラグが設けられたシールドの一部分の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1の一部分の断面図を参照すると、フリータービン10が、特には外シールド15と、エンジンの主たる構造を形成しているケーシング20とを備えており、ケーシング20に、空気の通り道を形成する構成要素、すなわちタービンディストリビュータ22および26、タービンリング24および26b、ならびにタービンホイール25および30(軸受構造(図示されていない)を介する)が接続される。各々の羽根系が、固定翼系または空気流「分配」ステータと、空気の流れの方向において後続する可動の羽根またはホイール系と、ノズル(図示されていない)へのアクセスを得るための出口通路40とで形成されている。
【0019】
種々のシールが、それ自身はシールド15に関連するケーシング20に隣接している種々の部品の間にフランジまたは接合部50、52、および54によってもたらされている。
【0020】
さらに、金属薄板で作られた2つのばね板60および62が、例えば熱機械的な変化の際の振動を減衰させるために、シールド15とケーシング20との間に設けられている。そのような板は、リブ60a、62aによって境界付けられたハウジングに配置される。随意により、そのような板を、フランジまたは接続部へと取り付けることができ、例えば図示の例ではフランジ50またはねじ53へと取り付けることができる。
【0021】
ばね板は、シールドとケーシングとの間の結合ラグに関連して、シールドとケーシングとの間の振動を減衰させる。好都合には、そのような板を、熱エネルギを効率的に消散させ、振動におけるアセンブリの丈夫さを改善するために、軸方向に分割することができる。
【0022】
接線方向のラグ70が、
図1の断面II−IIにおける
図2の図において、ねじ頭部80とねじ82との間に、さらに詳しく示されている。このねじは、ケーシング20の外皮91に溶接されたねじボス90へと挿入されている。随意により、ねじボス90をナットで置き換えることができる。ねじ頭部80は、シールド15に形成された開口84に配置されている。したがって、頭部80は、振動の際に開口84において自由に振動することができる。
【0023】
ラグ70が、最初に一方の端部71aに形成された穴73によってねじ82のねじ山のない部分に取り付けられ、他方の端部においてシールド15を横切るリベット92に取り付けられる。次いで、ねじ82がプロット90へと完全に挿入され、リベット92が押し潰される。そのような状況において、ラグ70は、ケーシング20およびシールド15に対して実質的に接線方向に取り付けられる。そのようにするために、ラグ70は、リベットの付近においてラグ71の他方の端部71bがシールド15の内面15aに当接するよう、領域72においてわずかに湾曲している。
【0024】
ラグ70の破断の場合に、シールド15は、ねじ頭部80がシールドの穴84にぴったりと配置されていることで、実質的に動かぬように保たれる。そのようなぴったりとした配置は、予備部品の通過も制限する。さらに、ばね板60、62(
図1)が、接続ラグの破断の場合にシールドの径方向の保持を保証する。
【0025】
ラグ70の長さ、したがってねじ82とリベット92との間の距離は、接線方向の接続を得るために、ねじとリベットとの間のシールドおよびケーシングの同様の曲率に従う。ラグのサイズは、幅、長さ、および厚さにおいて、ケーシング(したがって、エンジン構造)への作動力の伝達を制限するために、ラグに加わる熱機械的な負荷の計算に合わせて調節される。
【0026】
半シールド15の
図3の一部分の斜視図に、シールド15の内面15aに規則的に分布した接続ラグ70と、そのようなラグをシールド15へと固定するためにリベット92とが示されている。ねじ82(
図2)へのラグ70の取り付け穴73も、見て取ることができる。したがって、そのような例では、シールド全体について6つのラグが設けられる。
【0027】
本発明は、上述および図示の典型的な実施の形態に限られない。実際、アセンブリの振動モードを調整し、さらには/あるいは飛行の操縦における耐負荷強度を保証するために、ラグの数がより重要となりうる。特には、陸上の産業用タービンに関して、ラグの数は、この種のタービンの大きな直径ゆえに、数十以上にもなる可能性がある。
【0028】
さらに、リベットの断面を、羽根の破断時にエンジン構造へと伝達される作動力が制限されるように寸法付けることができる。ラグは、それぞれ2つまたは3つのシールド固定リベットをケーシングへの1つまたは2つの固定ねじへと接続するためにおおむねV字またはW字形の形状を有することができる。