特許第5988978号(P5988978)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ・ボーイング・カンパニーの特許一覧

特許5988978移動受信機の測位機能遂行範囲を拡大する方法及び装置
<>
  • 特許5988978-移動受信機の測位機能遂行範囲を拡大する方法及び装置 図000002
  • 特許5988978-移動受信機の測位機能遂行範囲を拡大する方法及び装置 図000003
  • 特許5988978-移動受信機の測位機能遂行範囲を拡大する方法及び装置 図000004
  • 特許5988978-移動受信機の測位機能遂行範囲を拡大する方法及び装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988978
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】移動受信機の測位機能遂行範囲を拡大する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/25 20100101AFI20160825BHJP
   G01S 5/02 20100101ALI20160825BHJP
   G01S 5/14 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   G01S19/25
   G01S5/02 A
   G01S5/14
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-525920(P2013-525920)
(86)(22)【出願日】2011年7月22日
(65)【公表番号】特表2013-539539(P2013-539539A)
(43)【公表日】2013年10月24日
(86)【国際出願番号】US2011045095
(87)【国際公開番号】WO2012027046
(87)【国際公開日】20120301
【審査請求日】2014年7月10日
(31)【優先権主張番号】12/862,250
(32)【優先日】2010年8月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】ブレッシャーズ, ブライアン アール.
【審査官】 ▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−307179(JP,A)
【文献】 特開2010−112869(JP,A)
【文献】 特開2007−333652(JP,A)
【文献】 特開2005−331370(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0049376(US,A1)
【文献】 特開2001−099909(JP,A)
【文献】 特開平10−048322(JP,A)
【文献】 特開平01−176966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00 − G01S 5/14
G01S 19/00 − G01S 19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動受信機に複数の航空機から位置情報を供給する方法であって、方法は:
離れて位置する少なくとも1つの航空機の通信範囲内に、前記複数の航空機を位置付けるステップと、
前記複数の航空機の各航空機で、少なくとも3つの位置情報発信源から情報発信源の位置を受信するステップであって、少なくとも3つの位置情報発信源が、前記離れて位置する少なくとも1つの航空機を含む、前記受信するステップと、
前記複数の航空機の各航空機で、前記複数の航空機の当該航空機での現在時刻、受信した前記情報発信源の位置、及び前記離れて位置する少なくとも1つの航空機の運動を表現したエフェメリスデータに少なくとも部分的に基づいて、将来時刻における前記複数の航空機の当該航空機の予測位置を算出するステップと、
前記複数の航空機の各航空機から、前記将来時刻における前記予測位置を送信するステップであって、前記複数の航空機の当該航空機から送信される前記位置を移動受信機が利用することにより、前記移動受信機の現在位置を導出する、前記送信するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記離れて位置する少なくとも1つの航空機は、離れて位置する少なくとも3つの航空機を含み、
前記方法は、更に、前記複数の航空機のうちの第1航空機で、前記離れて位置する少なくとも3つの航空機から情報発信源の位置を受信するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
更に、複数の航空機のうちの第1航空機から、前記複数の航空機に含まれない、離れて位置する航空機に前記予測位置を送信するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
離れて位置する航空機に前記予測位置を送信する前記ステップは、前記予測位置を、前記第1航空機が情報発信源の位置を受信したときの受信先の前記位置情報発信源に至るクリアな見通し線を持たない航空機に送信するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の航空機の各航空機及び前記離れて位置する少なくとも1つの航空機は原子時計を含み、前記方法は更に、前記複数の航空機の各航空機及び前記離れて位置する少なくとも1つの航空機の前記原子時計を、基準時刻情報発信源に同期させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
1つ以上の航空機から成り、かつ前記航空機の位置を送信するように構成される少なくとも1つの航空機を含む第1集合と、
第1集合の航空機の通信範囲内に位置付けられた、複数の航空機から成る第2集合と、を備え、前記第2集合の前記複数の航空機の各航空機は、
少なくとも3つの位置情報発信源から位置を受信し、少なくとも3つの位置情報発信源がそれぞれ、航空機から成る前記第1集合の航空機を含み、
将来時刻における前記第2集合の航空機の予測位置を、受信した前記位置に少なくとも部分的に基づいて算出し、そして
1つ以上の受信機に前記将来時刻に前記予測位置を送信するように構成される、測位システム。
【請求項7】
航空機から成る前記第2集合の各航空機は、位置を航空機から成る前記第1集合の少なくとも3つの航空機から受信するように構成される、請求項6に記載の測位システム。
【請求項8】
更に、地上局の所定の位置を送信するように構成される少なくとも1つの地上局を備え、航空機から成る前記第2集合の各航空機は更に、位置を前記地上局から受信するように構成される、請求項6に記載の測位システム。
【請求項9】
更に、移動受信機を備え、移動受信機は、
航空機から成る前記第2集合から送信される前記位置を受信し、そして
前記移動受信機の位置を、受信した前記位置に少なくとも部分的に基づいて導出するように構成される、請求項6に記載の測位システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の分野は概して、測位システムに関するものであり、更に詳細には、位置情報を移動受信機に、衛星群または地上局群からの利用可能な位置信号が無い状態で供給するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
全地球測位システム(GPS)衛星のような衛星群は多くの場合、位置及び時間情報を移動受信機群に送信するために使用される。少なくとも幾つかの公知のシステムでは、受信機は、当該受信機の位置を、送信されてくる位置及び時間情報に基づいて算出する。更に、衛星は、当該衛星の運動(例えば、周回軌道)を表現したエフェメリスデータを送信することができ、そして当該受信機は当該エフェメリスデータを、当該受信機の位置を算出するために使用することができる。
【0003】
衛星利用測位システム群は普通、衛星群から発信される信号が比較的弱いので、局所干渉指標(ジャミング)の影響を受け易い。更に、測位システム内の衛星群のうちの1つ以上の衛星の動作が、意図的または非意図的に不能になってしまうようなことが起こり得る。所定の位置を送信する地上測位システム群は、衛星群に置き換わるシステムとして利用することができるが、このような測位システム群は、通信範囲が限定され、かつ自然災害または攻撃の影響を受け易い。
【発明の概要】
【0004】
1つの態様では、位置情報を移動受信機に複数の空中輸送手段から供給する方法が提供される。前記方法は、情報発信源の位置を、少なくとも3つの位置情報発信源から前記複数の空中輸送手段の各空中輸送手段で受信するステップを含む。前記少なくとも3つの位置情報発信源は、離れて位置する空中輸送手段を含む。将来時刻における前記空中輸送手段の予測位置を、各空中輸送手段で、前記空中輸送手段での現在時刻、受信した前記情報発信源の位置群、及び離れて位置する各空中輸送手段の運動を表現したエフェメリスデータに少なくとも部分的に基づいて算出する。前記予測位置を、前記将来時刻において各空中輸送手段から送信する。前記空中輸送手段群から送信される前記位置群を移動受信機が利用することにより、前記移動受信機の現在位置を導出する。
【0005】
別の態様では、測位システムが提供される。前記測位システムは、1つ以上の空中輸送手段から成る第1集合と、そして複数の空中輸送手段から成る第2集合と、を含む。前記第1集合は、前記空中輸送手段の位置を送信するように構成される少なくとも1つの空中輸送手段を含む。前記第2集合の各空中輸送手段は、位置を少なくとも3つの位置情報発信源から受信するように構成される。前記少なくとも3つの位置情報発信源は、空中輸送手段群から成る前記第1集合の空中輸送手段を含む。前記第2集合の各空中輸送手段は更に、将来時刻における前記空中輸送手段の予測位置を、受信した前記位置群に少なくとも部分的に基づいて算出し、そして前記予測位置を、1つ以上の受信機に前記将来時刻に送信するように構成される。
【0006】
更に別の態様では、空中輸送手段が提供される。前記空中輸送手段は、情報発信源の位置を、複数の位置情報発信源から受信するように構成される受信機を含む。前記位置情報発信源群は、離れた位置の空中輸送手段を含む。前記空中輸送手段は更に、前記受信機に通信可能に接続される1つ以上のプロセッサを含み、前記1つ以上のプロセッサは、前記空中輸送手段の位置を、受信した前記情報発信源の位置群に少なくとも部分的に基づいて導出し、そして前記空中輸送手段の運動を表現したエフェメリスデータを生成するようにプログラムされる。前記空中輸送手段は更に、前記プロセッサ群に通信可能に接続され、かつ前記空中輸送手段の前記導出位置、及び前記生成エフェメリスデータを送信するように構成される送信機を含む。
【0007】
説明してきた特徴、機能、及び利点は、本発明の種々の実施形態において個別に実現することができる、または更に他の実施形態において組み合わせることができ、これらの実施形態の更なる詳細は、次の説明及び以下の図面を参照することにより理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、例示的な測位システムを示すブロック図である。
図2図2は、図1に示す測位システムに使用することができる例示的な空中輸送手段を示すブロック図である。
図3図3は、位置情報を受信機に供給するために使用される例示的な方法を示すフローチャートである。
図4図4は、空中輸送手段群から成る3つの集合で構成される例示的な測位システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
種々の実施形態では、位置情報を供給する装置及び方法が提供される。このような実施形態によって、移動受信機による正確な位置導出が、利用可能な衛星からの測位信号または地上からの測位信号が無い状態で容易になる。
【0010】
本明細書において提供される実施形態によって、既知の位置からの測距サービスを、空中輸送手段に搭載される測位ハードウェアを利用して拡張することが容易になる。空中輸送手段は、これらに限定されないが、固定翼航空機、回転翼航空機、気球、及び操縦者が居るかどうかに拘わらず(すなわち、自律的に操縦されるか、または離れた場所から操縦されるかどうかに拘わらず)空中を移動することができる任意の他の輸送手段のうちの1つ以上を含むことができる。
【0011】
本明細書において使用されるように、「location source(位置情報発信源)」とは、これらに限定されないが、装置の位置、位置情報が送信される時刻、及び装置が運動するとした場合の当該運動を表現したエフェメリスデータのうちの1つ以上のような位置情報を送信する任意の装置である。位置情報発信源は、全地球測位システム(GPS)衛星または代替衛星(例えば、イリジウム衛星)のような衛星、地上局、及び本明細書において記載される空中輸送手段のような輸送手段を含むことができる。本明細書において記載される方法によって、任意の位置情報発信源から、これらの位置情報発信源が直接受け持つエリアよりも広いエリアに、または受け持つエリアから離れたエリアに、そしてこれらの位置情報発信源へのアクセスが、アクセスできない場合には可能にならないエリアに提供される測位機能を拡張し易くなる。
【0012】
図1は、例示的な測位システム100を示すブロック図である。システム100内では、移動受信機105は位置情報を要求する。例えば、移動受信機105は、ハンドヘルド全地球測位システム(GPS)受信機、車載ナビゲーションシステム、または標的システムのような地表装置を含むことができる。例示的な実施形態では、複数の地上局110は、移動受信機105が利用する位置情報を送信するように構成される。幾つかの実施形態では、各地上局110は、所定の位置に設置され、そして当該所定の位置、及び当該位置が送信されている時刻を送信する(例えば、放送する)ように構成される。1つの実施形態では、地上局群110は、差動GPS(DGPS)ステーションである。
【0013】
例示的な実施形態では、移動受信機105は、3つ以上の地上局110からの送信情報を受信することができ、そして移動受信機105は、当該移動受信機の位置を、当該受信情報に基づいて導出することができる。しかしながら、幾つかのシナリオでは、地上局群110からの位置情報の移動受信機105における直接受信は、移動受信機105と地上局群110との間の距離、または移動受信機105と地上局群110との間のクリアな見通し線の欠如のような要素に起因して、実施することができない、または行なうことができない。例えば、移動受信機105と地上局110との間のクリアな見通し線は、1つ以上の障害物(例えば、構造物または地理的特徴物)が移動受信機105と地上局110との間に位置する場合に確立することができない可能性がある。移動受信機105が地上局群110から離れて位置する距離によって異なるが、地球の湾曲によって、このような障害物が生じる虞がある。
【0014】
地上局群110が提供する測位サービスは移動受信機105まで、操縦者が居ない空中輸送手段、または無人航空機(UAV)のような複数の空中輸送手段115を利用することにより拡張することができる。例示的な実施形態では、第1集合120の空中輸送手段115は、地上局群110の通信範囲内に位置する。第1集合120に含まれる各空中輸送手段115は、位置情報を地上局群110から受信し、空中輸送手段115の予測位置を導出し、そしてこれらには限定されないが、予測位置、予測位置が送信される時刻、及び空中輸送手段115の運動を表現したエフェメリスデータを含むことができる位置情報を送信する(例えば、放送する)。例えば、エフェメリスデータは、空中輸送手段115によって、空中輸送手段115の現在速度、予定飛行経路、及び空中輸送手段115における現在時刻のうちの1つ以上に基づいて生成することができる。
【0015】
第2集合125の空中輸送手段115は、第1集合120から離れているが、第1集合120の通信範囲内に位置する。例えば、第1集合120及び第2集合125の一方の集合の、または両方の集合の空中輸送手段115は、第1集合120と第2集合125との間の信号通信を可能にする高度に位置させることができる。更に、例示的な実施形態では、これらの高度は、空中輸送手段115の通信範囲を拡張し易くする(例えば、地球によって遮られるのを回避することにより)、空中輸送手段115のエネルギー消費量を低減し易くする、または空中輸送手段115を干渉または攻撃から保護し易くするように選択することができる。
【0016】
第2集合125も移動受信機105の通信範囲内に位置させる。従って、第2集合125の空中輸送手段115に含まれる各空中輸送手段115は、位置情報を、第2集合125に属さない、または第2集合125に位置しない3つ以上の位置情報発信源から受信する。例えば、各空中輸送手段115は、位置情報を、所定の位置情報発信源、及び空中輸送手段115から所定の閾値距離よりも長い距離に位置する位置情報発信源のうちの一方の、または両方の位置情報発信源から受信することができる。
【0017】
例示的な実施形態では、第2集合125の4つの空中輸送手段115の各空中輸送手段は位置情報を、第1集合120の3つの空中輸送手段115の各空中輸送手段から受信する。現在時刻、及び受信した位置情報に少なくとも部分的に基づいて、第2集合125の各空中輸送手段115は、当該空中輸送手段自体の位置を導出する。次に、第2集合125の各空中輸送手段115は位置情報を送信し、この位置情報を、移動受信機105が利用することにより、移動受信機105の位置を導出する。例示的な実施形態では、移動受信機105は、当該移動受信機自体の位置を、4つの位置情報発信源からの位置情報に基づいて導出する。各空中輸送手段115は、現在時刻(例えば、搭載された原子時計の現在時刻)を入手し、そして当該空中輸送手段自体の位置を、3つの位置情報発信源からの現在時刻及び位置情報に基づいて導出するように動作することができる。
【0018】
幾つかの実施形態では、空中輸送手段115は、操縦者が居ない状態で操縦される、離れた場所から操縦される、または両方の形態で操縦される。配備前に、または配備後に、空中輸送手段115に飛行経路をプログラムすることができる。例えば、飛行経路を空中輸送手段115に指示して、1つ以上の所定の位置に向かって、かつ1つ以上の所定の高度で飛行させ、そして次に、所定の位置に到達すると、軌道(例えば、円形パターンまたは楕円パターン)を航行させることができる。1つの実施形態では、第2集合125の空中輸送手段115には、移動受信機105に近接する軌道を決める飛行経路を指示することができ、この軌道は、空中輸送手段115を地上からの攻撃から保護し易くするために十分高い高度にある。例えば、1つの実施形態では、空中輸送手段115は、10,000フィートを超える高度を周回することができる。
【0019】
空中輸送手段115は、燃料が適宜補給される必要がある。従って、幾つかの実施形態では、空中輸送手段群115は、1つの領域または1つの集合を通って、選択的に転用する、または交替することができる。例えば、第2集合125の空中輸送手段115が燃料補給の期限に近づくと、代替え空中輸送手段115を第2集合125の該当領域に派遣することができる。代替え空中輸送手段115が当該領域に到着すると、これらの代替え空中輸送手段115は、位置情報の送受信を開始し、そして第2集合125に初めから属していた空中輸送手段115を、燃料補給ステーションを含むことができる整備工場に向かわせることができる。このような実施形態によって、継続的な測位サービスを移動受信機105に提供することができる。幾つかの実施形態では、空中輸送手段115を配備する、または打ち上げる各操作の前に、空中輸送手段115に搭載された原子時計を整備工場の基準時刻情報発信源に同期させる。
【0020】
図2は、測位システム100に使用することができる例示的な空中輸送手段115を示すブロック図である。図3は、位置情報を、移動受信機105(図1に示す)のような受信機に、空中輸送手段115を利用して供給するために使用することができる例示的な方法300を示すフローチャートである。
【0021】
例示的な実施形態では、空中輸送手段115は、1つ以上のプロセッサ205と、そしてメモリ装置210と、を含む。プロセッサ205をプログラムして、メモリ装置210に格納することができるコンピュータ実行可能命令群を実行させて、空中輸送手段の構成要素群を含む空中輸送手段115を運行する。例えば、本明細書において記載される操作群の何れかの操作、または全ての操作は、コンピュータ実行可能命令群として符号化することができ、そしてプロセッサ205によって実行することができる。メモリ装置210は更に、空中輸送手段115の構成、空中輸送手段115の飛行経路、空中輸送手段115の運動を表現したエフェメリスデータ、及び本明細書において記載される方法に使用されるために適する任意の他のデータに関連するデータを保存するように構成することができる。
【0022】
例示的な実施形態では、空中輸送手段115は、プロセッサ205に通信可能に接続される1つ以上の受信機215を含む。受信機215は、位置情報を複数の位置情報発信源から受信し(305)、これらの位置情報発信源は、これらには限定されないが、地上局群110(図1に示す)、測位衛星群(例えば、図4に示すGPS衛星群)、及び他の空中輸送手段115を含むことができる。このような位置情報として、これらには限定されないが、情報発信源の位置(例えば、位置情報発信源の位置)、位置情報が送信される時刻(例えば、日/時スタンプ)、及び位置情報発信源の運動を表現したエフェメリスデータを挙げることができる。
【0023】
プロセッサ205をプログラムして、空中輸送手段115の運動を表現したエフェメリスデータを生成する(310)。幾つかの実施形態では、空中輸送手段115は慣性測定ユニット(IMU)220を含み、この慣性測定ユニット220は、速度データ、方位データ、または両方のデータを供給する。エフェメリスデータは、IMU220から供給されるデータに少なくとも部分的に基づいて生成する(310)ことができる。
【0024】
例示的な実施形態では、プロセッサ205は、空中輸送手段115の瞬時位置または予測位置を、受信した位置情報に少なくとも部分的に基づいて導出する(315)。1つの例では、予測位置は、最初に、瞬時位置を受信機215から受信した位置情報に基づいて算出し、そして次に、予測位置を、当該瞬時位置、及びIMU220から供給される速度データ、方位データ、または両方のデータに基づいて算出することにより導出する(315)。
【0025】
空中輸送手段115は、プロセッサ205に通信可能に接続される1つ以上の送信機225を含む。各送信機225は、空中輸送手段115の導出位置、及びエフェメリスデータを含む位置情報を送信する(320)(例えば、放送する)。例示的な実施形態では、送信機225は、測位衛星の代替として使用されるように動作することができる通信装置を含む。このような通信装置は、「pseudo−satellite(擬似衛星)」または「pseudolite(擬似衛星)」と表記することができる。幾つかの実施形態では、受信機215は位置情報を、第1周波数を利用して受信し(305)、そして送信機225は位置情報を、第2周波数を利用して送信する(320)。このような実施形態では、空中輸送手段115内の受信機215と送信機225との干渉は、ほぼ取り除かれる。
【0026】
幾つかの実施形態では、送信機225は、位置情報を載せた信号の強度を制御する。例えば、プロセッサ205は、空中輸送手段115と1つ以上の標的物(例えば、離れて位置する空中輸送手段、地表受信機、またはこれらの両方)との間の距離を導出することができ、そして送信機225は位置情報を、当該距離に応じて直接変化する信号強度で送信する(320)。その他に、またはそれに替えて、送信機225は位置情報を、ビーム整形を用いて送信する(320)ことにより、標的物群が位置する領域(群)への信号の伝送帯域を制限することができる。
【0027】
位置情報は、位置が導出されるときの時刻/日付、または位置情報が送信されるときの時刻/日付を含むことができる。時刻値を位置と共に使用することにより、空中輸送手段115の位置を導出する(315)ことができる。例えば、送信時刻を現在時刻から減算して位置情報発信源と空中輸送手段115との間の伝送遅延を導出することができる。位置情報発信源と空中輸送手段115との間の距離は伝送遅延から求めることができる。
【0028】
幾つかの実施形態では、空中輸送手段115は、現在時刻を表わす時刻信号を供給する原子時計230を含む。原子時計230は、別の原子時計のような基準時刻情報発信源と同期させる(302)ことができ、この基準時刻情報発信源を利用して、1つ以上の位置情報発信源を同期させる。例えば、同期302は、空中輸送手段115に整備を施すときに、または空中輸送手段115を打ち上げる前に取ることができる。
【0029】
例示的な実施形態では、導出位置315は、将来時刻における空中輸送手段115の予測位置を表わす。予測位置は、現在時刻と未来時刻との間の空中輸送手段115の予測運動または変位(例えば、IMU220から供給される速度データ、方位データ、または両方のデータで表わされる)に基づいて得られる。予測位置を導出した(315)後、原子時計230を利用して、未来時刻になっているかどうかを判断する(317)。未来時刻になっている場合(例えば、原子時計230から報告される現在時刻が未来時刻に等しい、または未来時刻を過ぎている場合)、送信機225は、送信時刻を含むことができる位置情報を送信する(320)。
【0030】
幾つかの実施形態では、空中輸送手段115は、遠隔操作する、自律操作する、またはこれらの形態の操作を組み合わせて操作する。このような実施形態では、受信機215は、ナビゲーション入力及び制御入力のような指示を、1つ以上の遠隔制御局(図示せず)から受信することができる。例えば、受信機215は、空中輸送手段115の運行ルートまたは運行経路を決める飛行経路を受信することができる。飛行経路は、所定の位置(例えば、所定の高度を含む)の軌道を含むことができる。1つの実施形態では、空中輸送手段115は、当該空中輸送手段の位置及び運動を、本明細書に記載される方法に従って導出し、そして飛行経路に沿って、導出位置及び運動を利用して航行することができる。
【0031】
受信機215が受信する指示は、経路制御装置235に供給することができる。経路制御装置235は、これらの指示を受信し、そしてビークル管理システム(VMS)及びミッション管理システム(MMS)のうちの1つ以上の管理システムのような他のシステムと対話し、これらの管理システムのうちの何れかの管理システムをプロセッサ205が実行することができる。例えば、VMSは、これらには限定されないが、空中輸送手段115を操縦するために使用される飛行制御面(例えば、補助翼、昇降蛇、または方向蛇)、スロットル、モータ、バルブ、アクチュエータ、及びスイッチのような1つ以上のコントロール装置240を作動させることができる。MMSは、空中輸送手段115の所望の軌道を、軌道を予めプログラムしているか、または受信機215を介して受信しているかどうかに拘わらず、管理することができる。空中輸送手段115は更に、1つ以上の送信機225を含むことができ、これらの送信機は、搭載カメラ(図示せず)からのテレメトリデータ(遠隔測定データ)またはビデオのようなデータを離れた場所のオペレータに送信するように構成される。
【0032】
空中輸送手段115の自動制御または遠隔制御を行なう実施形態では、人間パイロットを搭乗させる必要が無いので、このような実施形態によって空中輸送手段115を作戦戦域に長期間(例えば、数日または数週間)に亘って配備し易くなる。例えば、空中輸送手段115には、基地から目的地に至るルートを決める飛行経路、すなわち目的地の上空に至る軌道、及び目的地から基地に至るルートを決める帰りの飛行経路をプログラムすることができる。更に、このような実施形態によって、極めて優れた適応能力(例えば、加圧状態への適応能力)を有人操縦飛行に必要とする成層圏内の空中輸送手段115の操縦が可能になる。
【0033】
図4は、3集合の空中輸送手段115を用いる例示的な測位システム400を示すブロック図である。例示的な実施形態では、システム400は、空中輸送手段115から成る第1集合405、第2集合410、及び第3集合415を含む。第1集合405は、第1空中輸送手段421と、第2空中輸送手段422と、そして第3空中輸送手段423と、を含む。空中輸送手段115の第2集合410は、第4空中輸送手段424と、第5空中輸送手段425と、そして第6空中輸送手段426と、を含む。空中輸送手段115の第3集合415は、第7空中輸送手段427と、第8空中輸送手段428と、第9空中輸送手段429と、そして第10空中輸送手段430と、を含む。
【0034】
第1集合405の空中輸送手段群115は位置情報を、2つの地上局110及び、中高度周回軌道(MEO)または低高度周回軌道(LEO)を周回する衛星のような衛星435から受信する。例示的な実施形態では、第1集合405は位置情報を送信し、そして第2集合410の各空中輸送手段115は、当該空中輸送手段自体の位置を、第1集合405から受信する位置情報に基づいて導出する。
【0035】
第2集合410の第6空中輸送手段426は更に、位置情報を更に別の地上局440から受信する。1つの実施形態では、第6空中輸送手段426は、当該空中輸送手段の位置を、地上局440から受信する位置情報にも基づいて導出する。別の実施形態では、第6空中輸送手段426は、当該空中輸送手段の位置を導出するときに、第1空中輸送手段421に対するよりも地上局440に対して大きな重みを付与する。例えば、第6空中輸送手段426は、重みを地上局440に対して、第1空中輸送手段421に対して割り当てられるよりも大きい重みを、位置情報発信源の種類(例えば、地上局、空中輸送手段、及び衛星)、位置情報発信源の信頼度、または種類及び信頼度の両方に基づいて割り当てることができる。
【0036】
第2集合410の各空中輸送手段115は、位置情報を送信し、そして第3集合415の各空中輸送手段115は、当該空中輸送手段の位置を、第2集合410から受信する位置情報にも基づいて導出する。第3集合410の空中輸送手段群115も位置情報を送信し、この位置情報に基づいて、第1移動受信機445は、第1移動受信機445の位置を導出する。例示的な実施形態では、地上局群110及び衛星435からの位置情報を、第1移動受信機445にまで届けるために、空中輸送手段115から成る集合を3つだけ用いる様子を示しているが、任意の数の空中輸送手段115を用いることができるので、位置情報を伝送することができる距離を長くすることができる。
【0037】
移動受信機群は位置情報を、1グループに属するこれらの空中輸送手段115からしか受信しないという必要はない。例えば、第2移動受信機450は、当該第2移動受信機の位置を、第2集合410及び第3集合415の両方の集合に属する空中輸送手段115から受信する位置情報に基づいて導出する。第3移動受信機455は、当該第3移動受信機の位置を、第2空中輸送手段422、第3空中輸送手段423、第6空中輸送手段426、及び地上局440からの位置情報を利用して導出する。これらの例に示すように、任意の3つ以上の位置情報発信源を組み合わせて、空中輸送手段115の位置を導出する(例えば、搭載原子時計による現在時刻と組み合わせて)ことができ、そして任意の4つ以上の位置情報発信源を組み合わせて、移動受信機の位置を導出することができる。
【0038】
本明細書に記載される方法及び装置によって、空中輸送手段群を利用して測位機能を、地上局群及び衛星群のような複数の既知の被制御位置情報発信源からこのような位置情報発信源に直接にはアクセスすることができないアクセス元の領域に拡張することが容易になる。従って、地表受信機は当該受信機の位置を、従来の衛星発信信号または地上局信号を当該地表受信機で直接受信することができない場合でも、これらの空中輸送手段から送信される位置情報に基づいて正確に導出することができる。
【0039】
種々の実施形態は、特定の測位システム構成を参照しながら本明細書に記載されている。しかしながら、記載される方法及び装置を、本明細書に記載される方法に使用されるために適する任意の数の空中輸送手段、地上局、衛星、及び受信機を用いて動作させることができる構成を想到することができる。
【0040】
本開示の主題について、特異性を付与して本明細書で記載することにより、法定要件を満たすようにしている。しかしながら、この記述自体は、本特許の範囲を限定するために為されるのではない。本特許の範囲を限定するのではなく、請求する主題を他の方法で具体化して、異なるステップ群を含める、または本文書で他の現在技術または将来技術に関連付けて説明されるステップ群と同様のステップ群の組み合わせを含めることもできる構成をこれまでに想到している。更に、「step」、「block」、または「operation」という用語を本明細書において使用して、採用する方法の異なる構成要素を暗示することができるが、これらの用語は、個々のステップの順序が明らかに説明されていない限り、かつ明らかに説明されている場合を除き、本明細書に開示される種々のステップに亘る、または種々のステップの間の如何なる特定の順序も意味しているものとして解釈されてはならない。
【0041】
本明細書に記載される方法は、これらには限定されないが、記憶装置を含む、または計算装置のメモリ領域を含むコンピュータ可読媒体に具体化される実行可能命令群として符号化することができる。このような命令群によって、これらの命令を1つ以上のプロセッサが実行すると、プロセッサ(群)が本明細書に記載される方法の少なくとも一部を実行するようになる。
【0042】
記載される本記述では、複数例を用いて、最良の形態を含む記載の実施形態を開示して、この技術分野の当業者であれば必ず、記載の実施形態を実施することができるようにしており、当業者は、いずれのデバイスまたはシステムも作製及び使用することができ、そして採用されるいずれの方法も実行することができる。特許可能な範囲は、請求項によって規定され、この技術分野の当業者が想到し得る他の例を含むことができる。このような他の例は、これらの例が、これらの請求項の文言とは異ならない構造的要素を有する場合に、またはこれらの例が、これらの請求項の文言とはわずかな差しかない等価な構造的要素を有する場合に、これらの請求項の範囲に包含されるべきである。
図1
図2
図3
図4