特許第5988980号(P5988980)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5988980薄膜デバイスを分離したセルに分割するための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988980
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】薄膜デバイスを分離したセルに分割するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0463 20140101AFI20160825BHJP
   B23K 26/36 20140101ALN20160825BHJP
   B23K 26/00 20140101ALN20160825BHJP
【FI】
   H01L31/04 532A
   !B23K26/36
   !B23K26/00 G
【請求項の数】26
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-529700(P2013-529700)
(86)(22)【出願日】2011年9月16日
(65)【公表番号】特表2013-546160(P2013-546160A)
(43)【公表日】2013年12月26日
(86)【国際出願番号】GB2011001352
(87)【国際公開番号】WO2012038689
(87)【国際公開日】20120329
【審査請求日】2014年9月12日
(31)【優先権主張番号】1016172.7
(32)【優先日】2010年9月25日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512104823
【氏名又は名称】エム−ソルヴ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】アダム・ノース・ブラントン
【審査官】 濱田 聖司
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公開第2458986(GB,A)
【文献】 国際公開第2010/002005(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0314439(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/098459(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/048352(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00−31/20
H01L 27/14−27/148
B23K 26/00−26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部電極層である第1の層、活性層である第2の層及び上部電極層である第3の層を有する薄膜デバイスを、それぞれ幅Wを有し、相互接続構造によって電気的に直列に相互接続され、隣接する前記相互接続構造が、距離Wだけ互いに離隔された分離したセルに分割する方法であって、前記層の全てが、前記デバイス上で連続的であり、前記セルの分割及び隣接するセル間の前記相互接続構造の形成が、前記デバイスに対して第1の方向(X)に往復して、デバイス上を通過し、通過のそれぞれの間において、前記第1の方向に対して実質的に垂直な第2の方向(Y)にステップ送りするように構成されたプロセスヘッドによって実施され、前記プロセスヘッドが、1つまたは複数のカッターユニット、第1のインクジェット印刷ヘッド及び第2のインクジェット印刷ヘッドを含み、前記1つまたは複数のカッターユニット並びに前記第1及び第2のインクジェット印刷ヘッドの少なくともいくつかが、方向Yにおいて、互いに対して距離W(またはその倍数)だけ互いに離隔されるように、前記プロセスヘッドに取り付けられ、それによって、前記プロセスヘッドが、一度に2つ以上の前記相互接続部上で動作し、少なくとも1つの通過の間に個別の相互接続について異なる段階を実行するように構成され、各個別の相互接続構造の形成が、前記デバイス上を往復する前記第1の方向における前記プロセスヘッドの一連の通過を必要とし、完全な相互接続構造の形成が、前記デバイスを横切る前記第1の方向における前記プロセスヘッドの複数回の通過を必要とし、
完全な相互接続を形成するために、以下の段階、
a)前記プロセスヘッド上に設けられた前記1つまたは複数のカッターユニットを用いて前記第1、第2及び第3の層を貫通して第1の切断(6)を行う段階、
b)前記プロセスヘッド上に設けられた前記1つまたは複数のカッターユニットを用いて前記第2及び第3の層を貫通し、前記第1の切断部と隣接する第2の切断(7)を行う段階、
c)前記プロセスヘッド上に設けられた前記1つまたは複数のカッターユニットを用いて第3の層を貫通し、前記第2の切断部に隣接し、前記第1の切断部に対して前記第2の切断部の反対側にあるように第3の切断(8)を行う段階、
d)前記プロセスヘッド上に設けられた第1のインクジェット印刷ヘッド(9)を用いて非導電性材料を前記第1の切断部(6)に成膜する段階、並びに
e)前記プロセスヘッド上に設けられた第2のインクジェット印刷ヘッド(12)を用いて導電性材料(13)を適用し、前記第1の切断部内の前記非導電性材料(10)を架橋し、前記第2の切断部を完全にまたは部分的に充填して、前記第1の層と前記第3の層との間に電気的接続を形成する段階、を必要とし、
前記プロセスヘッドが、前記非導電性材料及び/または前記導電性材料を各切断部内へ成膜した後に硬化するために前記デバイス上を通過する際に、1つまたは複数の硬化段階が、前記プロセスヘッド上に設けられた1つ以上の硬化デバイスによって実行され、
前記段階(a)が前記段階(d)に先行し、前記段階(d)が前記段階(e)に先行し、前記段階(b)が前記段階(e)に先行し(または前記段階がいずれの順序で実施されてもよく)、
前記デバイス上を前記プロセスヘッドが少なくとも1回通過する間に、前記段階の少なくとも2つが、それぞれ分離した相互接続構造上で実行される、薄膜デバイスを分割する方法。
【請求項2】
前記段階が実施される順序が、前記第1及び第2のインクジェット印刷ヘッド並びに前記ヘッドの移動方向に対して垂直な方向(またはそれに対してある角度を有する方向)の前記1つまたは複数のカッターユニットの、前記プロセスヘッド上の相対的な位置によって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1、第2及び第3の切断部(6、7、8)の1つ以上が、1つ以上のレーザービームを用いて形成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記3つの分離したレーザー切断(6、7、8)が、各切断に関してレーザープロセスパラメータを個別に最適化するように使用される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第3のレーザー切断(8)が前記第1及び第2のレーザー切断の両方の後に実施される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記第3の切断部(8)が、前記第2の層を部分的にまたは完全に通して延在し、前記第2の切断部(7)と同様の深さである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
相互接続構造内の前記切断部(6、7、8)が0.1から0.2mmの範囲の距離で離隔される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記プロセスヘッドが、前記段階を、前記デバイスを横切る両方の方向で繰り返し通過しつつ実行し、前記第1、第2及び第3の切断部が両方向で同一の構成要素によって形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記同一の第1及び第2のインクジェット印刷ヘッド(9、12)が前記デバイスを横切る前記プロセスヘッドの両方の移動方向で使用される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記薄膜デバイスが、ソーラーパネル、照明パネル及び電池のうちの1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
下部電極層である第1の層、活性層である第2の層及び上部電極層である第3の層を有する薄膜デバイスを、それぞれ幅Wを有し、相互接続構造によって電気的に直列に相互接続され、隣接する前記相互接続構造が、距離Wだけ互いに離隔されたセルに分割するための装置であって、前記層の全てが、前記デバイス上で連続的であり、前記装置が、前記デバイスに対して第1の方向(X)に往復して、前記デバイス上を通過し、通過のそれぞれの間において、前記第1の方向に対して実質的に垂直な第2の方向(Y)にステップ送りするように構成されたプロセスヘッドを含み、前記プロセスヘッドが、
a)前記第1、第2及び第3の層を貫通する第1の切断部(6)、前記第1の切断部に隣接して前記第2及び第3の層を貫通する第2の切断部(7)並びに前記第2の切断部に隣接し、前記第1の切断部に対して前記第2の切断部の反対側にある、前記第3の層を貫通する第3の切断部(8)を形成するための1つ以上のカッターユニット(3、4、5)、
b)前記第1の切断部(6)内に非導電性材料(10)を成膜するための第1のインクジェット印刷ヘッド(9)
c)前記第1の切断部内の前記非導電性材料(10)を架橋し、前記第2の切断部を完全にまたは部分的に埋めるための導電性材料(13)を適用し、前記第1の層と前記第3の層との間に電気的接続が形成され、前記1つ以上のカッター(3、4、5)の少なくともいくつか並びに前記第1及び第2のインクジェットヘッド(9、12)が、前記ヘッドの移動の方向に垂直な方向に、距離W(またはその倍数)だけ互いに離隔され、それによって、前記少なくとも1回の通過の間に前記分離した相互接続の上で異なる段階を実施するように、一度に2つ以上の相互接続構造上で動作することができる第2のインクジェット印刷ヘッド(12)
d)前記非導電性材料及び/または前記導電性材料を各切断部内へ成膜した後に硬化するための1つまたは複数の硬化デバイス、
e)前記デバイスに対して相対的に前記プロセスヘッドを移動させる駆動手段(17、18)、並びに
f)前記デバイスに対して相対的な前記プロセスヘッドの移動を制御し、前記1つ以上のカッターユニット並びに前記第1及び第2のインクジェット印刷ヘッドを作動させる制御手段(36)であって、前記デバイスの分離したセルへの分割及びそれぞれ個別の前記相互接続構造の形成が、前記デバイス上を往復する前記プロセスヘッドの一連の通過によって実施される制御手段を含む、薄膜デバイスを分割するための装置。
【請求項12】
前記1つ以上のカッターユニット(3、4、5)が、前記第1、第2及び第3の切断部(6、7、8)を形成するための単一のパルスレーザーを含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記1つ以上のカッターユニットが、前記第1、第2及び/または第3の切断部(6、7、8)を形成するための、2つ以上の種類のパルスレーザーを含む、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記デバイスに第1、第2及び第3のレーザービームを供給するための集束レンズを含み、前記第1、第2及び第3のレーザービームによって形成されるレンズの集束における焦点が、前記第1、第2及び第3の切断部(6、7、8)を形成するために前記デバイスの表面上に必要な空間的間隔を有するように、前記ビーム間に角度偏向がある、請求項12または13に記載の装置。
【請求項15】
前記第1、第2及び第3の切断部を形成するための第1、第2及び第3のレーザービームを形成するために、1つのパルスレーザーからのレーザービームを分割するための回折光学素子を含む、請求項12または13に記載の装置。
【請求項16】
前記第1、第2及び第3の切断部を形成するための第1、第2及び第3のレーザービームを形成するために、1つのパルスレーザーからのレーザービームを分割するためのプリズム光学素子を含む、請求項12または13に記載の装置。
【請求項17】
前記第1、第2及び第3のレーザービームのうちいずれか2つを形成するために第1のパルスレーザーからのレーザービームを分割するための回折光学素子を含み、残りのレーザービームを供給するための第2のパルスレーザーが、前記第1及び第2のパルスレーザーからのビームが結合して、前記第1、第2及び第3の切断部を形成するために前記デバイスの表面上に3つの空間的に分離されたレーザースポットを形成するように配置される、請求項12または13に記載の装置。
【請求項18】
前記第1、第2及び第3のレーザービームのうちいずれか2つを形成するために、第1のパルスレーザーからのレーザービームを分割するための複プリズム型のプリズム光学素子を含み、残りのレーザービームを供給するための第2のパルスレーザーが、前記第1及び第2のパルスレーザーからのビームが結合して、前記第1、第2及び第3の切断部を形成するために、前記デバイスの表面上に3つの空間的に分離されたレーザースポットを形成するように配置された、請求項12または13に記載の装置。
【請求項19】
前記プロセスヘッドが、前記少なくとも1回の通過の間に前記ヘッドの移動方向に垂直な方向に距離W(またはその倍数)だけ空間的に離隔された1列の6つの構成要素である前記3つのカッターユニット(3、4、5)、前記第1及び第2のインクジェット印刷ヘッド(9、12)並びに前記硬化デバイス(11)を含む、請求項11に記載の装置。
【請求項20】
前記プロセスヘッドが、前記少なくとも1回の通過の間に前記ヘッドの移動方向に垂直な方向に距離W(またはその倍数)だけ空間的に離隔された1列の5つの構成要素である前記3つのカッターユニット(3、4、5)並びに前記第1及び第2のインクジェット印刷ヘッド(9、12)を含み、前記第1及び第2のインクジェット印刷ヘッド(9)に隣接して位置し、一方が前記デバイス上の第1の方向に前記ヘッドが移動する間動作し、もう一方が前記デバイス上の反対の方向に前記ヘッドが移動する間動作する第1及び第2の硬化デバイス(11、11’)をさらに含む、請求項11に記載の装置。
【請求項21】
前記3つのカッターデバイス(3、4、5)が、互いに距離Wだけ空間的に離隔し、前記第1及び第2のインクジェット印刷ヘッド(9、12)が、距離Wの倍数だけ互いに離隔された、請求項11に記載の装置。
【請求項22】
前記レーザービームのうち2つまたは3つが、同一の相互接続構造上で動作し、前記第1及び第2のインクジェット印刷ヘッド(9、12)が、前記レーザービームから距離W(またはその倍数)だけ及び互いに距離W(またはその倍数)だけ空間的に離隔された、請求項11に記載の装置。
【請求項23】
前記駆動手段が、前記プロセスヘッドを前記デバイスに対して2つの直交する方向に移動させるための2軸サーボモーターを含む、請求項11に記載の装置。
【請求項24】
前記デバイスおよび前記プロセスヘッドが前記第1及び第2の切断部の長手方向に対して平行な前記第1の方向に、前記デバイスを横断する連続的な経路で互いに対して移動し、前記通過経路の端部において前記デバイス内に形成される前記セルの幅と等しい距離W(またはその倍数)だけ、前記第1の方向に対して垂直な前記第2の方向にステップ送りするように、制御システム(36)が配置された、請求項11に記載の装置。
【請求項25】
前記3つのカッターデバイス(3、4、5)が、互いに距離Wだけ空間的に離隔し、前記第1及び第2のインクジェット印刷ヘッド(9、12)が、距離Wの倍数だけ互いに離隔された、請求項20に記載の装置。
【請求項26】
前記レーザービームのうち2つまたは3つが、同一の相互接続構造上で動作するように位置し、前記第1及び第2のインクジェット印刷ヘッド(9、12)が、前記レーザービームから距離W(またはその倍数)だけ及び互いに距離W(またはその倍数)だけ空間的に離隔された、請求項20に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクライブ及びインクジェット印刷技術を用いて、分離した電気セルを形成し、それらを直列に相互接続して様々な薄膜デバイスを形成するプロセスに関する。特に、下部電極材料、半導体材料及び上部電極材料の連続層を有するソーラーパネルにおいて、セル及び直列相互接続構造を形成するための新規な方法を記述する。本プロセスは、連続的な層を層へスクライブ位置合わせすることに関連する問題を排除するため、柔軟な基板上に形成されたソーラーパネルに特に好適である。本方法はまた、照明パネルや電池などのその他の薄膜デバイスの製造にも好適である。本発明はまた、記載される本方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜ソーラーパネルのセルを形成し、相互接続する通常の方法は、連続的な層を成膜し、レーザーでスクライブするプロセスを含む。構造を完成させるためには、3つの別個の成膜プロセス及び3つの別個のレーザープロセスが通常必要とされる。これらのプロセスは、以下に説明するように、各成膜段階の後にレーザーの段階からなる6段階の手順で、通常は実施される。
a)基板表面全体に渡って下部電極材料の薄層を成膜する。基板は通常ガラスであるが、高分子シートも用いることができる。この下部層は、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)またはインジウムスズ酸化物(ITO)のような透明導電性酸化物であることが多い。モリブデン(Mo)のような不透明な金属であることもある。
b)平行線を、パネル表面に沿って、典型的には5から10mmの間隔で、ちょうど下部電極層を貫通スクライブし、連続的な薄膜を電気的に分離されたセル領域へ分離する。
c)基板領域全体に活性発電層を成膜する。この層は、単一のアモルファスシリコン層またはアモルファスシリコン及び微小結晶シリコンの2層からなるものであってもよい。テルル化カドミウム及び硫化カドミウム(CdTe/CdS)並びに2セレン化銅インジウムガリウム(CIGS)のようなその他の半導体材料の層もまた用いられる。
d)この単一の活性層または複数の活性層を貫通し、下部電極材料に損傷を与えることなく第1の電極層の最初のスクライブに平行かつ可能な限り接近して、ラインをレーザーでスクライブする。
e)パネル領域全体に渡って、アルミニウムのような金属、またはZnOのような透明導電体であることが多い第3の、上部電極層を成膜する。
f)他のラインになるべく接近して平行に、この第3の層にラインをレーザーでスクライブして上部電極層の電気的な接続を切断する。
【0003】
一般的に、これらの各段階の間には、異なる環境(例えば、真空または大気中の環境)の間を、基板を移動させる必要がある。
【0004】
成膜に続きレーザーによる分離を行うこの手順は、パネルを多数の分離した長く、細いセルに切断し、このことによって、パネル内の全てのセルの間の電気的な直列接続が形成される。このようにして、パネル全体で発電される電圧は、各セル及び多数のセル内で形成されたポテンシャルの生成によって与えられる。パネルは、典型的には50から100のセルに分割され、全てのパネルの出力電圧は、典型的には50から100Vの範囲である。各セルは、典型的には5から15mm幅であり、約1000mmの長さである。この複数段階のソーラーパネルの製造方法に用いられるプロセスの説明の全体は、特許文献1に与えられている。
【0005】
分離した層を成膜する段階のいくつかを組み合わせることにより、ソーラーパネルを製造するこの複数段階のプロセスを単純にするために、構想が考案されてきた。このことは、基板を真空から大気環境へ移動させなければならない回数を減少させ、そのため、層の品質の改善及びソーラーパネルの効率の増大につながる可能性がある。特許文献2、特許文献3及び特許文献4は全て、3つの必要な層のうち2つが、レーザースクライブが行われる前に成膜される、ソーラーパネルの製造方法を記載している。下部電極層及び活性層(または複数の活性層)が順に成膜され、次いで両方の層が一度にレーザーでスクライブされて、溝を形成し、次いでこの溝が絶縁材料で充填される。特許文献3及び特許文献4に関しては、この溝の充填が、インクジェット印刷で行われることを提案している。溝の充填に続いて、相互接続の手順は、上述のような活性層を貫通するレーザースクライブ、上部電極層の成膜及びセルを分離する上部電極層の最終的なスクライブを伴う。
【0006】
レーザースクライブが行われる前に、3層の全てが成膜される構想もまた提案されている。特許文献5は、完全な3層の積層体が1回のプロセス順で成膜され、次いで積層体内にかつ積層体を貫通してレーザースクライブがなされる、ソーラーパネルの製造方法を記載している。レーザースクライブプロセスは、2つの異なる深さを有する単一のスクライブからなるため、複雑である。スクライブの第1の側面において、下部電極層を電気的に分離してセルを画定するためにレーザーは3層積層を完全に基板まで貫通し、その一方スクライブの第2の側面においては、レーザーは上部層及び活性層を貫通するのみであり、下部電極層材料の突出部が露出される領域を残す。絶縁材料が、基板まで貫通するスクライブの第1の側面に局所的に適用され、絶縁材料は、スクライブの第1の側面の下部電極層の端部および活性層の端部を覆う。これに引き続き、導電材料が、スクライブ内に成膜され、既に適用された絶縁材料を架橋し、第1の側面上の上部電極層を第2の側面上の下部電極材料の突出部に接続する。
【0007】
特許文献5に記載されたプロセスは複雑であり、細心の制御を必要とする。2層レーザースクライブプロセスの第2段階の間に発生する破片は、下部電極材料の突出部の隣接する上面に付着し、電気的接続を悪化させる可能性がある。確実に、絶縁材料が正確にスクライブの第1の側面上の正しい位置に配置され、下部電極材料の突出部の上面にはどのような材料も成膜されないように、高い水準の制御が必要とされる。確実に、導電材料を正しく配置し、スクライブの第2の側面の上部電極に接触させないようにすることには極端な精度が必要となる。これらすべての理由により、セルの接続を、この方法によって高い信頼性で行うことは困難である。
【0008】
従って、3層の完全な積層体から開始するが速く、単純で信頼性のある方法でのセルの相互接続の形成を進めるような、ソーラーパネルのための新しいセルの形成及び相互接続プロセスの必要性は未だに存在する。
【0009】
このようなプロセスはまた、照明パネルや電池のようなその他の薄膜デバイスの製造に関しても、セルの形成及び直列接続に適用可能となるであろう。ソーラーパネルのように、そのようなデバイスは全て剛体のまたは柔軟な基板上に成膜された下部電極層、活性層及び上部電極層からなる。基礎的な単一セルの電圧よりも高い電圧での動作は、デバイスを複数セルに分割し、直列に接続することによって達成ることが可能である。本明細書で提示されるレーザー及びインクジェットセル形成並びに相互接続装置は、このような動作に適している。
【0010】
照明パネルに関して、上部電極及び下部電極は、ソーラーパネルに関して用いられるものと同様の材料である(例えばTCOや金属など)可能性があるが、活性材料は大きく異なる。この場合、活性層は有機材料であることがもっとも可能性が高いが、無機材料もまた可能である。活性有機層は、低分子量材料(いわゆるOLED)または高分子量高分子(いわゆるP−OLED)の何れかに基づく。正孔電子輸送層は、通常、活性発光層と関連する。これらの照明パネルに関して、動作は低電圧であり、全ての層は薄く、そのため本明細書で説明される相互接続プロセスは、パネルをセルに分割し、これらを直列に接続して実質的により高い電圧で動作させるのに理想的である。
【0011】
薄膜電池に関しては、層は通常、より複雑である。リチウムイオン技術に基づく薄膜電池の場合には、下部層は2つの要素、集電のための金属層及びカソードとして機能するリチウムコバルト酸化物(LiCoO3)層を有する。上部層もまた2つの要素、集電のための金属層及びアノードとして機能する窒化スズ(Sn3N4)層を有する。これら2つの層の間には、活性層が存在し、リチウムリン酸窒化物(LiPON)電解質である。このような電池に関して、動作は低電圧であり、全ての層は薄く、そのため、本明細書で説明される相互接続プロセスは、電池をセルに分割し、これらを直列に接続して実質的により高い電圧で動作させるのに理想的である。
【0012】
出願人は、薄膜ソーラーパネルを分離したセルに分割し、これらのセルを電気的に直列に接続するための方法及び装置を提案した、先行する(公開されていない)特許出願を有する。この装置は、3つのレーザービーム及び2つの流体ノズルを組み合わせるプロセスヘッドを有していた。プロセスヘッド上のこれら5つの構成要素の全ては、2つの隣接セルの間の単一の相互接続構造に対処するものであり、ソーラーパネルを横切ってヘッドが1回通過すると、相互接続構造が1つ形成される。ついで、他の相互接続構造が、セルの幅と等しい距離またはセルの幅の倍数だけ相互接続の方向に対して垂直な方向へプロセスヘッドをステップ送りし、再びパネルを横切ってプロセスヘッドを横断させることにより、形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平10−209475号公報
【特許文献2】米国特許第6919530号明細書
【特許文献3】米国特許第6310281号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0213974号明細書
【特許文献5】国際公開第2007/044555号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、先行する出願において提案された方法及び装置の改善を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様によれば、下部電極層である第1の層、活性層である第2の層及び上部電極層である第3の層を有する薄膜デバイスを、相互接続構造によって電気的に直列に相互接続された分離したセルに分割する方法であって、全ての前記層が前記デバイスに渡って連続的であり、前記セルの分割及び隣接する前記セルの間の前記相互接続構造の形成が、一度に2つ以上の前記相互接続部上で動作でき、各相互接続構造の形成において前記デバイス上を往復する一連の通過によって、以下の段階を実行することができるように構成されたプロセスヘッドによって実施され、前記段階が、
a)前記第1、第2及び第3の層を貫通して第1の切断を行う段階、
b)前記第2及び第3の層を貫通し、前記第1の切断部と隣接する第2の切断を行う段階、
c)前記第3の層を貫通し、前記第2の切断部に隣接し、前記第1の切断部に対して前記第2の切断部の反対側にあるように第3の切断を行う段階、
d)第1のインクジェット印刷ヘッドを用いて非導電性材料を前記第1の切断部に成膜する段階、並びに
e)第2のインクジェット印刷ヘッドを用いて導電性材料を適用し、前記第1の切断部内の前記非導電性材料を架橋し、前記第2の切断部を完全にまたは部分的に充填して、前記第1の層と前記第3の層との間に電気的接続を形成する段階、を備え、
前記段階(a)が前記段階(d)に先行し、前記段階(d)が前記段階(e)に先行し、前記段階(b)が前記段階(e)に先行し(または前記段階がいずれの順序で実施されてもよく)、前記デバイス上を前記プロセスヘッドが少なくとも1回通過する間に、前記段階の少なくとも2つが、それぞれ分離した相互接続構造上で実施される、薄膜デバイスを分割する方法が提供される。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、下部電極層である第1の層、活性層である第2の層及び上部電極層である第3の層を有する薄膜デバイスを、それぞれ幅Wを有し、相互接続構造によって電気的に直列に相互接続され、隣接する前記相互接続構造が、距離Wだけ互いに離隔されたセルに分割するための装置であって、前記層の全てが、前記デバイス上で連続的であり、前記装置が、
a)前記第1、第2及び第3の層を貫通する第1の切断部、前記第1の切断部に隣接して前記第2及び第3の層を貫通する第2の切断部並びに前記第2の切断部に隣接し、前記第1の切断部に対して前記第2の切断部と反対側にある前記第3の層を貫通する第3の切断部を形成するための1つ以上のカッターユニット、
b)前記第1の切断部内に非導電性材料を成膜するための第1のインクジェット印刷ヘッド、並びに
c)前記第1の切断部内の前記非導電性材料を架橋し、前記第2の切断部を完全にまたは部分的に埋めるための導電性材料を適用し、前記第1の層と前記第3の層との間に電気的接続が形成され、前記1つ以上のカッター並びに前記第1及び第2のインクジェットヘッドが、距離W(またはその倍数)だけ互いに離隔され、それによって一度に2つ以上の相互接続構造上で動作することができる第2のインクジェット印刷ヘッド、を含むプロセスヘッドを含み、前記装置がまた、
d)前記デバイスに対して相対的に前記プロセスヘッドを移動させる駆動手段、並びに
e)前記デバイスに対して相対的な前記プロセスヘッドの移動を制御し、前記1つ以上のカッターユニット並びに前記第1及び第2のインクジェット印刷ヘッドを作動させる制御手段であって、前記デバイスの分離したセルへの分割及び前記相互接続構造の形成が、前記デバイス上を往復する前記プロセスヘッドの一連の通過によって実施することができる制御手段を含む、薄膜デバイスを分割するための装置が提供される。
【0017】
従って、本発明において、プロセスヘッド上に3つのレーザービーム及び2つの流体ノズルが配置され、これらが1度に1つ以上の相互接続構造上で動作する。セルは典型的には5から10mmの幅であり、レーザービーム及び流体ノズルは、この距離だけまたはこの距離の倍数だけ離隔される。3つのレーザープロセス及び2つのインクジェットプロセスの全てによって完全な相互接続構造を形成することは、プロセスヘッドがパネルを横断して複数回通過(先行出願においてはむしろ単一の通過であった)することを必要とする。3つのレーザープロセス及び両方のインクジェットプロセスの全てが個々の相互接続構造のそれぞれにおいて実施されたときにのみ、完全に行われる。
【0018】
先行する出願と比較した本発明の顕著な長所は、レーザービーム及び流体ノズルの配置を単一に保ったまま、プロセスヘッドがパネル上のいずれかの移動方向で動作することができる点である。先行する出願は、2種類の動作が可能であることに言及しているが、このことは、流体ノズルを2組必要とし、そのうちの1組は、プロセスヘッドの一方の移動方向で動作するものであり、もう1組は反対の移動方向で動作するものである。本発明は、このような重複の必要性を回避する。
【0019】
本発明の好適かつ任意選択な特徴は、説明される実施例の記載及び本願の従属請求項から明らかになるであろう。
【0020】
「スクライブ」及び「切断」という語句は、本明細書では互いに置き換え可能に用いられる。後述する発明の詳細な説明において、様々な層を貫通する切断部を形成するために用いられるカッターユニットは、全てレーザーに基づくものであり、レーザーからのビームは、集束されて分離切断部を形成するために材料を蒸発除去する(すなわち、レーザースクライブ)。これは、切断部を形成するための好適な方法であるが、切断のその他の方法も用いられてもよい。切断部を形成するための代替的な方法は、精密なワイヤーまたは針による機械的スクライブである。このような機械的スクライブは、第1、第2または第3の切断部の全てまたはいくつかを形成するためのレーザースクライブまたは切断の代わりに用いることができる。
【0021】
特許文献5に記載された発明のように、本発明は、3層の完全な積層体を有する薄膜デバイスの加工を伴うが、続く層の切断及びインクジェットプロセスは、特許文献5に記載されたものと比較して、より複雑さが少なく、はるかに堅牢である。特許文献5におけるように、3回の成膜の全ては、どのレーザー切断またはインクジェットによる材料の成膜よりも前に、連続して実施される。理想的には、これらの成膜は、単一の真空プロセス内で実施されてもよいが、それは不可欠ではない。本発明の要点は、続く被覆成膜において単一の結合した層の切断及びインクジェットプロセスが用いられてセルの相互接続を形成することである。「単一の結合したプロセス」とは、全ての切断プロセス及び全ての関連するインクジェット系材料成膜プロセスが、基板表面に平行な平面内であってセル間の境界に平行な方向に、ソーラーパネルの全てまたは一部を横断する一連の通過におけるプロセスヘッドの移動によって実行されることを意味するものと理解されるべきである。1つ以上のセル相互接続を形成するために必要な全てのカッターユニットおよび全てのインクジェット印刷ヘッドは、単一のプロセスヘッドに取り付けられ、そのため全ての部品が、同一の速度でパネルを横断して一緒に移動する。
【0022】
様々な層の切断プロセス及び様々なインクジェット成膜プロセスが基板に適用される順序は、用いられる材料に依存して変化させることができる。様々な層のカッターユニット及びインクジェット印刷ヘッドが、プロセスヘッドが基板に渡って一連の通過において移動する際に所望の順序が得られるような位置で、プロセスヘッドに取り付けられる。
【0023】
説明を簡略化するために、層切断プロセスはこれ以降、レーザー蒸散を参照して説明される。しかしながら、これらのレーザー切断またはレーザースクライブプロセスの全てまたはいくつかは、上述したように機械的スクライブプロセス(またはその他の切断プロセス)によって置き換えられてもよい。
【0024】
隣接する第1及び第2のセルの間の単一のセル相互接続構造を形成するために、プロセスヘッドに取り付けられた3つの隣接するビーム供給ユニットによって供給される3つの隣接するレーザービームは、セル間の境界に対して平行な方向に、基板に対して共に移動し、様々な層に異なる深さの3つの平行な隣接するスクライブを形成する。第1のレーザービームは、第1のセルの端部を画定する第1のスクライブラインを形成する。この第1のスクライブは、基板まですべての層を貫通する。第1のスクライブの横の第2のセル上に位置する第2のレーザービームは、下部電極層を除いてすべての層を貫通する第2のスクライブラインを形成する。第2のスクライブの横の第2のセル上に位置する第3のレーザービームは、上部電極層を貫通する第3のスクライブを形成する。第3のスクライブは、第3の層を貫通することのみを必要とするが、実際には、部分的に、または完全に、第2の層を通して延長されてもよい(つまり第2のスクライブと同様な深さであってもよい)。この第3のスクライブは、第2のセルの範囲を画定する。これら3つのレーザープロセスが行われる正確な順序は重要ではないが、好適な順序は以下に考察される。
【0025】
第1のインクジェット印刷プロセスは、いくつかまたはすべてのレーザープロセスの後に行われる。この第1の印刷プロセスに関して、第1のインクジェットヘッドは、少なくとも1つのノズルが、第1のレーザースクライブを埋める絶縁性インクの精密なラインを印刷するように構成され、基板表面を横断して移動する。このインクは、熱硬化性型からなるものとすることができ、その場合、成膜後ただちに熱が成膜された液体に対して局所的に印加され、絶縁性インクを硬化させて、第1のスクライブを埋める材料の絶縁性の固体のラインを形成する。代替的に、全てのレーザー及びインクジェットプロセスの後に、熱が基板全体に印加されて、絶縁性インクのラインを硬化させ、基板上の第1のスクライブの全てを埋める材料の絶縁性の固体のラインを形成することができる。この基板全体の硬化プロセスは、レーザースクライブ及びインク成膜プロセスを行う同一装置内に配置することができるが、実際にはこの硬化は別個の装置で実施する方がより可能性がある。
【0026】
絶縁性インクはまた、UV硬化型であることもできる。この場合、硬化はUVランプ又はその他の適切なUV光源によって実施され、その場合、UV放射は、成膜後ただちに成膜された液体に局所的に印加され、絶縁性インクを硬化して、第1のスクライブを埋める材料の絶縁性固体ラインを形成する。スクライブ内の絶縁層の深さは、連続的でありピンホールを有しない程度に、小さければ小さいほどよい。絶縁材料のラインの幅は、第1のスクライブの第1のセル側に露出される2つの下部層に完全に接触するようにされ、これらの層は、次いで適用される第2のインクジェット印刷プロセスにおける材料から保護される。第1のスクライブの両側への絶縁性インクのあふれはある程度許容され、望ましいものであってさえよいが、理想的には、水平方向のあふれの範囲は、第1のスクライブの幅よりも小さい値に保たれるべきである。
【0027】
第2のインクジェット印刷プロセスは、いくつかまたはすべてのレーザープロセスの後であって第1のインクジェット印刷プロセスの後に行われる。この第2のインクジェット印刷プロセスに関して、第2のインクジェットヘッドは基板の表面上を移動し、少なくとも1つのノズルは、第1のレーザースクライブの第1のセル側の上部電極材料と電気的に接触するのに十分広い導電性インクの幅広線を印刷するように構成され、第1のスクライブ内の絶縁性インク材料にまたがり、第2のスクライブに入って第2のセルの下部電極層材料と電気的に接触する。第1のスクライブ内の絶縁性インクは、導電性インクの適用の時に硬化されても硬化されなくてもよい。絶縁性インクが硬化されない場合、導電性インクの組成は、溶剤が未硬化の絶縁性インク材料に顕著に影響を与えまたは溶解させないようなものである。導電性インクは、熱硬化型のものであってもよく、この場合、全てのレーザー及びインクジェットプロセスの後に、熱を基板全体に印加して、導電性インクの幅広線を硬化し、材料の固体の導電幅広線を形成する。このように、導電性ブリッジが形成され、1つのセルの上部電極を隣のセルの下部電極層に接続する。導電層の深さは、堅牢であり、適切に低い電気抵抗を有する程度に、小さければ小さいほどよい。導電性材料のラインの幅は、第1のスクライブの第1のセル側の第1セル上部電極材料の領域と完全に接触し、第2のスクライブを完全に埋めるようにする。第1のスクライブの第1のセル側及び第2のスクライブの第2のセル側の導電性インクのあふれはある程度供され、望ましいものであってさえよいが、理想的にはあふれの水平方向の範囲は、スクライブ幅よりも小さい値に保たれるべきである。
【0028】
3つの離隔されたレーザースクライブが用いられるので、各スクライブについてレーザープロセスのパラメータを個々に最適化することができ、基板または下層の損傷の可能性を排除でき、層間の電気的短絡の形成の危険性を減少させ、破片の付着を最小化させる。
【0029】
個々のビーム供給ヘッドをプロセスヘッドに、空間的に離隔し、ヘッドの移動方向に対して垂直な(またはそれに対してある角度を有する)位置に取り付けることが可能であり、そのためインクジェットヘッドの位置は、プロセスが基板上のプロセスヘッドの一連の通過において基板に適用される順序を規定する。5つのプロセスの好適な順序は、以下の通りである。
a.全ての層を貫通し、基板表面まで到達する第1のレーザースクライブを行い、第1のセルの範囲を画定する。
b.第1のインクジェットプロセスを行い、第1のレーザースクライブ内に絶縁性インクを成膜する。
c.上部の2つの層を貫通し、下部電極層まで到達する第2のレーザースクライブプロセスを行う。
d.第2のインクジェットプロセスを行い、絶縁性インク上に導電性インクの幅広線を適用し、第1のセル側の上部電極から第2のセル側の下部電極まで導電性ブリッジを形成する。
e.上部電極層を貫通する第3のレーザースクライブプロセスを行い、第1及び第2のセルを分離し、第2のセルの範囲を画定する。上述のように、この第3のスクライブは、部分的にまたは完全に第2の層まで延長することも可能であるが、第1の層を貫通すべきではなく、このレーザー及びインクジェットプロセスの順序では、露出される直前まで積層体の下部層は、それ以前のプロセスから発生するレーザー蒸散の破片及び遊離したインク材料から保護された状態を保ち、セルの相互接続プロセス全体が非常に堅牢になる。
【0030】
例えば、第1のレーザープロセスによって形成された破片及び第1の印刷プロセスによって成膜された絶縁性インクのいくらかが、基板表面上に、第2のレーザープロセスが貫通スクライブして下部電極を露出させる領域に形成されうる。第2のレーザープロセスが、第1のインクジェット印刷プロセスまたは第1のレーザープロセスに先行する場合、どのような遊離した破片または絶縁性インクも第2のレーザースクライブ領域に入って、露出された下部電極層を汚染しうる。第1のレーザー及び第1のインクジェット印刷プロセスの両方の後まで第2のレーザープロセスをしないでおくということは、第2のレーザースクライブの領域の下部電極層が保護された状態を保ち、第2のレーザープロセスの間、その領域におけるどのような再付着破片も、どのような絶縁性インクも、レーザーが上部の2つの層を蒸散させる際に除去される。
【0031】
別の一例として、第2のレーザープロセスで発生した破片及び第2の印刷プロセスで成膜された導電性インクのいくらかが、第3のレーザープロセスが貫通スクライブして上部電極層を分離する領域において基板表面上に形成される可能性がある。第3のレーザープロセスが第2の印刷または第2または第1のレーザープロセスにさえ先行する場合には、どのような遊離した破片またはインクも、第3のレーザースクライブ領域内の第2のセルの上面上に付着し、スクライブ領域を横断する電気的接続となる可能性がある。第3のレーザースクライブプロセスを、第1及び第2のレーザープロセスの両方並びに第1及び第2の印刷プロセスの両方の後まで行わないでおくことは、この相互接続不良の原因が取り除かれることを意味する。
【0032】
いくつかのプロセスは、他のプロセスに先行する必要があり、
1)第1のレーザースクライブプロセスは、第1の印刷プロセスに常に先行しなければならない。
2)第1の印刷プロセスは、第2の印刷プロセスに常に先行しなければならない。
3)第2のレーザースクライブプロセスは、第2の印刷プロセスに常に先行しなければならない。
【0033】
これらのルールの範囲内で、いくつかの異なるプロセス順序が可能であるが、上述の1つが好適である。
【0034】
誘電体インクを硬化させるには2つの方法がある。熱またはUVである。導電性インクは、通常熱硬化される。仮に、両方のインクが熱硬化可能である場合及び適用されたときに未硬化の誘電体インクが導電性インクと混合しない場合、切断及び成膜段階の後に別個に、全体の硬化プロセスを行うことができる。この場合、プロセスヘッド上には硬化デバイスは不要である。しかしながら、多くの場合、導電性インクが成膜される前に、(熱またはUVにより)誘電体インクを硬化させることが望ましいであろう。この場合、プロセスヘッド上に、硬化デバイスが必要である。誘電体インクがUVで硬化される場合、導電性インクは、多くの場合不透明なので、導電性インクが適用される前に、これを硬化する必要がある可能性があるであろう。
【0035】
第1、第2及び第3の切断部を形成するのに用いられるレーザーは、一般的に、IRからUVの範囲で(すなわち、1080nmから340nmの波長で)動作するパルスQスイッチ型である。例えば250nmに至るようなより短い波長で動作するレーザーを用いることもまた可能である。もっとも単純な場合、単一のレーザーが、単一の集束レンズとともに用いられ、単一の相互接続構造に関連する3つの切断部の全てを形成する。そのため、この場合、単一のビームを3つの要素に分割して、基板表面上に3つの焦点を形成することが必要である。相互接続の切断分離部は、一般的に小さく(0.1から0.2mmの範囲内)、3本のビーム分割を行う好適な方法は、単一の集束レンズの前に位置する回折光学素子(DOE)または特殊な複平面プリズム素子を用いることである。そのようなデバイスは、レーザービームの部分に、小さな角度偏向を導入し、レンズの集束において、必要な値の焦点の分離を発生させる。そのようなデバイスは、個々のビームにおいて、相対的な出力が、好適なデバイスの設計によって設定されることも可能である。
【0036】
単一の相互接続構造に関する第1、第2及び第3のビームを発生させる他の好適な方法は、2つの異なるパルスレーザーと単一の集束レンズの使用を伴う。この場合、レーザーは、材料の下層に損傷を与えることなく上層の除去を最適化するにあたって、しばしば利点となる異なる波長を有することができる。2つのレーザーが用いられて単一の相互接続構造に必要な3つのビームを形成する場合、第1のレーザーがビームの2つを形成するために用いられ、第2のレーザーは第3のビームに用いられる。単一のレーザーだけが用いられてビームが3つの部分に分割される場合に関して上述したのと同じように、DOEまたは単純な複プリズムが用いられて第1のビームを2つの部分に分割する。第2のレーザーからのビームは、第1のレーザーから発生するビームと組み合わされて、全てのビームが単一の集束レンズを通過し、基板表面上に必要な間隔を有する3つのスポットを生成する。第1及び第2のレーザーの間の偏光または波長差を用いて一方のビームを透過し他方を反射する、特殊なミラーと組み合わせるビームは共通して用いられる。
【0037】
第1、第2及び第3のスクライブが離隔された相互接続部において実行される場合、離隔されたレンズが個々のスクライブに対して用いられてもよい。
【0038】
サーボモーターで駆動するステージが、プロセスヘッドに対して基板を移動させるために用いられる。動作時には、プロセスヘッドは静止し、パネルがそれぞれ基板を横切るセルの方向に平行な方向の一連の線形移動をし、その後直交する方向にステップ送りする2軸移動を行うことができる。その他のステージの構成も可能である。好適な構成は、1軸方向に移動する基板及び他の軸方向に移動するプロセスヘッドを有する。プロセスヘッドが直交する2軸方向に、静止する基板上を動く構成もまた可能である。
【0039】
本発明のその他の好適な、任意選択の特徴は、明細書の従属請求項から明らかになるであろう。
【0040】
本発明は、ここでは単に例示として、添付する図を参照して説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】出願人の先行する(公開されていない)出願に従う装置の一部の拡大概略平面図を示す。
図2図2Aから2Dは、図1に示された装置によって基板表面に供給されるレーザー及びインクジェットプロセスの好適な順序を示す。
図3図1のプロセスヘッドに対して2方向に基板を移動させるための装置を示す。
図4図1に示される装置のさらに改良された形態の拡大概略平面図を示す。
図5図1に示された装置の改良された形態の拡大概略平面図を示す。
図6】本発明に従う装置の第1の実施形態の拡大概略平面図を示す。
図7】本発明に従う装置の第2の実施形態の拡大概略平面図を示す。
図8】本発明に従う装置の第3の実施形態の拡大概略平面図を示す。
図9】本発明に従う装置の第4の実施形態の拡大概略平面図を示す。
図10】本発明に従う装置の第5の実施形態の拡大概略平面図を示す。
図11】本発明に従う装置の第6の実施形態の拡大概略平面図を示す。
図12図4から11に示されるようなプロセスヘッドに対して2方向へ基板を移動させる装置を示す。
図13】単一または複数のレーザー、インクジェットヘッド及び関連する移動システムの動作を制御する装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
単純化のために、図は、レーザー蒸散型である場合の層切断プロセスを示している。しかしながら、上述のように、全てのまたはいくつかのこれらのレーザー切断プロセスは、機械的スクライブプロセスまたはその他の切断プロセスに置き換えられてもよい。
【0043】
図1:これは、上で示したように先行する(公開されていない)出願において提案された基本的なプロセスヘッドの詳細を示している。ソーラーパネル1は、それを横断してX方向に移動するプロセスヘッド2によってY方向に沿った複数のセルに分割される。プロセスヘッドの拡大図は、ソーラーパネル上の薄膜層を貫通して、溝6、7及び8をそれぞれスクライブする3つのレーザービーム3、4及び5を示している。ノズル9は、スクライブ6に液体絶縁性インク10を適用する。このインクは、硬化する必要があり、これは、熱またはUV活性化のいずれかによって行われる。デバイス11は、IRランプ、IRダイオードレーザーまたはその他のIRレーザーデバイスのような局所加熱源またはUVランプ、UVレーザーダイオードまたはパネル表面にUV放射を供給する導光部のような局所UV源を表す。ノズル12は、導電性インク13を適用して、レーザースクライブ6を埋める絶縁性インク10上に架橋し、レーザースクライブ7に入る。全てのレーザービーム及び両ノズルは、共にパネルを横断してX方向に移動し、単一の通過で単一の相互接続構造を完成させる。パネルを横切ってヘッドが通過した後には、パネル(またはヘッド)は、セル幅だけY方向にステップ送りされて、隣接する相互接続部を加工する。絶縁性インク10は、レーザー溝6が形成されるまで適用することができず、導電性インク13は絶縁性インクが適用され、硬化されるまで適用することができないので、既にみられるように、示されるヘッドの構成では、一方向にしか動作することができない。
【0044】
図2:これは、構造が図1に示されるヘッドの配置の型による、パネル表面に形成される順序を示している。基板14は、図2Aに示されるように、表面に適用された3層の積層体15を有している。単純には、これらの層は下部電極層、活性層及び上部電極である。3つのレーザービーム3、4及び5がパネルを横切って通過することにより、図2Bに示されるように3つのスクライブ6、7及び8が形成され、ここで、スクライブ6は全ての層を貫通して基板表面まで到達し、スクライブ7は上の2つの層を貫通して下部電極層までしか到達せず、スクライブ8は少なくとも上部電極層を貫通するが、スクライブ7のように中央の層も貫通してもよい。図2Cは、第1インクジェットノズル9がどのように絶縁性インク10を適用してスクライブ6を埋めるかを示し、その一方図2Dは、導電性インク13が、第2インクジェットノズル12によってどのように適用されて絶縁性インク上に架橋しつつスクライブ7に入り、スクライブ6の左側のセルの上部電極層からスクライブ6の右側のセルにおけるスクライブ7の底部の下部電極層へ電気的接続を形成するかを示している。
【0045】
図3:これは、上述のプロセスヘッドをソーラーパネルに対して移動させる1つのありうる構成を示している。パネル1は、サーボモーター18によって駆動されるリニアステージ17によってY方向に、サーボモーター18’によって駆動されるリニアステージ17’によってX方向に移動するプロセスチャック16上に支持されている。レーザー19からのビームは、鏡20及び20’によってプロセスヘッド2まで導かれ、ここで、ビームが3つの部分に分割されて3つのスクライブ6、7及び8を形成する。プロセスヘッド2はまた、2つのインクジェットノズルを含む。5つの構成要素の全ては、X方向に沿った列21に配置され、パネルが、プロセスヘッド下でX方向に移動される間に単一のセル相互接続構造22を加工する。各セル相互接続部に関して、スクライブ及びインク適用の順序が正しくなるように、パネルは、プロセスヘッド下を同一方向に動かなければならない。そのため、Y方向のパネルのステップ送りのそれぞれにおいて、パネルは、X方向の同一の開始点まで戻らなければならない。
【0046】
図4:これは、いくつかの相互接続部が同時に、上述のプロセスヘッド2の改良された形態のパネル1上の単一の通過において、どのように形成されることができるかを示している。これは、3の型の複数の(示された例では5つの)レーザービームを供給して6の型の複数のスクライブを形成するフレーム23を用いることによって達成され、ここで、フレーム23の角度は、レーザービーム3間のY方向の距離がセルの間隔(またはセルの間隔の倍数)に正確に等しくなるように調整される。
【0047】
フレーム24は、4の型の複数のレーザービームを運び、7の型の複数のスクライブを形成する一方で、フレーム25は5の型の複数のレーザービームを運び、8の型のスクライブを形成する。フレーム26は、複数の絶縁性インク分注ノズル9を運び、フレーム27は複数のインク硬化デバイス11を運び、フレーム28は複数の導電性インク分注ノズル12を運ぶ。
【0048】
それぞれのフレーム23、24、25の相対的な位置は、Y方向に設定され、フレームは全てパネル表面に対して垂直な軸に関して回転され、3つのレーザー溝6、7及び8並びにインクの筋10及び13の全てが各相互接続部に関して正しく位置するようにされる。そのため、パネルを横断してプロセスヘッドが通過した後は、複数の(この例では5つの)完全なセル相互接続部が形成される。次いで、基板はY方向に、セル幅の必要な倍数だけステップ送りされ、さらに相互接続部を形成することができる。ヘッド上の構成要素の配置のために、加工はプロセスヘッドの動く方向がパネルに対して1つの方向であるときのみ可能であることがわかる。
【0049】
図5:これは、図1に示されたプロセスヘッドのさらなる改良版を示しており、単一の相互接続部の2方向加工を可能としている。この場合、追加的なノズル及びインク硬化デバイスが、図に示されるように必要である。絶縁性インク分注ノズル9、インク硬化デバイス11及び導電性インク分注ノズル12は、プロセスヘッドが静止し、パネルが図の上方に向かって移動するときに機能し、その一方絶縁性インク分注ノズル9’、インク硬化デバイス11’及び導電性インク分注ノズル12’は、プロセスヘッドが静止し、パネルが図の下方に向かって移動するときにのみ機能する。このような配置は、常にインクジェットノズル及び硬化デバイスの半分しか使用されないため、複雑であり、非効率である。
【0050】
図6:これは、本発明の第1の実施形態に従うプロセスヘッドを示している。フレーム29はここでは、離隔して配置された3つのレーザーヘッド3、4及び5、2つのインクジェットノズル9及び12並びにインク硬化デバイス11を運び、各構成要素は、離隔された相互接続構造に位置する。
【0051】
6つの離隔された構成要素は、フレーム29上に、セルの幅と等しい間隔で、様々なレーザー及びインク充填(及び硬化)プロセスが実施されるべき順序によって与えられる順に配置されている。パネル1は、X方向に移動し、ヘッド2がパネルの幅全体をカバーし、いずれかのX方向について各X方向の通過の後、パネル1はY方向に(図の右方向に)、1つのセルの幅だけステップ送りされる。この方法によって、各相互接続部の箇所は、ヘッド2の各構成要素によって順に加工される。図において、ヘッドはパネルを横切ってX方向へ移動するので、レーザーヘッド3は、加工がまだされていないパネルの領域に位置し、3つの層全てを貫通スクライブし、相互接続部30内の溝6を形成する。同時に、レーザーヘッド4は、上部2つの層を貫通スクライブして、レーザーヘッド3によって既に加工されている相互接続31内の溝7を形成し、レーザーヘッド5は上部層を貫通スクライブして、レーザーヘッド3及び4によって既に加工されている相互接続32内に溝8を形成し、インク分注ノズル9は、レーザーヘッド1によって相互接続部33に既に形成されている溝6内に絶縁性インクを成膜し、インク硬化デバイス11は、それ以前にノズル9によって成膜された相互接続部34に関する絶縁性インクを硬化させ、最後に、インク分注ノズル12が、相互接続部35上に導電性インクを成膜して、それ以前に成膜された絶縁性インク上を架橋し、レーザーヘッド4によってそれ以前にスクライブされたレーザー溝7に入る。
【0052】
このようにして、パネルがY方向に1つのセル幅だけ6回ステップ送りされた後に、相互接続部形成サイクルが完了し、間に相互接続部を有する個別のセルが形成される。
【0053】
図7図6に示された構成において、ノズル9によって適用される絶縁性インクの硬化は、すぐには起こらず、パネルがY方向に1回ステップ送りされるまで待たなければならない。この時間の遅延は、1秒以上に達する可能性があり、横方向への広がりを防ぎまたは制限するために急速硬化を必要とするような特定のインクに対しては長すぎる可能性がある。図7は、ノズル9によって適用された絶縁性インクを溝6内に分注された後ただちに硬化するのに必要である場合に用いられるプロセスヘッド上の構成要素の代替的な配置を示している。
【0054】
この場合、ヘッドのノズル9に隣接して2つの硬化デバイス11及び11’を配置することが必要である。パネルが図の上方へ向かってY方向に移動する際に、硬化デバイス11が、ノズル9によって載せられた絶縁性インクを硬化する。パネルがYの反対方向へ移動する際に、硬化デバイス11’がノズル9によって載せられた絶縁性インクを硬化する。
【0055】
図8:これは、プロセスヘッドのフレーム上の構成要素が異なる順序で並んでいることを除いて、図7に示される構成と類似している。相互接続部形成プロセスについて必須であるプロセス順の条件は限られた数しかないため、ヘッド上の構成要素の順序は多数が可能である。
1)溝6をスクライブするレーザーヘッド3は、絶縁性インク分注ノズル9に先行しなければならない。
2)絶縁性インク分注ノズル9は、導電性インク分注ノズル12に先行しなければならない。
3)溝7をスクライブするレーザーヘッド4は、導電性インク分注ノズル12に先行しなければならない。
【0056】
絶縁性インクの硬化が、導電性インクの成膜に先立って必要な場合には、硬化デバイス11はまた、絶縁性インク分注ノズル9の後でなければならない。
【0057】
上述の3つの条件に合致するヘッドの構成要素のどの順序も可能である。図8に示された構成において、各相互接続部は、パネルがY方向にステップ送りする際に下記のプロセス順序を経る。
1)レーザーヘッド3が、3層全てを貫通して溝6をスクライブする。
2)絶縁性インクが、インクノズル9によって溝6内に成膜され、硬化デバイス11又は11’によってただちに硬化される。
3)レーザーヘッド4が、上部2つの層を貫通して溝7をスクライブする。
4)導電性インクが、インクノズル12によって絶縁性インク上及び溝7内に分注される。
5)レーザーヘッド5が、上部層を貫通して溝8をスクライブする。
【0058】
図9:インク分注ノズルが大きく、単一のセル間隔に設定することが困難である場合、間隔の倍数に設定された代替的な配置が、図9に示されるように可能である。この配置において、レーザーヘッド3、4及び5は、隣接する相互接続部30、31及び32に位置するが、ノズル9、硬化デバイス11及びノズル12は、2つのセル幅によって離隔された相互接続部33、34および35に位置する。
【0059】
その他の構成要素の間隔も、構成要素間の間隔がセル幅の倍数である長さとすることが可能である。
【0060】
図10:いくつかの場合において、単一の入力ビームを単一のレンズの焦点面において3つの焦点に分割する回折光学素子(DOE)によって3つのレーザービーム3、4及び5を発生させることが便利でありうる。この場合、図10に示されるように、単一の相互接続部上に3つのビーム全てが位置するのが便利である。この場合、レーザービーム3、4及び5は全て、相互接続部30上で動作し、その一方絶縁性インク分注ノズル9、インク硬化デバイス11及び導電性インク分注デバイス12は、それぞれ離隔した相互接続部32、33および34上で動作する。
【0061】
図11:2つのレーザービームのみが同一の相互接続部上で動作し、第3のビームが離隔された部分で動作するその他の類似の配置が、図11に示されるように可能である。
【0062】
図12:これは、ソーラーパネルに関して、図6から11に記載されたプロセスヘッドを移動させるための1つのありうる構成を示している。パネル1は、サーボモーター18によって駆動されるリニアステージ17によってY方向に、サーボモーター18’によって駆動されるリニアステージ17’によってX方向に移動するプロセスチャック16上に支持される。レーザー19からのビームは、鏡20、20’によってプロセスヘッド2へ導かれ、そこで3つの部分に分割されて3つのスクライブ6、7及び8を形成する。プロセスヘッド2はまた、2つのインクジェットノズル及び1つの硬化デバイスも含んでいる。6つの構成要素全ては、Y方向に沿った列21に配置され、プロセスヘッド下をX方向に、図の右の方向へ向かってY方向にパネルによって6セル幅のステップ送りで6回通過を完了すると、セルの相互接続構造22を形成する全てのプロセスが完了する。
【0063】
図13:これは、図12に示された構成を制御する典型的な方法を示している。パネル1は、プロセスチャック16上に支持されており、プロセスヘッド2の下を主制御ユニット36によって制御されたサーボモーター18、18’によって駆動されるリニアステージ17、17’によって移動する。レーザーユニット19もまた、分注ノズル制御ユニット37及び38並びに硬化デバイス制御ユニット39と同様に、主制御部36によって制御される。
【符号の説明】
【0064】
1 ソーラーパネル
2 プロセスヘッド
3 レーザービーム
6、7、8 スクライブ
9、9’ 絶縁性インク分注ノズル
10 絶縁性インク
11、11’ 硬化デバイス
12、12’ 導電性インク分注ノズル
13 導電性インク
14 基板
15 積層体
16 プロセスチャック
17、17’ リニアステージ
18、18’ サーボモーター
19 レーザー
20、20’ 鏡
22 相互接続構造
23、24、25、26、27、28、29 フレーム
30、31、32、33、34、35 相互接続部
36 主制御ユニット
37、38 分注ノズル制御ユニット
39 硬化デバイス制御ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13