特許第5988989号(P5988989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5988989ガスバリアフィルム及びその製造方法、ガスバリアフィルム積層体、電子デバイス用部材、並びに電子デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5988989
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】ガスバリアフィルム及びその製造方法、ガスバリアフィルム積層体、電子デバイス用部材、並びに電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20160825BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20160825BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20160825BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20160825BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20160825BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20160825BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20160825BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20160825BHJP
   C08F 2/00 20060101ALI20160825BHJP
   C08F 283/02 20060101ALI20160825BHJP
   C08F 283/00 20060101ALI20160825BHJP
   C08F 255/00 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   B32B27/00 B
   B32B27/00 101
   B32B9/00 A
   H05B33/14 A
   H05B33/14 Z
   H05B33/04
   C08K5/103
   C08L101/00
   C08F2/44 C
   C08F2/00 C
   C08F283/02
   C08F283/00
   C08F255/00
【請求項の数】17
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2013-541855(P2013-541855)
(86)(22)【出願日】2012年11月2日
(86)【国際出願番号】JP2012078439
(87)【国際公開番号】WO2013065812
(87)【国際公開日】20130510
【審査請求日】2015年9月2日
(31)【優先権主張番号】特願2011-241941(P2011-241941)
(32)【優先日】2011年11月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108419
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 治仁
(72)【発明者】
【氏名】岩屋 渉
(72)【発明者】
【氏名】藤本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】田矢 直紀
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅春
(72)【発明者】
【氏名】近藤 健
【審査官】 原田 隆興
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−077321(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/122497(WO,A1)
【文献】 特開2007−290369(JP,A)
【文献】 特開2000−227603(JP,A)
【文献】 特開2004−244606(JP,A)
【文献】 特開2005−262529(JP,A)
【文献】 特開2005−126665(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/107018(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C08F 2/00− 2/60
C08L 101/00
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化樹脂層と、該硬化樹脂層の少なくとも片面にガスバリア層を有するガスバリアフィルムであって、
前記硬化樹脂層が、ガラス転移温度(Tg)が140℃以上の熱可塑性樹脂(A)、及び硬化性単量体(B)を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層であり、
前記硬化樹脂層の厚みが、3〜100μmであり、
前記ガスバリア層が、厚みが30〜500nmである無機蒸着膜からなるガスバリア層又は厚みが30〜500nmである高分子化合物を含む層にイオンを注入して得られるガスバリア層であり、
ガスバリアフィルムの水蒸気透過率が、40℃、相対湿度90%雰囲気下で1g/m/day以下であるガスバリアフィルム。
【請求項2】
熱可塑性樹脂(A)が、重量平均分子量(Mw)が100,000〜3,000,000である非晶性熱可塑性樹脂である、請求項1に記載のガスバリアフィルム。
【請求項3】
熱可塑性樹脂(A)が芳香族環構造又は脂環式構造を有するものである、請求項に記載のガスバリアフィルム。
【請求項4】
熱可塑性樹脂(A)が、ポリスルホン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及び脂環式炭化水素系樹脂からなる群から選択される熱可塑性樹脂である、請求項に記載のガスバリアフィルム。
【請求項5】
硬化性単量体(B)の少なくとも一種が、下記式
【化1】
(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rは、ビスフェノール骨格を有する2価の有機基、又は、9,9−ビスフェニルフルオレン骨格を有する2価の有機基を表す。)で示される化合物である、請求項1に記載のガスバリアフィルム。
【請求項6】
前記硬化性樹脂組成物中の、熱可塑性樹脂(A)と硬化性単量体(B)の含有量が、熱可塑性樹脂(A)と硬化性単量体(B)の質量比で、熱可塑性樹脂(A):硬化性単量体(B)=35:65〜80:20である、請求項1に記載のガスバリアフィルム。
【請求項7】
前記硬化樹脂層がゲル分率が90%以上の層である、請求項1に記載のガスバリアフィルム。
【請求項8】
前記ガスバリア層が、厚みが30〜500nmであるケイ素含有高分子化合物を含む層に、イオンが注入されて形成された層である、請求項1に記載のガスバリアフィルム。
【請求項9】
前記ケイ素含有高分子化合物がポリシラザンである、請求項8に記載のガスバリアフィルム。
【請求項10】
前記ガスバリア層が、厚みが30〜500nmである無機蒸着膜からなる層である、請求項1に記載のガスバリアフィルム。
【請求項11】
工程シートを有するものである、請求項1に記載のガスバリアフィルム。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のガスバリアフィルムの製造方法であって、以下の工程1〜3を有するガスバリアフィルムの製造方法。
工程1:工程シート上に、ガラス転移温度(Tg)が140℃以上の熱可塑性樹脂(A)、及び硬化性単量体(B)を含有する硬化性樹脂組成物からなる硬化性樹脂層を形成する工程
工程2:工程1で得られた硬化性樹脂層を硬化させて、硬化樹脂層を形成する工程
工程3:工程2で得られた硬化樹脂層上に、ガスバリア層を形成する工程
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載のガスバリアフィルムが、接合層を介して2枚以上積層されてなるガスバリアフィルム積層体。
【請求項14】
前記2枚以上のガスバリアフィルムの硬化樹脂層の厚みが、いずれも、5〜20μmである、請求項13に記載のガスバリアフィルム積層体。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれかに記載のガスバリアフィルムからなる電子デバイス用部材。
【請求項16】
請求項13又は14に記載のガスバリアフィルム積層体からなる電子デバイス用部材。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の電子デバイス用部材を備える電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイやエレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等の電子デバイス用部材等として好ましく用いられるガスバリアフィルム、その製造方法、前記ガスバリアフィルムを2枚以上積層してなるガスバリアフィルム積層体、前記ガスバリアフィルム又はガスバリアフィルム積層体からなる電子デバイス用部材、並びに、この電子デバイス用部材を備える電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイやエレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等のディスプレイには、薄型化、軽量化、フレキシブル化等を実現するために、ガラス板に代えて透明プラスチックフィルムを用いることが検討されている。
しかしながら、一般にプラスチックフィルムは、ガラス板に比べて水蒸気や酸素等を透過させるため、透明プラスチックフィルムをディスプレイの基板として使用すると、ディスプレイ内部の素子が劣化し易いという問題があった。
この問題を解決するため、水蒸気や酸素の透過を抑制する特性を有するフィルム(以下、この特性を「ガスバリア性」といい、ガスバリア性を有するフィルムを「ガスバリアフィルム」という。)をディスプレイの基板として用いることが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、透明プラスチックフィルム表面に、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッター法等により、金属酸化物からなる透明ガスバリア層を積層したフレキシブルディスプレイ基板が記載されている。
また、特許文献2には、基材の少なくとも片面に、ポリシラザン膜にプラズマ処理を施して形成されたガスバリア層を有するガスバリアフィルムが記載されている。
【0004】
近年においては、より高性能なディスプレイ等が求められており、電子デバイス用部材等として用いられるガスバリアフィルムにも、優れたガスバリア性に加えて、耐熱性、耐溶剤性、層間密着性に優れ、複屈折率が低く光学等方性に優れること等、様々な特性に優れることが要求されるようになってきている。
しかしながら、従来のガスバリアフィルムは、これらの全ての特性に優れるものではなかった。
従って、これらの全ての特性に優れるガスバリアフィルムやガスバリアフィルム積層体が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−338901号公報
【特許文献2】特開2007−237588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたものであって、耐熱性、耐溶剤性、層間密着性、及びガスバリア性に優れ、複屈折率が低く光学等方性に優れるガスバリアフィルム、その製造方法、前記ガスバリアフィルムが2枚以上積層してなるガスバリアフィルム積層体、前記ガスバリアフィルム又はガスバリアフィルム積層体からなる電子デバイス用部材、並びにこの電子デバイス用部材を備える電子デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、ガスバリア層を有するガスバリアフィルムについて鋭意検討した結果、特定の組成を有する硬化性樹脂組成物の硬化物からなる硬化樹脂層を用い、該硬化樹脂層の少なくとも片面にガスバリア層が形成されたガスバリアフィルムは、耐熱性、耐溶剤性、層間密着性、及びガスバリア性のすべてに優れ、しかも、複屈折率が低く光学等方性に優れるガスバリアフィルムとなることを見出した。
また、このガスバリアフィルムは、溶液キャスト法を利用して、工程シート上で硬化性樹脂組成物からなる硬化性樹脂層を形成し、次いで、該硬化性樹脂層を硬化させて硬化樹脂層を形成した後、さらに、得られた硬化樹脂層上にガスバリア層を形成することで、効率よく得られることを見出した。
さらに、このガスバリアフィルムを、接合層を介して2枚以上積層することで、高いガスバリア性を有し、耐熱性、耐溶剤性、層間密着性及び複屈折率が低く光学等方性にも優れるガスバリアフィルム積層体を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして本発明の第1によれば、下記(1)〜(11)のガスバリアフィルムが提供される。
(1)硬化樹脂層と、該硬化樹脂層の少なくとも片面にガスバリア層を有するガスバリアフィルムであって、
前記硬化樹脂層が、ガラス転移温度(Tg)が140℃以上の熱可塑性樹脂(A)、及び硬化性単量体(B)を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層であり、
ガスバリアフィルムの水蒸気透過率が、40℃、相対湿度90%雰囲気下で1g/m/day以下であるガスバリアフィルム。
(2)熱可塑性樹脂(A)が非晶性熱可塑性樹脂である、(1)に記載のガスバリアフィルム。
(3)熱可塑性樹脂(A)が芳香族環構造又は脂環式構造を有するものである、(1)に記載のガスバリアフィルム。
(4)熱可塑性樹脂(A)が、ポリスルホン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及び脂環式炭化水素系樹脂からなる群から選択される熱可塑性樹脂である、(1)に記載のガスバリアフィルム。
【0009】
(5)硬化性単量体(B)の少なくとも一種が、多官能(メタ)アクリル酸誘導体である、(1)に記載のガスバリアフィルム。
(6)前記硬化性樹脂組成物中の、熱可塑性樹脂(A)と硬化性単量体(B)の含有量が、熱可塑性樹脂(A)と硬化性単量体(B)の質量比で、熱可塑性樹脂(A):硬化性単量体(B)=30:70〜90:10である、(1)に記載のガスバリアフィルム。
(7)前記硬化樹脂層がゲル分率が90%以上の層である、(1)に記載のガスバリアフィルム。
【0010】
(8)前記ガスバリア層が、ケイ素含有高分子化合物を含む層に、イオンが注入されて形成された層である、(1)に記載のガスバリアフィルム。
(9)前記ケイ素含有高分子化合物がポリシラザンである、(8)に記載のガスバリアフィルム。
(10)前記ガスバリア層が無機膜からなる層である、(1)に記載のガスバリアフィルム。
(11)工程シートを有するものである、(1)に記載のガスバリアフィルム。
【0011】
本発明の第2によれば、下記(12)のガスバリアフィルムの製造方法が提供される。
(12)前記(1)〜(11)のいずれかに記載のガスバリアフィルムの製造方法であって、以下の工程1〜3を有するガスバリアフィルムの製造方法。
工程1:工程シート上に、ガラス転移温度(Tg)が140℃以上の熱可塑性樹脂(A)、及び硬化性単量体(B)を含有する硬化性樹脂組成物からなる硬化性樹脂層を形成する工程
工程2:工程1で得られた硬化性樹脂層を硬化させて、硬化樹脂層を形成する工程
工程3:工程2で得られた硬化樹脂層上に、ガスバリア層を形成する工程
【0012】
本発明の第3によれば、下記(13)又は(14)のガスバリアフィルム積層体が提供される。
(13)前記(1)〜(11)のいずれかに記載のガスバリアフィルムが、接合層を介して2枚以上積層されてなるガスバリアフィルム積層体。
(14)前記2枚以上のガスバリアフィルムの硬化樹脂層の厚みが、いずれも、0.5〜10μmである、(13)に記載のガスバリアフィルム積層体。
【0013】
本発明の第4によれば、下記(15)又は(16)の電子デバイス用部材が提供される。
(15)前記(1)〜(11)のいずれかに記載のガスバリアフィルムからなる電子デバイス用部材。
(16)前記(13)又は(14)に記載のガスバリアフィルム積層体からなる電子デバイス用部材。
本発明の第5によれば、下記(17)の電子デバイスが提供される。
(17)前記(15)又は(16)に記載の電子デバイス用部材を備える電子デバイス。
【発明の効果】
【0014】
本発明のガスバリアフィルムは、耐熱性、耐溶剤性、層間密着性及びガスバリア性のすべてに優れ、かつ、複屈折率が低く光学等方性に優れるガスバリアフィルムである。本発明のガスバリアフィルムは、太陽電池、タッチパネル、電子ペーパー、ディスプレイ等の電子デバイス用部材として好適に用いることができる。
本発明のガスバリアフィルムの製造方法によれば、本発明のガスバリアフィルムを効率よく製造することができる。本発明の製造方法は、特に、厚みが非常に薄いガスバリアフィルムを製造する場合に好適である。
本発明のガスバリアフィルム積層体は、高いガスバリア性を有し、耐熱性、耐溶剤性、層間密着性及び複屈折率が低く光学等方性にも優れるものである。
本発明の電子デバイス用部材は、耐熱性、耐溶剤性、層間密着性及びガスバリア性のすべてに優れ、かつ、複屈折率が低く光学等方性に優れるガスバリアフィルム又はガスバリアフィルム積層体からなるものであるため、タッチパネル、電子ペーパー、有機・無機ELのフレキシブルディスプレイ、太陽電池等の電子デバイス等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のガスバリアフィルムの層構成断面図である。
図2】本発明のガスバリアフィルム積層体の層構成断面図である。
図3】本発明のガスバリアフィルム積層体の層構成断面図である。
図4】本発明のガスバリアフィルム積層体の層構成断面図である。
図5】本発明のガスバリアフィルム積層体の層構成断面図である。
図6】本発明のガスバリアフィルム積層体を製造する工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を、1)ガスバリアフィルム、2)ガスバリアフィルムの製造方法、3)ガスバリアフィルム積層体、並びに、4)電子デバイス用部材及び電子デバイス、に項分けして詳細に説明する。
【0017】
1)ガスバリアフィルム
本発明のガスバリアフィルムは、硬化樹脂層と、該硬化樹脂層の少なくとも片面にガスバリア層を有するガスバリアフィルムであって、前記硬化樹脂層が、ガラス転移温度(Tg)が140℃以上の熱可塑性樹脂(A)、硬化性単量体(B)を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層であり、かつ、ガスバリアフィルムの水蒸気透過率が、40℃、相対湿度90%雰囲気下で1g/m/day以下のものである。
【0018】
(I)硬化樹脂層
本発明のガスバリアフィルムの硬化樹脂層は、ガラス転移温度(Tg)が140℃以上の熱可塑性樹脂(A)、及び硬化性単量体(B)を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。硬化樹脂層は単層であってもよく、複数層積層されていてもよい。
【0019】
〔熱可塑性樹脂(A)〕
本発明に用いる熱可塑性樹脂(A)は、ガラス転移温度(Tg)が140℃以上、好ましくは150℃以上の熱可塑性樹脂である。ガラス転移温度(Tg)が140℃以上の熱可塑性樹脂を用いることで、耐熱性に優れるガスバリアフィルムを得ることができる。
ここでガラス転移温度(Tg)は、粘弾性測定(周波数11Hz、昇温速度3℃/分で0〜250℃の範囲で引張モードによる測定)により得られたtanδ(損失弾性率/貯蔵弾性率)の最大点の温度をいう。
【0020】
熱可塑性樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、通常、100,000〜3,000,000、好ましくは200,000〜2,000,000、より好ましくは500,000〜2,000,000の範囲である。また、分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは、1.0〜5.0、より好ましくは、2.0〜4.5の範囲である。重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
【0021】
熱可塑性樹脂(A)としては、非晶性熱可塑性樹脂が好ましい。非晶性熱可塑性樹脂を用いることで、透明性に優れるガスバリアフィルムが得られ易くなる。また、非晶性熱可塑性樹脂は有機溶剤に溶け易いため、後述するように、溶液キャスト法を利用して、効率よく硬化樹脂層を形成することができる。
ここで、非晶性熱可塑性樹脂とは、示差走査熱量測定において、融点が観測されない熱可塑性樹脂をいう。
【0022】
また熱可塑性樹脂(A)としては、耐熱性の観点から、芳香族環構造又は脂環式構造等の環構造を有する熱可塑性樹脂が好ましく、芳香族環構造を有する熱可塑性樹脂がより好ましい。
【0023】
熱可塑性樹脂(A)の具体例としては、ポリスルホン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及び脂環式炭化水素系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性の観点から、ポリスルホン系樹脂が好ましい。
【0024】
ポリスルホン系樹脂は、主鎖中に、スルホン基(−SO−)を有する高分子である。ポリスルホン系樹脂としては、特に限定されず、公知のものが使用できる。ポリスルホン系樹脂は、例えば、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニルスルホン樹脂等が挙げられる。また、本発明に用いるポリスルホン系樹脂は、変性ポリスルホン系樹脂であってもよい。ポリスルホン系樹脂は、具体的には、下記の(a)〜(h)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物からなる樹脂が挙げられる。
【0025】
【化1】
【0026】
【化2】
【0027】
これらの中でも、ポリスルホン系樹脂としては、ポリエーテルスルホン樹脂又はポリスルホン樹脂が好ましい。
【0028】
ポリアリレート系樹脂は、芳香族ジオールと芳香族ジカルボン酸又はそのクロライドとの反応により得られる高分子化合物からなる樹脂である。ポリアリレート系樹脂としては、特に限定されず、公知のものが使用できる。
【0029】
芳香族ジオールとしては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン〔ビスフェノールF〕、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、2,2−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)オクタン等のビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類;1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン〔ビスフェノールZ〕、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(2,6−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(2,3,6−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−フルオロフェニルメタン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−4−フルオロフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−クロロフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−ブロモフェニルメタン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−4−フルオロフェニルメタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン〔ビスフェノールP〕、1,1−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(3’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(3’−フェニル−4’−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1−(4’−ニトロフェニル)エタン、1,1−ビス(3’−ブロモ−4’−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジベンジルメタン等のビス(ヒドロキシフェニル)フェニルアルカン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル等のビス(ヒドロキシフェニル)エーテル類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ケトン等のビス(ヒドロキシフェニル)ケトン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド等のビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド等のビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン〔ビスフェノールS〕、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン等のビス(ヒドロキシフェニル)スルホン類;9,9−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類;等が挙げられる。
【0030】
芳香族ジカルボン酸又はそのクロライドとしては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、
テレフタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、
ジフェニルエーテル4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン
酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、及びそれらの
クロライド等が挙げられる。また、用いるポリアリレート系樹脂は、変性ポリアリレート系樹脂であってもよい。これらの中でも、ポリアリレート系樹脂としては、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパンとイソフタル酸との反応により得られる高分子化合物からなる樹脂が好ましい。
【0031】
ポリカーボネート系樹脂は、主鎖中にカーボネート基(−O−C(=O)−O−)を有する高分子である。ポリカーボネート系樹脂としては、特に限定されず、公知のものが使用できる。ポリカーボネート系樹脂としては、芳香族ポリカーボネート樹脂や脂肪族ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。なかでも、耐熱性、機械的強度、透明性等に優れることから、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
芳香族ポリカーボネート樹脂としては、芳香族ジオールとカーボネート前駆体とを界面重縮合法や溶融エステル交換法で反応させる方法や、カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法により重合させる方法や、環状カーボネート化合物の開環重合法により重合させる方法によって得ることができる。
【0032】
芳香族ジオールとしては、ポリアリレート系樹脂の中で例示したものが挙げられる。
カーボネート前駆体としては、例えば、カルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が挙げられ、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0033】
脂環式炭化水素系樹脂は、主鎖中に環状の炭化水素基を有する高分子である。脂環式炭化水素系樹脂としては、特に限定されず、公知のものが使用できる。脂環式炭化水素系樹脂としては、例えば、単環の環状オレフィン系重合体、ノルボルネン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物が挙げられる。その具体例としては、アペル(三井化学社製のエチレン−シクロオレフィン共重合体)、アートン(JSR社製のノルボルネン系重合体)、ゼオノア(日本ゼオン社製のノルボルネン系重合体)等が挙げられる。
熱可塑性樹脂(A)は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
〔硬化性単量体(B)〕
硬化性単量体(B)は、重合性不飽和結合を有する単量体であって、重合反応、又は、重合反応及び架橋反応に関与し得る単量体である。なお、本明細書において、「硬化」とは、この「単量体の重合反応」、又は、「単量体の重合反応及び引き続く重合体の架橋反応」を含めた広い概念を意味する。硬化性単量体(B)を用いることで、耐溶剤性に優れるガスバリアフィルムを得ることができる。
【0035】
硬化性単量体(B)の分子量は、通常、3000以下、好ましくは200〜2000、より好ましくは200〜1000である。
硬化性単量体(B)中の重合性不飽和結合の数は特に制限されない。硬化性単量体(B)は、重合性不飽和結合を1つ有する単官能型の単量体であっても、複数有する2官能型や3官能型等の多官能型の単量体であってもよい。
【0036】
前記単官能型の単量体としては、単官能の(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。
単官能の(メタ)アクリル酸誘導体としては、特に限定されず、公知の化合物を用いることができる。例えば、窒素原子を有する単官能の(メタ)アクリル酸誘導体、脂環式構造を有する単官能の(メタ)アクリル酸誘導体、ポリエーテル構造を有する単官能の(メタ)アクリル酸誘導体等が挙げられる。
【0037】
窒素原子を有する単官能の(メタ)アクリル酸誘導体としては、下記式で示される化合物が挙げられる。
【0038】
【化3】
【0039】
式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜12の有機基を表し、RとRは、結合して環構造を形成してもよく、Rは、2価の有機基を表す。
で表される炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、メチル基が好ましい。
及びRで表される炭素数1〜12の有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素数1〜12のアルキル基;シクロペンチル基、シクロへキシル基等の、炭素数3〜12のシクロアルキル基;フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等の、炭素数6〜12の芳香族基;が挙げられる。これらの基は、任意の位置に置換基を有していてもよい。また、RとRが一緒になって環を形成してもよく、該環は、骨格中にさらに窒素原子や酸素原子を有していてもよい。
で表される2価の有機基としては、−(CH−、−NH−(CH−で表される基が挙げられる。ここで、mは、1〜10の整数である。
【0040】
これらの中でも、窒素原子を有する単官能の(メタ)アクリル酸誘導体としては、下記式で表される(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましいものとして挙げられる。
【0041】
【化4】
【0042】
窒素原子を有する単官能の(メタ)アクリル酸誘導体を、硬化性単量体(B)として用いることで、より耐熱性に優れる硬化樹脂層を形成することができる。
【0043】
脂環式構造を有する単官能の(メタ)アクリル酸誘導体としては、下記式で示される化合物が挙げられる。
【0044】
【化5】
【0045】
式中、Rは上記と同じ意味を表し、Rは脂環式構造を有する基である。
で表される脂環式構造を有する基としては、シクロへキシル基、イソボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、トリシクロデカニル基等が挙げられる。
【0046】
脂環式構造を有する単官能の(メタ)アクリル酸誘導体の具体例としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0047】
脂環式構造を有する単官能の(メタ)アクリル酸誘導体を、硬化性単量体(B)として用いることで、より光学特性に優れる硬化樹脂層を形成することができる。
【0048】
ポリエーテル構造を有する単官能の(メタ)アクリル酸誘導体としては、下記式で示される化合物が挙げられる。
【0049】
【化6】
【0050】
式中、Rは上記と同じ意味を表し、Rは炭素数1〜12の有機基を表す。Rで表される炭素数1〜12の有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素数1〜12のアルキル基;シクロへキシル基等の、炭素数3〜12のシクロアルキル基;フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等の、炭素数6〜12の芳香族基;等が挙げられる。nは、2〜20の整数を表す。
【0051】
ポリエーテル構造を有する単官能の(メタ)アクリル酸誘導体の具体例としては、エトキシ化o−フェニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0052】
ポリエーテル構造を有する単官能の(メタ)アクリル酸誘導体を、硬化性単量体(B)として用いることで、靭性に優れる硬化樹脂層を形成することができる。
【0053】
前記多官能型の単量体としては、多官能の(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。
多官能の(メタ)アクリル酸誘導体としては、特に限定されず、公知の化合物を用いることができる。例えば、2〜6官能の(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。
2官能の(メタ)アクリル酸誘導体としては、下記式で示される化合物が挙げられる。
【0054】
【化7】
【0055】
式中、Rは、上記のものと同じ意味を表し、Rは、2価の有機基を表す。Rで表される2価の有機基としては、下記式で示される基が挙げられる。
【0056】
【化8】
【0057】
(式中、sは1〜20の整数を表し、tは、1〜30の整数を表し、uとvは、それぞれ独立に、1〜30の整数を表し、両末端の「−」は、結合手を表す。)
【0058】
前記式で示される2官能の(メタ)アクリル酸誘導体の具体例としては、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性及び靭性の観点から、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の、上記式において、Rで表される2価の有機基がトリシクロデカン骨格を有するもの、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等の、上記式において、Rで表される2価の有機基がビスフェノール骨格を有するもの、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等の、上記式において、Rで表される2価の有機基が9,9−ビスフェニルフルオレン骨格を有するものが好ましい。
【0059】
また、これら以外の2官能の(メタ)アクリル酸誘導体としては、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0060】
3官能の(メタ)アクリル酸誘導体としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
4官能の(メタ)アクリル酸誘導体としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
5官能の(メタ)アクリル酸誘導体としては、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
6官能の(メタ)アクリル酸誘導体としては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
硬化性単量体(B)は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、硬化性単量体(B)は、耐熱性及び耐溶剤性により優れる硬化樹脂層が得られることから、多官能型の単量体が好ましい。多官能の単量体としては、熱可塑性樹脂(A)と混ざりやすく、かつ、重合物の硬化収縮が起こりにくく硬化物のカールが抑制できるという観点から、2官能(メタ)アクリル酸誘導体が好ましい。硬化性単量体(B)が多官能型の単量体を含む場合、その含有量は、硬化性単量体(B)の全量中、40質量%以上が好ましく、50〜100質量%がより好ましい。
【0061】
〔硬化性樹脂組成物〕
本発明に用いる硬化性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)、硬化性単量体(B)、及び所望により、後述する重合開始剤やその他の成分を混合し、適当な溶媒に溶解又は分散させることにより調製することができる。
【0062】
硬化性樹脂組成物中の、熱可塑性樹脂(A)と硬化性単量体(B)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)と硬化性単量体(B)の質量比で、好ましくは、熱可塑性樹脂(A):硬化性単量体(B)=30:70〜90:10、より好ましくは、35:65〜80:20である。
硬化性樹脂組成物中の硬化性単量体(B)の含有量が、熱可塑性樹脂(A):硬化性単量体(B)=30:70を超えるときは、得られる硬化樹脂層の柔軟性が低下するおそれがあり、90:10を下回るときは硬化樹脂層の耐溶剤性が低下するおそれがある。
【0063】
また、硬化性樹脂組成物中の硬化性単量体(B)の含有量が上記範囲であれば、例えば、硬化樹脂層を溶液キャスト法等によって得る場合、効率よく溶媒を除去することができるため、乾燥工程の長時間化によるカールの発生の問題が解消される。
【0064】
本発明に用いる硬化性樹脂組成物においては、所望により重合開始剤を含有させることができる。重合開始剤は、硬化反応を開始させるものであれば、特に制限なく用いることができ、例えば、熱重合開始剤や光重合開始剤が挙げられる。
【0065】
熱重合開始剤としては、有機過酸化物やアゾ系化合物が挙げられる。
有機過酸化物としては、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類;アセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール類;t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、p−メンタンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド等のヒドロパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーオキシエステル類;等が挙げられる。
アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等が挙げられる。
【0066】
光重合開始剤としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等のアルキルフェノン系光重合開始剤;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、エチル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィネート、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド等のリン系光重合開始剤;ビス(η−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル]チタニウム等のチタノセン系光重合開始剤;1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−メチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−(13−アクリロイル−1,4,7,10,13−ペンタオキサトリデシル)−ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系光重合開始剤;チオキサントン、2−クロロチオキサントン、3−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤;等が挙げられる。
【0067】
上記の光重合開始剤の中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、エチル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィネート、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド等のリン系光重合開始剤が好ましい。
熱可塑性樹脂(A)が芳香族環を有する熱可塑性樹脂である場合、熱可塑性樹脂(A)が紫外線を吸収する結果、硬化反応が起こりにくいことがある。しかしながら、上記のリン系光重合開始剤を用いることで、上記熱可塑性樹脂(A)に吸収されない波長の光を利用して硬化反応を効率よく進行させることができる。
重合開始剤は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
重合開始剤の含有量は、硬化性樹脂組成物全体に対して、0.05〜15質量%が好ましく、0.05〜10質量%がより好ましく、0.05〜5質量%がさらに好ましい。
【0069】
また、前記硬化性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)、硬化性単量体(B)、及び重合開始剤に加えて、トリイソプロパノールアミンや、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等の光重合開始助剤を含有していても良い。
【0070】
前記硬化性樹脂組成物の調製に用いる溶媒としては、特に制限されず、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、塩化エチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、モノクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤;1,3−ジオキソラン等のエーテル系溶媒;等が挙げられる。
【0071】
前記硬化性樹脂組成物中の溶媒の含有量は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂(A)1gに対し、通常、0.1〜1000g、好ましくは、1〜100gである。溶媒の量を適宜調節することによって、硬化性樹脂組成物の粘度を適宜なものに調節することができる。
【0072】
また、前記硬化性樹脂組成物は、本発明の目的、効果を損なわない範囲内で、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の、公知の添加剤をさらに含有していてもよい。
【0073】
前記硬化性樹脂組成物を硬化させる方法は、用いる重合開始剤や硬化性単量体の種類に応じて適宜決定することができる。詳細は、後述する本発明のガスバリフィルムの製造方法の項で説明する。
【0074】
〔硬化樹脂層〕
本発明のガスバリアフィルムの硬化樹脂層の厚みは特に限定されず、ガスバリアフィルムの目的に合わせて決定すればよい。硬化樹脂層の厚みは、通常、0.5〜300μm、好ましくは1〜300μm、より好ましくは、2〜200μm、さらに好ましくは3〜100μm、特に好ましくは5〜20μmである。
【0075】
前記硬化樹脂層は耐熱性に優れる。硬化樹脂層のガラス転移温度(Tg)は、通常140℃以上、好ましくは150℃以上である。ガラス転移温度が140℃以上であれば、耐熱性に優れるガスバリアフィルムを得ることができる。
【0076】
前記硬化樹脂層は、耐溶剤性に優れる。耐溶剤性に優れることから、例えば、硬化樹脂層表面に他の層を形成する際に有機溶剤を用いる場合であっても、硬化樹脂層表面がほとんど溶解しない。したがって、例えば、硬化樹脂層表面に、有機溶剤を含む樹脂溶液を用いてガスバリア層を形成する場合であっても、硬化樹脂層の成分がガスバリア層に混入しにくいため、ガスバリア性が低下しにくい。
【0077】
この観点から、前記硬化樹脂層のゲル分率は90%以上が好ましく、94%以上がより好ましい。ゲル分率が90%以上の硬化樹脂層は、耐溶剤性に優れるものであるため、硬化樹脂層表面に他の層をコーティングにより形成する際に有機溶剤を用いる場合であっても、硬化樹脂層表面がほとんど溶解せず、耐溶剤性に優れるガスバリアフィルムを得ることができる。
【0078】
ここで、ゲル分率とは、100mm×100mmにカットした硬化樹脂層を、予め質量を測定した150mm×150mmのナイロンメッシュ(#120)で包み、トルエン(100mL)中に3日間浸漬し、取り出して120℃で1時間乾燥させ、次いで、23℃相対湿度50%の条件下に3時間放置して調湿を行った後、その質量を測定して、以下の式によって得られるものである。
【0079】
【数1】
【0080】
本発明のガスバリアフィルムの硬化樹脂層は、ガスバリア層との層間密着性に優れる。すなわち、前記硬化樹脂層上にアンカーコート層を設けずにガスバリア層を形成することができる。
【0081】
本発明のガスバリアフィルムの硬化樹脂層は、無色透明であることが好ましい。硬化樹脂層が無色透明であることで、本発明のガスバリアフィルムを光学用途に好ましく用いることができる。
【0082】
本発明のガスバリアフィルムの硬化樹脂層は、複屈折率が低く光学等方性に優れる。前記硬化樹脂層の面内の位相差は、通常、20nm以下であり、15nm以下が好ましい。厚み方向の位相差は、通常、−500nm以下であり、−450nm以下が好ましい。また、面内の位相差を硬化樹脂層の厚みで割った値(複屈折率)は、通常、100×10−5以下であり、好ましくは20×10−5以下である。
硬化樹脂層の面内の位相差、厚み方向の位相差、複屈折率が上記の範囲内であれば、複屈折率が低く光学等方性に優れるガスバリアフィルムが得られ、本発明のガスバリアフィルムを光学用途に好ましく用いることができる。
【0083】
本発明のガスバリアフィルムの硬化性樹脂層は、上述のように、耐熱性、耐溶剤性、層間密着性、透明性に優れ、さらに、複屈性率が低く光学等方性に優れる。したがって、後述するように、このような特性を有する硬化樹脂層上に、例えば、溶液キャスト法によりガスバリア層を形成することで、耐熱性、耐溶剤性、層間密着性、透明性に優れ、さらに、複屈性率が低く光学等方性に優れるガスバリアフィルムを得ることができる。
【0084】
(II)ガスバリア層
本発明のガスバリアフィルムのガスバリア層は、ガスバリア性を有する限り、材質等は特に限定されない。例えば、無機膜からなるガスバリア層、ガスバリア性樹脂を含むガスバリア層、高分子化合物を含む層にイオンを注入して得られるガスバリア層等が挙げられる。
これらの中でも、薄く、ガスバリア性に優れる層を効率よく形成できることから、ガスバリア層は、無機膜からなるガスバリア層、及び高分子化合物を含む層にイオンを注入して得られるガスバリア層が好ましい。
【0085】
無機膜としては、特に制限されず、例えば、無機蒸着膜が挙げられる。
無機蒸着膜としては、無機化合物や金属の蒸着膜が挙げられる。
無機化合物の蒸着膜の原料としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ等の無機酸化物;窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン等の無機窒化物;無機炭化物;無機硫化物;酸化窒化ケイ素等の無機酸化窒化物;無機酸化炭化物;無機窒化炭化物;無機酸化窒化炭化物等が挙げられる。
金属の蒸着膜の原料としては、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、及びスズ等が挙げられる。
これらは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中では、ガスバリア性の観点から、無機酸化物、無機窒化物又は金属を原料とする無機蒸着膜が好ましく、さらに、透明性の観点から、無機酸化物又は無機窒化物を原料とする無機蒸着膜が好ましい。また、無機蒸着膜は、単層でもよく、多層でもよい。
【0086】
無機蒸着膜の厚みは、ガスバリア性と取り扱い性の観点から、好ましくは10〜2000nm、より好ましくは20〜1000nm、より好ましくは30〜500nm、さらに好ましくは40〜200nmの範囲である。
【0087】
無機蒸着膜を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD(物理的蒸着)法や、熱CVD(化学的蒸着)法、プラズマCVD法、光CVD法等のCVD法が挙げられる。
【0088】
ガスバリア性樹脂を含むガスバリア層において、用いるガスバリア性樹脂としては、ポリビニルアルコール、又はその部分ケン化物、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等の酸素等を透過しにくい樹脂が挙げられる。
【0089】
ガスバリア性樹脂を含むガスバリア層の厚みは、ガスバリア性の観点から、好ましくは10〜2000nm、より好ましくは20〜1000nm、より好ましくは30〜500nm、さらに好ましくは40〜200nmの範囲である。
【0090】
ガスバリア性樹脂を含むガスバリア層を形成する方法としては、ガスバリア性樹脂を含む溶液を、硬化樹脂層上に塗布し、得られた塗膜を適宜乾燥する方法が挙げられる。
【0091】
高分子化合物を含む層(以下、「高分子層」ということがある)にイオン注入して得られるガスバリア層において、用いる高分子化合物としては、ケイ素含有高分子化合物、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系ポリマー、芳香族系重合体等が挙げられる。これらの高分子化合物は1種単独で、あるいは2種以上を組合せて用いることができる。
【0092】
これらの中でも、高分子化合物はケイ素含有高分子化合物が好ましい。ケイ素含有高分子化合物としては、ポリシラザン系化合物(特公昭63−16325号公報、特開昭62−195024号公報、特開昭63−81122号公報、特開平1−138108号公報、特開平2−84437号公報、特開平2−175726号公報、特開平4−63833号公報、特開平5−238827号公報、特開平5−345826号公報、特開2005−36089号公報、特開平6−122852号公報、特開平6−299118号公報、特開平6−306329号公報、特開平9−31333号公報、特開平10−245436号公報、特表2003−514822号公報、国際公開WO2011/107018号等参照)、ポリカルボシラン系化合物(Journal of Materials Science,2569−2576,Vol.13,1978、Organometallics,1336−1344,Vol.10,1991、Journal of Organometallic Chemistry,1−10,Vol.521,1996、特開昭51−126300号公報、特開2001−328991号公報、特開2006−117917号公報、特開2009−286891号公報、特開2010−106100号公報等参照)、ポリシラン系化合物(R.D.Miller、J.Michl;Chemical Review、第89巻、1359頁(1989)、N.Matsumoto;Japanese Journal of Physics、第37巻、5425頁(1998)、特開2008−63586号公報、特開2009−235358号公報等参照)、及びポリオルガノシロキサン系化合物(特開2010-229445号公報、特開2010−232569号公報、特開2010−238736号公報等参照)等が挙げられる。
【0093】
これらの中でも、優れたガスバリア性を有するガスバリア層を形成できる観点から、ポリシラザン系化合物が好ましい。ポリシラザン系化合物としては、無機ポリシラザンや有機ポリシラザンが挙げられる。無機ポリシラザンとしてはペルヒドロポリシラザン等が挙げられ、有機ポリシラザンとしてはペルヒドロポリシラザンの水素の一部又は全部がアルキル基等の有機基で置換された化合物等が挙げられる。これらの中でも、入手容易性、及び優れたガスバリア性を有するガスバリア層を形成できる観点から、無機ポリシラザンがより好ましい。
また、ポリシラザン系化合物は、ガラスコーティング材等として市販されている市販品をそのまま使用することもできる。
ポリシラザン系化合物は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0094】
前記高分子層は、上述した高分子化合物の他に、本発明の目的を阻害しない範囲で他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、硬化剤、他の高分子、老化防止剤、光安定剤、難燃剤等が挙げられる。
【0095】
高分子層中の、高分子化合物の含有量は、優れたガスバリア性を有するガスバリア層を形成できる観点から、50質量%以上であるのが好ましく、70質量%以上であるのがより好ましい。
【0096】
高分子層を形成する方法としては、例えば、高分子化合物の少なくとも一種、所望により他の成分、及び溶剤等を含有する層形成用溶液を、公知の方法によって硬化樹脂層または所望により硬化樹脂層上に形成されたプライマー層上に塗布し、得られた塗膜を適度に乾燥して形成する方法が挙げられる。
【0097】
層形成用溶液を塗布する際は、スピンコーター、ナイフコーター、グラビアコーター等の公知の装置を使用することができる。
【0098】
得られた塗膜を乾燥させたり、ガスバリアフィルムのガスバリア性を向上させるため、塗膜を加熱することが好ましい。加熱、乾燥方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等、従来公知の乾燥方法が採用できる。加熱温度は、通常、80〜150℃であり、加熱時間は、通常、数十秒から数十分である。
【0099】
高分子層の厚みは、通常、20〜1000nm、好ましくは30〜500nm、より好ましくは40〜200nmである。
本発明においては、高分子層の厚みがナノオーダーであっても、後述するようにイオンを注入することで、充分なガスバリア性能を有するフィルムを得ることができる。
【0100】
高分子層に注入されるイオンの注入量は、形成するフィルムの使用目的(必要なガスバリア性、透明性等)等に合わせて適宜決定すればよい。
【0101】
注入されるイオンとしては、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等の希ガスのイオン;フルオロカーボン、水素、窒素、酸素、二酸化炭素、塩素、フッ素、硫黄等のイオン;
メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等のアルカン系ガス類のイオン;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のアルケン系ガス類のイオン;ペンタジエン、ブタジエン等のアルカジエン系ガス類のイオン;アセチレン、メチルアセチレン等のアルキン系ガス類のイオン;ベンゼン、トルエン、キシレン、インデン、ナフタレン、フェナントレン等の芳香族炭化水素系ガス類のイオン;シクロプロパン、シクロヘキサン等のシクロアルカン系ガス類のイオン;シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロアルケン系ガス類のイオン;
金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウム、クロム、チタン、モリブデン、ニオブ、タンタル、タングステン、アルミニウム等の導電性の金属のイオン;
シラン(SiH)又は有機ケイ素化合物のイオン;等が挙げられる。
【0102】
有機ケイ素化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン;
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン等の無置換若しくは置換基を有するアルキルアルコキシシラン;
ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアリールアルコキシシラン;
ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)等のジシロキサン;
ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、テトラキスジメチルアミノシラン、トリス(ジメチルアミノ)シラン等のアミノシラン;
ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、テトラメチルジシラザン等のシラザン;
テトライソシアナートシラン等のシアナートシラン;
トリエトキシフルオロシラン等のハロゲノシラン;
ジアリルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン等のアルケニルシラン;
ジ−t−ブチルシラン、1,3−ジシラブタン、ビス(トリメチルシリル)メタン、テトラメチルシラン、トリス(トリメチルシリル)メタン、トリス(トリメチルシリル)シラン、ベンジルトリメチルシラン等の無置換若しくは置換基を有するアルキルシラン;
ビス(トリメチルシリル)アセチレン、トリメチルシリルアセチレン、1−(トリメチルシリル)−1−プロピン等のシリルアルキン;
1,4−ビストリメチルシリル−1,3−ブタジイン、シクロペンタジエニルトリメチルシラン等のシリルアルケン;
フェニルジメチルシラン、フェニルトリメチルシラン等のアリールアルキルシラン;
プロパルギルトリメチルシラン等のアルキニルアルキルシラン;
ビニルトリメチルシラン等のアルケニルアルキルシラン;
ヘキサメチルジシラン等のジシラン;
オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン等のシロキサン;
N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド;
ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド;
等が挙げられる。
これらのイオンは、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0103】
なかでも、より簡便に注入することができ、特に優れたガスバリア性を有するガスバリア層が得られることから、水素、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、及びクリプトンからなる群から選ばれる少なくとも一種のイオンが好ましい。
【0104】
イオンを注入する方法としては、特に限定されないが、電界により加速されたイオン(イオンビーム)を照射する方法、プラズマ中のイオンを注入する方法等が挙げられる。なかでも、本発明においては、簡便にガスバリア性のフィルムが得られることから、後者のプラズマイオンを注入する方法が好ましい。
【0105】
プラズマイオン注入法としては、(α)外部電界を用いて発生させたプラズマ中に存在するイオンを、高分子層に注入する方法、又は(β)外部電界を用いることなく、前記層に印加する負の高電圧パルスによる電界のみで発生させたプラズマ中に存在するイオンを、高分子層に注入する方法が好ましい。
【0106】
前記(α)の方法においては、イオン注入する際の圧力(プラズマイオン注入時の圧力)を0.01〜1Paとすることが好ましい。プラズマイオン注入時の圧力がこのような範囲にあるときに、簡便にかつ効率よく均一にイオンを注入することができ、目的のガスバリア層を効率よく形成することができる。
【0107】
前記(β)の方法は、減圧度を高くする必要がなく、処理操作が簡便であり、処理時間も大幅に短縮することができる。また、前記層全体にわたって均一に処理することができ、負の高電圧パルス印加時にプラズマ中のイオンを高エネルギーで高分子層に連続的に注入することができる。さらに、radio frequency(高周波、以下、「RF」と略す。)や、マイクロ波等の高周波電力源等の特別の他の手段を要することなく、層に負の高電圧パルスを印加するだけで、高分子層に良質のイオンを均一に注入することができる。
【0108】
前記(α)及び(β)のいずれの方法においても、負の高電圧パルスを印加するとき、すなわちイオン注入するときのパルス幅は、1〜15μsecであるのが好ましい。パルス幅がこのような範囲にあるときに、より簡便にかつ効率よく、均一にイオンを注入することができる。
【0109】
また、プラズマを発生させるときの印加電圧は、好ましくは−1〜−50kV、より好ましくは−1〜−30kV、特に好ましくは−5〜−20kVである。印加電圧が−1kVより大きい値でイオン注入を行うと、イオン注入量(ドーズ量)が不十分となり、所望の性能が得られない。一方、−50kVより小さい値でイオン注入を行うと、イオン注入時にフィルムが帯電し、またフィルムへの着色等の不具合が生じ、好ましくない。
【0110】
プラズマイオン注入するイオン種としては、前記注入されるイオンとして例示したのと同様のものが挙げられる。
【0111】
高分子層にプラズマ中のイオンを注入する際には、プラズマイオン注入装置を用いる。
プラズマイオン注入装置としては、具体的には、(i)高分子層(以下、「イオン注入する層」ということがある。)に負の高電圧パルスを印加するフィードスルーに高周波電力を重畳してイオン注入する層の周囲を均等にプラズマで囲み、プラズマ中のイオンを誘引、注入、衝突、堆積させる装置(特開2001−26887号公報)、(ii)チャンバー内にアンテナを設け、高周波電力を与えてプラズマを発生させてイオン注入する層周囲にプラズマが到達後、イオン注入する層に正と負のパルスを交互に印加することで、正のパルスでプラズマ中の電子を誘引衝突させてイオン注入する層を加熱し、パルス定数を制御して温度制御を行いつつ、負のパルスを印加してプラズマ中のイオンを誘引、注入させる装置(特開2001−156013号公報)、(iii)マイクロ波等の高周波電力源等の外部電界を用いてプラズマを発生させ、高電圧パルスを印加してプラズマ中のイオンを誘引、注入させるプラズマイオン注入装置、(iv)外部電界を用いることなく高電圧パルスの印加により発生する電界のみで発生するプラズマ中のイオンを注入するプラズマイオン注入装置等が挙げられる。
【0112】
これらの中でも、処理操作が簡便であり、処理時間も大幅に短縮でき、連続使用に適していることから、(iii)又は(iv)のプラズマイオン注入装置を用いるのが好ましい。
前記(iii)及び(iv)のプラズマイオン注入装置を用いる方法については、国際公開WO2010/021326号公報に記載のものが挙げられる。
【0113】
前記(iii)及び(iv)のプラズマイオン注入装置では、プラズマを発生させるプラズマ発生手段を高電圧パルス電源によって兼用しているため、RFやマイクロ波等の高周波電力源等の特別の他の手段を要することなく、負の高電圧パルスを印加するだけで、プラズマを発生させ、高分子層に連続的にプラズマ中のイオンを注入し、表面部にイオン注入により改質された部分を有する高分子層、すなわちガスバリア層が形成されたガスバリアフィルムを量産することができる。
【0114】
イオンが注入される部分の厚みは、イオンの種類や印加電圧、処理時間等の注入条件により制御することができ、高分子層の厚み、ガスバリアフィルムの使用目的等に応じて決定すればよいが、通常、5〜1000nmである。
【0115】
イオンが注入されたことは、X線光電子分光分析(XPS)を用いて高分子層の表面から10nm付近の元素分析測定を行うことによって確認することができる。
【0116】
ガスバリア層がガスバリア性を有していることは、ガスバリア層の水蒸気透過率が小さいことから確認することができる。
ガスバリア層の、40℃、相対湿度90%雰囲気下における水蒸気透過率は、通常1g/m/day以下であり、好ましくは0.8g/m/day以下であり、より好ましくは0.5g/m/day以下であり、さらに好ましくは0.1g/m/day以下である。水蒸気透過率は、公知の方法で測定することができる。
【0117】
(III)ガスバリアフィルム
本発明のガスバリアフィルムは、前記硬化樹脂層と、該硬化樹脂層の少なくとも片面にガスバリア層とを有するものである。本発明のガスバリアフィルムは、前記硬化樹脂層とガスバリア層とを、それぞれ1層ずつ有するものであっても、前記硬化樹脂層及び/又はガスバリア層を2層以上有するものであってもよい。
【0118】
本発明のガスバリアフィルムの例を、図1(a)、(b)に示す。
図1(a)に示すガスバリアフィルム(10)は、硬化樹脂層(1)の片面に、ガスバリア層(2)を有するものである。
図1(b)に示すガスバリアフィルム(20)は、硬化樹脂層(1)の両面に、それぞれガスバリア層(2’)とガスバリア層(2”)を有するものである。
【0119】
本発明のガスバリアフィルムは、図1(a)、(b)に示すものに限定されず、本発明の目的を損ねない範囲で、さらに他の層を1層又は2層以上含有するものであってもよい。
他の層としては、例えば、導電体層、衝撃吸収層、接着剤層、接合層、工程シート等が挙げられる。また、他の層の配置位置は特に限定されない。
【0120】
導電体層を構成する材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物等が挙げられる。具体的には、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO);フッ素をドープした酸化スズ(FTO);酸化スズ、ゲルマニウムをドープした酸化亜鉛(GZO)、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の半導電性金属酸化物;金、銀、クロム、ニッケル等の金属;これら金属と導電性金属酸化物との混合物;ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質;ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性材料;等が挙げられる。
【0121】
導電体層の形成方法としては特に制限はない。例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、プラズマCVD法等が挙げられる。
【0122】
導電体層の厚みはその用途等に応じて適宜選択すればよい。通常10nmから50μm、好ましくは20nmから20μmである。
【0123】
衝撃吸収層は、ガスバリア層に衝撃が加わった時に、ガスバリア層を保護するためのものである。衝撃吸収層を形成する素材としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、ゴム系材料等が挙げられる。
【0124】
衝撃吸収層の形成方法としては特に制限はなく、例えば、前記衝撃吸収層を形成する素材、及び、所望により、溶剤等の他の成分を含む衝撃吸収層形成溶液を、積層すべき層上に塗布し、得られた塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱等して形成する方法が挙げられる。
また、別途、剥離基材上に衝撃吸収層を成膜し、得られた膜を、積層すべき層上に転写して積層してもよい。
衝撃吸収層の厚みは、通常1〜100μm、好ましくは5〜50μmである。
【0125】
接着剤層は、本発明のガスバリアフィルムを被着体に貼付する場合に用いられる層である。接着剤層を形成する材料としては、特に限定されず、アクリル系、シリコーン系、ゴム系等の公知の接着剤または粘着剤、ヒートシール材等を使用することもできる。
【0126】
接合層は、後述するように、本発明のガスバリアフィルムを複数枚貼り合せてガスバリアフィルム積層体を製造する場合等に用いられる層である。接合層の詳細は、ガスバリアフィルム積層体の項で説明する。
【0127】
工程シートは、ガスバリアフィルムを保存、運搬等する際に、硬化樹脂層や、ガスバリア層、また上述したその他の層を保護する役割を有し、所定の工程において剥離されるものである。
【0128】
ガスバリアフィルムが工程シートを有する場合、ガスバリアフィルムは片面に工程シートを有していてもよく、両面に工程シートを有していてもよい。後者の場合は、2種類の工程シートを用いて、先に剥離する工程シートをより剥離しやすいものにするのが好ましい。
【0129】
工程シートは、シート状またはフィルム状のものが好ましい。シート状またはフィルム状とは、長尺のものに限らず、短尺の平板状のものも含まれる。
【0130】
工程シートとしては、グラシン紙、コート紙、上質紙等の紙基材;これらの紙基材にポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙;上記紙基材に、セルロース、デンプン、ポリビニルアルコール、アクリル−スチレン樹脂等で目止め処理を行ったもの;あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルムやポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム等のプラスチックフィルム;ガラス等が挙げられる。
【0131】
また、工程シートとしては、取り扱い易さの点から、紙基材や、プラスチックフィルム上に剥離剤層を設けたものであってもよい。剥離層は、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、アルキッド系剥離剤、オレフィン系剥離剤等、従来公知の剥離剤を用いて形成することができる。
剥離剤層の厚みは、特に制限されないが、通常、0.02〜2.0μm、より好ましくは0.05〜1.5μmである。
【0132】
工程シートの厚さは、取り扱い易さの点から、1〜500μmが好ましく、5〜300μmがより好ましい。
【0133】
工程シートの表面粗さRa(算術平均粗さ)は、10.0nm以下が好ましく、8.0nm以下がより好ましい。また、表面粗さRt(最大断面高さ)は、100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましい。
表面粗さRa及びRtが、それぞれ、10.0nm、100nmを超えると、工程シートと接する層の表面粗さが大きくなり、ガスバリアフィルムのガスバリア性が低下するおそれがある。
なお、表面粗さRa及びRtは、100μm×100μmの測定面積で、光干渉法により得られた値である。
【0134】
本発明のガスバリアフィルムの厚みは、目的とする電子デバイスの用途等によって適宜決定することができる。本発明のガスバリアフィルムの実質的な厚みは、取り扱い性の観点から、好ましくは1〜300μm、より好ましくは2〜200μm、より好ましくは3〜100μmである。
なお、「実質的な厚み」とは、使用状態における厚みをいう。すなわち、本発明のガスバリアフィルムは、工程シート等を有していてもよいが、使用時に除去される部分(工程シート等)の厚みは、「実質的な厚み」には含まれない。
【0135】
本発明のガスバリアフィルムは、上述した硬化樹脂層及びガスバリア層を有するため、耐熱性、耐溶剤性、層間密着性及びガスバリア性に優れ、しかも、複屈折率が低く光学等方性に優れる。
【0136】
本発明のガスバリアフィルムの、40℃、相対湿度90%雰囲気下での水蒸気透過率は、通常、1g/m/day以下、好ましくは0.8g/m/day以下、より好ましくは0.5g/m/day以下、さらに好ましくは0.1g/m/day以下である。
【0137】
2)ガスバリアフィルムの製造方法
本発明のガスバリアフィルムを製造する方法は特に制限されない。なかでも、ガスバリアフィルムを効率よく、かつ、容易に製造できる観点から、工程シートを用いて製造する方法が好ましく、以下の工程1〜3を有する方法がより好ましい。
【0138】
工程1:工程シート上に、ガラス転移温度(Tg)が140℃以上の熱可塑性樹脂(A)、及び硬化性単量体(B)を含有する硬化性樹脂組成物からなる硬化性樹脂層を形成する工程
工程2:工程1で得られた硬化性樹脂層を硬化させて、硬化樹脂層を形成する工程
工程3:工程2で得られた硬化樹脂層上に、ガスバリア層を形成する工程
【0139】
(工程1)
先ず、工程シート上に、ガラス転移温度(Tg)が140℃以上の熱可塑性樹脂(A)、及び硬化性単量体(B)を含有する硬化性樹脂組成物からなる硬化性樹脂層を形成する。
【0140】
用いる工程シート、硬化性樹脂組成物としては、上述したものと同様のものが挙げられる。
硬化性樹脂組成物を工程シート上に塗工する方法は、特に制限されず、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等の公知の塗布方法を利用することができる。
【0141】
得られた塗膜を乾燥する方法は特に制限されず、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等、従来公知の乾燥方法を利用することができる。上記のように本発明に用いる硬化性樹脂組成物は、非常に高いガラス転移温度(Tg)を有する熱可塑性樹脂(A)を含有するものであるが、硬化性単量体(B)を含有することで、溶液キャスト法を用いて得られた塗膜を乾燥する場合、溶剤を効率よく除去することができる。
【0142】
塗膜の乾燥温度は、通常、30〜150℃、好ましくは、50〜100℃である。
乾燥塗膜(硬化性樹脂層)の厚みは、特に制限されず、通常、0.5〜300μm、好ましくは1〜300μm、より好ましくは、3〜100μmである。硬化性樹脂層の厚みは、通常、0.5〜300μm、好ましくは2〜200μm、さらに好ましくは1〜300μm、特に好ましくは5〜20μmである。
【0143】
(工程2)
次いで、工程1で得られた硬化性樹脂層を硬化させて、硬化樹脂層を形成する。
硬化性樹脂層を硬化する方法としては、特に限定されず、公知の方法が採用できる。例えば、硬化性樹脂層が、熱重合開始剤を含有する硬化性樹脂組成物を用いて形成されたものである場合、硬化性樹脂層を加熱することで硬化性樹脂層を硬化させることができる。加熱温度は、通常、30〜150℃、好ましくは、50〜100℃である。
【0144】
また、硬化性樹脂層が、光重合開始剤を含有する硬化性樹脂組成物を用いて形成されたものである場合、硬化性樹脂層に活性エネルギー線を照射することで硬化性樹脂層を硬化させることができる。活性エネルギー線は、高圧水銀ランプ、無電極ランプ、キセノンランプ等を用いて照射することができる。
【0145】
活性エネルギー線の波長は、200〜400nmが好ましく、350〜400nmがより好ましい。照射量は、通常、照度50〜1000mW/cm、光量50〜5000mJ/cm、好ましくは1000〜5000mJ/cmの範囲である。照射時間は、通常、0.1〜1000秒、好ましくは1〜500秒、更に好ましくは10〜100秒である。光照射工程の熱負荷を考慮して前述の光量を満たすために、複数回照射しても構わない。
【0146】
この場合、活性エネルギー線照射による熱可塑性樹脂(A)の劣化や、硬化樹脂層の着色を防止するために、硬化反応に不要な波長の光を吸収するフィルタを介して、活性エネルギー線を硬化性樹脂組成物に照射してもよい。この方法によれば、硬化反応に不要で、かつ、熱可塑性樹脂(A)を劣化させる波長の光がフィルタに吸収されるため、熱可塑性樹脂(A)の劣化が抑制され、無色透明の硬化樹脂層が得られやすくなる。
フィルタとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の樹脂フィルムを利用することができる。樹脂フィルムを用いる場合、工程1と工程2の間に、硬化性樹脂層上にポリエチレンテレフタレートフィルム等の樹脂フィルムを積層させる工程を設けることが好ましい。なお、樹脂フィルムは、通常は、工程2の後に剥離される。
【0147】
また、硬化性樹脂層に電子線を照射することで、硬化性樹脂層を硬化させることもできる。電子線を照射する場合は、通常、光重合開始剤を利用しなくても、硬化性樹脂層を硬化させることができる。電子線を照射する場合は、電子線加速器等を用いることができる。照射量は、通常10〜1000kradの範囲である。照射時間は、通常、0.1〜1000秒、好ましくは1〜500秒、更に好ましくは10〜100秒である。
【0148】
(工程3)
その後、工程2で得られた硬化樹脂層上に、ガスバリア層を形成する。
ガスバリア層を形成する方法としては、先に説明した方法を適宜採用することができる。
例えば、ガスバリア層が、ケイ素含有高分子化合物を含む層にイオンを注入して得られる層である場合、ケイ素含有高分子化合物を含む層を硬化樹脂層上に形成する工程と、該ケイ素含有高分子化合物を含む層に、イオンを注入する工程によってガスバリア層を形成することができる。
【0149】
ケイ素含有高分子化合物を含む層を形成する方法やイオンを注入する方法としては、先に説明したものを採用することができる。
また、イオンを注入する方法としては、工程2で得られた硬化樹脂層上に、ケイ素含有高分子化合物を含む層が形成された長尺状のフィルムを、一定方向に搬送しながら、前記ケイ素含有高分子化合物を含む層に、イオンを注入してガスバリアフィルムを製造するのが好ましい。
この製造方法によれば、例えば、長尺状のガスバリアフィルムを連続的に製造することができる。
【0150】
なお、工程シートは、通常は、ガスバリアフィルムの用途等に応じて、所定の工程において剥離される。例えば、工程3の後に他の層等を形成し、その後、工程シートを剥離してもよいし、工程3の後に工程シートを剥離してもよい。また、工程2と工程3の間に工程シートを剥離してもよい。
【0151】
このように、前記工程1〜3を有する製造方法は、工程シートを利用して硬化性樹脂層を形成するものであるが、この方法によって得られるガスバリアフィルムは、工程シートを有していてもよいし、有していなくてもよい。
本発明のガスバリアフィルムの製造方法によれば、本発明のガスバリアフィルムを効率よく、連続的に、かつ容易に製造することができる。
【0152】
3)ガスバリアフィルム積層体
本発明のガスバリアフィルム積層体は、本発明のガスバリアフィルムが、接合層を介して2枚以上積層されてなるものである。
【0153】
〔ガスバリアフィルム〕
本発明のガスバリアフィルム積層体を構成するガスバリアフィルムは、本発明のガスバリアフィルムであれば、特に限定されない。
ガスバリアフィルム積層体の製造に用いるガスバリアフィルムの硬化樹脂層の厚みは、0.5〜10μmが好ましく、1〜5μmがより好ましい。硬化樹脂層の厚みが上記範囲内であることで、優れたガスバリア性を有し、しかも、厚みが薄いガスバリアフィルム積層体を得ることができる。
【0154】
〔接合層〕
ガスバリアフィルム積層体を構成する接合層は、ガスバリアフィルム同士を接合し、ガスバリアフィルム積層体の積層構造を保持するための層である。接合層は、単層であっても、複数層であってもよい。接合層としては、接着剤を用いて形成された単層構造の層からなるものや、支持層の両面に接着剤を用いて形成された層が形成されてなるものが挙げられる。
【0155】
接合層を形成する際に用いる材料は、ガスバリアフィルム同士を接合し、ガスバリアフィルム積層体の積層構造を保持できるものである限り、特に制限されず、公知の接着剤を用いることができるが、常温でガスバリアフィルム同士を接合することができるという点から、粘着剤であることが好ましい。
接合層に用いる粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、粘着力、透明性および取り扱い性の点から、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤が好ましい。また、後述するような架橋構造を形成し得る粘着剤が好ましい。
また、粘着剤は、溶剤型粘着剤、エマルジョン型粘着剤、ホットメルト型粘着剤等のいずれの形態のものであってもよい。
【0156】
アクリル系粘着剤は、アクリル系共重合体を主成分とする粘着剤である。
アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位を有する共重合体である。ここで、「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルの両方を意味する。
また、アクリル系共重合体は、上記以外の繰り返し単位を有するものであってもよい。
アクリル系共重合体は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0157】
アクリル系共重合体は、架橋構造を形成し得る官能基(以下、「官能基」と略記することがある。)を有するアクリル系単量体と、官能基を有しないアクリル系単量体、及びこれらの単量体と共重合可能なその他の単量体との共重合体であることが好ましい。官能基を有するアクリル系単量体は、架橋構造の形成に寄与し、一方、官能基を有しないアクリル系単量体は、粘着性の向上に寄与し得る。
官能基を有するアクリル系単量体の官能基としては、用いる架橋剤の種類にもよるが、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、アミド基等が挙げられる。
一方、官能基を有しないアクリル系単量体は、粘着性に優れる接合層を形成することができることから、炭素数4〜10の炭化水素基を有するものが好ましい。
【0158】
官能基を有するアクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−カルボキシエチル等のカルボキシル基を有するアクリル系単量体;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の水酸基を有するアクリル系単量体;等が挙げられる。
これらの単量体は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0159】
官能基を有しないアクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の直鎖アルキル基を有するアクリル系単量体;(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル等の分岐アルキル基を有するアクリル系単量体;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等のシクロアルキル基を有するアクリル系単量体;等が挙げられる。
これらの単量体は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0160】
その他の単量体としては、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等のカルボキシル基を有する単量体;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有する単量体;
アクリロニトリル;スチレン;酢酸ビニル;ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0161】
アクリル系共重合体を製造する方法は、特に制限されず、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法等の従来公知の方法を用いることができる。なかでも、重合が容易である点で溶液重合が望ましい。
【0162】
重合反応に用いる重合開始剤は特に制限されず、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物系開始剤、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシアノバレリン酸、アゾビスシアノペンタン等のアゾ系開始剤等が挙げられる。
重合反応に用いる溶媒は特に制限されず、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール等が挙げられる。
重合反応の温度や反応時間等の反応条件は、公知の条件を採用することができる。
【0163】
アクリル系共重合体の重量平均分子量は、通常、100,000〜1,000,000、好ましくは、300,000〜900,000である。なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
【0164】
アクリル系粘着剤には、架橋剤を添加することができる。架橋剤とは、上記の官能基を有するアクリル系単量体中の官能基と反応して架橋を形成させる化合物である。架橋剤を用いることで、アクリル系粘着剤の凝集力を向上させることができる。用いる架橋剤に特に制限はなく、イソシアナート系架橋剤、エポキシ系架橋剤等が挙げられる。
【0165】
イソシアナート系架橋剤としては、特に限定されず、分子中に2個以上のイソシアナート基を有する化合物が用いられる。このようなイソシアナート系架橋剤としては、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート等の芳香族ポリイソシアナート;ヘキサメチレンジイソシアナート等の脂肪族ポリイソシアナート;イソホロンジイソシアナート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアナート等の脂環式ポリイソシアナート;、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体;等が挙げられる。
【0166】
エポキシ系架橋剤としては、分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が用いられ、例えば、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、トリメチロールプロパングリシジルエーテル、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、トリグリシジル−p−アミノフェノール等が挙げられる。
架橋剤は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0167】
架橋剤の使用量は、架橋剤の種類にもよるが、アクリル系共重合体100質量部に対し、通常0.01〜10質量部、好ましくは、0.05〜5質量部である。
【0168】
ウレタン系粘着剤は、ウレタン系樹脂を主成分(全体がその成分のみで構成されている場合も含む。)とする粘着剤である。また、ウレタン系粘着剤には、ウレタン系接着剤も含まれる。
用いるウレタン系粘着剤は、目的の特性を有する粘着剤層を形成できる限り特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
ウレタン系樹脂としては、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン等が挙げられる。
これらは一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0169】
また、ウレタン系樹脂は、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーとトリオールやジアミン等の架橋剤とを反応させて得られる3次元架橋構造を有するものであってもよい。
【0170】
接合層に用いる粘着剤は、粘着性等を阻害しない範囲において、各種添加剤を含有してもよい。添加剤としては、光安定剤、酸化防止剤、粘着付与剤、可塑剤、紫外線吸収剤、着色剤、樹脂安定剤、充てん剤、顔料、増量剤、帯電防止剤、シランカカップリング剤等が挙げられる。これらの添加剤は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0171】
接合層を形成する方法としては、公知の方法を採用できる。例えば、接合層に用いる粘着剤の形態が、溶剤型粘着剤、エマルジョン型粘着剤である場合は、粘着剤を、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等の公知の塗工方法により塗工した後、得られた塗膜から溶媒を乾燥除去し、所望により加熱することにより、接合層を形成することができる。
【0172】
また、用いる粘着剤の形態が、ホットメルト型粘着剤である場合は、加熱下に容易に溶融して流動性を有するようになる性質を利用して、ホットメルト法によって塗工される。溶融状態のホットメルト型粘着剤をTダイ、ファウンテンダイ、ギヤインダイ、スロットダイ等の公知の塗工方法により塗工し、冷却することにより、接合層を形成することができる。
【0173】
接合層の厚みは特に制限はなく、適宜選定されるが、好ましくは0.5〜100μm、より好ましくは1〜60μm、更に好ましくは3〜40μmである。0.5μm以上であれば、良好な粘着力が得られ、100μm以下であれば、生産性の面で有利である。
【0174】
3)ガスバリアフィルム積層体
本発明のガスバリアフィルム積層体の例を、図2(a)〜(c)、図3(a)〜(b)、図4(a)〜(b)、図5(a)〜(c)に示す。本発明のガスバリアフィルム積層体は、図2〜5に示すものに限定されるものではない。また、以下の説明は、ガスバリアフィルム積層体の層構成を説明するためのものであって、製造工程の順番(積層する順番)を限定するものでもない。
【0175】
図2(a)に示すガスバリアフィルム積層体(30)は、2枚のガスバリアフィルム(10a)、(10b)が、ガスバリアフィルム(10a)のガスバリア層(2a)とガスバリアフィルム(10b)のガスバリア層(2b)とが、接合層(3)を介して対向するように積層されてなる層構成〔硬化樹脂層(1a)/ガスバリア層(2a)/接合層(3)/ガスバリア層(2b)/硬化樹脂層(1b)〕を有する。
【0176】
図2(b)に示すガスバリアフィルム積層体(40)は、2枚のガスバリアフィルム(10a)、(10b)が、ガスバリアフィルム(10a)の硬化樹脂層(1a)とガスバリアフィルム(10b)の硬化樹脂層(1b)とが、接合層(3)を介して対向するように積層されてなる層構成〔ガスバリア層(2a)/硬化樹脂層(1a)/接合層(3)/硬化樹脂層(1b)/ガスバリア層(2b)〕を有する。
【0177】
図2(c)に示すガスバリアフィルム積層体(50)は、2枚のガスバリアフィルム(10a)、(10b)が、ガスバリアフィルム(10a)のガスバリア層(2a)とガスバリアフィルム(10b)の硬化樹脂層(1b)とが、接合層(3)を介して対向するように積層されてなる層構成〔硬化樹脂層(1a)/ガスバリア層(2a)/接合層(3)/硬化樹脂層(1b)/ガスバリア層(2b)〕を有する。
【0178】
図3(a)に示すガスバリアフィルム積層体(60)は、3枚のガスバリアフィルム(10a)、(10b)、(10c)が、ガスバリアフィルム(10a)のガスバリア層(2a)とガスバリアフィルム(10b)の硬化樹脂層(1b)とが、接合層(3a)を介して対向するように積層され、さらに、もう1枚のガスバリアフィルム(10c)が、ガスバリアフィルム(10b)のガスバリア層(2b)とガスバリアフィルム(10c)のガスバリア層(3b)とが、接合層(3b)を挟んで対向するように積層されてなる層構成〔硬化樹脂層(1a)/ガスバリア層(2a)/接合層(3a)/硬化樹脂層(1b)/ガスバリア層(2b)/接合層(3b)/ガスバリア層(2c)/硬化樹脂層(1c)〕を有する。
【0179】
図3(b)に示すガスバリアフィルム積層体(70)は、ガスバリアフィルム積層体(60)と同様に、3枚のガスバリアフィルム(10a)、(10b)、(10c)を含むものであり、その層構成は、〔硬化樹脂層(1a)/ガスバリア層(2a)/接合層(3a)/硬化樹脂層(1b)/ガスバリア層(2b)/接合層(3b)/硬化樹脂層(1c)/ガスバリア層(2c)〕である。
【0180】
図4(a)に示すガスバリアフィルム積層体(80)は、2枚のガスバリアフィルム積層体(30a)、(30b)が、ガスバリアフィルム積層体(30a)の硬化樹脂層(1b)とガスバリアフィルム積層体(30b)の硬化樹脂層(1c)とが接合層(3b)を介して対向するように積層されてなる層構成〔硬化樹脂層(1a)/ガスバリア層(2a)/接合層(3a)/ガスバリア層(2b)/硬化樹脂層(1b)/接合層(3b)/硬化樹脂層(1c)/ガスバリア層(2c)/接合層(3c)/ガスバリア層(2d)/硬化樹脂層(1d)〕を有する。
【0181】
図4(b)及び図5(a)〜(c)に示すガスバリアフィルム積層体(90)〜(120)は、ガスバリアフィルム積層体(80)と同様に、2枚のガスバリアフィルム積層体を含むものであり、それぞれの層構成は、以下のとおりである。
【0182】
ガスバリアフィルム積層体(90):〔ガスバリア層(2a)/硬化樹脂層(1a)/接合層(3a)/硬化樹脂層(1b)/ガスバリア層(2b)/接合層(3b)/ガスバリア層(2c)/硬化樹脂層(1c)/接合層(3c)/硬化樹脂層(1d)/ガスバリア層(2d)〕
【0183】
ガスバリアフィルム積層体(100):〔ガスバリア層(2a)/硬化樹脂層(1a)/接合層(3a)/硬化樹脂層(1b)/ガスバリア層(2b)/接合層(3b)/硬化樹脂層(1c)/ガスバリア層(2c)/接合層(3c)/硬化樹脂層(1d)/ガスバリア層(2d)〕
【0184】
ガスバリアフィルム積層体(110):〔硬化樹脂層(1a)/ガスバリア層(2a)/接合層(3a)/硬化樹脂層(1b)/ガスバリア層(2b)/接合層(3b)/硬化樹脂層(1c)/ガスバリア層(2c)/接合層(3c)/硬化樹脂層(1d)/ガスバリア層(2d)〕
【0185】
ガスバリアフィルム積層体(120):〔ガスバリア層(2a)/硬化樹脂層(1a)/接合層(3a)/硬化樹脂層(1b)/ガスバリア層(2b)/接合層(3b)/硬化樹脂層(1c)/ガスバリア層(2c)/接合層(3c)/ガスバリア層(2d)/硬化樹脂層(1d)〕
【0186】
これらのガスバリアフィルム積層体の中でも、ガスバリアフィルム積層体(30)、(60)、(80)のように、ガスバリア層が最表面に露出していないものは、ガスバリア層が傷つきにくく、ガスバリア性が低下しにくいため好ましい。
【0187】
また、これらのガスバリアフィルム積層体の中でも、ガスバリアフィルム積層体(30)、(40)、(80)、(90)のように、ガスバリア層同士あるいは硬化樹脂層同士が対向するように貼合してなるガスバリアフィルム積層体は、対称性を有する積層構造であるため、積層体のカールを抑制できるという観点から、好ましい。
【0188】
本発明のガスバリアフィルム積層体は、本発明のガスバリアフィルムを2枚以上貼合してなるものである。したがって、本発明のガスバリアフィルム積層体は、硬化樹脂層が本来有する、複屈折率が低く、優れた光学等方性、耐熱性、耐溶剤性、層間密着性等の特性に加えて、極めて優れたガスバリア性を有する。
【0189】
本発明のガスバリアフィルム積層体は、図2図5に示すものに限られず、本発明の目的を損ねない範囲で、さらに他の層を1層又は2層以上含有するものであってもよい。
本発明のガスバリアフィルム積層体が、他の層を含有する場合、他の層の配置位置は特に限定されない。
他の層としては、先にガスバリアフィルムの中で説明した、導電体層、衝撃吸収層、粘着剤層、工程シート等が挙げられる。
【0190】
本発明のガスバリアフィルム積層体は、本発明のガスバリアフィルムの2枚以上を、接合層を介して貼合することで製造することができる。
【0191】
例えば、図2(a)に示すガスバリアフィルム積層体(30)は、以下の方法により製造することができる。
先ず、図6(a)に示す、硬化樹脂層(1)と、該硬化樹脂層(1)上に設けられたガスバリア層(2)を有するガスバリアフィルム(10)を2枚用意する(以下、それぞれ、10a、10bと表す。)。
次いで、図6(b)に示すように、剥離シート(4)上に接合層(3)を形成して、接合層付剥離シート(130)を得る。なお、接合層付剥離シート(130)は、接合層(3)上にさらに別の剥離シートを有するものであってもよい。なお、剥離シート(4)としては、特に限定されず、工程シートで説明したものの中から、接合層との剥離性に優れるものを適宜選択すればよい。
次に、図6(c)に示すように、ガスバリアフィルム(10a)のガスバリア層(2a)と、接合層付剥離シート(130)の接合層(3)とを、所望により加熱しながら貼り合わせることで、接合層付ガスバリアフィルム(140)を得る。貼り合わせの方法は特に限定されず、例えば、公知のラミネーターを使用して貼り合わせることができる。
【0192】
その後、図6(d)に示すように、接合層付ガスバリアフィルム(140)の剥離シート(4)を剥離して、露出した接合層(3)面に、ガスバリアフィルム(10b)のガスバリア層(2b)を、所望により加熱しながら貼り合わせることで、図6(e)に示すガスバリアフィルム積層体(30)を得ることができる。
【0193】
本発明のガスバリア積層体は上記以外の方法によって製造することもできる。
例えば、図6(a)に示すガスバリアフィルム(10)のガスバリア層(2)上に直接接合層を形成し、この接合層ともう1枚のガスバリアフィルムを、所望により加熱しながら重ね合わせ圧着することで、ガスバリアフィルム積層体を得ることができる。
【0194】
また、4枚以上のガスバリアフィルムを貼合する場合、ガスバリアフィルムを1枚ずつ貼合してもよいし、ガスバリアフィルム積層体を得た後に、得られたガスバリアフィルム積層体同士を貼合してもよい。
例えば、図4(a)に示すガスバリアフィルム積層体(80)を製造する場合は、ガスバリアフィルムを1枚ずつ貼合してもよいし、ガスバリアフィルム積層体(30b、30a)同士を貼合してもよい。
【0195】
4)電子デバイス用部材及び電子デバイス
本発明の電子デバイス用部材は、本発明のガスバリアフィルム又はガスバリアフィルム積層体からなることを特徴とする。従って、本発明の電子デバイス用部材は、耐熱性、耐溶剤性、層間密着性、及びガスバリア性に優れ、かつ、複屈折率が低く、優れた光学等方性を示すため、タッチパネル、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ等のディスプレイ部材;太陽電池用バックシート;等として好適に用いられる
【0196】
本発明の電子デバイスは、上記の電子デバイス用部材を備える。具体例としては、タッチパネル、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、電子ペーパー、太陽電池等が挙げられる。
【実施例】
【0197】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例になんら限定されるものではない。
以下において、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を表す。
【0198】
〔硬化性樹脂組成物の調製〕
(製造例1)硬化性樹脂組成物1の調製
熱可塑性樹脂(A)として、ポリスルホン系樹脂(PSF)のペレット(BASF社製、ULTRASON S3010、Tg=180℃)60部をジクロロメタンに溶解して、PSFの15質量%溶液を調製した。次いで、この溶液に、硬化性単量体(B)として、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学工業社製、ADCP)40部、及び、重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(BASF社製、Irgacure819)1部を添加、混合して、硬化性樹脂組成物1を調製した。
【0199】
(製造例2〜5)硬化性樹脂組成物2〜5の調製
第1表に記載の配合割合に変更したことを除き、硬化性樹脂組成物1の調製法と同様の方法により、硬化性樹脂組成物2〜5を調製した。
【0200】
(製造例6)硬化性樹脂組成物6の調製
熱可塑性樹脂(A)として、シクロオレフィンコポリマー(COC)のペレット(JSR社製、ARTON F5023、Tg=165℃)40部をジクロロメタンに溶解して、COCの15質量%溶液を調製した。次いで、この溶液に、硬化性単量体(B)として、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学工業社製、ADCP)60部、及び、重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(BASF社製、Irgacure819)1部を添加、混合して、硬化性樹脂組成物6を調製した。
【0201】
(製造例7)硬化性樹脂組成物7の調製
熱可塑性樹脂(A)として、ポリスルホン系樹脂(PSF)のペレット(BASF社製、ULTRASON S3010、Tg=180℃)60部をジクロロメタンに溶解して、PSFの15質量%溶液を調製した。次いで、この溶液に、硬化性単量体(B)として、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(新中村化学工業社製、ABE300)40部、及び、重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(BASF社製、Irgacure819)1部を添加、混合して、硬化性樹脂組成物7を調製した。
【0202】
(製造例8)硬化性樹脂組成物8の調製
熱可塑性樹脂(A)として、ポリスルホン系樹脂(PSF)のペレット(BASF社製、ULTRASON S3010、Tg=180℃)60部をジクロロメタンに溶解して、PSFの15質量%溶液を調製した。次いで、この溶液に、硬化性単量体(B)として、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(新中村化学工業社製、ABPEF)40部、及び、重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(BASF社製、Irgacure819)1部を添加、混合して、硬化性樹脂組成物8を調製した。
【0203】
(製造例9)接合層付剥離シートの製造
ブチルアクリレート(BA)及びアクリル酸(AA)を用いて得られたアクリル系共重合体(質量比(BA:AA)=90:10、重量平均分子量550,000)100部とイソシアナート系架橋剤(東洋インキ社製、BHS−8515、濃度37.5質量%)0.22部を混合し、メチルエチルケトンで希釈して、不揮発分濃度30質量%の粘着剤を得た。
【0204】
次いで、得られた粘着剤を、コンマダイレクトコート法にて、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン剥離層を設けてなる剥離シート(リンテック社製、SP−PET381031)の剥離層表面に塗布し、得られた塗膜を100℃で1分間乾燥させて、厚み約10μmの接合層を形成して、接合層付剥離シートを作製した。
【0205】
(実施例1)
工程シートとしてのポリエチレンテレフテレート(PET)フィルム(東洋紡社製、PET50A−4100、厚み50μm、表面粗さRa:1.0nm、Rt:16nm)の易接着層とは反対側の面に、製造例1で得た硬化性樹脂組成物1をファウンテンダイ方式で、乾燥後の厚みが50μmになるように塗布し、得られた塗膜を50℃で2分間、次いで140℃で2分間加熱することで、塗膜を乾燥させた。
次に、この乾燥塗膜上に、PETフィルム(東洋紡社製、PET50A−4100、厚み50μm)を積層した。次いで、ベルトコンベア式紫外線照射装置(アイグラフィクス社製、製品名:ECS−401GX)を使用し、高圧水銀ランプ(アイグラフィクス社製、高圧水銀ランプ 製品名:H04−L41)にて、紫外線ランプ高さ150mm、紫外線ランプ出力3kw(換算出力120mW/cm)、光線波長365nmの照度が271mW/cm、光量が177mJ/cm(紫外線光量計:株式会社オーク製作所社製、UV−351)となる条件で、前記乾燥塗膜上に工程シートを介して紫外線照射を行った。次いで、同紫外線照射装置を使用し、紫外線ランプ高さ150mm、光線波長365nmの照度が271mW/cm、光量が600mJ/cmの条件で2回紫外線照射を行ない、紫外線の総光量を1377mJ/cmとして、硬化反応を行い、硬化樹脂層1を形成した。
【0206】
その後、PETフィルムを剥離し、硬化樹脂層1上に、ケイ素含有高分子として、ペルヒドロポリシラザンを主成分とするコーティング剤(「アクアミカNL110−20」、クラリアントジャパン社製)をスピンコート法で、乾燥後の厚みが150nmとなるように塗布し、120℃で2分間加熱して高分子樹脂層を形成した。
次に、プラズマイオン注入装置を用いて、下記プラズマイオン注入条件にて、高分子樹脂層の表面に、アルゴン(Ar)をプラズマイオン注入してガスバリア層を形成した。
次いで、工程シートとして用いたPETフィルムを剥離し、ガスバリアフィルム1を作製した。
【0207】
<プラズマイオン注入条件>
・ガス流量:100sccm
・Duty比:0.5%
・繰り返し周波数:1000Hz
・印加電圧:−10kV
・RF電源:周波数 13.56MHz、印加電力 1000W
・チャンバー内圧:0.2Pa
・パルス幅:5μsec
・処理時間(イオン注入時間):5分間
・搬送速度:0.2m/min
【0208】
(実施例2〜5)
硬化性樹脂組成物1に代えて、硬化性樹脂組成物2〜5を用いたことを除き、実施例1と同様にして硬化樹脂層2〜5を形成し、次いで、硬化樹脂層2〜5上に実施例1と同様にしてガスバリア層を形成して、ガスバリアフィルム2〜5を作製した。
【0209】
(実施例6)
実施例5と同様の方法により、硬化性樹脂組成物5を用いて硬化樹脂層5を形成した。次いで、硬化樹脂層5表面に、スパッタリング法により、厚み60nmの窒化ケイ素からなるガスバリア層を形成して、ガスバリアフィルム6を作製した。
【0210】
(実施例7)
硬化性樹脂組成物1に代えて、硬化性樹脂組成物6を用いたことを除き、実施例1と同様にして硬化樹脂層6を形成し、次いで、硬化樹脂層6上に実施例1と同様にしてガスバリア層を形成して、ガスバリアフィルム7を作製した。
【0211】
(実施例8,9)
硬化性樹脂組成物1に代えて、硬化性樹脂組成物7,8を用いたことを除き、実施例1と同様にして硬化樹脂層7,8を形成し、次いで、硬化樹脂層7,8上に実施例1と同様にしてガスバリア層を形成して、ガスバリアフィルム8,9を作製した。
【0212】
(比較例1)
硬化樹脂層1に代えて、PETフィルム(東洋紡社製、PET50A−4100、厚み50μm、Tg=90℃)を使用して、このPETフィルムの易接着面とは反対側の面にガスバリア層を形成したことを除き、実施例1と同様にしてガスバリアフィルム10を作製した。
【0213】
(比較例2)
硬化樹脂層5に代えて、PETフィルム(東洋紡社製、PET50A−4100、厚み50μm、Tg=90℃)を使用して、このPETフィルムの易接着面とは反対側の面にガスバリア層を形成したことを除き、実施例6と同様にしてガスバリアフィルム11を作製した。
【0214】
(比較例3)
ポリカーボネート(PC)ペレット(出光興産社製、タフロン LC1700、Tg=145℃)をジクロロメタンに溶解し、PCの10質量%溶液を調製した。この溶液を、ファウンテンダイ方式で、PETフィルム(東洋紡社製、PET50A−4100、厚み50μm)の易接着層の反対側の面に、乾燥後の厚みが50μmになるように塗布し、形成された塗膜を60℃で8時間、次いで130℃で3時間加熱乾燥した。その後、PETフィルムを剥離して膜厚50μmのPCフィルムを得た。
その後、硬化樹脂層1に代えて、上記のPCフィルムを使用したことを除き、実施例1と同様にしてガスバリア層を形成し、ガスバリアフィルム12を作製した。
【0215】
(比較例4)
硬化樹脂層1に代えて、比較例3で得られたPCフィルムを使用したことを除き、実施例6と同様にしてガスバリア層を形成し、ガスバリアフィルム13を作製した。
【0216】
(比較例5)
シクロオレフィンコポリマー(COC)のペレット(ポリプラスチックス社製、TOPAS 6017、Tg=180℃)をジクロロメタンに溶解し、COCの10質量%溶液を調製した。この溶液をファウンテンダイ方式で、工程シートとしてのPETフィルム(東洋紡社製、PET50A−4100、厚み50μm)の易接着層の反対側の面に、乾燥後の厚みが50μmになるように塗布し、形成された塗膜を60℃で8時間、次いで、130℃で3時間加熱乾燥した。その後、工程シートとして用いたPETフィルムを剥離して、膜厚50μmのCOCフィルムを得た。
硬化樹脂層1に代えて、上記のCOCフィルムを使用したことを除き、実施例1と同様にしてガスバリア層を形成し、ガスバリアフィルム14を作製した。
【0217】
(比較例6)
硬化樹脂層5に代えて、比較例5で得られたCOCフィルムを使用したことを除き、実施例6と同様にしてガスバリア層を形成し、ガスバリアフィルム15を作製した。
【0218】
(比較例7)
ポリスルホン系樹脂(PSF)のペレット(BASF社製、ULTRASON S3010、Tg=180℃)をジクロロメタンに溶解し、10質量%の溶液を調製した。この溶液をファウンテンダイ方式で、工程シートとしてのPETフィルム(東洋紡社製、PET50A−4100、厚み50μm)の易接着層の反対側の面に、乾燥後の厚みが50μmになるように塗布し、形成された塗膜を60℃で8時間、次いで、130℃で3時間加熱乾燥した。その後、工程シートとして用いたPETフィルムを剥離して、膜厚50μmのPSFフィルムを得た。
その後、硬化樹脂層1に代えて、上記のPSFフィルムを使用したことを除き、実施例1と同様にしてガスバリア層を形成し、ガスバリアフィルム16を作製した。
【0219】
(比較例8)
硬化樹脂層5に代えて、比較例7で得られたPSFフィルムを使用したことを除き、実施例6と同様にしてガスバリア層を形成し、ガスバリアフィルム17を作製した。
【0220】
<硬化樹脂層のガラス転移温度(Tg)の測定>
実施例1〜9で用いた硬化樹脂層1〜8について、粘弾性測定機器(ティー・エイ・インスツルメント社製、DMA Q800)を使用し、周波数11Hz、昇温速度3℃/分で0〜250℃の範囲で引張モードによる粘弾性を測定し、この測定で得られたtanδ(損失弾性率/貯蔵弾性率)の最大点の温度をガラス転移温度(Tg)とした。測定結果を第1表に示す。
また、比較例1〜8で用いたフィルムについて、同様にガラス転移温度(Tg)を測定した。測定結果を第2表に示す。
【0221】
<硬化樹脂層の耐溶剤性評価試験>
実施例1〜9で用いた硬化樹脂層1〜8を100mm×100mmに裁断し、それぞれ測定用サンプルを得た。
測定用サンプルを、予め質量を測定した150mm×150mmのナイロンメッシュ(#120)で包み、トルエン(100mL)中に3日間浸漬した後、取り出して、120℃で1時間乾燥させた。次いで、23℃相対湿度50%の条件下に3時間放置して調湿を行った後、その質量を測定して、以下の式によりゲル分率を測定した。結果を第1表に示す。
【0222】
【数2】
【0223】
硬化樹脂層の耐溶剤性は、ゲル分率が90%以上を「○」、90%未満を「×」として評価した。
また、比較例1〜8で用いたフィルムについて、同様にゲル分率を測定し、耐溶剤性を評価した。評価結果を第2表に示す。
【0224】
<硬化樹脂層の複屈折率の測定>
実施例1〜9で用いた硬化樹脂層1〜8について、位相差測定装置(王子計測機器社製、KOBRA−WR、波長:589nm)を使用し、温度が23℃の条件で、複屈折率を測定した。測定結果を第1表に示す。
また、比較例1〜8で用いたフィルムについて、同様に複屈折率を測定した。測定結果を第2表に示す。
【0225】
<ガスバリアフィルムの層間密着性評価試験>
実施例1〜9、及び比較例1〜8で得たガスバリアフィルム1〜17を、60℃、湿度90%条件下に150時間静置した後、碁盤目試験(JIS K−5400(1990年))を行い、ガスバリア層と、硬化樹脂層(又は基材フィルム)間の層間密着性を評価した。評価結果を第3表及び第4表に示す。
なお、100マスを観察し、90マス以上の剥がれが見られなかったものを「○」と評価し、それ以外を「×」と評価した。
【0226】
<ガスバリアフィルムの水蒸気透過率の測定>
実施例1〜9で得たガスバリアフィルム1〜9を、裁断装置(荻野精機製作所社製、スーパーカッター「PN1−600」)により、233mm×309mmの大きさに裁断し、測定用サンプルを得た。また、比較例1〜8で得たガスバリアフィルム10〜17も同様に裁断して、測定用サンプルを得た。
次いで、これらのサンプルを用いて、40℃、相対湿度90%の条件下で、水蒸気透過率測定装置(LYSSY社製、製品名「L89−5000」)を用いて水蒸気透過率を測定した。測定結果を第3表及び第4表に示す。
【0227】
<ガスバリアフィルムの光学等方性の評価>
実施例1〜9及び比較例1〜8で得たガスバリアフィルム1〜9及び10〜17の光学等方性を、用いた硬化樹脂層またはフィルムの複屈折率から評価した。
硬化樹脂層またはフィルムの複屈折率が、20×10−5未満のガスバリアフィルムを「○」と評価し、20×10−5以上のガスバリアフィルムを「×」と評価した。評価結果を第3表、第4表に示す。
【0228】
<ガスバリアフィルムの耐熱性評価試験>
実施例1〜9及び比較例1〜8で得たガスバリアフィルム1〜9、及び10〜17を幅4.5mmに裁断して、それぞれ測定用サンプルを得た。
熱機械分析装置(マック・サイエンス社製、TMA4000S)に測定用サンプルをチャック間距離が15mmになるように固定した。次いで、−2gfの一定荷重(引張方向に2gfの荷重)をかけながら、雰囲気温度を23℃から150℃まで、昇温速度5℃/分で昇温し、そのまま150℃で30分間保持した。このときの元の長さ(15mm)に対する縮み量の割合(収縮率)を求めた。収縮率が0.5%未満の場合を耐熱性が「○」、収縮率が0.5%超の場合を耐熱性が「×」と評価した。評価結果を第3表、第4表に示す。
【0229】
【表1】
【0230】
【表2】
【0231】
【表3】
【0232】
【表4】
【0233】
第1表〜第4表から、以下のことがわかる。
実施例1〜9のガスバリアフィルム1〜9の硬化樹脂層1〜8は、ガラス転移温度(Tg)が高く、複屈折率が低く、ゲル分率も高い。したがって、この硬化樹脂層1〜8を用いたガスバリアフィルム1〜9は、耐熱性及び耐溶剤性に優れ、光学等方性に優れるガスバリアフィルムである。
また、ガスバリアフィルム1〜9は、ガスバリア層と硬化樹脂層との層間密着性に優れ、ガスバリア性にも優れている。
一方、比較例1、2で用いたPETフィルムは、ゲル分率が高く、耐溶剤性に優れるものの、ガラス転移温度(Tg)が低く、耐熱性に劣り、また複屈折率が高い。したがって、比較例1、2で得られるガスバリアフィルム10、11は、耐熱性に劣り、また光学等方性に劣る。また、比較例1で得られるガスバリアフィルム10はガスバリア層と硬化樹脂層との層間密着性にも劣るものである。
さらに、比較例3〜8で用いたPCフィルム、COCフィルムおよびPSFフィルムは、ガラス転移温度(Tg)が高く、耐熱性に優れるものの、耐溶剤性に劣るものである。また、PCフィルムおよびPSFフィルムは、複屈折率も高く、複屈折性も不十分であった。
以上より、硬化性単量体(B)を用いることで得られる効果は、実施例と比較例を比べることで示される。すなわち、硬化性単量体(B)を用いることで、耐熱性、耐溶剤性、層間密着性、及びガスバリア性に優れ、複屈折率の低いガスバリアフィルムを得ることができる。
【0234】
(実施例10〜16)
実施例1〜7において、硬化樹脂層の乾燥後の厚みを10μmに変更したことを除き、実施例1〜7と同様にして、硬化樹脂層9〜14を形成し、次いで硬化樹脂層9〜14上にガスバリア層を形成して、ガスバリアフィルム18〜24を作製した。
硬化樹脂層9〜14とガスバリアフィルム18〜24の詳細を、それぞれ、第5表、第6表に示す。
【0235】
【表5】
【0236】
【表6】
【0237】
(実施例17)
実施例10で得たガスバリアフィルム18〔工程シート(PETフィルム)を硬化樹脂層から剥離する前のもの〕を2枚用意し、1枚のガスバリアフィルム18のガスバリア層面と、製造例9で得た接合層付剥離シートの接合層面とを貼り合わせた。次いで、貼り合わせた接合層付剥離シートの剥離シートを剥離して露出した接合層面と、もう1枚のガスバリアフィルム18のガスバリア層面とを貼り合わせた後、両面の工程シートを剥離し、ガスバリアフィルム18が2枚積層してなるガスバリアフィルム積層体1を作製した。
【0238】
(実施例18〜23)
ガスバリアフィルム18の代わりに、実施例11〜16で得たガスバリアフィルム19〜24を用いたことを除き、実施例17と同様にしてガスバリアフィルム積層体2〜7を作製した。
【0239】
(比較例9〜12)
ガスバリアフィルム18の代わりに、比較例1〜3、7で得たガスバリアフィルム10〜12、16を用いたことを除き、実施例17と同様にしてガスバリアフィルム積層体8〜11を作製した。
【0240】
(実施例24)
実施例17で得たガスバリアフィルム積層体1を2枚用意し、1枚のガスバリアフィルム積層体1の硬化樹脂層面と、製造例9で得た接合層付剥離シートの接合層面とを貼り合せた。
さらに、貼り合せた接合層付剥離シートの剥離シートを剥離して露出した接合層面と、もう1枚のガスバリアフィルム積層体1の硬化樹脂層面とを貼り合せることにより、ガスバリアフィルム積層体1を2枚(すなわち、ガスバリアフィルム18を4枚)貼合してなるガスバリアフィルム積層体12を作製した。
【0241】
(実施例25,26)
ガスバリアフィルム積層体1の代わりに、実施例22、23で得たガスバリアフィルム積層体6、7を用いたことを除き、実施例24と同様にして、ガスバリアフィルム積層体13、14を作製した。
【0242】
<ガスバリアフィルム積層体の水蒸気透過率の測定>
実施例17〜26及び比較例9〜12で得たガスバリアフィルム積層体1〜14について、上記と同様の方法により、水蒸気透過率を測定した。測定結果を第7表、第8表に示す。
【0243】
<ガスバリアフィルム積層体の光学等方性の評価>
実施例17〜26及び比較例9〜12で得たガスバリアフィルム積層体1〜14の光学等方性を、用いた硬化樹脂層またはフィルムの複屈折率から評価した。
硬化樹脂層またはフィルムの複屈折率が、20×10−5未満のガスバリアフィルム積層体を「○」と評価し、20×10−5以上のガスバリアフィルム積層体を「×」と評価した。評価結果を第7表、第8表に示す。
【0244】
<ガスバリアフィルム積層体の耐熱性評価試験>
実施例17〜26及び比較例9〜12で得たガスバリアフィルム積層体1〜14を幅4.5mmに裁断して、それぞれ測定用サンプルを得た。
熱機械分析装置(マック・サイエンス社製、TMA4000S)に測定用サンプルをチャック間距離が15mmになるように固定した。次いで、−2gfの一定荷重(引張方向に2gfの荷重)をかけながら、雰囲気温度を23℃から150℃まで、昇温速度5℃/分で昇温し、そのまま150℃で30分間保持した。このときの元の長さ(15mm)に対する縮み量の割合(収縮率)を求め、収縮率が0.5%未満の場合を耐熱性が「○」、収縮率が0.5%超の場合を耐熱性が「×」と評価した。評価結果を第7表、第8表に示す。
【0245】
【表7】
【0246】
【表8】
【0247】
第7表、第8表から、以下のことがわかる。
実施例17〜23で得たガスバリアフィルム積層体1〜7、実施例24〜26で得たガスバリアフィルム積層体12〜14は、耐熱性に優れ、水蒸気透過率が極めて低い。
一方、比較例9、10のガスバリアフィルム積層体8、9は耐熱性に劣る。また、比較例11、12のガスバリアフィルム積層体11、12は、複屈折率が大きいフィルムを用いて得られたガスバリアフィルムを貼合したものであり、光学等方性に劣るものである。
【符号の説明】
【0248】
1,1a,1b,1c,1d・・・硬化樹脂層
2,2a,2b,2c,2d,2’,2”・・・ガスバリア層
3,3a,3b,3c・・・接合層
4・・・剥離シート
10,10a,10b,10c,20・・・ガスバリアフィルム
30,30a,30b,40,40a,40b,50,50a,50b,60,70,80,90,100,110,120・・・ガスバリアフィルム積層体
130・・・接合層付剥離シート
140・・・接合層付ガスバリアフィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6