(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1工程において、前記排油液を、前記固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の曇点よりも10〜50℃高い温度に加熱する、前記請求項1〜3のいずれかに記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
前記成分Cの含有量が、前記固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物中、16〜74重量%である、前記請求項1〜4のいずれかに記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
前記成分Bが、ラウリル基(n−ドデシル基)、イソドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基及びスチレン化フェノール基からなる群より選ばれる1種以上の炭化水素基を有する非イオン性界面活性剤である、請求項1〜5のいずれかに記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
前記成分Bが、パルミチルトリメチルアンモニウム塩及びステアリルトリメチルアンモニウム塩から選ばれる1種以上のカチオン界面活性剤である、請求項1〜5のいずれかに記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
第1工程において、排油液を前記固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の曇点よりも10〜50℃高い温度に加熱する、請求項1〜9のいずれかに記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
さらに、前記第2工程において前記排油液から少なくとも前記下層を除去して得た残液に、前記成分A、前記成分B、及び前記成分Cのうちの少なくとも1成分を添加して、固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物を得る第3工程と、を含む、請求項1〜11のいずれかに記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
前記第3工程において、前記残液への、成分A、成分B、及び成分Cからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分の添加量を、残液中の成分Aの含有量、成分B及び成分Cの含有量を測定し、当該測定結果に基づき決定する、請求項12に記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
前記第3工程において、固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物を用いて固定砥粒ワイヤソーにてインゴットを切断する切断工程及び前記粉末除去工程に伴う成分Aの減少量、成分Bの減少量、及び成分Cの減少量を各々予め見積っておき、成分A、成分B及び成分Cからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を排油液又は残液に補給されるようにする、請求項12に記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明では、使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物(以下、「固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物」を単に「切削油組成物」と称する場合もある。)と切削粉末とを含む排油液を、切削油組成物の曇点以上の温度に加熱することにより、排油液を、ポリエーテル化合物を主成分とする上層と、水と切削粉末とを主成分とする下層とに分離し、少なくとも上記下層を除去することにより、排油液から切削粉末の除去を行う。
【0013】
本発明の使用済み切削油組成物の処理方法および再生方法では、下層に含まれる特定のポリエーテル化合物の量が少なく、特定のポリエーテル化合物と、切削粉末との分離が良好に行われる。すなわち、本発明では、高い分離効率で排油液から切削粉末を分離できる。しかも、本発明では、切削粉末と前記特定のポリエーテル化合物との分離に、曇点を利用した分離方法を採用し、さらに特定の界面活性剤を用いることにより切削粉末を水層へ移行させることができ、遠心分離装置のような特別な装置を用いなくても、高い分離効率で排油液から切削粉末を分離でき、経済的である。故に、排油液から少なくとも下層を除去することにより得られ、特定のポリエーテル化合物を含む残液を再利用すれば、効率よく切削油組成物を再生できる。また、使用済み切削油組成物を廃棄する場合は、排油液から、少なくとも下層を除去することにより予め水と切削粉末を除くことが可能となり、例えば、上記の残液を燃焼処理等により容易に廃棄でき、排油液の廃棄処理が容易となる。
【0014】
[固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物]
本発明の切削油組成物は、固定砥粒ワイヤソーによるインゴットの切断に使用される切削油組成物であり、下記の特定のポリエーテル化合物(成分A)と、特定の界面活性剤(成分B)と、水(成分C)とを含み、固定砥粒から外れた砥粒を含む場合があるが、原則遊離砥粒は含まない。
【0015】
(成分A:ポリエーテル化合物)
本発明の切削油組成物は、固定砥粒ワイヤソー(以下、単に「ワイヤソー」と称する場合もある。)によるインゴットの切断後に得られる、切削油組成物が付着したインゴットのスライス品の、洗浄の容易化、ワイヤソーの切断性能の向上、及び切削粉末の分離効率向上の観点から、下記一般式(1)で表されるポリエーテル化合物、及び下記一般式(2)で表されるポリエーテル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリエーテル化合物(成分A)を含有する。
【0016】
[化7]
R
1−O−(AO)
n−R
1` (1)
【0018】
ただし、上記一般式(1)中、R
1は炭素数が1〜8の水酸基を含んでもよい炭化水素基、R
1`は水素原子又はメチル基、AOは炭素数が2〜4のオキシアルキレン基、nはAOの平均付加モル数であって2〜20を表す数である。
【0019】
成分Aに一般式(1)で表されるポリエーテル化合物が含まれる場合、一般式(1)で表されるポリエーテル化合物は、成分Aに1種のみ含まれていてもよいが、複数種含まれていてもよい。
【0020】
前記一般式(1)中のR
1(炭化水素基)の炭素数は、ワイヤソーの切断性能の向上、及びスライス品の洗浄の容易化の観点から、1〜8であるが、同様の観点から、2〜8が好ましく、3〜5がより好ましい。また、前記一般式(1)中のR
1(炭化水素基)の炭素数は、切削粉末の分離効率向上及び切削油組成物の低発泡化の観点から、1〜6が好ましく、2〜4がより好ましい。
【0021】
R
1(炭化水素基)は、脂肪族及び芳香族のいずれの基であってもよいが、成分Aの水への分散性向上の観点から、脂肪族が好ましい。脂肪族においては、飽和及び不飽和のいずれの基であってもよく、直鎖及び分岐鎖のいずれの基であってもよい。R
1としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基が挙げられるが、なかでも、切削粉末の分離効率向上及び切削油組成物の低発泡化の観点から、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基が好ましく、プロピル基、ブチル基及びイソブチル基がより好ましく、プロピル基及びブチル基がさらに好ましい。R
1`は水素原子又はメチル基であり、成分Aの水への分散性向上の観点から、水素原子が好ましい。
【0022】
前記一般式(1)中のAOは、切削油組成物の曇点の制御が容易であるという観点から、炭素数が2のオキシアルキレン基(オキシエチレン基(EO))、炭素数が3のオキシアルキレン基(オキシプロピレン基(PO))、及び炭素数が4のオキシアルキレン基(オキシブチレン基(BO))からなる群から選ばれる少なくとも1種であるが、同様の観点から、オキシプロピレン基を有することが好ましく、オキシプロピレン基のみからなることがより好ましい。
【0023】
前記一般式(1)中のnは、切削粉末の分離効率向上、スライス品の洗浄の容易化、切削油組成物の流動性の向上、及び切削油組成物の低発泡化の観点から、2〜20であり、2〜16が好ましく、2〜10がより好ましく、2〜6がさらに好ましく、2〜4がよりさらに好ましい。
【0024】
前記一般式(1)で表されるポリエーテル化合物が、炭素数の異なるオキシアルキレン基を2種以上含む場合、各種オキシアルキレン基の配列は、ブロックでもランダムでもよい。各種オキシアルキレン基の配列がブロックである場合、各種のオキシアルキレン基の平均付加モル数の総和が上記範囲内にある限り、各種オキシアルキレン基のブロック数はそれぞれ1個であってもよいが2個以上であってもよい。2種以上のオキシアルキレン基のうちのいずれか1種のオキシアルキレン基からなるブロックの数が2個以上である場合、各ブロックにおけるオキシアルキレン基の繰り返し数は、相互に同じであってもよいが、異なっていてもよい。前記一般式(1)で表されるポリエーテル化合物は、切削粉末の分離効率向上の観点から、オキシアルキレン基としてオキシエチレン基とオキシプロピレン基の両方を含み、オキシエチレン基とオキシプロピレン基の配列がブロックであると好ましい。オキシエチレン基のブロックの数、オキシプロピレン基のブロックの数は、各平均付加モル数が上記範囲内にある限り、それぞれ1個又は2個以上であってもよいが1個が好ましい。また、前記一般式(1)で表されるポリエーテル化合物は、切削粉末の分離効率向上の観点から、オキシアルキレン基としてオキシエチレン基を含む化合物とオキシアルキレン基としてオキシプロピレン基を含む化合物との混合物、叉は、オキシアルキレン基としてオキシエチレン基のみを含む化合物とオキシアルキレン基としてオキシプロピレン基のみを含む化合物との混合物であると好ましい。
【0025】
前記一般式(1)で表わされるポリエーテル化合物は、例えば、水酸化カリウム等のアルカリ等を触媒として用い、1価アルコールやフェノールにアルキレンオキサイド化合物を付加することによって得ることができる。
【0026】
前記一般式(2)中、AOは炭素数が2〜4のオキシアルキレン基、m1、m2及びm3は各々AOの平均付加モル数であり、m1とm2とm3の総和(m1+m2+m3)は1〜20を表す数である。成分Aに一般式(2)で表されるポリエーテル化合物が含まれる場合、一般式(2)で表されるポリエーテル化合物は、成分Aに1種のみ含まれていてもよいが、複数種含まれていてもよい。
【0027】
前記一般式(2)中のAOは、前記曇点の制御が容易であるという観点から、炭素数が2のオキシアルキレン基(オキシエチレン基)、炭素数が3のオキシアルキレン基(オキシプロピレン基)、及び炭素数が4のオキシアルキレン基(オキシブチレン基)からなる群から選ばれる少なくとも1種であるが、切削粉末の分離効率向上の観点から、オキシプロピレン基が好ましい。
【0028】
前記一般式(2)中のm1とm2とm3の総和は、切削粉末の分離効率向上の観点から、1〜20であるが、1〜18が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜10がさらに好ましく、1〜4がよりさらに好ましい。前記一般式(2)で表されるポリエーテル化合物は、炭素数の異なるオキシアルキレン基を2種以上含んでいてもよい。
【0029】
前記一般式(2)で表されるポリエーテル化合物に含まれる、平均付加モル数がm1のオキシアルキレン基、平均付加モル数がm2のオキシアルキレン基、平均付加モル数がm3のオキシアルキレン基は、同じであってもよいが、異なっていてもよい。前記一般式(2)で表されるポリエーテル化合物に含まれる、平均付加モル数がm1のオキシアルキレン基、平均付加モル数がm2のオキシアルキレン基、平均付加モル数がm3のオキシアルキレン基の少なくとも1つが、炭素数の異なるオキシアルキレン基を2種以上含む場合、各種オキシアルキレン基の配列は、ブロックでもランダムでもよく、2種以上のオキシアルキレン基のうちのいずれか1種のオキシアルキレン基からなるブロックの数が2個以上である場合、各ブロックにおけるオキシアルキレン基の繰り返し数は、相互に同じであってもよいが、異なっていてもよい。
【0030】
前記一般式(2)で表わされるポリエーテル化合物は、例えば、水酸化カリウム等のアルカリ等を触媒として用い、グリセリン等の3価アルコールにアルキレンオキサイド化合物を付加することによって得ることができる。
【0031】
切削油組成物におけるポリエーテル化合物(成分A)の含有量は、切削粉末の分離効率向上、ポリエーテル化合物の回収率の向上、スライス品の洗浄の容易化、及びワイヤソーの切断性能の向上の観点から、25〜75重量%であるが、30〜70重量%が好ましく、40〜70重量%がより好ましく、40〜60重量%がさらに好ましく、40〜56重量%がよりさらに好ましい。
【0032】
(成分B:界面活性剤)
本発明の切削油組成物は、ワイヤソーによるインゴットの切断後に得られる切削油組成物が付着したインゴットのスライス品の洗浄の容易化、ワイヤソーの切断性能の向上、及び切削粉末の分離効率向上の観点から、炭素数12〜22の炭化水素基を有しHLBが17.0〜20.0の非イオン性界面活性剤、及び下記一般式(3)で表されるカチオン性界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤(成分B)を含有する。
【0033】
【化9】
ただし、一般式(3)中、R
2は炭素数が12〜22の炭化水素基、R
3はメチル基又は炭素数が12〜22までの炭化水素基、X
-は1価の陰イオンである。
【0034】
本明細書において、非イオン性界面活性剤のHLB値は、グリフィン法により、HLB値=20×(親水基の重量%)の式から算出したものをいう。HLBは、インゴットの切断後に得られる切削油組成物が付着したインゴットのスライス品の洗浄の容易化、ワイヤソーの切断性能の向上、及び切削粉末の分離効率向上の観点から、17.0〜20.0であり、17.5〜20.0がより好ましく、18.0〜20.0がさらに好ましく、18.2〜19.5がよりさらに好ましく、19.0〜19.5がよりさらに好ましい。
【0035】
非イオン性界面活性剤としては、炭素数12〜22のアルコールにアルキレンオキシドを付加した化合物、及びこれらの化合物のエステル、ポリアルキレングリコールの片末端に炭素数12〜22の炭化水素基がエーテル結合した化合物、ポリアルキレングリコールの両末端に炭素数12〜22の炭化水素基がエーテル結合した化合物、等が挙げられる。炭素数12〜22の炭化水素基は、不飽和基を含んでも良い。
【0036】
非イオン性界面活性剤の炭素数12〜22の炭化水素基としては、インゴットの切断後に得られる切削油組成物が付着したインゴットのスライス品の洗浄の容易化、ワイヤソーの切断性能の向上、及び切削粉末の分離効率向上の観点から、アルキル基、アルケニル基、アリール基が挙げられ、炭素数は16〜22が好ましく、炭素数16〜20がより好ましい。炭化水素基としては、具体的には、ラウリル基(n−ドデシル基)、イソドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基及びスチレン化フェノール基が挙げられ、パルミチル基、ステアリル基及びオレイル基が好ましく、ステアリル基及びオレイル基がより好ましく、ステアリル基がさらに好ましい。非イオン性界面活性剤は、これらの基を2個以上有していてもよいが、分離効率向上の観点から、1個のみ有することが好ましい。
【0037】
非イオン性界面活性剤の合成に使用されるアルキレングリコールとしては、炭素数が2のオキシアルキレン基(オキシエチレン基)、炭素数が3のオキシアルキレン基(オキシプロピレン基)、又は炭素数が4のオキシアルキレン基(オキシブチレン基)を有するものが好ましく、切削粉末の分離効率向上の観点から、オキシエチレン基が好ましい。成分Bに、炭素数12〜22の炭化水素基を有しHLBが17.0〜20.0の非イオン性界面活性剤が含まれる場合、上記非イオン性界面活性剤は、成分Bに1種のみ含まれていてもよいが、複数種含まれていてもよい。
【0038】
前記一般式(3)で表されるカチオン性界面活性剤は、4級塩型カチオン性界面活性剤であり、分子構造中に、炭素数が12〜22個の炭素水素基を、1又は2個有する化合物である。炭化水素基は飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖アルキル基であることが好ましい。R
2は炭化水素基であり、切削粉末の分離効率向上の観点から、その炭素数は12〜22であり、12〜20が好ましく、14〜18がより好ましく、16〜18がよりさらに好ましい。R
3は、切削粉末の分離効率向上の観点から、メチル基又は炭素数が12〜22の炭化水素基であり、メチル基又は炭素数が12〜20の炭化水素基が好ましく、メチル基又は炭素数が14〜18の炭化水素基がより好ましく、メチル基又は炭素数が16〜18の炭化水素基がさらに好ましく、メチル基がよりさらに好ましい。
【0039】
前記一般式(3)で表されるカチオン性界面活性剤としては、アルキル(炭素数12〜20)トリメチルアンモニウム塩、ジアルキル(炭素数12〜20)ジメチルアンモニウム塩等が挙げられ、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ミリスチルトリメチルアンモニウム塩、パルミチルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、オレイルトリメチルアンモニウム塩、タロートリメチルアンモニウム塩、水素化タロートリメチルアンモニウム塩、ジラウリルジメチルアンモニウム塩、ジミリスチルジメチルアンモニウム塩、ジパルミチルジメチルアンモニウム塩、ジステアリルジメチルアンモニウム塩、パルミチルステアリルジメチルアンモニウム塩等が挙げられ、これらを2種以上併用してもよい。これらのなかでも、切削粉末の分離効率向上の観点から、パルミチルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩が好ましい。
【0040】
X
-は、1価の陰イオンであり、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲンイオン等が挙げられる。これらの中でも、塩素イオン、臭素イオンが好ましい。
【0041】
切削油組成物における界面活性剤(成分B)の含有量は、切削粉末の分離効率向上、前記ポリエーテル化合物の回収率の向上、スライス品の洗浄の容易化、及びワイヤソーの切断性能の向上の観点から、1〜9重量%であるが、同様の観点から、1〜7重量%が好ましく、2〜7重量%がより好ましく、4〜7重量%がさらに好ましく、4〜6重量%がよりさらに好ましい。また、界面活性剤(成分B)の含有量は、切削時の泡発生等による操作性の向上の観点から3〜7重量%が好ましく、3〜6重量%がより好ましい。
【0042】
切削油組成物におけるポリエーテル化合物(成分A)と界面活性剤(成分B)の含有量の重量比(成分A/成分B)は、切削粉末の分離効率向上の観点から、6〜60が好ましく、同様の観点から、7〜30がより好ましく、8〜25がさらに好ましい。
【0043】
(成分C:水)
前記切削油組成物は、水を含有する。前記切削油組成物が水を含むため切削油組成物が曇点を有する。また、ワイヤソーによる切断時に切削油組成物は冷却効果を発揮できる。
【0044】
水(成分C)は、切削油組成物の、ポリエーテル化合物(成分A)と界面活性剤(成分C)と後述する任意成分とを除いた残部として含まれていればよいが、切削油組成物における水(成分C)の含有量は、切削油組成物の潤滑性向上の観点から74重量%以下が好ましく、69重量%以下がより好ましく、58重量%以下がさらに好ましく、56重量%以下がよりさらに好ましい。切削油組成物における水(成分C)の含有量は、切削油組成物の冷却効果によるワイヤソーの切断性能の向上の観点から、16重量%以上が好ましく、23重量%以上がより好ましく、33重量%以上がさらに好ましく、40重量%以上がよりさらに好ましい。よって、切削油組成物における水の含有量は、切削油組成物の潤滑性向上とワイヤソーの切断性能の向上の観点から、16〜74重量%が好ましく、23〜69重量%がより好ましく、23〜58重量%がさらに好ましく、33〜56重量%がよりさらに好ましく、40〜56重量%がよりさらに好ましい。
【0045】
前記切削油組成物に含まれる水には、例えば、超純水、純水、イオン交換水、又は蒸留水等を用いることができるが、超純水、純水、又はイオン交換水が好ましく、超純水がより好ましく使用される。なお、純水及び超純水は、例えば、水道水を活性炭に通し、イオン交換処理し、さらに蒸留したものを、必要に応じて所定の紫外線殺菌灯を照射、又はフィルターに通すことにより得ることができる。例えば、25℃での電気伝導率は、多くの場合、純水で1μS/cm以下であり、超純水で0.1μS/cm以下を示す。
【0046】
前記切削油組成物の曇点は、ワイヤソーの切断性能の向上、及び切削粉末の分離効率向上の観点から、30〜80℃であり、32〜70℃が好ましく、35〜65℃がより好ましく、35〜55℃がさらに好ましく、37〜50℃がよりさらに好ましく、保存安定性の観点から、40〜50℃がよりさらに好ましい。切削油組成物の曇点は、ポリエール化合物と界面活性剤の各構造及び両者の含有比率により調整できる。
【0047】
前記切削油組成物は、必要に応じて、炭化水素化合物、難水溶性のアルキルエステル類及び難水溶性のアルキルケトン類から選ばれた1種以上の化合物を任意成分として含有できる。これらの化合物を含有することにより、切削油組成物の潤滑性が向上する。
【0048】
前記炭化水素化合物としては、例えば、ウエハを洗浄する際の温度において液状である炭素数6〜30の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和結合を有するパラフィン類および/又はオレフィン類、或いはウエハを洗浄する際の温度において液状である芳香族および/又は脂肪族を含む炭化水素化合物が挙げられる。
【0049】
前記アルキルエステル類としては、例えば、ウエハを洗浄する際の温度において液状である炭素数6〜40の、モノエステル、ジエステル、トリエステル類が挙げられる。中でも炭素数6〜18の高級脂肪酸と炭素数2〜8のジオール又はトリオールとのエステル;炭素数1〜18の高級アルコールと炭素数2〜8のジカルボン酸又はトリカルボン酸とのエステルが好ましい。
【0050】
前記アルキルケトン類としては、炭素数6〜40のジアルキルケトンが好ましい。
【0051】
前記炭化水素化合物、難水溶性のアルキルエステル類及び難水溶性のアルキルケトン類は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0052】
前記切削油組成物には、さらに、任意成分として、増粘剤、分散剤、防錆剤、キレート剤、塩基性物質、他の界面活性剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0053】
前記切削油組成物には、前記ポリエーテル化合物などの各種成分の媒体として、水溶性の有機化合物が含まれていてもよい。
【0054】
(切削油組成物の調製方法)
前記切削油組成物の調製方法は、何ら制限されず、前記ポリエーテル化合物(成分A)、前記界面活性剤(成分B)及び水(成分C)、さらには任意成分を混合することによって調製できる。界面活性剤(成分B)は予め水と混合して水溶液としておくことが、切削油組成物を調製する操作性の向上の観点から好ましい。
【0055】
前記切削油組成物は、インゴットを切断する際の切削油として用いることができる。インゴットとしては、シリコンウエハ生産のためのシリコンインゴットが挙げられる。
【0056】
(使用済み切削油組成物の処理方法)
本発明の使用済み切削油組成物の処理方法は、固定砥粒ワイヤソーによるインゴットの切断に使用された、使用済み切削油組成物の処理方法であって、本発明の切削油組成物を用いたワイヤソーによるインゴットの切断で生じた、使用済み切削油組成物とインゴットの切削粉末とを含む排油液から、少なくとも切削粉末を除去する粉末除去工程を含む。粉末除去工程は、第1工程と、第2工程とを含む。第1工程では、排油液を切削油組成物の曇点以上の温度に加熱して、ポリエーテル化合物を主成分とする上層と、水と切削粉末とを主成分とする下層とに分離する。第2工程では、第1工程で2層に分離された排油液から少なくとも下層を除去する。
【0057】
ここで、「ポリエーテル化合物を主成分とする」とは、上層におけるポリエーテル化合物の含有量が、上層に含まれ得る他のいずれの成分よりも多いことを意味し、「水と切削粉末とを主成分とする」とは、下層における水の含有量と切削粉末の含有量の和が、下層に含まれ得る他のいずれの成分のそれよりも多いことを意味する。上層には、ポリエーテル化合物(成分A)以外に、切削粉末の水層への移行に寄与しなかった界面活性剤(成分B)が含まれ、上述した本発明の切削油組成物に含まれる任意成分のうち水に溶けにくい成分がさらに含まれる場合があるが、水や切削粉末はほとんど含まれず、好ましくは少なくとも切削粉末は含まれない。一方、下層には、水(成分C)と切削粉末以外に、切削粉末とともに水層に移行した界面活性剤(成分B)が含まれ、本発明の切削油組成物に含まれる任意成分のうち水に溶けやすい成分がさらに含まれる場合があり、ポリエーテル化合物(成分A)が少量含まれる場合もある。
【0058】
本発明の使用済み切削油組成物の処理方法では、切削粉末の除去を、本発明の切削油組成物の曇点よりも高い温度に排油液を加熱した時に生じる、ポリエーテル化合物(成分A)と水との分離現象を利用して行うので、簡単な操作、且つ高い分離効率で、排油液から切削粉末を分離できる。固定砥粒ワイヤソーによるインゴットの切断時に生じる切削粉末は、ポリエーテル化合物(成分A)、界面活性剤(成分B)と水(成分C)とを含む使用済み切削油組成物中に分散するので、そのままでは切削粉末の分離効率は悪い。しかし、曇点現象を利用して前記混合液を油層である上層と水層である下層に分離した場合、切削粉末は下層に含まれるので、この下層を除去することにより、切削粉末を高い効率で排油液から除去できる。故に、本発明の使用済み切削油組成物の処理方法では、例えば、排油液から少なくとも下層を除去して得られた残液の燃焼処理等による廃棄処理が容易化される。排油液から除去された下層については、例えば、切削粉末がシリコンインゴットの切削粉末である場合は、水を蒸発させて切削粉末をシリコン原料として再利用できる。
【0059】
本発明の使用済み切削油組成物の処理方法は、切削油組成物を用いて固定砥粒ワイヤソーにてインゴットを切断する切断工程の後に、使用済み切削油組成物中の切削粉末の除去を行う、インゴット切断方法に適用できる。インゴットの切断は、切削油組成物を、ワイヤソーと、インゴットの切断部位又はインゴット全体に供給しながら、且つ、ワイヤソーをインゴットに押し付けながら高速で移動走行させることによって行える。
【0060】
インゴットの切断に用いられるワイヤソー装置について特に制限はなく、従来から公知の装置を用いて行える。ワイヤソーについても、特に制限はなく、例えば、鉄又は鉄合金を主成分とするピアノ線にダイヤモンドやSiCからなる砥粒をニッケルや銅・クロムによるメッキにて固着させるか、又は樹脂接着材によって固着させたもの等が挙げられる。
【0061】
ワイヤソーは、例えば、ワイヤソー供給リールから供給され、メインローラー上に設けられた所定間隔の溝に巻きつけ配列される。ワイヤソーはメインローラーを所定の回転速度で回転させることによって走行移動でき、通常、400〜1000m/min程度となるように高速で走行移動する。尚、ワイヤソー装置は、一本のワイヤーによって切断加工を行うシングルタイプであってもよい。
【0062】
インゴットの切断により生じた排油液は、使用済み切削油組成物と切削粉末とを含み、例えば、ワイヤソー装置が有するディップ槽内に一時貯留される。
【0063】
(粉末除去工程)
前記切削粉末の除去は、前記排油液を、上層と下層とに分離する第1工程と、前記第1工程で2層に分離された排油液から、水と前記切削粉末を主成分とする下層を除去する第2工程とを含む。
【0064】
(第1工程)
第1工程では、まず、排油液を、切削油組成物の曇点以上の温度(分離操作温度)に加熱する。加熱前に、予め、排油液に水を添加して水の含有量を調製してもよい。その後、排油液を分離操作温度に保ったまま放置又は弱い撹拌をすると、排油液は、ポリエーテル化合物を主成分とする上層と、水と切削粉末とを主成分とする下層とに分離する。排油液を分離するには、例えば1時間分離操作温度に保てばよい。排油液の分離後は分離操作温度以下にしても分離の状態が維持される。
【0065】
切削油組成物の曇点(℃)は、切削油組成物の温度を上げていったとき、切削油組成物が白濁し始める温度のことである。切削油組成物の温度が上昇して水分子の運動が活発になると、切削油組成物中のポリエーテル化合物(成分A)の親水基部分と水分子との水素結合が切れて、ポリエーテル化合物は水に対する溶解性を失う。故に、ポリエーテル化合物(成分A)を含む排油液を、切削油組成物の曇点以上の温度に加熱した後、放置すれば、水よりも比重が小さいポリエーテル化合物(成分A)は水よりも上側に移動し、水と比重が大きい切削粉末は下側に移動し、排油液は2層に分離する。
【0066】
前記第1工程において、切削粉末の分離効率向上の観点から、排油液を、切削油組成物の曇点よりも10〜50℃高い温度(分離操作温度)に加熱することが好ましく、12〜50℃高い温度に加熱することがより好ましく、20〜50℃高い温度に加熱することがさらに好ましく、30〜50℃高い温度に加熱することがよりさらに好ましく、40〜50℃高い温度に加熱することがよりさらに好ましい。第1工程において、加熱された排油液の具体的な温度(分離操作温度)は、切削粉末の分離効率向上の観点から、40〜90℃が好ましく、45〜85℃がより好ましく、50〜85℃がさらに好ましく、55〜80℃がよりさらに好ましく、60〜80℃がよりさらに好ましく、70〜80℃がよりさらに好ましい。また、使用するエネルギーを抑制する観点から、排油液を、切削油組成物の曇点よりも、10〜40℃高い温度(分離操作温度)に加熱することが好ましく、10〜30℃高い温度に加熱することがより好ましく、12〜20℃高い温度に加熱することがさらに好ましい。使用するエネルギーを抑制する観点から、加熱された排油液の具体的な温度(分離操作温度)は、40〜80℃が好ましく、45〜80℃がより好ましく、45〜65℃がさらに好ましい。
【0067】
前記第1工程において、切削粉末の分離効率向上の観点から、排油液は、加熱前及び/又は加熱中に撹拌されると好ましい。
【0068】
(第2工程)
第2工程では、第1工程で2層に分離された排油液から、少なくとも、水と切削粉末を主成分とする下層を除去する。上層を再生利用する場合、第2工程では、再生された切削油組成物の品質向上の観点から、下層のみならず、下層に隣接した上層の一部も排油液から除去されると好ましい。排油液から除去された下層(水と切削粉末とを主成分として含む混合液)は、さらに遠心分離を行い、水と切削粉末の沈殿層とに分離することができる。この遠心分離を行う場合には、切削粉末の沈殿層のみを除去することもできる。遠心分離を行う場合の遠心力G(重力加速度)は、切削粉末が比較的容易に沈殿するため高遠心力は必要ではなく、遠心分離の操作性の観点から、1000〜5000Gが好ましく、1000〜4000Gがより好ましく、1000〜3000Gがさらに好ましい。
【0069】
(残液の再使用)
本発明の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の再生方法は、固定砥粒ワイヤソーによるインゴットの切断に使用された、本発明の切削油組成物を再生する方法である。
【0070】
本発明の切削油組成物の処理方法によって、上層と下層とに分離された排油液から少なくとも下層を除去することにより得られた残液における、ポリエーテル化合物(成分A)の濃度が25〜75重量%であり、界面活性剤(成分B)の濃度が1〜9重量%であり、残液に水(成分C)が含まれていれば、当該残液をそのまま切削油組成物としてインゴットの切断に再使用してもよい。残液におけるポリエーテル化合物(成分A)および界面活性剤(成分B)のうちの一方又は双方の濃度が上記所定の濃度範囲外の濃度である場合は、ポリエーテル化合物(成分A)、界面活性剤(成分B)、及び水(成分C)からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を残液に添加して、ポリエーテル化合物(成分A)の濃度が25〜75重量%であり、界面活性剤(成分B)の濃度が1〜9重量%であり、水を含む、本発明に係る切削油組成物を得、これをインゴットの切断に使用できる。また、残液に水(成分C)が含まれていない場合は、残液に少なくとも水を添加して、ポリエーテル化合物(成分A)の濃度が25〜75重量%であり、界面活性剤(成分B)の濃度が1〜9重量%であり、水を含む、本発明に係る切削油組成物を得、これをインゴットの切断に使用できる。
【0071】
前記残液への、ポリエーテル化合物(成分A)、界面活性剤(成分B)、及び水(成分C)からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分の添加量は、残液中のポリエーテル化合物(成分A)の含有量、界面活性剤(成分B)及び水(成分C)の含有量等を測定し、当該測定結果に基づき決定することが好ましい。又は、切削油組成物を用いて固定砥粒ワイヤソーにてインゴットを切断する切断工程及び前記粉末除去工程に伴うポリエーテル化合物(成分A)の減少量、界面活性剤(成分B)の減少量、及び水(成分C)の減少量を各々予め見積っておき、当該減少量と同量のポリエーテル化合物(成分A)、界面活性剤(成分B)及び水(成分C)からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分が、1つのスライス品又は複数のスライス品の形成により得られる排油液又は残液に補給されるようにしてもよい。成分A、成分B及び成分Cの含有量の測定には、例えば、滴定、NMR測定、液体クロマトグラフィー等を用いることができる。
【0072】
本発明は、更に以下<1>〜<30>を開示する。
【0073】
<1>
固定砥粒ワイヤソーによるインゴットの切断に使用された、使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法であって、
使用前の前記固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物は、
下記一般式(1)で表されるポリエーテル化合物、及び下記一般式(2)で表されるポリエーテル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリエーテル化合物(成分A)を25〜75重量%と、
炭素数12〜22の炭化水素基を有するHLBが17.0〜20.0の非イオン性界面活性剤、及び下記一般式(3)で表されるカチオン性界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤(成分B)を1〜9重量%と、
水(成分C)と、を含有し、
前記固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の曇点が30〜80℃であり、
前記固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物を用いた前記固定砥粒ワイヤソーによるインゴットの切断で生じた、使用済み前記固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物と前記インゴットの切削粉末とを含む排油液から、少なくとも前記切削粉末を除去する粉末除去工程を含み、
前記粉末除去工程が、
前記排油液を、前記固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の前記曇点以上の温度に加熱して、前記ポリエーテル化合物を主成分とする上層と、水と前記切削粉末とを主成分とする下層とに分離する第1工程と、
前記第1工程で分離された前記排油液から、少なくとも前記下層を除去する第2工程と、を含む、使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
[化10]
R
1−O−(AO)
n−R
1‘ (1)
ただし、上記一般式(1)中、R
1は炭素数が1〜8の水酸基を含んでもよい炭化水素基、R
1‘は水素原子又はメチル基、AOは炭素数が2〜4のオキシアルキレン基、nはAOの平均付加モル数であって2〜20を表す数である。
【化11】
ただし、上記一般式(2)中、AOは炭素数が2〜4のオキシアルキレン基、m1、m2及びm3は各々AOの平均付加モル数であり、m1とm2とm3の総和は1〜20を表す数である。
【化12】
ただし、上記一般式(3)中、R
2は炭素数が12〜22までの炭化水素基、R
3はメチル基又は炭素数が12〜22の炭化水素基、X
−は1価の陰イオンである。
<2>
前記インゴットがシリコンインゴットである、前記<1>に記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
<3>
前記第1工程において、前記排油液を40〜90℃に加熱する、前記<1>又は<2>に記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
<4>
前記第1工程において、前記排油液を、前記固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の曇点よりも10〜50℃高い温度に加熱する、前記<1>〜<3>のいずれかに記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
<5>
前記成分Cの含有量が、前記固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物中、16〜74重量%である、前記<1>〜<4>のいずれかに記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
<6>
前記成分Bが、HLBが18.2〜19.5の非イオン性界面活性剤である、前記<1>〜<5>のいずれかに記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
<7>
前記成分Bが、HLBが19.0〜19.5の非イオン性界面活性剤である、前記<1>〜<5>のいずれかに記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
<8>
前記成分Bが、ラウリル基(n−ドデシル基)、イソドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基及びスチレン化フェノール基からなる群より選ばれる1種以上の炭化水素基を有する非イオン性界面活性剤である、前記<1>〜<7>のいずれかに記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
<9>
前記成分Bが、パルミチルトリメチルアンモニウム塩及びステアリルトリメチルアンモニウム塩から選ばれる1種以上のカチオン界面活性剤である、前記<1>〜<5>のいずれかに記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
<10>
前記成分Bの含有量が、4〜7重量%である、前記<1>〜<9>のいずれかに記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
<11>
前記成分Bの含有量が、4〜6重量%である、前記<1>〜<9>のいずれかに記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
<12>
前記成分Aの一般式(1)のAOが、オキシプロピレン基を有する、前記<1>〜<11>のいずれかに記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
<13>
前記成分Aの一般式(1)のR
1の炭素数が、3〜5である、前記<1>〜<12>のいずれかに記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
<14>
前記成分Aの一般式(1)のR
1の炭素数が、2〜4である、前記<1>〜<12>のいずれかに記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
<15>
前記成分Aの一般式(1)のR
1`が、水素原子である、前記<1>〜<14>のいずれかに記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
<16>
前記成分Aの一般式(1)のnが、2〜16である、前記<1>〜<15>のいずれかに記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
<17>
前記成分Aの一般式(1)のnが、2〜6である、前記<1>〜<15>のいずれかに記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
<18>
前記成分Aの一般式(2)のAOが、オキシプロピレン基である、前記<1>〜<11>のいずれかに記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
<19>
前記成分Aの一般式(2)のm1とm2とm3の総和が1〜12である、前記<1>〜<18>のいずれかに記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
<20>
前記成分Aの含有量が40〜70重量%である、前記<1>〜<19>のいずれかに記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
<21>
前記成分Cの含有量が16〜74重量%である、前記<1>〜<20>のいずれかに記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
<22>
前記成分Cの含有量が23〜58重量%である、前記<1>〜<20>のいずれかに記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
<23>
前記固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の曇点が35〜65℃である、前記<1>〜<22>のいずれかに記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
<24>
第1工程において、排油液を前記固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の曇点よりも10〜50℃高い温度に加熱する、前記<1>〜<23>のいずれかに記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
<25>
第1工程において、排油液を前記固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の曇点よりも20〜50℃高い温度に加熱する、前記<1>〜<23>のいずれかに記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
<26>
第2工程において、前記排油液から除去された下層に対して遠心分離を行う、前記<1>〜<25>のいずれかに記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
<27>
さらに、前記第2工程において前記排油液から少なくとも前記下層を除去して得た残液に、前記成分A、前記成分B、及び前記成分Cのうちの少なくとも1成分を添加して、固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物を得る第3工程と、を含む、前記<1>〜<26>のいずれかに記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
<28>
前記第3工程において、前記残液への、成分A、成分B、及び成分Cからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分の添加量を、残液中の成分Aの含有量、成分B及び成分Cの含有量を測定し、当該測定結果に基づき決定する、前記<27>に記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
<29>
前記第3工程において、固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物を用いて固定砥粒ワイヤソーにてインゴットを切断する切断工程及び前記粉末除去工程に伴う成分Aの減少量、成分Bの減少量、及び成分Cの減少量を各々予め見積っておき、成分A、成分B及び成分Cからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を排油液又は残液に補給されるようにする、前記<27>に記載の使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の処理方法。
<30>
固定砥粒ワイヤソーによるインゴットの切断に使用された、使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の再生方法であって、
使用前の前記固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物は、
下記一般式(1)で表されるポリエーテル化合物、及び下記一般式(2)で表されるポリエーテル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリエーテル化合物(成分A)を25〜75重量%と、
炭素数12〜22の炭化水素基を有するHLBが17.0〜20.0の非イオン性界面活性剤、及び下記一般式(3)で表されるカチオン性界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤(成分B)を1〜9重量%と、
水(成分C)と、を含有し、
前記固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の曇点が30〜80℃であり、
前記固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物を用いた前記固定砥粒ワイヤソーによるインゴットの切断で生じた、使用済み前記固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物と前記インゴットの切削粉末とを含む排油液を、前記固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の前記曇点以上の温度に加熱して、前記ポリエーテル化合物を主成分とする上層と、水と前記切削粉末とを主成分とする下層とに分離する第1工程と、
前記第1工程で分離された前記排油液から、少なくとも前記下層を除去する第2工程と、
前記第2工程において前記排油液から少なくとも前記下層を除去して得た残液に、前記成分A、前記成分B、及び前記成分Cのうちの少なくとも1成分を添加して、固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物を得る第3工程と、を含む、使用済み固定砥粒ワイヤソー用切削油組成物の再生方法。
[化13]
R
1−O−(AO)
n−R
1‘ (1)
ただし、上記一般式(1)中、R
1は炭素数が1〜8の水酸基を含んでもよい炭化水素基、R
1‘は水素原子又はメチル基、AOは炭素数が2〜4のオキシアルキレン基、nはAOの平均付加モル数であって2〜20を表す数である。
【化14】
ただし、上記一般式(2)中、AOは炭素数が2〜4のオキシアルキレン基、m1、m2及びm3は各々AOの平均付加モル数であり、m1とm2とm3の総和は1〜20を表す数である。
【化15】
ただし、上記一般式(3)中、R
2は炭素数が12〜22までの炭化水素基、R
3はメチル基又は炭素数が12〜22までの炭化水素基、X
−は1価の陰イオンである。
【実施例】
【0074】
(切削油組成物の調製)
表1、2に記載の組成(重量%)となるように各成分を配合及び混合することにより、実施例1〜22及び比較例1〜13の切削油組成物を得た。具体的には、市販の界面活性剤又はその水溶液に水を加えて、界面活性剤と水の量を調整した後、それらとポリエーテル化合物とを混合して、切削油組成物を得た。
【0075】
(曇点の測定)
(1)表1、2に記載の切削油組成物を容量100mLの試験管に50mL入れる。
(2)水浴槽に前記試験管を入れ、ガラス棒状の温度計を用いて手動で切削油組成物を攪拌しながら、切削油組成物の温度を室温から2℃/minの速度で上げる。
(3)攪拌しても濁りが消えない状態になったところで切削油組成物の温度を読み取る。
(4)試験管を水浴槽から取り出し、25℃の雰囲気下で攪拌しながら、温度を室温まで徐々に下げる。
(5)(2)〜(4)を2回繰り返し、(3)で読み取った温度の平均値を曇点とする。
【0076】
(液均一性の評価)
(1)表1、2に記載の切削油組成物を容量100mLの試験管に50mL入れる。
(2)30℃に調整した恒温槽に前記試験管を投入し、1時間後に目視にて切削油組成物の状態を確認し、下記の指標を用いて液均一性の評価をした。
○:透明
×:白濁
(3)白濁(×)した切削油組成物は、切削中にその油分と水分とが分離して、切削性に悪影響を及ぼす。故に、透明(○)であった切削油組成物についてのみ、下記のSi分離性の評価を行った。
【0077】
(Si分離性の測定)
50mLのポリ容器に、切削油組成物を25g、及び粒径5μmφのSi粉末(高純度化学社製)を5g投入した後、さらにZrビーズ(粒径1mmφ、ニッカトー社製)50gを添加した。次いで、ポリ容器をペイントシェーカー(ASADA社製PC-1773)にセットして5時間振動させて、Si粉末を切削油組成物中で粉砕することにより、固定砥粒ワイヤソーを用いた実際の太陽電池用Siウエハ切削時に発生するSi切削粉末に近いSi粉末と切削油組成物とを含む評価用サンプル液を排油液として調製した。この際、粉砕されたSi粉末の粒径は約1〜1.5μmとなっていることを、粒径測定機(堀場社製、LA−920)で確認した。次に、評価用サンプル液をスポイドにて試験管に10mL採取し、試験管に蓋をして評価用サンプル液の温度を温浴にて、表1及び表2に記載の分離操作温度に昇温させてその温度に保ったまま1時間放置した。分離操作温度は、評価用サンプル液の温度であるが、温浴の温度と同一視できるので、温浴の温度を分離操作温度として測定した。1時間放置後の評価用サンプル液から観察されるSi分離性を、以下に示す指標を用いて評価した。また、
図1に、Si分離性が、7、5、3及び1である場合の例を示した。
【0078】
[Si分離性の評価基準]
7:上層と下層の境界が試験管の目盛りの5.5mL以下
6:上層と下層の境界が試験管の目盛りの5.5超〜6.5mL
5:上層と下層の境界が試験管の目盛りの6.5超〜7.5mL
4:上層と下層の境界が試験管の目盛りの7.5超〜8.5mL
3:上層と下層の境界が試験管の目盛りの8.5超〜9.5mL
2:上層と下層の境界が試験管の目盛りの9.5mL超
1:上層と下層の境界が試験管の目盛りの境界なし(上層と下層の境界が確認できず)又は不明瞭
尚、Si分離性は7が最も良い。Si分離性が良いほど、下層に含まれるポリエーテル化合物の量が少ない。上層はポリエーテル化合物を主成分とし、下層は水とSi粉末とを主成分とするので、Si分離性が良いものほど、上層の量が多くなり、分離した排油液から少なくとも下層を除去して得られる残液の再使用性が良好であると言える。
【0079】
表1に示されるように、実施例1〜22の切削油組成物と切削粉末とを含む排油液を、切削油組成物の曇点以上の温度に加熱して、上層と下層とに分離すれば、下層の除去により排油液から高い効率で切削粉末を除去できる。また、曇点現象を利用して排油液を上層と下層とに分離すると、切削粉末と前記ポリエーテル化合物との分離が良好に行われるので、排油液からの下層の除去の結果、高い回収率でポリエーテル化合物を含有する組成物を回収できる。
【0080】
さらに、実施例1、比較例1、2及び6の切削油組成物を含む評価用サンプル液について、下記の方法によりSi分離性の向上を試みた。具体的には、Si分離性を評価した後の試験管を遠心分離機(iuchi社製CN-1040)にセットし、4000rpmで15分間処理(1500G)することにより、Si分離性の向上を試みた。上記[Si分離性の評価基準]に基づいて、遠心分離前後のSi分離性を比較した。
【0081】
Si分離性が「4」の実施例1では、遠心分離によりSi分離性が「7」となり顕著に向上したが、Si分離性が「1」又は「2」の比較例1、2及び6では、遠心分離をしてもSi分離性がそれぞれ「1」、「2」及び「2」であり、分離性はほとんど向上しなかった。
【0082】
表1及び表2中の各成分の詳細は下記のとおりである。下記の数字1.〜10.は、表1及び表2中のポリエーテル化合物の番号と対応しており、カギ括弧内の数値は、各成分の切削剤組成物中の重量%を示す。
ポリエーテル化合物
1.シ゛フ゜ロヒ゜レンク゛リコールモノフ゜ロヒ゜ルエーテル/iso-フ゛チルシ゛ク゛リコール [25/25]
(シ゛フ゜ロヒ゜レンク゛リコールモノフ゜ロヒ゜ルエーテル:R
1の炭素数は3、AO=PO、n=2、日本乳化剤社製/iso-フ゛チルシ゛ク゛リコール:R
1の炭素数は4、AO=EO、n=2、日本乳化剤社製)
2.C
4O(EO)
5(PO)
4H [50]
(R
1は炭素数4(フ゛チル基)、AO=EOとPO(ブロック配列)、n=9、下記製造例に従い製造)
3.シ゛エチレンク゛リコール [50]
(R
1の炭素数は0、AO=EO、n=2、和光純薬社製)
4.ヘキシルシ゛ク゛リコール/シ゛エチレンク゛リコール [25/25]
(ヘキシルシ゛ク゛リコール:R
1の炭素数は6、AO=EO、n=2、日本乳化剤社製/シ゛エチレンク゛リコール:R
1の炭素数は0、AO=EO、n=2、和光純薬社製)
5.ヘキシルシ゛ク゛リコール/シ゛エチレンク゛リコール [15/35]
(ヘキシルシ゛ク゛リコール:R
1の炭素数は6、AO=EO、n=2、日本乳化剤社製/シ゛エチレンク゛リコール:R
1の炭素数は0、AO=EO、n=2、和光純薬社製)
6.ク゛リセリンPO
1/ク゛リセリンPO
12/ヘキシルシ゛ク゛リコール [18.5/18.5/10.0]
(ク゛リセリンPO
1:AO=PO、m1+m2+m3=1、下記製造例に従い製造/ク゛リセリンPO
12:AO=PO、m1+m2+m3=12、下記製造例に従い製造/ヘキシルシ゛ク゛リコール:R
1の炭素数は6、AO=EO、n=2、日本乳化剤社製)
7.ク゛リセリンPO
1/ク゛リセリンPO
12/シ゛フ゜ロヒ゜レンク゛リコールシ゛メチルエーテル[18.5/18.5/10.0]
(ク゛リセリンPO
1:AO=PO、m1+m2+m3=1、下記製造例に従い製造/ク゛リセリンPO
12:AO=PO、m1+m2+m3=12、下記製造例に従い製造/シ゛フ゜ロヒ゜レンク゛リコールシ゛メチルエーテル:R
1の炭素数は1、AO=PO、R
1`はメチル基、n=2、日本乳化剤社製)
8.ク゛リセリンPO
10[50]
(AO=PO、m1+m2+m3=10、下記製造例に従い製造)
9.C
4O(EO)
9(PO)
7H [70]
(R
1の炭素数4(フ゛チル基)、AO=EOとPO(ブロック配列)、n=16、下記製造例に従い製造)
10.C
4O(EO)
9(PO)
7H [30]
(R
1の炭素数4(フ゛チル基)、AO=EOとPO(ブロック配列)、n=16、下記製造例に従い製造)
【0083】
[ポリエーテル化合物の製造例]
(1)C
4O(EO)
5(PO)
4Hの製造例
表1に記載の番号「2」のポリエーテル化合物は、下記方法で調製した。その重量平均分子量を下記方法で測定したところ、526であった。
【0084】
番号「2」のポリエーテル化合物の製造方法は以下のとおりである。オートクレーブにn−ブタノール74.1g(1モル)及びKOH(触媒)0.30g(0.4重量%)を仕込み、オートクレーブ内の空気を窒素で置換した後、ブタノールを攪拌しながらオートクレーブ内の温度を130℃に昇温した。エチレンオキサイド220g(5モル)を3.5kg/cm2の圧力(ゲージ圧)でオートクレーブ中に導入し、前記圧力が低下して一定になるまでn−ブタノールとエチレンオキサイドとを反応させた後、オートクレーブ内の温度を120℃まで下げた。次いで、プロピレンオキサイド232g(4モル)を3.5kg/cm2の圧力(ゲージ圧)でオートクレーブ中に導入した。前記圧力が低下して一定になるまでブタノールとプロピレンオキサイドとを反応させた後、オートクレーブ内の温度を室温まで低下させて、上記番号「2」のポリエーテル化合物を約520g得た。
【0085】
番号「2」のポリエーテル化合物の上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を下記の条件で適用して得たクロマトグラム中のピークに基づいて算出した値である。
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー製)
溶離液:(0.2Mリン酸バッファー)/(CH3CN)=9/1(容量比)
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出器:RI検出器
標準物質:ポリスチレン
【0086】
(2)グリセリンPO
1の製造例
オートクレーブに、グリセリン92.1gとKOH1.4g(1.5重量%)を仕込み、110℃、1.3kPaにて30分間脱水を行った。脱水後、オートクレーブ内の空気を窒素で置換し、オートクレーブ内の温度を130℃まで昇温した後、プロピレンオキサイドを58.1g仕込んだ。130℃にて付加反応・熟成を行った後、80℃まで冷却し、4.0kPaで30分間オートクレーブ内の未反応プロピレンオキサイドを除去した。未反応のプロピレンオキサイドを除去した後、酢酸3.0gをオートクレーブ内に加え、80℃で30分間保持した後、抜き出しを行い、平均付加モル数が1モルのグリセリンのPO付加物を得た。
【0087】
(3)グリセリンPO
12の製造例
KOHの仕込み量を2.8g(3重量%)及びプロピレンオキサイドの仕込み量を660.7gに変更したこと以外は平均付加モル数が1モルのグリセリンのPO付加物の製造方法と同様にして、平均付加モル数が12モルのグリセリンのPO付加物を得た。
【0088】
(4)グリセリンPO
10の製造例
KOHの仕込み量を2.8g(3重量%)及びプロピレンオキサイドの仕込み量を580.1gに変更したこと以外は平均付加モル数が1モルのグリセリンのPO付加物の製造方法と同様にして、平均付加モル数が10モルのグリセリンのPO付加物を得た。
【0089】
(5)C
4O(EO)
9(PO)
7Hの製造例
エチレンオキサイドの仕込み量を396g及びプロピレンオキサイドの仕込み量を406gに変更したこと以外はC
4O(EO)
5(PO)
4Hの製造方法と同様にして、EOの平均付加モル数が9モル、POの平均付加モル数が7モルのポリエーテル化合物を約870g得た。重量平均分子量を上記方法で測定したところ、876であった。
【0090】
表1及び表2に記載の界面活性剤の詳細は下記のとおりである。
1.エマルゲン130K(花王製、炭化水素基の炭素数12(n-ト゛テ゛シル基)、HLB=18.1)
2.ソフタノール500(日本触媒製、炭化水素基の炭素数12(iso-ト゛テ゛シル基)、HLB=18.3)
3.ブラウノンEN-1560(青木油脂製、炭化水素基の炭素数18(オレイル基)、HLB=18.2)
4.エマノーン3119V(花王製、炭化水素基の炭素数18(ステアリル基)、HLB=19.4)
5.ブラウノンSR-750(青木油脂製、炭化水素基の炭素数18(ステアリル基)、HLB=17.8)
6.エマノーン3229RV(花王製、炭化水素基の炭素数18(ステアリル基)、HLB=19.2)
7.エマルゲンA−500(花王製、炭化水素基の炭素数22(スチレン化フェノール基)、HLB=18.0)
8.コータミン86W(花王製、R
2は炭素数が16及び18の炭化水素基(ハ゜ルミチル基、ステアリル基)、R
3はメチル基、X
-は塩素イオン)
9.コータミン60W(花王製、R
2は炭素数が16の炭化水素基(ハ゜ルミチル基)、R
3はメチル基、X
-は塩素イオン)
10.コータミン24P(花王製、R
2は炭素数が12及び14の炭化水素基(ラウリル基、ミリスチル基)、R
3はメチル基、X
-は塩素イオン)
11.コータミンD86P(花王製、R
2は炭素数が16及び18の炭化水素基(ハ゜ルミチル基、ステアリル基)、R
3は炭素数が16及び18の炭化水素基(ハ゜ルミチル基、ステアリル基)、X
-は塩素イオン)
12.ブラウノンEH−30(青木油脂製、炭化水素基の炭素数8(エチルヘキシル基)、HLB=18.2)
13.エマノーン1112(花王製、炭化水素基の炭素数12(n-ト゛テ゛シル基)、HLB=13.7)
14.ソフタノール150(日本触媒製、炭化水素基の炭素数12(iso-ト゛テ゛シル基)、HLB=15.3)
15.ブラウノンEN−1520A(青木油脂製、炭化水素基の炭素数18(オレイル基)、HLB=15.4)
16.ブラウノンSR−715(青木油脂製、炭化水素基の炭素数18(ステアリル基)、HLB=13.5)
【0091】
尚、表1において、「(ステアリル+パルミチル)/メチル」は、番号「8」の界面活性剤が、一般式(3)において、R
2がステアリル基、R
3がメチル基の界面活性剤と、R
2がパルミチル基、R
3がメチル基の界面活性剤との混合物であることを意味する。番号「9」の界面活性剤は、R
2がパルミチル基であり、R
3がメチル基の界面活性剤である。番号「10」の界面活性剤は、R
2がラウリル基、R
3がメチル基の界面活性剤と、R
2がミリスチル基、R
3がメチル基の界面活性剤との混合物である。番号「11」の界面活性剤は、R
2がステアリル基、R
3がパルミチル基の界面活性剤と、R
2がパルミチル基、R
3がステアリル基の界面活性剤との混合物である。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】