(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
合成樹脂からなる基材と、該基材上に形成されたガスバリア層を少なくとも有するガスバリア性フィルムの製造方法であって、下記工程を有することを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
(工程1)前記基材上に、ポリシラザン化合物を含むケイ素系高分子化合物と有機溶媒を含有するケイ素系高分子化合物溶液を直接塗工し、得られたケイ素系高分子化合物溶液の塗膜を加熱乾燥することにより、前記合成樹脂と前記高分子化合物との混合物からなる領域と、ケイ素系高分子化合物を含む層と、を形成する工程であって、
前記基材と有機溶媒の組合せが、前記基材を該有機溶媒中に23℃で72時間浸漬したときに計測される、前記基材のゲル分率が70%以上98%未満のものである工程
(工程2)形成したケイ素系高分子化合物を含む層に、プラズマ処理を行うことにより、ガスバリア層を形成する工程
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を、1)ガスバリア性フィルムの製造方法、及び、2)ガスバリア性フィルムを備える電子部材又は光学部材、に項分けして詳細に説明する。
【0016】
1)ガスバリア性フィルムの製造方法
本発明のガスバリア性フィルムの製造方法は、合成樹脂からなる基材と、該基材上に形成されたガスバリア層を少なくとも有するガスバリア性フィルムの製造方法であって、下記工程1及び2を有することを特徴とする。
(工程1)前記基材上に、ケイ素系高分子化合物と有機溶媒を含有するケイ素系高分子化合物溶液を塗工し、得られたケイ素系高分子化合物溶液の塗膜を加熱乾燥することにより、ケイ素系高分子化合物を含む層を形成する工程であって、
前記基材と有機溶媒の組合せが、前記基材を該有機溶媒中に23℃で72時間浸漬したときに計測される、前記基材のゲル分率が70%以上98%未満のものである工程
(工程2)形成したケイ素系高分子化合物を含む層にプラズマ処理を行うことにより、ガスバリア層を形成する工程
【0017】
なお、本明細書において「フィルム」には、枚葉のもののみならず、長尺状(帯状)のものも含まれる。また、「ガスバリア性」とは、酸素や水蒸気等のガスの透過を抑制するフィルム特性をいう。
【0018】
本発明の製造方法の工程断面図を、
図1(a)〜(c)に示す。
図1(a)〜(c)中、1は基材を、2はケイ素系高分子化合物溶液の塗膜を、3は前記塗膜を乾燥して得られるケイ素系高分子化合物を含む層を、3aは、高分子化合物を含む層3と基材1との境界部における、基材1の表面部が前記有機溶媒に溶解することで、基材を構成する合成樹脂とケイ素系高分子化合物との混合物から形成された領域を、3bは、プラズマ処理により、ケイ素系高分子化合物を含む層の表面が改質された領域を、4はガスバリア層を、それぞれ表す。
以下、図面を参照しながら、本発明の工程1、2を詳細に説明する。
なお、本発明の製造方法により得られるガスバリア性フィルムは、
図1(c)に示すものに限定されるものではない。
【0019】
〈工程1〉
工程1は、基材上に、ケイ素系高分子化合物と有機溶媒を含有するケイ素系高分子化合物溶液を塗工し、得られたケイ素系高分子化合物溶液の塗膜を加熱乾燥することにより、ケイ素系高分子化合物を含む層を形成する工程であって、前記基材と有機溶媒の組合せが、前記基材を該有機溶媒中に23℃で72時間浸漬したときに計測される、前記基材のゲル分率が70%以上98%未満のものである工程である。
【0020】
用いる基材としては、合成樹脂からなるものであって、前記基材を構成する合成樹脂が、ケイ素系高分子化合物溶液に用いる有機溶媒に適度に溶解するもの(用いる有機溶媒中に23℃で72時間浸漬したときのゲル分率が70%以上98%未満のもの)であればよく、その観点から、非晶性高分子からなるものが好ましい。
【0021】
非晶性高分子としては、例えば、ノルボルネン構造を有するポリオレフィン等のシクロオレフィン系高分子;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等のスチレン系高分子;芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート等のカーボネート系高分子;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系高分子;イミド系高分子;ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、変形ポリスルホン、ポリフェニルスルホン等のポリスルホン系高分子;ポリフェニレンスルフィド系高分子;ビニルアルコール系高分子;ビニルブチラート系高分子;ビニルアセタール系高分子;アリレート系高分子;ポリオキシメチレン系高分子;あるいはこれらの混合物等が挙げられる。
【0022】
これらの中でも、用いる合成樹脂としては、耐熱性に優れるガスバリア性フィルムが得られる観点から、ガラス転移温度が100℃以上であるものが好ましく、120℃以上であるものがより好ましく、130℃以上であるものが特に好ましい。
ガラス転移温度が100℃以上であるものは、熱寸法安定性に優れ、加熱された場合においても、基材の熱収縮によりガスバリア層と基材との密着性が低下するということがない。
なかでも、耐熱性により優れるガスバリア性フィルムが得られる観点から、シクロオレフィン系高分子;カーボネート系高分子;ポリスルホン系高分子が好ましい。また、透明性にも優れるガスバリア性フィルムが得られる観点から、シクロオレフィン系高分子がより好ましく、ノルボルネン構造を有するポリオレフィンがさらに好ましく、ノルボルネンとエチレンを共重合して得られるシクロオレフィンコポリマーが特に好ましい。
【0023】
用いる合成樹脂の重量平均分子量は、溶解性の観点から、200〜1,000,000であるのが好ましく、1,000〜100,000であるのがより好ましい。
【0024】
基材の厚みとしては、特に限定されないが、通常0.5〜500μm、好ましくは1〜100μmである。
基材の算術表面粗さ(Ra)は、2.0nm以下であることが好ましい。Raが2.0nmを超えると、アンカー効果によりケイ素系高分子化合物からなる層との密着性は得られるものの、基材の上に形成されるケイ素系高分子化合物からなる層の表面粗さが大きくなってしまうため好ましくない。なお、上記表面粗さRaは、光干渉顕微鏡を用いて測定領域:10,000μm
2について得られる値である。
【0025】
用いるケイ素系高分子化合物(以下、単に「高分子化合物」ということがある)としては、後述する有機溶媒に溶解するものであり、プラズマ処理を施すことによって改質されて、ガスバリア層を形成し得るものであれば特に限定されない。
【0026】
ケイ素系高分子化合物としては、公知のものを用いることができる。例えば、ポリシラザン化合物、ポリカルボシラン化合物、ポリシラン化合物、及びポリオルガノシロキサン化合物等が挙げられる(特公昭63−16325号公報、特開昭62−195024号公報、特開昭63−81122号公報、特開平1−138108号公報、特開平2−84437号公報、特開平2−175726号公報、特開平4−63833号公報、特開平5−238827号公報、特開平5−238827号公報、特開平5−345826号公報、特開平6−122852号公報、特開平6−306329号公報、特開平6−299118号公報、特開平9−31333号公報、特開平10−245436号公報、特表2003−514822号公報、特開2005−36089号公報、特開2008−63586号公報、特開2009−235358号公報、特開2009−286891号公報、特開2010−106100号公報、特開2010-229445号公報、特開2010−232569号公報、特開2010−238736号公報、WO2011/107018号等参照)。
【0027】
これらの中でも、ガスバリア性の観点から、ポリシラザン化合物が特に好ましい。
ポリシラザン系化合物としては、特に限定されず、無機ポリシラザンでも、有機ポリシラザンであってもよい。入手容易性及びガスバリア性の観点から、無機ポリシラザンがより好ましく、下記式(1)で示されるペルヒドロポリシラザン、及び、水素の一部又は全部がアルキル基等の有機基で置換されたオルガノポリシラザンが好ましい。
【0029】
(式中、nは任意の自然数を表す。)
ポリシラザン系化合物は1種単独でも、あるいは、2種以上を混合して使用してもかまわない。
また、ポリシラザン系化合物として、ガラスコーティング材等として市販されている市販品をそのまま使用することもできる。
【0030】
ケイ素系高分子化合物溶液(以下、「高分子化合物溶液」ということがある。)の調製に用いる溶媒は、前記高分子化合物の良溶媒であり、前記基材を該有機溶媒中に23℃で72時間浸漬したときに計測される、前記基材のゲル分率が70%以上98%未満のものであれば、特に限定されない。密着性とカール抑制の点から、ゲル分率は、85〜95%であるのがより好ましい。
ゲル分率が98%以上では、基材が溶媒にほとんど溶解せず、後述する領域3aがほとんど形成されない。したがって、本発明の効果である基材とガスバリア層との優れた密着性は得られないおそれがある。また、ゲル分率が70%より小さいと、基材の表面が溶解し過ぎて、透明性が低下したり、基材に極端なカールが発生し易くなる。ここで、カールとは、目視で観察される、基材の反りをいう。
【0031】
ゲル分率は、具体的には、次のようにして算出することができる。
先ず、100mm×100mmにカットした基材を、予め質量を測定した150mm×150mmのナイロンメッシュ(#120)で包み、有機溶媒100mL中に、23℃で72時間浸漬し、取り出して120℃で1時間乾燥する。乾燥後の基材の質量を測定し、浸漬前の基材の質量に対する質量百分率を下記式により算出してゲル分率とする。全く溶解しない場合は100%となる。
【0033】
用いる基材と有機溶媒の組合せが、基材を有機溶媒中に23℃で72時間浸漬したときに計測される、前記基材のゲル分率が上記範囲であるものとすることで、基材の極表面部分が有機溶媒により溶解して、基材を構成する合成樹脂と高分子化合物の混合物の溶液状態となり、その後に有機溶媒が加熱乾燥除去されることにより、基材と高分子化合物を含む層との界面に、基材を構成する合成樹脂と高分子化合物との混合物からなる領域が形成される。結果として、基材と後述のガスバリア層との密着性が向上する。
本発明の製造方法によれば、密着性を向上させるために、基材とガスバリア層との間にプライマー層等を設ける必要がなく、工程の簡略化を図ることができる。
【0034】
用いる有機溶媒の具体例としては、用いる基材、高分子化合物の種類に依存するが、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒;メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;ジブチルエーテル、エチレングリコール、モノブチルエーテル、1,3−ジオキソラン等のエーテル系溶媒;塩化メチレン、塩化エチレン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
これらの中でも、前記例示した基材との関係で、好ましいゲル分率が得られること、及び、前記例示した高分子化合物の溶解性に優れる観点から、芳香族系溶媒、エーテル系溶媒が好ましく、キシレン、ジブチルエーテルがより好ましい。
【0035】
高分子化合物溶液は、高分子化合物を有機溶媒に溶解させることによって調製することができる。
高分子化合物溶液の、高分子化合物の固形分濃度は、好ましくは1〜60質量%、より好ましくは3〜45質量%、更に好ましくは3〜30質量%である。この範囲の固形分濃度を有する場合、基材を適度に溶解させることができ、かつ、適度な粘度により、優れた塗工作業性を有する溶液となり得る。
高分子化合物溶液には、本発明の効果を阻害しない範囲で、溶解を補助する成分等の他の成分が含有されていてもよい。
【0036】
前記高分子化合物溶液を基材に塗工する方法としては、特に限定されず、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等の公知の塗工方法を利用することができる。
【0037】
すなわち、
図1(a)に示すように、高分子化合物溶液を基材1に塗工して得られた塗膜2を加熱乾燥することによって、高分子化合物を含む層3を形成する。その際、基材の極表面部が有機溶媒に適度に溶解して、基材を構成する合成樹脂と高分子化合物との混合物の溶液状態となり、結果として、
図1(b)に示すように、基材1と高分子化合物を含む層3との界面に、基材を構成する合成樹脂と高分子化合物との混合物からなる領域3aが形成される。
【0038】
塗膜2を乾燥する方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥等、従来公知の乾燥方法を用いることができる。
乾燥温度は、有機溶媒の沸点と基材を構成する合成樹脂の種類に応じて、基材の有機溶媒に対する溶解が適度に進行する範囲で、適宜選択すればよく、好ましくは、100℃から基材を構成する合成樹脂のガラス転移温度(Tg)の範囲である。100℃より低いと、溶媒の揮発する速度が遅くなり、基材が過度に溶解してしまい、基材がカールする場合があるため好ましくない。また、乾燥温度が基材を構成する合成樹脂のTgを超えると、基材が熱収縮することがあるため好ましくない。この意味で、基材を構成する合成樹脂のTgは、100℃以上であるのが好ましい。
乾燥時間は、用いる材料(基材及び有機溶媒)の種類や乾燥温度等にもよるが、通常、数秒から1時間、好ましくは30秒から15分、より好ましくは30秒から5分である。
乾燥温度と乾燥時間を適宜調整することにより、基材1と高分子化合物を含む層3との界面に、基材を構成する合成樹脂と高分子化合物との混合物からなる、ナノレベルの厚みの領域3aが形成され、結果として、基材1とガスバリア層4との密着性が高められる。
【0039】
図1(b)に示す高分子化合物を含む層3の全体の厚みは、特に限定されないが、通常20nmから10μm、好ましくは30〜500nm、より好ましくは40〜200nmである。
【0040】
〈工程2〉
工程2は、工程1で形成した高分子化合物を含む層にプラズマ処理を行うことにより、ガスバリア層を形成する工程である。
プラズマ処理を行なうことで、高分子化合物を含む層3の表面が改質され、
図1(c)に示すように、ガスバリア性を有する領域、すなわち、プラズマ処理により、高分子化合物を含む層の表面が改質された領域3bが形成される。ここで、「ガスバリア層」とは、プラズマ処理による高分子化合物を含む層の表面が改質された領域3bのみを意味するのではなく、「プラズマ処理により改質された領域3b及び基材を構成する合成樹脂とケイ素系高分子化合物との混合物からなる領域3aを有する高分子化合物を含む層;4」を意味する
【0041】
プラズマ処理の方法としては、従来公知の方法を用いることができるが、ガスバリア性に優れるガスバリア層を簡便に形成できる観点から、高分子化合物を含む層にイオンを注入する方法が好ましい。
イオンを注入する方法としては、特に限定されないが、電界により加速されたイオン(イオンビーム)を照射する方法、プラズマ中のイオンを注入する方法(プラズマイオン注入法)等が挙げられる。なかでも、簡便にガスバリア性フィルムが得られることから、後者のプラズマイオン注入法が好ましい。
【0042】
プラズマイオン注入法は、プラズマ生成ガスを含む雰囲気下でプラズマを発生させ、高分子化合物を含む層に負の高電圧パルスを印加することにより、該プラズマ中のイオン(陽イオン)を、対象物に注入する方法である。
プラズマイオン注入法としては、(A)外部電界を用いて発生させたプラズマ中に存在するイオンを、前記層の表面部に注入する方法、又は(B)外部電界を用いることなく、前記層に印加する負の高電圧パルスによる電界のみで発生させたプラズマ中に存在するイオンを、前記層の表面部に注入する方法が好ましい。
前記(A)及び(B)のいずれの方法においても、負の高電圧パルスを印加するとき、すなわちイオン注入するときのパルス幅は、1〜15μsecであるのが好ましい。パルス幅がこのような範囲にあるときに、透明で均一なイオン注入層をより簡便にかつ効率よく形成することができる。
【0043】
プラズマを発生させるときの印加電圧は、好ましくは−1kV〜−50kV、より好ましくは−1kV〜−30kV、特に好ましくは−5kV〜−20kVである。印加電圧が−1kVより大きい値でイオン注入を行うと、イオン注入量(ドーズ量)が不十分となり、所望の性能が得られない。一方、−50kVより小さい値でイオン注入を行うと、イオン注入時にフィルムが帯電し、またフィルムへの着色等の不具合が生じ、好ましくない。
【0044】
プラズマイオン注入するイオン種は、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等の希ガスのイオン;フルオロカーボン、水素、窒素、酸素、二酸化炭素、塩素、フッ素、硫黄等のイオン;金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウム、クロム、チタン、モリブデン、ニオブ、タンタル、タングステン、アルミニウム等の金属のイオン等が挙げられる。
【0045】
これらの中でも、より簡便に注入することができ、優れたガスバリア性と透明性を有するガスバリア層が得られることから、水素、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、及びクリプトンからなる群から選ばれる少なくとも一種のイオンが好ましい。
【0046】
イオンの注入量やイオンが注入される部分の厚みは、ガスバリア層の厚み、ガスバリア性フィルムの使用目的等を考慮して適宜決定することができる。
イオンが注入される部分の厚みは、通常、イオンが注入される面から10〜1000nm、好ましくは10〜200nmである。その厚みは、イオンの種類や印加電圧、処理時間等の注入条件により制御することができる。
【0047】
本発明の製造方法により得られるガスバリア性フィルムは、優れたガスバリア性を有する。本発明の製造方法により得られるガスバリア性フィルムが優れたガスバリア性を有していることは、ガスバリア性フィルムの水蒸気透過率が小さいこと等から確認することができる。
ガスバリアフィルムの水蒸気透過率は、40℃、相対湿度90%雰囲気下で、通常0.5g/m
2/day以下であり、好ましくは0.1g/m
2/day以下である。水蒸気透過率は、公知の方法で測定することができる。
【0048】
本発明のガスバリア性フィルムの製造方法は、前記工程1、工程2により、基材の一方の面側に、高分子化合物を含む層よりなるガスバリア層を1層形成するものでもよいし、基材の両方の面に当該ガスバリア層を形成するものであってもよい。また、形成されたガスバリア性フィルムを複数枚積層する工程を有していてもよいし、基材層、ガスバリア層以外の他の層を積層する工程を有していてもよい。他の層としては、保護層、導電体層、粘着剤層等が挙げられる。
【0049】
(保護層)
保護層は、外部から衝撃が加わったときに、ガスバリア層を保護する役割を有する層である。
保護層が積層される位置は、特に限定されないが、ガスバリア層に隣接して積層されることが好ましい。
保護層としては、透明性がよく、耐擦傷性が良好なものが好ましい。更に保護層が電子デバイスや光学デバイスに組み込まれた際に、最表面に配置される場合には、防汚性、耐指紋付着防止性、帯電防止性、撥水性、親水性等の機能を具備することができる。
【0050】
保護層の材料は特に制限されず、例えば、ケイ素含有化合物;光重合性モノマー及び/又は光重合性プレポリマーからなる光重合性化合物、及び少なくとも可視光域の光でラジカルを発生する重合開始剤を含む重合性組成物;ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂(特にポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等とイソシアネート化合物との2液硬化型樹脂)、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、ニトロセルロース系樹脂等の樹脂類;アルキルチタネート;エチレンイミン;等が挙げられる。
これらは、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
なかでも、保護層の材料としては、透明性や耐擦傷性に優れるという点から、光重合性モノマー及び/又は光重合性プレポリマーからなる光重合性化合物、及び少なくとも可視光域の光でラジカルを発生する重合開始剤を含む重合性組成物が好ましい。
【0052】
光重合性化合物及び重合開始剤としては、公知の活性エネルギー線硬化型化合物及び光重合開始剤等を用いることができる。
【0053】
保護層は、前記材料を適当な溶剤に溶解又は分散させてなる保護層形成用溶液を、公知の方法により塗布し、得られた塗膜を乾燥させ、所望により加熱することより形成することができる。
【0054】
保護層の厚みは、ガスバリア性フィルムの使用目的等を考慮して適宜選択することができる。その厚みは、通常、0.05〜10μm、好ましくは0.1〜8μm、より好ましくは0.2〜5μmである。
0.05μm以上であれば、耐擦傷性が十分なものになる。10μm以下であれば、硬化時の歪みによるカールが生じにくい。
【0055】
保護層の表面粗さRa(算術平均粗さ)は、10.0nm以下が好ましく、8.0nm以下がより好ましい。また、表面粗さRt(最大断面高さ)は、100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましい。
表面粗さRa及びRtが、それぞれ、10.0nm、100nmを超えると、ガスバリア層の表面粗さが大きくなり、ガスバリア性フィルムのガスバリア性が低下するおそれがある。
なお、表面粗さRa及びRtは、100μm×100μmのサンプルを用いて、光干渉法により得られた値である。
【0056】
(導電体層)
本発明により得られるガスバリア性フィルムは、導電体層を有していてもよい。
導電体層は、導電性を有する層であって、電子部材等において、電極として利用したり、帯電防止性や放熱性を向上させるために設けられる層である。
導電体層が積層される位置は、ガスバリア性フィルムが使用される目的に応じて選択することができ、特に限定されない。
導電体層の表面抵抗率は、1000Ω/□以下が好ましく、より好ましくは200Ω/□である。
導電体層の厚みは、ガスバリア性フィルムの使用目的等を考慮して適宜選択することができる。その厚みは、通常、10nmから9μm、好ましくは20nmから1.0μmである。
【0057】
導電体層の材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物等が挙げられる。具体的には、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO);フッ素をドープした酸化スズ(FTO);酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の金属酸化物;金、銀、クロム、ニッケル等の金属;これら金属と金属酸化物との混合物;ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質;ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性材料;等が挙げられる。
これらの中でも、透明性の点から、金属酸化物が好ましく、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の酸化インジウム系や酸化亜鉛系の金属酸化物が特に好ましい。
【0058】
導電体層の形成方法としては、例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、プラズマCVD法等が挙げられる。これらの中でも、簡便に導電体層が形成できることから、スパッタリング法が好ましい。
【0059】
形成された導電体層には、必要に応じてパターニングを行ってもよい。パターニングする方法としては、フォトリソグラフィー等による化学的エッチング、レーザ等を用いた物理的エッチング等、マスクを用いた真空蒸着法やスパッタリング法、リフトオフ法、印刷法等が挙げられる。
【0060】
本発明により得られるガスバリア性フィルムがその他の層を含む場合、上記条件を満たす限り、積層する順序、積層数は特に制限はない。
導電体層や保護層を含むガスバリア性フィルムとしては、例えば、(導電体層/ガスバリア層/基材)、(導電体層/保護層/ガスバリア層/基材)、(保護層/ガスバリア層/基材)、(保護層/ガスバリア層/基材/ガスバリア層)、(保護層/ガスバリア層/基材/ガスバリア層/保護層)等の層構成を有するものが挙げられる。
なお、上記構成は、使用時の構成を表すものである。
【0061】
本発明により得られるガスバリア性フィルムは、高温・高湿下に長時間置かれた後であっても、基材とガスバリア層との界面で剥離しにくく、またフクレや浮き等が発生しにくく、耐折り曲げ性、耐熱性、耐湿性に優れる。
【0062】
本発明により得られるガスバリア性フィルムは、ガスバリア性に優れ、かつ高温・高湿条件下でも、ガスバリア層と基材との密着性不良が生じない電子部材用、光学部材用のガスバリア性フィルムとして好ましく用いることができる。特に、フレキシブルディスプレイ基板等の可撓性が求められる電子部材用、液晶表示素子用プラスチック基板等の耐熱性、耐湿性が求められる電子部材用として好ましく用いられる。
【0063】
2)ガスバリア性フィルムを備える電子部材又は光学部材
本発明の電子部材及び光学部材は、本発明の製造方法により得られるガスバリア性フィルムを備えることを特徴とする。
電子部材としては、例えば、液晶ディスプレイ部材、有機ELディスプレイ部材、無機ELディスプレイ部材、電子ペーパー部材、太陽電池、熱電変換部材等のフレキシブル基板等が挙げられる。
光学部材としては、例えば、光学フィルター、波長変換デバイス、調光デバイス、偏光板、位相差板の光学部材等が挙げられる。
【0064】
本発明の電子部材及び光学部材は、本発明の製造方法により得られるガスバリア性フィルムが積層されてなるものであるため、ガスバリア性に優れ、水蒸気等のガスの浸入を防ぐことができる。
また、本発明の電子部材及び光学部材は、軽量で薄型化が図られており、かつ、高温条件下や高湿条件下で用いる場合においても、ガスバリア性が低下しにくいものである。
【実施例】
【0065】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例になんら限定されるものではない。
【0066】
(実施例1)
基材としてシクロオレフィンコポリマー製フィルム(ポリプラスチックス社製、TOPAS 6017、厚み100μm、ガラス転移温度160℃、第1表中、「COC」と略記する。)上に、ケイ素系高分子化合物としてペルヒドロポリシラザンと、溶媒としてキシレンを含有する高分子化合物溶液(クラリアントジャパン社製、アクアミカNL110−20)を、乾燥後の厚みが150nmとなるようにスピンコート法により塗工し、得られた塗膜を120℃で2分間加熱して高分子化合物層を形成した。
なお、前記シクロオレフィンコポリマー製フィルムをキシレンに23℃で72時間浸漬したとき、該シクロオレフィンコポリマー製フィルムのゲル分率は80%であった。
次いで、高分子化合物層の表面に、プラズマイオン注入装置を用いて、下記条件にて、アルゴン(Ar)をプラズマイオン注入し、基材上にガスバリア層が形成されたガスバリア性フィルム1を作製した。
【0067】
<プラズマイオン注入の条件>
・ガス流量:100sccm
・Duty比:0.5%
・繰り返し周波数:1000Hz
・印加電圧:−10kV
・RF電源:周波数 13.56MHz、印加電力 1000W
・チャンバー内圧:0.2Pa
・パルス幅:5μsec
・処理時間(イオン注入時間):5分間
・搬送速度:0.2m/min
【0068】
(実施例2〜5)
実施例1において、基材及び溶媒として、下記第1表に示すものを用いる他は、実施例1と同様にして、基材上にガスバリア層が形成された、実施例2〜5のガスバリア性フィルム2〜5を作製した。
なお、第1表中、PC、PSF、PVACは、以下の意味を表す。
・PC:ポリカーボネート樹脂フィルム(帝人化成社製、ピュアエース、厚み100μm、ガラス転移温度145℃)
・PSF:ポリスルホン系樹脂フィルム(BASF社製、ULTRASON S3010、厚み55μm、ガラス転移温度187℃)
・PVAC:ポリビニルアセタール樹脂フィルム(積水化学工業社製、エスレックKS−10、厚み20μm、ガラス転移温度110℃)
【0069】
(比較例1)
実施例1において、基材として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製、PET50A−4100、厚み50μm、ガラス転移温度80℃、下記第1表において「PET」と示す。)を用いた他は、実施例1と同様にして、比較例1のガスバリア性フィルム1rを作製した。
【0070】
(比較例2)
実施例1において、基材、溶媒として、下記第1表に示すものを用いる他は、実施例1と同様にして、基材上にガスバリア層が形成された、比較例2のガスバリア性フィルム2rを作製した。
実施例1〜5及び比較例1、2で用いた基材の種類及び厚み、ケイ素系高分子化合物の希釈溶剤を下記第1表にまとめた。
【0071】
<ガスバリア性フィルムの性能確認試験>
実施例1〜5、及び比較例1,2で得られたガスバリア性フィルム1〜5、1r及び2rにつき、下記に示す方法により、水蒸気透過率の測定、層間密着性評価試験を行った。その結果を下記第1表に示す。
【0072】
(水蒸気透過率の測定)
40℃、相対湿度90%の条件下で水蒸気透過率測定装置(mocon社製、PERMATRAN−W3/33)を用いて水蒸気透過率を測定した。
【0073】
(層間密着性評価試験)
高温湿熱条件(60℃、湿度90%)下に150時間載置した後、碁盤目試験(JIS K−5400(1990年))に従って膜の剥がれを観測した。100マスを観察し、膜の剥がれが観測された数が全体の10%未満の場合は「○」、膜の剥がれが観測された数が全体の10%以上の場合は「×」と評価した。
【0074】
【表1】
【0075】
第1表より、実施例1〜5で得られたガスバリア性フィルム1〜5は、用いる有機溶媒に対するゲル分率が98%超である合成樹脂からなる基材を用いて形成された比較例1、2のガスバリア性フィルムに比して、基材とガスバリア層との密着性に優れていることがわかる。
特に、用いる有機溶媒に対するゲル分率が90%の合成樹脂からなる基材を用いた実施例2、4で得られたガスバリア性フィルムは、目視観察にてカールが全く見られずガスバリア性フィルムとして極めて優れるものであった。