(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エピクロルヒドリンゴム(a1)100質量部に対して、N,N′−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン(a2)を0.1質量部以上、15質量部以下含有する請求項1記載の積層体。
N,N′−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン(a2)の配合量を100としたとき、受酸剤(a3)の配合量の割合が0.1質量部以上、1000質量部以下である請求項1又は2に記載の積層体。
エピクロルヒドリンゴム(a1)は、エピクロルヒドリンに基づく重合単位と、エチレンオキサイドに基づく重合単位と、を有する重合体である請求項1〜3いずれかに記載の積層体。
エピクロルヒドリンゴム(a1)は、エピクロルヒドリンに基づく重合単位と、エチレンオキサイドに基づく重合単位と、アリルグリシジルエーテルに基づく重合単位と、を有する重合体である請求項1〜4いずれかに記載の積層体。
フッ素ポリマー(b1)は、クロロトリフルオロエチレン−テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体である請求項1〜5いずれかに記載の積層体。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の積層体は、ゴム層(A)と、ゴム層(A)上に積層されたフッ素樹脂層(B)と、を備えることを特徴とする。
【0015】
(A)ゴム層
ゴム層(A)は、加硫用ゴム組成物から形成される層である。
【0016】
加硫用ゴム組成物は、エピクロルヒドリンゴム(a1)、N,N′−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン(a2)および受酸剤(a3)を少なくとも含有する。
【0017】
エピクロルヒドリンゴム(a1)は、エピクロルヒドリンに基づく重合単位を有する未加硫ゴムであれば特に限定されず、実質的にエピクロルヒドリンに基づく重合単位のみからなる1元重合体であってもよいし、エピクロルヒドリンに基づく重合単位と、エピクロルヒドリン以外の他の単量体に基づく重合単位と、からなる2元以上の重合体であってもよい。
【0018】
エピクロルヒドリン以外の他の単量体としては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、及びアリルグリシジルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の単量体が好ましい。加硫用ゴム組成物は、エピクロルヒドリンに基づく重合単位と、エチレンオキサイドに基づく重合単位と、を有する重合体であることが好ましく、エピクロルヒドリンに基づく重合単位と、エチレンオキサイドに基づく重合単位と、アリルグリシジルエーテルに基づく重合単位と、を有する重合体であることがより好ましい。
【0019】
エピクロルヒドリンゴム(a1)としては、例えば、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、及び、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体が好ましい。より好ましくは、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体およびエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体より選択される少なくとも1種の重合体である。これらを単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0020】
エピクロルヒドリンゴム(a1)としては、耐熱性の点で、エピクロルヒドリンに基づく重合単位を20mol%以上含有することが好ましく、30mol%以上含有することがより好ましく、40mol%以上含有することが特に好ましい。エピクロルヒドリンに基づく重合単位については、塩素含有量等より算出することができる。塩素含有量はJIS K7229に記載の方法に従い、電位差滴定法によって求めることができる。
【0021】
N,N′−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン(a2)は、接着性が良好な観点から、エピクロルヒドリンゴム(a1)100質量部に対して0.1質量部以上、30質量部以下含有することが好ましく、0.1質量部以上、20質量部以下含有することがより好ましい。また、接着性が良好であるとともに、加硫特性が良好な点から、N,N′−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン(a2)は、エピクロルヒドリンゴム(a1)100質量部に対して、0.1質量部以上、15質量部以下含有することが特に好ましく、1質量部以上、10質量部以下含有することがさらに特に好ましい。
【0022】
受酸剤(a3)としては、周期表第(II)族金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、亜リン酸塩、周期表第(IV)族金属の酸化物、塩基性炭酸塩、塩基性カルボン酸塩、塩基性亜リン酸塩、塩基性亜硫酸塩等、及び下記一般式(1):
Mg
xZn
yAl
z(OH)
2(x+y)+3
z−2CO
3・wH
2O (1)
(xとyは0〜10の実数、ただしx+y=1〜10、zは1〜5の実数、wは0〜10の実数を表す。)で示される合成ハイドロタルサイト類、及び一般式(2):
〔Al
2Li(OH)
6〕
nX・mH
2O (2)
(式中Xは、無機又は有機のアニオンであり、nはアニオンXの価数であり、mは3以下の数である。)で示されるLi−Al系包接化合物等の無機マイクロポーラスクリスタルが挙げられる。
【0023】
受酸剤(a3)の具体的な例としては、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フタル酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、酸化錫、塩基性亜リン酸錫をあげることができる。
【0024】
さらに、一般式(1)で示される合成ハイドロタルサイト類については、例えば、Mg
3ZnAl
2 (OH)
12CO
3・wH
2O等を挙げることができる。また、一般式(1)に含まれる下記一般式(3):
Mg
xAl
y(OH)
2x+3y−2CO
3・wH
2O (3)
(但しxは1〜10、yは1〜10、wは正の整数を表す)で表される化合物であってもよい。更に具体的に例示すれば、Mg
4.5Al
2(OH)
13CO
3・3.5H
2O、Mg
4.5Al
2(OH)
13CO
3、Mg
4Al
2(OH)
12CO
3・3.5H
2O、Mg
6Al
2(OH)
16CO
3・4H
2O、Mg
3Al
2(OH)
10CO
3・1.7H
2O等を挙げることができる。
【0025】
さらに、一般式(2)で示されるLi−Al系包接化合物については、〔Al
2Li(OH)
6〕
2CO
3・H
2O等が挙げられる。
【0026】
また、Li−Al系包接化合物のアニオン種としては、炭酸、硫酸、過塩素酸、リン酸のオキシ酸、酢酸、プロピオン酸、アジピン酸、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、p−オキシ安息香酸、サリチル酸、ピクリン酸等が挙げられる。また、これらの受酸剤(a3)は単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0027】
受酸剤(a3)において、ゴム層(A)および積層体の耐熱性の観点から、金属酸化物、金属水酸化物、無機マイクロポーラスクリスタルであることが好ましく、酸化亜鉛および/または水酸化カルシウムであることがより好ましい。これらの受酸剤(a3)は、本発明の目的であるフッ素樹脂層(B)との接着力を損なわない範囲の量で配合することができ、エピクロルヒドリンゴム(a1)100質量部に対して0.1質量部以上、50質量部以下含有することが好ましく、1質量部以上、30質量部以下含有することがより好ましい。
【0028】
特に、本発明の目的であるフッ素樹脂層(B)との接着力、およびエピクロルヒドリンゴムの加硫特性とをバランス良く向上するためには、N,N′−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン(a2)の配合量を100としたとき、受酸剤(a3)の配合量の割合が0.1〜1000であることが好ましく、0.3〜500であることがより好ましい。
【0029】
加硫用ゴム組成物は、ゴム層(A)にエピクロルヒドリンゴム(a1)とは別の特性を付与するために、樹脂を含有してもよい。樹脂としては、たとえばエポキシ樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ポリウレタン(PUR)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、エチレン−酢酸ビニル(EVA)樹脂、スチレン−アクリロニトリル(AS)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、塩素化ポリスチレン、クロロスルホン化ポリスチレンエチレ等が挙げられる。この場合、樹脂の含有量は、エピクロルヒドリンゴム(a1)100質量部に対し1質量部以上、50質量部以下であるが好ましい。
【0030】
また本発明の加硫用ゴム組成物においては、目的または必要に応じて、一般の加硫用ゴム組成物に配合する通常の添加物、たとえば充填剤、加工助剤、可塑剤、軟化剤、老化防止剤、着色剤、安定剤、接着助剤、加硫促進剤、離型剤、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、表面非粘着剤、粘着付与剤、柔軟性付与剤、耐熱性改善剤、難燃剤、紫外線吸収剤、耐油性向上剤、発泡剤、スコーチ防止剤、滑剤などの各種添加剤を配合することができる。また、前記のものとは異なる常用の加硫剤や加硫促進剤を1種または2種以上配合してもよい。ただし、これらの添加剤は、本発明の目的であるフッ素樹脂層(B)との接着力を損なわない範囲の量で配合する。
【0031】
充填剤としては、炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどの炭酸塩;ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウムなどのケイ酸塩;硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩;合成ハイドロタルサイト、二硫化モリブデン、硫化鉄、硫化銅などの金属硫化物;ケイ藻土、アスベスト、リトポン(硫化亜鉛/硫化バリウム)、グラファイト、カーボンブラック、フッ化カーボン、フッ化カルシウム、コークス、石英微粉末、亜鉛華、タルク、雲母粉末、ワラストナイト、炭素繊維、アラミド繊維、各種ウィスカー、ガラス繊維、有機補強剤、有機充填剤などがあげられる。
【0032】
加工助剤としては、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛などの高級脂肪酸塩;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミドなどの高級脂肪酸アミド;オレイン酸エチルなどの高級脂肪酸エステル、ステアリルアミン、オレイルアミンなどの高級脂肪族アミン;カルナバワックス、セレシンワックスなどの石油系ワックス;エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールなどのポリグリコール;ワセリン、パラフィンなどの脂肪族炭化水素;シリコーン系オイル、シリコーン系ポリマー、低分子量ポリエチレン、フタル酸エステル類、リン酸エステル類、ロジン、(ハロゲン化)ジアルキルアミン、(ハロゲン化)ジアルキルスルフォン、界面活性剤などがあげられる。
【0033】
可塑剤としては、たとえばフタル酸誘導体やセバシン酸誘導体、軟化剤としては、たとえば潤滑油、プロセスオイル、コールタール、ヒマシ油、ステアリン酸カルシウム、老化防止剤としては、たとえばフェニレンジアミン類、フォスフェート類、キノリン類、クレゾール類、フェノール類、ジチオカルバメート金属塩などがあげられる。
【0034】
加硫用ゴム組成物は、エピクロルヒドリンゴム(a1)、N,N′−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン(a2)、受酸剤(a3)並びにその他の添加剤を混練することにより調製される。
【0035】
混練は、たとえば100℃以下の温度でオープンロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダーなどを用いて行うことができる。
【0036】
つぎに、本発明の積層体におけるフッ素樹脂層(B)について説明する。
【0037】
(B)フッ素樹脂層
フッ素樹脂層(B)は、フッ素ポリマー組成物から形成される層である。
【0038】
フッ素ポリマー組成物は、少なくともクロロトリフルオロエチレン(CTFE)に由来する共重合単位を有するフッ素ポリマー(b1)を含有する。
【0039】
フッ素ポリマー(b1)としては、燃料バリア性の観点から、フッ素樹脂であることが好ましく、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)及びCTFE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0040】
CTFE共重合体としては、CTFEに由来する共重合単位(CTFE単位)と、テトラフルオロエチレン(TFE)、へキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、フッ化ビニリデン(VdF)、フッ化ビニル、へキサフルオロイソブテン、式:
CH
2=CX
1(CF
2)
nX
2
(式中、X
1はHまたはF、X
2はH、FまたはCl、nは1〜10の整数である)で示される単量体、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、塩化ビニル、及び、塩化ビニリデンからなる群より選択される少なくとも1種の単量体に由来する共重合単位と、を含むことが好ましい。また、CTFE共重合体としては、パーハロ重合体であることがより好ましい。
【0041】
CTFE共重合体としては、CTFE単位と、TFE、HFP及びPAVEからなる群より選択される少なくとも1種の単量体に由来する共重合単位と、を含むことがより好ましく、実質的にこれらの共重合単位のみからなることが更に好ましい。また、燃料低透過の観点から、エチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル等のCH結合を有するモノマーを含まないことが好ましい。パーハロポリマーはゴムとの接着が通常困難であるが、本発明の構成によれば、フッ素樹脂層がパーハロポリマーからなる層であっても、フッ素樹脂層とゴム層との層間の接着は強固である。
【0042】
CTFE共重合体は、全単量体単位の10〜90モル%のCTFE単位を有することが好ましい。
【0043】
CTFE共重合体としては、CTFE単位、TFE単位およびこれらと共重合可能な単量体(α)に由来する単量体(α)単位を含むものが特に好ましい。
【0044】
「CTFE単位」および「TFE単位」は、CTFE共重合体の分子構造上、それぞれ、CTFEに由来する部分(−CFCl−CF
2−)、TFEに由来する部分(−CF
2−CF
2−)であり、前記「単量体(α)単位」は、同様に、CTFE系共重合体の分子構造上、単量体(α)が付加してなる部分である。
【0045】
単量体(α)としては、CTFEおよびTFEと共重合可能な単量体であれば特に限定されず、エチレン(Et)、フッ化ビニリデン(VdF)、CF
2=CF−ORf
1(式中、Rf
1は、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、CX
3X
4=CX
5(CF
2)
nX
6(式中、X
3、X
4およびX
5は同一もしくは異なって、水素原子またはフッ素原子;X
6は、水素原子、フッ素原子または塩素原子;nは、1〜10の整数)で表されるビニル単量体、CF
2=CF−OCH
2−Rf
2(式中、Rf
2は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体などがあげられ、なかでも、PAVE、上記ビニル単量体、及び、アルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、PAVE及びHFPからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0046】
アルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体としては、Rf
2が炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であるものが好ましく、CF
2=CF−OCH
2−CF
2CF
3がより好ましい。
【0047】
CTFE共重合体における、CTFE単位とTFE単位との比率は、CTFE単位が15〜90モル%に対し、TFE単位が85〜10モル%であり、より好ましくは、CTFE単位が20〜90モル%であり、TFE単位が80〜10モル%である。また、CTFE単位15〜25モル%と、TFE単位85〜75モル%とから構成されるものがより好ましい。
【0048】
CTFE共重合体は、CTFE単位とTFE単位との合計が90〜99.9モル%であり、単量体(α)単位が0.1〜10モル%であるものが好ましい。単量体(α)単位が0.1モル%未満であると、成形性、耐環境応力割れ性および耐燃料クラック性に劣りやすく、10モル%を超えると、燃料低透過性、耐熱性、機械特性に劣る傾向にある。
【0049】
フッ素ポリマー(b1)は、PCTFE又はCTFE−TFE−PAVE共重合体であることが最も好ましい。上記CTFE−TFE−PAVE共重合体とは、実質的にCTFE、TFE及びPAVEのみからなる共重合体である。PCTFE及びCTFE−TFE−PAVE共重合体は、主鎖を構成する炭素原子に直接結合した水素原子が存在せず、脱弗化水素化反応が進行しない。従って、脱弗化水素化反応によってフッ素ポリマー中に形成される不飽和結合を利用した従来の接着性改善方法は適用できない。
【0050】
PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)などがあげられ、なかでもPMVE、PEVE及びPPVEからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0051】
PAVE単位は、全単量体単位の0.5モル%以上であることが好ましく、5モル%以下であることが好ましい。
【0052】
CTFE単位などの構成単位は、
19F−NMR分析を行うことにより得られる値である。
【0053】
フッ素ポリマー(b1)は、ポリマーの主鎖末端および/または側鎖に、カルボニル基、ヒドロキシル基、ヘテロ環基、およびアミノ基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性官能基を導入したものであってもよい。
【0054】
本明細書において、「カルボニル基」は、炭素−酸素二重結合から構成される炭素2価の基であり、−C(=O)−で表されるものに代表される。前記カルボニル基を含む反応性官能基としては特に限定されず、たとえばカーボネート基、カルボン酸ハライド基(ハロゲノホルミル基)、ホルミル基、カルボキシル基、エステル結合(−C(=O)O−)、酸無水物結合(−C(=O)O−C(=O)−)、イソシアネート基、アミド基、イミド基(−C(=O)−NH−C(=O)−)、ウレタン結合(−NH−C(=O)O−)、カルバモイル基(NH
2−C(=O)−)、カルバモイルオキシ基(NH
2−C(=O)O−)、ウレイド基(NH
2−C(=O)−NH−)、オキサモイル基(NH
2−C(=O)−C(=O)−)など、化学構造上の一部としてカルボニル基を含むものがあげられる。
【0055】
アミド基、イミド基、ウレタン結合、カルバモイル基、カルバモイルオキシ基、ウレイド基、オキサモイル基などにおいては、その窒素原子に結合する水素原子は、たとえばアルキル基などの炭化水素基で置換されていてもよい。
【0056】
反応性官能基は、導入が容易である点、フッ素ポリマー(b1)が適度な耐熱性と比較的低温での良好な接着性とを有する点から、アミド基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カーボネート基、カルボン酸ハライド基、酸無水物結合が好ましく、さらにはアミド基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、カーボネート基、カルボン酸ハライド基、酸無水物結合が好ましい。
【0057】
フッ素ポリマー(b1)は、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、塊状重合等、従来公知の重合方法により得ることができる。前記重合において、温度、圧力などの各条件、重合開始剤やその他の添加剤は、フッ素ポリマー(b1)の組成や量に応じて適宜設定することができる。
【0058】
フッ素ポリマー(b1)の融点は特に限定されないが、160〜270℃であることが好ましい。
【0059】
フッ素ポリマー(b1)の融点は、DSC装置(セイコー社製)を用い、10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度として求める。MFRは、メルトインデクサー(東洋精機製作所(株)製)を用い、各温度、5kg荷重下で直径2mm、長さ8mmのノズルから単位時間(10分間)に流出するポリマーの重量(g)を測定する。
【0060】
またフッ素ポリマー(b1)の分子量は、得られる成形体が良好な機械特性や燃料低透過性などを発現できるような範囲であることが好ましい。たとえば、メルトフローレート(MFR)を分子量の指標とする場合、フッ素ポリマー一般の成形温度範囲である約230〜350℃の範囲の任意の温度におけるMFRは、0.5〜100g/10分であることが好ましい。より好ましくは、2〜50g/10分であり、更に好ましくは、5〜35g/10分である。
【0061】
本発明においてフッ素樹脂層(B)は、これらのフッ素ポリマー(b1)を1種含有するものであってもよいし、2種以上含有するものであってもよい。
【0062】
本発明の積層体におけるフッ素樹脂層(B)は、積層体を燃料周りの材料として使用する場合、燃料透過係数が1.0g・mm/m
2/day以下であることが好ましく、0.6g・mm/m
2/day以下であることがより好ましく、0.4g・mm/m
2/day以下であることがさらに好ましい。
【0063】
燃料透過係数は、イソオクタン、トルエンおよびエタノールを45:45:10の容積比で混合したイソオクタン/トルエン/エタノール混合溶媒を投入した燃料透過係数測定用カップに測定対象樹脂から得たシートを組み入れ、60℃において測定した質量変化から算出される値である。
【0064】
本発明において、フッ素ポリマー(b1)が特定の反応性官能基を末端に有するものであると、ゴム層(A)との接着性が向上する。したがって、耐衝撃性や強度に優れた成形品(たとえば燃料用タンクなど)を提供できる。
【0065】
なお、フッ素ポリマー(b1)がパーハロポリマーである場合、耐薬品性および燃料低透過性がより優れたものとなる。パーハロポリマーとは、重合体の主鎖を構成する炭素原子の全部にハロゲン原子が結合している重合体である。
【0066】
フッ素樹脂層(B)は、さらに、目的や用途に応じてその性能を損なわない範囲で、無機質粉末、ガラス繊維、炭素粉末、炭素繊維、金属酸化物などの種々の充填剤を配合したものであってもよい。
【0067】
たとえば、燃料透過性をさらに低減させるために、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ノントロナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなどのスメクタイト系の層状粘度鉱物や、雲母等の高アスペクト比を有する微小層状鉱物を添加してもよい。
【0068】
また、導電性を付与するために、導電性フィラーを添加してもよい。導電性フィラーとしては特に限定されず、たとえば金属、炭素などの導電性単体粉末または導電性単体繊維;酸化亜鉛などの導電性化合物の粉末;表面導電化処理粉末などがあげられる。導電性フィラーを配合する場合、溶融混練して予めペレットを作製することが好ましい。
【0069】
前記導電性単体粉末または導電性単体繊維としては特に限定されず、たとえば銅、ニッケルなどの金属粉末;鉄、ステンレススチールなどの金属繊維;カーボンブラック、炭素繊維、特開平3−174018号公報等に記載の炭素フィブリルなどがあげられる。
【0070】
前記表面導電化処理粉末は、ガラスビーズ、酸化チタンなどの非導電性粉末の表面に導電化処理を施して得られる粉末である。
【0071】
表面導電化処理の方法としては特に限定されず、たとえば金属スパッタリング、無電解メッキなどがあげられる。
【0072】
導電性フィラーのなかでもカーボンブラックは、経済性や静電荷蓄積防止の観点で有利であるので好適に用いられる。
【0073】
導電性フィラーを配合してなるフッ素ポリマー組成物の体積抵抗率は、1×10
0〜1×10
9Ω・cmであることが好ましい。より好ましい下限は、1×10
2Ω・cmであり、より好ましい上限は、1×10
8Ω・cmである。
【0074】
また、充填剤以外に、熱安定化剤、補強剤、紫外線吸収剤、顔料、その他任意の添加剤を配合してもよい。
【0075】
本発明の積層体は、ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)を積層することにより製造できる。本発明の積層体は、フッ素樹脂層(B)の両側にゴム層(A)が積層されていてもよいし、ゴム層(A)の両側にフッ素樹脂層(B)が積層されていてもよい。また、フッ素樹脂層(B)の片側にゴム層(A)が積層されていてもよい。
【0076】
ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)の積層は、ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)を別々に成形した後に圧着などの手段で積層する方法、ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)を同時に成形して積層する方法、ゴム層(A)にフッ素樹脂層(B)を塗布する方法のいずれでもよい。
【0077】
ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)を別々に成形した後に圧着などの手段で積層する方法では、フッ素ポリマーの成形方法と加硫用ゴム組成物のそれぞれ単独での成形方法が採用できる。
【0078】
ゴム層(A)の成形は、加硫用ゴム組成物を加熱圧縮成形法、トランスファー成形法、押出成形法、射出成形法、カレンダー成形法、塗装法などにより、シート状、チューブ状などの各種形状の成形体とすることができる。
【0079】
フッ素樹脂層(B)は、加熱圧縮成形、溶融押出成形、射出成形、塗装(粉体塗装を含む)などの方法により成形できる。成形には通常用いられるフッ素ポリマーの成形機、たとえば射出成形機、ブロー成形機、押出成形機、各種塗装装置などが使用でき、シート状、チューブ状など、各種形状の積層体を製造することが可能である。これらのうち、生産性が優れている点から、溶融押出成形法が好ましい。
【0080】
ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)を同時に成形して積層する方法としては、ゴム層(A)を形成する加硫用ゴム組成物およびフッ素樹脂層(B)を形成するフッ素ポリマー(b1)を用いて、多層圧縮成形法、多層トランスファー成形法、多層押出成形法、多層射出成形法、ダブリング法などの方法により成形と同時に積層する方法があげられる。この方法では、未加硫成形体であるゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)とを同時に積層できるため、ゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)とを密着させる工程が特に必要ではなく、また、後の加硫工程において強固な接着を得るのに好適である。
【0081】
本発明の積層体は、未加硫のゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)との積層体であってもよいが、さらにこの未加硫積層体を加硫することにより、強固な層間接着力が得られる。
【0082】
すなわち本発明は、本発明の未加硫積層体を加硫処理して得られ、ゴム層(A)が加硫したゴム層(A1)とフッ素樹脂層(B)が加硫接着されている積層体(以下「加硫積層体」ともいう。)にも関する。
【0083】
加硫処理は、従来公知の加硫用ゴム組成物の加硫方法と条件が採用できる。たとえば、未加硫積層体を長時間加硫する方法、未加硫積層体を比較的単時間で前処理としての熱処理をし(加硫も生じている)、ついで長時間かけて加硫を行う方法がある。これらのうち、未加硫積層体を比較的単時間で前処理としての熱処理をし、ついで長時間かけて加硫を行う方法が、前処理でゴム層(A)とフッ素樹脂層(B)との密着性が容易に得られ、また、前処理で既にゴム層(A)が加硫しており形状が安定化しているので、その後の加硫における積層体の保持方法をさまざまに選択することができるので好適である。
【0084】
加硫処理の条件は特に制限されるものではなく、通常の条件で行うことができるが、160〜170℃で、10分〜80分、スチーム、プレス、オーブン、エアーバス、赤外線、マイクロウェーブ、被鉛加硫などを用いて処理を行うことが好ましい。より好ましくは、160℃で、20〜45分かけて行う。
【0085】
得られる加硫積層体では加硫ゴム層(A1)とフッ素樹脂層(B)が加硫接着しており、強固な層間接着力が生じている。
【0086】
本発明の積層体(未加硫積層体および加硫積層体)は、ゴム層(A、A1。以下、ゴム層(A)を代表とする)とフッ素樹脂層(B)の2層構造でもよいし、(A)−(B)−(A)または(B)−(A)−(B)といった3層構造でもよい。さらに、ゴム層(A)およびフッ素樹脂層(B)以外のポリマー層(C)が接着された3層以上の多層構造であってもよく、(A)−(B)−(C)の3層構造であることも好ましい形態の一つである。本発明の積層体は、フッ素樹脂層(B)の片側にゴム層(A)が積層され、かつ他方にゴム層(A)およびフッ素樹脂層(B)以外のポリマー層(C)が積層されていてもよいし、フッ素樹脂層(B)の両側にゴム層(A)が積層され、さらにその両方もしくは片側にフッ素樹脂層(B)以外のポリマー層(C)が積層されていてもよい。
【0087】
ポリマー層(C)としては、ゴム層(A)以外のゴム層(C1)でもよい。また、(A)−(B)−(A)の(A)層の外側の片側もしくは両側に(C)層を有してもよい。
【0088】
ゴム層(C1)の材料としては、エピクロルヒドリンゴム以外のゴムがあげられ、フッ素ゴムでも非フッ素ゴムでもよい。耐燃料性や燃料バリア性の観点からはフッ素ゴムが好ましく、耐寒性が良好な点や、コスト面で優れていることからは、非フッ素ゴムが好ましい。
【0089】
非フッ素ゴムの具体例としては、たとえばアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)またはその水素化物(HNBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)などのジエン系ゴム、エチレン−プロピレン−ターモノマー共重合体ゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、アクリル系ゴムなどがあげられる。
【0090】
非フッ素ゴムとしては、耐熱性、耐油性、耐候性、押出成形性が良好な点から、ジエン系のゴムであることが好ましい。より好ましくは、NBRまたはHNBRである。ポリマー層(C)は、アクリロニトリル―ブタジエンゴム又はその水素化物からなることが好ましい。
【0091】
なお、ゴム層(C1)を形成する未加硫ゴム組成物中にも、加硫剤や、その他の配合剤を配合してもよい。
【0092】
つぎに本発明の積層体の層構造について説明する。
【0093】
(1)ゴム層(A)−フッ素樹脂層(B)の2層構造
基本構造であり、上述したとおり、従来、フッ素樹脂層(B)とゴム層(A)を積層させるには、層間(フッ素樹脂層−ゴム層)の接着が不充分なため、樹脂側において表面処理を施したり、別途接着剤を層間に塗布したり、テープ状のフィルムを巻き付けて固定したりなどと工程が複雑になりがちであったが、そのような複雑な工程を組まずに、加硫することにより加硫接着が起こり化学的に強固な接着が得られる。
【0094】
(2)ゴム層−フッ素樹脂層(B)−ゴム層の3層構造
(A)−(B)−(A)および(A)−(B)−(C1)がある。シール性が要求される場合、たとえば燃料配管などの接合部は、シール性保持のためにゴム層を両側に配置することが望ましい。内外層のゴム層は同じ種類であっても、違う種類であっても良い。
【0095】
(A)−(B)−(C1)の3層構造としては、ゴム層(C1)として、NBRまたはHNBRからなる層であることが好ましい。
【0096】
また、燃料配管を(A)−(B)−(C1)型構造とし、ゴム層(C1)としてフッ素ゴム層を設け、ゴム層(C1)を配管の内層にすることにより、耐薬品性、燃料低透過性が向上する。
【0097】
(3)樹脂層−ゴム層(A)−樹脂層の3層構造
(B)−(A)−(B)の3層構造で、内外層の樹脂層は同じ種類であっても、違う種類であっても良い。
【0098】
(4)フッ素樹脂層(B)−ゴム層(A)−ゴム層(C1)の3層構造
【0099】
(5)4層構造以上
(2)〜(4)の3層構造に加えて、さらに任意のゴム層(A)または(C1)、樹脂層(B)を目的に応じて積層してもよい。また、金属箔などの層を設けてもよいし、ゴム層(C)とフッ素樹脂層(B)との層間以外には接着剤層を介在させてもよい。
【0100】
またさらに、ポリマー層(C)と積層してライニング体とすることもできる。
【0101】
なお、各層の厚さ、形状などは、使用目的、使用形態などによって適宜選定すればよい。また、耐圧向上の目的で、補強糸などの補強層を適宜設けてもよい。
【0102】
本発明の積層体、特に加硫積層体は、燃料低透過性に優れるほか、耐熱性・耐油性・耐燃料油性・耐LLC性・耐スチーム性、耐侯性、耐オゾン性に優れており、また、苛酷な条件下での使用に充分耐えうるものであり、各種の用途に使用可能である。
【0103】
たとえば、自動車用エンジンのエンジン本体、主運動系、動弁系、潤滑・冷却系、燃料系、吸気・排気系など、駆動系のトランスミッション系など、シャーシのステアリング系、ブレーキ系など、電装品の基本電装部品、制御系電装部品、装備電装部品などの、耐熱性・耐油性・耐燃料油性・耐LLC性・耐スチーム性が要求されるガスケットや非接触型および接触型のパッキン類(セルフシールパッキン、ピストンリング、割リング形パッキン、メカニカルシール、オイルシールなど)などのシール、ベローズ、ダイヤフラム、ホース、チューブ、電線などとして好適な特性を備えている。
【0104】
具体的には、以下に列記する用途に使用可能である。
【0105】
エンジン本体の、シリンダーヘッドガスケット、シリンダーヘッドカバーガスケット、オイルパンパッキン、一般ガスケットなどのガスケット、O−リング、パッキン、タイミングベルトカバーガスケットなどのシール、コントロールホースなどのホース、エンジンマウントの防振ゴム、水素貯蔵システム内の高圧弁用シール材など。
【0106】
主運動系の、クランクシャフトシール、カムシャフトシールなどのシャフトシールなど。
【0107】
動弁系の、エンジンバルブのバルブステムシールなど。
【0108】
潤滑・冷却系の、エンジンオイルクーラーのエンジンオイルクーラーホース、オイルリターンホース、シールガスケットなどや、ラジエータ周辺のウォーターホース、バキュームポンプのバキュームポンプオイルホースなど。
【0109】
燃料系の、燃料ポンプのオイルシール、ダイヤフラム、バルブなど、フィラー(ネック)ホース、燃料供給ホース、燃料リターンホース、ベーパー(エバポ)ホースなどの燃料ホース、燃料タンクのインタンクホース、フィラーシール、タンクパッキン、インタンクフューエルポンプマウントなど、燃料配管チューブのチューブ本体やコネクターO−リングなど、燃料噴射装置のインジェクタークッションリング、インジェクターシールリング、インジェクターO−リング、プレッシャーレギュレーターダイヤフラム、チェックバルブ類など、キャブレターのニードルバルブ花弁、加速ポンプピストン、フランジガスケット、コントロールホースなど、複合空気制御装置(CAC)のバルブシート、ダイヤフラムなど。中でも、燃料ホース及び燃料タンクのインタンクホースとして好適である。
【0110】
吸気・排気系の、マニホールドの吸気マニホールドパッキン、排気マニホールドパッキンなど、EGR(排気際循環)のダイヤフラム、コントロールホース、エミッションコントロールホースなど、BPTのダイヤフラムなど、ABバルブのアフターバーン防止バルブシートなど、スロットルのスロットルボディパッキン、ターボチャージャーのターボオイルホース(供給)、ターボオイルホース(リターン)、ターボエアホース、インタークーラーホース、タービンシャフトシールなど。
【0111】
トランスミッション系の、トランスミッション関連のベアリングシール、オイルシール、O−リング、パッキン、トルコンホースなど、ATのミッションオイルホース、ATFホース、O−リング、パッキン類など。
【0112】
ステアリング系の、パワーステアリングオイルホースなど。
【0113】
ブレーキ系の、オイルシール、O−リング、パッキン、ブレーキオイルホースなど、マスターバックの大気弁、真空弁、ダイヤフラムなど、マスターシリンダーのピストンカップ(ゴムカップ)など、キャリパーシール、ブーツ類など。
【0114】
基本電装品の、電線(ハーネス)の絶縁体やシースなど、ハーネス外装部品のチューブなど。
【0115】
制御系電装品の、各種センサー線の被覆材料など。
【0116】
装備電装品の、カーエアコンのO−リング、パッキン、クーラーホース、外装品のワイパーブレードなど。
【0117】
また自動車用以外では、たとえば、船舶、航空機などの輸送機関における耐油、耐薬品、耐熱、耐スチーム、あるいは耐候用のパッキン、O−リング、ホース、その他のシール材、ダイヤフラム、バルブに、また化学プラントにおける同様のパッキン、O−リング、シール材、ダイヤフラム、バルブ、ホース、ロール、チューブ、耐薬品用コーティング、ライニングに、食品プラント機器および食品機器(家庭用品を含む)における同様のパッキン、O−リング、ホース、シール材、ベルト、ダイヤフラム、バルブ、ロール、チューブに、原子力プラント機器における同様のパッキン、O−リング、ホース、シール材、ダイヤフラム、バルブ、チューブに、OA機器、一般工業部品における同様のパッキン、O−リング、ホース、シール材、ダイヤフラム、バルブ、ロール、チューブ、ライニング、マンドレル、電線、フレキシブルジョイント、ベルト、ゴム板、ウエザーストリップ、PPC複写機のロールブレードなどへの用途に好適である。たとえば、PTFEダイヤフラムのバックアップゴム材は滑り性が悪いため、使用している間にすり減ったり、破れたりする問題があったが、本発明の積層体を用いることにより、この問題を改善でき、好適に使用できる。
【0118】
また、食品ゴムシール材用途においては、従来ゴムシール材において着香性やゴムの欠片などが食品中に混入するトラブルがあるが、本発明の積層体を用いることにより、この問題を改善でき、好適に使用できる。医薬・ケミカル用途のゴムシール材溶剤を使用する配管のシール材としてゴム材料は溶剤に膨潤する問題があるが、本発明の積層体を用いることにより、樹脂を被覆する事で改善される。一般工業分野では、ゴム材料の強度、すべり性、耐薬品性、透過性を改善する目的において、たとえば、ゴムロール、O−リング、パッキン、シール材等に好適に用いることができる。特に、リチウムイオン電池のパッキン用途には耐薬品性とシールの両方を同時に維持できることから好適に使用できる。その他、低摩擦による摺動性が要求される用途においては、好適に使用できる。
【0119】
これらの中でも、特に上記積層体は、チューブ又はホースとして好適に用いられる。すなわち、上記積層体は、チューブ又はホースでもあることが好ましい。チューブの中でも、耐熱性、燃料低透過性の点で自動車用の燃料配管チューブ又はホースとして好適に利用できる。
【0120】
本発明における前記積層体からなる燃料配管は通常の方法によって製造することができ、特に制限されることはない。
【実施例】
【0121】
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0122】
以下、実施例および比較例において使用するフッ素樹脂およびその測定方法について記載する。
【0123】
(1)融点
セイコー型DSC装置を用い、10℃/minの速度で昇温したときの融解ピークを記録し、極大値に対応する温度を融点とした。
【0124】
(2)MFR(Melt Flow Rate)
メルトインデクサー(東洋精機製作所(株)製)を用い、各種温度、5kg加重下で直径2mm、長さ8mmのノズルから単位時間(10分間)に流出するポリマーの重量(g)を測定した。
【0125】
(3)単層の燃料透過係数の測定
樹脂ペレットを、それぞれ、直径120mmの金型に入れ、300℃に加熱したプレス機にセットし、約2.9MPaの圧力で溶融プレスして、厚さ0.15mmのシートを得た。CE10(イソオクタンとトルエンとの容量比50:50の混合物にエタノール10容量%を混合した燃料)を18mL投入した内径40mmφ、高さ20mmのSUS316製の透過係数測定用カップに得られたシートを入れ、60℃における質量変化を1000時間まで測定した。時間あたりの質量変化、接液部のシートの表面積およびシートの厚さから燃料透過係数(g・mm/m
2/day)を算出した。
【0126】
以下、実施例および比較例中のフッ素樹脂は、下記表1に示すものである。
【0127】
【表1】
【0128】
(加硫用ゴム組成物1〜6及びA〜F)
下記表2に示す材料を、40℃に温調した8インチオープンロールを用いて混練することにより、約3mm厚みのシート状の加硫用ゴム組成物1〜6及びA〜Fを得た。なお、表2の各数値は質量部を表す。
【0129】
(実施例1〜6、比較例1〜6)
接着性試験
厚さ約3mmの表2に示す加硫用ゴム組成物のシートと、表1に示す厚みのフッ素樹脂シートを重ね合わせ、片方の端部に幅約10〜15mmの樹脂フィルム(厚さ10μmの離形フィルム)を両シートの間に挟んだ後、得られるシートが厚み2mmになるよう金属製スペーサーを入れた金型に挿入し、170℃で15分間プレスすることにより、シート状の積層体を得た。得られた積層体を幅10mm×長さ40mm×3セットの短冊状に切断し、離形フィルムを剥がして掴みしろとした試験片を作製した。この試験片について、オートグラフ((株)島津製作所製 AGS−J 5kN)を使用して、JIS−K−6256(架橋ゴムの接着試験方法)に記載の方法に準拠し、25℃において50mm/minの引張速度で剥離試験を行い、剥離モードを観測し、以下の基準で評価した。得られた結果を表3に示す。
(接着評価)
○…積層体の界面で加硫用ゴム組成物あるいはフッ素樹脂が材料破壊し、界面で剥離するのが不可能であった。
×…積層体の界面で比較的容易に剥離した。
【0130】
耐熱性試験
厚さ約3mmの表2に示す配合割合で得られた未加硫ゴムシートを、170℃で15分プレス加硫し、2mm厚の一次加硫物を得た。さらにこれをエア・オーブン中150℃で2時間加熱し、二次加硫物を得た。得られた二次加硫物を用い、JIS K 6257に記載の方法に準じて、引張強さTB(Tensile strength at Break)、破断時伸び(Elongation at Break)およびゴム硬度Hs(Hardness)を測定し、耐熱性の評価を行った(150℃×3日)。得られた結果を表3に示す。
【0131】
【表2】
以下に実施例および比較例で用いた配合剤を示す。
*1「エピクロマーCG」ダイソー株式会社製
*2「シーストSO」東海カーボン株式会社製
*3「アデカサイザーRS107」株式会社ADEKA製
*4「スプレンダーR300」花王株式会社製
*5「DHT−4A」協和化学工業株式会社製
*6「ダイソネットXL−21S」ダイソー株式会社製
【0132】
【表3】
【0133】
本発明の積層体である加硫用ゴム組成物1〜6とフッ素樹脂(1)〜(3)との積層体は強固に接着されていることが確認された。また、加硫用ゴム組成物1〜6の加硫物の耐熱性が優れていることから、本発明加硫用ゴム組成物1〜6とフッ素樹脂(1)〜(3)との積層体においても耐熱性は良好となる。また、本発明においては、Tbが高いほど耐熱性優れていることを示している。
一方で、本発明の積層体に該当しない加硫用ゴム組成物A〜Fとフッ素樹脂(1)〜(3)との積層体は強固に接着できなかった。