【実施例】
【0053】
方法
本発明のミモトープの同定のために用いた抗体は、Aβから得られたアミノ酸配列を検出するが、全長ヒトAPPは結合しない。検出された配列は、EVHHQKLVFFAED(=Aβの原エピトープアミノ酸配列11-24)及びp(E)VHHQKLVF(p4374=N-末端においてピログルタミン酸修飾されたAβの原エピトープアミノ酸配列11-19)を含む。抗体は、モノクローナル又はポリクローナル抗体製剤、又はそれらのいかなる抗体の部分であってもよいが唯一の必要条件としては、上述したエピトープ(ヒト由来のAβ)の少なくとも1つの抗体分子を特異的に認識するが、全長ヒトAPPには結合しないことである。
【0054】
ミモトープは、同定され、及びさらに、モノクローナル抗体及びペプチドライブラリーによって特徴づけられる。
【0055】
実施例1: β-アミロイド及びN-末端を切断した及び/又は翻訳後修飾されたβ-アミロイド断片を特異的に検出するモノクローナル抗体の産生。
Alz-9の融合試験から誘導されたモノクローナル抗体:C57/Bl6マウスを、KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)に結合した原AβエピトープHQKLVFC及びアジュバントとしてのアラム(水酸化アルミニウム)を用いて繰り返し免疫化した:p4377ペプチド特異的、抗体産生ハイブリドーマをELISA(p4377-ペプチドコートしたELISAプレート)によって検出した。ヒトAβ40/42(遺伝子組換えタンパク質)をポジティブ・コントロール・ペプチドとして用いた:ペプチド全長α-シヌクレインの両方に特異的に結合するため、ELISAに固定された遺伝子組換えタンパク質を認識するハイブリドーマが含まれる。p1454(ヒトAβ33-40)は、ネガティブコントロールペプチドとして用いた。さらにハイブリドーマはp4374、p1323及びsAPPαを試験した。2つの異なるシヌクレイン・タンパク質を区別しないため、ELISAプレートに固定された遺伝子組換えタンパク質を認識するハイブリドーマは含まれない。sAPPαも確かめた。さらなる抗体産生には、p4374、及びp1323のみと結合し、sPPαとは結合しないハイブリドーマを用いた。
ハイブリドーマクローンMV-002(内部名A115; IgG2b)を、それぞれp1323、p4374、p4377、p1454、Aβ及びsAPPαの特異的検出のために精製し分析した。MV-002はELISAにおいてエピトープp1323並びにp4377及び全長Aβタンパク質(遺伝子組換えタンパク質; Bachem AGより入手, Bubendorf, Switzerland)を認識した。しかし、ELISAにおいてp1454は検出しなかった。さらに、MV-002抗体は、sAPPαを検出しなかったが、Aβ11-19においてピログルタミン酸バージョンであるペプチドp4374に特異的に結合した。
【0056】
実施例2: ファージ提示法、インビトロでの結合性及び阻害性(ELISA)
この実施例において用いたファージディスプレーライブラリーは、Ph.D. 7: New England BioLabs E8102L(直線7量体ライブラリー)である。ファージ提示法は、製造者のプロトコール(www.neb.com)に従い行った。
2又は3の連続のピックアップにより、1つのファージクローンを選択し、及びファージ上清を、ピックアップ過程において用いた抗体でコーティングしたプレートで、ELISAにかけた。このELISAにおいて陽性であったファージクローン(標的には強いシグナルを示したが、非特異的コントロールにはシグナルを示さなかったもの)の配列を決定した。DNA配列から、ペプチド配列を推定した。これらのペプチドを合成し、及びELISAにより結合性及び阻害性により特徴づけた。いくつかのペプチドには追加のアミノ酸がC末端に結合している。加えて、スクリーニングにおいて同定したミモトープの結合配列情報から、いくつかの新規なミモトープを作製し、ミモトープのワクチン化のためのコンセンサス配列の同定のサポートとして用いた。
1. インビトロにおける結合アッセイ(ELISA)
ファージディスプレー並びにそれらの変異体から誘導されたペプチドをBSAに結合し、ELISAプレート(それぞれの図に示す通り1μM)に結合させ、続いて、同定されたペプチドの結合能の分析のためのスクリーニングプロセスに用いたモノクローナル抗体とともに培養した。
2. インビトロにおける結合阻害アッセイ(ELISA)
スクリーニングプロセスにおいて用いたモノクローナル抗体とともに、ファージディスプレーから得られた量の異なるペプチド(それぞれ図に示す通り、濃度範囲5μgないし0.03μg(段階希釈))を培養した。その後、結合する抗体の量を減少させるペプチドを、このアッセイにおいて阻害することであるとする。
【0057】
実施例3: ミモトープのインビボ試験:免疫原性及び交差反応性の分析
1. ミモトープのインビボ試験
阻害並びに非阻害性ペプチドをKLHに結合させ、適切なアジュバント(水酸化アルミニウム)とともにマウス(野生型C57/Bl6マウス;脇腹への皮下注射)に注入した。動物は、隔週の間隔で3-6回ワクチン接種し、血清も隔週で採取した。各血清について、注入ペプチド並びに無関係なペプチドの抗体力価を決定した。さらに、ELISAプレートに固定した遺伝子組換えヒトAβタンパク質及び原ペプチドについて、それぞれに対する抗体力価決定した。一般に血清は、ウシ血清アルブミン及び遺伝子組換え全長タンパク質に反応させて抗ペプチド反応により分析される。抗体力価は、抗マウスIgG特異的抗体を用いて決定した。結果の詳細は
図4、5及び
図6に示す。
【0058】
2. 結果
2.1. N-末端切断型及び修飾型Aβ特異的モノクローナル抗体の同定:
図1は、Alz-9試験において得られた、全長Aβ及びE11及びH14において切断されたAβ断片及びE11ないしpE11において修飾されたAβ断片に特異的なモノクローナル抗体MV-002(内部名A115; IgG2b)の特徴を示す。
2.2. AβのN末端切断型及び修飾型を標的とした特異的mABによるスクリーニング:
2.2.1. ファージディスプレーライブラリーPh.D.7
2.2.1.1. p1323に対するモノクローナル抗体のスクリーニング
PhD7ファージディスプレーライブラリーをスクリーニングし、このスクリーニングにより、47配列が同定された:表1は、ペプチドの同定及び原エピトープと比較したそれらの結合能の概略を示す。
【表1-1】
【表1-2】
表1の凡例:結合能は以下の結合コードで表した: 1:Xは、親抗体の希釈因子を示す。Ac-はアセチル化アミノ酸を示す。
【0059】
2.3. インビトロにおける、ファージディスプレーライブラリーによるスクリーニングにおいて、モノクローナル抗体を用いて同定されたN末端切断型及び修飾型Aβに対するミモトープの特徴:
図2及び3は、インビトロにおける結合及び阻害アッセイによる代表例を示す。得られたデータは、それぞれ表1及び2に概説する。
【0060】
MV-002ミモトープ:インビトロにおける競合阻害試験において、47配列のうち11配列がモノクローナル抗体MV-002の結合を阻害した。残りの36配列はインビトロにおける競合阻害試験において、特異的モノクローナル抗体の結合を阻害しなかったが、なお、親抗体に対する結合能は保っていた(表2)。重要なことは、親抗体にインビトロで結合するための原エピトープにおいて競合することは、
図4-6に記載したとおり、インビボで免疫反応の交差反応性を有することが必要条件ではないということである。それゆえ、脳からのアミロイドペプチドのクリアランスを導くことのできる、インビボで免疫反応を誘導するペプチドを検出するためには、阻害だけでなく非阻害性ペプチドも用いられる。
【0061】
【表2】
表2の説明:阻害能は以下の配列によってコードされている:
弱い阻害は、AB結合を低下させるのに、原エピトープよりも多くのペプチドが必要であることを意味する;強い阻害は、AB結合を低下させるのに、原エピトープと近い量のペプチドが必要であることを意味する。原ペプチドを標準としてミモトープと比較した。アッセイにおいて用いた5μgのペプチドによるODを、原ペプチドと比較して競合阻害能を計算するのに用いた。
【0062】
【0063】
2.4. インビボにおける、アミロイドβに対するモノクローナル抗体のファージディスプレーライブラリーにおけるスクリーニングによって同定されたミモトープの特徴付け:
雌C57/Bl6マウス各群5-6匹を、KLHに結合させたペプチド30μgで皮下注射により免疫化した。コントロール群には原エピトープ-KLH結合体を投与した。アジュバントとしてはアラムを用いた(全て1mg/マウス)。投与したペプチドは、全て、モノクローナル抗体に特異的に結合することができたが、いくつかのペプチドは、その親抗体の原エピトープへの結合をインビトロで阻害しなかった(インビトロ結合阻害アッセイ)。インビトロのELISAアッセイによる抗体力価の決定は、単独のマウスの血清又は集めた血清(
図5参照)により、それぞれのワクチン接種2週間ごとに行った(
図6及び7をそれぞれ参照)。抗体力価は、全ての図においてOD半値(OD max/2)として計算した。ELISAプレートのウェルは、ミモトープ-BSA結合体及び無関係なペプチド-BSA結合体(ネガティブコントロール)によりコーティングした。ポジティブコントロールは、親抗体をミモトープ-BSA結合体と反応させて行った。検出は、抗マウスIgGで行った。さらに、遺伝子組換えタンパク質をELISAプレートに固定し、血清を反応させた。
図4、5及び6は、インビボにおけるミモトープの特徴付けに用いられたアッセイの代表例を示す。示した結果は、p4670、p4675、p4680及びp4681のようなインビトロでの阻害アッセイにおいて活性なペプチドから得られたもの、及びインビトロで結合能を有しないペプチドp4403から得られたものをそれぞれ示す。
【0064】
図4は、インビボにおけるミモトープのワクチン接種により誘導された免疫反応を、注入ペプチド及び関係のない配列を含む無関係なペプチドに対する免疫反応を分析することによって特徴付けた例である。実施例中、エピトープp4377、ミモトープp4670、p4675、p4680、p4681及びp4403は注入ペプチドに対して免疫反応を誘導したが、無関係な配列(p1454)に対する非特異的免疫反応は誘導しなかった。
【0065】
図5は、親抗体(p4377)並びにAβ切断種から得られたペプチド(p1323及びp4374)及びsAPPα、それぞれの原エピトープに対する、ミモトープのワクチン接種により引き起こされた免疫反応のインビボでの特徴付けの例を示す。
p4377及びミモトープp4670、p4675、p4680、p4681及びp4403は、原エピトープp4377に対して検出可能な免疫反応を引き起こした。同様の現象が、p4374の修飾型において、交差反応性を分析していると検出される。興味深いことに、原エピトープ及びミモトープワクチンは、原エピトープの修飾型であるp4374に対して関連する抗体力価を示した。驚いたことにミモトープはp1323に対して、より効果的な免疫反応を生じさせることができるが、それが必須ではないようであり、これは原Aβ断片より広い免疫反応を示す可能性があることを示している。さらに、sAPPαに対しては検出されなかった。
【0066】
図6は、全長Aβに対するミモトープワクチン接種により引き起こされた免疫反応の特徴である。驚いたことにMV-002を用いて選択されたミモトープは、抗体を作るための切断又は修飾型の短いエピトープだけでなく、全長Aβ、Aβの非修飾型、並びに原配列又はさらにはp4377まで交差反応性を引き起こした。
興味深いことに、競合性だけでなく非競合性ペプチドも原Aβ配列を含む、ペプチドと特異的に相互作用する同様の免疫反応を誘導することができることがわかった。それゆえ、本発明のミモトープは、AD患者の脳内において見られる天然由来のAβの広いスペクトルを標的とした最適な、新規なワクチンの候補を構成する。その形態には、Aβ1-40/42、及びN-末端を切断した形態Aβ3-40/42、Aβ(pE)3-40/42、非修飾型Aβ11-40/42、修飾型Aβp(E)11-40/42及びAβ14-40/42に限られない。重要なことは、本発明のミモトープもまたAPPから切り出されたsAPPαにおけるネオエピトープに対して交差反応を誘導しなかったため、通常のsAPPαシグナルを妨害しない(詳細は
図5を参照)。
【0067】
【表3】
【0068】
表4は、MV-002由来のミモトープを用いた全長Aβに対するミモトープワクチン接種により引き起こされた免疫反応のさらなる例を示す。表4にリスト化したペプチドは全て、全長及び/又は切断型及び修飾型Aβ又はそれらの断片に対して特異的免疫反応を示した。
【表4】
【0069】
2.5: 遺伝子組み換え動物におけるインビボにおける、AD様病変を減少させるためのミモトープの有効性(概念の証明のための分析)
Tg2576 ADマウスモデルを、ミモトープワクチンの前臨床での有効性を試験するために用いた。この遺伝子組み換え体は、ハムスタープリオンタンパク質(PrP)プロモーターによる制御のもと、タンパク質の過剰発現を生じる、アミノ酸670/671位においてスウェーデン型二重変異を有するヒトAPPを発現する。これは、現在AD研究において最も広く用いられている方法の1つである。Tg2576モデルは、疾患特異的である、アミロイド斑蓄積及び星状細胞増加を含む、AD病態の様々な特徴を有している。現在ある全ての他のADモデル系と同様、ADの全ての主要な神経病理学的特徴を反映しているわけではない。
【0070】
ミモトープ処置により脳内Aβ蓄積を予防することができるかを評価するため、ペプチド-KLH複合体をアラム(アジュバント:水酸化アルミニウム)に吸着させた、又はPBSをアラム(PBS又はコントロールと呼ぶ)に吸着させたものを単独でTg2576マウスに毎月皮下注射を行い、投与した。最後の免疫化の8週間後、動物を安楽死させ、脳を収穫しAβ沈着(AD様病変)を分析した。マウスは深い麻酔のもとで安楽死させた。続いて、脳を単離し、4%PFA中で固定し、エタノールで段階的に脱水し、キシレン中で培養しパラフィン包埋した。パラフィン包埋した脳は、7μMにおいて切断ミクロトームを用いてスライスし、スライドガラスに乗せた。
【0071】
Tg2576動物においてAD様病変であるかを評価する方法としては、動物の脳内においてアミロイド沈着により占有された相対領域を分析した。この分析は、自動化された面積認識プログラムを用いて行った。斑であるかを特定するため、スライス断片を(Aβ40/42特異的)モノクローナル抗体(mAb) 3A5で染色した。ミモトープ処置動物をコントロール動物と比較した。動物はすべて13.5-14ヶ月で安楽死させた。この分析のため、大脳皮質及び海馬をカバーしている3スライド/動物を選択し、ミラックスシステム(Mirax-system)(ツァイス(Zeiss))を用いて文書で記録した。アミロイド斑により占められた面積の計算には、得られた画像を調べ、我々は各スライドにつき、4つまでの個別のセクションを分析し、
不自然で異常な染色強度を有する部分を排除した。
【0072】
MV002のミモトープについては、1つの例示的な候補について面積の分析をした:分析は、ペプチド-KLH複合体ワクチンを用いて、以下の繰り返しのワクチン接種により行われた。コントロール群の平均占有率は0.35%であったのに対し、ミモトープ処置動物が0.24%であった。これはミモトープ処置群のグループ2が31%の減少を生じたことと対応する。
【0073】
それゆえ、このデータのセットは、ミモトープワクチン処置が遺伝子組み換え動物におけるAD様病変において有益であることを明らかに示している。