(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、ポリビニルアルコール樹脂またはその誘導体及び二色性染料を含有し、延伸してなるフィルムからなる偏光素子であって、該二色性染料の少なくとも一つが遊離酸の形式で式(1)で示されるアゾ化合物又はその塩であることを特徴とする該偏光素子であって、良好な偏光特性を有し、かつ、高い耐久性をも有することが特徴である。式(1)に示される染料の少なくとも一つをポリビニルアルコール系フィルムに含有させ、延伸されてなるフィルムであることによって特徴を達成しうる。
【化3】
(式中、Aは、置換基として、少なくとも1つのカルボキシ基を有するフェニル基を示す。)
【0013】
次に、本発明で使用する前記式(1)で表されるアゾ化合物の具体例を以下に挙げる。尚、式中のスルホ基、カルボキシ基及びヒドロキシ基は遊離酸の形で表す。
【0032】
合成方法
式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩は、非特許文献2に記載されるような通常のアゾ染料の製法に従い、カップリングを行うことにより容易に製造できる。具体的な製造方法としては、例えば、式(20)で表されるアミノ化合物を公知の方法でジアゾ化し、N,N−ビス(1−ヒドロキシ−3−スルホ−6−ナフチル)アミン(慣用名:ジJ酸)に10〜20℃でアルカリカップリングしてジスアゾ化合物を得て、式(1)の化合物を含有する溶液を得る。
【0033】
【化22】
(式中、RxまたはRyは、それぞれ水素原子、炭素数1乃至4を有する低級アルキル基、炭素数1乃至4を有する低級アルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ニトロ基、または、ハロゲン原子を示す。)
【0034】
次いでこの溶液を、蒸発乾固、または、塩析ろ過乾燥し、粉砕して粉末化された本願の式(1)の化合物を得る。このようにして得られる式(1)の化合物は一般的にナトリウム塩として用いられるが、リチウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルキルアミン塩などとして用いることも出来る。
【0035】
式(1)の染料は、他の有機色素と併用することによって、色相の補正、および、偏光性能を向上させることが可能である。この場合に用いられる有機色素としては、本発明に用いる色素と吸収波長領域と異なる波長領域に吸収特性を有する色素であって、偏光特性が高いものであれば、いかなる染料でも良く、二色性染料とは、特に限定しないが、親水性高分子を染色するものであればよく、アゾ系、アントラキノン系、キノフタロン系などの二色性染料が挙げられ、また、カラーインデックスに記載の色素も例示される。例えば、シー.アイ.ダイレクト.イエロー12、シー.アイ.ダイレクト.イエロー28、シー.アイ.ダイレクト.イエロー44、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ26、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ39、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ107、シー.アイ.ダイレクト.レッド2、シー.アイ.ダイレクト.レッド31、シー.アイ.ダイレクト.レッド79、シー.アイ.ダイレクト.レッド81、シー.アイ.ダイレクト.レッド247、シー.アイ.ダイレクト.グリーン80、シー.アイ.ダイレクト.グリーン59、及び特開2001−33627、特開2002−296417、特開2003−215338、WO2004/092282、特開2001−056412、特開2001−027708、特開平11−218611、特開平11−218610、特開昭60−156759号公報、非特許文献1に記載された有機染料等が挙げられる。これらの有機染料は遊離酸の他、アルカリ金属塩(例えばNa塩、K塩、Li塩)、アンモニウム塩、又はアミン類の塩として用いることができる。ただし、二色性染料はこれらに限定されず公知の二色性染料を用いることが出来るが、アゾ系の染料が好ましい。これらに示された二色性染料以外にも、必要に応じて、他の有機染料を併用させることが出来る。
【0036】
目的とする偏光素子が、中性色の偏光素子、液晶プロジェクター用カラー偏光素子、あるいはその他のカラー偏光素子であるかによって、それぞれ配合する有機染料の種類は異なる。その配合割合は特に限定されず、光源、耐久性、求められる色相などの要望に応じて、配合量を任意に設定できる。
【0037】
式(1)の染料は、ポリビニルアルコール樹脂またはその誘導体のフィルムに含浸される。偏光素子を構成するポリビニルアルコール樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、ポリ酢酸ビニル樹脂をケン化すればよい。ポリ酢酸ビニル樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニル及びこれと共重合可能な他の単量体の共重合体などが挙げられる。酢酸ビニルと共重合する他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類又は不飽和スルホン酸類などが挙げられる。ポリビニルアルコール樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%が好ましく、95モル%以上がより好ましい。このポリビニルアルコール樹脂は、さらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性したポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用できる。またポリビニルアルコール樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000が好ましく、1,500〜6,000がより好ましい。本発明で使用できるポリビニルアルコール樹脂の誘導体は、前記変性処理を施した樹脂等が挙げられる。
【0038】
ポリビニルアルコール樹脂またはその誘導体(以下、両者を併せてポリビニルアルコール系樹脂という)を製膜したものが、原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール樹脂を製膜する方法は特に限定されるものでなく、公知の方法で製膜することができる。この場合、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは可塑剤としてグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール又は低分子量ポリエチレングリコールなどを含有することができる。可塑剤量は5〜20重量%が好ましく、8〜15重量%がより好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムの膜厚は特に限定されないが、例えば、5〜150μmが好ましく、10〜100μmがより好ましい。
【0039】
前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムには、まず膨潤工程が施される。膨潤工程とは20〜50℃の溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを30秒〜10分間浸漬させることによって行われる。溶液は水が好ましい。偏光素子を製造する時間を短縮する場合には、染料の染色処理時にも膨潤するので膨潤工程を省略することもできる。
【0040】
膨潤工程の後に、染色工程が施される。染色工程とは、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、二色性染料を含有した溶液に浸漬させることによって、染料を含浸させる工程である。この工程での溶液温度は、5〜60℃が好ましく、20〜50℃がより好ましく、35〜50℃が特に好ましい。溶液に浸漬する時間は適度に調節できるが、30秒〜20分で調節するのが好ましく、1〜10分がより好ましい。染色方法は、該溶液に浸漬することが好ましいが、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに該溶液を塗布することによって行うことも出来る。
【0041】
二色性染料を含有した溶液は、染色助剤として、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、無水硫酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウムなどを含有することが出来る。それらの含有量は、染料の染色性による時間、温度によって任意の濃度で調整できるが、それぞれの含有量としては、0〜5重量%が好ましく、0.1〜2重量%がより好ましい。
【0042】
染料を含浸させる方法としては、二色性染料を含有した溶液に浸漬させることによって行っても良いが、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの原反を成型加工する段階で、染料を含有させる方法でも良い。
【0043】
染色工程後、次の工程に入る前に洗浄工程(以降洗浄工程1という)を行うことが出来る。染浄工程1とは、染色工程でポリビニルアルコール系樹脂フィルムの表面に付着した染料溶媒を洗浄する工程である。洗浄工程1を行うことによって、次に処理する液中に染料が移行するのを抑制することができる。洗浄工程1では、一般的には水が用いられる。
洗浄方法は、該溶液に浸漬することが好ましいが、該溶液をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに塗布することによって洗浄することも出来る。洗浄の時間は、特に限定されないが、好ましくは1〜300秒、より好ましくは1〜60秒である。洗浄工程1での溶媒の温度は、親水性高分子が溶解しない温度であることが必要となる。一般的には5〜40℃で洗浄処理される。
【0044】
染色工程又は洗浄工程1の後、架橋剤及び/又は耐水化剤を含有させる工程を行うことが出来る。架橋剤としては、例えば、ホウ酸、ホウ砂又はホウ酸アンモニウムなどのホウ素化合物、グリオキザール又はグルタルアルデヒドなどの多価アルデヒド、ビウレット型、イソシアヌレート型又はブロック型などの多価イソシアネート系化合物、チタニウムオキシサルフェイトなどのチタニウム系化合物などを用いることができるが、他にもエチレングリコールグリシジルエーテル、ポリアミドエピクロルヒドリンなどを用いることができる。耐水化剤としては、過酸化コハク酸、過硫酸アンモニウム、過塩素酸カルシウム、ベンゾインエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、塩化アンモニウム又は塩化マグネシウムなどが挙げられるが、好ましくはホウ酸が用いられる。以上に示された少なくとも1種以上の架橋剤及び/又は耐水化剤を用いて架橋剤及び/又は耐水化剤を含有させる工程を行う。その際の溶媒としては、水が好ましいが限定されるものではない。架橋剤及び/又は耐水化剤を含有させる工程での溶媒中の架橋剤及び/又は耐水化剤の含有濃度は、ホウ酸を例にして示すと溶媒に対して濃度0.1〜6.0重量%が好ましく、1.0〜4.0重量%がより好ましい。この工程での溶媒温度は、5〜70℃が好ましく、5〜50℃がより好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに架橋剤及び/又は耐水化剤を含有させる方法は、該溶液に浸漬することが好ましいが、該溶液をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに塗布又は塗工してもよい。この工程での処理時間は30秒〜6分が好ましく、1〜5分がより好ましい。ただし、架橋剤及び/又は耐水化剤を含有させることが必須でなく、時間を短縮したい場合には、架橋処理又は耐水化処理が不必要な場合には、この処理工程を省略してもよい。
【0045】
染色工程、洗浄工程1、または架橋剤及び/又は耐水化剤を含有させる工程を行った後に、延伸工程を行う。延伸工程とは、ポリビニルアルコール系フィルムを1軸に延伸する工程である。延伸方法は湿式延伸法又は乾式延伸法のどちらでもよい。
【0046】
乾式延伸法の場合には、延伸加熱媒体が常温〜180℃で、空気媒体の場合には、空気媒体の温度が常温〜180℃で延伸するのが好ましい。また、湿度は20〜95%RHの雰囲気中で処理するのが好ましい。加熱方法としては、例えば、ロール間ゾーン延伸法、ロール加熱延伸法、圧延伸法、赤外線加熱延伸法などが挙げられるが、その延伸方法は限定されるものではない。延伸工程は1段で延伸することもできるが、2段以上の多段延伸により行うことも出来る。
【0047】
湿式延伸法の場合には、水、水溶性有機溶剤、又はその混合溶液中で延伸する。架橋剤及び/又は耐水化剤を含有した溶液中に浸漬しながら延伸処理を行うことが好ましい。架橋剤としては、例えば、ホウ酸、ホウ砂又はホウ酸アンモニウムなどのホウ素化合物、グリオキザール又はグルタルアルデヒドなどの多価アルデヒド、ビウレット型、イソシアヌレート型又はブロック型などの多価イソシアネート系化合物、チタニウムオキシサルフェイトなどのチタニウム系化合物などを用いることができるが、他にもエチレングリコールグリシジルエーテル、ポリアミドエピクロルヒドリンなどを用いることができる。耐水化剤としては、過酸化コハク酸、過硫酸アンモニウム、過塩素酸カルシウム、ベンゾインエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、塩化アンモニウム又は塩化マグネシウムなどが挙げられる。以上に示された少なくとも1種以上の架橋剤及び/又は耐水化剤を含有した溶液中で延伸を行う。架橋剤はホウ酸が好ましい。延伸工程での架橋剤及び/又は耐水化剤の濃度は、例えば、0.5〜15重量%が好ましく、2.0〜8.0重量%がより好ましい。延伸倍率は2〜8倍が好ましく、5〜7倍がより好ましい。延伸温度は40〜60℃で処理することが好ましく、45〜58℃がより好ましい。延伸時間は通常30秒〜20分であるが、2〜5分がより好ましい。湿式延伸工程は1段で延伸することができるが、2段以上の多段延伸により行うこともできる。
【0048】
延伸工程を行った後には、フィルム表面に架橋剤及び/又は耐水化剤の析出、又は異物が付着することがあるため、フィルム表面を洗浄する洗浄工程(以降洗浄工程2という)を行うことができる。洗浄時間は1秒〜5分が好ましい。洗浄方法は洗浄溶液に浸漬することが好ましいが、溶液をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに塗布又は塗工によって洗浄することができる。1段で洗浄処理することもできるし、2段以上の多段処理をすることもできる。洗浄工程の溶液温度は、特に限定されないが通常5〜50℃、好ましくは10〜40℃である。
【0049】
ここまでの処理工程で用いる溶媒として、例えば、水、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール又はトリメチロールプロパン等のアルコール類、エチレンジアミン又はジエチレントリアミン等のアミン類などの溶媒が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、1種以上のこれら溶媒の混合物を用いることもできる。最も好ましい溶媒は水である。
【0050】
延伸工程又は洗浄工程2の後には、フィルムの乾燥工程を行う。乾燥処理は、自然乾燥により行うことができるが、より乾燥効率を高めるためにはロールによる圧縮やエアーナイフ、又は吸水ロール等によって表面の水分除去を行うことができ、及び/又は送風乾燥を行うこともできる。乾燥処理温度としては、20〜100℃で乾燥処理することが好ましく、60〜100℃で乾燥処理することがより好ましい。乾燥処理時間は30秒〜20分を適用できるが、5〜10分であることが好ましい。
【0051】
以上の方法で、本発明の耐久性を向上させたポリビニルアルコール系樹脂フィルム偏光素子を得ることが出来る。偏光素子における二色性染料を吸着させるフィルムがポリビニルアルコール系樹脂でなくても、アミロース系樹脂、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸塩系樹脂などから得られるフィルムでも二色性染料を含有させ、延伸、シェア配向などで親水性樹脂を配向させることによって、同様な偏光素子を作製することができるが、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムよりなる偏光素子フィルムが最も好適である。
【0052】
得られた偏光素子には、その片面、又は両面に透明保護層を設けることによって偏光板とする。透明保護層はポリマーによる塗布層として、又はフィルムのラミネート層として設けることができる。透明保護層を形成する透明ポリマー又はフィルムとしては、機械的強度が高く、熱安定性が良好な透明ポリマー又はフィルムが好ましい。透明保護層として用いる物質として、例えば、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースのようなセルロースアセテート樹脂又はそのフィルム、アクリル樹脂又はそのフィルム、ポリ塩化ビニル樹脂又はそのフィルム、ナイロン樹脂またはそのフィルム、ポリエステル樹脂又はそのフィルム、ポリアリレート樹脂又はそのフィルム、ノルボルネンのような環状オレフィンをモノマーとする環状ポリオレフィン樹脂又はそのフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン骨格を有するポリオレフィン又はその共重合体、主鎖又は側鎖がイミド及び/又はアミドの樹脂又はポリマー又はそのフィルムなどが挙げられる。また、透明保護層として、液晶性を有する樹脂又はそのフィルムを設けることもできる。保護フィルムの厚みは、例えば、0.5〜200μm程度である。その中の同種又は異種の樹脂又はフィルムを片面、もしくは両面に1層以上設けることによって偏光板を作製する。
【0053】
上記、透明保護層を偏光素子と貼り合わせるためには接着剤が必要となる。接着剤としては特に限定されないが、ポリビニルアルコール系接着剤が好ましい。ポリビニルアルコール系接着剤として、例えば、ゴーセノールNH−26(日本合成社製)、エクセバールRS−2117(クラレ社製)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。接着剤には、架橋剤及び/又は耐水化剤を添加することができる。ポリビニルアルコール系接着剤には、無水マレイン酸−イソブチレン共重合体を用いるが、必要により架橋剤を混合させた接着剤を用いることができる。無水マレイン酸−イソブチレン共重合体として、例えば、イソバン#18(クラレ社製)、イソバン#04(クラレ社製)、アンモニア変性イソバン#104(クラレ社製)、アンモニア変性イソバン#110(クラレ社製)、イミド化イソバン#304(クラレ社製)、イミド化イソバン#310(クラレ社製)などが挙げられる。その際の架橋剤には水溶性多価エポキシ化合物を用いることができる。水溶性多価エポキシ化合物とは、例えば、デナコールEX−521(ナガセケムテック社製)、テトラット−C(三井ガス化学社製)などが挙げられる。また、ポリビニルアルコール系樹脂以外の接着剤として、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系といった公知の接着剤を用いることも出来る。また、接着剤の接着力の向上、または耐水性の向上を目的として、亜鉛化合物、塩化物、ヨウ化物等の添加物を同時に0.1〜10重量%程度の濃度で含有させることもできる。添加物についても限定されるものではない。透明保護層を接着剤で貼り合せた後、適した温度で乾燥もしくは熱処理することによって偏光板を得る。
【0054】
得られた偏光板は場合によって、例えば液晶、有機エレクトロルミネッセンス等の表示装置に貼り合わせる場合、後に非露出面となる保護層またはフィルムの表面に視野角改善、及び/又はコントラスト改善のための各種機能性層、輝度向上性を有する層またはフィルムを設けることもできる。偏光板をこれらのフィルムや表示装置に貼り合せるには粘着剤を用いるのが好ましい。
【0055】
この偏光板は、もう一方の表面、すなわち、保護層又はフィルムの露出面に、反射防止層や防眩層、ハードコート層など、公知の各種機能性層を有していてもよい。この各種機能性を有する層を作製するには塗工方法が好ましいが、その機能を有するフィルムを接着剤又は粘着剤を介して貼合せることもできる。また、各種機能性層とは、位相差を制御する層又はフィルムとすることができる。
【0056】
以上の方法で、本発明の偏光素子、および、偏光板を得ることが出来る。本発明の偏光素子または偏光板を用いたディスプレイは信頼性が高い、長期的に高コントラストで、かつ、高い色再現性を有するディスプレイになる。
【0057】
こうして得られた本発明の偏光素子は、保護膜を付け偏光板として、必要に応じて保護層又は機能層及び支持体等を設け、液晶プロジェクター、電卓、時計、ノートパソコン、ワープロ、液晶テレビ、偏光レンズ、偏光メガネ、カーナビゲーション及び屋内外の計測器や表示器等に使用される。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例に示す透過率、偏光度の評価は以下のようにして行った。また、以下において「部」は「重量部」を意味する。
【0059】
それぞれの透過率は、分光光度計〔日立製作所社製“U−4100”〕を用いて測定した。
【0060】
分光光度計〔日立製作所社製“U−4100”〕を用いて、透過率を測定するにあたり、光の出射側に、JIS−Z8701(C光源2°視野)に基づき視感度補正後の透過率43%で偏光度99.99%のヨウ素系偏光板(ポラテクノ社製 SKN−18043P)を設置し、絶対偏光光を測定試料に入射出来るようにした。その際のヨウ素系偏光板の保護層は紫外線吸収能のないトリアセチルセルロースである。
【0061】
本発明の偏光板に、絶対偏光光を入射し、その絶対偏光光の振動方向と本発明の偏光板の吸収軸方向が直交(該絶対偏光子と本発明の偏光板の吸収軸が平行)となるようにして測定して得られた絶対平行透過率をKy、その絶対偏光光の振動方向と本発明の偏光板の吸収軸方向が平行(該絶対偏光子と本発明の偏光板の吸収軸が直交)となるようにして測定して得られた絶対直交透過率をKzとした。
【0062】
単体透過率Tsは、絶対平行透過率Ky、及び絶対直交透過率Kzから、下記計算式(i)により求めた。
【0063】
Ts=(Ky+Kz)/2 ・・・式(i)
【0064】
偏光度ρは、絶対平行透過率Ky、及び絶対直交透過率Kzから、下記計算式(ii)により求めた。
【0065】
ρ=(Ky−Kz)/(Ky+Kz) ・・・式(ii)
【0066】
実施例A−1
<染料の作製>
4−アミノ−安息香酸14.6部を水145部に溶かし35重量%の塩酸26部を含む水140部中に加え15〜20℃で亜硝酸ナトリウム6.9部を加えて1時間かけてジアゾ化する。次いでこれをN,N−ビス(1−ヒドロキシ−3−スルホ−6−ナフチル)アミン慣用名:ジJ酸)31.5部、水125部、ソーダ灰11部とからなる水溶液中に加え、更にソーダ灰溶液を注加しながら、pH8.5〜9.5を保ち、20℃で3時間かけて斑点テストでジスアゾ化合物が認められなくなるまでカップリングを行い、ジスアゾ化合物を得た。得られた溶液にサヌキ塩を加えて塩析し、ろ過し、60℃で蒸発乾固させて本願の式(4)で示される染料を作製した。
【0067】
<偏光素子の作製>
ケン化度が99%以上の膜厚75μmのポリビニルアルコール系樹脂フィルム(クラレ社製 VFシリーズ)を40℃の温水に2分浸漬し膨潤処理をした。膨潤処理したフィルムを、本願の式(4)で示される染料 0.05重量%、トリポリ燐酸ナトリウム0.1重量%を含有した45℃の水溶液に浸漬し、染料の吸着を行った。染料が吸着されたフィルムを水にて洗浄し、洗浄の後、2重量%のホウ酸を含有した40℃の水溶液で1分間ホウ酸処理を行った。ホウ酸処理して得られたフィルムを、5.0倍に延伸しながらホウ酸3.0重量%を含有した55℃の水溶液中で5分間処理を行った。そのホウ酸処理して得られたフィルムの緊張状態を保ちつつ、30℃の水で15秒間洗浄を行った。処理して得られたフィルムを直ちに70℃で9分間乾燥処理を行い膜厚28μmの偏光素子とし、測定試料とした。
【0068】
実施例A−2
実施例A−1において、4−アミノ−安息香酸を、3−アミノ−4−メチル安息香酸16.2部に代えて、本願式(10)で示される染料を作製した以外は同様にして、偏光素子とし、測定試料とした。
【0069】
実施例A−3
実施例A−1において、4−アミノ−安息香酸を、3−アミノ−4−メトキシ安息香酸 17.9部に代えて、本願式(16)で示される染料を作製した以外は同様にして、偏光素子とし、測定試料とした。
【0070】
実施例A−4
実施例A−1において、4−アミノ−安息香酸を、3−メトキシ−4−アミノ−5−クロロ安息香酸 19.8重量部に代えて、本願式(19)で示される染料を作製した以外は同様にして、偏光素子とし、測定試料とした。
【0071】
比較例A−1
実施例A−1において用いた本願式(2)で示される染料を、非特許文献1で示されるジスアゾ染料であるC.I.Direct81に代えた以外は同様にして偏光素子とし、測定試料とした。
【0072】
比較例A−2
実施例A−1において用いた本願式(2)で示される染料を、特公平7−92531の実施例1に示されるジスアゾ染料に代えた以外は同様にして偏光素子とし、測定試料とした。
【0073】
比較例A−3
実施例A−1において用いた本願式(2)で示される染料を、特開昭63−189803の実施例No.16に示されるジスアゾ染料に代えた以外は同様にして偏光素子とし、測定試料とした。
【0074】
比較例A−4
実施例A−1において用いた本願式(2)で示される染料を、特許2985408号の化合物例番号8に示される染料に代えた以外は同様にして偏光素子とし、測定試料とした。
【0075】
比較例A−5
実施例A−1において、3−アミノ−4−メトキシ安息香酸を、3−メトキシ−4−アミノベンゼンスルホン酸に代えて、下記式(21)で示されるジJ酸を有するジスアゾ染料を作製した以外は同様にして、偏光素子とし、測定試料とした。
【0076】
【化23】
【0077】
得られた偏光素子を、分光光度計U−4100を用いて380nm乃至780nmにおいて1nm間隔でKy、および、Kzを測定した。得られたKy、Kzから算出される偏光度ρにおいて、最も高い偏光度を有する波長をλmaxとした。λmaxでの単体透過率Tsを約40.5%乃至41.5%としたときの、λmaxでの偏光度ρmaxを表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
得られた偏光素子のλmaxでの偏光度ρmaxを比較したところ、実施例A−1乃至A−4は、比較例A−1乃至A−5と比較して同等以上の偏光度を有していることが分かる。特に、同様なジJ酸を有する比較例A−5と比較すると、6%乃至7%程度偏光度が高い偏光素子が得られていることが分かる。
【0080】
実施例B−3
<耐光性試験>
実施例A−3で得られた偏光素子をアルカリ処理した膜厚80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム社製 TD−80U、以下TACと省略)をポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光素子/接着層/TACという構成で積層し、ラミネートして偏光板を得た。
【0081】
得られた偏光板を40mm×40mmにカットし、粘着剤PTR−3000(日本化薬社製)を介して1mmの透明ガラス板に偏光素子/接着層/TAC/粘着層/透明ガラス板という構成で貼り合わせて耐光性試験用評価試料とした。
【0082】
耐光性試験はキセノンアーク試験機(スガ精機社製;SX−75)で100W、ブラックパネル温度89℃、環境湿度30%にて、偏光素子側から70時間の光照射試験を行い、光照射前後のKy、Kzの変化を確認し、ならびに下記式(iii)より算出されるコントラストCRを算出して光に対する耐久性を比較した。
【0083】
CR=Ky/Kz ・・・式(iii)
【0084】
比較例B−1
実施例B−3で用いた偏光素子A−3を、比較例B−1で得られた偏光素子に代えた以外は同様にして、光に対する耐久性試験を行った。
【0085】
比較例B−2
実施例B−3で用いた偏光素子A−3を、比較例B−2で得られた偏光素子に代えた以外は同様にして、光に対する耐久性試験を行った。
【0086】
比較例B−3
実施例B−3で用いた偏光素子A−3を、比較例B−3で得られた偏光素子に代えた以外は同様にして、光に対する耐久性試験を行った。
【0087】
実施例B−1、比較例B−1乃至比較例B−3で得られる偏光板の耐久試験前、および、耐光性試験後のλmaxにおけるKy、Kz、CRを表2に示す。
【0088】
【表2】
【0089】
表2から分かるように、本願の染料は比較例B−1乃至比較例B−3と比較すると飛躍的に光に対する耐光性が高く、コントラストの低下は2倍以上抑えられていた。
【0090】
表1、および、表2から分かるように本願の染料は、表1から偏光性が高く、従来に用いてきた偏光板用染料と同等以上の偏光度を有する偏光素子が得られ、また、表2から従来の偏光板以上にコントラスト低下が少なく、光に対する耐光性が高い偏光板が得られていることが分かる。このことからも本実施例の偏光板は、高い偏光率を有し、かつ高温且つ長時間暴露の耐光性も優れていた。本発明の偏光素子または偏光板を、液晶プロジェクター、電卓、時計、ノートパソコン、ワープロ、液晶テレビ、偏光レンズ、偏光メガネ、カーナビゲーション及び屋内外の計測器や表示器などにもちいることによって、ジアニシジンの様な特定化学物質に該当する染料を用いなくても高い安定性を有する液晶表示機器、ならびに、レンズなどが得られることが分かる。