特許第5989096号(P5989096)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989096
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】抗ヒトXCR1抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20160825BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20160825BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20160825BHJP
   C12N 15/02 20060101ALN20160825BHJP
【FI】
   C07K16/28ZNA
   A61K39/395 N
   A61P37/02
   !C12N15/00 C
【請求項の数】15
【全頁数】64
(21)【出願番号】特願2014-509528(P2014-509528)
(86)(22)【出願日】2012年8月30日
(65)【公表番号】特表2014-527396(P2014-527396A)
(43)【公表日】2014年10月16日
(86)【国際出願番号】JP2012072667
(87)【国際公開番号】WO2013032032
(87)【国際公開日】20130307
【審査請求日】2015年8月12日
(31)【優先権主張番号】61/530,194
(32)【優先日】2011年9月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/659,637
(32)【優先日】2012年6月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506137147
【氏名又は名称】エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 佳正
(72)【発明者】
【氏名】西村 美由希
(72)【発明者】
【氏名】河野 鉄
(72)【発明者】
【氏名】澤 幸久
(72)【発明者】
【氏名】今井 俊夫
【審査官】 小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−503219(JP,A)
【文献】 国際公開第02/059608(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/072646(WO,A1)
【文献】 J. Pathol.,2010年,Vol. 221,p. 153-163
【文献】 Eur. J. Immunol.,2009年,Volume 39, Issue Supplement 1,p. S721-722, PD08/13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−90
C07K 16/00−46
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトXCR1に結合する抗体であって、
下記の(g)-(i)の重鎖CDR1-3を含む重鎖可変領域と、(j)-(l)の軽鎖CDR1-3を含む軽鎖可変領域とを含む抗体;
(m)-(o)の重鎖CDR1-3を含む重鎖可変領域と、(p)-(r)の軽鎖CDR1-3を含む軽鎖可変領域とを含む抗体;又は
(a)-(c)の重鎖CDR1-3を含む重鎖可変領域と、(d)-(f)の軽鎖CDR1-3を含む軽鎖可変領域とを含む抗体:
(a)配列番号41に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
(b)配列番号42に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
(c)配列番号43に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3;
(d)配列番号44に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
(e)配列番号45に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
(f)配列番号46に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3;
(g)配列番号17に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
(h)配列番号18に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
(i)配列番号19に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3;
(j)配列番号20に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
(k)配列番号21に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
(l)配列番号22に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3;
(m)配列番号29に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
(n)配列番号30に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
(o)配列番号31に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3;
(p)配列番号32に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
(q)配列番号33に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
(r)配列番号34に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3。
【請求項2】
請求項1に記載の抗体であって、
下記の(g)-(i)の重鎖CDR1-3を含む重鎖可変領域と、(j)-(l)の軽鎖CDR1-3を含む軽鎖可変領域とを含む抗体:
(g)配列番号17に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
(h)配列番号18に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
(i)配列番号19に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3;
(j)配列番号20に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
(k)配列番号21に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
(l)配列番号22に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の抗体であって、配列番号60又は64に示すアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号68又は72に示すアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の抗体であって、配列番号60に示すアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号68に示すアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか1項に記載の抗体であって、配列番号64に示すアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号72に示すアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の抗体であって、ヒト定常領域を含有する抗体。
【請求項7】
請求項1〜4、6の何れか1項に記載の抗体であって、配列番号59に示すアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号67に示すアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む抗体。
【請求項8】
請求項1〜3、5、6の何れか1項に記載の抗体であって、配列番号63に示すアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号71に示すアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む抗体。
【請求項9】
Fc領域を有する上記項1〜8の何れか1項に記載の抗体であって、ADCC活性が変動するようにFc領域に変異が施されてなる抗体。
【請求項10】
請求項9に記載の抗体であって、ADCC活性が下降するようにFc領域に変異が施されてなる抗体。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか1項に記載の抗体であって、該抗体に細胞傷害性分子が結合した抗体。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか1項に記載の抗体であって、ヒトXCR1とヒトXCL1との相互作用を阻害する作用を有する抗体。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか1項に記載の抗体であって、樹状細胞の細胞遊走を阻害する作用を有する抗体。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか1項に記載の抗体であって、細胞傷害性Tリンパ細胞の活性を抑制する抗体。
【請求項15】
請求項1〜14の何れか1項に記載の抗体、及び薬学的に許容可能な担体または添加物を含有する薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトXCR1に対して結合する抗体に関する
【背景技術】
【0002】
ケモカインとは、白血球遊走および白血球活性化作用を有する塩基性のヘパリン結合性蛋白質の総称である。これらのケモカインの一次構造を比較した際に、保存されているシステイン残基の位置によって、CXC、CC、C、およびCX3Cのサブファミリーに分類される。XCL1(リンフォタクチン(Ltn)、リンフォタクチンα(Ltn-α)とも称される。)及びXCL2(リンフォタクチンβ(Ltn-β)とも称される。)は、上記のCサブファミリーに分類されるケモカインであり、XCR1(GPR5、SCM-1α又はATACとも称される。)はXCL1及びXCL2と特異的に結合するGタンパク質共役型のケモカイン受容体である。
【0003】
XCR1のヒトの各種組織における発現はmRNAレベルで調べられており、胎盤では強く発現する一方、脾臓・胸腺で弱く発現していることが報告されている(非特許文献1)。また、XCR1は樹状細胞に主に発現しており、マウスでは特にCD8α陽性の樹状細胞に高発現している(非特許文献2、3)。このCD8α陽性の樹状細胞は、脾臓やリンパ節等の二次リンパ組織に常在しており、感染防御反応及び腫瘍細胞に対する免疫応答の際に重要な役割を果たす“クロスプレゼンテーション”を担う事が知られている。またヒトではマウスのCD8α陽性の樹状細胞のホモログとされるCD141陽性の樹状細胞にXCR1が高発現していることも知られている(非特許文献4)。
【0004】
通常、細胞外から抗原提示細胞に取り込まれた抗原は、ペプチドに分解された後、クラスIIの主要組織適合抗原(MHC class II)上に提示され、CD4+T細胞によって認識される。これに対し、細胞外から取り込まれた抗原が上述した通常の経路とは異なる経路を介してクラスIの主要組織適合抗原(MHC class I)上に提示されることがある。この抗原提示プロセスがクロスプレゼンテーションと呼ばれる。
【0005】
このプロセスでMHC class I上に提示された抗原をCD8+T細胞が認識し、その後、宿主の感染防御及び腫瘍細胞の排除を担う細胞傷害性T細胞(CTL)へと分化する(非特許文献5)。
【0006】
炎症反応が起こっているときには種々の免疫関連細胞が遊走される。その中で樹状細胞も抗原を貪食するために炎症が生じている局所に遊走されるが、このような樹状細胞の遊走にあたり、ケモカインとケモカイン受容体が重要な役割を果たしている。樹状細胞は炎症が生じている局所に遊走された後にT細胞に対して抗原を提示し、T細胞を活性化させる。その後、T細胞からさらに多くの免疫関連細胞に情報が伝えられて免疫反応が拡大していく(非特許文献6)。
【0007】
樹状細胞は、抗原提示細胞の中でも特に秀でた抗原提示能力を有しており、T細胞が活性化するためには非常に重要な役割を果たす。T細胞は自己免疫疾患をはじめとした多くの免疫疾患の発症や増悪に関与していることから、樹状細胞を制御することはすなわちT細胞の活性化を制御することであり、多くの免疫疾患の改善に繋がることが示唆されている(非特許文献6、7)。
【0008】
また、ヒトXCR1に対するウサギ由来のポリクローナル抗体が、XCLによって惹起される正常口腔角化細胞及び口腔ガン細胞の細胞遊走を阻害する効果を発揮することが示されている(非特許文献8)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Yoshida T, Imai T, Kakizaki M, Nishimura M, Takagi S, Yoshie O. “Identification of Single C motif-1/lymphotactin receptor XCR1.” J. Biol. Chem. 273: 16551-16554 (1998))
【非特許文献2】Crozat K, Guiton R, Contreras V, Feuillet V, Dutertre CA, Ventre E, Vu Manh TP, Baranek T, Storset AK, Marvel J, Boudinot P, Hosmalin A, Schwartz-Cornil I, Dalod M. “The XC chemokine receptor 1 is a conserved selective marker of mammalian cells homologous to mouse CD8α+ dendritic cells.” J Exp Med. 207: 1283-1292 (2010)
【非特許文献3】Dorner BG, Dorner MB, Zhou X, Opitz C, Mora A, Guettler S, Hutloff A, Mages HW, Ranke K, Schaefer M, Jack RS, Henn V, Kroczek RA. “Selective expression of the chemokine receptor XCR1 on cross-presenting dendritic cells determines cooperation with CD8+T cells.” Immunity. 31: 823-833 (2009))
【非特許文献4】Bachem A, Guettler S, Hartung E, Ebstein F, Schaefer M, Tannert A, Salama A, Movassaghi K, Opitz C, Mages HW, Henn V, Kloetzel PM, Gurka S, Kroczek RA. “Superior antigen cross-presentation and XCR1 expression define human CD11c+CD141+cells as homologues of mouse CD8+ dendritic cells.” J Exp Med. 207: 1273-1281 (2010)
【非特許文献5】Kurts C, Robinson BW, Knolle PA. “Cross-priming in health and disease.” Nat Rev Immunol. 10: 403-414 (2010)
【非特許文献6】Cravens PD, Lipsky PE. “Dendritic cells, chemokine receptors and autoimmune inflammatory diseases.” Immunol Cell Biol. 80: 497-505 (2002)
【非特許文献7】Waldner H. “The role of innate immune responses in autoimmune disease development.” Autoimmun. Rev. 8: 400-404 (2009)
【非特許文献8】Khurram SA, Whawell SA, Bingle L, Murdoch C, McCabe BM, Farthing PM. “Functional expression of the chemokine receptor XCR1 on oral epithelial cells.” J Pathol. 221: 153-63 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これまで、樹状細胞が免疫疾患の発症、増悪等に関与するという知見が疾患の動物モデルを用いて蓄積されてきた。しかしながら、多くの免疫疾患に対して、未だ有効な治療方法も予防方法も開発されていないのが現状である。また、細胞遊走を阻害する効果を有するヒトXCR1に対する抗体が知られているものの(非特許文献8)、かかる抗体はウサギ由来のポリクローナル抗体であるため、医薬品としてただちに臨床に適用できるものとは言い難い。また、当該文献には、斯かる抗体が樹状細胞の細胞遊走を阻害することについては記載も示唆もされておらず、免疫疾患の治療又は予防に有効であることは予測すらできない。
【0011】
本発明の課題は、ヒトXCR1に選択的に結合するモノクローナル抗体を提供すること、好ましくはヒトXCR1に選択的に結合し、細胞遊走を阻害する作用を有するモノクローナル抗体を提供すること、さらに好ましくは上記作用に基づいて免疫疾患、特に皮膚の免疫疾患の治療又は予防に有効な抗体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ヒトXCR1に対して結合する抗体を開発し、当該抗体が、細胞遊走を阻害する作用を有し、樹状細胞の細胞遊走に関与する、例えば皮膚免疫疾患といった免疫疾患の治療又は予防に対して顕著な効果を有することを見出した。
【0013】
以下、本明細書において、上記抗体を単に「抗体」、「本発明に係る抗体」または「抗ヒトXCR1抗体」と称することがある。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る抗体は、ヒトXCR1と結合する。本発明に係る抗体には、ヒトXCR1とヒトXCL1との間の結合を阻害する活性を有する抗体も包含され、これはヒトXCR1-ヒトXCL1結合阻害剤に配合する有効成分としての利用可能性を有している。
【0015】
本発明に係る抗体には、細胞、特に樹状細胞の細胞遊走を好適に阻害する活性を有する抗体も包含され、このような抗体は細胞遊走阻害剤、特に樹状細胞遊走阻害剤に配合する有効成分としての利用可能性を有している。
【0016】
また、本発明に係る抗体には、BDCA3(CD141ともいう)陽性細胞を特異的に認識するものも含まれることから、本発明に係る抗体を含む薬学的組成物は、細胞の遊走、特に樹状細胞の遊走が関与する免疫疾患の治療剤としての利用可能性を有しており、中でも遅延型過敏症、乾癬、類乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、皮膚筋炎、多発性筋炎、封入体筋炎、自己免疫性水疱症(天疱瘡、類天疱瘡、後天性表皮水疱症)、膿疱症、全身性強皮症、妊娠性疱疹、線状IgA水疱性皮膚症、円形脱毛症、尋常性白斑、膠原病(全身性エリテマトーデス、Sjoegren症候群、混合性結合組織病)に伴う皮膚疾患、アジソン病に伴う皮膚疾患、移植片対宿主病(GVHD)に伴う皮膚疾患、湿疹、蕁麻疹といった皮膚の免疫疾患の治療剤としての利用可能性を有している。
【0017】
また、本発明に係る抗体には、これらの皮膚免疫疾患の他にも、I型糖尿病、糸球体腎炎、自己免疫性肝炎、多発性硬化症、強直性脊椎炎、甲状腺炎、移植片拒絶反応、クローン病、関節リウマチ、炎症性腸疾患、前部ブドウ膜炎、ヴェグナー肉芽腫、又はベーチェット病といった免疫疾患の治療剤としての利用可能性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、ヒトXCR1-EGFP遺伝子を発現するB300.19細胞に対するマウス抗ヒトXCR1抗体(2H6、5G7、及び11H2)の反応性をFACSにて解析した結果を示す図である。
図2図2は、ヒトリンフォタクチンによって誘導されるヒトXCR1-EGFP遺伝子を発現するB300.19細胞の遊走に対するマウス抗ヒトXCR1抗体(2H6、5G7、及び11H2)の中和活性をケモタキシスアッセイにて解析した結果を示す図である。
図3図3は、ヒトXCR1-EGFP遺伝子を発現するB300.19細胞に対するヒト型化抗ヒトXCR1抗体(HK1L2及びHK5L5)の反応性を、その親抗体であるマウス抗ヒトXCR1抗体(5G7)とキメラ化抗体の反応性とともに、FACSにて解析した結果を示す図である。
図4図4は、ヒトBDCA3陽性樹状細胞に対するマウス抗ヒトXCR1抗体(5G7)、ヒト型化抗ヒトXCR1抗体(HK1L2及びHK5L5)の反応性をFACSにて解析した結果を示す図である。
図5図5は、ヒトリンフォタクチンによって誘導されるヒトXCR1-EGFP遺伝子を発現するB300.19細胞の遊走に対する、ヒト型化抗ヒトXCR1抗体(HK1L2及びHK5L5)の中和活性を、その親抗体であるマウス抗ヒトXCR1抗体(5G7)とキメラ化抗体の中和活性とともに、ケモタキシスアッセイにて解析した結果を示す図である。
図6図6は、ヒトリンフォタクチンによって誘導されるヒトBDCA3陽性樹状細胞の遊走に対するヒト型化抗ヒトXCR1抗体(HK1L2及びHK5L5)及びキメラ化抗体の中和活性を、アイソタイプコントロール抗体(ヒトIgG2,κ)とともに、経内皮遊走アッセイにて解析した結果を示す図である。
図7図7は、本発明に係る抗体の重鎖CDR1-3及び軽鎖CDR1-3のアミノ酸配列を比較した図である。図には、重鎖CDR1-3及び軽鎖CDR1-3のアミノ酸配列を一般化した配列も併せて記載している。
図8図8は、本発明に係るマウス抗ヒトXCR1抗体(5G7)の遅延型接触性皮膚炎(DTH)モデルマウスに対する薬理作用を示す図である。(A)及び(B)は、DNFBによる惹起からそれぞれ24時間及び48時間後の耳の膨脹度(mm)を、本発明に係るマウス抗ヒトXCR1抗体(5G7)とコントロール抗体とで対比した結果を示す。
図9図9は、本発明に係るマウス抗ヒトXCR1抗体(5G7)の各種ヒトケモカインレセプターへの結合特異性を示す図である。図中のグラフ横軸はphycoerythrin(PE)の蛍光強度を示す。
図10図10は、本発明に係る抗体が結合するヒトXCR1のアミノ酸配列を示す。
図11図11は、本発明に係る抗体を用いたヒトXCR1を発現する細胞に対する傷害性を示す図である。
図12図12は、本発明に係るマウス抗ヒトXCR1抗体(5G7)の細胞傷害性Tリンパ球アッセイの解析結果を示す図である。
図13図13は、本発明に係るマウス抗ヒトXCR1抗体(2H6、5G7、及び11H2)のヒトとマウスのキメラXCR1を発現する細胞への反応性を示す図である。
図14図14は、マウス抗ヒトXCR1抗体(2H6及び5G7)のヒトXCR1の細胞外ドメインへの結合サイトのペプチドイライザによるマッピングの解析結果を示す図である。
図15図15は、抗ヒトXCR1ポリクローナル抗体のヒトXCR1の細胞外ドメインへの結合サイトのアラニン変異体によるマッピングの解析結果を示す図である。
図16図16は、マウス抗ヒトXCR1抗体(2H6)のヒトXCR1の細胞外ドメインへの結合サイトのアラニン変異体によるマッピングの解析結果を示す図である。
図17図17は、マウス抗ヒトXCR1抗体(5G7)のヒトXCR1の細胞外ドメインへの結合サイトのアラニン変異体によるマッピングの解析結果を示す図である。
図18図18は、マウス抗ヒトXCR1抗体(11H2)のヒトXCR1の細胞外ドメインへの結合サイトのアラニン変異体によるマッピングの解析結果を示す図である。
図19図19は、ヒト型化抗ヒトXCR1抗体(HK1L2)のヒトXCR1の細胞外ドメインへの結合サイトのアラニン変異体によるマッピングの解析結果を示す図である。
図20図20は、ヒト型化抗ヒトXCR1抗体(HK5L5)のヒトXCR1の細胞外ドメインへの結合サイトのアラニン変異体によるマッピングの解析結果を示す図である。
図21図21は、ヒトXCR1を発現する細胞に対するマウス抗ヒトXCR1抗体(2H6、5G7、及び11H2)の結合における競合結果を示す図である。
図22図22は、マウス抗XCR1モノクローナル抗体(5G7)及び市販のヤギ抗ヒトXCR1ポリクローナル抗体の各種ヒトケモカインレセプターへの結合特異性を示す図である。図中のグラフ横軸はphycoerythrin(PE)の蛍光強度を示す。
図23図23は、マウス抗XCR1モノクローナル抗体(5G7)及びヒト型化抗ヒトXCR1(HK1L2及びHK5L5)の各種ヒトケモカインレセプターへの結合特異性を示す図である。図中のグラフ横軸はphycoerythrin(PE)の蛍光強度を示す。
図24図24は、本発明に係るマウス抗ヒトXCR1抗体(5G7)のMycobacterium butyricumによって惹起された接触性皮膚炎(DTH)モデルマウスに対する薬理効果を示す図である。
図25図25は、本発明に係るマウス抗ヒトXCR1抗体(5G7)の実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)による多発性硬化症モデルマウスに対する薬理効果を示す図である。
図26図26は、本発明に係るマウス抗ヒトXCR1抗体のリガンド競合結合試験の解析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するために使用する様々な技術は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献等に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。
【0020】
例えば、遺伝子工学及び分子生物学的技術であれば、Sambrook and Russell, "Molecular Cloning A LABORATORY MANUAL”, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, (2001); Ausubel, F. M. et al. “Current Protocols in Molecular Biology”, John Wiley & Sons, New York, .NY等の文献を参照すればよい。
【0021】
また、抗体工学的技術であれば、Kabat et al., ”Sequences of Proteins of Immunological Interest, ”U.S.Department of Health and human Services,(1983), Konterman and Duebel, “Antibody Engineering”, Springer等の文献を参照すればよい。
【0022】
用語の説明
用語「核酸」とは、たとえばリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、またはいずれかのヌクレオチドの修飾された形態を含む。核酸は、一本鎖または二本鎖であることができ、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドであることもできる。
【0023】
用語「タンパク質」とは、2以上のアミノ酸がペプチド結合によって結合した化合物を意味する。
【0024】
用語「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体をいう。すなわち、該集団に含まれるそれぞれの抗体は微量に存在し得る天然に生じる突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原性部位に対して向けられる。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対して向けられた異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一決定基に対して向けられる。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらが他の抗体によって汚染されずに合成できる点で有利である。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体の特徴を示し、いずれかの特定の方法による抗体の生産を必要とすると解釈されるべきではない。
【0025】
例えば、本発明に従って使用すべきモノクローナル抗体はKoehler G, Milstein C. “Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity.” Nature. 256: 495-7 (1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ方法によって作成できるか、あるいは組換えDNA方法によって作成することができる(米国特許第4816567号参照)。
【0026】
また、”モノクローナル抗体”は、例えば、Clackson T, Hoogenboom HR, Griffiths AD, Winter G. “Making antibody fragments using phage display libraries.” Nature. 352: 624-8 (1991)又はMarks JD, Hoogenboom HR, Bonnert TP, McCafferty J, Griffiths AD, Winter G. “By-passing immunization. “Human antibodies from V-gene libraries displayed on phage.” J Mol Biol. 222: 581-97 (1991)に記載された技術を用いてファージー抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0027】
アミノ酸配列又は塩基配列の“同一性”とは、2以上の対比可能なアミノ酸配列又は塩基配列の、お互いに対する同一のアミノ酸配列又は塩基配列の程度をいう。従って、ある2つのアミノ酸配列又は塩基配列の同一性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。アミノ酸配列又は塩基配列の同一性のレベルは、例えば、配列分析用ツールであるFASTAを用い、デフォルトパラメーターを用いて決定される。
【0028】
若しくは、KarlinおよびAltschulによるアルゴリズムBLAST(Karlin S, Altschul SF. “Methods for assessing the statistical significance of molecular sequence features by using general scoring schemes” Proc. Natl Acad Sci U S A. 87: 2264-2268 (1990)、Karlin S, Altschul SF.” Applications and statistics for multiple high-scoring segments in molecular sequences.” Natl Acad Sci U S A. 90: 5873-7 (1993))を用いて決定できる。このようなBLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul SF, Gish W, Miller W, Myers EW, Lipman DJ. “Basic local alignment search tool.” J Mol Biol. 215: 403-10 (1990))。
【0029】
例えば、塩基配列を解析するときには、BLASTNを用いればよく、パラメーターとしては、例えばscore= 100、wordlength= 12とすればよい。
【0030】
また、アミノ酸配列を解析する場合はBLASTXを用いればよく、パラメーターとしては、例えば、score= 50、wordlength= 3とすればよい。
【0031】
BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いればよい。これらの解析方法の具体的な手法は公知であり、National Center of Biotechnology Information(NCBI)のウエブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を参照すればよい。
【0032】
抗ヒトXCR1抗体
本発明に係る抗体は、単離された抗体である。
【0033】
本発明に係る抗体は、ヒトXCR1に結合する。なお、ヒトXCR1のアミノ酸配列は、NCBI Reference Sequence: NP_001019815.1又はNP_005274.1にて示されるアミノ酸配列である。これらのアミノ酸配列はNCBIのウエブサイト(それぞれ、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/NP_001019815.1、又はhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/NP_005274.1)を参照すればよい。
【0034】
具体的な本発明に係る第1の態様の抗体は、
下記の(A)又は(a)の重鎖CDR1、
下記の(B)又は(b)の重鎖CDR2及び
下記の(C)又は(c)の重鎖CDR3
を含む重鎖可変領域と、
下記の(D)又は(d)の軽鎖CDR1、
下記の(E)又は(e)の軽鎖CDR2及び
下記の(F)又は(f)の軽鎖CDR3
を含む軽鎖可変領域とを含む抗体である。
【0035】
(A)配列番号53に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
(B)配列番号54に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
(C)配列番号55に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3;
(D)配列番号56に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
(E)配列番号57に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
(F)配列番号58に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3。
【0036】
(a)配列番号41に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
(b)配列番号42に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
(c)配列番号43に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3;
(d)配列番号44に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
(e)配列番号45に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
(f)配列番号46に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3。
【0037】
本発明に係る抗体にて規定する用語「CDR」とは、Complementarity Determining Regionの略であり、相補性決定領域とも称される。CDRとは、イムノグロブリンの可変領域に存在する領域であり、抗体が有する抗原への特異的な結合に深く関与する領域である。そして、「軽鎖CDR」とはイムノグロブリンの軽鎖の可変領域に存在するCDRであり、「重鎖CDR」とはイムノグロブリンの重鎖の可変領域に存在するCDRのことを意味する。
【0038】
また「可変領域」とは、上述したCDR1〜CDR3(以下、単に「CDRs1-3」という)を含む領域のことを意味する。これらのCDRs1-3の配置順序は特に限定はされないが、好ましくは、N末端側からC末端側の方向に、CDR1、CDR2、及びCDR3の順か、若しくはこの逆の順に、連続又は後述するフレームワーク領域(FR)と称される他のアミノ酸配列を介して、配置された領域を意味する。そして「重鎖可変領域」とは、上述の重鎖CDRs1-3が配置された領域であり、「軽鎖可変領域」とは、上述の軽鎖CDRs1-3が配置された領域である。
【0039】
各可変領域の上記CDR1-3以外の領域は、上述するようにフレームワーク領域(FR)と称される。特に可変領域のN末端と上記CDR1との間の領域をFR1、CDR1とCDR2との間の領域をFR2、CDR2とCDR3との間の領域をFR3、CDR3と可変領域のC末端との間をFR4とそれぞれ定義される。
【0040】
FRは、上述した抗原認識配列として特に重要なCDRs1-3を繋ぐリンカー配列としての機能も兼ね備えており、可変領域全体の立体構造形成に寄与する領域である。
【0041】
上述の本発明に係る第1の態様の好ましい抗体は、
下記の(g)、下記の(m)又は上記の(a)の何れか1つの重鎖CDR1、
下記の(h)、下記の(n)又は上記の(b)の何れか1つの重鎖CDR2、及び
下記の(i)、下記の(o)又は上記の(c)の何れか1つの重鎖CDR3
を含む重鎖可変領域と、
下記の(j)、下記の(p)又は上記の(d)の何れか1つの軽鎖CDR1、
下記の(k)、下記の(q)又は上記の(e)の何れか1つの軽鎖CDR2、及び
下記の(l)、下記の(r)又は上記の(f)の何れか1つの軽鎖CDR3
を含む軽鎖可変領域とを含む抗体が挙げられる。
【0042】
(g)配列番号17に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
(h)配列番号18に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
(i)配列番号19に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3;
(j)配列番号20に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
(k)配列番号21に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
(l)配列番号22に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3;
【0043】
(m)配列番号29に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
(n)配列番号30に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
(o)配列番号31に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3;
(p)配列番号32に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
(q)配列番号33に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
(r)配列番号34に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3。
【0044】
なお、(i)の重鎖CDR3と、(o)の重鎖CDR3は同一のアミノ酸配列からなる。
【0045】
本発明に係る第2の態様の抗体は、
上記(A)-(C)に示す重鎖CDRs1-3を含む重鎖可変領域又は
上記(a)-(c)に示す重鎖CDRs1-3を含む重鎖可変領域と、
上記(D)-(F)に示す軽鎖CDRs1-3を含む軽鎖可変領域又は
上記(d)-(f)に示す軽鎖CDRs1-3を含む軽鎖可変領域と
を含む抗体である。
【0046】
第2の態様のより好ましい抗体は、
上記(g)-(i)に示す重鎖CDRs1-3を含む重鎖可変領域、
上記(m)-(o)に示す重鎖CDRs1-3を含む重鎖可変領域、又は
上記(a)-(c)に示す重鎖CDRs1-3を含む重鎖可変領域
の何れか1つの重鎖可変領域と、
上記(j)-(l)に示す軽鎖CDRs1-3を含む軽鎖可変領域、
上記(p)-(r)に示す軽鎖CDRs1-3を含む軽鎖可変領域、又は
上記(d)-(f)に示す軽鎖CDRs1-3を含む軽鎖可変領域
の何れか1つの軽鎖可変領域
とを含む抗体である。
【0047】
本発明に係る第3の態様の抗体は、
上記(A)-(C)に示す重鎖CDRs1-3を含む重鎖可変領域と、
上記(D)-(F)に示す軽鎖CDRs1-3を含む軽鎖可変領域と
を含む抗体、又は
上記(a)-(c)に示す重鎖CDRs1-3を含む重鎖可変領域と、
上記(d)-(f)に示す軽鎖CDRs1-3を含む軽鎖可変領域と
を含む抗体である。
【0048】
第3の態様のより好ましい抗体は、
上記(g)-(i)に示す重鎖CDRs1-3を含む重鎖可変領域と、
上記(j)-(l)に示す軽鎖CDRs1-3を含む軽鎖可変領域と
を含む抗体;
上記(m)-(o)に示す重鎖CDRs1-3を含む重鎖可変領域と、
上記(p)-(r)に示す軽鎖CDRs1-3を含む軽鎖可変領域と
を含む抗体;又は
上記(a)-(c)に示す重鎖CDRs1-3を含む重鎖可変領域と、
上記(d)-(f)に示す軽鎖CDRs1-3を含む軽鎖可変領域と
を含む抗体である。
【0049】
本発明に係る抗体の分子構造はイムノグロブリンに限らず、上述の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有していればよい。具体的な構造としては、Fc領域を含まないF(ab’)2、イムノグロブリンをパパインで消化することによって得られるCH1領域及びCL領域と重鎖可変領域並び軽鎖可変領域からなるFab等;イムノグロブリンの定常領域を含まないFv等;そしてFvの単鎖型の抗体であるscFv等の分子構造が挙げられる。
【0050】
また、これらの分子構造を組み合わせた多価化構造であってもよい。例えば、Fc領域と上記のscFv構造の2つとを組み合わせたscFv-Fc構造や定常領域のCH3ドメインと上記のscFv構造の2つとを組み合わせたminibodyと称される構造等のように、scFv構造を積み重ねる手法を採用することによって多価化が達成される。
【0051】
用語「多価化」は、抗原結合部位を複数配置することであり、本発明の抗体においては、ヒトXCR1と結合する部位を複数配置することと同じ意味で用いられる。
【0052】
本発明に係る抗体は、上述した重鎖可変領域及び軽鎖可変領域に加えて、ヒト定常領域を有していてもよい。
【0053】
イムノグロブリンにおいて、重鎖の「定常領域」はCH1、CH2、及びCH3と称される領域を含み、軽鎖の「定常領域」はCLと称される領域を含む。
【0054】
このように、本発明に係る抗体が定常領域を有している場合、重鎖可変領域はCH1、CH2又はCH3のいずれかの少なくとも1つの領域と結合し、軽鎖可変領域はCLと結合していることが好ましい。さらに、重鎖可変領域はCH1と直接結合していることが好ましい。
【0055】
なお、本発明に係る抗体が有する定常領域は、ヒトイムノグロブリン由来の定常領域であり、好ましくはヒトイムノグロブリンIgG由来の定常領域である。ヒトイムノグロブリンIgGのサブタイプは、特に限定されることはなく、例えば下記に示すようなADCC活性、及びCDC活性等を抗体に付与するか否かに応じて適宜選択すればよい。
【0056】
用語「ADCC活性」とは、抗体依存性細胞傷害活性(Antibody-Dependent Cellular Cytotoxicity)の略であり、抗体のFcドメインに特異的なレセプターを発現しているNK細胞等が抗体に結合し、このようなNK細胞等が抗体の近傍に存在する細胞に対して、傷害を与える活性である。また、用語「CDC活性」とは、補体依存性細胞傷害活性(Complement-Dependent Cytotoxicity)の略である。ヒトの場合、このようなADCC活性及び/又はCDC活性が高いIgGのサブタイプは、IgG1であり、これに対して、これらの活性が低いIgGのサブタイプはIgG2又はIgG4である。
【0057】
本発明に係る抗体には、ADCC活性及び/又はCDC活性を変化させる目的で、Fcドメインのアミノ酸残基に変異を導入してもよい。導入する変異は、特に限定されず公知の変異を導入すればよい。例えば、ADCC活性を上昇させる目的で、IgG1の定常領域に対して、S239D、I332E、S239D/I332E、S239D/I332E/A330L等(Lazar GA, Dang W, Karki S, Vafa O, Peng JS, Hyun L, Chan C, Chung HS, Eivazi A, Yoder SC, Vielmetter J, Carmichael DF, Hayes RJ, Dahiyat BI. “Engineered antibody Fc variants with enhanced effector function.” Proc Natl Acad Sci U S A. 103: 4005-10 (2006).);S298A、K334A、S298A/K334A、S298A/E333A/K334A等(Shields RL, Namenuk AK, Hong K, Meng YG, Rae J, Briggs J, Xie D, Lai J, Stadlen A, Li B, Fox JA, Presta LG. “High resolution mapping of the binding site on human IgG1 for Fc gamma RI, Fc gamma RII, Fc gamma RIII, and FcRn and design of IgG1 variants with improved binding to the Fc gamma R.” J Biol Chem. 276: 6591-604 (2001))の変異導入を行えばよい。
【0058】
CDC活性を上昇させる変異として、例えば、S267E、H268F、S324T、S267E/H268F、S267E/S324T、H268F/S324T、S267E/H268F/S324T(Moore GL, Chen H, Karki S, Lazar GA. “Engineered Fc variant antibodies with enhanced ability to recruit complement and mediate effector functions.” MAbs. 2:181-9 (2010))等の変異が挙げられる。
【0059】
また、ADCC活性を下降させる目的で、公知の変異導入を採用すればよく、例えば、V234A/G237A(Cole MS, Anasetti C, Tso JY. “Human IgG2 variants of chimeric anti-CD3 are nonmitogenic to T cells” J Immunol. 159:3613-21 (1997))、H268Q/V309L/A330S/P331S (An Z, Forrest G, Moore R, Cukan M, Haytko P, Huang L, Vitelli S, Zhao JZ, Lu P, Hua J, Gibson CR, Harvey BR, Montgomery D, Zaller D, Wang F, Strohl W. “IgG2m4, an engineered antibody isotype with reduced Fc function.” MAbs. 1:572-9 (2009))等の変異が挙げられる。
【0060】
なお、上述の変異導入対象となるアミノ酸の番号はEuナンバリング(Sequences of proteins of immunological interest, NIH Publication No.91-3242 を参照)に基づいている。
【0061】
キメラ化抗体
本発明に係る抗体のうち、重鎖可変領域、及び軽鎖可変領域が、ヒト以外の生物由来のアミノ酸配列であり、定常領域のアミノ酸配列がヒト由来である抗体を、「キメラ化抗体」と定義する。
【0062】
本発明に係るキメラ化抗体の第一の態様として、配列番号13に示すアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号14に示す軽鎖を含むキメラ化抗体が挙げられる。
【0063】
ここで、配列番号13に示すアミノ酸配列には、表5に示すように、重鎖可変領域に、上述の重鎖CDRs1-3のうち、配列番号17-19に示す重鎖CDRs1-3が配置されており、配列番号14に示すアミノ酸配列には、表5に示すように、軽鎖可変領域に、上述の軽鎖CDRs1-3のうち、配列番号20-22に示す軽鎖CDRs1-3が配置されている。
【0064】
本発明に係るキメラ化抗体には、配列番号13に示すアミノ酸配列を含む重鎖、及び/又は、配列番号14に示すアミノ酸配列を含む軽鎖に、上記キメラ化抗体のヒトXCR1に対する結合能を失わない範囲で、変異が導入されてなる変異体が含まれる。
【0065】
このような重鎖及び軽鎖の変異体は、それぞれ配列番号13及び14に示すアミノ酸配列のうち、可変領域のFR1〜FR4(以下、単に「FRs1-4」という)のいずれかの少なくとも一箇所に、若しくは定常領域の少なくとも一箇所に変異が導入されることが好ましい。
【0066】
重鎖及び軽鎖に対する具体的な変異導入数は、共に特に限定はされないが、通常は変異前のアミノ酸配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する変異体となるような変異導入数とすればよい。
【0067】
ここでいう用語「変異導入」とは、置換、欠失、挿入等である。具体的な変異導入については、公知の方法を採用することができ、特に限定はされないが、例えば置換であれば保存的な置換技術を採用すればよい。用語「保存的な置換技術」とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置換されることを意味する。
【0068】
例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジンといった塩基性側鎖を有するアミノ酸残基同士で置換されることが、保存的な置換にあたる。その他、アスパラギン酸、グルタミン酸といった酸性側鎖を有するアミノ酸残基;グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システインといった非帯電性極性側鎖を有するアミノ酸残基;アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンといった非極性側鎖を有するアミノ酸残基;スレオニン、バリン、イソロイシンといったβ−分枝側鎖を有するアミノ酸残基、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジンといった芳香族側鎖を有するアミノ酸残基同士での置換も同様に、保存的な置換にあたる。
【0069】
ヒト型化抗体
本発明に係る抗体のうち、重鎖及び軽鎖可変領域に上述のCDRs1-3をそれぞれ含有し、FRs1-4がヒト由来のアミノ酸配列またはその変異体である抗体を「ヒト型化抗体」と定義する。
【0070】
このようなヒト由来のアミノ酸配列を有するFRは特に限定はされず、公知の技術を基に決定すればよい。
【0071】
例えば、完全なヒト型のFR、またはFRの準領域が挙げられ、好ましくはヒトの生殖細胞系配列由来のFRである。完全なヒト型のFRまたはFRの準領域の例として、例えばNCBIのウエブサイトには、現在知られているFRの配列が収載されているので、適宜参考すればよい。
【0072】
ヒトの重鎖可変領域の配列は、以下に示すものに限定されるものではないが、例えばVH1-18、VH1-2、VH1-24、VH1-3、VH1-45、VH1-46、VH1-58、VH1-69、VH1-8、VH2-26、VH2-5、VH2-70、VH3-11、VH3-13、VH3-15、VH3-16、VH3-20、VH3-21、VH3-23、VH3-30、VH3-33、VH3-35、VH3-38、VH3-43、VH3-48、VH3-49、VH3-53、VH3-64、VH3-66、VH3-7、VH3-72、VH3-73、VH3-74、VH3-9、VH4-28、VH4-31、VH4-34、VH4-39、VH4-4、VH4-59、VH4-61、VH5-51、VH6-1、VH7-81等である。
【0073】
ヒトの軽鎖可変領域の配列は、これだけに限定されるものではないが、例えばVL1-11、VL1-13、VL1-16、VL1-17、VL1-18、VL1-19、VL1-2、VL1-20、VL1-22、VL1-3、VL-4、VL1-5、VL1-7、VL1-9、VL2-1、VL2-11、VL2-13、VL2-14、VL2-15、VL2-17、VL2-19、VL2-6、VL2-7、VL-8、VL3-2、VL3-3、VL3-4、VL4-1、VL4-2、VL4-3、VL4-4、VL4-6、VL5-1、VL5-2、VL5-4、VL5-6等である。
【0074】
完全なヒト型のFRは、これらの機能的生殖細胞系遺伝子から選択される。通常これらのFRは制限された数のアミノ酸の変更により互いに異なっている。これらのFRを本出願に記載のCDRと共に使用してもよい。上述のCDRと共に使用されるヒト型のFRの追加例は、限定はされないが、例えばKOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAY、POMなどがある。これらのヒト型のFRの例は、Kabat, et. al. ”Sequences of Proteins of Immunological Interest”:US Department of Health AND human Services、NIH (1991) USA、又はWu TT, Kabat EA. “An analysis of the sequences of the variable regions of Bence Jones proteins and myeloma light chains and their implications for antibody complementarity.” J Exp Med. 132: 211-50(1970)等を参照すればよい。
【0075】
本発明に係るヒト型化抗体の第1の態様として、配列番号60又は配列番号64の何れかに示すアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号68又は配列番号72の何れかに示す軽鎖可変領域とを含むヒト型化抗体が挙げられる。
【0076】
より好ましい態様としては、配列番号60に示すアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号68に示すアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体、又は配列番号64に示すアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号72に示すアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含むヒト型化抗体である。
【0077】
配列番号60及び配列番号64に示すアミノ酸配列には、それぞれ表11-1及び表12-1に示すように重鎖可変領域に上述の重鎖CDRs1-3のうち、配列番号17-19に示す重鎖CDRs1-3が配置されており、配列番号68及び配列番号72に示すアミノ酸配列には、それぞれ表13-1及び表14-1に示すように、軽鎖可変領域に上述の軽鎖CDRs1-3のうち、配列番号20-22に示す軽鎖CDRs1-3が配置されている。
【0078】
本発明に係るヒト型化抗体には、配列番号60又は配列番号64に示すアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び/又は、配列番号68又は配列番号72に示すアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域に、共にヒトXCR1に対する結合能を失わない範囲で変異が導入された変異体が含まれる。このような重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の変異体は、それぞれのFRs1-4に変異が導入されてなるものであることが好ましい。
【0079】
重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の具体的な変異導入数は、いずれも特に限定はされないが、通常は変異前のアミノ酸配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する変異体となるように変異すればよい。
【0080】
用語「変異導入」とは、置換、欠失、挿入等である。具体的な変異導入については、上述のキメラ化抗体と同様に、保存的な置換技術等を採用すればよい。
【0081】
更に、本発明に係るヒト型化抗体の第2の態様としてヒト定常領域を含む抗体が挙げられる。例えば、配列番号59又は63の何れかに示すアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号67又は71の何れかに示す軽鎖とを含むヒト型化抗体が挙げられる。
【0082】
より好ましい態様としては、配列番号59に示すアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号67に示すアミノ酸配列を含む軽鎖とを含むヒト型化抗体、又は配列番号63に示すアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号71に示すアミノ酸配列を含む軽鎖とを含むヒト型化抗体である。
【0083】
ここで、配列番号59に示すアミノ酸配列は、表11-1に示すように、配列番号60に示す重鎖可変領域に相当するアミノ酸配列を含んでいることから、上述する重鎖CDRs1-3のうち、配列番号17-19に示す重鎖CDRs1-3が含まれる。また、配列番号67に示すアミノ酸配列は、表13-1に示すように配列番号68に示す軽鎖可変領域に相当するアミノ酸配列を含んでいることから、上述する軽鎖CDRs1-3のうち、配列番号20-22に示す軽鎖CDRs1-3が含まれる。
【0084】
これらの重鎖及び/又は軽鎖には、いずれもヒトXCR1に対する結合能を失わない範囲で変異が導入された変異体が含まれる。このような重鎖及び軽鎖の変異体は、FRs1-4又は定常領域に変異が導入されたものが好ましい。
【0085】
重鎖及び軽鎖の具体的な変異導入数は、共に特に限定はされないが、通常は変異前のアミノ酸配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する変異体となるように変異すればよい。
【0086】
なお、用語「変異導入」とは、置換、欠失、挿入等である。具体的な変異導入については、上述のキメラ化抗体と同様に、保存的な置換技術等を採用すればよい。
【0087】
抗体の機能
本発明に係る抗体は、ヒトXCR1と結合する。ここで、用語「結合」とは、少なくとも、タンパク質間の相互作用にて見られるような疎水性結合等の形式での結合を含む意味で用いられる。つまり、本発明に係る抗体は、少なくとも、ヒトXCR1と疎水性結合により結合するものであればよい。また、本発明に係る抗体とヒトXCR1は、一度結合した後に解離してもよいし、また解離しなくてもよい。
【0088】
本発明に係る抗体は、ヒトXCR1と特異的に結合することが好ましい。ここで、用語「特異的な結合」とは、選択的にヒトXCR1に結合することを意味し、ヒトXCR1以外の分子、特にヒトXCR1のホモログや、ヒトXCR1のオルソログといった、ヒトXCR1と構造的に類似する分子がヒトXCR1と共存している場合に、ヒトXCR1と優先的に結合することで説明される。
【0089】
なお、本発明に係る抗体が、ヒトXCR1と特異的に結合するということは、上述したヒトXCR1のホモログやオルソログとの結合が排除されるものではない。
【0090】
このような本発明に係る抗体の、ヒトXCR1との結合の程度は、Kd値、Koff値、又はKon値といった反応速度定数でも評価される。なお、Kd値とは、Koff値をKon値で除して得られる値である。
【0091】
本発明に係る抗体のヒトXCR1との反応速度定数は特に限定されない。
【0092】
本発明に係る抗体は、ヒトXCR1の細胞外ドメインと結合する。具体的には、上述したNCBI Reference Sequence: NP_001019815.1又は、NP_005274.1に示すアミノ酸配列(図10)の細胞外ドメイン領域に相当する1-31、90-103、168-190、又は251-267番目のいずれかのアミノ酸領域と結合する。
【0093】
より好ましくは、配列番号91に示すアミノ酸配列のうち、8番目、11番目、12番目、13番目、14番目、16番目、17番目、22番目、23番目、176番目、及び177番目のアミノ酸からなる群より選択される少なくとも3個のアミノ酸と結合する。
【0094】
上述の「少なくとも3個のアミノ酸」には、例えば3個以上のアミノ酸、4個以上のアミノ酸、5個以上のアミノ酸、6個以上のアミノ酸、7個以上のアミノ酸、8個以上のアミノ酸、9個以上のアミノ酸、10個以上のアミノ酸、又は11個のアミノ酸が含まれる。
【0095】
なお、本発明の用語「エピトープ」には、「抗原決定基」とも呼ばれ、「線状エピトープ」及び「不連続エピトープ」が含まれる。「線状エピトープ」とは、アミノ酸配列の一次構造を基に、斯かるアミノ酸配列の立体構造によらず、抗体によって認識されるエピトープを意味する。「不連続エピトープ」とは、アミノ酸配列の高次構造を基に、斯かるアミノ酸は配列の立体構造を基に認識されるエピトープを意味する。
【0096】
本発明に係る抗体のエピトープは、当業者であれば、本発明の実施例に記載された方法を適宜改変することによって決定することができる。
【0097】
例えば、ヒトXCR1のアミノ酸配列のうち、細胞外領域となる所望のアミノ酸配列からなるタンパク質又はペプチドを公知の方法によって合成し、斯かるタンパク質又はペプチドと抗体との結合を、公知の方法を用いて確認することでエピトープを決定することができる。
【0098】
そのほかに、ヒトXCR1のアミノ酸配列のうち、所望のアミノ酸に対して適当な変異を施した変異体を公知の方法を用いて作製し、斯かる変異体と抗体との結合が低下するかどうか確認することでエピトープを決定することができる。
【0099】
上述のように、本発明に係る抗体はヒトXCR1に結合する作用を有するため、ヒトXCR1とヒトXCL1との間の結合を阻害する活性を有する抗体も、本発明に係る抗体に含まれる。なお、ヒトXCL1とは、ヒトリンフォタクチン(Ltn)又はヒトリンフォタクチンα(Ltn-α)とも称される。上記のような阻害活性を、以下、本発明に係る抗体による「中和活性」と呼ぶことがある。ヒトXCR1は、生体内では受容体タンパク質として細胞表面に存在するために、本発明に係る抗体による、ヒトXCR1とXCL1との結合の阻害は細胞表面上で行われることが好ましい。
【0100】
なお、当該本発明に係る抗体は、少なくともヒトXCR1とXCL1との結合を阻害する活性を有するものであればよく、その限りにおいて、ヒトXCR1とXCL2との結合阻害活性の有無は問わない。従って、当該抗体には、ヒトXCR1とXCL1との結合のみならず、ヒトXCR1とXCL2との結合を阻害する活性を有するものも含まれる。
【0101】
好ましい細胞としては、ヒトXCR1とヒトXCL1の結合によって作動する免疫システムに関連する細胞であり、中でも樹状細胞が好ましい。特に、本発明に係る抗体は、後述の実験例で示されるように、ヒトXCR1タンパク質を著量発現している樹状細胞であるBDCA3陽性樹状細胞を特異的に認識することから、BDCA3陽性樹状細胞上において、ヒトXCR1とヒトXCL1との間の結合を阻害する作用を有するものであることが好ましい。
【0102】
ヒトXCR1とヒトXCL1との結合は、本発明の抗体によって阻害される。当該阻害形式は、特に限定はされないが、以下の形式を包含する。
【0103】
(1)本来ヒトXCL1が結合すべきヒトXCR1の部位に、本発明に係る抗体が結合することによって、ヒトXCL1の結合に立体的な障害が生じ、結果としてヒトXCR1とヒトXCL1との結合が阻害される形式。
(2)本発明に係る抗体が、ヒトXCR1と結合することによって、ヒトXCR1の立体構造が変化し、それに伴ってヒトXCL1と結合すべきヒトXCR1の構造も変化し、結果としてヒトXCR1とヒトXCL1との結合が阻害される形式。
(3)本発明に係る抗体が、ヒトXCR1と結合することによって受容体の内部移行が生じ、これに伴ってヒトXCR1とヒトXCL1との結合が阻害される形式。
【0104】
本発明に係る抗体が有するヒトXCR1とヒトXCL1との結合阻害活性は、IC50又はIC90といった値で評価される。このような数値は、例えば、本発明に係る抗体の存在下において、ヒトXCR1タンパク質を発現する細胞を用いてヒトXCR1に対するヒトXCL1の結合の競合阻害実験等を行うことで得ることができる。かかる競合阻害実験の具体的な方法は、公知の方法を採用すればよい。
【0105】
本発明に係る抗体には、細胞の遊走を抑制する作用を有する抗体が含まれる。用語「細胞遊走」とは、細胞に対して外部刺激が与えられることにより、細胞内でシグナル伝達機構が作動し、結果として細胞自身が能動的に移動する現象のことを意味する。細胞が能動的に移動することによる効果は、当該細胞の機能によって区々ではあるが、例えば樹状細胞の細胞遊走であれば、免疫システムにおける一つの機能を担う現象である。本発明において、細胞の遊走阻害活性のことを、「中和活性」と呼ぶことがある。
【0106】
本発明に係る抗体は、上述のように樹状細胞、特にBDCA3陽性樹状細胞におけるヒトXCR1とヒトXCL1との結合を好適に阻害することから、樹状細胞、特にBDCA3陽性樹状細胞の細胞遊走を好ましく阻害する。
【0107】
ヒトXCR1は、7回膜貫通型のGタンパク質結合受容体であり、ヒトXCL1がヒトXCR1に結合するとヒトXCR1の立体構造が変化し、その結果、ヒトXCR1の細胞内ドメインに結合しているGタンパク質が遊離し、細胞内へのシグナル伝達が行われる。
【0108】
本発明に係る抗体は、上述の(1)または(2)等の形式に従ってヒトXCR1とXCL1との結合を阻害するので、上記Gタンパク質の遊離が生じない。その結果、シグナル伝達が行われず、細胞の遊走現象も阻害されることになる。
【0109】
また、細胞の遊走現象の阻害は、本発明に係る抗体がヒトXCR1に結合することによって、ヒトXCR1とその細胞内ドメインに結合しているGタンパク質との間の結合が強固となり、このためGタンパク質が遊離せず、細胞内へのシグナル伝達が阻害されることで生じるものであってもよい。
【0110】
本発明に係る抗体が有するヒト細胞の遊走阻害活性は、IC50又はIC90といった値で評価される。具体的な数値は特に限定されないが、例えばIC50値であれば、通常は0.36 nM以下程度、好ましくは0.27 nM以下程度、更に好ましくは0.16 nM以下程度である。例えばIC90値であれば、通常2.38 nM以下程度、好ましくは1.52 nM以下程度、更に好ましくは0.86 nM以下程度である。
【0111】
本発明に係る抗体には、一態様として、細胞傷害性Tリンパ細胞(CTL)の活性を低下させる機能を発揮する抗体が包含される。この様なCTL活性の低下の機序としては、例えば、本発明に係る抗体が、樹状細胞におけるヒトXCR1とヒトXCL1の間の相互作用を阻害することがあげられる。樹状細胞の中でも、上述するBDCA3陽性樹状細胞が好ましい。
【0112】
本発明に係る抗体の製造方法
本発明に係る抗体は、制限されないが、以下の3つの工程を含む方法によって製造することができる。
(i)本発明に係る抗体をコードする塩基配列を含む核酸を含むベクターを宿主に導入して、宿主を形質転換する工程1。
(ii)工程1によって得られる形質転換された宿主を培養し、ヒトXCR1に結合する抗体を含む画分を回収する工程2、
(iii)工程2によって得られる画分から、上記抗体を単離又は精製する工程3。
【0113】
工程1
工程1にて用いる核酸は、本発明に係る抗体をコードする核酸である。かかる核酸の塩基配列は、本発明に係る抗体のアミノ酸配列情報を基に、in silico技術を採用することで決定できる。その際、工程2にて採用する宿主におけるコドン頻度を参照のうえ塩基配列を決定することが好ましい。具体的な塩基配列としては、配列番号3、4、7、8、11、12、15、16、61、62、65、66、69、70、73、若しくは74に示す塩基配列、又はこれらの変異体等が挙げられる。
【0114】
上記変異体は、抗体のFR又は定常領域に変異(欠失、置換、挿入等)が導入されてなるものであることが好ましい。
【0115】
このような変異体における具体的な変異導入数は、特に限定はされないが、通常は変異前のアミノ酸配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する変異体となるように変異すればよい。
【0116】
また、当該核酸は、5’末端側に、分泌シグナルペプチドをコードする塩基配列を含んでいてもよい。具体的な分泌シグナルペプチドをコードする塩基配列は、工程2にて採用する宿主細胞において、分泌シグナルペプチドとして有効に機能する配列であることが好ましい。用語「分泌シグナルペプチド」とは、宿主内部で産生されるタンパク質又はペプチドを宿主外部に分泌するための経路へ導入されるための認識配列となるアミノ酸配列からなるペプチドを意味する。
【0117】
分泌シグナルペプチドをコードする塩基配列の例として、例えば
ATGGGATTCAGCAGGATCTTTCTCTTCCTCCTGTCAGTAACTACAGGTGTCCACTCC(配列番号75)、
ATGAAGTTGCCTGTTAGGCTGTTGGTGCTGCTGTTCTGGTTTCCTGCTTCCAACACT(配列番号76)、
ATGGAATGGTCATGGGTCTTTCTGTTCTTTCTGAGTGTCACAACCGGGGTGCATAGC(配列番号77)、
ATGGAATGGTCTTGGGTCTTTCTGTTCTTTCTGTCCGTCACTACCGGGGTCCACTCT(配列番号78)、
ATGTCCGTGCCTACTCAGGTGCTGGGGCTGCTGCTGCTGTGGCTGACCGATGCTCGTTGC(配列番号79)、
ATGTCCGTGCCTACTCAGGTGCTGGGGCTGCTGCTGCTGTGGCTGACCGATGCTCGTTGT(配列番号80)等が挙げられる。
【0118】
工程1にて用いるベクターは、上述の核酸を少なくとも1つ含むものである。
【0119】
このようなベクターは、
(I)本発明に係る抗体の重鎖、重鎖可変領域、及び重鎖CDRs1-3からなる群より選択される少なくとも1種をコードする塩基配列を含む核酸を有するベクターであっても、
(II)本発明に係る抗体の軽鎖、軽鎖可変領域、及び軽鎖CDRs1-3からなる群より選択される少なくとも1種をコードする塩基配列を含む核酸を有するベクターであっても、また
(III)本発明に係る抗体の重鎖、重鎖可変領域、及び重鎖CDRs1-3からなる群より選択される少なくとも1種をコードする塩基配列を含む核酸、及び本発明に係る抗体の軽鎖、軽鎖可変領域、及び軽鎖CDRs1-3からなる群より選択される少なくとも1種をコードする塩基配列を含む核酸を含むベクターであってもよい。
【0120】
上述のベクターは、遺伝子発現ベクターであってもよい。「遺伝子発現ベクター」とは、上述の核酸が有する塩基配列を発現させる機能を有するベクターである。遺伝子発現ベクターには、塩基配列の発現を制御するためのプロモーター配列、エンハンサー配列、リプレッサー配列、インスレーター配列等が含まれていてもよい。これらの配列は、上記宿主にて機能するものであれば特に限定はされない。
【0121】
工程1にて使用する宿主は、上述の遺伝子が発現するものであれば特に限定はされないが、例えば昆虫細胞、真核細胞、哺乳類細胞等が挙げられる。中でも、抗体をコードする塩基配列をより効率的に発現させる観点から、哺乳類細胞であるHEK細胞、CHO細胞、NS0細胞又はSP2/O細胞が特に好ましい。
【0122】
工程1にて、上述のベクターを宿主に導入する手法は、公知の手法を採用すればよく、特に限定されるものではない。なお、上記(I)〜(III)に示すベクターはいずれか1種のみを宿主に導入しても、2種以上を組み合わせて宿主に導入してもよい。
【0123】
このような手法によって、上述のベクターを保持した宿主を作製することが出来る。宿主は、ベクターをそのまま保持していてもよいが、上述したベクターに含まれる抗体をコードする塩基配列などを含む核酸が、宿主のゲノムに組み込まれた状態にて保持されていてもよい。作製された宿主は、公知の方法を採用して維持すればよく、必要に応じて長期保存することも可能である。
【0124】
工程2
工程2は、工程1にて得られた上述の宿主を培養し、ヒトXCR1に結合する本発明に係る抗体を含む画分を回収する方法である。上述のベクターを保持する宿主を培養すれば、当該ベクターが保有する核酸を基に、本発明に係る抗体をコードする塩基配列が発現され、本発明に係る抗体が産生される。産生された抗体は宿主内か、或いは宿主を培養する際に用いる培地中に蓄積される。
【0125】
工程2において、本発明に係る抗体を含む画分を回収する手法は公知の方法を採用すればよい。例えば、宿主内から本発明に係る抗体を含む画分を回収するには、物理的若しくは化学的手段によって宿主を破砕し、得られた破砕液を固液分離処理に供して得られる液体画分を本発明に係る抗体を含む画分とすればよい。
【0126】
一方、宿主を培養する際に用いる培地から本発明に係る抗体を含む画分を回収するには、当該培地、即ち工程1にて得られる宿主の培養液を固液分離処理に供して得られる液体画分をそのまま本発明に係る抗体を含む画分とすればよい。
【0127】
続く工程3での単離又は精製工程を簡便にする観点から、宿主の培養液から本発明に係る抗体を含む画分を回収することが好ましい。
【0128】
工程2において培養する際に用いる培地は、宿主が本発明に係る抗体をコードする塩基配列を発現させ、本発明に係る抗体が産生されるものであれば、特に限定はされず、公知の培地を採用すればよい。しかしながら、上述のように、宿主の培養液から本発明に係る抗体を含む画分を回収するのであれば、続く工程3での単離・精製工程をなるべく簡便にすることに鑑みて、無血清培地を採用するのが好ましい。
【0129】
宿主の培養時に採用する容器、温度、時間、培地中の宿主の濃度、培養条件等については、公知の抗体製造方法を採用すればよい。
【0130】
工程3
工程3は、上記工程2によって得られる画分から、ヒトXCR1に結合する本発明に係る抗体を単離又は精製する工程である。ここで本発明に係る抗体の単離及び精製方法は、特に制限されず、タンパク質について一般に使用されている単離又は精製方法を広く適用することができる。
【0131】
本発明に係る抗体の医薬用途
(1)免疫疾患治療剤としての用途
本発明に係る抗体は、前述するように、免疫システムに関連する樹状細胞の細胞遊走現象を抑制する作用を有する。この作用に基づいて、本発明に係る抗体、特にヒト型化抗体は、ヒトに臨床適用される薬学的組成物の有効成分としての利用可能性を有している。
【0132】
以下、本発明に係る抗体が適用可能な疾患について説明する。
【0133】
適応疾患(免疫疾患)
XCR1は、ヒトではCD141陽性の樹状細胞に、マウスではCD8α陽性の樹状細胞に高発現しており、この樹状細胞は特に上述したクロスプレゼンテーションと呼ばれる抗原提示方法を用いてT細胞を活性化する(非特許文献4)。
【0134】
また、ヒトXCR1のリガンドであるXCL1の産生源がT細胞、中でもCD8+T細胞であることから、XCL1-XCR1が関与するケモカインシステムは樹状細胞によるCD8+T細胞の活性化を制御するものである(非特許文献2、3)。
【0135】
上述のように、本発明に係る抗体には、樹状細胞、特にBDCA-3陽性樹状細胞におけるヒトXCL1とヒトXCR1の結合を阻害する作用を示す抗体が一態様として包含されることから、当該樹状細胞の遊走によって活性化されるT細胞が関与する免疫疾患、特にCD8+T細胞の活性化の制御に関する疾患の治療剤としての利用可能性を有している。
【0136】
上述のように、本発明に係る抗体には、CTLの活性を低下させる効果を発揮する抗体が一態様として包含される。CTLは、細胞又は組織に対して攻撃を加えることで免疫システムを活性化させる機能を有する。種々の免疫疾患においてCTL活性が亢進していることが知られていることから、本発明に係る抗体は、CTL活性を低減させることにより、免疫疾患に対する治療剤としての利用可能性を有している。
【0137】
このような疾患として、特に限定はされないが、I型糖尿病、乾癬、糸球体腎炎、自己免疫性肝炎、多発性硬化症、強直性脊椎炎、甲状腺炎、移植片拒絶反応、遅延型過敏症、クローン病、皮膚筋炎、多発性筋炎、封入体筋炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患、前部ブドウ膜炎、ヴェグナー肉芽腫、移植片対宿主病、ベーチェット病等が挙げられる(非特許文献5、Kehren J, Desvignes C, Krasteva M, Ducluzeau MT, Assossou O, Horand F, Hahne M, Kaegi D, Kaiserlian D, Nicolas JF. “Cytotoxicity is mandatory for CD8(+) T cell-mediated contact hypersensitivity.” J Exp. Med. 189: 779-786 (1999); Middel P, Thelen P, Blaschke S, Polzien F, Reich K, Blaschke V, Wrede A, Hummel KM, Gunawan B, Radzun HJ. “Expression of the T-cell chemoattractant chemokine lymphotactin in Crohn's disease.” Am J Pathol. 159: 1751-1761 (2001); Sugihara T, Sekine C, Nakae T, Kohyama K, Harigai M, Iwakura Y, Matsumoto Y, Miyasaka N, Kohsaka H. “A new murine model to define the critical pathologic and therapeutic mediators of polymyositis.” Arthritis Rheum. 56: 1304-1314 (2007); Wang CR, Liu MF, Huang YH, Chen HC. “Up-regulation of XCR1 expression in rheumatoid joints.” Rheumatology (Oxford) 43: 569-573 (2004); Muroi E, Ogawa F, Shimizu K, Komura K, Hasegawa M, Fujimoto M, Sato S. “Elevation of serum lymphotactin levels in patients with systemic sclerosis.” J Rheumatol. 35: 834-838 (2008); Torrence AE, Brabb T, Viney JL, Bielefeldt-Ohmann H, Treuting P, Seamons A, Drivdahl R, Zeng W, Maggio-Price L. “Serum biomarkers in a mouse model of bacterial-induced inflammatory bowel disease.” Inflamm Bowel Dis. 14: 480-490 (2008); Yeh PT, Lin FA, Lin CP, Yang CM, Chen MS, Yang CH. “Expressions of lymphotactin and its receptor, XCR, in Lewis rats with experimental autoimmune anterior uveitis.” Graefes Arch. Clin. Exp. Ophthalmol. 248: 1737-1747 (2010); Blaschke S, Brandt P, Wessels JT, Mueller GA. “Expression and function of the C-class chemokine lymphotactin (XCL1) in Wegener's granulomatosis.” J Rheumatol. 36: 2491-2500 (2009); asuoka H, Okazaki Y, Kawakami Y, Hirakata M, Inoko H, Ikeda Y, Kuwana M. “Autoreactive CD8+ cytotoxic T lymphocytes to major histocompatibility complex class I chain-related gene A in patients with Behcet's disease.” Arthritis Rheum. 50: 3658-3662 (2004); Serody JS, Burkett SE, Panoskaltsis-Mortari A, Ng-Cashin J, McMahon E, Matsushima GK, Lira SA, Cook DN, Blazar BR. “T-lymphocyte production of macrophage inflammatory protein-1alpha is critical to the recruitment of CD8(+) T cells to the liver, lung, and spleen during graft-versus-host disease.“ Blood. 96: 2973-2980 (2000)及びSugihara T, Sekine C, Nakae T, Kohyama K, Harigai M, Iwakura Y, Matsumoto Y, Miyasaka N, Kohsaka H. “A new murine model to define the crinical pathologic and therapeutic mediators of polymyositis.” Arthritis & Rheumatism. 56: 1304-1314 (2007)); Dalakas MC. “Review: An update on inflammatory and autoimmune myopathies.” Neuropathol Appl Neurobiol.37: 226-242 (2011)。
【0138】
また後述する、遅延型過敏症(Delayed Type Hypersensitivity、以下「DTH」と呼ぶことが有る。)モデルマウスを用いた実験例において、本発明に係る抗体(抗ヒトXCR1マウスモノクローナル抗体(5G7))が、DTH反応を有意に抑制することが明らかになった。前述するように、遅延型過敏症は、樹状細胞の遊走によって活性化されるCD8+T細胞が関与する免疫疾患の一つとして知られている疾患である。本発明に係る抗体が、遅延型過敏症の治療に有効であることは、逆に、本発明に係る抗体が、CD8+T細胞に関与することから、細胞遊走作用の中でも特に樹状細胞の遊走作用を阻害する活性を有していることを裏付けるものである。
【0139】
また、DTH反応が関与している皮膚免疫疾患としては、遅延型過敏症の他、アトピー性皮膚炎、及び接触性皮膚炎が知られている(Fabrizi G, Romano A, Vultaggio P, Bellegrandi S, Paganelli R, Venuti A. “Heterogeneity of atopic dermatitis defined by the immune response to inhalant and food allergy.” Eur. J. Dermatol. 9: 380-384 (1999). 及びFonacier LS, Dreskin SC, Leung DYM. “Allergic skin disseases.” J. Allergy Clin. Immunol. 125: S138-149 (2010))。
【0140】
これらのことから、本発明に係る抗体は、アトピー性皮膚炎又は接触性皮膚炎といった、皮膚の免疫疾患の治療剤としての利用可能性を有している。
【0141】
当該DTH反応にも、CD8+T細胞の活性化が関与している可能性が指摘されている(Mody CH, Pain III R, Jackson C, Chen G-H, Toews GB. “CD8 Cells play a critical role in delayed type hypersensitivity to intact Cryptococcus neoformans.” J Immunol. 152: 3970-3979 (1994)等)。
【0142】
罹患患者数の多い、自己免疫性の皮膚疾患である乾癬において、特に慢性の乾癬病変では表皮へのCD8+T細胞の浸潤が見られ、これらの細胞が乾癬病変を引き起こす主要なエフェクター細胞であると考えられている(Gudjonsson JE, Johnston A, Sigmundsdottir H, Valdimarsson H. “Immunopathogenic mechanisms in psoriasis.” Clin Exp Immunol. 135: 1-8 (2004))。
【0143】
これらのことから、本発明に係る抗体は、CD8+T細胞の活性化が関与している皮膚免疫疾患の治療剤としての利用可能性を有している。
【0144】
このようなCD8+T細胞の活性化が関与している皮膚免疫疾患としては、遅延型過敏症、アトピー性皮膚炎及び接触性皮膚炎の他に、皮膚筋炎、多発性筋炎、封入体筋炎、乾癬、類乾癬、自己免疫性水疱症(天疱瘡、類天疱瘡、後天性表皮水疱症)、膿疱症、妊娠性疱疹、線状IgA水疱性皮膚症、円形脱毛症、尋常性白斑、膠原病(全身性エリテマトーデス、Sjoegren症候群、混合性結合組織病)に伴う皮膚疾患、アジソン病に伴う皮膚疾患、移植片対宿主病(GVHD)に伴う皮膚疾患、湿疹、蕁麻疹、等が挙げられるが、これらの疾患に限定されるものではない。
【0145】
以下に、本発明に係る抗体と前述する各種の免疫疾患(多発性硬化症、ヒトI型糖尿病、糸球体腎炎、自己免疫性肝炎、甲状腺炎、移植片対宿主病、皮膚筋炎、多発性筋炎、封入体筋炎)との関連についてについて詳述する。ただし、本発明に係る抗体の疾患への有効性は、下記の具体的な疾患に限定されるものではない。
【0146】
多発性硬化症
ヒトにおいて多発性硬化症の中枢病変に、CD4+T細胞に加え、CD8+T細胞が浸潤している事が近年報告されている。またマウスを使用した実験において、中枢神経の髄鞘由来抗原によって活性化されたCD8+T細胞を組織に移入するにより、ヒト多発性硬化症のモデルである実験的自己免疫性脳髄膜炎が惹起されることが報告されている。このモデルは従来のモデルよりヒト多発性硬化症に近い病態(増悪寛解を繰り返す、脱髄が顕著に見られ、脱髄病変へ多くのCD8+T細胞やマクロファージ/マイクログリアが浸潤している)を示す。この様に、ヒト多発性硬化症やそのマウスモデルにおいて、CD8+T細胞が重要な役割を果たすことが示唆されている(Friese MA, Fugger L. “Autoreactive CD8+ cells in multiple sclerosis: a new target for therapy?” Brain. 128: 1747-1763 (2005))。
【0147】
従って、CD8+T細胞の活性化を制御する本発明の抗体は、多発性硬化症の治療剤としての利用可能性を有している。
【0148】
ヒトI型糖尿病
ヒトI型糖尿病のモデルである、non-obese diabetic (NOD)マウスにおいてCD8+T細胞を除去することで、糖尿病の発症が抑えられる事が示されている(Wang B, Gonzales A, Benoist C, Mathis D. “The role CD8+ T cells in the initiation of insulin-dependent diabetes mellitus.” Eur J Immunol. 26: 1762-1769 (1996))。この事からI型糖尿病についても、CD8+T細胞が病態の発症に関与する事が示唆される。
【0149】
従って、CD8+T細胞の活性化を制御する本発明の抗体は、ヒトI型糖尿病の治療剤としての利用可能性を有している。
【0150】
糸球体腎炎
糸球体腎炎のモデルマウスにおいて、腎臓病変の形成過程にCD8+T細胞が関与している事が示されている(Heymann F, Meyer-Schwesinger C, Hamilton-Williams EE, Hammerich L, Panzer W, Kaden S, Quaggin SE, Floege J, Groene H-J, Kurts C. “Kidney dendritic cell activation is required for progression of renal disease on a mouse model of glomerular injury.” J Clin Invest. 119: 1286-1297 (2009))。重症の自己免疫性のループス腎炎患者の腎臓に多くのCD8+T細胞が浸潤している。これらのCD8+T細胞の数と、腎機能の悪化を示すrenal activity scoreおよび血清クレアチニンレベルの上昇が相関することが報告されている(Couzi L, Merville P, Deminiere C, Moreau J-F, Combe C, Pellegrin J-L, Viallard J-F, Blanco P. “Predominance of CD8+ T lymphocytes among periglomerular infiltrating cells and link to the prognosis of class III and class IV lupus nephritis.” Arthritis Rheum. 56: 2362-2370 (2007))。この様に、ヒトおよびマウスモデルにおいて、自己免疫性糸球体腎炎の発症あるいは病態の進行にCD8+T細胞が関与していると考えられる。
【0151】
従って、CD8+T細胞の活性化を制御する本発明の抗体は、糸球体腎炎の治療剤としての利用可能性を有している。
【0152】
自己免疫性肝炎
自己免疫性肝炎の発症過程にHepatitis C virus (HCV)への感染が関与することが示唆されている。HCVに対して誘導されるCD8+のCTLがHCVの排除とともに、感染した肝細胞を傷害することにより、自己免疫性の肝炎の発症に関与することが示唆されている(Kammer AR, van der Burg SH, Grabscheid B, Hunziker IP, Kwappenberg KMC, Reichen J, Melief CJM, Cerny A. “Molecular mimicity of human cytochrome P450 by hepatitis C virus at the level of cytotoxic T cell recognition.” J Exp Med. 190: 169-175 (1999))。
【0153】
従って、CD8+T細胞の活性化を制御する本発明の抗体は、自己免疫性肝炎の治療剤としての利用可能性を有している。
【0154】
甲状腺炎
ヒト甲状腺炎(例えば、橋本病)のモデルマウスである、Experimental autoimmune thyroiditis (EAT)の発症にCD8+のCTLが関与する事が知られており、また、このマウスはヒト甲状腺炎と類似した病変(末梢血中で抗サイログロブリン抗体が検出される、甲状腺へのCD8+T細胞およびCD4+T細胞の浸潤が見られる)を示すことが報告されている。この様に、CD8+T細胞はヒトおよびマウスモデルでの甲状腺炎発症に関わっている事が示唆されている(Brazillet M-P, Batteux F, Abehsira-Amar O, Nicoletti F, Charreire J. “Induction of experimental autoimmune thyroiditis by heat-denatured porcine thyroglobulin: a Tc1-mediated disease.” Eur J Immunol. 29: 1342-1352 (1999))。
【0155】
従って、CD8+T細胞の活性化を制御する本発明の抗体は、ヒト甲状腺炎の治療剤としての利用可能性を有している。
【0156】
関節リウマチ
後述する実施例に記載のように、本発明に係る抗体の一つである5G7はMycobacterium butyriumによって惹起されるDTHの実験において、関節リウマチの治療に関して優位な効果を発揮する。
【0157】
従って、本発明に係る抗体は、関節リウマチの治療剤としての利用可能性を有している。
【0158】
移植片拒絶反応
ヒトの臓器移植後の移植片拒絶反応にCD8+T細胞が重要な役割を果たしている。移植片中の細胞上に発現しているMHC class Iを認識する宿主のCD8+T細胞により移植片が拒絶される。また、拒絶反応が起きている腎移植患者の腎臓に多くのCD8+T細胞が浸潤している事が報告されている。この様に、ヒト臓器移植後の移植片拒絶反応においても、CD8+T細胞が中心的な役割を果たすことが示されている(Bueno V, Pestana JOM. “The role of CD8+ T cells during allograft rejection.” Braz J Med Biol Res. 35: 1247-1258 (2002))。
【0159】
従って、CD8+T細胞の活性化を制御する本発明の抗体は、臓器片対宿主病の治療剤としての利用可能性を有している。
【0160】
皮膚筋炎、多発性筋炎、封入体筋炎
皮膚筋炎及び多発性筋炎患者の病変部位に浸潤するリンパ球を株化したところCD8+T細胞株は自己の培養筋細胞に対して細胞傷害性を示した。この事から上記筋炎患者における筋細胞傷害が、抗原特異的な細胞傷害性のCD8+Tによる事を示している(Hohlfeld R , Engel AG. “Coculture with autologous myotubes of cytotoxic T cells isolated from muscle in inflammatory myopathies.” Ann Neurol. 29: 498-507 (1991))。また封入体筋炎患者の病変部位にCD8+T細胞が浸潤していることが示されている(Dalakas MC. “Review: An update on inflammatory and autoimmune myopathies.” Neuropathol Appl Neurobiol.37: 226-242 (2011))。従って、CD8+T細胞の活性化を制御する本発明の抗体は、皮膚筋炎、多発性筋炎または封入体筋炎の治療剤としての利用可能性を有している。
【0161】
以上説明するように、本発明に係る抗体には、免疫疾患、特に皮膚免疫疾患に対する治療剤としての利用可能性を有しているため、本発明によれば、前述する本発明に係る抗体を含む薬学的組成物を提供することができる。
【0162】
当該薬学的組成物は、免疫疾患、特に皮膚免疫疾患の治療を目的として、免疫疾患治療剤としての利用可能性を有している。
【0163】
ここで、「治療」なる用語は、所望の薬理学的効果及び/又は生理学的効果を得ることを意味する。この効果は、疾病及び/又は疾病に起因する悪影響(病態や症状)を、部分的又は完全に治癒することを含む。また、上記効果には、疾病及び/又は疾病に起因する悪影響(病態や症状)の進行を阻止又は遅延する効果、病態や症状を緩和する(疾病または症状の後退、または症状の進行の逆転を引き起こす)効果、さらに再発を阻止する効果が含まれる。また、上記効果には、疾病及び/又は疾病に起因する悪影響(病態や症状)の素因を持ちうるが、まだ持っていると診断されていない個体において、疾病及び/又は疾病に起因する悪影響(病態や症状)が起こることを部分的又は完全に防止する効果が含まれる。従って、「治療」なる用語には、「緩解」、「再発防止」、及び「予防」の意味も包含される。
【0164】
本発明において、本発明に係る抗体を含む薬学的組成物は、哺乳動物、特にヒトの免疫疾患、特に皮膚免疫疾患の治療に好適に用いることができ、例えば免疫疾患の各種症状を部分的または完全に治癒する効果、免疫疾患の各種症状を部分的または完全に阻害する(その進行を阻止又は遅延する)効果、免疫疾病の各種症状を緩和する(疾病または症状の後退、または症状の進行の逆転を引き起こす)効果、または免疫疾病の各種症状の再発を防止する効果を得ることが可能であると理解される。
【0165】
ここで対象とする免疫疾患の具体的な例は、前述する通りである。好ましくは皮膚免疫疾患である。
【0166】
かかる薬学的組成物は、本発明に係る抗体を有効量含んでいればよく、その限りにおいて、組成物中の本発明に係る抗体の含有量は特に制限はされない。例えば、薬学的組成物100重量%中の本発明に係る抗体の含有割合が0.001〜99.99重量%の範囲になるように、対象とする免疫疾患の種類、剤型、及び投与方法等を勘案して、適宜設定することができる。
【0167】
ここで、「有効量」なる用語は、本発明に係る抗体が樹状細胞の細胞遊走を阻害する効果を発揮する量、又は上述する所望の薬理学的効果及び/又は生理学的効果(免疫疾患治療効果)を発揮する量をいう。
【0168】
薬学的組成物には、本発明に係る抗体と共に、薬学的に許容可能な担体或いは添加物を配合してもよい。ここで、「薬学的に許容可能な担体或いは添加物」とは、任意の担体、希釈剤、賦形剤、懸濁剤、潤滑剤、アジュバント、媒体、送達システム、乳化剤、錠剤分解物質、吸収剤、保存剤、界面活性剤、着色剤、香料、または甘味料を意味し、公知のものを採用すればよい。
【0169】
かかる薬学的組成物の剤型は、たとえば錠剤、散剤、シロップ剤、ハップ剤、注射剤、点滴剤等が挙げられ、特に限定はされないが、注射剤または点滴剤とすることが好ましい。このような注射剤や点滴剤は、水性であっても、非水性であっても、懸濁性であってもよい。また、用時調製型の剤型であってもよい。
【0170】
当該本発明の薬学的組成物、具体的には免疫疾患治療剤は、免疫疾患、特に皮膚免疫疾患に罹患した患者に投与する工程を含む免疫疾患の治療方法における利用可能性を有している。また、前述するように、免疫疾患、特に皮膚免疫疾患の病態や症状を発症していないものの、免疫疾患の素因を持ちうる患者に投与する工程を含む免疫疾患の予防方法における利用可能性を有している。
【0171】
当該薬学的組成物(免疫疾患治療剤)の投与量並びに投与方法は、対象とする免疫疾患の種類、患者の性別、人種、年齢、全身状態、疾患の重篤度等に応じて、0.001~100mg/kg/dayの範囲で適宜設定することができる。
【0172】
本発明に係る抗体の投与は、上記の量を一日に一度に投与してもよく、数回に分けて投与してもよい。また、上記疾患に対する治療効果を有する範囲において、投与間隔は、毎日、隔日、毎週、隔週、2〜3週毎、毎月、隔月または2〜3ヶ月毎でもよい。投与方法は、例えば経口、筋肉内、静脈内、動脈内、くも膜下腔内、皮内、腹腔内、鼻腔内、肺内、眼内、腟内、頸部内、直腸内、皮下等へ投与する方法が挙げられ、特に限定はされない。
【0173】
(2)イムノトキシンとしての用途
本発明に係る抗体は、細胞毒性分子と結合した形態のものであってもよい。そのような抗体は、免疫システムに関連する樹状細胞にて著量発現しているヒトXCR1タンパク質に結合するため、樹状細胞を標的細胞としたイムノトキシンとすることが可能である。
【0174】
ここで、用語「細胞毒性分子」とは、細胞をアポトーシス及び/又はネクローシスなどといった、死に至らしめる効果を発揮する分子のことを意味する。
【0175】
このような分子として、例えばサポリン、リシン、Pseudomonas外毒素、ジフテリア毒素、化学療法剤などが挙げられる。抗体と毒性物質の結合は、従来のイムノトキシンの作製に用いられる方法によって行うことができる。
【0176】
(3)本発明に係る抗体の他の用途
本発明に係る抗体は、樹状細胞に著量発現するXCR1と結合する態様の抗体も包含するために、樹状細胞を検出する方法における利用可能性を有している。その際には、本発明に係る抗体を標識化して用いることが好ましい。ここで、用語「標識化」とは、蛍光分子、発光分子、発色分子、放射性同位体分子等といった標識分子を結合させることである。
【0177】
結合の様式は、検出に係る工程において結合が解離されない範囲においてどのような結合様式であってもよい。具体的な検出方法として、公知の方法を用いればよく、例えばフローサイトメトリー技術を採用すればよい。
【0178】
また、本発明に係る抗体は、上述した樹状細胞の検出に引き続き、樹状細胞を分離及び/又は除去する方法にも好適に用いることができる。これらの方法も、公知の方法を採用すればよく、例えばフローサイトメトリーと共に、公知のセルソーティング装置を適宜用いればよい。
【0179】
本発明は上述した抗体に関するものであり、下記に示す態様の発明を広く包含するものである。
【0180】
項1 ヒトXCR1に結合する抗体であって、配列番号91に示すアミノ酸配列のうち、8番目、11番目、12番目、13番目、14番目、16番目、17番目、22番目、23番目、176番目、及び177番目のアミノ酸からなる群より選択される少なくとも3個のアミノ酸を含む線状又は不連続エピトープに結合する抗体。
【0181】
項2 上記項1に記載の抗体であって、
下記の(g)-(i)の重鎖CDR1-3を含む重鎖可変領域と、(j)-(l)の軽鎖CDR1-3を含む軽鎖可変領域とを含む抗体;
(m)-(o)の重鎖CDR1-3を含む重鎖可変領域と、(p)-(r)の軽鎖CDR1-3を含む軽鎖可変領域とを含む抗体;又は
(a)-(c)の重鎖CDR1-3を含む重鎖可変領域と、(d)-(f)の軽鎖CDR1-3を含む軽鎖可変領域とを含む抗体:
(a)配列番号41に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
(b)配列番号42に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
(c)配列番号43に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3;
(d)配列番号44に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
(e)配列番号45に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
(f)配列番号46に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3;
(g)配列番号17に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
(h)配列番号18に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
(i)配列番号19に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3;
(j)配列番号20に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
(k)配列番号21に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
(l)配列番号22に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3;
(m)配列番号29に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
(n)配列番号30に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
(o)配列番号31に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3;
(p)配列番号32に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
(q)配列番号33に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
(r)配列番号34に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3。
【0182】
項3 上記項1又は項2に記載の抗体であって、配列番号60又は64に示すアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号68又は72に示すアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0183】
項4 上記項1〜項3の何れか1項に記載の抗体であって、配列番号60に示すアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号68に示すアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0184】
項5 上記項1〜項3の何れか1項に記載の抗体であって、配列番号64に示すアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号72に示すアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0185】
項6 上記項1〜項5の何れか1項に記載の抗体であって、ヒト定常領域を含有する抗体。
【0186】
項7 上記項1〜項6の何れか1項に記載の抗体であって、配列番号59に示すアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号67に示すアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む抗体。
【0187】
項8 上記項1〜項6の何れか1項に記載の抗体であって、配列番号63に示すアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号71に示すアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む抗体。
【0188】
項9 Fc領域を有する上記項1〜項8の何れか1項に記載の抗体であって、ADCC活性が変動するようにFc領域に変異が施されてなる抗体。
【0189】
項10 上記項9に記載の抗体であって、ADCC活性が下降するようにFc領域に変異が施されてなる抗体。
【0190】
項11 上記項1〜項10の何れか1項に記載の抗体であって、該抗体に細胞毒性分子が結合した抗体。
【0191】
項12 上記項1〜項11の何れか1項に記載の抗体であって、ヒトXCR1とヒトXCL1との相互作用を阻害する作用を有する抗体。
【0192】
項13 上記項1〜項12の何れか1項に記載の抗体であって、樹状細胞の細胞遊走を阻害する作用を有する抗体。
【0193】
項14 上記項1〜項13の何れか1項に記載の抗体であって、細胞傷害性Tリンパ細胞の活性を抑制する抗体。
【0194】
項15 上記項1〜項14の何れか1項に記載の抗体、及び薬学的に許容可能な担体または添加物を含有する薬学的組成物。
【0195】
項16 免疫疾患治療剤である、上記項15に記載の薬学的組成物。
【0196】
項17 免疫疾患が皮膚の免疫疾患である、上記項16に記載の薬学的組成物。
【0197】
項18 皮膚の免疫疾患が乾癬、類乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、皮膚筋炎、多発性筋炎、封入体筋炎、自己免疫性水疱症(天疱瘡、類天疱瘡、後天性表皮水疱症)、膿疱症、妊娠性疱疹、線状IgA水疱性皮膚症、円形脱毛症、尋常性白斑、膠原病(全身性エリテマトーデス、Sjoegren症候群、混合性結合組織病)に伴う皮膚疾患、アジソン病に伴う皮膚疾患、移植片対宿主病(GVHD)に伴う皮膚疾患、湿疹又は蕁麻疹である、上記項17に記載の薬学的組成物。
【0198】
項19 皮膚の免疫疾患が乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、皮膚筋炎、多発性筋炎または封入体筋炎である、上記項17に記載の薬学的組成物。
【0199】
項20 皮膚の免疫疾患がアトピー性皮膚炎又は接触性皮膚炎である、上記項17に記載の薬学的組成物。
【0200】
項21 免疫疾患が、甲状腺炎、関節リウマチ、I型糖尿病、又は多発性硬化症である、上記項16に記載の薬学的組成物。
【0201】
項22 上記項1〜項14の何れか1項に記載の抗体をコードする塩基配列を含む核酸。
【0202】
項23 上記項1〜項14の何れか1項に記載の抗体又は上記項15に記載の薬学的組成物の有効量を、免疫疾患に罹患したヒトに投与する工程を含む免疫疾患の治療方法。
【0203】
項24 免疫疾患が皮膚の免疫疾患である、上記項23に記載の方法。
【0204】
項25 皮膚の免疫疾患が乾癬、類乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、皮膚筋炎、多発性筋炎、封入体筋炎、自己免疫性水疱症(天疱瘡、類天疱瘡、後天性表皮水疱症)、膿疱症、妊娠性疱疹、線状IgA水疱性皮膚症、円形脱毛症、尋常性白斑、膠原病(全身性エリテマトーデス、Sjoegren症候群、混合性結合組織病)に伴う皮膚疾患、アジソン病に伴う皮膚疾患、移植片対宿主病(GVHD)に伴う皮膚疾患、湿疹又は蕁麻疹である、上記項24に記載の方法。
【0205】
項26 皮膚の免疫疾患が乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、皮膚筋炎、多発性筋炎または封入体筋炎である、上記項24に記載の方法。
【0206】
項27 免疫疾患が、甲状腺炎、関節リウマチ、I型糖尿病、又は多発性硬化症である、上記項23に記載の方法。
【0207】
本発明は、下記に示す態様も包含する。
【0208】
項1A 下記の(g)-(i)の重鎖CDR1-3を含む重鎖可変領域と、(j)-(l)の軽鎖CDR1-3を含む軽鎖可変領域とを含む抗体;
(m)-(o)の重鎖CDR1-3を含む重鎖可変領域と、(p)-(r)の軽鎖CDR1-3を含む軽鎖可変領域とを含む抗体;又は
(a)-(c)の重鎖CDR1-3を含む重鎖可変領域と、(d)-(f)の軽鎖CDR1-3を含む軽鎖可変領域とを含む抗体:
(a)配列番号41に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
(b)配列番号42に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
(c)配列番号43に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3;
(d)配列番号44に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
(e)配列番号45に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
(f)配列番号46に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3;
(g)配列番号17に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
(h)配列番号18に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
(i)配列番号19に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3;
(j)配列番号20に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
(k)配列番号21に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
(l)配列番号22に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3;
(m)配列番号29に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
(n)配列番号30に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
(o)配列番号31に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3;
(p)配列番号32に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
(q)配列番号33に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
(r)配列番号34に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3。
【0209】
項2A 上記項1Aに記載の抗体であって、配列番号60又は64に示すアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号68又は72に示すアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む記載の抗体。
【0210】
項3A 上記項1A又は項2Aに記載の抗体であって、配列番号60に示すアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号68に示すアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0211】
項4A 上記項1A又は2Aに記載の抗体であって、配列番号64に示すアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号72に示すアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む請求項1又は2に記載の抗体。
【0212】
項5A 上記項1A〜項4Aの何れか1項に記載の抗体であって、ヒト定常領域を含有する抗体。
【0213】
項6A 上記項1A〜項5Aの何れか1項に記載の抗体であって、配列番号59に示すアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号67に示すアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む抗体。
【0214】
項7A 上記項1A〜項5Aの何れか1項に記載の抗体であって、配列番号63に示すアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号71に示すアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む抗体。
【0215】
項8A Fc領域を有する上記項1A〜項7Aの何れか1項に記載の抗体であって、ADCC活性が変動するようにFc領域に変異が施されてなる抗体。
【0216】
項9A 上記項8Aに記載の抗体であって、ADCC活性が下降するようにFc領域に変異が施されてなる抗体。
【0217】
項10A 上記項1A〜項9Aの何れか1項に記載の抗体であって、ヒトXCR1とヒトXCL1との相互作用を阻害する作用を有する抗体。
【0218】
項11A 上記項1A〜項10Aの何れか1項に記載の抗体であって、樹状細胞の細胞遊走を阻害する作用を有する抗体。
【0219】
項12A 上記項1A〜項11Aの何れか1項に記載の抗体、及び薬学的に許容可能な担体または添加物を含有する薬学的組成物。
【0220】
項13A 免疫疾患治療剤である、上記項12Aに記載の薬学的組成物。
【0221】
項14A 免疫疾患が皮膚の免疫疾患である、上記項13Aに記載の薬学的組成物。
【0222】
項15A 皮膚の免疫疾患が乾癬、類乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、皮膚筋炎、多発性筋炎、封入体筋炎、自己免疫性水疱症(天疱瘡、類天疱瘡、後天性表皮水疱症)、膿疱症、妊娠性疱疹、線状IgA水疱性皮膚症、円形脱毛症、尋常性白斑、膠原病(全身性エリテマトーデス、Sjoegren症候群、混合性結合組織病)に伴う皮膚疾患、アジソン病に伴う皮膚疾患、移植片対宿主病(GVHD)に伴う皮膚疾患、湿疹又は蕁麻疹である、上記項14Aに記載の薬学的組成物。
【0223】
項16A 皮膚の免疫疾患が乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、皮膚筋炎、多発性筋炎または封入体筋炎である、上記項14Aに記載の薬学的組成物。
【0224】
項17A 皮膚の免疫疾患がアトピー性皮膚炎又は接触性皮膚炎である、上記項14Aに記載の薬学的組成物。
【0225】
項18A 上記項1A〜項11Aの何れか1項に記載の抗体をコードする塩基配列を含む核酸。
【0226】
項19A 上記項1A〜項11Aの何れか1項に記載の抗体の有効量を、免疫疾患に罹患したヒトに投与する工程を含む免疫疾患の治療方法。
【0227】
本発明は、さらに下記に示す態様も包含する。
【0228】
項1B 下記の(g)-(i)の重鎖CDR1-3を含む重鎖可変領域と、(j)-(l)の軽鎖CDR1-3を含む軽鎖可変領域とを含む抗体;
(m)-(o)の重鎖CDR1-3を含む重鎖可変領域と、(p)-(r)の軽鎖CDR1-3を含む軽鎖可変領域とを含む抗体;又は
(a)-(c)の重鎖CDR1-3を含む重鎖可変領域と、(d)-(f)の軽鎖CDR1-3を含む軽鎖可変領域とを含む抗体:
(a)配列番号41に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
(b)配列番号42に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
(c)配列番号43に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3;
(d)配列番号44に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
(e)配列番号45に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
(f)配列番号46に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3;
(g)配列番号17に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
(h)配列番号18に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
(i)配列番号19に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3;
(j)配列番号20に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
(k)配列番号21に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
(l)配列番号22に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3;
(m)配列番号29に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、
(n)配列番号30に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2、
(o)配列番号31に示されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3;
(p)配列番号32に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、
(q)配列番号33に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2、
(r)配列番号34に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3。
【0229】
項2B 上記項1Bに記載の抗体であって、配列番号60又は64に示すアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号68又は72に示すアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0230】
項3B 上記項1B又は項2Bに記載の抗体であって、配列番号60に示すアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号68に示すアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0231】
項4B 上記項1B又は2Bに記載の抗体であって、配列番号64に示すアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号72に示すアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【0232】
項5B 上記項1B〜項4Bの何れか1項に記載の抗体であって、ヒト定常領域を含有する抗体。
【0233】
項6B 上記項1B〜項5Bの何れか1項に記載の抗体であって、配列番号59に示すアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号67に示すアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む抗体。
【0234】
項7B 上記項1B〜項5Bの何れか1項に記載の抗体であって、配列番号63に示すアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号71に示すアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む抗体。
【0235】
項8B Fc領域を有する上記項1B〜項7Bの何れか1項に記載の抗体であって、ADCC活性が変動するようにFc領域に変異が施されてなる抗体。
【0236】
項9B 上記項8Bに記載の抗体であって、ADCC活性が下降するようにFc領域に変異が施されてなる抗体。
【0237】
項10B 上記項1B〜項9Bの何れか1項に記載の抗体であって、該抗体に細胞毒性分子が結合した抗体。
【0238】
項11B 上記項1B〜項10Bの何れか1項に記載の抗体であって、ヒトXCR1とヒトXCL1との相互作用を阻害する作用を有する抗体。
【0239】
項12B 上記項1B〜項11Bの何れか1項に記載の抗体であって、樹状細胞の細胞遊走を阻害する作用を有する抗体。
【0240】
項13B 上記項1B〜項12Bの何れか1項に記載の抗体、及び薬学的に許容可能な担体または添加物を含有する薬学的組成物。
【0241】
項14B 免疫疾患治療剤である、上記項13Bに記載の薬学的組成物。
【0242】
項15B 免疫疾患が皮膚の免疫疾患である、上記項14Bに記載の薬学的組成物。
【0243】
項16B 皮膚の免疫疾患が乾癬、類乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、皮膚筋炎、多発性筋炎、封入体筋炎、自己免疫性水疱症(天疱瘡、類天疱瘡、後天性表皮水疱症)、膿疱症、妊娠性疱疹、線状IgA水疱性皮膚症、円形脱毛症、尋常性白斑、膠原病(全身性エリテマトーデス、Sjoegren症候群、混合性結合組織病)に伴う皮膚疾患、アジソン病に伴う皮膚疾患、移植片対宿主病(GVHD)に伴う皮膚疾患、湿疹又は蕁麻疹である、上記項15Bに記載の薬学的組成物。
【0244】
項17B 皮膚の免疫疾患が乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、皮膚筋炎、多発性筋炎または封入体筋炎である、上記項15Bに記載の薬学的組成物。
【0245】
項18B 皮膚の免疫疾患がアトピー性皮膚炎又は接触性皮膚炎である、上記項15Bに記載の薬学的組成物。
【0246】
項19B 上記項1B〜項12Bの何れか1項に記載の抗体をコードする塩基配列を含む核酸。
【0247】
項20B 上記項1B〜項12Bの何れか1項に記載の抗体又は上記項13Bに記載の薬学的組成物の有効量を、免疫疾患に罹患したヒトに投与する工程を含む免疫疾患の治療方法。
【0248】
項21B 免疫疾患が皮膚の免疫疾患である、上記項20Bに記載の方法。
【0249】
項22B 皮膚の免疫疾患が乾癬、類乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、皮膚筋炎、多発性筋炎、封入体筋炎、自己免疫性水疱症(天疱瘡、類天疱瘡、後天性表皮水疱症)、膿疱症、妊娠性疱疹、線状IgA水疱性皮膚症、円形脱毛症、尋常性白斑、膠原病(全身性エリテマトーデス、Sjoegren症候群、混合性結合組織病)に伴う皮膚疾患、アジソン病に伴う皮膚疾患、移植片対宿主病(GVHD)に伴う皮膚疾患、湿疹又は蕁麻疹である、上記項21Bに記載の方法。
【0250】
項23B 皮膚の免疫疾患が乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、皮膚筋炎、多発性筋炎または封入体筋炎である、上記項21Bに記載の方法。
【0251】
項24B 皮膚の免疫疾患が乾癬、アトピー性皮膚炎又は接触性皮膚炎である、上記項21Bに記載の方法。
【実施例】
【0252】
以下に、本発明を実験例に基づいてより詳細に説明する。なお、本発明が実施例に限定されないことは、言うまでもない。
【0253】
実験例1
(1)マウス抗ヒトXCR1モノクローナル抗体の作製
ヒトXCR1に対するモノクローナル抗体を作製するために、ヒトXCR1を遺伝子導入したB300.19細胞の膜画分をXCR1ノックアウトマウスに免疫した。膜画分は以下のように調製した。まず、ヒトXCR1を遺伝子導入したB300.19細胞をHoバッファー(0.25 M Sucrose、10mMのHepes(pH7.4)、1mMのEGTA、0.5mMのMgCl2、1x Complete mini EDTA-free(Roche Applied Science))に懸濁したものを窒素ガス細胞破砕器(Parr Instrument campany)にて破砕(800psi、30分間、氷上)し、遠心分離した(2,000g、10分間)。上清を回収して再度遠心分離した(100,000g、30 分間)。沈殿を50mMのHepes(pH7.4)バッファーに懸濁し、これを膜画分とした。
【0254】
160μg、もしくは260μgの膜画分を等量のGERBUアジュバント(GERBU Biotechnik GmbH)と混合し、XCR1ノックアウトマウス(Deltagen)の足裏に皮下注射した。その後、5回、または6回の追加免疫を2週間に1回行った。最終免疫の3日、もしくは4日後にマウスを屠殺し、末梢リンパ節細胞とP3U1ミエローマ細胞とを2:1、あるいは5:1の割合でGenomeONE-CF(石原産業株式会社)存在下で細胞融合した。融合した細胞は96ウェルプレートにて培養した。
【0255】
一次スクリーニングとして、FACS解析を行った。CHO親細胞とヒトXCR1-EGFP遺伝子を導入したCHO細胞を1:1の割合で混合し、FACSバッファー(1mMのEDTA、1%のウシ胎児血清を含むPBS-(Sigma))に懸濁した。細胞をそれぞれのハイブリドーマの培養上清とともに氷上で20分間インキュベートした。FACSバッファーにて3回洗浄した後、FACSバッファーにて100倍に希釈したPE標識抗マウスIgGポリクローナル抗体(Jackson、#715-116-151)とともに氷上で20分間インキュベートした。FACSバッファーにて3回洗浄した後、細胞をFACSバッファーに懸濁し、蛍光強度をFACS CantoII Cell analyzer(BD Bioscience)にて測定したところ、3つのウェルから回収された培養上清がヒトXCR1-EGFP遺伝子を導入したCHO細胞に対する反応性を示した。
【0256】
上記3つの陽性ウェルより、通常用いられる限界希釈法にて、クローンを取得した(2H6、5G7、及び11H2)。各々のクローンの反応性は上述のFACS解析にて確認した。
【0257】
続いて、ヒトリンフォタクチンによって誘導される、ヒトXCR1を遺伝子導入したBaF3細胞、あるいはB300.19細胞の遊走に対するこれらの3種類のクローンの中和活性を評価するため、in vitroケモタキシスアッセイを行った。ケモタキシスアッセイは24ウェル トランスウェル カルチャーサポート(pore 3μm、Costar、#3399)または96ウェル トランスウェル カルチャープレート(MultiScreen、pore 5μm、Millipore、#MAMIC 5S10)を用いて行った。
【0258】
24ウェル トランスウェル カルチャーサポートの場合、50μlのケモタキシスバッファー(0.5%のBSA、0.5% のFBS、20mMのHEPES(pH7.4)含有RPMI1640培地(Invitrogen))と50μlの各クローンの培養上清の混合液に1x106個のヒトXCR1を遺伝子導入したBaF3細胞を懸濁し、室温にて30分間インキュベートした。その後、1μg/mlの濃度でケモタキシスバッファーに溶解した組換えヒトリンフォタクチン(Genzyme、#2695)を1ウェルあたり600μlの割合で下層のウェルに加え、インキュベートした細胞を上層に加えた。37℃、5%のCO2インキュベーター内で4時間インキュベートした後、トランスウェルを1,350回転で5分間遠心し、遊走した細胞を下層のウェルに回収した。回収した細胞はパラホルムアルデヒド(最終濃度;1%)にて固定し、それぞれ30μlのサンプル中の細胞数をFACSCantoII cell analyzerにて計測した。
【0259】
96ウェル トランスウェル カルチャープレートの場合、25μlのケモタキシスバッファー(0.5%のBSA、0.5%のFBS、20mMのHEPES(pH7.4)、50μMの2-メルカプトエタノール含有RPMI1640(Invitrogen))と50μlの各クローンの培養上清の混合液に2x105個のヒトXCR1を遺伝子導入したB300.19細胞を懸濁し、室温にて30分間インキュベートした。その後、1μg/mlの濃度でケモタキシスバッファーに溶解した組換えヒトリンフォタクチン(Genzyme、#2695)を1ウェルあたり150μlの割合で下層のウェルに加え、インキュベートした細胞を上層に加えた。37℃、5% CO2インキュベーター内で4時間インキュベートした後、トランスウェルを1,350回転で5分間遠心し、遊走した細胞を下層のウェルに回収した。それぞれ30μlのサンプル中の細胞数をFACSCantoII cell analyzerにて計測した。
【0260】
3つのハイブリドーマクローン(2H6、5G7、及び11H2)の培養上清が、ヒトリンフォタクチンによって誘導される、ヒトXCR1を遺伝子導入したBaF3細胞又はB300.19細胞の遊走に対して中和活性を示した。
【0261】
(2)ヒトXCR1発現細胞に対するマウス抗ヒトXCR1抗体(2H6、5G7、及び11H2)の反応性
これら3つのクローンの精製抗体の反応性と中和活性を評価するため、各クローンの培養上清より組換えプロテインA(GE Healthcare、#17-5080-01)にて抗体を精製した。各クローンのアイソタイプはモノクローナル抗体アイソタイピングキット(serotec、#MMT1)にて決定した。2H6と5G7はIgG2b,κ、11H2はIgG2a,κであった。
【0262】
精製抗体のヒトXCR1に対する反応性はFACS解析にて評価した。B300.19親細胞とヒトXCR1-EGFP遺伝子を導入したB300.19細胞を1:1の割合で混合し、FACSバッファー(1%のFBSを含むPBS-(Sigma))に懸濁した。細胞を100μg/mlのヒトイムノグロブリンを含むFACSバッファーにて、氷上で10分間ブロッキングした。その後、細胞を0μg/mlから10μg/mlの濃度の精製抗体(2H6、5G7、及び11H2)、または10μg/mlの濃度のマウスアイソタイプコントロール抗体として用いるIgG2a(eBioscience、#14-4724-82)もしくはIgG2b(eBioscience、#14-4732-82)とともに氷上で20分間インキュベートした。FACSバッファーにて3回洗浄した後、FACSバッファーにて50倍に希釈したPE標識抗マウスIgGポリクローナル抗体(Jackson、#715-116-151)とともに氷上で20分間インキュベートした。FACSバッファーにて3回洗浄した後、細胞をFACSバッファーに懸濁し、蛍光強度をFACS CantoII cell analyzerにて測定した。
【0263】
これら3つの精製抗体(2H6、5G7、及び11H2)はヒトXCR1-EGFP遺伝子を導入したB300.19細胞に反応性を示し、B300.19親細胞には反応しなかった(図1)。一方、マウスアイソタイプコントロール抗体はヒトXCR1-EGFP遺伝子を導入したB300.19細胞、親細胞ともに反応性を示さなかった(データは示していない)。
【0264】
(3)ヒトリンフォタクチンによって誘導されるヒトXCR1発現細胞の遊走に対するマウス抗ヒトXCR1抗体(2H6、5G7、及び11H2)の中和活性
これらの3つのクローンの精製抗体の中和活性はin vitroケモタキシスアッセイにて評価した。ケモタキシスアッセイは96ウェル トランスウェル カルチャープレート(MultiScreen、pore 5μm、Millipore、#MAMIC 5S10)を用いて行った。2H6、5G7、及び11H2の各精製抗体を0μg/mlから10μg/mlの濃度で含む75μlのケモタキシスバッファー(0.5%のBSA、0.5%のFBS、20mMのHEPES(pH7.4)、50μMの2-メルカプトエタノール含有RPMI1640培地(Invitrogen))に2x105個のヒトXCR1を遺伝子導入したB300.19細胞を懸濁し、室温にて30分間インキュベートした。また、組換えヒトリンフォタクチン(R&D、#695-LT/CF)を最終濃度1μg/ml、各精製抗体を最終濃度0μg/mlから10μg/mlになるようにケモタキシスバッファーに溶解し、1ウェルあたり150μlの割合で下層のウェルに加え、室温にて30分間インキュベートした。30分後、インキュベートした細胞を上層に加え、37℃、5%のCO2インキュベーター内で4時間インキュベートした後、それぞれ30μlのサンプル中の細胞数をFACSCantoII cell analyzerにて計測した。
【0265】
2H6、5G7、及び11H2はおよそ3μg/mlの濃度でケモタキシスを完全に阻害した。代表的な濃度依存的な阻害の様子を図2に示す。3回の独立した実験からIC50値とIC90値を算出し、平均±標準誤差として、表1に示す。
【0266】
【表1】
【0267】
(4)マウス抗ヒトXCR1抗体(2H6、5G7、及び11H2)の配列解析
クローン2H6、5G7、及び11H2の重鎖と軽鎖をコードする遺伝子配列を含むポリヌクレオチドを5’-RACE(5’-rapid amplification of cDNA ends)法にて増幅した。これら3つのクローンのハイブリドーマからTRIZOL(Invitrogen)にてトータルRNAを調製し、DNase(QIAGEN、 RNase free DNase set)にて処理した。トータルRNAからcDNA 合成キット(TAKARA)にて二重鎖cDNAを調製し、ad29S; ACATCACTCCGT(配列番号81)と、
as29AS; ACGGAGTGATGTCCGTCGACGTATCTCTGCGTTGATACTTCAGCGTAGCT(配列番号82)
とをアニールした5’アダプターを付加した。得られたcDNAを、
5’フォワードプライマー(5’-PCR4 primer、AGCTACGCTGAAGTATCAACGCAGAG:配列番号83)と、3’リバースプライマー(IgG2b重鎖の増幅にはAGGACAGGGGTTGATTGTTGA:配列番号84、又はCTCAAGTTTTTTGTCCACCGTGGTGC:配列番号85を、
IgG2a重鎖の増幅には
CTCAATTTTCTTGTCCACCTTGGTGC:配列番号86、又はGCCAGTGGATAGACTGATG:配列番号87
を、
Igκ軽鎖の増幅には
CTCATTCCTGTTGAAGCTCTTGACAAT:配列番号88、GATGGATACAGTTGGTGCAGC:配列番号89、
又はCAGATCCTCAGCCTCCACTCTGCT:配列番号90を用いた)にて増幅した。
【0268】
増幅したcDNAはpCR2.1ベクター(Invitrogen)に挿入した。遺伝子配列はABI3130XLにて解析した。また、解析によって明らかになった遺伝子配列がコードするアミノ酸配列を表2−1から表4−2に示す。
【0269】
【表2-1】
【0270】
【表2-2】
【0271】
【表3-1】
【0272】
【表3-2】
【0273】
【表4-1】
【0274】
【表4-2】
【0275】
実験例2
(1)キメラ化抗ヒトXCR1抗体及びヒト型化抗ヒトXCR1抗体の作製
2H6、5G7、及び11H2の中で中和活性の高かった5G7を、キメラ化抗体及びヒト型化抗体の作製に進めた。
【0276】
キメラ化抗体は5G7の可変領域の遺伝子配列とヒトIgG2の定常領域にV234A/G237Aの変異を挿入したものの遺伝子配列をPCR法にてつなぎ合わせて、発現ベクター(pEE6.4、pEE12.4)に挿入して作製した。具体的なキメラ化抗体のアミノ酸配列及び塩基配列を、表5及び表6に示す。
【0277】
【表5】
【0278】
【表6】
【0279】
抗体のヒト型化は、マウス抗体5G7の相補性決定領域をヒト抗体の可変領域へ移植することにより行った。相補性決定領域はKabatのナンバリングシステムと相補性決定領域の決定法(例えば、Kabatら、(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest: US Department of Health AND human Services、NIH、USA)により決定した。また、2H6及び11H2の相補性決定領域も同様に決定した。これらの3つのクローンの相補性決定領域のアミノ酸配列及び塩基配列を、表7−1〜9−2に示す。
【0280】
【表7-1】
【0281】
【表7-2】
【0282】
【表8-1】
【0283】
【表8-2】
【0284】
【表9-1】
【0285】
【表9-2】
【0286】
表7−1と表8−1から明らかなように、5G7のCDRと2H6のCDRにおけるアミノ酸配列の同一性は非常に高く、特に重鎖CDR3については全く同一のアミノ酸配列であった。従って、5G7と2H6については、以下の表10に示すようにアミノ酸配列を一般化することができる。また、これらのクローンのCDR1-3のアミノ酸配列を比較したものを図7にて示す。
【0287】
【表10】
【0288】
表中のXは、アラニン(Ala:A)、アルギニン(Arg:R)、アスパラギン(Asn:N)、アスパラギン酸(Asp:D)、システイン(Cys:C)、グルタミン(Gln:Q)、グルタミン酸(Glu:E)、グリシン(Gly:G)、ヒスチジン(His:H)、イソロイシン(Ile:I)、ロイシン(Leu:L)、リジン(Lys:K)、メチオニン(Met:M)、フェニルアラニン(Phe:F)、プロリン(Pro:P)、セリン(Ser:S)、スレオニン(Thr:T)、トリプトファン(Trp:W)、チロシン(Tyr:Y)又はバリン(Val:V)のいずれであってもよい。
【0289】
ヒト型化抗体のFRは5G7のFRと同一性の高いヒト抗体のFRを選択した。そして、5G7において相補性決定領域と相互作用するFRのアミノ酸を、得られる抗体の3次元モデルより予測し、相補性決定領域とともに移植した。定常領域はヒトIgG2の定常領域にV234A/G237Aの変異を挿入したものを使用した。ヒト型化抗体の重鎖としてHK1とHK5を設計し、軽鎖としてL2とL5を設計した。具体的なヒト型化抗体のアミノ酸配列及び塩基配列を、表11−1〜表14−2に示す。
【0290】
【表11-1】
【0291】
【表11-2】
【0292】
【表12-1】
【0293】
【表12-2】
【0294】
【表13-1】
【0295】
【表13-2】
【0296】
【表14-1】
【0297】
【表14-2】
【0298】
これらのヒト型化抗体の遺伝子配列はGenScript USA Inc.にて全合成し、発現ベクター(pEE6.4、pEE12.4、Lonza社より購入)に挿入した。抗体の産生のために、リポフェクトアミン2000(Invitrogen)の使用説明書に従い、発現ベクターをHEK293E細胞(Invitrogen)にリポフェクトアミン2000を用いて導入した。培養上清を回収し、プロテインA(GE healthcare)を用いて抗体を精製した。これらの精製したヒト型化抗体を用いて、中和活性の評価を行った。
【0299】
ヒトリンフォタクチンによって誘導される、ヒトXCR1発現細胞の遊走に対する中和活性を持つヒト型化抗体の同定は、ヒトXCR1を遺伝子導入したB300.19細胞を用いたin vitroケモタキシスアッセイにて行った。ケモタキシスアッセイは96ウェル トランスウェル カルチャープレート(MultiScreen、pore 5μm、Millipore、#MAMIC 5S10、またはCorning、#3387、または#3388)を用いて、前述の通りに行った。ただし、Corningのトランスウェル カルチャープレートを用いる場合、下層に加える組換えヒトリンフォタクチンと精製抗体の液量は1ウェルあたり235μlとする。
【0300】
中和活性をもつヒト型化抗体のうち、HK1L2とHK5L5の二種類をさらに詳細に評価することとした。
【0301】
(2)ヒトXCR1発現細胞に対するヒト型化抗ヒトXCR1抗体(HK1L2及びHK5L5)の反応性
これら2つのヒト型化抗体(HK1L2及びHK5L5)と親抗体5G7、キメラ化抗体を用いてFACS解析を行った。B300.19親細胞とヒトXCR1-EGFP遺伝子を導入したB300.19細胞を1:1の割合で混合し、FACSバッファー(1%のFBSを含むPBS-(Sigma))に懸濁した。細胞を0μg/mlから10μg/mlの濃度のそれぞれの精製抗体とともに氷上で20分間インキュベートした。FACSバッファーにて3回洗浄した後、FACSバッファーにて100倍に希釈したPE標識抗マウスIgGポリクローナル抗体(Jackson、#715-116-151:親抗体5G7で染色した細胞に用いた)、またはPE標識抗ヒトIgGポリクローナル抗体(Jackson、#709-116-149:キメラ化抗体、及びヒト型化抗体(HK1L2及びHK5L5)で染色した細胞に用いた)とともに氷上で20分間インキュベートした。FACSバッファーにて3回洗浄した後、細胞をFACSバッファーに懸濁し、蛍光強度をFACS CantoII cell analyzer(BD Bioscience)にて測定した。
【0302】
ヒト型化抗体(HK1L2及びHK5L5)は濃度依存的にヒトXCR1-EGFP遺伝子を導入したB300.19細胞に反応性を示し、その反応性は親抗体5G7或いはキメラ化抗体とほぼ同様であった(図3)。
【0303】
ヒト末梢血単核球を用いたFACS解析により、さらにヒト型化抗体(HK1L2及びHK5L5)のヒトXCR1に対する反応性を検証した。ヒト末梢血単核球の中で希少集団であるBDCA3陽性樹状細胞にヒトXCR1遺伝子が発現していることが知られているため、まず樹状細胞をヒト末梢血単核球より濃縮し、FACS解析に使用した。ヒト健常人の血液より、Ficoll-Paque(GE healthcare、#17-1440-02)にてヒト末梢血単核球を単離した。ヒト樹状細胞は、ヒト末梢血単核球よりCD3、CD14、CD19、CD56陽性細胞を抗ヒトCD3、CD14、CD19、CD56抗体マイクロビーズ(Miltenyi、#130-050-101、#130-050-201、#130-050-301、#130-050-401)にて標識し、auto-MACS(Miltenyi)を用いて除去することにより濃縮した。濃縮した樹状細胞を1%のラット血清、1%のマウス血清、100μg/mlのヒトイムノグロブリンを含むFACSバッファー(1%のFBSを含むPBS-(Sigma))を用いて、氷上で10分間ブロッキングした。細胞をPE標識した5G7、HK1L2、HK5L5、或いはアイソタイプコントロール抗体マウスIgG2b, κ(eBioscience、#14-4732-82)、又はヒトIgG2, κ(Sigma、#I5404)とFITC標識抗BDCA3抗体(Miltenyi、#130-090-513)、APC標識抗CD123抗体(Miltenyi、#130-090-901)、APC-Cy7標識抗HLA-DR抗体(BioLegend、#307617)、及びAlexa700標識抗CD3、CD14、CD19、CD56抗体(BioLegend、#300324、#301822、#302225、#318316)を用いて氷上、30分間染色した。FACSバッファーにて3回洗浄した後、FACSバッファーに懸濁し、FACS CantoII cell analyzerにて蛍光強度を測定した。
【0304】
ヒト型化抗体(HK1L2及びHK5L5)は親抗体5G7と同様に、ヒトXCR1を発現しているBDCA3陽性樹状細胞に選択的に反応した(図4)。
【0305】
(3)ヒトリンフォタクチンによって誘導されるヒトXCR1発現細胞の遊走に対するヒト型化抗ヒトXCR1抗体(HK1L2及びHK5L5)の中和活性
これらのヒト型化抗体の中和活性は親抗体5G7とキメラ化抗体とともにin vitroケモタキシスアッセイにて、前述のように評価した。
【0306】
どちらのヒト型化抗体も親抗体である5G7と比較して、中和活性を維持していた。代表的な濃度依存性の阻害の様子を図5に示す。3回の独立した実験からIC50値とIC90値を算出し、平均±標準誤差として、表16に示す。
【0307】
【表16】
【0308】
次いで、ヒトXCR1を導入した細胞の代わりに、ヒト樹状細胞を用いた経内皮遊走アッセイにより、ヒト型化抗体(HK1L2及びHK5L5)の中和活性をさらに検証した。経内皮遊走アッセイは24ウェル トランスウェル カルチャーサポート(pore 5μm、Costar、#3421)を用いて行った。まず、ECV304細胞を10%のFBS含有Medium 199 Earle’s 培地(Invitrogen)に懸濁し、トランスウェルの上層に1ウェルあたり2x105個播き込み、37℃、5%のCO2インキュベーター内で3日間培養した。アッセイ当日、ECV304細胞をアッセイバッファー(Medium 199 Earle’s培地とRPMI1640培地を1:1の割合で混合したものに、0.5%のBSAと20mMのHEPES(pH7.4)を添加したもの)で洗浄した。組換えヒトリンフォタクチンを1μg/mlの濃度でアッセイバッファーに溶解したものに、キメラ化抗体、HK1L2、HK5L5、或いはアイソタイプコントロール抗体ヒトIgG2, κ(Sigma)を10μg/mlの濃度で添加し、下層のウェルに1ウェルあたり600μlの割合で添加した。ヒト樹状細胞は前述のように濃縮し、アッセイバッファーに懸濁した後、キメラ化抗体、ヒト型化抗体(HK1L2及びHK5L5)及びアイソタイプコントロール抗体ヒトIgG2, κ(Sigma)を10μg/mlの濃度で添加し、ECV304細胞を含む上層に播種した。37℃、5%のCO2インキュベーター内で4時間インキュベートした後、トランスウェルを1,350rpm、5分間遠心し、遊走した細胞を回収した。回収した細胞は細胞系列マーカー、FITC標識抗BDCA3抗体(Miltenyi、#130-090-513)、PE標識抗BDCA1抗体(BioLegend、#331517)、APC標識抗CD123抗体(Miltenyi、#130-090-901)、APC標識抗HLA-DR抗体(BioLegend、#307617)を用いて、氷上で30分間染色した。各サンプルの170μlを用いてFACS CantoII cell analyzer (BD Bioscience)にて細胞数を計測した。
【0309】
どちらのヒト型化抗体もキメラ化抗体と同様にBDCA3陽性樹状細胞の遊走を阻害した(図6)。
【0310】
実験例3
ヒト型化抗XCR1抗体の薬理効果
上記実験例2において作製した抗ヒトXCR1マウスモノクローナル抗体(5G7)の薬理効果を、遅延型接触性皮膚炎(DTH)モデルマウスを用いて確認した。
【0311】
(1)DNFB(ジニトロフルオロベンゼン)感作マウスの耳の腫脹に対するヒト型化抗ヒトXCR1抗体の作用
(実験方法)
<1.供試マウス>
7週齢から12週齢のC57BL/6背景のヒトXCR1ノックインマウス(マウスXCR1の遺伝子がヒトXCR1遺伝子に置き換わっているマウス)を実験に供した。
【0312】
<2.感作のためのDNFBと惹起のためのDNFBの調製法>
感作および惹起のためのDNFBは、アセトンとオリーブオイルを4:1で混合したものに、DNFBを0.5%濃度になるように混合して調製した。また惹起時のコントロール用溶液としてアセトンとオリーブオイルを4:1で混合したものを用いた。
【0313】
<3.DNFBの投与方法>
感作のための0.5%のDNFBは、マウスの腹部の毛を皮膚が露出するまで刈り、そこに50μl塗布した。さらにその翌日に同じ部位に0.5%のDNFB を50μl塗布した。惹起のための0.5% DNFBは、その4日後にマウスの右耳の表側に25μl塗布した。同時にコントロールとして、マウスの左耳の表側にアセトンとオリーブオイルを4:1で混合したコントロール用溶液を25μl塗布した。
【0314】
<4.抗体の投与法>
抗ヒトXCR1マウスモノクローナル抗体(5G7)、およびそのコントロール抗体であるマウスIgG(ジャクソン研究所製)をPBSで2mg/mlとなるように調製した。1度目の感作を行った日をday0とし、day-1、day1、day4にマウスの腹腔内に、これらの各抗体を250μl/匹(500ug/匹)の割合で投与した。
【0315】
<5.DNFBマウスモデルの耳の腫脹の測定方法>
初日および次の日に0.5%のDNFBを、皮膚を露出させたマウスの腹部に50μl塗布することで感作を行い、その4日後に耳の厚さをノギスで測定した。測定した後に、マウスの右耳の表側に0.5%のDNFBを25μl塗布して惹起を行った。またマウスの左耳にはコントロールとしてアセトンとオリーブオイルを4:1で混合したコントロール用溶液を25μl塗布した。そして惹起を行ってから24時間後、48時間後に耳の厚さの測定を行った。腫脹は、計測値を以下の計算式で換算して求めた。
【0316】
[式]
DNFBによって変化した耳の厚さ(膨脹mm)= ([A]−[B])-([C]−[D])
[A]:惹起後の右耳の厚さ(mm)
[B]:惹起前の右耳の厚さ(mm)
[C]:コントロール塗布後の左耳の厚さ(mm)
[D]:コントロール塗布前の左耳の厚さ(mm)
【0317】
(実験結果と考察)
図8に示すように、抗ヒトXCR1マウスモノクローナル抗体(5G7)を投与したマウスでは、コントロール抗体を投与したマウスと比較して、DNFBによる惹起から24時間後の耳介の腫脹が顕著に抑制されていることが明らかとなり(図8(A))、その効果は、DNFBによる惹起から48時間後でも同様に顕著に抑制されていた(図8(B))。
【0318】
抗体の投与は腹腔内投与と、全身への投与を行ったにもかかわらず、DNFBによる惹起を行った耳介での腫脹が抑えられていることから、抗体は腹腔から血中へ移動し、血流と共に炎症部位又はリンパ節に到達し、耳介の膨脹を抑える効果を発揮しているものと推測される。
【0319】
このことから本発明に係る抗体は、部位特異的に炎症部位に対して特異的に効果を奏することも示唆される。
【0320】
実験例4
各種ヒトケモカインレセプターに対するマウス抗ヒトXCR1モノクローナル抗体(5G7)の反応性
各種ヒトケモカインレセプターに対するマウス抗ヒトXCR1モノクローナル抗体(5G7)の反応性をFACS解析にて評価した。C末端にEGFPを結合した各種ヒトケモカインレセプター(CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CCR11、CXCR1、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、CX3CR1、XCR1)の遺伝子を導入したB300.19細胞とB300.19親細胞をFACSバッファー(1%のFBS含むPBS-(Sigma))に懸濁した。細胞をブロッキングバッファー(100μg/mlのヒト免疫グロブリンを含むFACSバッファー)にて、氷上で20分間ブロッキングした。その後、細胞を10μg/mlの濃度の5G7、またはマウスアイソタイプコントロール抗体IgG2b(eBioscience、#14-4732-82)を含むブロッキングバッファーとともに氷上で30分間インキュベートした。FACSバッファーにて3回洗浄した後、ブロッキングバッファーにて50倍に希釈したPE標識抗マウスIgGポリクローナル抗体(Jackson、#715-116-151)とともに氷上で20分間インキュベートした。FACSバッファーにて3回洗浄した後、細胞をFACSバッファーに懸濁し、蛍光強度をFACS CantoII cell analyzerにて測定した。
【0321】
抗ヒトXCR1抗体5G7はヒトXCR1-EGFPを導入したB300.19細胞に強く反応性を示した。またヒトCX3CR1-EGFPを導入したB300.19細胞に非常に弱い反応性を示したものの、他のヒトケモカインレセプターを発現したB300.19細胞には反応性を示さなかった(図9)。一方、マウスアイソタイプコントロール抗体はすべてのヒトケモカインレセプターを発現したB300.19細胞に反応性を示さなかった(データは示していない)。
【0322】
実験例5
サポリン結合Fab抗マウスIgG二次抗体を用いたヒトXCR1発現細胞への抗ヒトXCR1抗体の細胞傷害性
XCR1発現細胞への抗ヒトXCR1抗体の細胞傷害活性を実証するために、サポリン結合Fab抗マウスIgG2次抗体を用いて、内在的にヒトXCR1を発現する細胞において、マウス抗ヒトXCR1モノクローナル抗体の細胞傷害試験を行った。
【0323】
10%のFBS(Cell culture bioscience:#171012)、100μg/mlのカナマイシン硫酸塩(Invitrogen:#15160-054)及び50μMの2−メルカプトエタノール(2-ME:Invitrogen社;#21985-023)を含む80μLのRPMI(Invitrogen:#11875-093)に、2x103個のB300.19親細胞又はヒトXCR1-EGFPを発現するB300.19細胞を96ウェルプレートのそれぞれのウェルに添加した。マウス抗ヒトXCR1抗体(2H6、5G7、又は11H2)、及びマウスアイソタイプコントロール抗体である,IgG2a,κ(eBioscience社:#16-4724-85)若しくはIgG2b,κ(eBioscience社:16-4732-85)を、10%のFBS、100μg/mlのカナマイシン硫酸塩、及び50μMの2−メルカプトエタノールを含むRPMIで希釈し、10μlのこららの希釈した抗体を、0μg/ml〜0.17μg/mlの種々の濃度で細胞に添加した後、細胞を5%のCO2及び37℃の環境下で20分間インキュベートした。
【0324】
次いでサポリン結合Fab抗マウスIgG抗体(Advanced Targeting Systems:#IT-48)を10%のFBS、100μg/mlのカナマイシン硫酸塩、及び50μMの2−メルカプトエタノールを含むRPMIで希釈し、この希釈した抗体の10μlを、終濃度が1μg/mlとなるようにそれぞれのウェルに添加した。次いで、細胞を5%のCO2及び37℃の環境下で72時間インキュベートした。
【0325】
そして、それぞれのセルの細胞数を、Cell Count Reagent SF試薬(Nacalai tesque;07553-15又は07553-44)を用いて測定した。試薬を各ウェルに添加し、5%のCO2及び37℃の環境下で2時間又は3時間インキュベートした。そして、OD450をプレートリーダー(Arvo:PerkinElmer)を用いて測定した。
【0326】
サポリン結合2次抗体を有するマウス抗ヒトXCR1抗体(2H6、5G7、及び11H2)はヒトXCR1-EGFPを発現するB300.19細胞の増殖を抑制する事が示された(図11)。2H6、5G7、及び11H2のIC50値は、Graphpad Prism softwareによって計算し、それぞれ0.141nM、0.017nM、及び0.155nMであった。
【0327】
一方で、サポリン結合2次抗体を有するこれらの抗体は,B300.19親細胞の増殖抑制は示されなかった。また、サポリン結合2次抗体を有するコントロール抗体は、サポリン結合2次抗体を有するこれらの抗体は、ヒトXCR1-EGFPを発現するB300.19細胞の増殖抑制は示さなかった(図11)。
【0328】
これらの結果から、マウス抗ヒトXCR1抗体である、2H6、5G7、及び11H2は、サポリン結合2次抗体と共に取り込まれ、イムノトキシンとして働くことが示唆された。
【0329】
実験例6
インビボにおける5G7モノクローナル抗体の細胞傷害性T細胞アッセイに対する効果
CTL機能に対し5G7モノクローナル抗体がどの様な阻害活性を有するか検討するために、CTLアッセイを行った。
【0330】
マウスXCR1に代えてヒトXCR1を発現するヒトXCR1ノックインマウスを創出し、0日目にCFAでエマルション化したオバルブミンを皮下に200μg/headの量で免疫付与した。5G7モノクローナル抗体又はコントロールとして用いるマウスIgG抗体(Jackson Laboratory)をそれぞれ−1日目、2日目、及び5日目に、500ug/headの量で腹腔内に投与した。
【0331】
6日後に、未感作のC57BL/6マウスから得た脾臓細胞を10μg/mlのOVA257-264ペプチド(SIINFEKL;MBL)と共に又は単独で30分間37℃でインキュベートした。これらのペプチド刺激された及びされていないターゲット細胞の集団を、それぞれ2.5及び0.25μMのCFSE(Invitrogen Life Technologies)でラベルし、その後1:1の比率で混合して、免疫付与したマウスの静脈内に投与した。
【0332】
CFSEラベルされた脾臓細胞の投与から一日後、ターゲット細胞への殺傷活性を、脾臓中のCFSE陽性細胞集団の比率を用いて以下のように評価した。
【0333】
免疫付与したマウスの脾臓中のCFSE陽性細胞をフローサイトメトリーにて検出し、それぞれのマウスにおけるCTL活性を以下に示すようなCFSEhigh細胞とCFSElow細胞の比を用いて算出した。
CTL活性=(CFSEhighの%/CFSElowの%)
【0334】
次いで、相対的なCTL活性を以下の方法で算出した
相対CTL活性=(それぞれの免疫付与したマウスのCTL活性)/コントロールマウスのCTL活性)
【0335】
図12に示すように、コントロールIgG抗体で処理したマウスと比較して、5G7モノクローナル抗体で処理したマウスは相対CTL活性が低くなることが明らかとなった。この結果から、抗XCR1抗体を用いた処理によって、インビボにおけるCTL活性が抑制されることが示され、抗XCR1抗体は自己免疫疾患における移植片対宿主病(GVHD)、組織損傷等の移植片拒絶といった免疫疾患に有効であることを示唆している。
【0336】
実験例7
マウス抗ヒトXCR1抗体(2H6、5G7、及び11H2)のヒト/マウスキメラXCR1発現細胞に対する反応性
マウス抗ヒトXCR1抗体(2H6、5G7、及び11H2)によって認識されるヒトXCR1のエピトープを決定するために、ヒト/マウスキメラXCR1発現細胞に対する反応性を検討した。
【0337】
マウス抗ヒトXCR1抗体(2H6、5G7、及び11H2)は、ヒトXCR1には反応するがマウスXCR1には反応しないため、ヒト/マウスキメラレセプターのパネルを作製した。このパネルにおいて、それぞれのヒトXCR1の細胞外ドメインをマウスXCR1のホモログ領域で置換し、その逆も行った。
【0338】
オーバーラップPCR法を用いてこのパネルの発現ベクターを構築した。それぞれのEGFP−キメラレセプターをTK-1細胞にて発現させ、モノクローナル抗体との反応性を、FACS解析によって決定した。
【0339】
TK-1親細胞、ヒトXCR1-EGFP、マウスXCR1-EGFP、又はキメラXCR1-EGFP発現TK-1細胞を、FACSバッファー(1%のBSA(シグマ社)を含むPBS-)に懸濁した。次いで細胞を100μg/mLのヒトイムノグロブリンを含むFACSバッファーを用いて10分間氷冷してブロッキングした。
【0340】
次いで、0μg/mL〜10μg/mLの様々な濃度のマウス抗ヒトXCR1抗体(2H6、5G7、及び11H2)、マウスアイソタイプコントロール抗体として、10μg/mLの濃度のIgG2a(eBioscience社#14-4724-82)或いはIgG2b(eBioscience,#14-4732-82)、又は抗体を含まないFACSバッファーで細胞を氷上で20分間インキュベートした。
【0341】
細胞をFACSバッファーにて3回洗浄し、それから、PEでラベルされた抗マウスIgGポリクローナル抗体(Jackson,#715-116-151,FACSバッファーにて1:50に希釈)又はPEラベルされた抗ヒトXCR1ポリクローナル抗体(R&D,#FAB857P,FACSバッファーにて 2:5に希釈し、抗体を含まないFACSバッファーにてインキュベートされた細胞に対して使用)で、氷上で20分間インキュベートした。細胞を3回洗浄し、それからFACSバッファーに懸濁した。蛍光強度はFACSCanto II cell analyzerを用いて測定した。
【0342】
図13に示すように、マウス抗ヒトXCR1抗体(2H6、5G7、及び11H2)は、ヒトXCR1-EGFP発現TK-1細胞に対して反応性を示したが、TK-1親細胞にもマウスXCR1-EGFP発現TK-1細胞にも反応性を示さなかった。4つの細胞外ドメインの起源は4文字コード(例えば、HHHHはヒトXCR1の野生型、HmmmはN末端にヒトXCR1の細胞外N末端ドメインを有し、1番目、2番目、及び3番目のマウスXCR1の細胞外ループドメインを有する。)によって示される。
【0343】
これらの3つの抗体は、キメラXCR1の中でもヒトXCR1の細胞外N末端ドメインを有するEGFP発現TK-1細胞に対して反応性を示した。キメラレセプターであるmmHmも、他の実験で検討したが、反応性は確認されなかった(データ示さず)。
【0344】
これに対して、マウスアイソタイプコントロール抗体は、何れのTK-1細胞にも反応性を示さなかった。
【0345】
実験例8
ペプチドイライザを用いた、ヒトXCR1の細胞外ドメインにおけるマウス抗ヒトXCR1抗体(2H6、5G7、及び11H2)の結合サイトのマッピング
マウス抗ヒトXCR1抗体(2H6、5G7、及び11H2)のヒトXCR1細胞外ドメインにおける結合残基を決定するために、ヒトXCR1の細胞外ドメインをカバーする12アミノ酸長のペプチドセットを用いたペプチドスキャンアッセイを行った。
【0346】
N末端側にビオチンとGSGSスペーサーを有する2セットのペプチドをシグマ社に委託して合成した。第1のセットは12個のアミノ酸からなる13個のペプチドで、それぞれのペプチド間で2アミノ酸ずつのオフセットを有し、ヒトXCR1の細胞外N末端ドメインをカバーするものである。
【0347】
第2のセットは、12個のアミノ酸からなる13個のペプチドで、それぞれのペプチド間で3アミノ酸ずつのオフセットを有し、ヒトXCR1の細胞外ループドメインをカバーするものである。
【0348】
ペプチドは初めに100%のDMSO中に溶解し、次いで30%に希釈して50μg/mLの終濃度で直接ELISAに用いた。ストレプトアビジンでコートされたマイクロタイタープレート(Perkin Elmer)にウェル当たり50μLの量のペプチド(50μg/mL)を加え、室温で1時間インキュベーションして更にコーティングした。
【0349】
ペプチド溶液を除去した後、4%のブロックエースを含むPBS-を各ウェルに添加し、4℃で一晩インキュベートした。ウェルをELISAバッファー(0.02%のTween20を含むPBS-)を用いて3回洗浄し、10μg/mLマウス抗ヒトXCR1抗体(2H6、5G7、及び11H2)を添加して、室温で6時間インキュベートし、その後ELISAバッファーで3回洗浄した。
【0350】
次いで、ELISAバッファーで5000倍に希釈したロバ由来西洋わさびペルオキシダーゼ結合抗マウスIgG抗体をウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。その後ELISAバッファーで3回洗浄し、TMBZ(3,3’,5,5’ tetramethyl benzidine;Sigma社)をウェルに加え、室温でインキュベートした後に、2規程の硫酸を用いて反応を停止させ、Arvo plate reader(PerkinElmer社)を用いてA450を測定した。
【0351】
図14に示すように、マウス抗ヒトXCR1抗体の2H6と5G7は配列番号96に示す7PESTTFFYYDLQ18を含むペプチドに強く結合し、配列番号110に示す11TFFYYDLQSQPC22を含むペプチドに弱いながらも結合することが明らかとなった。また、5G7は、3つの連続しない配列番号101に示す19SQPCENQAWVFA30を含むペプチド、配列番号110に示す172SSGCDYSELTWY183を含むペプチド、及び配列番号111に示す175CDYSELTWYLTS186を含むペプチドに弱い結合を示すことが明らかとなった。一方で、11H2はこれらのペプチドに対して結合は示さなかった(データ示さず。)。
【0352】
実施例9
ヒトXCR1の細胞外ドメインにおけるアラニン変異体を用いた、マウス抗ヒトXCR1抗体(2H6、5G7、及び11H2)及びヒト型抗ヒトXCR1抗体(HK1L2及びHK5L5)の結合残基のマッピング
マウス抗ヒトXCR1抗体(2H6、5G7、及び11H2)及びヒト型抗ヒトXCR1抗体(HK1L2及びHK5L5)によって認識されるヒトXCR1の重要残基を決定するために、アラニン置換体アッセイを行った。
【0353】
ヒトXCR1のアラニン置換変異体のパネルを作製した。このパネルでは、ヒトXCR1の細胞外領域にある7PESTTFFYYDLQSQPCENQAWVFA30(配列番号118)及び175CDYSELTWYLTS186(配列番号119)のそれぞれのアミノ酸をアラニンに置換している。アラニン置換変異体の発現ベクターを、部位特異的変異誘発法を用いて構築した。
【0354】
それぞれの変異体は、B300.19細胞を用いて発現させ、抗体との反応をFACS analysisにて決定した。B300.19親細胞とヒトXCR1-EGFP発現B300.19細胞若しくはアラニン変異ヒトXCR1-EGFP発現B300.19細胞とを、1:1の比率で混合し、FACSバッファー(1%のFBSを含むPBS-(Sigma社))に懸濁した。
【0355】
次いで、10%のラット血清を含むFACSバッファーを用い、氷上で10分間ブロッキングを行った。その後、マウス抗ヒトXCR1抗体(2H6、5G7、及び11H2)及びヒト型抗ヒトXCR1抗体(HK1L2及びHK5L5)、マウスアイソタイプコントロール抗体として、10μg/mLの濃度のIgG2a(eBioscience、#14-4724-82)若しくはIgG2b(eBioscience、#14-4732-82)、又はヒトアイソタイプコントロール抗体として10μg/mLの濃度のIgG2(Sigma社,#I5404);又は抗体を含まないFACSバッファーで細胞を氷上で20分間インキュベートした。
【0356】
細胞を、FACSバッファーで3回洗浄し、それから氷上でPE標識抗マウスIgGポリクローナル抗体(Jackson,#715-116-151;マウス抗体を用いてインキュベートした細胞に、FACSバッファーで50倍に希釈して使用、PE標識抗ヒトIgGポリクローナル抗体(Jackson、#709-116-149;ヒト型抗体又はヒトコントロール抗体を用いてインキュベートした細胞に対して、FACSバッファーで50倍に希釈して使用)、又はPE標識抗ヒトXCR1ポリクローナル抗体(R&D社、#FAB857P、抗体を含まないFACSバッファーでインキュベートした細胞に対して、FACSバッファーで2:5に希釈して使用)を用いて細胞を氷上で20分間インキュベートした。その後細胞をFACSバッファーで3回洗浄し、FACSバッファーに懸濁した。蛍光強度はFACSCanto II cell analyzer(BD Bioscience社)を用いて測定した。
【0357】
図15に示すように、C175A変異体を除いて、それぞれの変異体はPE標識抗ヒトXCR1ポリクローナル抗体によって検出された。それぞれのアラニン変異体の細胞表面におけるXCR1発現量がまちまちであるため、それぞれのアラニン変異体の抗体への反応性は以下に示す手順にて算出した相対PE平均値(mAb/pAb)にて評価した。
【0358】
先ず、それぞれの抗体を用いてヒトXCR1-EGFPを発現するB300.19細胞(野生型)を染色した際に得られるPE平均値を1.0と設定し、それぞれの抗体の相対的なPE平均値を算出する。そして、マウス抗ヒトXCR1抗体(2H、5G7、又は11H2)又はヒト型抗体(HK1L2又はHK5L5)のそれぞれの相対PE平均値を、PE標識抗ヒトXCR1ポリクローナル抗体の相対PE平均値で除算して得られる商を相対PE平均値(mAb/pAb)として算出した。
【0359】
2H6の結果を図16に、5G7の結果を図17に、HK1L2の結果を図19に、そしてHK5L5の結果を図20に示す。細胞外N末端ドメイン又は細胞外の2番目のループドメインにおける残基にアラニン置換を施した多数の変異体の反応性が低くなっており、Y14A変異体、D16A変異体、及びL17A変異体は、反応性が無いか弱い反応性しか示さないことが確認された。更に、これらの変異体の中でも、E8A変異体、F13A変異体、C22A変異体、及びY177A変異体では、より低い反応性しか示さないことが確認された。
【0360】
これらが示す結果から、2H6、5G7、HK1L2、及びHK5L5はヒトXCR1の細胞外ドメインのE8、F13、Y14、D16、L17、C22、及びY177認識していることが示された。
【0361】
また図18に示す結果から、11H2はF13A及びD16A以外は他のモノクローナル抗体と同様の反応性を示すことが明らかであり、11H2はE8、Y14、L17、C22、及びY177を認識していることが示された。
【0362】
実験例10
類似のエピトープを認識するマウス抗ヒトXCR1抗体(2H6,5G7,及び11H2)間のヒトXCR1発現細胞に対する競合実験
類似のエピトープを認識する抗ヒトXCR1抗体がヒトXCR1に対して互いに競合して結合するかどうかを決定するために、競合アッセイを行った。
【0363】
B300.19親細胞及びヒトXCR1-EGFPを発現するB300.19細胞を1:1の比率で混合し、FACSバッファー(1%のFBSを含むPBS-(Sigma社))に懸濁した。次いで、10%のラット血清を含むFACSバッファーを用い、細胞を氷上で10分間ブロッキングした。そして、細胞を0μg/mL〜10μg/mLの様々な濃度のマウス抗ヒトXCR1抗体(2H6、5G7、又は11H2),又はマウスアイソタイプコントロールとして用いるIgG2a(eBioscience、#16-4724-85)若しくはIgG2b(eBioscience、#16-4732-85)を含むFACSバッファーを用い、20分間氷上でインキュベートした。
【0364】
その後、0.3μg/mLの濃度のビオチン化したマウス抗ヒトXCR1抗体(5G7)を含むFACSバッファーを用い、氷上で20分間インキュベートした。細胞をFACSバッファーで3回洗浄し、FACSバッファーで50倍に希釈したPE標識ストレプトアビジン(BD Pharmingen、#554061)を用い、氷上で20分間インキュベートした。その後細胞を3回FACSバッファーで洗浄し、FACSバッファーに懸濁した。蛍光強度の測定は、FACSCanto II cell analyzer(BD Bioscience)を用いて行った。
【0365】
図21に示す結果から、ビオチン化マウス抗ヒトXCR1抗体のヒトXCR1-EGFPを発現するB300.19 細胞に対する結合は、未標識の5G7そのものや、5G7とヒトXCR1において同様のエピトープを認識する2H6並びに11H2で競合を受けることが明らかとなった。一方で、コントロール抗体は、ビオチン化マウス抗ヒトXCR1抗体(5G7)のヒトXCR1-EGFPを発現するB300.19 細胞に対する結合に競合しなかった。
【0366】
実験例11
マウス抗ヒトXCR1モノクローナル抗体(5G7)及びヒト型抗ヒトXCR1モノクローナル抗体(HK1L2及びHK5L5)の種々のヒトケモカインレセプターに対する反応性
マウス抗ヒトXCR1モノクローナル抗体(5G7)及びヒト型抗ヒトXCR1モノクローナル抗体(HK1L2及びHK5L5)の種々のヒトケモカインレセプターに対する反応性をFACS analysisを用いて検討した。
【0367】
B300.19親細胞、ヒトケモカインレセプター-EGFPを発現するB300.19細胞(XCR1、CXCR1、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、CCR1、CCR2B、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CCR11、又はCX3CR1)を100μlのFACSバッファー(1%のFBSを含むPBS-(Sigma社))に1x106細胞数/mLの濃度となるように懸濁し、丸底の96穴プレートに入れた。
【0368】
細胞を遠心分離して上清を捨てた後に、マウス抗ヒトXCR1モノクローナル抗体(5G7)、マウスアイソタイプコントロールとして用いるIgG2b(eBioscience、#14-4732-82)、ヒト型抗ヒトXCR1モノクローナル抗体(HK1L2及びHK5L5)、及びコントロールとしてヒトIgG(Mitsubishi,#128-26053-9)をFACSバッファーで5μg/mLの濃度に希釈して調製した。PE標識ヤギ抗ヒトXCR1ポリクローナル抗体(R&D、#FAB857P、及びLifeSpan BioScience、#LS-C76885)を、それぞれFACSバッファーを用いて2:5及び1:5に希釈して調製した。
【0369】
調製した抗体を50μLずつ各ウェルに加え、氷上で20分間、細胞を冷却した。その後細胞をFACSバッファーで3回洗浄し、FACSバッファーで50倍に希釈したPE標識抗マウスIgGポリクローナル抗体(Jackson、#715-116-151)を5G7又はマウスアイソタイプコントロール抗体でインキュベートした細胞に加えた。また、FACSバッファーで50倍に希釈したPE標識抗ヒトIgGポリクローナル抗体(Jackson、#709-116-149)をHK1L2、HK5L5、又はヒトコントロールIgGでインキュベートした細胞に加えた。そして、抗ヒトXCR1ポリクローナル抗体でインキュベートした細胞には、FACSバッファーを加えた。
【0370】
これらの細胞を氷上で20分間インキュベートし、その後FACSバッファーを用いて3回洗浄を行い、FACSバッファーに懸濁した。蛍光強度はFACSCanto II cell analyzerを用いて測定し、PE平均値の変化量で表した。PE平均値の変化量は、それぞれの抗体を用いて染色したそれぞれの細胞によって得られるPE平均値からバックグラウンドのPE平均値を減算した差である。
【0371】
図22に示す結果から、マウス抗ヒトXCR1抗体である5G7はヒトCX3CR1-EGFPを発現するB300.19細胞を除いて、選択的にヒトXCR1-EGFPを発現するB300.19細胞に対して反応性を有することが確認された。一方で、ヤギ抗ヒトXCR1ポリクローナル抗体は、ヒトケモカインレセプター−EGFPを発現する様々なB300.19細胞に反応性を有することが明らかとなった。
【0372】
また、図23に示す結果から、ヒト型抗ヒトXCR1抗体であるHK1L2及びHK5L5は、
ヒトXCR1−EGFPを発現する細胞に対して高い反応性を示すにもかかわらず、ヒトCX3CR1-EGFPを発現する細胞への反応性が減少していた。
【0373】
実験例12
Mycobacterium butyricumによって惹起されたDTH反応に対する5G7モノクローナル抗体の効果
遅延型過敏反応が自己抗原に対して生じた際に、甲状腺炎、関節リウマチ、I型糖尿病等の自己免疫疾患の発症機序の一つとして考えられている(Actor, J.K. and Ampel, N.M. (December 2009) Hypersensitivity: T Lymphocyte-mediated (Type IV). In: Encyclopedia of Life Sciences (ELS). John Wiley & Sons, Ltd: Chichester)
T細胞と樹状細胞の相互作用は、DTH反応においては重要であり、この相互作用を阻害することが、これらの疾患を治療するのには有用であると考えられている。そこで、ヒトXCR1ノックインマウスを用い、DTH反応モデルであるMycobacterium (M.) butyricumによって惹起されるDTH反応(Mihara, M. et al, Immunology Letters 2002, 84: 223-229; Mohan K et al, Eur. J. Immunol. 2005, 35: 1702-1711)における効果を、抗ヒトXCR1である5G7モノクローナル抗体にて検討した。
【0374】
(方法)
マウスXCR1に代えてヒトXCR1を発現するヒトXCR1ノックインマウスを創出し、0日目に熱殺傷した100μg/headのM.butyricumをミネラルオイルと共に皮下に投与して免疫付与した。5G7モノクローナル抗体又はコントロールとして用いるマウスIgG(Jackson Laboratory)を500μg/headの量で、それぞれM.butyricumによる免疫付与の後の1日目、3日目、7日目に腹腔内投与した。
【0375】
そしてM.butyricumによる免疫付与の後10日目にミネラルオイルに懸濁したM.butyricumを用いて、20μg/footの量で右足蹠にチャレンジした(M.butyricumチャレンジ)。また、左足蹠はミネラルオイルのみでチャレンジした(コントロールチャレンジ)。
【0376】
チャレンジから1日後に、それぞれの足蹠の厚さを測定し、DTH反応を評価した。足蹠の膨張は、以下に示す式に基づいて算出した。
足蹠の膨張=([A]-[B])-([C]-[D])
[A]=M.butyricumチャレンジ前の右足蹠の厚さ
[B]=M.butyricumチャレンジ後の右足蹠の厚さ
[C]=コントロールチャレンジ前の足蹠の厚さ
[D]=コントロールチャレンジ後の足蹠の厚さ
【0377】
(結果)
図24に示すように、5G7モノクローナル抗体で処理したマウスにおける、M.butyricumによって惹起されるDTH反応は、コントロールIgGで処理したマウスと比較して顕著にDTH反応が減少していることが明らかとなった。
【0378】
(考察)
実験結果はDTH反応におけるXCR1抗体による治療効果を示すものである。よって、甲状腺炎、関節リウマチ、I型糖尿病といったDTHによって発症する自己免疫疾患の治療に、抗XCR1抗体が有用であることが示唆された。
【0379】
実験例13
EAE関連ペプチドであるMOG37-50に対する5G7モノクローナル抗体の効果
多発性硬化症(MS)はヒトの中枢神経(CNS)における増悪寛解を繰り返すことや、又は脱髄の進行等の所見によって特徴づけられる慢性的な脱髄症状を示す疾患である。
【0380】
MSの動物モデルとして最も集中的に研究がなされて実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)は、古典的に運動機能の欠損に基づくものである。T細胞は、MS及びEAEにおける発症機序において重要な役割を担っているとの報告も多い。
【0381】
そこでMSの発症機序に関する5G7モノクローナル抗体の阻害活性を検討するために、EAEモデル実験を行った。
【0382】
(実験手段)
1.サンプルマウス
C57BL/6をバックグラウンドに持ち、マウスXCR1に得てヒトXCR1を発現する、ヒトXCR1ノックインマウス(7〜12週齢)を実験に用いた。
【0383】
2.EAEの誘導
EAEの進行にCD8陽性T細胞が関連していることが示されたThe journal Eur. J. Immunol. 2005,35:76-85に記載される方法に基づいて、EAEの誘導を行った。具体的には、ヒトXCR1ノックインマウスの皮下に、20mgのMycobacterium tuberculosis H37Raを含む完全フロイントアジュバント(CFA)でエマルション化された、200μgミエリンオリゴデンドロサイトグリコプロテイン(myelin oligodendrocyte glycoprotein)の37-50に相当するペプチド(MOG 37-50)を投与・免疫付与した。免疫付与後すぐ及び投与から2日後に200ngの百日咳毒素を静脈内投与した。
【0384】
3.抗体の投与方法
抗ヒトXCR1マウスモノクローナル抗体(5G7)及びそのコントロール抗体としてマウスIgG抗体(Jackson Laboratory)を、終濃度が2mg/mLとなるようにPBSを用いて調製し、それぞれの抗体を免疫付与から7日目、10日目、14日目、及び17日目に250μl/mouse(500μg/mouse)の量で静脈投与した。
【0385】
4.本モデルにおける病理スコア
免疫付与日以降の臨床的症状を観察し、以下の基準に基づいて0〜5のスケールでスコアを付けた。
【0386】
グレード0:病変なし、グレード0.5:軽度の尾の麻痺、グレード1:尾の麻痺、グレード2:歩行障害、グレード2.5:一つの後肢の麻痺。グレード3:後肢の麻痺、グレード4:両肢の麻痺、グレード5:瀕死又は死亡
【0387】
(実験結果及び考察)
図25に示す結果から明らかのように、5G7モノクローナル抗体を投与したマウスの病理スコアは、コントロールIgGを投与したマウスよりも低いレベルとなった。
【0388】
このデータより、抗XCR1抗体を用いた処置により、EAEの進行はある程度抑えることができ、抗XCR1抗体を用いた治療がヒトのMSに対して、有用であることが示唆された。
【0389】
実験例14
マウス抗ヒトXCR1抗体(2H6、5G7、及び11H2)を用いた、ヒトXCR1発現細胞に対するヒトXCL1の結合阻害
マウス抗ヒトXCR1抗体(2H6、5G7、及び11H2)がヒトXCL1とヒトXCR1の結合を阻害するかどうか確認するために、競合的リガンド結合アッセイを行った。
【0390】
先ず、ヒトXCL1-SSS-His(10)のXCR1-EGFPを発現するBaF3細胞への結合を、以下に示す方法にて決定した。BaF3親細胞及びXCR1-EGFPを発現するBaF3細胞を1:1の割合で混合し、FACSバッファー(1%のFBSを含有するPBS-(Sigma))に懸濁した。
【0391】
2.5μMの可溶性ヒトXCL1(R&D、#695-LT-025/CF)の存在下又は非存在下で、混合した細胞を氷上で30分間インキュベートながらヒトXCL1-SSS-His(10)の濃度が高くなるように添加した。
【0392】
次いで、細胞をFACSバッファーにて3回洗浄し、それからFACSバッファーで100倍に希釈した抗6x-His抗体(BETHYL、#A190-114A)を用いて氷上で20分間インキュベートした。その後、再度細胞を3回FACSバッファーにて洗浄し、FACSバッファーで50倍に希釈したPE標識化抗ウサギIgG抗体(Jackson、#711-166-152)を用いて氷上で20分間インキュベートした。
【0393】
その後、再度細胞を3回FACSバッファーにて洗浄し、FACSバッファーに懸濁した。蛍光強度はFACSCanto II cell analyzerを用いて測定した。特異的な結合は、2.5μMの可溶性ヒトXCL1の非存在下での総結合数から、可溶性ヒトXCL1の存在下での総結合数を減算した差によって決定した。
【0394】
競合的な結合試験は、以下に示す方法にて行った。BaF3親細胞及びXCR1-EGFPを発現するBaF3細胞を1:1の割合で混合し、FACSバッファー(1%のFBSを含有するPBS-(Sigma))に懸濁した。次いで細胞を、10%のラット血清を含むFACSバッファーにて氷上で20分間ブロッキングした。
【0395】
それから、細胞を0μg/mLから150μg/mLの様々な濃度のマウス抗ヒトXCR1抗体(2H6、5G7、又は11H2)又はマウスアイソタイプコントロール抗体としてIgG2a(eBioscience、#16-4724-85)若しくはIgG2b(eBioscience、#16-4732-85)を用いて氷上で20分間インキュベートした。次いで細胞を、0.12μg/mLの飽和濃度のヒトXCL1-SSS-His(10)を用い、氷上で30分間インキュベートした。
【0396】
細胞を3回FACSバッファーにて洗浄し、それからFACSバッファーで100倍に希釈した抗6x-Hisタグ抗体(BETHYL、#A190-114A)と用いて、氷上で20分間インキュベートした。その後、再度細胞を3回FACSバッファーにて洗浄し、FACSバッファーで50倍に希釈したPE標識抗ウサギIgG抗体を用いて氷上で20分間インキュベートした。
【0397】
そして再度細胞を3回洗浄し、FACSバッファーに懸濁した。蛍光強度はFACSCanto II cell analyzerを用いて測定した。
【0398】
ヒトXCL1のヒトXCR1-EGFPを発現するBaF3細胞への結合は、マウス抗ヒトXCR1抗体(2H6、5G7、及び11H2)によって阻害され、そのIC50値はそれぞれ37.0,6.9,及び23.8nMであった。一方で、コントロール抗体は、ヒトXCL1のヒトXCR1-EGFPを発現するBaF3細胞への結合を阻害しなかった。
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【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]