特許第5989098号(P5989098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989098
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】アセチル−補酵素A誘導化合物の産生
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/62 20060101AFI20160825BHJP
   C12P 23/00 20060101ALI20160825BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20160825BHJP
   C12N 1/00 20060101ALN20160825BHJP
   C12N 1/14 20060101ALN20160825BHJP
   C12N 1/16 20060101ALN20160825BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20160825BHJP
   C12N 1/19 20060101ALN20160825BHJP
【FI】
   C12P7/62
   C12P23/00
   !C12N15/00 A
   !C12N1/00 G
   !C12N1/14 C
   !C12N1/16 F
   !C12N1/20 A
   !C12N1/19
【請求項の数】48
【全頁数】52
(21)【出願番号】特願2014-510442(P2014-510442)
(86)(22)【出願日】2012年5月9日
(65)【公表番号】特表2014-513542(P2014-513542A)
(43)【公表日】2014年6月5日
(86)【国際出願番号】US2012037127
(87)【国際公開番号】WO2012154854
(87)【国際公開日】20121115
【審査請求日】2015年2月19日
(31)【優先権主張番号】61/483,896
(32)【優先日】2011年5月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511289736
【氏名又は名称】アミリス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】メドウズ,アダム
【審査官】 森井 文緒
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0047885(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 7/62
C12P 23/00
C12N 1/00
C12N 1/14
C12N 1/16
C12N 1/19
C12N 1/20
PubMed
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
宿主細胞中で異種アセチル−CoA誘導(HACD)化合物を産生する方法であって、
(a)HACD化合物を産生することが可能な遺伝的に修飾された宿主細胞の集団を、炭素源及び、0.2mg/Lよりも低い、制限量のパントテネートを含む培養基中で培養することであって、ここで、前記制限量のパントテネートが、非制限量のパントテネートの場合と比較して前記宿主細胞による前記HACD化合物の産生を制限することと、その後に、
(b)前記集団又はそのサブ集団を、炭素源及び非制限量のパントテネートを含む培養基中で培養することであって、ここで、前記非制限量のパントテネートが、前記制限量のパントテネートを超える量であり、前記集団又はそのサブ集団が、前記非制限量のパントテネートの存在下でより大量の前記HACD化合物を産生することと、を含む方法。
【請求項2】
前記制限量のパントテネートがパントテネート滴定を実施することによって決定され、ここで、前記宿主細胞が増大する濃度のパントテネートを含む増殖培地中で培養され、HACD化合物産生が各濃度のパントテネートで決定され、ここで、パントテネート滴定が、前記HACD化合物産生がその最大にある場合の飽和量のパントテネートを含み、前記制限量のパントテネートが、HACD化合物産生がその最大未満である場合の任意の濃度のパントテネートである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(a)中の前記HACD化合物の産生が、前記遺伝的に修飾された宿主細胞の前記最大HACD化合物産生の50、40、30、20又は10%未満である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(b)中の前記HACD化合物の産生が、前記遺伝的に修飾された宿主細胞の前記最大HACD化合物産生の50、60、70、80又は90%を超える、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(a)の前記培養が、少なくとも12、24、36、48、60、72、84、96時間又は96時間を超える期間にわたる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(a)の前記培養が、前記集団が0.01と400との間の細胞密度(OD600)に到達するために十分な期間にわたる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(b)の前記培養が、3〜20日間の期間にわたる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記制限量のパントテネートが、0mg/Lである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記非制限量のパントテネートが、0.2mg/Lよりも高い、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記非制限量のパントテネートが、少なくとも、HACD化合物産生がその最大である場合の最小のパントテネート濃度である、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記非制限量のパントテネートが、少なくとも1mg/Lである、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記非制限量のパントテネートが、10mg/Lである、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(b)が、培養基が非制限量のパントテネートを含むまで、パントテネートを前記制限量のパントテネートを含む培養基に加えることを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(b)が、ステップ(a)の前記集団を非制限量のパントテネートを含む新しい培養基に移すことを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、制限量のパントテネート中で前記細胞を培養することを含まない方法から得られる産生と比較して、前記遺伝的に修飾された宿主細胞の集団による前記HACD化合物の増加した産生をもたらす、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記HACD化合物の産生が、収率(炭素基質1グラム当たりの産生されたHACDのグラム数)又は生産性(1時間毎の培養基1リットル当たりの産生されたHACD化合物のグラム数)に関して測定される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記HACD化合物を回収することを更に含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記パントテネートが、2−デヒドロパントエート、(R)−パントエート、(R)−パントテネート、及びこれらの任意の塩又はエステルからなる群から選択される、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記宿主細胞が、真菌細胞、細菌細胞、植物細胞、及び動物細胞からなる群から選択される、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記宿主細胞が、酵母細胞である、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記HACD化合物が、アミノ酸、脂肪酸、イソプレノイド、及びポリケチドからなる群から選択される、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記宿主細胞が、イソプレノイドを産生することが可能であり、イソプレノイド経路酵素をコードする少なくとも1つの異種核酸を含み、前記イソプレノイド経路酵素が、
)アセチル−補酵素Aの2つの分子を縮合してアセトアセチル−CoAを形成する酵素と、
)アセトアセチル−CoAとアセチル−CoAの別の分子を縮合して、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoA(HMG−CoA)を形成する酵素と、
)HMG−CoAをメバロネートに転換する酵素と、
)メバロネートをメバロネート5−リン酸に転換する酵素と、
)メバロネート5−リン酸をメバロネート5−ピロリン酸に転換する酵素と、
)メバロネート5−ピロリン酸をIPPに転換する酵素と、
)IPPをDMAPPに転換する酵素と、
)IPP及び/又はDMAPP分子を縮合して、5個を超える炭素を含有するポリプレニル化合物を形成するポリプレニルシンターゼと、
)IPPをDMAPPと縮合して、GPPを形成する酵素と、
)IPPの2つの分子を、DMAPPの1つの分子と縮合する酵素と、
)IPPをGPPと縮合してFPPを形成する酵素と、
)IPPをDMAPPと縮合してGPPを形成する酵素と、
)IPP及びFPPを縮合して、GGPPを形成する酵素と、からなる群から選択される、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記宿主細胞が、ゲラニオールシンターゼ、リナロールシンターゼ、リモネンシンターゼ、ミルセンシンターゼ、オシメンシンターゼ、α−ピネンシンターゼ、β−ピネンシンターゼ、サビネンシンターゼ、γ−テルピネンシンターゼ、テルピノレンシンターゼ、アモルファジエンシンターゼ、α−ファルネセンシンターゼ、β−ファルネセンシンターゼ、ファルネソールシンターゼ、ネロリドールシンターゼ、パチョリオールシンターゼ、ヌートカトンシンターゼ、アビエタジエンシンターゼからなる群から選択される、ポリプレニルを修飾する酵素をコードする異種核酸を更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記宿主細胞が、ポリケチドを産生することが可能であり、ポリケチド合成酵素をコードする少なくとも1つの異種核酸を含み、ここで、前記ポリケチド合成酵素が、
)アセチル−CoA及びマロニル−CoAの少なくとも1つをアシルキャリアタンパク質と縮合する酵素と、
)アセチル−CoA及びマロニル−CoAからなる群から選択される第1の反応体を、マロニル−CoA又はメチルマロニル−CoAからなる群から選択される第2の反応体と縮合して、ポリケチド産物を形成する酵素と、
)ポリケチド化合物上のβ−ケト化学基をβ−ヒドロキシ基に還元する酵素と、
)ポリケチド化合物中のアルカン化学基を脱水して、α−β−不飽和アルケンを産生する酵素と、
)ポリケチド化合物中のα−β−二重結合を飽和アルカンに還元する酵素と、
)ポリケチド化合物をアシルキャリアタンパク質から加水分解する酵素と、からなる群から選択される、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記ポリケチドが、抗生剤活性、抗真菌活性、及び抗腫瘍活性の少なくとも1つを有する脂質である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリケチドが、マクロライド、抗生剤、抗真菌剤、細胞増殖抑制化合物、抗コレステロール血症化合物、抗寄生虫化合物、抗コクシジウム化合物、動物成長促進剤及び殺虫剤からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記宿主細胞が、脂肪酸を産生することが可能であり、脂肪酸合成酵素をコードする少なくとも1つの異種核酸を含み、ここで、前記脂肪酸合成酵素が、
)アセチル−CoA及びマロニル−CoAの少なくとも1つをアシルキャリアタンパク質(ACP)に共有結合させる酵素と、
)アセチル−ACP及びマロニル−ACPを縮合してアセトアセチル−ACPを形成する酵素と、
)アセトアセチル−ACP中の二重結合をNADPHで還元して、D−3−ヒドロキシブチリルヒドロキシラーゼ−ACP中にヒドロキシル基を形成する酵素と、
)D−3−ヒドロキシブチリルヒドロキシラーゼ−ACPを脱水して、β−炭素及びγ−炭素の間に二重結合を形成してクロトニル−ACPを形成する酵素と、
)クロトニルACPをNADPHで還元してブチリル−ACPを形成する酵素と、
)C16アシル化合物をアシルキャリアタンパク質から加水分解して、パルミテートを形成する酵素と、からなる群から選択される、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記脂肪酸が、パルミテート、パルミトイルCoA、パルミトオレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、及びドコサヘキサエン酸からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
宿主細胞中で異種アセチル−CoA誘導(HACD)化合物を産生する方法であって、
(a)炭素源を含有し、かつパントテネート補充を欠く培養基中でHACD化合物を産生することが可能な遺伝的に修飾された宿主細胞の集団を培養することと、その後に、
(b)前記集団又はそのサブ集団を、炭素源を含み少なくとも1mg/Lのパントテネートを補充された培養基中で培養することと、を含む方法。
【請求項30】
ステップ(a)の前記培養が、少なくとも12、24、36、48、60、72、84、96時間又は96時間を超える期間にわたる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
ステップ(a)の前記培養が、前記集団が0.01と400との間の細胞密度(OD600)に到達するために十分な期間にわたる、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
ステップ(b)の前記培養が、3〜20日間の期間にわたる、請求項2931のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
ステップ(b)が、前記培養基が少なくとも1mg/Lのパントテネートを含むまで、パントテネートをステップ(a)の前記培養基に加えることを含む、請求項2932のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
ステップ(b)が、ステップ(a)の前記集団を少なくとも1mg/Lのパントテネートを含む新しい培養基に移すことを含む、請求項2932のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記方法が、制限量のパントテネート中で前記細胞を培養することを含まない方法から得られる産生と比較して、前記遺伝的に修飾された宿主細胞の集団による前記HACD化合物の増加した産生をもたらす、請求項2934のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記HACD化合物の産生が、収率(炭素基質1グラム当たりの産生されたHACDのグラム数)又は生産性(1時間毎の培養基1リットル当たりの産生されたHACD化合物のグラム数)に関して測定される、請求項2935のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記HACD化合物を回収することを更に含む、請求項2936のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記パントテネートが、2−デヒドロパントエート、(R)−パントエート、(R)−パントテネート、及びこれらの任意の塩又はエステルからなる群から選択される、請求項2937のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記宿主細胞が、真菌細胞、細菌細胞、植物細胞、及び動物細胞からなる群から選択される、請求項2938のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記宿主細胞が、酵母細胞である、請求項2938のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記HACD化合物が、アミノ酸、脂肪酸、イソプレノイド、及びポリケチドからなる群から選択される、請求項2940のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記宿主細胞が、イソプレノイドを産生することが可能であり、イソプレノイド経路酵素をコードする少なくとも1つの異種核酸を含み、前記イソプレノイド経路酵素が、
)アセチル−補酵素Aの2つの分子を縮合してアセトアセチル−CoAを形成する酵素と、
)アセトアセチル−CoAとアセチル−CoAの別の分子を縮合して、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoA(HMG−CoA)を形成する酵素と、
)HMG−CoAをメバロネートに転換する酵素と、
)メバロネートをメバロネート5−リン酸に転換する酵素と、
)メバロネート5−リン酸をメバロネート5−ピロリン酸に転換する酵素と、
)メバロネート5−ピロリン酸をIPPに転換する酵素
)IPPをDMAPPに転換する酵素と、
)IPP及び/又はDMAPP分子を縮合して、5個を超える炭素を含有するポリプレニル化合物を形成するポリプレニルシンターゼと、
)IPPをDMAPPと縮合して、GPPを形成する酵素と、
)IPPの2つの分子を、DMAPPの1つの分子と縮合する酵素と、
)IPPをGPPと縮合してFPPを形成する酵素と、
)IPPをDMAPPと縮合してGPPを形成する酵素と、
)IPP及びFPPを縮合して、GGPPを形成する酵素と、からなる群から選択される、請求項2940のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記宿主細胞が、ゲラニオールシンターゼ、リナロールシンターゼ、リモネンシンターゼ、ミルセンシンターゼ、オシメンシンターゼ、α−ピネンシンターゼ、β−ピネンシンターゼ、サビネンシンターゼ、γ−テルピネンシンターゼ、テルピノレンシンターゼ、アモルファジエンシンターゼ、α−ファルネセンシンターゼ、β−ファルネセンシンターゼ、ファルネソールシンターゼ、ネロリドールシンターゼ、パチョリオールシンターゼ、ヌートカトンシンターゼ、アビエタジエンシンターゼからなる群から選択される、ポリプレニルを修飾する酵素をコードする異種核酸を更に含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記宿主細胞が、ポリケチドを産生することが可能であり、ポリケチド合成酵素をコードする少なくとも1つの異種核酸を含み、ここで、前記ポリケチド合成酵素が、
)アセチル−CoA及びマロニル−CoAの少なくとも1つをアシルキャリアタンパク質と縮合する酵素と、
)アセチル−CoA及びマロニル−CoAからなる群から選択される第1の反応体を、マロニル−CoA又はメチルマロニル−CoAからなる群から選択される第2の反応体と縮合して、ポリケチド産物を形成する酵素と、
)ポリケチド化合物上のβ−ケト化学基をβ−ヒドロキシ基に還元する酵素と、
)ポリケチド化合物中のアルカン化学基を脱水して、α−β−不飽和アルケンを産生する酵素と、
)ポリケチド化合物中のα−β−二重結合を飽和アルカンに還元する酵素と、
)ポリケチド化合物をアシルキャリアタンパク質から加水分解する酵素と、からなる群から選択される、請求項2940のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記ポリケチドが、抗生剤活性、抗真菌活性、及び抗腫瘍活性の少なくとも1つを有する脂質である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記ポリケチドが、マクロライド、抗生剤、抗真菌剤、細胞増殖抑制化合物、抗コレステロール血症化合物、抗寄生虫化合物、抗コクシジウム化合物、動物成長促進剤及び殺虫剤からなる群から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記宿主細胞が、脂肪酸を産生することが可能であり、脂肪酸合成酵素をコードする少なくとも1つの異種核酸を含み、ここで、前記脂肪酸合成酵素が、
)アセチル−CoA及びマロニル−CoAの少なくとも1つをアシルキャリアタンパク質(ACP)に共有結合させる酵素と、
)アセチル−ACP及びマロニル−ACPを縮合してアセトアセチル−ACPを形成する酵素と、
)アセトアセチル−ACP中の二重結合をNADPHで還元して、D−3−ヒドロキシブチリルヒドロキシラーゼ−ACP中にヒドロキシル基を形成する酵素と、
)D−3−ヒドロキシブチリルヒドロキシラーゼ−ACPを脱水して、β−炭素及びγ−炭素の間に二重結合を形成してクロトニル−ACPを形成する酵素と、
)クロトニルACPをNADPHで還元してブチリル−ACPを形成する酵素と、
)C16アシル化合物をアシルキャリアタンパク質から加水分解して、パルミテートを形成する酵素と、からなる群から選択される、請求項2940のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記脂肪酸が、パルミテート、パルミトイルCoA、パルミトオレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、及びドコサヘキサエン酸からなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2011年5月9日出願の米国仮特許出願第61/483,896号に対する優先権を主張し、同出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、遺伝的に修飾された宿主細胞による異種アセチル−CoA誘導化合物の産生を調整するための非遺伝的スイッチとしてのパントテネート(ビタミンB5としても知られる)の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
合成生物学の出現は、工業規模及び品質における再生可能資源からの生物燃料、化学薬品及び生体材料の発酵微生物産生の有望性をもたらした。例えば、抗マラリア薬アルテミシニンに対する前駆体(例えば、Martinら著、Nat.Biotechnol 21:796−802(2003)を参照);脂肪酸誘導燃料及び化学薬品(例えば、脂肪エステル、脂肪アルコール及びワックス;例えば、Steenら著、Nature 463:559−562(2010)を参照);コレステロール降下剤を生成するポリケチドシンターゼ(Maら著、Science 326:589−692(2009)参照);及びポリケチド(Kodumal著、Proc Natl Acad Sci USA 101:15573−15578(2004)参照)の産生のために、機能的非天然の生物学的経路の構築に成功した。しかしながら、合成生物学の商業的成功は、再生可能製品の生産コストが、それらのそれぞれの再生不可能な対応部位の生産コストと競合してなされ得るか、又はそれを上回ってなされ得るかに大きく依存する。
【0004】
菌株の安定性は、これが、連続的発酵が生産的に実行され得る時間の長さに影響を及ぼすために、工業用発酵のコストの主要要因であり得る。菌株安定性は、一般的には、長時間の培養時間にわたる非異化発酵産物の好ましい生産特性(すなわち、高収率(時間当たりの化合物のグラム数)及び生産性(時間毎の発酵ブロス1リットル当たりのグラム数)を維持するための微生物の能力を指す。特に、経時的な産物の産生に関連する遺伝子の予定された対立遺伝子頻度の変更をほぼ有さない微生物集団を産生するための傾向である遺伝的安定性は、産物の持続的出力において中心的役割を果たす。
【0005】
バイオマス以外の産物(この産物は、定義によれば、より多くの細胞の産生において別の方法で使用され得る代謝エネルギー及び炭素を消費する)の非異化発酵については、不安定性の基準は、二重、すなわち、進化的突然変異及び選択である。第1に、産生欠損突然変異は、自発的かつランダムに起こる。第2に、減少した産生物収率を伴う細胞の増殖速度又は「適合」効果は、低産生株による最終的細胞集団の一掃に導き、これによって、全体の培養性能が低下する。この現象は、「菌株退化」と呼ばれ得る。
【0006】
ブラジルの燃料エタノール発酵は、長期間にわたる糖からのエタノールの極めて高い収率、すなわち最大理論収率の約90%を達成する。これは、一部にはエタノールの産生が異化作用、すなわち、これが産生された糖の2つのATPを生じ、酸素の関与なしで酸化還元バランスが保たれていることに起因する。エタノールを産生しないよう突然変異する細胞は、発酵槽の低酸素条件下では適合し難く、細胞集団を一掃することはないであろう。このことは、工業的エタノール発酵が季節全体にわたって大多数の酵母バイオマスを再利用することを可能にし、これによって、糖の酵母細胞バイオマスへの転換を最小限に留め、ほぼ全ての糖をエタノール産生に向ける。このバイオマスの長期にわたる増殖及び再利用が、エタノール産生の効率を増加させ、各サイクル中にほとんどの糖がバイオマスに移動しないために操作費用が減少し、並びにより少なく小型の発酵槽が、接種のためにバイオマスを構築するのに必要とされるにすぎないために、資本投資も低減される。
【0007】
対照的に、多くのアセチル−CoA誘導炭化水素(例えば、イソプレノイド、脂肪酸、及びポリケチド)の産生は一般的には、本質的に非異化作用であり、すなわち、これらは系の酸化還元のバランスを保つことを補助するよう供給される多量の酸素を頻繁に伴い、ATP、NADPH、及び炭素の正味投入量を通常必要とする。かかる環境は、より低い産物、より良い遺伝子型を産生するより高いバイオマスへと向かう進展をもたらし、より高速の菌株退化に導く。
【0008】
非異化作用産物を産生することの負の選択的重圧を低減させる1つの方法は、発酵槽の生産性を最大にするために、バイオマスが生み出されねばならない発酵の段階中などの産物が不必要な期間中の産物の形成をスイッチオフ状態にすることである。遺伝的スイッチは、これを実際に達成する一般的な方法であるが、例えば、外因性誘導物質のコスト、このスイッチを転写及び翻訳する上での遅延、並びに遺伝的スイッチそれ自体で突然変異が生じる場合、低産生株の供給源にもなり得ることに起因する欠点を有する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、当該技術分野において、発酵中にアセチル−CoA誘導化合物の産生のタイミングを制御することができる代謝スイッチへの要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書において、遺伝的に修飾された宿主細胞から異種アセチル−CoA誘導化合物(「HACD化合物」)を産生するための発酵プロセスが提供される。いくつかの実施形態では、このプロセスは、その間に細胞バイオマスが蓄積されると同時に、HACD化合物産生が実質的に低減される構築ステージ(「オフ」ステージ)と、その間HACD化合物産生が起動される産生段階との2つの段階を含む。したがって、HACD化合物の産生が必要とされない発酵のステージ中に、HACD化合物産生に関連する負の選択的重圧が軽減される。理論に束縛されるものではないが、構築ステージ中のHACD化合物産生の低減又は排除は、産生ステージ中の菌株の改善された安定性をもたらし、このことがより長期の持続的HACD化合物産生をもたらし、これによって、全体の収率及び/又は菌株の生産性が増加すると考えられる。発酵培養におけるHACD化合物産生の「オフ」及び「オン」状態は、培養基中のアセチル−CoAに対する前駆体であるパントテネートの量によって制御される。
【0011】
アセチル−CoAは、アミノ酸、脂肪酸、イソプレニド、及びポリケチドを含む多くの重要な生体分子のための構築ブロックとして使用されるアセテートの活性化形態である。補因子である補酵素A(アセチル−CoAのCoA部分)は、3つの前駆体から生合成される(図1B)。これら前駆体の2つ、すなわちL−システイン及びアデノシン−5’−三リン酸は、殆どの生体系によって効率的に合成され得るので、これらは制限的ではない。これとは対照的に、第3番目の前駆体であるパントテネートは制限的であり、殆どの生体で不十分な量で産生されるに過ぎない。結果的に、大部分の生体系は、最適な成長、健康及び生存能力のために、パントテネート化合物の外部の供給源(例えば、培養基又は食物源における)を必要とする。しかしながら、本明細書で提供された方法は、アセチル−CoA誘導化合物を産生するよう操作された細胞を培養する場合、パントテネートが制限された量で使用され得るか又は完全に省略され得るという予期せぬ発見に一部は基づく。これら細胞は、増殖及び生存能力を維持することができ、場合によっては制限的パントテネート濃度下での改善された増殖を実証することができる。好都合なことに、これら同一の条件は、HACD化合物の産生における減少をもたらす。したがって、本明細書で提供される方法は、異種アセチル−CoA誘導化合物の産生のために、改善された発酵プロセスの「オフ」及び「オン」ステージをもたらすための非遺伝的スイッチとしてパントテネートを利用する。
【0012】
したがって、一態様では、本明細書において、宿主細胞中で異種アセチル−CoA誘導(HACD)化合物を産生する方法が提供され、この方法は、
(a)炭素源及び制限量のパントテネートを含む培養基中でHACD化合物を産生することが可能な遺伝的に修飾された宿主細胞の集団を培養すること(制限量のパントテネートは、宿主細胞によるHACD化合物の産生を制限する)と、その後に、
(b)前述の集団又はそのサブ集団を炭素源及び非制限量のパントテネートを含む培養基中で培養すること(非制限量のパントテネートは、制限量のパントテネートを超える量であり、前述の集団又はそのサブ集団は、非制限量のパントテネートの存在下でより多くの量のHACD化合物を産生する)と、を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、パントテネートの制限量は、パントテネート滴定を実施することによって決定され、宿主細胞は、増大する濃度のパントテネートを含む増殖培地中で培養され、並びにHACD化合物産生は、パントテネートの各濃度で決定され、パントテネート滴定は、HACD化合物産生がその最大である場合のパントテネートの飽和量を含み、制限量のパントテネートは、HACD化合物の産生がその最大未満である場合の任意濃度のパントテネートである。
【0014】
いくつかの実施形態では、「構築」ステージ(ステップ(a))中のHACD化合物の産生は、遺伝的に改変された宿主細胞の最大HACD化合物産生の50、40、30、20又は10%未満である。いくつかの実施形態では、「産生」ステージ(ステップ(b))中のHACD化合物の産生は、遺伝的に修飾された宿主細胞の最大HACD化合物産生の50、60、70、80又は90%を超える。
【0015】
いくつかの実施形態では、ステップ(a)の培養することは、前述の集団が0.01と400との間の細胞密度(OD600)に到達するのに十分な一定の時間にわたる。いくつかの実施形態では、ステップ(b)の培養することは、3〜20日の期間にわたる。いくつかの実施形態では、制限量のパントテネートは、0.2mg/Lよりも低い。いくつかの実施形態では、制限量のパントテネートとは、0mg/Lである。いくつかの実施形態では、非制限量のパントテネートは、0.2mg/Lよりも高い。いくつかの実施形態では、非制限量のパントテネートとは、HACD化合物産生がその最大である場合での少なくとも最小のパントテネート濃度である。いくつかの実施形態では、非制限量のパントテネートとは、10mg/Lである。
【0016】
いくつかの実施形態では、ステップ(b)は、培養基が非制限量のパントテネートを含むまで、制限量のパントテネートを含む培養基にパントテネートを添加することを含む。いくつかの実施形態では、ステップ(b)は、ステップ(a)の集団を、非制限量のパントテネートを含む新しい培養基に移すことを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では本明細書に提供される方法は、制限量のパントテネート中で細胞を培養することを含まない方法から得られる産生と比較して、遺伝的に修飾された宿主細胞の集団によるHACDの増加した産生をもたらす。いくつかの実施形態ではHACD化合物の産生は、収率(炭素基質のグラム数当たりのHACD化合物のグラム数)又は生産性(1時間毎の培養基1リットル当たりの産生されたHACD化合物のグラム数)に関して測定される。いくつかの実施形態では、この方法は、HACD化合物を回収することを更に含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、パントテネートは、2−デヒドロパントエート、(R)−パントエート、(R)−パントテネート、及びこれらの任意の塩又はエステルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、真菌細胞、細菌細胞、植物細胞、及び動物細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、宿主細胞は酵母細胞である。いくつかの実施形態では、HACD化合物は、アミノ酸、脂肪酸、イソプレノイド、及びポリケチドからなる群から選択される。
【0019】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、イソプレノイドを産生することが可能であり、かつイソプレノイド経路酵素をコード化する少なくとも1つの異種核酸を含み、このイソプレノイド経路酵素は、
a)アセチル−補酵素Aの2つの分子を縮合してアセトアセチル−CoAを形成する酵素と、
b)アセトアセチル−CoAをアセチル−CoAの別の分子と縮合して、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoA(HMG−CoA)を形成する酵素と、
c)HMG−CoAをメバロネートに転換する酵素と、
d)メバロネートをメバロネート5−リン酸に転換する酵素と、
e)メバロネート5−リン酸をメバロネート5−ピロリン酸に転換する酵素と、
f)メバロネート5−ピロリン酸をIPPに転換する酵素と、
g)IPPをDMAPPに転換する酵素と、
h)IPP及び/又はDMAPP分子を縮合して5個を超える炭素を含有するポリプレニル化合物を形成することができるポリプレニルシンターゼと、
i)IPPをDMAPPと縮合してGPPを形成する酵素と、
j)IPPの2つの分子をDMAPPの1つの分子と縮合する酵素と、
k)IPPをDMAPPと縮合してFPPを形成する酵素と、
l)IPP及びDMAPPを縮合してGGPPを形成する酵素と、
m)IPPとFPPを縮合してGGPPを形成する酵素と、からなる群から選択される。
【0020】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、ゲラニオールシンターゼ、リナロールシンターゼ、リモネンシンターゼ、ミルセンシンターゼ、オシメンシンターゼ、α−ピネンシンターゼ、β−ピネンシンターゼ、サビネンシンターゼ、γ−テルピネンシンターゼ、テルピノレンシンターゼ、アモルファジエンシンターゼ、α−ファルネセンシンターゼ、β−ファルネセンシンターゼ、ファルネソールシンターゼ、ネロリドールシンターゼ、パチョリオールシンターゼ、ヌートカトンシンターゼ、アビエタジエンシンターゼからなる群から選択される、ポリプレニルを修飾する酵素をコード化する少なくとも1つの異種核酸を更に含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、宿主細胞はポリケチドを産生することが可能であり、かつポリケチドシンターゼ酵素をコード化する少なくとも1つの異種核酸を含み、このポリケチドシンターゼは、
a)アセチル−CoA及びマロニル−CoAの少なくとも1つをアシルキャリアタンパク質と縮合する酵素と、
b)アセチル−CoA及びマロニル−CoAからなる群から選択される第1の反応体を、マロニル−CoA又はメチルマロニル−CoAからなる群から選択される第2の反応体と縮合して、ポリケチド産物を形成する酵素と、
c)ポリケチド化合物上のβ−ケト化学基をβ−ヒドロキシ基に還元する酵素と、
d)ポリケチド化合物中のアルカン化学基を脱水して、α−β−不飽和アルケンを産生する酵素と、
e)ポリケチド化合物中のα−β−二重結合を飽和アルカンに還元する酵素と、
f)ポリケチド化合物をアシルキャリアタンパク質から加水分解する酵素と、からなる群から選択される。
【0022】
いくつかの実施形態では、ポリケチドは、抗生剤、抗真菌剤、抗腫瘍剤活性の少なくとも1つを有する脂質である。いくつかの実施形態では、ポリケチドは、マクロライド、抗生剤、抗真菌剤、細胞増殖抑制化合物、抗コレステロール血症化合物、抗寄生虫化合物、抗コクシジウム化合物、動物成長促進剤及び殺虫剤からなる群から選択される。
【0023】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は脂肪酸を産生することが可能であり、かつ脂肪酸シンターゼ酵素をコード化する少なくとも1つの異種核酸を含み、この脂肪酸シンターゼ酵素は、
a)アセチル−CoA及びマロニル−CoAの少なくとも1つをアシルキャリアタンパク質(ACP)に共有結合させる酵素と、
b)アセチル−ACP及びマロニル−ACPを縮合してアセトアセチル−ACPを形成する酵素と、
c)アセトアセチル−ACP中の二重結合をNADPHで還元して、D−3−ヒドロキシブチリルヒドロキシラーゼ−ACP中にヒドロキシル基を形成する酵素と、
d)D−3−ヒドロキシブチリルヒドロキシラーゼ−ACPを脱水して、β−炭素及びγ−炭素の間に二重結合を形成してクロトニル−ACPを形成する酵素と、
e)クロトニルACPをNADPHで還元してブチリル−ACPを形成する酵素と、
f)C16アシル化合物をアシルキャリアタンパク質から加水分解して、パルミテートを形成する酵素と、からなる群から選択される。
【0024】
いくつかの実施形態では、脂肪酸は、パルミテート、パルミトイルCoA、パルミトオレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、及びドコサヘキサエン酸からなる群から選択される。
【0025】
別の態様では、本明細書において、宿主細胞中で異種アセチル−CoA誘導(HACD)化合物を産生する方法が提供され、この方法は、
(a)炭素源を含有し、かつパントテネート補充を欠如する培養基中でHACD化合物を産生することが可能な遺伝的に修飾された宿主細胞の集団を培養することと、その後に、
(b)前述の集団又はそのサブ集団を、炭素源を含みかつ少なくとも1mg/Lのパントテネートで補充された培養基中で培養することと、を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、ステップ(a)の培養することは、前述の集団が0.01と400との間の細胞密度(OD600)に到達するのに十分な期間にわたる。いくつかの実施形態では、ステップ(b)の培養することは、3〜20日の期間にわたる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】(A)R−パントテネートの分子構造、並びにその3つの前駆体:L−システイン、(R)−パントテネート、及びATPに由来する補酵素Aの3つのセグメントの強調を伴う(B)補酵素Aの分子構造を示す。
図2】酵母(A)及び細菌(B)におけるパントテネート生合成経路を示す。
図3】様々な量のパントテネートの存在下で菌株Y4689及びY4352に関して得られた例示的HACD化合物の収率(A)及び細胞密度(B)を示す。菌株Y4689及びY4352はそれぞれ、異種酵素(MEV経路の酵素:IPPイソメラーゼ、FPPシンターゼ、及びファルネセンシンターゼを含む)を含有し、それぞれ15%及び13%の収率でHACD化合物を産生することが可能であった。
図4】0.4mg/L又は0.002mg/Lのパントテネートを含む寒天上での菌株Y4720、Y5038、及びY2205の細胞増殖を示す。菌株Y4720及びY5038はそれぞれ異種酵素(MEV経路の酵素:IPPイソメラーゼ、FPPシンターゼ、及びファルネセンシンターゼを含む)を含有し、それぞれ14%及び6%の収率で例示的HACD化合物を産生することが可能であった。菌株Y2205は、いずれのHACD化合物も産生しないCEN.PK2野生型対照であった。
図5】0又は10mg/Lのパントテネートの存在下で、例示的HACD化合物であるファルネセンの異なる収率を生じることが可能な酵母宿主細胞の細胞増殖を示す。各菌株の適切なファルネセンの収率が示され、10%未満の収率でファルネセンを産生する菌株に関するデータ測定点は灰色であり、一方10%以上の収率でファルネセンを産生する菌株に関するデータ測定点は黒色である。
図6】10mg/Lのパントテネートの存在下で、HACD化合物であるファルネセンを産生することが可能な酵母宿主細胞の集団の菌株退化(すなわち、経時的なHACD化合物産生の減少傾向)を示す。
図7】イソペンテニル二リン酸(「IPP」)の産生に関するメバロネート(「MEV」)経路の図式的表現を提供する。
図8】IPP及びジメチルアリルピロリン酸(「DMAPP」)のゲラニルピロリン酸(「GPP」)、ファルネシルピロリン酸(「FPP」)、及びゲラニルゲラニルピロリン酸(「GGPP」)への転換の図式的表現を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
6.1 用語の定義
用語「アセチル−CoA誘導化合物」とは、アセチル−CoAに由来の1つ以上のアセチル基から宿主細胞によって生合成される分子を指す。
【0029】
用語「内因性」とは、宿主細胞において自然に発生し得る物質又はプロセスを指す。
【0030】
用語「遺伝的に修飾された」とは、異種ヌクレオチド配列を含む宿主細胞を示す。
【0031】
用語「HACD化合物」とは、遺伝的に修飾された宿主細胞によって産生される異種アセチル−CoA誘導化合物を指す。HACD化合物としては、限定されるものではないが、アミノ酸、脂肪酸、イソプレノイド、及びポリケチドが挙げられる。いくつかの実施形態では、このHACD化合物は、イソプレノイド、脂肪酸及びポリケチドからなる群から選択される。
【0032】
用語「異種」とは、自然状態では通常見られないものを指す。用語「異種化合物」とは、通常その化合物を産生しない細胞による化合物の産生、又は化合物がその細胞によって通常産生されないレベルでの化合物の産生を指す。
【0033】
用語「異種酵素」とは、自然状態において所定の細胞中で通常見られない酵素を指す。この用語は、
(a)所定の細胞に対して外因性(すなわち、宿主細胞中で自然に存在しない又は宿主細胞の所定の内容物中には自然に存在しないヌクレオチド配列によってコード化された)酵素と、
(b)宿主細胞中で自然に見られる(例えば、酵素が、この細胞に対して内因性であるヌクレオチド配列によってコード化される)が、宿主細胞中では不自然な量で(例えば、自然で見られるものを超える又はそれよりも少なく)産生される酵素と、である酵素を包含する。
【0034】
用語「パントテネート化合物」とは、2−デヒドロパントエート、(R)−パントエート、(R)−パントテネート、及びこれらの任意の塩又はエステルからなる群から選択される任意の化合物を指す。
【0035】
用語「産生」とは、一般的に、本明細書で提供される遺伝的に修飾された宿主細胞によって生成されるHACD化合物の量を指す。いくつかの実施形態では、産生は、宿主細胞によるHACD化合物の収率として表される。他の実施形態では、産生は、HACD化合物を産生することにおける宿主細胞の生産性として表される。
【0036】
用語「生産性」とは、その中で宿主細胞が経時的に(時間当たり)培養される(体積で)発酵ブロスの量当たりの産生されたHACDの量(重量で)として表される、宿主細胞によるHACD化合物の産生を指す。
【0037】
用語「収率」とは、宿主細胞によって消費される炭素源の量当たりのHACD化合物の量(重量で)として表される、宿主細胞によるHACD化合物の産生を指す。
6.2 異種化合物の産生を調整するための非遺伝的スイッチとしてのパントテネートの使用
【0038】
本明細書に提供される方法及び組成物は、HACD化合物を産生することが可能な遺伝的に修飾された宿主細胞が培養される培養基でパントテネートが制限されるか培養基から省かれる場合、HACD化合物の産生が実質的に低減され、並びにペントテネートが培養基中に提供される場合、HACD化合物産生が増加されるという発見に基づく。したがって、パントテネートは、遺伝的に修飾された宿主細胞中のHACD化合物の産生のための非遺伝的スイッチとして作用する。特に、産生が要求される場合にのみ起こるようHACD化合物産生のタイミングを制御することは、比産生段階中の炭素流を、細胞の維持及びバイオマスへと方向転換する。この炭素のより有効な使用は、宿主細胞の代謝的負荷を大きく低減し、異種遺伝子の安定性を増加させ、菌株退化を低減させ、並びに細胞のより良好な全般的健康状態及び生存能力に寄与する。したがって、本明細書に提供される方法は、パントテネートを、異種アセチル−CoA誘導化合物の産生に関する改善された発酵プロセスの「オフ」及び「オン」ステージをもたらすための非遺伝的スイッチとして利用する。
【0039】
したがって、一態様では、本明細書に提供されるものは、宿主細胞中で異種アセチル−CoA誘導(HACD)化合物を産生する方法であって、この方法は、
(a)炭素源及び制限量のパントテネートを含む培養基中でHACD化合物を生成することが可能な遺伝的に修飾された宿主細胞の集団を培養すること(制限量のパントテネートは、宿主細胞によるHACD化合物の産生を制限する)と、その後に、
(b)前述の集団又はそのサブ集団を炭素源及び非制限量のパントテネートを含む培養基中で培養すること(非制限量のパントテネートは、制限量のパントテネートを超える量であり、前述の集団又はそのサブ集団は、非制限量のパントテネートの存在下でより多くの量のHACD化合物を産生する)と、を含む。
【0040】
第1のステップ(すなわち、「構築」ステージであるステップ(a))において、遺伝的に修飾された宿主細胞は、パントテネートが制限されるか又は省かれている増殖又は「構築」培地中で増殖される。第2のステップ(すなわち、「産生」ステージであるステップ(b))において、パントテネート化合物が培養基に加えられ、これが、HACD化合物の産生を実質的に増強するための非遺伝的スイッチとして働く。低レベルのパントテネート又はその不在中での初期増殖は、細胞のバイオマスが迅速に増加すると同時に細胞のエネルギー要求が満足されることを保証する。その後、パントテネート化合物を含有する増殖培地に切り替えることが、HACD産物の合成を可能にする。
【0041】
実施例5(以下)及び図3Aは、イソプレノイドファルネセンを産生するためのアセチル−CoA生合成経路を通して高い代謝流量を有する、遺伝的に修飾された宿主細胞中でのHAXD化合物産生に及ぼす培養基中のパントテネート化合物濃度の影響を示す。低いパントテネート化合物レベル(0.2mg/L、テストされた最大パントテネート化合物濃度の<1%)では、HACD化合物の実際の産生はない。パントテネート化合物レベルを上昇させることは、有効なプラトーに達するまでHACD化合物産生の増加と相関する。1mg/Lのパントテネート(テストされた最大パントテネート化合物濃度の10%)を超えて更に増加させることは、HACD化合物産生における更なる増加をもたらさない。
【0042】
注目すべきことに、これら細胞の増殖は、HACD化合物産生に対して逆の傾向を示す。図3Bは、HACD化合物産生に関してテストされた同一のパントテネート濃度レベルにおける同一菌株の増殖を示す。パントテネートの不在又は低レベルのパントテネートは、菌株が最大のHACD化合物産生に必要とされるパントテネートレベルにおいて培養された場合に観察されたものよりも良好な増殖を実際にもたらす。以下の実施例6及び7並びに図4及び5に示すように、この低いパントテネートレベルに対する応答は、より高い量のHACDE化合物を産生するよう操作された宿主細胞の中で頻繁に観察された。したがって、HACD化合物を産生することが可能なある菌株において、僅かなパントテネート中で又はパントテネートを含まずに培養される場合に、改善された増殖の更なる利点が観察される。「構築」ステージ中(すなわち、HACD化合物産生が止められる場合)の改善された増殖は、発酵の産生段階に必要とされる細胞バイオマスのより速い確立を可能にする。
【0043】
以下に提供される実施例8及び図6は、パントテネートが発酵プロセスの全てのステージを通して提供される場合起こり得る菌株退化の現象を裏付けている。HACDファルネセンの旺盛な産生は、発酵の最初で一過性に維持されるが、時間の経過と共に、先に観察された最大産生のわずか60%近くまで減少する。このことが、宿主細胞集団の全体の産生の低下(例えば、収率及び/又は生産性)をもたらす。しかしながら、以下の実施例9及び表1に記載されるように、「構築」ステージ中の培養基のパントテネートを制限する又は培養基からそれを省くことによって、HACD化合物産生は、発酵の過程にわたって実質的に増加され得る。
6.2.1 制限量及び非制限量のパントテネート
【0044】
本明細書に提供される方法のいくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法における使用のための「制限」及び「非制限」量のパントテネートは、HACD化合物を産生することが可能な任意の遺伝的に修飾された宿主細胞に関して決定され得る。いくつかの実施形態では、非制限量のパントテネートは、培養基中の上昇するパントテネートの量の存在下でHACD化合物産生曲線、すなわちパントテネート滴定を実施することによって決定される。例示的パントテネート滴定は、以下の実施例5及び図3に提供されている。
【0045】
例えば、遺伝的に修飾された宿主細胞の集団を複数個のサブ集団に分け、平行して培養し、各サブ集団は、異なる、例えばパントテネートの上昇する量(パントテネートを含まないものも包含する)を含む培養基中で増殖され、HACD化合物産生が定義された一定期間後に分析評価される。好ましい実施形態では、パントテネート滴定は、その濃度によって宿主細胞のHACD化合物産生が最大量で一定になった状態、すなわち、パントテネート濃度における増加でHACD化合物産生の更なる増加が観察されない場合のパントテネートの少なくとも2種の濃度を含む。いくつかの実施形態では、「非制限量」のパントテネートは、宿主細胞のHACD化合物産生がその最大で一定になる場合のパントテネートの少なくとも最小量である。この量は、特定の宿主細胞についてのHACD化合物産生に関するパントテネートの「飽和」又は「最適」量とも呼ばれ、したがって、この量は、宿主細胞のHACD化合物産生を制限することはなく、すなわち、培養基中のパントテネートの欠如のために、HACD化合物生産が負の影響を受けることがない量である。他の実施形態では、「非制限」量のパントテネートは、HACD化合物産生が最適下限である場合でもHACD化合物生産が観察されるパントテネートの任意の濃度を包含することができる。
【0046】
一旦宿主細胞に関する非制限量のパントテネートが決定されたら、この量は発酵プロセスの産生ステージ中に使用され得、これは構築ステージ中に使用される「制限」量のパントテネートを決定するよう使用され得る。いくつかの実施形態では、発酵の構築ステージにおける使用のための「制限」量のパントテネートは、非制限量のパントテネートよりも低い任意の量であり得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、非制限量のパントテネートは、少なくとも0.01mg/L(培養基の体積当たりのパントテネートの重量)である。いくつかの実施形態では、非制限量のパントテネートは、少なくとも0.1mg/Lである。いくつかの実施形態では、非制限量のパントテネートは、少なくとも1mg/Lである。いくつかの実施形態では、非制限量のパントテネートは、少なくとも10mg/Lである。いくつかの実施形態では、非制限量のパントテネートは、0.01mg/Lと10mg/Lとの間のパントテネートの量である。いくつかの実施形態では、非制限量のパントテネートは、0.01mg/Lと1mg/Lとの間のパントテネートの量である。いくつかの実施形態では、非制限量のパントテネートは、0.01mg/Lと0.1mg/Lとの間のパントテネートの量である。いくつかの実施形態では、非制限量のパントテネートは、1mg/Lと10mg/Lとの間のパントテネートの量である。いくつかの実施形態では、非制限量のパントテネートは、0.001mg/Lよりも高い量である。いくつかの実施形態では、非制限量のパントテネートは、0.01mg/Lよりも高い量である。いくつかの実施形態では、非制限量のパントテネートは、0.02mg/Lよりも高い量である。いくつかの実施形態では、非制限量のパントテネートは、0.1mg/Lよりも高い量である。いくつかの実施形態では、非制限量のパントテネートは、0.2mg/Lよりも高い量である。いくつかの実施形態では、非制限量のパントテネートは、1mg/Lよりも高い量である。いくつかの実施形態では、非制限量のパントテネートは、2mg/Lよりも高い量である。いくつかの実施形態では、非制限量のパントテネートは、10mg/Lよりも高い量である。
【0048】
いくつかの実施形態では、制限量のパントテネートは、上記の方法により決定されたような非制限量のパントテネートよりも2倍、10倍、100倍、1000倍、10,000倍又は100,000倍低い量である。いくつかの実施形態では、制限量のパントテネートは、上記の方法により決定されたような飽和量のパントテネートよりも2倍、10倍、100倍、1000倍、10,000倍又は100,000倍低い量である。いくつかの実施形態では、制限量のパントテネートは、上記の方法により決定されたような非制限量の50%未満、20%未満、10%未満、1%未満、0.5%未満、0.2%未満、0.1%未満、0.01%未満、又は0.001%未満である量である。いくつかの実施形態では、制限量のパントテネートは、上記の方法により決定されたような飽和量の50%未満、20%未満、10%未満、1%未満、0.1%未満、0.01%未満、又は0.001%未満である量である。他の特定の実施形態では、制限量のパントテネートは、10mg/L未満、又は1mg/L未満、又は0.2mg/L未満、又は0.1mg/L未満、又は0.02mg/L未満、又は0.01mg/L未満、若しくは0.001mg/Lのパントテネートの量である。特定の実施形態では、制限量のパントテネートは0mg/Lで、すなわちパントテネートを含まない。したがって、この特定の実施形態においては、構築ステージ中に、宿主細胞はパントテネートの外部供給源を含まない細胞培養基中で培養され、細胞に使用可能なパントテネートの供給源は、内部的に産生される内因性パントテネートであるに過ぎない。
【0049】
特定の実施形態では、非制限量のパントテネートは、上記のように所定の宿主細胞に関する最適量又は飽和量であり、制限量はパントテネートを含まない。別の特定の実施形態では、非制限量のパントテネートは、少なくとも0.01mg/Lであり、制限量はパントテネートを含まない。別の特定の実施形態では、非制限量のパントテネートは、0.01〜10mg/Lのパントテネートの量であり、制限量はパントテネートを含まない。別の特定の実施形態では、非制限量のパントテネートは、少なくとも10mg/Lであり、制限量はパントテネートを含まない。
【0050】
いくつかの実施形態では、構築ステージ(上記の方法のステップ(a))中のHACD化合物の生産は、遺伝的に修飾された宿主細胞の最大HACD化合物生産、すなわち、宿主細胞が飽和量又は最適量のパントテネートを含む培地中で培養される場合のHACD化合物産生の量の50、40、30、20又は10%未満である。いくつかの実施形態では、構築ステージ中のHACD化合物の産生は、遺伝的に修飾された宿主細胞の最大HACD化合物生産の50%未満である。いくつかの実施形態では、構築ステージ中のHACD化合物の生産は、遺伝的に修飾された宿主細胞の最大HACD化合物産生の40%未満である。いくつかの実施形態では、構築ステージ中のHACD化合物の産生は、遺伝的に修飾された宿主細胞の最大HACD化合物産生の30%未満である。いくつかの実施形態では、構築ステージ中のHACD化合物の産生は、遺伝的に修飾された宿主細胞の最大HACD化合物産生の20%未満である。いくつかの実施形態では、構築ステージ中のHACD化合物の産生は、遺伝的に修飾された宿主細胞の最大HACD化合物産生の10%未満である。いくつかの実施形態では、構築ステージ中のHACD化合物の産生は、遺伝的に修飾された宿主細胞の最大HACD化合物産生の5%未満である。いくつかの実施形態では、構築ステージ中のHACD化合物の産生は、遺伝的に修飾された宿主細胞の最大HACD化合物産生の1%未満である。
【0051】
いくつかの実施形態では、産生ステージ(上記の方法のステップ(b))中のHACD化合物の産生は、遺伝的に修飾された宿主細胞の最大HACD化合物生産の20、30、40、50、60、70、80又は90%を超える。いくつかの実施形態では、構築(産生)ステージ中のHACD化合物の生産は、遺伝的に修飾された宿主細胞の最大HACD化合物産生の50%を超える。いくつかの実施形態では、構築(産生)ステージ中のHACD化合物の生産は、遺伝的に修飾された宿主細胞の最大HACD化合物産生の60%を超える。いくつかの実施形態では、構築(産生)ステージ中のHACD化合物の産生は、遺伝的に修飾された宿主細胞の最大HACD化合物産生の70%を超える。いくつかの実施形態では、構築(産生)ステージ中のHACD化合物の産生は、遺伝的に修飾された宿主細胞の最大HACD化合物産生の80%を超える。いくつかの実施形態では、構築(産生)ステージ中のHACD化合物の生産は、遺伝的に修飾された宿主細胞の最大HACD化合物産生の90%を超える。いくつかの実施形態では、構築(生産)ステージ中のHACD化合物の産生は、遺伝的に修飾された宿主細胞の最大HACD化合物産生の95%を超える。いくつかの実施形態では、構築(産生)ステージ中のHACD化合物の産生は、遺伝的に修飾された宿主細胞の最大HACD化合物産生の100%以上である。
【0052】
発酵プロセスの構築ステージ及び産生ステージが実行される間の一定期間は異なってもよく、宿主細胞の増殖速度(例えば、培養基中のパントテネートの制限又は補充による)、宿主細胞の増殖の固有速度、並びに宿主細胞、発酵、及びプロセスの特定の要求に応じてのpH、温度、及び好気性、微好気性、又は嫌気性への要求等の他の培養条件などの因子に依存するであろう。しかしながら、HACD化合物産生に関連する負の選択的重圧が「オフ」状態において軽減されるために、構築ステージのいずれの持続時間も、発酵の最終的生産性にいくらかの利点をもたらすことが期待される。
【0053】
いくつかの実施形態では、構築ステージは、産生ステージ中にHACD化合物の産生を支援し得る細胞のバイオマスのある量を生み出すのに十分な期間にわたって実行される。いくつかの実施形態では、構築ステージは、所望の細胞密度に到達するまで、複数回の二倍化を起こすよう接種時において集団が存在するのに十分な期間にわたって実行される。いくつかの実施形態では、構築ステージは、構築ステージが実行されている発酵容器又は発酵槽中で、宿主細胞集団が0.01と400との間の細胞密度(OD600)に到達するのに十分な期間にわたって実行される。いくつかの実施形態では、構築ステージは、少なくとも0.01のOD600に到達するまで実行される。いくつかの実施形態では、構築ステージは、少なくとも0.1のOD600に到達するまで実行される。いくつかの実施形態では、構築ステージは、少なくとも1.0のOD600に到達するまで実行される。いくつかの実施形態では、構築ステージは、少なくとも10のOD600に到達するまで実行される。いくつかの実施形態では、構築ステージは、少なくとも100のOD600に到達するまで実行される。いくつかの実施形態では、構築ステージは、0.01と100との間のOD600に到達するまで実行される。いくつかの実施形態では、構築ステージは、0.1と10との間のOD600に到達するまで実行される。いくつかの実施形態では、構築ステージは、1と100との間のOD600に到達するまで実行される。他の実施形態では、構築ステージは、少なくとも12、24、36、48、60、72、84、96時間又は96時間を超える期間にわたって実行される。
【0054】
いくつかの実施形態では、産生ステージは、所望の量のHACD化合物を産生するのに十分な期間にわたって実行される。いくつかの実施形態では、生産ステージは、少なくとも12、24、36、48、60、72、84、96時間又は96時間を超える期間にわたって実行される。
【0055】
いくつかの実施形態では、産生ステージは、3日と20日との間の期間にわたって実行される。いくつかの実施形態では、産生ステージは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、20日又は20日を超える期間にわたって実行される。
【0056】
特定の実施形態においては、HACD化合物を産生する方法は、遺伝的に修飾された宿主細胞の増殖又は維持を可能にするのに十分な条件中で、炭素源と制限されたパントテネート化合物濃度を含む又はパントテネート化合物を含まない培地中で遺伝的に修飾された宿主細胞の発酵を実施することと、次いで引き続いて培養基中にパントテネート化合物を、HACD化合物の産生を誘発するのに十分な濃度で提供することと、発酵処理全体を通してパントテネート化合物の濃度を維持することとを含む。
【0057】
別の実施形態では、HACD化合物を産生する方法は、宿主細胞を別個の構築及び産生培養基中で培養することを含む。例えば、この方法は、細胞が制限量のパントテネート(例えば、少量のパントテネート又はパントテネートを含まない)を含む培地中で培養され接種物を産生する構築ステージにおいて遺伝的に修飾された宿主細胞を培養することと、次いでこの接種物を、非制限量のパントテネートを含む第2の発酵培地に移すことと、第2の発酵ステージにおける定常状態条件を維持し、HACD産物を含有する細胞培養を産生することと、を含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、発酵培地1リットル当たり約10グラムを超える量で1つ以上のHACD化合物を産生するために十分である。いくつかのかかる実施形態では、HACD誘導化合物は、細胞培養の1リットル当たり約10〜約50グラム、約15グラムを超える、約20グラムを超える、約25グラムを超える、又は約30グラムを超える量で産生される。
【0059】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、1つ以上のHACD化合物を、乾燥細胞重量の1グラム当たり約50ミリグラムを超える量で産生するのに十分である。いくつかの実施形態では、組換え的に産生されるHACD化合物は、乾燥細胞重量の1グラム当たり約50〜1500ミルグラム、約100ミリグラムを超える、約150ミリグラムを超える、約200ミリグラムを超える、約250ミリグラムを超える、約500ミリグラムを超える、約750ミリグラムを超える、又は約1000ミリグラムを超える量で産生される。
【0060】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法の実行は、宿主細胞が制限量のパントテネート中で培養される構築ステージを含まない方法から得られたHACD化合物産生に比べて、遺伝的に修飾された宿主細胞の集団によるHACD化合物の増加した産生をもたらす。いくつかの実施形態では、この方法の実行は、細胞培養の単位体積当たりを基準として、宿主細胞が制限量のパントテネート中で培養される構築ステージを含まない方法により産生されるHACD化合物の量よりも少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、少なくとも約500倍、又は少なくとも約1,000倍、若しくはそれ以上の倍率の高い量で、1つ以上のHACD化合物の産生をもたらす。
【0061】
いくつかの実施形態では、この方法の実行は、単位乾燥細胞重量当たりを基準として、宿主細胞が制限量のパントテネート中で培養される構築ステージを含まない方法により産生されるHACD化合物の量よりも少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、少なくとも約500倍、又は少なくとも約1,000倍、若しくはそれ以上の倍率の高い量で、1つ以上のHACD化合物の産生をもたらす。
【0062】
いくつかの実施形態では、この方法の実行は、単位時間毎の細胞培養の単位体積当たりを基準として、宿主細胞が制限量のパントテネート中で培養される構築ステージを含まない方法により生成されるHACD化合物の量よりも少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、少なくとも約500倍、又は少なくとも約1,000倍、若しくはそれ以上の倍率の高い量で、1つ以上のHACD化合物の産生をもたらす。
【0063】
いくつかの実施形態では、この方法の実行は、単位時間毎の単位乾燥細胞重量当たりを基準として、宿主細胞が制限量のパントテネート中で培養される構築ステージを含まない方法により産生されるHACD化合物の量よりも少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、少なくとも約500倍、又は少なくとも約1,000倍、若しくはそれ以上の倍率の高い量で、1つ以上のHACD化合物の産生をもたらす。
6.2.2 培養基及び条件
【0064】
微生物培養の維持及び増殖のための材料及び方法は、微生物学及び発酵科学の分野の当業者には周知である(例えば、Baileyら著、Biochemical Engineering Fundamentals,第2版,McGraw Hill,New York,1986を参照)。宿主細胞、発酵、及びプロセスの特定の要求に応じて、適切な培養基、pH、温度、並びに好気性、微好気性、又は嫌気性条件への要求を考慮しなければならない。
【0065】
本明細書に提供されるHACD化合物を産生する方法は、限定されるものではないが細胞培養プレート、フラスコ、又は発酵槽が挙げられる好適な容器中で、好適な培養基(例えば、パントテネート補充の有無で)中で実施され得る。更に、この方法は、微生物生産物の工業生産を支援するために、当該技術分野で既知の発酵の任意のスケールで実施され得る。撹拌槽発酵槽、エアリフト式発酵槽、気泡発酵槽、又はこれらの組み合わせが挙げられる任意の好適な発酵槽が使用されてもよい。出芽酵母(サッカロマイセス・セレビシエ:Saccharomyces cerevisiae)を宿主細胞として利用する特定の実施形態では、Kosaricら著,Ullmann‘s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第6版、第12巻,398−473頁,Wiley−VCH Verlag GmbH & Co.KDaA,Weinheim,Germanyに記載されているような発酵槽内で菌株が増殖され得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるようなHACD化合物を産生する方法における使用のための培養基は、その中でHACD化合物を生成することが可能な遺伝的に修飾された微生物が生存することができるような、すなわち、少量のパントテネート補充又はパントテネートの補充が全くない状態で、増殖及び生存能力を支持かつ維持することができるような任意の培養基を含む。いくつかの実施形態では、パントテネートで補充される場合、この培養基はまた、所望のHACD化合物を産生するために必要な生合成経路を促進する。
【0067】
いくつかの実施形態では、この培養基は、同化可能な炭素、窒素及びリン酸塩源を含む水性培地である。かかる培地はまた、適切な塩、鉱物、金属及び他の栄養素も含有することができる。いくつかの実施形態では、炭素源及びパントテネート化合物以外の必須細胞栄養素のそれぞれは、発酵培地に漸次的に又は連続的に添加され、それぞれの必要とされる栄養素は、例えば、炭素源をバイオマスに転換する細胞の代謝又は呼吸機能に基づく所定の細胞増殖曲線に従って、増殖する細胞による効率的同化作用に必要な本質的に最小レベルで維持される。
【0068】
微生物を培養するための好適な条件及び好適な培地は、当該技術分野で周知である。いくつかの実施形態では、好適な培地は、例えば、誘導物質(例えば、遺伝子産物をコード化する1つ以上のヌクレオチド配列が、誘導性プロモーターの制御下にある場合)、レプレッサー(例えば、遺伝子産物をコード化する1つ以上のヌクレオチド配列が、抑制性プロモーターの制御下にある場合)、又は選択剤(例えば、遺伝子修飾を含む微生物を選択するための抗生剤)等の1つ以上の追加的薬剤で補充される。
【0069】
いくつかの実施形態では、炭素源は、単糖類(単純糖)、二糖類、多糖類、非発酵性炭素源、又は1つ以上のこれらの組み合わせである。好適な単糖類の非限定的例としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、リボース、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好適な二糖類の非限定的例としては、ショ糖、乳糖、マルトース、トレハロース、セロビオース、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好適な多糖類の非限定的例としては、デンプン、グリコーゲン、セルロース、キチン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好適な非発酵性炭素源の非限定的例としては、アセテート及びグリセロールが挙げられる。
【0070】
培養基中のグルコースなどの炭素源の濃度は、細胞増殖を促進するべきであるが、使用される微生物の増殖を抑制するほど高くあるべきではない。典型的には、増殖及びバイオマスの所望のレベルを達成するレベルではあるが、検出不可能なレベルで(約<0.1g/lである検出限界で)添加されるグルコースなどの炭素源で、培養は実行される。他の実施形態では、培養基中のグルコースなどの炭素源の濃度は、約1g/Lを超え、好ましくは約2g/Lを超え、より好ましくは5g/Lを超える。これに加えて、培養基中のグルコースなどの炭素源の濃度は、典型的には、約100g/L未満、好ましくは約50g/L未満、より好ましくは約20g/L未満である。培養成分濃度への言及は、初期及び/又は進行中の成分濃度の双方を指すことに留意すべきである。場合によっては、培養中に培養基に炭素源を枯渇させることが好ましいこともある。
【0071】
好適な培養基で使用され得る同化可能な窒素の供給源としては、単純窒素源、有機窒素源及び複合窒素源が挙げられるが、これらに限定されない。かかる窒素源としては、無水アンモニア、アンモニウム塩並びに動物、植物及び/又は微生物起源の物質が挙げられる。好適な窒素源としては、タンパク質加水分解物、微生物バイオマス加水分解物、ペプトン、酵母抽出物、硫酸アンモニウム、尿素、及びアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。典型的には、培養基中の窒素源の濃度は、約0.1g/Lを超え、好ましくは約0.25g/Lを超え、より好ましくは約1.0g/Lを超える。しかしながら、ある濃度を超えての窒素源の培養基への添加は、微生物の増殖に対して有利ではない。結果的に、培養基中の窒素源の濃度は、約20g/L未満、好ましくは約10g/L未満、より好ましくは約5g/L未満である。更に、若干の例では、培養中に培養基に窒素源を枯渇させることが好ましい場合もある。
【0072】
有効な培養基は、無機塩、ビタミン、微量金属又は成長プロモーター等の他の化合物を含有することができる。かかる他の化合物は、有効な培地中の炭素、窒素又は鉱物源中に存在し得るか、又はその培地に特別に添加され得る。
【0073】
培養基はまた、好適なリン酸塩源を含有することができる。かかるリン酸塩源は、無機及び有機双方のリン酸塩源を含む。好ましいリン酸塩源としては、一塩基性又は二塩基性のリン酸ナトリウム及びリン酸カリウム、リン酸アンモニウム並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。典型的には、培養基中のリン酸塩の濃度は、約1.0g/Lを超え、好ましくは約2.0g/Lを超え、より好ましくは5.0g/Lを超える。しかしながら、ある濃度を超えてのリン酸塩の培養基への添加は、微生物の増殖に対して有利ではない。したがって、培養基中のリン酸塩の濃度は、典型的には、約20g/L未満、好ましくは約15g/L未満、より好ましくは約10g/L未満である。
【0074】
好適な培養基はまた、マグネシウムの供給源を、好ましくは硫酸マグネシウム七水和物などの生理学的に許容可能な塩の形態で含むことができるが、マグネシウムの同様な量を与える濃度で他のマグネシウム源が使用され得る。典型的には、培養基中のマグネシウムの濃度は、約0.5g/Lを超える、好ましくは約1.0g/Lを超える、より好ましくは2.0g/Lを超える。しかしながら、ある濃度を超えてのマグネシウムの培養基への添加は、微生物の増殖に対して有利ではない。したがって、培養基中の窒素源の濃度は、約10g/L未満、好ましくは約5g/L未満、より好ましくは約3g/L未満である。更に、若干の例では、培養中に培養基にマグネシウム源を枯渇させることが好ましい場合もある。
【0075】
いくつかの実施形態では、培養基はまた、クエン酸三ナトリウムの二水和物などの生物学的に許容可能なキレート剤も含むことができる。かかる例では、培養基中のキレート剤の濃度は、約0.2g/Lを超える、好ましくは約0.5g/Lを超え、より好ましくは1g/Lを超える。しかしながら、ある濃度を超えてのキレート剤の培養基への添加は、微生物の増殖に対して有利ではない。したがって、培養基中のキレート剤の濃度は、典型的には、約10g/L未満、好ましくは約5g/L未満、より好ましくは約2g/L未満である。
【0076】
培養基はまた、培養基の所望のpHを維持するために、生物学的に許容可能な酸又は塩基を最初に含むことができる。生物学的に許容可能な酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。生物学的に許容可能な塩基としては、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、使用される塩基は、水酸化アンモニウムである。
【0077】
培養基はまた、生物学的に許容可能なカルシウム源を含むことができ、これは、限定されないが、塩化カルシウムが挙げられる。典型的には、培養基中の塩化カルシウム二水和物などのカルシウム源の濃度は、約5mg/L〜約2000mg/Lの範囲内、好ましくは約20mg/L〜約1000mg/Lの範囲内、より好ましくは約50mg/L〜約500mg/Lの範囲内である。
【0078】
培養基はまた、塩化ナトリウムも含むことができる。典型的には、培養基中の塩化ナトリウムの濃度は、約0.1g/L〜約5g/Lの範囲内、好ましくは約1g/L〜約4g/Lの範囲内、より好ましくは約2g/L〜約4g/Lの範囲内である。
【0079】
いくつかの実施形態では、培養基はまた、微量金属を含むことができる。かかる微量金属は、便宜上、培養基の残部からは別個に調製され得る原溶液として培養基に添加され得る。典型的には、培養基に添加されるかかる微量金属溶液の量は、約1ml/Lを超える、好ましくは約5ml/Lを超える、より好ましくは10ml/Lを超える。しかしながら、ある濃度を超えての微量金属の培養基への添加は、微生物の増殖に対して有利ではない。したがって、培養基に添加されるかかる微量金属溶液の量は、典型的には、約100mL/L未満、好ましくは約50mL/L未満、より好ましくは約30mL/L未満である。原溶液での微量金属を添加することに加えて、それぞれが微量金属溶液の上記範囲によって定められた成分の量に独立して対応する範囲内で、個々の成分は別個に添加され得る。
【0080】
発酵のステージに応じて培養基中に不在であるか又は存在し得るパントテネート又はB5に加えて、培養基は、ビオチン、カルシウム、パントテネート、イノシトール、ピリドキシン−HCl、及びチアミン−HCl等の他のビタミンを含むことができる。かかるビタミンは、便宜上、培養基の残部からは別個に調製され得る原溶液として培養基に添加され得る。しかしながら、ある濃度を超えてのビタミンの培養基への添加は、微生物の増殖に対して有利ではない。
【0081】
本明細書に記載の発酵法は、限定されるものではないが、バッチ法、流加法、細胞リサイクル法、連続法及び半連続法が挙げられる従来の培養モードで実施され得る。いくつかの実施形態では、発酵は、流加法モードで実行される。かかる場合には、発酵の生産ステージ中のパントテネートを含む培地の成分のいくつかは培養中に枯渇される。いくつかの実施形態では、例えば生産ステージの始めに、比較的高濃度のかかる成分で培養が補充されることで、添加が必要とされる以前に、増殖及び/又はHACD化合物産生が一定期間にわたって支援される。成分のレベルが培養によって枯渇されると同時に添加を行うことで、これら成分の好ましい範囲が、培養全体を通して維持される。培養基中の成分のレベルは、例えば、定期的に培養基をサンプリングし、濃度に関して分析評価することによって、監視され得る。あるいは、一旦標準的培養技法が開発されたら、培養全体の特定の時間における既知のレベルに対応する一定時間間隔で添加が実行され得る。当業者であれば理解されるように、栄養素の消費の速度は、培地の細胞密度が増加するにつれて、培養中に増加する。更に、外部微生物の培養基への侵入を回避するために、当該技術分野で既知のように、添加は無菌添加法を使用して実施される。これに加えて、少量の消泡剤が培養中に添加されてもよい。
【0082】
培養基の温度は、遺伝的に修飾された細胞の増殖及び/又はHACD化合物の産生に好適な任意の温度であり得る。例えば、接種物で培養基を摂取する前に、培養基を約20℃〜約45℃の範囲の温度に、好ましくは約25℃〜約40℃の範囲の温度に、より好ましくは約28℃〜約32度の範囲の温度にもっていき、この温度で維持され得る。
【0083】
培養基のpHは、培養基への酸又は塩基の添加によって制御され得る。アンモニアがpHを制御するよう使用されるような場合には、アンモニアはまた、培養基中の窒素源としても好都合に働く。好ましくは、pHは約3.0〜約8.0に、より好ましくは約3.5〜約7.0に、最も好ましくは約4.0〜約6.5に維持される。
【0084】
培養基はまた、細胞増殖を維持するための並びにHACD化合物の産生のために細胞代謝を維持するための培養の過程中に、溶解された酸素含有量を有するようにも維持され得る。培養基の酸素濃度は、酸素電極の使用を通してなどの既知の方法を使用して監視されることができる。酸素は、撹拌、振蕩又はスパージングによる培地のアジテーション及び曝気を通して、当該技術分野で既知の方法を使用して、培養基に添加されることができる。好ましくは、培養基中の酸素濃度は、大気圧及び約20℃〜約40℃の範囲の温度での培養基中の酸素の溶解度に基づいて、培地中の酸素の飽和値の約20%〜約100%の範囲にある。この範囲を下回る酸素濃度における周期的下降が培養中に起こる場合があるが、これらは培養に悪影響を及ぼさない。
【0085】
培地の曝気が空気の使用に関連付けて本明細書で記載されたが、酸素の他の供給源が使用されることもできる。特に有用なものは、周囲空気中の酸素の体積分率を超える酸素の体積分率を含有する曝気ガスの使用である。これに加えて、かかる曝気ガスは、培地に悪影響を及ぼすことがない他のガスを含むこともできる。
【0086】
いくつかの実施形態では、培養基のグルコース濃度などの炭素源濃度が、培養中に監視される。培養基のグルコース濃度は、例えば、上澄み液、例えば培養基の細胞を含まない成分中のグルコース濃度を監視するよう使用され得る、グルコースオキシダーゼ酵素テスト又は高圧液体クロマトグラフィー等の既知の技術を使用して監視され得る。先に述べたように、炭素源濃度は、細胞増殖阻害が起きるレベルよりも低く保持されるべきである。かかる濃度は、炭素源としてのグルコースに関して、生物体間で変動する場合があるが、細胞増殖阻害は約60g/Lを超えるグルコース濃度で起こり、これは試験によって容易に決定され得る。したがって、炭素源としてグルコースが使用される場合、このグルコースは発酵槽に供給され、検出限界より低く維持されることが好ましい。あるいは、培養基中のグルコース濃度は、約1g/Lから約100g/Lの範囲で、より好ましくは約2g/Lから約50g/Lの範囲で、更により好ましくは約5g/Lから約20g/Lの範囲で維持される。炭素源濃度は、例えば実質的に純粋なグルコース溶液の添加によって所望のレベル内で維持され得るが、最初の培養基のアリコートの添加によって培養基の炭素源濃度を維持することが無難でありかつ好ましい場合がある。最初の培養基のアリコートの使用は、培地中の他の栄養素(例えば、窒素及びリン酸塩源)の濃度が同時に維持され得るために望ましい場合がある。同様に、微量金属溶液のアリコートの添加によって、微量金属濃度が培養基中で維持され得る。
6.2.3 HACD化合物の回収
【0087】
宿主細胞によってHACDが一旦産生されると、HACDは、当該技術分野で既知の好適な分離及び精製法を使用して、次の使用のために回収又は単離され得る。いくつかの実施形態では、HACDを含む有機相が、遠心分離によって発酵から分離される。他の実施形態では、HACD化合物を含む有機相が、発酵から自発的に分離する。他の実施形態では、無乳化剤及び/又は核生成剤を発酵反応に添加することによって、HACD誘導化合物を含む有機相が発酵から分離される。無乳化剤の例示的な例としては、凝集剤及び凝固剤が挙げられる。核生成剤の例示的な例としては、HACD化合物それ自体の液滴並びにドデカン、イソプロピルミリストレート、及びオレイン酸メチル等の有機溶媒が挙げられる。
【0088】
これら細胞中で産生されるHACD化合物は、培養上澄み液中及び/又は宿主細胞に結合して存在することができる。HACD化合物が宿主細胞に結合されている場合の実施形態では、HACDの回収は、細胞を透過性にするか又は溶解する方法を含む。あるいは又は同時に、限定されるものではないが、クロマトグラフィー、抽出、溶媒抽出、膜分離、電気透析、逆浸透、蒸留、化学的誘導体化及び結晶化が挙げられる回収法を使用して、培養基中のHACDが回収され得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、HACD化合物は、有機相中に存在する場合がある他の産生物から分離される。いくつかの実施形態では、分離は、吸着、蒸留、ガス−液体抽出(逆抽出)、液体−液体抽出(溶媒抽出)、限界濾過、及び標準的クロマトグラフィー技術を使用して可能となる。
【0090】
いくつかの実施形態では、回収されたHACD化合物は純粋であり、例えば、少なくとも約40%純粋、少なくとも約50%純粋、少なくとも約60%純粋、少なくとも約70%純粋、少なくとも約80%純粋、少なくとも約90%純粋、少なくとも約95%純粋、少なくとも約98%純粋、又は98%を超えて純粋であり、ここでHACD化合物における「純粋」とは、他のHACD化合物、汚染物質等を含まないHACD化合物を指す。
6.3 遺伝的に修飾された微生物
【0091】
本明細書に提供されるものは、異種アセチル−CoA誘導(HACD)化合物を産生する遺伝的に修飾された微生物(例えば、遺伝的に修飾された出芽酵母=サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)細胞)である。この遺伝的に修飾された微生物は、本明細書に記載の遺伝的修飾を欠如する親微生物に比較して、アセチル−CoAから生合成された1つ以上の化合物をより大量に産生する。
【0092】
例えば、宿主細胞中で1つ以上のHACD化合物の産生の増加をもたらすために、発現ベクター又は染色体導入構築物を使用する微生物を遺伝的に修飾する方法は、当該技術分野で周知である。例えば、Sherman,Fら著,Methods Yeast Genetics,Cold Spring Harbor Laboratory,N.Y.(1978);Guthrie,C.ら(編集),Guide To Yeast Genetics and Molecular Biology 第194巻,Academic Press,San Diego(1991);Sambrookら著,2001,Molecular Cloning−A Laboratory Manual,第3版,Cold Spring Harbor Laboratory,N.Y.;及びAusubelら編集,現行版,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and Wiley Interscience,NY(これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。これに加えて、例えば、細胞中での1つ以上のHACD化合物の産生の増加をもたらす遺伝子発現の阻害は、欠失、変異、及び/又は遺伝子再構成によって達成され得る。これはまた、アンチセンスRNA、siRNA、miRNA、リボザイム、三重鎖DNA、並びに転写及び/又は翻訳阻害剤の使用でも実行され得る。更に、トランスポゾンが遺伝子発現を崩壊するために使用され得、これは例えば、トランスポゾンをプロモーターとコード化領域との間に挿入することによって、又は2つの遺伝子の一方又は双方を不活性化するために2つの隣接する遺伝子間に挿入することによる。
【0093】
いくつかの実施形態では、細胞中のHACD化合物の産生の増加は、特定のタンパク質、例えば、上記記載のような生合成経路に関与するタンパク質を発現するための発現ベクターの使用によって影響される。一般的に、発現ベクターは、複製シグナル及び発現制御配列、例えば、ポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列に作用的に結合されたプロモーター及びターミネーターを含む組換えポリヌクレオチド分子である。ポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を発現するために有用な発現ベクターとしては、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)、プラスミドベクター、及びコスミドが挙げられる。酵母細胞中での使用に好適な発現ベクターの例示的な例としては、限定されないが、CEN/ARS及び2μプラスミドが挙げられる。酵母細胞中での使用に好適なプロモーターの例示的な例としては、限定されないが、クルイベロミセス・ラクチス(K.lactis)のTEF1遺伝子のプロモーター、出芽酵母=サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のPGK1遺伝子のプロモーター、出芽酵母=サッカロマイセス・セレビシエのTDH3遺伝子のプロモーター、抑制性プロモーター、例えばサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のCTR3遺伝子のプロモーター、及び誘導性プロモーター、例えば出芽酵母=サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のガラクトース誘導性プロモーター(例えば、GAL1、GAL7、及びGAL10遺伝子のプロモーター)が挙げられる。
【0094】
発現ベクター及び染色体導入構築物は、限定されるものではないが、当業者に既知の任意の方法によって微生物細胞に導入され得る。例えば、Hinnenら著,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:1292−3(1987);Creggら著,Mol.Cell.Biol.5:3376−3385(1985);米国特許第5,272,065号;Goeddelら編集,1990,Methods in Enzymology,第185巻,Academic Press,Inc.,CA;Krieger著,1990,Gene Transfer and Expression−A Laboratory Manual,Stockton Press,NY;Sambrookら著,1989、Molecular Cloning−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,N.Y.;及びAusubelら編集,現行版,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and Wiley Interscience,NYを参照されたい。例示的技術としては、スフェロプラスト、電気穿孔、PEG 1000媒介形質転換、及び酢酸リチウム又は塩化リチウム媒介形質転換が挙げられるが、これらに限定されない。
6.3.1 宿主細胞
【0095】
本明細書に提供される方法及び組成物で有用な細胞は、HACD化合物、例えばイソプレノイド、ポリケチド、脂肪酸等を天然に又は組換えにより産生することが可能な任意の細胞を含む。いくつかの実施形態では、この細胞は、原核細胞である。いくつかの実施形態では、この細胞は細菌細胞である。いくつかの実施形態では、この細胞は大腸菌(Escherichia coli)細胞である。いくつかの実施形態では、この細胞は真核細胞である。いくつかの実施形態では、この細胞は哺乳類細胞である。いくつかの実施形態では、この細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS−7細胞、マウス線維芽細胞、マウス胎生期癌細胞、又はマウス胚幹細胞である。いくつかの実施形態では、この細胞は、昆虫細胞である。いくつかの実施形態では、この細胞はS2細胞、Schneider細胞、S12細胞、5B1−4細胞、Tn5細胞、又はSf9細胞である。いくつかの実施形態では、この細胞は単細胞生真核生物細胞である。
【0096】
いくつかの実施形態では、この細胞は菌糸体細菌細胞である。いくつかの実施形態では、この菌糸体細菌細胞は、放線菌綱の細胞である。特定の実施形態では、この菌糸体細菌細胞はストレプトマイセス属の細胞であり、例えば、ストレプトマイセス・アムボファシエンス(Streptomayces ambofacience)、ストレプトマイセス・アベルミチリス(Streptomayces avermitilis)、ストレプトマイセス・アズレウス(Streptomayces azureus)、ストレプトマイセス・シンナモネンシス(Streptomayces cinnamonensis)、ストレプトマイセス・コエリコロール(Streptomayces coelicolor)、ストレプトマイセス・クラコイ(Streptomayces curacoi)、ストレプトマイセス・エリスラエウス(Streptomayces erythraeus)、ストレプトマイセス・フラジアエ(Streptomayces fradiae)、ストレプトマイセス・ガリラエウス(Streptomayces galilaeus)、ストレプトマイセス・グラウケッセンス(Streptomayces glaucescens)、ストレプトマイセス・ヒグロスコピクス(Streptomayces hygroscopicus)、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomayces lividans)、ストレプトマイセス・パルブルス(Streptomayces parvulus)、ストレプトマイセス・ペウセチウス(Streptomayces peucetius)、ストレプトマイセス・リモスス(Streptomayces rimosus)、ストレプトマイセス・ロセオフルブス(Streptomayces roseofulvus、ストレプトマイセス・サーモトレランス(Streptomayces thermotolerans)、ストレプトマイセス・ビオラセオルベル(Streptomayces violaceoruber)である。
【0097】
別の実施形態では、この細胞は真菌細胞である。より特定の実施形態では、この細胞は酵母細胞である。本明細書に提供される方法及び組成物において有用な酵母は、微生物寄託機関(例えば、IFO、ATCC等)で寄託された酵母が挙げられ、アシクロコニディウム属(Aciculoconidium属)、アンブロシオザイマ属(Ambrosiozyma属)、アルスロアスカス属(Arthroascus属)、アルキシオザイマ属(Arxiozyma属),アシュビア属(Ashbya属),バブジェビア属(Babjevia属)、ベンシングトニア属(Bensingtonia属)、ボトリオアスカス属(Botryoascus属)、ボトリオザイマ属(Botryozyma属)、ブレッタノマイセス属(Brettanomyces属)、ビュレラ属(Bullera属)、ビュレロマイセス属(Bulleromyces属)、キャンディダ属(Candida属)、シテロマイセス属(Citeromyces属)、クラビスポラ属(Clavispora属)、クリプトコッカス属(Cryptococcus属)、シストフィロバシディウム属(Cystofilobasidium属)、デバリオマイセス属(Debaryomyces属)、デッカラ属(Dekkara属)、ディポダスコプシス属(Dipodascopsis属)、ディポダスカス属(Dipodascus属)、エニエラ属(Eeniella属)、エンドマイコプセラ属(Endomycopsella属)、エレマスカス属(Eremascus属)、エレモセシウム属(Eremothecium属)、エリスロバシディウム属(Erythrobasidium属)、フェロマイセス属(Fellomyces属)、フィロバシディウム属(Filobasidium属)、ガラクトマイセス属(Galactomyces属)、ゲオトリクム属(Geotrichum属)、ガイラーモンデラ属(Guilliermondella属)、ハンセニアスポラ属(Hanseniaspora属)、ハンセヌラ属(Hansenula属)、ハセガワエア属(Hasegawaea属)、ホルターマンニア属(Holtermannia属)、ホルモアスカス属(Hormoascus属)、ハイフォピキア属(Hyphopichia属)、イサットヘンキア属(Issatchenkia属)、クロエケラ属(Kloeckera属)、クロエケラスポラ属(Kloeckeraspora属)、クルイベロマイセス属(Kluyveromyces属)、コンドア属(Kondoa属)、クライシア属(Kuraishia属)、クルツマノマイセス属(Kurtzmanomyces属)、ロイコスポリディウム属(Leucosporidium属)、リポマイセス属(Lipomyces属)、ロデロマイセス属(Lodderomyces属)、マラセジア属(Malassezia属)、メトシュニコウィア属(Metschnikowia属)、ムラキア属(Mrakia属)、マイクソザイマ属(Myxozyma属)、ナドソニア属(Nadsonia属)、ナカザワエア属(Nakazawaea属)、ネマトスポラ属(Nematospora属)、オガタエア属(Ogataea属)、オースポリディウム属(Oosporidium属)、パチソレン属(Pachysolen属)、ファチコスポラ属(Phachytichospora属)、ファフィア属(Phaffia属)、ピキア属(Pichia属)、ロドスポリディウム属(Rhodosporidium属)、ロドトルラ属(Rhodotorula属)、サッカロマイセス属(Saccharomyces属)、サッカロマイコーデス属(Saccharomycodes属)、サッカロマイコプシス属(Saccharomycopsis属)、サイトエラ属(Saitoella属)、サカグチア属(Sakaguchia属)、サターノスポラ属(Saturnospora属)、シゾブラストスポリオン属(Schizoblastosporion属)、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces属)、シュワニオマイセス属(Schwanniomyces属)、スポリディオボラス属(Sporidiobolus属)、スポロボロマイセス属(Sporobolomyces属)、スポロパキデミア属(Sporopachydermia属)、ステファノアスカス属(Stephanoascus属)、ステリグマトマイセス属(Sterigmatomyces属)、ステリグマトスポリディウム属(Sterigmatosporidium属),シンビオタフリナ属(Symbiotaphrina属)、シンポディオマイセス属(Sympodiomyces属),シンポディオマイコプシス属(Sympodiomycopsis属)、トルラスポラ属(Torulaspora属)、トリコスポリエラ属(Trichosporiella属)、トリコスポロン属(Trichosporon属),トリゴノプシス属(Trigonopsis属)、ツチヤエア属(Tsuchiyaea属)、ウデニオマイセス属(Udeniomyces属)、ワルトマイセス属(Waltomyces属)、ウィカーハミア属(Wickerhamia属)、ウィカーハミエラ属(Wickerhamiella属)、ウィリオプシス属(Williopsis属),ヤマダザイマ属(Yamadazyma属)、ヤロウィア属(Yarrowia属)、ザイゴアスカス属(Zygoascus属)、ザイゴサッカロマイセス属(Zygosaccharomyces属)、ザイゴウィリオプシス属(Zygowilliopsis属)、及びザイゴザイマ属(Zygozyma属)等に属する。特定の実施形態では、本発明で提供される方法及び組成物における有用な酵母としては、出芽酵母=サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、デッケラ・ブルキセレンシス(Dekkera bruxellensis)、クルイベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)(以前はサッカロマイセス・ラクティス:Saccharomyces lactisと呼ばれた)、クルイベロマイセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)、アークスラ・アデニニボランス(Arxula adeninivorans)、又はハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)(現在、ピキア・アングスタ(Pichia angusta)として既知))が挙げられる。いくつかの実施形態では、この微生物は、キャンディダ・リポリチカ(Candida lipolytica)、キャンディダ・ギリエルモンディ(Candida guilliermondii)、キャンディダ・クルセイ(Candida krusei)、キャンディダ・シュードトロピカリ(Candida pseudotropicalis)、又はキャンディダ・ウチリス(Candida utilis)などのキャンディダ属(Candida属)の菌株である。
【0098】
特定の実施形態では、この細胞は、出芽酵母=サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)細胞である。いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)細胞の菌株は、パン酵母、CBS 7959、CBS 7960、CBS 7961、CBS 7962、CBS 7963、CBS 7964、IZ−1904、TA、BG−1、CR−1、SA−1、M−26、Y−904、PE−2、PE−5、VR−1、BR−1、BR−2、ME−2、VR−2、MA−3、MA−4、CAT−1、CB−1、NR−1、BT−1、及びAL−1からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の菌株は、PE2、CAT−1、VR−1、BG−1、CR−1、及びSA−1からなる群から選択される。特定の実施形態では、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の菌株は、PE−2である。特定の実施形態では、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の菌株は、CAT−1である。別の特定の実施形態では、出芽酵母=サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の菌株は、BG−1である。
【0099】
いくつかの実施形態では、この細胞は半数体微生物細胞である。他の実施形態では、この細胞は二倍体微生物細胞である。いくつかの実施形態では、この細胞は異型接合体である。他の実施形態では、この細胞は、その交配型対立遺伝子に関するもの以外のホモ接合体(すなわち、この細胞が胞子形成するべき場合、得られる4つの半数体微生物細胞は、それらの交配型対立遺伝子を除いては遺伝的に同一であり、その中で、半数体細胞の2つは交配型aであり、他の2つの半数体細胞は交配型αである)である。
【0100】
いくつかの実施形態では、この細胞は、工業的発酵、例えばバイオエタノール発酵に好適である細胞である。特定の実施形態では、この細胞は、工業的発酵環境のストレス条件として認識されている高溶媒濃度、高温、拡大された基質利用、栄養制限、浸透圧因性ストレス、酸性度、亜硫酸塩及び細菌混入、又はこれらの組み合わせ下で生存するよう調節される。例示的HACD化合物を産生する細胞、例えばイソプレノイド、ポリケチド、及び脂肪酸を組換え的に産生する細胞、並びにかかる細胞を産生するための方法が、以下に提供される。
6.4 イソプレノイドの産生
【0101】
いくつかの実施形態では、HACD化合物はイソプレノイドである。イソプレノイドは、IPPに由来し、酵母中のIPPは、MEV経路の酵素によって生合成される(図6)。MEV経路を介して産生されるIPPは、その異性体であるDMAPPに転換され得、縮合され、様々な追加的酵素の作用を通して修飾され、単純なHACDイソプレノイド化合物及びより複雑なHACDイソプレノイド化合物を形成することができる(図7)。
【0102】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される遺伝的に修飾された微生物は、MEV経路の酵素、IPPイソメラーゼ、ポリプレニルシンターゼ、並びにポリプレニルを修飾してヘミテルペン、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン、テトラテルペン、ポリテルペン、ステロイド化合物、カロテノイド、又は修飾されたHACD化合物を形成することができる酵素からなる群から選択される酵素をコード化する異種ヌクレオチド配列を含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、イソプレノイド産生細胞は、アセチル−補酵素Aの2つの分子を縮合してアセトアセチル−CoAを形成することができる酵素、例えばアセチル−CoAチオラーゼをコード化する異種ヌクレオチド配列を含む。かかる酵素をコード化するヌクレオチド配列の例示的な例としては、(NC_000913 REGION:2324131.2325315;大腸菌=エッシェリキア・コリ(Escherichia coli))、(D49362;パラコッカス・デニトリフィカンス)、及び(L20428;出芽酵母=サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
いくつかの実施形態では、イソプレノイド産生細胞は、アセトアセチル−CoAをアセチル−CoAの別の分子と縮合して3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoA(HMG−CoA)を形成することができる酵素、例えばHMG−CoAシンターゼをコード化する異種ヌクレオチド配列を含む。かかる酵素をコード化するヌクレオチド配列の例示的な例としては、(NC_001145.補体19061.20536;出芽酵母=サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))、(X96617;出芽酵母=サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))、(X83882;アラビドプシス・タリアナ(Aravidopsis thaliana))、(AB037907;キタサトスポラ・グリセオラ(Kitasatospora griseola))、(BT007302;ヒト=ホモ・サピエンス(Homo sapiens))、及び(NC_002758、Locusタグ SAV2546、GeneID 1122571;黄色ブドウ球菌=スタフィロコッカス・アウレウス(Sraphylococcus aureus))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
いくつかの実施形態では、イソプレノイド産生細胞は、HMG−CoAをメバロネートに転換することができる酵素、例えばHMG−CoAレダクターゼをコード化する異種ヌクレオチド配列を含む。かかる酵素をコード化するヌクレオチド配列の例示的な例としては、(NM_206548;ショウジョウバエ=ドロソフィラ・メラノガスター(Drosophila melanogaster))、(NC_002758、Locusタグ SAV2545、GeneID 1122570;黄色ブドウ球菌=スタフィロコッカス・アウレウス(Sraphylococcus aureus))、(NM_204485;ニワトリ=ガッルス・ガッルス(Gallus gallus))、(AB015627;ストレプトマイセス(Streptomyces)属 KO3988)、(AF542543;ニコチアナ・アテヌアタ(Nicotiana attenuata)、(AB037907;キタサトスポラ・グリセオラ(Kitasatospora griseola))、(AX128213、切断HMGRをコード化する配列を提供、出芽酵母=サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))、及び(NC_001145:補体(115734.118898;出芽酵母=サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
いくつかの実施形態では、イソプレノイド産生細胞は、メバロネートをメバロネート−5−リン酸に転換することができる酵素、例えばメバロネートキナーゼをコード化する異種ヌクレオチド配列を含む。かかる酵素をコード化するヌクレオチド配列の非限定的例としては、(L77688;アラビドプシス・タリアナ(Aravidopsis thaliana))及び(X55875;出芽酵母=サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0107】
いくつかの実施形態では、イソプレノイド産生細胞は、メバロネート−5−リン酸をメバロネート5−ピロリン酸に転換することができる酵素、例えばホスフォメバロネートキナーゼをコード化する異種ヌクレオチド配列を含む。かかる酵素をコード化するヌクレオチド配列の非限定的例としては、(AF429385;バラゴムノキ=ヘベア・ブラシリエンシス(Hevea brasiliensis))、(NM_006556;ヒト=ホモ・サピエンス(Homo sapiens))、及び(NC_001145:補体(712315.713670;出芽酵母=サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
いくつかの実施形態では、イソプレノイド産生細胞は、メバロネート5−ピロリン酸をIPPに転換することができる酵素、例えばメバロネートピロリン酸デカルボキシラーゼをコード化する異種ヌクレオチド配列を含む。かかる酵素をコード化するヌクレオチド配列の非限定的例としては、(X97557;出芽酵母=サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))、(AF290095;エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium))、及び(U49260;ヒト=ホモ・サピエンス(Homo sapiens))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
いくつかの実施形態では、イソプレノイド産生細胞は、MEV経路を介して産生されたIPPをDMAPPに転換することができる酵素、例えばIPPイソメラーゼをコード化する異種ヌクレオチド配列を含む。かかる酵素をコード化するヌクレオチド配列の非限定的例としては、(NC_000913,3031087.3031635;大腸菌=エッシェリキア・コリ(Escherichia coli))、及び(AF082326;ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
いくつかの実施形態では、イソプレノイド産生細胞は、IPP及び/又はDMAPP分子を縮合して、5個を超える炭素を含有するポリプレニル化合物を形成することができるポリプレニルシンターゼをコード化する異種ヌクレオチド配列を含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、イソプレノイド産生細胞は、IPPの1つの分子をDMAPPの1つの分子と縮合してゲラニルピロリン酸(「GPP」)の1つの分子を形成することができる酵素、例えばGPPシンターゼをコード化する異種ヌクレオチド配列を含む。かかる酵素をコード化するヌクレオチド配列の非限定的例としては、(AF513111;グランディスモミ=アビエス・グランディス(Abies grandis))、(AF513112;グランディスモミ=アビエス・グランディス(Abies grandis))、(AF513113;グランディスモミ=アビエス・グランディス(Abies grandis))、(AY534686;ゴマノハグサ=アンティリヌム・マユス(Antirrhinum majus))、(AY534687;ゴマノハグサ=アンティリヌム・マユス(Antirrhinum majus))、(Y17376;アラビドプシス・タリアナ(Aravidopsis thaliana))、(AE016877、Locus AP11092;セレウス菌=バチルス・セレウス(Bacillus cereus);ATCC 14579)、(AJ243739;オレンジスイート=シトラス・シネンシス(Citrusu sinensis))、(AY534745;クラーキア・ブレウェリ(Clarkia breweri)、(AY953508;イプス・ピニ)、(DQ286930;トマト=リコペルシコン・エスクレンタム(Lycopersicon esculentum))、(AF182828;ペパーミント=メンタxピペリタ(Mentha x piperita)、(AF182827;ペパーミント=メンタxピペリタ(Mentha x piperita)、(MPI249453;ペパーミント=メンタxピペリタ(Mentha x piperita)、(PZE431697、Locus CAD24425;パラコッカス・ゼアキサンチニファシエンス(Paracoccus zeaxanthinifaciens)、AY866498;コオウレン=ピクロリザ・クローア(Picrorhiza kurroa))、(AY35186;ヨーロッパブドウ=ヴィティス・ヴィニフェラ(Vitis vinifera)及び(AF203881、Locus AAF12843;チモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
いくつかの実施形態では、イソプレノイド産生細胞は、IPPの2つの分子をDMAPPの1つの分子と縮合し、又はIPPの分子をGPPの分子に添加して、ファルネシルピロリン酸(「FPP」)を形成することができる酵素、例えばFPPシンターゼをコード化する異種ヌクレオチド配列を含む。かかる酵素をコード化するヌクレオチドの例示的な例としては、(ATU80605;アラビドプシス・タリアナ(Aravidopsis thaliana))、(ATHFPS2R;アラビドプシス・タリアナ(Aravidopsis thaliana))、(AAU36376;スイートワームウッド=アルテミシア・アンヌア(Arthemisia annua))、(AF461050;ウシ=ボース・タウルス(Bos taurus)、(D00694;大腸菌=エッシェリキア・コリ(Escherichia coli)K−12)、(AE009951、Locus AAL95523;フソバクテリウム・ヌクレアタム亜種ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum subsp. nucleatum)ATCC 25586)、(GFFPPSGEN;イネばか苗病菌=ジベレラ・フジクロイ(Gibberella fujikuroi))、(CP000009、Locus AAW60034;グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)621H)、(AF019892;ヒマワリ=ヘリアンサス・アンヌス(Helianthus annuus))、(HUMFAPS;ヒト=ホモ・サピエンス(Homo sapiens))、(KLPEPSQCR;キラー酵母=クリベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis))、(LAU15777;シロバナハウチワマメ=ルピナス・アルバス(Lupinus albus))、(LAU20771;シロバナハウチワマメ=ルピナス・アルバス(Lupinus albus))、(AF309508;ハツカネズミ=ムス・ムスクルス(Mus musculus))、(NCFPPSGEN;アオカビ=ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa))、(PAFPS1;グアユールゴムノキ=パルテニウム・アルジュンタトゥム(Parthenium argentatum))、(RATFAPS;ラット=ラタス・ノルベジカス(Rattus norvegicus))、(YSCFPP;出芽酵母=サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))、(D89104;シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe))、(CP000003、Locus AAT87386;ストレプトコッカス・ピオジェネス(Streptococcus pyogenes))、(CP000017、Locus AAZ51849;ストレプトコッカス・ピオジェネス(Streptococcus pyogenes))、(NC_008022、Locus YP_598856;ストレプトコッカス・ピオジェネス(Streptococcus pyogenes)MGAS10270)、(NC_008023、Locus YP_600845;ストレプトコッカス・ピオジェネス(Streptococcus pyogenes)MGAS2096)、(NC_008024、Locus YP_602832;ストレプトコッカス・ピオジェネス(Streptococcus pyogenes)MGAS10750))、(MZEFPS;トウモロコシ=ゼア・マイス(Zea mays))、(AE000657、Locus AAC06913;アキフェックス・アエオリクス(Aquifex aeolicus))、(NM_202836;アラビドプシス・タリアナ(Aravidopsis thaliana))、(D84432、Locus BAA12575;枯草菌=バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis))、U12678、Locus AAC28894;ダイズ根粒菌=ブラディリゾビウム・ジャポニカム(Bradyrhizobium japonicum)USDA 110))、(BACFDPS;ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus))、(NC_002940、Locus NP_873754;軟性下疳菌=ヘモフィルス・デュクレイ(Haemophilus ducreyi)35000HP))、(L42023、Locus AAC23087;インフルエンザン菌=ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)RdKW20))、(J05262;ヒト(Homo sapiens))、(YP_395294;ラクトバチルス・サケイ・亜種サケイ(Lactobacillus sakei subsp.sakei)23K)、(NC_005823、Locus YP_000273;レプトスピラ・インテロガンス血清型変種コペンハーゲニー(Leptospira interrogans serovar Copenhageni)菌株Fiocruz L1−130))、(AB003187;ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus Luteus))、(NC_002946、Locus YP_208768;淋菌=ナイセリア・ゴノレア(Neisseria gonorrhoeae)FA 1090))、(U00090、Locus AAB91753;リゾビウム(Rhizobium)種 NGR234)、(J05091;出芽酵母=サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisae))、(CP000031、Locus AAV93568;シリシバクター・ポメロイ(Silicibacter pomeroyi)DSS−3)、(AE008481、Locus AAK99890;肺炎連鎖球菌=ストレプトコッカス ニューモニエ(Streptococcus neumoniae)R6)、及び(NC_004556、Locus NP779706;キシレラ・ファスティディオーサ・テメキュラ1(Xylella Fastidiosa Temecula 1))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0113】
いくつかの実施形態では、イソプレノイド産生細胞は、IPP及びDMAPP若しくはIPP及びFPPを結合して、ゲラニルゲラニルピロリン酸(「GGPP」)を形成することができる酵素をコード化する異種ヌクレオチド配列を更に含む。かかる酵素をコード化するヌクレオチド配列の例示的な例としては、(ATHGERPYRS;アラビドプシス・タリアナ(Aravidopsis thaliana))、(BT005328;アラビドプシス・タリアナ(Aravidopsis thaliana))、(NM_119845:アラビドプシス・タリアナ(Aravidopsis thaliana))、(NZ_AAJM01000380、Locus ZP_00743052;バチルス・チューリンジェンシス血清型変種イスラエレンシス(Bacillus thuringiensis serovor israelensis)、ATCC 35646 sq1563)、(CRGGPPS;ニチニチソウ=カタランサス・ロセウス(Catharanthus roseus)、(NZ_AABF02000074、Locus ZP_00144509;フソバクテリウム・ヌクレアタム亜種ヴィンセンティー(Fusobacterium nucleatum subsp. vincentii)ATCC 25586)、(GFGGPPSGN;イネばか苗病菌=ジベレラ・フジクロイ(Gibberella fujikuroi))、(AY371321;イチョウ=ギンクゴ・ビロバ(Ginkgo biloba))、(AB055496;バラゴムノキ=ヘベア・ブラシリエンシス(Hevea brasiliensis))、(AB017971;ヒト=ホモ・サピエンス(Homo sapiens))、(MCI276129;ムコール・サーシネロイデス(Mucor circinelloides)f.lusitanicus)、(AB016044;ハツカネズミ=ムス・ムスクルス(Mus musculus)、(AABX01000298、Locus NCU01427;青かび=ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)、(NCU20940;青かび=ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)、(NZ_AAKL01000008、Locus ZP_00943566;ラルストニア・ソラナセアラム(Ralstonia solanacearum)UW551)、(AB118238;ラタス・ノルベジカス(Rattus norvegicus))、(SCU31632;出芽酵母=サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisae))、(AB016095;シネココッカス・エロンガタス(Synechococcus elongatus))、(SAGGPS;和ガラシ=シナピス・アルバ(Sinapis alba))、(SSOGDS;スルフォロブス・アシドカルダリウス(Sufolobus acidocaldarius)、(NC_007759、Locus YP_461832;シントロファス・アシディトロフィクス(Syntrophus aciditrophicus)SB)、(NC_006840、Locus YP_204095;海洋性発光細菌=ビブリオ・フィシェリ(Vibrio fischeri)ES114)、(NM_112315;アラビドプシス・タリアナ(Aravidopsis thaliana))、(ERWCRTE;パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans))、(D90087、Locus BAA14124;パントエア・アナナティス(Pantoea ananatis))、(X52291、Locus CAA36538;ロドバクター・カプスラータス(Rhodobacter capsulatus)、(AF195122、Locus AAF24294;ロドバクター・スファエロイデス(Rhodobacter sphaeroides))、及び(NC_004350、Locus NP_721015;ミュータンス菌=ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)UA159)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される遺伝的に修飾された微生物は、ポリプレニルを修飾してヘミテルペン、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン、テトラテルペン、ポリテルペン、ステロイド化合物、カロテノイド、又は修飾されたHACD化合物を形成することができる酵素をコード化する異種ヌクレオチド配列を更に含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、異種ヌクレオチドは、カレンシンターゼをコード化する。好適なヌクレオチドの例示的な例としては、(AF461460、REGION 4..1926;ヨーロッパトウヒ=ピセア・アビエス(Picea abies))及び(AF527416、REGION 78..1871;サルビア・ステノフィラ(Salvia stenophylla))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
いくつかの実施形態では、異種ヌクレオチドは、ゲラニオールシンターゼをコード化する。好適なヌクレオチド配列の例示的な例としては、(AJ457070;シナモン・テヌイピルム(Cinnamomum tenuipilum))、(AY362553;スイートバジル=オキムム・バジリクム(Ocimum basilicum)、(DQ234300;シソ=ペリラ・フルテッセンス(Perilla frutescens)種1864)、(DQ234299;レモンエゴマ=ペリラ・シトリオデーラ(Perilla citriodora)種4935)、及び(DQ088667;レモンエゴマ=ペリラ・シトリオデーラ(Perilla citriodora)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
いくつかの実施形態では、異種ヌクレオチドは、リナロオールシンターゼをコード化する。好適なヌクレオチド配列の例示的な例としては、(AF497485;アラビドプシス・タリアナ(Aravidopsis thaliana))、(AC002294、Locus AAB71482;アラビドプシス・タリアナ(Aravidopsis thaliana))、(AY059757;アラビドプシス・タリアナ(Aravidopsis thaliana))、(NM_104793;アラビドプシス・タリアナ(Aravidopsis thaliana))、(AF154124;スイートワームウッド=アルテミシア・アンヌア(Artemisia annua))、(AF067603;クラーキア・ブレウェリ(Clarkia breweri)、(AF067602;クラーキア・コンキンナ)、(AF067601;クラーキア・ブレウェリ(Clarkia breweri)、(U58314;クラーキア・ブレウェリ(Clarkia breweri)、(AY840091;トマト=リコペルシコン・エスクレンタム(Lycopersicon esculentum))、(DQ263741;ラベンダー=ラバンデュラ・アンギュスティフォリア(Lavandula angustifolia)、(AY083653;(ミズハッカ=メンタ・シトラタ(Mentha citrata)、(AY693647;スイートバジル=オキムム・バジリクム(Ocimum basilicum)、(XM_463918;イネ=オリザ・サティバ(Oryza sativa))、(AP004078、Locus BAD07605;イネ=オリザ・サティバ(Oryza sativa))、(XM_463918、Locus XP_463918;イネ=オリザ・サティバ(Oryza sativa))、(AY917193;レモンエゴマ=ペリラ・シトリオデーラ(Perilla citriodora))、(AF271259;シソ=ペリラ・フルテッセンス(Perilla frutescens))、(AY473623;ヨーロッパトウヒ=ピセア・アビエス(Picea abies))、(DQ195274;シトカトウヒ=ピセア・シトケンシス(Picea sitchensis)、及び(AF444798;シソ=ペリラ・フルテッセンス変種クリスパ(Perilla frutescens)var.crispa)栽培品種No.79)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
いくつかの実施形態では、異種ヌクレオチドは、リモネンシンターゼをコード化する。好適なヌクレオチド配列の例示的な例としては、(+)−リモネンシンターゼ(AF514287、REGION:47.1867;レモン=シトラス・リモン(Citrus limon))及び(AY055214、REGION:48.1889;カワミドリ=アガスターシェ・ルゴサ(Agastache rugosa)並びに(−)−リモネンシンターゼ(DQ195275、REGION;1.1905;シトカトウヒ=ピセア・シトケンシス(Picea sitchensis)、(AF006193、REGION:73.1986;アビエス・グランディス(Abies grandis))、及び(MHC4SLSP、REGION:29.1828;ミドリハッカ=メンタ・スピカタ(Mentha spicata))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
いくつかの実施形態では、異種ヌクレオチドは、ミルセンシンターゼをコード化する。好適なヌクレオチド配列の例示的な例としては、(U87908;アビエス・グランディス(Abies grandis))、(AY195609;キンギョソウ=アンティリヌム・マユス(Antirrhinum majus))、(AY105608;キンギョソウ=アンティリヌム・マユス(Antirrhinum majus))、(NM_127982;アラビドプシス・タリアナ(Aravidopsis thaliana)TPS10)、(NM_113485;アラビドプシス・タリアナ(Aravidopsis thaliana)ATTPS−CIN)、(NM_113483;アラビドプシス・タリアナ(Aravidopsis thaliana)ATTPS−CIN)、(AF271259;シソ=ペリラ・フルテッセンス(Perilla frutescens))、(AY473626;ヨーロッパトウヒ=ピセア・アビエス(Picea abies))、(AF369919;ヨーロッパトウヒ=ピセア・アビエス(Picea abies))、及び(AJ304839;西洋ヒイラギカシ=クエルクス・イレックス(Quercus ilex)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0120】
いくつかの実施形態では、異種ヌクレオチドは、オシメンシンターゼをコード化する。好適なヌクレオチド配列の例示的な例としては、(AY195607;キンギョソウ=アンティリヌム・マユス(Antirrhinum majus))、(AY195609;キンギョソウ=アンティリヌム・マユス(Antirrhinum majus))、(AY195608;キンギョソウ=アンティリヌム・マユス(Antirrhinum majus))、(AK221024;アラビドプシス・タリアナ(Aravidopsis thaliana))、(NM_113485;アラビドプシス・タリアナ(Aravidopsis thaliana)ATTPS−CIN)、(NM_113483;アラビドプシス・タリアナ(Aravidopsis thaliana)ATTPS−CIN)、(NM_117775;アラビドプシス・タリアナ(Aravidopsis thaliana)ATTPS03)、(NM_001036574;アラビドプシス・タリアナ(Aravidopsis thaliana)ATTPS03)、(NM_127982;アラビドプシス・タリアナ(Aravidopsis thaliana)TPS10)、(AB110642;ウンシュウミカン=シトラス・ウンシュウ(Citrus unshiu)CitMTSL4)、及び(AY575970;ミヤコグサ=ロータス・コルニクラタス(Lotus corniculantus)変種ジャポニカス(japonicus)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
いくつかの実施形態では、異種ヌクレオチドは、α−ピネンシンターゼをコード化する。好適なヌクレオチド配列の例示的な例としては、(+)α−ピネンシンターゼ(AF543530、REGION:1.1887;テーダマツ=ピヌス・タエダ(Pinus taeda)、(−)α−ピネンシンターゼ(AF543527、REGION:32.1921;テーダマツ=ピヌス・タエダ(Pinus taeda)、及び(+)/(−)α−ピネンシンターゼ(AGU87909、REGION:6111892;アビエス・グランディス(Abies grandis))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
いくつかの実施形態では、異種ヌクレオチドは、β−ピネンシンターゼをコード化する。好適なヌクレオチド配列の例示的な例としては、(−)β−ピネンシンターゼ(AF276072、REGION:1.1749;スイートワームウッド=アルテミシア・アンヌア(Artemisia annua)及び(AF514288、REGION:26.1834;レモン=シトラス・リモン(Citrus limon))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
いくつかの実施形態では、異種ヌクレオチドは、サビネンシンターゼをコード化する。好適なヌクレオチド配列の例示的な例としては、セージ=サルビア・オフィシナリス(Salvia officinalis)からのAF051901、REGION:26.1798が挙げられるが、これに限定されない。
【0124】
いくつかの実施形態では、異種ヌクレオチドは、γ−テルピネンシンターゼをコード化する。好適なヌクレオチド配列の例示的な例としては、(レモン=シトラス・リモン(Citrus limon)からのAF514286,REGION:30.1832)及び(ウンシュウミカン=シトラス・ウンシュウ(Citrus unshiu)からのAB110640、REGION 1.1803)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0125】
いくつかの実施形態では、異種ヌクレオチドは、テルピノレンシンターゼをコード化する。好適なヌクレオチド配列の例示的な例としては、(バジル=オシムム・バシリクム(Ocimum basilicum)からのAY693650)及び(ダラス・ファー=シュードツガ・メンジーシー(Rseudotsuga menziesii)からのAY906866、REGION:10.1887)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
いくつかの実施形態では、異種ヌクレオチドは、アモルファジエンシンターゼをコード化する。好適なヌクレオチド配列の例示的な例は、米国特許出願公開第2004/0005678号の配列番号37である。
【0127】
いくつかの実施形態では、異種ヌクレオチドは、α−ファルネセンシンターゼをコード化する。好適なヌクレオチド配列の例示的としては、ピラス・コムムニス(Pyrus communis)栽培品種d’Anjou(ナシ、遺伝子名AFS1)からのDQ309034及びマルス・ドメスティカ(Malusu domestica)(リンゴ;遺伝子名AFS1)からのAY182241が挙げられるが、これらに限定されない。(Pechouusら著,Planta 219(1):84−94(2004))。
【0128】
いくつかの実施形態では、異種ヌクレオチドは、β−ファルネセンシンターゼをコード化する。好適なヌクレオチド配列の例示的な例としては、メンタxピペリタ(Mentha x piperita(ペパーミント;遺伝子Tspal1)からの遺伝子バンク受入番号AF024615、及びスイートワームウッド=アルテミシア・アンヌア(Artemisia annua)からのAY835398が挙げられるが、これらに限定されない。(Picaudら著,Phytochemistry 66(9):961−967(2005))。
【0129】
いくつかの実施形態では、異種ヌクレオチドは、ファルネソールシンターゼをコード化する。好適なヌクレオチド配列の例示的な例としては、トウモロコシ=ゼア・マイス(Zea mays)からの遺伝子バンク受入番号AF529266、及び出芽酵母=サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisae(遺伝子Pho8)からのYDR481Cが挙げられるが、これらに限定されない。(Song,L.著,Applied Biochemistry and Biotechnology 128:149−158(2006))。
【0130】
いくつかの実施形態では、異種ヌクレオチドは、ネロリドールシンターゼをコード化する。好適なヌクレオチド配列の例示的な例としては、ゼア・マイス(Zea mays)(トウモロコシ;遺伝子tps1)からのAF529266が挙げられるが、これに限定されない。
【0131】
いくつかの実施形態では、異種ヌクレオチドは、パチョリオールシンターゼをコード化する。好適なヌクレオチド配列の例示的な例としては、ポゴステモン・カブリン(Pogostemon cablin)からのAY508730 REGION:1.1659が挙げられるが、これに限定されない。
【0132】
いくつかの実施形態では、異種ヌクレオチドは、ヌートカトンシンターゼをコード化する。好適なヌクレオチド配列の例示的な例としては、シトラス・シネンシス(Citrus sinensis)からのAF441124 REGION:1.1647及びペリラ・フルテッセンス(Perilla frutescens)からのAY917195 REGION:1.1653が挙げられるが、これらに限定されない。
【0133】
いくつかの実施形態では、異種ヌクレオチドは、アビエタジンシンターゼをコード化する。好適なヌクレオチド配列の例示的な例としては、(U50768;アビエス・グランディス(Abies grandis))及び(AY473621;トウヒ=ピセア・アビエス(Picea abies))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0134】
いくつかの実施形態では、細胞によって産生されるイソプレノイドは、Cイソプレノイドである。これら化合物は、1個のイソプレン単位に由来し、ヘミテルペンとも呼ばれる。ヘミテルペンの例示的な例は、イソプレンである。他の実施形態では、このイソプレノイドはC10イソプレノイドである。これら化合物は2個のイソプレン単位に由来し、モノテルペンとも呼ばれる。モノテルペンの例示的な例は、リモネン、シトラネロール、ゲラニオール、メントール、ペリリルアルコール、リナロオール、ツジョン、及びミルセンである。他の実施形態では、イソプレノイドはC15イソプレノイドである。これら化合物は、3個のイソプレン単位に由来し、セスキテルペンとも呼ばれる。セスキテルペンの例示的な例は、ペリプラノンB、ギンゴライドB、アモルファジエン、アルテミシニン、アルテミシニン酸、バレンセン、ヌートカトン、エピ−セドロール、エピ−アリストロケン、ファルネソール、ゴシポール、サノニン、ペリプラノン、フォルスコリン、及びパチョウロール(これはパチョリアルコールとしても知られる)である。他の実施形態では、イソプレノイドはC20イソプレノイドである。これら化合物は、4個のイソプレン単位に由来し、ジテルペンとも呼ばれる。ジテルペンの例示的な例は、カスビン、エリュテロビン、パクリタキセル、プロストラチン、シュードプテロシン、及びタキサジエンである。更に他の例では、イソプノイドはC20+イソプレノイドである。これら化合物は、4個を超えるイソプレン単位に由来し、アルブルシドE、ブルセアンチン、テストステロン、プロゲステロン、コルチゾン、ジギトキシン、及びスクワレン等のトリテルペン(6個のイソプレン単位に由来するC30イソプレノイド化合物);β−カロテン等のテトラテルペン(8個のイソプレン単位に由来するC40イソプレノイド化合物);及びポリイソプレン等のポリテルペン8個を超えるイソプレン単位に由来するC40+イソプレノイド化合物)が挙げられる。いくつかの実施形態では、イソプレノイドは、アビエタジエン、アモルファジエン、カレン、α−ファルネセン、β−ファルネセン、ファルネソール、ゲラニオール、ゲラニルゲラニオール、イソプレン、リナロオール、リモネン、ミルセン、ネロリドール、オシメン、パチョウロール、β−ピネン、サビネン、γ−テルピネン、テルピノレン、及びバレンセンからなる群から選択される。イソプレノイド化合物としてはまた、カロテノイド(リコペン、α−及びβ−カロテン、α−及びβ−クリプトキサンチン、ビキシン、ゼアキサンチン、アスタキサンチン、並びにルテイン)、ステロイド化合物、並びに混合されたテルペン−アルカロイド、及びコエンザイムQ−10等の他の化学基によって修飾されたイソプレノイドから構成される化合物も挙げられるが、これらに限定されない。
6.5 ポリケチドの産生
【0135】
いくつかの実施形態では、アセチル誘導化合物は、ポリケチドである。ポリケチドは、活性部位の配位基を含有する大きな多酵素タンパク質複合体であるポリケチドシンターゼ(PKSs)と呼ばれる酵素活性の回収によって触媒される連続的反応で合成される。ポリケチド生合成は、アセチル−CoA、プロピオニルCoA、ブチリル−CoA及びこれらの活性化誘導体、マロニル−、メチルマロニル−及びエチルマロニル−CoA等の単純な2−、3−、4−炭素構築ブロックから出発して、主としてクライゼン縮合反応を介するマロニル−CoA誘導単位の脱カルボキシル化縮合を通して、段階的に進む。PKS遺伝子は、通常、細菌では1つのオペロン内に、真核生物では遺伝子クラスタ内に構成されている。ポリケチドシンターゼの3つの型は特性化されていて、I型ポリケチドシンターゼは、2つのクラスに細分された大きな高度モジュールタンパク質であり、これらクラスは1)周期的にドメインを再利用する、反復性PKSsと、2)別個のモジュールの配列を含有し、ドメインを繰り返さない、モジュールPKSsである。II型ポリケチドシンターゼは、単官能タンパク質の凝集物であり、III型ポリケチドシンターゼは、アシルキャリアタンパク質ドメインを使用することはない。
【0136】
それぞれの連続的鎖伸長工程が、以下に記載のケト還元、脱水及びエノイル還元の固定された配列に続く脂肪酸の生合成とは異なり、ポリケチド生合成の個々の鎖伸長中間体は、官能基修飾の全て、その一部を受けるか、又は官能基修飾を全く受けず、非常に多くの化学的に異なる産物をもたらす。更なる複雑さの度合いが、異なるスターター単位及び鎖伸長単位の使用並びに新しい立体異性体の発生から起こる。
【0137】
ポリケチドシンターゼによって指揮されるような完全なポリケチド合成の順番は次のように続き(N末端からC末端の順で):最初の炭素構築ブロックを、アシルキャリアタンパク質上、成長するマクロライド鎖の伸長を触媒する伸長モジュール上、及び合成されたマクロライドの放出を触媒する末端モジュール上で開始又は充填する。この生合成中で活性な成分ドメイン又は別個の酵素官能基としては、スターター、エクステンダー及び中間体アシル単位の充填のためのアシル−トランスフェラーゼ;チオールエステルとして成長するマクロライドを保持するアシルキャリアタンパク質;鎖伸長を触媒するβ−ケト−アシルシンターゼ;アルコール官能基への第1番目の還元を担当するβ−ケトレダクターゼ;水を除去して不飽和チオールエステルをもたらすデヒドラターゼ;完全な飽和への最終還元を触媒するエノイルレダクターゼ;及びマクロライド放出及び環化を触媒するチオエステラーゼが挙げられる。
【0138】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される遺伝的に修飾された微生物は、アセチル−CoA及びマロニル−CoAからなる群から選択される第1の反応体を、マロニル−CoA又はメチルマロニル−CoAの少なくとも1つを、アシルキャリアタンパクと縮合することができる酵素、例えばアシル−トランスフェラーゼをコード化する異種ヌクレオチド配列を含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示された遺伝的に修飾された微生物は、アセチル−CoA及びマロニル−CoAからなる群から選択される第1の反応体をマロニル−CoA又はメチルマロニル−CoAからなる群から選択される第2の反応体と縮合し、ポリケチド産物を形成することができる酵素、例えば、β−ケト−アシルシンターゼをコード化する異種ヌクレオチド配列を含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示された遺伝的に修飾された微生物は、ポリケチド化合物上のβ−ケト化学基を、β−ヒドロキシ基に還元することができる酵素、例えば、β−ケトレダクターゼをコード化する異種ヌクレオチド配列を含む。
【0141】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示された遺伝的に修飾された微生物は、ポリケチド化合物中のアルカン化学基を脱水し、α−β−不飽和アルケンを生成することができる酵素をコード化する異種ヌクレオチド配列を含む。
【0142】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示された遺伝的に修飾された微生物は、ポリケチド化合物中のα−β−二重結合を、飽和アルカンに還元することができる酵素、例えば、エノイル−レダクターゼをコード化する異種ヌクレオチド配列を含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示された遺伝的に修飾された微生物は、ポリケチド化合物をアシルキャリアタンパク質から加水分解することができる酵素、例えば、チオエステラーゼをコード化する異種ヌクレオチド配列を含む。
【0144】
いくつかの実施形態では、ポリケチド産生細胞は、KS触媒領域を含む酵素をコード化する1つ以上の異種ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリケチド産生細胞は、AT触媒領域を含む酵素をコード化する1つ以上の異種ヌクレオチド配列を含む。
いくつかの実施形態では、ポリケチド産生細胞は、AT触媒領域を含む酵素をコード化する複数の異種ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリケチド産生細胞は、CLT触媒領域を含む酵素をコード化する1つ以上の異種ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリケチド産生細胞は、ACP活性を含む酵素をコード化する1つ以上の異種ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリケチド産生細胞は、ACP活性を含む酵素をコード化する複数の異種ヌクレオチド配列を含む。
【0145】
特定の実施形態では、ポリケチド産生細胞は、最小の芳香族PKS系、例えば、KS触媒領域を含む酵素、AT触媒領域を含む酵素、CLF触媒領域を含む酵素、及びACP活性を含む酵素のそれぞれをコード化する異種ヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態では、ポリケチド産生細胞は、最小の芳香族PKS系、例えば、KS触媒領域を含む酵素、AT触媒領域を含む酵素、及びACP活性を含む酵素のそれぞれをコード化する異種ヌクレオチド配列を含む。更に別の特定の実施形態では、ポリケチド産生細胞は、新規のポリケチド合成のためのモジュール芳香族PKS系、例えば、KS触媒領域を含む酵素、AT触媒領域を含む1つ以上の酵素、及びACP活性を含む1つ以上の酵素のそれぞれをコード化する異種ヌクレオチド配列を含む。
【0146】
いくつかの実施形態では、ポリケチド産生細胞は、最小のPKS系、例えば、最小の芳香族PKS系又は最小のモジュールPKS系を含み、最終産物ポリケチドの産生に寄与し得る追加的酵素活性を更に含む。いくつかの実施形態では、ポリケチド産生細胞は、新生ポリケチド骨格鎖の環化を容易にするシクラーゼ(CYC)触媒領域を含む酵素をコード化する1つ以上の異種ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリケチド産生細胞は、ケトレダクターゼ(KR)触媒領域を含む酵素をコード化する1つ以上の異種ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリケチド産生細胞は、アロマターゼ(ARO)触媒領域を含む酵素をコード化する1つ以上の異種ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリケチド産生細胞は、エノイルレダクターゼ(ER)触媒領域を含む酵素をコード化する1つ以上の異種ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリケチド産生細胞は、チオエステラーゼ(TE)触媒領域を含む酵素をコード化する1つ以上の異種ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリケチド産生細胞は、ACPのパンテテイン化に影響を及ぼすホロ−ACPシンターゼを含む酵素をコード化する1つ以上の異種ヌクレオチド配列を含む。
【0147】
いくつかの実施形態では、ポリケチド産生細胞は、合成後ポリケチド修飾活性を付与する1つ以上の異種ヌクレオチド配列を更に含む。いくつかの実施形態では、ポリケチド産生細胞は、例えば、抗生剤活性を有するポリケチドが望ましい場合、合成後のポリケチドの修飾に影響を及ぼすグリコシラーゼ活性を含む酵素をコード化する異種ヌクレオチド配列を更に含む。いくつかの実施形態では、ポリケチド産生細胞は、ヒドロキシラーゼ活性を含む酵素をコード化する1つ以上の異種ヌクレオチド配列を更に含む。いくつかの実施形態では、ポリケチド産生細胞は、エポキシダーゼ活性を含む酵素をコード化する1つ以上の異種ヌクレオチド配列を更に含む。いくつかの実施形態では、ポリケチド産生細胞は、メチラーゼ活性を含む酵素をコード化する1つ以上の異種ヌクレオチド配列を更に含む。
【0148】
いくつかの実施形態では、ポリケチド産生細胞は、少なくとも1つのポリケチド合成経路酵素、及びアセチル−CoA化合物を修飾し、マクロライド、抗生剤、抗真菌剤、細胞増殖抑制化合物、抗コレステロール血症化合物、抗寄生虫化合物、抗コクシジウム化合物、動物成長促進剤又は殺虫剤等のポリケチド産物を形成することができる酵素が挙げられるが、これらに限定されない生合成酵素をコード化する1つ以上の異種ヌクレオチド配列を更に含む。いくつかの実施形態では、HACD化合物はポリエンである。いくつかの実施形態では、HACD化合物は、環式ラクトンである。いくつかの実施形態では、HACD化合物は、14、15、又は16員のラクトン環を含む。いくつかの実施形態では、HACD化合物は、ポリケチドマクロライド、抗生剤、抗真菌剤、細胞増殖抑制化合物、抗コレステロール血症化合物、抗寄生虫化合物、抗コクシジウム化合物、動物成長促進剤及び殺虫剤からなる群から選択される。
【0149】
いくつかの実施形態では、ポリケチド産生細胞は、例えば、PKS酵素及び限定されるものではないが、以下のポリケチドから選択されるポリケチドを産生することが可能なポリケチド修飾酵素をコード化する配列である異種ヌクレオチド配列を含み、ポリケチドは:アベルメクチン(例えば、米国特許第5,252,474号;同第4,703,009号、欧州特許出願公開第118,367号;MacNeilら著,1993,「Industrial Microorganisms:Basic andApplied Molecular Genetics」;Baltz,Hegeman,& Skatrud編集,(ASM),245−256頁,「A Comparison of the Genes Encoding the Polyketide Synthases for Avermectin,Erythromycin,and Nemadectin」;MacNeilら著,1992,Gene 115:119−125;及びIkeda及びOmura著,1997,Chem.Res.97:2599−2609を参照);カンジシジン(FR008)(例えば、Huら著,1994,Mol.Microbiol.14:163−172を参照);カルボマイシン、クラマイシン(例えば、Berghら著,Biotechnol Appl Biochem.1992年2月;15(1):80−9を参照);ダウノルビシン(例えば、J Bacteriol.1994年10月;176(20):6270−80を参照);エポチロン(例えば、国際公開第99/66028号;及び同第00/031247号を参照);エリスロマイシン(例えば、国際公開第93/13663号;米国特許第6,004,787号;同第5,824,513号;Donadioら著,1991,Science 252:675−9;及びCortesら著,Nov.8,1990,Nature 348:176−8を参照);FK−506(例えば、Montamediら著,1998;Eur. J Biochem.256:528−534;及びMontamediら著,1997;Eur.J Biochem.244:74−80を参照);FK−520(例えば、国際公開第00/020601号;及びNielsenら著,1991,Biochem.30:5789−96を参照);グリセウシン(例えば、Yuら著,J Bacteriol.1994年5月;176(9):2627−34を参照);ロバスタチン(例えば、米国特許第5,744,350号を参照);フレノリシン(例えば、Khoslaら著,Bacteriol.1993年4月;175(8):2197−204;及びBibbら著,Gene 1994年5月 3;142(1):31−9を参照);グラナチシン(例えば、Shermanら著,EMBO J.1989年9月;8(9):2717−25;及びBechtoldら著,Mol Gen Genet.1995年9月 20;248(5):610−20を参照);メデルマイシン(例えば、Ichinoseら著,Microbiology 2003年7月;149(Pt7):1633−45を参照);モネンシン(例えば、Arrowsmithら著,Mol Gen Genet.1992年8月;234(2):254−64を参照);ノナクチン(例えば、FEMS Microbiol Lett.2000年2月 1;183(1):171−5を参照);ナナオマイシン(例えば、Kitaoら著,J Antibiot(東京).1980年7月;33(7):711−6を参照);ネマデクチン(例えば、MacNeilら著,1993,前述を参照);ニッダマイシン(例えば、国際公開第98/51695号;及びKakavasら著,1997,J.bacteriol.179:7515−7522を参照);オレアンドマイシン(例えば、Swanら著,1994,Mol.Gen.Genet.242:358−362;国際公開第00/026349号;Olanoら著,1998,Mol.Gen.Genet.259(3):299−308;及びPCT特許出願公開第WO 99/05283号を参照);オキシテトラサイクリン(例えば、Kimら著,Gene.1994年4月8;141(1):141−2を参照);ピクロマイシン(例えば、国際公開第99/61599号;同第00/00620号;Xueら著,1998,Chemistry & Biology 5(11):661−667;Xueら著,1998年10月,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:12111 12116を参照);プラテノリド(例えば、欧州特許出願公開第791,656号;及び米国特許第5,945,320号を参照);ラパマイシン(例えば、Schweekeら著,1995年8月,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:7839−7843;及びAparicioら著,1996,Gene 169:9−16を参照);リファマイシン(例えば、国際公開第WO 98/07868号;及びAugustら著,1998年2月13日,Chemistry & Biology,5(2):69−79を参照)ソランジウム(例えば、米国特許第6,090,601号);ソラフェン(例えば、米国特許第5,7165,849号;Schuppら著,1995,J.Bacteriology 177:3673−3679);を参照);スピノシン(例えば、国際公開第99/46387号を参照);スピラマイシン(例えば、米国特許第5,098,837号を参照);テトラセノマイシン(例えば、Summersら著,J Bacteriol.1992年3月;174(6):1810−20;及びShenら著,J Bacteriol.1992年6月;174(11):3818−21を参照);テトラサイクリン(例えば、J Am Chem Soc. 2009年12月 9;131(48):17677−89を参照);チロシン(例えば、米国特許第5,876,991号;同第5,672,497号;同第5,149,638号;欧州特許出願公開第791,655号;同第238,323号;Kuhstossら著,1996,Gene 183:231−6;及びMerson−Davies及びCundliffeら著,1994,Mol. Microbiol.13:349−355を参照);並びに6−メチルサリチル酸(例えば、Richardsonら著,Metab Eng.1999年4月;1(2):180−7;及びShaoら著,Biochem Biophys Res Commun.2006年6月23日;345(1):133−9を参照)である。
6.6 脂肪酸の産生
【0150】
いくつかの実施形態では、HACD化合物は脂肪酸である。脂肪酸は、脂肪酸シンターゼによって触媒されたアセチル−CoA及びマロニル−CoAから一連の脱カルボキシル化クライゼン縮合によって合成される。ポリケチドシンターゼと同様に、脂肪酸シンターゼは、単一の酵素ではなく、その中で基質が1つの機能性ドメインから次の機能性ドメインまで手渡される272kDaの多官能性ポリペプチドから構成された酵素系である。脂肪酸シンターゼの2つの主要なクラスが特性化されていて:I型脂肪酸シンターゼは、哺乳類及び真菌類に共通の単一の多官能性ポリペプチド(真菌及び哺乳類シンターゼの構造的配置は異なるが)並びに細菌(コリネバクテリア、マイコバクテリア、及びノカルジア)のCMN基である。古細菌及び真正細菌で見られるII型シンターゼは、脂肪酸の合成に関与する一連の別々の単官能性酵素である。脂肪酸伸長及び還元の機構は、これら触媒事象を担う酵素ドメインが2つのクラスの間で大部分は相同であるために、酵素ドメインシンターゼの2つのクラスで同一である。
【0151】
脱カルボキシル化クライゼン縮合における脂肪酸鎖の伸長の一巡後に、ケトレダクターゼ、デヒドラターゼ、及びエノールレダクターゼの連続作用によって、β−ケト基が完全に飽和された炭素鎖に還元される。成長する脂肪酸鎖は、アシルキャリアタンパク質に連結されたこれら活性部位間で移動し、16の炭素鎖の長さ(パルミチン酸)に到達した際にチオエステラーゼの作用によって最終的には放出される。
【0152】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される遺伝的に修飾された微生物は、少なくとも1つの脂肪酸合成経路酵素、及びアセチル−CoA化合物を修飾して、パルミテート、パルミトイルCoA、パルミトオレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、及びドコサヘキサエン酸等の脂肪酸産物を形成することができる酵素が挙げられるが、これらに限定されない生合成酵素をコード化する異種ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、HACD化合物は、パルミテート、パルミトイルCoA、パルミトオレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、及びドコサヘキサエン酸からなる群から選択される脂肪酸である。
【0153】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される遺伝的に修飾された微生物は、アシルキャリアタンパク質で、アセチル−CoA及びマロニル−CoAの少なくとも1つに共有結合することができる酵素、例えば、アシルト−ランスフェラーゼをコード化する異種ヌクレオチド配列を含む。
【0154】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される遺伝的に修飾された微生物は、それぞれがアシルキャリアタンパク質(ACP)に結合されたアセチル化学的部分とマロニル化学的部分とを縮合して、アセトアセチル−ACPを形成することができる酵素、例えば、β−ケトアシル−ACPシンターゼをコード化する異種ヌクレオチド配列を含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される遺伝的に修飾された微生物は、アセトアセチル−ACP中の二重結合をNADPHで還元し、D−3−ヒドロキシブチリルヒドロキシラーゼ−ACP中のヒドロキシル基を形成することができる酵素、例えばβ−ケトアシル−ACPレダクターゼをコード化する異種ヌクレオチド配列を含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される遺伝的に修飾された微生物は、D−3−ヒドロキシブチリルヒドロキシラーゼ−ACPを脱水し、β−炭素及びγ−炭素の間に二重結合を形成してクロトニル−ACPを形成することができる酵素、例えばβ−ヒドロキシアシル−ACPデヒドラーゼをコード化する異種ヌクレオチド配列を含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される遺伝的に修飾された微生物は、クロトニルACPをNADPHで還元し、ブチリル−ACPを形成することができる酵素、例えばエノイルACPレダクターゼをコード化する異種ヌクレオチド配列を含む。
【0158】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される遺伝的に修飾された微生物は、アシルキャリアタンパク質からC16アシル化合物を加水分解し、パルミテートを形成することができる酵素、例えばチオエステラーゼをコード化する異種ヌクレオチド配列を含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、脂肪酸産生細胞は、遺伝的に非修飾の親細胞と比較するとき、1つ以上の脂肪酸の産生の増加をもたらすために、アセチル−CoAシンターゼ及び/又はマロニル−CoAシンターゼをコード化する異種ヌクレオチド配列を含む。
【0160】
例えば、アセチル−CoA産生を増加させるために、以下の1つ以上の遺伝子が細胞中で発現され得:これらはpdh、panK、aceEF(ピルベート及び2−オキソグルタレートデヒドロゲナーゼ複合体のEIpデヒドロゲナーゼ成分及びE2pジヒドロリポアミドアシルトランスフェラーゼ成分をコード化する)、fabH、fabD、fabG、acpP、及びfabFである。かかる酵素をコード化するヌクレオチド配列の例示的な例としては、pdh(BAB34380、AAC73227、AAC73226)、panK(coaAとしても知られる、AAC76952)、aceEF(AAC73227、AAC73226)、fabH(AAC74175)、fabD(AAC74176)、fabG(AAC74177)、acpP(AAC74178)、fabF(AAC74179)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0161】
いくつかの実施形態では、増加した脂肪酸レベルは、脂肪酸分解に関与するタンパク質をコード化する遺伝子を減衰する又はノックアウトすることによって、細胞中でもたらされ得る。例えば、fadE、gpsA、idhA、pflb、adhE、pta、poxB、ackA、及び/又はackBの発現レベルは、当該技術分野で既知の技術を使用して、操作された宿主細胞中で減衰され又はノックアウトされ得る。かかるタンパク質をコード化するヌクレオチド配列の例示的な例としては、fadE(AAC73325)、gapA(AAC76632)、IdhA(AAC74462)、pflb(AAC73989)、aahE(AAC74323)、pta(AAC75357)、poxB(AAC73958)、ackA(AAC75356)、及びackB(BAB81430)が挙げられるが、これらに限定されない。得られた宿主細胞は、適切な環境において増殖される場合、増加したアセチル−CoA産生レベルを有するであろう。
【0162】
いくつかの実施形態では、脂肪酸産生細胞は、アセチル−CoAをマロニル−CoAに転換することができる酵素、例えばマルチサブユニットAccABCDタンパク質をコード化する異種ヌクレオチド配列を含む。AccABCDをコード化する好適なヌクレオチド配列の例示的な例としては、限定されないが、寄託番号AAC73296,EC6.4.1.2が挙げられる。
【0163】
いくつかの実施形態では、脂肪酸産生細胞は、リパーゼをコード化する異種ヌクレオチド配列を含む。リパーゼをコード化する異種ヌクレオチド配列としては、寄託番号CAA89087及びCAA98876が挙げられるが、これらに限定されない。
【0164】
いくつかの実施形態では、脂肪酸レベルの増加は、脂肪酸生合成経路における初期段階を阻害する(例えば、accBCD、fabH、及びfabI)、長鎖アシル−ACPのレベルにおける増加に導くことができるPlaBを阻害することによって、細胞中でもたらされ得る。PlaBの発現レベルは、当該技術分野で既知の技術を使用して、操作された宿主細胞中で減衰され又はノックアウトされ得る。PlsBをコード化する好適なヌクレオチド配列の例示的な例としては、限定されないが、寄託番号AAC77011が挙げられる。特定の実施形態では、細胞中の利用可能なアセチル−CoAの量を増加させるようplsB D31 IE突然変異が使用され得る。
【0165】
いくつかの実施形態では、一価不飽和脂肪酸の産生の増加は、fabAの抑制をもたらすsfa遺伝子を過発現させることによって、細胞中でもたらされ得る。sfaをコード化する好適なヌクレオチド配列の例示的な例としては、限定されないが寄託番号AAN79592が挙げられる。
【0166】
いくつかの実施形態では、脂肪酸レベルの増加は、脂肪酸基質の鎖長を制御する酵素、例えばチオエステラーゼの発現を調整することによって、細胞中でもたらされ得る。いくつかの実施形態では、脂肪酸産生細胞は、tes又はfat遺伝子を過発現するよう修飾された。好適なtesヌクレオチド配列の例示的な例としては、寄託番号:(大腸菌からのtesA:AAC73596で、C18:1脂肪酸の産生が可能)及び(大腸菌からのtesB:AAC73555)が挙げられるが、これらに限定されない。好適なfatヌクレオチド配列の例示的な例としては、(ウンベルラリア・カリフォルニア(Umbellularia california)からのfatB:Q41653及びAAC34215で、C12:0脂肪酸の産生が可能)、(fatB2:メキシコ低木=クフェア・フーケリアナ(Cuphea hookeriana)からのQ39513及びAAC49269で、C8:0〜C10:0脂肪酸を産生することが可能)、(fatB3;メキシコ低木=クフェア・フーケリアナ(Cuphea hookeriana)からのAAC49269及びAAC72881で、C14:0〜C16:0脂肪酸を産生することが可能)、(fatB:クスノキ=シンナモナム・カンフォラム(Cinnamonum camphorum)からのQ39473及びAAC49151で、C14:0脂肪酸の産生が可能)、(fatB[M141T]:アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)からのCAA85388で、C16:1脂肪酸を産生可能)、(fatA:アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)からのNP189147及びNP193041で、C18:1脂肪酸を産生可能)、(fatA:根粒菌=ブラディリゾビウム・ジャポニカム(Bradyrhizobium japonicum)からのCAC39106で、C18:1脂肪酸を優先的に産生することが可能)、(fatA:メキシコ低木=クフェア・フーケリアナ(Cuphea hookeriana)からのAAC72883で、C18:1脂肪酸を産生することが可能)、及び(fatA1:ヒマワリ=ヘリアンサス・アンヌス(Helianthus annuus)からのAAL79361)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0167】
いくつかの実施形態では、C10脂肪酸のレベルの増加は、当該技術分野で既知の技術を使用して、チオエステラーゼC18の発現又は活性を減衰させることによって、細胞中でもたらされ得る。チオエステラーゼC18をコード化する好適なヌクレオチド配列の例示的な例としては、寄託番号AAC73596及びP0ADA1が挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態では、C10脂肪酸のレベルの増加は、当該技術分野で既知の技術を使用して、チオエステラーゼC10の発現又は活性を増加させることによって、細胞中でもたらされ得る。チオエステラーゼC10をコード化する好適なヌクレオチド配列の例示的な例としては、寄託番号Q39513が挙げられるが、これに限定されない。
【0168】
いくつかの実施形態では、C14脂肪酸のレベルの増加は、当該技術分野で既知の技術を使用して、非C14脂肪酸を産生する内因性チオエステラーゼの発現又は活性を減衰させることによって、細胞中でもたらされ得る。他の実施形態では、C14脂肪酸のレベルの増加は、当該技術分野で既知の技術を使用して、基質C14−ACPを使用するチオエステラーゼの発現又は活性を増加させることによって、細胞中でもたらされ得る。かかるチオエステラーゼをコード化する好適なヌクレオチド配列の例示的な例としては、寄託番号Q39473が挙げられるが、これに限定されない。
【0169】
いくつかの実施形態では、C12脂肪酸のレベルの増加は、当該技術分野で既知の技術を使用して、非C12脂肪酸を産生する内因性チオエステラーゼの発現又は活性を減衰させることによって、細胞中でもたらされ得る。他の実施形態では、C12脂肪酸のレベルの増加は、当該技術分野で既知の技術を使用して、基質C12−ACPを使用するチオエステラーゼの発現又は活性を増加させることによって、細胞中でもたらされ得る。かかるチオエステラーゼをコード化する好適なヌクレオチド配列の例示的な例としては、寄託番号Q41635が挙げられるが、これに限定されない。
6.7 細胞の保管方法
【0170】
いくつかの実施形態では、HACD化合物を産生することが可能な遺伝的に修飾された宿主細胞は、低いパントテネート化合物又はパントテネート化合物不在の培地中で保管される場合、より生存可能でかつ健康である。特に、かかる細胞は、パントテネート化合物を含まない、又は低いパントテネート化合物濃度中で保管される場合、好適な増殖培地中に接種後により良好に増殖し、産生ステージ中に、より多量のHACD化合物を産生する。
【0171】
したがって、別の態様では、本明細書に提供されるものは、HACD化合物を産生することが可能な遺伝的に修飾された宿主細胞を保管する方法であって、この方法は、遺伝的に修飾された宿主細胞を含む組成物と、同化性炭素、窒素及びリン酸塩源並びに0μモル/リットルと10μモル/リットルとの間のパントテネート化合物を含む保存培地を調製することと、この組成物を凍結することとを含む。特定の実施形態では、保存培地は、検出可能なパントテネート化合物を含有しない。別の特定の実施形態では、保存培地は、1部のグリセロール:3部の培養基から3部のグリセロール:1部の培養基までの間の範囲の量で、グリセロールを含む。別の特定の実施形態では、保存培地は、−80℃で凍結される。
【0172】
別の態様では、本明細書に提供されるものは、同化性炭素、窒素及びリン酸塩源並びに0μモル/リットルと10μモル/リットルとの間のパントテネート化合物を含有する保存培地である。特定の実施形態では、保存培地は、検出可能なパントテネート化合物を含有しない。別の特定の実施形態では、保存培地は、1部のグリセロール:3部の培養基から3部のグリセロール:1部の培養基までの間の範囲の量で、グリセロールを含む。別の特定の実施形態では、保存培地は、−80℃で凍結される。別の特定の実施形態では、保存培地は、HACD化合物を産生することが可能な遺伝的に修飾された宿主細胞を含む。
【実施例】
【0173】
7. 実施例
7.1 実施例1
この実施例は、酵母細胞培養の細胞密度(OD600)を決定するための例示的方法を記載する。
【0174】
細胞培養の8μLのサンプルを、透明な96−ウェルプレート中で、92μLのTriton OD希釈剤(20g/LのTriton X−114、200mL/LのPEG 200、200mL/Lの100%エタノール、残部の水)と合わせて、この溶液を、1,000RPMで6分間撹拌し、M5分光光度計(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)で600nmにての吸光度を測定することによって、OD600を決定した。
7.2 実施例2
【0175】
この実施例は、酵母細胞培養のファルネセン力価を決定するために有用な例示的Nile Redベースの方法を記載する。
【0176】
細胞培養の98μLのサンプルを96−ウェルの黒色ポリスチレン平底アッセイプレートに移し、DMSO中100μg/mLで溶解したNile Red(Invitrogen,Carlsbad,CA)の2μLを各ウェルに加えた。蛍光レベルを、500nmの励起及び550nmの放射によりM5分光光度計で直ちに測定した。
7.3 実施例3
【0177】
この実施例は、酵母細胞培養のファルネセンス力価を決定するために有用な、例示的ガスクロマトグラフィー(GC)ベースの方法を記載する。
【0178】
サンプルをメタノール−へプタン(1:1v/v)で抽出し、混合物を遠心分離して、細胞物質を除去した。メタノール−へプタン抽出物のアリコートを0.001%のt−カリオフィレン(これは、特定のGCオーブンプロファイル中の有効な注入及び溶出を監視するための保持時間マーカーとして働く)を有するn−へプタン中に希釈し、次いで、パルス分割注入を使用して、メチルシリコーン固定相上に注入した。ファルネセンを、炎イオン化検出(FID)を備えたGCを用いて、沸点で分離した。
7.4 実施例4
【0179】
この実施例は、発酵プロセスの産生ステージにおける増強されたHACD化合物産生に続く、第1の種培養中に構築されたバイオマスを増強させるための構築パントテネート化合物の非遺伝的スイッチとしての使用を例示する。
a)種培養の調製
2%ショ糖BSM(バイオマス構築培地)及び0mg/LのカルシウムD−パントテネートを含有するよう種培地を調製した。種培地のpHをNaOH溶液でpH7.0に調整した。この培地(250mL)を滅菌し、遺伝的に修飾された宿主細胞の1つの種バイアルで接種し、好気条件下、34℃で24〜36時間インキュベートした。
b)主発酵プロセス
2リットルの槽サイズを有する撹拌した発酵槽を、2%のショ糖及び10mg/LのカルシウムD−パントテネートを含有する無菌産生細胞培養培地で充填した。発酵を好気条件下34℃で6日間にわたって実行し、HACD産物の産生を最大化させた。
7.5 実施例5
【0180】
この実施例は、高レベルの例示的異種HACD二次代謝産物を産生するよう操作された酵母細胞の培養中で、バイオマス収率が増加され得、異種二次代謝産物の産生が、外因的に供給された(R)−パントテネートの量を低減させることによって、減少し得ることを立証する。
【0181】
酵母株Y4689及びY4352は、それぞれが、以下のMEV経路の酵素:IPPイソメラーゼ、FPPシンターゼ、及びファルネセンシンターゼが挙げられる異種酵素を含む。これら菌株は、例示的異種HACD二次代謝産物(ファルネセン)をそれぞれ15%及び13%の収率で産生することが可能である。
【0182】
酵母株Y4689及びY4352からの細胞を、指数的に増殖する培養から採取し、水で3回洗浄し、次いで0mg/LのカルシウムD−パントテネートを含む2%ショ糖BSM中に再懸濁させた。それぞれの細胞懸濁液から採取した15μLを、10mg/L(100%)、1mg/L(10%)、0.2mg/L(2%)、0.1mg/L(1%)、0.02mg/L(0.2%)、0.01mg/L(0.1%)、0.001mg/L(0.01%)、又は0mg/LのD−パントテネートのいずれかを含む2%ショ糖BSMの360μLを含有する96−ウェルプレートのウェルからなるバイオマス構築培養に加えた。バイオマス構築培養を、1,000rpmでのATPシェーカー中80%の湿度にて、及び34℃で48時間インキュベートし、この時点で培養はその最大OD600に到達した。次いでバイオマス構築培養を、同一の培地を含有する第2の96−ウェルプレートのウェル及び第1の96−ウェルプレートのようなプレート配置からなる産生培養に入れて、1:25で希釈した。産生培養を1,000rpmでのATPシェーカー中で、80%の湿度、及び34℃で48時間インキュベートし、この時点でサンプルを各ウェルから取り出し、上記の実施例1及び2で記載された通りに、それぞれ最終バイオマス(すなわち、最終細胞密度)及びファルネセン力価を測定した。
【0183】
図3A及び3Bは、パントテネートレベルがバイオマス構築及び産生培養中で低減された場合、双方の菌株が、ファルネセンを産生するそれらの能力で大幅に削減されたこと、並びに例示的HACD(ファルネセン)の産生におけるこの減少は、最終細胞バイオマスにおける増加が伴われたことを示す。これら結果は、HACD化合物産生を効果的に減少させるためにパントテネートは培養基から制限されるか省かれることができ、HACD化合物産生を誘導又は増強させるために、パントテネートが添加されることができることを裏付けている。
7.6 実施例6
【0184】
この実施例は、商業的量のHACD化合物を産生することが可能である酵母株が、外部的に供給されるペントテネート化合物の不在下で良好に培養する予期せぬ行動示すことを例示する。これとは対照的に、野生型酵母及びより少量のHACD化合物を産生する酵母株は、外部的に供給されるパントテネート化合物の存在下で、その不在下よりも良好な増殖の行動を示す。
【0185】
酵母株Y4720及びY5038は、それぞれが、以下のMEV経路の酵素:IPPイソメラーゼ、FPPシンターゼ、及びファルネセンシンターゼが挙げられる異種酵素を含む。菌株Y4720は収率14%でファルネセンを産生することが可能であり、一方菌株5038は、約半分未満の6%でファルネセンを産生することが可能である。菌株Y2205は、いずれのファルネセンも産生しないCEN.PK2野生型対照である。
【0186】
Y4720、Y5038、及びY2205の指数的に増殖する培養を、無菌PBSで1のOD600まで希釈し、各希釈物の20μLを、ウェル当たり180μLの無菌PBSを含有する96−ウェルの列1のウェルに移した。マルチチャンネルピペットを使用して、列1の20μを列2等に移し、プレート全体で1:10の段階希釈物を得た。最終的に、滅菌した48本の爪のピン止めツールを使用して、96ウェルプレートからの培養物を、0.4mg/L又は0.002mg/LのカルシウムD−パントテネートのいずれかを含有するCSM寒天プレート上にスタンプした。この寒天プレートを30℃で112時間インキュベートし、コロニー成長を監視した。
【0187】
図4に示すように、Y4720のコロニーは、0.4mg/LのカルシウムD−パントテネートの存在下では、他の2つの菌株のコロニーよりも小さかったが、0.002mg/LのカルシウムD−パントテネートの存在下では大きく、このことは、菌株Y5038及びY2205と比較して、菌株Y4720はより低い(R)−パントテネート濃度を含む寒天上でより高い増殖速度を有したことを示唆している。同様な結果が、カルシウムD−パントテネートを完全に欠如した寒天プレートを使用して得られた。
7.7 実施例7
【0188】
この実施例は、(R)−パントテネートを省くことが、高レベルの異種HACD二次代謝産物を産生するよう遺伝的に操作された酵母細胞の増殖速度を増加させ、かつ低レベルの異種二次代謝産物を産生するよう遺伝的に操作された酵母細胞の増殖速度を低下させることを裏付ける。
【0189】
MEV経路酵素:IPPイソメラーゼ、FPPシンターゼ、及びファルネセンシンターゼが挙げられる異種酵素を含み、例示的HACD化合物(ファルネセン)を産生することが可能な多数の酵母菌種の4つの個々のコロニーを、10mg/L又は0mg/LのカルシウムD−パントテネートのいずれかを含む2%ショ糖BSMの360μLを含有する96−ウェルプレートからなるバイオマス構築培養中に接種した。このバイオマス構築培養を、1,000rpmでのATRシェーカーで及び80%の湿度にて、34℃で72時間増殖させて、この時点で培養がその最大OD600まで到達した。次いで、このバイオマス構築培養を、10mg/LのカルシウムD−パントテネートを含む4%ショ糖BSMの360Lを含有する96−ウェルプレートの第2のセットのウェルからなる産生培養に、1:25で希釈した。産生培養を1,000rpmでのATPシェーカーで、80%の湿度、及び34℃で48時間インキュベートし、この時点でサンプルを各ウェルから取り出し、上記の実施例1及び3で記載された通りに、最終バイオマス(すなわち、最終細胞密度)及びファルネセン力価を測定した。
【0190】
図5に示すように、12%を超える収率でファルネセンを産生した菌株は、より高い(R)−パントテネート濃度においてよりもより低い(R)−パントテネート濃度において、より大きいバイオマス収率を有した。12%未満の収率でファルネセンを産生する菌株については、この逆が当てはまった。
7.8 実施例8
【0191】
この実施例は、発酵プロセスの両構築及び産生ステージ間で、パントテネートが培養基中に存在し、したがってHACD化合物産生が「オン」状態にある場合に起こる菌株退化の現象を立証する。
【0192】
いくつかの実施形態では、MEV経路酵素:IPPイソメラーゼ、FPPシンターゼ、及びファルネセンシンターゼが挙げられる異種酵素を含み、例示的HACD化合物(ファルネセンス)を産生することが可能な酵母菌種の凍結した細胞懸濁液の1mlバイアルを解凍し、2%のショ糖及び10mg/LのカルシウムD−パントテネートを含有するBSM 2.0の50mlを入れた250mLのバッフルフラスコに移し、シェーカー内で34℃、200RPMで24時間増殖させた。次いで全培養物を、2%のショ糖及び10mg/LのカルシウムD−パントテネートを含有するBSM 2.0の850mlを入れた2.8LのFernbachフラスコに移し、シェーカー内で34℃、250RPMで24時間増殖させた。次いで全培養物を2Lの発酵槽に移した。発酵槽への栄養供給は、14g/L/時の糖に等しい最初のパルスで供給された、10mg/LのカルシウムD−パントテネートを含む未定義のブラジルサトウキビシロップ培地であった。次いで、供給速度は、溶解された酸素の上昇によって指示されるような、炭素の発酵槽の需要に基づいて、自己調整される。発酵を、34℃の一定温度、4.5の一定pH(水酸化ナトリウムの添加によって制御された)、及び200ミリモルO/L/時の初期酸素移動速度で、溶解酸素が0%に到達するまで、微好気的に実行し、次いで残部の発酵のために100ミリモルO/L/時に低下させた。3日毎に、オーバーフローを防止するために、タンクの容量を0.9Lまで減らす。サトウキビシロップ供給物中で損なわれた微量金属及びビタミンは、このときに補充される。産生されたファルネセンの量及び細胞による総消費の量を毎日監視し、これら2つの値の比(すなわち、糖を引いた産物収率)を73時間毎の時間について決定し、図6に示すようにプロットする。培養の産物収率は、21日目までに、6日目でのそのピークからこのピークの<65%まで下落する。
7.9 実施例9
【0193】
この実施例は、例示的HCD化合物を産生するよう遺伝的に操作された酵母細胞の増殖及び保存中に(R)−パントテネートを省くことが、酵母による異種二次代謝産物の産生を増加させることを裏付ける。
【0194】
酵母菌株Y4954は、MEV経路酵素:IPPイソメラーゼ、FPPシンターゼ、及びファルネセンシンターゼが挙げられる異種酵素を含む。この酵母菌株は、収率13.6%でファルネセンを産生することが可能である。
【0195】
種バイアルの2つのセットを、Y4954細胞の単一コロニーの半分を、10mg/LのカルシウムD−パントテネートを含む2%ショ糖BSM(種バイアル培地)の15mLが入った125mLの振蕩フラスコに接種することによって調製し(種バイアル培地、「+」)、他の半分を、0mg/LのカルシウムD−パントテネートを含む2%のショ糖BSM(種バイアル培地)の15mLが入った125mLの振蕩フラスコに接種することによって調製した(種バイアル培地、「−」)。細胞を、4と9の間のOD600に到達するまで、かつ残留ショ糖が3〜6g/L周辺になるまで、200rpmでのシェーカー内で30℃にて増殖させた。2部の無菌50%グリセロール溶液を3部の細胞ブロスに加え、懸濁液を種バイアルに小分けし、種バイアルをおよそ−1℃/分の速度でゆっくりと−80℃に凍結させた。
【0196】
1つの種バイアルを、10mg/LのカルシウムD−パントテネート(バイオマス構築培地、「+」)又は0mg/LのカルシウムD−パントテネート(バイオマス構築培地、「−」
)のいずれかを含む2%ショ糖BSM(バイオマス構築培地)の50mLを入れた250mL振蕩フラスコ中で解凍することによって、並びにこの培養を34℃及び200RPMで24時間にわたって増殖させることによって、バイオマス構築を達成した。次いで培養物を、800mLの同一の培地が入った1Lのフラスコに移し、更に48時間増殖させた。
【0197】
例示的HACD化合物(ファルネセン)の産生については、種構築培養を、10mg/LのカルシウムD−パントテネートを含む産生培地(産生培地、「+」)が入った2Lのベンチトップ発酵槽に移し、ファルネセン収率を最大化する供給プロトコルに従って、培養を6日間にわたってインキュベートした。
【0198】
表1に示すように、Y4954細胞は、(R)−パントテネートが種バイアル培地から省かれた場合、より高いファルネセン収率を生じた。Y4954細胞は、(R)−パントテネートがまたバイオマス構築培地から省かれた場合でも、更に高いファルネセン収率を生じた。
【0199】
表1はまた、種バイアル及びバイオマス構築培地において(R)−パントテネートを省くことは、産生段階中に(R)−パントテネートを供給する場合、宿主細胞がファルネセンを産生するための能力を不可逆的に危険にさらすことはない。実際には、低減された(R)−パントテネートを有する又は(R)−パントテネートを含まない種培地及びバイオマス構築培地、続いて(R)−パントテネートを含有する産生培地中での産生段階培養の使用が、異種HACD化合物の最適な産生をもたらす。
【表1】
【0200】
本明細書で引用された全ての刊行物、特許及び特許出願は、あたかもそれぞれの個々の刊行物又は特許出願が参照により組み込まれるよう具体的かつ個別的に指示されるかのように、参照により本明細書に組み込まれる。本開示の範囲及び精神から逸脱することなく、各種の改変及び変更を加えることは、当業者には自明のことであろう。本開示は、理解を明確にするために例示及び実施例として若干の詳細をもって記載されてきたが、添付の特許請求の範囲の精神又は範囲から逸脱することなく、特定の変更及び改変がこれらになされてもよいこと、並びに特許請求の範囲は、かかる特定の実施形態に必要以上に限定されるべきではないことが、本明細書に提供された教示を考慮して、当業者には容易に明らかであろう。実際に、本開示を実行するための記載されたモードの種々の改変は、当業者に理解されるものであり、これらは特許請求の範囲の範囲内であるよう意図されている。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8