(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(1)トランスポート層および構造層を含む可撓性多層基材であって、前記トランスポート層がポリオレフィンまたはフルオロポリマーを含み、前記構造層が半結晶性の熱可塑性ポリマーを含む、可撓性多層基材を提供する工程と;
(2)放射線硬化性樹脂の層を、前記可撓性多層基材の前記トランスポート層上にコーティングする工程と;
(3)放射線硬化性樹脂の前記層を予め硬化した層と接触させる工程と;
(4)放射線硬化性樹脂の前記層を、化学線源によって提供される、化学線に露光させ、それによって前記予め硬化した層に接着する硬化層を形成する工程と;
(5)前記硬化層と前記可撓性多層基材とを分離する工程と;
(6)工程2〜5を、3次元物体を構築するために十分な回数繰り返す工程と
を含む積層造形法。
前記放射線硬化性樹脂が、30〜85重量%、より好ましくは35〜80重量%、より好ましくは35〜75重量%のカチオン硬化性化合物と、10〜60重量%のフリーラジカル硬化性化合物とを含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
前記トランスポート層が表面を有し、前記表面が前記構造層に固定されており、前記表面の少なくとも一部がコロナ処理にかけられている請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
前記可撓性多層基材が、積層法によって生み出された2層基材であり、前記トランスポート層および構造層が好ましくは、ポリウレタン接着剤で互いに固定されている請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
(1)トランスポート層および構造層を含む可撓性多層基材であって、前記トランスポート層がポリオレフィンまたはフルオロポリマーを含み、前記構造層が半結晶性の熱可塑性ポリマーを含む、可撓性多層基材と;
(2)放射線硬化性樹脂の層を前記可撓性多層基材の前記トランスポート層に塗布するのに適合した塗布機と;
(3)前記可撓性多層基材を通して放射線を投影することによって放射線を放射線硬化性樹脂の前記層に照射するために配置された放射線源と;
(4)3次元物体を支えることができるプラットフォームと
を含む積層造形用の装置。
化学線源に由来しない化学線が前記放射線硬化性樹脂に達するのを実質的に防ぐ、エンクロージャをさらに含み、前記ヒーターが前記エンクロージャ内に存在する空気を加熱するために配置されている、請求項17に記載の装置。
張力デバイスをさらに含み、前記張力デバイスが前記可撓性多層基材と接触し、かつ前記可撓性多層基材に張力をかけるために配置され、前記張力が好ましくは5N〜50Nの量でかけられる、請求項14〜18のいずれか一項に記載の装置。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】樹脂ディウェッティング状態の上面斜視図である。
【
図3】両刃ノッチ付き引張試験に使用される試料形状の正面図である。
【
図4】基材ベース積層造形法の部分略側面図である。
【0026】
[詳細な説明]
[029]幾つかの最新の基材ベース積層造形法の様々な特徴が、これらの最新の方法での現在公知の基材設計の使用への障壁となる場合がある。たとえば、幾つかの積層造形法では基材上に維持される張力は、公知基材に過度にストレスをかける場合がある。さらに、30、35、またはさらには45℃程度の温度が、放射線硬化性樹脂のカチオン性部分の硬化を促進するために必要とされる場合がある。これらの高められた温度は、公知基材を望ましくないことに分解させる、反らせる、または引き伸ばす場合がある。さらに、基材上のある種の放射線硬化性樹脂の繰り返し硬化サイクルは、放射線硬化性樹脂の硬化が基材の表面上に強酸およびラジカルを生み出す場合があるので、公知基材をさらに分解させ得る。最後に、基材は、放射線硬化性樹脂を硬化させるために必要とされる放射線への繰り返し露光下で、とりわけ、UV光が放射線硬化性樹脂を硬化させるために使用される場合に、砕けやすくなるかまたはさもなければ劣化する場合がある。
【0027】
[030]これらの影響のそれぞれは、基材の取り換えが求められる前に数層のみしか構築できないようにこれまで公知の基材を分解させる場合がある。平均的な積層造形法は数千の層の構築を必要とし得るため、基材を繰り返し取り換えることは、3次元物体を構築するのに生じる費用とプロセスそれ自体の速度および信頼性との両方にとって非常に悪影響を及ぼす。
【0028】
[031]特許請求される本発明の第1態様は、
(1)トランスポート層および構造層を含む可撓性多層基材であって、トランスポート層がポリオレフィンまたはフルオロポリマーを含み、構造層が半結晶性の熱可塑性ポリマーを含む可撓性多層基材を提供する工程と;
(2)放射線硬化性樹脂の層を、可撓性多層基材のトランスポート層上にコーティングする工程と;
(3)放射線硬化性樹脂の層を予め硬化した層と接触させる工程と;
(4)放射線硬化性樹脂の層を、化学線源によって提供される、化学線に露光させ、それによって予め硬化した層に接着する硬化層を形成する工程と;
(5)硬化層と可撓性多層基材とを分離する工程と;
(6)工程2〜5を、3次元物体を構築するために十分な回数繰り返す工程と
を含む積層造形法である。
【0029】
[032]特許請求される本発明の第1態様に従って、可撓性多層基材は、少なくともトランスポート層および構造層を含み、したがって多層記載である。可撓性多層基材は、少なくとも2つの層を有しなければならない。幾つかの実施形態においては、可撓性多層基材は2つの層を有し、他の実施形態においては、3つまたは4つの層を有する。基材が積層造形法の有効性を低下させない限り、可撓性多層基材の層の数への実用限界はまったくない。たとえば、幾つかの場合には、層の追加が多すぎると、可撓性多層基材の放射線透過性を、不十分な化学線が放射線硬化性樹脂に照射され得るレベルまで低下させる可能性がある。
【0030】
[033]同様に、厚さが3次元物体の構築に悪影響を及ぼし過ぎない限り、可撓性多層基材の厚さへの実用限界はまったくない。ある実施形態においては、可撓性多層基材は、少なくとも20ミクロンの厚さを有する。ある実施形態においては、可撓性多層基材厚さは、約50ミクロン〜約350ミクロンである。ある実施形態においては、可撓性多層基材の厚さは、約20ミクロン〜約250ミクロンである。ある実施形態においては、可撓性多層基材の厚さは、約50ミクロン〜約250ミクロンである。別の実施形態においては、可撓性多層基材は、厚さが約90ミクロン〜約160ミクロンである。
【0031】
[034]ある実施形態においては、可撓性多層基材の各層は、少なくとも10ミクロンの厚さである。ある実施形態においては、可撓性多層基材の各層は、少なくとも厚さ20ミクロンである。ある実施形態においては、トランスポート層は厚さ10〜100ミクロンであり、構造層は厚さ10〜250ミクロンである。ある実施形態においては、トランスポート層は厚さ10〜100ミクロンであり、構造層は厚さ30〜200ミクロンである。
【0032】
[035]可撓性多層基材は、トランスポート層および構造層を含む。トランスポート層は、放射線硬化性樹脂と接触するためである。したがって、トランスポート層は放射線硬化性樹脂と接触するための望ましい特性を有しなくてはならず、放射線硬化性樹脂の新硬化層からの望ましい分離を可能にする特性を有しなければならない。構造層は構造的完全性を提供する。たとえば、構造層は、トランスポート層の物理的特性と比較して幾分向上した物理的特性を有する。トランスポート層は、このように放射線硬化性樹脂と接触するためであり、構造層は、構造的完全性を提供するためであり、構造層とトランスポート層とは、互いに固定される。たとえば、トランスポート層は、構造層に直接固定されても、構造層に固定されている1つまたは複数の中間アイテムに固定されてもよい。
【0033】
[036]可撓性多層基材のトランスポートおよび構造層、ならびに必要に応じて他の層は、共押出、積層、およびヒートボンディングなどの、当該技術分野において周知の方法を用いて固定することができる。任意の利用可能な方法を、その方法が可撓性多層基材の各層のために選択された材料と相溶性があり、かつ、積層造形法による3次元物体の構築を可能にするであろう可撓性多層基材を形成できる限り、層を固定するために用いることができる。用いられる固定方法は、実質的に一様な厚さの、および、しわがほとんどもしくはまったくない可撓性多層基材を実現しなければならない。可撓性多層基材は、可撓性多層基材の反りを回避するために低い内部応力を有しなくてはならず、3次元物体の正確な構築を可能にするために実質的にフラットでなければならない。積層は、層を固定するための接着剤または他の物質の使用を必要とする。ヒートボンディングは、層を固定するために可撓性多層基材の層を適切な温度に加熱し、次にそれを可撓性多層基材の別の層に押し付けることを含む。
【0034】
[037]可撓性多層基材を形成する共押出法は、タイ層の使用を必要とし得る。タイ層は、共押出層を互いに固定するであろう薄い材料である。タイ層のための好適な材料は、ExxonMobil(登録商標)製のYparex(登録商標)、またはExxelor(商標)などの、無水マレイン酸でグラフトされたポリオレフィンである。タイ層は、積層造形法の間両層の層間剥離を防ぐのに十分な接着性を確保するように選択されねばならず、組み立てられた基材の放射線透過性に有意な影響を及ぼさない。
【0035】
[038]可撓性多層基材を形成する積層法については、表面処理が、可撓性多層基材の層を互いに十分に固定するために必要とされる場合がある。可撓性多層基材の層間の良好な接着性を得るためには、表面処理が、可撓性多層基材の層を互いに十分に固定するために可撓性多層基材の層の表面上に反応基を導入することを必要とされる場合がある。
【0036】
[039]ある実施形態においては、コロナ処理または他のプラズマ処理が、接着前に可撓性多層基材の層に関して行われる。コロナ処理は、表面の特性の変化を与えるために低温コロナ放電プラズマを使用する表面変性技術である。コロナプラズマは、鋭い先端の末端でプラズマを形成する鋭い電極先端への高電圧の印加によって発生する。電極の直線配列が、コロナプラズマのカーテンを生み出すために多くの場合用いられる。別の実施形態においては、化学処理が、基材の層に関して、それが基材の別の層に固定される前に行われる。表面処理は、トランスポート層のボトム層のみに関して、またはトランスポート層および構造層の両方の接触面に関して、または可撓性多層基材の他の様々な層に関して行われてもよい。
【0037】
[040]可撓性多層基材を形成する積層法については、接着剤が、トランスポート層および構造層を固定するために使用されなければならない。トランスポート層および構造層は、組み立てられた可撓性多層基材の放射線透過性にいかなる有意な影響も及ぼさない接着剤を使用して固定することができる。積層のための好適な接着剤は典型的には、2成分ポリウレタン接着剤である。しかしこれは、ポリウレタンの使用に限定されない。他の可能な接着剤の例は、両方とも水性または溶剤希釈型の、無水マレイン酸変性ポリエチレン、アクリルまたは2成分エポキシ、およびその他である。
【0038】
[041]一般に、第1材料を第2材料上へコーティングすることによる可撓性多層基材の形成は望ましくない。コーティングは、コーティング材料の硬化または乾燥の相違のために寸法の点でまたは一貫性の点で一様でない表面をもたらす場合がある。さらに、コーティングは、ポリオレフィンまたはフルオロポリマートランスポート層および半結晶性の熱可塑性構造層を含む可撓性多層基材よりも擦り付けまたは引っ掻きへの耐性が少ない場合があり、時間とともにすり減る可能性が高い。
【0039】
[042]さらに、コーティング法によって形成されたトランスポート層を含有する可撓性多層基材は、ポリオレフィンまたはフルオロポリマートランスポート層を含む多層基材よりも実質的に耐久性が小さいことが分かった。コーテェッド基材の試験中に、可撓性多層基材への硬化する放射線硬化性樹脂の接着がほんの数百層を構築した後に観察されたので、PET構造層上にコーティングされたシリコーン層は耐久性がないことが分かった。トランスポート層および構造層を固定する共押出および積層法がしたがってより頑丈な可撓性多層基材を提供することが分かった。
【0040】
[043]特許請求される本発明の第1態様によれば、可撓性多層基材は、ポリオレフィンまたはフルオロポリマートランスポート層を含む。トランスポート層は、放射線硬化性樹脂の許容されるコーティングおよび新硬化層の剥離を可能にする特性を有する。トランスポート層は、放射線硬化性樹脂が硬化させられる前に、トランスポート層上にコーティングされた放射線硬化性樹脂のいかなる実質的なディウェッティングも引き起こしてはならない。トランスポート層は、新硬化層と基材とを分離する工程が凝集破壊を示さないように新硬化層に実質的に接着させてはならない。さらに、トランスポート層の使用は、放射線硬化性樹脂を構造層から保護することができ、構造層に依存して、構造層を放射線硬化性樹脂から保護することができる。ある種のポリマー構造層は、かなりの量の水を含有し得る。構造層を構成し得るある種のポリマー、たとえばポリアミドおよびポリエステル中の水は、ある種の放射線硬化性樹脂を硬化させるときに発生した強酸に基材の加水分解を触媒させる場合がある。ポリオレフィンまたはフルオロポリマートランスポート層を基材中に使用することによって、この相互作用は、酸が構造層と接触することができないので排除される。
【0041】
[044]ある実施形態においてはトランスポート層はポリオレフィンである。他の実施形態においてはトランスポート層は、分岐の低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLPEまたはLLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、高分岐ポリエチレン、または典型的には1×10
6g/モル超の分子量を有する超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)である。さらなる実施形態においては、トランスポート層は、エチレンとオクテンとのコポリマー、およびポリメチルペンテンなどの、プラストマーである。他の実施形態においては、トランスポート層は、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテン、ノルボルネン、スチレンポリマーまたはコポリマーおよびそれらのブレンドである。ある実施形態においては、トランスポート層は、TOPASなどの高エチレングレードのエチレン−ノルボレンコポリマーである。
【0042】
[045]フルオロポリマーの表面上の、ある種の放射線硬化性樹脂、具体的にはハイブリッド硬化液体放射線硬化性樹脂のディウェッティングのために、放射線硬化性樹脂は、積層造形法が遅すぎる場合には、放射線硬化性樹脂の硬化の前にデウェットしてしまう場合がある。一般に、ポリオレフィンはフルオロポリマーよりも樹脂ディウェッティングを引き起こす可能性が少なく、したがって積層造形法に依存して好ましい。
【0043】
[046]フルオロポリマーはまた、積層造形法のプロセス速度に依存して有用なトランスポート層を形成する場合がある。ある実施形態においては、トランスポート層はフルオロポリマーである。ある種の実施形態においては、トランスポート層はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。他の実施形態においてはトランスポート層はテトラフルオロエチレンとエチレンとのコポリマー(ETFE、Tefzel(登録商標))である。ある実施形態においては、トランスポート層は、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー(Teflon(登録商標)FEP)である。ある実施形態においては、トランスポート層は、テトラフルオロエチレンと2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソールとのコポリマーであるTeflon(登録商標)AFである。さらなる実施形態においては、トランスポート層は、ポリフッ化ビニリデン(PVF)、さらなる実施形態においてはポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)である。
【0044】
[047]ある実施形態においては、可撓性多層基材は等方性である。等方性は、非配向または二軸配向基材で達成することができる。ある実施形態においてはトランスポート層は非配向である。別の実施形態においては、トランスポート層は、二軸(x−y平面で)配向である。さらなる実施形態においては、構造層は非配向であり、ある実施形態においては構造層は二軸配向である。ある実施形態においては、等方性構造層は、複数の配向層から形成される。ある実施形態においてはトランスポート層は、トランスポート層の面に接触する放射線硬化性樹脂に表面仕上げを与えるために、たとえば鋼ウールでの、手動エッチングによる艶消仕上げを与えられる。
【0045】
[048]特許請求される本発明の第1態様によれば、可撓性多層基材は、半結晶性の熱可塑性構造層を含む。構造層は、トランスポート層よりも向上した物理的特性を有する。たとえば、構造層は、向上した引裂抵抗、耐熱性、引張弾性率もしくは降伏応力などの機械的特性、または他の特性を提供する場合がある。構造層はまた、積層造形法または装置が基材を通して化学線を透過させるように配置されている場合には、高い放射線透過性を有しなければならない。
【0046】
[049]構造層は半結晶性の熱可塑性ポリマーを含む。実施形態においては、半結晶性の熱可塑性ポリマーはポリアミドである。他の実施形態においては、構造層は、ポリアミド−6、ポリアミド−6,6、ポリアミド−4,10、ポリアミド−4,6、ポリアミド−11、ポリアミド−12、ポリアミド−6T、ポリアミド−4T、ポリラクタム、またはそれらのコポリマーである。他の実施形態においては、構造層はポリエステルである。さらなる実施形態においては、構造層は、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、またはそれらのグリコール化コポリマーである。他の実施形態においては、構造層は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシアルカン酸、ポリラクトン、ポリエチレンナプタレート(PEN)、ポリブチレンナプタレート(PBN)、またはそれらのコポリマーである。さらに他の実施形態においては、構造層はポリエーテルである。さらなる実施形態においては、構造層は、ポリオキシメチレン、ポリアルキレンオキシド、またはそれらのコポリマーである。ある実施形態においては、構造層は、加工中に二軸延伸されて、二軸配向をもたらす。
【0047】
[050]他の実施形態においては、構造層は、強化された半結晶性の熱可塑性ポリマーである。ポリマーは、たとえば、繊維または粒子によって強化されてもよい。ある実施形態においては、粒子は、雲母、滑石、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの、鉱物充填材である。別の実施形態においては、粒子は、サブミクロンサイズの粒子たとえばナノ粘土およびナノシリカである。サブミクロンサイズの粒子は、それらが、基材の光透過率に実質的に影響しないであろう方法で分散できるという利点を有する。強化ポリマーを利用するときには、基材のUV透過率は綿密に監視されなければならず、実質的に放射線透過性の強化材が好ましい。ある実施形態においては、構造層は、ポリアミドナノ複合材料を含む。
【0048】
[051]半結晶性の熱可塑性ポリマー構造層は、半結晶性の熱可塑性ポリマーが、非晶質材料よりも一般に脆くなく、向上した亀裂抵抗を有するので、非晶質材料よりも用いられる。さらに、半結晶性の熱可塑性ポリマーは、非晶質ポリマーよりも向上したひび割れ抵抗性を有する。ひび割れは、UV光露光によって悪化し得る。
【0049】
[052]他の実施形態においては、可撓性多層基材はまた、様々な重要な物理的特性で説明することができる。本発明者らは、可撓性多層基材のどの特性が積層造形法または装置の成功にとって最も重要であるかを決定するために多くの実験を行った。積層造形法の成功にとって重要である可撓性多層基材の物理的特性の網羅的ではないリストは、表面張力、光透過率、引裂抵抗、および塑性的に変形する能力である。さらに、高温で向上した硬化性を有する成分とともに放射線硬化性樹脂を使用する積層造形法においては、基材のT
gが重要である場合がある。
【0050】
[053]トランスポート層の表面張力は、イメージング前の放射線硬化性樹脂ディウェッティングを回避するために重要である。ディウェッティングは、トランスポート層の表面上に形成される放射線硬化性樹脂の層における、非一様性、たとえば液滴の形成が発現する速度を説明する放射線硬化性樹脂とトランスポート層との間の相互作用の特性である。放射線硬化性樹脂ディウェッティングの許容量は、積層造形法の速度および放射線硬化性樹脂の粘度に依存するであろう。放射線硬化性樹脂の層を積層造形法において化学線に露光させる工程が、放射線硬化性樹脂を基材上にコーティングする工程の後に非常に迅速に起こる場合には、基材上の放射線硬化性樹脂のディウェッティングの発生までの許容時間は、コーティングの工程と露光の工程との間の時間により大きい時間差がある場合よりも少ないであろう。一般に、放射線硬化性樹脂ディウェッティングは、表面張力が低いトランスポート層ほどより速く起こるであろう。
【0051】
[054]基材の表面張力が低すぎると、それは、許容されない放射線硬化性樹脂ディウェッティングをもたらす場合があるので積層造形法において望ましくないが、高すぎる表面張力もまた、積層造形法に悪影響を及ぼすことがある。一般に、表面張力が高すぎる場合には、基材への新硬化層の接着の増加がビルドの凝集破壊をもたらすことがある。その結果として、基材のトランスポート層の表面張力は、基材への新硬化層の接着が許容値を超えないように十分に低いものでなければならない。
【0052】
[055]ある実施形態においては、トランスポート層の表面張力は、その範囲の下端で速い樹脂ディウェッティングを、またはその範囲の上端でトランスポート層への接着を防ぐために少なくとも19.5mN・m
−1および最大でも41mN・m
−1である。ある実施形態においては、この表面張力は、放射線硬化性樹脂の表面張力よりも5mN・m
−1小さい値から上限41mN・m
−1までである。多くの公知ポリマーの表面張力および表面張力の計算方法は、A.Zosel,Colloid & Polymer Science,263,541(1985)(本明細書に完全に記載されているかのようにその全体が参照により本明細書によって援用される)に見いだすことができる。
【0053】
[056]可撓性多層基材はまた、積層造形法を行うために用いられる積層造形装置が基材を通して放射線を投影する場合には、好適な放射線透過性を有しなければならない。光が、基材を通して放射線硬化性樹脂を硬化させるために使用される実施形態においては、基材の光透過率が重要である。同様に、UV透過率は、積層造形法がUV光で放射線硬化性樹脂を硬化させる場合には重要である。所与の可撓性多層基材については、光透過率は一般に、光の波長の関数である。UV透過率は、たとえば、Perkin Elmer分光光度計で、ポリマー基材のUVスペクトルを記録することによって測定される。表面粗さによる散乱の影響を回避するために、可撓性多層基材はエタノール中で湿らされる。
【0054】
[057]ある実施形態においては、積層造形法または装置において放射線硬化性樹脂を硬化させるために使用される光のピーク波長での可撓性多層基材の光透過率は、80%超、より好ましくは90%超である。ある実施形態においては、放射線硬化性樹脂を硬化させるために使用されるピーク波長でのUV透過率は、80%超、より好ましくは90%超である。ある実施形態においては、350〜400nmの範囲にわたる可撓性多層基材のUV透過率は、80%超、より好ましくは90%超である。UV透過率は、可撓性多層基材の厚さに依存し;したがって、薄い可撓性多層基材が、可撓性多層基材の透過率特性に依存して好ましい。他の実施形態においては、365nmのピーク波長でのUV透過率は、80%超、より好ましくは90%超である。
【0055】
[058]幾つかの実施形態においては、可撓性多層基材は、支持体の各方向に12kJ/m
2超の比本質破壊仕事を達成することによって実証されるように、引裂に対して非常に抵抗性がある。支持体の方向は、2つの向かい合った支持体が反対方向に互いに移動させられる場合に、基材がそれに沿って延伸されるであろう方向である。平行方向とは、基材が、積層造形法または装置においてそれに沿って固定される方向を意味する。横方向とは、平行方向と垂直の方向を意味する。たとえば、長方形の基材が長方形の小さい側に沿って存在するクランプで固定される場合には、平行方向は、小さい側と垂直の方向であろうし、横方向は、小さい側と平行の方向であろう。幾つかの実施形態においては、可撓性多層基材は、反対端で固定され、他の反対端で固定されず、それによって平行および横方向を形成する。他の実施形態においては、基材は、平行または横方向がまったくないように可撓性多層基材の2つ以下の端でさらに固定される。
【0056】
[059]支持体、平行方向、および横方向の方向の視覚説明については
図1を参照されたい。
図1において、可撓性多層基材1は、支持体2で固定されている。方向3は、
図1では平行方向と呼ぶこともできる、支持体の方向を表す。方向4は横方向を表す。
図1での多層基材は、支持体の1方向を示すにすぎない。
【0057】
[060]幾つかの実施形態においては、可撓性多層基材は、基材の平行および横方向の両方に、12kJ/m
2超かつ500kJ/m
2未満の比本質破壊仕事を有する。実施形態においては、基材は、基材の各方向に12kJ/m
2超かつ500kJ/m
2未満の比本質破壊仕事を達成する。比本質破壊仕事は、本特許出願の実施例に詳述されるように、両刃ノッチ付き引張試験によって測定することができる。比本質破壊仕事(w
e)およびに無次元因子βを乗じた比非本質破壊仕事(w
pβ)に関するさらなる情報は、Maspochら,「The Essential Work of Fracture of a Thermoplastic Elastomer」,Polymer Bulletin,39,246−255(1997)(本明細書に完全に記載されているかのようにその全体が参照により本明細書によって援用される)に見いだすことができる。積層造形法または装置に依存して、基材上での一定張力または張力サイクリング、繰り返される放射線露光、および/またはコーティング、硬化、および基材上の放射線硬化性樹脂の剥離の繰り返されるサイクルは、行われる積層造形法サイクルの数が増加するにつれて、基材の引裂抵抗を低下させる場合がある。
【0058】
[061]引裂に対する抵抗はまた、無次元因子βを乗じた十分な比非本質破壊仕事(w
pβ)を得ることによって表すことができる。比非本質破壊仕事は、材料降伏と関係がある。ある実施形態においては、基材は、支持体の各方向に8mJ/mm
3超のw
pβを有する。ある実施形態においては、基材は、支持体の各方向に8mJ/mm
3〜500mJ/mm
3のw
pβを有する。さらなる実施形態においては、基材は、支持体の各方向に8mJ/mm
3〜500mJ/mm
3のw
pβおよび12kJ/m
2〜500kJ/m
2の比本質破壊仕事(w
e)を有する。さらなる実施形態においては、基材は、平行および横方向の両方に8mJ/mm
3〜500mJ/mm
3のw
pβおよび12kJ/m
2〜500kJ/m
2の比本質破壊仕事(w
e)を有する。
【0059】
[062]ある実施形態においては、可撓性多層基材は、プロセスサイクリングの間に実質的に塑性的に変形されない。塑性変形の能力は、0.2GPa超かつ6GPa未満の積層造形法の運転温度での引張弾性率、および20MPa超かつ150MPa未満の降伏応力によって証明される。引張試験は、50mm/分の試験速度で、室温でType KAF−TC 10kNロードセルおよび空気圧式検体グリップ(タイプ 8397.00.00 10kN)を備えたZwick Z010引張機で行われる。ダンベルISO527−2 Type5B型試料が、ローディング方向が横か平行かのいずれかであるように各基材から打ち抜かれる。両方位がすべての基材について試験される。
【0060】
[063]ある実施形態においては、積層造形法は、室温よりも上の温度で実施される。ある実施形態においては、積層造形法は、約30℃〜45℃で実施される。そのような積層造形法においては、積層造形法の運転温度よりも高い、DMA(動的機械分析)手順から誘導されるような損失弾性率(E’’)のピークの最大値から測定される、ガラス転移温度(T
g)を有する構造層を有した可撓性多層基が、最大レベルの構造的完全性を提供するために必要とされる。ある実施形態においては、基材の構造層のT
gは、約30℃〜約200℃、好ましくは33℃〜200℃である。別の実施形態においては、可撓性多層基材の構造層のT
gは、約30℃〜約100℃、好ましくは約33℃〜約100℃である。別の実施形態においては、可撓性多層基材の構造層のT
gは、約30℃〜約65℃、好ましくは約33℃〜約65℃である。ある実施形態においては、構造層のT
gは、放射線硬化性樹脂の重合による可撓性多層基材の加熱を補うために少なくとも2℃だけ運転温度を超える。
【0061】
[064]T
gは、DMA手順を用いて計算することができる。測定用の試料は、試験されるべき基材から打ち抜かれる。厚さは、較正したHeidenhain厚さ計で測定される。動的機械分析は、5℃/分の加熱速度で、1Hzの周波数でおよび−130℃〜250℃の温度領域にわたってRheometrics Solids Analyzer IIIでASTM D5026に従って行われる。測定中に、温度の関数としての引張貯蔵弾性率(E’)、引張損失弾性率(E’’)および損失正接(tanδ)が測定される。ASTM D5026からの逸脱は:許容温度偏差±2℃(標準偏差で±1℃);許容フォース偏差±2%(正規標準偏差で±1%);許容周波数偏差±2%(標準偏差で±1%);加熱速度5℃/分(標準偏差で1〜2℃/分)。
【0062】
[065]特許請求される本発明の第1態様の第2工程は、放射線硬化性樹脂の層を可撓性多層基材のトランスポート層上にコーティングすることである。放射線硬化性樹脂は、化学線に反応して固化し、放射線硬化性樹脂の予め硬化した層に、またはある他の表面に接合する樹脂である。液体放射線硬化性樹脂が好ましい。本発明に有用に用いられてもよい他の適切な材料の例は、半固体またはゲル様放射線硬化性材料である。
【0063】
[066]コーティングは、放射線硬化性樹脂の性質に依存して、たとえば、グラビアローラー(meyerバー)、塗布機、ノズルを用いることによって、または可撓性多層基材をスプレーコーティングすることによって実施することができる。コーティングは、インクジェットもしくは他の選択的堆積法におけるように、選択的であっても、放射線硬化性樹脂の一様な層をコーティングする方法におけるように、非選択的であってもよく、次に前記放射線硬化性樹脂を硬化させるために放射線を選択的に当てる。放射線硬化性樹脂の薄層が望ましい。ある実施形態においては、放射線硬化性樹脂の層は、厚さ1〜1000ミクロンである。好ましくは、放射線硬化性樹脂の層は、厚さが約25ミクロン〜約250ミクロン、より好ましくは25ミクロン〜125ミクロン、より好ましくは25ミクロン〜75ミクロンであり、実質的に一様な厚さのものである。ある実施形態においては、放射線硬化性樹脂は、1cps〜20,000cpsの粘度の液体放射線硬化性樹脂である。
【0064】
[067]ある実施形態においては、本発明の方法に使用される放射線硬化性樹脂は、少なくとも30重量%、好ましくは30〜85重量%、より好ましくは少なくとも35重量%、より好ましくは35〜80重量%、より好ましくは35〜75重量%のカチオン硬化性化合物を含む。別の実施形態においては、放射線硬化性樹脂は、少なくとも40重量%、より好ましくは40〜80重量%、より好ましくは40〜75重量%、より好ましくは40〜70重量%のカチオン重合性化合物を含む。他の実施形態においては、放射線硬化性樹脂は、30〜85重量%、より好ましくは35〜80重量%、より好ましくは35〜75重量%のカチオン硬化性化合物と、10〜60重量%のフリーラジカル硬化性化合物とを含む。ある実施形態においては、放射線硬化性樹脂は、30〜80重量%または30〜70重量%のカチオン硬化性化合物と、10〜60重量%のフリーラジカル硬化性化合物とを含む。
【0065】
[068]特許請求される本発明の第1態様の第3工程は、可撓性多層基材のトランスポート層上の放射線硬化性樹脂を、予め硬化した層と接触させることである。これは、たとえば、可撓性多層基材を移動させ、したがって放射線硬化性樹脂と予め硬化した層とを接触させることによって行われても、予め硬化した層を、可撓性多層基材上の放射線硬化性樹脂と接触するように移動させることによって行われてもよい。3次元物体の第1層については、放射線硬化性樹脂は、ビルドパッドまたは固体プレートなどの固体ビルドプラットフォームと接触させられてもよい。3次元物品の最初の層についてビルドプラットフォームへの良好な粘着を確保するために、より高い化学線照射量を使用することが望ましいこともある。
【0066】
[069]特許請求される本発明の第1態様の第4工程は、放射線硬化性樹脂を化学線に露光させ、それによって予め硬化した層に接着する新硬化層を形成することである。化学線は、任意の好適な源、たとえばレーザー、ランプ、LED、またはレーザーダイオードに由来してもよい。ある実施形態においては露光は選択的である。別の実施形態においては、露光は選択的ではない。光硬化性の放射線硬化性樹脂については、放射線硬化性樹脂中の光開始剤の吸光度スペクトルと十分にオーバーラップする光の任意の適切な発光波長が好適である。好ましくは光の波長は、300〜475nm、好ましくは340〜400nm、より好ましくは350〜375nm、より好ましくは約365nmである。ある実施形態においては、化学線源は、LEDまたは一連のLEDである。露光は、選択的であっても非選択的であってもよい。
【0067】
[070]露光は、たとえば、放射線硬化性樹脂の長さにわたって化学線源を移動させることによって、および/または所望の露光プロフィールに従って化学線源のスイッチをオンオフすることによって起こってもよい。別の実施形態においては、化学線は、マスク露光によって選択的に当てられてもよい。さらなる実施形態においては、化学線は、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)からの投影を用いることによって当てられてもよい。ある実施形態においては、化学線は、放射線硬化性樹脂を化学線に選択的に露光させるためにマイクロシャッター装置を用いることによって当てられる。ある実施形態においては、化学線は、放射線硬化性樹脂に達するために基材を先ず通過しなければならない。
【0068】
[071]ある実施形態においては、全体層の露光は、たとえば1投影、または同時にかまたは相次いで起こる多重投影を用いることによって、1工程で起こり得る。別の実施形態においては、露光は徐々に起こり得る。たとえば、露光パターンは、放射線硬化性樹脂の表面を横切って移されてもよい。この方法では、放射線硬化性樹脂の同じ層の特定の領域が、露光中の放射線硬化性樹脂の層のサイズに依存して、たとえば15秒超またはさらには30秒超離れて、有意に異なる時に化学線に露光させられてもよい。別の実施形態においては、露光は多段階で起こる。たとえば、放射線硬化性樹脂は、第1露光、次に短い時間後の第2露光に曝される。
【0069】
[072]特許請求される本発明の第1態様の第5工程は、放射線硬化性樹脂の新硬化層を可撓性多層基材から分離することである。この工程は、硬化層を移動させることによって、可撓性多層基材を移動させることによって、または両方によって行うことができる。可撓性基材は、最初に照射される放射線硬化性樹脂の領域が一般に、基材から剥離されるべき最初のものである、「先入れ先出し」剥離を可能にする。「先入れ先出し」剥離が可能な装置の説明については、TNOに付与された国際公開第2010/74566号パンフレット(本明細書に完全に記載されているかのようにその全体が参照により本明細書によって援用される)を参照されたい。
【0070】
[073]上の記載に従って、特許請求される本発明の第2態様は、
(1)放射線硬化性樹脂の層を基材上にコーティングする工程であって、前記基材が平行方向および横方向、ならびに19.5mN・m
−1〜41mN・m
−1の表面張力、平行方向および横方向の両方に12kJ/m
2〜500kJ/m
2の比本質破壊仕事(w
e)、平行方向に0.2GPa超かつ6GPa未満の積層造形法の運転温度での引張弾性率、および平行方向に20MPa超かつ150MPa未満の降伏応力を有する工程と;
(2)放射線硬化性樹脂の層を予め硬化した層と接触させる工程と;
(3)放射線硬化性樹脂の層を、化学線源によって提供される、化学線に露光させ、それによって予め硬化した層に接着する硬化層を形成する工程と;
(4)硬化層と基材とを分離する工程と;
(5)工程1〜4を、3次元物体を構築するために十分な回数繰り返す工程と
を含む積層造形法である。
【0071】
[074]特許請求される本発明の第3態様は、
(1)トランスポート層および構造層を含む可撓性多層基材であって、トランスポート層がポリオレフィンまたはフルオロポリマーを含み、構造層が半結晶性の熱可塑性ポリマーを含む基材と;
(2)放射線硬化性樹脂の層を可撓性多層基材のトランスポート層に塗布するのに適合した塗布機と;
(3)可撓性多層基材を通して放射線硬化性樹脂に化学線を照射するために配置された化学線源と;
(4)3次元物体を支えることができるプラットフォームと
を含む積層造形用の装置である。
【0072】
[075]特許請求される本発明の第3態様の第1要素は、トランスポート層および構造層を含む可撓性多層基材であって、トランスポート層がポリオレフィンまたはフルオロポリマーを含み、構造層が半結晶性の熱可塑性ポリマーを含む基材である。特許請求される本発明の第1態様の基材を説明する際に考察された様々なおよび組み合わせできる実施形態のすべてが、特許請求される本発明の第2態様の装置において適用されてもよい。
【0073】
[076]特許請求される本発明の第3態様の第2要素は、放射線硬化性樹脂の層を可撓性多層基材のトランスポート層に塗布するのに適合した塗布機である。この塗布機は、放射線硬化性樹脂の性質に依存して、グラビアローラー(meyerバー)、ノズル、インクジェットデバイス、または噴霧機などの、放射線硬化性樹脂を基材に塗布するための任意の適切なデバイスであり得る。
【0074】
[077]特許請求される本発明の第3態様の第3要素は、可撓性多層基材を通して化学線を放射線硬化性樹脂に照射するために配置された化学線源である。化学線は、任意の好適な源、たとえばレーザー、ランプ、LED、またはレーザーダイオードに由来してもよい。光硬化性の放射線硬化性樹脂については、放射線硬化性樹脂中の光開始剤の吸光度スペクトルと十分にオーバーラップする光の任意の適切な発光波長が好適である。好ましくは光の波長は、300〜475nm、好ましくは340〜400nm、より好ましくは350〜375nm、より好ましくは約365nmである。ある実施形態においては、化学線源は、LEDまたは一連のLEDである。他の実施形態においては、化学線源はDMDを含む。ある実施形態においては、化学線源は、マイクロシャッター装置を含む。別の実施形態においては、化学線源は、レーザーダイオードまたは一連のレーザーダイオードを含む。
【0075】
[078]特許請求される本発明の第3態様の第4要素は、3次元物体を支えることができるプラットフォームである。ある実施形態においては、プラットフォームはビルドパッドを含む。別の実施形態においては、プラットフォームは垂直に移動可能である。別の実施形態においては、プラットフォームはガラス板を含む。
【0076】
[079]特許請求される本発明の第3態様はまた他の要素を含んでもよい。たとえば、ある実施形態においては、装置は、可撓性多層基材に張力をかけるために配置された基材テンションデバイスをさらに含む。ある実施形態においては、基材テンションデバイスは、基材を固定するためのクランプを含んでもよい。別の実施形態においては、基材テンションデバイスは、基材の第1端を固定するために基材の第1端上にクランプと、基材の反対端から支えられた重りとを含む。別の実施形態においては、基材テンションデバイスは、基材の3つ以上のエッジで可撓性多層基材に張力を供給するために配置される。ある実施形態においては、基材は、0.1〜5MPaの静的張力下に保たれる。別の実施形態においては、可撓性多層基材は、約5N/m〜約50N/mの基材の反対端でかけられる持続的な張力下に保持される。
【0077】
[080]ある実施形態においては、基材は、結合した様々なタイプの基材を含んでもよい。たとえば、第1タイプの多層基材は、ビルドエリアで露光され、したがって放射線硬化性樹脂の硬化と新硬化層の分離との繰り返しサイクルにかけられてもよい。第2タイプの基材は、多層基材に結合させられてもよく、前記第2タイプの基材はビルドエリアの外側に存在する。この第2タイプの基材は、たとえば、ある種の実施形態の基材テンションデバイスと接触してもよい。ある実施形態においては、基材は、構造層を含む、第2基材に結合した、トランスポート層および構造層を含む、多層基材を含む。構造層は、多層基材中のものと同じものであっても、異なってもよい。
【0078】
[081]さらなる実施形態においては、特許請求される本発明の第3態様の装置はまた、エンクロージャを含んでもよい。エンクロージャは、化学線源ではない源からの化学線が放射線硬化性樹脂に達するのを実質的に防ぐように設計される。
【0079】
[082]さらなる実施形態においては、装置は、溜めに含有されてもよい放射線硬化性樹脂を使用して基材をコーティングするために配置された、塗布機に連結された放射線硬化性樹脂の溜めを含む。ある実施形態においては、溜めは、基材の長さにわたって塗布機とともに移動可能である。
【0080】
[083]さらなる実施形態においては、装置はガイド要素を含む。ガイド要素は、基材を移動させることによって基材上にコーティングされた放射線硬化性樹脂をプラットフォームおよび/または放射線硬化性樹脂の予め硬化した層と接触するおよび接触しないように移動させるために配置される。
【0081】
[084]別の実施形態においては、装置は、放射線硬化性樹脂を加熱することができる発熱体を含む。発熱体は、様々な方法で配置されてもよい。好ましくは、発熱体は、装置の周りのエンクロージャ内部に含有される空気を加熱するために配置される。ある実施形態においては、発熱体は、装置の周りのエンクロージャ内部の空気を循環させる。さらなる実施形態においては、発熱体は、可撓性多層基材上にコーティングされている放射線硬化性樹脂を加熱するために可撓性多層基材に隣接して配置される。さらなる実施形態においては、塗布機がそれ自体加熱される。もっとさらなる実施形態においては、発熱体は、溜めに含有される放射線硬化性樹脂を加熱するために配置される。
【0082】
[085]明確に述べない、特に文脈によって矛盾しない、または組み合わせが不可能でない限り、上に記載された個々の実施形態の可能な組み合わせのすべてを、当業者の技能の程度まで完全に開示することが本発明者らの真意である。
【0083】
[086]以下の実施例は、本発明の実施形態をさらに例示するが、もちろん、その範囲を限定すると決して解釈されるべきではない。
【0084】
[実施例]
[087]放射線硬化性樹脂を利用する例については、基材ベースシステムにおいて許容される性能を可能にするハイブリッド(フリーラジカル重合性成分およびカチオン重合性成分を両方とも含有する)放射線硬化性樹脂が開発された。許容される性能は、たとえば、新硬化層を形成するときに基材への許容量の接着性、新硬化層を形成する許容速度、および3次元物体の許容生強度の増成によって実証される。この放射線硬化性樹脂は室温で液体である。この放射線硬化性樹脂は、38.895重量%のカチオン重合性成分を含有する。全組成の重量%単位での各成分の量付きの、放射線硬化性樹脂の処方は、表1に詳述される。表1に明記される放射線硬化性樹脂は、このセクションの全体にわたって試験樹脂と言われる。
【0085】
【表1】
【0086】
[088]使用されるおよびこれらの実施例の全体にわたって言及される様々な基材に関する情報は、表2に見いだすことができる。
【0087】
【表2】
【0088】
[ディウェッティング]
[089]ディウェッティング試験は、ディウェッティングが様々な物質について起こる速度を測定するために行う。試験物質を、試験前に少なくとも24時間25℃および50%相対湿度での温度−湿度制御室に保管する。試験樹脂を、試験前に24時間25〜30℃の温度に設定されたオーブンに保管する。試験は、25℃周囲温度で様々な基材について行う。試験は、各基材の3つの異なるセクションをディウェッティング試験にかけて、3通り行う。基材をガラス板上に貼り付け、次に、試験樹脂のドローダウンを、3ミルのドローダウンバーを用いて行う−
図2の初期状態線図を参照されたい。ストップウォッチを、ドローダウンが完了した直後にスタートさせ、ディウェッティングが起こるとすぐに停止する。
【0089】
[090]ディウェッティングは、液滴のサイズおよび形状の形成が少しでも目視認識可能であるときに起こったと見なされる−
図2のケース1を参照されたい。さらに、ディウェッティングはまた、ドローダウンのエッジからの試験樹脂の収縮の目視認識が少しでもある場合にも起こったと見なされる−
図2のケース2を参照されたい。これらの2つのケースのいずれの組み合わせもディウェッティングと考えられる。
【0090】
[091]ディウェッティングまでの時間を様々な基材について測定した。結果を表3に記録する。
【0091】
【表3】
【0092】
[092]フッ素化ポリマーが一般にポリオレフィンよりもはるかに短いディウェッティング時間を有することが指摘される。
【0093】
[接着性試験]
[093]異なる基材への硬化樹脂の接着性を評価する。興味のある基材を、支持用のおよびフラットな作業表面を確保するための手紙サイズのガラス板にテープで貼り付ける。ドクターブレードを用いて試験樹脂の一様な100ミクロン層を塗布する。硬化は、試料を、ドクターブレードされている層について20秒以内で窒素下に18m/分(1J/m
2の総エネルギー照射量)で6000ワットFusion Dバルブを備えたUV装置を通過させることによって達成される。UV装置を出て1分以内に、試料をガラス支持体から取り除き、基材を曲げる。試料は、基材の曲げが、基材も硬化樹脂層もいずれも損傷することなく基材からの硬化樹脂層の分離をもたらすのに十分である場合には、低い接着性を有すると判断される。試料は、硬化樹脂層と基材との間の接着破壊が基材を曲げることによって発生し得ない場合には、高い接着性を有すると判断される。低い接着性(容易な剥離)は、ETFE、PE、およびTPX基材について見いだされた。高い接着性(困難な剥離または剥離なし)は、PETおよびPA−6基材について見いだされた。
【0094】
[引裂抵抗]
[094]基材の引裂抵抗を試験するために、両刃ノッチ付き引張試験(DENT)を、Maspochら、「The Essential Work of Fracture of a Thermoplastic Elastomer」,Polymer Bulletin,39,246−255(1997)に記載されているように行う。各基材から、50mm(W)×70mm(H)および1、5、10、または15mmの名目靱帯長さ(L)の寸法の3通りの試料を、鋭いかみそりの刃でカットすることによって調製する。試料の形状を
図3に示す。各靱帯の正確な長さは、マイクロメーターを備えた遊動光学顕微鏡で測定した。基材の厚さ(t)は、Heidenhainマイクロメーターで測定する。
【0095】
[095]各基材を2つの垂直方向、平行方向および横方向に試験する。試験は、検体の破壊まで50mm/分の一定のクロスヘッド速度で引張機(Type KAF−TC 10kNロードセル付きZwick Z010)で室温にて行う。荷重対変位曲線を記録し、総エネルギーを荷重−変位曲線の数値積分法によって計算した。
【0096】
[096]総エネルギーを次に靱帯の横断面(L×t)で標準化し、靱帯長さ(L)に対してプロットする。Microsoft(商標)Excelを用いてデータの線形適合度を決定してY切片(w
e)および勾配(w
pβ)を計算する。比本質破壊仕事、w
eはY切片であり、亀裂を前進させることに関係したエネルギーである。無次元因子βを乗じた比非本質破壊仕事、w
pβが勾配であり、材料降伏に関係している。
【0097】
[097]様々な基材についての試験の結果は、表4に見いだすことができる。
【0098】
【表4】
【0099】
[098]本質破壊仕事は、ポリオレフィントランスポート層および半結晶性の熱可塑性ポリマー構造層を含む可撓性多層基材において単層基材よりもはるかに向上する。50TPX/50PETは、12kJ/m
2未満の横方向の本質破壊仕事ならびに平行方向および横方向の両方に8mJ/mm
3未満のw
pβを有する試験されたただ一つの多層基材であることが指摘される。
【0100】
[試験装置]
[099]幾つかの基材をさらに、基材ベース積層製造法を行うことができる装置で試験する。試験装置の説明のための
図4を参照されたい。おおよそ3メートルの所与の基材(1)を装置上に置く。移動可能なガイディングステージ(2)を、基材の第1端と第2端との間に置く。ガイディングステージは、50mmの直径のローラー3および4、12mmの直径のローラー5および6、ならびに12mmの直径のローラー7および8を含有する。ローラー7および8は、PCT/オランダ国特許出願公開第2011/050734号明細書(本明細書に完全に記載されているかのようにその全体が参照により本明細書によって援用される)におけるように可逆的曲率を有するローラーであり、移動方向(P、Q)に従って曲率を逆転させる。基材は教示され引っ張られる。基材は、基材の第1端を締め付けることによって、かつ、基材の第2端で基材を締め付けることによってか、基材の第2端から重りをぶら下げることによってかのいずれかで固定される。いずれにしても、締め付け抵抗の量またはぶら下がった重りは20kgであった。基材の端は、装置の運転の間実質的に動かせない。
【0101】
[0100]ローラー3および4は、各ローラーとともに移動可能である溜めに保持されたある量の放射線硬化性樹脂と接触する、ギザギザのあるローラー(グラビアローラーまたはmeyerバーとしても知られる)である。ローラー3および4は、移動可能なガイディングステージ(2)が移されるときに基材(1)上に放射線硬化性樹脂のおおよそ50ミクロン層(9)を堆積させる。ガイディングステージ(2)は、20mm/秒で移される。プラットフォーム(10)はz方向に移動可能である。プラットフォーム(10)は、基材から、1層分の厚さの距離を移動させられ、これは必然的に、放射線硬化性樹脂の堆積層の高さ未満である。ガイディングステージ(2)が第1方向(P)に移されるときに、リードローラー(4)は、放射線硬化性樹脂の層(9)を基材(1)上に堆積させる。ガイディングステージが移されるときに、放射線源(11)は活性化されておおよそ365nmのピーク波長の光を放射線硬化性樹脂に供給し、それによって樹脂を硬化させる。硬化樹脂は、ガイディングステージ(2)の移動によって基材(1)から分離し、プラットフォーム(10)に、または、
図4に示されるように、形成されつつある物体(13)の予め硬化した層(12)のいずれかに接着する。本プロセスは、ガイディングステージ(2)を逆方向に移すことによって逆に行われ、物体(13)を層ごとに構築するために繰り返される。本プロセスの間基材は、基材が放射線源(11)の表面と滑り接触しているように教示され引っ張られる。
【0102】
[0101]下にリストされる各基材について、この装置を、20mm/秒の移動速度、32℃の周囲温度、および30〜40%RHの湿度で運転した。結果を下の表5に示す。
【0103】
【表5】
【0104】
[0102]50TPX/50PET基材は、その比破壊仕事(w
e)およびw
pβにより、不十分な靱性をこの特定的な試験で示したが、50TPX/50PET基材は、それほど激しくない基材ベース積層造形法に好適に用いられることが期待される。たとえば、より少ない締め付け力を必要とするプロセスおよび放射線源の表面と基材との間の接触がより少ないプロセスなど。しかし、支持体の各方向に、12kJ/m
2〜500kJ/m
2の比破壊仕事、8mJ/m
3〜500mJ/mm
3のw
pβ、または両方を有する多層基材が好ましい。
【0105】
[0103]本明細書に引用される、刊行物、特許出願、および特許などの、すべての参考文献は、あたかも各参考文献が参照により援用されることを個別にかつ具体的に示され、かつ、本明細書にその全体が記載されているのと同じ程度に参照により本明細書によって援用される。
【0106】
[0104]本発明の記載との関連における(とりわけ以下の特許請求の範囲との関連における)用語「a」、「an」および「the」ならびに類似の指示対象の使用は、本明細書で特に明記しない限りまたは文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形を両方とも包含すると解釈されるべきである。用語「含むこと(comprising)」、「有すること(having)」、「包含すること(including)」、および「含有すること(containing)」は、特に記載のない限り、制約のない用語(すなわち、「包含するが、それに限定されない」を意味する)と解釈されるべきである。本明細書での値の範囲の列挙は、本明細書で特に明記しない限り、その範囲内に入る各別個の値を個別に言及する簡単な方法として機能することを意図するにすぎず、各別個の値は、あたかも本明細書に個別に列挙されているかのように本明細書へ組み入れられる。本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書で特に明記しない限りまたは文脈によって特に明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順番に行うことができる。本明細書に提供される任意のおよびすべての実施例、または例示的な言語(たとえば、「など(such as)」)の使用は、特に主張しない限り、本発明をより十分に明らかにすることを意図するにすぎず、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書のどの言語も、任意の特許請求されない要素が本発明の実施にとって不可欠であると示すものと解釈されるべきではない。
【0107】
[0105]本発明を実施するために本発明者らに知られている最良の形態などの、本発明の好ましい実施形態が、本明細書に記載されている。それらの好ましい実施形態の変形形態は、前述の説明を読むと当業者に明らかになり得る。本発明者らは、当業者が必要に応じてそのような変形形態を用いることを想定し、本発明者らは、本発明が本明細書に具体的に記載されているものとは別の方法で実施されることを意図している。したがって、本発明は、適用法によって許されるように、本明細書に添付される特許請求の範囲に列挙される主題のすべての修正形態および均等物を包含する。さらに、それのすべての可能な変形形態における上記の要素の組み合わせはいずれも、本明細書に特に明記しない限りまたは文脈によって特に明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。
【0108】
[0106]ある種の実施形態は、本発明のある種の任意選択の特徴を詳述するが、その記載は、そうではないと具体的に明記しない限りまたは物理的に不可能ではない限り、これらの特徴のすべての組み合わせを包含し、具体的に開示することを意味する。本発明は、詳細に、かつ、その具体的な実施形態に関連して記載されてきたが、様々な変更形態および修正形態が、特許請求される本発明の主旨および範囲から逸脱することなくその中で行われ得ることは当業者に明らかであろう。