(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ハウジングの前記内部表面による前記撓み部材の撓みによって前記撓み部材にわたって及ぼされる応力が、前記解放レバーを作るために使用されたポリマー樹脂材料の降伏強さの50%未満である、請求項14に記載の自動締付け靴。
【背景技術】
【0003】
靴及びブーツを含めた履物は、重要な服飾品である。履物は、着用者が立ち、歩き、又は走る間、足を保護し且つ必要な支持を提供する。履物はまた、着用者の個性のための美的要素を提供することができる。
【0004】
靴は、地面に接する表底と踵とを構成する、靴底を含む。サンダル又はビーチサンダルを構成しない靴には、多くの場合タン(tongue)と関連して足を取り囲む働きをするアッパーが取り付けられる。最後に、クロージャ機構が、アッパーの正中側部分及び体側側部分をタン及び着用者の足の周りにぴったりと引き寄せて、靴を足に固定する。
【0005】
クロージャ機構の最も一般的な形態は、靴アッパーの正中側部分と体側側部分との間で交差する靴紐であり、この靴紐は、着用者によって足の甲の周りできつく引っ張られて、結ばれる。そのような靴紐は、機能性において単純で且つ実用的であるが、着用者の足の周りで結び目が自然に緩むので、終日にわたって結んだり結び直したりする必要がある。これは、普通の着用者にとっては面倒なことになりうる。さらに、幼児は靴紐の結び方を知らない場合があり、したがって、気配りの良い親又は養護者による援助を必要とする。さらに、関節炎を患っている高齢者は、自分の足に靴を固定するために靴紐をきつく引っ張ったり結んだりすることに、痛みを感じるか、又は過度に苦労すると感じる場合がある。
【0006】
靴産業界は、長年にわたって、結ばれた靴紐を固定するための追加的な特徴、又は着用者の足の周りに靴を固定するための代替的な手段を採用してきた。したがって、1903年にプレストンに発行された米国特許第737,769号は、鳩目と鋲の組み合わせにより靴の甲回りにわたってアッパーに固定されるクロージャフラップを追加した。カルダロポリ(Cardaropoli)に発行された米国特許第5,230,171号は、クロージャフラップを靴のアッパーに固定するために、ホックと通し輪の組み合わせを使用した。ムル(Murr)Jr.に発行された米国特許第2,124,310号によってカバーされた軍用狩猟ブーツは、正中側及び体側側のアッパー上の複数のホックの周りをジグザグに進んで最終的にピンチファスナによって固定される靴紐を使用し、それにより結び目の必要性をなくした。ゼベ(Zebe)Jr.に発行された米国特許第6,324,774号、カベルロット(Caberlotto)らに発行された同第5,291,671号、及びディンドルフ(Dinndorf)らによって公表された米国特許出願第2006/0191164号も参照されたい。他の製靴業者は、靴内の足により終日にわたって加えられる靴紐の結び目を解く圧力を減じるために、靴上の所定の位置に靴紐を固定する小さなクランプ又はピンチロックの機構を用いてきた。ハンソンに発行された米国特許第5,335,401号、ボルソイ(Borsoi)らに発行された同第6,560,898号、及びリュウ(Liu)に発行された同第6,671,980号を参照されたい。
【0007】
他の製造業者は、完全に靴紐を不要にしてきた。例えば、スキーブーツは、足及び脚の周りにブーツのアッパーを固定するために、バックルを使用することが多い。例えば、ゲルチュ(Gertsch)らに発行された米国特許第3,793,749号、及びモロー(Morrow)らに発行された同第6,883,255号を参照されたい。一方、サイデル(Seidel)に発行された米国特許第5,175,949号は、アッパーの一部分から延在するヨークが、アッパーの別の部分上に配置された上向きに突出した「ノーズ」を覆ってスナップ式にロックし、結果として得られるロック機構の張力を調節するためのスピンドルドライブを有する、スキーブーツを開示している。靴紐が凍りつくこと、又は靴紐が氷で覆われることを回避する必要があるので、スキーブーツから外付けの靴紐を排除して、堅いスキーブーツのアッパーと係合する外付けのロッキング機構に置き換えることは、論理的である。
【0008】
スキーブーツに使用された異なる手法は、ケーブルを(したがってスキーブーツを)着用者の足の周りで締め付ける回転式ラチェット歯止め機構によって締め付けられる、内部に巡らされたケーブルを使用することであった。例えば、モレル(Morell)らに発行された米国特許第4,660,300号及び同第4,653,204号、ショッホ(Schoch)に発行された同第4,748,726号、ワルクホフ(Walkhoff)に発行された同第4,937,953号、並びにスペードマン(Spademan)に発行された同第4,426,796号を参照されたい。ハマースラング(Hammerslang)に発行された米国特許第6,289,558号は、そのような回転式ラチェット歯止め締付け機構を、アイススケート靴のインステップストラップにまで拡張した。そのような回転式ラチェット歯止め締付け機構と内部ケーブルの組み合わせはまた、運動靴及びレジャー用の靴に適用されてきた。例えば、キャロルに発行された米国特許第5,157,813号、ハーレンベック(Hallenbeck)に発行された同第5,327,662号及び同第5,341,583号、並びにズスマン(Sussmann)に発行された同第5,325,613号を参照されたい。
【0009】
ポゾボン(Pozzobon)らに発行された米国特許第4,787,124号、ショッホ(Schoch)に発行された同第5,152,038号、ヨンキント(Jungkind)に発行された同第5,606,778号、及びサカバヤシに発行された同第7,076,843号は、手若しくは引張り紐によって操作されるラチェット歯止め又は駆動歯車の組み合わせに基づく、回転式締付け機構の他の実施形態を開示している。これらの機構は、協調して動作することが必要とされるそれらの部品の数のために複雑になっている。
【0010】
内部に又は外部に巡らされたケーブルを締め付けるために、靴又はスキーブーツにおいてはさらに他の機構が利用可能である。手によって操作される、後部アッパーに沿って配置された枢動可能なレバーが、オリビエリ(Olivieri)に発行された米国特許第4,937,952号、ワルクホフ(Walkhoff)に発行された同第5,167,083号、サイデル(Seide)に発行された同第5,379,532号、及びジョーンズらに発行された同第7,065,906号によって教示されている。外部に巡らされた靴紐に張力を加えるための、後部靴アッパーに沿って位置決めされて手によって操作される摺動機構が、ツァイ(Tsai)によって出願された米国特許出願第2003/0177661号によって開示されている。マーティンに発行された米国特許第4,408,403号、及びヒエブリンガー(Hieblinger)に発行された同第5,381,609号も参照されたい。
【0011】
他の製靴業者は、着用者の手ではなく足によって作動させることができる締付け機構を内蔵する靴を設計してきた。例えば、ヴォスウィンケル(Voswinkel)に発行された米国特許第6,643,954号は、足によって押し下げられて靴アッパーにわたってストラップを締め付ける、靴の内部に配置された緊張レバーを開示している。チョウ(Chou)に発行された米国特許第5,983,530号及び同第6,427,361号、並びにロテム(Rotem)らに発行された同第6,378,230号では、同様の機構により内部に巡らされた靴紐ケーブルが作動される。しかし、そのような緊張レバー又は押し板は、足によって一定の圧力が加えられない場合があり、それにより、締付けケーブル又はストラップが緩むことになる。さらに、着用者は、終日にわたって緊張レバー又は押し板を踏みつけることに心地悪さを感じる場合がある。ベルニエ(Bernier)らに発行された米国特許第5,839,210号は、靴の甲回りにわたって幾つかのストラップを引っ張るための、靴の外部上に位置決めされた、関連する電気モータを備えた電池充電式引き込み機構を使用することにより、異なる手法を採用する。しかし、そのような電池動作式デバイスは、短絡を起こしたり、湿潤環境において着用者を感電させたりする可能性がある。
【0012】
靴産業界はまた、靴紐の代わりにVelcro(登録商標)ストラップを含む、子供及び成人向けの靴を生産してきた。正中側アッパーから延在するそのようなストラップは、体側側アッパーに固着された相補的なVelcro(登録商標)パッチに容易に留められる。しかし、そのようなVelcro(登録商標)クロージャは、足によって過度の応力が加えられた場合に分離してしまうことが多い。このことは、特に運動靴やハイキングブーツで起こる。さらに、Velcro(登録商標)クロージャは、比較的早く擦り切れて、しっかりと閉める能力を失う可能性がある。さらに、多くの着用者が、Velcro(登録商標)ストラップは履物には見た目が悪いと感じている。
【0013】
本発明者であるグレゴリー・G・ジョンソンは、靴底内の区画内に、又は靴の外部に沿って配置され、靴アッパーの内側又は外側に位置決めされた内部又は外部のケーブルを締め付けると同時に望ましくないケーブルの緩みを防ぐための、自動締付け機構を含む複数の靴製品を開発してきた。そのような締付け機構は、締め付けられたケーブルに係合する一対の把持カム、ラチェット歯止めのように動作して締付け方向への移動を可能にすると同時に緩み方向への滑りを防ぐトラックアンドスライド機構(track−and−slide mechanism)、又は、靴紐ケーブルを巻き取り、また逆回転を防ぐために解放レバー上の歯止めによって係合されるラチェットホイールを支持する車軸組立体を伴う場合がある。ジョンソンの自動締付け機構は、手で引く紐若しくはトラックアンドスライド機構、又は、靴底の後部から延在し着用者によって地面若しくは床に対して押し下げられて靴紐ケーブルを締め付ける作動レバー若しくは押し板によって操作することができる。関連する解放レバーは、靴を脱ぐために自動締付け機構をその固定位置から係脱して靴紐又はケーブルを緩められるようにするために、着用者の手又は足によって押されうる。ジョンソンに発行された米国特許第6,032,387号、同第6,467,194号、同第6,896,128号、同第7,096,559号、及び同第7,103,994号を参照されたい。
【発明を実施するための形態】
【0021】
交差した靴紐を締め付けて着用者の足の周りに靴アッパーを引き寄せるためのホイール作動式締付け機構を含む自動締付け靴が、本発明によって提供される。そのような自動締付け機構組立体は、好ましくは、靴紐を締付け方向に巻き取るための車軸と、車軸を締付け方向に回転させるための、好ましくは後部の靴底から一部突出している据え付けのローラホイールと、解放レバーの端部上の歯止めと連続的に係合して車軸が逆回転するのを防ぐための、ラチェット歯を備えた据え付けのラチェットホイールとを含む。ラチェットホイールの歯から歯止めを係脱するように解放レバーが付勢されると、車軸は自由に逆回転して靴紐を解放することができ、それにより靴紐を緩めることが可能になる。本発明は、少数の部品しか有さず、その動作において信頼性が高いと同時に、靴底内に隠された締付け機構へのアクセスなしに靴紐を交換することを可能にする、自動締付け機構を提供する。この機構はまた、着用者の手を使用することなしに締付け方向及び弛緩方向のどちらにも動作させることができる。
【0022】
本発明において、「靴」は、ブーツ、作業靴、雪靴、スキーブーツ及びスノーボードブーツ、スニーカやテニスシューズ、ランニングシューズ、ゴルフシューズ、クリート靴、バスケットボールシューズのようなスポーツシューズ又は運動靴、アイススケート靴、ローラスケート靴、インラインスケート靴、スケートボードシューズ、ハイキング用の靴又はブーツ、ドレスシューズ、カジュアルシューズ、ウォーキングシューズ、ダンスシューズ、並びに整形靴を含むがそれらに限定されない、足の上に靴を保持するのに役立つアッパー部分を有する、あらゆる閉塞型の履物製品を意味する。
【0023】
本発明は様々な靴に使用することができるが、本明細書では、例示の目的のためにすぎないが、本発明は運動靴に関して説明される。これは、他の適切な又は望ましいタイプの靴への本発明の自動締付け機構の応用を多少なりとも限定することを意味するものではない。
【0024】
図1は、開放状態にある本発明の自動締付け靴110の上面図を示し、
図2は、締付け機構を示す自動締付け靴110の部分切欠き側面図を示す。自動締付け靴110は、靴底120と、タン116、つま先113、踵118、及び強化紐締めパッド114を含む一体型本体部材すなわち靴アッパー112とを有し、これらは全て、靴の最終用途に適した任意の材料で構成される。
【0025】
本発明の自動締付け靴110は、連続したループに構成された単一の靴紐136を含む。タン116の端のつま先113にはクリップ138が設けられ、このクリップ138は、リボン137若しくは鋲、又は他の留め具などの任意の適切な手段により、紐締めパッド114又は靴のつま先アッパーに固定される。次いでこのクリップ138は、靴紐136に固着されて、靴紐136を固定クリップに対して所定の位置に保持する。靴紐136の二つの末端部136a及び136bは、靴紐の自由端が紐締めパッドの上に配置されるように、紐締めパッド114上の鳩目122及び124を貫通する。次いでこの靴紐136は、図示のように、タン116にわたって交差し且つ靴紐鳩目126、128、130、及び132を通過してから、靴紐拘束ループ142を通過する。靴紐拘束ループ142を通過した後で、靴紐136は、強化紐締めパッド114の穴144及び146を通過し、靴アッパー112の正中側部分112a及び体側側部分112bの外側材料と内側材料との中間に通る管材料のセクション148及び150を通って後方に移行して、靴の踵へと下降する。これらの内部管材料セクション148及び150は、自動締付け靴110の靴底120内に配置されたチャンバ200内まで延在する。このようにして、靴紐136は、ガイドチューブ148及び150を通過して、それらの間で自動締付け機構210と動作可能なように係合する。靴紐136の自由端136a及び136bが靴のつま先アッパーの上で互いに結ばれると、連続したループが作られる。クリップ138は、この結び目を隠し、また、靴紐の輪が解けるのを防ぐのに役立つ。管材料148及び150の必要性をなくすために本発明においては代わりに靴紐136を靴アッパーの外部に沿って巡らせることもできることに、留意すべきである。
【0026】
クリップ138は、
図3〜
図4により詳細に示されている。クリップ138は、ヒンジ164によって継合された下ハウジング160及び上ハウジング162を含む。上ハウジング162、下ハウジング160、及びヒンジ164は、プラスチック、金属、又は適当に軽量で且つ気象要素に耐性のある任意の他の材料から作ることができる。プラスチックの一つの利点は、クリップ138のこれらの三つの部分を単一の構造物としてまとめて成形することができることである。
【0027】
下ハウジング160及び上ハウジング162は、それぞれ協働するスロット166及び168を備える。クリップ138を靴110のアッパーに固着するために使用されるリボン137は、これらのスロットに簡単にくぐらせることができる。内部のすなわち下ハウジング160はまた、前方に突出したリップ172が付いた、上方に突出するフランジ170を有する。一方、上ハウジング162は、第2のスロット174を有する。最後に、下ハウジング162及び上ハウジング160はどちらも、クリップ138の二つのハウジングが互いに向かって閉じられたときに合体して円形の開口を形成するような寸法となされた窪み176及び178を、それぞれが含む。
【0028】
クリップ138は、以下のようにして簡単に靴紐136に固着することができる。靴紐136沿いの所望の箇所を、開いたクリップ組立体内に、また下ハウジング160上の窪み176内に置く。次いで、フランジ170がスロット174に入り込み且つリップ172が上ハウジング162の内部窪みとぴったり係合するまで、上ハウジング162を下ハウジング160に向かって押し下げて、二つのハウジング半体が不必要に分離するのを防ぐ。靴紐136はハウジングの窪み176及び178によって収容され、その結果、閉じられたクリップ組立体138は靴紐136を封入するよう。このようにして、靴紐136は、靴110のアッパーに対して適所に固着される。
【0029】
本発明の自動締付け靴110の好ましい実施形態は、
図1に示された交差した靴紐の構成を利用するが、考えられる他のクロージャ構成も利用可能である。例えば、
図5は、ジグザグの紐締めパターンを示す。このジグザグ構成では、靴紐136の一つの自由端136aが、クリップ138により靴のつま先アッパー112に固着される。クリップは、紐締めパッド114か、又は紐締めパッドに隣接したアッパーに固着することができる。次いで靴紐136は、鳩目124、126、及び132を通され、次いで開口144を通り、それから靴アッパー112a内に配置されたガイドチューブ148を通過し、靴の踵近くの靴底内に配置された自動締付け機構210を通り、靴アッパー112b内に配置されたガイドチューブ150を通り抜けて逆行し、次いで開口146を通り抜けて逆行し、そこで靴紐136の自由端136bがクリップ180により紐締めパッド114に固着される。
【0030】
或いは、自動締付け靴110は、
図6により詳細に示すように、交差した又はジグザグの靴紐136の代わりに、クロージャパネル184を使用してもよい。クロージャパネル184は、正中側沿いの下方タブ188及び190、並びに体側側沿いのタブ189及び191により、その前端186において靴底120に固着される。クロージャパネル184は、タン116を覆う。一方、上方タブ192及び194は、それぞれ、下記の自動締付け機構210によりクロージャパネル184を締め付ける、係合ケーブル196に固着される。クリップ138が、上記の方法で係合ケーブル196をクロージャパネル184に固着する。この係合ケーブル196は、自動締付け機構210との動作可能に係合するために、
図1及び
図5に示した靴紐136の実施形態について本明細書で説明したのと同一の、靴内の連続したループで形成される。一代替実施形態では、クロージャパネル184は、その一方の側に沿って正中側アッパー197に固定し、次いで係合ケーブル199により体側側アッパー198に向かって引っ張ることができる。
【0031】
図2により詳細に示されるように、自動締付け機構210は、ハウジング底部202に固着されたハウジングチャンバ200内に配置される。アクチュエーティングホイール212が、自動締付け機構210に固着されて、靴110の後部靴底部分を一部越えて突出する。床又は地面上でアクチュエーティングホイール212を回転させることにより、自動締付け機構210が締付け位置まで回転される。靴紐136は、二つの側からチャンバ200内へと下方に延びて、靴紐136を締め付けるための締付け機構210を通過する。解放レバー214は、本明細書でより詳細に説明するように、好ましくは靴110の後部アッパーから延びて、自動締付け機構を緩めるための便利な手段を提供する。
【0032】
自動締付け機構210は、
図7により詳細に示されている。自動締付け機構210は、前部ケース220及び後部ケース222を含み、これらの間に車軸組立体224が固定される。前部ケース222を後部ケース220に継合するためにねじが使用されてもよいが、好ましくは二つのケース部分は、音波溶接や接着剤などの他の手段によって互いに固着されるのがよい。解放レバー214は、本明細書で開示されるように、後部ケース222に固着される。これらのケース要素は、RTP301ガラス繊維10%混合ポリカーボネート(RTP301 polycarbonate glass fiber 10%)などの任意の適切な材料から作ることができる。他の機能的に同等の材料は、15%のガラス繊維を含むナイロンである。
【0033】
車軸組立体224は、
図8に分解した形でより詳細に示されている。車軸組立体224は、好ましくは、ホイールシャフト230、第1の端部シャフト232、及び第2の端部シャフト234を含む。これらのシャフト部分のそれぞれは、好ましくは、RTP301ガラス繊維10%混合ポリカーボネートか、又は機能的に同等の材料から形成される。ナイロンなどの他の材料が使用されてもよいが、重要な点は、ホイールシャフト部分230、第1の端部シャフト232、及び第2の端部シャフト234が、協調して回転する車軸組立体224を作り出すように互いに嵌合する、適切に寸法取りされ且つ構成された表面を備えると同時に、長期にわたる繰返し動作に対して必要な強度を提供することである。
【0034】
ホイールシャフト230にさらに注目すると、ホイールシャフト230は、それぞれの面から第1の横車軸238及び第2の横車軸240が延在している硬質円形フレーム236を備える、一体に成形されたユニットを含む。各横車軸は、円筒形肩部242、及びその遠位端において立方体の端部キャップ244を提供する。硬質円形フレーム236の円筒形の縁部に沿って、連続したリブ246と、このリブから横方向に延在する複数のクリート248とが成形される。円形フレーム236の対向する各面内には、横車軸240を取り囲む環形領域250が成形される。一方、靴紐136又は係合ケーブル196が車軸組立体224のこのホイールシャフト230部分を通過することができるように、穴252が、第1の横車軸238、円形フレーム236、及び第2の横車軸240を完全に貫通する。
【0035】
第1の端部シャフト232及び第2の端部シャフト234は、その構成において同一であり、
図8及び
図11に関連してまとめて説明される。ディスク260が、その外側面上で車軸262に接続される。この車軸262は、内側円筒形肩部264と、より小さい直径を有する外側円筒形ボス266とを有する。外側円筒形ボス266は、より大きい直径を有する内側円筒形肩部264と結合して、軸受壁268を画定する。ディスク260の反対側の内側面上には、その外部円周表面から複数のラチェット歯274が延在している、四角形の穴272を有するボス270が位置決めされる。四角形の穴272は、車軸262の内側円筒形肩部264に配置された穴276と協働して、靴紐136又は係合ケーブル196を通すための連続した通路を作り出す。
【0036】
図13〜
図15は、第1の端部シャフト232又は第2の端部シャフト234の一代替実施形態233を示す。この代替実施形態233は、内側円筒形肩部264と外側円筒形ボス266との間に成形された追加の拘束ディスク壁288を除いて、設計及び構成が
図7、
図8、及び
図11に図示された端部シャフトに類似している。この拘束ディスク壁は、内側円筒形肩部の直径よりも大きい直径を有する。このようにして、端部シャフト233の拘束ディスク壁288とディスク部分260とが協働して、靴紐136又は係合ケーブル196を巻き取ったり繰り出したりするための領域289を画定すると同時に、拘束ディスク壁288が、靴紐136又は係合ケーブル196が過度に横方向に移動するのを防ぐ。このことは、靴紐又は係合ケーブルが車軸組立体224に絡まってその回転運動を妨げるのを防ぐのに役立つ。
【0037】
図9は、ホイールシャフト230に固着されたアクチュエータホイール212を示す。
図8により明瞭に示されるように、アクチュエータホイール212は、その内側円周面282内に延びるチャネル280を含む。このチャネル280に沿って、複数の横方向凹部284が周期的に配置される。チャネル280の幅及び深さは、ホイールシャフト230の外側円周表面に沿って位置決めされたリブ246の幅及び高さに一致する。一方、横方向凹部284の幅、長さ、及び深さは、ホイールシャフト230の外側円周表面に沿って位置決めされたクリート248の幅、長さ、及び高さに一致する。アクチュエータホイール212の開口部286の直径は、ホイールシャフト230の円形フレーム236から延在しているリブ246の直径と実質的に同等である。このようにして、アクチュエータホイール212は、リブ246及びクリート248がチャネル280及び横方向凹部284と協働した状態で、ホイールシャフト230の円形フレーム236の周辺部の周りに嵌め込むことができ、その結果、アクチュエータホイールがホイールシャフトに固着される。
【0038】
図8を参照すると、アクチュエータホイール212がホイールシャフト230(
図7参照)に組み付けられるとともに、金属シール軸受290がホイールシャフト230の内側円筒形肩部264の周りに嵌め込まれて、円形フレーム236上の軸受表面292(
図9参照)に接触する。これらの金属シール軸受290は、ハウジングの前部ケース220及び後部ケース222内で車軸組立体224を支持すると同時に、車軸の自由な回転を可能にする。この目的のために、軸受が自由に回転することができるように、シール軸受290の内径は内側円筒形肩部264の外径よりもわずかに大きくするべきである。
【0039】
それと同時に、シール軸受290は、軸受の側壁内に形成された環状チャネル293に嵌着された円筒形ゴムインサート292を含む。このゴムインサートは、車軸シャフト組立体224においてアクチュエータホイール212の適切な回転を妨げうる土、砂粒、及び他の異物が軸受を越えて車軸シャフト組立体224内まで移動するのを防ぐのに役立つ。シール軸受290の軸受部分は、ステンレス鋼のような強靱な材料で作られるべきである。本発明の自動締付け機構210に適したシール軸受は、台湾のジャージアン・フィット・ベアリング(Zhejiang Fit Bearing)Co. Ltd.から調達することができる。
【0040】
次に、端部シャフトの四角形の凹部272がホイールシャフト230のそれぞれの立方体端部キャップ244と係合した状態で、第1の端部シャフト232及び第2の端部シャフト234がホイールシャフト230上に組み付けられる。四角形の凹部と立方体端部キャップを使用することにより、回転するホイールシャフト230は、必然的に、その回転力のほぼ全てを端部シャフト232及び234に滑ることなく伝達することになる。
【0041】
金属ブッシュ296が、端部シャフト232及び234のそれぞれの軸受壁268又は拘束ディスク壁288に接触して、これら二つの端部シャフトの外側円筒形ボス266と係合する。これらの金属ブッシュの外径298は、端部シャフト実施形態232、234内で靴紐136を巻き上げるための環状領域300を画定するために、端部シャフトの内側円筒形肩部264の直径よりも十分に大きくするべきである。
【0042】
図7により明瞭に示されるように、靴紐136は、ガイドチューブ148から端部シャフト232の穴276及び内部通路を通過し、ホイールシャフト230の軸を通り、端部シャフト232の内部通路及び穴を通って、ガイドチューブ150内へと逆行する。これらの部品を完全に組み立てて車軸組立体224を形成する前に靴紐136をこれらの部品に通すほうが、より簡単であろう。
【0043】
靴110の踵から一部延在しているアクチュエータホイール212が回転すると、ホイールシャフト230、横車軸238及び240、端部シャフト232及び234、並びにそれらのそれぞれのボス270、及びラチェット歯274が同方向に回転する。アクチュエータホイール212は、ショアー硬さ70Aのウレタンか、又は機能的に同等の材料から製造されるべきである。ホイールは、好ましくは、直径1インチ、体積0.311in
3のものであるべきである。そのようなホイールサイズは、靴110の靴底のハウジング200内に収まりながらも靴の踵から延在するのに十分な大きさとなるであろう。靴のサイズ及び靴の最終用途に応じて、アクチュエータホイール212は、1/4インチ〜1と1/2インチの範囲の直径を有することができる。
【0044】
図8に示されるように、好ましい一実施形態では、アクチュエータホイール212は、ホイールの外部表面内に横方向に形成された、複数の溝形くぼみ400を有することができる。これらの溝形は、使用者の足の周りで靴を締め付けるためにホイール212が回転されるときに、静止摩擦を提供する。理想的には、そのような溝形400は、底壁404に対して外方に広がった側壁402を有して、溝形に小石や他の岩屑が詰まる可能性を減らす(
図10参照)。
【0045】
図7及び
図17に示されるような前部ケース220は、好ましくは、RTP301ガラス繊維10%混合ポリカーボネートか、又は機能的に同等の材料から成形される。前部ケース220は、外側表面壁300、及び基部壁302を有する。この基部壁302は、接着剤などによる、自動締付け機構210を収容するハウジング組立体220及び222をチャンバ底部202に固定するための理想的な方法を提供するように、平坦であるべきである。このハウジングは、自動締付け機構の様々な部品を収容すると同時に、靴紐136の出入り、締付け及び弛緩の両方向への車軸組立体224の回転、並びにアクチュエータホイール212及びハウジングから延在する解放レバー214の外部操作を可能にする。
【0046】
図17は、前部ケース220の内部を示す。前部ケース220は、アクチュエータホイール212を収容するための切欠き部分304を備える。アクチュエータホイール212は、前部ケース220と擦れることなく自由に回転することができなければならない。くぼみ307及び309によって画定された肩部表面306及び308が、第1の端部シャフト232及び第2の端部シャフト234又は端部シャフト233の外側円筒形ボス266を取り囲みそれにより車軸組立体224の端部を画定しているブッシュ296に、軸受表面を提供する。肩部310a、310b、310c、及び310dが、車軸組立体224の第1の端部シャフト232及び第2の端部シャフト234部分上のディスク260及びシール軸受290に、追加の支持手段を提供する。前部ケース220内の空所312及び314が、各端部シャフト上のボス270とそれらのラチェット歯274とを収容する。最後に、空所316及び318が、車軸組立体224の内側円筒形肩部分232及び234の周りに靴紐136が巻かれるときに、その靴紐136を収容する。
【0047】
後部ケース222の外部は、
図18及び
図19に示されている。待機位置にあるときの解放レバー214のための基部支え322が、外部表面320から成形された形で延在している。この解放レバーは、窓324を貫通して延在する。上面上にフランジ328が配置された傾斜部326が、基部支え322から窓324内へと内方に延在している。
【0048】
後部ケース222の内部を示す
図7を参照すると、車軸組立体224の端部上に位置決めされた外側ブッシュ296を固定する、くぼみ330及び332を認識することができる。これらのブッシュは、肩部334及び336によって支持される。車軸組立体224は、肩部340a、340b、340c、及び340dによって支持される。切欠き領域342が、アクチュエータホイール212を収容する。空所344及び346が、ラチェットホイール270を収容する。空所348及び350が、車軸組立体224の内側円筒形肩部264の周りに靴紐136が巻かれるときに、その靴紐136を収容する。
【0049】
解放レバー214は、
図20〜
図21により詳細に示されている。解放レバー214は、好ましくは、RTP301ガラス繊維10%混合ポリカーボネートか、又は機能的に同等の材料から成形される。解放レバー214は、一方の端にはレバー360を、他方の端には二つのアーム362及び364を含む。内部表面366に沿って、くぼみ368が配置される。
【0050】
解放レバー214は、後部ケース222のフランジ328が解放レバー214のくぼみ368に係合した状態で、後部ケース222と枢動係合するように取り付けられる。以下でさらに説明するように、このフランジと凹部の協働する寸法及び形状は、解放レバーをその待機位置と解放位置との間で枢動させることを可能とするものである。一方、アーム362及び364は、解放レバーアーム362及び364の歯止め端部374及び376が車軸組立体224の第1の端部シャフト232及び第2の端部シャフト234の歯274に当接しうるように、後部ケースの穴370及び372を貫通して下方に延在する。
【0051】
本願に示した解放レバーの代わりに、ラチェットホイールの歯から歯止めを係脱する、任意の他の解放機構を使用することができる。使用可能な代替実施形態には、限定的ではないが、押しボタン、引張りコード、又は引張りタブが含まれる。
【0052】
解放レバー214をその待機位置に付勢するために、ステンレス鋼金属で作られた二枚の板ばね380が使用される。
図17により詳細に示されるように、これらの板ばね380は、中間軸受表面382、リップ状端部384、及びフレア状端部(張り出し端部)386を含む。板ばね380は、リップ状端部384を前部ケース220上のフランジ388及び390の周りに掛止した状態で、空所312及び314に挿入される。一方、各板ばねのフレア状端部386は、空所312及び314の下方表面上に位置する。解放レバーをその解放位置に付勢するために、解放レバー214の端部360が使用者によって押し下げられると、歯止め374及び376が板ばね380に接触して、それらを空所312及び314の湾曲した壁に向かって内方に押す。次いで、解放レバーがもはや押し下げられなくなると、板ばねの固有の撓みが歯止めを押し返して、それらをもう一度ラチェット歯274との係合に戻す。或いは、解放レバーの歯止めを付勢して自動締付け機構のラチェットホイールの歯と係合させるために、圧縮ばね、又はねじればね(tortion spring)が使用されてもよい。そのようなステンレス鋼の板ばね380は、台湾、台北のKY−メタル・カンパニーから調達することができる。或いは、板ばね380は、十分な撓みを有するポリカーボネート材料から形成することもできる。
【0053】
靴紐136又は係合ケーブル196を含むガイドチューブ149及び150は、それらが分離されることがないように、後部ケース222に固着される必要がある。
図7に示される実施形態では、ガイドチューブは、それらの端部近くに平座金410を有する。各ガイドチューブ148、150の端部は、後部ケース222の頂部壁内に形成された入口門形チャネル412、414に挿入される。座金410は、門形チャネル壁412、414内に形成された内側環状凹部416に嵌合して、後部ケース222が前部ケース220に組み付けられたときにガイドチューブ148、150が後部ケース222から引き離されるのを防ぐ。或いは、門形チャネル壁414、416は、その内部壁表面に沿って形成された一連の鋸歯状の歯418を備えることができる。このようにして、座金410及び凹部416を必要とすることなく、ガイドチューブを門形チャネル412、414に押し込んで固定係合させることができる。
【0054】
動作にあたっては、着用者は、自動締付け靴110の靴底120の後部から延在しているアクチュエータホイール212が床又は地面に当接するように、その足を位置決めする。靴の踵を着用者の身体から離れる方向に転動することにより、アクチュエータホイール212が反時計方向に回転する。ホイールシャフト組立体230、並びに関連する端部シャフト232及び234が同様に反時計方向に回転し、それにより、靴紐136が自動締付け機構のハウジング内で車軸組立体の内側円筒形肩部264の周りに巻き付けられる。そうすることで、靴紐136は、着用者の手を使用することなく、靴110内で着用者の足の周りに締め付けられる。解放レバー214の歯止め端部374及び376が、ラチェットホイール270の各歯274と連続して係合して、さもなければ靴紐を緩めるように車軸組立体を回転させるであろうラチェットホイールの時計方向回転を防止する。板ばね380が、歯止め端部に対接しそれらを付勢してラチェットホイールの歯と係合させる。
【0055】
着用者が靴110を脱ぐために靴紐136を緩めたい場合には、着用者は、好ましくは後部靴底から延在する解放レバー214を押し下げるだけでよい。解放レバー214は、上記のように、板ばね380の付勢力に打ち勝って、歯止め端部374及び376をラチェットホイール270の歯274から係脱させる。車軸組立体224が時計方向に回転し、靴紐136が自然に緩む。着用者は、他方の足で解放レバーを押し下げることができ、その結果、靴を緩めるために解放レバーを使用するのに手は必要とされなくなる。
【0056】
本発明の自動締付け機構210は、当業界で知られている他のデバイスよりも設計が単純である。したがって、靴の製造中に組み立てられる部品、及び靴の使用中に壊れる部品は、より少なくなる。本発明の自動締付け機構実施形態210の他の大きな利点は、靴紐136及びそれらの関連するガイドチューブを、正中側及び体側側のアッパーに斜めに通す代わりに、靴アッパーの踵部分へと下方にねじ込むことができることである。この特徴は、靴110の製造を大幅に簡略化する。さらに、自動締付け機構210を靴底120内で踵により接近させて配置することにより、より小さなハウジングチャンバ200を使用することができ、また、製造の際に、ユニットをより容易に靴底内のより小さな凹部に挿入して接着することができる。
【0057】
本発明の自動締付け機構210の他の大きな利点は、二本の靴紐、又は締付け機構に接続される1以上の係合ケーブルに接続される靴紐の代わりに、単一の靴紐136が、靴を締め付けるために使用されることである。靴紐の端部を車軸組立体の端部に固定するのではなく靴紐を車軸組立体224に通すことにより、擦り切れた又は裂けた靴紐の交換が、単純で且つ簡単なものになる。靴紐136の両端部は、紐締めパッド114に沿ったクリップ138から取り外してほどくことができる。次いで、古い靴紐の一端に、新しい靴紐を固着することができる。次いで、古い靴紐の他方の端部を靴から離れる方向に引っ張って、新しい靴紐を靴内へと進ませ、ガイドチューブ148、車軸組立体224、他方のガイドチューブ150に通して、靴から外に出すことができる。これを行うと、次いで、新しい靴紐の二つの端部を、紐締めパッド114に沿って配置された靴鳩目に通し、互いに結んで、もう一度クリップ138の中に固着することが簡単にできる。このようにして、靴底内のチャンバ内部のハウジング内部に隠された自動締付け機構210に物理的にアクセスすることなく、靴紐を交換することができる。そうでない場合、靴及び自動締付け機構ハウジングは、ホイール車軸組立体へのアクセスを提供して新しい靴紐を再び通すために、分解する必要があるはずである。
【0058】
本発明の自動締付け機構210によって提供される他の利点は、靴紐136の端部が車軸組立体224の端部に結ばれないことである。したがって、靴紐の端部は、靴紐が車軸の端部の周りで巻かれる又は繰り出されるときに、靴紐を拘持させることがない。もし靴紐の端部が結び目を伴って車軸の端部に結ばれなければならないのであれば、これらの結び目を収容するために、各車軸の端部内に凹部が設けられなければならないであろう。こうした凹部は、車軸の端部内の材料量を減らすので、車軸組立体224をもろくする恐れがある。
【0059】
車軸組立体端部に沿って位置決めされた外側ブッシュ296は、車軸組立体224に支持手段を提供すると同時に、車軸組立体224がハウジング内で回転するのを可能にする。しかし、車軸組立体の円筒形肩部264の直径と比較してこれらの外側ブッシュの直径を大きくすることにより、カラー296とディスク260との間に円筒形肩部に沿って靴紐巻上げ区間を画定することが可能になる。ブッシュは、靴紐が車軸組立体の周りで巻かれるか又は繰り出されるときに、靴紐が横方向に移動するのを防ぐのに役立つ。
【0060】
車軸組立体に沿って位置決めされた二つの金属シール軸受290が、ハウジング内で車軸組立体に支持を提供する。しかし、金属シール軸受290はまた、自由に回転するので、車軸組立体の回転を可能にする。さらに、軸受の側壁沿いのゴムシールが、土、砂粒、及び汚れを自動締付け機構210に入らせない働きをする。通常、シール軸受は、靴製品には使用されない。
【0061】
アクチュエータホイール212をホイールシャフト230とは別に作ることにより、アクチュエータホイール212を簡単に交換することができる。アクチュエータホイールはまた、性能を向上させるために、ホイールシャフトに使用した材料とは異なる材料で作ることもできる。
【0062】
アクチュエータホイール212の外部表面は、好ましくは凹形のプロフィールを備える。この表面形状は、さもなければアクチュエータホイールを動かなくさせる恐れのある土、砂粒、及び汚れを自動締付け機構210のハウジングに入らせない働きをする。この凹形表面は、実際に土や泥をハウジングへの入り口から離れる方向に回転させることが分かっている。
【0063】
ホイールアクチュエータ212は、通常の歩行又は走行での靴の使用を妨害することなく靴底から延在することができる限り、直径はいかなるサイズにもすることができる。それと同時に、ホイールアクチュエータ212は、自動締付け機構のためのハウジング内に嵌合しなければならない。ホイールアクチュエータ212は、直径1/4インチ〜1と1/2インチ、好ましくは直径1インチとするべきである。ホイールアクチュエータ212は、ウレタンゴム、合成ゴム、又はポリマーゴム状材料のような、弾力性及び耐久性のある任意の材料で作ることができる。
【0064】
本発明の靴紐136は、Spectra(登録商標)繊維、Kevlar(登録商標)、ナイロン、ポリエステル、又はワイヤを含むがそれらに限定されない任意の適切な材料から作ることができる。靴紐136は、好ましくはポリエステルの外部ウィーブを備えるSpectraの芯から作られるべきである。理想的には、靴紐は、チューブ148及び150内で移送しやすくするために、先を細くしたプロフィールを有する。靴紐の強度は、100ポンド〜1000ポンドの検査分銅の範囲内に収まりうる。
【0065】
チューブ148及び150は、ナイロン又はTeflon(登録商標)を含むがそれらに限定されない任意の適切な材料から作ることができる。チューブ148及び150は、係合ケーブル又は靴紐を保護する耐久性を有すると同時に、自動締付け機構の動作中に係合ケーブル又は靴紐がチューブを通過するときの摩擦を軽減するために、自己潤滑性を発揮するべきである。
【0066】
本発明の自動締付け機構の簡略化した実施形態500が、
図22に示されている。実施形態500は、前部ケース502及び後部ケース504を含み、それらの間に車軸組立体506が固定される。二つのケース部分を固定するためにねじが使用されてもよいが、好ましくは二つのケース部分は、音波溶接や接着剤などの他の手段によって互いに固定されるのがよい。アクチュエーティングホイール508が、車軸組立体506の一部を含み、且つ、二つのケースが互いに固着されたときに前部ケース502及び後部ケース504の側壁を一部越えて延在する。
【0067】
自動締付け機構実施形態210と同様に、この自動締付け機構500は、アクチュエーティングホイール508が靴の後部踵部分を一部越えて突出した状態で、
図2に図示されたものと同様のハウジングチャンバ内に配置される。床、地面、又は他の硬い表面上でアクチュエーティングホイール508を回転させることにより、自動締付け機構500が締付け位置へ回転される。靴紐510が、上記のように連続したループにおいて、締付け機構を通過して、靴アッパーを上方に通り抜ける。本明細書でより詳細に説明されるように、解放レバー512が、好ましくは靴の後部アッパーから延在して自動締付け機構500を緩めるための便利な手段を提供するように、後部ケース504に固定される。
【0068】
車軸組立体506は、
図23に分解した形でより詳細に示されている。車軸組立体は、好ましくは、ホイールシャフト516、第1の端部カラー518、及び第2の端部カラー520を含む。これらの構成要素のそれぞれは、好ましくは、RTP301ガラス繊維10%混合ポリカーボネートか、又は機能的に同等の材料から成形される。ナイロンのような他の材料を使用することができるが、重要な点は、ホイールシャフト516、第1の端部カラー518、及び第2の端部カラー520が、協調して回転する車軸組立体506を作り出すように互いに嵌合する、適切に寸法取りされ且つ構成された表面を備えると同時に、長期にわたる繰返し動作に対して必要な強度を提供することである。
【0069】
ホイールシャフト230、第1の端部シャフト232、及び第2の端部シャフト234が組み合わさることによって形成される三つの部品からなる車軸を提供する自動締付け機構210の実施形態とは異なり、自動締付け機構のこの実施形態500は、ホイールシャフト516によって全体が提供される単一の車軸を備える。このホイールシャフト516は、それぞれの面から第1の横車軸526及び第2の横車軸528が延在している硬質円形フレーム524を備える、一体に成形されたユニットを含む。各横車軸は、内側円筒形肩部530と、その先端により小さく減少した直径を有する外側円筒形肩部532とを備えている。環状端部軸受壁534が、内側円筒形肩部530が外側円筒形肩部532と交わるところの内側円筒形肩部530の端部に沿って形成される。
【0070】
硬質円形フレーム524の円筒形縁部に沿って、連続したリブ536と、リブから両方向に横向きに延在する複数のクリート538とが成形される。円形フレーム524の対向する各面内には、横車軸526及び528を取り囲む環形領域540が成形される。一方、靴紐510又は係合ケーブル196が車軸組立体506のこのホイールシャフト516部分を通過することができるように、穴542が、第1の横車軸526、円形フレーム524、及び第2の横車軸528を完全に貫通する。
【0071】
第1の端部カラー518及び第2の端部カラー520は、その構造及び作用において実質的に同一であり、
図23〜
図25に関連してまとめて説明される。ディスク550が、その外側面上で肩部552に接続されている。この肩部552は、ホイールシャフト組立体506の長手軸A−Aに沿って外方向に延在して、肩部552に対して直角に配向された円形拘束カラー554で終わる。以下でより詳細に説明されるように、ディスク550、肩部552、及び拘束カラー554は協働して、自動締付け機構500の締付け中に肩部552の周りに靴紐510を巻き付けるための環状領域556を形成する。
【0072】
ディスク550の反対側の内側面上には、その外部円周表面から複数のラチェット歯564が延在している円形の穴562を有する、歯車ボス560が位置決めされる。円形の穴562は、第1の端部カラー518の全体を貫通して延在する。円形の穴562の直径は、ホイールシャフトフレーム516の第2の肩部532の直径よりもわずかに大きい。
【0073】
第1の端部カラー518は、当接壁534に向かってホイールシャフトフレーム516の外側肩部532の全長にわたって摺動される。
図24により明瞭に示されるように、穴562に隣接したボス560の外壁に沿って形成された第1のキー568が、ホイールフレーム516の第1の肩部530の先端に形成された対応する凹部570に嵌合する(
図26参照)。同様に、第1のキー568に対向する、穴562に隣接したボス560の外壁に沿って形成された第2のキー572が、ホイールシャフトフレーム516の第1の肩部530の先端に形成された、凹部570に対向する対応する凹部574に嵌合する。このようにして、ホイールシャフトフレーム516の回転が、第1の横車軸526及び第2の横車軸528の周りにそれぞれ嵌合された第1の端部カラー518及び第2の端部カラー520の対応する回転を生じさせる。
【0074】
好ましくは、第1のキー568/第1の凹部570、及び第2のキー572/第2の凹部574は、端部カラーが横車軸に対して適切な向きで挿入されるのを確実とするために、異なるサイズ又は形状のものとされるべきである。これにより、第1の横車軸526、円形フレーム524、及び第2の横車軸528に沿って連続した穴542を通過する靴紐510が、次いで切抜き領域578及び580を通過し、そして巻上げ領域556に入ることができるように、ホイールシャフトフレーム516の外側肩部532に沿って形成された切抜き領域578が端部カラー518の拘束カラー554に沿って形成された切抜き領域580と一致することが、確実となる(
図22参照)。
【0075】
各端部カラー518及び520を横車軸526及び528の外側肩部領域532の全長によって支持させて、ホイールシャフトフレーム516において単一のシャフト構造を作ることにより、自動締付け機構のこの好ましい実施形態500の車軸組立体506は、この実施形態500における横車軸及び端部カラーの重なり合っている横構造の代わりにホイールシャフト230、第1の端部シャフト232、及び第2の端部シャフト234が協働して車軸を形成しなければならずまた各部品がそれらの端部間で協調して互いに結合しなければならない前述の実施形態210よりも、頑丈になる。また、部品の数が減少すること、及び各部品が精密に結合されることより、この実施形態500の車軸組立体506を製造するための費用は、車軸組立体224よりも少なくなるはずである。
【0076】
アクチュエータホイール508は、
図8に示されているアクチュエータホイール212に類似しており、ホイールシャフト516に固着することができる。アクチュエータホイール508は、その内側円周面282内に延びるチャネル280を含む。このチャネル280に沿って、複数の横方向凹部284が周期的に配置される。チャネル280の幅及び深さは、ホイールシャフト524の外側円周表面に沿って位置決めされたリブ536の幅及び高さに一致する。一方、横方向凹部284の幅、長さ、及び深さは、ホイールシャフト516の外側円周表面に沿って位置決めされたクリート538の幅、長さ、及び高さに一致する。アクチュエータホイール508の開口部286の直径は、ホイールシャフト516の円形フレーム524から延在しているリブ536の直径と実質的に同等である。このようにして、アクチュエータホイール508は、リブ536及びクリート538がチャネル280及び横方向凹部284と協働した状態で、ホイールシャフト516の円形フレーム524の周辺部の周りに嵌め込むことができ、その結果、アクチュエータホイールがホイールシャフトに固着される。
【0077】
アクチュエータホイール212がホイールシャフト516に組み付けられると(
図22参照)、金属シール軸受580がホイールシャフト524の内側円筒形肩部530の周りに嵌め込まれて、円形フレーム524の環状領域540において軸受表面582(
図26参照)に接触する。これらの金属シール軸受580は、ハウジングの前部ケース502及び後部ケース504内で車軸組立体506を支持すると同時に、車軸の自由な回転を可能にする。この目的のために、軸受が自由に回転することができるように、シール軸受580の内径は、第1の円筒形肩部530の外径よりもわずかに大きくするべきである。それと同時に、シール軸受580は、軸受の側壁内に形成された環状チャネル586内に嵌合された円筒形ゴムインサート584を含む。このゴムインサートは、車軸シャフト組立体506においてアクチュエータホイール212の適切な回転を妨げうる土、砂粒、及び他の異物が軸受を越えて車軸シャフト組立体506内まで移動するのを防ぐのに役立つ。シール軸受290の軸受部分は、ステンレス鋼のような強靱な材料で作られるべきである。本発明の自動締付け機構500に適したシール軸受は、台湾のジャージアン・フィット・ベアリング(Zhejiang Fit Bearing)Co. Ltd.から調達することができる。
【0078】
次に、第1の端部カラー518及び第2の端部カラー520が、各端部カラーとホイールシャフト516の内側肩部530との間で上記のように第1のキー568及び第2のキー572と第1の凹部570及び第2の凹部574とが嵌合した状態で、ホイールシャフト516の第1の横車軸526及び第2の横車軸528の外側肩部領域532にわたって組み付けられる。これらの同様に形状が定められたそれぞれのキー及び凹部を使用することにより、回転するホイールシャフト516は、必然的に、その回転力のほぼ全てを端部カラー518及び520に滑ることなく伝達することになる。
【0079】
図22により明瞭に示されるように、靴紐510は、ガイドチューブ590から第1の端部カラー518の拘束カラー554の切抜き領域580を通過し、ホイールシャフト516の第1の横車軸526の外側肩部532の切抜き部分578を通り、ホイールシャフト516の中央穴542を通り、ホイールシャフト516の第2の横車軸528の外側肩部532の切抜き領域578を通り、第2の端部カラー520の拘束カラー592の切抜き領域580を通り、そしてガイドチューブ594内へと逆行する。これらの部品を完全に組み立てて車軸組立体506を形成する前に靴紐510をこれらの部品に通すほうが、より簡単であろう。
【0080】
靴110の踵から一部延在しているアクチュエータホイール508が回転すると、ホイールシャフト516、横車軸526及び528、端部カラー518及び520、並びにそれらのそれぞれの歯車ボス560及びラチェット歯564が同方向に回転する。アクチュエータホイール508は、ショアー硬さ70Aのウレタンか、又は機能的に同等の材料から製造されるべきである。ホイールは、好ましくは、直径1インチ、体積0.311in
3のものであるべきである。そのようなホイールサイズは、靴110の靴底のハウジング200内に収まりながらも靴の踵から延在するのに十分な大きさとなるであろう。靴のサイズ及び靴の最終用途に応じて、アクチュエータホイール508は、1/4インチ〜1と1/2インチの範囲の直径を有することができる。
【0081】
図8に示されるように、好ましい一実施形態では、アクチュエータホイール508は、ホイールの外部表面内に横方向に形成された、複数の溝形くぼみ400を有することができる。これらの溝形(tread)は、使用者の足の周りで靴を締め付けるためにホイール508が回転されるときに、静止摩擦を提供する。理想的には、そのような溝形は、底壁404に対して外方に広がった側壁402を有して、溝形に小石や他の岩屑が詰まる可能性を減らす(
図10参照)。
【0082】
図22及び
図27に示されるような前部ケース502は、好ましくは、RTP301ガラス繊維10%混合ポリカーボネートか、又は機能的に同等の材料から成形される。前部ケース502は、外側表面壁600、及び基部壁602を有する。この基部壁602は、接着剤などによる、自動締付け機構500を収容するハウジング組立体502及び504をチャンバ底部202に固定するための理想的な方法を提供するように、平坦であるべきである。このハウジングは、自動締付け機構の様々な部品を収容すると同時に、靴紐510の出入り、締付け及び弛緩の両方向への車軸組立体506の回転、並びにアクチュエータホイール508及びハウジングから延在する解放レバー512の外部操作を可能にする。
【0083】
図27は、前部ケース502の内部を示す。前部ケース502は、アクチュエータホイール508を収容するための切欠き部分604を備える。アクチュエータホイール508は、前部ケース502と擦れることなく自由に回転することができなければならない。肩部610及び612をそれぞれ含む内部壁606及び608が、車軸組立体506の第1の横車軸526及び第2の横車軸528上のシール軸受580を支持する。前部ケース502内の空所614及び616が、第1の端部カラー518及び第2の端部カラー520並びにそれらのラチェット歯564を収容する。これらの空所614及び616はまた、車軸組立体506の端部カラー518及び520の肩部552の周りに靴紐510が巻かれるときに、その靴紐510を収容する。
図7に示される前部ケース220と比較すると、この前部ケース502が含む精密に成形されなければならない内部壁及び空所の数は、二つずつ少ない。前部ケース502の端部壁622及び624に沿って形成されたリブ618及び620が、空所614及び616内にわずかに突出する。これらのリブ618及び620は、ホイールシャフト組立体506が前部ケース502に挿入されたときにホイールシャフト組立体506の両端の拘束カラー554に接触して、ホイールシャフトの両端がケースの内部上で拘持されてホイールシャフトの回転を妨げることがないようにする。ホイールシャフトのこの実施形態506は、ホイールシャフト組立体224の端部ブッシュ296(
図8参照)を含まないので、前部ケース220(
図17参照)の端部壁で必要とされる精密成形された肩部306及び308が必要とされなくなる。この場合もやはり、これにより前部ケース502の設計及び製造が簡略化される。
【0084】
後部ケース504の外部は、
図22及び
図28〜
図29に示されている。
図28は、解放レバー512及びアクチュエータホイール508が後部ケース内に組み付けられた状態で、後部ケース504を図示している。
図29は、それらの構成要素がない状態で、後部ケース504を示している。
【0085】
待機位置にあるときの解放レバー512のための基部支え632が、後部ケース504の外部表面630から成形された形で延在している。この解放レバーは、窓634を貫通して延在する。基部支え632の上面636に沿って、フランジ638が配置される。
【0086】
後部ケース504の内部を示す
図30を参照すると、それぞれ肩部644及び646を含む内部壁640及び642を認識することができる。これらの肩部644及び646は、組み立てられたシャフト組立体506が後部ケース504に挿入されたときに、シャフト組立体506上のシール軸受580を支持する。空所648及び切欠き領域650が、アクチュエータホイール508を収容する。空所652及び654が、第1の端部カラー518及び第2の端部カラー520、並びにそれらの歯車ボス560及びラチェット歯564を収容する。これら二つの空所652及び654はまた、車軸組立体506の肩部552並びに端部カラー518及び520の周りに靴紐510が巻かれるときに、その靴紐510を収容する。
図7に示される後部ケース222と比較すると、この後部ケース504が含む精密に成形されなければならない内部壁及び空所の数は、二つずつ少ない。後部ケース504の端部壁662及び664に沿って形成されたリブ658及び660が、空所652及び654内にわずかに突出する。これらのリブ658及び660は、ホイールシャフト組立体506が後部ケース504に挿入されたときにホイールシャフト組立体506の両端の拘束カラー554に接触して、ホイールシャフトの両端がケースの内部上で拘持されてホイールシャフトの回転を妨げることがないようにする。ホイールシャフトのこの実施形態506は、ホイールシャフト組立体224の端部ブッシュ296(
図8参照)を含まないので、前部ケース222(
図7参照)の端部壁で必要とされる精密成形された肩部330及び336が必要とされなくなる。この場合もやはり、これにより前部ケース504の設計及び製造が簡略化される。
【0087】
解放レバー512は、
図31〜
図32により詳細に示されている。解放レバー512は、一方の端には押しボタンレバー670を、他方の端には二つのアーム672及び674を含む。内部表面676に沿って、くぼみ678が配置される。アーム672及び674からは、フィンガ680及び682が延在している。解放レバー512の底面のおおよそアームとフィンガ部分とが出会う位置からは、フランジ684及び686が下方に延在している。
【0088】
解放レバー512は、後部ケース504のフランジ638が解放レバー512のくぼみ678に係合した状態で、後部ケース504と枢動係合するように取り付けられる。以下でさらに説明されるように、このフランジと凹部の協働する寸法及び形状は、解放レバーをその待機位置と解放位置との間で枢動させることを可能とするものである。一方、アーム672及び674、並びにフィンガ680及び682は、解放レバーアーム672及び674のフランジ端部684及び686が車軸組立体506の第1の端部カラー518及び第2の端部カラー520の歯車ボス560の歯564に当接しうるように、後部ケースの穴634を貫通して下方に延在する。
【0089】
一方、解放レバー512のフィンガ部分680及び682は、組み立てられたハウジング内で、外壁600が底壁602と交わる位置である前部ケース502の下方の外壁600に沿って形成された凹部690及び692(
図27参照)内に延在する。解放レバー512がその待機位置にある場合、フィンガ680及び682は、凹部690及び692内で底壁602に接触することができる。しかし、使用者が解放レバー512のボタン670を押し下げると、解放レバーのアーム672及び674がハウジング内で上方に枢動することになり、その結果、フィンガ680及び682が、前部ケース502の底壁602から浮き上がって外壁600に接触し、次いで凹部690及び692のそれぞれの天井壁694及び696に接触する。これにより、解放レバー512のフィンガ680及び682は、アーム部分672及び674に対して撓み点(flex point)B(
図32参照)に沿って撓められる。使用者が解放レバー512のボタン670を押し下げるのを止めると、フィンガ680及び682は、おおよそそれらの元の位置まで撓みを戻すことになり、その過程で、凹部690及び692の天井部分694及び696から離れて、解放レバー512をその待機位置まで戻す。待機位置への解放レバー512の「撓み戻し(flex return)」を提供するこの解放レバー512の特別な設計のため、上述した先の自動締付け機構実施形態210の機能性に必要とされる二枚の板ばね380も、いかなるトーションばね又は他の種の独立した機械的ばねも必要とされなくなる。自動締付け機構のこの実施形態500からばねを排除することにより、デバイスの費用及び複雑性が減少され、また、自動締付け機構がより長期間にわたって確実な形で動作する。
【0090】
フィンガ680及び682を撓み点700及び702に沿って撓ませたりおおよそそれらの待機位置まで戻したりする解放レバー512の機能性は、材料の選択、アーム及びフィンガの構造設計、並びに解放レバー512の撓み点B、C、及びDに沿って使用される材料の厚さによってもたらされる。解放レバーは、好ましくは、このポリマー材料が提供する強度と可撓性との釣合いのために、ナイロンから作られる。或いは、解放レバー512は、ナイロンよりも劣った強度で撓みを提供するが費用も削減する、RTP301ガラス繊維10%混合ポリカーボネートか、又は機能的に同等の材料から成形されてもよい。
【0091】
理想的には、フィンガ680及び682は、前部ケース502内の凹部690及び692の湾曲した天井領域694及び696によるフィンガの撓みを通じてフィンガに及ぼされる応力を点Bから点Dまで分散するために、湾曲した部分B及びC並びに平坦な部分Dに沿ってほぼ同じ量だけ撓むべきである。
図31に示されるように、フィンガ全体にわたって特に端部Dに近い領域で先細になるフィンガの幅が、フィンガ領域全体にわたってこの応力を分散するのに役立つ。フィンガのBからDまでの距離にわたって及ぼされた応力が、解放レバー512のために選択されたポリマー材料の降伏強さ未満であるならば、使用者によりプッシュボタン670に加えられる下方への力が解放されるのに応じて、フィンガ680及び682は、恒久的に変形することなく、凹部690及び692の頂部694、696から離れるように撓むことになる。このことが、フィンガをそれらの元の形態及び形状に戻すことを可能にし、それにより解放レバー512のフランジ684及び686が押し戻されて、ホイールシャフト組立体506の端部カラー518及び520の歯車ボス560の歯564と係合する。好ましくは、フィンガの長さB〜Dにわたって及ぼされるこの応力は、解放レバー512を形成するのに使用されるポリマー材料の降伏強さの50%未満であるべきである。
【0092】
フィンガ680及び682に対して選択される厚さもまた、重要である。フィンガが相当に薄い場合、凹部690及び692の天井694、696から離れるフィンガの偏向に起因してフィンガの間隔B〜Dにわたって及ぼされる応力は、過程中にフィンガが変形する又は破損すらする可能性とともに増大する。反対に、フィンガが相当に厚い場合、応力はフィンガの長さB〜Dにわたって支障なく分散されて、降伏強さ限界の50%未満に容易に収まるであろうが、そのような厚いフィンガは、解放レバー512を作動させて靴紐を緩めるために押しボタン670に加えられる力を、さらに多く必要とすることになる。したがって、カーブB周辺のフィンガの厚さは、1/8“±1/64”の範囲内に入ることが好ましい。カーブC周辺のフィンガの厚さは、3/32“±1/6”の範囲内に入ることが好ましい。最後に、平坦な部分D周辺のフィンガの厚さは、1/32“±1/64”の範囲内に入ることが好ましい。
【0093】
靴紐510又は係合ケーブル196を含むガイドチューブ590及び594は、それらが分離されることがないように、後部ケース504に固着される必要がある。門形チャネル壁706、708(
図27及び
図30参照)は、その内部壁表面に沿って形成された一連の鋸歯状の歯710を備えることができる。このようにして、
図7に示される座金410及び凹部416実施形態を必要とすることなく、ガイドチューブを門形チャネル706、708に押し込んで固定係合させることができる。
【0094】
動作に当たっては、着用者は、自動締付け靴110の靴底120の後部から延在しているアクチュエータホイール508が床又は地面に当接するように、その足を位置決めする。靴の踵を着用者の身体から離れる方向に転動することにより、アクチュエータホイール508が反時計方向に回転する。ホイールシャフト組立体506、並びに関連する端部カラー518及び520が同様に自動締付け機構のハウジング内で反時計方向に回転し、それにより、靴紐510が車軸組立体506の端部カラー518及び520の肩部552の周りに巻き付けられる。そうすることで、靴紐510は、着用者の手を使用することなく、靴110内で着用者の足の周りに締め付けられる。解放レバー512のフランジ端部684及び686が、歯車ボス560の各歯564と連続して係合して、さもなければ靴紐を緩めるように車軸組立体を回転させるであろうラチェットホイールの時計方向回転を防止する。フィンガ680及び682が、前部ケース502の底部602に対接して、フランジを付勢してラチェットホイールの歯と係合させる。
【0095】
着用者が靴110を脱ぐために靴紐510を緩めたい場合には、着用者は、好ましくは靴の後部靴底から延在する解放レバー512の解放ボタン670を押し下げるだけでよい。これにより、上記のように、回転レバーが枢動されて、フランジ684及び686がラチェットホイール550の歯564から係脱することになる。車軸組立体506が時計方向に回転するにつれて、靴紐510が自然に緩む。着用者は、他方の足で解放レバーを押し下げることができ、その結果、靴を緩めるために解放レバーを使用するのに手は必要とされなくなる。
【0096】
本発明の「自己スプリンギング」解放レバーの別の好ましい実施形態が、
図33〜
図36に示されている。
図33は、押しボタン708で終わっている解放レバー706が自動締付け機構実施形態500のための上記の構造と同様の後部ケース704の側部にある二つの窓から突出した状態で後部ケース704に継合された前部ケース702を含む、自動締付け機構700を示す。実施形態700のハウジング内に収容されるホイールシャフト組立体もまた同一のものである。靴紐を収容するガイドチューブ710及び712は、ハウジングの頂部に入る。解放レバー706は、やはり上記の方法と同様の方法で、後部ケースに枢動可能に取付けられている。
【0097】
図34の断面図でより明瞭に見られるように、ハウジング内に収容されたホイールシャフト組立体716に接続されたアクチュエーティングホイール714は、使用者がアクチュエーティングホイール714を床や他の硬い表面に沿って転動させてホイールシャフト車軸718を回転させて靴紐を締め付けることができるように、前部ケース702と後部ケース704の底部の外側に一部突出する。ホイールシャフトの横車軸には、やはり上記のものと同様の、ラチェット歯722の付いた歯車ボス720を含む端部カラーが取付けられている。
【0098】
図35〜
図36でより明瞭に見られるように、解放レバー706は、一端に押しボタンレバー708を含み、また二つのアーム726及び728を含む。内部表面734に沿って、くぼみ724が配置される。アーム726及び728は、それぞれアーム端部730及び732で終わっている弓形の経路に形成される。各アームの底面の、おおよそ各アームが水平経路から垂直経路へと曲がる位置からは、フランジ734及び736が下方に延在している。
【0099】
舌状部738及び740が、アーム端部730及び732にそれぞれ取付けられている。各舌状部は、そのアームとおおよそ同一の弓形の経路を通して、アームの大部分に沿って延在する。舌状部738及び740は、アームの端部に付着されているが、これらは他の場合では、各アームとその舌状部との間に間隙744が配置された状態で空間に浮かぶ。
【0100】
解放レバー706がその待機位置にある場合、端部730及び732は、前部ケース702の内側の底面に接触することができる。フランジ734及び736は、歯車ボス720のラチェット歯722と係合する。しかし、使用者が解放レバー706のボタン708を押し下げると、解放レバーのアーム726及び728がハウジング内で上方に枢動し、その結果、アームの上面上に延在する舌状部738及び740が、前部ケース702及び後部ケース704の内部上面に当接する。これにより、解放レバー706の舌状部738及び740は、それらがアームと交わる位置である撓み点Eに沿って、それらのアームに対して下方に撓められる(
図34〜
図35参照)。アームのフランジ734及び736もまた、ラチェット歯722から係脱されて、靴紐を緩められるように車軸シャフト組立体を逆回転可能にする。しかし、使用者が解放レバー706のボタン708を押し下げるのを止めると、舌状部738及び740は、おおよそそれらの元の位置まで撓みを戻すことになり、その過程で、前部ケース702及び後部ケース704の天井部分から離れて、解放レバーをその待機位置まで戻し、また、フランジ734及び736がラチェット歯との係合に戻る。待機位置への解放レバー706の「撓み戻し」を提供するこの解放レバー706の特別な設計のため、上述した先の自動締付け機構実施形態210の機能性に必要とされる二枚の板ばね380も、いかなるトーションばね又は他の種の独立した機械的ばねも必要とされなくなる。自動締付け機構のこの実施形態700からばねを排除することにより、デバイスの費用及び複雑性が減少され、また、自動締付け機構がより長期間にわたって確実な形で動作する。
【0101】
上述のように、
図31〜
図32のフィンガ680及び682が前部ケース内の凹部690及び692の天井から離れるように撓むことによりそれらのフィンガの長さに沿って及ぼされる応力は、解放レバー512を製造するために選択されたポリマー樹脂の降伏強さの50%未満であるべきである。フィンガの長さは、応力をよりよく分散してこの制限を満たすために伸ばすことができるが、靴底内に収容されるほどに小さいハウジング内でフィンガが延在しうる長さがどの程度であるかという、実際上の制限もある。
【0102】
しかし、解放レバー706のための設計を用いることで、舌状部738及び740は、アーム726及び728のプロフィールに沿ってアーチ状に曲がっており、それによりアーム726及び727を実質的に伸ばすことが可能になる。さらに、舌状部が後部ケース704に対して解放レバー706のための枢支点により接近して位置決めされるので、押しボタン708が使用者によって押し下げられたときに、全体の撓みがより少なくなり、それにより、解放レバー706に及ばされる応力がより少なくなる。解放レバーのためのこの設計は、降伏強さ限界の50%未満という条件をより容易に満たすであろう。これは、解放レバーを作るために広範な種類のポリマー樹脂を使用することができるということを意味している。
【0103】
解放レバー706においては、好ましくは10%ガラス充填ポリカーボネート樹脂材料が使用される。マサチューセッツ州ピッツフィールドのサビック・イノベーティブ・プラスチックスが、そのような樹脂を供給している。10%ガラス充填ナイロン樹脂も使用することができ、この樹脂は解放レバーの強度を高めるが、費用が増大する。
【0104】
舌状部738及び740は、アーム726及び728の大部分を覆うべきである。これにより、応力がより広い領域で分散されるので、及ぼされる応力が減少する。応力が減少するので、舌状部は、それらの垂直面にわたって厚くすることができ、それにより、解放レバーが使用者によって押し下げられたときに、解放レバーにより多くの張力がもたらされる。この張力は、押しボタン708に及ぼされなければならない力と、解放レバー706の舌状部が自動締付け機構700のためのハウジング内で撓むときに解放レバー706に及ぼされる応力との釣合いを取るために、使用することができる。舌状部738及び740は、アーム726及び728の弓形の長さの約60〜80%、より好ましくは70〜75%を覆うべきである。
【0105】
図35で分かるように、舌状部738及び740はまた、舌状部738及び740がそれらのアーム726及び728の端部に結合される位置である点Eから上方に移行するにつれて、先細になる。好ましくは、舌状部がアームに結合される位置である舌状部の端部Gは、0.080±0.010インチの垂直厚さを有するべきである。好ましくは、舌状部の自由端部Fは、0.040±0.010インチの垂直厚さを有するべきである。
【0106】
さらに別の代替実施形態では、ハウジングは、撓み可能なポリマー樹脂から作られた「はね返り(スプリング・バック)」当接面を備えうる。解放レバーが作動されて歯止めをホイール車軸組立体に付着されたラチェットホイールの歯から離れるように枢動させるときに、解放レバーの表面は、その過程においてハウジングの当接面の材料を撓ませて、この当接面と係合することになる。解放レバーが使用者によってもはや作動されなくなると、この撓められた当接面は、実質的にその元の形状及び位置に戻って、解放レバーをその元の位置まで押し返し、また、歯止めを押し返してラチェットホイールの歯と係合させる。このようにして、ハウジングは、解放レバーのための上述の撓み部材として機能することができ、また、独立した金属ばねの支援なしに自動締付け機構の適切な動作を可能にすることができる。
【0107】
上記の自動締付け機構210と同様に、本発明のこれらの自動締付け機構実施形態500及び700は、当業界で知られている他のデバイスよりも設計が単純である。したがって、靴の製造中に組み立てられる部品、及び靴の使用中に壊れる部品は、より少なくなる。本発明の自動締付け機構実施形態500及び700の他の大きな利点は、靴紐510及びそれらの関連するガイドチューブを、正中側及び体側側のアッパーに斜めに通す代わりに、靴アッパーの踵部分へと下方にねじ込むことができることである。この特徴は、靴110の製造を大幅に簡略化する。さらに、自動締付け機構500又は700を靴底120内で踵により接近させて配置することにより、より小さなハウジングチャンバ200を使用することができ、また、製造の際に、ユニットをより簡単に靴底内のより小さな凹部に挿入して接着することができる。
【0108】
上記の自動締付け実施形態210と同様に、本発明の自動締付け機構500及び700の他の大きな利点は、二本の靴紐、又は締付け機構に接続される1以上の係合ケーブルに接続される靴紐の代わりに、単一の靴紐510が靴を締め付けるために使用されることである。靴紐の端部を車軸組立体の端部に固定するのではなく靴紐を車軸組立体506に通すことにより、擦り切れた又は裂けた靴紐の交換が、単純で且つ簡単なものになる。靴紐510の両端部は、紐締めパッド114に沿ったクリップ138から取り外してほどくことができる。次いで、古い靴紐の一端に新しい靴紐を固着することができる。次いで、古い靴紐の他方の端部を靴から離れる方向に引っ張って、新しい靴紐を靴内へと進ませ、ガイドチューブ590、車軸組立体506、他方のガイドチューブ594に通して、靴から外に出すことができる。これを行うと、次いで、新しい靴紐の二つの端部を、紐締めパッド114に沿って配置された靴鳩目に通し、互いに結んで、もう一度クリップ138の中に固着することができる。このようにして、靴底内のチャンバ内部のハウジング内部に隠された自動締付け機構500又は700に物理的にアクセスすることなく、靴紐を交換することができる。そうでない場合、靴及び自動締付け機構ハウジングは、ホイール車軸組立体へのアクセスを提供して新しい靴紐を再び通すために、分解する必要があるはずである。
【0109】
本発明の自動締付け機構500及び700によって提供されるさらに他の利点は、上記の自動締付け機構実施形態210と同様に、靴紐510の両端部が車軸組立体506の端部に結ばれないことである。したがって、靴紐の端部は、靴紐が車軸の端部の周りで巻かれる又は繰り出されるときに、靴紐を拘持させることがない。もし靴紐の端部が結び目を伴って車軸の端部に結ばれなければならないのであれば、これらの結び目を収容するために、各車軸の端部内に凹部が設けられなければならないであろう。こうした凹部は、車軸の端部内の材料量を減らすので、車軸組立体506をもろくする恐れがある。
【0110】
それと同時に、自動締付け機構のこの実施形態500及び700は、板ばねの省略、ホイール車軸組立体224の三つの部品から成る車軸組立体と比較してより強靱で且つ曲がりにくい単一の部品から作られた単一の車軸構造、車軸組立体の端部に沿ったブッシュの省略、並びに前部ケース502及び後部ケース504内の部品及び凹部を精密に成形する必要性が減少することのため、他の実施形態210よりも構造が単純になり、製造にかかる費用が少なくなり、また場合よっては動作がより確実になる。
【0111】
上記の詳説及び図面は、本発明の自動締付け機構及び靴の構造並びに動作の完全な説明を提供するものである。しかし、本発明は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、種々の他の組み合わせ、修正形態、実施形態、及び環境で使用することができる。例えば、靴紐又は係合ケーブルは、材料の内側層と外側層との間の靴アッパー内の代わりに、靴アッパーの外部に沿って巡らせることができる。さらに、自動締付け機構は、後端以外にも、中間点又はつま先などの、靴内の異なる位置に配置することができる。実際に、自動締付け機構は、靴内の代わりに、靴の外部に固着してもよい。また、複数のアクチュエーティングホイールを使用して、自動締付け機構の共通車軸を駆動することができる。アクチュエータをホイールとして説明してきたが、平坦な表面に沿ってそれらが転動することができる限り、多くの他の使用可能な形状のうちの任意のものを採用することができる。最後に、靴は、紐締めパッドに沿った鳩目を使用しなくてもよい。ホックや外部に取り付けられた鳩目などの、靴紐を摺動させる形で収容するための他の知られた機構が設置される。したがって、この説明は、本発明を開示された特定の形態に限定することを意図したものではない。