(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989119
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】プラズマリアクタ及びプラズマを生成する方法
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20160825BHJP
【FI】
H05H1/46 L
【請求項の数】18
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-527157(P2014-527157)
(86)(22)【出願日】2012年7月30日
(65)【公表番号】特表2014-531701(P2014-531701A)
(43)【公表日】2014年11月27日
(86)【国際出願番号】US2012048790
(87)【国際公開番号】WO2013028313
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2015年3月16日
(31)【優先権主張番号】61/525,475
(32)【優先日】2011年8月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502278714
【氏名又は名称】マットソン テクノロジー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Mattson Technology, Inc.
(74)【復代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ヴラディーミル ネイゴーニー
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ クラプシェット
【審査官】
鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−203209(JP,A)
【文献】
特開2005−142568(JP,A)
【文献】
特開2010−238847(JP,A)
【文献】
特開2003−249493(JP,A)
【文献】
特開2004−241437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00 −16/56
H01L 21/205
H01L 21/302
H01L 21/3065
H01L 21/31
H01L 21/365
H01L 21/461
H01L 21/469
H01L 21/86
H05H 1/00 − 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持するように構成された基板ホルダを有するプロセスチャンバと、
前記基板の処理に用いられるプラズマを生成するための、前記プロセスチャンバから分離されたプラズマチャンバと、
を有する、基板処理用のプラズマリアクタであって、
前記プラズマチャンバは、プラズマチャンバ内部を画定する天井部材と誘電体の側壁とを有し、
前記プラズマリアクタはさらに、
前記プラズマチャンバに隣接するように誘電体の前記側壁の周囲に設置された誘導コイルと、
前記プラズマチャンバ内部に設置されたガス注入インサート部品と
を有し、
前記ガス注入インサート部品と前記側壁とが、誘電体の当該側壁に隣接する狭幅のガス注入路を画定し、当該ガス注入路により、前記プラズマチャンバ内部の、前記誘導コイルに近接する活性領域へ、プロセスガスが供給され、
前記ガス注入インサート部品は、前記誘導コイルに隣接し且つ前記プラズマチャンバ内部の前記ガス注入路より下方に位置して前記ガス注入路よりも拡張された前記活性領域であって、電子を加熱するために、増強された電子閉じ込めを行う前記活性領域を画定する
ことを特徴とするプラズマリアクタ。
【請求項2】
前記ガス注入インサート部品は金属材料を含む、
請求項1記載のプラズマリアクタ。
【請求項3】
前記ガス注入インサート部品は誘電体材料を含む、
請求項1記載のプラズマリアクタ。
【請求項4】
前記ガス注入インサート部品は中空部分を含む、
請求項1記載のプラズマリアクタ。
【請求項5】
前記ガス注入インサート部品は、前記ガス注入路の少なくとも一部を画定する誘電体リング部分を含む、
請求項1記載のプラズマリアクタ。
【請求項6】
前記ガス注入路のガス供給方向に沿った長さは2cmから10cmまでの範囲内である、
請求項1記載のプラズマリアクタ。
【請求項7】
前記ガス注入路のガス供給方向と直交する方向における前記ガス注入インサート部品と前記側壁との間の前記ガス注入路の幅は1mmから3mmまでである、
請求項1記載のプラズマリアクタ。
【請求項8】
前記ガス注入路のガス供給方向と直交する方向における前記ガス注入インサート部品と前記側壁との間の前記活性領域の幅は、20mmから45mmまでの範囲内であり、
前記ガス注入路の前記プラズマチャンバ内部側の端部と前記ガス注入インサート部品の前記プラズマチャンバ内部側の端部又は端面との間の、前記ガス供給方向に沿った前記活性領域の長さは、35mmから100mmまでの範囲内である、
請求項1記載のプラズマリアクタ。
【請求項9】
前記ガス注入インサート部品は管を有する
請求項1記載のプラズマリアクタ。
【請求項10】
基板処理用のプラズマを生成する方法であって、
基板の処理に用いられるプラズマを生成するためのプラズマチャンバから分離されたプロセスチャンバ内に基板を設置し、
前記プラズマチャンバ内部において実質的に誘導性のプラズマを生成するために、前記プラズマチャンバの誘電体の側壁に隣接して配置された誘導コイルの通電を行い、
前記プラズマチャンバの側壁と、前記プラズマチャンバ内部に設置されたガス注入インサート部品とにより画定された狭幅のガス注入路を介して、当該プラズマチャンバ内部の、前記誘導コイルに近接する活性領域へ、プロセスガスを供給し、
前記プラズマチャンバ内部へのプロセスガスの供給では、前記誘導コイルに隣接し且つ前記プラズマチャンバ内部の前記ガス注入路より下方に位置して前記ガス注入路よりも拡張されるように、前記ガス注入インサート部品によって画定された前記活性領域であって、電子を加熱するために、増強された電子閉じ込めを行う前記活性領域へ、前記プロセスガスを供給する
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記ガス注入インサート部品は誘電体リング部分を有する、
請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記ガス注入インサート部品は中空部分を含む、
請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記ガス注入インサート部品は金属を含む、
請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記ガス注入路のガス供給方向に沿った長さは、2cmから10cmまでの範囲内であり、
前記ガス注入路のガス供給方向と直交する方向における前記ガス注入インサート部品と前記側壁との間の前記ガス注入路の幅は、1mmから3mmまでの範囲内である、
請求項10記載の方法。
【請求項15】
前記ガス注入路のガス供給方向と直交する方向における前記ガス注入インサート部品と前記側壁との間の前記活性領域の幅は、20mmから45mmまでの範囲内であり、
前記ガス注入路の前記プラズマチャンバ内部側の端部と前記ガス注入インサート部品の前記プラズマチャンバ内部側の端部又は端面との間の、前記ガス供給方向に沿った前記活性領域の長さは、35mmから100mmまでの範囲内である、
請求項10記載の方法。
【請求項16】
基板を保持するように構成された基板ホルダを有するプロセスチャンバと、
前記基板の処理に用いられるプラズマを生成するための、前記プロセスチャンバから分離されたプラズマチャンバと
を有する、基板処理用のプラズマリアクタであって、
前記プラズマチャンバは、プラズマチャンバ内部を画定する天井部材と誘電体の側壁とを有し、
前記プラズマリアクタはさらに、
前記プラズマチャンバに隣接するように誘電体の前記側壁の周囲に設置された誘導コイルと、
前記プラズマチャンバ内部に設置されたガス注入インサート部品と
を有し、
前記ガス注入インサート部品と前記側壁とが、誘電体の前記側壁に隣接する狭幅のガス注入路を画定し、当該ガス注入路により、前記プラズマチャンバ内部の、前記誘導コイルに近接する活性領域へ、プロセスガスが供給され、
前記ガス注入インサート部品はさらに、前記誘導コイルに隣接し且つ前記プラズマチャンバ内部の前記ガス注入路より下方に位置して前記ガス注入路よりも拡張された前記活性領域であって、電子を加熱するために、増強された電子閉じ込めを行う前記活性領域を画定し、
前記ガス注入路のガス供給方向と直交する方向における前記ガス注入インサート部品と前記側壁との間の前記ガス注入路の幅は、1mmから3mmまでの範囲内であり、
前記ガス注入路のガス供給方向に沿った長さは、2cmから10cmまでの範囲内であり、
前記ガス注入路のガス供給方向と直交する方向における前記ガス注入インサート部品と前記側壁との間の前記活性領域の幅は、20mmから45mmまでの範囲内であり、
前記ガス注入路の前記プラズマチャンバ内部側の端部と前記ガス注入インサート部品の前記プラズマチャンバ内部側の端部又は端面との間の、前記ガス供給方向に沿った前記活性領域の長さは、35mmから100mmまでの範囲内である
ことを特徴とする、プラズマリアクタ。
【請求項17】
前記ガス注入インサート部品は誘電体リング部分を有する、
請求項16記載のプラズマリアクタ。
【請求項18】
前記誘電体リング部分の、前記ガス供給方向に沿った長さは、0.5cmから10cmまでの範囲内である、
請求項17記載のプラズマリアクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的にプラズマ生成に関し、より具体的には、たとえばドライストリッププラズマ処理等に用いることができる、効率を上昇させたプラズマソースに関する。
【0002】
背景技術
プラズマ処理は半導体分野において、成膜、エッチング、レジスト除去、および、これに関連する、半導体ウェハや他の基板の処理に幅広く使用される。プラズマ処理では、ウェハ処理のための高密度のプラズマおよび反応種を生成するために、しばしば誘導プラズマソースを用いることが多い。たとえば、誘導結合プラズマソースは13.56MHzかつ低周波の標準的な電力発生器を用いて、高密度のプラズマを容易に生成することができる。エッチング装置では、たとえばウェハへ送られるイオンのエネルギーと流束とを独立して制御できるようにするため、誘導結合プラズマソースとRFバイアスとを組み合わせたものも使用されてきた。
【0003】
たとえば、レジスト除去のためのドライストリッププロセス等の特定のプラズマ処理では、半導体ウェハがプラズマに直接さらされることは望ましくない。このような処理では、プラズマソースは主に、ガス組成を変化させてウェハ処理用の化学活性のラジカルを生成するための介在物として用いられる。このプラズマはプラズマチャンバから離れた場所において形成され、たとえば、中性粒子を透過してプラズマを透過しないグリッドを介して、所望の粒子を半導体ウェハへチャネリングさせる。
【0004】
ウェハにおける処理速度は、これらの新たな種が生成されてウェハ表面へ送られる速度に直接比例するので、この処理は典型的には、高いRF電力を必要とする(たとえば約3kWから5kWまで)。また、この処理を行うために大きなガス流量(たとえば約5slmから25slmまで)と高圧(たとえば約1000mTorr)とを必要とするケースもある。ガスおよびエネルギーの所要消費量がこのように高いと、プラズマソースの効率がますます重要になってくる。プラズマソースの効率は、投資コストと運転コストとの双方に影響を及ぼす。さらに、エネルギーや有毒ガスの消費に関する新たな法的規制が出てくるたびに厳しくなる傾向は続くので、ガス消費量およびエネルギー消費量の双方に関する効率はますます、プラズマソースの重要な特性となってくるであろう。
【0005】
ウェハ上における処理分布プロフィールの制御もまた、プラズマソースの重要な要素の1つである。しかし、良好な分布の実現と効率の上昇とは、しばしば両立しないことが多い。典型的なガス注入システムが実現できるガス使用効率は高くなく、また、典型的なガス注入システムによって生成される流れ分布は複雑であり、これを制御するのは難しい。たとえば、中心にプラズマ注入を行うプラズマソースのガス使用効率は高いが、分布プロフィールは中心に非常に集中してしまう。
【0006】
それゆえ、ドライストリッププロセスや、プラズマとウェハとが直接相互作用するのが望ましくない他の処理に使用できる、より高効率のプラズマソースを実現する必要がある。特に、ハードウェアを変更することなく、ウェハ全体にわたって処理分布プロフィール制御を実現できる高効率のプラズマソースを実現できることが望まれている。
【0007】
発明の概要
本発明の対象および利点には、以下記載されているもの、以下の記載から明らかな事項、本発明の実施を通じて習得される事項が含まれる。
【0008】
本発明の1つの実施例は、基板処理用のプラズマリアクタを対象とする。このプラズマリアクタはプロセスチャンバを有し、プロセスチャンバは、基板を保持するように構成された基板ホルダを有する。前記プラズマリアクタは、前記基板の処理に使用されるプラズマを生成するための、プロセスチャンバから分離されたプラズマチャンバを含み、このプラズマチャンバは誘電体側壁とプラズマチャンバ内部とを有する。前記プラズマリアクタはさらに、誘導コイルとガス注入インサート部品とを有し、この誘導コイルは、前記プラズマチャンバに隣接するように前記誘電体側壁の周辺に設けられており、前記ガス注入インサート部品は前記プラズマチャンバ内部に配置されている。ガス注入インサート部品と前記側壁とが、プラズマチャンバ内部の誘導コイルに近接する場所へプロセスガスを供給するための、前記誘電体側壁に隣接する狭幅のガス注入路を画定する。この実施例の1つの具体的な実施態様では、ガス注入インサート部品は、電子を加熱するため、前記誘導コイルに隣接した場所において、電子閉じ込めが増強した活性領域を画定する。前記狭幅のガス注入路は、この活性領域へプロセスガスを供給する。
【0009】
本発明の他の1つの実施例は、基板処理用のプラズマを生成する方法を対象とする。前記方法は、プロセスチャンバ内に基板を設置するステップを有する。このプロセスチャンバは、基板を処理するのに使用されるプラズマを生成するプラズマチャンバから分離されている。前記方法はさらに、前記プラズマチャンバ内部において実質的に誘導性のプラズマを生成するため、前記プラズマチャンバの誘電体側壁に隣接して配置された誘導コイルの通電を行う。前記方法はさらに、プラズマチャンバの前記側壁と、当該プラズマチャンバ内部に設置されたガス注入インサート部品とにより画定された狭幅のガス注入路を介して、前記プラズマガス内部の前記誘導コイルに近接する場所へプロセスガスを供給するステップも含む。
【0010】
本発明の他の1つの実施例は、基板処理用のプラズマリアクタを対象とし、前記プラズマリアクタは、基板を保持するように構成された基板ホルダを有するプロセスチャンバと、当該基板を処理するのに用いられるプラズマを生成するための、前記プロセスチャンバから分離されたプラズマチャンバとを含む。このプラズマチャンバは誘電体側壁とプラズマチャンバ内部とを有する。前記プラズマリアクタはさらに、誘導コイルとガス注入インサート部品とを有し、この誘導コイルは、前記プラズマチャンバに隣接するように前記誘電体側壁の周辺に設けられており、前記ガス注入インサート部品は前記プラズマチャンバ内部に配置されている。ガス注入インサート部品と前記側壁とが、プラズマチャンバ内部の誘導コイルに近接する場所へプロセスガスを供給するための、前記誘電体側壁に隣接する狭幅のガス注入路を画定する。前記ガス注入インサート部品はさらに、増強された電子閉じ込めを行うための、前記誘導コイルに隣接した活性領域も画定する。狭幅のガス注入路は、プロセスガス中の電子を能動的に加熱するために、前記コイルに隣接する前記活性領域へプロセスガスを供給する。狭幅のガス注入路は、約1mmから約3mmまでの範囲内の幅と、約1cmから約10cmまでの範囲内の長さを有し、この長さはたとえば約2cmから約10cmまでである。前記活性領域は、約20mmからソースの半径の約半分までの範囲内の幅と、約35mmから約150mmまでの範囲内の長さとを有し、前記幅はたとえば約20mmから約45mmまでであり、前記長さはたとえば約35mmから約100mmまでである。
【0011】
本発明の上述の実施例には変更や改良を行うことが可能であり、たとえば1つの具体的な実施形態では、前記ガス注入インサート部品の少なくとも一部を誘電体リング部分とすることができる。また、他の1つの具体的な実施形態では、誘電体ガス注入インサート部品を誘電体管とすることもできる。さらに他の1つの具体的な実施形態では、前記ガス注入インサート部品は金属部分または導電性部分を含むことができ、および/または、金属材料を収容する中空部分を含むことができる。
【0012】
以下の記載と特許請求の範囲とを参酌すれば、本発明の上記特徴、態様および利点をより良好に理解することができ、また、本発明の他の特徴、態様および利点を理解することもできる。本発明の開示内容の一部を構成する添付図面に本発明の複数の実施形態を示しており、図面と明細書とを参酌すれば、本発明の基本的思想をより詳細に理解することができる。
【0013】
図面を参酌して以下の記載を当業者が読めば、最良の実施態様を含めた本発明の開示内容を、より具体的に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施例のプラズマリアクタを示す図である。
【
図2】本発明の一実施例のプラズマリアクタのプラズマチャンバを示す図である。
【
図3】本発明の他の一実施例のプラズマリアクタのプラズマチャンバを示す図である。
【
図4】
図2に示したプラズマチャンバの誘導コイルの磁束線を示す図である。
【
図5】
図3に示したプラズマチャンバの誘導コイルの磁束線を示す図である。
【
図6】
図3に示したプラズマチャンバの拡大図である。
【
図7】本発明の一実施例のプラズマリアクタとともに用いることができる誘導コイルの一例を示す図である。
【
図8】本発明の他の一実施例のプラズマリアクタのプラズマチャンバを示す図である。
【0015】
詳細な説明
以下の詳細な記載は、本発明の実施形態を参照する。これらの実施形態のうち1つまたは複数は、図面に示している。各実施例はそれぞれ本発明を説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。当業者であれば、実際には、本発明の範囲や思想を逸脱することなく、本発明の種々の変更や改良を行えることが明らかである。たとえば、1つの実施形態の構成要件として図示または記載した特徴を、他の実施形態とともに使用してさらに別の実施形態を実現することができる。よって本発明は、上述のような、特許請求の範囲およびこれと同等のものの範囲内にある変更態様や改良態様も含む。
【0016】
一般的に本発明は、ガス消費およびエネルギー消費の双方の効率が向上した誘導性プラズマソースを対象とする。本発明の実施形態では、プロセスガスを中心から供給するのではなく、プラズマチャンバの側壁に隣接して配置されたガス注入路を介してプロセスガスをプラズマチャンバ内へ供給することにより、前記プロセスガスが、プラズマチャンバ内の、前記誘導コイルに近接した位置に入るようにする。特定の実施形態では、前記コイルおよび前記ガス注入路の双方に隣接して、専用の反応領域または活性領域を形成することにより、電子加熱の大部分が生じる、電子閉じ込めが増強したこの反応領域ないしは活性領域に、チャンバに入ったプロセスガスを通過させる。以下で説明するように、このような活性領域に通過させることにより、ガス流パターンを改善して活性領域内に電子閉じ込めを実現し、これにより、リアクタの効率を上昇させることができる。
【0017】
プロセスガスを効率的に生成するためには、高温電子の密度が高い領域に流れが通るように送らなければならない。このことは、所望の種を生成するためには長い連鎖の衝突が不要であり、むしろ逆に1回の衝突だけでよい単純な化学反応を伴うプロセス(たとえばO
2→2O)に特に重要である。このようなプロセスでは、高エネルギーの電子だけが、生成物の生成に関与することができる。他の残りの電子は主に、分子の回転状態および振動状態を励起することによって行われるガス加熱に関与する。電子密度が高い領域に流れるガス流の大きさは、たとえばラジカル等の所要量の生成物を生成するのに十分大きく、かつ、ガス分子の多くがプラズマと相互作用せずに高電子密度の前記領域を無駄に通過してしまうほど大きくしてはならない。
【0018】
誘導結合プラズマソースでは、電子は、誘導コイルに隣接する狭幅のスキン層領域(約1つまたは2つのスキン層)の電界からエネルギーを受け取る。この(チャンバと比較して)小さい領域でのみ、電界は、ガスの原子や分子との衝突時の電子エネルギー損失を克服するのに十分に高くなる。電界が存在しない他の残りの容積では、電子はエネルギーを失うだけとなる。低圧用途では、電子は加熱領域(スキン層)に短時間入っていることができ、この領域外において多くのエネルギーを失うことがなくなる。電子が高エネルギーに達するまでに生じる損失は小さいので、加熱効率は高く、放電を維持するための電界を比較的小さくすることができる。これに対して高圧用途では、スキン層から出てきた各電子は、低エネルギーの分子励起と加熱とに起因して、スキン層領域に戻る前にすべてのエネルギーを失ってしまう確率が高くなる。ガス加熱に起因するこのような損失によって放電効率が低下し、放電を維持するために高い電界が必要になる。高圧プラズマにおける電子加熱効率の低下の他の原因は、プラズマソースの幾何学的条件である。たとえば、側壁に巻回されたコイルを有する円柱形のプラズマソースソースの場合、プラズマや薄いスキン層が無くても、このプラズマソースの軸におけるアジマス方向の電界は0になり、壁から離れた、電界が弱くなる場所では明らかに、中エネルギーおよび低エネルギーの非弾性衝突に起因して、高温の電子の大部分はエネルギーを失って低温になってしまう。高圧放電においてプラズマソース効率を上昇させるためには、加熱領域における電子閉じ込めを改善しなければならない。
【0019】
たとえば典型的なプラズマソースの場合、誘導コイルに近接するスキン層領域に電子を保持する手段が無い。電子はその容積の周辺に拡散し、たまにスキン層領域に入るだけである。前記容積内における電子のバランスは、当該容積内の電離と側壁における損失とにより維持される。加熱領域におけるプラズマ密度が約10
11cm
−3であり、かつ13.56MHzのRF電界の場合、衝突性プラズマ中にあるスキン層の厚さは、約
【数1】
となる。ここでcは光束であり、ω
peは電子プラズマ周波数であり、vは電子衝突周波数であり、ωはRF電界の周波数である。スキン層の深さにおける電界は、壁近傍の電界の約1/3となり、高エネルギー過程(電離、解離等)は電界に指数関数的に依存するので、電界が強くなるほど高エネルギー電子の加熱効率は大きく低下していき、有効加熱深さδ
hは表皮厚さより格段に小さくなる。したがって、加熱体積の中央にある電子が加熱体積から出るのにかかる時間は、τ〜δ
2/8Dとなる。ここで、Dは電子拡散係数である。1Torrの酸素中にある1−5eの電子の場合、拡散係数は約(2.5−5.5)×10
6cm
2/sとなり、たとえばδ
h〜2cmの場合、電子は約10
−7sの時間で加熱領域から出ていく。この時間は、高エネルギー衝突に必要な約(10−20)eVを得るのに十分ではない。このことは、大半の電子が比較的小さいエネルギーで加熱領域から出て行くことを意味し、また、大半の電気エネルギーが低エネルギー衝突によるガス加熱に起因して無駄になることを意味する。高エネルギーの励起、解離および電離を実現するのに十分なエネルギーを獲得できる電子の割合は僅かしかない。
【0020】
プラズマソースにおける高圧放電の効率を上昇させるため、本発明を実施することにより加熱領域へのガスの流れを改善して、当該加熱領域における電子閉じ込めを改善することができる。
図1は、本発明の一実施例のプラズマリアクタ100を示す図である。同図には、プラズマリアクタ100がプロセスチャンバ110とプラズマチャンバ120とを有し、当該プラズマチャンバ120がプロセスチャンバ110から分離されている構成を示している。プロセスチャンバ110は、基板114を保持するように構成された基板ホルダまたは基板台112を有する。この基板114はたとえば半導体ウェハ等である。誘導性プラズマはプラズマチャンバ120内にて生成され、所望の粒子はプラズマチャンバ120から、プラズマチャンバ120とプロセスチャンバ110とを分離するグリッド116に設けられた孔を通って、基板114の表面へチャネリングされる。
【0021】
プラズマチャンバ120は誘電体側壁122と天井部材124とを有し、誘電体側壁122と天井部材124とがプラズマチャンバ内部125を画定する。誘電体側壁122は、任意の誘電体材料から形成することができ、たとえば水晶から形成することができる。プラズマチャンバ120の周囲に、誘導コイル130が誘電体側壁122に隣接して配置されている。
図7に誘導コイル130の一例を示す。有利には、このコイルの巻数は2から4までの間であり、すべての一巻きが平行になるように形成される。このような構成にするためには、
図7に示しているように、誘導コイル130の各一巻きの終わりに、巻線に段差を設ける。
【0022】
図1に戻ってこれを参照すると、誘導コイル130は適切なマッチングネットワーク132を介してRF電力発生器134に結合されている。プロセスガスは、ガス供給部150と環状のガス分散流路151とからチャンバ内部へ供給される。RF電力発生器134から誘導コイル130にRF電力が供給されると、プラズマチャンバ120内において実質的に誘導性のプラズマが生じる。特定の実施形態では、プラズマリアクタ100は、誘導コイル130とプラズマとの容量結合を小さくするためのファラデーシールド128をオプションとして有することができる。
【0023】
効率を上昇させるため、プラズマリアクタ100は、チャンバ内部125に配置されたガス注入インサート部品140を有する。ガス注入インサート部品140はチャンバ内部125内に取り外し可能に挿入することができ、または、プラズマチャンバ120の固定された一部とすることもできる。
図2を参照すると、ガス注入インサート部品140は、プラズマチャンバ120の側壁122に近接するガス注入路152を画定する。ガス注入路152はプロセスガスを、チャンバ内部125の誘導コイル130に近接する場所と、活性領域154とへ供給する。この活性領域154は、ガス注入インサート部品140と側壁120とにより画定された領域である。この活性領域154は、プラズマチャンバ内部125における、電子を能動加熱するための閉じ込め領域となる。狭幅のガス注入路152により、チャンバ内部125からこのガス流路内へプラズマが拡散するのが阻止される。ガス注入インサート部品140は、電子を能動加熱する活性領域154にプロセスガスを通過させるためのものである。プラズマチャンバ内部125の中心から活性領域154を分離することにより好影響が及ぼされる。というのも、スクリーニングをしなくてもプラズマチャンバ内部125の中心における電界が無くなるからである。
【0024】
ガス注入インサート部品140により、電子が1つの出口のみへ逃げる領域が縮小されることにより、活性領域154内における電子閉じ込めが改善される。具体的には、ガス注入インサート部品140は、プラズマチャンバ120の側壁122とともに、活性領域154の1面を除いたすべての面を包囲する壁にもなる。1面以外の全ての面で活性領域154を包囲することにより、壁近傍のプラズマシースが電子を反射できるようになる。特定の実施形態では、ガス注入インサート部品140の壁は、電子の反射を増幅させるように構成された反射性の壁とすることができる。ガス注入インサート部品140により成るこの追加的な壁が、側壁122から約1〜2個の外側層の内側にある場合、電子は壁間でバウンドし、活性領域154の唯一の開放面から出て行くまで、または、シース障壁を克服できる非常に高いエネルギーおよび速度を獲得して壁に向かうまで、活性領域54内に留まり続けることができる。このことにより、活性領域における電子の加熱を格段に高効率にすることができる。さらに、活性領域154内におけるイオン閉じ込めが良好であれば、ガス注入インサート部品の壁に電子が失われていく損失を無視することもできる。
【0025】
ラジカルと直接接触する壁が、ラジカルの再結合レートが低い材料により成る場合は、ガス注入インサート部品140がプラズマリアクタ100の効率を改善できる性能は、当該ガス注入インサート部品140の材料に依存しない。たとえば特定の実施形態では、表面再結合を低減するように構成されたコーティングをアルミニウム材料に施したものから、ガス注入インサート部品140を形成することができる。これに代えて択一的に、ガス注入インサート部品140を水晶材料または絶縁材料とすることもできる。
【0026】
また特定の実施形態では、プラズマリアクタの点弧期間と処理期間との間の移行時間を短縮するのに能動的な役割をガス注入インサート部品140が果たすようにすることができる。プラズマの点弧中にRF電源134を整合させるための負荷は、動作中にRF電源134を整合させるための負荷とは著しく異なる。その結果、反射される電力が高くなり、電極において電圧が高くなる等の現象が生じる。通常はこのことにより、点弧中の電力が制限され、また、点弧中の圧力およびガス流量を小さくする必要性も生じる。
【0027】
典型的には、点弧期間中に必要とされるパラメータ(たとえば電力、圧力およびガス流量)から、処理期間に必要とされるパラメータへ急激に変化させると、圧力や電力が振動してプロセス条件が不安定になる。点弧期間からプロセス期間への移行をスムーズかつ安定的にするためには、典型的には、電力、ガス流量および圧力が中程度の移行ステップが必要となる。この移行ステップは、典型的には2,3秒を要するが、この移行ステップの終了時にはパラメータは依然として、プロセス期間中に必要とされるパラメータと異なったままである。それゆえ、実際の移行時間はさらに長くなる。この遅延により、プロセス時間にさらに著しく長い時間が追加されるので、プラズマソースの生産性が格段に低くなる。
【0028】
ガス注入インサート部品140の材料により、上述の移行ステップに必要とされる時間を短縮することができ、または、移行ステップを完全に無くすことも可能になる。具体的には、プラズマチャンバ120内にプラズマが存在しているときに誘導コイル130がこのプラズマに結合され、ガス注入インサート部品140が金属材料から成るかまたは誘電体材料から成るかは関係ない。しかし、点弧ステップ中に誘導コイル130がどの負荷にも全く結合されないと、反射される電力が高くなり、部品における高電圧によって、点弧中に高電力が供給されなくなる。しかし、ガス注入インサート部品140が金属材料を含む場合、ガス注入インサート部品140の金属は点弧段階中にプラズマ負荷のようになり、ガス注入インサート部品140の金属によって形成されるこの擬似負荷に誘導コイル130が結合され、これにより反射電力は小さくなり、誘導コイル130に供給される電力を上昇させることができる。プラズマが点弧してプラズマ密度が上昇すると、誘導コイル130は自ずとプラズマに結合し、電界からガス注入インサート部品140を遮蔽する。
【0029】
金属とプラズマとが直接コンタクトするのが望ましくない場合、ガス注入インサート部品140を金属から形成するのが好適でないプロセスもある。この場合には
図2に示すように、ガス注入インサート部品は、中空部142を有する誘電体材料を含むことができる。この中空部142内に金属を設置して、この金属が点弧段階中に準負荷として機能するようにすることができる。また、中空部142によって到達が容易になり、冷却を行うことも可能になる。
【0030】
図3は、本発明の他の一実施例のプラズマチャンバ120を示す図である。
図3のプラズマチャンバ120内では、ガス注入インサート部品140の一部が誘電体リング部分145を有する。誘電体リング部分145は、たとえば水晶等の誘電体材料により形成することができる。誘電体リング部分145により、活性領域154の幾何学的条件やガス流パターンを変更することなく、活性領域154内への磁界の透過を増大させることができる。
図4に、ガス注入インサート部品140が誘電体リング部分145を有さない場合のプラズマチャンバ120の磁束線を定量的に示しており、ここではプラズマの表皮厚さを示している。
図5は、ガス注入インサート部品140が誘電体リング部分145を有する場合の、
図4の条件と同じ条件下のプラズマチャンバ120の磁束線を示す図である。両図を見ると、誘電体リング部分145によってプラズマチャンバ120の活性領域154内への磁界の浸透が増大し、これにより、プラズマソースの効率が上昇することが分かる。
【0031】
図6に、
図3のプラズマソース120の一部の、本発明の有利な一実施例を示す。この実施形態では、ガス注入路152は約2cmから約10cmまでの長さl
sと、1mmから約3mmまでの幅d
sとを有する。活性領域154の幅aは約25mmから約65mmまでであり、長さLは約35mmから約150mmまでである。前記幅aはたとえば約20mmから約45mmまでとすることができ、前記長さLはたとえば約35mmから約100mmまでとすることができる。ガス注入インサート部品140の誘電体リング部分144の長さl
qは、約0cmから約10cmまでの範囲内であり、たとえば約0.5cmから約10cmまでとすることができる。
【0032】
本発明の実施形態により実現されるガス注入部のこのような具体的な幾何学的条件により、ガス流量とガス圧との比を使用して、半導体ウェハ上における処理分布プロフィールの能動的制御を実現することができる。ガス使用効率を向上させるためには、ガス分子を活性領域に向けて送り、高温の電子と衝突するのに必要な時間にわたってガス分子をこの活性領域に留めなければならない。よって、活性領域内におけるガスの滞留時間(τ
res)はほぼ、高エネルギーの非弾性衝突の時間(τ
*coll)となる。電子加熱領域を囲む壁をガス注入インサート部品により形成することは、一部、この問題に対応するものである。というのも、この壁がガスを保持し、ガス注入路がガスをこの領域内へ供給するからである。プラズマパラメータの大部分は、側壁で失われるイオン量によって決定され、ひいては、通路の横方向の寸法aによって決定されるので、ガス分子が電子と衝突する時間は主に、電力P
inと圧力
pと前記寸法
aとに依存するのに対し、滞留時間(τ
res〜pV
a/(ΦT))は、ガス流量Φと、加熱領域の体積V
a(V
a=2πRaL。ここで、Rは加熱領域の平均半径であり、Lは加熱領域の長さである)と、ガス圧とにより決定される。ガス流量または前記領域の長さを変化させることにより、前記滞留時間をτ
*collに近づくように調整して、電気エネルギーおよびガスの双方の使用率を高効率にすることができる。
【0033】
上記事項に関しては、ウェハ上における処理分布プロフィールのアクティブ制御を行うために、ガス流量とガス圧との比Φ/pを使用することができる。実際、この比が低いと、主要体積に入ったガスと他の残りのガスとが迅速に混合し、ウェハ近傍のガス流の分布は主にガス圧とガス流量とに依存し、ガス注入の詳細な特性に依存することがなく、ウェハ上における処理分布プロフィールは常に中心高速になる。他方、前記比が高いと、チャンバ内のガス流は、注入場所から遠い場所の注入幾何特性を「記憶」するので、処理分布プロフィールは注入分布プロフィールに大きく依存し、本発明の注入幾何条件に鑑みて縁部高速になる。このようにして比Φ/pを調整して所望の(縁部高速/平坦/中心高速の)分布プロフィールを得ることができる。このような動的な処理分布プロフィール制御により、プラズマがウェハ近傍にくることが望ましくなくプラズマをラジカルから分離する必要があるプロセス(たとえばドライストリップ)に、簡単かつ均質なグリッドを用いることができる。
【0034】
上述の構成に代わる、本発明の択一的な実施形態では、ガス注入インサート部品は、ガス注入場所から誘導コイルまで、または誘導コイル近傍まで延在する水晶製または金属製または絶縁材料製の簡単な管とすることができる。一例として
図8に、チャンバ内部225を画定する誘電体側壁222を有するプラズマチャンバ220を示す。プラズマチャンバ220は誘電体管インサート部品240を有する。この誘電体管インサート部品により、ガス注入路252がガス供給部250および環状ガス分散通路251から、誘導コイル230近傍の領域まで延長される。この特殊な実施形態は、上述の利点の多くを奏することができ、また、インサート部品240は低コストかつ軽量であるため、上述の特殊な構成を既存のリアクタに簡単に追加することができる。
【0035】
当業者であれば、特許請求の範囲に具体的に記載された本発明の思想および範囲を逸脱することなく、本発明に上述の変更および改良や、他の変更および改良を施すことができる。さらに、上記の種々の実施形態の構成要件を全部入れ替えることも、また一部入れ替えることも可能であることは明らかである。また当業者であれば、上記記載は単に例示するためのものであり、特許請求の範囲に記載した発明を限定するものではないことは明らかである。