(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態に係る曲り部材の製造方法は、
図1に示すように、曲げ加工装置Bを利用して実施されるものであり、形材Sを用意する形材準備工程と、直線型1に形材Sを沿わせつつ直線型1に対向する曲げ型2に形材Sの前端部を固定する形材配置工程と(
図1の(a)参照)、一対のロール4,5で直線型1および曲げ型2の前部を挟持する曲げ準備工程と(
図1の(a)参照)、一対のロール4,5を直線型1の後部へ向けて移動させる曲げ工程と(
図1の(b)および(c)参照)、刃具6を所定位置に向けて突出させた後、形材Sに刃具6を当接させた状態で一対のロール4,5を直線型1の前部へ向けて移動させる戻し工程と(
図1の(d)および(e)参照)を備えている。戻し工程を行うと、形材Sが二つに分離され、独立した二つの曲り部材が得られる。
【0022】
本発明の実施形態に係る曲げ加工装置Bは、曲げ加工前の形材Sに沿って配置される直線型1と、湾曲した形状に成形された曲げ型2と、形材Sの前端部を曲げ型2に固定する押え部材3と、直線型1および曲げ型2を挟持する一対のロール4,5と、直線型1および曲げ型2の間に配置された状態の形材Sを長手方向に切断するための刃具6とを備えている。直線型1および曲げ型2は、一対のロール4,5の間を通過する際に突き合わされる。
【0023】
形材Sは、二つの曲り部材の素となるアルミニウム合金製の押出形材であり、
図2に示すように、押出形材の短手方向(押出方向に直交する方向)に並設された一対の長尺製品部S1,S1と、長尺製品部S1,S1の間に設けられた帯状の連結部S2とを備えている。すなわち、形材Sは、長尺製品部S1をその短手方向に二つ並設した断面形状を有している。
【0024】
長尺製品部S1は、製造すべき曲り部材と同じ断面形状を具備している。長尺製品部S1,S1は、連結部S2を介して一体になっているが、曲げ加工後(戻し工程後)に分離され、独立した二つの曲り部材となる。
【0025】
連結部S2は、戻し工程において切除される部位である。連結部S2の両側縁には、形材Sの長手方向に沿って溝S3,S3が形成されている。
【0026】
溝S3,S3は、形材Sを押出成形する際に成形される。なお、
図10の(a)に示すように、本実施形態では、形材Sの表裏両面のそれぞれに断面V字状の溝S3,S3を形成しているが、一方の面のみに溝S3,S3を形成してもよい。また、
図10の(b)に示す形材S’のように、連結部S2を長尺製品部S1,S1よりも薄肉に形成してもよい。すなわち、連結部S2をこれに隣接する長尺製品部S1よりも薄肉に形成し、長尺製品部S1と連結部S2との境界に段差を形成してもよい。
【0027】
曲り部材の用途に制限はないが、本実施形態の曲り部材は、自動車用サンルーフのガイドレールとして使用される。一方の長尺製品部S1は、車両右側のガイドレールとなり、他方の長尺製品部S1は、車両左側のガイドレールとなる。
【0028】
直線型1は、直線状の型であり、曲げ外側に配置される。直線型1の外側面は、局所的な凹凸の無い平坦面に成形されており、直線型1の内側面は、形材Sの一方の側面の凹部および凸部に対応した断面形状に成形されている。
【0029】
直線型1には、直線状のスリット1aが形成されている。スリット1aは、直線型1の外側面から内側面に至る帯状の空間であり、形材Sの分離位置である連結部S2に対応する高さ位置(本実施形態では、直線型1の高さ方向の中央部)において直線型1の長手方向に延在している。
【0030】
本実施形態の直線型1は、下直線型11と、下直線型11の上側に配置された上直線型12と、下直線型11および上直線型12の端部同士を繋ぐ接合部材13とを備えている。
【0031】
下直線型11は、形材Sの下半分の形状に対応しており、上直線型12は、形材Sの上半分の形状に対応している。下直線型11および上直線型12は、スリット1aとなる隙間をあけて上下に並べられている。下直線型11および上直線型12の端部には、平板部11a,12aが形成されている。
【0032】
接合部材13は、直線型1の両端部に配置されている(
図2では一端側のみを図示)。本実施形態の接合部材13は、直線型1の高さ寸法と等しい高さ寸法を有する矩形形状の板材からなり、平板部11a,12aの内側面に重ねられる。接合部材13の接合面(平板部11a,12に当接する面)には、スペーサ13aが突設されている。なお、接合部材13は、平板部11a,12aに対してボルト接合されているが、クランプなどで平板部11a,12aに固定してもよいし、溶接等により平板部11a,12aに接合してもよい。
【0033】
スペーサ13aは、スリット1aの幅(下直線型11と上直線型12の隙間幅)を保持するものである。スペーサ13aは、接合部材13と一体成形されたものでもよいし、接合部材13と別体のものでもよい。
【0034】
曲げ型2は、曲り部材の仕上がり形状(設計形状)に対応して湾曲する弧状の型であり、形材Sを挟んで直線型1の反対側(曲げ内側)に配置される。曲げ型2の曲率は、形材Sに生じるスプリングバックを考慮し、仕上がり形状の曲率よりも大きくなっている。曲げ型2の外側面は、局所的な凹凸が無い緩やかな曲面に成形されている。曲げ型2の内側面は、形材Sの他方の側面の凹部および凸部に対応した断面形状に成形されており、直線型1の内側面に対向している。直線型1と曲げ型2とを突き合わせると、直線型1の内側面と曲げ型2の内側面とによって、形材Sの断面形状に対応した隙間(形材Sが丁度納まる隙間)が形成される。
【0035】
曲げ型2には、凹溝2aが形成されている。凹溝2aは、形材Sの分離位置に対応する高さ位置(本実施形態では、曲げ型2の高さ方向の中央部)において曲げ型2の長手方向に延在している。すなわち、凹溝2aは、スリット1aに対向する位置に形成されている(
図3参照)。
【0036】
押え部材3は、曲げ型2の前端部に固定されるブロック状の部材である。押え部材3の外側面は、凹凸の無い平坦面に成形されており、押え部材3の内側面は、直線型1の内側面と同様の断面形状に成形されている。曲げ型2の内側面と押え部材3の内側面との間に形成される隙間は、形材Sの断面形状に対応した隙間(形材Sが丁度納まる隙間)となる。
【0037】
本実施形態の押え部材3は、形材Sの下半分を曲げ型2に固定する下押え部材31と、形材Sの上半分を曲げ型2に固定する上押え部材32とからなる。下押え部材31および上押え部材32は、隙間をあけて上下に並べられている。下押え部材31と上押え部材32の隙間幅は、スリット1aの幅(下直線型11と上直線型12の隙間幅)と等しい。
【0038】
図1に示すように、ロール4,5は、左右方向(直線型1の長手方向に直交する方向、
図4参照)に間隔をあけて並設されている。ロール4,5は、両者の間隔を一定に保ったまま直線型1の長手方向に沿って移動可能である。
図2に示すように、一方のロール4は、直線型1の外側面に線接触する円柱面を有し、他方のロール5は、曲げ型2の外側面に線接触する円柱面を有する。一対のロール4,5は、中心軸部4a,5aを中心に回動可能である。中心軸部4a,5aは、直線型1および曲げ型2が載置される平面(
図3に示すテーブル7の上面)の法線と平行である。
【0039】
なお、以下の説明においては、直線型1の外側面に当接するロール4を「固定ロール4」と称し、曲げ型2の外側面に当接するロール5を「可動ロール5」と称する場合がある。
【0040】
刃具6は、一対のロール4,5の間に配置されている(
図1参照)。本実施形態の刃具6は、スリット1a(
図2参照)に挿入可能な厚さを有する平面視円弧状の鋼材からなり、スリット1aに挿入された状態で直線型1の長手方向に沿って移動可能である。
図3の(a)にも示すように、刃具6は、直線型1のスリット1aに挿入されており、刃具6の先端部6aは、曲げ型2の凹溝2aに対向している。
【0041】
本実施形態の刃具6は、直線型1の内側面から突出しない退避ポジション(
図3の(a)参照)および直線型1の内側面から突出する切断ポジション(
図3の(b)参照)の二つのポジションを選択できるよう、直線型1の内外方向(直線型1の長手方向と直交する水平方向)に進退可能である。
図3の(b)に示すように、刃具6を曲げ型2に向かって進出させると、刃具6の先端部6aは、形材収容空間(直線型1と曲げ型2とが突き合わされたときに直線型1の内側面と曲げ型2の内側面との間に形成される隙間)Vを横断し、凹溝2a(
図2参照)の開口端に達するようになる。なお、
図3の(b)では、刃具6の先端部6aが凹溝2aの開口端に位置しているが、先端部6aが凹溝2aに挿入されていてもよい。
【0042】
図4〜7を参照して、曲げ加工装置Bの構成をより詳細に説明する。
曲げ加工装置Bは、直線型1、曲げ型2、押え部材3、一対のロール4,5および刃具6のほか、
図4の(a)および(b)に示すように、直線型1および曲げ型2が載置されるテーブル7と、ロール4,5および刃具6を支持する支持体8と、支持体8を直線型1に沿って前進または後進させるギヤードモータ(駆動手段)9とを備えている。
【0043】
テーブル7は、架台71(
図4の(b)参照)と、ベース72と、ガイドレール73,73と、支持脚74,74と、天板75と、ラックレール(歯軌条)76と、拘束部材77とを備えている。
【0044】
架台71は、
図5に示すように、鋼材を組み合わせて形成した骨組構造体からなる。架台71内には、ギヤードモータ9を収容可能な空間が確保されている。なお、架台71の構成は、図示のものに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0045】
ベース72は、架台71上に設置されている。本実施形態のベース72は、左右方向に間隔をあけて並設された一対の板材からなる。板材同士の間に形成された開口72aは、ギヤードモータ9の移動通路であり、前後方向に延在している。
【0046】
ガイドレール73,73は、ベース72の上面に設置されている。本実施形態のガイドレール73,73は、ベース72の開口72aを挟んで両側に配置されており、それぞれ前後方向に延在している。
【0047】
図4の(b)に示すように、支持脚74,74は、ベース72の長手方向の両端部に立設されており、天板75を支持している。後側の支持脚74の上面には、ステイ74aが設置されている。
【0048】
天板75は、ベース72の上方に配置されている。
図4の(a)に示すように、本実施形態の天板75は、平面視長方形の板材からなる。天板75の上面には、直線型1および曲げ型2が載置される。
【0049】
図4の(b)に示すように、ラックレール76は、天板75の下側に設置されており、直線型1の長手方向(前後方向)に延在している。ラックレール76は、天板75の左側の側縁部の下面に固定されている(
図6参照)。
【0050】
拘束部材77は、直線型1を拘束するものであり、
図4の(a)にも示すように、天板75の一方の側縁に沿って配置されている。本実施形態の拘束部材77は、帯状の板材からなり、天板75の長手方向の端部から直線型1に向かって延出している。拘束部材77の一端側は、ステイ74aに固定されており、拘束部材77の他端側は、直線型1の前端部に固定されている。
【0051】
支持体8は、固定ロール4、可動ロール5および刃具6を支持するものであり、
図5に示すように、矩形枠状の筐体(第一側板81、第二側板82、下板83および上板84)と、張出板85と、係合溝部材86と、ロールホルダ87と、クランプ手段88と、刃具移動手段89とを備えている。支持体8は、ガイドレール73,73に沿って前後にスライド可能である。
【0052】
第一側板81および第二側板82は、
図6にも示すように、天板75の左右に配置されており、天板75を挟んで対向している。第一側板81は、
図6において天板75の左側(直線型1側)に配置されており、第二側板82は、天板75の右側(曲げ型2側)に配置されている。
【0053】
下板83は、天板75の下方に配置されており、第一側板81および第二側板82の下端部同士を繋いでいる。下板83の下面には、摺動部材83a,83aが固定されている。摺動部材83aは、ガイドレール73に摺動自在に係合する。
【0054】
上板84は、天板75の上方に配置されており、第一側板81および第二側板82の上端部同士を繋いでいる。また、上板84は、固定ロール4の中心軸部4aの上端部を回転自在に支持している。上板84には、平面視矩形状のガイド用開口84aが形成されている(
図7参照)。
【0055】
張出板85は、第一側板81に固定されており、第一側板81の内側面から天板75に向かって張り出している。張出板85は、固定ロール4の中心軸部4aの下端部を回転自在に支持している。張出板85の先端面には、係合凹溝85aが形成されている。係合凹溝85aは、天板75の側縁部に摺動自在に係合する。
【0056】
係合溝部材86は、第二側板82に固定されている。係合溝部材86には、係合凹溝86aが形成されている。係合凹溝86aは、天板75の側縁部に摺動自在に係合する。
【0057】
ロールホルダ87は、可動ロール5を抱持するものであり、左右方向に移動可能である。本実施形態のロールホルダ87は、可動ロール5の中心軸部5aの下端部を回転自在に支持する下支持部87aと、可動ロール5の中心軸部5aの上端部を回転自在に支持する上支持部87bと、下支持部87aと上支持部87bとを繋ぐ壁部87cと、下支持部87aと上支持部87bの間に介設された第一連結棒87dと、上支持部87bの上端部に設けられた係合部87eとを備えている。上支持部87bは、上板84のガイド用開口84aに挿入されている。係合部87eは、上支持部87bの前後に張り出しており、ガイド用開口84aの開口縁部に載置される(
図5,
図7参照)。すなわち、ロールホルダ87は、左右方向に移動可能な状態で上板84に支持されている。
【0058】
クランプ手段88は、基部88aと、基部88aの上方に配置された係合部88bと、基部88aと係合部88bとを繋ぐ連結ボルト88cと、基部88aに支持された第二連結棒88dと、第一連結棒87dと第二連結棒88dとを繋ぐトグルリンク機構88eと、基部88aの後面に取り付けられたブラケット88f(
図7参照)と、ブラケット88fに支持されたクランプ用シリンダ88g(
図7参照)と、基部88aの側面に突設された調整ボルト88hとを備えている。なお、
図5では、ブラケット88fおよびクランプ用シリンダ88gの図示を省略している。
【0059】
基部88aは、横向きに開口する凹部を有している。係合部88bは、ガイド用開口84aの開口縁部に載置されており、連結ボルト88cを介して基部88aを吊持している。
【0060】
第二連結棒88dは、基部88aの凹部を跨ぐように配置されている。
図7に示すブラケット88fは、
図5に示す基部88aの前面から前方に向かって延出している。
図7に示すクランプ用シリンダ88gは、エアシリンダである。クランプ用シリンダ88gは、ブラケット88fの後端部にピン接合されており、鉛直軸を中心に回動可能である。クランプ用シリンダ88gのロッドは、トグルリンク機構88eの中央の節点(二つのリンクの結合部)に接続されている。
【0061】
クランプ用シリンダ88gのロッドを進出させると、トグルリンク機構88eの二つのリンクの交差角が大きくなり、ロールホルダ87が固定ロール4側に移動する。すなわち、クランプ用シリンダ88gのロッドを進出させると、可動ロール5の外周面が曲げ型2の外側面に当接するようになる。一方、クランプ用シリンダ88gのロッドを縮退させると、トグルリンク機構88eの二つのリンクの交差角が小さくなり、ロールホルダ87が第二側板82側に移動する。すなわち、クランプ用シリンダ88gのロッドを縮退させると、可動ロール5の外周面が曲げ型2の外側面から離れるようになる。
【0062】
調整ボルト88hは、第二側壁82と基部88aとの離隔距離を調整するものであり、第二側壁82のネジ孔に螺合している。
【0063】
刃具移動手段89は、固定ロール4の前後に配置されている。前側の刃具移動手段89は、刃具6の前端部を支持しており、後側の刃具移動手段89は、刃具6の後端部を支持している。
【0064】
本実施形態の刃具移動手段89は、
図6に示すように、第一側板81に固定された刃具用シリンダ89aと、刃具用シリンダ89aのロッドに固定された台座89bと、台座89bに固定された一対の固定部89c,89cとを備えている。刃具用シリンダ89aは、エアシリンダであり、ガイド付きのロッドを備えている。刃具用シリンダ89aのロッドは、直線型1の長手方向に交差する水平方向(左右方向)に進退する。固定部89c,89cは、刃具6の端部を挿入可能な間隔をあけて対峙している。刃具6と固定部89c,89cとは、これらを貫通する図示せぬボルトを介して連結されている。
【0065】
刃具用シリンダ89a,89aのロッドを進出させると、刃具6が可動ロール5側に移動し、刃具用シリンダ89a,89aのロッドを縮退させると、刃具6が固定ロール4側に移動する。
【0066】
ギヤードモータ9は、支持体8の下板83に固定されている。ギヤードモータ9の歯車(ピニオン)は、ラックレール76に歯合しており、ギヤードモータ9を駆動すると、支持体8が前方または後方に向けて移動する。
【0067】
次に、本実施形態に係る曲り部材の製造方法の各工程を詳細に説明する。
本実施形態に係る曲り部材の製造方法は、
図1の(a)〜(e)に示すように、曲げ加工装置Bを利用して実施されるものであり、形材準備工程と、形材配置工程と、曲げ準備工程と、曲げ工程と、戻し工程とを備えている。
【0068】
形材準備工程は、形材S(
図2参照)を用意する工程である。図示は省略するが、曲り部材に形成すべき孔や切り欠きなどは、曲げ加工前の形材Sに予め形成しておくとよい。
【0069】
形材配置工程は、直線型1の内側面に形材Sを沿わせつつ曲げ型2の内側面に形材Sの前端部を固定する工程である。形材配置工程における具体的な手順は次のとおりである。まず、クランプ用シリンダ88g(
図7参照)のロッドを縮退させる操作を行って、可動ロール5を曲げ型2から離し、その後、手作業で直線型1と曲げ型2とを離間させる。直線型1と曲げ型2とを離間させると、形材Sの出し入れが容易になる。なお、この手作業での離間操作は、形材Sを出し入れする作業および曲げ型2と押え部材3との間に形材Sの前端部を差し込む作業を容易にするための操作であるから、直線型1と曲げ型2との間に適度な隙間が存在している場合には、省略してもよい。次に、手作業により、直線型1と曲げ型2との間に形材Sを配置しつつ、この形材Sを押え部材3に向けて前進させ、曲げ型2と押え部材3との間に形成される隙間に形材Sの前端部を差し込む。前記隙間に形材Sの前端部を差し込むと、形材Sが曲げ型2に固定される。形材Sを曲げ型2に固定したら、ロール4,5の間において直線型1と曲げ型2を突き合わせつつ、直線型1の内側面で形材3を保持する。
【0070】
曲げ準備工程は、ロール4,5で直線型1および曲げ型2の前部を挟持する工程である。曲げ準備工程では、クランプ用シリンダ88g(
図7参照)のロッドを進出させる操作を行えばよい。クランプ用シリンダ88g(
図7参照)のロッドを進出させると、トグルリンク機構88eの動作に連動して可動ロール5が曲げ型2に向かって移動し、可動ロール5が曲げ型2の外側面を押圧した状態(ロール4,5が直線型1および曲げ型2を狭持した状態)となる。なお、曲げ準備工程は、刃具用シリンダ89aのロッドを縮退させた状態(刃具6を退避ポジションに位置させた状態)で行う。
【0071】
曲げ工程は、
図1の(b)および(c)に示すように、刃具6を形材Sに当接させない状態でロール4,5を直線型1の後部へ向けて移動させる工程である。曲げ工程を実行する場合には、ギヤードモータ9を作動させればよい。すなわち、オペレータが曲げ加工装置Bの図示せぬスイッチを操作すると、シーケンス制御用の制御プログラムが起動し、ギヤードモータ9を正回転させる制御が実行される。ギヤードモータ9を正回転させると、ロール4,5を搭載した支持体8が直線型1の後部へ向けて移動する。
【0072】
なお、直線型1および曲げ型2は、ロール4,5の後方においては離間しているが、ロール4,5の間においては突き合わされる。ロール4,5の前方では、直線型1および曲げ型2が再び離間することになるが、形材Sの前端部が曲げ型2と押え部材3とに狭持されているので、ロール4,5の前方に位置する形材Sは、曲げ型2に沿って湾曲するようになる。形材Sの湾曲が進行すると、形材Sの未加工部(ロール4,5の後方に位置する直線部分)には、曲げ型2から離れようとする力が作用するが、かかる力は、直線型1によって受け止められる。なお、曲げ工程では、刃具6を退避ポジションに位置させているので、形材Sが切断されることはない。
【0073】
ロール4,5が形材Sの後端を超えた位置に到達したことが図示せぬセンサによって検知されると、制御プログラムに従ってギヤードモータ9を停止する制御が実行され、さらに、刃具用シリンダ89a,89aにエアを供給する制御が実行される。刃具用シリンダ89a,89aにエアが供給されると、刃具用シリンダ89a,89aのロッドが進出し、刃具6が曲げ型2に向かって移動(突出)する。刃具用シリンダ89a,89aのロッドの進出量が規定値に達したことが図示せぬセンサによって検知されると、制御プログラムに従ってロッドの進出を停止する制御が実行され、戻し工程に移行する。
【0074】
戻し工程は、形材Sに刃具6を当接させた状態でロール4,5を直線型1の前部へ向けて移動させる工程である(
図1の(d)および(e)参照)。戻し工程では、制御プログラムに基づいてギヤードモータ9を逆回転させる制御が実行される。ギヤードモータ9を逆回転させると、ロール4,5を搭載した支持体8が直線型1の前部(初期位置)へ向けて移動する。ロール4,5が初期位置に到達したことが図示せぬセンサによって検知されると、制御プログラムに従ってギヤードモータ9を停止する制御が実行される。
【0075】
戻し工程は、刃具6が直線型1の内側面から突出した状態(形材収容空間Vを横切った状態)で行われるので、支持体8を移動させると、刃具6の先端部が形材Sの後端側から連結部S2に当接し、連結部S2を曲げ型2側に押圧することになる。本実施形態では、連結部S2の側方に凹溝2aが位置しており、連結部S2が曲げ型2の内側面に当接していないので、刃具6が連結部S2に当接すると、その両側の溝S3,S3にせん断力が集中し、溝S3,S3に沿って形材Sが切断されることになる。
【0076】
而して、支持体8を初期位置まで戻すと、連結部S2が切除される結果、形材Sが二つに分離され、独立した二つの曲り部材が得られる。
【0077】
また、形材Sの素となるビレットの材質が全てのビレットで完全に同一にはなり得ず、また、一つのビレットにおいても最初に押し出される部位と中間および最後に押し出される部位によって材質が若干異なること、押出成形時に与えられる熱履歴等が製造ロッドごとに若干異なることなどに起因して、形材の材質が製造ロッドごとに若干変動するので、二つの曲り部材を二つの形材から別々に製造すると、各形材に生じるスプリングバック量が等しくならず、曲り部材ごとに形状(曲率)が変動する虞があるが、本実施形態に係る製造方法によれば、一つの形材Sに二つの長尺製品部S1,S1が含まれているので、各長尺製品部S1に生じるスプリングバック量が略等しくなり、ひいては、一つの形材Sから得られる二つの曲り部材の曲率が略同等になる。
【0078】
曲り部材を直線型1および曲げ型2から取り出す場合には、クランプ用シリンダ88g(
図7参照)のロッドを縮退させる操作を行って、可動ロール5を曲げ型2から離し、手作業で直線型1と曲げ型2とを離間させた後、曲り部材(湾曲した長尺製品部S1,S1)を取り出せばよい。なお、手作業による直線型1と曲げ型2の離間操作は、曲り部材の取り出し作業を容易にするために行われる操作であるから、適宜省略してもよい。
【0079】
曲げ工程と戻し工程とを経て得られた曲り部材(湾曲した長尺製品部S1,S1)の曲率が目標とする曲率と異なる場合には、曲り部材の曲率を矯正する作業を行う。曲率を矯正するには、例えば、曲り部材の適所に集中荷重を加えればよい。なお、一つの形材Sから成形される二つの曲り部材の曲率(戻し工程を終えた時点における長尺製品部S1,S1の曲率)は、略同等になるので、集中荷重を作用させる位置や集中荷重の大きさ等も略等しくなり、したがって、二つの曲り部材を同時に矯正するも可能になる。
【0080】
以上説明した本実施形態に係る曲げ加工装置Bおよびこれを利用した曲り部材の製造方法によれば、一度の曲げ工程で二つの長尺製品部S1,S1を一括して湾曲させることができるので、製造すべき曲り部材の本数よりも曲げ加工の回数を少なくすることが可能となる。また、一対のロール4,5を初期位置に戻す過程で複数の長尺製品部S1,S1を分離するので、次回の曲げ工程(新たな形材に対して行われる曲げ工程)に速やかに移行できる。
【0081】
さらに、本実施形態に係る曲げ加工装置Bおよび曲り部材の製造方法によれば、一つの形材Sに複数の長尺製品部S1,S1が含まれているため、長尺製品部S1,S1に生じるスプリングバック量が略等しくなり、ひいては、二つの曲り部材(湾曲した長尺製品部S1,S1)の曲率が略同等になる。つまり、本実施形態に係る曲げ加工装置Bおよび曲り部材の製造方法によれば、一つの形材Sから曲率が揃った二つの曲り部材を容易に得ることが可能になる。また、曲り部材の曲率を矯正する場合にあっては、二つの曲り部材の曲率を同時に矯正することが可能になるので、これを効率良く行うことが可能になる。
【0082】
また、本実施形態では、形材Sとして、溝S3,S3が形成されたものを使用しているので、連結部S2を容易且つ綺麗に取り除くことができる。
【0083】
本実施形態では、直線型1と曲げ型2とで形材Sが挟持される一対のロール4,5の間に刃具6を配置しているので、切断位置がズレ難くなり、ひいては、加工精度が高いものとなる。
【0084】
本実施形態では、ロール4,5を支持する支持体8に刃具6を搭載しているので、刃具6を直線型1に沿って前進または後進させる刃具専用の駆動手段を設ける必要がない。すなわち、曲げ加工装置Bによれば、ロール4,5の前進または後進に連動して刃具6が前進または後進するので、刃具専用の駆動手段を省略することができ、ひいては、曲げ加工装置Bの簡素化・コストダウンを図ることができる。
【0085】
また、刃具6は、直線型1の内外方向に進退可能であるので、形材Sへの刃具6の当たり具合等を容易に調整することが可能となる。
【0086】
さらに、本実施形態によれば、形材Sの切断部位(凹溝2aに対向する部位)が曲げ型2に支持されない状態になるので、より確実に形材Sを切断することが可能になる。
【0087】
本実施形態では、直線型1および曲げ型2に対してロール4,5を移動させるロール移動タイプの曲げ加工装置Bおよび曲り部材の製造方法を例示したが、
図8(a)〜(c)に示すように、ロール4,5に対して直線型1および曲げ型2を移動させる型移動タイプに対しても本発明を適用することができる。
【0088】
図8(a)〜(c)に示す曲げ加工装置B1も、ロール4,5を支持する支持体(
図5等に示す支持体8と同様のもの)を具備しているが、この支持体は、テーブルに固定されており、前後方向に移動不能である。すなわち、曲げ加工装置B1のロール4,5は、前後方向に移動しない。なお、ロール4,5の少なくとも一方は、駆動手段に接続された駆動ロールであり、この駆動ロールを回転させると、直線型1および曲げ型2がロール4,5の前方ないし後方へ送り出されるようになる。直線型1は、その側方に配した図示せぬガイドローラに沿って前後に移動する。
【0089】
型移動タイプの曲げ加工装置B1を使用した曲り部材の製造方法も、前記した実施形態と同様、形材準備工程、形材配置工程、曲げ準備工程、曲げ工程および戻し工程を備えているが、曲げ工程は、
図8の(b)に示すように、直線型1および曲げ型2をロール4,5の前方へ移動させる工程であり、戻し工程は、直線型1および曲げ型2をロール4,5の後方へ移動させる工程である。
【0090】
なお、曲げ工程は、刃具6を退避ポジションに位置させた状態で行い、戻し工程は、刃具を切断ポジションに位置させた状態で行う。
【0091】
型移動タイプの曲げ加工装置B1およびこれを利用した曲り部材の製造方法においても、一度の曲げ工程で複数の長尺製品部を一括して湾曲させることができるので、製造すべき曲り部材の本数よりも曲げ加工の回数を少なくすることが可能となる。また、一対のロール4,5を初期位置に戻す過程で複数の長尺製品部を分離するので、次回の曲げ工程(新たな形材に対して行われる曲げ工程)に速やかに移行できる。
【0092】
前記した実施形態では、直線型1の内外方向に進退可能な刃具6を例示したが、
図9の(b)および(c)に示す型移動タイプの曲げ加工装置B2のように、直線型1の長手方向に延在し、直線型1に対して相対移動可能な刃具6’を使用してもよい。
【0093】
刃具6’は、帯板状を呈している。刃具6’の先端は、直線型1の後端側から直線型1および曲げ型2の間に挿入されており、かつ、ロール4,5の間に位置している。刃具6’の後端は、図示せぬ治具に固定されている。なお、図示は省略するが、刃具6’は、形材Sの連結部S2(
図10参照)の高さ位置に合わせて配置されている。
【0094】
刃具6’は、曲げ工程が終了した後に
図9の(b)の位置に配置する。而して、刃具6’を取り付けた状態で戻し工程を行うと、刃具6’の先端が形材Sに当接した状態で直線型1が刃具6’に沿って後方に移動し、刃具6’の先端によって形材Sが切断されることになる。
【0095】
曲げ加工装置B2およびこれを利用した曲り部材の製造方法においても、一度の曲げ工程で二つの長尺製品部を一括して湾曲させることができるので、製造すべき曲り部材の本数よりも曲げ加工の回数を少なくすることが可能となる。また、一つの形材Sに二つの長尺製品部が含まれているので、各長尺製品部に生じるスプリングバック量が略等しくなり、ひいては、一つの形材Sから得られる二つの曲り部材の曲率が略同等になる。さらに、一対のロール4,5を初期位置に戻す過程で複数の長尺製品部を分離するので、次回の曲げ工程(新たな形材に対して行われる曲げ工程)に速やかに移行できる。
【0096】
さらに、刃具6’を使用すれば、直線型1のスリットが不要となるので、直線型1の構成がシンプルになる。
【0097】
なお、本実施形態では、一つの形材Sから二つの曲り部材を形成する場合を例示したが、一つの形材から三つ以上の曲り部材を形成することもできる。この場合には、切断箇所数に対応する数の刃具を配置すればよい。
【0098】
また、本実施形態では、長尺製品部S1,S1の形状を上下対称とした場合を例示したが、上下非対称であっても差し支えない。