(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
タービン羽根車(9)を収容する収容空間(14)と、排気ガスがそこを通過して流入する少なくとも1つの流入流路(4)とを有するタービンハウジング(12)を備えており、排気ガスが前記流入流路(4)から、前記流入流路(4)に連通した吹込流路(5)を通って前記収容空間(14)の中へ導流されるようにした、排気ガスターボチャージャーのタービン(10)であって、
前記タービンハウジング(12)に対して相対的に固定されて、少なくともそのガイド部分(30)が前記吹込流路(5)の中へ突出した、排気ガスの流れをガイドするための少なくとも1つのガイド部材(18)を備えており、該ガイド部材(18)は、前記ガイド部分(30)に、前記タービン(10)の軸方向における部分領域である第1長手方向部分(a)を備えており、前記第1長手方向部分(a)における第1ガイドベーン間最小間隙寸法smin_aの方が、前記第1長手方向部分(a)に連なる該ガイド部材(18)の前記ガイド部分(30)の第2長手方向部分(d)における第2ガイドベーン間最小間隙寸法smin_dより小さいことにより、前記ガイド部材(18)は、前記第1長手方向部分(a)における該ガイド部材(18)の空気力学的特性が、前記第2長手方向部分(d)における該ガイド部材(18)の空気力学的特性とは異なるものとされ、
前記第1長手方向部分(a)と前記第2長手方向部分(d)とは移行部分(32)を介して互いに軸方向に連なっており、前記移行部分(32)は、少なくとも部分的に且つ実質的に円弧形に形成された第1輪郭形状部分を有し、
前記移行部分(32)は、前記タービン羽根車(9)に対向して位置している
ことを特徴とするタービン(10)。
前記タービンハウジング(12)に対して相対的に軸方向に移動可能であり、且つ、前記吹込流路(5)の流路断面を最大限に拡開すると共に該流路断面を前記第1長手方向部分(a)と前記第2長手方向部分(d)との両方において開放する開ポジションと、該流路断面を最大限に縮閉すると共に該流路断面を前記第1長手方向部分(a)においてのみ開放する閉ポジションとの間で移動可能であるスライド部材(2)を備えており、該スライド部材(2)が、前記第1長手方向部分(a)によって回転流生成が行われる前記閉ポジションから、前記開ポジションへと移動する際に、前記第1長手方向部分(a)及び前記第2長手方向部分(d)によって前記回転流生成が少なくとも実質的に維持されるようにしたことを特徴とする請求項1記載のタービン(10)。
前記スライド部材(2)は、円弧形の前記移行部分(32)の形状に少なくとも実質的に対応した形状の第2輪郭形状部分を有する端面(44)を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のタービン(10)。
前記第1輪郭形状部分と前記第2輪郭形状部分とは、前記スライド部材(2)が前記閉ポジションにあるときに、少なくとも実質的に互いに重なり合って位置していることを特徴とする請求項3記載のタービン(10)。
前記ガイド部材(18)の前記ガイド部分(30)は、前記吹込流路(5)の全軸方向領域に亘って延在しており、前記スライド部材(2)の移動調節機構を収容するための収容空間(7)から前記流入流路(4)を流路的に区画している前記タービン(10)の中間壁部(46)における内端縁の直径(DT)が、排気ガスが前記ガイド部材(18)へ流入する該ガイド部材(18)の流入直径(DL)より小さいことを特徴とする請求項2〜請求項4の何れか1項記載のタービン(10)。
前記ガイド部材(18)の第2翼形断面の断面積(FB)に対する前記ガイド部材(18)の第1翼形断面の断面積(FA)の比(FA/FB)の逆数(FB/FA)が10%以上で75%以下の値域にあり、前記第2翼形断面は、軸方向に対して少なくとも実質的に垂直に延展する断面であって、前記スライド部材(2)が前記閉ポジションにあるときに該スライド部材(2)によって覆われている前記第2長手方向部分(d)における断面であり、前記第1翼形断面は、軸方向に対して少なくとも実質的に垂直に延展する断面であって、前記スライド部材が前記閉ポジションにあるときに開放されている部分の断面であることを特徴とする請求項2〜請求項5の何れか1項記載のタービン(10)。
少なくとも1つの区画部材(f)を備えており、該区画部材によって前記第1長手方向部分(a)と前記第2長手方向部分(d)とが流体的に互いから区画されていることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1項記載のタービン(10)。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1a】例えば自動車用エンジンなどのエンジンに用いられる排気ガスターボチャージャーのタービンの模式的縦断面図である。
【
図1b】
図1aのタービンの一部分を示した模式的横断面図である。
【
図2】
図1a及び
図1bのタービンに変更を加えた別の構成例に係るタービンの一部分を示した模式的縦断面図である。
【
図3】
図2のタービンに変更を加えた別の構成例に係るタービンの模式的横断面図である。
【
図4】
図2のタービンにおける回転流の生成強度と軸方向に移動可能なスライド部材の移動量との関係を示したグラフである。
【
図5】a及びbは、
図2のタービンの一部分を示した模式的縦断面図である。
【
図6】a及びbは、
図5a−bのタービンに変更を加えた別の構成例に係るタービンの一部分を示した模式的縦断面図である。
【
図7a】
図1aのタービンの別の実施形態に係るタービンの模式的縦断面図である。
【
図7b】
図7aのタービンの一部分を示した別の模式的縦断面図である。
【
図7c】
図7a及び
図7bのタービンのガイドバッフルの模式的斜視図である。
【
図8a】
図7cの実施形態に係るガイドバッフルの模式的縦断面図である。
【
図8b】
図7cの実施形態に係るガイドバッフルの模式的縦断面図である。
【
図8c】
図8a及び
図8bのガイドバッフルの一部分を示した模式的平面図である。
【
図9】
図8a〜
図8cのガイドバッフルのガイドベーン間距離と、タービンの吹込流路からタービン羽根車を収容する収容空間へ排気ガスが流入する際に通過する
図7a〜
図7cのタービンのノズルの幅寸法との関係を示したグラフである。
【
図10】
図7a〜
図7cのタービンの別の実施形態に係るタービンの一部分を示した模式的縦断面図である。
【
図11】
図7cのガイドバッフルの一部分を示した模式的平面図である。
【
図12】
図7aのタービンの別の実施形態に係るタービンの一部分を示した模式的縦断面図である。
【
図13】
図12のタービンの別の実施形態に係るタービンの一部分を示した模式的縦断面図である。
【
図14】
図12のタービンの一部分を示した模式的縦断面図である。
【
図15】
図14のタービンの一部分を示した
図14の切断線X−Xに沿った模式的横断面図である。
【
図16】
図14のタービンの一部分を示した別の模式的縦断面図である。
【
図17】
図16のタービンの一部分を示した
図16の切断線X2−X2に沿った模式的横断面図である。
【
図18】
図7aのタービンの別の実施形態に係るタービンの一部分を示した模式的縦断面図である。
【
図19】
図18のタービンのガイドバッフルの模式的斜視図である。
【
図20】
図19のガイドバッフルの別の実施形態に係るガイドバッフルの一部を示した模式的縦断面図である。
【
図24a】
図21のガイドバッフルの別の実施形態に係る模式的斜視図である。
【
図25a】
図7aのタービンの別の実施形態に係る模式的縦断面図である。
【
図26a】
図24aのガイドバッフルの別の実施形態に係る模式的斜視図である。
【
図27】
図26a及び
図26bのガイドバッフルを備えた、
図7aのタービンの別の実施形態に係るタービンの一部分を示した模式的縦断面図である。
【
図28a】
図26aのガイドバッフルの別の実施形態に係る模式的斜視図である。
【
図28b】
図28aのガイドバッフルの芯合せのためのセンタリング部材の模式的斜視図である。
【
図29】
図28bのセンタリング部材と
図28aのガイドバッフルとを備えた、
図7aのタービンの別の実施形態に係るタービンの一部分を示した模式的縦断面図である。
【
図30】
図28aのガイドバッフルの別の実施形態に係る模式的斜視図である。
【
図31】
図28bのセンタリング部材に変更を加えた別の実施形態に係る模式的斜視図である。
【
図32】
図30のガイドバッフルと
図31のセンタリング部材とを備えた、
図7aのタービンの別の実施形態に係るタービンの一部分を示した模式的縦断面図である。
【
図33】
図32のタービンの別の実施形態に係るタービンの一部分を示した模式的縦断面図であり、センタリング部材を断熱部材として形成したものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1aに示したのは、自動車用エンジンに用いられる排気ガスターボチャージャーのタービン10である。タービン10はタービンハウジング12を備えており、タービンハウジング12は収容空間14を有する。収容空間14にはタービン10のタービン羽根車9が収容されており、このタービン羽根車9は回転軸16を中心としてタービンハウジング12に対して相対回転可能である。タービン10は、複数のガイドベーン18を有するガイドバッフル1を備えており、このガイドバッフル1はタービン10の軸受ハウジング側に配設されている。
【0018】
タービンハウジング12は更に、エンジンの排気ガスがそこを通過して流入する流入流路4を有する。この流入流路4は渦巻形流路とも呼ばれ、タービン羽根車9の外周に沿って、少なくとも実質的に渦巻形を成して、タービン羽根車9の周方向に延在している。この流入流路4に、吹込流路5と呼ばれる流路が連通している。流入流路4を通過して流入してきた排気ガスは、吹込流路5を通って収容空間14の中へ導流され、即ちタービン羽根車9の中へ導流されるようにしてある。吹込流路5はノズルとも呼ばれる。タービン10の流入圧特性は、吹込流路5の実効流路断面積に応じて決まり、即ち、吹込流路5のノズル幅bの大きさに応じて決まる。
【0019】
そのため、このタービン10は、吹込流路5の実効流路断面積を変化させる調節を行えるように構成されている。その調節のために、タービン10は軸方向スライド部材2を備えており、この軸方向スライド部材2に嵌合部材3が取付けられている。ガイドベーン18はこの嵌合部材3の中に嵌合可能である。
【0020】
軸方向スライド部材2は、タービンハウジング12に対して相対的に、タービン10の軸方向に移動可能であり、且つ、吹込流路5の実効流路断面を最大限に縮閉する閉ポジション(第1終端ポジション)と、吹込流路5の実効流路断面を最大限に拡開する開ポジション(第2終端ポジション)との間で移動可能である。軸方向スライド部材2を移動させてタービン10の流入圧特性を変化させるために、移動調節機構6が備えられており、この移動調節機構6は、収容空間7の中に収容されている。
【0021】
タービン10の動作中に、軸方向スライド部材2の移動調節を確実に行えるようにするために、ガイドバッフル1と嵌合部材3との間に(即ち、ガイドベーン18と嵌合部材3との間に)、遊びのための環状の間隙8が確保されている。しかるに、この遊びのための環状の間隙8が存在することから、ガイドバッフル1において二時流れ損失が発生している。即ち、排気ガスの流れはガイドバッフル1によって(即ち、ガイドベーン18によって)タービン羽根車9へ向かうように正しく方向付けられるのが望ましい状態であるにもかかわらず、排気ガスのうちの一部分が、この遊びのための環状の間隙8を通って流れるために、タービン羽根車9へ向かうように正しく方向付けられないのである。これによって、タービン羽根車9への流入状態が不適切となることから、必然的にタービン効率の低下という不都合な結果を招き、特に軸方向スライド部材2が閉ポジションにあるときのように、タービンを流れる排気ガス流量が小さい動作領域において、そのようなタービン効率の低下が発生しがちである。
【0022】
複数のガイドベーン18が形成されているガイドバッフル1は、いわば回転流生成器であり、主としてそのガイドベーン18によって、タービン羽根車9への流入領域に流入回転流を生成するものである。こうすることで、排気ガスをタービン羽根車9へ特に効率的に流入させることができる。もし、排気ガスがガイドバッフル1を通過する際に、流入回転流を生成できなかったならば、それによって、タービン10の効率的動作に悪影響がもたらされる。
【0023】
基本的に、以上に説明したような、ガイドバッフル1と嵌合部材3とを備えた排気ガスガイド機構では、オットーエンジンの場合には特に高温となる動作温度にも確実に対処できるようにすると同時に、二時流れ損失という形の損失を小さな限界値以下に抑え得るようにするためには、製作技術上の厳しい要求条件にさらされることになる。
【0024】
更に、吹込流路5の流路断面積を調節する上では、ガイドバッフル1の、タービン10の径方向における両側(外周側及び内周側)を嵌合部材3によって覆うのではなく、ガイドベーン18の片側だけを、好ましくは、排気ガスの流れ方向においてタービン羽根車9のすぐ上流側に相当するガイドベーン18の一側だけを覆うような覆い部材を用いることが望ましい。そうすることで、遊びのための間隙8は不要となり、二時流れ損失の発生を回避すること、ないしは少なくとも小さく抑えることが可能になる。
【0025】
図2に示したのは、そのように変更を加えた別の構成例に係るタービン10であり、このタービン10は軸方向スライド部材2を備えている。ただしこのタービン10は、複数のガイドベーン18を有するガイドバッフル1を備えてはいない。また、軸方向スライド部材2にもガイドベーンは形成されていない。また、
図2には吹込流路5のノズル幅bを図示してある。更に、
図2には渦巻形流路4の喉部流路断面積A
Sを図示してある。
【0026】
ここで、
図3に示した速度三角形を併せて参照すれば明らかなように、
図2のタービン10では、タービン羽根車9へ流入する排気ガスの流入回転流の強度がノズル幅bの大きさに対する強い依存性を有しており、またオイラーのターボ機械方程式によって示される関係が存在するため、その依存性によって、ノズル幅bが小さいときにはタービン出力ないしタービン効率が極端に低下するという問題が生じる。
【0027】
比仕事量に関して、オイラーのターボ機械方程式によれば、下記の2つの式が与えられる。
【0030】
これらの式から分かるように、渦巻形流路4が生成する回転流の強度は、即ち、渦巻形流路4が排気ガスの流れに付与する周方向運動成分c
1uの大きさは、渦巻形流路4の寸法形状パラメータである喉部の流路断面積A
Sの値とその図心半径R
Sの値とに応じたものとなり、また更に、ノズル幅bの大きさに応じたものとなる。
【0031】
このことは特に
図4から明らかである。
図4に示した第1グラフ20において、第1横座標軸22はノズル幅bを表しており、その値は第1矢印24に示した方向に大きくなる。この第1グラフ20の第1縦座標軸26は角度α
1を表しており、その値は第2矢印28に示した方向に大きくなる。軸方向スライド部材2が
図2に示したように閉ポジションにあるときには、ノズル幅bは小さくなっている。角度α
1は大きくなっており、そのため周方向運動成分c
1uは小さくなっている。従って、もしガイドバッフル1を備えていなければ、このとき、タービン出力ないしタービン効率は低下している。
【0032】
これとは逆に、軸方向スライド部材2が開ポジションにあるときには、ノズル幅bは大きくなっている。角度α
1は小さくなっており、そのため周方向運動成分c
1uは大きくなっている。このことは、渦巻形流路4によって排気ガスの流れの偏向が適切になされていることを意味しており、それゆえ、ガイドバッフル1によって排気ガスの流れを更に偏向する必要はない。
【0033】
以上を換言するならば、軸方向スライド部材2の開度が小さいときには、ガイドバッフル1によって排気ガスの流れを偏向するのが適当である。これとは逆に、軸方向スライド部材2の開度が大きいときには、ガイドバッフル1の上流側に位置する渦巻形流路4だけで回転流を生成することができる。
【0034】
ノズル幅bの大きさと回転流の生成との間に存在する以上に説明した関係を、より明らかにするために、
図5a及び
図5bに、一般的な構成のタービンにおける制御用スライド部材の移動範囲と終端ポジションとを図示した。
【0035】
以上に説明した関係が存在することから、次のような構成とすることが考えられ、それは、制御用スライド部材が一方の終端ポジションである閉ポジションにあるときにのみ、回転流の生成の全てがガイドバッフルによって行われ、ガイドバッフルに当接していた制御用スライド部材の端面が、そこから離れて移動しはじめたならば、回転流の生成が渦巻形流路によって行われるような構成例である。
【0036】
しかるに、かかる構成例とした場合には、軸方向スライド部材2が閉ポジションから離れるときのタービン10の挙動が、即ち、軸方向スライド部材2が閉ポジションから開ポジションへ向かって移動を開始したときの少なくとも実質的にその直後のタービン10の挙動が、問題となる。即ち、そのとき、流入回転流の強度が低下し、またひいてはタービン出力が低下する。なぜならば、その時点では軸方向スライド部材2の開度はまだ小さいため、ノズル幅bもまだ小さく、適切且つ十分な大きさの周方向運動成分c
1uを付与できるほどのノズル幅bにはまだ達していないからである。
【0037】
この点について
図6a及び
図6bを参照して説明する。これらの図に示した構成では、ガイドバッフル1のガイドベーン18は、吹込流路5の中へ部分的にのみ突出している。軸方向スライド部材2が閉ポジションにあるとき、排気ガスはガイドベーン18の周囲だけを流れている。軸方向スライド部材2が、この閉ポジションからいずれかの開ポジションへ移動したならば、そこではノズル幅bが閉ポジションのときより広いため、吹込流路5のうちのガイドベーンが突出していない領域までもが開放される。そのため排気ガスの中には、ガイドベーン18によって方向付けられる排気ガスばかりでなく、ガイドベーン18によって方向付けられることなく、渦巻形流路4によって回転流とされただけでタービン羽根車9へ流入する排気ガスも含まれるようになる。
【0038】
図7a〜
図7cに示したのは、以上に説明した流入回転流の強度の低下並びにそれに伴うタービン出力の低下を回避することができ、もしくはそれらの低下を少なくとも非常に小さく抑えることができる実施形態である。
【0039】
特に
図7bから明らかなように、タービン10はタービンハウジング12に対して相対的に固定されたガイドバッフル1を備えており、このガイドバッフル1は複数のガイドベーン18を有する。各々のガイドベーン18は、そのガイド部分30(排気ガスの流れをガイドする部分)が吹込流路5の中へ突出しており、それによって排気ガスの流れを偏向する機能を、即ち回転流を生成する機能を提供するものとなっている。
【0040】
ガイドベーン18は、タービン10の軸方向における部分領域であるところの、このタービン10の軸受ハウジング側から延出している第1長手方向部分aと、この第1長手方向部分aに連なる第2長手方向部分dとを備えている。それら長手方向部分a、dは、各々が軸方向に延在しており、且つ、互いに軸方向に連なっている。更に、ガイドベーン18は、第1長手方向部分aにおけるこのガイドベーン18の空気力学的特性が、第2長手方向部分dにおけるこのガイドベーン18の空気力学的特性とは異なるものとされている。即ち、ガイドベーン18は、その空気力学的特性が、第1長手方向部分aと第2長手方向部分dとで異なるものとされている。
【0041】
第1長手方向部分a及び第2長手方向部分dの夫々の軸方向延在範囲は、軸方向スライド部材2が
図7bに示した閉ポジションにあるときに、即ち、軸方向スライド部材2がガイドベーン18の軸方向移動ストッパ部cに当接しているときに、タービン10が装備されるエンジンが必要とするタービン10の最小排気ガス流量が確保されるように定められている。軸方向スライド部材2が閉ポジションにあるときには、渦巻形流路4からタービン羽根車9へ流入する排気ガスは、第1長手方向部分aの周囲だけを通過して流れている。即ち、軸方向スライド部材2が閉ポジションにあるときには、タービン羽根車9へ流入する流入回転流は第1長手方向部分aだけによって生成されており、このときの流れ特性は、二時流れ損失を伴わない少なくとも実質的に理想的な特性となっている。
【0042】
一方、第2長手方向部分dが提供する機能は、軸方向スライド部材2がストッパ部cから離れるときに、即ち、軸方向スライド部材2が閉ポジションから、第1長手方向部分aに加えて第2長手方向部分dも少なくとも部分的に開放される開ポジションへ移動するときに、流入回転流を適切な状態に維持し続けることによって、上で説明した効率及び出力の低下を小さく抑え、もしくは完全に回避することにある。
【0043】
図7cから明らかなように、ガイドベーン18は、その周方向延在寸法(幅寸法)が、第1長手方向部分aと第2長手方向部分dとでは異なっている。より詳しくは、ガイドベーン18の周方向延在寸法は、第2長手方向部分dにおける寸法の方が、第1長手方向部分aにおける寸法より小さくされている。
【0044】
図8a〜
図8c及び
図9から明らかなように、ガイドベーン18は、第1長手方向部分aと第2長手方向部分dとでは、そのガイドベーン間最小間隙寸法s
minが異なっている。第1長手方向部分aにおける第1ガイドベーン間最小間隙寸法s
min_aの方が、第2長手方向部分dにおける第2ガイドベーン間最小間隙寸法s
min_dより小さい。これによって、ガイドバッフル1の実効流路断面積が、軸方向スライド部材2の移動量に応じて決まるノズル幅bと、ガイドベーン間最小間隙寸法s
minとの、2つの寸法形状パラメータにより決定されるようになっている。軸方向スライド部材2の移動範囲の全域において良好なタービン特性が得られるようにする(即ち、顕著な効率低下が生じないようにする)ためには、第1長手方向部分aと第2長手方向部分dとの間の移行部分の形状をできるだけ滑らかな形状として、例えば第1長手方向部分aから第2長手方向部分dへの移行に際して、ガイドベーン間最小間隙寸法s
minが急激に変化すること、またはステップ状に変化することなどがないようにしておくことが好ましい。
【0045】
そうするためには、
図8bに示したように、第1長手方向部分aと第2長手方向部分dとの間の移行部分32にアールRを付けて、この移行部分32が、少なくとも実質的に円弧形に形成された部分を有するようにするとよい。また、別の好適な実施形態として、この移行部分32が、楕円形の円弧形の形状に形成された部分を有するようにするのもよい。
【0046】
図9に示した第2グラフ34は、ノズル幅bの変化に対する、ガイドベーン間最小間隙寸法s
minの変化を定性的に示したグラフである。第1変化曲線36によってその変化特性が示された、第1長手方向部分aと第2長手方向部分dとの間での移行に伴うステップ状の変化は、ガイドベーン間最小間隙寸法s
minの急変によるものである。ガイドベーン18にアールRを付けることによって、それら2つの長手方向部分a、dの間でのガイドベーン間最小間隙寸法s
minの変化を滑らかにすることができる。第3矢印38は、アールRを次第に大きくすることによって、第1変化曲線36からその他の変化曲線40へと変化特性が移行して行くことを示している。第4矢印42は、これとは逆に、アールRを次第に小さくすることによって、その他の変化曲線40から第1変化曲線36へと特性変化が移行して行くことを示している。
【0047】
図10に示したように、軸方向スライド部材2の端面44にも、アールR2を付けてある。これによって軸方向スライド部材2の端面44は、少なくとも実質的に円弧形の形状に形成されており、この円弧形は正円形の円弧形としてもよく、楕円形の円弧形としてもよい。上で言及したガイドベーン18のアールRと、この軸方向スライド部材2のアールR2とは、寸法形状を同一とすることが好ましい。そして、軸方向スライド部材2が閉ポジションにあってストッパ部cに当接しているときには、即ち、タービン10が縮閉されているときには、それら2つのアールR、R2が、少なくとも実質的に互いに重なり合って位置しているようにするとよい。
【0048】
次に
図11〜
図13を参照して、第2長手方向部分dの軸方向延在寸法、即ち長さの好適な定め方について説明する。排気ガスが渦巻形流路4からガイドバッフル1へ流出する移行領域におけるノズル幅である渦巻形流路ノズル幅b
Voluteの大きさは、渦巻形流路4に関する比の値A
S/R
Sの設計値と、タービンを装備しようとするエンジンに応じて与えられる閉ポジションに関連した第1長手方向部分aの軸方向延在寸法(長さ)の値とから得られる。そこで、第2長手方向部分dの長さを定める際には、この渦巻形流路ノズル幅b
Voluteの大きさを、渦巻形流路4から流出する排気ガスの流出角である角度α
1を予め設定可能な最大値とすることができるような大きさに定めることが好ましい。換言するならば、渦巻形流路ノズル幅b
Voluteの大きさを、25°以下の範囲内である角度α
1を、その最大角度である25°とすることができるような大きさに定めるということである。特に、
図12に示したように、渦巻形流路4を移動調節機構収容室から流路的に区画している区画壁46の内端縁直径D
Tが、ガイドバッフル1の流入直径D
L以上の大きさである場合に、このようにするとよい。こうすることで特に、第2長手方向部分dの軸方向延在寸法を最小寸法d
minにすることができる。
【0049】
第2長手方向部分dの長さのまた別の定め方として、
図13に示した構成例のように、ノズル幅bの全体に亘って、即ち渦巻形流路ノズル幅b
Voluteの端から端まで、ガイドベーン18の前縁により被われるようにその長さを定めるのもよい。このようにすることで、区画壁46の径方向の内端縁の直径D
Tを比較的小さくすることができ、ガイドバッフルの流入直径D
Lより小さくすることも可能となる。また、このようにすることで、第2長手方向部分dにおけるガイドベーン18の端面を、区画壁46の表面と同一面上に位置するようにすること、即ち、少なくとも実質的に隣接させることが可能となり、それによって、遊びのための間隙eを、第2長手方向部分dにおける二時流れ損失を回避、もしくは非常に小さく抑えることができるほどに小さくすることが可能となる。
【0050】
これによって特に、第2長手方向部分dの軸方向延在寸法を最大寸法d
maxにすることができる。第1長手方向部分aと第2長手方向部分dとで寸法形状が異なるこのガイドバッフル1の更なる寸法形状パラメータとして、ガイドベーン18の第2長手方向部分dの延在領域における基本翼形に関する、回転流を維持できるようにするための、ある比率を示す値がある。
【0051】
その比率の値とは、
図15に示した第1面積FAの、
図17に示した第2面積FBに対する比の逆数である。ここで、第1面積FAとは、第1長手方向部分aの全領域において用いられている翼型の、少なくとも実質的に軸方向に対して垂直な断面における輪郭線に囲まれた面積であり、排気ガスはこの翼型断面の輪郭線に沿って流れる。また、第2面積FBとは、第2長手方向部分dにおける翼形の輪郭線に囲まれた面積であり、この第2長手方向部分dの翼型は軸方向スライド部材2によって覆われているか、または作動時に軸方向スライド部材2によって覆われるものである。また、FBに対するFAの比の逆数は、FB/FAであり、このFB/FAの値を10%以上で75%以下の値域に含まれる値とすることが好ましい。
【0052】
図18に示したタービン10は、第1長手方向部分aと第2長手方向部分dとを流路的に区画する区画部材fを備えている。また、この区画部材fの、軸方向スライド部材2に対向している方の側面は、軸方向スライド部材2が閉ポジションにおいて当接するストッパ部cの機能を提供している。
【0053】
動作点ないし動作領域が変化したときには、特に気体力学的な力のために、この区画部材fにタービンの流出口へ向かう軸方向の力が作用する、特に、軸方向スライド部材2がストッパ部cから離れて閉ポジションから開ポジションへの移動を開始した直後に、そのような力が作用する。それゆえこの区画部材fは、その軸方向位置が、第1長手方向部分aと第2長手方向部分dとの間の移行部の位置に固定されることが好ましい。
【0054】
また、そうするためには、例えば溶接法などの接合法を用いて、この区画部材fをガイドバッフル1に、及び/または、個々のガイドベーン18に固定するとよい。
【0055】
また、別法として、ガイドバッフル1に、また特にガイドベーン18に、回転加工法を用いて溝48を形成し、この区画部材fをその溝48に係合させることによって、この区画部材fの軸方向位置を固定するのもよい。
【0056】
図20〜
図23には、その種の溝48として、複数のガイドベーン18の夫々に溝を形成して、それらの全体として周溝48を構成するようにしたものを示した。この周溝48は、2つの長手方向部分a、dの間の移行部分の真上に位置している。区画部材fには、ガイドベーン18が嵌合するガイドベーン嵌合部が形成されると共に、係合環状部D
Eが形成されており、組立時には、区画部材fのこの係合環状部D
Eを周溝48に係合させるようにする。
【0057】
図26a、
図26b、及び
図27は、ガイドバッフル1を吹込流路5に対して芯合せ(センタリング)するための1つの構成例を示す。その芯合せのためにセンタリング部材50が備えられており、このセンタリング部材50には、第1長手方向部分aとの芯合せするための第1芯合せ環状部D
Zaが形成されている。
【0058】
タービンハウジング12上の、芯合せ部材50と対向する位置に、同様の第2芯合せ環状部D
Zdが形成されており、この第2芯合せ環状部に対して第2長手方向部分dが芯合せされる。ガイドバッフル1のガイドベーン18には、それら第1及び第2芯合せ環状部に対応した形状の段部、凹部、等々を形成し、それらによって、第1及び第2長手方向部分a、dに対する芯合せがなされるようにすればよい。
【0059】
図28a、
図28b、及び
図29に示した構成例では、幾つかのガイドベーン18の先端面にセンタリング突起52を形成してあり、それらセンタリング突起52が、軸受ハウジング側に装着されたセンタリング部材50のセンタリング孔54と協働することで、芯合せがなされるようにしたものである。
【0060】
図30〜
図32に示した構成例も、同様に、センタリング部材50を用いてガイドバッフル1の芯合せを行うものであるが、ただし、互いに向かい合ったガイドバッフル1のガイドベーン18の先端面と、センタリング部材50とが協働することで、芯合せがなされるようにしたものである。各々のガイドベーン18の先端面は、径方向に対して傾斜して延展している。図中にセンタリング角度βで示したように、各々のガイドベーン18の先端面は、軸方向に対して75°以上の角度を成すようにするとよい。また、図中の力の矢印Fは、ガイドバッフル1を吹込流路5の内壁へ押付けてその位置に固定保持する力の、その大きさと方向とを示したものである。
【0061】
図33に示した構成例は、センタリング部材50を、タービンハウジング12から軸受ハウジングの中へ不都合なほど高い熱が伝達するのを防止する断熱部材として形成したものである。このように機能統合を行うことで、タービン10の部品点数を削減し、重量を軽減し、コストを低減することが可能となる。