特許第5989132号(P5989132)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5989132切削工具および切削工具から切削インサートを取り出す方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989132
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】切削工具および切削工具から切削インサートを取り出す方法
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/16 20060101AFI20160825BHJP
   B23B 27/04 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   B23B27/16 B
   B23B27/04
【請求項の数】22
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-549634(P2014-549634)
(86)(22)【出願日】2012年12月5日
(65)【公表番号】特表2015-503456(P2015-503456A)
(43)【公表日】2015年2月2日
(86)【国際出願番号】IL2012050509
(87)【国際公開番号】WO2013102893
(87)【国際公開日】20130711
【審査請求日】2015年10月21日
(31)【優先権主張番号】61/582,763
(32)【優先日】2012年1月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】ヘクト,ギル
【審査官】 山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−343304(JP,A)
【文献】 特開昭60−177803(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0062640(US,A1)
【文献】 特表2004−516157(JP,A)
【文献】 米国特許第5899643(US,A)
【文献】 特表2001−517555(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第1107767(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/16,27/04,
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダーブレード(24、124)と、前記ホルダーブレード(24、124)内に弾性的にクランプされる切削インサート(22、122)とを含み、前記ホルダーブレード(24、124)が本体部(56)と保持部(58)とを有し、前記保持部(58)が2つの対向する側面(60)を有する切削工具(20、120)であって、
前記ホルダーブレード(24、124)のホルダー前端面(62)に開口し、前後方向(D、D)に延在するホルダー長手軸(B)を有するインサート受けスロット(42)と、
ホルダー通路軸(A)に沿って延在し、前記2つの側面(60)のうちの少なくともひとつに開口するホルダー通路(66)であって、前記ホルダー通路軸(A)がホルダー通路中心点(C)を含んでいるホルダー通路(66)と、を含み、
前記インサート受けスロット(42)は、上方向(U)に面するベースあご下面(64)を有し、前記ベースあご下面(64)は、少なくともひとつの長手方向に延在するベースあごクランプ部(78)を含み、各ベースあごクランプ部(78)は、前記ホルダー長手軸(B)と平行なホルダー仮想直線(L1、L2)を含んでおり、
前記ホルダー通路中心点(C)は、前記ベースあご下面(64)から下方に位置しており、
前記切削インサート(22、122)は、前記ホルダー長手軸(B)と平行なインサート長手軸(A)を有しており、
対向するインサート上下面(28、30)をそれらの間に延在する周面(32)と共に含み、前記インサート上面(28)と結合する切刃(34)を含み、前記周面(32)は2つの対向する外側面(36)を含み、
インサート通路(38)は、インサート通路軸(A)に沿って延在し、前記対向する外側面(36)に開口し、前記インサート通路軸(A)は、インサート通路中心点(C)を含み、
インサート下面(30)は、少なくともひとつの長手方向に延在する下側クランプ部(52)を含み、各下側クランプ部(52)は、前記インサート長手軸(A)と平行なインサート仮想直線(L1、L2)を含み、
少なくともひとつの下側クランプ部(52)は、前記少なくともひとつのベースあごクランプ部(78)とクランプ接触状態にあり、前記切削インサート(22、122)は、前記インサート受けスロット(42)内の最後部位置に位置しており、組付状態を画成しており、
前記ホルダー通路軸(A)および前記インサート通路軸(A)を含む通路平面(P1)は、前記インサート長手軸(A)と垂直で、前記インサート通路軸(A)を含む主平面(P2)と第1の角度(α)を形成しており、
前記第1の角度(α)は、60°以下である、
切削工具。
【請求項2】
前記第1の角度(α)は、30°以下である、
請求項1に記載の切削工具(20、120)。
【請求項3】
前記ホルダー通路軸(A)は、前記インサート通路軸(A)の前方にある、
請求項1または2に記載の切削工具(20、120)。
【請求項4】
前記ホルダー通路(66)は、両側面(60)の間に延在し、それらに開口する、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の切削工具(20、120)。
【請求項5】
正確にひとつのインサート通路(38)が存在する、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の切削工具(20、120)。
【請求項6】
前記ホルダー通路(66)は、ホルダー通路角度(β)に対する実質的に一定の半径を有するホルダー湾曲部(76)を含み、
前記インサート通路(38)は、インサート通路角度(β)に対する実質的に一定の半径を有するインサート湾曲部(54)を含み、
両ホルダーおよびインサート通路角度(β、β)は、90°よりも大きい、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の切削工具(20、120)。
【請求項7】
前記ベースあご下面(64)は、2つのベースあごクランプ部(78)を有しており、
前記2つのそれぞれのホルダー仮想直線(L1、L2)は、同軸である、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の切削工具(20、120)。
【請求項8】
前記インサート通路(38)は、前記インサート下面(30)に開口し、インサート通路最上方点(48)を有する、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の切削工具(20、120)。
【請求項9】
前記主平面(P2)と同一平面または平行な第3の平面(P3)は、前記インサート通路最上方点(48)を含み、前記切削インサートの側面図において、交点(55)で前記インサート上面(28)と交差し、
前記第3の平面(P3)において測定した前記切削工具(20、120)の側面図において、前記インサート通路最上方点(48)と前記最下方インサート仮想線(L1、L2)との間の通路高さ(h1)は、前記交点(55)と前記最下方インサート仮想線(L1、L2)との間のインサート高さ(h2)の大きさの少なくとも4分の1である、
請求項8に記載の切削工具(20、120)。
【請求項10】
前記インサート下面(30)は、2つの下側クランプ部(52)を有しており、
前記2つのそれぞれのインサート仮想直線(L1、L2)は、同軸である、
請求項1〜9のいずれか一項に記載の切削工具(20、120)。
【請求項11】
前記インサート受けスロット(42)は、前記ベースあご下面(64)に向かって面するクランプあご上面(80)を含む、
請求項1〜10のいずれか一項に記載の切削工具(20、120)。
【請求項12】
前記インサート通路(38)および前記ホルダー通路(66)は、占有されていない、
請求項1〜11のいずれか一項に記載の切削工具(20、120)。
【請求項13】
前記インサート通路(38)および前記ホルダー通路(66)は、インサート通路最前方点(44)およびホルダー通路最前方点(68)において連続していない、
請求項1〜12のいずれか一項に記載の切削工具(20、120)。
【請求項14】
切削インサート(22)は、前記主平面(P2)を中心として鏡面対称を呈する、
請求項1〜13のいずれか一項に記載の切削工具(20)。
【請求項15】
前記切削工具(20)の側面図において、前記ホルダー通路(66)は、円形である、
請求項1〜14のいずれか一項に記載の切削工具(20)。
【請求項16】
前記ホルダー通路(66)は、前記ベースあご下面(64)に開口する、
請求項8に記載の切削工具(120)。
【請求項17】
前記主平面(P2)は、前記ホルダー通路(66)と交差する、
請求項1〜16のいずれか一項に記載の切削工具(120)。
【請求項18】
前記ホルダー通路最前方点(68)は、前記インサート通路最前方点(44)の前方に位置する、
請求項13に記載の切削工具(120)。
【請求項19】
切削インサート(24、124)を取り出しキー(26)によって切削工具(20、120)から取り出す方法であって、
前記切削工具(20、120)は、請求項1〜18のいずれか一項に記載のものであり、
前記インサート受けスロット(42)は、前記ベースあご下面(64)に向かって面するクランプあご上面(80)を含み、
前記切削インサート(22、122)は、前記クランプあご上面(80)と前記ベースあご下面(64)との間で弾性的にクランプされており、
前記取り出しキー(26)は、少なくともひとつの突出部(40)を有し、前記少なくともひとつの突出部(40)は、第1および第2の係合部(82、84)および単一の枢軸(AP)を含んでおり、
前記取り出しキー(26)を、前記第1および第2の係合部(82、84)がそれぞれ、前記ホルダー通路(66)および前記インサート通路(38)に同時に係合されるように、前記切削工具(20、120)に関して位置決めし、前記枢軸(AP)が、前記ホルダー通路(66)内に位置するステップと、
前記取り出しキー(26)を、前記枢軸(AP)を中心として一方向に回転して、取り出し力(FE)を前方向(DF)で前記切削インサート(22、122)に印加するステップと、を含む、
方法。
【請求項20】
前記枢軸(A)は、前記ホルダーおよびインサート通路軸(A、A)と平行である、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第2の係合部(84)と前記ベースあご下面(64)または前記ホルダー通路(66)との間の抵抗接触が、更なる回転を妨げるまで、前記枢軸(A)を中心として前記取り出しキー(26)を回転することを含む、
請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記切削インサート(22、122)が、それ以上、前記保持部(58)に弾性的にクランプされなくなるまで、前記枢軸(A)を中心として前記取り出しキー(26)を回転することを含む、
請求項19または21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
[001]本出願の主題は、切削インサートが弾性クランプ力によりホルダーブレードに着脱自在に固定される種類の溝入および突切切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
[002]切削インサートが弾性クランプ力によりホルダーブレードに着脱自在に固定される溝入および突切用切削工具は、キーを用いてホルダーブレードから取り出すことができる。
【0003】
[003]かかるクランプ機構の実施例は、米国特許第7524147号に開示されている。
【0004】
[004]かかる切削インサートおよびキーの実施例は、米国特許第7331096号、第5795109号、第6454498号、および第6565292号に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[005]本出願の主題の目的は、切削インサートをホルダーブレードのインサート受けポケット内で弾性的にクランプする改良された手段を有する切削工具を提供することにある。
【0006】
[006]また、本出願の主題の目的は、切削インサートをホルダーブレードから取り出す改良された手段を持つ切削工具を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
[007]本出願の主題によれば、切削工具が提供され、ホルダーブレードと、ホルダーブレード内に弾性的にクランプされる切削インサートとを含み、ホルダーブレードが本体部と保持部とを有し、保持部が2つの対向する側面を有する切削工具であって、
ホルダーブレードのホルダー前端面に開口し、前後方向に延在するホルダー長手軸を有するインサート受けスロットと、
ホルダー通路軸に沿って延在し、2つの側面のうちの少なくともひとつに開口するホルダー通路であって、ホルダー通路軸がホルダー通路中心点を含んでいるホルダー通路と、を含み、
インサート受けスロットは、上方向に面するベースあご下面を有し、ベースあご下面は、少なくともひとつの長手方向に延在するベースあごクランプ部を含み、各ベースあごクランプ部は、ホルダー長手軸と平行なホルダー仮想直線を含んでおり、
ホルダー通路中心点は、ベースあご下面から下方に位置しており、
切削インサートは、ホルダー長手軸と平行なインサート長手軸を有しており、
対向するインサート上下面をそれらの間に延在する周面と共に含み、インサート上面と結合する切刃を含み、周面は2つの対向する外側面を含み、
インサート通路は、インサート通路軸に沿って延在し、対向する外側面に開口し、インサート通路軸は、インサート通路中心点を含み、
インサート下面は、少なくともひとつの長手方向に延在する下側クランプ部を含み、各下側クランプ部は、インサート長手軸と平行なインサート仮想直線を含み、
少なくともひとつの下側クランプ部は、少なくともひとつのベースあごクランプ部とクランプ接触状態にあり、切削インサートは、インサート受けスロット内の最後部位置に位置しており、組付状態を画成しており、
ホルダー通路軸およびインサート通路軸を含む通路平面は、インサート長手軸と垂直で、インサート通路軸を含む主平面と第1の角度を形成しており、
第1の角度は、60°以下である。
【0008】
[008]また、本出願の主題によれば、切削インサートを取り出しキーによって切削工具から取り出す方法が提供され、
インサート受けスロットは、ベースあご下面に向かって面するクランプあご上面を含み、
切削インサートは、クランプあご上面とベースあご下面との間で弾性的にクランプされており、
取り出しキーは、少なくともひとつの突出部を有し、少なくともひとつの突出部は、第1および第2の係合部および単一の枢軸を含んでおり、
前記方法は、
取り出しキーを、第1および第2の係合部がそれぞれ、ホルダー通路およびインサート通路に同時に係合されるように、切削工具に関して位置決めし、枢軸が、ホルダー通路内に位置するステップと、
取り出しキーを、枢軸を中心として一方向に回転して、取り出し力を前方向で切削インサートに印加するステップと、を含んでいる。
【0009】
図面の簡単な説明
[009]本出願を良好に理解し、それがどのように実施されるかを示すため、ここで、以下の添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】キーが係合されている、本出願の第1の実施形態による切削工具の斜視図である。
図2図1に示す切削工具の展開斜視図である。
図3図1および2に示す切削インサートの側面図である。
図4】本出願の第2の実施形態による切削インサートの側面図である。
図5図1および2に示すホルダーブレードの側面図である。
図6】本出願の第2の実施形態によるホルダーブレードの側面図である。
図7】切削インサートがクランプ位置に位置している、図1に示す切削工具の側面図である。
図8】切削インサートがクランプ位置に位置している、本出願の第2の実施形態による切削工具の側面図である。
図9】切削インサートが解放位置に位置している、図1に示す切削工具の側面図である。
図10】切削インサートが解放位置に位置している、図8に示す切削工具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0010]例示の簡略化および明確化のため、図に示す要素は、必ずしも実際の寸法で描かれているものではないことは、正しく理解されよう。例えば、いくつかの要素の寸法は、明確化のために他の要素に対して誇張されており、いくつかの物理的な構成要素は、ひとつの機能ブロックまたは要素に含まれるであろう。更に、適切だと考えられる場合には、参照符号を図の間で繰り返して、相当または類似の要素を示すであろう。
【0012】
発明の詳細な説明
[0011]以下の説明において、本出願の主題の種々の局面を説明する。説明する目的のため、特定の構成および詳細を、本出願の主題の完全な理解を提供するよう十分詳細に述べる。しかしまた、当該技術に精通する者にとって、本出願の主題は、本明細書中に呈示する特定の構成および詳細を用いることなく実施できることは明らかである。
【0013】
[0012]最初に、本出願の主題の第1の実施形態による溝入または突切作業に用いられる種類の切削工具20を示す図1および2に注目する。切削工具20は、インサート長手軸Aを有する切削インサート22と、ホルダー長手軸Bを有するホルダーブレード24とを有し、ここで切削インサート22が、クランプ力によりホルダーブレード24に固定でき、取り出しキー26の回転によって切削工具20から取り出すことができる。
【0014】
[0013]ここで、図3および4を参照する。切削インサート22、122は、対向するインサート上下面28、30を、その間に延在する周面32と共に有している。切刃34は、インサート上面28と結合している。周面32は、2つの対向する外側面36を有している。
【0015】
[0014]インサート下面30は、少なくともひとつの長手方向に延在する下側クランプ部52を含み、ここで各下側クランプ部52が、インサート長手軸Aと平行な、結合するインサート仮想直線L1、L2を含んでいる。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、インサート下面30は、2つの下側クランプ部52を有していてもよく、2つのそれぞれのインサート仮想直線L1、L2は、同軸であってもよい。
【0016】
[0015]インサート通路38は、インサート通路軸Aに沿って延在し、対向する外側面36に開口している。インサート通路38の目的は、切削インサート22、122が、取り出しキー26の回転によってインサート受けスロット42から取り出せるように、取り出し力Fを印加できるようにするために、取り出しキー26の突出部40が切削インサート22、122と係合する手段を提供することにある。
【0017】
[0016]本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、インサート通路38は、インサート下面30に開口していてもよい。本出願の主題の他の実施形態(不図示)によれば、インサート通路38は、インサート下面30に開口していなくてもよい。かかる構成において、インサート通路38は、外側面36に完全に開口している。(すなわち、インサート通路38の開口は、外側面36によって囲まれている)。
【0018】
[0017]インサート通路軸Aは、インサート通路中心点Cを含んでいる。説明および特許請求の範囲の全体にわたって用語「インサート通路中心点C」の使用は、切削インサート22、122の側面図において、インサート通路38を二分するインサート水平および垂直線H、V間の交点について言及しており、水平線Hはインサート長手軸Aと平行であり、垂直線Vは水平線Hに対して垂直であることは、正しく理解されよう。垂直線Vは、インサート通路38のインサート通路最前方点および最後方点44、46の間の中間に位置している。説明および特許請求の範囲の全体にわたって用語「前方」および「後方」の使用は、図3乃至10において、一般にはそれぞれ左右に向かうインサートおよびホルダー長手軸A、Bの方向における相対位置について言及していることは、正しく理解されよう。
【0019】
[0018]インサート通路38がインサート下面30に開口している本発明のいくつかの実施形態において、水平線Hは、インサート通路38のインサート通路最上方点48と最下方インサート仮想直線L1、L2との間の中間に位置している。他の実施形態(不図示)において、水平線Hは、インサート通路38のインサート通路最上方点および最下方点48、50の間の中間に位置している。説明および特許請求の範囲の全体にわたって用語「上方」および「下方」の使用は、図3乃至10において、一般にはそれぞれ頂部および底部に向かう、インサートおよびホルダー長手軸A、Bと垂直な方向における相対位置について言及していることは、正しく理解されよう。
【0020】
[0019]本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、正確にひとつのインサート通路38が存在していてもよい。インサート通路38は、インサート通路角度βに対する実質的に一定の半径を有するインサート湾曲部54を含んでいてもよい。かかる構成において、インサート通路角度βは、90°より大きくてもよい。インサート湾曲部54の径方向中心軸ARは、必ずしもインサート通路軸Aと同軸でなくてもよいことに留意されたい。
【0021】
[0020]インサート長手軸Aと垂直に配向される主平面P2は、インサート通路軸Aを含んでいる。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、切削インサート22、122は、主平面P2を中心として鏡面対称を呈していてもよい。
【0022】
[0021]主平面P2と同一平面または平行な第3の平面P3は、インサート通路最上方点48を含み、切削インサートの側面図において、交点55でインサート上面28と交差している。
【0023】
[0022]本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、切削工具20、120の側面図および第3の平面P3での測定したものにおいて、インサート通路38上のインサート通路最上方点48と最下方インサート仮想線L1、L2との間の通路高さh1は、第3の平面P3において測定した場合、交点55と最下方インサート仮想線L1、L2との間のインサート高さh2の大きさの少なくとも4分の1である。(すなわち、インサート通路38の最大高さは、第3の平面P3において測定した場合、切削インサート22、122の高さの少なくとも4分の1であってもよい。
【0024】
[0023]ここで図5および6を参照すると、ホルダーブレード24、124は、本体部56と保持部58とを有している。保持部58は、2つの対向する側面60を有し、ホルダーブレード24、124のホルダー前端面62に開口するインサート受けスロット42を含んでいる。インサート受けスロット42は、上方向Uに面するベースあご下面64を有している。ホルダー長手軸Bは、前後方向D、Dに延在している。ホルダー通路66は、ホルダー通路軸Aに沿って延在し、2つの側面60のうちの少なくともひとつに開口している。本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、ホルダー通路66は、両側面60の間に延在していてもよく、それらに開口していてもよい。
【0025】
[0024]本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、ホルダー通路66は、ベースあご下面64に開口していてもよい。本出願の主題の他の実施形態によれば、ホルダー通路66は、ベースあご下面64に開口していなくてもよい。かかる構成において、ホルダー通路66は、側面60のうちの少なくともひとつに完全に開口している。(すなわち、ホルダー通路66の開口は、側面60によって囲まれている)。
【0026】
[0025]ホルダー通路軸Aは、ホルダー通路中心点Cを含んでいる。ホルダー通路中心点Cは、ベースあご下面64から下方に位置している。説明および特許請求の範囲の全体にわたって用語「ホルダー通路中心点C」の使用は、ホルダーブレード24、124の側面図において、ホルダー通路66を二分するホルダー水平および垂直線H、V間の交点について言及しており、ホルダー水平線Hはホルダー長手軸Bと平行であり、ホルダー垂直線Vは水平線Hに対して垂直であることは、正しく理解されよう。垂直線Vは、ホルダー通路66のホルダー通路最前方点および最後方点68、70の間の中間に位置している。
【0027】
[0026]ホルダー通路66がベースあご下面64に開口している本発明のいくつかの実施形態において、水平線Hは、ホルダー通路66のホルダー通路最下方点74と最上方ホルダー仮想直線L1、L2との間の中間に位置している。ホルダー通路66が側面60に完全に開口している他の実施形態において、水平線Hは、ホルダー通路38のホルダー通路最上方点および最下方点72、74の間の中間に位置している。
【0028】
[0027]本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、ホルダー通路66は、ホルダー通路角度βに対する実質的に一定の半径を有するホルダー湾曲部76を含んでいてもよい。ホルダー通路角度βは、90°より大きくてもよい。ホルダー通路66は、切削工具20、120の側面図において円形であってもよい。ホルダー湾曲部76の径方向中心軸ARは、必ずしもホルダー通路軸Aと同軸でなくてもよいことに留意されたい。
【0029】
[0028]ベースあご下面64は、少なくともひとつの長手方向に延在するベースあごクランプ部78を含み、ここで各ベースあごクランプ部78が、ホルダー長手軸Bと平行な、ホルダー仮想直線L1、L2を含んでいる。
【0030】
[0029]本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、ベースあご下面64は、2つのベースあごクランプ部78を有していてもよく、2つのそれぞれのホルダー仮想直線L1、L2は、同軸であってもよい。
【0031】
[0030]ここで図7および8を参照すると、少なくともひとつの下側クランプ部52は、少なくともひとつのベースあごクランプ部78とクランプ接触状態にあり(すなわち、クランプ位置にあり)、切削インサート22、122は、インサート受けスロット42内の最後部位置に位置しており、組付状態を画成している。組付状態にある場合、切削工具20、120は、切削作業を行う準備が整っている。インサートの下側クランプ部52とホルダーブレードのベースあごクランプ部78との間のクランプ接触により、切削インサート22、122およびホルダーブレード24、124は、切削工具20、120の側面図において、切削インサートおよびホルダーブレードが交わるように見える仮想境界線LBを形成している。しかしながら、インサートの下側クランプ部52およびホルダーブレードのベースあごクランプ部78は通常、接合するV字形溝部等の相補的な面を備えており、そのため、仮想境界線LBは必ずしも、切削インサートとホルダーブレードとの間の実際の当接境界面の位置を示していなくてもよいことは周知である。図7および8においてわかるように、主平面P2は、仮想境界線LBに対して垂直である。
【0032】
[0031]ホルダー通路およびインサート通路軸A、Aを含む通路平面P1は、主平面P2と第1の角度αを形成しており、第1の角度αは60°以下である。ホルダー長手軸Bは、インサート長手軸Aと平行である。
【0033】
[0032]本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、第1の角度αは、30°以下であってもよい。ホルダー通路軸Aは、インサート通路軸Aの前方にあってもよい。
【0034】
[0033]本出願の主題の第2の実施形態(図8)によれば、主平面P2は、ホルダー通路66と交差してもよく、両インサートおよびホルダー通路38、66が、それぞれのインサート下面30およびベースあご下面64に開口していてもよい。かかる構成により、ただひとつの突出部40を持つ取り出しキー26の使用が可能となる。
【0035】
[0034]インサート受けスロット42は、ベースあご下面64に向かって面するクランプあご上面80を含んでいてもよく、切削インサート22、122は、クランプあご上面80とベースあご下面64との間で弾性的にクランプされてもよい。
【0036】
[0035]本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、組付状態において、インサート通路38およびホルダー通路66は、占有されてなくてもよい。更にまた、組付状態において、インサート通路38およびホルダー通路66は、インサート通路最前方点44およびホルダー通路最前方点68において連続していなくてもよい。ホルダー通路最前方点68は、インサート通路最前方点44の前方に位置していてもよい。
【0037】
[0036]本出願の主題別の局面は、切削インサート22、122を取り出しキー26によって切削工具20、120から取り出す方法を含んでいる。すなわち、切削インサート22、122を、クランプ位置から解放位置へ調整することを含んでいる。図7乃至10を参照する。インサート受けスロット42は、ベースあご下面64に向かって面するクランプあご上面80を含んでおり、切削インサート22、122は、クランプあご上面80とベースあご下面64との間で弾性的にクランプされている。取り出しキー26は、少なくともひとつの突出部40を有し、少なくともひとつの突出部40は、第1および第2の係合部82、84および単一の枢軸Aを含んでいる。取り出しキー26は、第1および第2の係合部82、84がそれぞれ、ホルダー通路66およびインサート通路38に同時に係合されるように、切削工具20、120に関して位置決めされており、枢軸Aは、ホルダー通路66内に位置している。取り出しキー26は、枢軸Aを中心として一方向に回転して、取り出し力Fを前方向Dで切削インサート22、122に印加する。
【0038】
[0037]第1および第2の係合部82、84を、それぞれホルダーおよびインサート通路66、38に位置決めした後、抵抗する下向き力が、取り出しキー26の回転中に、インサート通路38に位置する第2の係合部84によって生じないように、ホルダーおよびインサート通路66、38のうちの少なくともひとつは、第1および第2の係合部82、84のうちの少なくともひとつに対して、通路平面P1と平行な方向にずれる自由を提供する。
【0039】
[0038]本出願の主題のいくつかの実施形態によれば、枢軸Aは、ホルダーおよびインサート通路軸A、Aと平行であってもよい。枢軸Aを中心として取り出しキー26を回転するステップは、第2の係合部84とベースあご下面64またはホルダー通路66との間に、更なる回転を妨げる抵抗接触が存在するまで実行されてもよい。この位置において、切削インサート22、122は、解放位置にあると言え、切削インサート22、122は、それ以上、保持部58に弾性的にクランプされない。
【0040】
[0039]本出願の主題の特長は、切削インサート22、122を切削工具20、120から取り出す場合に、インサート受けスロット42の後部に、取り出しキー26の第2の係合部84を収容する凹部を必要としないことであることに留意されたい。凹部が無いことにより、クランプあご上面80が、ベースあご下面64に対する向上した弾性力を有することが可能となり、それによって、より大きな大きさのクランプ力を提供することが可能となる。
【0041】
[0040]本出願の主題の別の特長は、切削インサート22、122を、取り出しキー26を用いて切削工具20、120から取り出し、取り出し力Fをインサート通路38に印加する場合、切削インサート22、122が、制御された方法でインサート受けスロット42から排出できることである。切削インサート22、122を取り出すために、取り出しキー26を前方向Dに回転させると、取り出しキー26の第2の係合部84が、ベースあご下面64またはホルダー通路66(図6および8参照)と弾性接触するため、これは達成される。この接触により、取り出しキー26が更に回転することが防止され、切削インサート22、122が、インサート受けスロット42内に変わらず部分的に位置している間、この接触が生じる。この時点で、取り出しキー26を、切削工具20、120から解除することができ、その結果、切削インサート22、122を、制御された方法でホルダーブレード24、124から完全に取り外すことができる。例えば、取り出し力Fが、切刃34から最も遠い切削インサート22、122の端面に印加された場合、切削インサート22、122は、インサート受けスロット42から完全にずれ易いであろう。かかるシナリオにおいて、例えば、両端が同じ形の切削インサート22に対し、工具操作者は、どちらの切刃34が使用され、どちらの切刃34が使用されていないかを知ることはできない。
【0042】
[0041]本出願の主題をある特性の度合いに対して説明してきたが、種々の変更および修正が、以下で主張する本発明の精神または適用範囲から逸脱することなく行われてもよいことは言うまでもない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10