特許第5989230号(P5989230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989230
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】医療器具及び医療システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20160825BHJP
【FI】
   A61B18/14
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-508119(P2015-508119)
(86)(22)【出願日】2014年1月22日
(86)【国際出願番号】JP2014051230
(87)【国際公開番号】WO2014156244
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2015年6月25日
(31)【優先権主張番号】61/806,114
(32)【優先日】2013年3月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100086379
【弁理士】
【氏名又は名称】高柴 忠夫
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 亮治
(72)【発明者】
【氏名】岸 宏亮
【審査官】 木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第2541246(US,A)
【文献】 米国特許第5443475(US,A)
【文献】 米国特許第5797923(US,A)
【文献】 特表2012−513871(JP,A)
【文献】 特開2011−200649(JP,A)
【文献】 特開平11−332880(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0312652(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 ― 17/94
A61B 18/00 ― 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内に挿入可能な挿入部と、
前記挿入部に連結された駆動機構と、
を備え、
前記挿入部は、
処置対象部位に対して処置を行う処置部と、
前記処置部を支持し前記処置部の向きを変更可能な関節部と、
前記関節部に設けられ前記処置部を内部に収納可能な収納部と、
前記関節部に接続され前記処置部の向きを変更するための駆動力を前記関節部に伝達する駆動力伝達部と、
を有し、
前記駆動機構は、前記駆動力伝達部に接続され前記駆動力を発生させる駆動力発生部を有し、
前記駆動力発生部が前記駆動力伝達部を介して前記関節部に伝達する前記駆動力によって前記処置部が前記収納部に対して出入りし、
前記処置部は、高周波電流の供給を受けて生体組織を切開する切開電極を有し、
前記関節部は、前記切開電極に対する前記高周波電流の通電状態を切り替えるスイッチング機構を有し、
前記挿入部は、前記スイッチング機構に接続され前記高周波電流が通電される給電ケーブルを有し、
前記スイッチング機構は、前記切開電極が前記収納部内に位置しているときには前記給電ケーブルと前記切開電極と通電を遮断し、前記切開電極が前記収納部外に位置しているときには前記給電ケーブルと前記切開電極とを導通させる
療器具。
【請求項2】
前記処置部に付着している異物を前記処置部が前記収納部外から前記収納部内へと移動する過程もしくは前記収納部内において除去する洗浄機構をさらに備え
請求項1に記載の医療器具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の医療器具と、
操作者からの操作入力を受け付けるマスタマニピュレータと、
前記マスタマニピュレータに接続された制御部と、
前記制御部に接続されているとともに前記駆動機構に接続されたスレーブマニピュレータと、
前記制御部に設けられ前記処置部が前記収納部内にある状態と前記処置部が収納部外にある状態とを判定する判定部と、
を備える医療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具及び医療システムに関する。
本願は、2013年3月28日に、米国に仮出願された米国特許出願第61/806,114号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
先端へ向かって突出状態にある針状、棒状、フック状の電極や鉗子等を有する従来の医療器具は、内視鏡等のマニピュレータのチャンネルに挿通されるときに、チャンネルの内面を傷つける場合や、チャンネルの内面と干渉してチャンネルをスムーズに通り抜けられない場合がある。そのため、これらの医療器具は、電極や鉗子等の外部にカバー状の部材を設けることや、カバー状の部材の内部に電極や鉗子等を引き込むための機構を設けることが知られている。
例えば、特許文献1には、内視鏡のチャンネルの内面を保護する目的で、処置部を収納する収納部を設けた医療器具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2008−264253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、医療器具にカバー状の収納部材が設けられた場合には、収納部材が電極や鉗子等を覆うため、外径が大きくなりがちであった。また、収納部材に電極や鉗子等を引き込む場合には、電極や鉗子等に対してカバーを移動させるための機構が別途必要である。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされており、その主な目的は、収納部材を備える医療器具の小型化である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の第1の態様の医療器具は、体内に挿入可能な挿入部と、前記挿入部に連結された駆動機構と、を備え、前記挿入部は、処置対象部位に対して処置を行う処置部と、前記処置部を支持し前記処置部の向きを変更可能な関節部と、前記関節部に設けられ前記処置部を内部に収納可能な収納部と、前記関節部に接続され前記処置部の向きを変更するための駆動力を前記関節部に伝達する駆動力伝達部と、を有し、前記駆動機構は、前記駆動力伝達部に接続され前記駆動力を発生させる駆動力発生部を有し、前記駆動力発生部が前記駆動力伝達部を介して前記関節部に伝達する前記駆動力によって前記処置部が前記収納部に対して出入りし、前記処置部は、高周波電流の供給を受けて生体組織を切開する切開電極を有し、前記関節部は、前記切開電極に対する前記高周波電流の通電状態を切り替えるスイッチング機構を有し、前記挿入部は、前記スイッチング機構に接続され前記高周波電流が通電される給電ケーブルを有し、前記スイッチング機構は、前記切開電極が前記収納部内に位置しているときには前記給電ケーブルと前記切開電極と通電を遮断し、前記切開電極が前記収納部外に位置しているときには前記給電ケーブルと前記切開電極とを導通させる
【0008】
本発明の第2の態様によれば、上記第1の態様の医療器具において、前記処置部に付着している異物を前記処置部が前記収納部外から前記収納部内へと移動する過程もしくは前記収納部内において除去する洗浄機構をさらに備えてもよい。
【0009】
本発明の第3の態様に係る医療システムは、上記第1の態様または上記第2の態様のいずれかの態様に係る医療器具と、操作者からの操作入力を受け付けるマスタマニピュレータと、前記マスタマニピュレータに接続された制御部と、前記制御部に接続されているとともに前記駆動機構に接続されたスレーブマニピュレータと、前記制御部に設けられ前記処置部が前記収納部内にある状態と前記処置部が収納部外にある状態とを判定する判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
上記各態様の医療器具および医療システムによれば、収納部は、処置部を用いて処置対象部位に対する処置をする際に処置部の向きや姿勢を最適化するための機構と、処置部を収納部に収納するために処置部を移動させるための機構とを兼用している。これにより、収納部が処置部の収納に特化している場合と比較して、医療器具を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態の医療器具を示す模式図である。
図2】同医療器具が内視鏡に取り付けられた状態を示す模式図である。
図3】同医療器具の先端部分を拡大して示す模式図であり、同医療器具の平面図である。
図4】同医療器具の先端部分を拡大して示す模式図であり、同医療器具の側面図である。
図5図4のA−A線に沿った断面図である。
図6】同医療器具の先端部分を拡大して示す模式図であり、同医療器具の平面図である。
図7】本発明の第2実施形態の医療器具の先端部分を拡大して示す模式的な斜視図である。
図8】同医療器具の先端部分に設けられたスイッチング機構の一部の構成を説明するための模式的な平面図である。
図9】同医療器具の先端部分に設けられたスイッチング機構におけるバネ端子の形状を説明するために一部断面で示す模式的な斜視図である。
図10】同医療器具の先端部分に設けられたスイッチング機構における柱状端子の構成を示す模式的な側面図である。
図11図10の一部拡大図である。
図12】同医療器具の作用を説明するための模式的な斜視図である。
図13】本発明の第3実施形態の医療器具を一部断面で示す模式的な斜視図である。
図14図13のB−B線に沿った断面図である。
図15】同医療器具の作用を説明するために一部断面で示す模式的な斜視図である。
図16】同医療器具の変形例の構成を示す模式的な斜視図である。
図17】本発明の第4実施形態の医療システムの模式的な全体図である。
図18】同医療システムに設けられた同実施形態の医療器具の先端部分を一部破断して示す模式図である。
図19】同医療器具の関節部の一部を拡大して同関節部に設けられたスイッチ部の構成を示す模式的な斜視図である。
図20】同医療器具の作用を説明するための模式図である。
図21】同医療器具の変形例の構成を示す模式図である。
図22】同変形例の作用を説明するための説明図である。
図23】同変形例の作用を説明するための説明図である。
図24図23のC−C線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
本発明の医療器具(medical device)の実施形態について、図1から図6を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態の医療器具を示す模式図である。図2は、同医療器具が内視鏡に取り付けられた状態を示す模式図である。図3は、同医療器具の先端部分を拡大して示す模式図であり、同医療器具の平面図である。図4は、同医療器具の先端部分を拡大して示す模式図であり、同医療器具の側面図である。図5は、図4のA−A線に沿った断面図である。図6は、同医療器具の先端部分を拡大して示す模式図であり、同医療器具の平面図である。
図1に示すように、医療器具1は、体内に挿入可能な挿入部2と、挿入部2に連結された駆動機構30とを備える。
【0013】
挿入部2は、内視鏡100(図2参照)その他の公知のマニピュレータにおける鉗子チャンネル101等の内部に挿入可能な細長い形状を有している。図1に示すように、挿入部2は、処置部3、関節部10、可撓管部20、駆動力伝達部21、及び給電ケーブル26を備える。以下、本明細書において、挿入部2の処置部3が設けられている側を先端側(distal end)と称し、処置部3が設けられている側と反対側を基端側(proximal end)と称する。
【0014】
処置部3は、処置対象部位に対して処置を行う。本実施形態の処置部3は、高周波電流の供給を受けて生体組織を切開する切開電極4を有する。
切開電極4は、棒状の軸部6と、軸部6の先端側に設けられたフック部5とを有する。軸部6及びフック部5は導電性を有する金属線からなる。切開電極4となる金属線は、軸部6とフック部5との境界部分において折り曲げられた形状を有する。軸部6には、金属線の外面を被覆する絶縁皮膜が設けられていてもよい。切開電極4のフック部5は、たとえば丸型などであってもよい。切開電極4は、フック部5を有していなくてもよい。
【0015】
図3及び図4に示すように、関節部10は、切開電極4の軸部6の基端が固定された回動軸11と、回動軸11を支持する支持部12とを有する。
【0016】
回動軸11は、略円柱形状を有し、軸部6の中心線O1と回動軸11の中心線O2とは互いに垂直である。回動軸11は、その中心線O2を回動中心として支持部12に対して回動可能となるように、支持部12に連結されている。
支持部12は、回動軸11に連結された連結部13と、可撓管部20に固定された固定部16と、連結部13と固定部16との間に配された収納部18とを備える。
【0017】
連結部13は、回動軸11がその回動中心である中心線回りに自在に回動することができるように、回動軸11の両端を所定のクリアランスを有して支持している。本実施形態では、連結部13は、回動軸11の中心線方向における回動軸11の一端が連結された第一壁部14と、回動軸11の中心線方向における回動軸11の他端が連結された第二壁部15とを有する。連結部13は、回動軸11の回動中心の向きを規定する。
【0018】
固定部16は、連結部13を可撓管部20の先端に固定するための部位である。固定部16の内部には、上述の給電ケーブル26と、駆動力伝達部21を構成する第一ワイヤ24及び第二ワイヤ25とが挿通されている。さらに、固定部16の外周面の一部は、先端と基端とを結ぶ直線方向に長いスリット17を有している。固定部16に形成されたスリット17は、収納部18内に処置部3を収納する際の出入口である。
【0019】
図4及び図5に示すように、収納部18は、支持部12に設けられており、連結部13の内側面及び固定部16の内面によりその形状が規定されている。収納部18は、処置部3である切開電極4の少なくとも一部を収納可能である(図6参照)。収納部18は、切開電極4の全部を収納可能となっていてもよい。
【0020】
関節部10は、処置部3の支持や、処置部3の向きの変更が可能である。さらに、処置部3の収納部18内への収納や、処置部3の収納部18内からの取り出しが可能である。
【0021】
図1に示す可撓管部20は、第一ワイヤ24と、第二ワイヤ25と、給電ケーブル26とが内部に挿通された柔軟な筒状部材である。第一ワイヤ24及び第二ワイヤ25は、駆動力伝達部21を構成している。
【0022】
図4に示すように、駆動力伝達部21は、回動軸11の回動中心を中心とする円板状の第一プーリ22及び第二プーリ23と、第一プーリ22に先端側の端部が固定された第一ワイヤ24と、第二プーリ23に先端側の端部が固定された第二ワイヤ25とを有する。第一プーリ22及び第二プーリ23は、いずれも回動軸11に固定されている。このため、第一プーリ22及び第二プーリ23は、回動軸11とともに一体に回動する。第一プーリ22及び第二プーリ23が回動軸11に固定されていることに代えて、第一プーリ22及び第二プーリ23を備えず、第一ワイヤ24の先端側の端部及び第二ワイヤ25の先端側の端部が回動軸11に直接固定されていてもよい。
【0023】
第一プーリ22に第一ワイヤ24が掛け回される方向と、第二プーリ23に第二ワイヤ25が掛け回される方向とは、互いに反対方向である(図3参照)。第一プーリ22に第一ワイヤ24が掛け回される周方向の長さと、第二プーリに第二ワイヤ25が掛け回される周方向の長さとは、処置部3の使用時における処置部3の可動範囲を規定する。本実施形態の処置部3の可動範囲としては、処置部3が収納部18内に位置でき、かつ、処置部3が収納部18から露出できる程度の可動範囲が最低限必要である。この可動範囲を少なくとも満たすように、第一ワイヤ24が第一プーリ22に掛けられ、第二ワイヤ25が第二プーリ23に掛けられている。
【0024】
第一ワイヤ24と第二ワイヤ25とは、ステンレス鋼や樹脂など、公知の材料かならなる線材が適宜選択されて採用されてよい。第一ワイヤ24と第二ワイヤ25とは、互いに同じ材料からなっていてもよいし、互いに異なる材料からなっていてもよい。
【0025】
図1に示すように、第一ワイヤ24の基端及び第二ワイヤ25の基端は、挿入部2の可撓管部20内を通じて駆動機構30内に引き出されている。そして、第一ワイヤ24の基端及び第二ワイヤ25の基端は、駆動力発生部32に接続されている。駆動力発生部32は、第一ワイヤ24及び第二ワイヤ25をそれらの中心線方向(挿入部2の長手軸方向)にそれぞれ移動させるための駆動力を発生させる。駆動力発生部32が発する駆動力は、駆動力伝達部21の第一ワイヤ24、第二ワイヤ25、第一プーリ22、及び第二プーリ23を通じて、処置部3の向きを変更するための駆動力として関節部10に伝達される。
【0026】
図1および図4に示すように、給電ケーブル26は、高周波電流が流れる導電性の芯線と、芯線を被覆する絶縁膜とを有する柔軟なワイヤである。給電ケーブル26の先端は切開電極4の金属線に電気的に接続されており、給電ケーブル26の基端は駆動機構30において後述するプラグ35に固定されている。これにより、本実施形態の医療器具1によれば、プラグ35から切開電極4へと給電ケーブル26を通じて高周波電流を供給することができる。
【0027】
図1に示すように、駆動機構30は、基台31と、駆動力発生部32と、プラグ35とを備える。
【0028】
駆動力発生部32は、第一ワイヤ24を牽引する駆動力を発する第一アクチュエータ33と、第二ワイヤ25を牽引する駆動力を発する第二アクチュエータ34とを有する。第一アクチュエータ33及び第二アクチュエータ34の具体的な構成は、第一ワイヤ24及び第二ワイヤ25に適切な牽引力を伝えることができれば何ら限定されない。例えば、第一アクチュエータ33及び第二アクチュエータ34は、ラックアンドピニオンによりモータの駆動力を直線移動へと変換して第一ワイヤ24及び第二ワイヤ25を牽引する機構が用いられてよい。他の例としては、第一アクチュエータ33及び第二アクチュエータ34は、第一ワイヤ24や第二ワイヤ25が巻きつけられるプーリを有しこれらのプーリを各々モータを用いて回転させる機構が用いられてよい。
【0029】
プラグ35は、公知の高周波電源装置に接続可能な導体からなり、給電ケーブル26の基端に接続されている。
【0030】
次に、本実施形態の医療器具1の作用について説明する。
医療器具1は、例えば図2に示す内視鏡100等のマニピュレータにおいて、チャンネル101内に挿通される。チャンネル101は、鉗子及びその他の器具を処置対象部位まで案内するために設けられている。チャンネル101への挿入時には、処置部3が収納部18内へと移動するように第一ワイヤ24と第二ワイヤ25とのうちの一方(本実施形態では第二ワイヤ25)を駆動力発生部32により牽引する。本実施形態では、駆動力発生部32の第二アクチュエータ34が第二ワイヤ25を基端側へと牽引し、第一アクチュエータ33の駆動力が解除されて第一ワイヤ24をその中心線方向(挿入部2の長手軸方向)へ自在に進退させる。これにより、処置部3である切開電極4は収納部18内に収納される(図6参照)。処置部3が収納部18内に収納されている状態では、処置部3が収納部18の外に出ている状態と比較して、先端と基端とを結ぶ直線方向における処置部3の長さが短い(図3及び図6参照)。このため、チャンネル101が湾曲した状態である場合に、処置部3がチャンネル101の内面に干渉しにくく、また処置部3がチャンネル101の内面を傷つけにくい。
【0031】
処置部3が収納部18内に収納された状態で、処置部3は処置対象部位の近傍まで案内される。処置部3及び関節部10がチャンネル101の先端から繰り出された状態で、処置部3を使用した処置を処置対象部位に対して行う際には、収納部18内から外へ処置部3を移動させる。収納部18内から外へ処置部3を移動させるためには、本実施形態では、第一アクチュエータ33を用いて第一ワイヤ24を基端側へと牽引し、第二アクチュエータ34の駆動力を解除する。これにより、収納部18のスリット17を通じて処置部3が収納部18の外に出るように第一プーリ22及び第二プーリ23並びにこれらと固定された回動軸11が回動する。その結果、処置部3の切開電極4は、回動軸11の回動中心O2を中心とした回動により、処置に適した所望の向きおよび姿勢となるように、収納部18内から収納部18の外へと移動する。
【0032】
そして、本実施形態では、処置部3である切開電極4に対して給電ケーブル26を通じて高周波電流が供給されることにより、処置対象部位を切開することができる。このとき、第一ワイヤ24及び第二ワイヤ25を適宜牽引操作することにより、切開電極4の向きや姿勢を最適化することができる。
【0033】
また、処置対象部位に対する切開等の処置が終了したり、医療器具1を交換する必要が生じたりした場合には、第二ワイヤ25を基端側へと牽引することにより処置部3を収納部18内に再び収納することにより、チャンネル101の内面に処置部3が接触することなく医療器具1をチャンネル101から抜去することができる。
【0034】
本実施形態の医療器具1によれば、回動軸11の回動中心回りに処置部3を回動させて処置部3を関節部10内に収納することができる。そのため、処置部3を用いて処置対象部位に対する処置をする際に処置部3の向きや姿勢を最適化するための機構と、処置部3を収納部18に収納するために処置部3を移動させるための機構とを兼用することができる。したがって、処置部3を収納することに特化した構成を別途備える場合と比較して、医療器具1を小型化することができる。
【0035】
また、本実施形態では、関節部10における連結部13及び固定部16の内部に処置部3が収納されるので、処置部3が収納状態にあるときには、連結部13及び固定部16によって生じる硬質長の範囲内に処置具を収めることができる。これにより、湾曲状態にあるチャンネル101内に医療器具1の挿入部2を容易に通すことができる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、本発明の医療器具1の他の実施形態について、図7から図12を参照しながら説明する。本実施形態以下では、既に説明された実施形態に記載された構成と同様の構成要素には同一の符号が付されており、重複する説明は省略されている。
図7は、本発明の第2実施形態の医療器具の先端部分を拡大して示す模式的な斜視図である。図8は、同医療器具の先端部分に設けられたスイッチング機構の一部の構成を説明するための模式的な平面図である。図9は、同医療器具の先端部分に設けられたスイッチング機構におけるバネ端子の形状を説明するために一部断面で示す模式的な斜視図である。図10は、同医療器具の先端部分に設けられたスイッチング機構における柱状端子の構成を示す模式的な側面図である。図11は、図10の一部拡大図である。図12は、同医療器具の作用を説明するための模式的な斜視図である。
【0037】
図7に示すように、本実施形態の医療器具1Aは、切開電極4と給電ケーブル26との電気的接続を収納時に解除するための機構を有している点で上述の第1実施形態の医療器具1と構成が異なっている。すなわち、本実施形態の医療器具1Aは、関節部10にスイッチング機構40をさらに備えている。
【0038】
スイッチング機構40は、第一壁部14と第二壁部15との何れか一方(本実施形態では第二壁部15)に設けられた湾曲接点部41と、切開電極4の金属線に電気的に接続された柱状端子43とを有する。
【0039】
図7及び図8に示すように、湾曲接点部41は、円弧の一部をなす導通領域41Aと、導通領域41Aと同一半径の円弧の一部をなし、導通領域41Aに隣接するように設けられた絶縁領域41Bとを有する環状部である。
導通領域41Aには、切開電極4に対する高周波電流を通電させるためのバネ端子42が配置されている。バネ端子42は、バネ端子42自身を柱状端子43に押し付けるための付勢力を有し、導通領域41Aの円弧と略同一半径を有する円弧状の板バネである。
【0040】
図9に示すように、バネ端子42における導通領域41Aと絶縁領域41Bとの境界部分には、絶縁領域41Bとバネ端子42との段差を軽減するための斜面部42aが形成されている。また、バネ端子42の導通領域41A内に位置する部分から、斜面部42aを除いた部分のうち、柱状端子43に向けられた面が、平坦部42bである。平坦部42bは、柱状端子43の突出端が接触可能である。さらに、図7に示すように、引き出し部42cは、バネ端子42の基端側に設けられており、バネ端子42と給電ケーブル26とを電気的に接続する。
【0041】
絶縁領域41Bは、給電ケーブル26に対して絶縁された領域である。絶縁領域41Bに柱状端子43が配されているときには、柱状端子43は給電ケーブル26からの高周波電流の供給を受けないようになっている(図12参照)。本実施形態では、絶縁領域において、柱状端子43が物理的にバネ端子42と接触しない構成としているが、絶縁領域41Bは、絶縁体を有していてもよいし、給電ケーブル26に対して絶縁されていれば一部に導体を有していてもよい。
【0042】
図10および図11に示すように、柱状端子43は、切開電極4の金属線と一体もしくは金属線に固定された柱状の導体であり、軸部6の径方向外側へ向かって軸部6の外面から突出して設けられている。柱状端子43の突端部43aは、バネ端子42の平坦部42bと、絶縁領域41Bとに接触可能である。すなわち、柱状端子43の突端部43aは、回動軸11が回動軸11の回動中心回りに回動する際に、回動軸11と一体となって回動中心回りに旋回動作する。柱状端子43の突端部43aの旋回半径は、湾曲接点部41の半径と略等しい。
【0043】
湾曲接点部41の絶縁領域41Bと導通領域41Aとの境界部分には、絶縁領域41Bとバネ端子42との間に段差が形成されている。図11に示すように、柱状端子43の突端部43aの周縁部分には、絶縁領域41Bとバネ端子42との間の段差を乗り越えやすくするためのテーパー部43bが形成されている。そして、柱状端子43の突端部43aの外面において、テーパー部43bの内側領域は、バネ端子42の平坦部42bに面接触可能な平坦部43cである。
【0044】
次に、本実施形態の医療器具1Aの作用について、スイッチング機構40の作用を中心に説明する。
図12に示すように、スイッチング機構40は、切開電極4が収納部18内に位置しているときには、柱状端子43の突端部43aが絶縁領域41Bに位置することにより、給電ケーブル26と切開電極4と通電を遮断している。また、図7に示すように、スイッチング機構40は、切開電極4が収納部18外に位置しているときには、柱状端子43の突端部43aが導通領域41Aにおいてバネ接点の平坦部42bに接することにより、給電ケーブル26と切開電極4とを導通させる。
【0045】
本実施形態の医療器具1Aによれば、処置部3である切開電極4が収納部18内に収納されているときには、切開電極4には高周波電流が通電されない。このため、切開電極4の収納時に誤って高周波電流を通電させる操作が行われた場合でも、切開電極4に高周波電流が流れることはなく、第1実施形態の医療器具1と比較して壊れにくく、安全性も高い。
【0046】
(第3実施形態)
次に、本発明の医療器具1のさらに他の実施形態について、図13から図15を参照しながら説明する。
図13は、本発明の第3実施形態の医療器具を一部断面で示す模式的な斜視図である。図14は、図13のB−B線に沿った断面図である。図15は、同医療器具の作用を説明するために一部断面で示す模式的な斜視図である。図16は、同医療器具の変形例の構成を示す模式的な斜視図である。
【0047】
図13に示すように、本実施形態の医療器具1Bは、収納動作時に切開電極4を洗浄するための機構を有している点で上述の第1実施形態の医療器具1と構成が異なっている。すなわち、本実施形態の医療器具1Bは、関節部10に洗浄機構50をさらに備えている。
図13に示すように、洗浄機構50は、洗浄水が流れる柔軟な送水チューブ51と、送水チューブ51の吐出口51aの位置を変更する位置変更機構52を有する。
【0048】
図13及び図15に示すように、送水チューブ51は、挿入部2の長手軸に沿って配されたチューブであり、例えば、スリット17の隙間を通り、可撓管部20(図1参照)内に配され、駆動機構30まで延びている。送水チューブ51の先端の開口が洗浄水の吐出口51aであり、送水チューブ51の基端の開口が洗浄水の供給口である。送水チューブ51は、挿入部2に対して挿入部2の長手方向に進退自在である。挿入部2の長手方向に沿った送水チューブ51の進退動作は、位置変更機構52によって制御される。
【0049】
位置変更機構52は、駆動機構30に配され、送水チューブ51の駆動機構30内に位置している部分に連結されている。位置変更機構52は、送水チューブ51をその中心線方向(挿入部2の長手軸方向)へと進退させるアクチュエータ(不図示)等を有している。位置変更機構52が送水チューブ51を最も先端側に移動させたとき、吐出口51aは関節部10の先端に位置する。位置変更機構52が送水チューブ51を最も基端側に移動させたとき、吐出口51aはスリット17の基端に位置する。
【0050】
位置変更機構52が医療器具1Bに設けられていなくてもよい。この場合、送水チューブ51の吐出口51aがスリット17の基端にある状態で吐出口51aの位置が固定されることになる。
【0051】
次に、本実施形態の医療器具1Bの作用について、洗浄機構50の作用を中心に説明する。洗浄機構50は、処置部3が収納部18外に位置している状態(図13参照)では、処置対象部位に対して洗浄水を供給する送水ポートとして使用することができる。このとき、送水チューブ51の吐出口51aの位置をスリット17の先端側へ、あるはスリット17からさらに先端側へと、位置変更機構52によって移動させることにより、処置対象部位に近い位置に吐出口51aを配することができる。また、洗浄機構50は、処置部3が収納部18外に位置している状態において、処置部3に洗浄水を供給することによって処置部3を洗浄する機能も有する。
【0052】
本実施形態において、収納部18の外に出た状態にある処置部3を収納部18に収納する場合(図15参照)について説明する。まず、位置変更機構52は、送水チューブ51の先端の吐出口51aの位置を、スリット17の基端へと移動させる。これにより、スリット17が開き、処置部3を収納部18内へ導入する入口が生じる。位置変更機構52が設けられていない場合には、スリット17は常に開いた状態にあり、処置部3はスリット17を通過可能である。
【0053】
続いて、処置部3がスリット17を通過するまで回動軸11の回動中心周りに処置具が回動する過程において、送水チューブ51の先端の吐出口51aから洗浄水が吐出される。これにより、処置部3に付着している異物は、処置部3が収納部18外から収納部18内へと移動することで、処置部3に洗浄水が当たり、除去される。
処置部3が収納部18内へと移動してから洗浄水の供給が始まってもよい。この場合、処置部3は、収納部18内に収納されたときに、収納部18内において異物が除去される。
【0054】
また、本実施形態では、処置部3の先端のフック部5が吐出口51aに近づくように回動するので、吐出口51aから出た洗浄水がフック部5に到達する確実性が高い。処置部3の先端は、処置対象部位に対して処置をする際に処置対象部位に接触する頻度が高く、異物が付きやすい部分である。特に、高周波電流を利用した切開を行なうフック型の切開電極4において、フック部5には焼けた組織等の異物が付着しやすい。本実施形態の医療器具1Bでは、処置部3の先端を効率よく洗浄することができる。
【0055】
(変形例)
次に、本実施形態の変形例について図16を参照しながら説明する。
図16は、同医療器具の変形例の構成を示す模式的な斜視図である。
【0056】
図16に示すように、本変形例では、処置部3の先端に付着した異物を掻き落とす手段を有している点で、上述の医療器具1Bと構成が異なっている。即ち、本変形例の医療器具1Cは、洗浄機構50に代えて、支持部12のスリット17に取り付けられたブラシ50A(洗浄機構50A)を備える。
【0057】
ブラシ50Aは、例えば切開電極4のフック部5に固着した生体組織の断片を掻き落とすことができる程度の硬さを有している。
【0058】
また、洗浄機構50Aは、ブラシ50Aに代えて、ゴム等の樹脂により柔軟性を有しかつ異物を掻き落とすことができる程度の硬さを有するヘラをスリット17に有していてもよい。
【0059】
(第4実施形態)
次に、本発明の医療システムの実施形態について図17から図20を参照しながら説明する。本実施形態において、本実施形態の医療システムに設けられた医療器具の構成および作用について、特に明記した事項以外は、第1実施形態の医療器具1と同様である。
図17は、本発明の第4実施形態の医療システムの模式的な全体図である。図18は、同医療システムに設けられた同実施形態の医療器具の先端部分を一部破断して示す模式図である。図19は、同医療器具の関節部の一部を拡大して同関節部に設けられたスイッチ部の構成を示す模式的な斜視図である。図20は、同医療器具の作用を説明するための模式図である。図24は、図23のC−C線に沿った断面図である。
【0060】
図17に示すように、医療システム150は、患者に対して手術を行う操作者が患者に対する手術操作をするためのマニピュレータ装置110と、マニピュレータ装置110に取り付けられた医療器具1Dとを備える。
【0061】
マニピュレータ装置110は、医療器具1Dが取り付けられたスレーブマニピュレータ111と、スレーブマニピュレータ111に対して電気的に接続されスレーブマニピュレータ111に対して操作指令を発するマスタマニピュレータ115と、医療システム150全体を制御する制御部120とを備える。
【0062】
スレーブマニピュレータ111は、少なくとも上述の医療器具1Dが取り付けられるスレーブアーム112と、スレーブアーム112を動作させるアクチュエータ(不図示)と、スレーブアーム112の位置を検出するためのセンサ(不図示)とを有している。
スレーブマニピュレータ111は、マスタマニピュレータ115から操作指令を受け、操作指令に従って、スレーブアーム112、及び医療器具1Dを動作させる。すなわち、本実施形態では、スレーブマニピュレータ111は、少なくとも医療器具1Dの駆動力発生部32に接続されており、マスタマニピュレータ115からの操作指令に対応して駆動力発生部32を動作させることができる。
【0063】
本実施形態のスレーブアーム112は、体内に挿入される軟性の長軸部材113を有し、長軸部材113内に、医療器具1Dの挿入部2を通すためのチャンネル101Aを有する。スレーブアーム112の長軸部材113の先端には、処置対象部位を観察するための図示しない撮像機構が設けられており、この撮像機構が処置対象部位の画像を取得する。
【0064】
マスタマニピュレータ115は、操作者Opが手に持って移動させることにより医療器具1Dを動作させるマスタアーム116と、スレーブアーム112の長軸部材113に設けられた撮像機構が取得した画像が表示される表示部117とを有している。さらに、本実施形態におけるマスタマニピュレータ115は、医療器具1Dにおける処置部3を収納部18に収納し、処置部3を収納部18から繰り出すためのトリガー信号を制御部120に対して発する収納状態制御スイッチ118を有している。
マスタマニピュレータ115において、マスタアーム116が動作されることにより、操作指令が制御部120に発せられる。
【0065】
制御部120は、マスタマニピュレータ115から発せられる操作指令及びトリガー信号に基づき、スレーブマニピュレータ111を動作させる信号をスレーブマニピュレータ111に出力する。
制御部120は、医療器具1Dの駆動力発生部32を動作させるための信号を出力する。また、制御部120は、処置部3が収納部18内にある状態と処置部3が収納部18外にある状態とを判定する判定部121を有する。
【0066】
図18に示すように、医療器具1Dは、第1実施形態で説明した医療器具1に対して、スイッチ部60を関節部10に有している点が異なっている。スイッチ部60の導通状態により、処置部3が収納部18内にある状態と処置部3が収納部18外にある状態とを区別することができる。
【0067】
さらに、医療器具1Dの駆動力発生部32は、マニピュレータ装置110の制御部120に接続されている。これにより、医療器具1Dの駆動力発生部32は、マスタアーム116からの操作入力に基づいた操作指令と、マスタマニピュレータ115の収納状態制御スイッチ118から発せられるトリガー信号とに対応して、第一ワイヤ24及び第二ワイヤ25を牽引動作させるようになっている。
【0068】
図18及び図19に示すように、スイッチ部60は、関節部10の回動軸11に固定された第一接点61と、支持部12に固定され第一接点61に対し接触状態と離間状態との2状態を有する第二接点62と、第一接点61と判定部121とを電気的に接続する第一配線63と、第二接点62と判定部121とを電気的に接続する第二配線64とを有する。
【0069】
図19に示すように、第一接点61は、回動軸11の回動中心方向における何れか一方の端面において、回動軸11の回動中心を中心とする円の一部に配されている。
【0070】
図18に示すように、第二接点62は、支持部12の第一壁部14と第二壁部15とのうち第一接点61に近い方(本実施形態では第二壁部15)に配されている。
また、第二接点62は、回動軸11の回動中心を中心とする上記円と略等しい半径の円の一部に沿った円弧形状を有している。第二接点62の円弧形状は少なくとも一部に切れ目62aを有するC字形状である。
【0071】
第二接点62の円弧形状における切れ目62aは、第一接点61が第二接点62に接することなく入りこむことができる程度の広さを有している。切れ目62aは、第一接点61との相対的な位置関係として、処置部3が収納部18内に配されている状態において第一接点61が切れ目62aに入り込んで第一接点61と第二接点62とが非接触状態となるように位置している。
【0072】
次に、本実施形態の医療システム150における判定部121及び制御部120の構成の詳細について、医療システム150の作用とともに説明する。
本実施形態では、収納部18に対する処置部3の出し入れは、マスタマニピュレータ115の収納状態制御スイッチ118が操作者に押されることにより、トリガー信号に基づいて開始される。
【0073】
判定部121は、スイッチ部60の第一接点61と第二接点62とが導通したか否かを検知することにより、第一接点61と第二接点62とが導通した状態(すなわち、処置部3が収納部18外にある状態、図18参照)と、第一接点61と第二接点62とが導通していない状態(すなわち、処置部3が収納部18内にある状態、図20参照)とを区別して判定する。
【0074】
判定部121は、第一接点61と第二接点62とが導通している場合、処置部3が収納部18外に出ており処置対象部位に対する処置が可能であることを制御部120に返す。一方、判定部121は、第一接点61と第二接点62とが導通していない場合、処置部3が収納部18内に収納されており処置が不可能であることを制御部120に返す。
【0075】
判定部121は、第一接点61と第二接点62とが導通していない場合に、処置部3が収納部18内に収納されており医療器具1Dを交換可能であることを制御部120に返すようになっていてもよい。
【0076】
制御部120は、判定部121における判定結果に基づいて、処置が可能であれば、表示部117に、マスタマニピュレータ115のマスタアーム116を用いた操作入力可能であるというステータスを表示させる。さらに、制御部120は、マスタマニピュレータ115のマスタアーム116の動作をスレーブマニピュレータ111に対する操作指令としてスレーブマニピュレータ111へと伝達する。
【0077】
一方、制御部120は、処置ができない場合には、表示部117に、マスタマニピュレータ115のマスタアーム116を用いた操作入力が不可能であることを表示させ、マスタマニピュレータ115のマスタアーム116の動作に基づいた操作指令を無効とする。また、制御部120は、医療器具1Dが交換可能である場合には、表示部117に、医療器具1Dの交換が可能であるというステータスを表示させ、マスタマニピュレータ115のマスタアーム116の動作に基づいた操作指令を無効とする。
医療システム150の操作者は、たとえば手作業によって、医療器具1Dを、本実施形態の医療器具1Dと同様であるが例えば処置部3の構成が異なる医療器具1や、予備の本実施形態の医療器具1Dへと交換することができる。
【0078】
すなわち、本実施形態では、医療システム150は、処置部3を用いた処置が可能な処置モードと、医療器具1の交換が可能な器具交換モードとを切り替えることができるようになっている。
【0079】
長軸部材113のチャンネル101Aに新たに挿通される医療器具1Dは、処置部3が収納部18に収納された状態である。チャンネル101Aに新たに挿通される医療器具1Dがチャンネル101Aに確実に挿入されたら、操作者が収納状態制御スイッチ118を押下する。これにより、この医療器具1Dの処置部3が収納部18からスリット17を通じて繰り出され、処置が可能な状態となる。
【0080】
本実施形態の医療システム150によれば、処置部3が収納部18に収納された状態であるか否かを制御部120において判定部121が判定するので、処置対象部位を撮像して得られた画像に頼らずに、処置部3が収納部18に収納されたことを確実に把握することができる。
また、収納部18に対する処置部3の出し入れがマスタマニピュレータ115の使用により行なうことができる。
【0081】
(変形例)
次に、本実施形態の変形例について図21から図24を参照しながら説明する。
図21は、同医療器具の変形例の構成を示す模式図である。図22は、同変形例の作用を説明するための説明図である。図23は、同変形例の作用を説明するための説明図である。
【0082】
図21に示すように、本変形例では、第2実施形態で説明した医療器具1Aに対して、上述のスイッチ部60とは構成が異なるスイッチ部60Aが設けられている。
【0083】
すなわち、本変形例では、第2実施形態で説明したスイッチング機構40の一部に、収納部18に対する処置部3の収納状態を判定部121に判定させるためのスイッチ部60Aが設けられている。
【0084】
スイッチ部60Aは、絶縁領域41Bに先端が配された第一配線63A及び第二配線64Aを有している。第一配線63Aの先端と第二配線64Aの先端とは、柱状端子43の突端部43aが共に接することによって導通する(図23及び図24参照)。
【0085】
また、柱状端子43がバネ端子42のみと導通している状態では、第一配線63Aと第二配線64Aとが絶縁状態であり、且つ柱状端子43にはバネ端子42を通じて高周波電流が通電可能である。第一配線63Aの基端および第二配線64Aの基端は、判定部121に接続されている。このため、第一配線63Aと第二配線64Aとが柱状端子43によって導通状態になったか否かの判定によって処置部3の収納状態の判定をすることができる。
本変形例においても、本実施形態と同様の効果を奏する。
【0086】
(変形例)
次に、本実施形態の他の変形例について説明する。
本変形例では、判定部121は、第一アクチュエータ33による第一ワイヤ24の牽引量を参照することによって、処置部3が収納部18内にあるか否かを判定する。
このような構成であっても本実施形態と同様の効果を奏する。
【0087】
(変形例)
次に、本実施形態のさらに他の変形例について説明する。
本変形例では、制御部120によって医療器具1Dの他の部分を制御するいくつかの例を示す。
【0088】
制御部120は、処置部3が収納部18に収納されているときに、切開電極4に対する高周波電流の通電を禁止するように制御を行なってもよい。すなわち、本変形例では、切開電極4に対する高周波電流の通電制御が制御部120によってなされている。本変形例の場合には、第2実施形態で説明したような高周波電流の通電状態のスイッチング機構40を備える必要がない。
【0089】
また、制御部120は、処置部3が収納部18に収納されているときに、スレーブアーム112の長軸部材113を弛緩させる制御を行なってもよい。この場合、スレーブアーム112の長軸部材113はマスタマニピュレータ115のマスタアーム116の操作により自在に湾曲動作可能である。スレーブアーム112の長軸部材113の湾曲動作には制御部120による上述の弛緩制御が介在しているため、処置部3が収納部18に収納されているときに、医療器具1Dの交換をしやすくする目的でスレーブアーム112の長軸部材113を弛緩させることができる。医療器具1Dに関節部10以外の他の関節が設けられているような場合、制御部120は、当該他の関節を弛緩状態として医療器具1Dの交換を容易とすることもできる。
【0090】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0091】
上記各実施形態及び変形例の医療器具および医療システムによれば、収納部は、処置部を用いて処置対象部位に対する処置をする際に処置部の向きや姿勢を最適化するための機構と、処置部を収納部に収納するために処置部を移動させるための機構とを兼用している。これにより、収納部が処置部の収納に特化している場合と比較して、医療器具を小型化することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 医療器具
2 挿入部
3 処置部
10 関節部
18 収納部
21 駆動力伝達部
30 駆動機構
32 駆動力発生部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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