特許第5989241号(P5989241)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989241
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】車両用パーキングブレーキの操作装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/06 20060101AFI20160825BHJP
   G05G 5/05 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   B60T7/06 B
   G05G5/05
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-517966(P2015-517966)
(86)(22)【出願日】2013年5月21日
(86)【国際出願番号】JP2013064127
(87)【国際公開番号】WO2014188519
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2015年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】黒柳 健二
(72)【発明者】
【氏名】谷 成人
【審査官】 佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−287217(JP,A)
【文献】 特開2000−255396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 1/00− 7/10
G05G 5/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に固定され、所定の間隔を隔てて相対向する一対の側板を有する支持ブラケットと、該支持ブラケットの一対の側板間において回動軸心まわりに回動可能に支持された操作ペダルと、該操作ペダルおよび前記側板の一方にそれぞれ掛止された両端部と該両端部の間が前記回動軸心まわりに巻回された巻回部とを有して、前記操作ペダルを元位置に向かって付勢するリターンスプリングとを備え、前記操作ペダルが前記回動軸心まわりに回動操作されることによりパーキングブレーキケーブルに張力を発生させてパーキングブレーキを作動させる車両用パーキングブレーキの操作装置であって、
前記リターンスプリングの端部は、該操作ペダルのペダルパッドを前記側板の一方又は他方へ向かって付勢するように曲げ成形されていることを特徴とする車両用パーキングブレーキの操作装置。
【請求項2】
前記リターンスプリングの操作ペダル側の端部は、前記巻回部からその接線方向に突き出し且つ前記側板の一方に接近する側へ所定角度を成す角度で折り曲げられていることを特徴とする請求項1の車両用パーキングブレーキの操作装置。
【請求項3】
前記操作ペダルの基端部は、前記巻回部の径方向において重なる前記回動軸心方向の厚み寸法を有するとともに、前記リターンスプリングの前記操作ペダル側の端部が掛止される掛止穴をその厚み方向の中央である中立面よりも前記側板の他方側に有しており、
前記リターンスプリングの操作ペダル側の端部は、その操作ペダルの中立面側へ曲がるように成形されていていることを特徴とする請求項1また2の車両用パーキングブレーキの操作装置。
【請求項4】
前記操作ペダルの基端部に設けられて前記リターンスプリングの操作ペダル側の端部が掛け止められる掛止穴は、前記車両前後方向において、前記回動軸心と前記操作ペダルのペダルパッドとの間に位置していることを特徴とする請求項3の車両用パーキングブレーキの操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用パーキングブレーキの操作装置に係り、特に、部品点数、組付工数、装置重量を増加させることなく操作ダルの横方向のガタを抑制する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用パーキングブレーキの操作装置の一種に、車体に固定され、所定の間隔を隔てて相対向する一対の側板を有する支持ブラケットと、該支持ブラケットの一対の側板間において回動軸心まわりに回動可能に支持された操作ペダルと、両端部が該操作ペダルおよび前記側板の一方にそれぞれ掛止され、該両端部の間が前記回動軸心まわりに巻回されて、前記操作ペダルを元位置に向かって付勢するリターンスプリングとを備え、前記操作ペダルが前記回動軸心まわりに回動操作されることによりパーキングブレーキケーブルに張力を発生させてパーキングブレーキを作動させる車両用パーキングブレーキの操作装置がある。たとえば、特許文献1、特許文献2、特許文献3に記載された装置がそれである。このような車両用パーキングブレーキの操作装置によれば、操作ペダルを足で踏み込むことによりパーキンブブレーキが制動状態とされるので、手で操作する場合に比較して、操作が容易で確実な制動力が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−034825号公報
【特許文献2】特開平09−030383号公報
【特許文献3】特開2010−274856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の車両用パーキングブレーキの操作装置では、足で踏み込まれる操作ペダルに横方向のガタが存在すると、操作者に違和感を与えることがある。このため、車両のパーキングブレーキの操作感覚すなわち操作フィーリングを損なわないように、その操作ペダルの横方向のガタをできるだけ小さくすることが望まれる。
【0005】
しかしながら、特許文献1、特許文献2、特許文献3に記載の車両用パーキングブレーキの操作装置には、操作ペダルの横方向のガタを抑制する機構が設けられておらず、操作ペダルの操作性能の要求値を満足するものではなかった。これに対して、操作ペダルの横方向のガタを抑制するための機構を設けることが考えられるが、部品点数を多く必要とする比較的大きな装置とならざるを得ず、組付工数、車両重量、価格を増加させ、フロントフロアのスペースを狭くするなどの問題があった。
【0006】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、操作ペダルの横方向のガタのない簡単な構成の車両用パーキンブブレーキの操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明者等は種々検討を重ねた結果、リターンスプリングは、操作ペダルの回動軸心まわりにコイル状に巻回されていて両端部が該操作ペダルおよび前記側板の一方にそれぞれ掛止されることにより操作ペダルを元位置に向かって付勢していることから、リターンスプリング全体が捻じれるように傾いた配置とされ、操作ペダルのリターンスプリングの端部が掛け止められた部分が前記側板の一方へ向かう力を受け、操作ペダルの踏面にその側板の一方へ傾く方向のモーメントが発生すること、および、操作ペダルをリターンスプリング側へ付勢するようにそのリターンスプリングの操作ペダル側の端部を折り曲げ成形すると、操作ペダルの回動軸心方向すなわち横(左右)方向のガタが好適に解消されることを、見いだした。本発明は斯かる知見に基づいてなされたものである。
【0008】
すなわち、本発明の要旨とするところは、(a) 車体に固定され、所定の間隔を隔てて相対向する一対の側板を有する支持ブラケットと、該支持ブラケットの一対の側板間において回動軸心まわりに回動可能に支持された操作ペダルと、該操作ペダルおよび前記側板の一方にそれぞれ掛止された両端部と該両端部の間が前記回動軸心まわりに巻回された巻回部とを有して、前記操作ペダルを元位置に向かって付勢するリターンスプリングとを備え、前記操作ペダルが前記回動軸心まわりに回動操作されることによりパーキングブレーキケーブルに張力を発生させてパーキングブレーキを作動させる車両用パーキングブレーキの操作装置であって、(b) 前記リターンスプリングの端部は、該操作ペダルのペダルパッドを前記側板の一方又は他方へ向かって付勢するように曲げ成形されていることにある。
【発明の効果】
【0009】
このような車両用パーキングブレーキの操作装置においては、回動軸心まわりにコイル状に巻回された前記リターンスプリングの前記操作ペダル側の端部は、装着状態において、その操作ペダルのペダルパッドを前記側板の一方又は他方へ向かって付勢するように曲げ成形されているため、コイル状に巻回されたリターンスプリングは全体が捻じれるように傾いて配置され、操作ペダルのペダルパッドはその踏面が前記側板の一方又は他方へ向かう方向のモーメントを受ける。リターンスプリングの操作ペダル側の端部を前記側板の一方または他方側ヘ付勢するように曲げ成形するという簡単な構成で、そのモーメントにより操作ペダルの横方向のガタが好適に抑制される。
【0010】
ここで、好適には、(c) 前記リターンスプリングの操作ペダル側の端部は、前記巻回部からその接線方向に突き出し且つ前記側板の一方に接近する側へ所定角度を成す角度で折り曲げられている。このようにすれば、コイル状に巻回されたリターンスプリングは全体が捻じれるように傾いて配置され、操作ペダルはその踏面が前記側板の一方へ向かう方向のモーメントを受けるので、操作ペダルの横方向のガタが好適に抑制される。
【0011】
また、好適には、(d) 前記操作ペダルの基端部は、前記巻回部の径方向において重なる前記回動軸心方向の厚み寸法を有するとともに、前記リターンスプリングの前記操作ペダル側の端部が掛止される掛止穴をその厚み方向の中央である中立面よりも前記側板の他方側に有しており、(e) 前記リターンスプリングの操作ペダル側の端部は、その操作ペダルの中立面側へ曲がるように成形されていている。このようにすれば、コイル状に巻回されたリターンスプリングは全体が捻じれるように傾いて配置され、操作ペダルはその踏面が前記側板の一方へ向かう方向のモーメントを受けるので、操作ペダルの横方向のガタが好適に抑制される。
【0012】
また、好適には、(f) 操作ペダルの基端部に設けられて前記リターンスプリングの操作ペダル側の端部が掛け止められる掛止穴は、前記車両前後方向において、前記回動軸心と前記操作ペダルのペダルパッドとの間に位置している。このようにすれば、コイル状に巻回されたリターンスプリングは全体が捻じれるように傾いて配置され、操作ペダルはその踏面が前記側板の一方へ向かう方向のモーメントを受けるので、操作ペダルの横方向のガタが好適に抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施例である足踏み式パーキングブレーキ操作装置の左側の側面を示す左側面図である。
図2図1の足踏み式パーキングブレーキ操作装置の正面を示す正面図である。
図3図1の足踏み式パーキングブレーキ操作装置の右側の側面を示す右側面図である。
図4図1の足踏み式パーキングブレーキ操作装置内の構成を左側側板を除去して説明する図である。
図5図1の足踏み式パーキングブレーキ操作装置に設けられているリターンスプリングの構成を説明する平面図である。
図6図1の足踏み式パーキングブレーキ操作装置に設けられているリターンスプリングの構成を説明する左側面図である。
図7図1の足踏み式パーキングブレーキ操作装置に設けられているリターンスプリングの構成を説明する正面図である。
図8図1の足踏み式パーキングブレーキ操作装置に設けられているリターンスプリングの装着状態を、左側側板を除去して説明する斜視図である。
図9図1の足踏み式パーキングブレーキ操作装置に設けられているリターンスプリングの装着状態を、右側側板および操作ペダルを除去して説明する斜視図である。
図10図1の足踏み式パーキングブレーキ操作装置において、リターンスプリングの巻回部が支持軸の軸心に対して傾斜して装着されている状態を説明する拡大図である。
図11】参考例の足踏み式パーキングブレーキ操作装置に設けられているリターンスプリングの操作ペダル側端部を示す平面図であって、図5に相当する図である。
図12】参考例の足踏み式パーキングブレーキ操作装置に設けられているリターンスプリングの操作ペダル側端部の折り曲げ角度を示す平面図であって、図5に相当する図である。
図13】折曲角θが異なる6種のリターンスプリングの横ガタを測定した実験結果を示す図であって、リターンスプリングの操作ペダル側端部の折り曲げ角度と操作ペダルの踏面の横方向のガタとの関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例】
【0015】
図1図2および図3は、本発明の一実施例である足踏み式パーキングブレーキ操作装置10を示す左側面図、正面図および右側面図である。また、図4は、その足踏み式パーキングブレーキ操作装置10の構成を説明するために左ブラケット14を除去して車両側方(左側)から見た図である。
【0016】
足踏み式パーキングブレーキ操作装置10は、車両の運転席前方において車体12に位置固定に配設される一対の左ブラケット14および右ブラケット16に、支持軸18により回動軸心Sまわりに回動可能に配設された操作ペダル20を備えている。左ブラケット14および右ブラケット16は、車体12に固定される基板部14aおよび16aと、その基板部14aおよび16aから直角に曲げられて相対向する側板部14bおよび16bとを備え、上記操作ペダル20の基端部がそれら一対の側板部14bおよび16bにより支持軸18まわりに回動可能に支持されている。操作ペダル20の先端部すなわち下端部にはペダルパッド22が設けられており、そのペダルパッド22が運転者によって踏込み操作されると、操作ペダル20は支持軸18まわりに回動させられ、パーキングブレーキケーブル24に張力を発生させて図示しない車輪に配設された図示しないパーキングブレーキ装置を作動させる。
【0017】
操作ペダル20の上部前方には、回動軸心Sを中心とする円弧形状に沿って多数の鋸歯26を有するラチェット28が取り付けられており、回動軸心Sと平行なポールピン30を介してブラケットに回転可能に配設されたポール32の噛合歯34と噛み合わされることにより、操作ペダル20の原位置側への戻り回動が阻止されてパーキングブレーキの作動状態が維持される。ポール32は、ポール32およびブラケットに掛け止められた捩りコイルスプリング36によってポールピン30の右まわり方向へ回動するように付勢されており、噛合歯34がラチェット28の鋸歯26と噛み合わされる。
【0018】
ラチェット28の鋸歯26は、回動軸心Sまわりにおいて操作ペダル20の踏込み操作時の回動方向Aと逆方向へ向かうほど高くなる傾斜歯で、捩りコイルスプリング36によって付勢されているポール32は、その付勢力に抗して揺動しながら鋸歯26を乗り越えることができる。そして、操作ペダル20に対する踏込み操作力が解除されると、操作ペダル20はパーキングブレーキケーブル24の張力に従って戻り回動させられるとともに、三角形状の噛合歯34はラチェット28の歯溝内に進入し、鋸歯26のロック面〜歯底面に当接させられて操作ペダル20のそれ以上の戻り回動が阻止され、これによりパーキングブレーキの作動状態が維持される。ラチェット28およびポール32は何れも金属材料製で、ロック面およびそのロック面に対面する噛合歯34の側端面は、直線状を成す平坦面で互いに略密着させられるとともに、歯底面および噛合歯34の先端面は何れも側面視において曲率が略等しい円弧形状を成す円筒面で互いに略密着させられ、ロック状態すなわちパーキングブレーキの作動状態が安定して維持される。
【0019】
ポールピン30はポール32に設けられた長穴42内を挿通させられており、ポール32の噛合歯34がラチェット28の鋸歯26と噛み合わされると、パーキングブレーキケーブル24の張力によりポール32の回転中心が変化するとともに、捩りコイルスプリング36による付勢方向が逆転する。これにより、再度操作ペダル20が踏まれてラチェット28との噛合が解除されると、ポール32は捩りコイルスプリング36の付勢力に従ってポールピン30の左まわりに回動させられ、ラチェット28との噛合が不能となる。操作ペダル20は、両端部すなわち一対の端部44aおよび44bが操作ペダル20の基端部と左ブラケット14の側板部14bとにそれぞれ掛け止められ、それら端部44aおよび44bの間の巻回部44cが支持軸18まわりすなわち回動軸心Sまわりに巻回されたリターンスプリング44によって回動軸心Sまわりに元位置へ向かって回動するように付勢されており、このリターンスプリング44の付勢力およびパーキングブレーキケーブル24の張力に従って図1乃至図4に示す原位置まで戻り回動させられる。操作ペダル20の原位置は、ブラケットの側板部に取り付けられたストッパ46により規定されるとともに、操作ペダル20が原位置まで戻り回動させられる際に、その操作ペダル20に一体に設けられた戻し当接部48がポール32と当接させられることにより、そのポール32がポールピン30まわりに回動させられ、回転中心が初期位置へ復帰させられるとともに、捩りコイルスプリング36による付勢方向が右まわり方向に戻される。
【0020】
図5図6図7は、リターンスプリング44の装着後の形状を示す平面図、左側面図、および正面図である。リターンスプリング44の装着前は端部44aが図6の破線に示す位置となる。リターンスプリング44は、操作ペダル20の基端部と左ブラケット14の側板部14bとにそれぞれ掛け止められた一対の端部44aおよび44bと、それら端部44aおよび44bの間で回動軸心Sまわりにすなわち支持軸18まわりに巻回された巻回部44cとを備え、巻回部44cはその回動軸心と共通の軸心を有している。操作ペダル20は、1枚の鋼板から長手状に且つ長手方向に交差する断面がコの字状に曲成されたプレス部品であり、操作ペダル20の基端部の回動軸心Sに直交し且つ回動軸心S方向の厚み寸法の中立面Cが、回動軸心S方向において、リターンスプリング44の巻回部44cを通過するように位置させられている。
【0021】
図8図9図10は、リターンスプリング44の装着状態を説明する、左ブラケット14を取り除いて示す斜視図、右ブラケット16を取り除いて示す斜視図、および、拡大して示す正面図である。左ブラケット14の側板部14bに掛け止められるリターンスプリング44の端部44aは、巻回部44cからその接線方向に延びる直線部Taと回動軸心Sと平行となるようにその直線部Taに対して直角に曲成された掛止部Faとを備え、その掛止部Faが左ブラケット14の側板部14bに貫通して形成された掛止穴14c内に掛け止められている。
【0022】
操作ペダル20の基端部に掛け止められるリターンスプリング44の端部44bは、巻回部44cの接線方向に延びる直線部Kbと、折曲点MPにおいて操作ペダル20の中立面Cに対して所定の折曲角θだけ左ブラケット14側となるようにすなわち操作ペダル20の中立面C側となるように巻回部44cから折り曲げられた長さLbの直線状の折曲部Tbと、その折曲部Tbに対して直角に曲成されたオフセット部Sbと、そのオフセット部Sbに対して直角に曲成された掛止部Fbとを備え、その掛止部Fbが操作ペダル20の基端部のうちに回動軸心S方向の右ブラケット16側に貫通して形成された掛止穴20a内に掛け止められている。この折曲部Tb、掛止部Fbと、その掛止部Fbが掛け止められる掛止穴20aは図4の左右(水平)方向である車両前後方向において、支持軸18の軸心Sとペダルパッド22との間に位置させられていて、折曲部Tbの弾性復帰力が軸心Sとペダルパッド22との間に左ブラケット14側へ向かう方向へ作用させられるようになっている。また、上記折曲部Tbの長さLbは、横ガタ抑制と組付性とのバランスを考慮して25mm程度に設定されている。25mm程度より小さいと組付性が低下し、25mm程度より大きいと横ガタ抑制効果が低下する傾向となる。
【0023】
上記のように、リターンスプリング44の端部44bの折曲部Tbが、折曲点MPにおいて、巻回部44cの接線方向に延び且つ操作ペダル20の中立面Cに対して所定の折曲角θだけ左ブラケット14側となるようにすなわち操作ペダル20の中立面C側となるように巻回部44cから折り曲げられている。このため、その端部44bの掛止部Fbが、図10に示すように、操作ペダル20の中立面Cに対して平行になる側へ変形させつつ操作ペダル20の基端部に貫通して形成された掛止穴20a内に係合させられると、図10に示すように、その折曲部Tbの弾性復帰力により図10の正面図において回動軸心Sと中立面Cとの交点Pまわりの時計まわりのモーメントMが発生する。このモーメントMにより、リターンスプリング44の全体が捻じれるように巻回部44cの中立面C’が装着前の中立面Cに対して傾斜させられ、操作ペダル20のペダルパッド22の踏面が左ブラケット14側すなわち車両の左側へ傾く方向に傾斜させられる。これにより、図8の巻回部接触部位R16においては、リターンスプリング44の巻回部44cと右ブラケット16の側板部16bとが押圧状態で接触させられ、図8の折曲点接触部位Rbにおいては、リターンスプリング44の右ブラケット16側の端部44bの折曲点MPと右ブラケット16の側板部16bとが押圧状態で接触させられる。また、図9の巻回部接触部位R14においては、リターンスプリング44の巻回部44cと左ブラケット14の側板部14bとが押圧状態で接触させられる。このような与圧により、操作ペダル20のペダルパッド22の横方向のガタすなわち左右のガタが好適に解消される。
【0024】
本発明者等は、線径がφ3.8mmのピアノ線(JISG3522)を用い、巻回部44cの捲き径(コイルの内径)がφ66.2mmとなるように巻回し、図11に示すリターンスプリングの試験品1、および図12に示すリターンスプリングの試験品2、および試験品3を作成した。この試験品1は、折曲点MPにおいて折り曲げられておらず、直線部Kbと折曲部Tbとが一直線上に位置する以外は、リターンスプリング44と同様のものである。また、試験品2および試験品3は、前述の実施例とは逆に、折曲部Tbが右ブラケット16側へ折り曲げられてその折曲部Tbの操作ペダル20の中立面Cに対する折曲角θが15°および25°を成している以外は、リターンスプリング44と同様のものである。そして、そのような試験品1、試験品2および試験品3を用いて、ペダルパッド22の横方向のガタ(横ガタ)を以下の試験条件を用いて測定した。
【0025】
(横ガタ試験条件)
測定装置:ロードセル、変位計、デジタル指示計、デジタルオシロレコーダー
測定方法:(1)試験品を剛体治具に組み付ける。(パーキングブレーキケーブルは外されている)
(2)上記測定装置において、無負荷時を変位0点とし、ペダルパッドへ車両左右方向に±4.9Nの負荷を加え、得られたF−S線図より総変化量を求めることで横ガタ(mm)を測定した。
【0026】
上記の横ガタ試験によれば、試験品1では6.8mmの横ガタが測定された。また、試験品2および3では、6.4mmおよび6.7mmの横ガタが測定された。それらの横ガタ値は、予め設定された品質基準値3mmを越えており、不合格の判定となった。
【0027】
次いで、本発明者等は、上記試験品1、2、3と同じ材質および線径の線材で、同じ捲径を用いて、前述の実施例の図5乃至図7等に示すリターンスプリング44と同様の構成であるが、折曲点MPにおける折曲角θが、20°、21°、22°、23°、24°、25°である6種類の試験品4乃至試験品9を作成した。そして、それら6種類の試験品4乃至試験品9について、上記と同様の横ガタ試験を行なった。図13は、本発明者等が行なった実験結果を示している。これから明らかなように、上記折曲点MPにおける(折曲部Tbの操作ペダル20の中立面Cに対する)折曲角θは、21°を越えると、横ガタが予め設定された品質基準値3mm以下となり、好適な結果が得られた。
【0028】
上述のように、本実施例の足踏み式パーキングブレーキ操作装置10においては、回動軸心Sまわりにコイル状に巻回されたリターンスプリング44の操作ペダル20側の端部44bは、装着状態において、その操作ペダル20を左ブラケット14の側板部14b(側板の一方)側ヘ付勢するように曲げ成形されているため、コイル状に巻回されたリターンスプリング44は図10に示すように全体が捻じれるように傾いて配置され、操作ペダル20はそのペダルパッド22の踏面が上記左ブラケット14の側板部14b側へ向かう方向のモーメントMを受ける。これにより、リターンスプリング44の操作ペダル20側の端部を左ブラケット14の側板部14b側ヘ付勢するように曲げ成形するという簡単な構成で、そのモーメントMにより操作ペダル20の横方向のガタが好適に抑制される。
【0029】
また、本実施例の足踏み式パーキングブレーキ操作装置10によれば、リターンスプリング44の操作ペダル20側の端部44bは、巻回部44cからその接線方向に突き出し且つ左ブラケット14の側板部14b(側板の一方)に接近する側へ所定の折曲角θを成す角度で折り曲げられている。このため、コイル状に巻回されたリターンスプリング44は全体が捻じれるように傾いて配置され、操作ペダル20はそのペダルパッド22の踏面が左ブラケット14の側板部14bへ向かう方向のモーメントMを受けるので、操作ペダル20の横方向のガタが好適に抑制される。
【0030】
また、本実施例の足踏み式パーキングブレーキ操作装置10によれば、操作ペダル20の基端部は、巻回部44cの径方向においてその巻回部44cと重なる回動軸心S方向の厚み寸法を有するとともに、リターンスプリング44の操作ペダル20側の端部44bが掛止される掛止穴20aをその厚み方向の中央である中立面Cよりも右ブラケット16の側板部16b(側板の他方)側に有しており、リターンスプリング44の操作ペダル20側の端部44bは、その操作ペダル20の中立面C側へ折れ曲がるように成形されていている。このため、コイル状に巻回されたリターンスプリング44は全体が捻じれるように傾いて配置され、操作ペダル20はそのペダルパッド22の踏面が左ブラケット14の側板部14bへ向かう方向のモーメントMを受けるので、操作ペダル20の横方向のガタが好適に抑制される。
【0031】
また、本実施例の足踏み式パーキングブレーキ操作装置10によれば、操作ペダル20の基端部に設けられてリターンスプリング44の操作ペダル20側の端部44bが掛け止められる掛止穴20aは、図4の左右(水平)方向である車両の前後方向において、回動軸心Sと前記操作ペダル20のペダルパッド22との間に位置している。このようにすれば、コイル状に巻回されたリターンスプリング44は全体が捻じれるように傾いて配置され、操作ペダル20はそのペダルパッド22の踏面が左ブラケット14の側板部14b(側板の一方)へ向かう方向のモーメントMを受けるので、操作ペダル20の横方向のガタが好適に抑制される。
【0032】
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0033】
たとえば、前述の実施例においては、1対の左ブラケット14および右ブラケット16が別体の部品として用いられていたが、それら左ブラケット14および右ブラケット16は、相互に一体の部品であってもよい。要するに、左側板部14および右側板部16を備えるブラケットであればよい。
【0034】
また、前述の実施例のリターンスプリング44は、その端部44bが車両の前後方向において回動軸心Sと操作ペダル20のペダルパッド22との間を左ブラケット14側に付勢することでモーメントMを発生させるものであったが、そのモーメントMを発生させるものであれば、他の形状であってもよい。たとえば、リターンスプリング44の左ブラケット14側の端部44aを、回動軸心Sに対して右ブラケット16側の端部44bとは反対方向に突き出すとともに、巻回部44cが左ブラケット14側へ向かう方向の付勢力を発生させるように、前述の実施例の端部44bの折曲部Tbと同様の折曲部が形成されるようにその端部44aに曲げ成形を施してもよい。このようにしても、リターンスプリング44が図10に示すものとは反対に捻じれた状態で装着されるとともに前記のモーメントMとは反対方向のモーメントを発生させ、操作ペダル20のペダルパッド22を右ブラット16側へ付勢するので、操作ペダル20のペダルパッド22における横ガタが好適に抑制される。
【0035】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0036】
10:足踏み式パーキングブレーキ操作装置(車両用パーキングブレーキの操作装置)
12:車体
14:左ブラケット(支持ブラケット)
14b:側板部(側板の一方)
16:右ブラケット(支持ブラケット)
16b:側板部(側板の他方)
18:支持軸
20:操作ペダル
20a:掛止穴
22:ペダルパッド
24:パーキングブレーキケーブル
44:リターンスプリング
44a:端部
44b:端部(操作ペダル側の端部)
44c:巻回部
46:ストッパ
Tb:折曲部
Kb:直線部
Sb:オフセット部
Fb:掛止部
MP:折曲点
S:回動軸心
C:中立面
図1
図2
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図13