(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989253
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】mGluR5受容体活性のモジュレータとしてのエチニル誘導体
(51)【国際特許分類】
C07D 213/81 20060101AFI20160825BHJP
A61K 31/444 20060101ALI20160825BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20160825BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20160825BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20160825BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20160825BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20160825BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20160825BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
C07D213/81CSP
A61K31/444
A61P1/00
A61P25/00
A61P25/04
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/24
A61P43/00 111
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-537221(P2015-537221)
(86)(22)【出願日】2013年10月15日
(65)【公表番号】特表2015-534965(P2015-534965A)
(43)【公表日】2015年12月7日
(86)【国際出願番号】EP2013071493
(87)【国際公開番号】WO2014060394
(87)【国際公開日】20140424
【審査請求日】2015年4月15日
(31)【優先権主張番号】12189015.6
(32)【優先日】2012年10月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ヤーシュケ,ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】リンデマン,ローター
(72)【発明者】
【氏名】リッチ,アントーニオ
(72)【発明者】
【氏名】リュエル,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】シュタードラー,ハインツ
(72)【発明者】
【氏名】フィエイラ,エリック
【審査官】
山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/051201(WO,A1)
【文献】
特表2001−509504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 213/81
C07D 239/28
C07D 401/12−401/14
C07D 403/12−403/14
A61K 31/395
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化17】
[式中、
YはN又はCHである]
で示される化合物もしくは薬学的に許容しうる酸付加塩、ラセミ混合物、又はその対応する鏡像異性体及び/もしくは光学異性体及び/もしくはその立体異性体。
【請求項2】
YがNである、請求項1に記載の式Iで示される化合物。
【請求項3】
前記化合物が、
5−(2−クロロ−ピリジン−4−イルエチニル)−ピリジン−2−カルボン酸tert−ブチル−メチル−アミド
である、請求項2に記載の式Iで示される化合物。
【請求項4】
YがCHである、請求項1に記載の式Iで示される化合物。
【請求項5】
前記化合物が、
5−(3−クロロ−フェニルエチニル)−ピリジン−2−カルボン酸tert−ブチル−メチル−アミド
である、請求項4に記載の式Iで示される化合物。
【請求項6】
治療上有効な物質としての使用のための、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1に記載の式Iで示される化合物の調製のための方法であって、以下のバリアント:
a)式
【化18】
で示される化合物を化合物CH
3Iと反応させ、式
【化19】
[式中、置換基は請求項1に記載される]で示される化合物とすること、又は
b)式
【化20】
で示される化合物を、式
【化21】
で示される化合物と反応させ、式
【化22】
[式中、置換基は請求項1に記載される]で示される化合物とすることを含む、方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物及び治療上有効な担体を含有する医薬組成物。
【請求項9】
不安及び疼痛、うつ病、脆弱X症候群、自閉性障害、パーキンソン病、ならびに胃食道逆流疾患(GERD)の処置のための、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
不安及び疼痛、うつ病、脆弱X症候群、自閉性障害、パーキンソン病、ならびに胃食道逆流疾患(GERD)を処置するための薬品の製造のための、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項11】
不安及び疼痛、うつ病、脆弱X症候群、自閉性障害、パーキンソン病、ならびに胃食道逆流疾患(GERD)の処置のための、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式I
【化1】
[式中、
YはN又はCHである]
で示されるエチニル誘導体もしくは薬学的に許容しうる酸付加塩、ラセミ混合物、又はその対応する鏡像異性体及び/もしくは光学異性体及び/もしくはその立体異性体に関する。
【0002】
驚くべきことに、ここで、一般式Iで示される化合物が代謝型グルタミン酸受容体アンタゴニスト(NAM=ネガティブアロステリックモジュレータ)であることが見出された。式Iで示される化合物は有益な治療的性質を有することにより識別される。これらの化合物は、mGluR5受容体介在性疾患の治療又は予防で使用され得る。
【0003】
中枢神経系(CNS)では、刺激の伝達は、ニューロンにより放出される神経伝達物質と、神経受容体との相互作用によって起こる。
【0004】
グルタミン酸は、脳内の主要な興奮性神経伝達物質であり、様々な中枢神経系(CNS)機能において特有の役割を担っている。グルタミン酸依存性刺激受容体は2つの主要なグループに分類される。第1の主要なグループ、すなわちイオンチャネル型受容体は、リガンド制御イオンチャネルを形成する。代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)は、第2の主要なグループに属し、更にGタンパク質共役受容体の一族に属している。
【0005】
現在、これらのmGluRの8類の異なるメンバーが知られており、その中には更にサブタイプを有するものもある。これらの8類の受容体は、それらの配列相同性、シグナル伝達機構及びアゴニスト選択性により、3つのサブグループに細分され得る。すなわち、mGluR1及びmGluR5はグループIに属し、mGluR2及びmGluR3はグループIIに属し、mGluR4、mGluR6、mGluR7及びmGluR8はグループIIIに属する。
【0006】
代謝型グルタミン酸受容体のネガティブアロステリックモジュレータは、第1のグループに属し、急性及び/又は慢性の神経疾患、例えば、パーキンソン病、脆弱X症候群、自閉性障害、認知障害及び記憶障害、ならびに慢性及び急性の疼痛及び胃食道逆流疾患(GERD)の治療又は予防に用いられうる。
【0007】
これに関連して、他の処置可能な症状は、バイパス手術もしくは移植による脳機能障害、脳への血液供給不足、脊髄損傷、頭部損傷、妊娠による低酸素症、心拍停止及び低血糖である。さらに処置可能な症状は、虚血、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、AIDSによる認知症、眼損傷、網膜症、特発性パーキンソン症候群又は薬品によるパーキンソン症候群、ならびにグルタミン酸欠乏機能に至る症状、例えば筋痙攣、発作、片頭痛、尿失禁、ニコチン中毒、アヘン中毒、不安、嘔吐、運動障害、及びうつ病である。
【0008】
mGluR5が完全に又は部分的に介在する疾患は、例えば、神経系の急性、外傷性 及び慢性の変性過程、例えばアルツハイマー病、老人性認知症、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症及び多発性硬化症、精神疾患、例えば統合失調症及び不安、うつ病、疼痛、ならびに薬物依存症である(Expert Opin. Ther. Patents (2002), 12, (12))。
【0009】
選択的mGluR5アンタゴニストは、mGluR5受容体活性化の低下が望まれる疾患、例えば、不安及び疼痛、うつ病、脆弱X症候群、自閉性障害、パーキンソン病、ならびに胃食道逆流疾患(GERD)の処置に特に有用である。
【0010】
本発明の目的は、式Iで示される化合物及びそれらの薬学的に許容しうる塩、薬学的に活性な物質としての上記化合物及びそれらの製造である。本発明のさらなる目的は、本発明による化合物に基づく薬品及びそれらの製造、ならびにmGluR5受容体(NAM)介在性疾患(不安及び疼痛、うつ病、脆弱X症候群、自閉性障害、パーキンソン病、及び胃食道逆流疾患(GERD))の制御又は予防での上記化合物の使用、ならびにそれぞれ対応する薬品の製造のための上記化合物の使用である。
【0011】
本発明の一実施形態は、式I[式中、YはNである]で示される化合物である。
【0012】
本化合物は、
5−(2−クロロ−ピリジン−4−イルエチニル)−ピリジン−2−カルボン酸tert−ブチル−メチル−アミド
である。
【0013】
本発明の一実施形態は、式I[式中、YはCHである]で示される化合物である。
【0014】
本化合物は、
5−(3−クロロ−フェニルエチニル)−ピリジン−2−カルボン酸tert−ブチル−メチル−アミド
である。
本発明の特定の実施形態は、次の化合物からなる:
5−(2−クロロ−ピリジン−4−イルエチニル)−ピリジン−2−カルボン酸tert−ブチル−メチル−アミド、
5−(3−クロロ−フェニルエチニル)−ピリジン−2−カルボン酸tert−ブチル−メチル−アミド。
【0015】
本発明の化合物に類似した化合物は、一般的に、mGluR5受容体のポジティブアロステリックモジュレータと述べられてきた。驚くべきことに、ポジティブアロステリックモジュレータと比較した場合、完全に反対の薬理学を有する、非常に強力なmGluR5アンタゴニストが、mGluR5ポジティブアロステリックモジュレータの代わりに得られたことが分かった。
【0016】
ポジティブアロステリックモジュレータとネガティブアロステリックモジュレータの主な違いを
図1で確認することができる。mGluR5ポジティブアロステリックモジュレータ(PAM)は、一定濃度のグルタマートの存在下で、受容体活性(Ca
2+動員)の増加を導くが、アロステリックアンタゴニスト(ネガティブアロステリックモジュレータ、NAM)は受容体活性化の低下を導く。
図1は、同じ条件下のNAMとPAMの一般的挙動を示している。
図1の受容体についての親和性は、PAMの場合、約10
−7Mであり、NAMの場合、10
−7Mと10
−8Mの間である。これらの値は、放射性リガンド(=MPEP)を置換する結合アッセイ(binding assay)を使用して測定することができる(アッセイの記述を参照のこと)。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】mGluR5ポジティブアロステリックモジュレータ(PAM)とmGluR5アンタゴニスト(ネガティブアロステリックモジュレータ=NAM)の比較。
【0018】
化合物によって対象とされる症状は同じではない。mGluR5−NAMは、過剰な受容体活性の低下が望まれる症状、例えば、不安及び疼痛、うつ病、脆弱X症候群、自閉性障害、パーキンソン病、ならびに胃食道逆流疾患(GERD)に有効である。一方、mGluR5PAMは、低下した受容体活性の正常化が望まれる症状、例えば、精神病、癲癇、統合失調症、アルツハイマー病及び関連した認知障害、ならびに結節性硬化症に有用である。
【0019】
この違いを、例えば、「ラットVogel型コンフリクト飲水試験(rat Vogel conflict drinking test)」などの不安動物モデルで実際に示すことができ、ここでは、本発明の化合物は抗不安活性を示すが、mGluR−PAMはこの動物モデルでは活性を示さない。
【0020】
バイオアッセイ法及びデータ:
細胞内Ca
2+動員アッセイ法
ヒトmGlu5a受容体をコードするcDNAで安定にトランスフェクトされたモノクローナルHEK−293細胞株を生成した。mGlu5ポジティブアロステリックモジュレータ(PAM)を用いた試験については、低受容体発現レベル及び低構成的受容体活性を有する細胞株を選択し、アゴニスト活性対PAM活性の差別化を可能にした。細胞を、標準プロトコル(Freshney, 2000)に従い、1mMグルタミン、10%(vol/vol)加熱不活性化子ウシ血清、ペニシリン/ストレプトマイシン、50μg/mLハイグロマイシン及び15μg/mLブラストサイジンを補充した、高グルコースのダルベッコ変法イーグル培地で培養した(細胞培養試薬及び抗生物質は全てInvitrogen(Basel, Switzerland)製である)。
【0021】
実験の約24時間前、ポリ−D−リシンでコーティングしたブラック/クリア底の96ウェルプレートに、5×10
4細胞/ウェルを播種した。ローディングバッファー(1×HBSS、20mM HEPES)中の2.5μM Fluo-4AMで、37℃で1時間、細胞を負荷し、ローディングバッファーで5回洗浄した。細胞をFunctional Drug Screening System 7000 (Hamamatsu, Paris, France)に移し、試験化合物の11種類の半対数段階希釈液を37℃で加え、オンラインで蛍光の記録を取りながら、細胞を10〜30分間インキュベーションした。このプレインキュベーション工程の後、オンラインで蛍光の記録を取りながら、アゴニストのL−グルタマートをEC
20に相当する濃度(典型的には、約80μM)で細胞に加えた。細胞の応答性の毎日の変化を説明するために、グルタミン酸の総用量反応曲線の記録によって、各実験の直前にグルタマートのEC
20を決定した。
【0022】
応答を、蛍光増加ピークから基底値(すなわち、L−グルタマートの添加なしの蛍光)を差し引いたものとして測定し、L−グルタマートの飽和濃度で得られた最大刺激効果に対して正規化した。グラフは、Levenburg Marquardtアルゴリズムを使用してデータを反復的にプロットする曲線あてはめプログラム(curve fitting program)であるXLfitを用いて最大刺激%でプロットされた。使用した単一部位競合分析式(single site competition analysis equation)は、y=A+((B−A)/(1+((x/C)D)))[式中、yは、最大刺激効果%であり、Aは、最小yであり、Bは、最大yであり、Cは、EC
50であり、xは、競合化合物の濃度のlog10であり、そしてDは、曲線の傾き(ヒル係数)である]であった。これらの曲線から、EC
50(最大刺激の半分が達成された濃度)、ヒル係数、及びL−グルタマートの飽和濃度で得られた最大刺激効果の最大応答(%)を計算した。
【0023】
PAM試験化合物を用いたプレインキュベーションの間(すなわち、EC
20濃度のL−グルタマートの適用前)に得られたポジティブシグナルはアゴニスト活性を示しており、このシグナルの非存在は、アゴニスト活性の欠如を表していた。EC
20濃度のL−グルタマートの添加後に観察されたシグナルの低下は、試験化合物の阻害活性を示していた。
【0024】
以下の実施例のリストに、化合物の対応する結果を示す。これらは全て50nM以下のEC
50値を全て有する。
【0025】
【表1】
【0026】
MPEP結合アッセイ:
結合実験については、Schlaeger及びChristensen[Cytotechnology 15:1-13 (1998)]によって記載された手順を用いて、ヒトmGlu5a受容体をコードするcDNAを、EBNA細胞に一時的にトランスフェクトした。細胞膜ホモジェネートをアッセイ当日まで−80℃で保存し、アッセイ当日、その細胞膜ホモジェネートを解凍し、pH7.4の結合バッファー(15mM Tris−HCl、120mM NaCl、100mM KCl、25mM CaCl
2、25mM MgCl
2)に再懸濁し、ポリトロナイズ(polytronise)し、20μgのタンパク質/ウェルの最終アッセイ濃度とした。
【0027】
これらの膜(総容積200μL)に12種類の[
3H]MPEP濃度(0.04〜100nM)を4℃で1時間加えることにより、飽和等温線を決定した。一定濃度の[
3H]MPEP(2nM)で競合実験を行い、11種類の濃度(0.3〜10,000nM)を用いて、試験化合物のIC
50値を評価した。インキュベーションを、4℃で1時間行った。
【0028】
インキュベーションの最後に、Filtermate 96ハーベスター(Packard BioScience)を用いて、ユニフィルター(洗浄バッファー中の0.1%PEI中で1時間プレインキュベーションした、結合GF/Cフィルターを有する96ウェルホワイトマイクロプレート、Packard BioScience, Meriden, CT)で膜を濾過し、冷却した50mM Tris−HClバッファー(pH7.4)で3回洗浄した。10μM MPEPの存在下で、非特異的結合を測定した。フィルター上の放射能を、45μLのmicroscint 40(Canberra Packard S.A., Zurich, Switzerland)を加えて20分間振盪した後、クエンチング補正を有するPackardのTop-countマイクロプレートシンチレーションカウンターで計測した(3分間)。
【0029】
本発明の化合物と対照化合物1及び2の比較
以下の表から分かるように、本発明の化合物(NAM)は、構造上類似した対照化合物1、2及び3(PAM)と比較して、明らかに異なるプロファイルを示す。
【0030】
【表2】
【0031】
式Iで示される化合物は、下記の方法、実施例で示される方法、又は類似の方法により製造され得る。個々の反応工程に適した反応条件は当業者に公知である。しかしながら、反応順序はスキームで示したものに限定されず、出発物質及びそれらの各反応性によって、反応工程の順序は自由に変更することができる。出発物質は、市販されているか、下記の方法と類似した方法、本明細書で引用された参考文献もしくは実施例に記載の方法、又は当該技術分野において公知の方法によって調製され得るかのいずれかである。
【0032】
式Iで示される本化合物及びそれらの薬学的に許容しうる塩は、当該技術分野において公知の方法、例えば下記のプロセスバリアントによって調製されてもよく、その方法は、
a)式
【化2】
で示される化合物を化合物CH
3Iと反応させ、式
【化3】
[式中、置換基は上述したものである]で示される化合物とすること、又は
b)式
【化4】
で示される化合物を、式
【化5】
で示される化合物と反応させ、式
【化6】
[式中、置換基は上述したものである]で示される化合物とすることを含む。
【0033】
式Iで示される化合物の調製は、スキーム1及び2、ならびに実施例1〜2でさらにより詳細に記載される。
【0034】
【化7】
【0035】
実施例1は、例えば、ジオキサンなどの溶媒中、ヒューニッヒ塩基などの塩基とTBTUなどのペプチドカップリング試薬の存在下で、5−ブロモ−ピリジン−2−カルボン酸1をtert−ブチルアミン2と反応させることによって得られうる。アリールアセチレン4のインサイチュ(in−situ)脱シリル化を伴う5−ブロモ−ピリジン−2−カルボン酸アミド3の薗頭カップリングが所望のエチニル化合物5を生成する。DMFなどの溶媒中のヨードメタン及び水素化ナトリウムを用いたエチニル化合物5のアルキル化が、所望の実施例1を生成される(スキーム1)。
【0036】
【化8】
【0037】
実施例2は、例えば、DMFなどの溶媒中のヨードメタン及び水素化ナトリウムを用いた5−ブロモ−ピリジン−2−カルボン酸アミド3のアルキル化により、所望の5−ブロモ−ピリジン−2−カルボン酸アミド6を生成して得られうる。5−ブロモ−ピリジン−2−カルボン酸アミド6とエチニルトリメチルシラン7の薗頭カップリングが、対応する5−トリメチルシラニルエチニル誘導体8を生成する。8のインサイチュ(in−situ)脱シリル化と1−クロロ−3−ヨードベンゼン9の薗頭カップリングが、所望の実施例2を生成する(スキーム2)。
【0038】
式Iで示される化合物の薬学的に許容しうる塩は、塩に変換される化合物の性質を考慮にした自体公知の方法に従って容易に製造され得る。無機酸又は有機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸又はクエン酸、ギ酸、フマル酸、マレイン酸、酢酸、コハク酸、酒石酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などが、式Iで示される塩基性化合物の薬学的に許容しうる塩の形成に適切である。例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属、塩基性アミン又は塩基性アミノ酸を含む化合物が、酸性化合物の薬学的に許容しうる塩の形成に適切である。
【0039】
さらに、本発明はまた、mGluR5受容体介在性疾患、例えば、不安及び疼痛、うつ病、脆弱X症候群、自閉性障害、パーキンソン病、ならびに胃食道逆流疾患(GERD)の治療及び予防のための、1種以上の本発明の化合物及び薬学的に許容しうる賦形剤を含有する薬品にも関する。
【0040】
本発明はまた、上記で概説したmGluR5受容体介在性疾患の治療及び予防のための薬品を製造するための、本発明による化合物及びその薬学的に許容しうる塩の使用にも関する。
【0041】
式Iで示される化合物の薬学的に許容しうる塩は、塩に変換される化合物の性質を考慮にした自体公知の方法に従って容易に製造され得る。無機酸又は有機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸又はクエン酸、ギ酸、フマル酸、マレイン酸、酢酸、コハク酸、酒石酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などが、式Iで示される塩基性化合物の薬学的に許容しうる塩の形成に適切である。例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属、塩基性アミン又は塩基性アミノ酸を含む化合物が、酸性化合物の薬学的に許容しうる塩の形成に適切である。
【0042】
化合物の薬理活性は、次の方法を用いて試験された。すなわち、ラットmGlu5a受容体をコードするcDNAを、E. -J. Schlaeger及びK. Christensen(Cytotechnology 1998, 15, 1-13)によって記載された手順を用いて、EBNA細胞に一時的にトランスフェクトした。Fluo 3-AM(FLUKAから入手可能、最終濃度0.5μM)での細胞の37℃で1時間でのインキュベーション、続いてアッセイ用バッファー(Hank's塩及び20mM HEPESが補充されたDMEM)での4回洗浄の後、mGlu5aトランスフェクトEBNA細胞に[Ca
2+]i測定を行った。[Ca
2+]i測定は、蛍光イメージングプレートリーダ(FLIPR, Molecular Devices Corporation, La Jolla, CA, USA)を用いて行った。化合物をアンタゴニストとして評価する際には、それらを、アゴニストとしてグルタマート10μMに対して試験した。
【0043】
反復的非線形曲線あてはめソフトウェアOrigin(Microcal Software Inc., Northampton, MA, USA)を用いて、阻害(アンタゴニスト)曲線を4パラメータロジスティック方程式にあてはめ、IC
50及びヒル係数を求めた。
【0044】
試験化合物のKi値を求める。Ki値は、以下の式により定義される。
【0045】
【数1】
【0046】
上記式中、IC
50値は、化合物の効果の50%が拮抗される試験化合物の濃度(μM)である。[L]は濃度であり、EC
50値は、約50%の刺激をもたらす化合物の濃度(μM)である。
【0047】
本発明の化合物はmGluR5a受容体アンタゴニストである。上述のアッセイで測定される式Iで示される化合物の活性は、Ki<100μMの範囲内である。
【0048】
式Iで示される化合物及びその薬学的に許容しうる塩は、例えば医薬調製剤の形態で、薬品として使用され得る。医薬調製剤は、例えば、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬質及び軟質のゼラチンカプセル剤、液剤、乳剤又は懸濁剤の形態で、経口投与され得る。しかしながら、例えば坐剤の形態で直腸内に投与が実施され得、又は、例えば注射液の形態で非経口的に投与が実施され得る。
【0049】
式(I)で示される化合物及びその薬学的に許容しうる塩は、医薬調製剤を製造するための薬学的に不活性な無機又は有機の担体で加工され得る。ラクトース、コーンスターチ又はその誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩などは、例えば、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、及び硬質ゼラチンカプセル剤用のそのような担体として使用され得る。軟質ゼラチンカプセル剤に適切な担体は、例えば、植物油、蝋、脂肪、半固体及び液体のポリオールなどである。しかしながら、軟質ゼラチンカプセル剤の場合、活性物質の性質によって、通常、担体は必要ではない。液剤及びシロップ剤の製造に適切な担体は、例えば、水、ポリオール、スクロース、転化糖、及びグルコースなどである。式(I)で示される化合物の水溶性塩の注射用水溶液には、アルコール、ポリオール、グリセロール及び植物油などのアジュバントを使用することができるが、一般に必要ではない。坐剤に適切な担体は、例えば、天然油又は硬化油、蝋、脂肪、半液体又は液体のポリオールなどである。
【0050】
さらに、医薬調製剤は、防腐剤、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、着香剤、浸透圧を変えるための塩、緩衝剤、マスキング剤又は酸化防止剤を含有することができる。医薬調製剤はまた、さらに別の治療上有効な物質を含むこともできる。
【0051】
既に述べたように、式Iで示される化合物又はその薬学的に許容しうる塩及び治療上不活性な賦形剤を含有する薬品も本発明の目的であり、同様に、そのような薬品を製造する方法も本発明の目的であり、そして、上記方法は、1種以上の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容しうる塩と、所望により、1種以上の他の治療上有益な物質を、1種以上の治療上不活性な担体と一緒にガレヌス製剤(galenical dosage form)とすることを含む。
【0052】
投与量は、広い範囲内で変更することができるが、当然のことながら、それぞれの特定の場合における個々の要件に合わせられ得る。一般に、経口投与又は非経口投与での有効な投与量は1日当たり0.01〜20mg/kgであり、1日当たり0.1〜10mg/kgの投与量が上記の症状全てに好ましい。従って、体重70kgの成人についての1日の投与量は、1日当たり0.7〜1400mg、好ましくは、1日当たり7〜700mgである。
【0053】
以下の実施例を、本発明をさらに説明するために提供する。
【0054】
実施例1
5−(2−クロロ−ピリジン−4−イルエチニル)−ピリジン−2−カルボン酸tert−ブチル−メチル−アミド
【0055】
【化9】
【0056】
工程1:5−ブロモ−ピリジン−2−カルボン酸tert−ブチルアミド
【0057】
【化10】
【0058】
5−ブロモピコリン酸(200mg、0.99mmol)をジオキサン(2ml)に溶解し、ヒューニッヒ塩基(520μl、2.97mmol、3当量)、TBTU(350mg、1.09mmol、1.1当量)及びtert−ブチルアミン(124μl、1.19mmol、1.2当量)を室温で加えた。混合物を室温で16時間撹拌した。反応混合物を蒸発させ、飽和NaHCO
3溶液で抽出し、少量のジクロロメタンで2回抽出した。粗生成物は、シリカゲルカラムにジクロロメタン層を直接ロードし、酢酸エチル:ヘプタン勾配0:100〜50:50で溶離するフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。所望の5−ブロモ−ピリジン−2−カルボン酸tert−ブチルアミド(235mg、収率92%)が無色の油として得られた(MS: m/e = 257.0/259.0 (M+H
+))。
【0059】
工程2:5−(2−クロロ−ピリジン−4−イルエチニル)−ピリジン−2−カルボン酸tert−ブチルアミド
【0060】
【化11】
【0061】
5−ブロモ−ピリジン−2−カルボン酸tert−ブチルアミド(実施例1、工程1)(280mg、0.92mmol)をTHF(20ml)に溶解した。2−クロロ−4−トリメチルシラニルエチニル−ピリジン[CAS499193−57−6](222mg、1.06mmol、1.15当量)、Et
3N(1.28ml、9.2mmol、10当量)、ビス−(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(II)ジクロリド(19mg、28μmol、0.03当量)及びヨウ化銅(I)(5mg、28μmol、0.03当量)を窒素下で加え、混合物を70℃まで加熱した。TBAF(1M)のTHF溶液(970μl、0.97mmol、1.05当量)を、70℃で20分間かけて滴下した。反応混合物を70℃で2時間撹拌し、乾固するまでIsolute(登録商標)吸着剤の存在下で蒸発させた。粗生成物を、20gのシリカゲルカラムを用いて、ヘプタン:酢酸エチルを100:0→0:100で溶離するフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。所望の5−(2−クロロ−ピリジン−4−イルエチニル)−ピリジン−2−カルボン酸tert−ブチルアミド(210mg、収率73%)が白色固体として得られた(MS: m/e = 314.4/316.4 (M+H
+))。
【0062】
工程3:5−(2−クロロ−ピリジン−4−イルエチニル)−ピリジン−2−カルボン酸tert−ブチル−メチル−アミド
【0063】
【化12】
【0064】
5−(2−クロロ−ピリジン−4−イルエチニル)−ピリジン−2−カルボン酸tert−ブチルアミド(実施例1、工程2)(180mg、574μmol)をDMF(3ml)に溶解し、0〜5℃に冷却した。ヨードメタン(54μl、860μmol、1.5当量)及びNaH(55%)(41mg、860μmol、1.5当量)を加え、混合物を冷却槽なしで2時間撹拌した。反応混合物を飽和NaHCO
3溶液で処理し、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を水で抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発乾固させた。粗生成物を、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィー(20g、酢酸エチル/ヘプタン勾配0:100〜100:0)によって精製した。所望の5−(2−クロロ−ピリジン−4−イルエチニル)−ピリジン−2−カルボン酸tert−ブチル−メチル−アミド(78mg、収率42%)が白色固体として得られた(MS: m/e = 328.4/330.4 (M+H
+))。
【0065】
実施例2
5−(3−クロロ−フェニルエチニル)−ピリジン−2−カルボン酸tert−ブチル−メチル−アミド
【0066】
【化13】
【0067】
工程1:5−ブロモ−ピリジン−2−カルボン酸tert−ブチル−メチル−アミド
【0068】
【化14】
【0069】
標記化合物は、実施例1の工程3に記載のものと類似した化学を用いて、5−ブロモ−ピリジン−2−カルボン酸tert−ブチルアミド(実施例1、工程1)及びヨードメタンから白色固体として得られた(MS: m/e = 271.2/273.2 (M+H
+))。
【0070】
工程2:5−トリメチルシラニルエチニル−ピリジン−2−カルボン酸tert−ブチル−メチル−アミド
【0071】
【化15】
【0072】
標記化合物は、実施例1の工程2に記載のものと類似した化学を用いて、TBAFを使用せずに、5−ブロモ−ピリジン−2−カルボン酸tert−ブチル−メチル−アミド(実施例2、工程1)及びエチニルトリメチルシランから黄色固体として得られた(MS: m/e = 289.2 (M+H
+))。
【0073】
工程3:5−(3−クロロ−フェニルエチニル)−ピリジン−2−カルボン酸tert−ブチル−メチル−アミド
【0074】
【化16】
【0075】
標記化合物は、実施例1の工程2に記載のものと類似した化学を用いて、5−トリメチルシラニルエチニル−ピリジン−2−カルボン酸tert−ブチル−メチル−アミド(実施例2、工程2)及び1−クロロ−3−ヨードベンゼンから淡黄色の油として得られた(MS: m/e = 327.3/329.3 (M+H
+))。