(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989256
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】差込コネクタモジュールを保持する保持フレーム
(51)【国際特許分類】
H01R 13/502 20060101AFI20160825BHJP
【FI】
H01R13/502
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-542162(P2015-542162)
(86)(22)【出願日】2013年11月13日
(65)【公表番号】特表2015-535134(P2015-535134A)
(43)【公表日】2015年12月7日
(86)【国際出願番号】DE2013100382
(87)【国際公開番号】WO2014075662
(87)【国際公開日】20140522
【審査請求日】2015年7月8日
(31)【優先権主張番号】102012110907.9
(32)【優先日】2012年11月13日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502435786
【氏名又は名称】ハルティング エレクトリック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HARTING Electric GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】トーマス バイシャー
(72)【発明者】
【氏名】ハイコ マイアー
(72)【発明者】
【氏名】インゴ ズィーベリング
【審査官】
山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭62−171170(JP,U)
【文献】
特開2004−362779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/502
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向し合う複数の壁部(10)に設けられた複数の切欠(11)を備える、保持フレーム(1)であって、
当該保持フレーム(1)は、複数の部分から構成されており、
当該保持フレーム(1)は、少なくともフレームベース(2)と固定フレーム(3)とから構成されており、
前記切欠(11)は、広幅の領域(11a)と狭幅の領域(11b)とを有し、該広幅の領域(11a)は、前記フレームベース(2)と前記固定フレーム(3)との間の移行部に近い方に位置しており、
前記切欠(11)は、前記フレームベース(2)及び前記固定フレーム(3)により形成されることを特徴とする、保持フレーム。
【請求項2】
当該保持フレーム(1)は、3つの部分から構成されており、前記固定フレーム(3)は、2つのフレーム半部(34)から成っている、請求項1記載の保持フレーム。
【請求項3】
前記フレーム半部(34)は、同一の構成を有する、請求項2記載の保持フレーム。
【請求項4】
前記フレーム半部(34)は、それぞれ2つの収容手段(32,33)を有し、第1の収容手段(32)は、第2の収容手段(33)に、相互に内外に係合するように結合可能である、請求項3記載の保持フレーム。
【請求項5】
前記第1の収容手段(32)は、円錐台形に形成されており、前記第2の収容手段(33)は、これに対応する円錐台形の凹部を有し、該凹部に、前記第1の収容手段(32)が挿入可能である、請求項4記載の保持フレーム。
【請求項6】
前記第1の収容手段(32)は、角錐台形に形成されており、前記第2の収容手段(33)は、これに対応する角錐台形の凹部を有し、該凹部に、前記第1の収容手段(32)が挿入可能である、請求項4記載の保持フレーム。
【請求項7】
前記固定フレーム(3)は、取付け手段(35)により、前記フレームベース(2)の取付け手段(25)に取り付け可能であり、これらの前記取付け手段(25,35)は、前記固定フレーム(3)と前記フレームベース(2)との相互の間隔を変更可能に調節するのに適している、請求項1から6までのいずれか1項記載の保持フレーム。
【請求項8】
当該保持フレーム(1)は、差込コネクタモジュール(40)を保持するように設けられている、請求項1から7までのいずれか1項記載の保持フレーム。
【請求項9】
前記差込コネクタモジュール(40)は、当該保持フレーム(1)に挿入可能であり、前記差込コネクタモジュール(40)に設けられた保持手段(41)は、当該保持フレーム(1)の前記切欠(11)と協働できるようになっている、請求項8記載の保持フレーム。
【請求項10】
当該保持フレーム(1)に挿入された前記差込コネクタモジュール(40)の前記保持手段(41)は、前記切欠(11)に嵌め込みにより保持できるようになっている、請求項9記載の保持フレーム。
【請求項11】
前記切欠(11)は、該切欠(11)に前記保持手段(41)が挿入された状態で前記固定フレーム(3)と前記フレームベース(2)との間にスリット(2/3)が形成されるように、寸法設定されている、請求項9又は10記載の保持フレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の保持フレームに関する。
【0002】
この種の保持フレームは、差込コネクタモジュールの保持に用いられる。この場合、保持フレームには、様々な差込コネクタモジュールが装着され、続いて、保持フレームは、差込コネクタハウジングに挿入され、差込コネクタモジュールに固定される。この場合、保持フレームは、差込結合部を接合するもしくは分離する際に生じる差込み力及び引抜き力に耐え得るように、機械的に安定していなければならない。
【0003】
この種の保持フレームは、差込コネクタハウジングに挿入する代わりに、所定のハウジング壁又は機器壁にねじ止めすることもできる。そうすると、ハウジング壁又は機器壁を通る導体路の接点接続及び/又は結合が実現可能である。
【0004】
独国特許第19707120号明細書において、差込コネクタモジュールを保持する保持フレームが開示されている。差込コネクタモジュールは、保持フレームに挿入され、その際、差込コネクタモジュールに設けられた保持手段が、保持フレームの対向し合う壁部に設けられた切欠と協働し、差込コネクタモジュールを形状結合(形状結合とは、嵌め合いまたは噛み合いなどの部材相互の形状的関係による結合を意味する)式に保持フレームに保持する。
【0005】
背景技術において公知の保持フレームの欠点は、保持フレームに完全には装着されない状態で、保持フレームに収容されている差込コネクタモジュールがある程度の遊びを有することである。
【0006】
この遊びは、差込モジュールが挿入される保持フレームに設けられた切欠に対する、差込コネクタモジュールの保持手段の公差に基づいている。これらの保持手段は、差込コネクタモジュールの全体サイズと比べて比較的小さいので、大きな梃子の作用が保持手段に生じる。
【0007】
この大きな梃子の作用により、個別に保持フレームに挿入される差込コネクタモジュールががたつき易くなっている。完全に装着された保持フレームの状態でだけ、差込コネクタモジュールは、互いに支持し合い、比較的な遊びのない嵌め込み提供する。
【0008】
ある程度の遊びは時間が経過するにつれ生じ得る。差込コネクタが頻繁に差し込まれて取り外される場合、大抵はプラスチックから製造される保持手段に摩耗が発生する可能性があり、摩耗の発生は、やはり保持フレーム内でのモジュールの遊びをもたらす。
【0009】
差込コネクタモジュールにおいて生じるその遊びは、補完的な対応する差込コネクタモジュールを備える第2の保持フレームに接点接続する際に不都合に作用する可能性がある。接点接続及び差込みは、大きな力を掛けてしか、そして差込コネクタモジュールに高い摩擦を掛けてしか可能ではない。
【0010】
この高められた摩擦力は、差込コネクタモジュール及びその中に保持されたコンタクトのより早期の損耗を招く。最悪の場合、接触接続及び差込みが全く不可能となる。結果として、保持フレーム及び/又は差込コネクタモジュールにおける破損による保持フレームからの差込コネクタモジュールの引きちぎれが生じる。
【0011】
発明が解決しようとする課題
本発明の課題は、差込コネクタモジュールの遊びのない嵌め込みが可能になるように、保持フレームを構成することである。この場合、公知の態様の差込コネクタモジュールは改変する必要なく用いられるべきである。
【0012】
この課題は、請求項1の特徴部に記載の構成により解決される。
【0013】
本発明の別の態様は、従属請求項に記載されている。
【0014】
本発明は、略矩形に形成されている保持フレームに関する。対向し合う壁部において、保持フレームは、複数の切欠を有する。これらの切欠は、差込コネクタモジュールにある保持手段を収容するために設けられている。保持フレームに複数の差込コネクタモジュールを収容することにより、いわゆるモジュール式の差込コネクタモジュールが形成される。
【0015】
本発明によれば、保持フレームは、組み合わせ可能な2つの個別の構成要素から、つまりフレームベースとフレームベースに被せ嵌め可能な固定フレームとから成っている。
【0016】
格別な態様によれば、固定フレームは、2つの個別の構成要素から成っており、これらの構成要素が相俟って固定フレームを形成する。特に、構成要素は、格別な態様によれば、同一に構成されている。これらの構成要素は、雄雌同形の形で組み合わせて、固定フレームを形成することができる。
【0017】
この態様の好適な構成によれば、固定フレームを形成する構成要素に係止手段が設けられている。係止手段は、構成要素をまとめて保持するために用いられる。高められた力を掛けることによってだけ、固定フレームは、2つの構成要素に分解可能である。これは、とりわけ取付け及び取外しの際に好適である。
【0018】
保持フレームの壁部に設けられた切欠は、本発明によれば、少なくとも一部で、フレームベースと固定フレームとにより設定される分離平面上に位置する。
【0019】
この場合、切欠は、完全に、保持フレーム部分の1つに位置し、第2の保持フレーム部分により閉じてよい。但し、切欠の一部分をフレームベースに、切欠の第2の部分を固定フレームに設けることもやはり考えられる。保持フレームにおいて両方の態様を混成する構成も同様に考えられる。
【0020】
このような、切欠の、片側で開いた態様において、切欠は、差込コネクタモジュールの保持手段よりも小さく寸法設定してよい。そうすれば、フレームベースと固定フレームとを組み合わせる際に、保持フレーム部分の間にスリットが形成される。
【0021】
切欠は、必ずしも保持フレームの材料厚さ全体を貫通しなくてよい。切欠を、保持フレームの内側から材料部分に部分的にだけ成形することも考えられ、その際、保持フレームの壁部は、完全には貫通されない。
【0022】
本発明によれば、フレームベース及び固定フレームにおける収容手段により、フレームベースと固定フレームとの組み合わせが可能である。前述されたように、スリットにより、差込コネクタモジュールの保持手段をフレームベースと固定フレームとの間で締着することができる。
【0023】
そうすると、本発明は、保持フレームにおける差込コネクタモジュールの確実で遊びのない嵌め込みをもたらす。
【0024】
好適な態様によれば、保持フレームに設けられた切欠は、台形に形成されている。この場合、固定フレームの領域において切欠は、フレームベースの領域における切欠よりも広幅である。これにより、差込コネクタモジュールの保持手段は、追加的に保持フレームにおいて安定化されて、保持される。
【0025】
本発明の別の態様は、従属請求項に記載されている。
【0026】
以下に、本発明の実施の態様を図示し、詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】本発明によるフレームベースを示す図である。
【
図4】本発明による2つの部分から成る固定フレームを示す図である。
【
図5】a〜eは、保持フレームに設けられた切欠の様々な態様を示す図である。
【
図6】a、bは、背景技術に対する本発明に係る保持フレームの比較を示す図である。
【0028】
図1には、本発明に基づく保持フレーム1が示されている。保持フレーム1は、フレームベース2と固定フレーム3とから構成されている。略矩形に形成された保持フレーム1は、対向し合う2つの壁部10を備える。これらの壁部10には、本態様では、それぞれ6つの切欠11が設けられている。
【0029】
切欠11は、差込コネクタモジュール40に設けられている保持手段41を受容するために用いられる。保持フレーム1に少なくとも1つの差込コネクタモジュール40を挿入することにより、モジュール式の差込コネクタが形成される。
【0030】
更に、保持フレーム1は、フランジ12を備え、フランジ12により、保持フレームを所定のハウジング又は機器に取り付けることができる。フランジ12及びハウジング又は機器における保持フレーム1の取付けのより正確な構成については、本発明ではこれ以上言及することはしない。これについては背景技術において公知であり、本発明の要素に含まれない。
【0031】
図2には、本発明によるフレームベース2が示されている。フレームベース2において、対向し合う2つの壁部20に、それぞれ相補的な切欠11が形成されている。切欠11は、差込コネクタモジュール40の保持手段41を受容するのに用いられる。
【0032】
切欠11は、本発明によれば、3方でのみ閉じられていて、壁部20の、固定フレーム3が取り付けられる領域に設けられている。従って、
図1から看取されるように、固定フレーム3により、切欠11は、第4の方向で閉じられる。
【0033】
フレームベース2と組み合わせ可能な固定フレーム3が、
図3に示されている。固定フレーム3は、主にフレームベース2に適合されたベースボディから成っており、この場合、対向し合う2つの壁部30が、フレームベース2の切欠11を閉じる。
【0034】
側方で固定フレーム3に取付け手段35が設けられている。取付け手段35は、取付け手段25(
図2参照)と相俟って、フレームベース2と固定フレーム3との相互的な取付け及び位置固定に用いられる。
【0035】
好適には、取付けは、ねじを用いて行われる。なぜならば、そうするとフレームベース2と固定フレーム3との相互的な間隔を変更できるからである。但し、ここでは別の取付けの可能性も考えられるので、本発明は、ねじ止めに限定されるものではない。
【0036】
図4には、固定フレーム3の別の好適な態様が示されている。この態様では、固定フレーム3は、2つの部分から、つまり2つのフレーム半部34から形成されている。
【0037】
図示の格別な態様では、両フレーム半部34は、同一に構成されている。つまり、2つのフレーム半部34の、雄雌同形の嵌め合わせが可能である。これにより、製造すべき部品が低減される。
【0038】
2つの部分から成る固定フレーム3の利点は、既にケーブルを備える複数の差込コネクタモジュール40のフレームベース2への挿入後でも、固定フレーム3の取付けが依然として可能であることにある。そうすると、フレーム半部34は、ケーブルハーネスの周りに設置して、相互に組み合わせて固定フレーム3を形成することができる。
【0039】
組み合わせるために、フレーム半部34は、第1の収容手段32と第2の収容手段33とをそれぞれ備える。これらの収容手段は、共に、形状結合式に相互に内外に嵌め込み可能である。そうすると、第1の収容手段32は、本態様では、円錐台形部として構成されていて、円錐台形の凹部として構成された第2の収容手段33に挿入可能である。収容手段32,33は、まとめて、同時にフレームベース2に固定フレーム3を取り付けるための取付け手段35を形成する。
【0040】
図5のa〜eには、どのようにして切欠11を保持フレーム1に形成し、位置決めすることができるのかについて、様々な態様が図示されている。
【0041】
図5のaでは、切欠11は、実質的にフレームベース2に形成されている。固定フレーム3は、切欠11を、図面では上側に示された方向で閉じている。この場合、収容される保持手段41の寸法に起因して、スリット2/3がフレームベース2と固定フレーム3との間に形成される。
【0042】
図5のaにおける格別な態様では、更に、切欠11は、台形に形成されている。この台形の形状は、切欠11に保持手段41をより良好に遊びなく嵌め込むのに役立つ。
【0043】
この場合、切欠11の別の形状も考えられる。切欠は、大小異なる幅の領域、つまり広幅の領域11aと狭幅の領域11bとを有するだけでよい。この場合、広幅の領域11aは、保持手段41の挿入を実現するために、スリット2/3側に位置しなければならない。
【0044】
図5のbでは、切欠11は、
図5のaと同様に、フレームベース2に設けられていて、固定フレーム3により閉じられている。
図5のaとは異なり、切欠11は、ここでは直角に構成されている。
【0045】
これに対して、
図5のcにおける切欠11は、フレームベース2にも固定フレーム3にも形成されている。これらの切欠21,31は、相俟って、保持手段41を収容するための切欠11を形成する。
【0046】
図5のdでは、切欠11は、フレームベース2に設けられており、但しこの場合、切欠11は、保持手段41よりも大きく寸法設定されている。この大きな寸法設定は、ここでは切欠11の領域における固定フレーム3に設けられた成形部により補整され、これにより保持手段41の遊びのない嵌め込みが保証される。
【0047】
最後に図示された態様において、
図5のeでは、フレームベース2に1つの切欠11が示されており、この切欠11には、2つの保持手段41を収容することができる。この場合、保持手段41は、固定フレーム3において2つの保持手段41の間に設けられた成形部により分けられている。
【0048】
図5のa〜eに示された全ての態様は、相応に、符号2と3との交換も考えられ、適用可能である。
【0049】
最後に、更に
図6のa及びbには、従来技術において公知のような慣用の保持フレーム1(a)に対する本発明に係る保持フレーム1(b)の比較が示されている。
【0050】
保持手段41の必要な公差により切欠11に所定の遊びが生じることが、
図6のaから良好に看取される。これにより、保持フレーム内での差込コネクタモジュール40の傾倒が生じ得る。
【0051】
これに対して
図6のbでは、2つの部分から成る保持フレーム1により、保持手段41の締着が可能である。これにより、保持フレーム1内での差込コネクタモジュール40の傾倒が阻止される。
【符号の説明】
【0052】
1 保持フレーム
10 壁部
11 切欠
11a 広幅の領域
11b 狭幅の領域
12 フランジ
2/3 スリット
2 フレームベース
20 2の壁部
21 2に設けられた部分−切欠
25 2の取付け手段
3 固定フレーム
30 3の壁部
31 3に設けられた部分−切欠
32 第1の収容手段
33 第2の収容手段
34 フレーム半部
35 3の取付け手段
40 差込コネクタモジュール
41 保持手段