(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ピストンが前記第1の位置に配置されるとき、処置具が突出するとともに前記流体を吸引する開口部側における外気圧より高い圧力の前記流体が前記第1の管路を通じて前記処置具が挿入される鉗子栓から外部に漏出することを抑制する漏出抑制状態となり、
前記ピストンが前記第2の位置に配置されるとき、前記開口部側における圧力が前記外気圧より高いか否かに関わらず、前記流体が前記開口部から吸引されて前記第1の管路と前記第2の管路とを介して前記吸引装置によって吸引される吸引状態となる請求項2に記載の流体用栓部。
前記ピストンが前記第1の位置に配置されるときの前記第1の流路は、前記ピストンが前記第2の位置に配置されるときの前記第2の流路に比べて、前記流体が流れ難い構造を有する請求項1に記載の流体用栓部。
前記第1の流路は、前記ピストンが前記第1の位置に配置されるとき前記第1の管路に連通するように前記ピストンの周面を貫通するように配設される第1の貫通口を有し、
前記第2の流路は、前記ピストンが前記第2の位置に配置されるとき前記第1の管路に連通し前記ピストンの前記周面を貫通するように配設される第2の貫通口を有する請求項1に記載の流体用栓部。
前記第1の流路は、前記ピストンが前記第1の位置に配置されるとき前記第1の管路に連通するように前記ピストンの周面に配設され、前記ピストンが前記第1の位置に配置されるとき開く弁をさらに具備する請求項1に記載の流体用栓部。
前記シリンダの一部が前記シリンダの他の部分よりも薄肉となるように前記シリンダの内周面に配設される内周溝によって、前記間隙が形成される請求項11に記載の流体用栓部。
前記ピストンの一部が前記ピストンの他の部分よりも薄肉となるように前記ピストンの外周面に配設される外周溝によって、前記間隙が形成される請求項11に記載の流体用栓部。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
[構成]
図1と
図2Aと
図2Bと
図3Aと
図3Bと
図3Cとを参照して第1の実施形態について説明する。なお
図1においてシリンダ71とピストン73との図示を省略するように、一部の図面では、図示の明瞭化のために、一部の部材の図示を省略している。
【0016】
[内視鏡10]
図1に示すような内視鏡10は、例えば、側視型の内視鏡であり、挿入機器として機能する。
図1に示すように内視鏡10は、患者の体腔内等の管腔内に挿入される中空の細長い挿入部20と、挿入部20の基端部に連結され、内視鏡10を操作する操作部30とを有する。
【0017】
[挿入部20]
図1に示すように、挿入部20は、挿入部20の先端部側から挿入部20の基端部側に向かって順に、先端硬質部21と、湾曲部23と、可撓管部25とを有する。先端硬質部21の基端部は湾曲部23の先端部に連結され、湾曲部23の基端部は可撓管部25の先端部に連結される。
湾曲部23は、図示しない湾曲操作部の操作によって、例えば上下左右といった所望の方向に湾曲する。湾曲部23が湾曲することにより、先端硬質部21の位置と向きとが変わる。そして、照明光が観察対象物に照明され、観察対象物が観察視野内に捉えられる。この観察対象物とは、例えば、被検体(例えば体腔)内における患部と病変部とである。
【0018】
可撓管部25は、所望な可撓性を有する。よって可撓管部25は、外力によって曲がる。可撓管部25は、操作部30における後述する本体部31から延出される管状部材である。
【0019】
[操作部30]
図1に示すように、操作部30は、可撓管部25が延出する本体部31と、本体部31の基端部に連結され、内視鏡10を操作する操作者によって把持される把持部33と、把持部33に接続されるユニバーサルコード41とを有する。
【0020】
[把持部33]
図1に示すように、把持部33は、処置具挿入部35と、湾曲部23を湾曲操作する図示しない湾曲操作部と、スイッチ部39とを有する。処置具挿入部35は把持部33の先端部側に配設され、湾曲操作部とスイッチ部39とは把持部33の基端部側に配設される。
【0021】
[処置具挿入部35]
図1に示すように、処置具挿入部35は、把持部33に対して分岐している。このため、処置具挿入部35の中心軸方向は、把持部33の中心軸方向に対して傾斜している。
図1に示すように、処置具挿入部35は、処置具挿入部35の端部に配設され、後述するガイド部材300(
図3Bと
図3Cとを参照)と処置具400(
図3Cを参照)とが内視鏡10に挿入されるための処置具挿入口部35aを有する。
【0022】
処置具挿入口部35aは、後述する第1の吸引用管路部61の挿入部側管路部61aとしても機能する処置具挿通チャンネルの基端部に連結される。処置具挿通チャンネルは、挿入部20の内部に配設され、可撓管部25から湾曲部23を介して先端硬質部21に渡って配設される。処置具挿通チャンネルの先端部は、先端硬質部21の外周面に配設される先端開口部35cに連通している。処置具挿入口部35aは、ガイド部材300と処置具400とを処置具挿通チャンネルに挿入するための挿入口部である。
図1に示すように、処置具挿入口部35aの中心軸は、処置具挿入部35の中心軸と同軸に配設されており、このため把持部33の中心軸に対して傾斜している。さらに中心軸方向は、把持部33の中心軸方向に対して傾斜している。
【0023】
図1に示すように、処置具挿入部35は、処置具挿入口部35aに着脱自在に配設される筒形状の鉗子栓36をさらに有する。鉗子栓36の中心軸は、処置具挿入口部35aの中心軸と同軸に配設される。このため、鉗子栓36は、把持部33に対して傾斜している。鉗子栓36が処置具挿入口部35aに配設された際、鉗子栓36は処置具挿入口部35aを介して処置具挿通チャンネルに連通する。
【0024】
鉗子栓36は、開閉可能となる柔軟性を有する。このような鉗子栓36は、例えばゴムなどの樹脂によって形成される。
【0025】
鉗子栓36が処置具挿入口部35aに配設され、処置具400が鉗子栓36を介して処置具挿通チャンネルに挿入されない場合、鉗子栓36は閉じ、処置具挿入口部35aは鉗子栓36によって閉じられる。処置具400が鉗子栓36を介して処置具挿通チャンネルに挿入される場合、鉗子栓36は閉じ、鉗子栓36は処置具400に密着する。
【0026】
図3Bと
図3Cとに示すガイド部材300と
図3Cとに示す処置具400とは、鉗子栓36から処置具挿通チャンネルに挿入され、先端硬質部21側まで押し込まれる。そして
図3Bと
図3Cとに示すように、ガイド部材300と処置具400とは、先端開口部35cから突出される。
【0027】
[スイッチ部39]
図1に示すように、スイッチ部39は、吸引スイッチ39aと、送気・送水スイッチ39bと、内視鏡撮影用の各種スイッチ39cとを有する。吸引スイッチ39aと送気・送水スイッチ39bと各種スイッチ39cとは、把持部33が操作者に把持された際に、操作者の手によって操作される。
【0028】
吸引スイッチ39aは、吸引開口部を兼ねる前記した先端開口部35cから後述する吸引用管路部60を介して、管腔における粘液を含む体液及び汚液といった流体を内視鏡10が吸引するときにおいて、つまり後述する吸引状態において操作される。吸引スイッチ39aの具体的な構成については、後述する。
【0029】
送気・送水スイッチ39bは、図示しない送気・送水機構の一部である。送気・送水機構の構造は、公知であるため、ここでは詳8細な説明は省略する。
【0030】
[ユニバーサルコード41]
図1に示すように、ユニバーサルコード41は、把持部33の側面から延出される。ユニバーサルコード41は、吸引装置14aに接続される接続部41aを有する。吸引装置14aは、例えば、図示しない吸引ポンプと吸引ボトル14bとを有する。
【0031】
[内視鏡10の吸引機構50]
図1に示すように、内視鏡10は、接続部41aが吸引装置14aに接続した際に吸引装置14aに接続し、吸引装置14aの吸引ポンプの吸引力によって流体を吸引する吸引機構50を有する。流体は、管腔における粘液を含む体液及び汚液等の液体を含む。吸引機構50の中を移動する吸引された流体中には、吸引機構50によって吸引された生体組織等の固体が含まれる。このような流体は、吸引ボトル14bに溜められる。
【0032】
図1に示すように、吸引機構50は、吸引開口部を兼ねる先端開口部35cと処置具挿入口部35aとを有する吸引用管路部60と、吸引用管路部60に連通するように吸引用管路部60に接続され、吸引のために用いられる吸引弁ユニットとして機能する流体用栓部70とを有する。
【0033】
[吸引用管路部60]
図1に示すように、吸引用管路部60は、鉗子栓36が配設される処置具挿入口部35aと先端開口部35cとを有する第1の吸引用管路部61と、吸引装置14aに接続される第2の吸引用管路部63とを有する。先端開口部35cは流体を吸引し、ガイド部材300と処置具400とが先端開口部35cから突出する。
【0034】
図1に示すような第1の吸引用管路部(第1の管路)61と第2の吸引用管路部(第2の管路)63とは、筒形状、例えば円筒形状を有する。第1の吸引用管路部61と第2の吸引用管路部63とは、例えば、樹脂材などの柔軟なチューブによって形成される。
【0035】
[第1の吸引用管路部61]
図1に示すように、第1の吸引用管路部61は、先端と後端とを有するとともに先端と後端との間で流体を通す。詳細には、第1の吸引用管路部61は、挿入部20の先端部に配設される先端部と、挿入部20の基端部側に配設され、二股に分かれている基端部とを有する。このような第1の吸引用管路部61は、挿入部20と本体部31との内部に配設される挿入部側管路部61aと、本体部31と把持部33との内部に配設される操作部側管路部61bとを有する。
【0036】
挿入部側管路部61aは、先端開口部35c(吸引開口部)から処置具挿入口部35aにまで配設される処置具挿通チャンネルとして機能する。処置具挿入口部35aは、第1の吸引用管路部61の一方の基端部として機能する。挿入部側管路部61aは、先端開口部35cと処置具挿入口部35aとに連通している。
【0037】
操作部側管路部61bは、挿入部側管路部61aに連結される第1の吸引用管路部61の二股部分62から流体用栓部70にまで配設される。流体用栓部70は、第1の吸引用管路部61の他方の基端部として機能する。操作部側管路部61bは、二股部分62において挿入部側管路部61aに連通しており、操作部側管路部61bの基端部において流体用栓部70に連通している。
このように第1の吸引用管路部61は、先端開口部35cと、鉗子栓36が配設される処置具挿入口部35aと、流体用栓部70とに接続及び連通される。
前記した内容を言い換えると、第1の吸引用管路部61は、先端開口部35cに連結される先端側管路部62aと、処置具挿入口部35aに連結される第1の基端側管路部62bと、流体用栓部70に連結される第2の基端側管路部62cとを有することとなる。先端側管路部62aと第1の基端側管路部62bと第2の基端側管路部62cとは、二股部分62において互いに連通及び連結される。先端側管路部62aと第1の基端側管路部62bとは第1の吸引用管路部61として機能し、第2の基端側管路部62cは操作部側管路部61bとして機能する。
【0038】
第1の吸引用管路部61は、処置具400が挿入される鉗子栓36と、処置具400が突出するとともに流体を吸引する先端開口部35cとを有することになる。
【0039】
[第2の吸引用管路部63]
図1に示すように、第2の吸引用管路部63は、流体用栓部70からユニバーサルコード41を介して接続部41aにまで配設される。第2の吸引用管路部63の先端部は、流体用栓部70に連通している。第2の吸引用管路部63の基端部は、接続部41aが吸引装置14aに接続した際に、吸引装置14aに連通する。
このように第2の吸引用管路部63は、把持部33とユニバーサルコード41との内部に配設される。そして第2の吸引用管路部63は、吸引装置14aに接続されて流体を通す。
【0040】
[吸引機構50における吸引用管路部60]
吸引機構50において、接続部41aが吸引装置14aに接続された際に、第1の吸引用管路部61は、吸引装置14aの吸引力によって、第1の吸引用管路部61の先端部である先端開口部35cから二股部分62を介して第1の吸引用管路部61の基端部に配設される流体用栓部70にまで流体を通して吸引することとなる。このため、流体は、先端側管路部62aから二股部分62を介して第2の基端側管路部62cを通って流体用栓部70に吸引される。
第2の吸引用管路部63は、吸引装置14aの吸引力によって、第2の吸引用管路部63の先端部に配設される流体用栓部70から第2の吸引用管路部63の基端部に配設される吸引装置14aにまで、流体を通して吸引することとなる。このため、流体は、流体用栓部70から第2の吸引用管路部63を通って吸引装置14aに吸引される。
【0041】
[流体用栓部70]
図1と
図2Aと
図2Bとに示すように、流体用栓部70は、把持部33に配設される。前記したように、流体用栓部70は、第1の吸引用管路部61と第2の吸引用管路部63とにそれぞれ接続されており、第1の吸引用管路部61と第2の吸引用管路部63とにそれぞれ連通している。
【0042】
図2Aと
図2Bとに示すように、流体用栓部70は、第1の吸引用管路部61と第2の吸引用管路部63とが互いに連通するようにそれぞれ接続されるシリンダ71と、押圧部391bとピストン73とを有する吸引スイッチ39aとを有する。
【0043】
図1と
図2Aと
図2Bとに示すように、押圧部391bは、例えば挿入部20が管腔に挿入された際に、漏出抑制状態(第1の位置・解放位置・自動吸引状態・
図2A参照)と吸引状態(第2の位置・押圧位置・押圧状態・
図2B参照)とのいずれか一方を他方に切り換えるために操作される操作部である。この切り換えは、シリンダ71に対するピストン73の移動によって実施される。先端開口部35c側の圧力は、例えば挿入部20の先端側が挿入される管腔内の圧力をいう。漏出抑制状態では、吸引装置14aによってシリンダ71内に外気を流入させるとともに流体を第2の吸引用管路部63に吸引する。このため漏出抑制状態では、先端開口部35c側における圧力が鉗子栓36側の外気圧より高くなるにしたがって流体が先端開口部35cから吸引されて第1の吸引用管路部61を通して鉗子栓36から外部に漏出することを抑制する。言い換えると漏出抑制状態は、先端開口部35c側における外気圧より高い圧力の流体が第1の吸引用管路部61を通じて鉗子栓36から外部に漏出することを抑制する。吸引状態は、吸引装置14aによって先端開口部35c側における圧力が鉗子栓36側の外気圧より高いか否かに関わらず、流体が先端開口部35cから吸引され、流体が第1の吸引用管路部61と第2の吸引用管路部63とを介して吸引装置14aによって強制的に吸引される状態をいう。
【0044】
図2Aに示す漏出抑制状態において、先端開口部35cの圧力が鉗子栓36側の外気圧よりも高くなっているときに圧力差により鉗子栓36から流体が吐出されることを抑制するために、流体が第1の吸引用管路部61から流体用栓部70と第2の吸引用管路部63とを通して吸引ボトル14bに吸引される。漏出抑制状態において、先端開口部35cにおける圧力と鉗子栓36側の外気圧とに差がない場合、外気がピストン73の通気口部73aからピストン73の内部空間とシリンダ71の内部空間と第2の吸引用管路部63とを介して吸引装置14aに吸引され続ける。詳細については後述するが、漏出抑制状態における吸引は、吸引状態と略同様に吸引装置14aの吸引によって実施される。
【0045】
図2Bに示す吸引状態において、流体は、吸引装置14aによって先端開口部35cから吸引されて第1の吸引用管路部61と流体用栓部70と第2の吸引用管路部63とを流れて吸引ボトル14bに溜められる。
【0046】
図2Aと
図2Bとに示すように、シリンダ71は、第1の吸引用管路部61と第2の吸引用管路部63とが互いに連通するように、第1の吸引用管路部61と第2の吸引用管路部63とに連通している。ピストン73は、このようなシリンダ71に着脱自在に嵌挿されており、押圧部391bの操作に伴いシリンダ71に対してシリンダ71の軸方向に沿って移動可能となっている。そして
図2Aと
図2Bとに示すように、流体用栓部70は、押圧部391bの押圧操作または解放操作(非操作)に伴いピストン73をシリンダ71に対して移動させることによって、
図2Aに示す漏出抑制状態と
図2Bに示す吸引状態とのいずれか一方を他方に切り換える。
【0047】
詳細には、
図2Aに示すように押圧部391bが操作(押圧)された状態から非操作(解放)された状態に切り換わると、ピストン73が後述する付勢部材77によって上方に移動し、流体用栓部70は吸引状態から漏出抑制状態に切り換わる。
図2Bに示すように、押圧部391bが押圧操作され、ピストン73がその軸方向に沿って把持部33の内部に押し込まれると、流体用栓部70は漏出抑制状態から吸引状態に切り換わる。
【0048】
言い換えると、流体用栓部70は、ピストン73がシリンダ71に対してシリンダ71の軸方向に移動することによって、
図2Aに示す漏出抑制状態と
図2Bに示す吸引状態とのいずれか一方を他方に切り換える。つまり、ピストン73は、シリンダ71に嵌挿されるとともに、シリンダ71の軸方向に沿って移動することによって、第1の管路である第1の吸引用管路部61における流体が鉗子栓36から外部に漏出することを抑制する第1の位置と、流体が第1の管路と第2の管路である第2の吸引用管路部63とを介して吸引装置14aによって吸引される第2の位置とのいずれか一方を他方に切り換える。
【0049】
シリンダ71は、例えば中心軸Cを有する筒形状を有する。シリンダ71は、例えばステンレス鋼材等の金属材によって形成される。
【0050】
図2Aと
図2Bとに示すように、シリンダ71は、ピストン73がシリンダ71に嵌挿されるように開口している一端部71aと、第2の吸引用管路部63がシリンダ71に連通するように第2の吸引用管路部63が接続しており、開口している他端部71bとを有する。一端部71aは、ピストン73がシリンダ71に嵌挿される挿入口部として機能する。
図2Aと
図2Bとに示すように、シリンダ71は、シリンダ71の側面に配設され、第1の吸引用管路部61がシリンダ71に連通するように第1の吸引用管路部61が接続される側面開口部71cをさらに有する。
【0051】
図2Aと
図2Bとに示すように、シリンダ71は把持部33に配設される孔部33aに挿抜自在となっており、シリンダ71の一端部71aが把持部33に固定され、シリンダ71の他端部71bが把持部33の内部に配置される。このようなシリンダ71の一端部71aには、図示しないOリングなどが配設される。これによりシリンダ71と把持部33との間において、外部から内視鏡10の内部への流体の浸入が防止される。つまり、操作部30の内部の液密と気密とが確保される。
【0052】
ピストン73は、ピストン73の軸方向に沿って細長い筒形状を有する。
【0053】
なおピストン73は、薬品等によって洗浄されるため、耐薬品性を有する材料によって形成される。このようなピストン73は、例えば、ポリプロピレンと、ポリカーボネートと、ナイロンと、ポリサルフォン・ポリフェニルサルフォン等のサルフォン系樹脂と、液晶ポリマーと、変性ポリフェニレンエーテルと、ポリエーテル・エーテル・ケトンとの少なくとも1つによって形成される。
【0054】
図2Aと
図2Bとに示すように、ピストン73は、シリンダ71(把持部33)の外部に配設され、平板状の押圧部391bと例えば螺合している一端部と、シリンダ71の内部に配設される他端部(開口端部)とを有する。本実施形態では、ピストン73の外径は、ピストン73がシリンダ71に対して液密状態を確保するように、シリンダ71の内径と略同一となっている。このため、ピストン73の外周面は、シリンダ71の内周面を摺動することとなる。なお、
図2Aに示すように、ピストン73は、一端部側に配設され、外気をピストン73の内側に取り込む通気口部73aを有する。
【0055】
図2Aと
図2Bとに示すように、ピストン73は、ピストン73の一端部側に配設される取付部75に取り付けられる。ピストン73が取付部75を挿通し、取付部75がピストン73の一端部側を囲うように、取付部75は配設される。取付部75は、一方に底面75aを有する円筒形状を有する。底面75aは、ピストン73が挿通する挿通孔75bを有する。底面75aは、孔部33aの周辺に配設されるフランジ部33cに当接する。ピストン73の軸方向において、底面75aは、押圧部391bの下方に配設される。取付部75は、例えばゴム等の柔らかい素材によって形成される。
【0056】
図2Aと
図2Bとに示すように、吸引スイッチ39aの付勢部材77は、ピストン73の軸方向において、底面75aと押圧部391bのとの間に配設され、底面75aと押圧部391bとに当接している。付勢部材77は、シリンダ71から露出するピストン73を巻回するように配設される。付勢部材77としては、例えば金属製のコイルバネが用いられる。付勢部材77は、ピストン73の軸方向において伸縮可能となっている。付勢部材77は、押圧部391bを中心軸Cに沿って
図2A中の上方(把持部33の外側)に付勢し、ピストン73を上方(把持部33の外側)に付勢する付勢力を有する。このとき、フランジ部33cと底面75aとは、互いに当接し、互いに押し付けあう。これにより、底面75aは、ピストン73が取付部75から抜けることを防止する。付勢部材77は、取付部75によって囲まれている。
【0057】
なお、押圧部391b、ピストン73、取付部75及び付勢部材77は一体化されることが好ましい。一体化されることにより、吸引スイッチ39aは、1つのユニットとして、取付部75によってフランジ部33cに対して着脱可能となる。この実施形態に係るピストン73は、周方向に位置決めされることが好ましい。例えば、取付部75とフランジ部33cとが適宜に形成されることにより、ピストン73は周方向に位置決めされる。
【0058】
図2Aに示すように、押圧部391bが操作(押圧)状態から非操作(解放)状態に切り換わると、付勢部材77が伸びて、付勢部材77は押圧部391bを介してピストン73を上方に付勢する。このため、ピストン73は上方に移動し、流体用栓部70は、吸引状態から漏出抑制状態に切り換わる。
図2Bに示すように、押圧部391bが操作(押圧)されると、付勢部材77が縮む。このため、ピストン73は下方に移動し、流体用栓部70は、漏出抑制状態から吸引状態に切り換わる。
【0059】
吸引機構50は、第1の流路である漏出抑制用流路部80と第2の流路である吸引用流路部90とを有する。
図2Aと
図2Bとに示すように、漏出抑制用流路部80は、漏出抑制状態において第1の吸引用管路部61に連通するようにピストン73の周面を貫通するように配設される漏出抑制用貫通口81を有する。漏出抑制用流路部80は、漏出抑制用貫通口81に連通しているピストン73の内部空間(以下、ピストン内部空間部731と称する)と、ピストン内部空間部731に連通しているシリンダ71の内部空間(以下、シリンダ内部空間部711と称する)とをさらに有する。漏出抑制用貫通口81は、例えば、円形状を有することが好ましい。
【0060】
漏出抑制用流路部80は、ピストン73の移動に伴い、
図2Aに示す漏出抑制状態において第1の吸引用管路部61と第2の吸引用管路部63とに連通し、吸引を許容する。このため、
図2Aに示す漏出抑制状態では、漏出抑制用流路部80に流体が通される。
【0061】
つまり第1の流路である漏出抑制用流路部80は、ピストン73が
図2Aに示す漏出抑制状態である第1の位置に配置されるとき、第1の管路である第1の吸引用管路部61と第2の管路である第2の吸引用管路部63とに連通する。
【0062】
漏出抑制用流路部80は、ピストン73の移動に伴い、
図2Bに示す吸引状態において第1の吸引用管路部61に連通せず、すなわち、第1の吸引用管路部61に対して遮断されるが、第2の吸引用管路部63に連通した状態を維持する。このため、
図2Bに示す吸引状態では、漏出抑制用流路部80は吸引しない状態となる。
つまり第1の流路である漏出抑制用流路部80は、ピストン73が
図2Bに示す吸引状態である第2の位置に配置されるとき、第1の管路である第1の吸引用管路部61への連通を遮断する。
【0063】
吸引用流路部90は、吸引状態において第1の吸引用管路部61に連通しピストン73の周面を貫通するように配設される吸引用貫通口91を有する。吸引用流路部90は、吸引用貫通口91にも連通している前記したピストン内部空間部731と、前記したシリンダ内部空間部711とをさらに有する。吸引用貫通口91は、例えば、円形状を有することが好ましい。
【0064】
吸引用流路部90は、ピストン73の移動に伴い、
図2Aに示す漏出抑制状態において第1の吸引用管路部61に連通せず、すなわち、第1の吸引用管路部61に対して遮断されるが、第2の吸引用管路部63に連通する。このため、
図2Aに示す漏出抑制状態では、吸引用流路部90は吸引しない状態となる。
吸引用流路部90は、ピストン73の移動に伴い、
図2Bに示す吸引状態において吸引を許容するために第1の吸引用管路部61と第2の吸引用管路部63とに連通し、流体の吸引を許容する。このため、
図2Bに示す吸引状態では、吸引用流路部90に流体が通される。
【0065】
つまり第2の流路である吸引用流路部90は、ピストン73の移動に伴い、ピストン73が
図2Aに示す漏出抑制状態である第1の位置に配置されるとき第1の管路である第1の吸引用管路部61への連通を遮断し、ピストン73が
図2Bに示す吸引状態である第2の位置に配置されるとき第1の管路である第1の吸引用管路部61と第2の管路である第2の吸引用管路部63とに連通し流体の吸引を許容する。
【0066】
このように
図2Aと
図2Bとに示すようなシリンダ71に対するピストン73の移動によって、漏出抑制用流路部80と吸引用流路部90とのいずれか一方は、第1の吸引用管路部61に連通することとなる。
【0067】
漏出抑制用貫通口81及び吸引用貫通口91は、互いに同軸上に配設される。そして、漏出抑制用貫通口81は、ピストン73の軸方向において吸引用貫通口91よりも押圧部391bから離れて配設される。
【0068】
ピストン内部空間部731とシリンダ内部空間部711とは、漏出抑制用流路部80と吸引用流路部90とを兼ねており、漏出抑制用流路部80と吸引用流路部90とに共有され、漏出抑制状態であっても吸引状態であっても利用される。そして、
図2Aと
図2Bとに示すように、漏出抑制用流路部80と吸引用流路部90とは、ピストン73の移動に関わらず、言い換えると漏出抑制状態と吸引状態とのどちらであっても、第2の吸引用管路部63と常に連通している。
【0069】
図2Aに示すように、押圧部391bが非操作(解放)されると、すなわち押圧部391bが押圧されない状態では、ピストン73は付勢部材77の付勢力によって上方に移動した状態を維持する。このとき、流体用栓部70は漏出抑制状態になり、漏出抑制用流路部80が第1の吸引用管路部61に連通し、吸引用流路部90が第1の吸引用管路部61と連通しない。
この場合、漏出抑制用流路部80は、漏出抑制状態の吸引のために第1の吸引用管路部61と第2の吸引用管路部63とを連通させることとなる。言い換えると、漏出抑制状態において、漏出抑制用流路部80は、先端開口部35c側と吸引装置14a側とを連通させる。
【0070】
図2Bに示すように、押圧部391bが押し下げられると、ピストン73は押圧部391bによって下方に移動する。これにより、流体用栓部70は漏出抑制状態から吸引状態に切り換わり、漏出抑制用流路部80が第1の吸引用管路部61と連通せず、すなわち遮断され、吸引用流路部90が第1の吸引用管路部61に連通する。
この場合、吸引用流路部90は、吸引状態の吸引のために第1の吸引用管路部61と第2の吸引用管路部63とを連通させることとなる。言い換えると、吸引状態において、吸引用流路部90は、先端開口部35c側と吸引装置14a側とを連通させている。
【0071】
本実施形態では、ピストン73が
図2Aに示す漏出抑制状態である第1の位置に配置されるときの第1の流路である漏出抑制用流路部80は、ピストン73が
図2Bに示す吸引状態である第2の位置に配置されるときの第2の流路である吸引用流路部90に比べて、吸引装置14aで吸引された状態において流体が流れ難い構造を有する。詳細には、漏出抑制用流路部80の開口量は、吸引用流路部90の開口量よりも小さくなっている。具体的には、
図2Aと
図2Bとに示すように、例えば、漏出抑制用貫通口81の直径は、吸引用貫通口91の直径よりも短くなっている。または、漏出抑制用流路部80の開口量は、漏出抑制用流路部80に連通する第1の吸引用管路部61の連通部分61cの開口量よりも小さくなっている。シリンダ71に対する第1の吸引用管路部61の連通部分61cは、例えば、円形状を有することが好ましい。具体的には、漏出抑制用貫通口81の直径は、漏出抑制用流路部80に連通する第1の吸引用管路部61の連通部分61cの直径よりも小さくなっている。このため漏出抑制用流路部80と吸引用流路部90とにおいて、漏出抑制用流路部80における流体の流れ難さを示す漏出抑制用流路部80の抵抗が、吸引用流路部90における流体の流れ難さを示す吸引用流路部90の抵抗よりも大きくなる。そして、吸引装置14aで吸引された状態での漏出抑制状態における漏出抑制用流路部80での流体は、吸引装置14aで吸引された状態での吸引状態における吸引用流路部90での流体よりも流れ難くなる。
【0072】
なお、吸引状態における吸引性、言い換えると詰まりを考慮すると、吸引用貫通口91の直径は、連通部分61cの直径と同一か、連通部分61cの直径よりも大きいことが好適である。
【0073】
前記したように、漏出抑制状態と吸引状態とにおいて吸引装置14aは常に駆動しており、例えば漏出抑制状態と吸引状態とのどちらであっても吸引は実施される。この吸引において、漏出抑制状態では、吸引は、流体が鉗子栓36から外部に漏出することを抑制するために、実施される。これに対して、吸引状態では、吸引は、流体を吸引装置14aに吸引するために、実施される。すなわち、吸引状態において、流体は、吸引装置14aの吸引力によって、先端開口部35cから第1の吸引用管路部61に吸引される。吸引された流体は、吸引力によって第1の吸引用管路部61から流体用栓部70と第2の吸引用管路部63とを介して吸引装置14aに流れ、吸引装置14aに吸引される。
【0074】
[作用]
内視鏡10が使用される際、吸引装置14aは常に駆動し続け吸引機能を発揮し続ける。
図2Aに示すように、押圧部391bが非操作(解放)されているとき、吸引用貫通口91の直径よりも短い直径を有する漏出抑制用貫通口81が第1の吸引用管路部61と連通する。これにより流体用栓部70において、漏出抑制状態が維持される。
【0075】
漏出抑制状態において、挿入部20の先端開口部35c側における圧力と、鉗子栓36側の外気圧とに差がない場合、外気が通気口部73aからピストン内部空間部731とシリンダ内部空間部711と第2の吸引用管路部63とを介して吸引装置14aに吸引され続ける。
【0076】
挿入部20は、適宜の管腔に挿入される。漏出抑制状態において、管腔内の先端開口部35c側の圧力が、管腔外の鉗子栓36側の外気圧よりも徐々に高くなったとする。すると先端側管路部62a内の圧力は、第1の基端側管路部62b内の圧力よりも徐々に高くなる。また先端側管路部62a内の圧力は、第2の基端側管路部62c内の圧力よりも徐々に高くなる。漏出抑制状態では、シリンダ内部空間部711内には、吸引装置14aの吸引力が常に作用される。このため、漏出抑制用貫通口81を介してシリンダ内部空間部711と連通している第2の基端側管路部62cと、第2の基端側管路部62cに比べてシリンダ内部空間部711から離れて配設される第1の基端側管路部62bとにおいて、吸引力の作用によって、第2の基端側管路部62c内の圧力は第1の基端側管路部62b内の圧力よりも徐々に低くなる。
【0077】
これにより、流体は、先端側管路部62aから二股部分62を介して第1の基端側管路部62bに流れるよりも、先端側管路部62aから二股部分62を介して第2の基端側管路部62cに流れやすくなり、流体用栓部70に流れる。さらに流体は、流体用栓部70において、第2の基端側管路部62cと連通する漏出抑制用貫通口81とピストン内部空間部731とシリンダ内部空間部711とを介して、シリンダ71と連通している第2の吸引用管路部63に流れる。そして、流体は、吸引装置14aの吸引によって、第2の吸引用管路部63を通して吸引ボトル14bに吸引され続ける。
【0078】
これにより、圧力差により第1の基端側管路部62bを通して鉗子栓36から流体が吐出することが防止される。
【0079】
なお挿入部20の先端開口部35c側における圧力と、鉗子栓36側の外気圧とに差がない場合、先端開口部35cは、通気口部73aよりもシリンダ内部空間部711から離れているため、吸引の大部分は、通気口部73aに作用する。よって挿入部20の先端開口部35c側における圧力と、鉗子栓36側の外気圧とに差がない場合で、漏出抑制状態では、先端開口部35c側からの吸引が控えられる。
【0080】
図2Bに示すように、押圧部391bが操作(押圧)されると、ピストン73はシリンダ71に対して下方に移動し、第1の吸引用管路部61と漏出抑制用貫通口81との連通が遮断され、漏出抑制用貫通口81の直径よりも長い直径を有する吸引用貫通口91が第1の吸引用管路部61と連通する。このため流体用栓部70は、吸引状態に切り換わる。流体は、吸引によって、先端側管路部62aから二股部分62を介して第2の基端側管路部62cを通り流体用栓部70に流れる。流体は、流体用栓部70において、第2の基端側管路部62cと連通する吸引用貫通口91とピストン内部空間部731とシリンダ内部空間部711とを介して、シリンダ71と連通している第2の吸引用管路部63に流れる。そして、流体は、第2の吸引用管路部63を通して吸引ボトル14bに吸引され続ける。
【0081】
漏出抑制用流路部80における流体の流れ難さである漏出抑制用流路部80の抵抗は、吸引用流路部90における流体の流れ難さである吸引用流路部90の抵抗よりも大きくなっている。このため、これにより漏出抑制状態に含まれる処置時と観察時とにおいて、流体が意図せずに先端開口部35cに引き込まれ、処置と観察とに支障をきたすことが防止される。
【0082】
漏出抑制用流路部80は漏出抑制用貫通口81を有し、吸引用流路部90は吸引用貫通口91を有する。これにより簡単な構成で、前記が実施される。
【0083】
漏出抑制用貫通口81は、吸引用貫通口91と同軸上に配設される。これにより押圧部391bがピストン73を押し込むまたは解放するだけで、漏出抑制状態と吸引状態とのいずれか一方は他方に簡単に切り換わる。
【0084】
なお、側視型の内視鏡10は、例えば、内視鏡的逆行性胆道膵管造影(以下、ERCPと称する)に用いられる。
ERCPとは、
図3Aと
図3Bと
図3Cとに示すように、例えば胆管101といった管腔に造影剤を注入し、管腔における患部である胆道系と膵管とを撮影及び検査し、処置具400によって患部を処置する術式のことをいう。ERCPにおいて、処置具400は、ガイド部材300によって患部にまでガイドされる。
【0085】
ガイド部材300は、例えば細い線状部材によって形成される。線状部材は、例えば、ステンレス製のワイヤを有する。線状部材は、例えば、表面が例えばフッ素樹脂などによってコーティングされたニッケルチタン線を有していてもよい。
【0086】
処置具400は、例えば、内視鏡的乳頭切開術(以下、ESTと称する)用ナイフと、カニューラと、ガイドワイヤと、はさみ状の処置具と、ピンセット状の処置具と、鉗子と、石を砕くバスケット状の処置具と、石を砕かずに体外に持ち出すバスケット状の処置具とを含む。処置具400は、例えば細い線状部材によって形成される。
【0087】
処置具400は、
図3Cに示すようなガイド部材300が挿通可能な挿通口部(図示せず)を有する。ガイド部材300が挿通口部を挿通するように、処置具400がガイド部材300をスライド可能である。このようにスライドすることによって、処置具400はガイド部材300に沿って移動可能となる。
【0088】
ERCPの手順の一例は、以下の通りとなっている。
図3Aに示すように、挿入部20は、例えば十二指腸100といった管腔に挿入されて、カニューラと呼ばれる造影チューブ600が鉗子栓36から処置具挿通チャンネル(挿入部側管路部61a)と先端開口部35cとを介して胆管101に挿入される。次に、造影剤が造影チューブ600を介して胆管101などの被検体に注入され、胆管101などの被検体がレントゲン等によって撮影する。
【0089】
図3Bに示すように、ガイド部材300が造影チューブ600に挿入され、ガイド部材300の先端部は造影チューブ600の先端から突出する。そして、ガイド部材300の先端部は、胆管101などの被検体に到達する。なおガイド部材300の基端部は、鉗子栓36から内視鏡10の外部に露出している。そしてガイド部材300が胆管101などの被検体に残った状態で、造影チューブ600のみが内視鏡10から引き抜かれる。
【0090】
次に、処置具400がガイド部材300に沿って移動する際、処置具400は、ガイド部材300によってガイドされて、鉗子栓36から処置具挿通チャンネルに挿入される。そして、処置具400は、ガイド部材300によってガイドされた状態で先端開口部35cから側方に突出して、被検体に到達する。
このように、処置具400は、ガイド部材300によって、被検体までガイドされ、患部を処置する。
前記したようなERCPにおいて、例えば、挿入部20が十二指腸(管腔)100に挿入された際、挿入部20が挿入された十二指腸100内の圧力(挿入部20の先端側の圧力)は、例えば鉗子栓36などの外気圧より高くなることがある。例えば内視鏡10の送気動作によって、挿入部20が挿入された管腔内の圧力は、例えば鉗子栓36などの外気圧より高くなることがある。
【0091】
この場合、
図2Aに示す押圧部391bが解放された状態であっても、流体が処置具400を伝わって第1の吸引用管路部61に流入する虞が生じる。
第1の吸引用管路部61に流入した流体と、吸引用管路部60に残留している流体と、流体用栓部70に残留している流体とは、例えば鉗子栓36から外部に漏出する虞が生じる。吸引用管路部60に残留している流体は、例えば、処置具400が使用されることによって処置具挿通チャンネルである挿入部側管路部61aに残留している流体と、流体が内視鏡10に吸引された際に吸引装置14aに吸引されずに操作部側管路部61bと第2の吸引用管路部63とに残留してしまった流体とを含む。
【0092】
本実施形態では、処置途中状態と処置具の交換状態と観察状態と非操作(解放)状態を含む漏出抑制状態とであっても吸引装置14aは常に駆動しており、
図2Aに示すように漏出抑制用流路部80は漏出抑制状態において第1の吸引用管路部61と第2の吸引用管路部63とに連通する。言い換えると、漏出抑制用流路部80は、先端開口部35c側と吸引装置14a側とを連通させている。このため吸引力は、漏出抑制用流路部80と第1の吸引用管路部61と第2の吸引用管路部63とに常に作用する。言い換えると、吸引力は、先端開口部35c側にまで作用する。よって、第1の吸引用管路部61と第2の吸引用管路部63と流体用栓部70とに残留する流体は、吸引状態でなくても、前記した連通によって、吸引力を作用される。結果として、流体は、例えば、吸引装置14aに確実に吸引される。
【0093】
このように、流体が鉗子栓36から外部に漏出することが抑制される。
【0094】
前記によって、鉗子栓36が密着することが容易ではない処置具400が用いられても、漏出は抑制される。言い換えると、漏出抑制のために、鉗子栓36を処置具400に強固に密着させる必要はない。このため、処置具400の挿抜性が低下することが防止される。
【0095】
前記によって流体の漏出が抑制されるため、処置具400の交換と処置具400の進退移動とのために処置具400と鉗子栓36との密着を弱める必要はない。密着を弱めることによって、流体が鉗子栓36から外部に漏出することがさらに抑制される。
【0096】
このように処置具400と内視鏡10との使用状況に応じて、流体が鉗子栓36から漏出することが抑制される。
【0097】
[効果]
このように本実施形態では、十二指腸100などの管腔内の圧力が外気圧より高くなっても、流体が鉗子栓36から漏出することを抑制できる。本実施形態では、流体が鉗子栓36から漏出することを抑制しつつ、鉗子栓36に対する処置具400の挿抜性の低下を防止できる。
【0098】
本実施形態では、漏出抑制状態と吸引状態とにおいて吸引装置14aは常に駆動しており、例えば漏出抑制状態と吸引状態とのどちらであっても吸引力はどちらも一定であり同一である。このような吸引力は、漏出抑制状態と吸引状態とのどちらであっても、吸引機構50と、吸引機構50と先端開口部35cとを介して例えば被検体内における患部に及び体液などの流体に常に作用することとなる。
漏出抑制状態は、患部が処置具400によって処置される処置途中状態と、処置具400を交換する交換状態と、患部が観察される観察状態と、吸引スイッチ39aが操作されない非操作状態(解放状態)とを含んでいる。
このため前記したように、漏出抑制状態における吸引力が吸引状態における吸引力と同一であると、漏出抑制状態における吸引力は、吸引状態における吸引力と同様に、吸引機構50と先端開口部35cを介して患部とに作用する。そして、漏出抑制状態において、患部は、吸引状態と同様に、吸引力といった患部に作用する作用力によって、吸引状態と同様に先端開口部35cに引き込まれることとなる。よって、処置途中状態と観察状態とを含む漏出抑制状態において、患部が吸引状態と同様に先端開口部35cに引き込まれることは、処置と観察とに支障をきたす虞が生じる。
【0099】
このため吸引状態以外の状態である漏出抑制状態では、作用力は吸引状態ほど必要としない。言い換えると、漏出抑制状態における作用力は、吸引状態における作用力よりも小さくする必要がある。
【0100】
このため本実施形態では、漏出抑制用流路部80の抵抗は、吸引用流路部90の抵抗よりも大きくなっている。詳細には、漏出抑制用流路部80の開口量は、吸引用流路部90の開口量よりも小さくなっている、または漏出抑制用流路部80の開口量は、漏出抑制用流路部80に連通する連通部分61cの開口量よりも小さくなっている。これにより本実施形態では、処置時と観察時とにおいて、患部が吸引力といった患部に作用する作用力によって先端開口部35cに引き込まれ、処置と観察とに支障をきたすことが防止できる。
【0101】
本実施形態では、漏出抑制用流路部80は漏出抑制用貫通口81を有し、吸引用流路部90は吸引用貫通口91を有する。これにより本実施形態では、簡単な構成で、前記を実施できる。
【0102】
本実施形態では、漏出抑制用貫通口81は、吸引用貫通口91と同軸上に配設される。これにより本実施形態では、漏出抑制状態と吸引状態とのいずれか一方を他方に簡単に切り換えることができる。
【0103】
なお、本実施形態では、漏出抑制状態と吸引状態とにおいて吸引力はどちらも一定であり同一であるが限定する必要はない。吸引力は、漏出抑制状態と吸引状態とに応じて所望に調整されてもよい。
【0104】
本実施形態では、第1の吸引用管路部61は、漏出抑制用貫通口81が流体によって詰まることを防止するために、フィルターなどの流体を濾過する濾過部材を有していてもよい。
【0105】
本実施形態では、漏出抑制用貫通口81は、吸引する流体よりも大きいことが好適である。
【0106】
本実施形態では、吸引機構50は、直視型の内視鏡10に配設されてもよい。この場合、例えば大腸を膨らませる際において、先端開口部35c側の圧力(例えば挿入部20の先端側が挿入される大腸内の圧力)が鉗子栓36側の外気圧より高くなる。これにより、前記同様に、流体は、鉗子栓36から漏出する虞が生じる。しかしながら、前記した流体用栓部70は、このような漏出を抑制できる。
【0107】
[第1の変形例]
以下に
図4Aと
図4Bとを参照して、本実施形態の第1の変形例について説明する。本変形例では第1の実施形態とは異なる点のみ記載する。
図4Aと
図4Bとに示すように、漏出抑制用流路部80は、漏出抑制状態において第1の吸引用管路部61に連通するようにピストン73の周面に配設される弁83をさらに有する。弁83は、漏出抑制状態において開く。詳細には、弁83は、先端開口部35c側の圧力が鉗子栓36側の外気圧より高くなると、開く。先端開口部35c側の圧力は、例えば挿入部20の先端側が挿入される大腸内の圧力をいう。
【0108】
この場合、本変形例のピストン73は、例えばゴムなどの高い弾発性部材によって形成される。そして、弁83は、スリット部83aを有する。弁83は、弁83が開きやすいように、ピストン73の外周面から内周面に向かって凹んでいる。
【0109】
弁83は、例えば、樹脂がピストン73の表面をコーティングし、樹脂にスリット部が配設されることによって、形成されてもよい。弁83は、例えば、ピストン73がインサート成形される際に、形成されてもよい。弁83は、例えば2色成形などによってピストン73に配設されてもよい。
【0110】
これにより本変形例では、ピストン73の構成を簡素にできる。
【0111】
[第2の実施形態]
以下に
図5Aと
図5Bと
図6Aと
図6Bとを参照して、第2の実施形態について説明する。本実施形態では第1の実施形態とは異なる点のみ記載する。
本実施形態では、漏出抑制用貫通口81が配設されず、間隙85が配設される。
【0112】
[構成]
漏出抑制用流路部80は、シリンダ71の内周面とピストン73の外周面との間に形成される間隙85と、間隙85に連通するシリンダ71の内部空間(以下、シリンダ内部空間部711と称する)とを有する。間隙85は、シリンダ71の内周面とピストン73の外周面との間に形成される。
【0113】
図5Aと
図5Bとに示すように、間隙85は、シリンダ71の一部71hがシリンダ71の他の一部71iよりも薄肉となるように、シリンダ71の内周面に配設される内周溝71gによって形成される。
図5Bに示すように、一部71hは、シリンダ71の周方向において一部71iに隣り合っており、ピストン73の軸方向において一部71iと同じ高さ位置に配設される。内周溝71gは、シリンダ71の内周面からシリンダ71の外周面に向かって窪んでいる。内周溝71gは、漏出抑制状態と吸引状態とにおいて内周溝71gが第1の吸引用管路部61とシリンダ内部空間部711とに連通するように、側面開口部71c(第1の吸引用管路部61)と隣りあう。内周溝71gは、シリンダ71の軸方向に沿って直線状に配設される。内周溝71gは、シリンダ71の周方向において、シリンダ71の一部に配設される。この場合、ピストン73は、一定の厚みを有する。
【0114】
ここでは、シリンダ71の一部71hを薄肉にする場合について説明したが、一部71hを一部71iに対して薄肉化することなくシリンダ71が変形してもよい。つまりシリンダ71は、薄肉となることなく、へこむ様に変形してもよい。
【0115】
なお
図6Aと
図6Bとに示すように、間隙85は、ピストン73の一部73hがピストン73の他の一部73iよりも薄肉となるように、ピストン73の外周面に配設される外周溝73gによって形成されてもよい。
図6Bに示すように、一部73hは、ピストン73の周方向において一部73iに隣り合っており、ピストン73の軸方向において一部73iと同じ高さ位置に配設される。外周溝73gは、ピストン73の外周面からピストン73の内周面に向かって窪んでいる。外周溝73gが、漏出抑制状態において第1の吸引用管路部61に連通し、吸引状態において第1の吸引用管路部61に連通せず、漏出抑制状態と吸引状態とにおいてシリンダ内部空間部711とに連通するように、外周溝73gは、吸引用貫通口91よりも下方に配設される。外周溝73gは、ピストン73の軸方向に沿って直線状に配設される。この場合、ピストン73が摺動する範囲において、シリンダ71の内径は、一定となっている。
【0116】
ここでは、ピストン73の一部73hを薄肉にする場合について説明したが、一部73hを一部73iに対して薄肉化することなくピストン73が変形してもよい。つまりピストン73は、薄肉となることなく、へこむ様に変形してもよい。
【0117】
[効果]
これにより本実施形態では、間隙85のサイズに応じて、漏出抑制状態において吸引力を所望に調整できる。
【0118】
なお第1,2の実施形態において、流体用栓部70は、内視鏡10のみならず、吸引カテーテルなどの各種挿入機器に配設されてもよい。
【0119】
本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。上記実施形態に開示される複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。