特許第5989275号(P5989275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989275
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】把持ユニット及びバイポーラ処置具
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20160825BHJP
   A61B 17/32 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   A61B18/12
   A61B17/32 510
【請求項の数】17
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-501688(P2016-501688)
(86)(22)【出願日】2015年2月26日
(86)【国際出願番号】JP2015055633
(87)【国際公開番号】WO2015137139
(87)【国際公開日】20150917
【審査請求日】2016年1月14日
(31)【優先権主張番号】特願2014-51763(P2014-51763)
(32)【優先日】2014年3月14日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】森崎 一浩
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−206265(JP,A)
【文献】 特許第4976597(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0303949(US,A1)
【文献】 特開2004−209042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12
A61B 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸に沿って延設されるプローブに対して、基端方向から先端方向へ延設軸に沿って延設され、前記延設軸に垂直に開閉可能に設けられる把持ユニットであって、
前記把持ユニットの一部を構成するとともに、少なくとも表面全体が絶縁材料から形成される支持部であって、外部に対して露出しない内表面において前記把持ユニットの前記プローブに対する閉方向を向く受け面と、前記把持ユニットの前記閉方向へ前記受け面から突出する支持壁部と、を備える支持部と、
前記延設軸及び前記閉方向に対して垂直な方向の軸である揺動軸を中心として前記支持部に対して揺動可能に設けられる揺動部であって、前記プローブに対して対向するジョー側対向面と、前記受け面と対向する当接面と、前記ジョー側対向面と前記当接面との間に延設される側面と、を備え、前記ジョー側対向面は、高周波エネルギーが伝達されることにより前記ジョー側対向面と前記プローブとの間で把持される処置対象に高周波電流を付与するジョー側電極面と、前記揺動軸に平行な方向である幅方向について前記ジョー側対向面の端を形成する端形成面と、を備える、揺動部と、
前記揺動部を前記支持部に対して揺動可能に連結し、前記受け面が前記延設軸と平行である状態において、前記端形成面を前記幅方向について外側に延長した仮想面よりも前記支持壁部において前記受け面から前記側面に対して前記閉方向へ突出した部分の先端である突出端を前記把持ユニットの前記プローブに対する開方向側に位置させる連結部材と、
を具備する把持ユニット。
【請求項2】
前記支持壁部は、前記幅方向の一方側である第1の幅方向側の前記側面に対して前記受け面から突出する第1の支持壁部と、第1の幅方向とは反対側の第2の幅方向側の前記側面に対して前記受け面から突出する第2の支持壁部と、を備え、
前記端形成面は、前記ジョー側対向面の前記第1の幅方向側の端を形成する第1の端形成面と、前記ジョー側対向面の前記第2の幅方向側の端を形成する第2の端形成面と、を備え、
前記連結部材は、前記第1の端形成面を前記第1の幅方向側に延長した第1の仮想面よりも前記第1の支持壁部の突出端を前記把持ユニットの前記開方向側に位置させるとともに、前記第2の端形成面を前記第2の幅方向側に延長した第2の仮想面よりも前記第2の支持壁部の突出端を前記把持ユニットの前記開方向側に位置させる、
請求項1の把持ユニット。
【請求項3】
前記支持部は、内部が導電材料から形成され、
前記ジョー側電極面には、前記支持部の前記内部から前記連結部材を通して、前記高周波エネルギーが伝達される、
請求項1の把持ユニット。
【請求項4】
請求項3の把持ユニットと、
先端部に処置部を備え、前記把持ユニットが前記処置部に対して開閉可能なプローブと、
前記処置部が前記先端方向へ向かって突出する状態で前記プローブが挿通され、導電材料から形成される高周波伝達部と、
前記高周波伝達部と前記支持部との間を接続し、前記高周波伝達部から前記支持部の前記内部に前記高周波エネルギーを伝達する接続部材と、
を具備するバイポーラ処置具。
【請求項5】
前記支持部は、全体が絶縁材料から形成され、
前記把持ユニットは、導電材料から形成され、前記外部に対して露出しない状態で前記把持ユニットの開閉方向について前記支持部と前記揺動部との間に設けられる中継部材であって、前記揺動部が前記揺動軸を中心として揺動可能に取付けられる中継部材をさらに備え、
前記揺動部の前記当接面は、前記揺動部の揺動によって前記中継部材に接触することにより、前記中継部材から前記高周波エネルギーが伝達される電気接触面を備える、
請求項1の把持ユニット。
【請求項6】
請求項5の把持ユニットと、
先端部に処置部を備え、前記把持ユニットが前記処置部に対して開閉可能なプローブと、
前記処置部が前記先端方向へ向かって突出する状態で前記プローブが挿通され、導電材料から形成される高周波伝達部と、
前記高周波伝達部と前記中継部材との間を接続し、前記高周波伝達部から前記中継部材に前記高周波エネルギーを伝達する接続部材と、
を具備するバイポーラ処置具。
【請求項7】
前記中継部材の先端は、前記揺動軸より先端方向側に位置している、
請求項5の把持ユニット。
【請求項8】
前記ジョー側対向面は、前記ジョー側対向面の表面又は縁が凸凹状に形成される凸凹部を備える、請求項1の把持ユニット。
【請求項9】
請求項1の把持ユニットと、
先端部に処置部を備え、前記把持ユニットが前記処置部に対して開閉可能なプローブと、
を具備し、
前記ジョー側対向面は、前記把持ユニットが前記処置部に対して閉じることにより、前記処置部に当接可能な当接部を備え、
前記処置部は、前記ジョー側対向面と対向するプローブ側電極面を備え、
前記ジョー側電極面は、前記当接部が前記処置部に当接した状態において、前記プローブ側電極面から離間している、
バイポーラ処置具。
【請求項10】
前記プローブは、前記基端方向から前記先端方向へ向かって前記処置部まで超音波振動を伝達し、
前記当接部は、絶縁材料から形成されている、
請求項9のバイポーラ処置具。
【請求項11】
前記処置部は、絶縁材料から形成され、前記把持ユニットの前記当接部が当接可能な受け部を備える、請求項9のバイポーラ処置具。
【請求項12】
前記支持壁部は、前記幅方向の一方側である第1の幅方向側の前記側面に対して前記受け面から突出する第1の支持壁部と、第1の幅方向とは反対側の第2の幅方向側の前記側面に対して前記受け面から突出する第2の支持壁部と、を備え、
前記端形成面は、前記ジョー側対向面の前記第1の幅方向側の端を形成する第1の端形成面と、前記ジョー側対向面の前記第2の幅方向側の端を形成する第2の端形成面と、を備え、
前記把持ユニットは、前記第1の端形成面と前記第1の支持壁部との間の隙間、及び、前記第2の端形成面と前記第2の支持壁部との間の隙間に充填され、弾性を有する充填部材をさらに備える、
請求項1の把持ユニット。
【請求項13】
絶縁性及び断熱性を有する材料から形成されるとともに前記支持部に対して先端方向側の部位、前記支持部に対して前記幅方向の両側の部位、及び、前記支持部に対して前記把持ユニットの開方向側の部位に延設され、前記支持部に取付けられるカバー部材をさらに具備する、請求項1の把持ユニット。
【請求項14】
前記支持部は、前記カバー部材が取付けられた状態において、第1の接続位置、第2の接続位置及び第3の接続位置に、前記カバー部材が接続され、
前記支持部は、前記幅方向の一方側である第1の幅方向を向く第1の外表面と、前記第1の幅方向とは反対側の第2の幅方向を向く第2の外表面と、を備え、
前記第1の接続位置は、前記第1の外表面において前記揺動軸より基端方向側に位置し、
前記第2の接続位置は、前記第2の外表面において前記揺動軸より前記基端方向側に位置し、
前記3の接続位置は、前記揺動軸より前記先端方向側に位置するとともに、前記幅方向についての前記把持ユニットの中央位置を通る面であるジョー中央面を規定した場合に、前記ジョー中央面は、前記第3の接続位置を通過する、
請求項13の把持ユニット。
【請求項15】
前記支持部は、前記カバー部材が取付けられた状態において、第1の接続位置、第2の接続位置及び第3の接続位置に、前記カバー部材が接続され、
前記支持部は、前記幅方向の一方側である第1の幅方向を向く第1の外表面と、前記第1の幅方向とは反対側の第2の幅方向を向く第2の外表面と、前記先端方向を向く先端外表面と、を備え、
前記第1の接続位置は、前記第1の外表面において前記揺動軸より基端方向側に位置し、
前記第2の接続位置は、前記第2の外表面において前記揺動軸より前記基端方向側に位置し、
前記3の接続位置は、前記先端外表面に位置する、
請求項13の把持ユニット。
【請求項16】
前記支持部は、前記カバー部材が取付けられた状態において、第1の接続位置、第2の接続位置及び第3の接続位置に、前記カバー部材が接続され、
前記カバー部材は、前記第1の接続位置、前記第2の接続位置及び前記第3の接続位置以外の箇所で前記支持部に接触しない状態で、前記支持部に取付けられる、
請求項13の把持ユニット。
【請求項17】
請求項1の把持ユニットと、
先端部に処置部を備え、前記把持ユニットが前記処置部に対して開閉可能なプローブと、 を具備し、
前記処置部は、前記ジョー側対向面と対向するプローブ側電極面を備える、
バイポーラ処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブの処置部に対して開閉可能な把持ユニット、及び、プローブの処置部と把持ユニットとの間で把持された処置対象を処置するバイポーラ処置具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、先端部に処置部が設けられるプローブと、処置部に対して開閉可能な把持ユニットであるジョーと、を備え、高周波電流(高周波エネルギー)を用いて処置を行うバイポーラ処置具が開示されている。このバイポーラ処置具では、処置部は、プローブを通して高周波エネルギーが伝達(供給)されることにより、プローブ側電極部(第1の電極部)として機能する。また、ジョー(把持ユニット)には、支持部と、支持部に対して揺動可能な揺動部と、が設けられている。揺動部は、連結部材であるバネを介して、ジョーの幅方向に平行な揺動軸を中心として揺動可能に支持部に連結されている。揺動部は、プローブが挿通されるシースに設けられる導電部、及び、ジョーの支持部を通して高周波エネルギーが伝達(供給)されることにより、ジョー側電極部(第2の電極部)として機能する。
【0003】
揺動部には、処置部に対して対向するジョー側対向面が設けられ、プローブの処置部とジョーとの間で生体組織等の処置対象が把持された際には、ジョーは、揺動部のジョー側対向面で処置対象に当接する。処置対象に当接するジョー側対向面が設けられる揺動部が揺動軸を中心として揺動可能であるため、ジョー側対向面の先端部(ジョーの先端部)が処置対象に当接する場合でも、ジョー側対向面の基端部(ジョーの基端部)が処置対象に当接する場合と、ジョーと処置部との間での処置対象の把持力が略同一となる。すなわち、ジョーの延設軸に平行な方向(先端方向及び基端方向)についてのジョー側対向面の処置対象に当接する位置が変化した場合でも、ジョーと処置部との間での把持力が略均一に保たれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0278343号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1では、把持ユニットであるジョーの露出面の幅方向を向く部位では、支持部及び揺動部が外部に対して露出している。このため、ジョーの露出面(外表面)の幅方向を向く部位では、支持部と揺動部との間に隙間が形成される。これにより、処置においてプローブの処置部及びジョーを移動させる際に、支持部と揺動部との間の隙間に、生体組織が引掛かったり、詰まったりし易くなる。支持部と揺動部との間の隙間に生体組織が引掛かったり、詰まったりすることにより、処置における処置性能が低下してしまう。
【0006】
また、ジョー側電極部となる揺動部には、支持部を通して高周波エネルギーが供給される。このため、処置対象以外の箇所で生体組織等に支持部の露出面(外表面)が接触した場合には、支持部の露出面から高周波電流が放電される。この場合、ジョーの揺動部と処置部との間で把持された処置対象に流れる高周波電流の電流密度が低くなり、高周波エネルギーによる処置性能が低下してしまう。
【0007】
支持部の露出面に絶縁コーティング等の絶縁表面処理を行うことにより、支持部からの高周波電流の放電は、防止される。しかし、ジョーでは、支持部から揺動部に高周波エネルギーが伝達される必要がある。このため、支持部の表面の揺動部に対向する部位(支持部の内表面)は、導電性を有する必要があり、絶縁表面処理は行われない。すなわち、支持部では、表面(露出面及び内表面)の一部にのみ絶縁表面処理が行われる。このため、ジョーの製造時において、支持部の表面処理が複雑化する。これにより、ジョー(把持ユニット)の製造が複雑化し、ジョーの製造コストが高くなる。
【0008】
本発明は前記課題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、処置部との間で把持された処置対象の高周波電流を用いた処置における処置性能が確保され、容易に製造可能な把持ユニットを提供することにある。また、その把持ユニットを備えるバイポーラ処置具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明のある態様は、長手軸に沿って延設されるプローブに対して、基端方向から先端方向へ延設軸に沿って延設され、前記延設軸に垂直に開閉可能に設けられる把持ユニットであって、前記把持ユニットの一部を構成するとともに、少なくとも表面全体が絶縁材料から形成される支持部であって、外部に対して露出しない内表面において前記把持ユニットの前記プローブに対する閉方向を向く受け面と、前記把持ユニットの前記閉方向へ前記受け面から突出する支持壁部と、を備える支持部と、前記延設軸及び前記閉方向に対して垂直な方向の軸である揺動軸を中心として前記支持部に対して揺動可能に設けられる揺動部であって、前記プローブに対して対向するジョー側対向面と、前記受け面と対向する当接面と、前記ジョー側対向面と前記当接面との間に延設される側面と、を備え、前記ジョー側対向面は、高周波エネルギーが伝達されることにより前記ジョー側対向面と前記プローブとの間で把持される処置対象に高周波電流を付与するジョー側電極面と、前記揺動軸に平行な方向である幅方向について前記ジョー側対向面の端を形成する端形成面と、を備える、揺動部と、前記揺動部を前記支持部に対して揺動可能に連結し、前記受け面が前記延設軸と平行である状態において、前記端形成面を前記幅方向について外側に延長した仮想面よりも前記支持壁部において前記受け面から前記側面に対して前記閉方向へ突出した部分の先端である突出端を前記把持ユニットの前記プローブに対する開方向側に位置させる連結部材と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、処置部との間で把持された処置対象の高周波電流を用いた処置における処置性能が確保され、容易に製造可能な把持ユニットを提供することができる。また、その把持ユニットを備えるバイポーラ処置具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係るバイポーラ処置装置の構成を示す概略図である。
図2】第1の実施形態に係る振動子ユニットの構成を概略的に示す断面図である。
図3】第1の実施形態に係る保持ユニットの内部構成を概略的に示す断面図である。
図4】第1の実施形態に係るシースの先端部、プローブの先端部及びジョーの構成を概略的に示す斜視図である。
図5】第1の実施形態に係るシースの先端部、プローブの先端部及びジョーの構成を幅方向に垂直な断面で概略的に示す断面図である。
図6】第1の実施形態に係るシースの先端部及びジョーの構成を部材ごとに分解された状態で概略的に示す斜視図である。
図7】第1の実施形態に係る処置部及びジョーの構成を長手軸に垂直な断面で概略的に示す断面図である。
図8】第1の実施形態に係るジョーの構成を延設軸に垂直な断面で概略的に示す断面図である。
図9】第2の実施形態に係るシースの先端部、プローブの先端部及びジョーの構成を幅方向に垂直な断面で概略的に示す断面図である。
図10】第2の実施形態に係るシースの先端部及びジョーの構成をジョーの開閉方向に垂直な断面で概略的に示す断面図である。
図11】第2の実施形態に係るジョーの構成を部材ごとに分解された状態で概略的に示す斜視図である。
図12】第2の実施形態に係るジョーの構成を延設軸に垂直な断面で概略的に示す断面図である。
図13】第1の変形例に係るシースの先端部、プローブの先端部及びジョーの構成を概略的に示す斜視図である。
図14】第2の変形例に係るシースの先端部、プローブの先端部及びジョーの構成を概略的に示す斜視図である。
図15】第3の変形例に係る処置部及びジョーの構成を長手軸に垂直な断面で概略的に示す断面図である。
図16】第4の変形例に係るジョーの構成を延設軸に垂直な断面で概略的に示す断面図である。
図17】第5の変形例に係るジョーの構成を概略的に示す斜視図である。
図18】第5の変形例に係るジョーの構成をカバー部材が支持部から取り外された状態で概略的に示す斜視図である。
図19】第5の変形例に係るジョーの構成を延設軸に垂直な断面で概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について、図1乃至図8を参照して説明する。
【0013】
図1は、本実施形態のバイポーラ処置装置(高周波処置装置)1の構成を示す図である。図1に示すように、バイポーラ処置装置1は、バイポーラ処置具(ハンドピース)2を備える。バイポーラ処置具2は、長手軸Cを有する。ここで、長手軸Cに平行な方向の一方が先端方向(図1の矢印C1の方向)であり、先端方向とは反対方向が基端方向(図1の矢印C2の方向)である。バイポーラ処置具2は、超音波振動を用いて生体組織等の処置対象の処置を行う超音波処置具である。また、バイポーラ処置具2は、高周波エネルギー(高周波電流)を用いて処置対象の処置を行う高周波処置具である。
【0014】
バイポーラ処置具2は、保持ユニット3を備える。保持ユニット3は、長手軸Cに沿って延設される筒状ケース部5と、筒状ケース部5と一体に形成される固定ハンドル6と、筒状ケース部5に対して回動可能に取付けられる可動ハンドル7と、を備える。筒状ケース部5への取付け位置を中心として可動ハンドル7が回動することにより、可動ハンドル7が固定ハンドル6に対して開動作又は閉動作を行う。また、保持ユニット3は、筒状ケース部5の先端方向側に取付けられる回転操作ノブ8を備える。回転操作ノブ8は、筒状ケース部5に対して長手軸Cを中心として回転可能である。また、固定ハンドル6には、エネルギー操作入力部であるエネルギー操作入力ボタン9が設けられている。
【0015】
バイポーラ処置具2は、振動子ユニット11を備える。振動子ユニット11は、振動子ケース12を備える。振動子ケース12は、回転操作ノブ8と一体に、長手軸Cを中心として筒状ケース部5に対して回転可能である。振動子ケース12が基端方向側から筒状ケース部5の内部に挿入されることにより、振動子ケース12が保持ユニット3に取付けられる。振動子ケース12には、ケーブル13の一端が接続されている。バイポーラ処置装置1は、制御ユニット15を備える。ケーブル13の他端は、制御ユニット15に接続されている。制御ユニット15は、高周波エネルギー源16と、超音波エネルギー源17と、エネルギー制御部18と、を備える。高周波エネルギー源16及び超音波エネルギー源17は、例えば電力生成器であり、電源及び変換回路等から形成されている。エネルギー制御部18は、例えばCPU(Central Processing Unit)又はASIC(application specific integrated circuit)を備えるプロセッサ、及び、メモリ等の記憶部によって構成されている。
【0016】
図2は、振動子ユニット11の構成を示す図である。図2に示すように、振動子ユニット11は、振動子ケース12の内部に設けられる振動発生部である超音波振動子21を備える。超音波振動子21は、電流を超音波振動に変換する複数(本実施形態では4つ)の圧電素子22A〜22Dを備える。超音波振動子21には、それぞれの電気配線23A,23Bの一端が接続されている。それぞれの電気配線23A,23Bは、ケーブル13の内部を通って延設され、それぞれの電気配線23A,23Bの他端は、制御ユニット15の超音波エネルギー源17に接続されている。超音波エネルギー源17から電気配線23A,23Bを介して超音波振動子21に超音波エネルギー(超音波電流)が供給されることにより、超音波振動子21で超音波振動が発生する。
【0017】
超音波振動子21は、柱状のホーン部材25に取付けられている。ホーン部材25は、長手軸Cに垂直な断面積が変化する断面積変化部27を備える。超音波振動子21で発生した超音波振動は、ホーン部材25に伝達され、ホーン部材25において基端方向から先端方向へ伝達される。ホーン部材25に伝達された超音波振動の振幅は、断面積変化部27で拡大される。また、ホーン部材25の先端部には、雌ネジ部28が設けられている。
【0018】
バイポーラ処置具2は、筒状ケース部5の内部から先端方向へ向かって長手軸Cに沿って延設される柱状のプローブ31を備える。プローブ31の中心軸は、長手軸Cと同軸になる。プローブ31の基端部には、雄ネジ部32が設けられている。雄ネジ部32が雌ネジ部28に螺合することにより、ホーン部材25の先端方向側にプローブ31が接続される。プローブ31は、筒状ケース部5の内部でホーン部材25に接続される。超音波振動子21、ホーン部材25及びプローブ31は、回転操作ノブ8と一体に、長手軸Cを中心として筒状ケース部5に対して回転可能である。
【0019】
ホーン部材25にプローブ31が接続された状態では、ホーン部材25からプローブ31に超音波振動が伝達される。そして、プローブ31において、基端方向から先端方向へ長手軸Cに沿って超音波振動が伝達される。プローブ31の先端部には、処置部33が設けられている。プローブ31では、処置部33まで超音波振動が伝達される。なお、プローブ31の先端及びホーン部材25の基端は、超音波振動の腹位置となる。また、超音波振動は、振動方向及び伝達方向が長手軸Cに平行な縦振動である。
【0020】
ホーン部材25には、電気配線35の一端が接続されている。電気配線35は、ケーブル13の内部を通って延設され、電気配線35の他端は、制御ユニット15の高周波エネルギー源16に接続されている。これにより、高周波エネルギー源16から電気配線35、ホーン部材25及びプローブ31を通って、処置部33まで、高周波エネルギー源16から供給される高周波エネルギー(高周波電力)のプローブ側電気経路が形成される。プローブ側電気経路を介して高周波エネルギーが処置部33に伝達(供給)されることにより、処置部33は電極として機能する。すなわち、処置部33は、高周波エネルギー(高周波電流)の一方の電極として機能するプローブ側電極部(第1の電極部)36となる。
【0021】
バイポーラ処置具2は、長手軸Cに沿って延設されるシース40を備える。シース40が先端方向側から回転操作ノブ8の内部及び筒状ケース部5の内部に挿入されることにより、シース40が保持ユニット3に取付けられる。筒状ケース部5の内部では、振動子ケース12の先端方向側にシース40が取付けられている。また、シース40には、プローブ31が挿通されている。プローブ31の処置部33は、シース40の先端から先端方向へ向かって突出する。また、シース40の先端部には、把持ユニットであるジョー60が回動可能に取付けられている。ジョー(把持ユニット)60は、処置部33に対して開閉可能である。
【0022】
図3は、保持ユニット3の内部構成を示す図である。図3に示すように、シース40は、絶縁材料(非導電材料)から形成される接続筒状部41と、接続筒状部41の外周方向側に設けられる可動筒状部42と、を備える。可動筒状部42は、導電材料から形成され、振動子ケース12及び接続筒状部41に対して長手軸Cに沿って移動可能である。可動筒状部42の外周部には、絶縁材料(非導電材料)から形成されるスライダー部材43が設けられている。スライダー部材43は、可動筒状部42に対して長手軸Cに沿って移動可能である。スライダー部材43と可動筒状部42との間は、コイルバネ等の弾性部材45を介して接続されている。また、スライダー部材43には可動ハンドル7が取付けられている。可動ハンドル7を固定ハンドル6に対して開閉させることにより、スライダー部材43に駆動力が伝達され、スライダー部材43が長手軸Cに沿って移動する。そして、弾性部材45を介してスライダー部材43から可動筒状部42に駆動力が伝達され、可動筒状部42が振動子ケース12及び接続筒状部41に対して長手軸Cに沿って移動する。
【0023】
図2及び図3に示すように、振動子ケース12には、ケース導電部47が形成されている。ケース導電部47には、電気配線48の一端が接続されている。電気配線48は、ケーブル13の内部を通って延設され、電気配線48の他端が制御ユニット15の高周波エネルギー源16に接続されている。また、シース40の接続筒状部41には、導電材料から形成される板状の接点部材49が固定されている。振動子ケース12にシース40が接続された状態では、接点部材49が振動子ケース12のケース導電部47に当接し、接点部材49に可動筒状部材42が移動可能に当接する。このため、振動子ケース12にシース40が接続された状態では、振動子ケース12のケース導電部47と可動筒状部42との間は、接点部材49を介して電気的に接続される。これにより、高周波エネルギー源16から電気配線48、振動子ケース12のケース導電部47を通って、シース40の可動筒状部42に高周波エネルギーが供給(伝達)される。なお、振動子ケース12のケース導電部47及びシース40の可動筒状部42は、ホーン部材25及びプローブ31に対して、電気的に絶縁されている。
【0024】
エネルギー制御部18は、エネルギー操作入力ボタン9でのエネルギー操作の入力に基づいて、超音波エネルギー源17からの超音波エネルギーの出力状態及び高周波エネルギー源16からの高周波エネルギーの出力状態を制御している。固定ハンドル6の内部には、スイッチ(図示しない)が設けられている。エネルギー操作入力ボタン9が押圧され、エネルギー操作が入力されることにより、スイッチが閉じられる。スイッチは、エネルギー制御部18に電気的に接続されている。スイッチが閉じられることにより、電気信号がエネルギー制御部18に伝達され、エネルギー操作の入力が検出される。エネルギー操作の入力が検出されることにより、超音波エネルギー源17から超音波エネルギーが出力され、高周波エネルギー源16から高周波エネルギーが出力される。
【0025】
図4及び図5は、シース40の先端部、プローブ31の先端部及びジョー60の構成を示す図であり、図6は、シース40の先端部及びジョー60の構成を示す図である。図4及び図6は斜視図であり、図6では、部材ごとに分解された状態で示されている。図4に示すように、把持ユニットであるジョー60は、基端方向から先端方向へ延設軸(ジョー軸)Eに沿って延設されている。延設軸Eは、ジョー60の中心軸であり、ジョー60が処置部33に対して閉じた状態では、ジョー60の延設軸Eは、長手軸Cに対して略平行となる。長手軸C及び延設軸Eに垂直な方向の1つがジョー60の開方向(図4中の矢印A1の方向)となり、開方向とは反対方向がジョー60の閉方向(図4中の矢印A2の方向)となる。また、延設軸E(長手軸C)に垂直で、かつ、ジョー60の開閉方向に垂直な2方向を幅方向とする。幅方向の一方が、第1の幅方向(図4中の矢印B1の方向)となり、幅方向の他方が、第2の幅方向(図4中の矢印B2の方向)となる。なお、図5は、幅方向に垂直な断面で示されている。また、図4及び図5は、ジョー60が処置部33に対して開いた状態で、示されている。
【0026】
図4に示すように、処置部33の先端部には、第1の幅方向に向かって処置部33(長手軸C)が湾曲するプローブ側湾曲部37が形成されている。プローブ側湾曲部37を設けることにより、処置時において術者の視認性が向上する。また、ジョー60には、プローブ側湾曲部37に対応して第1の幅方向に向かってジョー60(延設軸E)が湾曲するジョー側湾曲部67が、形成されている。ジョー側湾曲部67を設けることにより、プローブ側湾曲部37に対して対向する状態で、ジョー60が延設される。
【0027】
図5及び図6に示すように、シース40は、絶縁材料(非導電材料)から形成される内側チューブ51と、内側チューブ51の外周方向側に設けられる可動パイプ52と、可動パイプ52の外周方向側に設けられる外側パイプ53と、外側パイプ53の外周方向側に設けられる外側チューブ50と、を備える。可動パイプ52及び外側パイプ53は、導電材料から形成され、外側チューブ50は絶縁材料(非導電材料)から形成されている。可動パイプ52の基端部は、可動筒状部42の先端部に連結されている。可動ハンドル7の固定ハンドル6に対する閉動作によって可動パイプ52に駆動力が伝達されることにより、可動パイプ52は可動筒状部42と一体に内側チューブ51、外側パイプ53及び外側チューブ50に対して長手軸Cに沿って移動する。可動筒状部42及び可動パイプ52が長手軸Cに沿って移動することにより、ジョー60が処置部33に対して、開動作又は閉動作する。また、高周波エネルギー源16から可動筒状部42に伝達された高周波エネルギーは、ヒューズピン(図示しない)を介して、可動パイプ52に伝達される。本実施形態では、シース40の可動筒状部42及び可動パイプ52によって、高周波伝達部(ジョー側高周波伝達部)が形成されている。そして、高周波伝達部(可動筒状部42及び可動パイプ52)には、プローブ31が挿通されている。すなわち、可動筒状部42及び可動パイプ52は、シース40において高周波電流を伝達可能なシース導電部となる。なお、高周波伝達部である可動パイプ52は、プローブ31から電気的に絶縁されている。
【0028】
ジョー60は、支点ピン55A,55Bを介して、シース40の外側パイプ53の先端部に取付けられる。ジョー60は、それぞれの支点ピン55A,55Bの中心軸と同軸の回動軸Pを中心として回動する。回動軸Pは、幅方向(B1,B2)に対して略平行である。また、可動パイプ52の先端部(高周波伝達部)は、接続部材である接続ピン56を介して、ジョー60に接続されている。可動パイプ52に伝達された高周波エネルギーは、接続ピン56を介して、ジョー60に伝達される。したがって、高周波エネルギー源16から、電気配線48、振動子ケース12のケース導電部47、可動筒状部42、可動パイプ52を通って、ジョー60まで、ジョー側電気経路が形成される。ジョー側電気経路により、高周波エネルギー源16からジョー60まで、高周波エネルギー(高周波電力)が伝達(供給)される。
【0029】
把持ユニットであるジョー60は、シース40に取付けられる支持部(ジョー本体部)61と、支持部61に対して揺動可能な揺動部62と、を備える。揺動部62は、連結部材である連結ピン63を介して、支持部61に連結される。揺動部62は、揺動軸Yを中心として、支持部61に対して揺動する。揺動軸Yは、ジョー60の幅方向に対して平行であり、連結ピン63の中心軸と同軸である。また、本実施形態では、揺動軸Yは、延設軸Eに平行な方向についてジョー60の中間部を通過する。揺動部62は、導電材料から形成されるジョー側電極部65と、ジョー側電極部65に取付けられるパッド部材66と、備える。パッド部材66は、絶縁材料(非導電材料)から形成されている。前述したジョー側電気経路を介して高周波エネルギーがジョー60のジョー側電極部65に伝達(供給)されることにより、ジョー側電極部65は電極として機能する。すなわち、ジョー側電極部(第2の電極部)65は、プローブ側電極部36(処置部33)とは別の高周波エネルギー(高周波電流)の他方の電極として機能する。
【0030】
支持部61は、導電材料から形成される支持本体68と、支持本体68の表面全体に渡ってコーティングされる絶縁コーティング部69と、を備える。支持部61では、表面全体に絶縁表面処理が行われ、表面全体が絶縁コーティング部69(すなわち、絶縁材料(非導電材料))によって形成される。このため、支持部61の表面を通して、高周波エネルギーは伝達されない。ただし、支持部61の内部の支持本体68は、導電材料から形成されるため、支持部61の内部では高周波エネルギー(高周波電流)を伝達可能である。
【0031】
支持部61の基端部には、一対のジョー突片71A,71Bが設けられている。ジョー突片71Aは、ジョー突片71Bより第1の幅方向側に位置し、幅方向についてジョー突片71Aとジョー突片71Bとの間には、空間が形成されている。ジョー突片71Aには、幅方向についてジョー突片71Aを貫通する貫通孔72Aが形成され、ジョー突片71Bには、幅方向についてジョー突片71Bを貫通する貫通孔72Bが形成されている。外側パイプ53の先端部には、一対のシース突片57A,57Bが設けられている。シース突片57Aには、幅方向についてシース突片57Aを貫通する貫通孔58Aが形成され、シース突片57Bには、幅方向についてシース突片57Bを貫通する貫通孔58Bが形成されている。シース突片57Aは、第1の幅方向側からジョー突片71Aに当接し、シース突片57Bは、第2の幅方向側からジョー突片71Bに当接する。ジョー60がシース40に取付けられた状態では、支点ピン55Aが、第1の幅方向側からシース突片57Aの貫通孔58A及びジョー突片71Aの貫通孔72Aに挿入され、支点ピン55Bが、第2の幅方向側からシース突片57Bの貫通孔58B及びジョー突片71Bの貫通孔72Bに挿入される。
【0032】
可動パイプ52の先端部には、可動突起54が形成されている。可動突起54は、幅方向についてジョー突片71Aとジョー突片71Bとの間の空間に位置している。ジョー突片71Aには、幅方向についてジョー突片71Aを貫通する接続孔73Aが形成され、ジョー突片71Bには、幅方向についてジョー突片71Bを貫通する接続孔73Bが形成されている。また、可動突起54には、幅方向について可動突起54を貫通する貫通孔59が形成されている。接続ピン56は、ジョー突片71Aの接続孔73A、可動突起54の貫通孔59及びジョー突片71Bの接続孔73Bに挿通されている。接続ピン56は、可動突起54で可動パイプ52と接触するとともに、ジョー突片71A及びジョー突片71Bにおいて、支持部61の内部の支持本体68と接触する。このため、接続部材である接続ピン56によって、支持部61の表面(絶縁コーティング部68)を通ることなく、可動パイプ52(高周波伝達部)から支持部61の内部へ高周波エネルギーが伝達される。
【0033】
図7は、プローブ31の処置部33及びジョー60を長手軸C(延設軸E)に垂直な断面で示す図であり、図8は、ジョー60を延設軸Eに垂直な断面で示す図である。図7及び図8では、揺動部62の揺動軸Yを通過する断面で示され、図7では、ジョー60が処置部33に対して閉じた状態を示している。図4乃至図8に示すように、揺動部62は、処置部33に対向し、ジョー60の閉方向(図7及び図8において矢印A2の方向)を向くジョー側対向面75を備える。本実施形態では、ジョー側対向面75は、ジョー側電極部65及びパッド部材66によって形成されている。支持部61は、先端方向、両方の幅方向(第1の幅方向B1及び第2の幅方向B2)及びジョー60の開方向(図7及び図8において矢印A1の方向)から、揺動部62を覆っている。そして、揺動部62は、ジョー側対向面75でのみ外部に対して露出している。したがって、揺動部62の表面では、ジョー側対向面75のみが外部に対して露出する露出面(外表面)となり、ジョー側対向面75以外の部位は、外部に対して露出しない非露出面(内表面)となる。
【0034】
揺動部62が揺動可能な程度の隙間が支持部61と揺動部62との間に形成される状態に、支持部61は、揺動部62を覆っている。支持部61の内表面(非露出面)には、ジョー60の閉方向を向く受け面76が設けられている。また、揺動部62(ジョー側電極部65)の内表面には、ジョー60の開方向を向き、受け面76に対向する当接面77が設けられている。当接面77は、受け面76に当接可能である。揺動部62は、第1の揺動方向(図5の矢印Y1の方向)及び第2の揺動方向(図5の矢印Y2の方向)に揺動可能である。揺動部62が第1の揺動方向に揺動することにより、揺動部62では、揺動軸Yより基端方向側の部位が処置部33に接近し、揺動軸Yより先端方向側の部位が処置部33から離れる。そして、揺動軸Yより先端方向側の位置で当接面77が受け面76に当接することにより、揺動部62の第1の揺動方向への揺動(移動)が規制される。一方、揺動部62が第2の揺動方向に揺動することにより、揺動部62では、揺動軸Yより基端方向側の部位が処置部33から離れ、揺動軸Yより先端方向側の部位が処置部33に接近する。そして、揺動軸Yより基端方向側の位置で当接面77が受け面76に当接することにより、揺動部62の第2の揺動方向への揺動(移動)が規制される。
【0035】
支持部61は、第1の幅方向側から揺動部62を覆う第1の支持壁部81Aと、第2の幅方向側から揺動部62を覆う第2の支持壁部81Bと、を備える。また、支持部61には、ジョー60の開方向側から揺動部62を覆う第3の支持壁部81Cと、先端方向側から揺動部62を覆う第4の支持壁部(先端支持壁部)81Dと、が設けられている。揺動部62の当接面77が当接可能な受け面76は、第3の支持壁部81Cの表面(内表面)に、形成されている。第1の支持壁部81Aには、幅方向について第1の支持壁部81Aを貫通する貫通孔82Aが形成され、第2の支持壁部81Bには、幅方向について第2の支持壁部81Bを貫通する貫通孔82Bが形成されている。
【0036】
ジョー側電極部65は、第1の幅方向側からパッド部材66を覆う第1の電極板部83Aと、第2の幅方向側からパッド部材66を覆う第2の電極板部83Bと、を備える。また、ジョー側電極部65には、ジョー60の開方向側からパッド部材66を覆う第3の電極板部83Cが、設けられている。支持部61の受け面76に当接可能な当接面77は、第3の電極板部83Cの表面(非露出面)に形成されている。第1の電極板部83Aには、幅方向について第1の電極板部83Aを貫通する貫通孔85Aが形成され、第2の電極板部83Bには、幅方向について第2の電極板部83Bを貫通する貫通孔85Bが形成されている。
【0037】
パッド部材66の表面(内表面)には、ジョー側電極部65の第3の電極板部83Cに固定されるパッド固定面86が設けられている。パッド固定面86は、ジョー60の開方向を向き、パッド部材(絶縁当接部材)66の開方向側の端を形成している。パッド部材66には、幅方向についてパッド部材66を貫通する貫通溝87が、形成されている。貫通溝87は、パッド固定面86からジョー60の閉方向に向かって凹んでいる。
【0038】
連結部材である連結ピン63は、第1の支持壁部81Aの貫通孔82A、第1の電極板部83Aの貫通孔85A、パッド部材66の貫通溝87、第2の電極板部83Bの貫通孔85B及び第2の支持壁部81Bの貫通孔82Bに挿通されている。連結ピン63は、第1の電極板部83A及び第2の電極板部83Bでジョー側電極部65と接触するとともに、第1の支持壁部81A及び第2の支持壁部81Bにおいて、支持部61の内部の支持本体68と接触する。このため、連結部材である連結ピン63によって、支持部61の表面(絶縁コーティング部68)を通ることなく、支持部61の内部からジョー側電極部65へ高周波エネルギーが伝達される。
【0039】
また、プローブ側電極部36となる処置部33には、ジョー側対向面75に対して対向するプローブ側電極面(プローブ側対向面)38が、形成されている。長手軸Cに垂直な断面において、処置部33は、略八角形状に形成されている。また、ジョー側対向面75には、ジョー60が処置部33に対して閉じることにより処置部33に当接可能な当接部(当接面)91を備える。ジョー60と処置部33との間に生体組織等の処置対象が配置されない状態でジョー60を閉じることにより、当接部91が処置部33のプローブ側電極面38に当接する。本実施形態では、当接部91は、パッド部材66に形成され、電気絶縁性を有する。また、当接部91は、ジョー60の閉方向を向いている。
【0040】
ジョー側対向面75は、ジョー側電極部65によって形成されるジョー側電極面92を備える。ジョー側電極部65の表面は、ジョー側電極面92でのみ、外部に対して露出している。当接部91が処置部33に対して当接した状態において、ジョー側電極面92(ジョー側電極部65)は、プローブ側電極部36(処置部33)から離間している。このため、ジョー側電極部65とプローブ側電極部36との接触が有効に防止される。
【0041】
ジョー側電極面92は、当接部91の第1の幅方向側に設けられる第1のジョー側電極面93Aと、当接部91の第2の幅方向側に設けられる第2のジョー側電極面93Bと、を備える。本実施形態では、第1のジョー側電極面93Aは、延設軸Eに垂直な断面において、ジョー60の閉方向に対して第1の幅方向へ向かって鋭角α1だけ、傾斜している。また、第2のジョー側電極面93Bは、延設軸Eに垂直な断面において、ジョー60の閉方向に対して第2の幅方向へ向かって鋭角α2だけ、傾斜している。本実施形態では、第1のジョー側電極面93Aが、ジョー側対向面75の第1の幅方向側の端Q1を形成する第1の端形成面となる。また、第2のジョー側電極面93Bが、ジョー側対向面75の第2の幅方向側の端Q2を形成する第2の端形成面となる。
【0042】
ここで、第1のジョー側電極面(第1の端形成面)93Aを第1の幅方向側に延長した第1の仮想面T1を規定するとともに、第2のジョー側電極面(第2の端形成面)93Bを第2の幅方向側に延長した第2の仮想面T2を規定する。本実施形態では、第1の仮想面T1は、延設軸Eに垂直な断面において、ジョー60の閉方向に対して第1の幅方向へ向かって鋭角α1だけ、傾斜している。また、第2の仮想面T2は、延設軸Eに垂直な断面において、ジョー60の閉方向に対して第2の幅方向へ向かって鋭角α2だけ、傾斜している。支持部61の第1の支持壁部81Aは、第1の仮想面T1よりジョー60の閉方向に突出しない状態で、設けられる。すなわち、第1の支持壁部81Aの閉方向側の端は、第1の仮想面T1より開方向側に位置している。また、支持部61の第2の支持壁部81Bは、第2の仮想面T2よりジョー60の閉方向に突出しない状態で、設けられる。すなわち、第2の支持壁部81Bの閉方向側の端は、第2の仮想面T2より開方向側に位置している。
【0043】
幅方向について第1のジョー側電極面93Aと第1の支持壁部81Aとの間には、隙間95Aが形成されている。また、幅方向について第2のジョー側電極面93Bと第2の支持壁部81Bとの間には、隙間95Bが形成されている。それぞれの隙間95A,95Bでは、幅方向についての寸法が0.1mm〜0.2mmとなる。
【0044】
また、ジョー側対向面75では、第1のジョー側電極面93Aに第1の凸凹部97Aが設けられ、第2のジョー側電極面93Bに第2の凸凹部97Bが設けられている。第1の凸凹部97Aでは、第1のジョー側電極面93Aの縁(第1の幅方向側の端Q1)が凸凹状に形成される。第1の凸凹部97Aでの凸方向及び凹方向は、第1のジョー側電極面93Aに対して平行で、かつ、ジョー60の延設軸Eに対して垂直である。また、第2の凸凹部97Bでは、第2のジョー側電極面93Bの第2の幅方向側の縁(第2の幅方向側の端Q2)が凸凹状に形成される。第2の凸凹部97Bでの凸方向及び凹方向は、第2のジョー側電極面93Bに対して平行で、かつ、ジョー60の延設軸Eに対して垂直である。なお、本実施形態では、それぞれの凸凹部97A,97Bは、延設軸Eと略平行に延設されている。
【0045】
次に、本実施形態のバイポーラ処置具2(バイポーラ処置装置1)の作用及び効果について、説明する。バイポーラ処置具2を用いて生体組織(血管)等の処置対象を処置する際には、処置部33及びジョー60を体内に挿入する。そして、ジョー60と処置部33との間に処置対象に位置させる。この状態で、可動ハンドル7を閉動作させることにより、ジョー60が処置部33に対して閉じ、ジョー60の揺動部62と処置部33との間で処置対象が把持される。この際、揺動部62に設けられるジョー側対向面75が、処置対象に当接する。ジョー側対向面75が設けられる揺動部62は、支持部61に対して揺動軸Yを中心として揺動可能である。このため、ジョー側対向面75の先端部(ジョー60の先端部)が処置対象に当接する場合でも、ジョー側対向面75の基端部(ジョー60の基端部)が処置対象に当接する場合と、ジョー60と処置部33との間での処置対象の把持力が略同一となる。すなわち、ジョー60の延設軸Eに平行な方向(先端方向及び基端方向)についてのジョー側対向面75の処置対象に当接する位置が変化した場合でも、ジョー60と処置部33との間での把持力が略均一に保たれる。
【0046】
把持対象がジョー60と処置部33との間で把持された状態で、エネルギー操作入力ボタン9でエネルギー操作が入力される。エネルギー制御部18によってエネルギー操作の入力が検出されることにより、超音波エネルギー源17から超音波エネルギー(超音波電力)が出力され、高周波エネルギー源16から高周波エネルギー(高周波電力)が出力される。超音波振動子21に超音波エネルギー(超音波電流)が供給されることにより、超音波振動が発生する。発生した超音波振動は、ホーン部材25を通してプローブ31に伝達され、プローブ31において基端方向から先端方向へ超音波振動が長手軸Cに沿って伝達される。そして、超音波振動が処置部33に伝達されることにより、処置部33は長手軸Cに対して平行に振動する。また、高周波エネルギーは、プローブ側電気経路を通してプローブ側電極部36(処置部33)に伝達されるとともに、ジョー側電気経路を通してジョー60のジョー側電極部65に伝達される。これにより、プローブ側電極部36は高周波エネルギーの一方の電極として機能し、ジョー側電極部65は、高周波エネルギーの他方の電極として機能する。
【0047】
処置対象を把持した状態で超音波振動が伝達されることにより、処置部33が振動し、処置部33と把持対象との間に摩擦熱が発生する。摩擦熱によって、処置対象が切開(cut)と同時に凝固される(coagulation)される。また、プローブ側電極部36(プローブ側電極面38)とジョー側電極部65(ジョー側電極面92)との間で、処置対象を通して高周波電流が流れる。これにより、処置対象が変性され(denatured)、処置対象の凝固性が向上する。
【0048】
本実施形態では、揺動部62は、先端方向、両方の幅方向及びジョーの開方向から支持部61によって覆われ、揺動部62の表面は、ジョー側対向面75でのみ外部に対して露出している。このため、ジョー60の露出面において、幅方向(第1の幅方向及び第2の幅方向)を向く部位のそれぞれ、先端方向を向く部位、及び、ジョー60の開方向を向く部位は、支持部61のみから形成されている。したがって、ジョー60の露出面において、幅方向(第1の幅方向及び第2の幅方向)を向く部位のそれぞれ、先端方向を向く部位、及び、ジョー60の開方向を向く部位には、隙間等が形成されない。これにより、体内においてジョー60及び処置部33を移動させる際において、処置対象以外の生体組織等のジョー60への引掛り及び詰まりが、有効に防止される。このため、体内でのジョー60の移動性が確保されるとともに、術者の視認性が確保され、処置における処置性能を確保することができる。
【0049】
また、支持部61の表面(外表面及び内表面)全体は、絶縁コーティング部69によって覆われている。このため、支持部61の表面を通して高周波エネルギー(高周波電流)は伝達されない。したがって、処置対象以外の箇所で生体組織等に支持部61の外表面(露出面)が接触した場合でも、支持部61の露出面から高周波電流が放電されない。また、揺動部62は、ジョー側対向面75のみが外部に対して露出ており、ジョー側対向面75以外の部位が生体組織に接触することはない。このため、ジョー側対向面75のジョー側電極面92以外の箇所からの高周波電流の放電が、有効に防止される。これにより、ジョー60の揺動部62と処置部33との間で把持された処置対象に流れる高周波電流の電流密度が高くなり、高周波エネルギーによる処置性能を確保することができる。
【0050】
また、支持部61の表面(外表面及び内表面)は、全体に絶縁表面処理が行われる。したがって、部分的に絶縁表面処理を行う場合等に比べて、支持部61の表面処理が単純化する。これにより、容易にジョー60が製造され、ジョー60の製造コストを抑えることができる。
【0051】
また、バイポーラ処置具2では、シース40の可動パイプ52(高周波伝達部)から接続ピン56を通して、支持部61の内部の支持本体68に高周波エネルギーが伝達される。そして、支持部61の内部から連結ピン63を通して、ジョー側電極部65に高周波エネルギーが伝達される。すなわち、支持部61の表面を通ることなく、ジョー側電極部65に高周波エネルギーが伝達される。したがって、支持部61の表面全体が絶縁性を有しても、適切にジョー側電極部65に高周波エネルギーを伝達することができる。
【0052】
また、揺動部62を第1の幅方向側から覆う第1の支持壁部81Aは、第1のジョー側電極面(第1の端形成面)93Aを第1の幅方向側に延長した第1の仮想面T1より、ジョー60の閉方向に突出しない。そして、揺動部62を第2の幅方向側から覆う第2の支持壁部81Bは、第2のジョー側電極面(第2の端形成面)93Bを第2の幅方向側に延長した第2の仮想面T2より、ジョー60の閉方向に突出しない。このため、ジョー60の揺動部62と処置部33との間に処置対象を位置させる際に、支持部61の第1の支持壁部81A及び第2の支持壁部81Bに処置対象が引掛り難くなる。これにより、ジョー60の揺動部62と処置部33との間に処置対象を配置し易くなり、処置における処置性能を向上させることができる。
【0053】
また、揺動部62のジョー側対向面75には、第1の凸凹部97A及び第2の凸凹部97Bが設けられている。第1の凸凹部97A及び第2の凸凹部97A,97Bによって、揺動部62と処置部33との間で処置対象を把持した際に、処置対象の延設軸E(長手軸C)に沿った移動が規制される。これにより、揺動部62と処置部33との間で処置対象が確実に把持され、処置における処置性能を向上させることができる。
【0054】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、図9乃至図12を参照して説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態の構成を次の通り変形したものである。なお、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0055】
図9は、シース40の先端部、プローブ31の先端部及びジョー60の構成を示す図である。また、図10は、シース40の先端部及びジョー60の構成を示す図であり、図11及び図12は、ジョー60の構成を示す図である。図9は、幅方向(図10及び図12において矢印B1の方向及び矢印B2の方向)に垂直な断面で示され、図10は、ジョー60の開閉方向(図9及び図12において矢印A1の方向及び矢印A2の方向)に垂直で、かつ、接続ピン56を通る断面で示されている。また、図11では、部材ごとに分解された状態が示され、図12では、延設軸Eに垂直で、かつ、揺動軸Yを通過する断面で示されている。
【0056】
図9乃至図12に示すように、本実施形態でも第1の実施形態と同様に、把持ユニットであるジョー60には、支持部61及び揺動部62が設けられている。ただし、支持部61は、全体が絶縁材料(非導電材料)から形成されている。また、支持部61は、全体が熱伝導性の低い材料から形成され、支持部61では、熱の伝達性が低くなる。支持部61は、例えばPI、PEEK等の樹脂材料又は発泡性の樹脂又はセラミックから形成されている。また、本実施形態では、ジョー60の開閉方向について支持部61の第3の支持壁部81Cと揺動部62のジョー側電極部65の第3の電極板部83Cとの間に、中継部材101が設けられている。中継部材101は、導電材料から形成され、外部に対して露出しない状態で設けられている。中継部材101は、延設軸Eに対して略平行に延設されている。中継部材101は、支持部61の第3の支持壁部81Cに固定されている。したがって、揺動部62は、中継部材101に対して揺動軸Yを中心として揺動可能に取付けられる。なお、中継部材101は、揺動部62の開方向側の端を形成するジョー側電極部65の当接面77から、離れて位置している。
【0057】
中継部材101の基端部には、一対の部材突片102A,102Bが設けられている。部材突片102Aには、幅方向について部材突片102Aを貫通する接続孔103Aが形成され、部材突片102Bには、幅方向について部材突片102Bを貫通する接続孔103Bが形成されている。また、部材突片102Aは、幅方向についてジョー突片71Aと可動突起54との間に配置され、部材突片102Bは、幅方向についてジョー突片71Bと可動突起54との間に配置される。本実施形態では、接続ピン56は、ジョー突片71Aの接続孔73A、部材突片102Aの接続孔103A、可動突起54の貫通孔59、部材突片102Bの接続孔103B及びジョー突片71Aの接続孔73Bに挿通されている。接続ピン56は、可動突起54で可動パイプ52と接触するとともに、部材突片102A及び部材突片102Bにおいて、中継部材101と接触する。このため、接続部材である接続ピン56によって、全体が絶縁性を有する支持部61を通ることなく、可動パイプ52(高周波伝達部)から中継部材101へ高周波エネルギーが伝達される。
【0058】
中継部材101の先端は、揺動軸Yより先端方向側に位置している。すなわち、中継部材101は、揺動軸Yより先端方向側の位置まで延設されている。また、中継部材101には、ジョー60の閉方向を向く受け面105が設けられている。揺動部62が第1の揺動方向(図9において矢印Y1の方向)又は第2の揺動方向(図9において矢印Y2の方向)に揺動することにより、ジョー側電極部65の当接面(電気接触面)77が中継部材101の受け面105に接触する。ジョー側電極部65の当接面(電気接触面)77が中継部材101の受け面105に接触することにより、全体が絶縁性を有する支持部61を通ることなく、中継部材101からジョー側電極部65に高周波エネルギーが伝達される。なお、中継部材101の先端が揺動軸Yより先端方向側に位置するため、揺動軸Yより先端方向側の部位が処置部33から離れる状態に(第1の揺動方向へ向かって)揺動部62が揺動した場合でも、当接面77は、中継部材101に接触する。
【0059】
本実施形態では、揺動部62は、先端方向、両方の幅方向及びジョーの開方向から支持部61によって覆われ、揺動部62の表面は、ジョー側対向面75でのみ外部に対して露出している。そして、中継部材101は、外部に対して露出しない状態で設けられている。このため、第1の実施形態と同様に、処置対象以外の生体組織等のジョー60への引掛り及び詰まりが、有効に防止される。また、第1の実施形態と同様に、ジョー側電極面92以外の箇所からの高周波電流の放電が、有効に防止されるため、ジョー60の揺動部62と処置部33との間で把持された処置対象に流れる高周波電流の電流密度が高くなる。
【0060】
また、本実施形態では、支持部61全体が絶縁材料から形成されるため、支持部61の製造において絶縁表面処理等の表面処理を行う必要はない。このため、さらに容易にジョー60が製造され、ジョー60の製造コストをさらに抑えることができる。また、支持部61全体が絶縁材料で、かつ、熱伝導性が低い材料から形成されるため、支持部61では、熱の伝達性が低くなる。このため、処置においてジョー側対向面75の近傍で発生した熱が、支持部61の外表面(露出面)に伝達され難くなる。これにより、処置対象以外の生体組織等に支持部61が接触した場合でも、生体組織の熱損傷が有効に防止される。さらに、ジョー側対向面75(パッド部材66)と処置部33との間で把持された生体組織等の処置対象にのみ、処置に用いられる熱が効率的に伝達される。このため、処置対象を処置する処置性能が向上する。
【0061】
また、バイポーラ処置具2では、シース40の可動パイプ52(高周波伝達部)から接続ピン56を通して、中継部材101に高周波エネルギーが伝達される。そして、中継部材101にジョー側電極部65の当接面(電気接触面)77が接触することにより、中継部材101からジョー側電極部65に高周波エネルギーが伝達される。すなわち、絶縁材料から形成される支持部61を通ることなく、ジョー側電極部65に高周波エネルギーが伝達される。したがって、支持部61全体が絶縁性を有しても、適切にジョー側電極部65に高周波エネルギーを伝達することができる。また、中継部材101の先端は、揺動軸Yより先端方向側に位置する。このため、揺動軸Yより先端方向側の部位が処置部33から離れる状態に(第1の揺動方向へ向かって)揺動部62が揺動した場合でも、当接面77は、中継部材101に接触する。これにより、さらに確実にジョー側電極部65に高周波エネルギーを伝達することができる。
【0062】
(変形例)
なお、前述の実施形態では、第1のジョー側電極面93Aの縁(ジョー側対向面75の第1の幅方向側の端Q1)に第1の凸凹部97Aが設けられ、第2のジョー側電極面93Bの縁(ジョー側対向面75の第2の幅方向側の端Q2)に第2の凸凹部97Bが設けられているが、これに限るものではない。例えば、第1の変形例として図13に示すように、第1のジョー側電極面93Aの表面(露出面)に第1の凸凹部97Aが設けられ、第2のジョー側電極面93Bの表面(露出面)に第2の凸凹部97Bが設けられてもよい。本変形例では、第1の凸凹部97Aの凸方向及び凹方向は、第1のジョー側電極面93Aに対して垂直であり、第2の凸凹部97Bの凸方向及び凹方向は、第2のジョー側電極面93Bに対して垂直である。本変形例でも、第1の凸凹部97A及び第2の凸凹部97Bは、ジョー60の延設軸Eに略平行に延設されている。本変形例でも、第1の凸凹部97A及び第2の凸凹部97Bによって、揺動部62と処置部33との間で処置対象を把持した際に、処置対象の延設軸E(長手軸C)に沿った移動が規制される。
【0063】
また、第2の変形例として図14に示すように、凸凹部97A,97Bの代わりに、パッド部材66の当接部(当接面)91の表面(露出面)に、凸凹部97が設けられてもよい。本変形例では、凸凹部97の凸方向及び凹方向は、当接部91に対して垂直である。凸凹部97は、ジョー60の延設軸Eに略平行に延設されている。本変形例でも、凸凹部97によって、揺動部62と処置部33との間で処置対象を把持した際に、処置対象の延設軸E(長手軸C)に沿った移動が規制される。
【0064】
第1の変形例及び第2の変形例から、ジョー側対向面75に、表面又は縁が凸凹状に形成される凸凹部(97A,97B;97)が、設けられていればよい。これにより、揺動部62と処置部33との間で処置対象を把持した際に、処置対象の延設軸E(長手軸C)に沿った移動が規制される。なお、前述の実施形態等では、凸凹部(97A,97B;97)は、延設軸Eに沿って延設されているが、凸凹部は、延設軸Eに沿って延設される必要はない。例えば、幅方向に沿って凸凹部が延設されてもよい。
【0065】
また、前述の実施形態では処置部33に超音波振動が伝達されるが、処置部33に超音波振動が伝達されなくてもよい。例えば、図15に示す第3の変形例では、揺動部62に、パッド部材66が設けられず、ジョー側電極部65のみから揺動部62が形成されている。本変形例では、超音波振動は発生せず、超音波エネルギー源17、超音波振動子21等は、設けられていない。
【0066】
本変形例では、処置部33に、プローブ側電極部36に加えて絶縁材料から形成される受け部107が、設けられている。受け部107は、プローブ側電極部36(プローブ側電極面38)から開方向(図15の矢印A1の方向)に向かって突出している。また、揺動部62では、ジョー側対向面75の全体がジョー側電極面92となる。ジョー側電極面92は、第1のジョー側電極面(第1の端形成面)93A及び第2のジョー側電極面(第2の端形成面)93Bに加えて、第3のジョー側電極面93Cが設けられている。第3のジョー側電極面93Cは、幅方向について第1のジョー側電極面93Aと第2のジョー側電極面93Bとの間に延設され、本変形例では、ジョー60の開閉方向に対して垂直である。
【0067】
ジョー60を処置部33に対して閉じることにより、第3のジョー側電極面93Cは、処置部33の受け部107に当接可能である。すなわち、本変形例では、第3のジョー側電極面93Cが、ジョー60と処置部33との間に生体組織等の処置対象が配置されない状態でジョー60を閉じることにより、処置部33の受け部107に当接する当接部となる。当接部である第3のジョー側電極面93Cが受け部107に当接した状態では、ジョー側電極面92(ジョー側対向面75)は、プローブ側電極部36(プローブ側電極面38)から離間している。したがって、本変形例でも、ジョー側電極部65とプローブ側電極部36との接触が、防止される。
【0068】
第3の変形例から、ジョー60の揺動部62では、ジョー側対向面75に処置部33に当接可能な当接部(91;93C)が設けられていればよい。そして、当接部(91;93C)が処置部33に当接した状態において、ジョー側電極部65がプローブ側電極部36から離間していればよい。
【0069】
また、第4の変形例について、図16を参照して説明する。図16に示すように、本変形例で第1の実施形態と同様に、揺動部62は、先端方向、両方の幅方向(図16において矢印B1の方向及び矢印B2の方向)及びジョー60の開方向(図16において矢印A1の方向)から支持部61によって覆われ、ジョー側対向面75でのみ外部に対して露出している。本変形例では、幅方向について第1のジョー側電極面(第1の端形成面)93Aと第1の支持壁部81Aとの間の隙間95Aには、充填部材111Aが充填されている。また、幅方向について第2のジョー側電極面(第2の端形成面)93Bと第2の支持壁部81Bとの間の隙間95Bには、充填部材111Bが充填されている。充填部材111A,111Bは、弾性を有し、例えばαゲル等のゲルである。
【0070】
本変形例では、隙間95Aに充填部材111Aが充填され、隙間95Bに充填部材111Bが充填される。このため、処置において、把持された処置対象及び凝固された処置対象の隙間95A,95Bへの引掛り及び詰まりが、有効に防止される。また、充填部材111A,111Bは弾性を有するため、それぞれの隙間95A,95Bに対応する充填部材(111A又は111B)が充填されても、揺動部62は支持部61に対して揺動可能である。
【0071】
なお、本変形例では、支持部61及び揺動部62(ジョー側電極部65)の延設軸Eに垂直な断面形状が第1の実施形態とは異なるが、支持部61及び揺動部62の延設軸Eに垂直な断面形状は、第1の実施形態及び本変形例の形状に限るものではない。すなわち、揺動部62が先端方向、両方の幅方向及びジョー60の開方向から支持部61によって覆われ、かつ、揺動部62がジョー側対向面75でのみ外部に対して露出させることが可能な形状に、支持部61及び揺動部62が形成されていればよい。
【0072】
また、第5の変形例について、図17乃至図19を参照して説明する。図17乃至図19に示すように、本変形例では、支持部61にカバー部材113が取付けられている。カバー部材113は、先端方向、両方の幅方向(第1の幅方向及び第2の幅方向)及びジョー60の開方向から支持部61を覆っている。カバー部材113は、樹脂等の絶縁性及び断熱性を有する材料から形成されている。
【0073】
支持部61の表面(外表面及び内表面)全体は、絶縁コーティング部69によって覆われているため、支持部61の外表面から高周波電流は放電されない。しかし、支持部61の内部は、熱の伝達性の高い支持本体68から形成されている。このため、処置においてジョー側対向面75の近傍で発生した熱が、支持部61の外表面に伝達され易い。そこで、本変形例では、カバー部材113によって支持部61の外表面を覆っている。これにより、処置対象以外の生体組織等への支持部61の接触が有効に防止される。また、カバー部材113は、断熱性を有する材料から形成され、熱の伝達性が低い。このため、処置対象以外の生体組織等にカバー部材113の外表面(露出面)が接触した場合でも、生体組織の熱損傷が有効に防止される。
【0074】
カバー部材113に覆われていない状態で外部に対して露出する支持部61の外表面は、第1の幅方向(図17及び図19において矢印B1の方向)を向く第1の外表面115Aと、第2の幅方向(図17及び図19において矢印B2の方向)を向く第2の外表面115Bと、を備える。また、支持部61の外表面は、ジョー60の開方向(図17及び図19において矢印A1の方向)を向く第3の外表面115Cと、先端方向(図17において矢印C1の方向)を向く第4の外表面(先端外表面)115Dと、を備える。第1の外表面115Aは、第1の支持壁部81Aの外表面であり、第2の外表面115Bは、第2の支持壁部81Bの外表面である。また、第3の外表面115Cは、第3の支持壁部81Cの外表面であり、第4の外表面115Dは、第4の支持壁部81Dの外表面である。
【0075】
カバー部材113が支持部61に取付けられた状態では、支持部61は、第1の接続位置Z1、第2の接続位置Z2及び第3の接続位置Z3の3つの接続位置で、カバー部材113に接続されている。第1の接続位置Z1は、支持部61の第1の外表面115Aにおいて、揺動軸Yより基端方向側に位置している。支持部61の第1の接続位置Z1には、係合孔117Aが設けられている。カバー部材113には、係合孔117Aに対応させて貫通孔118Aが設けられている。接続ピン119Aが、貫通孔118Aに挿通され、係合孔117Aと係合することにより、支持部61が第1の接続位置Z1でカバー部材113に接続される。また、第2の接続位置Z2は、支持部61の第2の外表面115Bにおいて、揺動軸Yより基端方向側に位置している。支持部61の第2の接続位置Z2には、係合孔117Bが設けられている。カバー部材113には、係合孔117Bに対応させて貫通孔118Bが設けられている。接続ピン119Bが、貫通孔118Bに挿通され、係合孔117Bと係合することにより、支持部61が第2の接続位置Z2でカバー部材113に接続される。
【0076】
ここで、幅方向についてジョー60の中央位置を通る面であるジョー中央面Xを規定する。ジョー60の中心軸である延設軸Eは、ジョー中央面X上に延設されている。本変形例では、第3の接続位置Z3は、支持部61の第4の外表面(先端外表面)115Dに位置し、ジョー中央面Xは、第3の接続位置Z3を通過する。また、第3の接続位置Z3は、第4の外表面115Dに位置するため、揺動軸Yより先端方向側に位置している。支持部61の第3の接続位置Z3には、先端方向に向かって突出する係合突起121が設けられている。カバー部材113には、係合突起121に対応させて係合孔122が設けられている。係合突起121が係合孔122と係合することにより、支持部61が第3の接続位置Z3でカバー部材113に接続される。
【0077】
前述のような3つの接続位置(Z1,Z2,Z3)で支持部61がカバー部材113に接続されることにより、カバー部材113の強固かつ確実な支持部61への取付けが、容易かつ単純な構成で実現される。
【0078】
なお、本変形例では、第3の接続位置Z3が第4の外表面(先端外表面)115Dに位置し、かつ、ジョー中央面Xが第3の接続位置Z3を通過するが、これに限るものではない。例えば、ある変形例として、ジョー中央面Xが第3の接続位置Z3を通過し、かつ、第3の接続位置Z3が揺動軸Yより先端方向側に位置していれば、ジョー60の開方向を向く第3の外表面115Cに第3の接続位置Z3が位置してもよい。また、別のある変形例として、第3の接続位置Z3が第4の外表面(先端外表面)115Dに位置するのであれば、ジョー中央面Xが第3の接続位置Z3を通過しなくてもよい。
【0079】
また、前述の3つの接続位置(Z1,Z2,Z3)で支持部61がカバー部材113に接続されるのであれば、支持部61をカバー部材113に接続する構成は、本変形例の構成に限るものではない。例えば、ある変形例では、支持部61の第3の接続位置Z3に係合孔(図示しない)が設けられ、カバー部材113に係合孔に対応させて係合突起(図示しない)が設けられてもよい。
【0080】
また、本変形例では、第1の接続位置Z1、第2の接続位置Z2及び第3の接続位置Z3以外の箇所において、支持部61の外表面とカバー部材113の内表面との間に、隙間123が形成されている。隙間123が設けられることにより、カバー部材113は、第1の接続位置Z1、第2の接続位置Z2及び第3の接続位置Z3以外の箇所で支持部61に接触しない。このため、支持部61の外表面からカバー部材113への熱の伝達性が低くなる。したがって、処置においてジョー側対向面75の近傍で発生した熱が、カバー部材113の外表面(露出面)にさらに伝達され難くなる。
【0081】
なお、ある変形例では、支持部61とカバー部材113との間の隙間123に、断熱材料から形成される充填部材(図示しない)が充填されてもよい。充填部材は、αゲル等のゲルである。
【0082】
また、前述の実施形態等では、揺動部62の揺動軸Yは、幅方向に平行であるがこれに限るものではない。例えば、ある変形例では、揺動部62の揺動軸(Y)は、延設軸Eに対して平行に設けられてもよい。
【0083】
また、前述の実施形態等では、揺動部62を支持部61に揺動可能に連結する連結部材として、連結ピン63が用いられているが、これに限るものではない。例えば、ある変形例では、前記特許文献1と同様にバネが連結部材として用いられてもよく、また別の変形例では、ジョイントボールが連結部材として用いられてもよい。
【0084】
前述の実施形態では、把持ユニット(ジョー60)は、少なくとも表面全体が絶縁材料から形成されることにより表面を通しての高周波エネルギーの伝達が防止される支持部(61)を備える。そして、把持ユニット(60)には、揺動軸(Y)を中心として支持部(61)に対して揺動可能な揺動部(62)が、設けられる。揺動部(62)は、処置部(33)に対して対向するジョー側対向面(75)と、高周波エネルギーが伝達されることによりプローブ側電極部(36)とは別の電極として機能するジョー側電極部(65)と、を備え、ジョー側対向面(75)は、ジョー側電極部(65)から形成されるジョー側電極面(92)を備える。揺動部(62)は、先端方向(C1)、両方の幅方向(B1及びB2)及びジョー(60)の開方向(A1)から支持部(61)が揺動部(62)を覆い、かつ、揺動部(62)がジョー側対向面(75)でのみ外部に対して露出する状態に、連結部材(63)によって、支持部(61)に連結される。
【0085】
以上、本発明の実施形態等について説明したが、本発明は前記の実施形態等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形ができることは勿論である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19