特許第5989277号(P5989277)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989277
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】内視鏡の先端構造
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20160825BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   A61B1/00 300P
   A61B1/00 334A
   G02B23/24 A
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-502824(P2016-502824)
(86)(22)【出願日】2015年5月13日
(86)【国際出願番号】JP2015063772
(87)【国際公開番号】WO2016035386
(87)【国際公開日】20160310
【審査請求日】2016年1月21日
(31)【優先権主張番号】特願2014-180586(P2014-180586)
(32)【優先日】2014年9月4日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】豊岡 卓也
【審査官】 山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−253484(JP,A)
【文献】 特開2002−034905(JP,A)
【文献】 特開2012−075658(JP,A)
【文献】 特開平11−226024(JP,A)
【文献】 特開2006−288941(JP,A)
【文献】 特開2013−230299(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0029526(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡における挿入部の先端に形成された、長辺と短辺を有する開口からなる処置具挿通チャンネルの開口と、
前記挿入部の前記先端において、前記開口を挟むよう前記短辺方向に沿って対向するとともに、前記長辺方向に沿って延在する一対の壁部と、
を具備し、
前記一対の壁部における各頂部の端面は、前記長辺方向に沿った傾斜方向が互いに逆となるよう傾斜していることを特徴とする内視鏡の先端構造。
【請求項2】
前記開口は、前記挿入部の前記先端の側面に形成され、前記長辺方向は、前記挿入部の長手軸方向と一致しており、
前記一対の壁部における各頂部の端面は、前記長手軸方向に対して側方を指向していることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡の先端構造。
【請求項3】
前記挿入部の前記先端の側面に被検体内を観察する観察光学系の対物窓が配置されており、
前記一対の壁部は、前記開口とともに前記対物窓を挟んで対向していることを特徴とする請求項2に記載の内視鏡の先端構造。
【請求項4】
前記一対の壁部における各頂部の端面は、前記長手軸方向に沿って延在していることを特徴とする請求項2に記載の内視鏡の先端構造。
【請求項5】
前記一対の壁部における一方の頂部の端面は、前記長手軸方向に沿った前記挿入部の基端側から先端側に向けて前記挿入部の径が拡大する方向に傾斜しており、
前記一対の壁部における他方の頂部の端面は、前記長手軸方向に沿った前記挿入部の基端側から先端側に向けて前記挿入部の径が縮小する方向に傾斜していることを特徴とする請求項4に記載の内視鏡の先端構造。
【請求項6】
前記一対の壁部における一方の頂部の端面は、前記長手軸方向に沿った前記挿入部の基端側から先端側に向けて前記挿入部の径が縮小する方向に傾斜しており、
前記一対の壁部における他方の頂部の端面は、前記長手軸方向に沿った前記挿入部の基端側から先端側に向けて前記挿入部の径が拡大する方向に傾斜していることを特徴とする請求項4に記載の内視鏡の先端構造。
【請求項7】
前記一対の壁部における各頂部の端面は、前記長手軸方向に沿って延在しているとともに、
前記一対の壁部の内の、前記対物窓に近い側の壁部における頂部の端面は、前記長手軸方向に沿った前記挿入部の基端側から先端側に向けて前記挿入部の径が縮小する方向に傾斜しており、
前記一対の壁部の内の、前記開口に近い側の壁部における頂部の端面は、前記長手軸方向に沿った前記挿入部の基端側から先端側に向けて前記挿入部の径が拡大する方向に傾斜していることを特徴とする請求項3に記載の内視鏡の先端構造。
【請求項8】
前記一対の壁部における各頂部の端面は、前記長手軸方向に沿って延在しているとともに、
前記一対の壁部の内の、前記開口に近い側の壁部における頂部の端面は、前記長手軸方向に沿った前記挿入部の基端側から先端側に向けて前記挿入部の径が縮小する方向に傾斜しており、
前記一対の壁部の内の、前記対物窓に近い側の壁部における頂部の端面は、前記長手軸方向に沿った前記挿入部の基端側から先端側に向けて前記挿入部の径が拡大する方向に傾斜していることを特徴とする請求項3に記載の内視鏡の先端構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の挿入部の先端に、処置具挿通チャンネルの開口を有する内視鏡の先端構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内視鏡は、医療分野及び工業用分野において広く利用されている。内視鏡は、細長い挿入部を被検体内に挿入することによって被検体内を観察することができる。
【0003】
尚、内視鏡としては、挿入部の長手軸方向の先端側(以下、単に先端側と称す)に設けられた先端部の先端面に、観察用レンズや照明用レンズや処置具挿通チャンネルの開口(以下、チャンネル開口と称す)が設けられた、被検体内において先端面よりも長手軸方向の前方(以下、単に前方と称す)の被検部位を観察、処置する既知の直視型の内視鏡が周知である。
【0004】
また、日本国特開2010−253069号公報に示すように、内視鏡としては、挿入部の先端部の外周面の一部に、観察用レンズや照明用レンズやチャンネル開口が設けられた、被検体内において長手軸方向に対して側方の被検部位を観察、処置する既知の側視型の内視鏡も周知である。
【0005】
ここで、例えば日本国特開2010−253069号公報に開示されているような医療用の側視型の内視鏡を用いて、例えば胆管内に留置され胆管の狭搾部を拡径する既知の細長なステントを、処置具挿通チャンネルの開口を介して回収する手技が周知である。
【0006】
具体的な手技としては、先ず、処置具挿通チャンネル内に、既知のスネアや把持鉗子等の回収処置具を内視鏡の操作部側から挿入するとともに、回収処置具の先端側をチャンネル開口から突出させる。
【0007】
その後、回収処置具の先端側にてステントを保持し、最後に、チャンネル開口を介してステントを回収処置具とともに処置具挿通チャンネル内に引き込むことによりステントは回収される。
【0008】
尚、回収の際、ステントは、胆管内において、チャンネル開口を跨ぐように渡される。また、ステントは、中心付近が回収処置具の先端側にて保持された状態において、回収処置具を引き込んだ際の引き込み力とチャンネル開口の各開口縁部とを利用して、中心付近を支点に2つ折りにされながらチャンネル開口を介して処置具挿通チャンネル内に引き込まれる。
【0009】
しかしながら、ステントを2つ折りにするには回収処置具の大きな引き込み力量が必要になってしまうとともに、ステントが大径になってしまうほどより大きな引き込み力量が必要になるため、ステントを2つ折りにすることが難しくなってしまうといった問題があった。
【0010】
尚、以上の問題は、側視型の内視鏡に限らず、直視型の内視鏡においても同様である。また、ステントを回収する部位も胆管以外であっても同様であり、さらに、ステントに限らず、被検体内の細長な異物等の回収物を、チャンネル開口を介して2つ折りにして回収する場合においても同様である。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、被検体内の細長な回収物を、容易に2つ折りにしてチャンネル開口を介して回収処置具にて回収することができる構成を具備する内視鏡の先端構造を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様による内視鏡の先端構造は、内視鏡における挿入部の先端に形成された、長辺と短辺を有する開口からなる処置具挿通チャンネルの開口と、前記挿入部の前記先端において、前記開口を挟むよう前記短辺方向に沿って対向するとともに、前記長辺方向に沿って延在する一対の壁部と、を具備し、前記一対の壁部における各頂部の端面は、前記長辺方向に沿った傾斜方向が互いに逆となるよう傾斜していることを特徴とする内視鏡の先端構造。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施の形態の先端構造を具備する内視鏡と周辺装置とから構成された内視鏡装置の一例を概略的に示す斜視図
図2図1の挿入部の先端部を図1中のII方向から概略的にみた拡大斜視図
図3図2の先端部を図2中のIII方向からみた側面図
図4図2の先端部を図2中のIV方向からみた側面図
図5図2の先端部の側面に対し、チャンネル開口の短辺を有する方向にチャンネル開口を跨ぐようステントを渡して載置した状態を示す平面図
図6図5のステントをチャンネル開口側に引き込むことにより、一対の壁部の各端面の傾斜面に沿ってステントが回転する状態を示す平面図
図7図6のステントをさらにチャンネル開口側に引き込むことによりステントをさらに回転させ、ステントを長手軸方向に沿ってチャンネル開口を跨ぐよう渡した状態を示す平面図
図8図7の長手軸方向に沿って位置するステントをさらにチャンネル開口側に引き込むことにより、ステントを2つ折りにした状態を概略的に示す部分断面図
図9図5のチャンネル開口の短辺を有する方向に沿って位置するステントを回転させずに、チャンネル開口側に引き込むことにより、ステントを2つ折りにした場合を概略的に示す部分断面図
図10】直視型の内視鏡の先端部の先端面を示す平面図
図11図10の先端部を図10中のXI-XI線に沿って示す部分断面図
図12図10の先端部を図10中のXII-XII線に沿って示す部分断面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。尚、図面は模式的なものであり、各部材の厚みと幅との関係、それぞれの部材の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0015】
尚、以下、内視鏡は、側視型の内視鏡を例に挙げて説明する。また、側視型の内視鏡を用いて回収する細長な回収物は、ステントを例に挙げて説明し、ステントの回収に用いる回収処置具はスネアを例に挙げて説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態の先端構造を具備する内視鏡と周辺装置とから構成された内視鏡装置の一例を概略的に示す斜視図である。
【0017】
図1に示すように、内視鏡装置100は、内視鏡1と周辺装置10とにより主要部が構成されている。
【0018】
内視鏡1は、被検体内に挿入される挿入部2と、該挿入部2の長手軸方向Nの基端(以下、単に基端と称す)に連設された操作部3と、該操作部3から延出されたユニバーサルコード5と、該ユニバーサルコード5の延出端に設けられたコネクタ9とを具備して主要部が構成されている。
【0019】
周辺装置10は、架台16に載置された、光源装置11と、ビデオプロセッサ12と、光源装置11とビデオプロセッサ12とを電気的に接続する接続ケーブル13と、モニタ15とを具備している。
【0020】
また、このような構成を有する内視鏡1と周辺装置10とは、コネクタ9により互いに接続されている。コネクタ9は、例えば周辺装置10の光源装置11に接続されている。
【0021】
内視鏡1の操作部3に、湾曲操作ノブ3aと、送気送水操作釦3bと、吸引操作釦3cと、起上台操作ノブ3dとが設けられている。
【0022】
尚、起上台操作ノブ3dは、挿入部2内に設けられた処置具挿通チャンネル19内において、後述するチャンネル開口25(図2参照)に臨むよう位置する図示しない処置具起上台を起上または降下させる操作の入力を行うものである。
【0023】
また、操作部3に、該操作部3外から各種処置具や後述するスネア60を処置具挿通チャンネル19内に挿通するための処置具挿入口3eが設けられている。
【0024】
挿入部2は、該挿入部2の先端側に位置する先端部6と、該先端部6の基端に連設された湾曲部7と、該湾曲部7の基端に連設された可撓管部8とにより構成されている。
【0025】
湾曲部7は、操作部3に設けられた湾曲操作ノブ3aにより、例えば上下左右の4方向に湾曲操作されるものである。
【0026】
次に、先端部6の構成について、図2図4を用いて説明する。図2は、図1の挿入部の先端部を図1中のII方向から概略的にみた拡大斜視図、図3は、図2の先端部を図2中のIII方向からみた側面図、図4は、図2の先端部を図2中のIV方向からみた側面図である。
【0027】
図2に示すように、先端部6の外周面の一部、例えば、長手軸方向Nに略直交する方向Dの側面6iに、長手軸方向Nに沿って所定の長さを有するとともに方向Dにおいて所定の深さを有する凹部20が形成されている。
【0028】
凹部20の底面20tに、処置具挿通チャンネル19のチャンネル開口25が開口されている。
【0029】
チャンネル開口25は、一方向である長手軸方向Nに伸びた平面形状、例えば長手軸方向Nに長さxを有する長辺の開口縁部25c、25dを有し長手軸方向N及び方向Dに略直交する方向Bに長さy(y<x)の短辺の開口縁部25a、25bを有する矩形状の平面形状を有している。
【0030】
尚、チャンネル開口25は、一方向に伸びた平面形状を有していれば、矩形状に限定されない。また、図2においては、図面を簡略化するため、チャンネル開口25に臨む処置具起上台は省略して示している。
【0031】
また、底面20tに、被検体内を観察する先端部6内に設けられた観察光学系の対物窓26が配置されているとともに、被検体内に光源装置11から供給された照明光を拡開照射する照明用レンズ27が配置されている。
【0032】
尚、照明用レンズ27の代わりに、LED等の発光素子が底面20tに配置されていても構わない。観察光学系の対物窓26は、長手軸方向Nに対し交差する方向、即ち先端部6の側方に位置する部分を主に観察可能なように構成されている。
【0033】
尚、チャンネル開口25、観察窓26、照明用レンズ27は、長手軸方向Nに対して側方、例えば方向Dにおける方向D1を指向している。
【0034】
ここで、凹部20の方向Bにおける両端に、長手軸方向Nに沿って延在する一対の壁部21、22が位置している。
【0035】
一対の壁部21、22は、方向Bにおいて、チャンネル開口25、対物窓26、照明用レンズ27を挟んで対向して位置している。
【0036】
尚、図2においては、一対の壁部21、22は、側面6iと長手軸方向Nにおいて連続的に形成されているが、これに限らず、不連続に形成されていても構わない。この際、一対の壁部21、22は、長手軸方向Nにおいて、凹部20よりも長く延在していても構わない。
【0037】
一対の壁部21、22の頂部の各端面21c、22cは、チャンネル開口25、対物窓26、照明用レンズ27と同様に方向D1を指向しているとともに、長手軸方向Nに沿って延在している。
【0038】
また、各端面21c、22cは、図2図4に示すように、長手軸方向Nに沿って、傾斜方向が互いに逆となるよう傾斜している。
【0039】
具体的には、一方の壁部21の端面21cは、図2図4に示すように、挿入部2の長手軸方向Nにおける基端側(以下、単に基端側と称す)から先端側に向けて、即ち、方向N1に向けて、先端部6の径が拡大するよう、即ち、先端部6の先端6sに向かって登るよう傾斜している。
【0040】
また、他方の壁部22の端面22cは、図2図4に示すように、挿入部2の長手軸方向Nにおける基端側から方向N1に向けて、先端部6の径が縮小するよう、即ち、先端6sに向かって下るよう傾斜している。
【0041】
尚、図示はしていないが、端面21cが先端6sに向けて下るよう傾斜しているとともに、端面22cが先端6sに向けて登るよう傾斜するよう構成しても構わない。
【0042】
また、図2に示すように、各端面21c、22cの延在方向は、チャンネル開口25の長辺が延在する方向と長手軸方向Nとして一致している。
【0043】
尚、一対の壁部21、22における各端面21c、22cの傾斜形状は、先端部6を構成する図示しない先端硬質部材に設けられていても構わないし、先端硬質部材の外周に被覆される先端カバーに設けられていても構わない。
【0044】
即ち、一対の壁部21、22は、先端硬質部材に設けられていても構わないし、先端カバーに設けられていても構わない。
【0045】
次に、本実施の形態の作用について、図5図9を用いて説明する。図5は、図2の先端部の側面に対し、チャンネル開口の短辺を有する方向にチャンネル開口を跨ぐようステントを渡して載置した状態を示す平面図、図6は、図5のステントをチャンネル開口側に引き込むことにより、一対の壁部の各端面の傾斜面に沿ってステントが回転する状態を示す平面図、図7は、図6のステントをさらにチャンネル開口側に引き込むことによりステントをさらに回転させ、ステントを長手軸方向に沿ってチャンネル開口を跨ぐよう渡した状態を示す平面図である。
【0046】
また、図8は、図7の長手軸方向に沿って位置するステントをさらにチャンネル開口側に引き込むことにより、ステントを2つ折りにした状態を概略的に示す部分断面図、図9は、図5のチャンネル開口の短辺を有する方向に沿って位置するステントを回転させずに、チャンネル開口側に引き込むことにより、ステントを2つ折りにした場合を概略的に示す部分断面図である。
【0047】
被検体内に留置されているチャンネル開口25の長辺の長さxよりも長いステント50を回収する際は、先ず、操作者は、被検体内に、対物窓26にてステント50が観察できる位置まで挿入部2を挿入する。
【0048】
次いで、操作者は、処置具挿入口3eを介して処置具挿通チャンネル19内にスネア60を、スネア60の先端のループ部61が、チャンネル開口25から被検体内に突出するまで挿入する。
【0049】
その後、操作者は、挿入部2を前後に移動させたり、湾曲部7を湾曲操作ノブ3aの操作によって湾曲させたり、図示しない処置具起上台を、起上台操作ノブ3dを操作することにより昇降させたりすることにより、処置具起上台に載置されたスネア60の先端側のチャンネル開口25からの突出角度や位置を調整し、ループ部61内にステント50を挿通させる。この際、ループ部61を細長なステント50の延在方向の略中心付近に位置させることが望ましい。
【0050】
次いで、操作者は、スネア60を長手軸方向Nにおける方向N2側に引き込むことにより、ループ部61をチャンネル開口25側に引き込む。その結果、ループ部61に保持されたステント50もチャンネル開口25側に移動し、図5に示すように、方向Bにおいてチャンネル開口25を跨ぐよう一対の壁部21、22の各端面21c、22c間に渡されて載置される。
【0051】
その後、操作者は、さらにスネア60を方向N2側に引き込むと、端面21cは、方向N2側に下るよう傾斜しているとともに、端面22cは、方向N1側に下るよう傾斜していることから、ステント50は、各端面21c、22cの下りの傾斜形状に沿って、図6に示すように、時計回りに回転し始める。このように、ステント50を時計回りに回転させると、ステント50を回転させた際、図6に示すようにステント50が対物窓26を遮ってしまうことを防ぐことができるといった利点もある。
【0052】
特に、本実施形態の如く、対物窓26が先端部6の側方を観察するような構成であって、観察視野がやや後方側に傾斜している場合には、ステント50が観察視野の外もしくは端に移動するため、観察動作を阻害することを極力防止できる。
【0053】
尚、上述したように、端面21cが方向N1に下るように傾斜し、端面22cが方向N2に下るよう傾斜している場合(不図示)は、ステント50は、各端面21c、22cの下りの傾斜形状に沿って、反時計回りに回転し始める。例えば、対物窓26の長軸Nに沿った位置が、図5,6に示した構成よりN1側にある場合では、ステント50が反時計回りに回転したほうが、観察視野の外もしくは端に移動することになる。
【0054】
また、一対の端面21c、22cがチャンネル開口25に向けさらに方向Bにおいて傾斜する形状を有していると、よりステント50を回転させやすくなる。
【0055】
その後、操作者は、さらにスネア60を方向N2側に引き込むと、各端面21c、22cの下りの傾斜形状に沿って、図7に示すように、ステント50は、チャンネル開口25を長手軸方向Nに跨ぐよう位置する。
【0056】
次いで、操作者は、さらに、スネア60を方向N2側に引き込むと、図8に示すように、ステント50は、ループ部61を支点として、チャンネル開口25の長手軸方向Nの前後において方向Bに沿って位置する開口縁部25a、25bに一部が当接しながら2つ折りとなる。
【0057】
最後に、操作者は、さらに、スネア60を方向N2側に引き込むことにより、2つ折りとなったステント50を、スネア60とともに処置具挿通チャンネル19内に引き込み、その後、処置具挿入口3eを介して回収する。
【0058】
尚、図7に示したように、ステント50を長手軸方向Nに沿ってチャンネル開口25を跨ぐ位置まで、各端面21c、22cの傾斜を用いて回転させたのは、図2に示すように、チャンネル開口25の長辺の長さxは、短辺の長さyよりも長い(x>y)。即ち、チャンネル開口25に対するステント50の渡し量は、図5よりも図7の方が多くなる。
【0059】
このため、図5に示すように、チャンネル開口25に対し方向Bに沿ってステント50を跨がせた状態において、図9に示すように、ステント50の一部を開口縁部25c、25dに当接させながら2つ折りにするスネア60に引き込み力量P2よりも、図7に示すように、チャンネル開口25に対して長手軸方向Nに沿ってステント50を跨がせた状態において、図8に示すように、ステント50の一部を開口縁部25a、25bに当接させながら2つ折りにするスネア60の引き込み力量P1の方が小さくなるためである(P1<P2)。即ち、より小さな力量にてステント50を2つ折りにすることができるようになるためである。
【0060】
このように、本実施の形態においては、先端部6の側面6iにおいて凹部20の方向Bにおける両端部において長手軸方向Nに沿って延在する一対の壁部21、22の各端面21c、22cは、長手軸方向Nに沿って、傾斜方向が互いに逆となるよう傾斜していると示した。
【0061】
このことによれば、ステント50をスネア60を用いてチャンネル開口25を介して処置具挿通チャンネル19内に引き込む際、各端面21c、22cの傾斜形状を利用して、ステント50を、図7に示すように長手軸方向Nに沿ってチャンネル開口25の長辺を跨ぐよう回転させた後、図8に示すように2つ折りにする。
【0062】
この際、ステント50を2つ折りにするスネア60の引き込み力量P1を、図5に示すように、ステント50が方向Bに沿ってチャンネル開口25の短辺を跨いでいる状態において、図9に示すようにステント50を2つ折りにするスネア60の引き込み力量P2よりも小さくすることができる(P1<P2)。
【0063】
尚、以上のことは、回収物がステント50に限らず、細長な他のものであっても同様であるし、回収処置具も把持鉗子等の他のものであっても同様である。
【0064】
以上から、先端部6の側面6iにおける一対の壁部21、22の各端面21c、22cに傾斜方向が互いに逆となる傾斜面を設けるのみの簡単な構成により、被検体内の細長な回収物を、容易に2つ折りにしてチャンネル開口25を介して回収処置具にて回収することができる構成を具備する内視鏡の先端構造を提供することができる。
【0065】
尚、以下、変形例を、図10図12を用いて示す。図10は、直視型の内視鏡の先端部の先端面を示す平面図、図11は、図10の先端部を図10中のXI-XI線に沿って示す部分断面図、図12は、図10の先端部を図10中のXII-XII線に沿って示す部分断面図である。
【0066】
上述した本実施の形態においては、内視鏡は、側視型の内視鏡を例に挙げて示した。これに限らず、図10に示すように、直視型の内視鏡の先端構造にも本実施の形態は適用可能である。
【0067】
具体的には、図10に示すように、内視鏡の挿入部の先端部106の先端面106sに、対物窓126や、照明用レンズ127や、前方送水ノズル128や、対物窓126に流体を供給する送気送水ノズル129が設けられている。尚、照明用レンズ127は、LED等の発光素子であっても構わない。
【0068】
また、先端面106sに、処置具挿通チャンネル19のチャンネル開口125が開口されている。
【0069】
チャンネル開口125は、先端部6の径方向における一方向Rに伸びた平面形状、例えば一方向Rに長さvの長辺を有し、先端部6の径方向における一方向Rに略直交する他方向Qに長さwの短辺(w<v)を有する楕円状の平面形状を有している。
【0070】
尚、チャンネル開口125は、一方向に伸びた平面形状を有していれば、楕円状に限定されない。また、図10においても、図面を簡略化するため、チャンネル開口125に臨む処置具起上台は省略して示している。なお、この図10に示した如き直視型の内視鏡では、処置具起上台を設けなくともかまわないことはもちろんである。
【0071】
また、先端面106sに、他方向Qにおいてチャンネル開口125を挟むとともに、一方向Rに沿って延在する一対の壁部21、22が設けられている。
【0072】
尚、一対の壁部21、22により、他方向Qにおける壁部21と壁部22との間に、凹部20が形成されている。即ち、凹部20の底面20tは、他方向Qにおいて壁部21と壁部22との間に挟まれた先端面106sの部位に構成されており、底面20tにチャンネル開口125が開口されている。
【0073】
一対の壁部21、22の頂部の各端面21c、22cは、一方向Rに沿って延在している。
【0074】
また、各端面21c、22cは、図11図12に示すように、一方向Rに沿って、傾斜方向が互いに逆となるよう傾斜している。
【0075】
具体的には、一方の壁部21の端面21cは、図12に示すように、一方向Rにおいて、方向R1から方向R2に下るよう傾斜している。
【0076】
また、他方の壁部22の端面22cは、図11に示すように、一方向Rにおいて、方向R2から方向R1に下るよう傾斜している。
【0077】
尚、本実施の形態と同様に、端面21cが、一方向Rにおいて、方向R2から方向R1に下るよう傾斜し、端面22cが、一方向Rにおいて、方向R1から方向R2に下るよう傾斜していても構わない。
【0078】
また、図10に示すように、各端面21c、22cの延在方向は、チャンネル開口125の長辺が延在する方向と一方向Rとして一致している。
【0079】
尚、一対の壁部21、22における各端面21c、22cの傾斜形状は、先端部6を構成する図示しない先端硬質部材に設けられていても構わないし、先端硬質部材の外周に被覆される先端カバーに設けられていても構わない。
【0080】
即ち、一対の壁部21、22は、先端硬質部材に設けられていても構わないし、先端カバーに設けられていても構わない。
【0081】
次に、図10図12の構成の作用について説明する。
【0082】
被検体内に留置されているチャンネル開口125の長さvの長辺よりも長いステント50を回収する際は、先ず、操作者は、被検体内に、対物窓126にてステント50が観察できる位置まで挿入部2を挿入する。
【0083】
次いで、操作者は、処置具挿入口3eを介して処置具挿通チャンネル19内にスネア60を、スネア60の先端のループ部61が、チャンネル開口125から被検体内に突出するまで挿入する。
【0084】
その後、操作者は、挿入部2を前後に移動させたり、湾曲操作ノブ3aを操作して湾曲部7を湾曲させたり等して、ループ部61内にステント50を挿通させる。この際、ループ部61を細長なステント50の延在方向の略中心付近に位置させる。
【0085】
次いで、操作者は、スネア60を長手軸方向Nにおける方向N2側に引き込むことにより、ループ部61をチャンネル開口125側に引き込む。その結果、ループ部61に保持されたステント50もチャンネル開口125側に移動し、他方向Qにおいてチャンネル開口25を跨ぐよう一対の壁部21、22の各端面21c、22cに渡されて載置される。
【0086】
その後、操作者は、さらに、スネア60を方向N2側に引き込むと、端面21cは、方向R2側に下るよう傾斜しているとともに、端面22cは、方向R1側に下るよう傾斜していることから、ステント50は、各端面21c、22cの下りの傾斜形状に沿って、時計回りに回転し始める。
【0087】
尚、上述したように、端面21cが方向R1に下るように傾斜し、端面22cが方向R2に下るよう傾斜している場合は、ステント50は、各端面21c、22cの下りの傾斜形状に沿って、反時計回りに回転し始める。
【0088】
また、一対の端面21c、22cがチャンネル開口125に向けさらに他方向Qにおいて傾斜する形状を有していると、よりステント50を回転させやすくなる。
【0089】
その後、操作者は、さらに、スネア60を方向N2側に引き込むと、各端面21c、22cの傾斜形状に沿って、ステント50は、チャンネル開口25を一方向Rに跨ぐよう位置する。
【0090】
次いで、操作者は、さらに、スネア60を方向N2側に引き込むと、ステント50は、ループ部61を支点として、チャンネル開口125の開口縁部に一部が当接しながら2つ折りとなる。
【0091】
最後に、操作者は、さらに、スネア60を方向N2側に引き込むことにより、2つ折りとなったステント50を、スネア60とともに処置具挿通チャンネル19内に引き込み、その後、処置具挿入口3eを介して回収する。
【0092】
このように、本実施の形態を直視型の内視鏡の先端構造に適用したとしても、上述した本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0093】

本出願は、2014年9月4日に日本国に出願された特願2014−180586号を優先権主張の基礎として出願するものであり、上記の内容は、本願明細書、請求の範囲、図面に引用されたものである。
図1
図2
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図5
図6
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図10
図11
図12