特許第5989290号(P5989290)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5989290
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】内視鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20160825BHJP
【FI】
   A61B1/00 300Y
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-535249(P2016-535249)
(86)(22)【出願日】2015年9月30日
(86)【国際出願番号】JP2015077823
【審査請求日】2016年5月31日
(31)【優先権主張番号】特願2014-205572(P2014-205572)
(32)【優先日】2014年10月6日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】片倉 正弘
【審査官】 佐藤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−239740(JP,A)
【文献】 特開2012−228443(JP,A)
【文献】 特開昭64−026815(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/055640(WO,A1)
【文献】 特開2011−147757(JP,A)
【文献】 特開2000−139820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00−1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部のレンズを光軸方向に移動させて拡大観察と通常観察とを切り替え可能な観察光学系と、
被写体に照明光を照射する複数の照明光学系とを備え、
前記複数の照明光学系の最先端のレンズ面が、前記観察光学系の最先端のレンズ面よりも基端側に配置されるとともに、前記複数の照明光学系の全ての最先端のレンズ面が、前記観察光学系の最先端のレンズ面と略平行に配置され、
以下の条件式(1)から()を満足する内視鏡。
1.0≦D_Back(far)/D_Back(near)<3.0 (1)
0.015<D_Back(far)/D_far<1.0 (2)
1.01<ω(wide)/ω(tele)<5.0 (3)
0.01<D_Back(far)/F_tele<1.0 (4)
0.01<D_Back(near)/D_near<0.7 (5)
ここで、
D_Back(far)は、前記観察光学系の最先端のレンズ面と、前記観察光学系から径方向に最も遠い前記照明光学系の最先端のレンズ面との光軸方向の距離、
D_Back(near)は、前記観察光学系の最先端のレンズ面と、前記観察光学系から径方向に最も近い前記照明光学系の最先端のレンズ面との光軸方向の距離、
D_farは、前記観察光学系と該観察光学系から径方向に最も遠い照明光学系との前記最先端のレンズ面同士の径方向の中心間距離、
ω(wide)は、前記観察光学系の通常観察状態における半画角、
ω(tele)は、前記観察光学系の拡大観察状態における半画角
F_teleは、前記観察光学系の拡大観察状態における焦点距離、
D_nearは、前記観察光学系と該観察光学系から径方向に最も近い照明光学系との前記最先端のレンズ面同士の径方向の中心間距離
である。
【請求項2】
以下の条件式(6)および(7)を満足する請求項1に記載の内視鏡。
0.06<D_Back(far)/enp(tele)<1.0 (6)
0.06<D_Back(near)/enp(tele)<0.9 (7)
ここで、
enp(tele)は、拡大観察状態における、前記観察光学系の最先端のレンズ面と前記観察光学系の入射瞳との光軸方向の距離
である。
【請求項3】
前記観察光学系から径方向に最も遠い照明光学系が射出する照明光の光量が、他の照明光学系が射出する照明光の光量よりも多い請求項1に記載の内視鏡。
【請求項4】
3個の前記照明光学系が、前記観察光学系の周囲に周方向に間隔を空けて設けられている請求項1に記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、観察光学系の視野を均一な明るさで照明するために、観察光学系の周囲に複数個の照明光学系を設けた内視鏡が知られている(例えば、特許文献1参照。)。視野における照明光の配光ムラは、内視鏡の先端面を被写体に2mm以下の距離まで近接させて拡大観察する際に、特に問題となる。すなわち、内視鏡の先端面と被写体の間の距離が非常に短いために、照明光学系からの照明光を観察光学系の視野全体に行き渡らせることが難しい。特許文献1では、拡大観察時の配光ムラが改善されるように、内視鏡先端面における照明光学系のレイアウトを設計している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−139820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように、照明光学系の平面的なレイアウトだけでは、視野における配光ムラの改善に限界がある。特に拡大観察は、病変部を詳細に観察するために用いられるため、拡大観察状態における視野における配光ムラは、術者のストレスになるとともに、病変部の正確な観察や診断の妨げとなる。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、拡大観察時の視野における照明光の配光ムラも効果的に低減することができる内視鏡を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、一部のレンズを光軸方向に移動させて拡大観察と通常観察とを切り替え可能な観察光学系と、被写体に照明光を照射する複数の照明光学系とを備え、前記複数の照明光学系のうち少なくとも1つの最先端のレンズ面が、前記観察光学系の最先端のレンズ面よりも基端側に配置されるとともに、前記複数の照明光学系の全ての最先端のレンズ面が、前記観察光学系の最先端のレンズ面と略平行に配置され、以下の条件式(1)から(3)を満足する内視鏡を提供する。
1.0≦D_Back(far)/D_Back(near)<3.0 (1)
0.015<D_Back(far)/D_far<1.0 (2)
1.01<ω(wide)/ω(tele)<5.0 (3)
【0006】
ここで、D_Back(far)は、前記観察光学系の最先端のレンズ面と、前記観察光学系から径方向に最も遠い前記照明光学系の最先端のレンズ面との光軸方向の距離、D_Back(near)は、前記観察光学系の最先端のレンズ面と、前記観察光学系から径方向に最も近い前記照明光学系の最先端のレンズ面との光軸方向の距離、D_farは、前記観察光学系と該観察光学系から径方向に最も遠い照明光学系との前記最先端のレンズ面同士の径方向の中心間距離、ω(wide)は、前記観察光学系の通常観察状態における半画角、ω(tele)は、前記観察光学系の拡大観察状態における半画角である。
【0007】
一般的な拡大内視鏡においては、拡大観察時に良好な観察を行うことができる観察光学系の最先端のレンズ面と被写体との距離は、2mmから3mm程度と設定されている。
本発明によれば、観察光学系の最先端のレンズ面に対して照明光学系の最先端のレンズ面が奥まった位置に配置されているため、観察光学系と照明光学系が同じ高さで配置されている従来の場合と比較して、特に拡大観察時において観察光学系の視野における配光ムラの発生を効果的に抑えることができる。以下、本明細書においては、観察光学系の最先端のレンズ面と、各照明光学系の最先端のレンズ面との光軸方向の距離を、「奥まり量」という。
【0008】
条件式(1)は、観察光学系から径方向に最も遠い照明光学系の奥まり量が、最も近い照明光学系の奥まり量以上であることを表している。条件式(1)の範囲内であれば、拡大観察時においても、視野において良好な配光を得ることができる。以下、観察光学系から該観察光学系の光軸を中心とする径方向に最も遠い照明光学系を「最遠の照明光学系」と言い、最も近い照明光学系を「最近の照明光学系」と言う。
【0009】
条件式(1)の下限未満においては、最近の照明光学系の奥まり量が最遠の照明光学系の奥まり量よりも大きくなる。この場合には、視野において、最近の照明光学系からの照明光と最遠の照明光学系からの照明光との明るさのバランスが悪くなって配光ムラが発生する。条件式(1)の上限以上においては、最遠の照明光学系が奥まり過ぎるために、最遠の照明光学系から射出される照明光が観察光学系等によって蹴られることがあり、良好な配光を得ることができなくなる。
【0010】
条件式(2)は、最遠の照明光学系の、観察光学系からの距離と奥まり量との比を規定している。条件式(2)の上限以上においては、最遠の照明光学系が奥まり過ぎるために、最遠の照明光学系から射出される照明光が観察光学系等によって蹴られることがあり、良好な配光を得ることができなくなる。条件式(2)の下限以下においては、観察光学系からの最遠の照明光学系の距離が遠過ぎるため、拡大観察時に最遠の照明光学系からの照明光が視野に届き難くなり、良好な配光を得ることができなくなる。
【0011】
条件式(3)は、観察光学系の通常観察状態と拡大観察状態とにおける半画角の比率を規定している。条件式(3)を満足する内視鏡において、条件式(1)および(2)による顕著な効果が得られる。すなわち、条件式(3)の上限以上においては、拡大観察状態における観察光学系の画角が小さくなり、条件式(3)の下限以下においては、観察光学系が、実質的に単焦点レンズとなり、いずれの場合も拡大観察時の配光ムラがほとんど問題とならない。
【0012】
上記発明においては、以下の条件式(4)および(5)をさらに満足する。
0.01<D_Back(far)/F_tele<1.0 (4)
0.01<D_Back(near)/D_near<0.7 (5)
ただし、F_teleは、前記観察光学系の拡大観察状態における焦点距離、D_nearは、前記観察光学系と該観察光学系から径方向に最も近い照明光学系との前記最先端のレンズ面同士の径方向の中心間距離である。
【0013】
条件式(4)は、観察光学系の拡大観察状態における焦点距離と、最遠の照明光学系の奥まり量との比率を規定している。条件式(5)は、最近の照明光学系の、観察光学系からの距離と奥まり量とを規定している。条件式(4)および(5)を満足することで、視野における照明光の配光ムラをさらに低減し、さらに均一な明るさで視野を照明することができる。
【0014】
条件式(4)の上限以上においては、観察光学系の焦点距離が大き過ぎるため広角になり、本発明の照明光学系の配置設計による効果が薄い。条件式(4)の下限以下においては、最遠の照明光学系の奥まり量が小さ過ぎるため、拡大観察時に最遠の照明光学系からの照明光が視野に届き難くなり、良好な配光を得ることができなくなる。
条件式(5)の上限以上においては、最遠の照明光学系の奥まり量が大き過ぎるため、照明光が観察光学系等によって蹴られることがあり、良好な配光を得ることができなくなる。条件式(5)の下限以下においては、最遠の照明光学系の奥まり量が小さ過ぎるため、拡大観察時に最遠の照明光学系からの照明光が視野に届き難くなり、良好な配光を得ることができなくなる。
【0015】
上記発明においては、以下の条件式(6)および(7)を満足することが好ましい。
0.06<D_Back(far)/enp(tele)<1.0 (6)
0.06<D_Back(near)/enp(tele)<0.9 (7)
ここで、enp(tele)は、拡大観察状態における、前記観察光学系の最先端のレンズ面と前記観察光学系の入射瞳との光軸方向の距離である。
【0016】
条件式(6)および(7)は、最遠または最近の照明光学系の奥まり量と観察光学系の入射瞳位置との関係を規定している。条件式(6)および(7)を満足する範囲においては、各照明光学系の奥まり量と入射瞳位置とが適切な関係となるため、観察光学系の視野と照明光学系による照明範囲との位置関係が適切となり、配光ムラをさらに低減することができる。
【0017】
条件式(6)および(7)の上限以上においては、照明光学系の奥まり量が大き過ぎるために、照明光が観察光学系等によって蹴られることがあり、良好な配光を得ることができなくなる。条件式(6)および(7)の下限以下においては、入射瞳位置が像側に寄り過ぎてしまうため、画角を確保するために先端のレンズの径を大きくしなければならない。その結果、観察光学系からの照明光学系の距離が大きくなって良好な配光を得ることができなくなる。
【0018】
上記発明においては、前記観察光学系から径方向に最も遠い照明光学系が射出する照明光の光量が、他の照明光学系が射出する照明光の光量よりも多ことが好ましい。
このように、観察光学系から遠い照明光学系程、照明光の光量を多くすることで、視野において、各照明光学系からの照明光の明るさのバランスが良好となり、配光ムラをさらに低減することができる。
【0019】
上記発明においては、3個の前記照明光学系が、前記観察光学系の周囲に周方向に間隔を空けて設けられていることが好ましい。
このようにすることで、拡大観察時の視野における配光ムラをさらに低減することができる。照明光学系が2個である場合には、視野における配光ムラが顕著となり、配光ムラを十分に低減することが難しい。照明光学系が4個以上である場合には、良好な配光を得られるが、内視鏡の外径が肥大化してしまうため、好ましくない。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、拡大観察時の視野における照明光の配光ムラも効果的に低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る内視鏡の正面図である。
図2図1の内視鏡の先端部のI−I断面図である。
図3】実施例1の内視鏡における観察光学系のレンズ構成を示す縦断面図であり、通常観察状態を示している。
図4図3の観察光学系の拡大観察状態を示している。
図5図3の観察光学系の通常観察状態における球面収差(SA)、非点収差(AS)、ディストーション(DT)、および倍率色収差(CC)を示す収差図である。
図6図3の観察光学系の拡大観察状態における球面収差(SA)、非点収差(AS)、ディストーション(DT)、および倍率色収差(CC)を示す収差図である。
図7】実施例2の内視鏡における観察光学系のレンズ構成を示す縦断面図であり、通常観察状態を示している。
図8図7の観察光学系の拡大観察状態を示している。
図9図7の観察光学系の通常観察状態における球面収差(SA)、非点収差(AS)、ディストーション(DT)、および倍率色収差(CC)を示す収差図である。
図10図7の観察光学系の拡大観察状態における球面収差(SA)、非点収差(AS)、ディストーション(DT)、および倍率色収差(CC)を示す収差図である。
図11】実施例3の内視鏡における観察光学系のレンズ構成を示す縦断面図であり、通常観察状態を示している。
図12図11の観察光学系の拡大観察状態を示している。
図13図11の観察光学系の通常観察状態における球面収差(SA)、非点収差(AS)、ディストーション(DT)、および倍率色収差(CC)を示す収差図である。
図14図11の観察光学系の拡大観察状態における球面収差(SA)、非点収差(AS)、ディストーション(DT)、および倍率色収差(CC)を示す収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態に係る内視鏡1について、図1および図2を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る内視鏡1は、図1および図2に示されるように、挿入部2の先端部に、単一の観察光学系3と、3個の照明光学系4A,4B,4Cとを備えている。図中、符号5は鉗子チャネルである。
【0023】
観察光学系3は、物体側(先端側)から順に、正の屈折力を有する第1群G1、明るさ絞りS、第2群G2、および正の屈折力を有する第3群G3から構成されている。第2群G2は、光軸方向に移動可能であり、第2群G2の光軸方向の移動によって、観察光学系3の倍率を変更して、通常観察と拡大観察とが切り替え可能になっている。通常観察状態において、第2群G2は光軸上の第1の位置に配置され、拡大観察状態において、第2群G2は、第1の位置よりも像側(基端側)の光軸上の第2の位置に配置される。なお、図2においては、図面を簡単にするために、各郡G1,G2,G3が単一のレンズによって示されているが、各郡G1,G2,G3は、複数のレンズから構成されていてもよい。また、観察光学系3は、レンズの他に、フィルター等のパワーを有しない光学素子をさらに含んでいてもよい。符号8は、観察光学系3によって結像された物体像を撮影する撮像素子である。
【0024】
照明光学系4A,4B,4Cは、観察光学系3の周囲に周方向に間隔をあけて3カ所に設けられている。各照明光学系4A,4B,4Cは、光源(図示略)からの照明光Lを導光する光ファイババンドル6と、該光ファイババンドル6の射出端に配置されたレンズ群7とを備え、該レンズ群7によって照明光Lを発散光として射出するようになっている。なお、照明光学系の数は、3個に限定されるものではなく、2個または4個以上であってもよい。
【0025】
観察光学系3および全ての照明光学系4A,4B,4Cは、相互に略平行な光軸を有している。また、観察光学系3の最先端のレンズ面(以下、「第1レンズ面」という。)3aと、全ての照明光学系4A,4B,4Cの最先端のレンズ面(以下、「第1レンズ面」という。)4a,4b,4cとは、相互に略平行に配置されている。これにより、照明光学系4A,4B,4Cからの照明光Lの射出方向と観察光学系3の観察方向とが相互に平行となり、各照明光Lの一部によって、観察光学系3の視野Fが3方向から照明されるようになっている。すなわち、視野Fにおける配光は、3個の照明光学系4A,4B,4Cからの照明光Lの足し合わせとなる。
【0026】
照明光学系4A,4B,4Cの各々の第1レンズ面4a,4b,4cは、観察光学系3の第1レンズ面3aに対して光軸方向の基端側に引っ込んだ位置に配置されている。以下、第1レンズ面3aと、第1レンズ面4a,4b,4cとの間の光軸方向の距離を、「奥まり量」と言う。
【0027】
本実施形態の内視鏡1は、以下の条件式(1)から(7)を満足している。
1.0≦D_Back(far)/D_Back(near)<3.0 (1)
0.015<D_Back(far)/D_far<1.0 (2)
1.01<ω(wide)/ω(tele)<5.0 (3)
0.01<D_Back(far)/F_tele<1.0 (4)
0.01<D_Back(near)/D_near<0.7 (5)
0.06<D_Back(far)/enp(tele)<1.0 (6)
0.06<D_Back(near)/enp(tele)<0.9 (7)
【0028】
ここで、D_Back(far)は、最遠の照明光学系4Aの奥まり量、D_Back(near)は、最近の照明光学系4Cの奥まり量、D_farは、観察光学系3と最遠の照明光学系4Aとの最先端のレンズ面3a,4a同士の径方向の中心間距離、ω(wide)は、観察光学系3の通常観察状態における半画角、ω(tele)は、観察光学系3の拡大観察状態における半画角、F_teleは、観察光学系3の拡大観察状態における焦点距離、D_nearは、観察光学系3と最近の照明光学系4Cとの最先端のレンズ面3a,4c同士の径方向の中心間距離、enp(tele)は、拡大観察状態における、観察光学系3の最先端のレンズ面3aと観察光学系3の入射瞳との光軸方向の距離である。
【0029】
図1および図2に示される例では、第1レンズ面3aと第1レンズ面4a,4b,4cとの径方向の中心間距離をそれぞれDa,Db,Dcとしたときに、Da,Db,Dcは以下の大小関係を満足している。
Da>Db>Dc
すなわち、D_far=Da、D_near=Dcである。
【0030】
さらに、最遠の照明光学系4Aから射出される照明光Lの光量をIa、最近の照明光学系4Cから射出される照明光Lの光量をIcとしたときに、IaおよびIcは以下の大小関係を満足している。
Ia>Ic
このように、観察光学系3から遠い照明光学系程、照明光Lの光量を多くすることで、最遠および最近の照明光学系4A,4Cから射出された照明光Lが視野Fを照明する明るさを略同等とし、視野F内の周方向の配光ムラを効果的に低減することができる。
【0031】
一般的な拡大内視鏡においては、拡大観察時に良好な観察を行うことができる観察光学系3の最先端のレンズ面3aと被写体Aとの距離は2mmから3mm程度と設定される。このように、拡大観察時には、観察光学系3の最先端のレンズ面3aと被写体Aとの距離が非常に短いために、照明光学系からの照明光が特に視野Fの中心領域に届き難く、特に視野Fの中心領域が暗くなる傾向にある。
【0032】
本実施形態に係る内視鏡1によれば、観察光学系3の第1レンズ面3aに対して照明光学系4の第1レンズ面4a,4b,4cが被写体Aから離れた位置に奥まって配置されているため、観察光学系3と照明光学系とが同じ高さで配置されている場合と比較して、各照明光学系4A,4B,4Cからの照明光Lを、視野F内のより広い範囲に行き渡らせることが可能となる。これにより、拡大観察時においても、視野Fにおける配光ムラを低減し、視野Fの中心領域を含む全領域を良好に照明することができる。
【0033】
さらに、各照明光学系4A,4B,4Cからの照明光Lによる視野Fの照明範囲およびその明るさは、観察光学系3からの照明光学系4A,4B,4Cの径方向の距離に依存する。すなわち、仮に、全ての照明光学系4A,4B,4Cの奥まり量が等しい場合、最近の照明光学系4Cは、視野Fの中心領域を含む広い領域を良好に照明することができるが、最遠の照明光学系4Aは視野Fを十分に照明することしかできない。その結果、視野Fのうち、最近の照明光学系4A側の領域は明るくなり、最遠の照明光学系4C側は暗くなるという配光ムラが顕著に生じる。
【0034】
本実施形態によれば、条件式(1),(2),(4)から(7)を満足するように、観察光学系3からの距離に応じて照明光学系4A,4Cの奥まり量D_Back(far),D_Back(near)が設計されている。これにより、最遠の照明光学系4Aおよび最近の照明光学系4Cの両方によって視野Fを良好に照明することができ、拡大観察時においても、視野Fにおける配光ムラをさらに効果的に低減することができる。
【0035】
本実施形態においては条件式(1)から(7)を満足することとしたが、以下の条件式(1)’から(7)’を満足することが好ましい。
1.1≦D_Back(far)/D_Back(near)<2.0 (1)’
0.015<D_Back(far)/D_far<0.5 (2)’
1.01<ω(wide)/ω(tele)<3.0 (3)’
0.02<D_Back(far)/F_tele<0.6 (4)’
0.015<D_Back(near)/D_near<0.3 (5)’
0.1<D_Back(far)/enp(tele)<0.7 (6)’
0.09<D_Back(near)/enp(tele)<0.6 (7)’
【0036】
本実施形態においては、以下の式(1)”から(7)”を満足することがさらに好ましい。
1.3≦D_Back(far)/D_Back(near)<1.5 (1)”
0.02<D_Back(far)/D_far<0.2 (2)”
1.01<ω(wide)/ω(tele)<2.5 (3)”
0.03<D_Back(far)/F_tele<0.4 (4)”
0.02<D_Back(near)/D_near<0.15 (5)”
0.2<D_Back(far)/enp(tele)<0.5 (6)”
0.2<D_Back(near)/enp(tele)<0.45 (7)”
【実施例】
【0037】
次に、上述した実施形態に係る内視鏡の実施例1から3について、図3から図14を参照して以下に説明する。
各実施例のレンズデータにおいて、rは曲率半径(mm)、dは面間隔(mm)、ndはd線に対する屈折率、νdはd線に対するアッべ数を示し、明るさ絞りに対応する面番号には符号Sを付している。また、各実施例において、D_Back(far)、D_Back(near)、F_tele、D_far、D_near、およびenp(tele)の数値の単位は、mmであり、ω(wide)およびω(tele)の数値の単位は、度である。
各実施例の収差図(図5,6,9,10,13,14)において、符号SAは球面収差、符号ASは非点収差、符号DTはディストーション、符号CCは倍率色収差をそれぞれ示している。
実施例1から3の説明の後に、実施例1から3の条件式(1)から(7)の値をまとめた表1を示す。
【0038】
(実施例1)
本発明の実施例1に係る内視鏡における観察光学系のレンズ構成を図3および図4に示す。図3は通常観察状態を、図4は拡大観察状態を、それぞれ示している。通常観察状態および拡大観察状態における観察光学系の各種収差図を、図5および図6にそれぞれ示す。
【0039】
本実施例の内視鏡の各設計値は以下の通りである。表1に示されるように、本実施例の内視鏡は、条件式(1)から(7)を満足している。
D_Back(far)=0.45
D_Back(near)=0.30
ω(wide)=79.922
ω(tele)=45.000
F_tele=1.2184s
D_far=3.50
D_near=2.80
enp(tele)=0.9051
【0040】
本実施例において、観察光学系のレンズデータおよび各種データは以下の通りである。
レンズデ−タ
面番号 r d nd νd
1 ∞ 0.30 1.88300 40.76
2 0.968 0.85
3 ∞ 0.03
4 ∞ 0.35 1.52100 65.12
5 ∞ 0.17
6 −2.419 0.87 1.51633 64.14
7 −1.767 0.04
8 8.931 0.64 1.69895 30.13
9 −0.900 0.26 1.92286 18.90
10 −1.779 0.08
11(S) ∞ 0.17
12 ∞ d12
13 ∞ 0.26 1.77250 49.60
14 1.319 0.61 1.72825 28.46
15 2.608 d15
16 ∞ 0.26
17 12.306 0.87 1.69680 55.53
18 −2.753 0.04
19 2.969 1.04 1.80610 40.92
20 −2.749 0.26 1.92286 18.90
21 3.963 0.30
22 ∞ 0.03
23 ∞ 0.35 1.52300 58.59
24 ∞ 0.70
25 ∞ 0.65 1.51633 64.14
26 ∞ 0.01 1.51300 64.01
27 ∞ 0.57 1.50510 63.26
28(像面) ∞
【0041】
各種デ−タ
拡大観察 通常観察
焦点距離 0.98 1.22
FNO. 5.91 7.34
画角(2ω) 159.84 90.00
d12 0.01 1.09
d15 1.16 0.07
各群の焦点距離
1群 2群 3群
1.58 −3.16 2.47
【0042】
(実施例2)
本発明の実施例2に係る内視鏡における観察光学系のレンズ構成を図7および図8に示す。図7は通常観察状態を、図8は拡大観察状態を、それぞれ示している。通常観察状態および拡大観察状態における観察光学系の各種収差図を、図9および図10にそれぞれ示す。
【0043】
本実施例の内視鏡の各設計値は以下の通りである。表1に示されるように、本実施例の内視鏡は、条件式(1)から(7)を満足している。
D_Back(far)=0.48
D_Back(near)=0.40
ω(wide)=65.000
ω(tele)=28.500
F_tele=1.6263
D_far=2.80
D_near=2.70
enp(tele)=0.9928
【0044】
本実施例において、観察光学系のレンズデータおよび各種データは以下の通りである。
レンズデ−タ
面番号 r d nd νd
1 ∞ 0.30 1.88300 40.76
2 1.078 0.72
3 ∞ 0.03
4 ∞ 0.52 1.52100 65.12
5 ∞ 0.22
6 −4.855 1.17 1.58144 40.75
7 −2.491 0.04
8 4.024 0.68 1.51742 52.43
9 −0.800 0.26 1.92286 18.90
10 −1.247 0.04
11(S) ∞ 0.03
12 ∞ d12
13 −3.861 0.26 1.77250 49.60
14 1.016 0.44 1.84666 23.78
15 2.209 0.09
16 ∞ d16
17 5.948 0.97 1.88300 40.76
18 −4.540 0.04
19 2.726 1.74 1.51742 52.43
20 −2.464 0.30 1.92286 18.90
21 2.437 1.04 1.58144 40.75
22 −5.353 0.00
23 ∞ 0.61
24 ∞ 0.26
25 ∞ 0.65 1.51633 64.14
26 ∞ 0.01 1.51300 64.01
27 ∞ 0.57 1.50510 63.26
28(像面) ∞
【0045】
各種デ−タ
拡大観察 通常観察
焦点距離 1.10 1.63
FNO. 6.50 9.59
画角(2ω) 130.00 57.00
d12 0.27 1.54
d16 1.57 0.30
各群の焦点距離
1群 2群 3群
1.25 −1.88 2.45
【0046】
(実施例3)
本発明の実施例3に係る内視鏡における観察光学系のレンズ構成を図11および図12に示す。図11は通常観察状態を、図12は拡大観察状態を、それぞれ示している。通常観察状態および拡大観察状態における観察光学系の各種収差図を、図13および図14にそれぞれ示す。
【0047】
本実施例の内視鏡の各設計値は以下の通りである。表1に示されるように、本実施例の内視鏡は、条件式(1)から(7)を満足している。
D_Back(far)=0.25
D_Back(near)=0.25
ω(wide)=79.927
ω(tele)=45.001
F_tele=1.2124
D_far=3.00
D_near=2.50
enp(tele)=0.9400
【0048】
本実施例において、観察光学系のレンズデータおよび各種データは以下の通りである。
レンズデ−タ
面番号 r d nd νd
1 ∞ 0.30 1.88300 40.76
2 1.005 0.44
3 ∞ 0.35
4 ∞ 0.35 1.52100 65.12
5 ∞ 0.13
6 −2.928 1.64 1.58144 40.75
7 −2.269 0.04
8 7.900 0.61 1.51742 52.43
9 −1.044 0.26 1.92286 18.90
10 −1.600 0.09
11(S) ∞ 0.00
12 ∞ d12
13 ∞ 0.03
14 ∞ 0.26 1.77250 49.60
15 1.305 0.52 1.72825 28.46
16 3.428 0.09
17 ∞ d17
18 4.379 0.87 1.81600 46.62
19 −4.407 0.19
20 4.113 1.31 1.60300 65.44
21 −1.984 0.26 1.92286 18.90
22 7.634 0.09
23 ∞ 0.03
24 ∞ 0.35 1.52300 58.59
25 ∞ 0.70
26 ∞ 0.65 1.51633 64.14
27 ∞ 0.01 1.51300 64.01
28 ∞ 0.57 1.50510 63.26
29(像面) ∞
【0049】
各種デ−タ
拡大観察 通常観察
焦点距離 0.98 1.21
FNO. 5.99 7.38
画角(2ω) 159.85 90.00
d12 0.23 1.62
d17 1.67 0.28
各群の焦点距離
1群 2群 3群
1.78 −4.03 2.80
【0050】
【表1】
【符号の説明】
【0051】
1 内視鏡
3 観察光学系
3a,4a,4b,4c 第1レンズ面(最先端のレンズ面)
4A,4B,4C 照明光学系
【要約】
本発明の内視鏡(1)は、拡大観察と通常観察とを切り替え可能な観察光学系(3)と、複数の照明光学系(4A,4C)とを備え、照明光学系(4A,4C)の最先端のレンズ面(4a,4c)が、観察光学系(3)の最先端のレンズ面(3a)よりも基端側に配置されるとともに、全ての照明光学系(4A,4C)の最先端のレンズ面(4a,4c)が、観察光学系(3)の最先端のレンズ面(3a)と略平行に配置され、以下の条件式を満足する。
1.0≦D_Back(far)/D_Back(near)<3.0
0.015<D_Back(far)/D_far<1.0
1.01<ω(wide)/ω(tele)<5.0
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14