(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記含ケイ素フッ素樹脂が、含フッ素オレフィン、架橋性官能基を有する単量体および反応性シリコーンを共重合体単量体として含む、請求項1に記載の塗膜保護フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第一実施形態は、(a)含ケイ素フッ素樹脂およびイソシアネート系架橋剤を用いてなるコート層(以下、単にコート層とも称する)と、(b)ウレタン層と、(c)粘着剤層と、を有する、塗膜保護フィルム(以下、単にフィルムとも称する)である。このように、第一実施形態の塗膜保護フィルムは、(a)含ケイ素フッ素樹脂およびイソシアネート系架橋剤を用いてなるコート層と、(b)ウレタン層と、(c)粘着剤層と、をこの順に有する。
【0010】
一般的に曲面にフィルムを追従させるために、フィルムを柔らかくしようとすると汚染防止性が低下する傾向にある。ケイ素を含まない含フッ素樹脂をコート層に用いた場合、伸びは比較的高く、曲面追従性は高いが、長期間の汚染防止性が低下する(後述の比較例参照)。上記第一実施形態においては、含ケイ素フッ素樹脂と、イソシアネート系架橋剤とを組み合わせて用いることによって、延伸性と長期の汚染防止性の両立が図れる。換言すれば、第一実施形態の塗膜保護フィルムは、含ケイ素フッ素樹脂およびイソシアネート系架橋剤を用いてなるコート層をウレタン層に積層させる構成をとることによって、曲面追従性が高いとともに、汚染防止能の高い塗膜保護フィルムとなる。
【0011】
本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性の測定等は、室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で行う。また、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸またはメタクリル酸」を指し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレートまたはメタクリレート」を指す。
【0012】
<塗膜保護フィルム>
図1は、本発明の塗膜保護フィルムの一実施形態を示す断面模式図である。
図1において、塗膜保護フィルム10は、ウレタン層11、コート層12、粘着剤層13および剥離部材14から構成される。
【0013】
塗膜保護フィルムは、コート割れ伸度が100%以上であることが好ましい。フィルムのコート割れ伸度が100%以上であることで、曲面部材に貼付する際にフィルムを延伸してもコート層の機能が維持され、また、曲面形状の塗膜にフィルムを貼付する際の作業効率性が向上する。コート割れ伸度は高ければ高いほど好ましいため、コート割れ伸度の上限は特に限定されないが、通常300%以下である。コート割れ伸度は、下記実施例に記載の方法によって測定された値を採用する。
【0014】
塗膜保護フィルムは、破断伸度が、100%以上であることが好ましく、200〜600%であることがより好ましい。フィルムの破断伸度がかような範囲にあることで、曲面形状の塗膜にフィルムを貼付する際の作業効率性が向上する。破断伸度は、引張試験装置にサンプルを把持させた後、JIS K 7127:1999に準拠して引張速度200mm/分にて引張強度を測定して求めることができる。
【0016】
(コート層)
コート層は、含ケイ素フッ素樹脂およびイソシアネート系架橋剤を用いてなる。換言すれば、コート層は、含ケイ素フッ素樹脂およびイソシアネート系架橋剤を含む組成物を硬化してなる。架橋剤により、含ケイ素フッ素樹脂は架橋構造となり、架橋型含ケイ素フッ素樹脂となる。すなわち、コート層は、架橋型含ケイ素フッ素樹脂を含有するともいえる。
【0017】
含ケイ素フッ素樹脂は、含フッ素オレフィン、架橋性官能基を有する単量体および反応性シリコーンを共重合体単量体として含むことが好ましい。すなわち、含ケイ素フッ素樹脂は、含フッ素オレフィン、架橋性官能基を有する単量体および反応性シリコーンを含む単量体成分を共重合してなることが好ましい。
【0018】
含フッ素オレフィンにおけるオレフィンとしては、炭素数が2〜4のオレフィンであることが好ましい。また、含フッ素オレフィンにおけるフッ素原子の数は、1〜8であることが好ましく、2〜4であることがより好ましい。含フッ素オレフィンとしては、具体的には、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド(VDF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ビニルフルオライド(VF)、パーフルオロ(アルキル基またはグリシジル基含有ビニルエーテル)(PAVE)、フルオロアルキル基と重合性不飽和基とがエーテル結合またはエステル結合で連結された単量体等が挙げられる。これらの中でも、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド(VdF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ビニルフルオライド(VF)が好ましく、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド(VdF)がより好ましく、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)が特に好ましい。これらの含フッ素オレフィンは1種単独であっても2種以上併用してもよい。
【0019】
含フッ素オレフィンの全単量体中に対する含有量としては、15〜85モル%であることが好ましく、30〜80モル%であることがより好ましい。
【0020】
架橋性官能基を有する単量体としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、グリシジル基、シアノ基、シリル基、シラネート基などを有する単量体等が挙げられ、なかでも、硬化性が良好になることから、水酸基、シアノ基、シリル基、カルボキシル基を有する単量体が好ましく、さらに、水酸基を有する単量体が好ましい。
【0021】
水酸基を有する単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ-2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル類や、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル等の水酸基含有アリルエーテル類等が挙げられる。中でも、水酸基を有する単量体としては、水酸基含有ビニルエーテルであることが好ましい。これらの水酸基を有する単量体は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0022】
カルボキシル基を有する単量体としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、3−ブテン酸、4−ペンテン酸、イタコン酸、2−ヘキセン酸、3−ヘキセン酸、5−ヘキセン酸などが挙げられる。中でも、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸が好ましい。
【0023】
アミノ基を有する単量体としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(メタ)アクリレート等のアミノ基を有するアクリルモノマーなどが挙げられる。
【0024】
グリシジル基を有する単量体としては、グリシジルビニルエーテル;グリシジルオキシメチルビニルエーテル、グリシジルオキシエチルビニルエーテル、グリシジルオキシブチルビニルエーテル、グリシジルオキシペンチルビニルエーテル、グリシジルオキシシクロヘキシルビニルエーテルなどのグリシジルオキシアルキルビニルエーテル;などが挙げられる。
【0025】
架橋性官能基を有する単量体の全単量体に対する含有量としては、1〜30モル%であることが好ましく、5〜20モル%であることがより好ましい。
【0026】
反応性シリコーンとしては、下記の式(1)または式(2)で示される化合物が挙げられる。
【0028】
(式(1)中、R
1は炭素数1〜6のアルキル基、−(CH
2)
r−OOC(CH
3)C=CH
2または−CH=CH
2であり、R
2は−(CH
2)
r−OOC(CH
3)C=CH
2または−CH=CH
2である。nは1〜420であり、rは1〜6である。)
この際、R
1における炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖、分岐鎖、および環状のいずれであってもよく、直鎖、または分岐鎖であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、cyclo−ヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−iso−プロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基などが挙げられる。
【0030】
(式(2)中のR
2は上記の定義の通り。)
式(1)または(2)で示される反応性シリコーンの全単量体中に対する含有量としては、0.001〜30モル%であることが好ましく、0.005〜25モル%であることがより好ましい。
【0031】
また、一般式(1)あるいは(2)で示される反応性シリコーンは、片末端がメタクリル変性されたポリジメチルシロキサン、片末端がアクリル変性されたポリジメチルシロキサン、両末端がメタクリル変性されたポリジメチルシロキサン等が好適である。これらの反応性シリコーンは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合せてもよい。
【0032】
さらに、上記の反応性シリコーンは、次式(3)、(4)、(5)、(6)で示されるものであってもよい。
【0034】
(ここでR
3は、炭素数1〜6のアルキル基を示す。mは1〜250の整数を示す。)
【0036】
(ここでR
4は、炭素数1〜6のアルキル基を示す。pは1〜250の整数を示す。)
【0038】
(ここでR
5は、−OCOC(CH
3)=CH
2を示す。qは1〜250の整数を示す。)
【0040】
さらに、含ケイ素フッ素樹脂を構成する単量体としては、必要に応じて、上記以外の単量体(以下、「その他の単量体」と称する。)と組み合わせてもよい。
【0041】
中でも、含ケイ素フッ素樹脂は、単量体成分として、アルキルビニルエーテル、アルキルアリルエーテルおよび(メタ)アクリル酸エステルから選択される少なくとも1種をさらに含むことが好ましい。
【0042】
アルキルビニルエーテルにおけるアルキル基としては、炭素数が2以上のアルキル基、より好ましくは炭素数が2〜18のアルキル基であることが好ましい。アルキル基含有ビニルエーテルとしては、具体的には、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテルが挙げられる。アルキル基は、直鎖、分岐鎖、および環状のいずれであってもよい。アルキルビニルエーテルは1種単独であっても2種以上併用してもよい。
【0043】
アルキルアリルエーテルとしては、エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル、イソブチルアリルエーテル、n−プロピルアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル、3−アリルオキシ−1,2プロパンジオール、グリセロールモノアリルエーテル等が挙げられる。
【0044】
(メタ)アクリル酸エステルにおけるアルキル基の炭素数は、2以上であることが好ましく、2〜18であることが好ましく、2〜8であることがより好ましい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル等が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸エステル」は、「アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル」を指す。
【0045】
アルキルビニルエーテル、アルキルアリルエーテル、および(メタ)アクリル酸エステルの全単量体中に対する含有量としては、1〜50モル%であることが好ましい。
【0046】
また、その他の単量体としては、使用目的に応じて20モル%を超えない範囲で、例えば、カルボン酸ビニルエステル類、オレフィン類等を含有してもよい。
【0047】
カルボン酸ビニルエステル類の具体例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ−t−ブチル安息香酸ビニル等が挙げられる。
【0048】
オレフィン類としては、炭素原子数2〜20のオレフィンであり、具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセンおよび1−エイコセン等が挙げられる。
【0049】
含ケイ素フッ素樹脂としては、特開2001−163927号公報、特開2001−206918号公報、特開2004−115792号公報などに記載の含ケイ素フッ素樹脂を用いることができ、また、その製造方法についてもこれらの文献を参照して適宜製造することができる。
【0050】
含ケイ素フッ素樹脂は市販品を用いてよい。市販品としては、関東電化工業社製のエフクリアシリーズ(エフクリアKD3100、エフクリアKD270)などが挙げられる。
【0051】
含ケイ素フッ素樹脂は、水酸基価が、5〜200mgKOH/gであることが好ましく、30〜180mgKOH/gであることがより好ましい。水酸基価がかような範囲にあることで、架橋反応性および溶媒への溶解性に優れる。
【0052】
含ケイ素フッ素樹脂と組み合わせてイソシアネート系架橋剤が選択される。イソシアネート系架橋剤と組み合わせることで、延伸性が確保される。
【0053】
イソシアネート系架橋剤としては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプエート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;およびイソホロンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート;などのジイソシアネート化合物、ならびにジイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、ジイソシアネート化合物のビウレット体やイソシアヌレート体、ジイソシアネート化合物の二官能型などのイソシアネート誘導体が挙げられる。中でも、延伸性の観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系架橋剤であることが好ましい。イソシアネート系架橋剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0054】
イソシアネート系架橋剤の市販品としては、これらのイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体やウレタンプレポリマーなどが挙げられる。
【0055】
中でも、延伸性の観点から、イソシアネート系架橋剤は、両末端にジイソシアネート(好適には、ヘキサメチレンジイソシアネート)がウレタン結合した二官能型(以下、単に二官能型イソシアネートとも称する)であることが好ましい。具体的には、イソシアネート系架橋剤は、ジオール(HO−R−OH)の両末端の水酸基(−OH)と、ジイソシアネート化合物(好適には、ヘキサメチレンジイソシアネート)のイソシアネート基(−NCO)とがウレタン結合している二官能型のウレタンプレポリマーであることが好ましい。二官能型イソシアネートを用いることで、コート層の延伸性が一層向上する。これは、架橋剤による架橋後の樹脂が比較的緩やかな架橋構造をとることができ、架橋による樹脂の収縮を抑制することができるためであると考えられる。両末端にジイソシアネートがウレタン結合した二官能型イソシアネートとしては、デュラネートD101(旭化成ケミカルズ社製)などが挙げられる。二官能型イソシアネートの重量平均分子量は、300〜700であることが好ましい。
【0056】
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した値を採用する。
【0057】
装置名 HLC−8020(東ソー社製)
溶媒:テトラヒドロフラン
カラム:TSKgel guardcolumn HXL−H(東ソー社製)
TSKgel GMHXL(東ソー社製)
TSKgel GMHXL(東ソー社製)
TSKgel G2000HXL(東ソー社製)
カラム温度:40℃
流量:1ml/min
校正曲線:標準ポリスチレン
検出器:示差屈折率計
コート層の形成方法としては特に限定されるものではないが、含ケイ素フッ素樹脂およびイソシアネート系架橋剤を溶媒に溶解したコート層形成用塗布液をウレタン層上に塗布する方法が好ましい。溶媒の具体例としては、酢酸エチルおよび酢酸ブチル等のエステル系溶媒、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、エタノールおよびイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族系溶媒、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタンおよびイソオクタン等の脂肪族飽和炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびジメチルシクロヘキサン等の脂肪族系溶媒、トリクロロエチレン、クロロホルムおよびm−キシレンヘキサクロリド等の塩素系溶媒、アセトン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルおよびテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、メチルパーフルオロブチルエーテルおよびエチルパーフルオロブチルエーテル等のフッ素系溶媒、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサンおよびヘプタメチルトリシロキサン等のシリコーン系溶媒等が挙げられる。これらの中でも、反応性シリコーンを共重合単位として含む含ケイ素フッ素樹脂の溶解性の観点から、溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレンイソプロピルアルコールを用いることが好ましい。溶媒は、1種単独で用いても2種類以上併用してもよい。
【0058】
コート層形成用塗布液の製造方法は特に限定されず、溶媒に、含ケイ素フッ素樹脂、イソシアネート系架橋剤を順次添加する;溶媒に、含ケイ素フッ素樹脂、イソシアネート系架橋剤を一括添加するなどいずれの方法であってもよい。
【0059】
コート層形成用塗布液の塗布方法は特に限定されず、例えばロールコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スロットダイコーター、リップコーター、グラビアコーターなどの公知の塗布装置を用いて塗布することができる。コート層形成用塗布液を基材上に塗布後、乾燥処理を行うことによって、コート層が形成される。この際の乾燥条件としては特に限定されず、架橋反応の促進およびウレタン層の保護の観点から、60〜150℃であることが好ましい。また、乾燥時間は硬化が完了する時間まで適宜設定すればよい。
【0060】
また、コート層形成用塗布液に架橋促進剤を併用してもよい。架橋促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、トリアミン、環状アミン、ジメチルエタノールアミンのようなアルコールアミン、エーテルアミン、金属触媒として酢酸カリウム、2−エチルへキサン酸カリウム、酢酸カルシウム、オクチル酸鉛、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、オクチル酸錫、ビスマスネオデカノエート、ビスマスオキシカーボネート、ビスマス2−エチルヘキサノエート、オクチル酸亜鉛、亜鉛ネオデカノエート、ホスフィン、ホスホリン等が挙げられる。これらの架橋促進剤は、1種単独で用いても、2種類以上併用してもよい。
【0061】
コート層を形成する際の含ケイ素フッ素樹脂および架橋剤の含有比は、架橋剤中の架橋に寄与しうる官能基(例えば、イソシアネート基):含ケイ素フッ素樹脂中の架橋剤と反応する官能基(例えば、水酸基)=5:1〜1:10となるように含有させることが好ましい。含ケイ素フッ素樹脂および架橋剤の含有比がかような範囲にあることで、含ケイ素フッ素樹脂の架橋密度が適切なものとなり、架橋された樹脂を含むコート層の延伸性が向上するため好ましい。
【0062】
コート層の厚さは、汚染防止性および外観性の観点から、0.5〜50μmであることが好ましく、1〜20μmであることがより好ましい。
【0063】
コート層は、必要に応じて、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難撚剤等を適宜に含有していてもよい。
【0064】
(ウレタン層)
ウレタン層を形成するウレタン樹脂は、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂などを用いることができる。破断伸度が大きいことから、ジイソシアネート、鎖延長剤である分子量500以下の低分子量ジオール及び分子量500〜4000の高分子量ジオールを重合することで得られる熱可塑性エラストマーであることが好ましい。
【0065】
また、ウレタン層には、必要に応じて、安定剤、滑剤、充填剤、着色剤、加工助剤、軟化剤、金属粉、防曇剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難撚剤等を適宜に含有していてもよい。安定剤としては、例えば、Ba−Zn系、Cd−Ba系、Sn系等のものが用いられ、或いはこれらがエポキシ化大豆油、エポキシ樹脂等と併用されていてもよい。また、軟化剤としては、例えば、エチレン/酢酸ビニル共重合体やエチレン/酢酸ビニル/一酸化炭素共重合体等が用いられていてもよい。
【0066】
ウレタン層の厚みは、塗膜の保護性および曲面追従性を考慮して、20〜500μmであることが好ましく、100〜200μmであることがより好ましい。
【0067】
(粘着剤層)
粘着剤層に用いられる粘着剤としては、特に限定されず、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、スチレン−ジエンブロック共重合体粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、フッ素系粘着剤などを用いることができる。上記粘着剤は1種単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0068】
粘着剤としては、接着の信頼性の観点から、特にアクリル系粘着剤を好適に用いることができる。アクリル系粘着剤を構成するアクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とし、必要に応じて(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能な単量体(共重合性単量体)を用いることにより形成される。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに共重合可能なアクリル共重合性単量体の例としては、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(n−プロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(n−ブトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−エトキシプロピル、アクリル酸2−(n−プロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(n−ブトキシ)プロピルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有単量体またはその無水物;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有単量体;スチレン、置換スチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;エチレン、プロピレン、ブタジエンなどのオレフィン類;酢酸ビニルなどのビニルエステル類;塩化ビニル;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、グリセリンジメタクリレートなどのヒドロキシル基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリルイルモルホリンなどのアミノ基含有単量体;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのエポキシ基含有単量体;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有単量体;トリエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジビニルベンゼンなどの多官能基の共重合単量体(多官能基モノマー)などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
アクリル系ポリマーの重量平均分子量は特に限定されるものではないが、10万〜100万であることが好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
【0071】
粘着剤は、アクリル系ポリマーの他、架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤などが挙げられる。架橋剤の添加量は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.001〜10質量部であることが好ましく、0.005〜0.5質量部であることがより好ましい。
【0072】
粘着剤層には、必要に応じ、着色剤、充填剤、帯電防止剤、タッキファイヤー、濡れ剤、レベリング剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤等を適宜添加することができる。
【0073】
粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、粘着性および薄膜化の観点から、10〜100μmの範囲が好ましい。
【0074】
粘着剤層の形成方法は特に限定されないが、通常粘着剤を剥離部材上に塗布する方法が採られる。塗布方法は特に限定されず、例えばロールコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スロットダイコーター、リップコーター、グラビアコーターなどの公知の塗布装置を用いて塗布することができる。粘着剤の塗布量としては、固形分重量で、通常10〜100g/m
2、好ましくは20〜60g/m
2である。粘着剤を基材上に塗布後、乾燥処理を行うことによって、粘着剤層が形成される。この際の乾燥条件としては特に限定されず、通常60〜150℃にて10〜60秒の条件で行われる。
【0075】
また、粘着剤を印刷して粘着剤層を形成させてもよい。この際、凸版印刷機、グラビア印刷機(凹版印刷機)、スクリーン印刷機、オフセット印刷機等の各種既知の印刷機を使用することができる。
【0076】
(剥離部材)
剥離部材は、粘着剤層を保護し、粘着性の低下を防止する機能を有する部材である。そして、剥離部材は、塗膜に貼付する際に塗膜保護シートから剥離される。このため、本発明における塗膜保護シートは、剥離部材を有していないものも包含される。
【0077】
剥離部材としては、特に限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルム;上質紙、グラシン紙、クラフト紙、クレーコート紙などの紙が挙げられる。
【0078】
剥離部材の厚みは、通常10〜400μm程度である。また、剥離部材の表面には、粘着剤層の剥離性を向上させるためのシリコーンなどから構成される剥離剤からなる層が設けられてもよい。かような層が設けられる場合の当該層の厚みは、通常0.01〜5μm程度である。
【0079】
本発明の塗膜保護フィルムの製造方法としては、特に限定されるものではないが、含ケイ素フッ素樹脂、イソシアネート系架橋剤および溶媒を含むコート層形成用塗布液をウレタン層上に塗布・乾燥してコート層を形成する、および粘着剤層を形成することを有することが好ましい。
【0080】
粘着剤層の形成方法は特に限定されないが、上述したように、通常、粘着剤を剥離部材上に塗布する方法が採られる。そして、粘着剤層を有する剥離部材の粘着剤層面がコート層が形成されていないウレタン層と接するように、両者を貼り合わせることで、粘着フィルムを得ることができる。
【0081】
また、粘着剤をウレタン層のコート層形成面と反対側に塗布・乾燥して粘着剤層を形成した後、剥離部材を貼り合わせてもよい。
【0082】
本実施形態の塗膜保護フィルムは、塗装面を有する被着体に粘着剤層面が貼付されて用いられる。
【0083】
本実施形態の塗膜保護フィルムは曲面追従性が高く、汚染防止性が高いことから、外部環境で使用されることが多い、移動体を被着体とすることが好ましい。すなわち、本発明の好適な一実施形態は、移動体(特に車両)用塗膜保護フィルムである。さらに、本発明の好適な一実施形態は、上記塗膜保護フィルムが貼付された移動体(特に車両)である。
【0084】
移動体としては、特に限定されるものではないが、例えば、車両、航空機、船舶、ブルドーザ、ショベルカー、トラッククレーン、フォークリフト等の移動体が挙げられる。車両としては、ガソリンやバイオエタノール等を燃料とする自動車、二次電池や燃料電池を利用した電気自動車、ハイブリッド自動車等の四輪自動車(乗用車、トラック、バス等);二輪のバイク、自転車;鉄道車両(電車、ハイブリッド電車、機関車等)などが挙げられる。
【実施例】
【0085】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0086】
(実施例1)
(ウレタン層)
厚さ150μmのポリウレタン樹脂フィルム(ラックスキンF9700ES−150C、セイコー化成社製)を用いた。
【0087】
(コート層)
上記ウレタン層の一面に下記組成のコート層形成用塗布液をグラビアコーターを用いて塗布した。その後、100℃で5分間乾燥し、乾燥厚み5μmのコート層をウレタン層上に形成した。
【0088】
コート層形成用塗布液の組成:含ケイ素フッ素樹脂(商品名:エフクリアKD3100(関東電化社製、固形分20.3質量%の酢酸エチル溶液、水酸基価:67.0mgKOH/g樹脂、))と、ヘキサメチレンジイソシアネートの二官能型イソシアネート系架橋剤(商品名:デュラネート(登録商標) D101、旭化成ケミカルズ社製、固形分100質量%、NCO19.7質量%)を、架橋剤中のNCO/含ケイ素フッ素樹脂中のOHが1/1になるように混合した。
【0089】
(粘着剤層)
還流器および攪拌機を備えたフラスコに、アクリル酸ブチル95質量部、アクリル酸5質量部、過酸化物系開始剤およびトルエン(溶剤)を混合し、窒素置換を行いながら加温し、重合を行って、アクリル系ポリマーを得た(重量平均分子量Mw=500,000)。
【0090】
上記アクリル系ポリマー固形分100質量部、およびエポキシ系架橋剤(商品名:TETRAD−X、三菱ガス化学社製)0.01質量部を混合して粘着剤組成物を得た。
【0091】
粘着剤組成物を剥離紙(厚さ170μm)にナイフコーターを用いて乾燥後膜厚が20μmとなるように塗工し、乾燥して粘着剤層を剥離紙上に形成した。コート層が形成されたウレタン層のコート層が形成されていない面に粘着剤層を貼付して塗膜保護フィルムを作成した。
【0092】
(実施例2)
架橋剤を、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(商品名:コロネート(登録商標)HL、東ソー社製、固形分75質量%、NCO 12質量%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして塗膜保護フィルムを作成した。
【0093】
(実施例3)
架橋剤を、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(商品名:コロネート(登録商標)L、東ソー社製、固形分75質量%、NCO13.2質量%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして塗膜保護フィルムを作成した。
【0094】
(比較例1)
実施例1の含ケイ素フッ素樹脂の代わりにケイ素を含有しない含フッ素樹脂(商品名:オブリガートSS0062(フルオロエチレン−アルキルビニルエーテル交互共重合体、AGCコーテック社製、固形分38.0質量%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして塗膜保護フィルムを作成した。
【0095】
(比較例2)
架橋剤を、エポキシ系架橋剤 製品名「TETRAD−C」(不揮発分100%、三菱ガス化学社製)に変更し、含ケイ素フッ素樹脂100質量部に対して、架橋剤を0.05質量部添加したこと以外は、実施例1と同様にして塗膜保護フィルムを作成した。
【0096】
(評価方法1:汚染防止性試験)
カーボンブラックの5%水溶液をフッ素コートに滴下し、23℃50%RH環境下で168時間放置した後にふき取り、汚れの有無を確認した。また、同様にして、80℃環境下に1時間放置した後に拭き取り、汚れの有無を確認した。
【0097】
○:カーボンブラックの汚れは残留しなかった
×:カーボンブラックの汚れが残留した。
【0098】
(評価方法2:コート割れ伸度)
フィルムを幅15mm長さ100mmに切断し、引張試験機に間隔50mmで把持した後、JIS K7127:1999に準拠して速度200mm/分で引張り、コート層が割れる伸度を記録した。
【0099】
なお、コート割れ伸度は、100%以上であれば、実用性上問題ない。
【0100】
【表1】
【0101】
上記結果より、実施例1〜3の塗膜保護フィルムは、延伸性と長期汚染防止性との両立が図れたフィルムとなっている。一方、比較例1のフィルムは、延伸性および直後の汚染防止性には優れるものの、長期汚染防止性の点で劣るものであった。また、比較例2のフィルムは、長期汚染防止性は良好であるものの、延伸性の点で劣るものであった。
【0102】
本出願は、2015年3月26日に出願された日本特許出願番号2015−064594号に基づいており、その開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。