(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989294
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】修飾高分子
(51)【国際特許分類】
A61K 47/34 20060101AFI20160825BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20160825BHJP
A61K 31/365 20060101ALI20160825BHJP
A61K 31/405 20060101ALI20160825BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20160825BHJP
A61K 38/00 20060101ALI20160825BHJP
A61K 47/48 20060101ALI20160825BHJP
C08G 69/36 20060101ALI20160825BHJP
C08G 69/40 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
A61K47/34
A61K31/337
A61K31/365
A61K31/405
A61K31/519
A61K37/02
A61K47/48
C08G69/36
C08G69/40
【請求項の数】30
【全頁数】86
(21)【出願番号】特願2008-550589(P2008-550589)
(86)(22)【出願日】2006年5月15日
(65)【公表番号】特表2009-523738(P2009-523738A)
(43)【公表日】2009年6月25日
(86)【国際出願番号】AU2006000637
(87)【国際公開番号】WO2007082331
(87)【国際公開日】20070726
【審査請求日】2009年5月15日
【審判番号】不服2013-19267(P2013-19267/J1)
【審判請求日】2013年10月3日
(31)【優先権主張番号】2006900310
(32)【優先日】2006年1月20日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】501102564
【氏名又は名称】スターファーマ・プロプライエタリー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】STARPHARMA PTY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100068526
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭生
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・ジェイムズ・ボイド
(72)【発明者】
【氏名】リサ・ミシェル・カミンスカス
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ジョン・ハミルトン・ポーター
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・カレラス
(72)【発明者】
【氏名】ガイ・イェオマン・クリップナー
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・デブリン・ケリー
(72)【発明者】
【氏名】ツェミン・ウ
(72)【発明者】
【氏名】パスカレ・ラッツィーノ
(72)【発明者】
【氏名】スー・パリッチ
【合議体】
【審判長】
松浦 新司
【審判官】
齊藤 光子
【審判官】
関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】
特表2004−515457(JP,A)
【文献】
特表平9−512264(JP,A)
【文献】
特表2005−532276(JP,A)
【文献】
特表2008−510829(JP,A)
【文献】
米国特許第5229490(US,A)
【文献】
MINGJUNG LIUほか,“Water−Soluble Dendrimer−Poly(ethylene glycol) Starlike Conjugates as Potential Drug Carriers”,Journal of Polymer Science: Part A;Polymer Chemistry, 1999年,37巻,3492〜3503頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K9/00-9/72, 47/00-47/48
C08G69/00-69/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) リジン、ベンズヒドリルアミド-リジン、次式のNEOEOENLys:
【化1】
または次式:
【化2】
[式中、a、b、およびcは、それぞれ、0〜5の整数である]
のいずれかの基から選択されるコア;
(ii)表面アミン基を有する表面層および1〜6個のサブ表面層、ここで該表面層は4個以上の表面構築単位を含み、各サブ表面層は2個以上のサブ表面構築単位を含み
、構築単位は独立して次式のリジンまたはリジン誘導体:
【化3】
から選択され;
(iii)分割可能なまたはオルトゴナルな保護基または医薬活性剤の残基である第1末端基、該第1末端基は適宜リンカーを介して表面アミンに結合しており;
および
(iv)分割可能なまたはオルトゴナルな保護基、ポリチレングリコール(PEG)、ポリエチルオキサゾリン(PEO
X)、葉酸または葉酸誘導体から選択される、細胞表面レセプタのリガンドである第2末端基, 該第2末端基は適宜リンカー部分を介して表面アミンに結合しており、
を含む、制御された末端基化学量論およびトポロジーを持つデンドリマーポリマーであり、
該制御された末端基化学量論とは各タイプの末端基の所定の数を意味し、該制御された末端基トポロジーとはデンドリマーポリマーの表面層の第1および第2末端基の非ランダムな所定の位置を意味する、デンドリマーポリマー。
【請求項2】
第2末端基がポリエチレングリコール(PEG)またはポリエチルオキサゾリン(PEOX)である、請求項1に記載のデンドリマーポリマー。
【請求項3】
該ポリエチレングリコール(PEG)またはポリエチルオキサゾリン(PEOX)末端基が末端基の総数の25%〜50%を構成する、請求項2に記載のデンドリマーポリマー。
【請求項4】
該ポリエチレングリコール(PEG)またはポリエチルオキサゾリン(PEOX)末端基が末端基の総数の50%を構成する、請求項2に記載のデンドリマーポリマー。
【請求項5】
該ポリエチレングリコール(PEG)またはポリエチルオキサゾリン(PEOX)が、500〜5000ダルトンの分子量を有する、請求項2に記載のデンドリマーポリマー。
【請求項6】
一つ以上のリンカー部分をさらに含み、第1および/または第2末端基がそのリンカー部
分を介して表面アミンに結合している、請求項1に記載のデンドリマーポリマー。
【請求項7】
リンカー部分が切断可能である、請求項6に記載のデンドリマーポリマー。
【請求項8】
リンカー部分が、アミドリンカー、ヒドラゾン、オキシムおよびイミンリンカー、エス
テルリンカー、ペプチドリンカー、グルタルアルデヒドリンカー、ポリエチレングリコール-ペプチドリンカー、ジスルフィドリンカーおよびチミジンリンカーからなる群より選択される、請求項6に記載のデンドリマーポリマー。
【請求項9】
第1末端基に結合する一つ以上のリンカー部分がPEGを含む、請求項6に記載のデンドリマーポリマー。
【請求項10】
医薬活性剤が、麻酔薬、制酸剤;抗体;抗真菌薬;抗感染薬;抗腫瘍剤;代謝拮抗物質;抗有糸分裂薬;抗原虫薬;抗ウイルス医薬;生物学的製剤;気管支拡張薬および去痰薬;心血管医薬;造影剤;利尿薬;成長ホルモン;造血薬;ホルモン補充療法薬;免疫抑制薬;ホルモンおよびホルモン類似体;栄養補助食品;眼科医薬;疼痛治療薬;呼吸器医薬;移植関連製品;アジュバント;同化剤;鎮痛薬;抗関節炎剤;抗痙攣薬;抗ヒスタミン薬;抗炎症薬;抗微生物薬;抗寄生虫薬;抗潰瘍剤;行動修正薬;がん治療薬およびがん関連医薬;中枢神経系医薬;避妊薬;糖尿病治療薬;不妊治療医薬;成長促進薬;止血薬;免疫賦活薬;筋弛緩薬;天然物;肥満治療薬;骨粗鬆症薬;ペプチドおよびポリペプチド;鎮静薬および精神安定薬;尿酸性化薬;ならびにビタミンからなる群より選択される、請求項1に記載のデンドリマーポリマー。
【請求項11】
医薬活性剤が、抗腫瘍剤;代謝拮抗物質;抗有糸分裂薬;抗炎症薬;および免疫抑制
薬からなる群より選択される、請求項1に記載のデンドリマーポリマー。
【請求項12】
医薬活性剤が、メトトレキサート;タキソール;インドメタシン;ゼニカル;およびシクロスポリンからなる群より選択される、請求項1に記載のデンドリマーポリマー。
【請求項13】
医薬活性剤がタキサンである、請求項1に記載のデンドリマーポリマー。
【請求項14】
第1末端基および第2末端基が、表面層の構築単位に結合して連結体を形成している、請求項1に記載のデンドリマーポリマー。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1つに記載の複数のデンドリマーポリマーを含む医薬組成物。
【請求項16】
式:
コア[サブ表面構築単位]
m[表面構築単位]
n[末端基1]
p[末端基2]
q
[式中、
コアは、
リジン、ベンズヒドリルアミド-リジン、次式のNEOEOENLys:
【化4】
または次式:
【化5】
[式中、a、b、およびcは、それぞれ、0〜5の整数である]
のいずれかの基から選択され;
サブ表面構築単位は、デンドリマーのサブ表面層を構成し、次式のリジンまたはリジン誘導体:
【化6】
からなる群より選択され;
表面構築単位は、
デンドリマーの表面層を構成し、サブ表面構築単位のものと同じであっても異なってもよく、次式のリジンまたはリジン誘導体:
【化7】
から選択され;
末端基1は、表面構築単位に結合し、
分割可能なまたはオルトゴナルな保護基または医薬活性剤の残基から選ばれ;
末端基2は、表面構築単位に結合し、
分割可能なまたはオルトゴナルな保護基、または細胞表面レセプターのリガンドであるポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチルオキサゾリン(PEO
X)、葉酸または葉酸誘導体から選ばれ;
mはデンドリマーポリマーのサブ表面層構築単位の和を表し、
2〜30の整数であり;
nはデンドリマーポリマーの表面層の表面構築単位の数を表し、
4〜32の整数であり;
pは末端基1の数を表し、1〜
63の整数であり;
qは末端基2の数を表し、1〜
63の整数であ
り;
p + qは、2nより少ないか同等であ
り;
nはmより大である]
を有する制御された末端基化学量論およびトポロジーを有する
デンドリマーポリマーであって、
制御された末端基化学量論とは、各タイプの末端基の所定の数を意味し;制御された末端基トポロジーとは、デンドリマーの表面層の末端基の非ランダムな所定の位置を意味する;
デンドリマーポリマー。
【請求項17】
末端基が分割可能なまたはオルトゴナルな保護基である、請求項16に記載のデンドリマーポリマー。
【請求項18】
末端基2がポリエチレングリコール(PEG)またはポリエチルオキサゾリン(PEOX)である、請求項16に記載のデンドリマーポリマー。
【請求項19】
医薬活性剤が抗腫瘍剤;代謝拮抗物質;抗有糸分裂薬;抗炎症薬;および免疫抑制薬からなる群より選択される、請求項16に記載のデンドリマーポリマー。
【請求項20】
医薬活性剤が、メトトレキサート;タキソール;インドメタシン;ゼニカル;およびシクロスポリンからなる群より選択される、請求項16に記載のデンドリマーポリマー。
【請求項21】
医薬活性剤がタキサンである、請求項16に記載のデンドリマーポリマー。
【請求項22】
サブ表面構築単位がリジン、表面構築単位がリジン、コアがジアミンコア、末端基1が代謝拮抗物質または抗有糸分裂薬、そして末端基2がポリエチレングリコール(PEG)である、請求項16に記載のデンドリマーポリマー。
【請求項23】
(i)・少なくとも分割可能なまたはオルトゴナルな第1保護基で保護された第1表面アミン基および少なくとも分割可能なまたはオルトゴナルな第2保護基で保護された第2表面アミン基を有する外側層を含むデンドリマーポリマー、
・医薬活性剤の残基である第1末端基の前駆体、および
・細胞表面レセプターのリガンドであるポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチルオキサゾリン(PEOX)、葉酸または葉酸誘導体から選ばれる第2末端基の前駆体
を供給するステップ、
(ii)第1保護基を除去することによって第1表面アミン基を脱保護するステップ、
(iii)第1または第2末端基前駆体の一方を活性化するステップ、
(iv)脱保護された第1表面アミン基を活性化した末端基前駆体と反応させるステップ、
(v)第2保護基を除去することによって第2表面アミン基を脱保護するステップ、
(vi)他方の第1または第2末端基前駆体を活性化するステップ、および
(vii)脱保護された第2表面アミン基を他方の活性化された末端基前駆体と反応させるステップ
を含む、制御された末端基化学量論およびトポロジーを持つデンドリマーポリマーの製法であって、
該制御された末端基化学量論とは各タイプの末端基の所定の数を意味し、該制御された末端基トポロジーとはデンドリマーの表面層の第1および第2末端基の非ランダムな所定の位置を意味する、
デンドリマーポリマーの製造方法。
【請求項24】
(i)・分割可能なまたはオルトゴナルな保護基で保護された表面アミン基を有する外側層を含むデンドリマーポリマー、ならびに
・カルボキシレート基、医薬活性剤の残基である第1末端基、および細胞表面レセプターのリガンドであるポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチルオキサゾリン(PEOX)、葉酸または葉酸誘導体から選択される第2末端基を含む表面修飾化合物
を供給するステップ、
(ii)表面修飾剤化合物上のカルボキシレート基を活性化するステップ、
(iii)保護基を除去することによって、デンドリマーポリマーの外側層上の表面アミン基を脱保護するステップ、ならびに
(iv)デンドリマーポリマー上の脱保護された表面アミン基を、表面修飾剤化合物上の活性化されたカルボキシレート基と反応させるステップ
を含む、制御された末端基化学量論およびトポロジーを持つデンドリマーポリマーの製法であって、
該制御された末端基化学量論とは各タイプの末端基の所定の数を意味し、該制御された末端基トポロジーとはデンドリマーの表面層の第1および第2末端基の非ランダムな所定の位置を意味する、
デンドリマーポリマーの製造方法。
【請求項25】
デンドリマーポリマーが、少なくとも1つの
次式のリジンまたはリジン誘導体:
【化8】
を含む、請求項
23または
24に記載の方法。
【請求項26】
第2末端基がポリエチレングリコール(PEG)またはポリエチルオキサゾリン(PEOX)である、請求項23または24に記載の方法。
【請求項27】
医薬活性剤が抗腫瘍剤である、請求項23または24に記載の方法。
【請求項28】
表面修飾剤化合物を製造するための方法であって、
(i)・
少なくとも分割可能なまたはオルトゴナルな
第1保護基で保護された第1アミン
官能基
および少なくとも分割可能なまたはオルトゴナルな第2保護基で保護された第2アミン官能基、およびカルボキシレート基を有する下記式:
【化9】
から選択されるリジンまたはリジン
誘導体化合物、
・医薬活性剤の残基である第1末端基の前駆体、および
・ポリチレングリコール(PEG)、ポリエチルオキサゾリン(PEO
X)、葉酸または葉酸誘導体から選択される第2末端基の前駆体
を供給するステップ、
(ii)保護されたリジンまたはリジン
誘導体化合物上の第1アミン
官能基を脱保護するステップ、
(iii)第1または第2末端基前駆体を活性化するステップ、
(iv)活性化された末端基前駆体を脱保護されたアミン
官能基と反応させるステップ、
(v)保護されたリジンまたはリジン
誘導体化合物上の第2アミン
官能基を脱保護するステップ、
(vi)他方の第1または第2末端基前駆体を活性化するステップ、および
(vii)前記他方の活性化された末端基前駆体を第2の脱保護されたアミン
官能基と反応させて表面修飾剤化合物を得るステップ
を含む方法。
【請求項29】
第2末端基がポリエチレングリコール(PEG)またはポリエチルオキサゾリン(PEOX)である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
医薬活性剤が抗腫瘍剤である、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、高分子、特に、あるトポロジー異性体の比率が濃縮されるようにその表面アーキテクチャを制御することができるデンドリマー、その製造、およびそれらの使用に関する。特に、本高分子は、二つ以上の表面基を持ち、その表面基の少なくとも一つは薬学的に活性であることができる。
【0002】
医薬製剤に使用するための新化合物の同定は、より高い信頼性および有効性を持つ治療法の探索の重要な一部分である。しかし同じぐらい重要なのは、新薬候補に付随するリスクを低下させ、薬物を臨床開発に到達させるための開発およびコストを著しく低下させる、既知化合物の開発および修飾である。
【0003】
多くの薬物は、その物理的性質(特に溶解性)が製剤化を困難にするため、または治療係数が小さく、それが投薬直後に生じる高薬物濃度時の毒性作用を引き起こすため、臨床試験で失敗する。他の短所には、低い吸収性、低いバイオアベイラビリティ、不安定性、そして一旦投与されると薬物をターゲティングできないこと、その生体内分布、代謝および腎または肝クリアランスを制御できないことによる全身性副作用などがある。同様に、このような問題に関して、現在市販されている一部の製品を改良することができる。
【0004】
医薬化合物の特性を改良するために、リポソーム、ミセルまたはポリマーミセル製剤への医薬剤の処方、ならびに親水性ポリマーバックボーンへの医薬剤の共有結合など、いくつかのアプローチが試みられている。
【0005】
理想的な特性修飾剤の特徴としては、問題にしている化合物の吸収、分布、代謝および排泄(ADME)特徴(薬物動態ともいう)の正確な制御を可能にする明確に定義された構造であること、そして好適には、一つの薬剤またはコンストラクトにつき複数の化合物を保持できることが挙げられる。問題にしている化合物の毒性は、身体が治療的血漿中濃度の当該化合物にしか曝露されないように、前記薬剤またはコンストラクトからの当該化合物の放出を制御することによって、改善することができる。
【0006】
近年、デンドリティック高分子は、バイオテクノロジーおよび薬学的用途への応用例が増えつつある。デンドリティック高分子は、単位分子体積あたりの官能基の濃度が通常のポリマーよりも高いことを特徴とする、高密度に分岐した構造を持つ特殊な種類のポリマーである。それぞれのデンドリティックアーキテクチャ中に存在する構造制御の相対的度合いに基づいて分類される四つの高分子サブクラス、すなわちランダム高分岐ポリマー;デンドリグラフト(dendrigraft)ポリマー;デンドリティックモチーフ;およびデンドリマーがある。特にデンドリマーは、高い分岐度、多価性、球状アーキテクチャおよび明確に定義された分子量などといった、そのユニークな性質ゆえに、薬物送達用の新しい足場として有望視されている。生体適合性デンドリマーの設計および合成ならびに薬物送達を含む生物科学の多くの分野へのそれらの応用に関する研究は、過去十年間に増加している。
【0007】
薬物送達ベクターとしても、医薬活性物質としても、デンドリティックポリマーの潜在的有用性は、近年、ますます多くの関心を集めている
1,18。しかし、文献には、例えばデンドリマーアセンブリのための合成スキームの報告、デンドリマー-薬物相互作用および薬物負荷効率の記述、ならびに、ますます増えつつあるデンドリマーと細胞株との相互作用のインビトロ評価が満載されているものの
2,3、デンドリマーの基本的薬物動態および代謝運命を記述する情報はほとんどない。
【0008】
デンドリマーと腸組織との相互作用も、いくつかの研究の主題になっており
4-11、表面電荷および表面官能性に伴う透過性および細胞毒性の傾向は確立されているものの、体循環に吸収された後のデンドリマーの運命を記述した研究は比較的少ない。これら数少ない研究のうち、GilliesらはPEG化された「蝶ネクタイ型(bow-tie)」ポリエステルデンドリマーの薬物動態を調べて、デンドリマークリアランスの機序が複合体の分子量および可撓性に強く依存することを明らかにし
12、Kobayashiらは、重金属または抗体の複合体化(そしてそれゆえに生体イメージングへの応用)が容易になるように設計されたデンドリマーの生体内分布に構造変化が及ぼす影響を調べている
13-17。しかし今のところ、ポリリジンデンドリマー固有の全身薬物動態は、詳細には記述されていない。
【0009】
さらに、ターゲット部位に蓄積するのに十分な時間、血中を循環するが、それと同時に、長期蓄積を避けるために適当な速度で身体から排除されうるようなデンドリマーを製造することも、依然として難問である。また、デンドリマーの組織局在化を前もって予測することは今なお困難であり、これらの性質に周縁デンドリティック基が及ぼす影響を決定するには、より多くの研究が必要である。研究が必要なもう一つの領域は、デンドリマーからの薬物の放出である。高密度な球状デンドリティックアーキテクチャに伴う立体障害が、酵素的に切断可能な結合の工作を困難にしている。
【0010】
したがって本発明の目的は、先行技術に関係する難点および/または欠点の一つ以上を克服し、または少なくとも軽減することである。
【0011】
第1の態様として、本発明は、制御された末端基化学量論を持つ高分子であって、表面層、少なくとも一つのサブ表面層、ならびに
・医薬活性剤、その誘導体またはその前駆体の残基である第1末端基、および
・医薬活性剤および/または高分子の薬物動態を修飾するために選択される第2末端基
を含む少なくとも二つの末端基を含む高分子(この場合、末端基化学量論とは、末端基の数およびタイプを指す)を提供する。
【0012】
さらにもう一つの実施形態において、本高分子は、さらに、制御されたトポロジーも示す(この場合、トポロジーは、高分子の表面層またはサブ表面層へのその接続という観点から見た、ある末端基ともう一つの末端基との関係を表す)。
【0013】
好ましい実施形態において、第2末端基は、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリエチルオキサゾリン(例えばPEOX)を含みうる。
【0014】
さらにもう一つの実施形態において、第2末端基は、以下の一つ以上から選択される:医薬活性剤および/または高分子の血漿中半減期を修飾する部分;一つ以上の細胞タイプまたは組織タイプへの医薬活性剤および/または高分子のターゲティングを容易にする部分;ならびに一つ以上の細胞タイプまたは組織タイプへの医薬活性剤および/または高分子の取り込みを容易にする部分。
【0015】
好ましい実施形態において、第2末端基は、医薬活性剤および/または高分子の半減期が延びるように選択される。
【0016】
高分子は好ましくはデンドリマーであり、より好ましくはリジンデンドリマーである。
【0017】
本発明のこの態様による高分子は、後述するさまざまな用途に利用することができ、その際、末端基化学量論および/またはトポロジーを制御できることは、医薬活性剤に一貫した薬物動態特性を与える上で有利である。
【0018】
本明細書および特許請求の範囲において使用する単数形「a」「an」および「the」は、文脈上そうでないことが明白である場合を除き、複数である指示対象を包含するものとする。したがって、例えば「高分子(a macromolecule)」への言及は、一つ以上のそれら高分子を包含する。
【0019】
本明細書および特許請求の範囲において使用する用語「comprises(を含む)」(またはその文法的変形)は、用語「includes(を含む)」と等価であって、他の要素または特徴の存在を排除するものと解釈してはならない。
【0020】
本明細書および特許請求の範囲において使用する用語「トポロジー」とは、高分子の表面層またはサブ表面層へのそれらの接続という観点から見た、ある末端基ともう一つの末端基との関係を意味するものとする。
【0021】
本明細書および特許請求の範囲において使用する用語「トポロジー異性体」とは、ある特定のトポロジーを持つ高分子を意味するものとする。
【0022】
本明細書および特許請求の範囲において使用する用語「表面」とは、「末端基」または「キャッピング」基と反応しうる表面アミンを有する世代構築単位の層を意味するものとする。
【0023】
本明細書および特許請求の範囲において使用する用語「サブ表面」とは、表面層の下にある単数または複数の層を意味するものとする。
【0024】
本明細書および特許請求の範囲において使用する用語「表面アミン」とは、デンドリマーの任意の表面反応可能アミン基を意味するものとする。
【0025】
本明細書および特許請求の範囲において使用する用語「末端基化学量論」とは、高分子の表面上にある末端基の組成(数およびタイプ)を意味するものとする。
【0026】
本明細書および特許請求の範囲において使用する用語「世代構築単位」とは、デンドリマーの骨組みを形成する繰り返し単位、例えばリジンデンドリマーの場合であればリジンまたはリジン類似体を意味するものとする。
【0027】
本明細書および特許請求の範囲において使用する用語「デンドリティックモチーフ」は、高分子の不連続なセグメントを意味するものとする。世代構築単位またはコアの反応可能アミンの一つを、取付けられた世代構築単位のカルボキシルに接続している結合において、高分子分岐の一つが切断されると、デンドリティックモチーフが放出されることになる。デンドリティックモチーフのカルボキシルは、本発明の高分子を合成するプロセスにおいて、その位置をもって、デンドリティックモチーフが成長中の高分子コアに取付けられる、ユニークな点(point)または頂端(apex)に相当する。
【0028】
本発明での使用には、どの高分子でも適しうる。高分子は、アルボロール(arborol)、デンドリグラフト、PAMAMデンドリマー、リジンデンドリマーなどを含む一つ以上のデンドリティックポリマーから選択することができる。
【0029】
デンドリマーポリマーの製造はよく知られており、例えば、米国特許第4,289,872号および同第4,410,688号(リジン単位の層に基づくデンドリマーポリマーが記述されている)や、米国特許第4,507,466号、同第4,558,120号、同第4,568,737号および同第4,587,329号(ポリアミドアミンまたはPAMAMデンドリマーポリマーを含む、他の単位に基づくデンドリマーポリマーが記述されている)に記述されている。これらの米国特許に開示されているデンドリマーポリマーは、表面修飾剤、金属キレート剤、解乳化剤または油/水エマルション、紙の製造における湿潤強度向上剤(wet strength agent)、および塗料などの水性製剤における粘度を修飾するための薬剤などといった用途に適していると記載されている。また、米国特許第4,289,872号および第4,410,688号には、リジン単位に基づくデンドリマーポリマーを、医薬製剤を製造するための基剤として使用しうることも、示唆されている。
【0030】
以下に、デンドリマー(特にポリリジンに基づくもの)に関して、本発明を詳細に説明する。
【0031】
任意の与えられた応用におけるデンドリマーの効力の重要な決定因子の一つは、高分子表面の性質である。出願人らは、驚くべきことに、一定の医薬化合物を明確に定義され制御されたプロセスでデンドリマーにコンジュゲートすることによって、それら一定の医薬化合物の吸収、分布、代謝および排泄(ADME)特性を修飾する技法を発見した。より具体的には、デンドリマーのサイズおよび/または表面官能性を修飾することで、薬物の排泄(クリアランス)、分布および代謝(吸収および再吸収)特性を調節することができる。本発明のプロセスでは、その薬物に特有の要求を満たすためにさまざまでありうる正確な構造を製造することが可能である。さらにまた、薬物負荷量を高め、より多様な治療法に対応することができるように、複数の分子を制御された様式でデンドリマーに取付けることもできる。デンドリマーの世代数を変化させることによって、薬物負荷をさらに修飾することもできる。
【0032】
アンキャップト
3H標識ポリ-L-リジンデンドリマーは、静脈内投与後に、遊離リジンへと迅速に代謝されることが、以前の研究によって示唆されている。しかし、驚くべきことに、デンドリマーをPEG化すると、タンパク質分解酵素ならびに血清タンパク質によるデンドリマーの認識が低下して、食細胞によるクリアランスが抑制され、その結果、血漿循環時間は延びることが証明された。さらにまた、PEG化は、デンドリマーの流体力学的容積を増加させ、その結果として、腎クリアランスを低下させうる。
【0033】
例えば本発明者らは、
3H標識PEG化リジンデンドリマーの血漿中半減期および尿排除の程度が、分子量に依存することを見出した。小さいデンドリマー複合体が、高分子量種の生成につながる血漿成分との相互作用の徴候を示したという事実にもかかわらず、小さいデンドリマー(すなわち<20kD)と比較して、大きいPEG化デンドリマー(すなわち>30kD)の方が、血漿から尿中に相対的にゆっくりと除去された。これらの複合体の排除は迅速であり、完全なデンドリマーだけが尿中に回収された。さらに本発明者らは、医薬活性成分およびPEG基をデンドリマーの表面に取付けた場合、網内系による取り込みをそのデンドリマーが回避できるかどうかは、デンドリマー表面に取付けられたPEG基のサイズが決定しうることも観察した。したがって、何らかの手段でサイズを増やすことが、必ずしもそのデンドリマーの血漿中寿命を延ばす結果にならないことは、明らかである。大きいデンドリマーは肝臓および脾臓に蓄積することがわかった。しかしこれは、長期間にわたって起こり、蓄積した量は投与量の10%未満だった。
【0034】
さらにもう一つの好ましい実施形態において、PEGまたはポリエチルオキサゾリン末端基は、デンドリマー上の末端基の約25%〜75%、より好ましくは約25%〜50%を構成しうる。個々のPEGまたはポリエチルオキサゾリン基の相対サイズを増やすことで、必要な血漿中寿命を維持し、肝取り込みを回避することができる。異なる医薬活性剤に適合するように、PEGまたはポリエチルオキサゾリン基のパーセンテージおよび/またはPEGまたはポリエチルオキサゾリン基のサイズを修飾し、適応させることができる。
【0035】
好ましい実施形態において、PEG基は比較的単分散であって、200〜10,000ダルトンの分子量範囲から選択され、より好ましくは、PEG基は500〜5,000ダルトンの分子量範囲から選択される。
【0036】
PEG化は、化合物の溶解性を改善することもでき、それゆえに、デンドリマーの表面にコンジュゲートされた本来ならば不溶性である薬物の溶解性を助長することができる。
【0037】
したがって本発明は、高い毒性もしくは低い溶解性またはその両方を持つ薬物を工作して、長期薬物濃度が治療的ではあるが毒性ではない血漿中レベルに維持されるように当該薬物を制御放出させるであろうビヒクルが得られるようにする手段を提供する。
【0038】
二つの異なる末端基を保持するデンドリマーは、異なるトポロジー異性体として製造することができる(この場合、トポロジーは、表面層およびサブ表面層へのその接続という観点から見た、ある末端基ともう一つの末端基との関係を表す)。二つ以上の異なる末端基を保持するデンドリマーはAU2005905908に開示されており、その開示は全て参照により本明細書に組み入れられる。各トポロジー異性体とある複雑系との相互作用の仕方は異なりうる。したがって、異なる応用のために、異なる末端基の表面分布を制御できることは、有利になりうる。
【0039】
デンドリティック高分子試料において同じトポロジーを持つ分子を濃縮できることは、有機物質において特定の立体異性体を濃縮することが、とりわけ生物学的応用にとって、望ましいことが示されているのと同じように望ましいだろう。したがって、高分子中のあるトポロジー異性体は、ある与えられた応用においては、別のトポロジー異性体よりも有効でありうる。
【0040】
二つ以上の異なる末端基を持つデンドリマーを製造するための先行技術の方法では、ランダム表面官能化法を使った合成が行われる。
【0041】
第1の先行技術アプローチでは、高分子の表面上にある反応性末端アミン部分(表面アミン)の半分だけをキャッピングする試みとして、準化学量論量の第1活性末端基を使用する。次に、残りの表面アミンを反応させることができ、この第2の反応では、反応を完了させるために、過剰量の第2活性末端基を使用することができる。このアプローチでは、反応の第1段階から生じるさまざまな末端基化学量論を持つ生成物の統計的分布が起こる上、二つの異なる末端基のトポロジーはほとんどまたは全く制御されない。
【0042】
また、第2の先行技術アプローチでは、両方の末端基を反応性表面アミン部分と同時に反応させることができる。そのようなアプローチでは、各末端基の異なる反応性を考慮して各末端基の化学量論を調節することが可能であるだろうが、脱保護された窒素基との反応には二タイプ以上の世代構築単位または二つ以上の末端基を利用することができるので、分子間変動は依然として生じることになり、したがって、各反応の蓋然的結果は統計的分布によって記述することしかできず、ここでも、反応のトポロジー結果は制御されない。
【0043】
先行技術のランダム表面官能化と比較して、正確に指定された末端基を持つデンドリティック部分の存在分率が、ランダムに表面官能化された物質におけるそれらの存在分率よりも、少なくとも2倍(2倍の単分散度)、好ましくは4倍(4倍の単分散度)高い場合、その高分子は「濃縮されている」とみなされる。末端基について例示した濃縮の概念は、AU2005905908(その内容は全て参照により本明細書に組み入れられる)に詳述されている表面カプレット、カルテットおよびオクテットなどにも適用することができる。高分子は、特定の末端基化学量論および/またはトポロジーについて濃縮することができる。
【0044】
末端基化学量論の濃縮が最大レベルに達すると、各高分子は同じ組成(数およびタイプ)の末端基を持つことになる。濃縮レベルがそれほどでもない場合、例えば20%濃縮されている場合、これは高分子の20%が同じ組成(数およびタイプ)の末端基を持つことを意味すると解釈される。
【0045】
もう一つの選択肢として、この濃縮は、組成を、ランダムに官能化された高分子組成と比較することによって指定することもできる。例えば、ランダム法によって高分子の5%に特定の表面組成が与えられるとすると、濃縮は、この5%レベルを超える特定の末端基組成(数およびタイプ)を持つ高分子の増加を構成することになるだろう。したがって、2倍濃縮とは、その特定末端基組成を高分子の10%が示したことを意味するだろう。
【0046】
最も簡単なタイプのトポロジー濃縮は、カプレットレベルでの濃縮である。デンドリマー組成は、末端基のレベルでは完全に濃縮されていても、カプレットのレベルでは完全には濃縮されていない場合がある。これは、同じ末端基をいくつかの形でカプレットにグループ分けしうるからである。例えば、
図9.1〜9.5のいずれにおいても、デンドリマーは16個の末端A基および16個の末端B基を含有している。しかし、
図9.1〜9.4では8個の(AA)カプレットおよび8個の(BB)カプレットが存在するのに対して、
図9.5では16個の(AB)カプレットが存在する。より高次のトポロジー濃縮は、カルテット、オクテットおよび16テットのレベルでの濃縮であり、これはAU2005905908に詳述されている。
【0047】
もう一つの態様では、表面層および少なくとも一つのサブ表面層を持つ、少なくとも一つのリジンまたはリジン類似体デンドリティックモチーフを含む高分子であって、
・医薬活性剤、その誘導体またはその前駆体の残基である第1末端基、および
・医薬活性剤および/または高分子の薬物動態を修飾するために選択される第2末端基
を含む少なくとも二つの末端基を含む高分子(この場合、末端基化学量論とは、末端基の数およびタイプを指す)が提供される。
【0048】
本発明のこの態様のさらにもう一つの実施形態において、高分子は、さらに、制御されたトポロジーも示す(この場合、トポロジーは、高分子の表面層またはサブ表面層へのその接続という観点から見た、ある末端基ともう一つの末端基との関係を表す)。
【0049】
好ましい実施形態において、第2末端基は、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリエチルオキサゾリン(例えばPEOX)モチーフを含みうる。
【0050】
さらにもう一つの実施形態において、第2末端基は、医薬活性剤の血漿中半減期を修飾するために選択される。好ましい実施形態において、第2末端基は、医薬活性剤の半減期が延びるように選択される。
【0051】
さらにもう一つの実施形態において、第2末端基は、一つ以上の細胞タイプまたは組織タイプへの医薬活性剤のターゲティングおよび/または取り込みが容易になるように選択される。
【0052】
本発明のもう一つの態様では、制御されたキャッピング基化学量論および式:
コア[繰り返し単位]
m[表面構築単位]
n[キャッピング基1]
p[キャッピング基2]
q
[式中、
コアは、リジン、もしくはその誘導体、ジアミン化合物、トリアミン化合物またはテトラアミン化合物からなる群より選択され;
繰り返し単位は、アミドアミン、リジンまたはリジン類似体からなる群より選択され;
表面構築単位は、構築単位のものと同じであっても異なってもよく、アミドアミン、リジンまたはリジン類似体から選択され;
キャッピング基1は医薬活性剤、その誘導体、その前駆体またはその残基であり;
キャッピング基2は医薬活性剤の薬物動態を修飾するために選択され;
mはデンドリマーの1または複数のサブ表面層の繰り返し単位の和を表し、1〜32の整数であり;
nはデンドリマーの1または複数の表面層の表面構築単位の数を表し、2〜32の整数であり;
pはキャッピング基1基の数を表し、1〜64の整数であり;
qはキャッピング基2基の数を表し、1〜64の整数である]
を持つデンドリマー(この場合、キャッピング基化学量論とは、キャッピング基の数およびタイプを指す)が提供される。
【0053】
デンドリマーポリマーのコアは、任意の適切な化合物から選択することができる。好ましくは、コアは、リジン、もしくはその誘導体、ジアミン化合物、トリアミン化合物、またはテトラアミン化合物から選択される。最も好ましくは、コアは、ベンズヒドリルアミド-リジン(BHALys)、または
【化1】
[式中、a、b、およびcは、それぞれ、0〜5(より好ましくは1〜3)の整数である]
から選択される化合物である。
【0054】
本発明のこの実施形態による繰り返し単位は、好ましくは、
【化2】
[式中、aは0または1(好ましくは1)である]
の一つ以上から選択することができる。
【0055】
本発明の好ましい一態様では、デンドリマーがリジンコアまたはリジン類似体コアを持つ。リジンデンドリティックコアは、以下の式:
【化3】
で表されるBHALys、DAH、EDAおよびTETAからなる群より選択することができる。
【0056】
デンドリマーは、PAMAMポリマー、例えばPAMAM
32、繰り返し単位が[Lys]
Qまたは[Su(NPN)
2]
Qであるリジンまたはリジン類似体ポリマー[式中、Qは、2価コアでは2、6、14、30または32の整数であり、3価コアでは3、9、21または45の整数である]であることができる。
【0057】
本発明のデンドリマーは必要な数の世代にわたって拡がりうる。好ましくはデンドリマーは1〜5世代、より好ましくは1〜3世代にわたって拡がる。
【0058】
本発明の高分子(特にデンドリマー)の医薬活性剤は、水不溶性医薬、水溶性医薬、親油性医薬、またはその混合物を含みうる。
【0059】
医薬活性剤の例として、表1に示す群から選択される一つ以上を挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。
【表1】
【0060】
本発明は、極めて少量でも著しく活性であり、その持続的長期投与が、特に標準的用量に伴う毒性問題を克服するために求められている医薬には、とりわけ適している。限定するわけではないが、その例には、代謝拮抗物質メトトレキサート、抗有糸分裂薬タキソール、肥満治療薬ゼニカル(zenical)、免疫抑制薬シクロスポリン、抗炎症治療薬インドメタシンなどがある。
【0061】
ある実施形態において、本発明の高分子は、末端基として、二つ以上の異なる医薬活性剤、その誘導体、その前駆体、またはその残基を含む。
【0062】
さらにもう一つの態様において、本発明は、制御された末端基化学量論を持ち、かつ、
・異なる医薬活性剤、その誘導体またはその前駆体の残基である少なくとも二つの末端基、および
・医薬活性剤および/またはデンドリマーの薬物動態を修飾するために選択されるさらにもう一つの末端基
を含むデンドリマー(この場合、末端基化学量論とは、末端基の数およびタイプを指す)を提供する。
【0063】
本発明のこの態様によるデンドリマーは併用療法に応用することができる。
【0064】
医薬活性剤は、表1に例示したカテゴリーのうち、任意の二つ以上のカテゴリーの組み合わせであることができる。例示的な組み合わせとして、化学療法医薬;抗炎症医薬および抗関節炎医薬;肥満治療薬および糖尿病治療薬;成長ホルモンおよび成長促進薬;筋弛緩薬および抗炎症薬;呼吸器医薬および気管支拡張薬または抗微生物薬;化学療法薬およびビタミンなどの組み合わせが挙げられるが、これらに限るわけではない。より具体的な組み合わせは実施例に記載する。
【0065】
本発明の高分子、特にデンドリマーは、固形腫瘍および炎症部位への薬物の受動ターゲティングを容易にするのに、とりわけ役立ちうる。このターゲティングが可能になるのは、腫瘍および炎症に関連する脈管構造が高分子に対して増加した透過性を持つこと、およびリンパ排液が制限されることが理由である。
【0066】
本発明の高分子は、デンドリマー上に存在するターゲティング部分を使って、特定の細胞タイプまたは組織タイプにターゲティングすることもできる。
【0067】
したがって、本発明のさらにもう一つの態様では、制御された末端基化学量論を持ち、かつ、
・医薬活性剤、その誘導体またはその前駆体の残基である第1末端基、および
・一つ以上の特異的細胞タイプまたは組織タイプに医薬活性剤および/または高分子をターゲティングするためのターゲティング部分である第2末端基
を含む、デンドリマー(この場合、末端基化学量論とは、末端基の数およびタイプを指す)が提供される。
【0068】
適切なターゲティング部分の例には、レクチン、抗体および抗体の機能的フラグメントなどがある。ターゲティング部分として、細胞表面受容体のリガンドを挙げることもできる。
【0069】
いくつかの異なる細胞表面受容体が、高分子の結合および/または取り込みのためのターゲットとして役立つ。特に、本発明において有用な受容体およびその関連リガンドには、葉酸受容体、アドレナリン作動性受容体、成長ホルモン受容体、黄体形成ホルモン受容体、エストロゲン受容体、上皮成長因子受容体、線維芽細胞成長因子受容体(例えばFGR2)、IL-2受容体、CFTRおよび血管上皮成長因子受容体などがあるが、これらに限るわけではない。
【0070】
本発明のさらにもう一つの態様では、制御された末端基化学量論を持つ高分子であって、表面層、少なくとも一つのサブ表面層、ならびに
・医薬活性剤、その誘導体またはその前駆体の残基である第1末端基、および
・細胞受容体リガンドとして機能する能力を持つ第2末端基
を含む少なくとも二つの末端基を含む高分子(この場合、末端基化学量論とは、末端基の数およびタイプを指す)が提供される。
【0071】
本発明のさらにもう一つの態様では、制御された末端基化学量論を持つ高分子であって、表面層、少なくとも一つのサブ表面層、ならびに
・医薬活性剤、その誘導体またはその前駆体の残基である第1末端基、および
・細胞受容体として機能する能力を持つ第2末端基
を含む少なくとも二つの末端基を含む高分子(この場合、末端基化学量論とは、末端基の数およびタイプを指す)が提供される。
【0072】
葉酸は、ヌクレオチド塩基の生合成に不可欠なビタミンであり、それゆえ、増殖細胞では多量に要求される。がん細胞では、この増加した葉酸要求量が、しばしば、細胞膜を横切る葉酸の輸送を担う葉酸受容体の過剰発現に反映される。これに対し、正常細胞への葉酸の取り込みは、葉酸受容体よりもむしろ還元葉酸輸送体によって促進される。葉酸受容体は、卵巣、脳、腎臓、乳房、骨髄性細胞および肺の悪性腫瘍を含む多くのヒトがんでアップレギュレートされ、細胞表面上の葉酸受容体の密度は、がんが発達するにつれて増加するようである。
【0073】
腫瘍細胞、特に進行腫瘍細胞に対する葉酸受容体の相対的特異性は、葉酸受容体リガンドである葉酸が、化学療法薬を腫瘍にターゲティングするための有用な候補になりうることを意味する。葉酸受容体と葉酸受容体リガンド-化学療法薬コンジュゲートとの相互作用の特異性は、一定の非形質転換上皮細胞と悪性形質転換上皮細胞との間に見られる葉酸受容体の細胞表面発現パターンの相違によって、さらに強化される。非形質転換細胞の場合、葉酸受容体は、体腔に面していて血中に存在する試薬類には接近しにくい細胞の頂端膜上に、優先的に発現される。しかし形質転換が起こると、細胞はその極性を失い、受容体は葉酸受容体にターゲティングされた循環系内の薬物に、接近できるようになりうる。したがって葉酸または葉酸誘導体は、本発明の高分子の有用なターゲティング部分になりうる。
【0074】
本発明のさらにもう一つの態様では、制御された末端基化学量論を持つ高分子であって、
・医薬活性剤、その誘導体またはその前駆体の残基である第1末端基、および
・葉酸または葉酸類似体の残基である第2末端基
を含む二つ以上の異なる末端基を有する高分子(この場合、末端基化学量論とは、末端基の数およびタイプを指す)が提供される。
【0075】
本発明のこの態様の好ましい実施形態では、医薬活性剤が抗腫瘍医薬剤である。細胞毒性剤、サイトカイン、抗血管新生剤、抗有糸分裂剤などを使用するか、またはそれらの任意の組み合わせを使用することができる。
【0076】
好ましい実施形態では、医薬活性剤が、メトトレキサート、タキソール、シスプラチン、カルボプラチンおよびドキソルビシンの一つ以上から選択される。
【0077】
本発明のデンドリマーの合成には、例えば世代構築単位の代りに使用することによって、または世代構築単位への末端基の取付けを仲介するために、リンカー部分を組み入れることができる。
【0078】
したがって本発明のさらなる態様では、制御された末端基化学量論を持つ高分子(好ましくはデンドリマー)であって、
・一つ以上のリンカー部分、
・医薬活性剤、その誘導体またはその前駆体の残基である第1末端基、および
・医薬活性剤および/または高分子の薬物動態を修飾するために選択される第2末端基
を含む二つ以上の異なる末端基を有し、第1および/または第2末端基がリンカー部分によって高分子の骨組みに取付けられる高分子(この場合、末端基化学量論とは、末端基の数およびタイプを指す)が提供される。
【0079】
さらにもう一つの実施形態では、第2末端基が、一つ以上の細胞タイプまたは組織タイプへの医薬活性剤および/または高分子のターゲティングを容易にする部分ならびに一つ以上の細胞タイプまたは組織タイプへの医薬活性剤および/または高分子の取り込みを容易にする部分から選択され、一つ以上のリンカー部分がPEGを含む。
【0080】
リンカーは、表面に取付けられる基の要求に応じて、切断可能であっても、非切断可能であってもよい。切断可能なリンカーは、酵素的に切断されるように設計することができ、例えばそれらの酵素を発現させる組織にターゲティングされるデンドリマーに使用することができる。あるいは、そこに取付けられた化合物が低酸素組織などの酸性条件下で放出されるように、酸不安定なリンカーが好ましい場合もある。
【0081】
さまざまなリンカーの概要
リンカー部分は以下の一つ以上から選択することができる。
【表2】
【0082】
アミドリンカー(19〜21)
遊離の薬物がコンジュゲートから放出されるかどうかの決定には、アミド結合の性質が重要である。例えば、薬物(すなわちドキソルビシン)をアミド結合を介して担体にコンジュゲートすると、加水分解に対して安定であり、インビトロでは抗がん作用を一切発揮しないコンジュゲートが生成する。また、アミド結合を介fして担体に直接結合された薬物は、遊離の薬物として容易に切断されることはなく、むしろ担体自体が分解性である場合に薬物-アミノ酸として切断される。直接アミドリンカーを介して結合された担体からの遊離薬物の放出は、その薬物自体がペプチド様分子であり、薬物と担体の間の結合が酵素的に切断可能であるという稀な情況でしか達成することはできないだろう。
【0083】
ヒドラゾン、オキシムおよびイミンリンカー(21〜25)
ヒドラゾン、オキシムおよびイミン結合は、薬物を担体から切断させるのに、酵素の存在を必要としない。これらは、腫瘍血管外腔またはリソソーム内などといった低pH環境では、C=N結合で加水分解的に切断されうる。よく使用されるヒドラゾン、オキシムおよびイミンリンカーは、それぞれ、リンカーのヒドラジン、アルコキシアミンまたはアミン部分と、医薬活性部分のカルボニル(ケトンまたはアルデヒド)との反応によって生じる。この連結は、C=N結合部分を取り囲むアルキル基の数を修飾することによって、または電子吸引部分(酸不安定性を増加させるため)もしくは電子供与部分(酸不安定性を減少させるため)で置換することによって、加水分解の速度が遅くなるように修飾することもできる。
【0084】
エステルリンカー(19,26)
酸不安定性でありかつ代謝可能なエステルリンカーを作成することができる。オルトエステルは、アニオン性膜担体を結合する脂質にPEGをコンジュゲートするために使用されてきた。酸性条件(pH4〜6)におけるこのコンジュゲートの安定性は、エステルまたはオルトエステルリンカーの構造に依存する。一般に、α-メトキシ-ω-{N-(2-オクタデシルオキシ-[1,3]ジオキソラン-4-イル)メチルアミド}-ポリエチレングリコール
110はpH4でもpH5でも良好な安定性を示し、α-メトキシ-ω-{N-(2-コレステリルオキシ-[1,3]ジオキソラン-4-イル)メチルアミド}-ポリエチレングリコール
110はpH5では非常に安定であるが、pH4ではわずかに不安定であり、α-メトキシ-ω-{N-(2-メチル-s-オクタデシルオキシ-[1,3]ジオキサン-5-イル)-アミド}-ポリエチレングリコール
110およびα-メトキシ-ω-{N-2-(3-ヒドロキシプロピル-コレステリルカルバメート)-2-メチル-[1,3]ジオキサン-5-イル-アミド}-ポリエチレングリコール
110は安定でない。小分子への単純なエステルコンジュゲーションに関して、ジエステル官能性は、ジスルフィドより安定であるがアミド結合よりは不安定なモノエステルと比較して、より多くの代謝切断部位を与える。
【0085】
ペプチドリンカー(27〜33)
ペプチドリンカーは、切断速度および切断酵素を制御するために多くの異なるアミノ酸の組み合わせを使用できるので、全ての切断可能リンカーのなかで、その用途が格段に最も広い。しかしこれらのリンカーには、薬物と担体のコンジュゲートとしてそれらを使用するにあたって、1)それらは一般に、体中の非特異的ペプチダーゼによって切断可能であり、それゆえに非腫瘍分布部位で、非特異的な薬物毒性をもたらしうること、および2)アミノ酸が薬物分子に結合した状態で残るようなリンカー内の部位で、切断が起こりうることという、二つの問題がある。これは薬物分子の化学療法作用を妨害しうる。あるいは、結合しているアミノ酸は薬物の薬理作用を変化させないが、その薬物動態に影響を及ぼすかもしれない。しかし、これらの切断作用は、薬物分子に直接結合されるペプチドリンカー中のアミノ酸(例えばプロリン)を適切に選択することによって、制御することができる。
【0086】
一般に、カテプシンB切断が可能なリンカーは、薬物コンジュゲートのエンドサイトーシス後に、リソソーム系によって切断されるように設計されてきた。カテプシンはリソソーム内に位置し、細胞質ゾル中に遊離していることはないからである。エンドサイトーシスは一般に、細胞膜への担体(これは通常、がん特異的細胞表面受容体に対する抗体またはがん特異的細胞表面受容体のリガンドである)の結合に続いて開始される。
【0087】
非特異的プロテアーゼ(すなわち、特定のペプチド配列に対して特異的でないプロテアーゼ)は、PEG化デンドリマーが腫瘍組織で十分な管外遊出と蓄積を起こした後に、そのPEG化デンドリマーから薬物を切断しうる。
【0088】
ペプチド切断の速度については以下の指針が当てはまる(この場合、a>bは、aの切断速度がbの切断速度よりも大きいことを示す)。活性医薬とデンドリマー末端窒素の間にリンカーとして使用されるペプチド配列の場合、末端CG>末端CGなし>末端G=末端GFG>末端GGGおよび末端GGGF=末端GPG。注:CG結合はGSHによって還元される。GGG結合は一般に他のペプチド結合と比較して極めて安定である。ジペプチドの切断は一般に特定のプロテアーゼに特異的であり、腫瘍細胞内に含まれるさまざまなプロテアーゼの発現に基づいて制御することができる。
【0089】
グルタルアルデヒド(34,35)
グルタルアルデヒドは一般に、通常のリンカーとしては使用されないが、特にゲル製剤において安定化剤として使用されるか、または望ましい吸着表面に薬物を共有結合的に取付けるために使用される。これは非代謝可能スペーサーとしても使用され、薬物分子と大きな担体の間に、架橋反応によって間隙を作り出す。
【0090】
PEG-ペプチド(2,36)
PEG-ペプチドは、PEG部分によって担体に生体内安定性と質量とが追加される点以外は、通常のペプチドと同じように使用される。典型的には、薬物を抗体担体にコンジュゲートするために使用され、Abと薬物の間の距離を増加させると同時に、酵素切断部位を露出させ、コンジュゲートの免疫原性を低下させ、血中循環時間を増加させ、複合体の溶解性を増加させるという利点を持つ。アドリアマイシンおよびデュオカルマイシン誘導体に関して、コンジュゲートの内在化および活性薬物の酵素的放出(これは必ずしも遊離の薬物として放出されるわけではない)後に、抗増殖作用が観察されている。
【0091】
ジスルフィドリンカー(1,37,38)
ジスルフィドリンカーは、現在使用されているリンカーの中で最も不安定であり、インビトロで迅速な還元的切断を受ける。しかしその生体内安定性は、一般に、そのインビトロ安定性よりも高い。これらは、含硫アミノ酸間のジスルフィド結合によって形成されるか、非ペプチドベースのジスルフィド結合に形成されうる。これらは、体内の他の求核チオールとも高い反応性を示すので、迅速な血漿クリアランスを示す。
【0092】
リンカー切断可能性の一般的概要
循環では、リンカー切断可能性の順序は以下のとおりである:
ジスルフィド>長鎖ペプチド≧エステル>ヒドラゾン≧テトラペプチド(GGGF)=トリペプチド(GFG>GGG=GPG)≒または>ジペプチド(AV、AP、GP、FL、V-Cit)>グルタルアルデヒド=アミド。
【0093】
リンカー推奨
さまざまなリンカーの安定性は、それらがコンジュゲートされる基(すなわちそのリンカーへの酵素の接近可能性)、活性が要求される部位におけるコンジュゲートの挙動(すなわち細胞取り込みまたは細胞外蓄積)ならびにコンジュゲートの性質(すなわちエステル対アミド)に基づく。現在の系では、ジスルフィドコンジュゲートの生体内挙動は、予測することが比較的難しいと予想される。長鎖ペプチドは、より容易にプロテアーゼの接近を受けて、迅速に切断されるものの、その切断は迅速すぎる場合があり、また非特異的部位で起こって、生物学的に活性でないかもしれない医薬活性ペプチド/アミノ酸種の放出が起こることもある。
【0094】
C=Nに基づくリンカー(ヒドラゾン、オキシムまたはイミン)、エステルまたはペプチドコンジュゲートの切断は、少なくとも数日間にわたって起こるため、コンジュゲートが腫瘍組織に蓄積することが可能になる。それぞれに利点はあるが、エステルまたはヒドラゾンリンカーが好ましいかもしれない。医薬活性物質をデンドリマーに連結するエステル結合は、迅速に切断される結合をもたらし、それはターゲット部位に特異的ではないかもしれないが、切断は遊離の医薬活性物質の放出をもたらす。ヒドラゾン結合は、体循環ではエステルより安定であり、C=N結合での加水分解により、腫瘍部位において、より高い特異性で切断されるコンジュゲートをもたらす。しかし、ヒドラゾン形成を可能にするには、カルボニル部分またはヒドラジン部分の組み込みによって、医薬活性分子を修飾する必要があるかもしれない。
【0095】
好ましい実施形態では、リンカー部分が、1個以上の炭素またはヘテロ原子(好ましくは炭化水素バックボーン)で接続された二つの反応性官能基FおよびYを含みうる。官能基Fは、デンドリマーの表面上にあるような反応性アミン部分と反応するように活性化することができる。典型的には、官能基Fはカルボキシレート基またはその残基である。他方の官能基Yは、保護基を含むアミンであるか、またはデンドリティックモチーフの表面に取付けられる望ましい有機基の反応性基に対して相補的な特異的反応性を持つように選択される。Yの典型例には、アミン、ヒドロキシル、チオール、アルケニルまたはアルキニル、ニトリル、ハライド、カルボキシレートまたはアジド基などがある。
【0096】
末端基をデンドリマーの表面アミン基に接続するためにリンカー部分を使用する場合、リンカーと有機基の間の反応は、リンカー部分をデンドリティックモチーフの表面アミンと反応させる前に行ってもよいし、リンカー部分をデンドリティックモチーフの表面アミンと反応させた後に行ってもよい。デンドリティックモチーフに一つ以上のリンカー部分を導入するために使用される反応は、デンドリマーの脱保護された表面アミンの全てがリンカー部分と完全に反応することが保証されるように行われる。典型的には、これは、選択したリンカー部分を過剰に使用することによって行われる。
【0097】
本発明では、上述のリンカーに加えて、光切断可能なリンカーも使用することができる。例えば、ヘテロ二官能性光切断可能リンカーを使用することができる。ヘテロ二官能性光切断可能リンカーは、水溶性であるか、有機溶媒可溶性であることができる。これらは、アミンまたはアルコールと反応しうる活性化エステルおよびチオール基と反応しうるエポキシドを含有する。エステル基とエポキシ基の間には、3,4-ジメトキシ-6-ニトロフェニル光異性化基があり、これは、近紫外光(365nm)に曝露されると、アミンまたはアルコールを完全な形で放出する。したがって、そのようなリンカーを使ってデンドリマーに連結された医薬活性成分は、ターゲット領域を近紫外光に曝露することにより、生物学的に活性または活性化可能な形で放出されうる。
【0098】
例えば、タキソールのアルコール基を、有機溶媒可溶性リンカーの活性化エステルと反応させることができる。次に、この生成物を、一部がチオール化されているデンドリマー表面と反応させる。シスプラチンの場合、薬物のアミノ基を水溶性型のリンカーと反応させることができる。アミノ基が必要な活性を持たない場合は、シスプラチンの1級アミノ含有活性類似体、例えばPt(II)スルファジアジンジクロリドと反応させることができる。このようにコンジュゲート化されると、薬物は不活性であり、正常細胞を傷つけないだろう。コンジュゲートが腫瘍細胞内に局在化した時に、それを適当な近UV波長のレーザー光に曝露して、活性薬を細胞中に放出させる。
【0099】
本発明のさらにもう一つの態様では、制御された末端基化学量論を持つ高分子であって、表面層、少なくとも一つのサブ表面層、ならびに
・医薬活性剤、その誘導体またはその前駆体の残基である第1末端基、および
・医薬活性剤および/または高分子の薬物動態を修飾するために選択される第2末端基
を含む二つ以上の異なる末端基を有する高分子と、
そのための薬学的に許容できる担体、希釈剤または賦形剤
とを含む医薬組成物が提供される。
【0100】
高分子成分はデンドリマー、好ましくはリジンデンドリマーであることができる。
【0101】
医薬活性剤は、上述した医薬活性剤のカテゴリーの一つ以上から選択することができる。好ましくは、医薬活性剤は、抗有糸分裂剤または代謝拮抗剤を含むがん治療薬およびがん関連医薬、肥満治療剤、抗炎症剤、または免疫抑制剤である。
【0102】
第2末端基は、医薬活性物質の血漿中半減期が延びるように選択することができる。さらにもう一つの実施形態では、一つ以上の特異的細胞タイプまたは組織タイプへの医薬活性剤のターゲティングおよび/または取り込みが容易になるように、第2末端基が選択される。
【0103】
第2末端基は、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリエチルオキサゾリン(例えばPEOX)モチーフを含みうる。
【0104】
本発明のさらにもう一つの態様では、制御された末端基化学量論を持つ高分子であって、表面層、少なくとも一つのサブ表面層、ならびに
・医薬活性剤、その誘導体またはその前駆体の残基である第1末端基、および
・葉酸または葉酸類似体の残基である第2末端基
を含む二つ以上の異なる末端基を有する高分子と、
そのための薬学的に許容できる担体、希釈剤または賦形剤
とを含む医薬組成物(この場合、末端基化学量論とは、末端基の数およびタイプを指す)が提供される。
【0105】
本発明のこの態様の好ましい実施形態では、医薬活性剤が抗腫瘍医薬剤である。細胞毒性剤、サイトカイン、抗血管新生剤、抗有糸分裂剤などを使用するか、またはそれらの任意の組み合わせを使用することができる。
【0106】
抗腫瘍医薬剤は、以下の一つ以上から選択することができる:リツキシマブ、オキサリプラチン、ドセタキセル、ゲムシタビン、トラスツズマブ、イリノテカン、パクリタキセル、ベバシズマブ、カルボプラチン、セツキシマブ、ドキソルビシン、ペメトレキセド、エピルビシン、ボルテゾミブ、トポテカン、アザシチジン、ビノレルビン、ミトキサントロン、フルダラビン、ドキソルビシン、アレムツズマブ、カルムスチン、イホスファミド、イダルビシン、マイトマイシン、フルオロウラシル、シスプラチン、メトトレキサート、メルファラン、ヒ素、デニロイキン・ジフティトクス(denileukin diftitox)、シタラビン、レボホリナートカルシウム、シクロホスファミド、エトポシド、ヤドリギ(viscum album)、メスナ、ゲムツズマブ、オゾガミシン、ブスルファン、ペントスタチン、クラドリビン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ベンダムスチン、ダカルバジン、ラルチトレキセド、ビンクリスチン、ホテムスチン、リン酸エトポシド、ポルフィマーナトリウムおよびビンブラスチン。
【0107】
好ましい実施形態では、医薬活性剤が、メトトレキサート、タキソール、シスプラチン、カルボプラチンおよびドキソルビシンの一つ以上から選択される。
【0108】
薬学的に許容できる担体または賦形剤は、その活性剤のために選択した送達経路に応じて、任意の既知担体または既知賦形剤から選択することができる。
【0109】
医薬組成物は、経口的送達、注射送達、直腸送達、非経口的送達、皮下送達、静脈内送達、筋肉内送達または他の送達用に製剤化することができる。医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、カプレット剤、注射用アンプルバイアル、または調製済(ready-to-use)溶液剤、凍結乾燥物質、坐剤、ボーラスまたはインプラントとして製剤化することができる。
【0110】
そのような組成物の製剤は当業者にはよく知られている。適切な薬学的に許容できる担体および/または賦形剤として、ありとあらゆる通常の溶媒、分散媒、媒質、充填剤、固形担体、水溶液、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張化および吸収遅延剤などが挙げられる。医薬活性物質のためのそのような媒質および薬剤の使用は当技術分野ではよく知られており、例えば「Remington's Pharmaceutical Sciences」(第18版、Mack Publishing Company、米国ベンシルバニア州)などに記載されている。通常の媒質または薬剤が本明細書に記載するデンドリマーポリマーの末端基と適合しない場合を除き、本発明の医薬組成物にはそれらを使用することが考えられる。補助的活性成分も組成物に組み入れることができる。
【0111】
投与を容易にし、投薬量を均一にするために、組成物を投薬単位形で製剤化することは、とりわけ有益である。本明細書にいう「単位投薬形」とは、処置されるヒト対象への単位投薬量として適している物理的に不連続な単位であって、各単位が、必要な医薬担体および/または医薬希釈剤と一緒になって所望の治療作用をもたらすように計算された所定量の活性成分を含有しているものを指す。本発明の新規単位投薬形に関する仕様は、(a)その活性成分のユニークな特徴および達成されるべき特定の治療作用、ならびに(b)特定の処置のためにそのような活性化合物を配合する技術に固有の制限事項によって決定され、それらに直接依存する。
【0112】
本発明のさらにもう一つの態様では、ヒトもしくは非ヒト動物患者の予防的処置もしくは治療的処置における、またはヒトもしくは非ヒト動物患者を処置するための医薬品の製造における、有効量の上記高分子の使用が提供される。
【0113】
本発明のさらにもう一つの態様では、哺乳動物(ヒトを含む)患者における疾患指標または生理的欠陥を処置するための方法であって、そのような処置を必要としている患者に、予防有効量または治療有効量の上記医薬組成物を投与することを含む方法が提供される。
【0114】
さまざまな投与経路を利用することができる。選択される特定の様式は、もちろん、処置される特定の状態および治療効力を得るために必要な投薬量に依存するだろう。本発明の方法は、一般的に言って、医学的に許容できる任意の投与様式(すなわち、臨床的に許容できない有害作用を引き起こさずに治療レベルの本発明活性成分をもたらす任意の様式)を使って実施することができる。そのような投与様式には、経口経路、直腸経路、局所外用経路、鼻腔経路、吸入経路、経皮経路または非経口(例えば皮下、筋肉内および静脈内)経路、眼内および硝子体内(目の硝子体への)経路などがある。経口投与用の製剤としては、カプセル剤、錠剤、口中剤などの不連続な単位が挙げられる。他の経路には、髄液への直接的な髄腔内投与、当業者に周知のさまざまなカテーテルおよびバルーン血管形成術装置による直接導入、ならびにターゲット領域への実質内注射などがある。
【0115】
組成物は単位剤形で提供すると好都合であり、薬学分野でよく知られる任意の方法で製造することができる。そのような方法には、活性化合物を、一つ以上の補助成分を構成する担体と混合するステップが含まれる。一般に組成物は、活性化合物を液体担体、微細固形担体、またはその両方と、均一かつ十分に混合した後、必要ならば、その生成物を付形することによって製造される。
【0116】
経口投与に適した本発明の組成物は、それぞれが所定量の高分子を含有するカプセル剤、分包、錠剤または口中剤などの不連続な単位として提示するか、リポソームに入れて、または水性もしくは非水性液中の懸濁剤、例えばシロップ剤、エリキシル剤もしくはエマルションなどとして提示することができる。
【0117】
非経口投与に適した組成物は、活性成分の滅菌水性調製物(好ましくは受容者の血液と等張であるもの)を含むと好都合である。この水性調製物は、既知の方法に従い、適切な分散または湿潤剤および懸濁化剤を使って製剤化することができる。滅菌注射用調製物は、例えばポリエチレングリコール中の溶液などといった、無毒性で非経口的に許容できる希釈剤または溶媒中の滅菌注射用溶液または懸濁液であることもできる。使用することができる許容できる賦形剤および溶媒は、水、および等張食塩溶液が含まれる。また、滅菌固定油も溶媒または分散媒として便利に使用される。この目的には、合成モノ-またはジ-グリセリドを含む任意の無刺激性固定油を使用することができる。また、オレイン酸などの脂肪酸も、注射剤の製造に役立つ。
【0118】
本発明の高分子は、鼻内投与または吸入によってデンドリマーポリマーを投与するために設計された系として、例えば活性成分を含有する微細エアロゾルスプレーなどとして、送達用に製剤化することもできる。
【0119】
他の送達系として徐放送達系を挙げることができる。好ましい徐放送達系は、徐放性ペレットまたは徐放性カプセル中の本発明高分子の放出に対応しうる系である。いろいろなタイプの徐放送達系を利用することができる。それらには、(a)活性成分がマトリックスに含まれている浸食系、および(b)活性成分が制御された速度でポリマーを通して浸透する拡散系などがあるが、これらに限るわけではない。また、ポンプ型ハードウェア送達系も使用することができ、その中には、植込みに適するものもある。
【0120】
本発明の高分子は予防有効量または治療有効量で投与される。予防有効量または治療有効量とは、所望の効果を少なくとも部分的に達成するのに必要な量、または処置される特定の状態の発生を遅らせ、その進行を抑制し、またはその発生もしくは進行を完全に停止させるのに必要な量を意味する。そのような量は当然、処置される特定の状態、その状態の重症度、ならびに個々の患者のパラメーター、例えば年齢、身体状態、サイズ、体重および併用処置などに依存するだろう。これらの因子は当業者にはよく知られており、定型的な実験だけで対処することができる。一般的には最大量(すなわち妥当な医学的判断による最高安全量)を使用することが好ましい。しかし医学的理由、心理学的理由または事実上任意の他の理由から、より低い用量または許容量を投与できることは、当業者には理解されるだろう。
【0121】
一般に、高分子の1日量は、約0.01mg/kg/日〜1000mg/kg/日でありうる。最初は少量(0.01〜1mg)を投与し、その後、最大約1000mg/kg/日まで用量を増やすことができる。対象における応答がそれらの用量において不十分である場合は、患者の耐性が許す範囲で、さらに高い用量(または、より限局的な異なる送達経路による、より高い有効量)を使用してもよい。化合物の全身レベルを適当なものにするために、一日あたり複数回の投与を行なうことが考えられる。
【0122】
さらにもう一つの好ましい実施形態では、薬学的に許容できる担体または賦形剤を、食塩水および緩衝媒質、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、ならびに乳酸加リンゲル液を含む滅菌水性塩溶液、懸濁液およびエマルションの一つ以上から選択することができる。静脈内ビヒクルには、水分栄養補充剤、電解質補充剤、例えばリンゲルデキストロースに基づくものなどがある。非静脈内経路による投与の場合、担体は凝固血漿(好ましくはその患者の凝固血漿)の形をとることができる。あるいは、担体は、血漿を含まない生理学的に適合する生分解性の固体または半固体、例えばゲル、懸濁液または水溶性ゼリーであることもできる。アラビアゴム、メチルセルロースおよび他のセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウムならびにトラガカント懸濁液またはゲル、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム2.5%、トラガカント1.25%およびグアーゴム0.5%は、本発明の実施にあたって担体として使用するのに適している。
【0123】
さらにもう一つの好ましい実施形態では、医薬組成物中の高分子が、薬学的に活性な少なくとも二つの異なる末端基を含みうる。
【0124】
そのような実施形態はさまざまなタイプの併用療法に利用することができる。
【0125】
さらにもう一つの好ましい実施形態では、医薬組成物が、
・制御された末端基化学量論を持つ高分子(好ましくはデンドリマー)であって、
少なくとも一つの切断可能なまたは非切断可能なリンカー部分;
医薬活性剤、その誘導体またはその前駆体の残基である第1末端基;
医薬活性剤および/または高分子の薬物動態を修飾するために選択される第2末端基
を含む少なくとも二つの末端基を含む高分子と、
・そのための薬学的に許容できる担体、希釈剤または賦形剤
とを含み、この場合、第1および/または第2末端基は、一つ以上のリンカー部分によって高分子の骨組みに取付けられる(この場合、末端基化学量論とは、末端基の数およびタイプを指す)。
【0126】
がん性腫瘍は、直径約2mmまでは迅速かつ制御不可能に成長した後、腫瘍の内部への効果的な栄養供給の欠如がさらなる細胞複製を制限するようになる(1)。血管新生が始まって腫瘍に自ら血液供給をもたらすまでは、腫瘍は長年にわたってこのサイズのままとどまりうる。これが起こりうる機序の一つは、酸素およびグルコース供給が制限されている部位(例えば腫瘍塊の内部)でアップレギュレートされる転写因子であって、血管新生に関与する遺伝子のアップレギュレーションを招く、低酸素誘導性因子-1αの活性化によるものである(2)。しかし、腫瘍内での迅速な脈管化は、血管内皮細胞間に大きな間隙を持つ血管アーキテクチャを作り出し、それが正常な脈管構造では通常は透過可能でない大きな粒子の蓄積を可能にする。また、蓄積した粒子を除去するためのリンパ排液が腫瘍塊内では生じないため、腫瘍EPR効果も存在する(1)。
【0127】
腫瘍内での変則的な代謝および血管供給は、正常細胞とは異なるpH勾配を生じさせる。腫瘍内での乳酸および炭酸の増加した蓄積は、わずかに酸性な細胞外環境(pH〜6.5)をもたらし、Na/H交換体の欠陥ゆえに、細胞内環境は中性またはわずかにアルカリ性(pH7.0〜7.4)である。この特異なpH勾配は、弱塩基である一部の化学療法薬、例えばドキソルビシンの蓄積を妨害する。酸性細胞外環境は、間質マトリックスおよび細胞間ギャップジャンクションの分解によるがん転移にも関連づけられている。
【0128】
この細胞外酸性度を利用して、酸不安定リンカーによって結合された担体分子からのpHによる抗がん薬の放出を可能にすることができる。放出は細胞外腔(pH約6.5)またはリソソームコンパートメント(pH約4〜5)で起こりうる。抗がん薬は、大半の腫瘍細胞がその受容体を過剰発現させているトランスフェリンなどの腫瘍ターゲティング基にも連結されている。腫瘍リソソーム内で過剰発現されるカテプシンBまたはDによって切断されうる他のリンカーも使用されている。
【0129】
したがって、本発明のさらにもう一つの態様では、腫瘍(悪性腫瘍を含む)の処置を必要としている哺乳動物(ヒトを含む)患者における腫瘍(悪性腫瘍を含む)を処置するための方法であって、その患者に、
・制御された末端基化学量論を持つ高分子であって、表面層、少なくとも一つのサブ表面層、ならびに
抗腫瘍医薬剤、その誘導体またはその前駆体の残基である第1末端基、
抗腫瘍医薬剤および/または高分子の薬物動態を修飾するために選択される第2末端基、を含む少なくとも二つの末端基を含む高分子と、
・そのための薬学的に許容できる担体、希釈剤または賦形剤
とを含む医薬組成物の有効量を投与することを含む方法(この場合、末端基化学量論とは、末端基の数およびタイプを指す)が提供される。
【0130】
ある実施形態では、高分子が一つ以上のリンカー部分をさらに含み、その一つ以上のリンカー部分が第1および/または第2末端基を高分子の骨組みに取付ける。
【0131】
抗腫瘍医薬剤は任意の適切なタイプであることができる。細胞毒性剤、サイトカイン、抗血管新生剤、抗有糸分裂剤などを使用するか、またはそれらの任意の組み合わせを使用することができる。
【0132】
抗腫瘍剤は以下の一つ以上から選択することができる:リツキシマブ、オキサリプラチン、ドセタキセル、ゲムシタビン、トラスツズマブ、イリノテカン、パクリタキセル、ベバシズマブ、カルボプラチン、セツキシマブ、ドキソルビシン、ペメトレキセド、エピルビシン、ボルテゾミブ、トポテカン、アザシチジン、ビノレルビン、ミトキサントロン、フルダラビン、ドキソルビシン、アレムツズマブ、カルムスチン、イホスファミド、イダルビシン、マイトマイシン、フルオロウラシル、シスプラチン、メトトレキサート、メルファラン、ヒ素、デニロイキン・ジフティトクス(denileukin diftitox)、シタラビン、レボホリナートカルシウム、シクロホスファミド、エトポシド、ヤドリギ(viscum album)、メスナ、ゲムツズマブ、オゾガミシン、ブスルファン、ペントスタチン、クラドリビン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ベンダムスチン、ダカルバジン、ラルチトレキセド、ビンクリスチン、ホテムスチン、リン酸エトポシド、ポルフィマーナトリウムおよびビンブラスチン。
【0133】
好ましい実施形態では、抗腫瘍医薬剤が、メトトレキサート、タキソール、シスプラチン、カルボプラチンおよびドキソルビシンの一つ以上から選択される。
【0134】
第2末端基は、医薬活性物質の血漿中半減期が延びるように選択することができる。第2末端基は、一つ以上の特異的細胞タイプまたは組織タイプへの抗腫瘍医薬剤のターゲティングおよび/または取り込みが容易になるように選択することができる。好ましい実施形態では、第2末端基がポリエチレングリコール(PEG基)またはポリエチルオキサゾリンを含む。
【0135】
薬学的に許容できる担体または賦形剤は、その活性物質のために選択した送達経路に応じて、任意の既知担体または既知賦形剤から選択することができる。
【0136】
本発明の高分子、特にデンドリマーは、医薬活性剤をリンパ系にターゲティングするために使用することができる。
【0137】
リンパ系は、身体の脈管領域の全体にわたって分布する特殊化した脈管、節およびリンパ組織が集合した区域の複雑なネットワークからなる。リンパ管は主として体液平衡の維持を担っているが、腸吸収および中性脂肪の輸送ならびに効果的な免疫防御機構の維持にも役割を果たしている。大半の毛細管床では、血管内皮が連続していて、途切れることのない基底膜を伴っている。したがって毛細血管は(例えば皮下または筋肉内注射によって)間質腔に注入された大分子および小粒子に対する透過性が比較的低い。対照的に、毛細リンパ管は、不完全な基底膜を伴うオーバーラップした内皮細胞の単層からなる。これは、毛細血管に見られるものよりも「開いた」細胞間ジャンクションを持つ内皮層をもたらす。細胞間ジャンクション距離の推定値は、数ミクロン(3〜5)から15〜20nm(5〜10)の範囲に及ぶ。したがって、これら大きな細胞間ジャンクションは、間質腔からリンパ管への高分子、コロイドおよび潜在的にはデンドリマーの優先的輸送または排出を容易にしうる。
【0138】
リンパ管への指向的送達または標的送達に関して言うと、リンパは、腫瘍転移の播種に際して主たる導管としても働き、固形腫瘍からの転移の拡散を叩くために設計された細胞毒性剤のターゲットして広く利用されている。リンパ中に比較的高濃度に存在するBリンパ球およびTリンパ球も、インターフェロンなどのサイトカインおよび免疫調節薬全般にとって魅力的なターゲットになる。さらに、最近、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)陽性患者において、リンパ組織にウイルス負荷量の増加およびウイルス増殖の増加が見出されたことから、HIVおよびAIDSの処置における治療ターゲットとして、リンパへの関心が高まっている。現在までに、リンパ節への薬物の標的送達をもたらすリポソーム製剤が、特に抗癌薬ドキソルビシン(Doxil/Caelyx)に関して、いくつか開発されている(16〜21)。
【0139】
したがって、本発明のさらにもう一つの態様では、動物のリンパ系に医薬活性剤を標的送達するための方法であって、その動物に、
・制御された末端基化学量論を持つ高分子であって、表面層、少なくとも一つのサブ表面層、ならびに
医薬活性剤、その誘導体またはその前駆体の残基である第1末端基、
医薬活性剤および/または高分子のリンパへの取り込みを容易にするために選択される第2末端基
を含む少なくとも二つの末端基を含む高分子の有効量と、
・そのための薬学的に許容できる担体、希釈剤または賦形剤
とを投与することを含む方法が提供される。
【0140】
好ましい実施形態では、第2末端基がPEGまたはポリエチルオキサゾリンである。好ましい実施形態では、PEG基が比較的単分散であって、200〜10,000ダルトンの分子量範囲から選択され、より好ましくは、PEG基は500〜5,000ダルトンの分子量範囲から選択される。さらにもう一つの好ましい実施形態では、第2末端基が約1000ダルトンより大きい分子量を持つPEGである。さらにもう一つの好ましい実施形態では、第2末端基が、約1500ダルトンより大きい分子量を持つPEGモチーフである。
【0141】
好ましい実施形態では、デンドリマーが約20kDaより大きい分子量、好ましくは約30kDaより大きい分子量、より好ましくは約50kDaより大きい分子量を持つ。
【0142】
好ましい実施形態では、デンドリマーが、第1末端基をデンドリマーの骨組みに取付ける切断可能なまたは非切断可能なリンカー部分を含む。
【0143】
好ましい実施形態では、デンドリマーが、ヒトを含む動物に、皮下注射によって投与される。
【0144】
高分子の合成
さらにもう一つの態様として、本発明は、制御された末端基化学量論を持つ高分子であって、表面層、少なくとも一つのサブ表面層および二つ以上の異なる末端基を持ち、少なくとも一つの末端基が医薬活性剤、その誘導体、その前駆体、またはその残基であり、かつ少なくとも一つの末端基が医薬活性剤の薬物動態を修飾するために選択される高分子(この場合、末端基化学量論とは、末端基の数およびタイプを指す)を製造する方法を提供する。
【0145】
本発明のデンドリマーを合成するためのプロセスには、成長中のデンドリマーコア部分と、世代構築化合物としてのリジンまたはリジン類似体の一つ以上の層との逐次的な反応が含まれる。合成プロセス中にデンドリティックモチーフが成長中の高分子コアに取付けられる位置となるユニークな点に相当するリジン類似体の頂端カルボキシレートFは、保護されていないアミン部分との反応に先だって、必然的に活性化されるだろう。リジン類似体のアミン基AおよびBのそれぞれは、自己縮合を防ぐために保護される。世代構築化合物のカルボキシレートFを、成長中のデンドリマーの保護されていない窒素と反応させる場合、世代構築化合物のアミンAおよびBは、常に保護される。さらにまた、保護されていないアミンと活性化されたリジン類似体との反応は、常に、保護されていないアミンが選択したリジン類似体と完全に反応することが保証されるような形で行われる。これは、最も簡単には、化学量論的過剰量の活性化リジン類似体を使用することによって行われる。
【0146】
本発明のデンドリマーを合成するためのプロセスは、成長中のデンドリマーの保護されていないアミンと、医薬活性物質、細胞表面リガンド、およびPEGなどのリンカー基または末端基との反応を含みうる。いずれの場合も、リンカーまたは末端基のカルボキシレート基は、反応に先だって、または系中(in situ)で、アミド結合形成のために活性化される。リンカー基のアミンは保護されるか、既に末端基と反応している。さらにまた、成長中のデンドリマーの保護されていないアミンと活性化されたリンカーまたは末端基との反応は、典型的には活性化された基を過剰に使用することにより、保護されていないアミンが活性化された基と完全に反応することが保証されるような形で行われる。
【0147】
保護基を除去する順序は、異なるアミン保護基を含むデンドリマーを製造するために使用しうる反応のシーケンスを決定する上で、特にあるアミン保護基に関する切断条件が傍観アミン保護基の喪失につながりうる場合には、重要な因子になりうる。以下の保護基の表に、分割可能なアミノ保護基およびオルトゴナルなアミン保護基の好ましいセットを示す。
【0148】
分割可能なアミン保護基のセットとは、切断するつもりのない基が切断条件に対して不活性であるような除去の順序が存在するセットであると定義される。保護基がオルトゴナルであると定義される場合、これは、各基がそのオルトゴナルセットの他の基のそれぞれを除去するために要求される切断条件に対して不活性であることを意味する。例示的アミン保護基に関する情報は以下の参考文献に求めることができる:Greene, T.W.およびWuts, P.G.M.「Protective groups in Organic Synthesis」(第3版、John Wiley and Sons、ニューヨーク、1999)、Kocienski, P.J.「Protecting Groups」(第3版、Thieme、シュトゥットガルト、2004)。好ましいアミン保護基は表2から選択することができる。
【0149】
【表3】
注:
1.表の第1列に挙げた保護基と、表の最上段に挙げた保護基との組み合わせを、「分割可能」(R)または「オルトゴナル」(O)と定義する。ある組み合わせが「分割可能」とみなされる場合、カッコ内の保護基は、最初に除去されるべき基を表す。
2.2-クロロ-Cbzおよび2-ブロモ-Cbzを指す。
3.分割可能でもオルトゴナルでもない組み合わせ。
【0150】
さらにもう一つの態様として、本発明は、
(i)・官能基および二つ以上の異なる保護基を有する外側層を含む成長中の高分子、
・医薬活性剤、その誘導体またはその前駆体の残基である第1末端基の前駆体、および
・医薬活性剤および/または高分子の薬物動態を修飾するために選択される第2末端基の前駆体
を供給するステップ、
(ii)第1保護基を除去することによって外側層上の官能基を脱保護するステップ、
(iii)第1または第2末端基前駆体の一方を活性化するステップ、
(iv)脱保護された官能基を活性化された末端基前駆体と反応させるステップ、
(v)第2の保護基を除去することによって外側層上の官能基を脱保護するステップ、
(vi)他方の第1または第2末端基前駆体を活性化するステップ、および
(iv)脱保護された官能基を活性化された末端基前駆体と反応させるステップ
を含む、制御された末端基化学量論を持つ高分子を製造するためのプロセス(この場合、末端基化学量論とは、末端基の数およびタイプを指す)を提供する。
【0151】
さらにもう一つの態様として、本発明は、
(i)・官能基および二つ以上の異なる保護基を有する外側層を含む成長中の高分子、
・医薬活性剤、その誘導体またはその前駆体の残基である第1末端基前駆体、および
・医薬活性剤および/または高分子の薬物動態を修飾するために選択される第2末端基、ならびに
・カルボキシレート基および保護されたアミン基を含むリンカー部分
を供給するステップ、
(ii)第1保護基を除去することによって外側層上の官能基を脱保護するステップ、
(iii)リンカー部分上のカルボキシレート基を活性化するステップ
(iv)脱保護された官能基をリンカー部分上の活性化されたカルボキシレート基と反応させるステップ、
(v)リンカー部分上のアミン基を脱保護するステップ、
(vi)第1または第2末端基前駆体の一方を活性化するステップ、
(vii)脱保護されたアミン基を活性化された末端基前駆体と反応させるステップ、
(viii)第2の保護基を除去することによって外側層上の官能基を脱保護するステップ、
(ix)他方の第1または第2末端基前駆体を活性化するステップ、および
(x)脱保護された官能基を活性化された末端基と反応させるステップ
を含む、制御された末端基化学量論を持つ高分子を製造するためのプロセス(この場合、末端基化学量論とは、末端基の数およびタイプを指す)を提供する。
【0152】
本発明の高分子を合成するための好ましいプロセスは、成長中の高分子に取付けるための表面修飾剤化合物を用意するという予備ステップを含む。表面修飾剤化合物は、
・成長中の高分子へのその修飾化合物の取付けを容易にするためのカルボキシレート基、
・医薬活性剤、その誘導体またはその前駆体の残基である第1末端基、および/または
・医薬活性剤および/または高分子の薬物動態を修飾するために選択される第2末端基
を含む。
【0153】
末端基の表面基化学量論(数およびタイプ)は、末端アミン保護基表面基化学量論およびトポロジーが確立されているデンドリティックモチーフの使用によって制御することができる。そのようなアプローチは、純度の高い本発明のデンドリマーをもたらしうることが、観察されている。
【0154】
表面修飾剤化合物は任意の適切な方法で製造することができる。ある実施形態では、表面修飾剤化合物を製造するためのプロセスであって、
(i)・二つ以上の異なるアミン保護基およびカルボキシレート基を有するリジンまたはリジン類似体化合物、
・医薬活性剤、その誘導体またはその前駆体の残基である第1末端基の前駆体、および
・医薬活性剤および/または高分子の薬物動態を修飾するために選択される第2末端基の前駆体
を供給するステップ、
(ii)保護されたリジンまたはリジン類似体化合物上の第1アミンを脱保護するステップ、
(iii)第1または第2末端基前駆体を活性化するステップ、
(iv)活性化された末端基前駆体を脱保護されたアミン基と反応させるステップ、
(v)保護されたリジンまたはリジン類似体化合物上の第2アミンを脱保護するステップ、
(vi)他方の第1または第2末端基前駆体を活性化するステップ、および
(vii)前記他方の活性化された末端基前駆体を第2の脱保護されたアミン基と反応させて表面修飾剤化合物を得るステップ
を含むプロセスが提供される。
【0155】
表面修飾剤化合物は、好ましくは、リジンまたはリジン類似体バックボーンを含む。表面修飾剤化合物は、そのバックボーン内に複数のリジンまたはリジン類似体モチーフを含みうる。
【0156】
本発明の表面修飾剤化合物を合成するためのプロセスは、一つ以上の末端アミン保護基を除去して一つ以上の反応性アミン基を得ることを含みうる。次に、これらの反応性アミン基を、第1または第2末端基の前駆体と反応させる。末端基前駆体のカルボキシレート部分は、反応に先だって、または系中で、アミド結合形成のために活性化されるだろう。さらにまた、リジンまたはリジン類似体バックボーンの保護されていないアミンと、活性化された末端基との反応は、保護されていないアミンが活性化された末端基と完全に反応することが保証されるような形で、典型的には活性化された基を化学量論的過剰に使用することによって行うことができる。
【0157】
ある実施形態では、表面修飾剤化合物を製造するためのプロセスが、場合により、リジンまたはリジン類似体バックボーン上に存在する末端アミン上の保護基の除去に先だって、選択したカルボキシレート基を保護することを含みうる。保護カルボキシレート基に使用される保護基は、好ましくは、末端アミン上に存在する保護基を除去するのに要求される条件に対して安定である。メチルエステル、より好ましくはエチルエステルなどのカルボキシレート保護基は適切である。例示的カルボキシレート保護基に関する情報は以下の参考文献に求めることができる:Greene, T.W.およびWuts, P.G.M.「Protective groups in Organic Synthesis」(第3版、John Wiley and Sons、ニューヨーク、1999)、Kocienski, P.J.「Protecting Groups」(第3版、Thieme、シュトゥットガルト、2004)。
【0158】
表面修飾剤化合物の合成が、末端基の付加後に、さらなる脱保護ステップを要求する場合は、後続の反応に対するこの末端基の安定性を考慮することが重要である。末端基付加の好ましいシーケンスでは、医薬活性剤および/または高分子の薬物動態を修飾するために選択される第2末端基を、まず、リジンまたはリジン類似体バックボーンに付加する。さらにまた、医薬活性剤をリジンまたはリジン類似体バックボーンに不安定なリンカーを介して取付けるべき情況においては、リジンまたはリジン類似体バックボーンの保護されていない末端アミン基の反応に先だって、デンドリティックモチーフコアの選択したカルボキシレートを脱保護することが必要になる場合があり、さらにまた、リジンまたはリジン類似体バックボーンの選択したカルボキシレートが保護されていない場合は、医薬活性剤-リンカー部分のカルボキシレート基を、保護されていない末端アミン基が生じる前に、活性化する必要があるだろう。
【0159】
次に、表面修飾剤化合物を合成するためのプロセスは、末端アミン保護基のさらなる除去と、表面修飾剤化合物の表面修飾を完了するための追加末端基との反応を含みうる。表面修飾剤化合物の選択したカルボキシレートが保護基を有する場合、保護されたカルボキシレートは、末端基が全て取付けられてから脱保護されるか、不安定なリンカーの取付けに先だって脱保護されるだろう。表面修飾剤化合物の選択したカルボキシレートが脱保護された後は、保護されていない末端アミン基と末端基のカルボキシレートの間にアミド結合を形成するための後続の反応は全て、末端基のカルボキシレートが表面修飾剤化合物の導入に先だって活性化されることを必要とするだろう。
【0160】
次に、本発明の高分子を合成するためのプロセスは、成長中の高分子の保護されていないアミンを表面修飾剤化合物と反応させることによって続けられる。デンドリティックモチーフのカルボキシレート部分は、反応に先だって、または系中で、アミド結合形成のために活性化されるだろう。好ましい方法では、表面修飾剤化合物のカルボキシレート部分が系中で活性化される。この方法は好ましく、成長中の高分子コア上または表面修飾剤化合物上に、遮蔽されていないヒドロキシル部分が存在する場合には、水または他のヒドロキシル供与体を含めることにより、高分子への偶発的なエステル結合の形成を制限することが可能である。ある実施形態では、表面修飾剤化合物が、リンカー部分を介して成長中の高分子に取付けられる。
【0161】
したがって、本発明の代替実施形態では、
(i)・官能基および一つ以上の保護基を有する外側層を含む成長中の高分子、ならびに
・カルボキシレート基
医薬活性剤、その誘導体またはその前駆体の残基である第1末端基、および
医薬活性剤および/または高分子の薬物動態を修飾するために選択される第2末端基
を含む表面修飾剤化合物
を供給するステップ、
(ii)表面修飾剤化合物上のカルボキシレート基を活性化するステップ、
(iii)保護基を除去することによって、成長中の高分子の外側層上の官能基を脱保護するステップ、
(vii)成長中の高分子上の脱保護された官能基を、表面修飾剤化合物上の活性化されたカルボキシレート基と反応させるステップ
を含む、制御された末端基化学量論を持つ高分子を製造するためのプロセス(この場合、末端基化学量論とは、末端基の数およびタイプを指す)が提供される。
【0162】
本発明の高分子は、第1または第2末端基のどちらか一方に対してユニークな取付け点を含みうる。そうすることで、単一の第1または第2末端基を持つ高分子を合成することができる。好ましくは、ユニークな取付け点に取付けられる末端基は、医薬活性剤および/または高分子の薬物動態を修飾するために選択される第2末端基である。より好ましくは、ユニークな取付け点に取付けられる第2末端基は、一つ以上の細胞タイプまたは組織タイプへの医薬活性剤のターゲティングおよび/または取り込みを容易にするために選択される。
【0163】
代替実施形態では、本発明の高分子が、第1または第2末端基のどちらかに対して、選択された単一の取付け点を含みうる。
【0164】
ポリアミン分子の選択的モノ保護については、当技術分野では、その一般方法が記述されている。そのような方法は、KrapchoおよびKuell, Synthetic Commun. 1990 20 2559に記述されている。好ましい方法では、ユニークな取付け点を持つデンドリマーが、二価または三価コアから製造され、その場合、反応性アミン部分の一つだけが、リジンデンドリマーを構築するためのプロセス中に他のアミノ保護基を除去するために使用される条件に対して不活性またはオルトゴナルである保護基を使って保護される。次に、リジン縮合およびアミン脱保護のサイクルを反復することにより、他の末端アミン部分とはそのユニークなアミン保護基によって区別される単一の末端アミン部分が存在する1〜6世代(より好ましくは3〜5世代)のデンドリマーを構築することができる。このユニークな末端アミンは、単一の選択された分子、例えばタンパク質もしくはペプチド、またはターゲティング分子を、その位置をもって、デンドリマーに取付けることができる部位に相当する。
【0165】
この実施形態の好ましい形式では、制御された末端基化学量論を持つ高分子であって、表面層、少なくとも一つのサブ表面層、ならびに
・ペプチドもしくはタンパク質、その誘導体またはその前駆体の残基である第1末端基(この第1末端基は高分子上の単一の選択された取付け部位に取付けられる)、および
・ペプチドもしくはタンパク質および/または高分子の薬物動態を修飾するために選択される第2末端基
を含む少なくとも二つの末端基を含む高分子(この場合、末端基化学量論とは、末端基の数およびタイプを指す)が提供される。
【0166】
好ましい方法では、ユニークな末端アミン部分の保護基を除去し、その末端アミン部分を、ハロ酢酸誘導体またはマレイミド誘導体、例えば3-マレイミドプロピオン酸または4-マレイミド酪酸と、アミド結合が形成される条件下で反応させる。チオール含有ペプチドおよびタンパク質をそのようなチオール活性基にカップリングするための一般方法は、Pierce 1989 Handbook and General Catalogおよびそこに挙げられている参考文献に記載されている。
【0167】
添付の実施例を参照して、以下に、本発明をさらに詳しく説明する。ただし、以下の説明は単なる例示であり、決して、上述した本発明の一般論に対する限定であると解釈してはならない。
【実施例】
【0168】
以下の実施例におけるデンドリマーの命名には以下の式を利用する:
コア[最後の完全な層;構築単位]
n-[末端基]
m[不完全な外側層;構築単位]
p[末端基]
q
式中、
・コアは、そこに活性化リジン世代構築単位が取付けられる分子であり、リジン構築単位の第1層が付加される少なくとも一つのアミン部分を含むだろう;
・nは、その高分子の最も外側の完全な層上にあるリジン構築単位の数であり、pは、その高分子の不完全な外側層上にあるリジン構築単位の数である:
・mは、最も外側の完全な構築単位層上にある末端基、例えば医薬活性部分または末端アミン保護基の数であり、qは、不完全な外側の構築単位層上にある末端基の数である;
・場合によっては末端基および/または構築単位がコアに付加される場合もあり、その場合、コアは、上記と同じ原則に従って、[末端基]
r[構築単位]
sと表される。
【0169】
この命名法では、コアおよび外側層が与えられることにより、高分子のサイズを完全に記述することができる。というのも、これらの高分子構造の構築にはリジン構築単位だけが使用され、コアの価数はわかっているからであり、さらにまた、各高分子層の表面アミン基の全てを、新しいリジン層の付加時に、リジンと完全に反応させるからである。
【0170】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
1星印は、リジン分岐単位のカルボキシル基にアミドとして結合したアミン基を示す。番号記号は、コアまたはリジン分岐単位のアミンにアミドとして結合したカルボキシル基を示す。
【0171】
さらなる化学略号を表4に列挙する。
【表10】
(実施例1)
【0172】
本発明で使用することができる医薬活性剤の例には、以下に挙げるものがある。
【0173】
メトトレキサート
メトトレキサートはがんおよび自己免疫疾患の処置に用いられる代謝拮抗薬である。これは、ジヒドロ葉酸レダクターゼの競合的かつ可逆的阻害により、葉酸の代謝を阻害することによって作用する。化学的には、メトトレキサートはN-[4-[[(2,4-ジアミノ-6-プテリジニル)メチル]メチルアミノ]-ベンゾイル]-L-グルタミン酸である。分子量:454.45 C
20H
22N
8O
5で、構造式は
【化4】
である。がん化学療法に用いられる高用量のメトトレキサートは、骨および消化管粘膜の迅速に分裂する細胞に対して毒性副作用を引き起こしうる。
【0174】
タキソール
タキソール(パクリタキセル)は、特に、従来の治療法には応答しなかった乳がんおよび卵巣がんを持つ婦人に処置薬として使用される抗有糸分裂剤である。これは、微小管を安定化し、微小管アセンブリを促進し、その結果として、細胞がその細胞骨格を柔軟に使用することができないようにすることによって作用する。タキソールは三環式ジテルペンであり、構造式は
【化5】
である。
【0175】
ゼニカル(Zenical)(Xenical、Xenecal、Zencalともいう)は、肥満を管理するための体重コントロール医薬品である。これは、胃および小腸の内腔において、胃リパーゼおよび膵リパーゼの活性セリン残基部位と共有結合を形成することにより、その治療活性を発揮する。その結果、不活化された酵素は、トリグリセリドの形態をした食事脂肪を吸収可能な遊離脂肪酸およびモノグリセリドに加水分解するために利用することができなくなる。化学的には、ゼニカルは
【化6】
という構造式を持つ。ゼニカルの化学名は(S)-2-ホルミルアミノ-4-メチル-ペンタン酸(S)-1[[(2S,3S)-3-ヘキシル-4-オキソ-2-オキセタニル]メチル]-ドデシルエステルである。分子式はC
29H
53NO
5である。ゼニカルは495.7の分子量を持つ。鼓腸、便意切迫、脂肪便/油性便および軟便を含むいくつかの望ましくない胃腸副作用がある。
【0176】
インドメタシン
インドメタシン(indomethacin)(indometacinとも)は、発熱、疼痛、凝り、および腫脹を軽減するためによく用いられる非ステロイド性抗炎症薬である。これは、これらの症状を引き起こすことが知られている分子であるプロスタグランジン類の産生を阻害することによって機能する。
【化7】
【0177】
シクロスポリン
シクロスポリンは、移植における移植片対宿主反応の予防および処置に広く用いられる免疫抑制薬である。これは、免疫学的因子が病原的役割を持ちうる多種多様な他の疾患の治療についても試験されている。
(実施例2)
【0178】
メトトレキサート保有デンドリマー
末端基の約50%および約75%が薬物(具体的にはメトトレキサート)であるリジンデンドリマーを製造した。メトトレキサートは安定な結合によってデンドリマーにコンジュゲートすることができ、この構築物のクリアランスおよび生体内分布が決定される。
【0179】
個々のPEG基のサイズは、要求される血漿中寿命を維持し、肝取り込みを回避するために、その相対存在量が減少するにつれて増加させることが望ましいだろう。血漿曝露中は、メトトレキサートの「非切断可能」性によって、構築物の完全性が保たれる。
【0180】
化合物の詳細な説明:
BHALys[Lys]
16[α-PEG
570]
16[ε-MTX]
16
BHALys[Lys]
16[α-PEG
1100]
16[ε-MTX]
16
BHALys[Lys]
16[α-PEG
1716]
16[ε-MTX]
16
BHALys[Lys]
16[α-PEG
2845]
16[ε-MTX]
16
BHALys[Lys]
16[α-PEG
3974]
16[ε-MTX]
16
BHALys[Lys]
8[Su(NPN)
2]
16[MTX]
16[PEG
570]
16
BHALys[Lys]
8[Su(NPN)
2]
16[MTX]
16[PEG
1100]
16
BHALys[Lys]
8[Su(NPN)
2]
16[MTX]
16[PEG
171616
BHALys[Lys]
8[Su(NPN)
2]
16[MTX]
16[PEG
2845]
16
BHALys[Lys]
8[Su(NPN)
2]
16[MTX]
16[PEG
3974]
16
式中、MTXはγ-カルボキシレート基を介してコンジュゲートされたメトトレキサート1を表す。このアプローチにおける重要な中間体は、Aust. J. Chem. 2002 55 635-645に記載の方法に従って製造される3である。
【化8】
(実施例3)
【0181】
タキソール保有デンドリマー
タキソール保有デンドリマーの例には以下に挙げるものがある:
BHALys[Lys]
16[α-PEG
570]
16[ε-COCH
2CH
2CO-タキソール]
16
BHALys[Lys]
16[α-PEG
1100]
16[ε-COCH
2CH
2CO-タキソール]
16
BHALys[Lys]
16[α-PEG
1716]
16[ε-COCH
2CH
2CO-タキソール]
16
BHALys[Lys]
16[α-PEG
2845]
16[ε-COCH
2CH
2CO-タキソール]
16
BHALys[Lys]
16[α-PEG
3974]
16[ε-COCH
2CH
2CO-タキソール]
16
BHALys[Lys]
8[Su(NPN)
2]
16[PEG
570]
16[COCH
2CH
2CO-タキソール]
16
BHALys[Lys]
8[Su(NPN)
2]
16[PEG
1100]
16[COCH
2CH
2CO-タキソール]
16
BHALys[Lys]
8[Su(NPN)
2]
16[PEG
1716]
16[COCH
2CH
2CO-タキソール]
16
BHALys[Lys]
8[Su(NPN)
2]
16[PEG
2845]
16[COCH
2CH
2CO-タキソール]
16
BHALys[Lys]
8[Su(NPN)
2]
16[PEG
3974[COCH
2CH
2CO-タキソール]
16
BHALys[Lys]
16[ε,ε-PEG
570]
8[COCH
2CH
2CO-タキソール]
24
BHALys[Lys]
16[ε,ε-PEG
1100]
8[COCH
2CH
2CO-タキソール]
24
BHALys[Lys]
16[ε,ε-PEG
1716]
8[COCH
2CH
2CO-タキソール]
24
BHALys[Lys]
16[ε,ε-PEG
2845]
8[COCH
2CH
2CO-タキソール]
24
BHALys[Lys]
16[ε,ε-PEG
3974]
8[COCH
2CH
2CO-タキソール]
24
【0182】
タキソールのコンジュゲーションは、二つの異なる誘導体2および4(下記参照)を使って行うことができる。2の製造はJ. Med. Chem. 1989 32 788-792に記述されている。
【化9】
【0183】
このリジンデンドリマーは、さまざまな「切断可能」リンカーを介して取付けられた約50%および75%のタキソール末端基を含みうる。
【0184】
全Boc保護型として製造されるリジンデンドリマーは全て、国際特許出願WO95/34595(その内容は全て参照により本明細書に組み入れられる)に記載の手法に従って合成し、精製した。Boc保護基の除去は、WO95/34595に記載の手法に従って行った。
【0185】
シンチレーション計数の技法を使って生物学的マトリックス中のデンドリマー物質を検出することができるように、リジンデンドリマーがトリチウムを含有する必要がある場合は、1mgあたり5μCi〜15μCiの範囲の比放射能を持つ物質が得られるように(4,5-
3H)-L-リジンを非放射性L-リジンで希釈することによって、これらの物質を製造した。次に、このトリチウム化リジンを使って、ジ-Boc-リジンのp-ニトロフェノール活性エステルを製造し、それを、WO95/34595に記載の方法を使って、ターゲットリジンデンドリマーの外側リジン層に組み込んだ。
(実施例4)
【0186】
BHALys[(3H)-Lys]8[D-Lys]16[NH2]32の合成
BHALys[(
3H)-Lys]
8[NH
2.TFA]
16(38mg、0.01mmol)の乾燥DMF(3mL)溶液を窒素下で撹拌したものに、D-リジンパラニトロフェノールエステル(181mg、0.38mmol)のDMF(4mL)およびトリエチルアミン(65μL、0.46mmol)溶液を加えた。反応混合物を室温で16時間撹拌した後、アセトニトリル(60mL)に注ぎ込み、6時間撹拌した。得られた微細固体を、0.45μm親水性ポリプロピレンメンブレンフィルターを通した濾過によって集め、減圧乾燥した。生成物BHALys[(
3H)-Lys]
8[D-Lys]
16[Boc]
32は微細なクリーム色の固体(40mg、56%)だった。BHALys[(
3H)-Lys]
8[D-Lys]
16[Boc]
32(34mg、0.005mmol)をCH
2Cl
2(1mL)に懸濁し、0℃に冷却した。TFA(398μL、2.58 mol)を滴下し、反応を0℃で10分間撹拌放置してから、室温まで温め、さらに3時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、得られた油状物にエーテルを加え、その溶液を摩砕したところ、白色固体が生じた。エーテルを傾斜し、固体をエーテルですすいだ(3回)。エーテルを除去した後、得られた固体を最少量の水に溶解し、Amberlyst(A-26 OH)イオン交換カラムに適用した。そのカラムから100mLの水を収集し、凍結乾燥によってその水を除去することにより、BHALys[(
3H)-Lys]
8[D-Lys]
16[NH
2]
32を白色固体(15mg、79%)として得た。LC-MS:(親水性(Philic)TFA、溶媒和温度300℃)Rf(分)8.45。ESI(+ve)m/z=1386.6 (M/3), 1040.3 (M/4), 832.3 (M/5) 694.0 (M/6) 594.9 (M/7)。
(実施例5)
【0187】
カチオン性デンドリマーの血漿クリアランスおよび生体内分布
材料
緩衝液試薬はARグレードとした。水はMilliQ水精製システム(Millipore、オーストラリア)から得た。ヘパリン(10,000IU/mL)はFaulding(オーストラリア)から入手した。注射用食塩水は、Baxter Healthcare Pty Ltd(NSW、オーストラリア)から100mLポリエチレンバッグ入りを入手した。トリチウム化L-リジン(1mCi/ml)はMP Biomedicals(米国カリフォルニア州アーバイン)から購入した。非放射標識L-リジンはSigma Chemical Co(米国ミズーリ州セントルイス)から入手した。StarscintシンチレーションカクテルおよびSoluene-350組織可溶化剤はPackard Biosciences(コネティカット州メリデン)から購入した。タンパク質標準にはブルーデキストラン2000(2000kDa)、脂肪酸フリーウシ血清アルブミン(67kDa)、ペプシン(35kDa)、トリプシン(23.8kDa)、ミオグロビン(17.6kDa)、リボヌクレアーゼA(13.7kDa)、シトクロムC(12.4kDa)およびビタミンB12(1.4kDa)を含め、これらは全てSigma Chemical Co(米国ミズーリ州セントルイス)から入手した。より高分子量のタンパク質の溶出時間は、20μlのPrecision Plusタンパク質標準をカラムに注入することによって得た(Bio-Rad、米国カリフォルニア州ハーキュリーズ)。
【0188】
3H標識デンドリマーを製造し、凍結乾燥粉末として用意した。供給前の精製は限外濾過およびサイズ排除クロマトグラフィー(Sephadex LH20、水で溶出)によって行い、イオン交換を利用して、遊離塩基型のアンキャップトアミン末端デンドリマーを得た。純度は、キャピラリー電気泳動、NMRおよび質量分析によって確かめた。デンドリマーの比放射能および分子量を表5に列挙する。
【表11】
【0189】
IV投与のために、
3H-L-リジン(25μCi)を、リン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.4)中の非放射標識リジンで、最終比放射能が20μCi/mgになるように新たに希釈した。
【0190】
デンドリマーは全てPBSに希釈し、使用するまで-20℃で凍結した。
【0191】
活性決定およびシンチレーション計数
デンドリマーの比放射能は、既知質量を含有する原液をPBSに希釈することにより、3重に決定した。次に、一部を1mLのStarscintに加え、Packard Tri-Carb 2000CA Liquid Scintillation Analyser(コネティカット州メリデン)でシンチレーション計数を行った。三重測定値の平均を以降の全ての計算に使用した。
【0192】
生体内法
動物実験プロトコールは全て、モナシュ大学(Monash University;オーストラリア・ビクトリア州パークビル)ビクトリアン薬科大学動物倫理委員会(the Victorian College of Pharmacy Animal Ethics Committee)によって承認された。
【0193】
静脈内薬物動態研究
デンドリマー投与に先だって、Aliら(1999)J. Biol. Chem. 274:24066-24073に記述されているように、ラット(雄、スプレーグ・ドーリー、250〜350g)の頚静脈および頚動脈に、イソフルラン麻酔下で、カニューレ(ポリエチレン管、0.96×0.58mm、Paton Scientific(オーストラリア・ビクターハーバー))を挿入しておいた。これらのカニューレにはヘパリン加食塩水(1mlあたり2I.U.)を流し、溶封してから、回復中は頚の後ろの皮下ポケット中に挿入しておいた。投薬に先だってラットを一晩回復させた。ただし、投薬前の12時間は食物を与えなかった。この回復期間後は、尿および糞を別々に収集できるようにラットを代謝ケージで飼育し、薬物投与および血液収集が容易になるように、カニューレをスイベル/リーシュアセンブリに取付けた。水への自由なアクセスは常に許した。L-リジンのデンドリマーを1mlのリン酸緩衝食塩水(PBS)に溶解し、留置頚静脈カニューレを通して、2分間にわたる静脈内注入により、5mg/kgの用量で投与した。次に、投薬量が確実に全て注入されるように、カニューレに0.25mlのヘパリン加食塩水を流した。その後、以下の名目時点に、頚動脈から血液試料(0.15ml)を採取した:投薬前(-5分)、注入終了時(t=0)、および5、10、20、30、45、60、90、120、180、240、360、480、1440および1800分。血液試料は、10I.U.のヘパリンを含有するチューブに直ちに入れて、3500×gで5分間遠心分離した。次に、血漿(50μl)を1mlのStarscintシンチレーションカクテルに加え、ボルテックスしてからシンチレーション計数を行った。この血漿アッセイに関する定量限界(20dpm)は、スパイクした血漿試料の多重(n=5)解析を使って確認した。確度および精度は±20%以内だった。
【0194】
生体内分布研究
生体内でのデンドリマーの運命を理解するために、さまざまな主要臓器への生体内分布を調べた。薬物動態研究(30時間)が完了したら、致死量のペントバルビタールナトリウムを注入することによって動物を屠殺し、解剖により、以下の組織を摘出した:心臓、肺、肝臓、脾臓、膵臓、腎臓および脳。これらの組織は、組織の処理および分析を行う直前まで、重量計量済みのポリプロピレンチューブ中で凍結保存(-20℃)しておいた。
【0195】
まず最初に、試料をワーリングミニブレンダー(Extech Equipment Pty. Ltd.、オーストラリア・ボローニア)で5〜10mlのMilliQ水と共に10秒間×5回ホモジナイズすることにより、組織を処理した。組織試料中の比較的低レベルの放射能を測定するための方法を開発するにあたって、シンチレーション計数時にバックグラウンドカウントの著しいばらつきをもたらす化学発光反応および色クエンチングに伴う問題に直面した。これらの問題は、温度の上昇、光への曝露、試料の撹拌によって悪化するようでもあった。これらの問題を克服するために、これ以降の組織の処理を2段階プロセスとして行った。
【0196】
最初の「スクリーニング」段階は、試料に含まれる放射能のおよそのレベルを決定するために使用した。この段階では、各組織ホモジネートから単一の試料(典型的には40〜100mgの組織)を、2mlのSolueneを含有する20mlポリプロピレンシンチレーションバイアルに入れ、組織消化を60℃で終夜進行させた。次にイソプロパノール(2ml)を加え、その溶液を60℃でさらに2時間加熱した。室温まで冷却してから、過酸化水素(30%w/v)を100μlずつ2回、逐次的に試料に加え、次にそれを、発泡が終わるまで、室温で放置した。次に、Starscint(12ml)を加え、その混合物をボルテックスしてから、試料を暗所で撹拌せずに4℃で96時間貯蔵した。次に、試料をシンチレーション計数し、その間、カウンターは、冷却した試料トレイを使って12℃に維持した。また、計数中の加温を最小限に抑えるために、試料を6〜12個ずつの組にして計数した。無処置ラットの臓器から一試料ずつ採取し、それを同様に加工して、加工法のみに起因すると考えられるバックグランドカウントの値を得た。これらの値をスクリーニング段階で得た値から差し引いた。このスクリーニング段階から得られるデータにより、各試料中の予想放射能量の大雑把な目安が得られた。最終分析実験にはこの情報が必要だった。
【0197】
組織計数プロセスの第2「分析」段階では、組織試料を三重に分析した。無処置のラットから得たブランク組織も上述のように(ただし三重に)加工して、バックグラウンド補正に備えた。デンドリマーを投薬したラットのホモジナイズした組織は、組織からの「抽出」プロセスに起因する放射能計数効率の低下(クエンチ)を補正するための追加ステップを行った点以外は、一般に、上記スクリーニング段階で述べた方法と同じ方法で加工した。計数効率の補正を可能にするために、処置ラットから得た二組目の同じ組織を、Solueneの添加に先だって既知量の放射標識デンドリマーを最初にスパイクした点以外は、同じ方法で加工した。スクリーニング試料中に測定された放射能とほぼ等価なレベルの放射能を組織にスパイクした(それゆえにスクリーニングデータが必要になる)。次に、以下のように加工効率を算出した:
効率=[(スパイクした組織)
DPM−(組織)
DPM,未補正]/(スパイクした溶液)
DPM (1)
【0198】
(スパイクした組織)
DPMは、スパイクした試料で測定される質量補正放射能とし、(組織)
DPM,未補正は余分な放射能スパイクを加えていない組織試料中の質量補正放射能とし、(スパイクした溶液)
DPMは、スパイクした試料に加えられた既知量の余分な放射能とした。事実上、この計算は、各組織中の既知(スパイクされた)量の放射能を参照基準として用いることによって、計数効率の指標を与える。
【0199】
次に、この効率の値を使って、加工された試料中の
3H含量を補正する。
(組織)
DPM,補正=(組織)
DPM,未補正/効率 (2)
【0200】
次に、加工した試料中に存在する臓器全体の質量分率を知ることによって、臓器全体での放射能を算出した。結果を、屠殺時の臓器における注射した用量のパーセンテージとして表すか、組織1グラムあたりの注射した用量のパーセンテージとして表す。加工のばらつきにより、LOQを各組織について容易に決定することはできないかもしれない。その代りに、20%より高い%CVをもたらす三重試料は繰り返すか、再現可能なデータが得られなかった場合には定量可能レベル未満と分類した。
【0201】
全血薬物動態
全血薬物動態を決定するために、別個の動物群に同じ量のデンドリマー溶液を投与し、血漿の収集に使用した名目期間と同じ名目期間で、ヘパリン処理したエッペンドルフチューブに、全血試料(150μl)を収集した。各血液試料(50μl)を二つずつ、2本の20mlシンチレーションバイアルに加えた。まず最初に、一方のバイアルは処理せず、他方のバイアルには、(上述のように)全血計数効率データを得るために、既知量(約300〜600壊変毎分(DPM))の研究対象のデンドリマーをスパイクした。次にそれらの試料を、比1:1のSoluene-350およびイソプロピルアルコール4ml中、60℃で終夜可溶化した。次に試料を冷却し、200μlの過酸化水素(30%w/v)で漂白してから、Starscint(12ml)を加えた。次に試料を室温で24時間放置した後、シンチレーション計数を行った。上述のようにスパイクした試料について得られたデータとの比較により、血液試料から得たカウントを効率に関して補正した。
【0202】
静脈内投与後の血漿および全血における
3H-デンドリマーの薬物動態パラメーターを表6に示す。
【表12】
【0203】
尿および糞便
デンドリマーを投与したラットから、投与後0〜8時間、8〜24時間および24〜30時間という三つの時間間隔にわたって、尿を収集した。投薬前の各ラットから得られるブランク尿試料も収集した。各時間間隔から得た尿のうち100μlを1mlのStarscintに加え、その混合物をボルテックスしてから、シンチレーション計数を行った。バックグラウンドを差し引いた後、試料の放射標識含量を、その時間間隔に収集された尿の総体積に関して補正し、投与された総
3H用量のパーセンテージに変換した。
【0204】
糞便は重量計量済みのバイアルに収集し、MilliQ水に浸漬することにより、試料をスラリーへとホモジナイズし、次に60℃で乾燥した。次に、乾燥糞便の複製試料(20mg)6個を、n=3試料の二つの群に分けた。一つの試料群はさらなる添加を行わずに加工し、3個の試料からなる一つの群には、糞便計数効率データを(上述のように)得るために、既知量の放射性デンドリマー(約500DPM)をスパイクした。次に、Lyonsら(2000)が記載した方法を使って、試料を可溶化した。簡単に述べると、再加湿した糞便に2mlのSolueneを加え、60℃で終夜加熱した。次に、さらに2mlのイソプロピルアルコールを加え、試料をさらに2時間加熱した。次に、可溶化した試料を400μlの過酸化水素(30%w/v)で漂白してから、12mlのStarscintを加えた。次に試料を室温で4時間放置してから、4℃で24時間冷却し、その後、12℃でシンチレーション計数を行った。収集した糞便の総乾燥重量を使って、糞便に排泄された
3Hの総量を算出した。このアッセイのLOQはブランク糞便中の平均カウントの3倍と推定された。というのも、生じる糞便の質量は大きく変動し、それゆえに、一定の試料質量における最も小さい定量可能なカウント数は決定することができなかったからである。これらの結果を表7に要約する。
【0205】
【表13】
【0206】
薬物動態計算
血漿/全血試料中の放射標識の濃度を、放射標識デンドリマーの比放射能を使って、ng換算濃度に変換した。これらの濃度はこの報文全体を通してng換算値/mlとして表されているが、これは、このアプローチが、
3H放射標識は完全なデンドリマーに付随した状態を保っていると仮定していることに注意して見るべきであり、後述するように、一部にはこれが当てはまらない場合もある。
【0207】
対数線形血漿中濃度対時間プロットの初期相における少なくとも3点の線形回帰によって、血漿中濃度-時間曲線の初期減衰速度を見積った。これらのデータから得た速度定数を「消失」速度定数(K)として記載しているが、これらは真の終末相消失速度定数を表すわけではない。というのも、消失が早いため、分布事象および消失事象の正確な描写は困難だったからである。初期減衰の半減期はt
1/2=0.693/Kから見積った。いずれの場合も、初期分布容積(V
c)は、用量/C
p゜から算出した(式中、C
p゜は、t=0(すなわち2分間にわたる注入の終了時点)における血漿中の濃度である)。血漿からの初期消失が極めて迅速であり、その後のプロファイルも普通ではなかったため、真の消失速度定数および消失半減期の確認を含むデータのさらに詳細な薬物動態評価は行うことができなかった。
(実施例6)
【0208】
実施例5で得た生体試料に関するサイズ排除クロマトグラフィー
いくつかの方法を使って、血漿試料中に存在する分子種のサイズを調べた。まず最初に、血漿試料を重力下でPD10ゲル濾過カラム(Pharmacia)を通して溶出させ、画分を収集することにより、粗いサイズ分離を行った。この方法では、血漿試料(500μl)を2mlのPBSで希釈してから、前もって平衡化しておいたPD10カラムの上にのせた。画分(500μl)を手作業で微量遠心管に収集し、それらを100μlずつ、1mlのStarscintに加えてから、シンチレーション計数を行った。純粋な成分の保持容量を特徴づけるために、そのカラムを通して、PBS中の完全なデンドリマーおよびリジン溶液も溶出させた。
【0209】
血漿中の放射標識含有分子種のサイズに関してさらなる情報を得るために、次に、Waters 590 HPLCポンプ(Millipore Corporation、米国マサチューセッツ州ミルフォード)と連結された分析用サイズ排除カラム(Superdex Peptide 10/300 GL、Amersham Bioscience)を使って、より正確な分離を行った。血漿試料を同体積のPBSに再び希釈し、その混合物のうち100μlをカラムに注入した。0.3M NaCl(pH3.5)を含有する0.5ml/分のPBSで試料を溶出させ、Gilson FC10フラクションコレクター(John Morris Scientific Pty. Ltd.、オーストリア・ヴィクトリア州)を使って1分間隔で画分を収集した。次に、各画分中の放射能を決定するために、一部をStarscint(3ml)と混合し、液体シンチレーションによって分析した。別途、そのカラムを通して、完全なデンドリマーおよびリジンのPBS溶液を再び溶出させて、その保持容量を特徴づけた。また、デンドリマーおよびリジンを新鮮なヘパリン加血漿中で1時間インキュベートし、そのデンドリマーまたはリジン-血漿混合物をSECで分析した。この分析は、デンドリマーまたはリジンと血漿成分との物理的相互作用が血漿中に高MW分子種の生成をもたらしうる可能性の目安を得るために行った。
【0210】
血漿中に存在する高MW放射標識分子種をより良く分割するために、Superdex 75 HR 10/30サイズ排除カラムを使った試料の分析も行った。画分(0.5ml)を再び1分間隔で収集し、Starscint(3ml)に希釈し、液体シンチレーション計数で分析して、各画分中の放射能を決定した。タンパク質標準を使って標準曲線(線形R
2=0.9915)を作成し、それを使って、溶出するタンパク質の分子量を見積った。Waters 486 UV検出器(Millipore Corporation、米国マサチューセッツ州ミルフォード)を使ってタンパク質の溶出を280nmで監視した。カラムのボイド容積はブルーデキストラン2000を使って決定した。
(実施例7)
【0211】
トリチウム標識アニオン性デンドリマーの合成
BHALys[3H-Lys]16[CO-3,5-Ph(SO3Na)2]32の製造
デンドリマー(BHALys[
3H-Lys]
16[NH
2.TFA]
32)(2.12g、0.27mmol)のDMF/DMSO(1:1)(200mL)溶液を撹拌したものに、PyBOP(9.56g、18.37mmol)を加えた。3,5-ジスルホ安息香酸(5.39g、19.11mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(12.2mL、70.02mmol)のDMF/DMSO(1:1)(150mL)溶液を徐々に加えた。粘着性の沈殿物が生成した。その沈殿物を取り出し、DMSOに再溶解し、反応に戻した。その混合物を室温で16時間撹拌した。反応混合物を水(3.5L)に注ぎ込み、0.45ミクロンフィルターを通して濾過した。
【0212】
精製はCentramate(3Kメンブレン、2L試料レザバー)でのタンジェンシャルフロー濾過によって行った。Milli-Q水(18L)による初期洗浄後に、保持液を、1M炭酸ナトリウム(100mL)により、Milli-Q水洗浄(1L)を間に挟んで3回洗浄し、次に、濾液のpHが中性になるまで濾過を続けた(約20L)。保持液を減圧下で濃縮し、凍結乾燥することにより、所期の生成物をオフホワイトの固体(2.34g、61%)として得た。
1H nmr (300MHz, D
2O) λ(ppm):1.0-2.0 (186H);2.8-3.4 (62H);4.0-4.4 (31H);5.9 (1H);7.0-7.3 (10H);8.1-8.3 (96H)。
LC/MS(イオンペア):ESI(-ve)m/z=740.83 ((M-17H)
17-);699.94 ((M-18H)
18-);662.83 ((M-19H)
19-);629.99 ((M-20H)
20-);599.53 ((M-21H)
21-)。最大エントロピー法を使ってデータをデコンボリュートすることにより、MW=12614(M-、H型)を得た。計算値(H型)(C
423H
513N
63O
255S
64)12612(M-)Rf(分)=3.14。
CE(pH3):98.6% Rf(分)=10.97
CE(pH9):97.6% Rf(分)=12.90
【0213】
BHALys[3H-Lys]8[CO-4-Ph(SO3Na)]16の製造
デンドリマー(BHALys[
3H-Lys]
8[NH
2.TFA]
16)(68mg、17.3μmol)のDMF(5mL)溶液を撹拌したものに、PyBOP(303mg、0.58mmol)を加えた。4-スルホ安息香酸モノナトリウム塩(124mg、0.55mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(386μL、2.22mmol)のDMSO/DMF(5mL/10mL)溶液を徐々に加えた。その混合物をアルゴン下、室温で24時間撹拌した後、水(200mL)に注ぎ込み、0.45ミクロンフィルターを通して濾過した。精製は、タンジェンシャルフロー濾過によってMinimate(1Kメンブレン、250mL試料レザバー)で行い、これを水(1.5L)で洗浄した。減圧下で保持液から溶媒を減少させた。生成物を水(5mL)に再溶解し、Sephadexサイズ排除カラム(LH20、溶離液:水)にかけて、画分1〜8を収集した。合わせた画分を減圧下で濃縮し、イオン交換カラム(69F、Na+)に通し、凍結乾燥することにより、所期の生成物BHALys[
3H-Lys]
8[CO-4-Ph(SO
3Na)]
16を白色固体(20mg、22%)として得た。
1H nmr (300MHz, D
2O) λ(ppm):1.0-1.9 (90H, CH2);2.8-3.3 (30H, CH2);4.0-4.4 (15H, CH);5.9 (1H, CH);7.0-7.2 (10H, Ar-H);7.5-7.8 (64H, Ar-H)。
MS(直接注入):ESI(-ve)m/z=5406 (M-H)-(M-, ナトリウム型)
計算値(ナトリウム型)(C215H257N31O79Na16S16)5404 (M-)。
CE(pH7):91% Rf(分)=10.51
【0214】
BHALys[3H-Lys]16[CO-4-Ph(SO3Na)]32の製造
デンドリマー(BHALys[
3H-Lys]
16[NH
2.TFA]
32)(100mg、13μmol)のDMSO(8mL)溶液を撹拌したものに、PyBOP(448mg、0.86mmol)を加えた。4-スルホ安息香酸モノカリウム塩(197mg、0.82mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(571μL、3.28mmol)のDMSO(12mL)溶液を徐々に加えた。その混合物をアルゴン下、室温で24時間撹拌した。反応混合物を水(200mL)に注ぎ込み、0.45ミクロンフィルターを通して濾過した。精製は、タンジェンシャルフロー濾過により、Stirred Cell(5Kメンブレン、250mL試料レザバー)で行い、これを水(1.5L)で洗浄した。減圧下で保持液から溶媒を減少させた。生成物を水(5mL)に再溶解し、イオン交換カラム(69F、Na+)に通し、凍結乾燥することにより、所期の生成物BHALys[Lys]
16[CO-4-Ph(SO
3Na)]
32を白色固体(89mg、65%)として得た。
1H nmr (300MHz, D
2O) λ(ppm):1.0-1.9 (186H, CH2);2.8-3.2 (62H, CH2);4.0-4.4 (31H, CH);5.9 (1H, CH);7.0-7.2 (10H, Ar-H);7.5-7.8 (128H, Ar-H)。
MS(直接注入):ESI(-ve)m/z=10756 (M-H)-(M-, ナトリウム型)
計算値(ナトリウム型)(C423H481N63O159Na32S32)10754 (M-)。
CE(pH9):98% Rf(分)=12.17
【0215】
BHALys[3H-Lys]16[COCH2CH2(CO2Na)]32の製造
デンドリマー(BHALys[
3H-Lys]
16[NH
2.TFA]
32)(32mg、4.1μmol)およびトリエチルアミン(36μL、0.26mmol)のDMF(5mL)溶液を撹拌したものに、無水コハク酸(26mg、0.26mmol)を加えた。その混合物をアルゴン下、室温で24時間撹拌した。反応混合物を水(50mL)に注ぎ込み、0.45ミクロンフィルターを通して濾過した。精製はタンジェンシャルフロー濾過により、Minimate(1Kメンブレン、70mL試料レザバー)で行った。NaHCO
3(飽和)(100mL)による初期洗浄後に、保持液を水(1.5L)で洗浄した。減圧下で保持液から溶媒を減少させた。生成物を水に再溶解し、イオン交換カラム(69F、Na+)に通し、凍結乾燥することにより、所期の生成物BHALys[
3H-Lys]
16[COCH
2CH
2(CO
2Na)]
32を白色固体(17mg、52%)として得た。
1H nmr (300MHz, D
2O) λ(ppm):1.0-1.8 (186H, CH2);2.3-2.7 (128H, CH2);2.9-3.2 (62H, CH2);4.0-4.2 (31H, CH);6.0 (1H, CH);7.1-7.3 (10H, Ar-H)。
MS(直接注入):ESI(-ve)m/z=7360 (M-H)-(M-, H型)
計算値(H型)(C327H513N63O127)7359 (M-)。
CE(pH9):96% Rf(分)=13.02
【0216】
【表14】
(実施例8)
【0217】
アニオン性デンドリマーの血漿クリアランスおよび生体内分布の研究
この研究で使用した方法は実施例5で使用したものと同じである。ラットに5mg/kgをIV投与した後のBHALys[Lys]
8[CO-4-Ph(SO
3Na)]
16(閉じた円形)、BHALys[Lys]
16[CO-4-Ph(SO
3Na)]
32(中空の円形)およびBHALys[Lys]
16[CO-3,5-Ph(SO
3Na)
2]
32(三角形)について血漿中濃度-時間プロファイルを、
図10に図解する。
【0218】
【表15】
【0219】
【表16】
【0220】
ラットにBHALys[Lys]
8[CO-4-Ph(SO
3Na)]
16(黒)、BHALys[Lys]
16[CO-4-Ph(SO
3Na)]
32(明るい灰色)、BHALys[Lys]
16[CO-3,5-Ph(SO
3Na)
2]
32(暗い灰色)またはBHALys[Lys]
16[CO-CH
2CH
2(CO
2Na)]
32(白)をIV投与した30時間後の、注射した
3Hの生体内分布を、
図11に図解する。パネルA−臓器ごとに存在する
3Hの注射量に対する%。パネルB−組織1グラムあたりに存在する
3Hの注射量に対する%。
(実施例9)
【0221】
実施例8で得た生体試料に関するサイズ排除クロマトグラフィー
この研究で使用した方法は実施例6の場合と同じである。Superdex 75カラムでの血漿中および尿中のBHALys[Lys]
16[CO-4-Ph(SO
3Na)]
32およびBHALys[Lys]
16[CO-3,5-Ph(SO
3Na)
2]
32のサイズ排除プロファイルを
図12に図解する。
(実施例10)
【0222】
トリチウム標識PEGデンドリマー
BHALys[3H-Lys]8[PEG200]16の製造
BHALys[
3H-Lys]
8[NH
2.TFA]
16(125mg、0.03mmol)のDMF(8mL)溶液を撹拌したものに、PyBOP(556mg、1.0mmol)を加えた後、PEG200(240mg、1.0mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(709μL、4.0mmol)のDMF(16mL)およびDMSO(2mL)溶液を加えた。その溶液を室温で16時間撹拌した。反応混合物を水(180mL)に注ぎ込み、濾過し、水で洗浄した。その水溶液を3K撹拌セルに移し、セルに水を通し、残った水を凍結乾燥で除去することにより、BHALys[
3H-Lys]
8[PEG
200]
16を易流動性白色固体(20mg、11%)として得た。
LC/MS(親水性(Philic)TFA):Rf(分)=16.72。ESI(+ve)m/z=5598 (M+H
+)。
【0223】
BHALys[3H-Lys]16[PEG200]32の製造
BHALys[
3H-Lys]
16[NH
2.TFA]
32(30mg、0.004mmol)のDMF(3mL)溶液をアルゴン下で撹拌したものにPyBOP(142mg、0.271mmol)を加え、次にPEG200(62mg、0.263mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(182μL、1.04mmol)のDMF(3mL)溶液を加えた。その溶液を室温で16時間撹拌した。減圧下で溶媒を除去し、得られた粗混合物を最少量の水に溶解した。水を溶離液とするSephadexカラム(LH-20)での精製により、凍結乾燥による水の除去後に、所期の生成物BHALys[
3H-Lys]
16[PEG
200]
32を白色固体(20mg、44%)として得た。LC/MS(親水性(Philic)TFA):Rf(分)=16.74。ESI(+ve)m/z=11,141 (M+H
+)。
【0224】
BHALys[3H-Lys]16[PEG570]32の製造
BHALys[
3H-Lys]
16[NH
2.TFA]
32(20mg、0.003mmol)の乾燥DMF(2mL)溶液を窒素下で撹拌したものに、トリエチルアミン(36μL、0.261mmol)およびPEG685.75,NHSエステル(119mg、0.174mmol)を加えた。反応混合物を室温で16時間撹拌した。その溶液を5K撹拌セルに注ぎ込み、そのセルに水(600mL)を通し、残った水を凍結乾燥(2回)で除去することにより、BHALys[
3H-Lys]
16[PEG
570]
32をガラス状の固体(50mg、88%)として得た。LC(親水性(Philic)TFA):Rf(分)12.42。
【0225】
BHALys[3H-Lys]8[PEG2KD]16の製造
BHALys[
3H-Lys]
8[NH
2.TFA]
16(30mg、0.008mmol)の乾燥DMF(2mL)溶液を窒素下で撹拌したものにPyBOP(141mg、0.271mmol)を加え、次に、PEG2000,NHSエステル(612mg、0.306mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(180μL、1.04mmol)のDMF(1.4mL)およびDMSO(0.6mL)溶液を加えた。その溶液を室温で16時間撹拌した。反応混合物を10K撹拌セルに注ぎ込み、そのセルに水(800mL)を通し、残った水を凍結乾燥で除去することにより、BHALys[
3H-Lys]
8[PEG
2KD]
16を易流動性白色固体(149mg、54%)として得た。
【0226】
BHALys[3H-Lys]16[PEG2KD]32の製造
BHALys[
3H-Lys]
16[NH
2.TFA]
32(30mg、0.004mmol)の乾燥DMF(2mL)溶液をアルゴン下で撹拌したものにPyBOP(142mg、0.272mmol)を加え、次に、PEG2000,NHSエステル(522mg、0.261mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(182μL、1.04mmol)のDMF(3mL)およびDMSO(1mL)溶液を加えた。その溶液を室温で16時間撹拌した。反応混合物を水に注ぎ込み、濾過し、水で洗浄した。精製は、タンジェンシャルフロー濾過により、Mini-mate(10Kメンブレン、水2L)で行った。 凍結乾燥で溶媒を除去することにより、BHALys[
3H-Lys]
16[PEG
2KD]
32を易流動性白色固体(210mg、76%)として得た。
LC/MS(親水性(Philic)TFA):Rf(分)=16.29。ESI(+ve)m/z=67,696 (M+H
+)
【0227】
【表17】
(実施例11)
【0228】
PEGデンドリマーの血漿クリアランスおよび生体内分布の研究
この研究で使用した方法は実施例5で使用したものと同一である。
【表18】
【0229】
BHALys[Lys]
16[PEG
200]
32(閉じた円形)、BHALys[Lys]
16[PEG
570]
32(中空の円形)、BHALys[Lys]
8[PEG
2000]
16(閉じた三角形)およびBHALys[Lys]
16[PEG
2000]
32(中空の三角形)に関する血漿中濃度-時間プロファイルを
図13に図解する。BHALys[Lys]
8[PEG
200]
16に関するデータは示していない。というのも、消失が極めて迅速で、BHALys[Lys]
16[PEG
200]
32に関するデータに隠れるからである。
【0230】
IV投与後のBHALys[Lys]
16[PEG
2000]
32(黒いバー、7日)、BHALys[Lys]
8[PEG
2000]
16(灰色のバー、5日)およびBHALys[Lys]
16[PEG
570]
32(白いバー、30時間)の生体内分布を
図14に図解する。
(実施例12)
【0231】
実施例11で得た生体試料に関するサイズ排除クロマトグラフィー
この研究で使用した方法は実施例6の場合と同じである。5mg/kgをIV投与した後の血漿における
3H標識BHALys[Lys]
16[PEG
200]
32(パネルA;t0,中空の四角形、t=1時間,閉じた円形、t=4時間,中空の円形)、BHALys[Lys]
16[PEG
570]
32(パネルB;24時間)、BHALys[Lys]
8[PEG
2000]
16(パネルC;48時間)およびBHALys[Lys]
16[PEG
2000]
32(パネルD;48時間)に関して、Superdex 75カラムでのサイズ排除プロファイルを、
図15A〜Dに図解する。
【0232】
BHALys[Lys]
16[PEG
200]
32(パネルA;0〜4時間尿,閉じた円形、8〜24時間尿、中空の円形)およびBHALys[Lys]
16[PEG
570]
32(パネルB;8〜24時間尿)をIV投与した後に尿中に排泄された
3Hのサイズ排除プロファイルを
図16AおよびBに図解する。矢印は完全なデンドリマーの保持時間を示す。
【0233】
要約
出願人は
3H標識ポリ-L-リジンデンドリマーの研究を行った(ここでは、BHALys[Lys]
8[NH
2]
16またはBHALys[Lys]
16[NH
2]
32をどちらも製造し、表面はキャッピングなしにしておいた)。比較のために、第3のデンドリマー、すなわちBHALys[Lys]
8[NH
2]
16コアをD-リジンで完全にキャッピングして、その外側層にD-リジンを持つLys
16デンドリマーBHALys[Lys]
8[D-Lys]
16[NH
2]
32を形成させたものも調べた。いずれの場合もデンドリマーは生理的pHにおいてカチオン性アミン基で覆われた。これらの物質に関して血漿クリアランスおよび生体内分布を決定した(実施例5)。血漿中に存在する異なる放射標識分子種をサイズ排除クロマトグラフィーで分離することにより、
3Hデンドリマーの生体内運命をさらに詳しく調べた(実施例6)。ポリ-L-リジンデンドリマーは静脈内投与後、迅速に血漿から除去されるが、その後、代謝され、遊離したL-リジンが内在性再合成プロセスに再び取り込まれることを、データは示している。
【0234】
静脈内投与後は、BHALys[Lys]
8[NH
2]
16も、BHALys[Lys]
16[NH
2]
32も、極めて迅速に血漿から除去されて、10分未満の初期血漿中半減期を示す(
図2)。この迅速な初期喪失は用量にはあまり依存せず(
図3)、(血漿ではなく)全血プロファイルを調べた場合(
図4)にも、L-リジン表面基をD-リジンに変えた場合(
図5)にも明白だった。比較的分子量が高いこれらの分子種では初期分布容積(V
c)が驚くほど高く、より高い分子量を持つ4世代のデンドリマーBHALys[Lys]
16[NH
2]
32およびBHALys[Lys]
8[D-Lys]
16[NH
2]
32のV
cは、分子量が低い3世代の比較対象よりも高かった。したがって、3世代および4世代のデンドリマーに関するV
c値は、分子量よりも、表面電荷とより高い相関関係にあると思われる。このデータは、ポリカチオン性デンドリマーの血管内皮への迅速な結合を反映する初期「分布」過程(これは静電相互作用によって駆動され、循環血漿からの喪失をもたらす過程として起こる)と合致している。対照的に、典型的な血管外遊出過程ではなさそうである。というのも、このような高荷電高分子にとって血管内皮を迅速に横切ることは難しく、分子量および表面電荷の減少と共に増加すると予想されるのに対し、実際にはそれとは反対の現象が観察されたからである。これらの傾向は、全血薬物動態でも明白だった。ただし、小さいデンドリマーの場合、C
p0値は約1/2(そして対応するV
c値は2倍)だった。これは、電荷が比較的少ない3世代のデンドリマーでは、赤血球へのデンドリマーの結合が少なかったことを示唆している。
【0235】
要約すると、アンキャップトポリ-L-リジンデンドリマーは、静脈内注射時に血漿から迅速に除去されること、およびその後、最初は完全なデンドリマーに付随していた放射標識が、SECにおいて遊離リジンおよびいくつかのより大きい分子量(おそらくはタンパク質性)の物質(アルブミンを含む)と同時溶出する分子種に付随して血漿中に再び現われることが、このデータによって示された。またこのデータは、高度に荷電したカチオン性デンドリマーが注射後直ちに内皮細胞表面に迅速に結合し、その後、加水分解されて、循環する遊離リジンを生じ、そしてそれが最終的にはタンパク質生合成経路に再び取り込まれることも示唆している。これらのデータは、我々の知る限り、ポリ-L-リジンデンドリマーの生体内での生分解および再吸収を記述した初めてのデータである。したがって、ポリ-L-リジンデンドリマーの表面の性質を適当に操作することにより、血漿における初期滞留時間を高めることができる。したがって、アンキャップトポリ-L-リジン表面は、生分解性および生体吸収性デンドリマーに基づく薬物送達システムになりうる。
【0236】
別途の研究により、ポリ-L-リジンデンドリマーコアの表面をアニオン性アリールスルホネート基またはアルキルカルボキシレート基でキャッピングすることが、ラットへの静脈内投与後のデンドリマーの薬物動態および生体内分布パターンに及ぼす影響も調べた。
【0237】
ベンゼンスルホネート(CO-4-Ph(SO
3Na))またはベンゼンジスルホネート(CO-3,5-Ph(SO
3Na)
2)末端基でキャッピングされた、サイズが異なる二つのデンドリマーコアBHALys[Lys]
8[NH
2]
16およびBHALys[Lys]
16[NH
2]
32(それぞれ外側層に8個および16個のリジン基を持つ)を利用して、デンドリマーのサイズおよび表面電荷の影響を容易に区別できるようにした(合成実施例7)。四つのトリチウム標識リジンデンドリマーBHALys[Lys]
8[CO-4-Ph(SO
3Na)]
16;BHALys[Lys]
16[CO-4-Ph(SO
3Na)]
32;BHALys[Lys]
16[CO-3,5-Ph(SO
3Na)
2]
32およびBHALys[Lys]
16[CO-CH
2CH
2(CO
2Na)]
32を静脈内に投与(5mg/kg)し、血漿、尿および糞便中の放射能を30時間にわたって監視した(実施例8)。投与の30時間後に動物を屠殺し、主要臓器を摘出し、ホモジナイズし、放射標識をアッセイした。
【0238】
四つのデンドリマーの消失半減期はいずれも基本的に同じ(約1時間)だったが、BHALys[Lys]
8[CO-4-Ph(SO
3Na)]
16の血漿クリアランスおよび分布容積はLys
16デンドリマーより高いことが、血漿中濃度-時間プロファイルによって示された。BHALys[Lys]
8[CO-4-Ph(SO
3Na)]
16およびBHALys[Lys]
16[CO-4-Ph(SO
3Na)]
32デンドリマーに付随する注射された放射標識の約30%が、投与後30時間の間に尿中に排泄されたのに対して、高度に荷電したBHALys[Lys]
16[CO-3,5-Ph(SO
3Na)
2]
32の場合は、同じ期間に用量の3%が尿中に排除されるに過ぎなかった。
【0239】
スクシネートデンドリマーのクリアランスプロファイルは、他のアニオン性デンドリマーとはかなり異なり、スクシネートデンドリマーは静脈内注入時に血漿から極めて迅速に除去された。初期分布容積(V
c)も他のアニオン性デンドリマーより高く、カチオン性デンドリマーのそれに近いことから、放射標識を血漿から迅速に除去する血液成分または内皮表面との初期相互作用が示唆された(
図4)。血漿における最初の20分間での初期喪失速度も極めて迅速であり、やはり、カチオン性デンドリマーで見られたものと類似する時間尺度で起こった。初期の迅速な低下後は、放射標識の除去速度が低下するらしく、投与の30時間後に定量可能な量の放射標識が残っていた。この第2のゆっくりした除去速度が、先にカチオン系で見られたような血漿への標識の再分布を反映しているかどうかはわからない。アニオン性デンドリマーは、赤血球からはほぼ完全に排除されるようだった。他のアニオン性デンドリマーとは対照的に、スクシネートデンドリマーに付随する注射された放射標識の大半が尿中に排泄され(63.71±8.98%)、一方、プールされた糞便には、極めて少量であるが定量可能な量の放射標識が回収された(1.21±0.97%)(表3)。
【0240】
BHALys[Lys]
16[CO-4-Ph(SO
3Na)]
32およびBHALys[Lys]
16[CO-3,5-Ph(SO
3Na)
2]
32を投与したラットから得た血漿試料のサイズ排除クロマトグラフィーにより、どちらのアニオン性デンドリマーも血漿成分に迅速に結合して、高分子量種(<67kDa)を形成することが明らかになった。血漿中に分解生成物は同定されなかったが、尿中の放射標識は主として、Lys-アリールスルホネートモノマーの分子量に近い分子種に付随していた。興味深いことに、尿中の放射標識は、血漿中放射能レベルが極めて低い時間尺度(投与後8〜24時間)に、大半が排泄された。臓器沈着パターンから、各デンドリマーを投与した30時間後に存在する残存放射能は主として肝臓、脾臓および腎臓に濃縮されることが明らかになった。BHALys[Lys]
16[CO-3,5-Ph(SO
3Na)
2]
32の場合、放射能の回収率は肝臓において特に高かった(用量の約50%)。このデータは、ベンゼンスルホネートデンドリマーが血漿から排除された後に、代謝が起こり、それが続いて、分解生成物の尿排除を容易にすることを示唆している。対照的に、尿におけるBHALys[Lys]
16[CO-3,5-Ph(SO
3Na)
2]
32に由来する放射能の回収率が低いのは、おそらくデンドリマーの表面電荷密度が増加した結果として、代謝に対する感受性が低下したことを反映しており、それが結果として、肝臓における高い回収率をもたらしているのだろう。
【0241】
したがって、アニオン性デンドリマーの血漿クリアランスは、アンキャップトカチオン性ポリ-L-リジンデンドリマーについて先に見られたものよりも遅い。第2に、アニオンシリーズ内では、血漿クリアランスが、主として、表面電荷よりもデンドリマーサイズによって決定される。しかし、最終的には、表面電荷が腎排除および生体内分布のパターンを決定し、ベンゼンスルホネートキャップトデンドリマーとベンゼンジスルホネートキャップトデンドリマーとの代謝に対する感受性の相違に起因しうる。
【0242】
PEG化は、タンパク質分解酵素によるタンパク質の認識を減少させ、タンパク質およびコロイドの食作用による除去を抑制し、その結果として、血漿循環時間を延ばすことが知られている。そこで本願では、
3H標識ポリ-L-リジンデンドリマーの血漿プロファイル、生体内分布パターンおよび尿排除にPEG化(合成実施例10)が及ぼす影響を、5mg/kgのデンドリマーを静脈内投与した後のラットで調べた(薬物動態および生体内分布実施例11)。一般に、PEG化デンドリマーの血漿中半減期および尿排除の程度は分子量に依存し、大きいPEG化デンドリマー(すなわち>30kDa)は比較的ゆっくりと血漿から除去されたのに対し(t
1/2 1〜3日)、小さい分子種(すなわち<20kDa)は血漿から尿中に迅速に除去された(t
1/2 1〜10時間)。大きいデンドリマーは最終的には網内系の臓器(肝臓および脾臓)に濃縮されるようだったが、これは長い時間をかけて起こり、絶対的な蓄積の程度は低かった(用量の<10%)。SECでは、最も小さい(200Da)PEG鎖で誘導体化されたデンドリマーが、見かけ上さらに高分子量の分子種の生成をもたらす血漿成分との相互作用の徴候をいくつか示したが、尿への排除は極めて迅速であり、尿には完全なデンドリマーしか回収されなかった。より大きなPEG化種(すなわち2000Da)で誘導体化されたデンドリマーは、血漿中にも尿中にも、親(変化していない)デンドリマーとして存在した。したがって、PEG化ポリ-L-リジンデンドリマー複合体のサイズを操作して、それらの薬物動態を最適に調整することができる。
【0243】
弁別的に保護された中間体および部分PEG構造の例
(実施例15)
【0244】
BHALys[Lys]8[α-Boc]8[ε-NH2]8の製造
i.BHALys[Lys]8[α-Boc]8[ε-CBz]8の製造
BHALys[Lys]
4[NH
2.TFA]
8(1.59mmol)、トリエチルアミン(4.50ml、32.30mmol)およびDMF(30ml)の溶液を磁気撹拌したものに、固形のPNPO-α-Boc-ε-CBz-Lys(7.75g、15.45mmol)を室温で一度に加えた。反応懸濁液は直ちに明黄色に変色し、約5分間の撹拌後は、活性エステルが完全に溶解していた。撹拌を室温でさらに22時間続けた。粗反応混合物を、氷水が入っている大きなビーカーに注ぎ込んだところ、微細な黄色沈殿物が生成した。その懸濁液を濾過し、その結果保持された固形物を吸引しながら終夜風乾した。得られた乾燥淡黄色ケーキを微粉末に粉砕し、アセトニトリルに再懸濁した。その懸濁液を室温で30分間撹拌してから濾過した。保持された固形物をもう一度風乾し、再び粉砕し、アセトニトリルに再懸濁した後、濾過し、終夜風乾することにより、BHALys[Lys]
8[α-Boc]
8[ε-CBz]
8t(5.52g、87%)を無色の固体として得た。
LC/MS(疎水性(Phobic)/TFA):ESI(+ve)実測値 [M+H/3]+ m/z=1328;計算値(C207H305N31O47として)3979.9;Rf(分)=20.22分。
【0245】
ii.BHALys[Lys]8[α-Boc]8[ε-NH2]8の製造
BHALys[Lys]
8[α-Boc]
8[ε-CBz]
8(500mg、0.126mmol)を9:1 DMF/H
2O(12.5ml)に懸濁し、ギ酸アンモニウム(127mg、2.01mmol)を加え、5分間撹拌した後、Pd/C(10%w/w、266mg)を加え、撹拌を2時間続けた。触媒を濾去することによって反応を停止させ、フィルターを9:1 DMF/H
2O(10ml)で洗浄した後、水(2ml)で洗浄した。合わせた濾液を減圧下で濃縮することにより、無色のシロップを得た。それを水(10ml)で処理し、その水を減圧下で除去した後、水から凍結乾燥することにより、BHALys[Lys]
8[α-Boc]
8[ε-NH
2]
8を微細な白色凍結乾燥物(155mg、42%)として得た。
LC/MS(親水性/TFA):ESI(+ve)m/z=969.83 [M+3H]/3+, 727.67 [M+4H]/4+, 582.39 [M+5H]/5+;計算値(C143H257N31O31)2906.8g/mol。換算演算を使ってデータをデコンボリュートすることにより、mw=2906.5を得た。Rf(分)=14.7。
(実施例16)
【0246】
BHALys[Lys]8[α-NH2-TFA]8[ε-CBz]8の製造
BHALys[Lys]
8[α-Boc]
8[ε-CBz]
8(1000mg、0.251mmol)を酢酸(5.5ml)に懸濁し、0℃で撹拌しつつ、トリフルオロ酢酸(5.5ml)を滴下した。反応混合物を室温まで温めて17時間撹拌放置し、その時点で反応混合物をジエチルエーテル中で摩砕した。得られた懸濁液を10分間撹拌し、液体を遠心分離と傾瀉によって除去した。残った沈殿物を、ジエチルエーテルと共に10分間撹拌することによって洗浄し、そのジエチルエーテルを再び遠心分離と傾瀉によって除去した後、沈殿物を減圧下で乾燥し、水に溶解し、凍結乾燥することにより、BHALys[Lys]
8[α-NH
2.TFA]
8[ε-CBz]
8を白色粉末(840mg、105%)として得た。
LC/MS(親水性/TFA):ESI(+ve)m/z=1060.70 [M+3H]/3+, 795.51 [M+4H]/4+, 636.30 [M+5H]/5+;計算値(C167H241N31O31)3178.95g/mol。換算演算を使ってデータをデコンボリュートすることにより、mw=3178.0を得た。Rf(分)=19.1。
(実施例17)
【0247】
BHALys[Lys]16[α-Boc]16[ε-NH2]16の製造
i.BHALys[Lys]16[α-Boc]16[ε-CBz]16の製造
BHALys[Lys]
8[NH
2.TFA]
16(0.81mmol)、トリエチルアミン(4.50ml、32.30mmol)およびDMF(30ml)の溶液を撹拌したものに、固形のPNPO-α-Boc-ε-CBz-Lys(7.94g、15.83mmol)を室温で一度に加えた。反応懸濁液は直ちに明黄色に変色し、約5分間の撹拌後は、活性エステルが完全に溶解していた。撹拌を室温でさらに22時間続けた。粗反応混合物を、氷水が入っている大きなビーカーに注ぎ込んだところ、微細な黄色沈殿物が生成した。その懸濁液を濾過し、その結果保持された固形物を吸引しながら終夜風乾した。得られた乾燥淡黄色ケーキを微粉末に粉砕し、アセトニトリルに再懸濁した。その懸濁液を室温で30分間撹拌してから濾過した。保持された固形物を終夜風乾することにより、BHALys[Lys]
16[α-Boc]
16[ε-CBz]
16(5.79g、91%)を無色の固体として得た。
LC/MS(疎水性(Phobic)/TFA):ESI(+ve)実測値 [M+H/4]+ m/z=1977;[M+H/5]+ m/z=1582;計算値(C407H609N63O95として)7904.9;Rf(分)=23.51分。
【0248】
ii.BHALys[Lys]16[α-Boc]16[ε-NH2]16の製造
BHALys[Lys]
16[α-Boc]
16[ε-CBz]
16(50mg、0.006mmol)、10%Pd/C(53mg)および酢酸(2ml)の懸濁液を水素下、室温で、16時間、激しく撹拌した。その黒い懸濁液を濾過した。濾液を減圧下で濃縮することにより、麦わら色油状の生成物(26mg、71%)を得た。
LC/MS(疎水性(Phobic)/TFA):ESI(+ve)実測値 [M+H/5]+ m/z=1152;[M+H/6]+ m/z=961;[M+H/7]+ m/z=824;[M+H/8]+ m/z=721;[M+H/9]+ m/z=641;計算値(C279H513N63O63として)5758.53;Rf(分)=2.37分。
(実施例18)
【0249】
BHALys[Lys]16[α-NH2.TFA]16[ε-CBz]16の製造
BHALys[Lys]
16[α-Boc]
16[ε-CBz]
16(1000mg、0.127mmol)を酢酸(5.5ml)に懸濁し、0℃で撹拌しつつ、トリフルオロ酢酸(5.5ml)を滴下した。反応混合物を周囲温度まで温めて17時間撹拌放置した。反応混合物をジエチルエーテル(150ml)中で摩砕し、得られた懸濁液を10分間撹拌した。遠心分離(4000rpm、10分)と傾瀉によって液体を除去し、残った沈殿物を、ジエチルエーテル(150ml)と共に10分間撹拌することによって洗浄し、そのジエチルエーテルを再び遠心分離と傾瀉によって除去した。沈殿物を減圧下で乾燥し、水(50mL)に溶解し、凍結乾燥することにより、BHALys[Lys]
16[α-NH
2.TFA]
16[ε-CBz]
16を白色粉末(832mg、114%)として得た。
LC/MS(親水性/TFA):ESI(+ve)m/z=1576.85 [M+4H]/4+, 1261.34 [M+5H]/5+, 1051.27 [M+6H]/6+, 901.15 [M+7H]/7+;計算値(C327H481N63O63として)6302.83g/mol。換算演算を使ってデータをデコンボリュートすることにより、mw=6301.5を得た。Rf(分)=19.0。
(実施例19)
【0250】
BHALys[Lys]8[α-NH2]8[ε-Boc]8の製造
i.BHALys[Lys]8[α-CBz]8[ε-Boc]8の製造
BHALys[Lys]
4[NH
2.TFA]
8(1.59mmol)、トリエチルアミン(4.40ml、31.57mmol)およびDMF(32ml)の溶液を磁気撹拌したものに、固形のPNPO-α-CBz-ε-Boc-Lys(7.69g、15.33mmol)を室温で一度に加えた。反応懸濁液は直ちに明黄色に変色し、約5分間の撹拌後は、活性エステルが完全に溶解していた。撹拌を室温でさらに19時間続けた。粗反応混合物を、アセトニトリル(約300ml)が入っている大きなビーカーに注ぎ込んだ。その懸濁液を濾過し、その結果保持された固形物を吸引しながら終夜風乾した。得られた乾燥淡黄色ケーキを微粉末に粉砕し(乳鉢と乳棒)、アセトニトリル(400ml)に再懸濁した。その懸濁液を室温で60分間磁気撹拌してから濾過した。保持された固形物を再び風乾し、再度粉砕し、アセトニトリルに再懸濁した後、濾過し、終夜風乾することにより、BHALys[Lys]
8[α-CBz]
8[ε-Boc]
8(5.41g、85%)をオフホワイトの固体として得た。
LC/MS(疎水性(Phobic)/TFA/Speedy Ramp):ESI(+ve)実測値 [M+H/3]+ m/z=1328;計算値(C207H305N31O47として)3979.9;Rf(分)=12.98分。
【0251】
ii.BHALys[Lys]8[α-NH2]8[ε-Boc]8の製造
BHALys[Lys]
8[α-CBz]
8[ε-Boc]
8(5.0mg、1.26μmol)を9:1 DMF/H
2O(2ml)に懸濁し、周囲温度で撹拌し、ギ酸アンモニウム(2.5mg、40.2μmol)を加えてから、Pd/C(10%w/w、2.7mg)を加え、撹拌を20時間続けた。触媒を濾去することによって反応を停止させ、フィルターを9:1 DMF/H
2O(1ml)ですすいだ。濾液を減圧下で濃縮することにより、無色のシロップを得た。それを水(1ml)で処理し、その水を減圧下で除去した後、水(1ml)から凍結乾燥することにより、BHALys[Lys]
8[α-NH
2]
8[ε-Boc]
8を微細な白色凍結乾燥物(2mg、42%)として得た。
LC/MS(親水性/TFA):ESI(+ve)m/z=969.88 [M+3H]/3+, 727.56 [M+4H]/4+;計算値(C143H257N31O31として)2906.8g/mol。換算演算を使ってデータをデコンボリュートすることにより、mw=2906.5を得た。Rf(分)=17.2。
(実施例20)
【0252】
BHALys[Lys]8[α-CBz]8[ε-NH2.TFA]8の製造
BHALys[Lys]
8[α-CBz]
8[ε-Boc]
8(20.0mg、0.005mmol)を酢酸(109μl)に懸濁し、水浴中で撹拌した。トリフルオロ酢酸(109μl)を注意深く加えて全ての固形物を溶解させ、撹拌を周囲温度で16時間続けた。減圧下で全ての揮発物を除去することによって反応を停止させたところ、無色透明の油状物を得た。この油状物をジエチルエーテル中で摩砕し、得られた白色沈殿物をジエチルエーテルで洗浄し、減圧下で乾燥することにより、BHALys[Lys]
8[α-CBz]
8[ε-NH
2.TFA]
8(12.1mg、76%)を白色固体として得た。
LC/MS(親水性/TFA):ESI(+ve)m/z=1060.43 [M+3H]/3+, 795.63 [M+4H]/4+, 636.79 [M+5H]/5+;計算値(C167H241N31O31として)3178.95g/mol。換算演算を使ってデータをデコンボリュートすることにより、mw=3179.25を得た。Rf(分)=16.6。
(実施例21)
【0253】
BHALys[Lys]16[α-NH2]16[ε-Boc]16の製造
i.BHALys[Lys]16[α-Fmoc]16[ε-Boc]16の製造
BHALys[Lys]
8[NH
2.TFA]
16(0.54mmol)、DIPEA(3.0ml、17.22mmol)およびDMF(11ml)の溶液を撹拌したものに、固形のペンタフルオロフェニルオキシ-α-Fmoc-ε-Boc-Lys(6.58g、10.36mmol)を室温で一度に加えた。反応懸濁液は直ちに明黄色に変色し、約10分間の撹拌後は、活性エステルが完全に溶解していた。撹拌を室温でさらに18時間続けた。その後は粗反応混合物が濃厚になりすぎて磁気撹拌をもはや続けることができなくなった。アセトニトリル(約300ml)を反応フラスコに加え、撹拌を再開させるのに十分になるまで、固形物の塊をスパチュラで砕いた(1時間)。その懸濁液を濾過し、減圧下で終夜風乾した。得られたほぼ無色のケーキを乳鉢と乳棒で粉砕し、その微細な固形物をアセトニトリル(500ml)に2時間再懸濁した。その後、懸濁液を濾過し、無色の固体を集め、室温で終夜風乾した。所期の生成物をオフホワイトの固体(4.72g、94%)として得た。この生成物をFmoc脱保護誘導体BHALys[Lys]
16[α-NH
2]
16[ε-Boc]
16として特徴づけた(ii参照)。
【0254】
ii.BHALys[Lys]16[α-NH2]16[ε-Boc]16の製造
BHALys[Lys]
16[α-Fmoc]
16[ε-Boc]
16(1.0g、0.108mmol)およびDMF(10ml)の懸濁液を磁気撹拌したものに、ニートのピペリジン(1ml、10.11mmol)を室温で一度に加えた。その懸濁液をさらに17時間撹拌したところ、粗反応混合物は淡黄色溶液になった。その混合物を減圧下で濃縮することにより、オフホワイトの固体を得て、その固体を次いでジエチルエーテル(約100ml)に懸濁した。室温で30分間撹拌した後、懸濁液を濾過し、集めた固形物を終夜風乾した。所期の生成物を無色の固体(0.60g、97%)として得た。
LC/MS(疎水性(Phobic)/TFA):ESI(+ve)実測値 [M+H/4]+ m/z=1441;[M+H/5]+ m/z=1153;[M+H/6]+ m/z=961;計算値(C279H513N63O63として)5758.5;Rf(分)=2.95分。
(実施例22)
【0255】
BHALys[Lys]16[α-Boc]16[ε-NH2Boc]16の製造
BHALys[Lys]16[α-Boc]16[ε-Fmoc]16の製造およびBHALys[Lys]16[α-Boc]16[ε-Fmoc]16の製造
BHALys[Lys]
16[α-CBz]
16[ε-Boc]
16(0.01mmol)およびジクロロメタン(0.5ml)の混合物を撹拌したものに、窒素下で、ニートのTFA(0.5ml)を滴下した。撹拌を室温で18時間続けた。揮発性反応成分を減圧下で除去し、得られたゴム状残渣をジエチルエーテルで処理することにより、塩生成物の沈殿を誘発した。その懸濁液を濾過し、集めた固形物をジエチルエーテルで洗浄した。得られた固形物を水に溶解し、凍結乾燥により、終夜、濃縮乾固した。生成物を綿毛状無色の固体として得た。
LC/MS(親水性/TFA):ESI(+ve)実測値 [M+H/4]+ m/z=1577;[M+H/5]+ m/z=1262。計算値(C
327H
481N
63O
63として)6302.8。
(実施例23)
【0256】
BHALys[Lys]16[α-CBz]16[ε-NH2.TFA]16の製造
BHALys[Lys]
16[α-CBz]
16[ε-Boc]
16(0.01mmol)およびジクロロメタン(0.5ml)の混合物を撹拌したものに、窒素下で、ニートのTFA(0.5ml)を滴下した。撹拌を室温で18時間続けた。揮発性反応成分を減圧下で除去し、得られたゴム状残渣をジエチルエーテルで処理することにより、塩生成物の沈殿を誘発した。その懸濁液を濾過し、集めた固形物をジエチルエーテルで洗浄した。得られた固形物を水に溶解し、凍結乾燥により、終夜、濃縮乾固した。生成物を綿毛状無色の固体として得た。
LC/MS(親水性/TFA):ESI(+ve)実測値 [M+H/4]+ m/z=1577;[M+H/5]+ m/z=1262。計算値(C
327H
481N
63O
63として)6302.8。
(実施例24)
【0257】
BHALys[Lys]16[α,α-Boc]8[α,ε-Boc]8[ε,α-Boc]8[ε,ε-CBz]8の製造
i.BHALys[Lys]8[ε-CBz]8[α-Lys]8[Boc]16の製造
BHALys[Lys]
8[ε-CBz]
8[α-NH
2.TFA]
8(3g、0.75mmol)のDMF(30mL)溶液を撹拌したものに、DBL-OPNP(3.6g、7.2mmol)およびトリエチルアミン(2.1mL、15mmol)を加えた。得られた黄色溶液を室温で16時間撹拌した。反応混合物を撹拌したアセトニトリル(300mL)に加えたところ、黄色溶液中に白色沈殿が生じた。この沈殿物を濾過によって集め、残存着色物質を除去するためにアセトニトリルで洗浄した。次に沈殿物を減圧下、室温で乾燥することにより、BHALys[Lys]
8[ε-CBz]
8[α-Lys]
8[Boc]
16を白色粉末(4.2g、98%)として得た。
LC/MS(ファスト疎水性(Fast Hydrophobic)/TFA):Rf(分)=13.70;ESI(+ve)m/z=1936 ([M+3]/3), 1452 ([M+4]/4), 1062 ([M+5-Boc]/5);計算値 C295H465N47O71. M+1. 5083.4。
【0258】
ii.BHALys[Lys]8[ε-NH2]s[α
-Lys]8[Boc]16の製造
BHALys[Lys]
8[ε-CBz]
8[α-Lys]
8[Boc]
16(2.2g、0.38mmol)の酢酸(30mL)溶液を撹拌したものに、10%Pd/C(101mg、0.095mmol)を加えた。得られた均一混合物を室温で16時間、水素下に置いた。その溶液を濾過し、減圧下で濃縮した。得られた粘稠な残渣を水に再溶解し、凍結乾燥することにより、BHALys[Lys]
8[ε-NH
2]
8[α-Lys]
8[Boc]
16(1.97g、0.38mmol)を得た。この物質は多少の酢酸残渣を含有していた。
LC/MS(親水性/TFA):Rf(分)=18.53;ESI(+ve)m/z=1184 ([M+4]/4), 947 ([M+5]/5), 790 ([M+6]/6);計算値. C231H417N47O55. M+1. 4731.1。
【0259】
iii.BHALys[Lys]16[α,α-Boc]8[α,ε-Boc]8[ε,α-Boc]8[ε,ε-CBz]8の製造
BHALys[Lys]
8[ε-NH
2]
8[α-Lys]
8[Boc]
16(90mg、0.019mmol)のDMF(10mL)溶液を撹拌したものに、PNPO-α-Boc-ε-CBz-Lys(90mg、0.18mmol)およびトリエチルアミン(0.05mL、0.35mmol)を加えた。得られた黄色溶液を室温で16時間撹拌した。次に反応混合物を撹拌したアセトニトリル(100mL)に加えたところ、黄色溶液中に白色沈殿物が生じた。この沈殿物を濾過によって集め、残存着色物質を除去するためにアセトニトリルで洗浄した。沈殿物を減圧下、室温で乾燥することにより、BHALys[Lys]
16[α,α-Boc]
8[α,ε-Boc]
8[ε,α-Boc]
8[ε,ε-CBz]
8(51mg、35%)を得た。
LC/MS(疎水性 TFA Speedy Rp):Rf(分)=14.32;ESI(+ve)m/z=2544 ([M+3]/3), 1909 ([M+4]/4), 1527 ([M+5]/5);計算値. C383H625N63O95. M+1. 7629。
(実施例25)
【0260】
BHALys[Lys]16[α,α-Boc]8[α,ε-Boc]8[ε,α-Boc]8[ε,ε-Fmoc]8の製造
BHALys[Lys]
8[ε-NH
2]s[α-Lys]
8[Boc]
16(100mg、0.017mmol)のDMF(10mL)溶液を撹拌したものに、PFP-Lys-α-Boc-ε-Fmoc(96mg、0.15mmol)およびトリエチルアミン(0.04mL、0.27mmol)を加えた。その溶液を室温で16時間撹拌した。次に反応混合物をアセトニトリル(100ml)に加えたところ、透明なゼラチン状の沈殿物が生じた。この沈殿物を濾過によって集め、アセトニトリルで洗浄した。沈殿物を室温で乾燥することにより、BHALys[Lys]
16[α,α-Boc]
8[α,ε-Boc]
8[ε,α-Boc]
8[ε,ε-Fmoc]
8(30mg、21%)を得た。
LC/MS(疎水性/TFA):Rf(分)=7.72;ESI(+ve)m/z=1667 ([M+5]/5), 1389 ([M+6]/6), 1191([M+7]/7);計算値. C439H657N63O95. M+1 8332。
【0261】
明確に規定されたPEG1.7KDの製造
HO
2C-PEG
1146-NH
2(245mg、0.21mmol、1.07等量)およびPEG
570-NHS(136mg、0.2mmol)のDMF(6mL)溶液を撹拌したものに、2mLの緩衝液(pH8.5、Na
2HPO
4の溶液(100mL)を撹拌したものに2.5mLの0.1M HCl溶液を加え、添加完了後、5分間撹拌することによって調製)を加えた。反応混合物を室温で終夜撹拌した。溶媒をロータバップで除去することにより、PEG
1716-CO
2Hを残渣として得た。それをLCで精製することにより、所期の生成物を得た(収率80%)。
(実施例26)
【0262】
BHALys[Lys]8(α-NH2.TFA)8(ε-PEG571)8の製造
i.BHALys[Lys]8(α-Boc)8(ε-PEG571)8の製造
BHALys[Lys]
8(α-Boc)
8(ε-NH
2.TFA)
8(9.2mg、0.003mmol)の乾燥DMF(1mL)およびDMSO(1mL)溶液を窒素下で撹拌したものに、NHS-PEG685.75(26mg、0.45mmol)およびトリエチルアミン(10μL、0.108mmol)を加えた。反応混合物を室温で16時間撹拌した後、減圧下で濃縮することにより、粗油状物を得て、それを分取HPLC[C18分取用カラム:Waters Xterra Prep RP18、10μm、19×250mm.周囲温度.勾配:80分で10-45%MeCN.Rf(分)85]で精製することにより、BHALys[Lys]
8(α-Boc)
8(ε-PEG
571)
8を無色の油状物(18mg、75%)として得た。
LC-MS:(疎水性(Phobic), TFA)Rf(分)12.81。ESI(+ve)m/z=1246.3 (M/6), 1068.2 (M/7), 934.8 (M/8) 831.2 (M/9)。
【0263】
ii.BHALys[Lys]8(α-NH2.TFA)8(ε-PEG571)8
BHALys[Lys]
8(α-Boc)
8(ε-PEG
571)
8(18mg、0.002mmol)のCH
2Cl
2(3mL)溶液を0℃で撹拌したものに、TFA(45μL、0.58mmol)を加え、0℃での撹拌を20分間続けた後、室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去することにより、BHALys[Lys]
8(α-NH
2.TFA)
8(ε-PEG
571)
8を油状物(16mg、88%)として得た。
LC-MS:(親水性(Philic), TFA)Rf(分)10.36。ESI(+ve)m/z=954 (M/7), 834 (M/8), 742 (M/9)。
(実施例27)
【0264】
BHALys[Lys]16[α-PEG570]16[ε-MTX]16の製造
反応スキーム3(
図17)を参照して標題化合物の製造を例示する。この反応スキームは以下のとおりである。BHALys[Lys]
16[α-Fmoc]
16[ε-Boc]
16(
図17の構造2;R
1=Fmoc、R
2=Boc)をDMF中でピペリジンと反応させて、BHALys[Lys]
16[α-NH
2]
16[ε-Boc]
16(構造3f;R
1=H、R
2=Boc)を得る。次に、構造3fをDIPEAを使って過剰量のPEG
570-NHSとDMF中で反応させることにより、BHALys[Lys]
16[α-PEG
570]
16[ε-Boc]
16(構造3g;R
1=PEG
570、R
2=Boc)を得る。次に、構造3gをDCM中でTFA(20%)と反応させ、次いでイオン交換樹脂(OH-型)と反応させることにより、BHALys[Lys]
16[α-PEG
570]
16[ε-NH
2]
16(構造3h;R
1=PEG
570、R
2=NH
2)を得る。次に、構造3hを過剰量のα-tBu-γ-MTX-OH、EDC、HOBtおよびDIPEAとDMSO中で反応させて、BHALys[Lys]
16[α-PEG
570]
16[ε-(α-tBu-MTX)]
16(構造3i;R
1=PEG
570、R
2=α-tBu-MTX)を得る。次に、構造3iをTFAと反応させて、BHALys[Lys]
16[α-PEG
570]
16[ε-MTX]
16(構造3j;R
1=PEG
570、R
2=MTX)を得る。
【0265】
PEG
570-NHSの代りにPEG
1716、PEG
2645およびPEG
3974を使用すると、PEGサイズの大きいデンドリマー構築物が得られ、これには、DMF中の構造3fと過剰量のPEG
MW-CO
2H、HOBtおよびEDCとからDIPEAを使って構造3g(R
1=PEG
MW、R
2=CBz)BHALys[Lys]
16[α-PEG
MW]
16[ε-CBz]
16を得るための代替反応条件が必要である。
(実施例28)
【0266】
BHALys[Lys]16[α-PEG570]16[ε-COCH2CH2CO-タキソール]16の製造
反応スキーム5(
図18)を参照して標題化合物の製造を例示する。この反応スキームは以下のとおりである。BHALys[Lys]
16[α-PEG
570]
16[ε-NH
2]
16(構造3h;R
1=PEG
570、R
2=H)とTFA(16等量)とを過剰量のHO
2CCH
2CH
2CO-タキソール、EDC、HOBtおよびDIPEAとDMF中で反応させて、BHALys[Lys]
16[α-PEG
570]
16[ε-COCH
2CH
2CO-タキソール]
16(構造3l;R
1=PEG
570、R
2=COCH
2CH
2CO-タキソール)を得る。
【0267】
構造3hにおいてPEG
570の代りにPEG
1716、PEG
2645およびPEG
3974を使用すると、PEGサイズが増加したデンドリマー構築物が得られる。
(実施例29)
【0268】
BHALys[Lys]16[ε,ε-PEG570]8[COCH2CH2CO-タキソール]24の製造
i.BHALys[Lys]8[α-NH2]8[ε-CBz]8の製造
反応スキーム6(パート1)(
図19A)を参照して中間体化合物の製造を例示する。この反応スキームは以下のとおりである。BHALys[Lys]
4[NH
2-TFA]
8(構造4;R
1=H.TFA)を過剰量のPNPO-α-Boc-ε-CBz-LysおよびDIPEAとDMF中で反応させて、BHALys[Lys]
8[α-Boc]
8[ε-CBz]
8(構造5a;R
1=Boc、R
2=CBz)を得る。構造5aをTFA/酢酸と反応させた後、イオン交換樹脂(0H-型)と反応させることにより、BHALys[Lys]
8[α-NH
2]
8[ε-CBz]
8(構造5b;R
1=H、R
2=CBz)を得る。
【0269】
ii.BHALys[Lys]16[ε,ε-PEG570]8[COCH2CH2CO-タキソール]24の製造
反応スキーム6(パート2)(
図19B)を参照して標題化合物の製造を例示する。この反応スキームは以下のとおりである。BHALys[Lys]
8[α-NH
2]
8[ε-CBz]
8(構造5b;R
1=H、R
2=CBz)とTFA(8等量)とを、過剰量のDBL-OPNPおよびDIPEAとDMF中で反応させて、BHALys[Lys]
8[ε-CBz]
8[Lys]
8[α,α-Boc]
8[α,ε-Boc]
8(構造6a;R
1=Boc、R
2=CBz)を得る。構造6aをH
2およびPd(10%)炭と酢酸中で反応させた後、イオン交換樹脂(OH-型)と反応させることにより、BHALys[Lys]
8[ε-NH
2]
8[Lys]
8[α,α-Boc]
8[α,ε-Boc]
8(構造6b;R
1=Boc、R
2=H)を得る。構造6bとTFA(8等量)とを過剰量のPNPO-α-Boc-ε-CBz-LysおよびDIPEAとDMF中で反応させて、BHALys[Lys]
16[ε,ε-CBz]
8[Boc]
24(構造7a;R
1=Boc、R
2=CBz)を得る。構造7aをH
2およびPd(10%)炭と酢酸中で反応させ、次にイオン交換樹脂(OH-型)と反応させることにより、BHALys[Lys]
16[ε,ε-NH
2]
8[Boc]
24(構造7b;R
1=Boc、R
2=H)を得る。構造7bを過剰量のPEG
570-NHSとDMF中でDIPEAを使って反応させることにより、BHALys[Lys]
16[ε,ε-PEG
570]
8[Boc]
24(構造7c;R
1=Boc、R
2=PEG
570)を得る。構造7cをTFAと反応させてBHALys[Lys]
16[ε,ε-PEG
570]
8[NH
2-TFA]
24(構造7d;R
1=H.TFA、R
2=PEG
570)を得る。構造7dIを過剰量のHO
2CCH
2CH
2CO-タキソール、EDC、HOBtおよびDIPEAとDMF中で反応させて、BHALys[Lys]
16[ε,ε-PEG
570]
8[COCH
2CH
2CO-タキソール]
24(構造7e;R
1=COCH
2CH
2CO-タキソール、R
2=PEG
570)を得る。
【0270】
PEG
570-NHSの代りにPEG
1716、PEG
2645およびPEG
3974を使用すると、PEGサイズの大きいデンドリマー構築物が得られ、これには、構造7bをDMF中で過剰量のPEG
MW-CO
2HならびにHOBtおよびEDCとDIPEAを使って反応させて、BHALys[Lys]
16[ε,ε-PEG
MW]
8[Boc]
24(構造7c;R
1=Boc、R
2=PEG
MW)を得るための代替反応条件が必要である。
(実施例30)
【0271】
明確に規定されたPEG部分:PEG1716、PEG2645、PEG3974の製造
上記の反応スキームにおいて代用するための上記代替PEG部分の製造を、反応スキーム7(
図20)を使って例示する。この反応スキームは以下のとおりである。i.HO
2C-PEG
1146-NH
2をPEG
570-NHSとDMF-緩衝液pH8.5中で反応させてPEG
1716-CO
2Hを得る。ii.PEG
1716-CO
2HをDCCおよびNHSと反応させ、次にHO
2C-PEG
1146-NH
2とDMF-緩衝液pH8.5中で反応させることにより、PEG
2845-CO
2Hを得る。iii.PEG
2845-CO
2HをDCCおよびNHSと反応させた後、HO
2C-PEG
1146-NH
2とDMF-緩衝液pH8.5中で反応させることにより、PEG
3974-CO
2Hを得る。
(実施例31)
【0272】
BHALys[Lys]2[Su(NPN)2]4[α-tBu-MTX]4[PEG570]4の製造
i.N-(ベンジルオキシカルボニル)-3-ブロモプロピルアミンの製造
【化10】
DCM(200mL)中の3-ブロモプロピルアミン臭化水素酸塩(10.0g、45.6mmol)とN-(ベンジルオキシカルボニルオキシ)-スクシンイミド(11.22g、47.9mmol)の氷冷混合物に、TEA(6.91g、68.5mmol)を滴下した。撹拌した混合物を終夜、室温まで温まらせた後、水(3回)、ブラインで洗浄し、乾燥(MgSO
4)し、濾過し、濃縮することにより、11.43g(92%)のN-(ベンジルオキシカルボニル)-3-ブロモプロピルアミンを淡黄色油状物として得た。
【0273】
ii.[BOC][Cbz][NPN]2の製造
【化11】
DMF(150mL)中のN-(ベンジルオキシカルボニル)-3-ブロモプロピルアミン(11.20g、41.2mmol)とN-BOCジアミノプロパン(7.16g、41.2mmol)の混合物を室温で撹拌したものに、TEA(17.1mL、123.5mmol)を滴下した。その混合物を70℃に1時間加熱した後、溶媒の約2/3を減圧下で除去した。次に、濃縮したDMF混合物を水(400mL)で希釈し、エーテル(200mL×3)で洗浄することにより、過剰アルキル化副生成物の大半を除去した。次に、そのDMF/水性混合物を塩基性にし(1.0M NaOH)、エーテル(200mL×5)で抽出した。次に、合わせたエーテル抽出物を、未反応のN-BOCジアミノプロパンを除去するために水(200mL×3)で洗浄し、乾燥し(MgSO
4)、濾過し、濃縮することにより、7.13g(47%)の[BOC][Cbz][NPN]
2を、無色透明な油状物として得た。
【0274】
iii.[BOC][Cbz][NPN]2SuOHの製造
【化12】
トルエン(60mL)中の[BOC][Cbz][NPN]
2(6.55g、17.9mmol)の混合物を室温で撹拌したものに、無水コハク酸(1.79g、17.9mmol)を加えた。その混合物を70℃に1時間加熱してから濃縮した。次に残渣をEA/エーテル(5:1)に溶解し、NaOH(1.0M、100mL×2)で洗浄した。次に塩基洗浄液をエーテルで洗浄してから、中和(HCl、1.0M、100mL×2)した。次に、その水性混合物をEA(250mL×3)で洗浄し、乾燥し(MgSO
4)、濾過し、濃縮することにより、6.97g(84%)の[BOC][Cbz][NPN]
2SuOHを無色の粘稠な油状物として得た。
【0275】
iv.[BOC][Cbz][NPN]2SuOPNPの製造
【化13】
EA(150mL)中の4-ニトロフェノール(1.91g、13.7mmol)と[BOC][Cbz][NPN]
2SuOH(6.39g、13.7mmol)の混合物を室温で撹拌したものに、EA(50mL)に溶解したDCC(2.97g、14.4mmol)を加えた。その混合物を室温で終夜、撹拌放置してから、濾過した(DCUを除去するため)。次に、その混合物をK
2CO
3(1.0M)/ブライン 1:1(300mL×3)、ブラインで洗浄し、乾燥(MgSO
4)し、濾過し、濃縮することにより、[BOC][Cbz][NPN]
2SuOPNP(7.80g)を粗物質として得た。
【0276】
v.[BOC][Cbz][NPN]2SuOEtの製造
【化14】
撹拌したEtOH(100mL)中の[BOC][Cbz][NPN]
2SuOPNP(1.16g、1.98mmol)とTEA(2.0mL、14.4mmol)の混合物を70℃で2日間加熱し、濃縮してから、酢酸エチル(120mL)に取り出した。次にその混合物をK
2CO
3溶液(5%、200mL×4)、ブラインで洗浄し、乾燥(MgSO
4)し、濾過し、濃縮することにより、0.87g(90%)の[BOC][Cbz][NPN]
2SuOEtを無色の粘性油状物として得た。
LCMS(LC:親水性(philic), ホルメート、RT=9.3分;MS(M(計算値) C
25H
39N
3O
7=493.61):511 ([M+NH
4]
+, 13%)、494([M+H]
+, 100%)、438 ([M-t-Bu+H]
+, 15%)、394 ([M-BOC+H]
+, 13%)。
1H (CDCl
3):δ 7.30-7.38 (m, 5H), 5.70(br s, 0.5H), 5.25 (br s, 0.5H), 5.10(br s, 0.5H), 5.10, 5.08 (2s, 2H), 4.70(br s, 0.5H), 4.12 (q, J=9.0Hz, 2H), 2.95-3.45 (m, 8H), 2.52-2.70(m, 4H), 1.73-1.90(m, 2H), 1.60-1.70(m, 2H), 1.42, 1.44 (2s, 9H), 1.25 (t, J=9.0Hz, 3H)。
【0277】
vi.[BOC][NH2][NPN]2SuOEtの製造
【化15】
DMF/H
2O(9:1、20mL)中の[BOC][Cbz][NPN]
2SuOEt(0.88g、1.77mmol)の混合物を撹拌したものに、ギ酸アンモニウム(224mg、3.55mmol)およびPd/C(10%、470mg)を加えた。その混合物を室温で2時間撹拌してから濾過(0.2μm PALLフィルターディスク)し、濃縮した。残渣を水にとり、濃縮した(2回)。次にこれをMeOHおよびDCMで繰り返すことにより、0.54g(84%)の[BOC][NH
2][NPN]
2SuOEtを無色透明な油状物として得た。
LCMS(LC:親水性(philic), TFA、RT=6.2分;MS(M(計算値) C
17H
33N
3O
5=359.47):360 ([M+H]
+, 100%)。
1H (CDCl
3):δ 5.30(br s, 1H), 4.80(br s, 1H), 4.12 (q, J=9.0Hz, 2H), 3.29-3.46 (m, 4H), 3.14 (m, 1H), 3.07 (m, 1H), 2.56-2.80(m, 6H), 1.60-1.90(m, 4H), 1.42, 1.43 (2s, 9H), 1.25 (t, J=9.0Hz, 3H)。
vii.[BOC][PEG570][NPN]2SuOEtの製造
【化16】
DCM(2mL)中の[BOC][NH
2][NPN]
2SuOEt(157mg、0.44mmol)の混合物を撹拌したものに、TEA(121μl、0.87mmol)およびPEG
570-NHS(300mg、0.44mmol)をDCM(2mL)溶液として加えた。その混合物を室温で終夜撹拌してから、fcc(2-10% MeOH/DCM)で精製することにより、331mg(82%)の[BOC][PEG
570][NPN]
2SuOEtを無色透明の油状物として得た。
LCMS(LC:親水性(philic), TFA、RT=8.2分;MS(M(計算値) C
43H
83N
3O
18=930.15):948 ([M+NH
4]
+, 12%)、931 ([M+H]
+, 2%)、416 (1/2[M-BOC+2H
+], 100%)。
1H (CDCl
3):δ 7.10(br s, 1H), 7.03 (br s, 1H), 4.16 (q, J=9.0Hz, 2H), 3.72 (m, 2H), 3.58-3.66 (m, 36H), 3.52-3.56 (m, 2H), 3.47 (s, 2H), 2.96-3.42 (m, 7H), 3.37 (s, 4H), 2.70(s, 4H), 2.60(m, 4H), 2.47 (m, 2H), 1.60-1.90(m, 4H), 1.41, 1.43 (2s, 9H), 1.24 (t, J=9.0Hz, 3H)。
【0278】
viii.[NH2-TFA][PEG570][NPN]2SuOEtの製造
【化17】
DCM(2mL)中の[BOC][PEG
570][NPN]
2SuOEt(180mg、0.19mmol)の混合物を撹拌したものにTFA(0.50mL)を加えた。その混合物を室温で6時間撹拌し、濃縮し、H
2Oを加え、濃縮した(2回)。次に残渣を再びH
2O(20mL)にとり、濾過(0.2μm PALLフィルターディスク)してから、凍結乾燥することにより、0.17g(93%)の[NH
2.TFA][PEG
570][NPN]
2SuOEt を無色透明の油状物として得た。
LCMS(LC:親水性(philic), TFA、RT=5.9分;MS(M(計算値) C
38H
75N
3O
16=830.03):831 ([M+H]
+, 7%)、425 (1/2[M+Na
++H
+], 30%)、416 (1/2[M+2H
+], 100%)。
1H (D
2O):δ 4.17 (q, J=9.0Hz, 2H), 3.80(t, J=6.0Hz, 2H), 3.62-3.75 (m, 43H), 3.38-3.53 (m, 4H), 3.40(s, 3H), 2.90-3.31 (m, 4H), 2.77 (s, 4H), 2.64-2.89 (m, 4H), 2.52-2.58 (m, 2H), 1.72-2.11 (m, 4H), 1.13 (t, J=9.0Hz, 3H)。
【0279】
ix.[α-tBu-MTX][PEG1570][NPN]2SuOEtの製造
【化18】
DMF(0.5mL)中の[NH
2.TFA][PEG
570][NPN]
2SuOEt(30mg、31.7μmol)とα-tBu-γ-MTX-OH(16.2mg、31.7μmol){C.L. Francis, Q. Yang、N.K. Hart, F. Widmer, M.K. MantheyおよびH. Ming He-Williams, Aust. J. Chem. 2002, 55, 635}の混合物を0℃で撹拌したものに、PyBOP(18mg、34.8μmol)およびDIPEA(23μL、0.127mmol)を加えた。その混合物を0℃で30分間撹拌してから、室温で3時間撹拌した。DMFを除去し、残渣をPTLC(7%MeOH, 93%DCM、Rf=0.3)で精製することにより、23mg(55%)の[α-tBu-MTX][PEG
1570][NPN]
2SuOEtを橙色油状物として得た。
LCMS(LC:親水性(philic), TFA、RT=8.0分;MS(M(計算値) C
62H
103N
11O
20=1322.57):1323 ([M+H]
+, 2%)、662 (1/2[M+2H
+], 17%)、634 (1/2[M-tBu+2H
+], 82%)。
【0280】
x.[α-tBu-MTX][PEG570][NPN]2SuOHの製造
【化19】
THF/H
2O(2:1、9mL)中の[α-tBu-MTX][PEG
1570][NPN]
2SuOEt(109mg、82.4μmol)の混合物を撹拌したものに、NaOH(0.16mL、1.0M)を加えた。反応を室温で16時間撹拌放置し、必要であればNaOHを追加した(反応をtlcで判定)。反応が完了した後、pHをHCl(1.0M)で中性に調節した。次に溶媒を除去し、残渣をMeOHにとり、塩を除去するために濾過した。次に、残渣をPTLC(18%MeOH, 82%DCM、Rf=0.4)で精製することにより、52mg(49%)の[α-tBu-MTX][PEG
570][NPN]
2SuOHを橙色油状物として得た。
LCMS(LC:親水性(philic), TFA、RT=6.8分;MS(M(計算値) C
60H
99N
11O
2O=1294.52):1317 ([M+Na]
+, 3%)、1295 ([M+H]
+, 2%)、648 (1/2[M+2H
+], 10%)、620 (1/2[M-tBu+2H
+], 74%)、419 (100%)。
【0281】
xi.BHALys[Lys]2[Su(NPN)2]4[α-tBu-MTX]4[PEG570]4の製造
DMF(1.2mL)中の[α-tBu-MTX][PEG
570][NPN]
2SuOH(10mg、7.7μmol)とBHALys[Lys]
2[NH
2.TFA]
4(1.43mg、1.4μmol)の混合物を0℃で撹拌したものに、PyBOP(4.0mg、7.7μmol)およびDIPEA(3.9μL、22.4μmol)を加えた。その混合物を0℃で30分間撹拌した後、室温で3時間撹拌した。DMFを除去し、残渣を分取HPLC(Waters Xterra MS C
18、10μm、19×250mm、30-60%ACN, 0.1%TFA、8mL/分、RT=34分)で精製することにより、2mg(25%{大半がボイドに溶出}のBHALys[Lys]
2[Su(NPN)
2]
4[α-tBu-MTX]
4[PEG
570]
4を得た。
LCMS(LC:親水性(philic), TFA、RT=8.0分;MS:1136 (1/5[M+5H
+], 18%)、946 (1/6[M+6H
+], 100%)、812 (1/7[M+7H
+], 22%)。換算値5,673.34(M(計算値) C
271H
437N
51O
79=5,673.80)。
(実施例32)
【0282】
BHALys[Lys]4[Su(NPN)2]8[α-tBu-MTX]8[PEG570]8の製造
実施例31に記載したものと同様の手法を使ってBHALys[Lys]
4[NH
2.TFA]
8を[α-tBu-MTX][PEG
570][NPN]
2SuOHと反応させることにより、BHALys[Lys]
4[Su(NPN)
2]
8[α-tBu-MTX]
8[PEG
570]
8(10mg)(51%)を得た。分取HPLC(5-60%ACN、90分、RT54分)。
LCMS(LC:親水性(philic), TFA、RT=9.0分;MS:1614 (1/7[M+7H
+], 26%)、1413 (1/8[M+8H
+], 73%)、1256 (1/9[M+9H
+], 100%)。換算値11,294.54(M(計算値) C
535H
873N
103O
159=11,292.52)。
(実施例33)
【0283】
BHALys[Lys]8[Su(NPN)2]16[α-tBu-MTX]16[PEG570]16の製造
実施例31に記載したものと同様の手法を使ってBHALys[Lys]
8[NH
2.TFA]
16を[α-tBu-MTX][PEG
570][NPN]
2SuOHと反応させることにより、BHALys[Lys]
8[Su(NPN)
2]
16[α-tBu-MTX]
16[PEG
570]
16(6mg)(46%)を得た。分取HPLC(5-60%ACN、90分、RT66分)。
LCMS(LC:親水性(philic), TFA、RT=9.0分;MS:2254 (1/10[M+10H
+], 24%)、2049 (1/11[M+11H
+], 56%)、1879 (1/12[M+12H
+], 100%)、1734 (1/13[M+13H
+], 55%)。換算値22,531.91(M(計算値) C
1063H
1745N
207O
319=22,529.73)。
【0284】
同じ方法でBHALys[
3H-Lys]
8[Su(NPN)
2]
16[α-tBu-MTX]
16[PEG
570]
16を製造した。15mg(65%)。1.27mCi/g。
(実施例34)
【0285】
BHALys[Lys]16[Su(NPN)2]32[α-tBu-MTX]32[PEG570]32
実施例31に記載したものと同様の手法を使ってBHALys[Lys]
16[NH
2.TFA]
32を[α-tBu-MTX][PEG
570][NPN]
2SuOHと反応させることにより、BHALys[Lys]
16[Su(NPN)
2]
32[α-tBu-MTX]
32[PEG
570]
32(7mg)(44%)を得た。分取HPLC(5-60%ACN、90分、RT71分)。LCMS(LC:親水性(philic), TFA、RT=9.2分;MS:(M(計算値) C
2119H
3489N
415O
639=45,004.27)。
(実施例35)
【0286】
i.[BOC][PEG1100][NPN]2SuOEtの製造
【化20】
DMF(2mL)中の[BOC][NH
2][NPN]
2SuOEtの混合物を撹拌したものに、TEA(2等量)およびPEG
1100NHS(1等量)をDMF/DCM(2mL)溶液として加えた。その混合物を室温で終夜撹拌し、濃縮した後、fccで精製することにより、[BOC][PEG
1100][NPN]
2SuOEtを無色透明の油状物として得た。
【0287】
ii.[NH2.TFA][PEG1100][NPN]2SuOEtの製造
【化21】
DCM(2mL)中の[BOC][PEG
1100][NPN]
2SuOEt(180mg)の混合物を撹拌したものに、TFA(0.50mL)を加えた。その混合物を室温で6時間撹拌し、濃縮し、H
2Oを加え、濃縮した(2回)。次に残渣を再びH
2O(20mL)にとり、濾過(0.2μm PALLフィルターディスク)してから凍結乾燥することにより、[NH
2.TFA][PEG
1100][NPN]
2SuOEtを無色透明の油状物として得た。
【0288】
iii.[α-tBu-MTX][PEG1100][NPN]2SuOEt
【化22】
DMF(0.5mL)中の[NH
2.TFA][PEG
1100][NPN]
2SuOEtとα-tBu-γ-MTX-OH(1等量){C.L. Francis, Q. Yang, N.K. Hart, F. Widmer, M.K. MantheyおよびH. Ming He-Williams, Aust. J. Chem. 2002, 55, 635}の混合物を0℃で撹拌したものに、PyBOP(1.2等量)およびDIPEA(3等量)を加えた。その混合物を0℃で30分間撹拌した後、室温で3時間撹拌した。DMFを除去し、残渣をPTLCで精製することにより、[α-tBu-MTX][PEG
1100][NPN]
2SuOEtを橙色油状物として得た。
【0289】
iv.[α-tBu-MTX][PEG1100][NPN]2SuOHの製造
【化23】
THF/H
2O(2:1、9mL)中の[α-tBu-MTX][PEG1
1100][NPN]
2SuOEtの混合物を撹拌したものに、NaOH(2等量、1.0M)を加えた。反応を室温で16時間、撹拌放置し、必要であればNaOHを追加した(反応をtlcで判定)。反応が完了した後、pHをHCl(1.0M)で中性に調節した。次に溶媒を除去し、残渣をMeOHにとり、塩を除去するために濾過した。次に、残渣をPTLCで精製することにより、[α-tBu-MTX][PEG
1100][NPN]
2SuOHを橙色油状物として得た。
【0290】
v.BHALys[Lys]8[Su(NPN)2]16[α-tBu-MTX]16[PEG1100]16の製造
DMF(1.2mL)中の[α-tBu-MTX][PEG
1100][NPN]
2SuOH(NH
2あたり1.1等量)とBHALys[Lys]
8[NH
2.TFA]
16の混合物を0℃で撹拌したものに、PyBOP(NH
2あたり1.2等量)およびDIPEA(NH
2あたり3等量)を加えた。その混合物を0℃で30分間撹拌してから、室温で3時間撹拌した。DMFを除去し、残渣を分取HPLC(Waters Xterra MS C
18、10μm、19×250mm)で精製することにより、BHALys[Lys]
8[Su(NPN)
2]
16[α-tBu-MTX]
16[PEG
1100]
16を得た。
(実施例36)
【0291】
HOGlyLys[Lys]2[Boc]3[ε,ε-CBz]の製造
この合成を
図21に図解する。
i.MeOGlyLys[α-Boc][ε-CBz]の製造
トリエチルアミン(30.36g、0.300mol)とジメチルホルムアミド(200ml)の混合物に懸濁したメチルグリシネート塩酸塩(12.56g、0.110 mol)を撹拌したものに、PNPO-α-Boc-ε-CBz-Lys(50.15g、0.100mol)を加えた。周囲温度で16時間撹拌した後、揮発成分を減圧下で蒸発させ、残渣を酢酸エチル(200ml)と5%炭酸ナトリウム水溶液(175ml)とに分配した。水相を捨て、酢酸エチル相を、新たな5%炭酸ナトリウム水溶液(200ml×4)で洗浄し、次に0.25M塩酸(50ml×2)で洗浄してから、飽和塩化ナトリウム水溶液(50ml)で洗浄した。酢酸エチル溶液を乾燥(硫酸マグネシウム)し、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させることにより、MeOGlyLys[α-Boc][ε-CBz](44.39g、98%)を無色の油状物として得た。
1H nmr (300MHz, CD
3OD) δ(ppm):1.3-1.8 (m, 6H);1.44 (s, 9H);3.13 (t, J 6.6Hz, 2H);3.70(s, 3H);3.88 (d, J 17.7Hz, 1H);3.99 (d, J 17.7Hz, 1H);4.04 (m, 1H);5.06 (s, 2H);7.2-7.4 (m, 5H)。
LC/MS(疎水性/ホルメート):ESI(+ve)実測値 [M+H]
+ m/z=452.0;計算値(C
22H
34N
3O
7として)452.2。Rf(分)=5.2。
【0292】
ii.MeOGlyLys[α-NH2.TFA][ε-CBz]の製造
MeOGlyLys[α-Boc][ε-CBz](43.36g、96.0mmol)を酢酸(150ml)に溶解し、その溶液を氷浴温度で、酢酸が凍結しはじめるまで撹拌した。氷浴を除去し、酢酸の結晶が溶解するまで、トリフルオロ酢酸を撹拌しながらゆっくり加えた。その溶液をもう一度氷浴に入れ、トリフルオロ酢酸の残り(計150ml)をゆっくり加えた。酢酸の凍結が再び起こることはなかった。氷浴を取り除き、溶液を周囲温度で5時間撹拌した後、揮発成分を減圧下で可能な限り完全に蒸発させた。残った粘性油状物をメタノール(200ml)に溶解し、再び減圧下でロータリーエバポレーターにかけて、油状物を得た。この工程を、さらに5回、各200mlのメタノールを使って繰り返した後、0.1トルの減圧下で、残存メタノールを可能な限り除去した。生成物MeOGlyLys[α-NH
2.TFA][ε-CBz]を淡黄色油状物として得た(46.04g、多少のメタノールがまだ存在するため理論値の103%)。
1H nmr (300MHz, CD
3OD) δ(ppm):1.5-1.6 (m, 4H);1.8-2.0(m, 2H);1.44 (s, 9H);3.15 (t, J 6.8Hz, 2H);3.71 (s, 3H);3.88 (t, J 6.4Hz, 1H);3.94 (d, J 17.6Hz, 1H);4.08 (d, J 17.6Hz, 1H);5.07 (s, 2H);7.2-7.4 (m, 5H)。
LC/MS(親水性/ホルメート):ESI(+ve)実測値 [M+H]
+ m/z=352.1 ;計算値(C
17H
26N
3O
5として)352.2。Rf(分)=12.3。
【0293】
iii.MeOGlyLys[ε-CBz][α-Lys][Boc]2の製造
MeOGlyLys[α-NH
2.TFA][ε-CBz](46.0g、96.0mmol)およびトリエチルアミン(24.3g、0.240mol)のジメチルホルムアミド(200ml)溶液を撹拌したものに、DBL-OPNP(49.37g、0.106mol)を加えた。周囲温度で17時間撹拌した後、グリシン(3.98g、53.0mmol)の水(50ml)溶液を加え、その濁った溶液を24時間撹拌した。よく撹拌した混合物に水(150ml)を加えたところ、白色の固形物が沈殿しはじめた。次に薄片状の氷(200g)を加え、氷が溶けてしまうまで、撹拌を続けた。固形物を濾過によって集め、5%炭酸ナトリウム水溶液に懸濁し、0.5時間超音波処理した。吸引によって半乾燥した後、5%炭酸ナトリウム水溶液(200ml×2)で洗浄し、次に水(200ml×3)で洗浄した。次に、その明黄色固形物を、新たな200mlの5%炭酸ナトリウム水溶液中で撹拌し、濾過することにより、淡黄色粉末を得た。その固体を水(200ml×2)で洗浄した後、新たな水(200ml)に懸濁し、1.5時間超音波処理した。濾過および吸引乾燥後に、減圧下で乾燥することにより、61.0gの黄褐色粉末を得た。酢酸エチルからの再結晶により、MeOGlyLys[ε-CBz][α-Lys][Boc]
2(50.05g、77%)を白色固体として得た。
1H nmr(300MHz, CD
3OD)δ(ppm):1.2-2.0(m, 30H);3.03 (t, J 6.6Hz, 2H);3.12 (t, J 6.8Hz, 2H);3.69 (s, 3H);3.87 (d, J 17.6Hz, 1H);4.00(d, J 17.6Hz, 1H);4.01 (dd, J 3.3, 7.4Hz, 1H);4.38 (dd, J 5.4, 8.4Hz, 1H);5.06 (s, 2H);7.2-7.4 (m, 5H)。
LC/MS(親水性/ホルメート):ESI(+ve)実測値 [M+H]
+ m/z=680.0;計算値(C
33H
54N
5O
10として)680.4;実測値 [M+NH
4]
+ m/z=697.0;計算値(C
33H
57N
6O
10として)697.4。Rf(分)=8.0。
【0294】
iv.MeOGlyLys[ε-NH2.TFA][α-Lys][Boc]2の製造
MeOGlyLys[ε-CBz][α-Lys][Boc]
2(680mg、1.00mmol)およびトリフルオロ酢酸(77μl、1.0mmol)のメタノール(10ml)溶液を、大気圧の水素下で、10%w/wパラジウム炭(106mg、0.10 mmol Pd)の懸濁液に加えた。その混合物を周囲温度で1時間撹拌した後、セライトのベッドを通して濾過した。メタノールを減圧下で蒸発させ、残渣をメタノール(5ml)に再溶解し、その溶液を0.2μmフィルターに通した。メタノールを減圧下で蒸発させることにより、MeOGlyLys[ε-NH
2.TFA][α-Lys][Boc]
2(640mg、97%)を脆い白色泡状物として得た。
1H nmr (300MHz, CD
3OD) δ(ppm):1.2-2.0(m, 30H);2.93 (t, J 7.5Hz, 2H);3.03 (t, J 6.6Hz, 2H);3.72 (s, 3H);3.89 (d, J 17.7Hz, 1H);3.98 (dd, J 5.4, 9.0Hz, 1H);4.02 (d, J 17.7Hz, 1H);4.42 (dd, J 5.7, 8.4Hz, 1H)。
LC/MS(親水性/ホルメート):ESI(+ve)実測値 [M+H]
+ m/z=546.2;計算値(C
25H
48N
5O
8として)546.3。Rf(分)=14.2。
【0295】
v.MeOGlyLys[Lys]2[Boc]3[ε,ε-CBz]の製造
MeOGlyLys[ε-NH
2.TFA][α-Lys][Boc]
2(640mg、0.97mmol)のジメチルホルムアミド(10ml)溶液を撹拌したものに、PNPO-α-Boc-ε-CBz-Lys(535mg、1.07mmol)を加えた。トリエチルアミン(340μl、2.43mmol)を加え、その溶液を周囲温度で20時間撹拌した。グリシン(40mg、0.54mmol)の水(5ml)溶液を加え、その濁った溶液を2時間撹拌した。ジメチルホルムアミドを減圧下で蒸発させ、残った油状物を、酢酸エチル(20ml)と、5%炭酸ナトリウム水溶液および飽和塩化ナトリウム水溶液の3:1混合物(20ml)とに分配した。水相を捨て、酢酸エチル相を、新たな上記炭酸ナトリウム/塩化ナトリウム混合物(20ml×3)で洗浄した後、0.20M 塩酸(20ml×2)で洗浄し、次に飽和塩化ナトリウム水溶液(20ml)で洗浄した。その酢酸エチル溶液を乾燥(硫酸ナトリウム)し、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させることにより、MeOGlyLys[Lys]
2[Boc]
3[ε,ε-CBz](818mg、93%)を脆い白色泡状物として得た。
1H nmr (300MHz, CD
3OD) δ(ppm):1.2-2.0(m, 45H);3.03 (t, J 6.6Hz, 2H);3.12 (t, J 6.6Hz, 2H);3.19 (m, 2H);3.71 (s, 3H);3.88 (d, J 17.4Hz, 1H);3.93-4.06 (m, 2H);4.00(d, J 17.7Hz, 1H);4.38 (dd, J 5.4, 8.4Hz, 1H) ;5.07 (s, 2H);7.25-7.45 (m, 5H)。
LC/MS(疎水性/ホルメート):ESI(+ve)実測値 [M+H]
+ m/z=908.4;計算値(C
44H
74N
7O
13として)908.5;実測値 [M+NH
4]
+ m/z=925.4;計算値(C
44H
77N
8O
13として)925.5。Rf(分)=9.5。
【0296】
vi.HOGlyLys[Lys]2[Boc]3[ε,ε-CBz]の製造
MeOGlyLys[Lys]
2[Boc]
3[ε,ε-CBz](500mg、0.55mmol)を水酸化ナトリウム(44mg、1.10mmol)のメタノール(8ml)および水(4ml)溶液に溶解した。その溶液を周囲温度で4時間撹拌し、溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣を水(10ml)に溶解し、1M硫酸水素カリウム(2ml)を加えた。得られた白色沈殿物を酢酸エチル(10ml)に抽出し、水相を捨てた。酢酸エチル相を飽和塩化ナトリウム水溶液(10ml)で洗浄し、乾燥(硫酸ナトリウム)し、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させることにより、HOGlyLys[Lys]
2[Boc]
3[ε,ε-CBz](481mg、96%)を無定形白色固体として得た。
1H nmr (300MHz, CD
3OD) δ(ppm):1.2-2.0(m, 45H);3.03 (t, J 6.6Hz, 2H);3.12 (t, J 6.6Hz, 2H);3.19 (m, 2H);3.84 (d, J 18.0Hz, 1H);3.95-4.07 (m, 2H);3.97 (d, J 17.7Hz, 1H);4.39 (dd, J 5.4, 8.4Hz, 1H);5.07 (s, 2H);7.25-7.38 (m, 5H)。
LC/MS(疎水性/TFA):ESI(+ve)実測値 [M+H]
+ m/z=894.3;計算値(C
43H
72N
7O
13として)894.5。Rf(分)=8.4。
(実施例37)
【0297】
BHALys[GlyLys]2[Lys]4[Boc]6[ε,ε-CBz]2(C105H163N17O25 MW2063.5)の製造
図22に合成を図解する。HOGlyLys[Lys]
2[Boc]
3[ε,ε-CBz](536mg、0.60mmol)、BHALys[NH
2.TFA]
2(135mg、0.250mmol)、4,4-ジメチルアミノピリジン(7.3mg、60μmol)およびトリエチルアミン(210μl、1.50mmol)のジメチルホルムアミド(10ml)溶液に、EDCI(0.90mmol)を加えた。その溶液を周囲温度で15時間撹拌し、次に揮発成分を減圧下で除去した。シリカゲルクロマトグラフィー(メタノール/ジクロロメタン勾配)により、BHALys[GlyLys]
2[Lys]
4[Boc]
6[ε,ε-CBz]
2(245mg、47%)を得た。少量の試料(20mg)を常法により酢酸/TFAで処理して、分析データを得た。
LC/MS(親水性(philic)/TFA):ESI(+ve)実測値 [M+H]
+ m/z=1463.2;計算値(C
75H
116N
17O
13として)1462.9。
(実施例38)
【0298】
BHALys[Lys]16[α-PEG570]16[COCH3]16の製造
BHALys[Lys]
16[α-PEG
570]
16[NH
2.TFA]
16のDMF溶液およびTEA(NH
2あたり3等量)を撹拌したものに、無水酢酸(NH
2あたり1.5等量)を加え、反応を終夜撹拌した。反応を濃縮し、残渣を、水を溶離液とするSephadex G-25でのサイズ排除クロマトグラフィーで精製することにより、BHALys[Lys]
16[α-PEG
570]
16[COCH
3]
16を得た。
(実施例39)
【0299】
デンドリマーのリンパターゲティング
ラットの胸管(M Boydら (2003) Journal of Pharmacology and Toxicology Methods 49:115-120に記載の手法を使用)および右頚静脈(食塩水注入用)にカニューレを挿入した。ラットを一晩回復させ、食物と水を常時供給した。動物に5mg/kg用量(10mg/ml、体重100gにつき50μl)のデンドリマー(Lys
16(PEG
200)
32、Lys
16(PEG
570)
32、Lys
16(PEG
2000)
32またはLys
16(BS)
32)を、右踵上への注射によって、皮下投与した。Lys
16(BS)
32を非PEG化対照デンドリマーとした。胸管へのリンパ排液を30〜48時間にわたって収集し、トリチウム放射標識についてシンチレーション計数を行った。
【0300】
この研究の結果は、PEG化ポリ-L-リジンデンドリマーの皮下用量の40%までが、注射投与から48時間以内に、リンパに取り込まれうることを証明した(
図23)。これは、デンドリマーのサイズに依存し、48時間で38.5±0.7%(平均±SD、n=3)のLys
16(PEG
2000)
32(68kDa)がリンパに取り込まれ、30時間で28.8±6.6%のLys
16(PEG
570)
32(22kDa)がリンパ中に回収されたのに対して、Lys
16(PEG
200)
32(11kDa)は3.8%(n=1)しか胸部リンパに回収されなかった。非PEG化ベンゼンスルホネートデンドリマー(11kDa)は30時間で1.7±1.5%しかリンパに取り込まれなかったので(平均±SD、n=3)、PEG化はリンパへのデンドリマーの取り込みを増加させるのに役だった。屠殺時に、右膝窩リンパ節および腸骨リンパ節には、合計して、Lys
16(PEG
570)
32およびLys
16(PEG
2000)
32デンドリマーの用量の約0.3%が回収された。これは、2〜3%用量/gがリンパ節中に回収されたことを表し、IV投与の30〜168時間後に主要臓器に典型的に回収される放射標識の濃度(1.5%用量/g組織まで)よりもかなり高い。
【0301】
要約すると、大きい(>20kDa)PEG化デンドリマーは皮下投与後にかなりの量が領域リンパ管に取り込まれたのに対して、小さい(11kDa)PEG化または非PEG化デンドリマーの場合、リンパに回収された量は、はるかに少なかった。非PEG化物質の場合、これは、注射部位からの排液の減少も反映しているのだろう。皮下投与の30〜48時間後に領域リンパ節内に回収されたのは、投与量のうち、わずかな割合だったが、リンパ節の質量が小さいこと(約0.1〜0.2g)を考えると、これは、リンパ節内のデンドリマー濃度が比較的高いことを表す。より大きいPEG基によるPLLデンドリマーのPEG化は、リンパ回収率をさらに増加させうる。これらの結果は、皮下投与に続いて起こるリンパへの薬物-デンドリマー複合体の取り込みを増加させるというPEG化の潜在能力を強調している。
(実施例40)
【0302】
50%PEG570キャップトポリ-L-リジンデンドリマーの薬物動態
以下の研究は、1)部分表面PEG化および2)PEGと薬物/アセチル基の組み合わせによるデンドリマー表面の完全キャッピングが、ラットへの5mg/kg IV投与後のデンドリマー薬物動態にどのように影響するかを決定するために行った。
【0303】
この研究では以下のトリチウム化(G3)デンドリマーを使用した:
Lys
16(NH
2)
32(MW 4.1kDa)、BHALys[
3H-Lys]
16[NH
2]
32、文中ではアンキャップトデンドリマーともいう;
Lys
16(PEG
570)
32(MW 23kDa)、BHALys[
3H-Lys]
16[PEG
570]
32、文中では完全PEG化デンドリマーともいう;
Lys
16(PEG
570)
16(NH
2)
16(MW 13.3kDa)、BHALys[
3H-Lys]
16[α-PEG
570]
16[ε-NH
2]
16、文中では半PEG化デンドリマーともいう;
Lys
16(PEG
570)
16(CH
3)
16(MW 14kDa)、BHALys[
3H-Lys]
16[α-PEG
570]
16[ε-COCH
3]
16、文中では半アセチル化デンドリマーともいう;
Lys
16(PEG
570)
16(MTXアミド)
16*(MW 22.5kDa)、BHALys[
3H-Lys]
8[Su(NPN)
2]
16[PEG
570]
16[α-tBu-MTX]
16、文中ではMTXデンドリマーともいい、この場合、MTXはメトトレキサートである。
*メトトレキサートは非PEG化部位に安定なアミドリンカーを介してコンジュゲートした。
【0304】
方法
SDラット(約300g)に、5mg/kg用量のトリチウム化デンドリマー(食塩水1ml中)を、
右頚静脈中の留置カニューレを通して、2分間の直接静脈内注入によって投与した。その後、Cp0(静脈内注入終了時点の血漿におけるデンドリマーの濃度)を評価するために、t0血液試料を右頚動脈の留置カニューレから収集した(0.2ml)。その後、5、10、20、30、45、60、90、120、180、240、360、480、1440および1800分時点に、血液試料をヘパリン処理チューブ中に収集した。血液試料を遠心分離した後、6mlシンチレーション管中で血漿100μlを1〜2mlのStarscintと混合し、トリチウム放射能について計数した。尿をデンドリマーの投与後0〜8時間、8〜24時間および24〜30時間の時間間隔で収集した。尿の一部(各100μl)を、同様に、トリチウム放射能について計数した。50mM PBS+0.3M NaCl(pH3.5)を溶離液とするSuperdex 75 SECカラムでのサイズ排除クロマトグラフィーによって、尿および血漿試料を分析した。カラムから溶出する画分を1分(0.5ml)間隔で収集し、6mlシンチレーション管中で2mlのStarscintと混合し、トリチウム放射能についてシンチレーション計数を行った。
【0305】
以下のように、代用物としての肝ホモジネートへの結合を測定することにより、血管または組織表面に結合する潜在能力を各デンドリマーについて見積った。
【0306】
血管中の血液の大半を除去するために、麻酔ラットから得た肝臓を食塩水で灌流した。次に肝臓を単離し、1:1w/vの食塩水中、ガラスホモジナイザーですりつぶした。ラットは心臓穿刺によるLethabarbの致死的注射によって屠殺した。肝臓が目に見えてホモジナイズされたら、約1mlの肝ホモジネートを微量遠心管に入れ、3500rpmで5分間遠心分離した。上清を除去し、さらに500μlの食塩水を各チューブに加えた。各チューブを手短にボルテックスし、再び遠心分離した。この工程は、デンドリマーに結合して未結合デンドリマーとしてカウントされる可能性があるタンパク質の量を最小限に抑えるために、できる限り多くの可溶性タンパク質がホモジネートから除去されることを保証するものである。さらに500μlの食塩水を各チューブに加え、50μgのLys
16(PEG
570)
16(CH
3)
16、Lys
16(PEG
570)
16(NH
2)
16またはLys
8(D-lys)
16を各チューブに加えた。D-lysデンドリマーは結合実験の結果に影響を及ぼしうる迅速な代謝を受けないので、これをカチオン性アンキャップトデンドリマー対照として使用した。各チューブをロータリーミキサー上、37℃で30分間インキュベートした後、チューブを再び遠心分離した。上清を収集し、「未結合」デンドリマーについて解析した。残りの肝ホモジネートは、残りのデンドリマーが肝組織に結合したことを保証するために、他で説明するように可溶化した。
【0307】
結果:
Lys16(PEG570)16(NH2)16
半PEGデンドリマーの投与後は、血漿中放射標識が、最初の1時間にわたって、8.6±0.3分の半減期で、迅速に減少した(
図24B)。比較のために、完全アンキャップト(Lys
16(NH
2)
32)デンドリマーの血漿プロファイルを
図24Aに示す。完全アンキャップトデンドリマーと半PEG化デンドリマーの間の初期血漿/分布動態の相違の理由は、組織結合データから明らかだろう(表13)。すなわち、アンキャップトデンドリマーは、組織または脈管構造に迅速に結合し(代用物として肝ホモジネートを使って試験した)、その結果、血漿からはほとんど直ちに除去されると考えられる。対照的に、部分的にPEG化された物質でさえ、組織または血管結合活性は、はるかに低い。
【0308】
1時間後、血漿中放射標識の減少は劇的に減速し、終末相半減期(6〜30時間にわたって算出)は22.1±2.1時間になった。サイズ排除クロマトグラフィー(
図25A)は、投与後2時間までの血漿におけるトリチウム化リジンの存在を示唆し、さらに血漿中に存在する主要分子種がデンドリマーよりかなり大きいことも示している。したがって約1日という終末相半減期は、おそらく、遊離したトリチウム化リジンの再取り込みによって生成した血漿タンパク質のクリアランスを反映しているのだろう。
【0309】
完全アンキャップト分子種に関する血漿薬物動態およびSECプロファイルから、30分後には、リジンの絶え間ない「供給」を利用して、血漿タンパク質の合成を駆動できることが示唆される(すなわち投与後6〜30時間は、血漿中放射標識の明らかな減少は目につかない。長時間にわたる血漿プロファイルはここには掲載していない)。しかし、半PEG化デンドリマーから得られる血漿薬物動態およびSECプロファイルからは、類似する分解および再取り込み過程が起こったようではあるものの、それは、もっと短い期間で起こったらしいことが示唆される。というのも、再取り込み産物は、アルブミンの回転率(約24時間)を反映した半減期で排除されるからである。タンパク質生合成を駆動するためのトリチウム化リジンの供給がこのように比較的短期間であることは、30時間の試料採取期間にわたって観察された比較的たやすい腎クリアランスと合致しており、半PEG化デンドリマーに付随する投与されたトリチウムの73.5±2.8%が尿中に回収された。これは、注射された放射標識のLys
16(NH
2)
32およびLys
16(PEG
570)
32からの回収率(それぞれ約5%および40%)とは、極めて対照的である。尿中に同定された分子種は、SECでは、完全なデンドリマーと共溶出した(
図25B)。
【0310】
【表19】
【0311】
Lys16(PEG570)16(CH3)16
半アセチル化デンドリマーに由来する放射標識の初期血漿プロファイルは、半PEG化デンドリマーのものと類似していた(半減期=9.3±0.42分)(
図24)。しかし、半PEG化デンドリマーとは異なり、半アセチル化デンドリマーの終末相半減期は、より短く、完全PEG化分子種の終末相半減期に、より近かった(半アセチル化デンドリマーの13.9±0.3時間に対して完全PEG化デンドリマーは9.45±0.42時間)。これはおそらく、半PEG化デンドリマーよりも、半アセチル化デンドリマーの方が、コア代謝の速度が遅いためだろう(
図27A)。血漿SECプロファイルは、t0において、血漿中放射標識の全てが完全なデンドリマーに起因すると考えられることを示している。投与の2時間後に収集した血漿は、完全なデンドリマーに帰される小さなピークと、20分の幅広いピーク(このピークは完全なデンドリマーの2分前に溶出した)とを示したが、遊離のリジンは目につかなかった。半PEG化デンドリマーの場合、注射された放射標識の大半が、30時間尿中に排泄され(72.3±1.2%)、その大半は変化せずに排泄された。デンドリマー代謝の産物に起因すると考えられる数個の小分子量種が8〜24時間尿に同定された(
図27B、8〜24時間については目盛りが異なることに注意)。
【0312】
Lys16(PEG570)16(MTXアミド)16
MTXデンドリマーの分子量は完全PEG化デンドリマーと類似しているが、その血漿プロファイルは、むしろ半アセチル化デンドリマーのプロファイルの方に似ていた。初期血漿半減期は15.4±2.4分で、これは他方の半キャップトデンドリマーよりわずかに遅かった。終末相消失半減期は完全PEG化デンドリマーと基本的に同じ(9±0.2時間)であり、これはおそらく、終末相血漿クリアランスが総分子量に依存することを反映しているのだろう。
【0313】
トリチウム化デンドリマーの投与量の3分の1未満が、30時間の間に、尿を介して排除された(29±3.4)。このうちの大半は、IV投与後、最初の8時間に排泄された。尿中に排泄されたMTXデンドリマーの量は、1)他方の半キャップトデンドリマーおよび2)完全PEG化デンドリマーよりはるかに少なかった(42.9+2.7%)。腎排除量がこのように少ないことを完全に説明することはできないが、1)デンドリマーの大きなサイズが腎排除をある程度妨害したこと、2)用量の残りが網内系(RES)の臓器に濃縮されたこと、および3)デンドリマーの一部が葉酸結合部位との相互作用によって臓器に保持されていたのかもしれないこと(MTXは葉酸受容体において葉酸の競合的アンタゴニストであるため)が考えられる。
【0314】
結論:
1)PEG
570による50%表面キャッピングを有する(が、表面部位の50%はアンキャップトのままである)リジンデンドリマーは、比較的迅速に血漿から排除され、分解を受けて遊離のリジンを放出するようである。しかしこれらは、完全アンキャップト分子種ほどの血管結合は示さないようである。
2)50%表面PEG化を有するデンドリマー上のアンキャップト部位をアセチル化すると、表面アミンの50%がアンキャップトのままであるデンドリマーと比較して、デンドリマーの生分解が減少するが、血漿からの初期クリアランス/分布速度は、基本的に同じである。
3)表面に50%PEGキャッピング基および50%MTXキャッピング基を有するリジンデンドリマーは、半アセチル化デンドリマーと類似する初期血漿プロファイルを示す。
4)表面に50%PEGキャッピング基および50%MTXキャッピング基を有するリジンデンドリマーは、類似するサイズの完全PEG化デンドリマー、または50%アセチル化系と比較して、IV投与後に尿中に回収される用量の割合が少ない。これはおそらく、MTXがRES中の食細胞または葉酸受容体と相互作用することによって起こるRESによる取り込み量の増加を反映しているのだろう。
【0315】
1.Frechet, J.M.J.「Dendrimers and other dendritic macromoleucles:From building blocks to functional assemblies in nanoscience and nanotechnology」J. Polym. Sci. A. 2003, 41, 3713-3725.
2.Beezer, A.E.;King、A.S.H.;Martin, I.K.;Mitchel, J.C.;Twyman, L.J.;Wain, C.F.「Dendrimers as potential drug carriers;encapsulation of acidic hydrophobes within water soluble PAMAM derivatives」Tetrahedron 2003, 59, 3873-3880.
3.Kojima, C;Kono, K.;Maruyama, K.;Takagishi, T.「Synthesis of polyamidoamine dendrimers having poly(ethylene glycol) grafts and their ability to encapsulate anticancer drugs」Bioconjug. Chem. 2000, 11, 910-917.
4.Tajarobi, F.;El-Sayed, M.;Rege, B.D.;Polli, J.E.;Ghandehari, H.「Transport of poly amidoamine dendrimers across Madin-Darby canine kidney cells」Int. J. Pharm. 2001, 215, 263-267.
5.El-Sayed, M.;Ginski, M.;Rhodes, C.;H.,G.「Transepithelial transport of poly(amidoamine) dendrimers across Caco-2 cell monolayers.」J. Control. Release 2002, 81, 355-365.
6.Malik, N.;Wiwattanapatapee, R.;Klopsch, R.;Lorenz, K.;Frey, H.;Weener, J.W.;Meijer, E.W.;Paulus, W.;Duncan, R.「Dendrimers: Relationship between structure and biocompatibility in vitro, and preliminary studies on the biodistribution of I-125-labelled polyamidoamine dendrimers in vivo」J. Control. Release 2000, 65, 133-148.
7.Wiwattanapatapee, R.;Carreno-Gomez, B.;Malik, N.;Duncan, R.「Anionic PAMAM dendrimers rapidly cross adult rat intestine in vitro: A potential oral delivery system?」Pharm. Res. 2000, 17, 991-998.
8.Jevprasesphant, R.;Penny, J.;Jalal, R.;Attwood, D.;McKeown, N. B.;D'Emanuele, A.「The influence of surface modification on the cytotoxicity of PAMAM dendrimers」Int. J. Pharm. 2003, 252, 263-266.
9.Sakthivel, T.;Toth, I.;Florence, AT.「Distribution of a lipidic 2.5 nm diameter dendrimer carrier after oral administration」Int. J. Pharm. 1999, 183, 51-55.
10.Florence, AT.;Sakthivel, T.;Toth, I.「Oral uptake and translocation of a polylysine dendrimer with a lipid surface」J. Control. Release 2000, 65, 253-259.
11.Jevprasesphant, R.;Penny, J.;Attwood, D.;D'Emanuele, A.「Transport of dendrimer nanocarriers through epithelial cells via the transcellular route」J. Control. Release 2004, 97, 259-267.
12.Gillies, E.R.;Dy, E.;Frechet, J.M.J.;Szoka, F.C,Jr.「Biological Evaluation of Polyester Dendrimer: Poly(ethylene oxide) "Bow-Tie" Hybrids with Tunable Molecular Weight and Architecture」Mol. Pharm. 2005, 2, 129-138.
13.Kobayashi, H.;Kawamoto, S.;Saga, T.;Sato, N.;Hiraga, A.;Konishi, J.;Togashi, K.;Brechbiel, M.W.「Micro-MR angiography of normal and intratumoral vessels in mice using dedicated intravascular MR contrast agents with high generation of polyamidoamine dendrimer core: Reference to pharmacokinetic properties of dendrimer-based MR contrast agents」J. Magn. Reson. Imaging 2001, 14, 705-713.
14.Kobayashi, H.;Wu, C.C.;Kim, M.K.;Paik, C.H.;Carrasquillo, J.A.;Brechbiel, M.W.「Evaluation of the in vivo biodistribution of indium-111 and yttrium-88 labeled dendrimer-1 B4M-DTPA and its conjugation with anti-Tac monoclonal antibody」Bioconjug. Chem. 1999, 10, 103-111.
15.Kobayashi, H.;Saga, T.;Kawamoto, S.;Sato, N.;Hiraga, A.;Ishimori, T.;Konishi, J.;Togashi, K.;Brechbiel, M.W.「Dynamic micro-magnetic resonance imaging of liver micrometastasis in mice with a novel liver macromolecular magnetic resonance contrast agent DAB-Am64-(1B4M-Gd)(64)」Cancer Res. 2001, 61, 4966-4970.
16.Kobayashi, H.;Kawamoto, S.;Saga, T.;Sato, N.;Hiraga, A.;Ishimori, T.;Konishi, J.;Togashi, K.;Brechbiel, M.W.「Positive effects of polyethylene glycol conjugation to generation-4 polyamidoamine dendrimers as macromolecular MR contrast agents」Magn. Reson. Med. 2001, 46, 781-788.
17.Margerum, L.D.;Campion, B.K.;Koo, M.;Shargill, N.;Lai, J.J.;Marumoto, A.;Sontum, P.C.「Gadolinium(III) DO3A macrocycles and polyethylene glycol coupled to dendrimers - Effect of molecular weight on physical and biological properties of macromolecular magnetic resonance imaging contrast agents」J. Alloys Compounds 1997, 249, 185-190.
18.McCarthy, T.D.;Karellas, P.;Henderson, SA;Giannis, M.;O'Keefe, D.F.;Heery, G.;Paull, J.R.A;Matthews, B.R.;Holan, G.「Dendrimers as Drugs: Discovery and Preclinical and Clinical Development of Dendrimer-Based Microbicides for HIV and STI Prevention」Mol. Pharm. 2005, 2, 312-318.
【0316】
本明細書に開示し定義した発明が、本文もしくは図面で言及した個々の特徴または本文もしくは図面から明白な個々の特徴の二つ以上の代替的組み合わせの全てに及ぶことは理解されるだろう。これらの異なる組み合わせはいずれも、本発明のさまざまな代替的態様を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0317】
【
図1】
図1A−Lys
8(NH
2)
16デンドリマーBHALys[Lys]
8[NH
2]
16の化学構造。8個のL-Lys
8末端リジン基のそれぞれは生理的pHで2個の正電荷を与える。Lys
8コアに取付けられたD-Lys基は放射標識されなかったので、
3H放射標識の部位はLys
16デンドリマーのLys
8層上にあった。
図1B−L-Lys
16(NH
2)
32デンドリマーBHALys[Lys]
16[NH
2]
32の化学構造。16個のL-Lys
16末端リジン基のそれぞれは、生理的pHで2個の正電荷を与える。末端リジン上および挿入図内の星印は、表面リジン基上の
3H放射標識の位置を強調している。Rはデンドリマーコアへの表面リジンの取付けを表す。
【
図2】5mg/kgの用量でラットに静脈内投与した後のカチオン性
3H-デンドリマーの血漿中濃度(平均±S.D.、n=3)。閉じた記号はBHALys[Lys]
8[NH
2]
16の投与を表し、中空の記号はBHALys[Lys]
16[NH
2]
32を表す。データを、投与したデンドリマーのng換算値/mlとして表す。
【
図3】パイロット試験において、より高用量でラットに静脈内投与した後の、カチオン性
3H-デンドリマーの血漿中濃度(n=1)。閉じた記号は24.3mg/kgのBHALys[Lys]
8[NH
2]
16を投与した後に得られたデータを示し、中空の記号は22.3mg/kgのBHALys[Lys]
16[NH
2]
32を投与した後に得られたデータを表す。データを、投与したデンドリマーのng換算値/mlとして表す。
【
図4】5mg/kgの用量でラットに静脈内投与した後のカチオン性
3H-デンドリマーの全血中濃度(平均±S.D.、n=3)。閉じた記号はBHALys[Lys]
8[NH
2]
16の投与を表し、中空の記号はBHALys[Lys]
16[NH
2]
32を表す。データを、投与したデンドリマーのng換算値/mlとして表す。
【
図5】5mg/kgをラットに静脈内投与した後のBHALys[Lys]
16[NH
2]
32、BHALys[Lys]
8[D-Lys]
16[NH
2]
32およびL-リジンの血漿中濃度(平均±S.D.、n=3)。閉じた円形はBHALys[Lys]
16[NH
2]
32の投与を表し、中空の円形はBHALys[Lys]
8[D-Lys]
16[NH
2]
32を表し、閉じた三角形はL-リジンを表す。データを、投与したデンドリマーまたはリジンのng換算値/mlとして表す。
【
図6】Superdex Peptide 10/300 GLサイズ排除カラムを使って得たサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)プロファイル。パネルA−ヘパリン加ブランク血漿中、室温で1時間インキュベートした後のBHALys[Lys]
16[NH
2]
32およびリジン。溶出体積および溶出プロファイルは、BHALys[Lys]
16[NH
2]
32およびリジンについて得られたもの(プロファイルの掲載なし)と同一だった。パネルB−BHALys[Lys]
16[NH
2]
32の静脈内投与の直後(t=0)に採取した血漿試料。パネルC−BHALys[Lys]
16[NH
2]
32の静脈内投与の3時間後(中空の記号)および6時間後(閉じた記号)に採取した血漿試料。パネルD−L-リジンの静脈内投与の30時間後に採取した血漿試料。
【
図7】Superdex 75 HR 10/30サイズ排除カラムからの血漿中放射標識の溶出プロファイル(溶出DMPとして)。閉じた記号はBHALys[Lys]
16[NH
2]
32の静脈内投与の6時間後に採取した血漿試料に関する溶出プロファイルを表す(左側のY軸上の目盛り)。中空の記号はL-リジンの静脈内注入の30時間後に採取した血漿試料に関する溶出プロファイルを表す(右側のY軸上の目盛り)。さまざまな分子量のタンパク質標準、BHALys[Lys]
16[NH
2]
32およびリジンについて、その溶出時間をグラフの上部に示す。ブルーデキストラン2000(分子量2000kDa)を注入することによってカラムのボイド容積を決定し、それを図の下に示す(V
0)。
【
図8】カチオン性
3H-デンドリマーを5mg/kgでラットに静脈内投与した30時間後の腫瘍臓器における残存
3Hの分布。パネルAは、注射した放射標識に対する%として表したデータであり、パネルBでは、データを、組織1グラムあたりの、注射した放射標識に対する%として表している(平均±S.D.、n=3)。閉じた記号はBHALys[Lys]
8[NH
2]
16に関する組織生体内分布を表し、中空の記号はBHALys[Lys]
16[NH
2]
32に関する組織生体内分布を表す。影付き(灰色)の記号は、BHALys[Lys]
8[D-Lys]
16[NH
2]
32に関する組織生体内分布を表す。
【
図9】末端基AおよびBを1:1の表面比で保有し、頂端Fから5層の世代構築単位を持つ、本発明の好ましい実施形態によるリジンデンドリティックモチーフの選ばれたトポロジー異性体の概略図。A、Bは、二つの異なる保護基または有機基を表し、Fは頂端にある不完全なカルボキシレートを表す。
【
図10】ラットへの5mg/kg IV投与後のBHALys[Lys]
8[CO-4-Ph(SO
3Na)]
16(閉じた円形)、BHALys[Lys]
16[CO-4-Ph(SO
3Na)]
32(中空の円形)およびBHALys[Lys]
16[CO-3,5-Ph(SO
3Na)
2]
32(三角形)の血漿中濃度-時間プロファイル。
【
図11】ラットにBHALys[Lys]
8[CO-4-Ph(SO
3Na)]
16(黒)、BHALys[Lys]
16[CO-4-Ph(SO
3Na)]
32(明るい灰色)、BHALys[Lys]
16[CO-3,5-Ph(SO
3Na)
2]
32(暗い灰色)またはBHALys[Lys]
16[CO-CH
2CH
2(CO
2Na)]
32(白)をIV投与した30時間後の注射された
3Hの生体内分布。パネルA−臓器ごとに存在する
3Hの注射量に対する%。パネルB−組織1グラムあたりに存在する
3Hの注射量に対する%。
【
図12】血漿および尿中のBHALys[Lys]
16[CO-4-Ph(SO
3Na)]
32およびBHALys[Lys]
16[CO-3,5-Ph(SO
3Na)
2]
32のSuperdex 75カラムでのサイズ排除プロファイル。パネルA−PBS中(閉じた円形)または新鮮血漿中(中空の円形)で1時間インキュベートしたBHALys[Lys]
16[CO-4-Ph(SO
3Na)]
32のSECプロファイル。パネルB−PBS中(閉じた円形)または新鮮血漿中(中空の円形)で1時間インキュベートしたBHALys[Lys]
16[CO-3,5-Ph(SO
3Na)
2]
32のSECプロファイル。パネルC−t0(閉じた円形)および2時間(中空の円形)における血漿中のBHALys[Lys]
16[CO-4-Ph(SO
3Na)]
32のSECプロファイル。パネルD−t0(閉じた円形)または2時間(中空の円形)における血漿中のBHALys[Lys]
16[CO-3,5-Ph(SO
3Na)
2]
32のSECプロファイル。パネルE−0〜8時間尿中(閉じた円形)および8〜24時間尿中(中空の円形)のBHALys[Lys]
16[CO-4-Ph(SO
3Na)]
32のSECプロファイル。
【
図13】BHALys[Lys]
16[PEG
200]
32(閉じた円形)、BHALys[Lys]
16[PEG
570]
32(中空の円形)、BHALys[Lys]
8[PEG
2000]
16(閉じた三角形)およびBHALys[Lys]
16[PEG
2000]
32(中空の三角形)に関する血漿中濃度-時間プロファイル。BHALys[Lys]
8[PEG
200]
16に関するデータは示していない。なぜなら、消失が極めて迅速であり、BHALys[Lys]
16[PEG
200]
32に関するデータに隠れるからである。
【
図14】IV投与後のBHALys[Lys]
16[PEG
2000]
32(黒いバー、7日)、BHALys[Lys]
8[PEG
2000]
16(灰色のバー、5日)およびBHALys[Lys]
16[PEG
570]
32(白いバー、30時間)の生体内分布。上側のパネルは、各臓器中に回収された
3Hの注射量に対する%を表し、下側のパネルは各組織1グラムあたりに回収された
3Hの注射量に対する%を表す。IV投与の30時間後に腎臓ではBHALys[Lys]
16[PEG
200]
32用量の0.1%だけが回収され、一方、BHALys[Lys]
8[PEG
200]
16を投与したラットでは、どの臓器にも
3Hが検出されなかった(データ未掲載)。
【
図15】5mg/kg IV投与後の血漿中の
3H標識BHALys[Lys]
16[PEG
200]
32(パネルA;t0、中空の四角形、t=1時間、閉じた円形、閉じた円形、t=4時間、中空の円形)、BHALys[Lys]
16[PEG
570]
32(パネルB;24時間)、BHALys[Lys]
8[PEG
2000]
16(パネルC;48時間)およびBHALys[Lys]
16[PEG
2000]
32(パネルD;48時間)に関するSuperdex 75カラムでのサイズ排除プロファイル。矢印は完全なデンドリマーの保持時間を示す。
【
図16】BHALys[Lys]
16[PEG
200]
32(パネルA;0〜4時間尿、閉じた円形、8〜24時間尿、中空の円形)およびBHALys[Lys]
16[PEG
570]
32(パネルB;8〜24時間尿)のIV投与後に尿中に排泄された
3Hのサイズ排除プロファイル。矢印は完全なデンドリマーの保持時間を示す。
【
図17】BHALys[Lys]
16[α-PEG
570]
16[ε-MTX]
16を製造するための反応スキーム3。
【
図18】BHALys[Lys]
16[α-PEG
570]
16[ε-COCH
2CH
2CO-タキソール]を製造するための反応スキーム5。
【
図19】
図19A−BHALys[Lys]
16[ε,ε-PEG
570]
8[COCH
2CH
2CO-タキソール]
24を製造するための反応スキーム6(パート1)。
図19B−BHALys[Lys]
16[ε,ε-PEG
570]
8[COCH
2CH
2CO-タキソール]
24を製造するための反応スキーム6(パート2)。
【
図20】PEG
1716-CO
2H、PEG
2645-CO
2H、PEG
3974-CO
2Hを製造するための反応スキーム7。
【
図21】以下のステップを含む実施例36の合成の図解:i.DMFにおけるMeOGly[NH
2.HCl]とPNPO-Lys-α-Boc-ε-CBzおよびトリエチルアミンとの反応;ii.MeOGlyLys[α-Boc][ε-CBz]と1:1 TFA/AcOHとの反応;iii.DMFにおけるMeOGlyLys[α-NH
2.TFA][ε-CBz]とDBL-OPNPおよびトリエチルアミンとの反応;iv.メタノールにおけるMeOGlyLys[α-Lys][Boc]
2[ε-CBz]と触媒量のパラジウム炭および1等量のTFAとの反応;v.DMFにおけるMeOGlyLys[α-Lys][Boc]
2[ε-NH
2.TFA]とPNPO-Lys-α-Boc-ε-CBzおよびトリエチルアミンとの反応;vi.MeOH/H
2OにおけるMeOGlyLys[Lys]
2[Boc]
3[ε,ε-CBz]と水酸化ナトリウムとの反応、およびそれに続く硫酸水素カリウム水溶液との反応。
【
図22】以下のステップを含む実施例37の合成の図解:i.DMFにおけるBHALys[NH
2.TFA]
2とHOGlyLys[Lys]
2[Boc]
3[ε,ε-CBz]、過剰のEDCIおよびHOBtとの反応;ii.BHALysBHALys[GlyLys]
2[Lys]
4[Boc]
6[ε,ε-CBz]
2と1:1 TFA/AcOHとの反応。
【
図23】PEG化デンドリマー(黒い記号)または非PEG化ベンゼンスルホネートデンドリマー(白い記号)の皮下投与量の胸管リンパ液における経時的な累積回収率。結果は平均±sd(n=1〜3)である。
【
図24】PEG化およびアンキャップトLys
16デンドリマーの血漿中濃度-時間プロファイル。パネルAは、完全PEG化デンドリマー、アンキャップトデンドリマーおよび半PEG化デンドリマーの血漿中濃度の初期低下を示す。データを平均±sd(N=2〜3)として表す。
【
図25】5mg/kgのトリチウム化(G3層)Lys
16(PEG
570)
16(NH
2)
16を投与したラットから収集した血漿(A)および尿(B)のSECプロファイル。完全なデンドリマーの溶出時間を矢印で示す。18分および21分に溶出する生成物はリジン再取り込み生成物である。43分に溶出するピークは標識されたリジンである。
【
図26】Lys
16(NH
2)
32(6時間試料)およびL-リジン(30時間試料)を投与したラットから収集した血漿のSECプロファイル。17分および20分のピークはリジン再取り込み生成物である。41分のピークはトリチウム化リジンである。
【
図27】5mg/kgのトリチウム化(G3層)Lys
16(PEG
570)
16(CH
3)
16を投与したラットから収集した血漿および尿のSECプロファイル。完全なデンドリマーの溶出時間を矢印で示す。18分に溶出する生成物はリジン再取り込み生成物である。20分に溶出するピークはおそらく全キャップト分子種に見られる完全なデンドリマーに関連する異常ピークだろう。43分に溶出するピークは標識リジンである。30〜40分に溶出するピークはおそらくコア分解生成物だろう。