(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記通気機構は、前記継手本体の上端より突出することなく閉止状態を保持し、前記継手本体が負圧になったとき、当該通気機構の弁体が前記継手本体の内方側へ開放駆動する通気弁である請求項1に記載の通気一体型継手。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の排水継手は、床下や壁内の狭い配管スペースに設置されることを前提にしたものではない。そのため、継手全体の縦方向の寸法が長くなっており、この排水継手を狭い配管スペースに設けることは困難になる。
一方、同文献2の通気装置は、全体がコンパクト化されていることで狭い設置スペースへの設置が可能であり、排水時の通気性を確保してスムーズに排水できるようになっている。しかし、この通気装置でも、二重管構造による旋回流を確保するためにこの二重管の外筒を縦に長く形成しているため、以下のような不具合が生じることがあった。すなわち、
図7に示した通気装置1を床下等の狭い配管スペースに設ける場合に、この所定の配管スペースに設置するために通気装置1の外筒部4を床上面2の内部まで挿入し、排水立て管3や継手装置1を固定した状態で接合作業をおこなう必要が生じるため、この接合作業を実施するために2人以上の作業者が必要になる。接合作業を一人でおこなうことも可能ではあるが、その場合には排水立て管3や継手装置1を仮固定するための治具が必要になる。更に、接合作業時には、外筒部4の端面側が床上面2の内部に配設されるため、継手装置1の設置高さの調整作業が面倒になる。このとき、外筒部4と排水立て管3との接着位置も床上面2の内部側となることで接合状態も確認難くなり、これらを仮固定しながら排水立て管3の外周側に接着部材7を塗布する作業も困難になる。更には、床上面2の途中まで配設された外筒部4の底面側まで防音部材8を被覆しているため、この防音部材8の被覆が十分ではなくなり防音性が悪くなるおそれがある。継手装置1の固定後にシーリング処理を行うことになるため、この継手装置1が邪魔になってこの処理作業がしづらくなるという問題もある。
【0007】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、排水立て配管と横配管との間に設けて負圧を軽減し、内部に旋回流を発生させて円滑な排水を確保しつつ、全体の長さを短縮して狭い設置スペース内に設置可能であり、防音性を確保しつつ高い施工性によって容易に取付け可能な通気一体型継手と継手の取付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、
通気機構と連通する内筒と外筒とを有する二重管構造の継手本体に排水立て配管接続用の立て配管接続部と横配管接続用の横配管接続部とを設け、前記横配管接続部が前記立て配管接続部の軸芯に対して偏芯位置に設けられ、かつ、この横配管接続部の一側には膨出部を膨出形成され、この膨出部の内周側に略円弧状の旋回流路面と、この旋回流路面に続けて円弧状態で緩やかに傾斜する縮径胴部面が形成され、
この縮径胴部面の終端には環状鍔部が形成され、前記横配管内径最下端から前記縮径胴部面終端までの距離H
1を、0.4×横配管の口径D≦距離H
1≦0.6×横配管の口径Dの関係式とした長さとし、
この長さは、前記縮径胴部面を流れる旋回流が前記横配管から前記旋回流路面に流入する流体と衝突することを防ぐ長さとすると共に、
前記排水立て配管の管端部が床材の床面付近或は床面よりも上方側に突出した状態で配置され、この排水立て配管の内側には前記立て配管接続部が挿入され、かつ前記環状鍔部の下端が前記管端部の管端に当接された状態で前記排水立て配管に前記立て配管接続部が接続された通気一体型継手である。
【0013】
請求項
2に係る発明は、通気機構は、継手本体の上端より突出することなく閉止状態を保持し、継手本体が負圧になったとき、当該通気機構の弁体が継手本体の内方側へ開放駆動する通気弁である通気一体型継手である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、通気性や排水性を確保しつつ全体の高さを短縮して建造物の床下や天井内、壁面内などの狭い設置スペース内に設置でき、継手本体を床材に挿入することなく床面付近や床面よりも上方側まで配設した排水立て配管に接合できるため、高い施工性により容易に排水立て配管に取付けることができ、継手本体の立て配管接続部を排水立て配管に挿入したときに、立て配管接続部の環状鍔部が排水立て配管の管端部に当接することで、位置決めしながら所定の設置高さで排水立て配管に継手本体を取付けできる。
また、縮径胴部面の軸芯方向の高さを短縮した場合でも排水時の旋回流による排水性を最大限に発揮させることができ、横配管接続部から流れ込む排水を旋回流路面から縮径胴部面を介して滞りなく立て配管接続部側に排水でき、
縮径胴部面の高さが短い場合でも確実に旋回流を発生させながら円滑に排水が可能になった。
【0020】
しかも、継手本体内の負圧を高効率で効果的に軽減して円滑な排水を実施し、負圧の発生時に弁体が通気弁の内包側に移動する開動作によって負圧が軽減される構造であるため、通気弁の上方側の突出部位を少なくして全体のコンパクト化を維持できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明における通気一体型継手と継手の取付構造の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1においては、通気一体型継手の接合状態、
図3は通気一体型継手の一部切欠き斜視図、
図4に通気一体型継手の断面図を示している。
【0025】
図において、本発明の通気一体型継手は、図示しない排水設備の排水立て配管(以降、立て配管という)10、横配管11との間に接続される。排水設備は、例えば、図示しない戸建住宅、或は集合住宅等の建造物内の床材12の床面13付近或は床面13よりも上方側、又は天井内や壁面内に設けられ、浴室、洗面器、台所流し、便器等の排水器具14からの排水を横配管11から通気一体型継手を介して排水立て配管10に流すことが可能になっている。
【0026】
本発明の通気一体型継手は、
図1、
図3に示した筒状の継手本体20を有し、この継手本体20の内部には排水流路21が形成され、かつ、通気機構22が設けられている。継手本体20は、通気機構22と連通する内筒23と外筒24とを有する二重管構造になっており、その下部に立て配管10接続用の立て配管接続部25、側部に横配管11接続用の横配管接続部26が設けられている。継手本体20は、後述するようにこれらの立て配管接続部25と横配管接続部26とを介して立て配管10の上端位置と横配管11との交差位置に取付けられ、横配管11から横配管接続部26に排水が流れ込んだときに、この排水を継手本体20の内部に形成された旋回流路面27で旋回流によって流して、立て配管接続部25から立て配管10に排水する構造になっている。継手本体20の上部側には密閉部材28が設けられ、この密閉部材28の下方側に通気機構22が設けられている。密閉部材28の上方側には蓋体29が装着されている。
【0027】
継手本体20下部の立て配管接続部25は、旋回流路面27に続けて緩やかに傾斜するように形成した縮径胴部面30を介して円筒状に形成され、立て配管10の管端部10aに挿入可能な外径に設けられる。立て配管接続部25の内周側には、端面側に向かって大きめのアールにより緩やかに広がる拡径部31が設けられている。立て配管接続部25の外周側における旋回流路面27との境界付近には環状鍔部32が形成され、立て配管10に立て配管接続部25を挿入する時には、この環状鍔部32が立て配管の管端部10aに当接可能になっている。
【0028】
継手本体20側部の横配管接続部26は、立て配管接続部25の軸芯Pに対して偏芯した軸芯Qを中心にして設けられる。横配管接続部26の一側には膨出部33が膨出形成され、この膨出部33の内周側に略円弧状の旋回流路面27が形成される。
図5において、旋回流路面27は外周側曲面部34と内周側曲面部35とを有しており、横配管接続部26に形成位置に応じてこれらの幅を調整可能になっている。本実施形態の旋回流路面27は、横配管接続部26の内径位置から仮想線Lを延長したときに、この仮想線Lが接触する位置から横配管接続部26の外径位置までとしている。旋回流路面27をこのように形成することで、バランスのよい外周側曲面部34、内周側曲面部35が形成される。
【0029】
図4に示すように、内筒23の外周面23aから旋回流路面27及び縮径胴部面30までの離間距離Sは、横配管11からの排水が旋回流で流れることが可能な長さになっている。具体的には、この離間距離Sは少なくとも横配管11の口径(内径)Dの少なくとも50%以上の長さに確保されている。このように、離間距離Sを所定の長さ以上に確保することで縮径胴部面30の軸芯P方向の高さHを短縮することが可能になる。この離間距離Sは、内筒23の外径を縮径することで拡げられている。
【0030】
図1において、高さHを短縮しつつ横配管11からの排水を旋回流で流すために、横配管内径最下端11aから縮径胴部面最下端30aまでを距離H
1とし、この距離H
1を横配管の口径Dの40%以上に設けるようにしてもよい。この場合にも、上記軸間距離Sを横配管の口径Dの50%以上の長さに確保したときと同様に、排水が旋回流によってスムーズに流れるようになる。この場合、距離H
1は、横配管11の口径Dの60%程度までの長さであるとよく、0.4×横配管の口径D≦距離H
1≦0.6×横配管の口径Dの関係としたときに効果的に旋回流を発生させることができる。
【0031】
その際、後述の筒体52の先端開口部52aから、横配管内径最下端11aまでの高さ距離をCとしたときに、この高さ距離Cが大きくすぎると横配管11からの流れが通気機構22内に流入する危険性が高くなる。そのため、高さ距離Cを小さく抑えることが望ましく、この場合、旋回流が流れる付近の通気開口部分が小さくなることで旋回流の衝突を回避でき、この旋回流による通気開口部分の閉塞を防ぐことができる。高さ距離Cは、横配管11の口径Dの20%程度であるとよく、このときには通気開口部分が十分な通気量が得られる大きさになることで排水能力がより向上する。
【0032】
通気一体型継手は、軸間距離Sを横配管の口径Dの50%以上、後述の口径Eを例えばφ20mm以上確保し、高さ距離Cを横配管の口径Dの20%以上、距離H
1を横配管の口径Dの40%以上としたときに、高さHを短縮しつつ最も効果的に旋回流を発生させて効率よく排水を流すことが可能になる。
【0033】
ここで、距離H
1や高さ距離Cに関する比較試験の例を示す。試験方法は、4階からの低流量排水負荷とし、1〜3階の圧力変位を測定した。供試品の通気一体継手のサイズは、75A(継手本体)×75A(横配管)である。
比較試験1では、筒体20の口径Eを最小のφ20mmとし、高さ距離Cを横配管の口径D(VU管でφ83mm)の33%、距離H
1を口径Dの12%とした。
また、比較試験2では、口径Eをφ30mmとし、高さ距離Cを横配管の口径Dの42%とした。距離H
1は口径Dの12%のままとした。
【0034】
これらの比較試験の結果、縮径胴部面30を通過する旋回流のピッチが狭く、旋回流が横配管11から旋回流路面27に流入する流体と衝突してしまい、衝突した旋回流が筒体52の先端開口部52aを塞いでしまった。この結果、比較試験では十分な通気量を得られず、排水能力の向上効果が失われてしまった。
【0035】
これに対し、本発明に関する実施形態の試験では、口径Eをφ30mmに抑制し、高さ距離Cも従来技術(
図7参照)と同様である横配管の構成Dの18%に抑制した。その上で、距離H
1を
図7の従来技術では口径Dの90%のところ、46%に抑制した。この実施形態によれば、旋回流の衝突を防ぐことができ、通気口を閉塞することがなく、高さを抑制しながらも従来技術にかなり近い排水能力を得ることができた。
【0036】
なお、上述の説明における横配管の口径Dに対する各距離C、H
1、Sの割合は、継手本体が75A、横配管の口径Dが75Aのように、継手本体と横配管の口径とが略同一の場合に適用される数値である。
【0037】
内筒23は継手本体20に密閉部材28を介して取付けられ、この密閉部材28は、継手本体20の開口上端部20aに装着される。密閉部材28は略環状に形成され、その中央部位に開口部40、この開口部40の外周底面側に弁座部41が形成されている。密閉部材28は、継手本体20の開口上端部20aに嵌め込まれるように取付けられ、取付け後にはこの密閉部材28の上部側に形成された鍔状部42が継手本体20の開口上端部20aに当接して所定の取付け状態に保持される。鍔状部42と開口上端部20aとの間にはOリング43が装着され、このOリング43により継手本体20と密閉部材28との間が密封シールされる。継手本体20は、この密封部材28の開口部40を介して大気と連通可能になる。
【0038】
開口部40の外側にはめねじ部45が形成され、このめねじ部45に内筒23に設けたおねじ部46が螺着されることで内筒23が密閉部材28に一体化される。内筒23は、このようなおねじ部46とめねじ部45との螺着により密閉部材28よりも内方側に調芯状態で装着される。内筒23の内部には通気機構22が収納されている。
【0039】
内筒23の下方側には雄ねじ50が形成され、この雄ねじ50に雌ねじ51が螺着されることで筒体52が取付けられる。筒体52は、通気機構22の下部に内部と連通して垂下形成されている。この筒体52(内筒23)が継手本体20内に設けられていることで、継手本体20と筒体52(内筒23)との間に排水流路21が形成される。この排水流路21からの排水時には、筒体52(内筒23)により内管通気がおこなわれ、継手本体20内に強制的に空気芯が形成されてスムーズな排気がおこなわれる。
【0040】
筒体52は、ゴム材料等の可撓性材料で所定の長さに形成され、
図5に示すように排水中の異物53がこの筒体52と継手本体20内部との間にあるときに、この筒体52がその可撓性により弾性変形して異物53による詰まりを防止する。異物53が流れた後には、筒体52が弾性変形により元の形状に容易に復元する。この筒体52は、螺合による取付けに限ることなく、凹凸嵌合等の別の取付手段で内筒23に一体化してもよく、内筒23と一体に形成することもできる。
【0041】
本実施形態における通気一体型継手では、縮径胴部面30の軸芯P方向の高さHを短く形成するために筒体52の口径Eを調整し、これにより排水流路21の図示しない開口面積を確保している。すなわち、筒体52の口径Eを小さくすることで、内筒23の外周面23aから旋回流路面27及び縮径胴部面30までの離間距離Sの長さを大きくしている。更に、縮径胴部面30の形状を外径側に拡径する円弧形状としており、これによっても離間距離Sの長さを大きくしている。このように、筒体52の口径Eの大きさ、縮径胴部面30の形状を調節することにより、内筒23の外周面23aから旋回流路面27及び縮径胴部面30までの離間距離Sを旋回流で流れることが可能な所定の長さ以上に確保し、かつ縮径胴部面30の軸芯方向の高さHを短縮し、円滑に排水できる開口面積の排水流路21を確保している。
【0042】
図1〜
図4に示すように、通気機構23は、弁体55、シール部材56、スプリング57を有し、これらは内筒23の内側に取付けられる。弁体55は、略かさ状の蓋部55aと軸部55bとを有し、蓋部55aの中央位置から軸部55bが垂下形成されている。軸部55bの外周側には円筒状の案内筒55cが形成されている。この案内筒55cの内径は、後述する弁体保持体61の外径よりもやや大径に形成される。蓋部55aの外周側には装着溝58が形成されており、この装着溝58にゴム等の可撓性部材により環状に形成されたシール部材56が嵌め込まれる。
【0043】
通気機構22が設けられる内筒23の内側には、複数の板状のジスクガイド60が放射状に突設形成され、このジスクガイド60の内側に弁体55が収納保持される。内筒23の中心位置には、密閉部材28よりも下方位置に円筒状の弁体保持体61が一体に形成され、この弁体保持体61の中央に穴部62が形成されている。この穴部62に対して弁体55の軸部55bが挿着される。
【0044】
弁体45を内筒23に取付ける際には、軸部55bを弁体保持体61の穴部62に挿入し、また、案内筒55c内にこの弁体保持体61を挿入させながらジスクガイド60内に収納する。この軸部55bと弁体保持体61との間にスプリング57が弾発付勢した状態で取付けられている。これにより、通常時においては、
図1に示すように弁体55のシール部材56がスプリング57の付勢力により弁座部41に着座し、継手本体20内部が密閉状態になる。
【0045】
通気機構22は、通常は、継手本体20の上端より突出することなく閉止状態を保持し、継手本体20内が負圧になったとき、
図2に示すように弁体55が弁体保持体61に沿って調芯された状態でスプリング57を圧縮しながら継手本体20の内方側へ開放駆動する通気弁からなっている。この弁体の動作によって排水設備内の負圧が軽減される。
【0046】
図1に示すように、蓋体29は略円盤状に形成され、その内周側にメネジ70が形成されている。蓋体29は、メネジ70を継手本体20に形成されたオネジ71に螺着することで継手本体20上部に取付けた密閉部材28の上から着脱される。蓋体29の取付け後には、この蓋体29と継手本体20との間に密閉部材28が挟着状態で固定される。
【0047】
図3において、蓋体29の側部には複数の開口窓72が等間隔で形成され、さらに、この開口窓72の間に求心方向に案内フィン73が形成され、この案内フィン73の間に横通気路74が形成されている。蓋体29の上部にはカバー部75が形成され、このカバー部75により密閉部材28の開口部40が上方から覆われている。カバー部75によって遮音が可能になり、排水時の音が床材等に伝わることが防止される。更に、このカバー部75により埃等のゴミの浸入も防がれる。
【0048】
蓋体29は省略することが可能であり、その場合、密閉部材28に対して継手本体20のオネジ71に螺着可能な図示しないメネジ部を形成することで、この密閉部材28が自然に外れることを防ぐことができる。
【0049】
なお、本発明の通気一体型継手に設けられる通気機構としては、弁体が継手本体の内包側へ開放駆動する通気弁以外の構造であってもよい。図示しないが、例えば、弁座に対して昇降動自在な弁体を設け、通常時にはこの弁体が自重により着座し、負圧発生時に大気圧により継手本体の外方側へ持ち上げられて負圧を軽減する構造の通気機構を設けるようにしてもよい。更には、弁体を省略して内筒を常時大気側と連通させた構造とすることも可能である。
【0050】
続いて、上記実施形態に示した通気一体型継手を床材に取付ける場合を説明する。
図1、
図6においては、通気一体型継手を取付けた状態を示している。図において、通気一体型継手は、床材12の床面13よりも上方位置に取付けられている。床材12には貫通穴80が設けられ、この貫通穴80を介して立て配管10が配設される。立て配管10の外周側にはほぼ床面付近まで防音材81が被覆され、立て配管10と床材12との間の貫通穴80には床面側よりシーリング材82が充填され、このシーリング材82により立て配管10、床材12、防音材81の間の空間がシーリング処理される。
【0051】
通気一体型継手は、床面13よりも上方側に設けられた立て配管10の管端部10aに取付けられる。この場合、通気一体型継手は床材12の貫通穴80に固定した立て配管10に取付けられ、継手本体20の立て配管接続部25が立て配管10の内周面10bに挿入されるように接合される。
【0052】
通気一体型継手を取付ける場合、先ず、立て配管10を床材12に取付け、この床材12に通気一体型継手が接合する。立て配管10の設置時には、設置高さの調整幅を持たせつつ貫通穴80に立て配管10を貫通させ、この立て配管10の外周に防音材81を被覆する。その際、シーリング材82が設けられる直前の位置まで防音材81を取付ける。その後、立て配管外周側の貫通穴80にシーリング材82を充填してシーリング処理する。これにより、立て配管10を床材12の貫通穴80に固定でき、立て配管10の管端部10aが床面13よりも上方位置に配置された状態となる。
【0053】
このように床材12に固定した立て配管10に対して、継手本体20の立て配管接続部25を立て配管10に挿入して仮接合しながら、この立て配管10の管端部10aを切断して通気一体型継手を所定の設置高さに調整する。このとき、管端部10aを床面13よりも上方側に設け、この管端部10aに対して設置高さを調整しながら通気一体型継手を取付けてもよい。次いで、立て配管10の内周面10bと立て配管接続部25外周側に接着剤83を塗布して継手本体20と立て配管10とを接合する。この接合によって、通気一体型継手を床面13から所定高さにより立て配管10に固定可能になる。このとき環状鍔部32が立て配管10の管端部10aに当接するため、継手本体20を高さ方向に位置決めした状態で取付け可能となる。
【0054】
次に、本発明の通気一体型継手と継手の取付構造の上記実施形態における作用を説明する。
本発明の通気一体型継手は、通気機構22を有する継手本体20に立て配管接続部25と横配管接続部26とを設け、通気機構22に連通して形成した内筒23の外周面23aから旋回流路面27及び縮径胴部面30までの離間距離Sや、横配管内径最下端11aから縮径胴部面終端30aまでの距離H
1を排水が旋回流で流れる長さに確保しつつ、縮径胴部面30の軸芯P方向の高さHを短縮しているので、継手全体の長さを短くすることができる。そのため、継手の設置高さを低く保持しながら接合でき、床下等の狭い設置スペースへの設置が容易となる。
【0055】
床材12の床面13付近或は床面13よりも上方側に排水立て配管の管端部10aを設け、この排水立て配管10に継手本体20の立て配管接続部25を接続して取付けているので、治具等を必要とすることなく一人で立て配管10の設置作業と通気一体型継手の取付け作業を実施できる。
【0056】
その際、貫通穴80に立て配管10を貫通させながら取付ければよいので取付け作業が容易になり、床面13よりも上方の立て配管の管端部10aを切断することで簡単に継手の設置高さも調整可能になる。貫通穴80に貫通させた立て配管10を床面13付近まで防音材81で被覆できるため防音性が高く、継手の取付け前にシーリング処理を実施できるためその作業性もよい。
【0057】
立て配管に通気一体型継手を取付けるときには、床面から露出した立て配管の管端部に対して設置高さを調整しながら継手本体を仮固定し、この状態で接着剤を塗布して適正な接合状態を確保しながら床下等の所定の設置スペース内に容易に取付けることができる。
【0058】
通気一体型継手の取付け後に排水設備内を排水が流下して負圧が発生すると、それまで閉止状態を維持していた弁体55がスプリング57の弾発付勢力に抗して下方に移動して開口部40が開かれ、この開口部40から排水設備内に大気が流入する。このように、負圧発生時には、負圧と大気圧との圧力差に応じて弁体55が解放駆動して弁開状態になって排水設備内に大気が取り込まれ、これにより排水設備内の圧力差が小さくなり負圧が軽減される。このとき排水していない排水器具14の図示しないトラップ封水が負圧によって減少することも防止される。
【0059】
次に、弁開動作によって排水設備内の圧力差が小さくなり、弁閉動作するときには、スプリング57の弾発力によって弁体55が閉方向に摺動し、この弁体55のシール部材56が弁座部41に着座して弁閉する。弁閉時には、弁体55が調芯されて均一な弁座シールが可能になる。弁体55が着座すると、継手本体20内が密閉状態になって排水設備内の臭気の大気側(床下等)への逃げが防がれる。
【0060】
排水設備内の詰まり等によって排水が逆流し、排水立て管10からの排水の水位が上昇した場合には、この排水によって筒体52の入口側が塞がれてこの筒体52または継手本体20内の空気層が密閉状態となり、この空気層の密閉状態を保持することによって逆流が防がれて、外部への排水の飛散や流出などの漏れが防止される。しかも、このとき弁体55には正圧が作用するために弁閉状態が安定的に保持され、空気層の密閉状態が維持されて確実に逆流が防止される。
【0061】
通常時には、弁体55が通気機構22の上端より突出することなく閉止状態を保持し、内部が負圧になったときに弁体55がこの通気機構22の内方側に開放駆動される構造であるため、通気機構22の高さを最小限に抑えて全体をコンパクト化できる。これにより、狭い床下空間の寸法に制約されることなく、所定の通水口径を維持しながら通気一体型継手を配設でき、設置スペースを小さくすることで居住スペースなどを大きくすることもできる。
【0062】
更に、上記実施形態のように密閉部材25の上方に蓋体37を配置した場合には、弁本体10と蓋体37の間に横通気路37dが確保されることにより、弁本体10を床の下面等に近接配置しても、負圧の解消に必要な十分な通気を行うことができる。
【0063】
通気機構22において、立て配管10の軸芯Pに対して横配管11の軸芯Qが偏芯していることで、横配管から排水が流れ込んだときにこの排水は外筒部の内壁に沿うように旋回流路面から縮径胴部面に旋回流で流下する。このように、排水を旋回流によって排水流を流下させるように流していることで継手本体20内の軸芯P付近に自然に空気芯が形成される。このため立て配管10内への空気供給を確保しつつ横配管11からスムーズに継手本体20内に排水を導いてこの排水を二次側に流すことができる。
【0064】
更に、この通気一体型継手において、縮径胴部面30の軸芯P方向の高さHを短縮し、かつ筒体52の口径Eと縮径胴部面30の形状とを調整して所定の離間距離Sを確保して排水をスムーズに流すことが可能な流路を設けている。この構造の場合、排水時の旋回流のピッチが短くなって通気量が減少するが、同じ設置高さの
図7の構造の継手装置に比較して排水能力を2倍程度向上できる。
【0065】
図1において、高さ距離Cを小さく抑えつつ、距離H
1の横配管の口径Dに対する割合を大きく確保した場合、旋回流の衝突を回避しつつ通気開口部分の大きさを確保できるため、上記と同様に、同じ設置高さの
図7の構造の継手装置の2倍以上の排水能力が得られる。
【0066】
しかも、何れの場合にも、立て配管接続部25の内周に端面側に向かって大きめのアールにより緩やかに広がる拡径部31を設けているため、この拡径部31により立て配管10の内径と立て配管接続部25の内径との段差による旋回流の乱れを防止して、立て配管10の内部にスムーズに旋回流を確実に導くことが可能になる。